説明

エレベータの地震時管制運転データ集計システム

【課題】携帯電話による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを活用し、地震発生時の管制運転データを集計して関係者への報告、評価を行うエレベータの地震時管制運転データ集計システムを得る。
【解決手段】地震の大きな揺れが予想される地域の基地局5から携帯電話に対して配信される緊急地震速報6を受信するとともに、時刻自動設定機能30を有する携帯電話端末と、エレベータ制御盤と、P波センサーと、低感知地震計と、携帯電話端末が接続される制御端末と、実際のビルの揺れを検出する加速度センサー13とを備え、携帯電話端末が緊急地震速報を受信したとき、エレベータ管制運転制御するエレベータの制御装置において、携帯電話端末による緊急地震速報の受信時刻、P波センサー動作時刻、低感知地震計動作時刻、及び加速度センサー動作時刻のデータを集計する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを活用して、従来よりも安価なエレベータの地震時管制運転を実現するとともに、地震発生時の管制運転データを集計して関係者への報告、評価を行うエレベータの地震時管制運転データ集計システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、十分早くに地震を感知すると共に、しかも確実に地震を感知でき、したがって安全確実なエレベータの管制運転を行うことが可能なエレベータ地震時管制運転システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、他の従来技術として、緊急地震速報の信頼性を向上させるとともに、信頼性の向上した緊急地震速報に基づいて、利用者にとって利便性の高い形態で地震情報や津波情報を伝達することができる緊急地震速報装置(例えば、特許文献2参照)や、利用者の生活に密着した形態で有用かつ高い利便性と信頼性を有するとともに、適切かつ簡便な課金システムに対応した緊急地震速報端末およびその使用方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−284758号公報
【特許文献2】特開2006−112922号公報
【特許文献3】特開2006−145234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の特許文献1記載のものでは、ネットワークを介してリアルタイム地震情報送信装置に接続され、このリアルタイム地震情報送信装置から送信されるリアルタイム地震情報、即ちP波に関する情報を受信するリアルタイム地震情報受信装置の出力と、各エレベータに設置されている地震感知器の出力とにより、エレベータ地震時管制運転を行う方式であるが、リアルタイム地震情報送信装置はネットワークを介しているため、特に地震発生時等では途中で何らかの通信障害が発生する可能性があり、またその受信情報も通常のP波に関するものであるから、早期に地震を感知するといっても限度があり、未だ不十分であるという問題があった。
また、従来の特許文献2記載のものは、気象庁が主に管轄する多機能型地震計から形成される第1の地震観測網と、独立行政法人防災科学技術研究所が主に管轄する高感度地震計から形成される第2の地震観測網とを受信して、緊急地震速報の信頼性を向上させるものであり、一方、特許文献3記載のものは、緊急地震速報の配信に対する適切かつ簡便な課金システムの確立とその課金システムに対応した緊急地震速報端末およびその使用方法であり、いずれも携帯電話による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを活用して、安価なエレベータの地震管制運転を実現できるようにしたエレベータの制御装置までは考慮されていない。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、携帯電話による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを活用することにより、地震発生時にエレベータをより早く管制運転し、乗客の安全を確保または機器の物損を防止できるとともに、地震発生時の管制運転データを集計して関係者への報告、評価を行うようにしたエレベータの地震時管制運転データ集計システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの地震時管制運転データ集計システムにおいては、エレベータ設置現場のビルに設けられ、地震の大きな揺れが予想される地域の基地局から当該地域の携帯電話に対して配信される緊急地震速報を受信するとともに、時刻自動設定機能を有する携帯電話端末と、P波信号端子及び低感知地震計信号端子を有するエレベータ制御盤と、P波センサーと、低感知地震計と、携帯電話端末が接続可能に構成された制御端末と、制御端末に設けられ、実際のビルの揺れを検出する加速度センサーとを備え、携帯電話端末が当該地域の緊急地震速報を受信したとき、携帯電話端末からの緊急地震速報信号出力及びP波センサーの出力をエレベータ制御盤のP波信号端子に出力し、エレベータを最寄階に停止させるとともに、加速度センサーがビルの揺れを検出するか、低感知地震計が揺れを検知すると、エレベータ制御盤の低感知地震計信号端子に出力してエレベータは運転休止を継続し、加速度センサー、低感知地震計のいずれも感知しない場合には、エレベータを通常運転に復帰させるエレベータの制御装置において、携帯電話端末による緊急地震速報の受信時刻、P波センサー動作時刻、低感知地震計動作時刻、及び加速度センサー動作時刻のデータを集計するものである。
【0007】
また、集計されたログデータは、携帯電話端末を用いて保守会社受信システムの緊急地震評価システムに送信するものである。
【0008】
また、保守会社受信システムの緊急地震評価システムは、都市全体の地震感知器の動作状況を予め用意された地図画面上に表示することにより、地域毎の被害状況を判断できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、携帯電話による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを活用することにより、地震発生時にエレベータをより早く管制運転し、乗客の安全を確保または機器の物損を防止できるとともに、地震発生時の管制運転データを集計して関係者への報告、評価を行うことができるので、ビルオーナーやビル管理者に対する報告が可能となる。また、集計データを評価分析することにより、エレベータの被害状況が判断でき、保守会社は対応要員確保の規模を瞬時に判断することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施の形態を説明する前に、先ずこの発明の基礎となるエレベータの制御装置について説明する。
図1はこの発明の基礎となるエレベータの制御装置の全体構成を示すシステム構成図、図2はこの発明の基礎となるエレベータの制御装置の要部構成を示す接続回路図、図3は緊急地震速報の時間的効果を説明するための説明図、図4はこの発明の基礎となるエレベータの制御装置の地震時管制運転動作を説明するためのフローチャートである。
【0011】
新規の緊急地震速報サービスとして、携帯電話による緊急地震速報の一斉同報配信が実現されようとしている。この緊急地震速報の一斉同報配信サービスは、震度4以上の大きな揺れが予想される地域の携帯電話に配信されるもので、2007年10月1日から一般向けへのサービス提供開始が計画されている。現状のエレベータでは、気象庁からの緊急地震速報をインターネット回線経由にて配信業者が受信し、配信業者が配信するビル毎の予想震度と到達予想時刻を、例えばVPN(Virtual Private Network)回線経由で受信することにより、エレベータの地震時管制運転を実施するようにしている。しかし、この方法では、専用の受信装置や回線費用等の初期設置費用が嵩むという大きな問題がある。したがって、携帯電話による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用すれば、携帯電話網のサービスを活用してエレベータを制御することにより、安価な地震時管制運転を実現することができるので、より一層の安心、安全なサービスを利用者に提供することが可能となると考えられる。また、現在、約35%のエレベータには、地震時管制運転装置が未整備であると言われており、また、P波感知器の設置が新設エレベータには義務付けられるという状況にある。
【0012】
そこで、先ず、携帯電話による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用したエレベータの制御装置の全体構成を図1により説明する。図1おいて、1は全国各地に設けられている多数の地震計2から気象庁3が緊急地震速報を発信する気象庁緊急地震通報網である。4は携帯電話会社である。携帯電話会社4は、気象庁緊急地震通報網1から緊急地震速報を受信し、震度4以上の大きな揺れが予想される地域の携帯電話に緊急地震速報を一斉同時配信するために、震度4以上に該当する地域の基地局5より、当該地域の携帯電話に対して緊急地震速報サービス6を配信するものである。一方、各ビル等からなるエレベータ設置現場7には、エレベータ制御盤8、S波地震計9を設置するが、その他に携帯電話会社4の震度4以上に該当する地域の基地局5より緊急地震速報サービス6を受信する携帯電話端末10が設置できかつ接続可能に構成された制御インターフェース11を有する制御端末12を設置する。そして、制御端末12の制御インターフェース11は、例えば、図2に示すように、フルスペック装備の構成としている。図2は低感知地震計、P波センサーが共に設置されている現場に、携帯電話端末10による緊急地震速報の制御端末12を設置した例である。制御インターフェース11は、実際のビルの揺れを安価に検出できるように構成された加速度センサー13と、携帯電話端末10が受信した緊急地震速報サービス情報を出力する速報信号出力接点14と、加速度センサー13が実際のビルの揺れを検出した時にONする加速度センサー動作接点15と、加速度センサー13が実際のビルの揺れを感知しなければ、地震時管制運転をリセットして通常運転へ復帰させるためのリセット接点16とを備えている。このリセット接点16の回路は、エレベータ制御盤8にP波信号の入力回路が無い場合にのみ使用されるものである。17は制御端末12に設けられた速報信号出力接点14の出力端子、18は制御端末12に設けられた加速度センサー動作接点15の出力端子、19は制御端末12に設けられたリセット接点16の出力端子である。このリセット接点16の出力端子19もエレベータ制御盤8にP波信号の入力回路が無い場合にのみ使用されるものである。なお、携帯電話端末10からの速報信号出力は、到達予想時刻+60秒の間、速報信号出力接点14を閉じるようにしている。したがって、到達予想時刻より1分経過すると、エレベータは復旧する。なお、P波センサー20がある場合は、早い方の信号で最寄階に停止する。また、上記加速度センサー13は誤報防止機能として活用される。すなわち、携帯電話端末10からの速報信号出力があっても、その後加速度センサー13が実際のビルの揺れを検出しなければ、誤報として地震時管制運転をリセットする信号を出力する。20はP波センサー、21はP波センサー20の動作接点、22はS波地震計9のうちの低感知地震計、23は低感知地震計22の動作接点である。24はエレベータ制御盤8に設けられたP波信号端子である。このP波信号端子24は、P波センサー20の動作接点21に接続されるとともに、上記速報信号出力接点14の出力端子17にも信号線25を介して接続されている。26はエレベータ制御盤8に設けられた低感知地震計信号端子である。この低感知地震計信号端子26は、低感知地震計22の動作接点23に接続されるとともに、上記加速度センサー動作接点15の出力端子18にも信号線27を介して接続されている。28はエレベータ制御盤8に設けられた地震時管制リセット端子である。この地震時管制リセット端子28は、エレベータ制御盤8にP波信号端子24が装備されていない場合にのみ、上記リセット接点16の出力端子19に信号線29を介して接続されるので、図2では、信号線29を便宜上、仮想線である点線で表わしている。
【0013】
また、図2において、地震感知器は設置されているが、P波センサーは設置されていない場合には、携帯電話端末10からの緊急地震速報サービス情報を出力する速報信号出力接点14の出力端子17と、エレベータ制御盤8に通常設けられているP波信号端子24を信号線25を介して接続すれば、P波センサーが設置されていなくても、携帯電話端末10が受信した緊急地震速報サービス情報の信号をエレベータ制御盤8のP波信号端子24に入力することにより、エレベータを早い時点で最寄階に停止できるようにすることが可能となる。この場合は、エレベータ制御盤8にP波信号端子24の入力回路が有るので、リセット接点回路は不要である。なお、エレベータ制御盤8には、使用するしないにかかわらず、P波信号端子24が通常設けられているものである。
【0014】
また、図2において、地震感知器、P波センサーが共に設置されていない場合には、携帯電話端末10からの緊急地震速報サービス情報を出力する速報信号出力接点14の出力端子17と、エレベータ制御盤8に通常設けられているP波信号端子24を信号線25を介して接続するとともに、加速度センサー動作接点15の出力端子18と、エレベータ制御盤8に通常設けられている低感知地震計信号端子26を信号線27を介して接続すれば、地震感知器、P波センサーが共に設置されていなくても、携帯電話端末10が受信した緊急地震速報サービス情報の信号をエレベータ制御盤8のP波信号端子24に入力し、かつ加速度センサー13が実際のビルの揺れを検出した時にその信号をエレベータ制御盤8の低感知地震計信号端子26に入力するので、エレベータを早い時点で最寄階に停止できるようにすることが可能となる。この場合、エレベータ制御盤8にP波信号端子24の入力回路が有るので、リセット接点回路は不要である。なお、エレベータ制御盤8には、使用するしないにかかわらず、P波信号端子24、低感知地震計信号端子26が通常設けられているものである。
【0015】
また、図2において、地震感知器、P波センサーを共に設置しなくても良い場合で、エレベータ制御盤にP波信号の入力回路が無い場合には、携帯電話端末10からの緊急地震速報サービス情報を出力する速報信号出力接点14の出力端子17と、エレベータ制御盤8に通常設けられている低感知地震計信号端子26を信号線25を介して接続するとともに、加速度センサー13のリセット接点16の出力端子19と、エレベータ制御盤8に設けられた地震時管制リセット端子28を信号線29を介して接続すれば、地震感知器、P波センサーが共に設置されていなくても、携帯電話端末10が受信した緊急地震速報サービス情報の信号をエレベータ制御盤8の低感知地震計信号端子26に入力し、かつ加速度センサー13が実際のビルの揺れを感知しなければ、地震時管制運転をリセットして通常運転へ復帰させるためのリセット接点16の信号をエレベータ制御盤8の地震時管制リセット端子28に入力するので、エレベータを早い時点で最寄階に停止させ、その後実際のビルの揺れを感知しなければ、エレベータ制御盤に送信して運転休止したエレベータをリセットして復旧することが可能となる。なお、エレベータ制御盤8には、使用するしないにかかわらず、低感知地震計信号端子26が通常設けられているが、地震時管制リセット端子28は、通常設けられていないので、別途に設置する必要がある。
【0016】
緊急地震速報は、図3に示すように、震源から約80km離れた場合は、従来のP波センサーが動作するよりも早く受信できることが判る。また、P波センサーの設置が無く、震源から約40km離れた場合は、S波地震感知器が動作するよりも早く受信できることが判る。なお、図3において、P波の伝播速度は7km/秒、S波(本震)の伝播速度は3.5km/秒である。
したがって、緊急地震速報を活用すれば、より安全に、早いタイミングでエレベータを停止させることが可能になり、高層エレベータには極めて有効なものとなる。このため、図2に示すように、P波センサー20又は携帯電話端末10が受信した緊急地震速報サービス情報のどちらか早い信号をエレベータ制御盤8のP波信号端子24に受信可能な構成とすることにより、エレベータを早い時点で最寄階に停止できるようにすることは有効である。
【0017】
次に、図4によりエレベータの制御装置の地震時管制運転動作について説明する。
携帯電話会社4は気象庁緊急地震通報網1から緊急地震速報を受信し、震度4以上の大きな揺れが予想される地域の携帯電話に緊急地震速報を一斉同時配信するために、震度4以上に該当する地域の基地局5より、当該地域の携帯電話に対して緊急地震速報サービス6を配信しているものとする。先ず、ステップS1で、エレベータ設置現場7の制御端末12に設けられた携帯電話端末10が基地局5から当該地域の緊急地震速報6を受信すると、エレベータの地震管制制御信号が出力され、速報信号出力接点14の出力端子17から信号線25を介してエレベータの制御盤8のP波信号端子24に入力され、P波センサー入力をONにする(ステップS2)。また、P波センサー20が動作すると、エレベータの地震管制制御信号が出力され、エレベータの制御盤8のP波信号端子24に入力され、P波センサー入力をONにする(ステップS3)。P波センサー20又は携帯電話端末10による緊急地震速報のどちらか早い信号を受信すると、エレベータは最寄階停止後、運転休止する(ステップS4)。次に、ステップS5に進み、当該地域の地震予想到達時刻より1分経過したか否かを判断する。そして、ステップS5で1分経過していれば、エレベータの地震管制制御信号の出力を停止して、エレベータの制御盤8のP波信号端子24へのP波センサー入力をOFFにして(ステップS6)、エレベータを通常運転に復帰させる(ステップS7)。
一方、ステップS1で、エレベータ設置現場7の制御端末12に設けられた携帯電話端末10が基地局5から当該地域の緊急地震速報6を受信すると、同時に制御端末12は、加速度センサー13を起動させる(ステップS8)。そして、ステップS9で実際のビルの揺れを加速度センサー13が検出し、実際のビル揺れが設定値以上であることを検出した時、加速度センサー13の動作接点15がONしてエレベータの地震時管制制御信号が出力され、加速度センサー13の動作接点15の出力端子18から信号線27を介してエレベータの制御盤8の低感知地震計信号端子26に入力され、低感知をONにして(ステップS10)、エレベータを最寄階停止後、運転休止させる(ステップS11)。
また、ステップS9で実際のビルの揺れが設定値未満であることを検出した時、ステップS12に進み、当該地域の地震予想到達時刻より3分経過したか否かを判断する。なお、低感知地震計22が動作しその動作接点23がONした場合は、ステップS11と同様に、エレベータを最寄階停止後、運転休止させることは勿論である。そして、エレベータ制御盤8にP波信号端子24の入力回路が無い場合には、ステップS12で3分経過していれば、加速度センサー13の地震時管制運転をリセットして通常運転へ復帰させるリセット接点16をONにして(ステップS13)、エレベータを通常運転に復帰させる(ステップS7)。
【0018】
実施の形態1.
図5はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの地震時管制運転データ集計システムの要部構成を示すシステム構成図、図6はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの地震時管制運転データ集計システムのログデータの一例を示す説明図、図7はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの地震時管制運転データ集計システムの全体構成を示すシステム構成図、図8はエレベータ保守会社受信システム側の緊急地震評価システムの表示画面の一例を示す説明図である。
【0019】
図5において、8はエレベータ制御盤、10は地震情報受信端末である携帯電話端末、12は制御端末、13は加速度センサー、14は携帯電話端末10からの緊急地震速報サービス情報を出力する速報信号出力接点、15は加速度センサー13の動作接点、20はP波センサー、21はP波センサー20の動作接点、22は低感知地震計、23は低感知地震計22の動作接点、24はエレベータ制御盤8に設けられたP波信号端子、26はエレベータ制御盤8に設けられた低感知地震計信号端子である。30は携帯電話端末10に備えられている時刻自動設定機能、31は時刻自動設定機能30で自動調整された時刻を「管理データ1」とするデータ計測点で、ここでは時刻を管理している。32は緊急地震速報による制御時刻を「管理データ2」とするデータ計測点で、ここでは携帯電話端末10からの出力時刻を管理している。33はP波センサー20がONするとピックアップするリレー(Q)で、リレーを用いたのは、携帯電話端末10の動作時間とP波センサー20の動作時間の両方の時間計測を行うためである。34はP波センサー20の動作時刻を「管理データ3」とするデータ計測点で、ここではP波センサー20の出力がいつの時点でONになったのかを管理している。35はP波センサー20のリレー(Q)33がピックアップするとONするリレー接点で、上記速報信号出力接点14と並列に接続され、どちらか早い方の信号でエレベータ制御盤8のP波信号端子24を動作させる。なお、P波センサー20が設置されていない場合には、リレー(Q)33、データ計測点34及びリレー接点35は設ける必要がない。36は低感知地震計22がONするとピックアップするリレー(R)、37は低感知地震計22の動作時刻を「管理データ4」とするデータ計測点で、ここでは低感知地震計22の出力がいつの時点でONになったのかを管理している。38は低感知地震計22のリレー(R)36がピックアップするとONするリレー接点で、加速度センサー13の動作接点15と並列に接続され、どちらか早い方の信号でエレベータ制御盤8の低感知地震計信号端子26を動作させる。なお、低感知地震計22が設置されていない場合には、リレー(R)36、データ計測点37及びリレー接点38は設ける必要がない。39は加速度センサー13の動作時刻を「管理データ5」とするデータ計測点で、ここでは加速度センサー13の出力がいつの時点でONになったのかを管理している。これにより、低感知地震計22でリレー(R)36を動作させ、加速度センサー13の動作接点15と別々に動作時刻を測定、記録できるようにしている。
【0020】
次に、地震時管制運転データ集計システムのログデータの一例を図6により説明する。緊急地震速報第1報の受信時刻が「12時00分10秒」、その到達予想時刻が「12時00分18秒」、緊急地震速報第2報の受信時刻が「12時00分12秒」、その到達予想時刻が「12時00分19秒」、P波センサー動作時刻の受信時刻が「12時00分13秒」、S波動作時刻の受信時刻が「12時00分2秒0」、加速度センサーONの受信時刻が「12時00分20秒」、加速度センサーOFFの受信時刻が「12時00分31秒」とすると、緊急地震速報第1報の緊急地震有効性は、P波の場合で3秒、S波の場合で10秒、緊急地震予想時間差は2秒である。また、緊急地震速報第2報の緊急地震有効性は、P波の場合で1秒、S波の場合で8秒、緊急地震予想時間差は1秒である。緊急地震速報は、第1報、第2報と段々と精度の良いデータが何度も送られてくる仕組みであり、第1報を制御に使うか、第2報を制御に使うかは、使う側の設定による。安全勝手には第1報を活用する方が良いが、誤報が多いようであれば、第2報を活用する設定する。
そして、上記のように採取したログデータを携帯電話端末を用いて、保守会社受信システムの緊急地震評価システムにメールにて送信するようにしたものである。
【0021】
図7はエレベータ保守会社受信システム側も含めた全体構成図である。図7において、図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。40はエレベータ制御盤8に設けられた通信装置で、携帯電話による緊急地震速報を受信してエレベータが管制運転したことを通報する異常発報、及びエレベータが地震後に復旧したことを通報する復旧発報を送信する。41はエレベータ保守会社受信システム、42はエレベータ保守会社受信システム41に設けられた通信装置で、通信回線を介してエレベータ制御盤8側の通信装置40に接続されて、携帯電話による緊急地震速報を受信してエレベータが管制運転したことを通報する異常発報、及びエレベータが地震後に管制解除されて復旧したことを通報する復旧発報を受信する。そして、これらの通報には、携帯電話による緊急地震速報を受信してエレベータが管制運転したことを通報する「エレベータ管制」、及びエレベータが地震後に管制解除されて復旧したことを通報する「エレベータ管制解除」の他に、緊急地震速報によるエレベータ管制運転がそのまま継続されたことを通報する「エレベータ管制継続」が含まれる。43はエレベータ保守会社受信システム41に設けられた受信端末、44は保守技術者であり、受信端末43からの出動要請を受けてエレベータ設置現場7へ復旧出動する。45はエレベータ保守会社受信システム41に設けられたメール装置である。46は保守会社受信システム41に設けられた緊急地震評価システムで、地震時管制運転データ集計システムにより採取・集計されたログデータを携帯電話端末からメールにて送信を受けて評価するものである。
【0022】
図8は緊急地震評価システムの表示画面の一例である。
都市全体の地図を各地域毎の区分された地図画面とし、その地図画面上に、各地域毎の緊急地震速報受信時刻、P波センサー動作時刻、S波動作時刻、加速度センサー感知時間、予想震度、現場の地図上の位置とS波動作の有無(表示灯の点灯又は消灯で表示)が表示されるようになっている。この保守会社受信システム41の緊急地震評価システム46は、都市全体の地震感知器の動作状況を予め用意された地図画面上に表示することにより、被害状況を判断できる。
これにより、集計、蓄積されたログデータを評価分析することで、収集データを基に緊急地震速報を活用した場合に、従来のP波センサー、地震感知機に比較してどれほど早期に地震発生の信号を受信して制御できたかを、ビルオーナーやビル管理者に報告・説明することができる。また、保守会社受信システムにて収集された地域毎のログデータにより、地震規模の推定が可能になるとともに、地域毎の緊急地震速報の予測精度評価(到達予想時刻と実際の地震動時刻との差)、震度4でエレベータを地震管制運転により停止させたが、実際にはS波感知器が動作したのか否かの評価が可能となる。また、予めログデータを収集するために用意された地域毎の地震感知器動作の状況が、短い時間で収集可能となり、都市全体の被害(エレベータの運転休止の状況)が判断可能となる。これにより、保守会社は対応要員確保の規模を瞬時に判断することが可能となり、出動体制の規模の判断ができる。通常は地震感知器の動作状況は、電話回線により収集するが、大きな地震の時には、5〜10分すると、一般的に電話回線が輻輳し、電話がかかりにくい状況となり、状況確認に時間がかかるので、この発明は有効な手段となり得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の基礎となるエレベータの制御装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】この発明の前提となるエレベータの制御装置の要部構成を示す接続回路図である。
【図3】緊急地震速報の時間的効果を説明するための説明図である。
【図4】この発明の基礎となるエレベータの制御装置の地震時管制運転動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1におけるエレベータの地震時管制運転データ集計システムの要部構成を示すシステム構成図である。
【図6】この発明の実施の形態1におけるエレベータの地震時管制運転データ集計システムのログデータの一例を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態1におけるエレベータの地震時管制運転データ集計システムの全体構成を示すシステム構成図である。
【図8】エレベータ保守会社受信システム側の緊急地震評価システムの表示画面の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 気象庁緊急地震通報網
2 地震計
3 気象庁
4 携帯電話会社
5 基地局
6 携帯電話会社による緊急地震速報
7 エレベータ設置現場
8 エレベータ制御盤
9 地震計
10 携帯電話端末
11 制御インターフェース
12 制御端末
13 加速度センサー
14 速報信号出力接点
15 加速度センサー動作接点
16 リセット接点
17〜19 出力端子
20 P波センサー
21 動作接点
22 低感知地震計
23 動作接点
24 P波信号端子
25、27、29 信号線
26 低感知地震計信号端子
28 地震時管制リセット端子
30 時刻自動設定機能
31 データ管理1のデータ計測点
32 データ管理2のデータ計測点
33 リレー(Q)
34 データ管理3のデータ計測点
35 リレー接点
36 リレー(R)
37 データ管理4のデータ計測点
38 リレー接点
39 データ管理5のデータ計測点
40、42 通信装置
41 エレベータ保守会社受信システム
43 受信端末
44 保守技術者
45 メール装置
46 緊急地震評価システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ設置現場のビルに設けられ、地震の大きな揺れが予想される地域の基地局から当該地域の携帯電話に対して配信される緊急地震速報を受信するとともに、時刻自動設定機能を有する携帯電話端末と、P波信号端子及び低感知地震計信号端子を有するエレベータ制御盤と、前記携帯電話端末が接続可能に構成された制御端末と、前記制御端末に設けられ、実際のビルの揺れを検出する加速度センサーとを備え、前記携帯電話端末が当該地域の前記緊急地震速報を受信したとき、前記携帯電話端末からの緊急地震速報信号出力及び前記加速度センサーの出力を、前記エレベータ制御盤のP波信号端子及び低感知地震計信号端子の少なくとも一つに出力し、エレベータを最寄階に停止させる地震時管制運転を行うエレベータの制御装置において、
携帯電話端末による緊急地震速報の受信時刻、及び加速度センサー動作時刻のデータを集計することを特徴とするエレベータの地震時管制運転データ集計システム。
【請求項2】
エレベータ設置現場のビルに設けられ、地震の大きな揺れが予想される地域の基地局から当該地域の携帯電話に対して配信される緊急地震速報を受信するとともに、時刻自動設定機能を有する携帯電話端末と、P波信号端子及び低感知地震計信号端子を有するエレベータ制御盤と、P波センサーと、低感知地震計と、前記携帯電話端末が接続可能に構成された制御端末と、前記制御端末に設けられ、実際のビルの揺れを検出する加速度センサーとを備え、前記携帯電話端末が当該地域の前記緊急地震速報を受信したとき、前記携帯電話端末からの緊急地震速報信号出力及び前記P波センサーの出力を前記エレベータ制御盤のP波信号端子に出力し、エレベータを最寄階に停止させるとともに、前記加速度センサーがビルの揺れを検出するか、低感知地震計が揺れを検知すると、前記エレベータ制御盤の低感知地震計信号端子に出力してエレベータは運転休止を継続し、前記加速度センサー、低感知地震計のいずれも感知しない場合には、エレベータを通常運転に復帰させるエレベータの制御装置において、
携帯電話端末による緊急地震速報の受信時刻、P波センサー動作時刻、低感知地震計動作時刻、及び加速度センサー動作時刻のデータを集計することを特徴とするエレベータの地震時管制運転データ集計システム。
【請求項3】
エレベータ設置現場のビルに設けられ、地震の大きな揺れが予想される地域の基地局から当該地域の携帯電話に対して配信される緊急地震速報を受信するとともに、時刻自動設定機能を有する携帯電話端末と、P波信号端子及び低感知地震計信号端子を有するエレベータ制御盤と、低感知地震計と、前記携帯電話端末が接続可能に構成された制御端末とを備え、前記携帯電話端末が当該地域の前記緊急地震速報を受信したとき、前記携帯電話端末からの緊急地震速報信号出力を前記エレベータ制御盤のP波信号端子に出力し、エレベータを最寄階に停止させるともに、前記低感知地震計が揺れを検知すると、前記エレベータ制御盤の低感知地震計信号端子に出力してエレベータは運転休止を継続させるエレベータの制御装置において、
携帯電話端末による緊急地震速報の受信時刻、及び低感知地震計動作時刻のデータを集計することを特徴とするエレベータの地震時管制運転データ集計システム。
【請求項4】
エレベータ設置現場のビルに設けられ、地震の大きな揺れが予想される地域の基地局から当該地域の携帯電話に対して配信される緊急地震速報を受信するとともに、時刻自動設定機能を有する携帯電話端末と、P波信号端子及び低感知地震計信号端子を有するエレベータ制御盤と、前記携帯電話端末が接続可能に構成された制御端末と、前記制御端末に設けられ、実際のビルの揺れを検出する加速度センサーとを備え、前記携帯電話端末が当該地域の前記緊急地震速報を受信したとき、前記携帯電話端末からの緊急地震速報信号出力を前記エレベータ制御盤のP波信号端子に出力し、エレベータを最寄階に停止させるともに、前記加速度センサーがビルの揺れを検出すると、前記エレベータ制御盤の低感知地震計信号端子に出力してエレベータは運転休止を継続させるエレベータの制御装置において、
携帯電話端末による緊急地震速報の受信時刻、及び加速度センサー動作時刻のデータを集計することを特徴とするエレベータの地震時管制運転データ集計システム。
【請求項5】
集計されたログデータは、携帯電話端末を用いて保守会社受信システムの緊急地震評価システムに送信することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエレベータの地震時管制運転データ集計システム。
【請求項6】
保守会社受信システムの緊急地震評価システムは、都市全体の地震感知器の動作状況を予め用意された地図画面上に表示することにより、地域毎の被害状況を判断できるようにしたことを特徴とする請求項5記載のエレベータの地震時管制運転データ集計システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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