説明

エレベータの診断運転システム

【課題】点検運転機能の変更を簡単に行うことができるエレベータの診断運転システムの提供。
【解決手段】エレベータの診断運転システムは、少なくともかご5の運行を制御する制御盤9と、制御盤とは別体として設けられ、制御盤と接続されている診断運転専用装置23と、診断運転専用装置に接続され、異常の有無を診断するために用いる診断データを検出する診断データ検出手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの診断運転システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地震等の災害によって休止したエレベータを自動点検するエレベータ制御装置が開示されている。このエレベータ制御装置は、巻上機等の駆動装置を制御しそれによってかごの運行を制御する通常の運転制御機能に加えて、地震により停止されたエレベータを自動点検運転するための点検運転機能も有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−112537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来の診断運転システムでは、通常の運転制御機能や点検運転機能を改良・刷新しようとした場合、エレベータ制御装置そのものを見直さなければならなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、点検運転機能の変更を簡単に行うことができるエレベータの診断運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明のエレベータの診断運転システムは、少なくともかごの運行を制御する制御盤と、前記制御盤とは別体として設けられ、該制御盤と接続されている診断運転専用装置と、前記診断運転専用装置に接続され、異常の有無を診断するために用いる診断データを検出する診断データ検出手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエレベータの診断運転システムによれば、点検運転機能の変更を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係るエレベータの診断運転システムを提供するエレベータの概要を示す図である。
【図2】本実施の形態に係るエレベータの診断運転システムの構成を示す図である。
【図3】本実施の形態に係るエレベータの診断運転システムに関する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るエレベータの診断運転システムの実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0010】
図1は、本実施の形態に係るエレベータの診断運転システムを提供するエレベータの概要を示す図である。また、図2は、本実施の形態に係るエレベータの診断運転システムの構成を示す図である。
【0011】
図1に示されるように、エレベータ1は、昇降路3内に配置されたかご5を有している。昇降路3の上方には、機械室7が設けられている。機械室7内には、制御盤9、秤装置11、巻上機13等が配置されている。
【0012】
昇降路3内には、さらに、釣り合いおもり15が設けられている。釣り合いおもり15とかご5とは、巻上機13に巻きかけられた主ロープ17によって吊り下げられており、巻上機13によって主ロープ17が駆動されると、かご5及び釣り合いおもり15が相互に上下逆方向の態様で昇降される。また、かご5及び釣り合いおもり15は、コンペンロープ19によっても相互に接続されている。制御盤9は、巻上機13を制御しそれによってかご5の運行を制御する運転制御機能を有している。
【0013】
次に、図1及び図2に基づいて、本実施の形態に係るエレベータの診断運転システムの構成について説明する。エレベータの診断運転システム21は、制御盤9と、診断運転専用装置23と、診断データ検出手段25とを少なくとも備えている。
【0014】
診断運転専用装置23は、制御盤9とは別体として設けられている。具体的例として、診断運転専用装置23は、かご5の上部に載置されている。診断運転専用装置23は、昇降路に垂れ下げられた制御ケーブル27によって、制御盤9と接続されている。これにより、診断運転専用装置23は、昇降路3に対して不動に固定された制御盤9に接続された状態で、かご5と一体となって昇降する。
【0015】
本実施の形態では、診断運転専用装置23は、データ測定部29と、基準値記憶部31と、異常判定部・診断運転指示部33といった機能部分を有している。
【0016】
診断データ検出手段25は、診断運転専用装置23に接続されており、後述するように異常の有無を診断するために用いる診断データを検出するものである。診断データは、音、画像、加速度の何れかを少なくとも含むものであり、図1及び図2の図示例は、これら音、画像、加速度を全て含む態様を示している。
【0017】
診断データ検出手段25は、診断データに対応して設けられており、図1及び図2の図示例は、マイク35、カメラ37、加速度センサ39として示されている。これらマイク35、カメラ37、加速度センサ39は、かご5に設けられ、かご5と一体に昇降する。
【0018】
また、診断運転専用装置23は、回線インターフェース41を介して監視センタ43に接続されており、異常が発見された場合には、回線インターフェース41を介して監視センタ43に自動通報がなされる。
【0019】
次に、図3のフローチャートに基づいて、本実施の形態に係るエレベータの診断運転システムに関する動作について説明する。まず、前提として、地震等の災害によってエレベータが休止している状態がある。ステップS1として、エレベータの診断運転システム21の異常判定部・診断運転指示部33は、制御盤9に対して、自動復旧運転の開始を指示する。
【0020】
ステップS2として、制御盤9は、エレベータの診断運転システム21からの指令を受けて自動診断運転を実施する。ステップS3として、エレベータの診断運転システム21は、診断データの収集を行う。具体的には、エレベータの診断運転システム21のデータ測定部29は、診断データ検出手段25からの診断データ(音、画像、加速度)を受け取り、当該データを異常判定部・診断運転指示部33に伝える。また、異常判定部・診断運転指示部33においては、基準値記憶部31から予め記憶されていた異常閾値等、判定に必要なデータも入手する。
【0021】
ステップS4として、エレベータの診断運転システム21の異常判定部・診断運転指示部33は、データ測定部29(診断データ検出手段25)からの情報と、基準値記憶部31からのデータとを比較検討することで、異常が検出されているといえるか否かを診断する。
【0022】
ステップS4の診断の結果、異常が検出されたならば、エレベータの診断運転システム21は、ステップS7として、診断運転を中止し、異常が検出されなかったならば、ステップS5として、診断運転を完了する。さらに、エレベータの診断運転システム21は、診断運転の完了後、ステップS6として、自動復旧を行い、すなわち、制御盤9に対して、通常運転の開始を指示する。
【0023】
以上説明した本発明のエレベータの診断運転システムによれば、制御盤と診断運転専用装置とが別体として用意されており、制御盤は、かごの運行を制御する通常の運転制御機能を有し、診断運転専用装置は、自動点検運転するための点検運転機能を有しているので、通常の運転制御機能や点検運転機能を改良・刷新しようとした場合、従来のようにエレベータ制御装置そのものを見直す必要はなく、点検運転機能の変更を簡単に行うことができる。すなわち、例えば、既存のエレベータに対して、新規な自動復旧運転機能を適用したようとした場合、既存の制御盤内の限られた資源(プログラム残容量)のなかに、新機能プログラムを搭載するのが困難なケースがあり、また、新たに開発されるエレベータに設ける場合にも、通常の運転機能と休止自動復旧用の診断内容との信号授受の互換性を確保する必要があり、新開発のたびに相応の対応が強いられる問題がある。これに対して、本発明のエレベータの診断運転システムであれば、診断運転専用装置を一度開発しておけば、それ以降は、小さな改修で対応することができ、また、新たな診断内容を追加する場合にも容易に対応することができる。しかも、既存のエレベータに対して適用する場合にも、既存の制御盤のプログラム残容量に拘らず、実施することができる。
【0024】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0025】
例えば、エレベータの診断運転システムの異常判定部に提供される情報には、上記の音、画像、加速度に加えて/代えて、温度、階床データや安全回路状態のモータ電流値や秤値等が含まれていてもよい。また、診断運転専用装置には、地震感知機能や、遠隔監視機能が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0026】
5 かご、9 制御盤、21 エレベータの診断運転システム、23 診断運転専用装置、25 診断データ検出手段、27 制御ケーブル、35 マイク、37 カメラ、39 加速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともかごの運行を制御する制御盤と、
前記制御盤とは別体として設けられ、該制御盤と接続されている診断運転専用装置と、
前記診断運転専用装置に接続され、異常の有無を診断するために用いる診断データを検出する診断データ検出手段と
を備えたエレベータの診断運転システム。
【請求項2】
前記診断運転専用装置は、前記かごに設けられ、該かごと一体に昇降する、
請求項1のエレベータの診断運転システム。
【請求項3】
前記制御盤は、昇降路に対して不動に固定されており、
前記診断運転専用装置は、前記制御盤に対して制御ケーブルで接続されている、
請求項1又は2のエレベータの診断運転システム。
【請求項4】
前記診断データは、音、画像、加速度の何れかを少なくとも含むものであり、
前記診断データ検出手段は、前記かごに設けられ、該かごと一体に昇降するマイク、カメラ、加速度センサの何れか前記診断データに対応したものを含む、
請求項1乃至3の何れか一項のエレベータの診断運転システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−112482(P2013−112482A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261310(P2011−261310)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】