エレベータの戸装置およびその戸制御装置
【課題】従来、実際のエレベータ扉の開閉方向の速度に基づき引き込まれの判断をしていないため、実際には引き込まれが発生していない場合や一旦引き込まれが発生したがその後復旧した場合も、反転動作を行ってしまうという問題点があった。
【解決手段】
前記トルク指令が所定の閾値を超えると、前記モータが過負荷状態にあると判断し、前記速度指令値を所定値まで下げるモータ負荷検出手段と、前記戸の開動作中に、前記モータ負荷検出手段により前記モータが過負荷状態にあると判断され、その後、前記実速度が所定速度まで減速し、その後、前記実速度が振動した場合に、引き込まれが発生したと判断する引き込まれ判断手段と、を備える。
【解決手段】
前記トルク指令が所定の閾値を超えると、前記モータが過負荷状態にあると判断し、前記速度指令値を所定値まで下げるモータ負荷検出手段と、前記戸の開動作中に、前記モータ負荷検出手段により前記モータが過負荷状態にあると判断され、その後、前記実速度が所定速度まで減速し、その後、前記実速度が振動した場合に、引き込まれが発生したと判断する引き込まれ判断手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの戸を開閉する戸装置と、エレベータの戸の開閉を制御するエレベータ戸制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ扉の開閉制御装置として、エレベータ扉の開動作中に、トルク指令値がトルク制限値以上になったときに引き込まれが発生したと判断し、引き込まれた物を引き出すための反転動作を行うものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−149488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、実際のエレベータ扉の開閉方向の速度に基づき引き込まれの判断をしていないため、実際には引き込まれが発生していない場合や一旦引き込まれが発生したがその後復旧した場合も、反転動作を行ってしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明におけるエレベータの戸制御装置は、エレベータの戸または前記戸を駆動するモータの回転軸の速度指令値を出力する速度指令値出力手段と、前記モータの回転角度に基づき前記戸または前記モータの回転軸の実速度を出力する実速度出力手段と、前記速度指令値と前記実速度との差を小さくするように前記モータに対するトルク指令を出力する速度制御手段と、前記トルク指令に基づき前記モータを駆動するモータ駆動手段と、
前記トルク指令が所定の閾値を超えると、前記モータが過負荷状態にあると判断し、前記速度指令値を所定値まで下げるモータ負荷検出手段と、前記戸の開動作中に、前記モータ負荷検出手段により前記モータが過負荷状態にあると判断され、その後、前記実速度が所定速度まで減速し、その後、前記実速度が振動した場合に、引き込まれが発生したと判断する引き込まれ判断手段と、を備える。
【0006】
また、本発明におけるエレベータの戸装置は、エレベータの戸と、前記戸を駆動するモータと、前記モータの回転角度に基づき前記モータを駆動する上記の戸制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、引き込まれが発生したか否かの判断を戸速度の帰還信号に基づき行うため、別途装置を用いることなく、精度の良い判断をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1におけるエレベータの戸装置を示す図である。
【図2】実施の形態1における戸制御装置を示す機能ブロック図である。
【図3】実施の形態1におけるエレベータの戸装置の通常時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。
【図4】実施の形態1におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。
【図5】実施の形態1における戸制御装置が行う引き込まれ判断に関する処理を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態2における戸制御装置を示す機能ブロック図である。
【図7】実施の形態2におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時および反転動作時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。
【図8】実施の形態2における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態3における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態4における戸制御装置を示す機能ブロック図である。
【図11】実施の形態4におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時および反転動作時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。
【図12】実施の形態4における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0009】
9 モータ
10 戸制御装置
11 戸
23 記憶部
24 戸速度検出部
25 モータ負荷検出部
26 戸駆動制御部
27 引き込まれ判断部
30 反転動作時トルク指令部
31 反転動作時速度指令部
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
まず、図1と図2を参照して、本発明の実施の形態1におけるエレベータの戸装置の構成を説明する。図1は、実施の形態1におけるエレベータの戸装置を示す図である。図示しないかご出入口の上縁部には、水平方向に桁3が設けられている。桁3には、案内レール4が水平方向に設けられている。かご出入口を開閉する一対の戸パネル1a、1bの上端には、一対の懸架部材2a、2bが設けられている。一対の懸架部材2a、2bには、レール4に案内されて転動される複数のハンガローラ5が設けられている。なお、一対の戸11は、一対のかご側の戸パネル1a、1b、一対のかご側の懸架部材2a、2b、図示しない一対の乗場側の戸パネル、および図示しない一対の乗場側の懸架部材とからなる。そして、一対の戸11の開閉動作は、かごが各階床に停止する毎に、一対のかご側の戸パネル1a、1bが一対の乗場側の戸パネルを把持することにより、これらが一体的に行うものである。
【0011】
桁3には、駆動プーリ6aと従動プーリ6bとが一対の戸11の開閉方向に互いに間隔をおいて設けられている。駆動プーリ6aと従動プーリ6bとには、無端状をなすベルト7が巻き掛けられて張設されている。戸制御装置10は、かごが各階床に停止する毎に、モータ9を駆動するための電流を制御することにより、後述する速度指令値V*に則った一対の戸11の開閉を行う。駆動プーリ6aは、モータ9が駆動することにより回転される。駆動プーリ6aが回転すると、ベルト7が循環動作し、従動プーリ6bが回転される。
【0012】
一対の懸架部材2aおよび2bは、ベルト7の循環動作により一対の戸11が互いに反対方向へ移動するように、一対の連結部材8aおよび8bを介してそれぞれベルト7の上側部分および下側部分に連結されている。
【0013】
図2は、実施の形態1における戸制御装置を示す機能ブロック図である。破線にて示す戸制御装置10は、パルスカウント部21、戸位置検出部22、記憶部23、戸速度検出部24、モータ負荷検出部25、戸駆動制御部26、引き込まれ判断部27、入出力ポート28を備える。なお、戸制御装置10は、たとえばエレベータ制御盤の中に格納される。
【0014】
パルスエンコーダ20は、モータ9に取り付けられるとともに、モータ9の回転をパルスに変換し、変換したパルスを出力する。
【0015】
パルスカウント部21は、パルスエンコーダ20が出力するパルスの数をカウントし、カウントしたパルス数値を出力する。
【0016】
戸位置検出部22は、パルスカウント部21が出力するパルス数値に基づき、戸11の開閉方向の位置を求め、求めた戸11の位置W1を出力する。
【0017】
戸速度検出部24は、パルスカウント部21が出力するパルス数値に基づき、戸11の開閉方向の速度を求め、求めた戸11の実速度W21を出力する。
【0018】
記憶部23は、予め設定された複数の速度指令値W11、後述する閾値L1、L2、L3などの各種データ、および戸開閉制御のためのプログラムなどを記憶する。この複数の速度指令値W11は、それぞれが戸11の位置W1に対応しており、戸11の開閉動作の速度を指令する速度パターンを構成するものである。なお、複数の速度指令値W11は、戸11の位置W1に対応する代わりに、戸11の開動作または閉動作の開始時点からの経過時間に対応するものでもよい。
【0019】
また、記憶部23が記憶するプログラムは、図示しない中央処理装置により実行されることによって、戸位置検出部22、戸速度検出部24、モータ負荷検出部25、戸駆動制御部26、および引き込まれ判断部27を実現する。
【0020】
また、記憶部23は、一時的に位置W1、実速度W21、トルク指令値W31なども記憶する。なお、記憶部23は、例えばランダム・アクセス・メモリ(RAM:Random Access Memory)およびリード・オンリ・メモリ(ROM:Read Only Memory)などから構成される。
【0021】
モータ負荷検出部25は、戸位置検出部22が出力する戸11の位置W1に基づき、記憶部23が記憶する複数の速度指令値W11の中から1つを選択し、選択した速度指令値W11と戸速度検出部24が出力する戸11の実速度W21との偏差に基づき、実速度W21が速度指令値W11に追従すべく、トルク指令値W31を出力する。さらに、モータ負荷検出部25は、後述するように、出力したトルク指令値W31と記憶部23が記憶する閾値L1とを比較し、トルク指令値W31が閾値L1以上である場合、速度指令値W11を零に変更する。
【0022】
戸駆動制御部26は、入出力ポート28を介してエレベータ制御装置29から入力される制御指令とモータ負荷検出部25が出力するトルク指令値W31とに基づき、モータ9へ駆動指令を出力する。ここで、エレベータ制御装置29は、エレベータ号機の全体の制御を行う。
【0023】
引き込まれ判断部27は、引き込まれが発生したか否かを判断する。ここで、引き込まれとは、戸11の開動作中に、物やエレベータ乗場またはかご内にいる乗客の指などが、戸11と出入口との間の隙間である戸袋に引き込まれた状態を意味する。
【0024】
つぎに、図3を参照して、実施の形態1におけるエレベータの戸装置の通常時における戸の駆動制御について説明する。図3は、実施の形態1におけるエレベータの戸装置の通常時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。ここで、通常時とは、引き込まれが発生していない時を意味する。図3(a)において、横軸は時間、縦軸は戸11の開閉方向の速度を表す。図3(a)における実線は速度指令値W11、破線は実速度W21を示す。図3(a)の横軸において、t0は速度指令値W11における戸11の全閉時点、taは速度指令値W11における戸11の全開時点を示す。図3(a)の縦軸において、戸11の開方向の速度を正方向とする。
【0025】
図3(a)に示すように、速度指令値W11は、戸11の全閉時点t0から、かご側の戸パネル1a、1bが乗場側の戸パネルを把持するまでの所定時間が経過した後、一定の傾きにて増加する。その後、速度指令値W11は一定値を保持し、その後、一定の傾きにて減少する。その後、速度指令値W11は、全開時点taまで一定値を保持する。そして、全開時点taの後、速度指令値W11は、零となるまで一定の傾きにて減少する。
【0026】
一方、図3(b)において、横軸は時間、縦軸はトルクを示す。図3(b)における実線はトルク指令値W31を示す。図3(b)の横軸において、図3(a)と同様、t0は速度指令値W11における戸11の全閉時点、taは速度指令値W11における戸11の全開時点を示す。図3(b)の縦軸において、戸11の開方向のトルクを正方向とする。
【0027】
トルク指令値W31は、前述のモータ負荷検出部25により、戸11の実速度W21を速度指令値W11に追従させるべく、速度指令値W11と実速度W21との偏差に基づき出力される。従って、図3(b)に示すように、速度指令値W11が増加する間、トルク指令値W31は正の値をとるとともに、トルク指令値W31の波形は正方向に凸となる。また、速度指令値W31が一定値をとる間、トルク指令値W31は略零となる。また、速度指令値W11が減少する間、トルク指令値W31は負の値をとるとともに、トルク指令値W31の波形は負方向に凸となる。
【0028】
つぎに、図4を参照して、実施の形態1におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時における戸の駆動制御について説明する。図4は、実施の形態1におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。図4(a)、図4(b)は、それぞれ図3(a)、図3(b)に対応する。まず、速度指令値W11における戸11の全閉時点t0から引き込まれが開始した時点t1までの間、戸11の速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31は、図3(a)、図3(b)と同様である。
【0029】
引き込まれ開始時点t1の後、速度指令値W11は一定値を保持する一方、実速度W21は減少し、時点t3にて略零となる。ここで、図4(a)の点線にて示す速度指令値W11の延長線のように、仮に速度指令値W11が引き込まれ開始時点t1以後にて延々と大きな値を一定に保持した場合、トルク指令値W32は、図4(b)の点線にて示すように、さらに値が増大するため、引き込まれを助長することとなる。そこで、前述のモータ負荷検出部25は、トルク指令値W31が所定の閾値L1に達した時点t2にて、モータ9が過負荷状態にあると判断し、その後、速度指令値W11を零に変更する。
【0030】
速度指令値W11が零に変更された後、トルク指令値W31は、実速度W21が略零となった時点t3から、略零となる。その後、実速度W21は、時点t4から略零を中心とする開・閉方向の振動を開始する。この振動は、引き込まれた物や乗客の指などを引き出そうとする外部の力により発生するものである。
【0031】
つぎに、実施の形態1における戸制御装置10が行う引き込まれの判断方法について、図5を参照して説明する。図5は、実施の形態1における戸制御装置が行う引き込まれ判断に関する処理を示すフローチャートである。
【0032】
まず、戸制御装置10は、戸11が開動作中であるか否かを判断する(ステップS100)。S100にて、開動作中でない場合、所定時間経過後に再びS100を行う。一方、S100にて、戸11が開動作中である場合、引き込まれの1つ目の条件を満たしたと判断し、つぎに、戸制御装置10は、トルク指令値W31が閾値L1以上であるか否かを判断する(ステップS101)。S101にて、トルク指令値W31が閾値L1未満である場合、S100へ戻る。
【0033】
一方、S101にて、トルク指令値W31が所定の閾値L1以上である場合、引き込まれの2つ目の条件を満たしたと判断し、つぎに、戸制御装置10は、速度指令値W11を零とする(ステップS102)。このように、速度指令値W11を下げることにより、引き込まれた物に与えられる力が小さくなるため、引き込まれた物などを自力で引き出しやすくすることができる。
【0034】
つぎに、戸制御装置10は、戸11の実速度W21が略零となったか否かを判断する(ステップS103)。ここで、戸制御装置10は、たとえば実速度W21の絶対値が所定値未満となったか否かを判断する。S103にて、実速度W21が略零でない場合は、S100へ戻る。
【0035】
一方、S103にて、実速度W21が略零となった場合、引き込まれの3つ目の条件を満たしたと判断し、つぎに、戸制御装置10は、実速度W21と正の値である所定の閾値L2と負の値である所定の閾値L3とに基づき、実速度W21が略零を中心に開・閉方向に振動したか否かを判断する(ステップS104)。ここで、戸制御装置10は、たとえば所定時間内に実速度W21が閾値L2および閾値L3を越えた回数が所定の回数を超えたとき、実速度W21が振動したと判断する。S104にて、実速度W21が略零を中心に開・閉方向に振動しなかった場合、S100へ戻る。
【0036】
一方、S104にて、実速度W21が略零を中心に開・閉方向に振動した場合、引き込まれの4つ目の条件を満たしたと判断し、つぎに、戸制御装置10は、引き込まれが発生したと判断し(ステップS105)、その後、S100へ戻る。なお、S105にて引き込まれが発生したと判断した時点をt5として図4に示す。
【0037】
なお、図5におけるS100およびS103〜105は引き込まれ判断部27により行われ、S101〜S102はモータ負荷検出部25により行われる。
【0038】
なお、図5におけるS102にて、戸制御装置10は、速度指令値W11を零とするが、速度指令値W11を下げる限り、零以外の値に変更してもよい。
【0039】
実施の形態1によれば、引き込まれが発生したか否かの判断を戸速度の帰還信号に基づき行うため、別途装置を用いることなく、精度の良い判断をすることができる。
【0040】
実施の形態2.
図6〜図8を参照して、実施の形態2について説明する。
【0041】
まず、実施の形態2におけるエレベータの戸装置の構成は、実施の形態1における図1に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0042】
つぎに、図6は、実施の形態2における戸制御装置を示す機能ブロック図である。この図6は、実施の形態1における図2に相当するものである。図2との差異は、反転動作時トルク指令部30を備えていることである。その他の構成については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
反転動作時トルク指令部30は、引き込まれ判断部27にて引き込まれが発生したと判断された場合、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間にてモータ負荷検出部27により出力されたトルク指令値W31に基づき、反転動作時にて所定時間毎にトルク指令値W31を出力する。
【0044】
つぎに、図7を参照して、実施の形態2におけるエレベータの戸装置の反転動作時における戸の駆動制御について説明する。図7は、実施の形態2におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時および反転動作時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。実施の形態2における図7の波形のうち、速度指令値W11における戸11の全閉時点t0から引き込まれが発生したと判断された時点t5までの波形は、実施の形態1における図4と同様である。
【0045】
引き込まれが発生したと判断された時点t5の後、速度指令値W11、トルク指令値W31、および実速度W21は略零にて保持される。実速度W21は、後述するように、たとえばエレベータかご内にて戸11を動かさないように乗客等に向けてアナウンスすることにより略零にて保持される。
【0046】
つぎに、時点t6から時点t7までの間は、引き込まれた物などを引き出すべく、反転動作が行われる。ここで、速度指令値W11は零にて保持される一方で、トルク指令値W31の波形は、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間のトルク指令値W31の波形を上下左右に反転させた形状と略同じとなる。なお、図7には、反転動作開始時点t6から反転動作完了時点t7までの間における実速度W21を図示していない。
【0047】
つぎに、実施の形態2における戸制御装置10が行う反転動作に関する処理について、図8を参照して説明する。図8は、実施の形態2における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【0048】
まず、戸制御装置10は、戸11が開動作中であるか否かを判断する(ステップS200)。S200にて、開動作中でない場合、所定時間経過後に再びS200を行う。一方、S200にて、戸11が開動作中である場合、つぎに、戸制御装置10は、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間、所定時間毎にトルク指令値W31を記憶部23にて記憶する(ステップS201)。ここで、引き込まれが開始した時点t1は、たとえば実速度W21が速度指令値W11に追従しなくなった時点として認定する。また、実速度W21が速度指令値W11に追従しなくなった時点としては、たとえば実速度W21の傾きが負の方向に所定値より大きくなった時点や、実速度W21の傾きと速度指令値W11の傾きとの差が所定値より大きくなった時点などを認定することができる。
【0049】
つぎに、戸制御装置10は、引き込まれが発生したか否かを判断する(ステップS202)。ここで、引き込まれが発生したか否かの判断は、実施の形態1における図5に示す方法により行う。S202にて、引き込まれが発生していない場合、S201にて記憶した所定時間毎のトルク指令値を記憶部23から削除し(ステップS203)、その後、S200に戻る。
【0050】
一方、S202にて、引き込まれが発生した場合、つぎに、戸制御装置10は、かご内やエレベータ乗場の乗客に向けて、戸11を振動させないようにアナウンスする(ステップS204)。
【0051】
つぎに、戸制御装置10は、戸11の実速度W21が略零となったか否かを判断する(ステップS205)。ここで、戸制御装置10は、たとえば実速度W21の絶対値が所定値未満となったか否かを判断する。S205にて、実速度W21が略零でない場合は、所定時間経過後、再度S205を行う。
【0052】
一方、S205にて、実速度W21が略零となった場合、つぎに、戸制御装置10は、S201にて記憶した所定時間毎のトルク指令値W31の正負符号が逆となるように変換するとともに、変換した値を、S201にて記憶した順番とは逆の順番で、トルク指令値W31として所定時間毎に出力する(ステップS206)。なお、S206にてトルク指令値W31の出力が完了した時点をt7として図7に示す。
【0053】
なお、図8におけるS201およびS203〜206は反転動作時トルク指令部30により行われ、S200およびS202は引き込まれ判断部27により行われる。
【0054】
また、図8におけるS201とS202は、互いに独立に並行して行ってもよい。
【0055】
実施の形態2によれば、実施の形態1の効果に加えて、反転動作時に、引き込まれた物などに対して一旦加えられた力と同等の大きさの力を、逆の順番で、かつ反対方向に加えることにより、自力で引き出す力を要さずに、引き込まれた物などを引き出すことができる。
【0056】
実施の形態3.
図9を参照して、実施の形態3について説明する。
【0057】
まず、実施の形態3におけるエレベータの戸装置の構成は、実施の形態1における図1に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0058】
つぎに、実施の形態3におけるエレベータの戸制御装置の構成は、反転動作時トルク指令部30以外の部分について、実施の形態2における図6に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0059】
実施の形態3における反転動作時トルク指令部30は、反転動作時にて所定距離毎にトルク指令値W31を出力する点で実施の形態2と異なる。
【0060】
つぎに、実施の形態3におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図は、戸11の全閉時点t0から反転動作開始時点t6までの間の部分において、実施の形態2における図7に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0061】
一方、反転動作開始時点t6から反転動作完了時点t7までの間、トルク指令値W31のは、所定時間毎に出力されたものではなく、所定距離毎に出力されたものである。
【0062】
つぎに、実施の形態3における戸制御装置10が行う反転動作に関する処理について、図9を参照して説明する。図9は、実施の形態3における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【0063】
まず、図9のS300、S302〜S305は、それぞれ実施の形態2における図8のS200、S202〜S205と同様であり、その説明を省略する。以降、実施の形態2と異なる部分であるS301とS306について説明する。
【0064】
S301では、戸制御装置10は、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間、戸11の開閉方向の所定距離毎にトルク指令値W31を記憶部23にて記憶する(ステップS301)。ここで、引き込まれが開始した時点t1は、たとえば実速度W21が速度指令値W11に追従しなくなった時点として認定する。
【0065】
S306では、戸制御装置10は、S301にて記憶した所定距離毎のトルク指令値W31の正負符号が逆となるように変換するとともに、変換したトルク指令値W31を、S301にて記憶した順番とは逆の順番で、所定距離毎に出力する(ステップS306)。
【0066】
なお、図9におけるS301およびS303〜306は反転動作時トルク指令部30により行われる。
【0067】
たとえば、戸袋の中のある位置に何らかの突起が存在する場合など、戸11の開閉方向の位置によっては、引き込まれた物に対して比較的大きな力を与えて引き出す必要がある場合がある。しかし、時間に基づくトルク指令値を出力する実施の形態2では、戸11と乗客との接触などの外乱により、引き込まれ発生時に出力するトルク指令値と反転動作時に出力するトルク指令値とが、戸11の開閉方向の位置においてずれるおそれがある。この場合、突起が存在する位置などにて、充分大きな力を与えることができないおそれがある。
【0068】
したがって、実施の形態3によれば、反転動作時に、位置に基づきトルク指令値を出力することにより、実施の形態2の効果に加えて、引き込まれ発生時または反転動作時に外乱がある場合でも、引き込まれた物などに対して引き込まれ発生時に与えられた力と同等の大きさの力を、反転動作時にて与えることができる。
【0069】
実施の形態4.
図10〜図12を参照して、実施の形態4について説明する。
【0070】
まず、実施の形態4におけるエレベータの戸装置の構成は、実施の形態1における図1に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0071】
つぎに、図10は、実施の形態4における戸制御装置を示す機能ブロック図である。この図10は、実施の形態2における図6に相当するものである。図6との差異は、反転動作時トルク指令部30の代わりに反転動作時速度指令部31を備えていることである。その他の構成については、実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。
【0072】
反転動作時速度指令部31は、引き込まれ判断部27にて引き込まれが発生したと判断された場合、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間にて戸速度検出部24が出力した戸11の実速度W21に基づき、反転動作時にて所定距離毎に速度指令値W11を出力する。
【0073】
つぎに、図11を参照して、実施の形態4におけるエレベータの戸装置の反転動作時における戸の駆動制御について説明する。図11は、実施の形態4におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時および反転動作時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。実施の形態4における図11の波形のうち、戸11の全閉時点t0から反転動作開始時点t6までの間の部分において、実施の形態2における図7に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0074】
一方、反転動作開始時点t6から反転動作完了時点t7までの間における速度指令値W11の波形は、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間の実速度W21の波形を上下左右に反転させた形状と略同じとなる。なお、図7には、反転動作開始時点t6から反転動作完了時点t7までの間における実速度W21を図示していない。また、反転動作開始時点t6から反転動作完了時点t7までの間におけるトルク指令値W31は、モータ負荷検出部25により、反転動作時速度指令部31が出力する速度指令値W11と実速度W21との偏差に基づき、実速度W21が速度指令値W11に追従すべく出力される。
【0075】
つぎに、実施の形態4における戸制御装置10が行う反転動作に関する処理について、図12を参照して説明する。図12は、実施の形態4における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【0076】
まず、図12のS400、S402〜S405は、それぞれ実施の形態2における図8のS200、S202〜S205と同様であり、その説明を省略する。以降、実施の形態2と異なる部分であるS401とS406について説明する。
【0077】
S401では、戸制御装置10は、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間、戸11の開閉方向の所定距離毎に実速度W21を記憶部23にて記憶する(ステップS401)。ここで、引き込まれが開始した時点t1は、たとえば実速度W21が速度指令値W11に追従しなくなった時点として認定する。
【0078】
S406では、戸制御装置10は、S401にて記憶した所定距離毎の速度指令値W11の正負符号が逆となるように変換するとともに、変換した速度指令値W11を、S401にて記憶した順番とは逆の順番で、所定距離毎に出力する(ステップS406)。
【0079】
なお、図12におけるS401およびS403〜406は反転動作時速度指令部31により行われる。
【0080】
また、実施の形態4では、反転動作時に、位置に基づく速度指令値を出力するが、代わりに、時間に基づく速度指令値を出力するようにしてもよい。
【0081】
実施の形態4によれば、引き込まれ発生時における戸の開閉方向の実際の速度に基づき、反転動作時に、位置に基づく速度指令値を出力することができる。これにより、実施の形態3の効果に加えて、外乱などにより引き込まれ発生時の実際の速度と速度指令値とが大きく異なる場合でも、引き込まれた物などに対して引き込まれ発生時に与えられた力と同等の大きさの力を、反転動作時にて与えることができる。
【0082】
なお、実施の形態1〜4において、記憶部23は速度指令値出力手段に相当し、戸速度検出部24は実速度出力手段に相当し、モータ負荷検出部25は速度制御手段とモータ負荷検出手段に相当し、戸駆動制御部26はモータ駆動手段に相当し、引き込まれ判断部27は引き込まれ判断手段に相当する。また、反転動作時トルク指令部30はトルク指令記憶手段と反転動作時トルク指令手段に相当し、反転動作時速度指令部31は実速度記憶手段と反転動作時速度指令手段に相当する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの戸を開閉する戸装置と、エレベータの戸の開閉を制御するエレベータ戸制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ扉の開閉制御装置として、エレベータ扉の開動作中に、トルク指令値がトルク制限値以上になったときに引き込まれが発生したと判断し、引き込まれた物を引き出すための反転動作を行うものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−149488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、実際のエレベータ扉の開閉方向の速度に基づき引き込まれの判断をしていないため、実際には引き込まれが発生していない場合や一旦引き込まれが発生したがその後復旧した場合も、反転動作を行ってしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明におけるエレベータの戸制御装置は、エレベータの戸または前記戸を駆動するモータの回転軸の速度指令値を出力する速度指令値出力手段と、前記モータの回転角度に基づき前記戸または前記モータの回転軸の実速度を出力する実速度出力手段と、前記速度指令値と前記実速度との差を小さくするように前記モータに対するトルク指令を出力する速度制御手段と、前記トルク指令に基づき前記モータを駆動するモータ駆動手段と、
前記トルク指令が所定の閾値を超えると、前記モータが過負荷状態にあると判断し、前記速度指令値を所定値まで下げるモータ負荷検出手段と、前記戸の開動作中に、前記モータ負荷検出手段により前記モータが過負荷状態にあると判断され、その後、前記実速度が所定速度まで減速し、その後、前記実速度が振動した場合に、引き込まれが発生したと判断する引き込まれ判断手段と、を備える。
【0006】
また、本発明におけるエレベータの戸装置は、エレベータの戸と、前記戸を駆動するモータと、前記モータの回転角度に基づき前記モータを駆動する上記の戸制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、引き込まれが発生したか否かの判断を戸速度の帰還信号に基づき行うため、別途装置を用いることなく、精度の良い判断をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1におけるエレベータの戸装置を示す図である。
【図2】実施の形態1における戸制御装置を示す機能ブロック図である。
【図3】実施の形態1におけるエレベータの戸装置の通常時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。
【図4】実施の形態1におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。
【図5】実施の形態1における戸制御装置が行う引き込まれ判断に関する処理を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態2における戸制御装置を示す機能ブロック図である。
【図7】実施の形態2におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時および反転動作時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。
【図8】実施の形態2における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態3における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態4における戸制御装置を示す機能ブロック図である。
【図11】実施の形態4におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時および反転動作時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。
【図12】実施の形態4における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0009】
9 モータ
10 戸制御装置
11 戸
23 記憶部
24 戸速度検出部
25 モータ負荷検出部
26 戸駆動制御部
27 引き込まれ判断部
30 反転動作時トルク指令部
31 反転動作時速度指令部
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
まず、図1と図2を参照して、本発明の実施の形態1におけるエレベータの戸装置の構成を説明する。図1は、実施の形態1におけるエレベータの戸装置を示す図である。図示しないかご出入口の上縁部には、水平方向に桁3が設けられている。桁3には、案内レール4が水平方向に設けられている。かご出入口を開閉する一対の戸パネル1a、1bの上端には、一対の懸架部材2a、2bが設けられている。一対の懸架部材2a、2bには、レール4に案内されて転動される複数のハンガローラ5が設けられている。なお、一対の戸11は、一対のかご側の戸パネル1a、1b、一対のかご側の懸架部材2a、2b、図示しない一対の乗場側の戸パネル、および図示しない一対の乗場側の懸架部材とからなる。そして、一対の戸11の開閉動作は、かごが各階床に停止する毎に、一対のかご側の戸パネル1a、1bが一対の乗場側の戸パネルを把持することにより、これらが一体的に行うものである。
【0011】
桁3には、駆動プーリ6aと従動プーリ6bとが一対の戸11の開閉方向に互いに間隔をおいて設けられている。駆動プーリ6aと従動プーリ6bとには、無端状をなすベルト7が巻き掛けられて張設されている。戸制御装置10は、かごが各階床に停止する毎に、モータ9を駆動するための電流を制御することにより、後述する速度指令値V*に則った一対の戸11の開閉を行う。駆動プーリ6aは、モータ9が駆動することにより回転される。駆動プーリ6aが回転すると、ベルト7が循環動作し、従動プーリ6bが回転される。
【0012】
一対の懸架部材2aおよび2bは、ベルト7の循環動作により一対の戸11が互いに反対方向へ移動するように、一対の連結部材8aおよび8bを介してそれぞれベルト7の上側部分および下側部分に連結されている。
【0013】
図2は、実施の形態1における戸制御装置を示す機能ブロック図である。破線にて示す戸制御装置10は、パルスカウント部21、戸位置検出部22、記憶部23、戸速度検出部24、モータ負荷検出部25、戸駆動制御部26、引き込まれ判断部27、入出力ポート28を備える。なお、戸制御装置10は、たとえばエレベータ制御盤の中に格納される。
【0014】
パルスエンコーダ20は、モータ9に取り付けられるとともに、モータ9の回転をパルスに変換し、変換したパルスを出力する。
【0015】
パルスカウント部21は、パルスエンコーダ20が出力するパルスの数をカウントし、カウントしたパルス数値を出力する。
【0016】
戸位置検出部22は、パルスカウント部21が出力するパルス数値に基づき、戸11の開閉方向の位置を求め、求めた戸11の位置W1を出力する。
【0017】
戸速度検出部24は、パルスカウント部21が出力するパルス数値に基づき、戸11の開閉方向の速度を求め、求めた戸11の実速度W21を出力する。
【0018】
記憶部23は、予め設定された複数の速度指令値W11、後述する閾値L1、L2、L3などの各種データ、および戸開閉制御のためのプログラムなどを記憶する。この複数の速度指令値W11は、それぞれが戸11の位置W1に対応しており、戸11の開閉動作の速度を指令する速度パターンを構成するものである。なお、複数の速度指令値W11は、戸11の位置W1に対応する代わりに、戸11の開動作または閉動作の開始時点からの経過時間に対応するものでもよい。
【0019】
また、記憶部23が記憶するプログラムは、図示しない中央処理装置により実行されることによって、戸位置検出部22、戸速度検出部24、モータ負荷検出部25、戸駆動制御部26、および引き込まれ判断部27を実現する。
【0020】
また、記憶部23は、一時的に位置W1、実速度W21、トルク指令値W31なども記憶する。なお、記憶部23は、例えばランダム・アクセス・メモリ(RAM:Random Access Memory)およびリード・オンリ・メモリ(ROM:Read Only Memory)などから構成される。
【0021】
モータ負荷検出部25は、戸位置検出部22が出力する戸11の位置W1に基づき、記憶部23が記憶する複数の速度指令値W11の中から1つを選択し、選択した速度指令値W11と戸速度検出部24が出力する戸11の実速度W21との偏差に基づき、実速度W21が速度指令値W11に追従すべく、トルク指令値W31を出力する。さらに、モータ負荷検出部25は、後述するように、出力したトルク指令値W31と記憶部23が記憶する閾値L1とを比較し、トルク指令値W31が閾値L1以上である場合、速度指令値W11を零に変更する。
【0022】
戸駆動制御部26は、入出力ポート28を介してエレベータ制御装置29から入力される制御指令とモータ負荷検出部25が出力するトルク指令値W31とに基づき、モータ9へ駆動指令を出力する。ここで、エレベータ制御装置29は、エレベータ号機の全体の制御を行う。
【0023】
引き込まれ判断部27は、引き込まれが発生したか否かを判断する。ここで、引き込まれとは、戸11の開動作中に、物やエレベータ乗場またはかご内にいる乗客の指などが、戸11と出入口との間の隙間である戸袋に引き込まれた状態を意味する。
【0024】
つぎに、図3を参照して、実施の形態1におけるエレベータの戸装置の通常時における戸の駆動制御について説明する。図3は、実施の形態1におけるエレベータの戸装置の通常時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。ここで、通常時とは、引き込まれが発生していない時を意味する。図3(a)において、横軸は時間、縦軸は戸11の開閉方向の速度を表す。図3(a)における実線は速度指令値W11、破線は実速度W21を示す。図3(a)の横軸において、t0は速度指令値W11における戸11の全閉時点、taは速度指令値W11における戸11の全開時点を示す。図3(a)の縦軸において、戸11の開方向の速度を正方向とする。
【0025】
図3(a)に示すように、速度指令値W11は、戸11の全閉時点t0から、かご側の戸パネル1a、1bが乗場側の戸パネルを把持するまでの所定時間が経過した後、一定の傾きにて増加する。その後、速度指令値W11は一定値を保持し、その後、一定の傾きにて減少する。その後、速度指令値W11は、全開時点taまで一定値を保持する。そして、全開時点taの後、速度指令値W11は、零となるまで一定の傾きにて減少する。
【0026】
一方、図3(b)において、横軸は時間、縦軸はトルクを示す。図3(b)における実線はトルク指令値W31を示す。図3(b)の横軸において、図3(a)と同様、t0は速度指令値W11における戸11の全閉時点、taは速度指令値W11における戸11の全開時点を示す。図3(b)の縦軸において、戸11の開方向のトルクを正方向とする。
【0027】
トルク指令値W31は、前述のモータ負荷検出部25により、戸11の実速度W21を速度指令値W11に追従させるべく、速度指令値W11と実速度W21との偏差に基づき出力される。従って、図3(b)に示すように、速度指令値W11が増加する間、トルク指令値W31は正の値をとるとともに、トルク指令値W31の波形は正方向に凸となる。また、速度指令値W31が一定値をとる間、トルク指令値W31は略零となる。また、速度指令値W11が減少する間、トルク指令値W31は負の値をとるとともに、トルク指令値W31の波形は負方向に凸となる。
【0028】
つぎに、図4を参照して、実施の形態1におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時における戸の駆動制御について説明する。図4は、実施の形態1におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。図4(a)、図4(b)は、それぞれ図3(a)、図3(b)に対応する。まず、速度指令値W11における戸11の全閉時点t0から引き込まれが開始した時点t1までの間、戸11の速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31は、図3(a)、図3(b)と同様である。
【0029】
引き込まれ開始時点t1の後、速度指令値W11は一定値を保持する一方、実速度W21は減少し、時点t3にて略零となる。ここで、図4(a)の点線にて示す速度指令値W11の延長線のように、仮に速度指令値W11が引き込まれ開始時点t1以後にて延々と大きな値を一定に保持した場合、トルク指令値W32は、図4(b)の点線にて示すように、さらに値が増大するため、引き込まれを助長することとなる。そこで、前述のモータ負荷検出部25は、トルク指令値W31が所定の閾値L1に達した時点t2にて、モータ9が過負荷状態にあると判断し、その後、速度指令値W11を零に変更する。
【0030】
速度指令値W11が零に変更された後、トルク指令値W31は、実速度W21が略零となった時点t3から、略零となる。その後、実速度W21は、時点t4から略零を中心とする開・閉方向の振動を開始する。この振動は、引き込まれた物や乗客の指などを引き出そうとする外部の力により発生するものである。
【0031】
つぎに、実施の形態1における戸制御装置10が行う引き込まれの判断方法について、図5を参照して説明する。図5は、実施の形態1における戸制御装置が行う引き込まれ判断に関する処理を示すフローチャートである。
【0032】
まず、戸制御装置10は、戸11が開動作中であるか否かを判断する(ステップS100)。S100にて、開動作中でない場合、所定時間経過後に再びS100を行う。一方、S100にて、戸11が開動作中である場合、引き込まれの1つ目の条件を満たしたと判断し、つぎに、戸制御装置10は、トルク指令値W31が閾値L1以上であるか否かを判断する(ステップS101)。S101にて、トルク指令値W31が閾値L1未満である場合、S100へ戻る。
【0033】
一方、S101にて、トルク指令値W31が所定の閾値L1以上である場合、引き込まれの2つ目の条件を満たしたと判断し、つぎに、戸制御装置10は、速度指令値W11を零とする(ステップS102)。このように、速度指令値W11を下げることにより、引き込まれた物に与えられる力が小さくなるため、引き込まれた物などを自力で引き出しやすくすることができる。
【0034】
つぎに、戸制御装置10は、戸11の実速度W21が略零となったか否かを判断する(ステップS103)。ここで、戸制御装置10は、たとえば実速度W21の絶対値が所定値未満となったか否かを判断する。S103にて、実速度W21が略零でない場合は、S100へ戻る。
【0035】
一方、S103にて、実速度W21が略零となった場合、引き込まれの3つ目の条件を満たしたと判断し、つぎに、戸制御装置10は、実速度W21と正の値である所定の閾値L2と負の値である所定の閾値L3とに基づき、実速度W21が略零を中心に開・閉方向に振動したか否かを判断する(ステップS104)。ここで、戸制御装置10は、たとえば所定時間内に実速度W21が閾値L2および閾値L3を越えた回数が所定の回数を超えたとき、実速度W21が振動したと判断する。S104にて、実速度W21が略零を中心に開・閉方向に振動しなかった場合、S100へ戻る。
【0036】
一方、S104にて、実速度W21が略零を中心に開・閉方向に振動した場合、引き込まれの4つ目の条件を満たしたと判断し、つぎに、戸制御装置10は、引き込まれが発生したと判断し(ステップS105)、その後、S100へ戻る。なお、S105にて引き込まれが発生したと判断した時点をt5として図4に示す。
【0037】
なお、図5におけるS100およびS103〜105は引き込まれ判断部27により行われ、S101〜S102はモータ負荷検出部25により行われる。
【0038】
なお、図5におけるS102にて、戸制御装置10は、速度指令値W11を零とするが、速度指令値W11を下げる限り、零以外の値に変更してもよい。
【0039】
実施の形態1によれば、引き込まれが発生したか否かの判断を戸速度の帰還信号に基づき行うため、別途装置を用いることなく、精度の良い判断をすることができる。
【0040】
実施の形態2.
図6〜図8を参照して、実施の形態2について説明する。
【0041】
まず、実施の形態2におけるエレベータの戸装置の構成は、実施の形態1における図1に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0042】
つぎに、図6は、実施の形態2における戸制御装置を示す機能ブロック図である。この図6は、実施の形態1における図2に相当するものである。図2との差異は、反転動作時トルク指令部30を備えていることである。その他の構成については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
反転動作時トルク指令部30は、引き込まれ判断部27にて引き込まれが発生したと判断された場合、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間にてモータ負荷検出部27により出力されたトルク指令値W31に基づき、反転動作時にて所定時間毎にトルク指令値W31を出力する。
【0044】
つぎに、図7を参照して、実施の形態2におけるエレベータの戸装置の反転動作時における戸の駆動制御について説明する。図7は、実施の形態2におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時および反転動作時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。実施の形態2における図7の波形のうち、速度指令値W11における戸11の全閉時点t0から引き込まれが発生したと判断された時点t5までの波形は、実施の形態1における図4と同様である。
【0045】
引き込まれが発生したと判断された時点t5の後、速度指令値W11、トルク指令値W31、および実速度W21は略零にて保持される。実速度W21は、後述するように、たとえばエレベータかご内にて戸11を動かさないように乗客等に向けてアナウンスすることにより略零にて保持される。
【0046】
つぎに、時点t6から時点t7までの間は、引き込まれた物などを引き出すべく、反転動作が行われる。ここで、速度指令値W11は零にて保持される一方で、トルク指令値W31の波形は、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間のトルク指令値W31の波形を上下左右に反転させた形状と略同じとなる。なお、図7には、反転動作開始時点t6から反転動作完了時点t7までの間における実速度W21を図示していない。
【0047】
つぎに、実施の形態2における戸制御装置10が行う反転動作に関する処理について、図8を参照して説明する。図8は、実施の形態2における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【0048】
まず、戸制御装置10は、戸11が開動作中であるか否かを判断する(ステップS200)。S200にて、開動作中でない場合、所定時間経過後に再びS200を行う。一方、S200にて、戸11が開動作中である場合、つぎに、戸制御装置10は、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間、所定時間毎にトルク指令値W31を記憶部23にて記憶する(ステップS201)。ここで、引き込まれが開始した時点t1は、たとえば実速度W21が速度指令値W11に追従しなくなった時点として認定する。また、実速度W21が速度指令値W11に追従しなくなった時点としては、たとえば実速度W21の傾きが負の方向に所定値より大きくなった時点や、実速度W21の傾きと速度指令値W11の傾きとの差が所定値より大きくなった時点などを認定することができる。
【0049】
つぎに、戸制御装置10は、引き込まれが発生したか否かを判断する(ステップS202)。ここで、引き込まれが発生したか否かの判断は、実施の形態1における図5に示す方法により行う。S202にて、引き込まれが発生していない場合、S201にて記憶した所定時間毎のトルク指令値を記憶部23から削除し(ステップS203)、その後、S200に戻る。
【0050】
一方、S202にて、引き込まれが発生した場合、つぎに、戸制御装置10は、かご内やエレベータ乗場の乗客に向けて、戸11を振動させないようにアナウンスする(ステップS204)。
【0051】
つぎに、戸制御装置10は、戸11の実速度W21が略零となったか否かを判断する(ステップS205)。ここで、戸制御装置10は、たとえば実速度W21の絶対値が所定値未満となったか否かを判断する。S205にて、実速度W21が略零でない場合は、所定時間経過後、再度S205を行う。
【0052】
一方、S205にて、実速度W21が略零となった場合、つぎに、戸制御装置10は、S201にて記憶した所定時間毎のトルク指令値W31の正負符号が逆となるように変換するとともに、変換した値を、S201にて記憶した順番とは逆の順番で、トルク指令値W31として所定時間毎に出力する(ステップS206)。なお、S206にてトルク指令値W31の出力が完了した時点をt7として図7に示す。
【0053】
なお、図8におけるS201およびS203〜206は反転動作時トルク指令部30により行われ、S200およびS202は引き込まれ判断部27により行われる。
【0054】
また、図8におけるS201とS202は、互いに独立に並行して行ってもよい。
【0055】
実施の形態2によれば、実施の形態1の効果に加えて、反転動作時に、引き込まれた物などに対して一旦加えられた力と同等の大きさの力を、逆の順番で、かつ反対方向に加えることにより、自力で引き出す力を要さずに、引き込まれた物などを引き出すことができる。
【0056】
実施の形態3.
図9を参照して、実施の形態3について説明する。
【0057】
まず、実施の形態3におけるエレベータの戸装置の構成は、実施の形態1における図1に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0058】
つぎに、実施の形態3におけるエレベータの戸制御装置の構成は、反転動作時トルク指令部30以外の部分について、実施の形態2における図6に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0059】
実施の形態3における反転動作時トルク指令部30は、反転動作時にて所定距離毎にトルク指令値W31を出力する点で実施の形態2と異なる。
【0060】
つぎに、実施の形態3におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図は、戸11の全閉時点t0から反転動作開始時点t6までの間の部分において、実施の形態2における図7に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0061】
一方、反転動作開始時点t6から反転動作完了時点t7までの間、トルク指令値W31のは、所定時間毎に出力されたものではなく、所定距離毎に出力されたものである。
【0062】
つぎに、実施の形態3における戸制御装置10が行う反転動作に関する処理について、図9を参照して説明する。図9は、実施の形態3における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【0063】
まず、図9のS300、S302〜S305は、それぞれ実施の形態2における図8のS200、S202〜S205と同様であり、その説明を省略する。以降、実施の形態2と異なる部分であるS301とS306について説明する。
【0064】
S301では、戸制御装置10は、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間、戸11の開閉方向の所定距離毎にトルク指令値W31を記憶部23にて記憶する(ステップS301)。ここで、引き込まれが開始した時点t1は、たとえば実速度W21が速度指令値W11に追従しなくなった時点として認定する。
【0065】
S306では、戸制御装置10は、S301にて記憶した所定距離毎のトルク指令値W31の正負符号が逆となるように変換するとともに、変換したトルク指令値W31を、S301にて記憶した順番とは逆の順番で、所定距離毎に出力する(ステップS306)。
【0066】
なお、図9におけるS301およびS303〜306は反転動作時トルク指令部30により行われる。
【0067】
たとえば、戸袋の中のある位置に何らかの突起が存在する場合など、戸11の開閉方向の位置によっては、引き込まれた物に対して比較的大きな力を与えて引き出す必要がある場合がある。しかし、時間に基づくトルク指令値を出力する実施の形態2では、戸11と乗客との接触などの外乱により、引き込まれ発生時に出力するトルク指令値と反転動作時に出力するトルク指令値とが、戸11の開閉方向の位置においてずれるおそれがある。この場合、突起が存在する位置などにて、充分大きな力を与えることができないおそれがある。
【0068】
したがって、実施の形態3によれば、反転動作時に、位置に基づきトルク指令値を出力することにより、実施の形態2の効果に加えて、引き込まれ発生時または反転動作時に外乱がある場合でも、引き込まれた物などに対して引き込まれ発生時に与えられた力と同等の大きさの力を、反転動作時にて与えることができる。
【0069】
実施の形態4.
図10〜図12を参照して、実施の形態4について説明する。
【0070】
まず、実施の形態4におけるエレベータの戸装置の構成は、実施の形態1における図1に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0071】
つぎに、図10は、実施の形態4における戸制御装置を示す機能ブロック図である。この図10は、実施の形態2における図6に相当するものである。図6との差異は、反転動作時トルク指令部30の代わりに反転動作時速度指令部31を備えていることである。その他の構成については、実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。
【0072】
反転動作時速度指令部31は、引き込まれ判断部27にて引き込まれが発生したと判断された場合、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間にて戸速度検出部24が出力した戸11の実速度W21に基づき、反転動作時にて所定距離毎に速度指令値W11を出力する。
【0073】
つぎに、図11を参照して、実施の形態4におけるエレベータの戸装置の反転動作時における戸の駆動制御について説明する。図11は、実施の形態4におけるエレベータの戸装置の引き込まれ発生時および反転動作時における速度指令値W11、実速度W21、およびトルク指令値W31の波形図である。実施の形態4における図11の波形のうち、戸11の全閉時点t0から反転動作開始時点t6までの間の部分において、実施の形態2における図7に示すものと同様であり、その説明を省略する。
【0074】
一方、反転動作開始時点t6から反転動作完了時点t7までの間における速度指令値W11の波形は、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間の実速度W21の波形を上下左右に反転させた形状と略同じとなる。なお、図7には、反転動作開始時点t6から反転動作完了時点t7までの間における実速度W21を図示していない。また、反転動作開始時点t6から反転動作完了時点t7までの間におけるトルク指令値W31は、モータ負荷検出部25により、反転動作時速度指令部31が出力する速度指令値W11と実速度W21との偏差に基づき、実速度W21が速度指令値W11に追従すべく出力される。
【0075】
つぎに、実施の形態4における戸制御装置10が行う反転動作に関する処理について、図12を参照して説明する。図12は、実施の形態4における戸制御装置が行う反転動作に関する処理を示すフローチャートである。
【0076】
まず、図12のS400、S402〜S405は、それぞれ実施の形態2における図8のS200、S202〜S205と同様であり、その説明を省略する。以降、実施の形態2と異なる部分であるS401とS406について説明する。
【0077】
S401では、戸制御装置10は、引き込まれが開始した時点t1から実速度W21が略零となった時点t3までの間、戸11の開閉方向の所定距離毎に実速度W21を記憶部23にて記憶する(ステップS401)。ここで、引き込まれが開始した時点t1は、たとえば実速度W21が速度指令値W11に追従しなくなった時点として認定する。
【0078】
S406では、戸制御装置10は、S401にて記憶した所定距離毎の速度指令値W11の正負符号が逆となるように変換するとともに、変換した速度指令値W11を、S401にて記憶した順番とは逆の順番で、所定距離毎に出力する(ステップS406)。
【0079】
なお、図12におけるS401およびS403〜406は反転動作時速度指令部31により行われる。
【0080】
また、実施の形態4では、反転動作時に、位置に基づく速度指令値を出力するが、代わりに、時間に基づく速度指令値を出力するようにしてもよい。
【0081】
実施の形態4によれば、引き込まれ発生時における戸の開閉方向の実際の速度に基づき、反転動作時に、位置に基づく速度指令値を出力することができる。これにより、実施の形態3の効果に加えて、外乱などにより引き込まれ発生時の実際の速度と速度指令値とが大きく異なる場合でも、引き込まれた物などに対して引き込まれ発生時に与えられた力と同等の大きさの力を、反転動作時にて与えることができる。
【0082】
なお、実施の形態1〜4において、記憶部23は速度指令値出力手段に相当し、戸速度検出部24は実速度出力手段に相当し、モータ負荷検出部25は速度制御手段とモータ負荷検出手段に相当し、戸駆動制御部26はモータ駆動手段に相当し、引き込まれ判断部27は引き込まれ判断手段に相当する。また、反転動作時トルク指令部30はトルク指令記憶手段と反転動作時トルク指令手段に相当し、反転動作時速度指令部31は実速度記憶手段と反転動作時速度指令手段に相当する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの戸または前記戸を駆動するモータの回転軸の速度指令値を出力する速度指令値出力手段と、
前記モータの回転角度に基づき前記戸または前記モータの回転軸の実速度を出力する実速度出力手段と、
前記速度指令値と前記実速度との差を小さくするように前記モータに対するトルク指令を出力する速度制御手段と、
前記トルク指令に基づき前記モータを駆動するモータ駆動手段と、
前記トルク指令が所定の閾値を超えると、前記モータが過負荷状態にあると判断し、前記速度指令値を所定値まで下げるモータ負荷検出手段と、
前記戸の開動作中に、前記モータ負荷検出手段により前記モータが過負荷状態にあると判断され、その後、前記実速度が所定速度まで減速し、その後、前記実速度が振動した場合に、引き込まれが発生したと判断する引き込まれ判断手段と、
を備えたエレベータの戸制御装置。
【請求項2】
前記引き込まれ判断手段により引き込まれが発生したと判断された場合、引き込まれが発生した期間に前記速度制御手段により出力された前記トルク指令を所定時間毎または所定距離毎に記憶するトルク指令記憶手段と、
前記トルク指令記憶手段により記憶された前記トルク指令の正負符号を逆に変換した反転動作時トルク指令を生成するとともに、反転動作時に、前記反転動作時トルク指令を前記トルク指令記憶手段により記憶された順番とは逆の順番で出力する反転動作時トルク指令手段と備え、
前記モータ駆動手段は、反転動作時に、前記反転動作時トルク指令に基づき前記モータを駆動することを特徴とする請求項1記載のエレベータの戸制御装置。
【請求項3】
前記引き込まれ判断手段により引き込まれが発生したと判断された場合、引き込まれが発生した期間に前記実速度出力手段により出力された前記実速度を所定時間毎または所定距離毎に記憶する実速度記憶手段と、
前記実速度記憶手段により記憶された前記実速度の正負符号を逆に変換した反転動作時速度指令値を生成するとともに、反転動作時に、前記反転動作時速度指令値を前記実速度記憶手段により記憶された順番とは逆の順番で出力する反転動作時速度指令手段と備え、
前記速度制御手段は、反転動作時に、前記反転動作時速度指令値と前記実速度との差を小さくするように前記モータに対するトルク指令を出力することを特徴とする請求項1記載のエレベータの戸制御装置。
【請求項4】
前記引き込まれが発生した期間は、前記実速度が前記速度指令値に追従しなくなった時点から前記実速度が所定速度まで減速した時点までの間であることを特徴とする請求項2または3記載のエレベータの戸制御装置。
【請求項5】
エレベータの戸と、
前記戸を駆動するモータと、
前記モータの回転角度に基づき前記モータを駆動する請求項1〜4記載の戸制御装置と、
を備えたエレベータの戸装置。
【請求項1】
エレベータの戸または前記戸を駆動するモータの回転軸の速度指令値を出力する速度指令値出力手段と、
前記モータの回転角度に基づき前記戸または前記モータの回転軸の実速度を出力する実速度出力手段と、
前記速度指令値と前記実速度との差を小さくするように前記モータに対するトルク指令を出力する速度制御手段と、
前記トルク指令に基づき前記モータを駆動するモータ駆動手段と、
前記トルク指令が所定の閾値を超えると、前記モータが過負荷状態にあると判断し、前記速度指令値を所定値まで下げるモータ負荷検出手段と、
前記戸の開動作中に、前記モータ負荷検出手段により前記モータが過負荷状態にあると判断され、その後、前記実速度が所定速度まで減速し、その後、前記実速度が振動した場合に、引き込まれが発生したと判断する引き込まれ判断手段と、
を備えたエレベータの戸制御装置。
【請求項2】
前記引き込まれ判断手段により引き込まれが発生したと判断された場合、引き込まれが発生した期間に前記速度制御手段により出力された前記トルク指令を所定時間毎または所定距離毎に記憶するトルク指令記憶手段と、
前記トルク指令記憶手段により記憶された前記トルク指令の正負符号を逆に変換した反転動作時トルク指令を生成するとともに、反転動作時に、前記反転動作時トルク指令を前記トルク指令記憶手段により記憶された順番とは逆の順番で出力する反転動作時トルク指令手段と備え、
前記モータ駆動手段は、反転動作時に、前記反転動作時トルク指令に基づき前記モータを駆動することを特徴とする請求項1記載のエレベータの戸制御装置。
【請求項3】
前記引き込まれ判断手段により引き込まれが発生したと判断された場合、引き込まれが発生した期間に前記実速度出力手段により出力された前記実速度を所定時間毎または所定距離毎に記憶する実速度記憶手段と、
前記実速度記憶手段により記憶された前記実速度の正負符号を逆に変換した反転動作時速度指令値を生成するとともに、反転動作時に、前記反転動作時速度指令値を前記実速度記憶手段により記憶された順番とは逆の順番で出力する反転動作時速度指令手段と備え、
前記速度制御手段は、反転動作時に、前記反転動作時速度指令値と前記実速度との差を小さくするように前記モータに対するトルク指令を出力することを特徴とする請求項1記載のエレベータの戸制御装置。
【請求項4】
前記引き込まれが発生した期間は、前記実速度が前記速度指令値に追従しなくなった時点から前記実速度が所定速度まで減速した時点までの間であることを特徴とする請求項2または3記載のエレベータの戸制御装置。
【請求項5】
エレベータの戸と、
前記戸を駆動するモータと、
前記モータの回転角度に基づき前記モータを駆動する請求項1〜4記載の戸制御装置と、
を備えたエレベータの戸装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−140371(P2011−140371A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1151(P2010−1151)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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