説明

エレベーターの乗りかご及びエレベーター装置

【課題】本発明の目的は、紐状異物の太さに関わらず紐状異物挟み込みの検知を可能とするエレベーターの乗りかご及びエレベーター装置を提供することにある。
【解決手段】本発明のエレベーターの乗りかご及びエレベーター装置は、かご枠に防振ゴムを介してかご室50を設け、片開きのかごドア5aの先端に感圧センサ20aを設置し、かごドア5aが閉じた際にかご前柱51が感圧センサ20aと対向するように構成し、かごドア5a下部先端部とかご前柱51下部にすくい板30,31を設けたものにおいて、かご室50内から見てかごドア5aが閉じた時にかご前柱51のかご室50内露出面よりも奥に入り込む部位に傾斜部51aを設け、かごドア5aとかご前柱51とのドア開閉方向掛かり代S2をかごドア5aとかご前柱51との隙間寸法S1より小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのドアによる紐等の異物挟み込みを検出するための機構を備えた片開きドア方式のエレベーターの乗りかご及びエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターのドア装置として、エレベーターのかごの出入口に配設されたドアの戸閉方向先端に、紐状の異物を検出する感圧センサを設けたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、かごの床上に落ちている紐状異物を検出するために、紐状異物を感圧センサまで誘導するすくい板を設けたものも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−269680号公報
【特許文献2】特開2007−326699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、比較的細い紐状異物まで検知できるが、ドアとかご前柱間の隙間に丁度入り込むような太さの紐状異物は、この隙間部分に挟まると感圧センサでの検知ができない場合があった。
【0006】
本発明の目的は、紐状異物の太さに関わらず紐状異物挟み込みの検知を可能とするエレベーターの乗りかご及びエレベーター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のエレベーターの乗りかご及びエレベーター装置は、かご枠に防振ゴムを介してかご室を設け、前記かご室の開口を開閉する片開きのかごドアの先端に感圧センサを設置し、前記かごドアが閉じた際にかご前柱が前記感圧センサと対向するように構成し、前記かごドア下部先端部と前記かご前柱下部にすくい板を設けたものにおいて、前記かご室内から見て前記かごドアが閉じた時に前記かご前柱のかご室内露出面よりも奥に入り込む部位に傾斜部を設け、前記かごドアと前記かご前柱とのドア開閉方向掛かり代を前記かごドアと前記かご前柱との隙間寸法より小さくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、片開き式ドアにおける紐状異物検知精度を比較的簡単な構成で上げることができるという顕著な効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】エレベーターの全体概要を説明するための概要断面図である。
【図2】エレベーター装置のかごの出入り口部を正面から見た正面図である。
【図3】エレベーター装置のドアの状態を上方から見た平面図である。
【図4】図3の丸で囲んだII部を詳細に示した平面拡大図である。
【図5】紐状異物が挟まった状態を示した平面拡大図である。
【図6】かごドア5aとかご前柱31の突きあたり部分を上方から見た拡大平面図である。
【図7】かごドア5aとかご前柱31の下端突きあたり部分を正面から見た拡大正面図である。
【図8】かご前柱に傾斜部を設けず、掛かり代が大きい場合を示す図4対応図である。
【図9】かごドア5aとかご前柱31の下端突きあたり部分を正面から見た図6対応図である。
【図10】かご敷居が沈み込み、かごドア5aの下部の隙間が広がった状態を説明するための図7対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るエレベーター装置の一実施形態について、図面を用いながら説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例にかかるエレベーターの全体概要を説明するための概要断面図である。同図に示すように本実施例におけるエレベーター装置100は、建屋内に設けられた昇降路101内を上下移動する乗りかご102及び釣合いおもり103と、乗りかご102及び釣合いおもり103を吊持するロープ104と、乗りかご102及び釣合いおもり103を上下移動させる駆動装置である巻上機に取り付けられたシーブ106と、ロープ104が巻き掛けられたプーリ107とを有している。
【0012】
なお、本実施例では巻上機のシーブ106,プーリ107が昇降路101の上部に位置する機械室105内に設置されている。乗りかご102とつり合いおもり103を連結するロープ104は、一端が乗りかご102に固定されて上部に引き回され、機械室105内の巻上機のシーブ106に巻きつけられた後に下方に向かい、プーリ107に巻きかけられている。そしてロープ104は再びシーブ106に巻きかけられた後、さらにプーリ107に巻きかけられて、他端がつり合いおもり103に固定されている。
【0013】
このようにしてシーブ106とプーリ107は乗りかご102とつり合おもり103との間の距離をお互いが衝突することがないように適度なすき間に調整し確保している。そして巻上機が駆動することで、乗りかご102は建屋の最上階HFと最下階LFの間を上下移動可能となっている。このときつり合いおもり103は乗りかご102の移動方向とは反対方向に上下移動する。なお同図では模式的に最上階HFと最下階LFの間の階を省略しているが、最上階HFと最下階LFの2階床のみ或いはそれ以上の階床が存在するものであってもよい。
【0014】
図2は、かごの出入り口部を正面から見た正面図である。同図に示すように、乗りかご102は、上枠111,縦枠112,下枠113から構成したかご枠に防振ゴム114を介してかご床115,かご敷居4,かご室50を構成している。かごドア5a,5bは上部をドアハンガー2a,2bで吊りドアレール3上を転動開閉して、かご室50に設けられた開口を開閉する。ドアレール3はドアレール枠1に取り付けられ、ドアレール枠1は縦枠112に取り付けられている。かごドア5aにはセフティシューレバー6,7を介して取り付けられているセフティシュー8があり、通常戸閉中に人や荷物などが挟まった場合は、このセフティシュー8がかごドア5aに対して戸開方向に動くことで人や荷物などの接触や挟まりを検知し、かごドア5a,5bの戸閉動作を反転戸開させる。
【0015】
なお、かごドア5aは戸閉動作時及び戸開動作時にほぼ同じ動作時間でかごドア5bの移動距離の約2倍の距離を移動する。即ち、かごドア5aの動作する速度はかごドア5bの移動速度の約2倍となっており、かごドア5aは高速ドア、かごドア5bは低速ドアとして構成されている。
【0016】
図3はエレベーター装置のかごドアの状態を上方から見た平面図である。同図に示すように、到着階に停止した乗りかご102は、到着階の乗場に設けられた開口の周囲を覆う乗場三方枠61a,61b、かご敷居4に対向するように設けられた乗場敷居60及び乗場敷居60上を移動して乗場開口を開閉自在に覆う乗場ドア62a,62bで構成された乗場出入り口と対向している。
【0017】
図4は図3の丸で囲んだII部を詳細に示した平面拡大図である。同図に示すようにかごドア5a先端には戸当り目地20が設けられている。またかご前柱51にも戸当り目地21が設けられており、戸当り目地20,21は、戸閉時に相対するようになっていて、戸当り目地20,21の内部に設けられたゴムなどの弾性体で形成された緩衝材同士が突き合わされた状態となる。そして、戸当り目地20内部の緩衝材には感圧センサ20aが設けられており、図5に示すようにかごドア5aとかご前柱51の間に紐状異物200が挟まった場合、かごドア5aの戸閉動作に応じて紐状異物200が戸当り目地20,21の間に挟まり、戸当り目地21が紐状異物200を戸当り目地20の方向に押すように作用し、戸当り目地20に内蔵された感圧センサ20aで紐状異物200の挟まりを検知して、かごドア5a,5bを開くようになっている。
【0018】
ここで、図4に示すように片開き式ドアでは完全に閉じた状態では、乗りかご102のかご室50内部から見たときに、かごドア5aの先端部分はかご前柱51のかご室内露出面よりも奥に入り込む。その際にできる隙間S1に対して、かご前柱51に設けた傾斜部51aによってかご前柱51とかごドア5a先端部分との掛かり代S2を小さくし、この値はS1/2≧S2とすることが望ましい。
【0019】
図8はかご前柱51に傾斜部51aを設けず、掛かり代が大きい場合を示す図4対応図である。図8に示すように、かご前柱51に傾斜部51aを設けず、かご前柱51とかごドア5a先端部分との掛かり代が大きいと、かごドア5a先端部とかご前柱51との隙間S1と同程度の紐状異物200がかごドア5aとかご前柱51との間に挟まれた場合、紐状異物200が戸当り目地20の外郭部分と接触して僅かに戸当り目地20と21の間が開き、感圧センサ20aが設けられた緩衝材で紐状異物200が圧迫されることなく戸当り目地20の外郭と戸当り目地21で挟み込まれ、紐状異物200の挟み込みを感圧センサ20aで検知できない場合が想定された。しかし、図4に示すように傾斜部51aを設けることで、このような問題を起こさずに非常に高い検知精度を得ることが可能となる。特に隙間S1に対して、掛かり代S2の関係をS1/2≧S2とすることで感圧センサ20aによる紐状異物200の挟み込み検知の確実性を良好に確保することが可能となる。
【0020】
また、図9はかごドア5aとかご前柱51の下端突きあたり部分を正面から見た拡大正面図である。同図に示すように本実施形態では、かごドア5aの下端にはドア敷居4に設けられた溝内を摺動してかごドア5aの開閉動作を案内するドアシュー9aが設けられている。しかしこのような構成により、かごドア5a下端とドア敷居4の間に、感圧センサ20aが設けられた戸当り目地20が存在しない隙間G1が存在する。そこで隙間G1にはかごドア5aの下端先端部分にドア敷居4の溝内下方から戸当り目地20に向かって切りあがった傾斜面が形成されたすくい板30が、かご前柱51の下端先端部分にはドア敷居4の溝内下方から戸当り目地21に向かって切りあがった傾斜面が形成されたすくい板31がそれぞれ取り付けられている。このようなすくい板30,31を設けることで、紐状異物200が床上にあった場合、かごドア5aの戸閉動作によって、すくい板30,31の互いの傾斜面がV字状に交わり、床上に存在する紐状異物200をV字の間に挟み込む。さらにかごドア5aの戸閉動作が進むにつれて、V字の底がだんだんと浅くなり、それに伴い紐状異物200は互いの傾斜面により上方に持ち上げられて、感圧センサ20aが設けられた戸当り目地20の部分まですくい上げられるようになっている。
【0021】
ところが、図2に示したように、かご枠に設けられたドアレール枠1にドアレール3が設けられ、ドアレール3にドアハンガー2a,2bで吊り下げられたかごドア5a,5bと、かご枠上に防振ゴム114を介して構成されるかご床115,かご敷居4,かご室50は、かご内に人や荷物などの乗り込みによって防振ゴム114が変形し、かご敷居4が沈み込んだ場合、それに伴いかご前柱51も一緒に沈むのに対し、かごドア5a,5bは沈み込みに関係がないため、図10に示すようにかごドア5a下端とドア敷居4の間の感圧センサ20aが設けられた戸当り目地20が存在しない隙間がG2のように増大する。すると、すくい板30,31との間に高さ方向G3の段差が発生し、この段差G3に床板上からすくい上げられた紐状異物200が挟み込まれ、戸当り目地21とは接触するものの、感圧センサ20aが設けられた戸当り目地20と接触せず紐状異物200の挟み込みを感圧センサ20aで検知できない場合が想定された。
【0022】
そこで本実施形態では、図6及び図7に示すように、傾斜面の下端先端がかご敷居4の表面に接触し、正面方向から見たときに戸当り目地21に向かって切りあがった斜面が形成された第2のすくい板40をかご前柱51下部に設けたすくい板31と略平行に、かごドア5aの昇降路101側の面と重なる位置のかご前柱51側、つまりかご前柱51の乗場対向面側に設けている。このように、第2のすくい板40を設けることで、例えばかご内に人や荷物などの乗り込みによって防振ゴム114が変形してかご前柱51が沈み込んでも、高さ方向G3の段差内の紐状異物200は第2のすくい板40がすくい上げるため、高さ方向G3の段差内に挟まれることがなく感圧センサ20aが設けられた戸当り目地20にすくい上げることができる。またそれに加え、さらに上方へG4だけ高い位置までも感圧センサ20aが設けられた戸当り目地20への紐状異物200のすくい上げが可能となっている。
【0023】
なお、第2のすくい板40の最大高さは、かご室50下部の防振ゴム114の変位量で変位したかごドア5a下部先端に設けられたすくい板30の位置より高く設定するとよい。このように構成しておくことで、人や荷物によるかご床の沈み込みがあった場合でも床上の紐状異物をかごドア5a先端の感圧センサ20aに誘導し、検知できる確実性を向上させ、感圧センサの検知精度を向上することができる。
【0024】
このように本実施形態では、すくい板31に加えかご前柱51に第2のすくい板40を設置することで床上の紐状異物200をかごドア5a先端の感圧センサ20aに誘導する確立を高めることが可能となり、感圧センサの検知精度を向上することができる。
【0025】
なお本実施形態では、第2のすくい板40はかご前柱51に1点でボルトによりかご敷居4の上に乗せるように取り付けられている。このようにすることで、かご内に人や荷物などの乗り込みによって防振ゴム114が変形し、かご敷居4に変形や歪みが発生しても、第2のすくい板40の傾斜面下端がかご敷居4の表面に接触するように構成でき、紐状異物200のすくい上げ精度の確度を向上することができる。
【0026】
また、第2のすくい板40を、緩衝材を介してかご前柱51に固定することで、第2のすくい板40の傾斜面下端がかご敷居4の表面に接触する構成を確保しながら、乗りかご102の昇降時に発生する乗りかごの揺れなどに伴う振動などによる音の発生を抑えることが可能となっている。
【0027】
さらに第2のすくい板40をかご前柱51の乗場対向面側に設けることで、設置スペースを十分に確保することが可能となると共に、メンテナンス性が向上できる。
【0028】
また第2のすくい板40の長さとしては、かご前柱51のかご室50内露出面と同じかそれより短くすることで、エレベーター装置への乗客の乗降や荷物の積み下ろしを阻害することがなく取り付けられる。
【0029】
なお、本実施形態では、1:1ローピングの構成を例に挙げて説明したが、2:1ローピングや3:1ローピング等様々なローピングのものに適用可能である。さらに、本実施形態では機械室105がある構成を例に挙げて説明したが、巻上機が昇降路101内に設けられた機械室レスエレベーター装置等にも適用することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 ドアレール枠
2a,2b ドアハンガー
3 ドアレール
4 かご敷居
5a,5b かごドア
6,7 セフティシューレバー
8 セフティシュー
9a ドアシュー
20,21 戸当り目地
20a 感圧センサ
30,31 すくい板
40 第2のすくい板
50 かご室
51 かご前柱
51a 傾斜部
60 乗場敷居
61a,61b 乗場三方枠
62a,62b 乗場ドア
100 エレベーター装置
101 昇降路
102 乗りかご
103 釣合いおもり
104 ロープ
105 機械室
106 シーブ
107 プーリ
111 上枠
112 縦枠
113 下枠
114 防振ゴム
115 かご床
200 紐状異物
HL 最上階
LF 最下階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご枠に防振ゴムを介してかご室を設け、前記かご室の開口を開閉する片開きのかごドアの先端に感圧センサを設置し、前記かごドアが閉じた際にかご前柱が前記感圧センサと対向するように構成し、前記かごドア下部先端部と前記かご前柱下部にすくい板を設けたものにおいて、
前記かご室内から見て前記かごドアが閉じた時に前記かご前柱のかご室内露出面よりも奥に入り込む部位に傾斜部を設け、前記かごドアと前記かご前柱とのドア開閉方向掛かり代を前記かごドアと前記かご前柱との隙間寸法より小さくしたことを特徴とするエレベーターの乗りかご。
【請求項2】
請求項1において、前記かご前柱下部に設けたすくい板と略平行に、前記かごドアの昇降路側の面と重なる位置のかご前柱側に第2のすくい板を設けたことを特徴とするエレベーターの乗りかご。
【請求項3】
請求項2において、前記第2のすくい板の最大高さは、かご室下部の防振ゴムの変位量で変位した前記かごドア下部先端に設けられた前記すくい板の位置より高く設定したことを特徴とするエレベーターの乗りかご。
【請求項4】
昇降路を上下移動する乗りかごと、前記乗りかごを吊持するロープと、前記ロープを駆動する駆動装置とを有するエレベーター装置において、
前記乗りかごは、かご枠に防振ゴムを介してかご室を設け、前記かご室の開口を開閉する片開きのかごドアの先端に感圧センサを設置し、前記かごドアが閉じた際にかご前柱が前記感圧センサと対向するように構成し、前記かごドア下部先端部と前記かご前柱下部にすくい板を設け、
前記かご室内から見て前記かごドアが閉じた時に前記かご前柱のかご室内露出面よりも奥に入り込む部位に傾斜部を設け、前記かごドアと前記かご前柱とのドア開閉方向掛かり代を前記かごドアと前記かご前柱との隙間寸法より小さくしたことを特徴とするエレベーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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