説明

エレベータの地震感知装置

【課題】地震感知装置が傾いて取付けられても、低下しにくいエレベータの地震感知装置を得ること。
【解決手段】建物の地震を感知する加速度センサ10sを有するエレベータの地震感知装置1において、地震感知装置1を取付けた状態において、加速度センサ10sによって重力加速度が加わる成分の重力加速度値を検知し、予め定められた基準重力加速度値と検知した重力加速度値とに基づいて加速度センサ10sの基準水直面からの傾斜角度θsを求める角度演算部21と、この傾斜角度を記憶する記憶部22と、加速度センサ10sが地震を検知した際に、記憶部22に記憶された傾斜角度θsより検知した加速度値を補正する補正部24と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの地震感知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の地震感知装置は下記特許文献1に示すように、地震動を検知可能に取り付けられ、垂直なZ軸方向の縦振れを検知することにより地震動のP波を検知するP波検出手段と、水平面での横振れを検知することにより地震動のS波を検知するS波検出手段とからなる検出部、及びP波検出手段、S波検出手段からの検出信号を判定して地震の発生を示す信号を出力しうる制御部とをユニットとして一体に備えたものが知られている。
【0003】
かかる地震感知装置によれば、一つの感知器によって地震の初期の縦波であるP波と、このP波に遅れて伝達される横揺れであるS波とを検出することができるため、装置を小型化するのに役立ち、感知器の設置や配線作業などを簡素化し得る。
【0004】
一方、地震感知装置によって地震を検知してエレベータの運転を管理するものとして、例えば、下記特許文献2に示すように、地震時運転から平常運転に復帰する際、一時的に避難した利用者へのサービスを優先できるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−42834号公報
【特許文献2】特開平6−255929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、地震感知装置が傾いて取付けられると揺れを検知する加速度センサも傾きX軸方向、Y軸方向の揺れが実際の揺れよりも、低く検知することになる。このため、地震感知装置の検知感度が低下し得る。したがって、地震感知装置の地震の検知によって地震用のエレベータの運転などの精度も低下するという課題を見出した。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、地震感知装置が傾いて取付けられても、地震感知装置の検知感度が低下しにくいエレベータの地震感知装置を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータの地震感知装置は、建物の地震を感知する加速度センサを有するエレベータの地震感知装置において、地震感知装置を取付けた状態において、前記加速度センサによって重力加速度が加わる成分の重力加速度値を検知し、予め定められた基準重力加速度値と前記検知した重力加速度値とに基づいて前記加速度センサの基準水直面からの傾斜角度を求める角度演算手段と、この傾斜角度を記憶する記憶手段と、前記加速度センサが地震を検知した際に、前記記憶手段に記憶された前記傾斜角度より検知した加速度値を補正する補正手段と、を備えたものである。
本発明のエレベータの地震感知装置によれば、地震感知装置を取付けた状態において、加速度センサは、重力加速度が加わる成分の重力加速度値を検知し、角度演算手段は、予め定められた基準重力加速度値と検知した重力加速度値とに基づいて加速度センサの基準垂直面らの傾斜角度を求め、記憶手段にこの傾斜角度を記憶し、補正手段は加速度センサが地震を検知した際に、傾斜角度に基づいて検知した地震の加速度値を補正する。
したがって、地震感知装置が傾いて取付けられても、地震感知装置が検知した加速度値を傾斜角度に基づいて補正するので、地震感知装置の検知感度が低下しにくいエレベータの地震感知装置を得ることができる。
【0009】
本発明に係るエレベータの地震感知装置は、傾斜角度が予め定められた基準角度を越えるか否かを判断する判断手段と、前記傾斜角度が基準角度を越えると、報知する報知手段とを備える、ことが好ましい。
上記エレベータの地震感知装置によれば、判断手段は傾斜角度が予め定められた基準角度を越えるか否かを判断し、報知手段は、傾斜角度が基準角度を越えると、報知する。したがって、地震感知装置の取付ける際の傾きが大きいまま、取付けられことを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエレベータの地震感知装置によれば、地震感知装置が傾いて取付けられても、その傾斜度を検知して検出した加速度値を傾斜角度により補正するので、地震感知装置の検知感度が低下しにくいエレベータの地震感知装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態によるエレベータの地震感知装置の取付け状態を示す図である。
【図2】図1に示す地震感知装置のブロック図である。
【図3】図1及び図2に示す地震感知装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態を図1及び図2によって説明する。図1は本発明の一実施の形態によるエレベータの地震感知装置の取付け状態を示す図、図2は図1に示す地震感知装置のブロック図である。
図1において、エレベータの地震感知装置1は箱形の形状をしており、四隅に設けられた孔1eにネジ(図示せず)を挿入して建物の壁3などに固定される。地震感知装置1は検出器10と、検出器10からの検知信号としての加速度値を補正すると共に、地震感知装置1の取付けの際における傾きが異常な値か否かを判断する制御器20とを有している。
【0013】
図2において、検出器10は、重力加速度が加わる成分の重力加速度値となるP波(縦揺れ)とS波(横揺れ)とを検知する加速度センサ10Sと、加速度センサ10sが検知した信号の増幅、ノイズ成分の除去などを成す信号処理部12とを有している。
なお、上記検出部10の具体的構成は、特開2003-42834号公報の図1及び図2などに記載されている。
【0014】
制御器20は、予め定められた基準重力加速度値grとして例えば9.8(m/s2)と検知した重力加速度値gsとに基づいて加速度センサ10sが基準垂直面からの傾斜角度θsを下記のようにして求める角度演算部21を有している。
<傾斜角度θsの算出>
gs=gr・cosθs ここに、gr>gs
θs=cos・(gr/gs)-1 ・・・・(1)
【0015】
制御器20は、傾斜角度θsを記憶する記憶部22と、加速度センサ10sが地震を検知した際に、傾斜角度θsより検知した地震のX方向及びY方向の加速度値Gsx,Gsyを下記のように補正すると共に、エレベータ制御部50へ補正した加速度値Grx,Gryを送出する補正部24と、を備えている。
<傾斜角度θsを用いた検出値の補正>
X軸方向の補正加速度
Grx=Gsx/(cosθs) ・・・・(2)
Y軸方向の補正加速度
Gry=Gsy/(cosθs) ・・・・(3)
【0016】
さらに、制御器20は、傾斜角度θsが予め定められた基準角度θrを越えるか否かを判断する判断部26と、傾斜角度θsが基準角度θrを越えると、例えば「傾き過ぎでする。」と音声案内したり、「赤色発光ダイオード28Lを点灯したり」する報知する報知部28を、を備えている。
【0017】
上記のようにエレベータの地震感知装置の動作を図1から図3を参照して説明する。図3は図1及び図2に示す地震感知装置の動作を示すフローチャートである。
まず、地震感知装置1の四つの孔1eにネジ(図示せず)を挿入して地震感知装置1を建物の壁3に固定する(ステップS101)。この際、加速度センサ10sが縦方向の重力加速度値gsを検知して信号処理部12を介して角度演算部21に入力する。角度演算部21は(1)式により傾斜角度θsを求める(ステップS103)。
【0018】
判断部26は、傾斜角度θsが予め定められた基準角度θr以内か否かを判断し(ステップS105)、基準角度θrを越えていると、報知部28の赤色発光ダイオード28Lを点灯する(ステップS109)。一方、ステップS105において、傾斜角度θsが基準角度θr以内であれば、角度演算部21は、傾斜角度θsを記憶部22に記憶する(ステップS107)。この状態において、地震が生じると、地震感知装置1の加速度センサ10sが振動を検知して信号処理部12を介して検出した加速度値を補正部20に入力する(ステップS111)。補正部20は、X方向の加速度値について上記(2)式により補正した加速度値Grxを求めると共に、Y方向の加速度値については、上記(3)式により補正した加速度値Gryを求めてエレベータの制御部50に出力し(ステップS113)、終了する。
【0019】
上記実施形態によるエレベータの地震感知装置は、建物の地震を感知する加速度センサ10sを有するエレベータの地震感知装置1において、地震感知装置1を取付けた状態において、加速度センサ10sによって重力加速度が加わる成分の重力加速度値を検知し、予め定められた基準重力加速度値と検知した重力加速度値とに基づいて加速度センサ10sの基準水直面からの傾斜角度θsを求める角度演算部21と、この傾斜角度を記憶する記憶部22と、加速度センサ10sが地震を検知した際に、記憶部22に記憶された傾斜角度θsより検知した加速度値を補正する補正部24と、を備えたものである。
【0020】
上記エレベータの地震感知装置によれば、加速度センサ10sを取付けた状態において、加速度センサ10sは、重力加速度が加わる成分の重力加速度値を検知し、角度演算部21は、予め定められた基準重力加速度値と検知した重力加速度値とに基づいて加速度センサ10の基準垂直面からの傾斜角度θsを求め、記憶部22にこの傾斜角度θsを記憶し、補正部24は加速度センサ10sが地震を検知した際に、傾斜角度θsに基づいて検知した地震の加速度値を補正する。
したがって、地震感知装置1が傾いて取付けられても、加速度センサ10sが検知した加速度値を傾斜角度θsに基づいて補正するので、地震感知装置1の検知感度が低下しにくいエレベータの地震感知装置を得ることができる。
【0021】
上記実施形態によるエレベータの地震感知装置は、傾斜角度θsが予め定められた基準角度を越えるか否かを判断する判断部22と、傾斜角度θsが基準角度を越えると、報知する報知部28を、備えることが好ましい。
上記エレベータの地震感知装置によれば、判断部26は傾斜角度θsが予め定められた基準角度を越えるか否かを判断し、報知部28は、傾斜角度θsが基準角度を越えると、報知する。したがって、地震感知装置1の取付ける際の傾きが大きいまま、取付けられことを防止できる。
【符号の説明】
【0022】
1 地震感知器、10s 加速度センサ、21 角度演算部、22 記憶部、24 補正部、26 判断部、28 報知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の地震を感知する加速度センサを有するエレベータの地震感知装置において、
前記地震感知装置を取付けた状態において、前記加速度センサによって重力加速度が加わる成分の重力加速度値を検知し、予め定められた基準重力加速度値と前記検知した重力加速度値とに基づいて前記加速度センサの基準水直面からの傾斜角度を求める角度演算手段と、
この傾斜角度を記憶する記憶手段と、
前記加速度センサが地震を検知した際に、前記記憶手段に記憶された前記傾斜角度より検知した加速度値を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とするエレベータの地震感知装置。
【請求項2】
前記傾斜角度が予め定められた基準角度を越えるか否かを判断する判断手段と、
前記傾斜角度が前記基準角度を越えると、報知する報知手段を、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの地震感知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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