エレベーター装置
【課題】簡易な構造で確実にかごの緊急停止を行うことのできるエレベーター装置の提供。
【解決手段】緊急停止手段として、ガイドレール5を挟むように配置され、円弧状の当接面を有する回動可能な一対の制動体9、制動体の円弧両端部に取付けられる制動子、制動体を回動可能に軸支する一対のアーム11、アーム間に配置され、制動体をガイドレールに押付ける方向にばね力を付与する押しばね14、アーム間に配置され、それぞれのアームをアーム支点13を介して回動可能に連結する連結部15、及び、ばね力に打ち勝ち制動体をガイドレールから引き離すアクチュエータ16を備え、かごが戸を開いた状態で所定範囲を超えて移動すると、これに同期して回動する制動体の円弧両端部に取付けられた制動子がガイドレールに接し、制動力が付与されかごを緊急停止する。
【解決手段】緊急停止手段として、ガイドレール5を挟むように配置され、円弧状の当接面を有する回動可能な一対の制動体9、制動体の円弧両端部に取付けられる制動子、制動体を回動可能に軸支する一対のアーム11、アーム間に配置され、制動体をガイドレールに押付ける方向にばね力を付与する押しばね14、アーム間に配置され、それぞれのアームをアーム支点13を介して回動可能に連結する連結部15、及び、ばね力に打ち勝ち制動体をガイドレールから引き離すアクチュエータ16を備え、かごが戸を開いた状態で所定範囲を超えて移動すると、これに同期して回動する制動体の円弧両端部に取付けられた制動子がガイドレールに接し、制動力が付与されかごを緊急停止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かごが戸を開いた状態で移動して予め定められた所定範囲を外れたときに、かごを緊急停止するエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かごが戸を開いた状態で下方向に移動して予め定められた所定範囲を外れると、非常止め装置で停止・保持を行うとともに、かごが戸を開いた状態で上方向に移動して予め定められた所定範囲を外れると、制動機で停止・保持を行い、かつ、過荷重となって非常止め装置が作動したとしても、過荷重の解消と共に緊急非常止め復帰装置によって非常止め装置を復帰させ、人手によることなく通常運転を再開可能としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−36426号公報(段落番号0014〜0032、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら前述した従来のものでは、非常止め装置及び制動機の2つを制御し、かごが戸を開いた状態で下方向に移動して予め定められた所定範囲を外れた場合は非常止め装置で停止・保持を行い、一方、かごが戸を開いた状態で上方向に移動して予め定められた所定範囲を外れた場合は制動機で停止・保持を行う必要があった。このため装置の構造およびその制御が複雑になるという問題があり、また、制動機故障時において、かごが戸を開いた状態で上方向に移動して予め定められた所定範囲を外れた場合、かごを停止・保持することが不可能であった。
【0004】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、簡易な構造で確実にかごの緊急停止を行うことのできるエレベーター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、建屋に形成された昇降路に立設されるガイドレールと、このガイドレールに案内されて前記昇降路を昇降するかごと、このかごが戸を開いた状態で移動し予め定められた所定範囲を外れたときに前記かごを緊急停止する緊急停止手段とを備えたエレベーター装置において、前記緊急停止手段は、前記ガイドレールを挟むように配置され、円弧状の当接面を有する回動可能な一対の制動体を備え、これらの制動体を前記ガイドレールに押し付けることにより制動力を付与することを特徴としている。
【0006】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明では、かごの停止に応じて制動体がガイドレールに押し付けられ、一対の制動体でガイドレールを挟持し、かごの上方向或いは下方向の移動により制動体はガイドレールに摺接しつつ回動する。そして、何らかの要因によりかごが所定範囲を超えて移動すると、制動体は制動力を付与する。このように1つの装置で、かごが戸を開いた状態で上方向或いは下方向に移動して予め定められた所定範囲を外れたとき、かごを緊急停止することができる。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記緊急停止手段は、前記制動体の円弧両端部に取付けられる制動子と、前記制動体を回動可能に軸支する一対のアームと、これらのアーム間に配置され、前記制動体を前記ガイドレールに押付ける方向にばね力を付与する押しばねと、前記アーム間に配置され、それぞれのアームを支点を介して回動可能に連結する連結部と、前記ばね力に打ち勝ち前記制動体を前記ガイドレールから引き離すアクチュエータとを備えていることを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明によれば、かごの停止に応じてアクチュエータを開放し押しばねのばね力により制動体をガイドレールに押し付け、一対の制動体でガイドレールを挟持する。この状態でかごが上方向或いは下方向に移動すると制動体はガイドレールに摺接しつつ回動する。そして、乗客の乗降等によりかごが予め定められた所定範囲内で移動した場合は、制動体の通常摺接面がガイドレールに摺接するのみでかごが緊急停止することはない。一方、何らかの要因によりかごが所定範囲を超えて移動すると、制動体はガイドレールに摺接しつつさらに回動し、制動体の円弧両端部に取付けられた制動子のいずれか一方がガイドレールに接するとともに制動体の回動が制止される。これにより制動力が作用し、かごは緊急停止する。これによって、比較的簡易な構造で確実にかごの緊急停止を行うことができる。
【0009】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、前記緊急停止手段は、制動力を調整する調整手段を備えていることを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明の請求項3に係る発明によれば、調整手段で制動力を調整可能とすることにより、かごを適切に制動することができる。
【0011】
さらにまた、本発明の請求項4に係る発明は、前記調整手段は、前記押しばねのばね力を調整することを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明の請求項4に係る発明によれば、押しばねのばね力を調整することで制動力を調整するものであり、これによって、正確な制動力の調整が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的簡易な構造を有する1つの装置で、かごが戸を開いた状態で上方向或いは下方向に移動して予め定められた所定範囲を外れたとき、かごを緊急停止することができ、これによって、緊急時に適切、かつ迅速に対応可能な信頼性の高いエレベーターを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るエレベーター装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1はエレベーター装置の概略正面図、図2はエレベーター装置の概略側面図、図3は本発明に係るエレベーター装置の一実施形態を示す平面図、図4は制動体の拡大正面図、図5は制動体の拡大側面図、図6はかご走行時の制動体の状態を示す要部拡大図、図7はかご停止時の制動体の状態を示す要部拡大図、図8は所定範囲内でかごが上方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図、図9は所定範囲内でかごが下方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図、図10は所定範囲を超えてかごが上方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図、図11は所定範囲を超えてかごが下方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図、図12は所定範囲内でかごが上方向に移動した状態を示す概略側面図、図13は所定範囲内でかごが下方向に移動した状態を示す概略側面図、図14は所定範囲を超えてかごが上方向に移動した状態を示す概略側面図、図15は所定範囲を超えてかごが下方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【0016】
エレベーター装置は図1、図2に示すように、建屋に形成された昇降路2に立設されるガイドレール5と、このガイドレール5に案内されて昇降路2を昇降するかご3と、かご3を吊る主索4と、かご3の出入口に設けられるかご戸6と、エレベーター乗場8に設けられ、かご戸6と同期して開閉可能な乗場戸7とを有している。また、このように構成されるエレベーター装置にあっては、乗客の乗降等により生じるかご内荷重の変化により着床誤差が生じるものであり、図12、図13に示すように、着床レベルから上下方向に予め定められた所定範囲を、例えば補正運転範囲Aとし、かご3着床時にこの補正運転範囲Aでずれが生じてもエレベーターの通常運転を継続するようになっている。
【0017】
そして、本実施形態のエレベーター装置は図1、図2に示すように、かご3上部のガイドレール係合位置に、かご3が戸6、7を開いた状態で移動し予め定められた所定範囲、即ち補正運転範囲Aを外れたときにかご3を緊急停止する緊急停止手段1を備えている。緊急停止手段1は図3、図4、図5に示すように、ガイドレール5を挟むように配置され、円弧状の当接面を有する一対の制動体9と、これらの制動体9の円弧両端部に取付けられる制動子10a、10bと、制動体9を制動体支点12を介して回動可能に軸支する一対のアーム11と、これらのアーム11間に配置され、制動体9をガイドレール5に押付ける方向にばね力を付与する押しばね14と、アーム11間に配置され、それぞれのアーム11をアーム支点13を介して回動可能に連結する連結部15と、押しばね14のばね力に打ち勝ち制動体9をガイドレール5から引き離すアクチュエータ16とを有して成っている。また、一方の制動子10aから他方の制動子10bまでの間は通常摺接面であり、この寸法Lは、補正運転範囲A×2と等しい値となっている。
【0018】
本実施形態にあっては、かご3の走行時、アクチュエータ16が作動し、押しばね14のばね力に打ち勝ち、図6に示すように制動体9をガイドレール5から引き離した状態に保持している。一方、かご3の停止に応じてアクチュエータ16は開放され、押しばね14のばね力により制動体9をガイドレール5に押付け、図7に示すように一対の制動体9でガイドレール5を挟持する。この状態にあるとき、例えば乗客が降りることに伴うかご内荷重の変化により図12に示すようにかご3が補正運転範囲A内で上方向に移動すると、図8に示すように制動体9の通常摺接面がガイドレール5に摺接しつつ回動する。この回動に応じてかご3が緊急停止することはない。また、例えば乗客が乗り込むことに伴うかご内荷重の変化により図13に示すようにかご3が補正運転範囲A内で下方向に移動すると、図9に示すように制動体9の通常摺接面がガイドレール5に摺接しつつ回動する。この回動に応じてかご3が緊急停止することはない。
【0019】
一方、何らかの要因により図14に示すようにかご3が所定範囲を超えて上方向に移動し、その移動量が補正運転範囲A+αとなると、図10に示すように制動体9はガイドレール5に摺接しつつさらに回動し、制動体9の円弧下端部に取付けられた制動子10bがガイドレール5に接するとともに制動体9の回動が制止される。これにより制動力が付与されかご3は緊急停止する。また、何らかの要因により図15に示すようにかご3が所定範囲を超えて下方向に移動し、その移動量が補正運転範囲A+αとなると、図11に示すように制動体9はガイドレール5に摺接しつつさらに回動し、制動体9の円弧上端部に取付けられた制動子10aがガイドレール5に接するとともに制動体9の回動が制止される。これにより制動力が付与されかご3は緊急停止する。
【0020】
本実施形態によれば、比較的簡易な構造を有する1つの装置、即ち緊急停止手段1により、かご3が戸6、7を開いた状態で上方向或いは下方向に移動して予め定められた範囲を外れたとき、かご3を緊急停止することができ、これによって、緊急時に適切、かつ迅速に対応可能な信頼性の高いエレベーターを実現することができる。
【0021】
なお、本実施形態のエレベーター装置にあっては、制動力を調整する調整手段を備えることもできる。例えば、押しばね14のばね力を調整することで、装置としての制動力を調整可能とすることができる。また、回動可能に軸支された制動体9の支点位置を変化させることで、即ち、制動支点12を水平方向に変位させることで、装置としての制動力を調整可能とすることができる。このように、制動力を調整可能とすることで、かご3をより適切に制動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】エレベーター装置の概略正面図である。
【図2】エレベーター装置の概略側面図である。
【図3】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態を示す平面図である。
【図4】制動体の拡大正面図である。
【図5】制動体の拡大側面図である。
【図6】かご走行時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図7】かご停止時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図8】所定範囲内でかごが上方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図9】所定範囲内でかごが下方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図10】所定範囲を超えてかごが上方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図11】所定範囲を超えてかごが下方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図12】所定範囲内でかごが上方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【図13】所定範囲内でかごが下方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【図14】所定範囲を超えてかごが上方向に移動した状態を示す概略側面である。
【図15】所定範囲を超えてかごが下方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 緊急停止手段
2 昇降路
3 かご
4 主索
5 ガイドレール
6 かご戸
7 乗場戸
8 エレベーター乗場
9 制動体
10a、10b 制動子
11 アーム
12 制動体支点
13 アーム支点
14 押しばね
15 連結部
16 アクチュエータ
A 補正運転範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、かごが戸を開いた状態で移動して予め定められた所定範囲を外れたときに、かごを緊急停止するエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かごが戸を開いた状態で下方向に移動して予め定められた所定範囲を外れると、非常止め装置で停止・保持を行うとともに、かごが戸を開いた状態で上方向に移動して予め定められた所定範囲を外れると、制動機で停止・保持を行い、かつ、過荷重となって非常止め装置が作動したとしても、過荷重の解消と共に緊急非常止め復帰装置によって非常止め装置を復帰させ、人手によることなく通常運転を再開可能としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−36426号公報(段落番号0014〜0032、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら前述した従来のものでは、非常止め装置及び制動機の2つを制御し、かごが戸を開いた状態で下方向に移動して予め定められた所定範囲を外れた場合は非常止め装置で停止・保持を行い、一方、かごが戸を開いた状態で上方向に移動して予め定められた所定範囲を外れた場合は制動機で停止・保持を行う必要があった。このため装置の構造およびその制御が複雑になるという問題があり、また、制動機故障時において、かごが戸を開いた状態で上方向に移動して予め定められた所定範囲を外れた場合、かごを停止・保持することが不可能であった。
【0004】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、簡易な構造で確実にかごの緊急停止を行うことのできるエレベーター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、建屋に形成された昇降路に立設されるガイドレールと、このガイドレールに案内されて前記昇降路を昇降するかごと、このかごが戸を開いた状態で移動し予め定められた所定範囲を外れたときに前記かごを緊急停止する緊急停止手段とを備えたエレベーター装置において、前記緊急停止手段は、前記ガイドレールを挟むように配置され、円弧状の当接面を有する回動可能な一対の制動体を備え、これらの制動体を前記ガイドレールに押し付けることにより制動力を付与することを特徴としている。
【0006】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明では、かごの停止に応じて制動体がガイドレールに押し付けられ、一対の制動体でガイドレールを挟持し、かごの上方向或いは下方向の移動により制動体はガイドレールに摺接しつつ回動する。そして、何らかの要因によりかごが所定範囲を超えて移動すると、制動体は制動力を付与する。このように1つの装置で、かごが戸を開いた状態で上方向或いは下方向に移動して予め定められた所定範囲を外れたとき、かごを緊急停止することができる。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記緊急停止手段は、前記制動体の円弧両端部に取付けられる制動子と、前記制動体を回動可能に軸支する一対のアームと、これらのアーム間に配置され、前記制動体を前記ガイドレールに押付ける方向にばね力を付与する押しばねと、前記アーム間に配置され、それぞれのアームを支点を介して回動可能に連結する連結部と、前記ばね力に打ち勝ち前記制動体を前記ガイドレールから引き離すアクチュエータとを備えていることを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明によれば、かごの停止に応じてアクチュエータを開放し押しばねのばね力により制動体をガイドレールに押し付け、一対の制動体でガイドレールを挟持する。この状態でかごが上方向或いは下方向に移動すると制動体はガイドレールに摺接しつつ回動する。そして、乗客の乗降等によりかごが予め定められた所定範囲内で移動した場合は、制動体の通常摺接面がガイドレールに摺接するのみでかごが緊急停止することはない。一方、何らかの要因によりかごが所定範囲を超えて移動すると、制動体はガイドレールに摺接しつつさらに回動し、制動体の円弧両端部に取付けられた制動子のいずれか一方がガイドレールに接するとともに制動体の回動が制止される。これにより制動力が作用し、かごは緊急停止する。これによって、比較的簡易な構造で確実にかごの緊急停止を行うことができる。
【0009】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、前記緊急停止手段は、制動力を調整する調整手段を備えていることを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明の請求項3に係る発明によれば、調整手段で制動力を調整可能とすることにより、かごを適切に制動することができる。
【0011】
さらにまた、本発明の請求項4に係る発明は、前記調整手段は、前記押しばねのばね力を調整することを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明の請求項4に係る発明によれば、押しばねのばね力を調整することで制動力を調整するものであり、これによって、正確な制動力の調整が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的簡易な構造を有する1つの装置で、かごが戸を開いた状態で上方向或いは下方向に移動して予め定められた所定範囲を外れたとき、かごを緊急停止することができ、これによって、緊急時に適切、かつ迅速に対応可能な信頼性の高いエレベーターを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るエレベーター装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1はエレベーター装置の概略正面図、図2はエレベーター装置の概略側面図、図3は本発明に係るエレベーター装置の一実施形態を示す平面図、図4は制動体の拡大正面図、図5は制動体の拡大側面図、図6はかご走行時の制動体の状態を示す要部拡大図、図7はかご停止時の制動体の状態を示す要部拡大図、図8は所定範囲内でかごが上方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図、図9は所定範囲内でかごが下方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図、図10は所定範囲を超えてかごが上方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図、図11は所定範囲を超えてかごが下方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図、図12は所定範囲内でかごが上方向に移動した状態を示す概略側面図、図13は所定範囲内でかごが下方向に移動した状態を示す概略側面図、図14は所定範囲を超えてかごが上方向に移動した状態を示す概略側面図、図15は所定範囲を超えてかごが下方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【0016】
エレベーター装置は図1、図2に示すように、建屋に形成された昇降路2に立設されるガイドレール5と、このガイドレール5に案内されて昇降路2を昇降するかご3と、かご3を吊る主索4と、かご3の出入口に設けられるかご戸6と、エレベーター乗場8に設けられ、かご戸6と同期して開閉可能な乗場戸7とを有している。また、このように構成されるエレベーター装置にあっては、乗客の乗降等により生じるかご内荷重の変化により着床誤差が生じるものであり、図12、図13に示すように、着床レベルから上下方向に予め定められた所定範囲を、例えば補正運転範囲Aとし、かご3着床時にこの補正運転範囲Aでずれが生じてもエレベーターの通常運転を継続するようになっている。
【0017】
そして、本実施形態のエレベーター装置は図1、図2に示すように、かご3上部のガイドレール係合位置に、かご3が戸6、7を開いた状態で移動し予め定められた所定範囲、即ち補正運転範囲Aを外れたときにかご3を緊急停止する緊急停止手段1を備えている。緊急停止手段1は図3、図4、図5に示すように、ガイドレール5を挟むように配置され、円弧状の当接面を有する一対の制動体9と、これらの制動体9の円弧両端部に取付けられる制動子10a、10bと、制動体9を制動体支点12を介して回動可能に軸支する一対のアーム11と、これらのアーム11間に配置され、制動体9をガイドレール5に押付ける方向にばね力を付与する押しばね14と、アーム11間に配置され、それぞれのアーム11をアーム支点13を介して回動可能に連結する連結部15と、押しばね14のばね力に打ち勝ち制動体9をガイドレール5から引き離すアクチュエータ16とを有して成っている。また、一方の制動子10aから他方の制動子10bまでの間は通常摺接面であり、この寸法Lは、補正運転範囲A×2と等しい値となっている。
【0018】
本実施形態にあっては、かご3の走行時、アクチュエータ16が作動し、押しばね14のばね力に打ち勝ち、図6に示すように制動体9をガイドレール5から引き離した状態に保持している。一方、かご3の停止に応じてアクチュエータ16は開放され、押しばね14のばね力により制動体9をガイドレール5に押付け、図7に示すように一対の制動体9でガイドレール5を挟持する。この状態にあるとき、例えば乗客が降りることに伴うかご内荷重の変化により図12に示すようにかご3が補正運転範囲A内で上方向に移動すると、図8に示すように制動体9の通常摺接面がガイドレール5に摺接しつつ回動する。この回動に応じてかご3が緊急停止することはない。また、例えば乗客が乗り込むことに伴うかご内荷重の変化により図13に示すようにかご3が補正運転範囲A内で下方向に移動すると、図9に示すように制動体9の通常摺接面がガイドレール5に摺接しつつ回動する。この回動に応じてかご3が緊急停止することはない。
【0019】
一方、何らかの要因により図14に示すようにかご3が所定範囲を超えて上方向に移動し、その移動量が補正運転範囲A+αとなると、図10に示すように制動体9はガイドレール5に摺接しつつさらに回動し、制動体9の円弧下端部に取付けられた制動子10bがガイドレール5に接するとともに制動体9の回動が制止される。これにより制動力が付与されかご3は緊急停止する。また、何らかの要因により図15に示すようにかご3が所定範囲を超えて下方向に移動し、その移動量が補正運転範囲A+αとなると、図11に示すように制動体9はガイドレール5に摺接しつつさらに回動し、制動体9の円弧上端部に取付けられた制動子10aがガイドレール5に接するとともに制動体9の回動が制止される。これにより制動力が付与されかご3は緊急停止する。
【0020】
本実施形態によれば、比較的簡易な構造を有する1つの装置、即ち緊急停止手段1により、かご3が戸6、7を開いた状態で上方向或いは下方向に移動して予め定められた範囲を外れたとき、かご3を緊急停止することができ、これによって、緊急時に適切、かつ迅速に対応可能な信頼性の高いエレベーターを実現することができる。
【0021】
なお、本実施形態のエレベーター装置にあっては、制動力を調整する調整手段を備えることもできる。例えば、押しばね14のばね力を調整することで、装置としての制動力を調整可能とすることができる。また、回動可能に軸支された制動体9の支点位置を変化させることで、即ち、制動支点12を水平方向に変位させることで、装置としての制動力を調整可能とすることができる。このように、制動力を調整可能とすることで、かご3をより適切に制動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】エレベーター装置の概略正面図である。
【図2】エレベーター装置の概略側面図である。
【図3】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態を示す平面図である。
【図4】制動体の拡大正面図である。
【図5】制動体の拡大側面図である。
【図6】かご走行時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図7】かご停止時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図8】所定範囲内でかごが上方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図9】所定範囲内でかごが下方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図10】所定範囲を超えてかごが上方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図11】所定範囲を超えてかごが下方向に移動した時の制動体の状態を示す要部拡大図である。
【図12】所定範囲内でかごが上方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【図13】所定範囲内でかごが下方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【図14】所定範囲を超えてかごが上方向に移動した状態を示す概略側面である。
【図15】所定範囲を超えてかごが下方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 緊急停止手段
2 昇降路
3 かご
4 主索
5 ガイドレール
6 かご戸
7 乗場戸
8 エレベーター乗場
9 制動体
10a、10b 制動子
11 アーム
12 制動体支点
13 アーム支点
14 押しばね
15 連結部
16 アクチュエータ
A 補正運転範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋に形成された昇降路に立設されるガイドレールと、このガイドレールに案内されて前記昇降路を昇降するかごと、このかごが戸を開いた状態で移動し予め定められた所定範囲を外れたときに前記かごを緊急停止する緊急停止手段とを備えたエレベーター装置において、
前記緊急停止手段は、前記ガイドレールを挟むように配置され、円弧状の当接面を有する回動可能な一対の制動体を備え、これらの制動体を前記ガイドレールに押し付けることにより制動力を付与することを特徴としたエレベーター装置。
【請求項2】
前記緊急停止手段は、前記制動体の円弧両端部に取付けられる制動子と、前記制動体を回動可能に軸支する一対のアームと、これらのアーム間に配置され、前記制動体を前記ガイドレールに押付ける方向にばね力を付与する押しばねと、前記アーム間に配置され、それぞれのアームを、支点を介して回動可能に連結する連結部と、前記ばね力に打ち勝ち前記制動体を前記ガイドレールから引き離すアクチュエータとを備えていることを特徴とした請求項1記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記緊急停止手段は、制動力を調整する調整手段を備えていることを特徴とした請求項1、2記載のエレベーター装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記押しばねのばね力を調整することを特徴とした請求項3記載のエレベーター装置。
【請求項1】
建屋に形成された昇降路に立設されるガイドレールと、このガイドレールに案内されて前記昇降路を昇降するかごと、このかごが戸を開いた状態で移動し予め定められた所定範囲を外れたときに前記かごを緊急停止する緊急停止手段とを備えたエレベーター装置において、
前記緊急停止手段は、前記ガイドレールを挟むように配置され、円弧状の当接面を有する回動可能な一対の制動体を備え、これらの制動体を前記ガイドレールに押し付けることにより制動力を付与することを特徴としたエレベーター装置。
【請求項2】
前記緊急停止手段は、前記制動体の円弧両端部に取付けられる制動子と、前記制動体を回動可能に軸支する一対のアームと、これらのアーム間に配置され、前記制動体を前記ガイドレールに押付ける方向にばね力を付与する押しばねと、前記アーム間に配置され、それぞれのアームを、支点を介して回動可能に連結する連結部と、前記ばね力に打ち勝ち前記制動体を前記ガイドレールから引き離すアクチュエータとを備えていることを特徴とした請求項1記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記緊急停止手段は、制動力を調整する調整手段を備えていることを特徴とした請求項1、2記載のエレベーター装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記押しばねのばね力を調整することを特徴とした請求項3記載のエレベーター装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−215039(P2009−215039A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62663(P2008−62663)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
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