説明

エレベーター制御システム

【課題】音声認識による呼び登録機能を備えたエレベーターにおいて、アナウンス装置からの音声によって呼びが誤登録されてしまうことを防止できるようにする。
【解決手段】本制御システムは、エレベーターの運転を制御する制御手段3と、音声認識の結果に基づいて、制御手段3に行き先情報を出力する音声認識装置1と、音声認識装置1の近傍に設けられたアナウンス装置2と、制御手段3からのアナウンス発報指令に基づいて、アナウンス装置2からアナウンスを発報させるアナウンス制御手段4とを備える。アナウンス制御手段4は、音声を認識するための所定の音声認識処理を音声認識装置1が行っている場合は、通常音量よりも音量を低減させてアナウンス装置2からアナウンスを発報させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、利用者の音声を認識して呼び登録を行う機能を備えたエレベーター制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターには、利用者が発した音声を認識して、呼びの登録を行うものがある。
例えば、下記特許文献1には、利用者の音声以外の音や振動が発生している場合に、音声認識による呼び登録機能を無効にするものが記載されている。
【0003】
また、他の従来技術として、音声認識による呼び登録機能が必要ではない利用者のことも考慮し、利用者が特定の操作を行わなければ、音声認識による呼び登録機能を有効にしないものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−305776号公報
【特許文献2】特開2006−327739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
音声認識による呼び登録機能を備えたエレベーターでは、音声認識を行うための装置の近傍に、アナウンス装置が設置されていることが多い。かかる場合、音声認識装置がアナウンス装置から発せられた音声を認識して、呼びが誤登録されることがあった。
なお、呼びの誤登録を防止するために、特許文献1及び2に記載のもののように音声認識による呼び登録機能を無効にしてしまうと、利便性が大幅に低下するといった問題があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、音声認識による呼び登録機能を備えたエレベーターにおいて、アナウンス装置からの音声によって呼びが誤登録されてしまうことを防止できるエレベーター制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベーター制御システムは、エレベーターの運転を制御する制御手段と、音声認識の結果に基づいて、制御手段に行き先情報を出力する音声認識装置と、音声認識装置の近傍に設けられたアナウンス装置と、制御手段からのアナウンス発報指令に基づいて、アナウンス装置からアナウンスを発報させるアナウンス制御手段と、を備え、アナウンス制御手段は、音声を認識するための所定の音声認識処理を音声認識装置が行っている場合は、所定の通常音量よりも音量を低減させてアナウンス装置からアナウンスを発報させる、或いは、アナウンス装置からのアナウンス発報を阻止するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、音声認識による呼び登録機能を備えたエレベーターにおいて、アナウンス装置からの音声によって呼びが誤登録されてしまうことを防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベーター制御システムを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベーター制御システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター制御システムを示す構成図である。本エレベーターには、利用者の音声を認識して呼び登録を行う機能が備えられている。
【0012】
図1において、1はエレベーターのかごに設けられた音声認識装置である。音声認識装置1は、利用者の音声が入力されると、その音声情報を解析して利用者の行き先(階)を特定する。音声認識装置1は、音声認識の結果として利用者の行き先を特定すると、その行き先情報を後述の制御手段3に対して出力する。
【0013】
音声認識装置1は、音声を認識する(利用者の行き先を特定する)ために必要な所定の処理(音声認識処理)を行っている間、その旨を示す音声認識中情報を後述のアナウンス制御手段4に対して出力する。音声認識処理を行っていない場合、例えば、音声入力に備えて待機している場合、音声認識装置1は、上記音声認識中情報の出力を行わない。
【0014】
2はエレベーターのかごに設けられたアナウンス装置である。アナウンス装置2は、かご内の利用者に対して音声情報を提供するためのものである。アナウンス装置2は、音声認識装置1の近傍、例えば、発報したアナウンスが音声認識装置1によって音声認識され得る程度の近距離に配置されている。
【0015】
制御手段3は、エレベーター全体の運転を制御するためのものである。制御手段3は、音声認識装置1から行き先情報を受信すると、利用者の行き先に応じたかご呼びを登録する。制御手段3は、登録されている呼び(乗場呼び・かご呼び)にかごを適切に応答させるため、かごの昇降やエレベータードアの開閉を制御する。
【0016】
また、制御手段3は、エレベーターの運行状態や外部機器からの信号に基づいてアナウンスが必要と判断した場合に、その内容に応じたアナウンス発報指令をアナウンス制御手段4に対して出力する。アナウンスが必要な場合として、例えば、かごが利用者の行き先(階)に到着する場合、ドアの開閉が行われる場合、地震や停電といった緊急事態が発生した場合等がある。
【0017】
アナウンス制御手段4は、アナウンス装置2を制御するためのものである。通常時、アナウンス制御手段4は、制御手段3からアナウンス発報指令を受信すると、その受信したアナウンス発報指令に基づいて、アナウンス装置2から所定の通常音量で適切なアナウンスを発報させる。
【0018】
また、上記基本機能に加え、アナウンス制御手段4には、本願目的を実現するための特有の機能が備えられている。具体的に、アナウンス制御手段4には、判定手段5及び6、音量制御手段7、発報手段8が備えられている。
【0019】
判定手段5及び6は、アナウンス制御手段4が制御手段3からアナウンス発報指令を受信した際に、所定の判定を行う機能を有している。なお、判定手段5及び6の具体的な機能については後述する。
【0020】
音量制御手段7は、アナウンス装置2に対して音量制御指令を出力し、アナウンス装置2の音量を制御する機能を有している。通常時、音量制御手段7は、アナウンス装置2の音量を所定の通常音量に設定する。また、音量制御手段7は、判定手段5及び6の判定結果に基づいて、アナウンス装置2の音量を適切に変更する。
【0021】
発報手段8は、制御手段3から受信したアナウンス発報指令に対応するアナウンスを、アナウンス装置2から発報させる機能を有している。発報手段8は、発報させるアナウンスの内容に応じたアナウンス発報指令をアナウンス装置2に対して出力する。
【0022】
次に、図2も参照し、上記構成を有するエレベーター制御システムの動作(特に、アナウンス制御手段4の動作)について、具体的に説明する。図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター制御システムの動作を示すフローチャートである。
【0023】
アナウンス制御手段4は、S101において、アナウンスの発報条件が成立したか否かを判定する。例えば、アナウンス制御手段4が制御手段3からアナウンス発報指令を受信することにより、上記発報条件が成立する。発報条件が成立していない場合(S101のNo)、アナウンス制御手段4は、アナウンス装置2からのアナウンス発報を実施しない(S102)。
【0024】
アナウンス制御手段4は、制御手段3からアナウンス発報指令を受信して上記発報条件が成立することにより、S103の処理に進む。S103では、判定手段5により、音声認識装置1が音声認識処理を行っているか否かを判定する(S103)。アナウンス制御手段4が音声認識装置1から音声認識中情報を受信していなければ、判定手段5は、S103において、音声認識装置1が音声認識処理を行っていないことを判定する。かかる場合、音量制御手段7は、アナウンス装置2の音量を通常設定のままとする。このため、発報手段8からアナウンス発報指令が出力されることにより、アナウンス装置2からは、通常音量のアナウンスが発報される(S104)。
【0025】
一方、アナウンス制御手段4が音声認識装置1から音声認識中情報を受信していれば、判定手段5は、S103において、音声認識装置1が音声認識処理を行っていることを判定する(S103のYes)。かかる場合、アナウンス制御手段4では、判定手段6により、制御手段3から受信したアナウンス発報指令に対応するアナウンスの内容が、所定の重要事項に該当するか否かを判定する(S105)。
【0026】
本システムには、アナウンスの内容が重要事項に該当するか否かの基準が予め設定されている。具体的に、エレベーターの安全に関する報知(エレベータードアへの挟まれに関する注意喚起等)及び災害発生の報知の少なくとも何れかについては、重要事項に設定されている。
【0027】
例えば、発報するアナウンスの内容が次停止階の情報(具体的な階床名や売り場情報等)の場合、判定手段6は、S105において、アナウンスの内容が重要事項に該当しないことを判定する。かかる場合、音量制御手段7は、アナウンス装置2に対して音量制御指令を出力し、アナウンス装置2の音量を通常音量よりも低減させる。このため、発報手段8からアナウンス発報指令が出力されることにより、アナウンス装置2からは、音量を下げたアナウンスが発報される(S106)。
【0028】
一方、発報するアナウンスの内容が、エレベーターの安全に関する報知や災害発生の報知である場合、判定手段6は、S105において、アナウンスの内容が重要事項に該当することを判定する。かかる場合、音量制御手段7は、アナウンス装置2の音量を通常設定のままとする。このため、発報手段8からアナウンス発報指令が出力されることにより、アナウンス装置2からは、通常音量のアナウンスが発報される(S107)。
【0029】
上記構成を有するエレベーター制御システムでは、制御手段3からアナウンス発報指令が出力された際に音声認識装置1が音声認識中であれば、基本的に、アナウンス装置2から低音量のアナウンスが発報される。このため、アナウンス装置2からの音声によって呼びが誤登録されてしまうことを確実に防止することができる。
【0030】
なお、アナウンス制御手段4に判定手段6が備えられていない場合は、図2のS105に示す処理が行われない。かかる場合、アナウンス制御手段4では、S103においてYesの判定がなされると、S106の処理へと進んで、音量を下げたアナウンスをアナウンス装置2から発報させる。このような構成であれば、アナウンス装置2からの音声によって呼びが誤登録されることを常に防止することができる。
【0031】
一方、本実施の形態における構成では、発報するアナウンスの内容が所定の重要事項に該当する場合は、音声認識装置1が音声認識中か否かに関わらず、アナウンス装置2の音量が通常音量に設定される。このため、エレベーターの安全に関する報知や災害発生の報知といった利用者に知らせなければならない事柄については、常に、必要な音量でアナウンスすることができる。
【0032】
本実施の形態では、アナウンス装置2から低音量のアナウンスを発報させることにより、呼びの誤登録を防止する場合について説明した。一方、呼びの誤登録は、アナウンス装置2からのアナウンス発報を阻止することによっても防止することができる。
【0033】
かかる機能を備えるためには、例えば、音量制御手段7は、図2のS105においてNoの判定がなされると、アナウンス装置2に対して音量制御指令を出力し、アナウンス装置2の音量を0に設定する(0まで低減させる)。
【0034】
また、音量制御手段7による音量制御以外でも、上記発報阻止機能は実現できる。
例えば、音量制御手段7によるアナウンス装置2の音量設定を常時通常音量にしておく。そして、発報手段8は、図2のS105においてNoの判定がなされると、アナウンス発報指令を出力しないことにより、アナウンス装置2からのアナウンス発報を阻止する。また、発報手段8は、図2のS105においてYesの判定がなされた場合は、アナウンス発報指令を出力し、アナウンス装置2から通常音量のアナウンスを発報させる。
なお、かかる場合にアナウンス制御手段4に判定手段6が備えられていなければ、アナウンス制御手段4では、S103においてYesの判定がなされると、発報手段8からアナウンス発報指令を出力しないことにより、アナウンス装置2からのアナウンス発報を阻止する。このため、アナウンス装置2からの音声によって呼びが誤登録されることを常に防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 音声認識装置
2 アナウンス装置
3 制御手段
4 アナウンス制御手段
5、6 判定手段
7 音量制御手段
8 発報手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの運転を制御する制御手段と、
音声認識の結果に基づいて、前記制御手段に行き先情報を出力する音声認識装置と、
前記音声認識装置の近傍に設けられたアナウンス装置と、
前記制御手段からのアナウンス発報指令に基づいて、前記アナウンス装置からアナウンスを発報させるアナウンス制御手段と、
を備え、
前記アナウンス制御手段は、音声を認識するための所定の音声認識処理を前記音声認識装置が行っている場合は、所定の通常音量よりも音量を低減させて前記アナウンス装置からアナウンスを発報させる、或いは、前記アナウンス装置からのアナウンス発報を阻止するエレベーター制御システム。
【請求項2】
前記アナウンス制御手段は、前記アナウンス装置から発報させるアナウンスの内容が所定の重要事項に該当する場合は、前記音声認識装置が音声認識処理を行っている場合であっても、前記アナウンス装置から通常音量でアナウンスを発報させる請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項3】
前記アナウンス制御手段は、
前記制御手段からアナウンス発報指令を受信すると、前記音声認識装置が音声認識処理を行っているか否かを判定する第1判定手段と、
前記音声認識装置が音声認識中であることが前記第1判定手段によって判定されると、前記アナウンス装置の音量を、通常音量よりも低減させる音量制御手段と、
前記制御手段から受信したアナウンス発報指令に対応するアナウンスを、前記アナウンス装置から発報させる発報手段と、
を備えた請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項4】
前記アナウンス制御手段は、
前記制御手段から受信したアナウンス発報指令に対応するアナウンスの内容が所定の重要事項に該当するか否かを判定する第2判定手段と、
を更に備え、
前記音量制御手段は、アナウンスの内容が所定の重要事項に該当することが前記第2判定手段によって判定されると、前記第1判定手段の判定結果に関わらず、前記アナウンス装置の音量を通常音量に設定する請求項3に記載のエレベーター制御システム。
【請求項5】
前記アナウンス制御手段は、
前記制御手段からアナウンス発報指令を受信すると、前記音声認識装置が音声認識処理を行っているか否かを判定する第1判定手段と、
前記音声認識装置が音声認識中であることが前記第1判定手段によって判定されると、前記アナウンス装置からのアナウンス発報を阻止し、前記音声認識装置が音声認識中ではないことが前記第1判定手段によって判定されると、前記制御手段から受信したアナウンス発報指令に対応するアナウンスを、前記アナウンス装置から発報させる発報手段と、
を備えた請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項6】
前記アナウンス制御手段は、
前記制御手段から受信したアナウンス発報指令に対応するアナウンスの内容が所定の重要事項に該当するか否かを判定する第2判定手段と、
を更に備え、
前記発報手段は、アナウンスの内容が所定の重要事項に該当することが前記第2判定手段によって判定されると、前記第1判定手段の判定結果に関わらず、前記制御手段から受信したアナウンス発報指令に対応するアナウンスを、前記アナウンス装置から発報させる請求項5に記載のエレベーター制御システム。
【請求項7】
アナウンスの内容が、エレベータードアへの挟まれに関する注意喚起である場合、及び、災害発生の報知に関するものである場合の少なくとも何れかの場合に、前記内容が所定の重要事項に該当することとする請求項2又は請求項4又は請求項6に記載のエレベーター制御システム。

【図1】
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【図2】
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