説明

エンジンの吸気構造

【課題】エンジンからエアクリーナへ伝わる振動を十分に軽減して、この振動による騒音を低減するとともに、エアクリーナまたはその支持部の損傷を抑制することができるエンジンの吸気構造を提供する。
【解決手段】過給機40と、エアクリーナ45と、第一吸気管51と、第二吸気管52とを備えて、エンジン31の上方に構成されるエンジン31の吸気構造において、エアクリーナ45と過給機40とは、該エアクリーナ45の吸気出口45aと該過給機40の吸気入口41aとがそれぞれエンジン31のクランク軸37を軸方向に挟んだ一方側と他方側とに位置して互いに向き合い、各々の開口方向が平行となるように配置し、第一吸気管51は、上流側で湾曲する上流側湾曲部51aと、下流側で湾曲する下流側湾曲部51bとを有して、エアクリーナ45と過給機40との間でS字状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に適用するエンジンの吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等において、エアクリーナからの空気を吸気管を介してエンジンに供給するようにしたエンジンの吸気構造が公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第4024515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のようなエンジンの吸気構造がコンバイン等に適用される場合、その適用場所がエンジンを収容するエンジンルーム内の限られた狭いスペースあることから、吸気ホースはエアクリーナとエンジンとの間で最短距離、またはそれに近い長さで設けられていた。そのため、エンジンからエアクリーナへ伝わる振動を十分に軽減することができず、この振動により騒音が大きくなるとともに、エアクリーナまたはその支持部が損傷するおそれがあった。
【0004】
そこで本発明は、エンジンからエアクリーナへ伝わる振動を十分に軽減して、この振動による騒音を低減するとともに、エアクリーナまたはその支持部の損傷を抑制することができるエンジンの吸気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、エンジンに吸入される空気を過給する過給機と、前記エンジンに吸入される空気を浄化するエアクリーナと、前記エアクリーナの吸気出口と前記過給機の吸気入口とに接続され、該エアクリーナからの空気を該過給機に導入可能とする第一吸気管と、前記過給機の吸気出口と前記エンジンの吸気入口とに接続され、該過給機からの圧縮空気を該エンジンに導入可能とする第二吸気管とを備えて、エンジンの上方に構成されるエンジンの吸気構造において、前記エアクリーナと前記過給機とは、該エアクリーナの吸気出口と該過給機の吸気入口とがそれぞれエンジンのクランク軸を軸方向に挟んだ一方側と他方側とに位置して互いに向き合い、各々の開口方向が平行となるように配置し、前記第一吸気管は、上流側で湾曲する上流側湾曲部と、下流側で湾曲する下流側湾曲部とを有して、前記エアクリーナと前記過給機との間でS字状に形成するものである。
【0007】
請求項2においては、前記第一吸気管は、その上流側湾曲部が平面視において前記第二吸気管と重複するように、該第二吸気管の上方に配置し、前記第二吸気管は、側面視においてクランク軸に設けられる冷却ファンの回転軌跡と一部重複するように、該冷却ファンの側方に配置するものである。
【0008】
請求項3においては、前記エアクリーナは、平面視において前記冷却ファンと一部重複し、側面視において前記冷却ファンの回転軌跡の外側に位置するように配置するとともに、前記過給機よりも上方に配置するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、エンジンの吸気構造の適用場所がエンジンルーム内のエンジン上方の限られた狭いスペースであっても、第一吸気管をエアクリーナと過給機との間に効率よくコンパクトに配置しながら、できるだけ長くして設置することが可能となる。また、S字状に形成されることから、第一吸気管がエンジンからエアクリーナへ伝わる振動を吸収するクッションとして機能することとなる。したがって、エンジンからエアクリーナへ伝わる振動を十分に軽減して、この振動による騒音を低減するとともに、エアクリーナまたはその支持部の損傷を抑制することもできる。
【0011】
請求項2においては、エンジンの吸気構造の適用場所がエンジンルーム内のエンジン上方の限られた狭いスペースであっても、第一吸気管をエアクリーナと過給機との間に効率よくコンパクトに配置しながら、できるだけ長くして設置することが可能となる。したがって、エンジンからエアクリーナへ伝わる振動を十分に軽減して、この振動による騒音を低減するとともに、エアクリーナまたはその支持部の損傷を抑制することもできる。また、過給機で圧縮されて高温となった第二吸気管を通る圧縮空気を、冷却ファンによる冷却風にて冷却することができる。
【0012】
請求項3においては、過給機で圧縮されて高温となった第二吸気管を通る圧縮空気を、エアクリーナによって邪魔されることなく、冷却ファンによる冷却風にて冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0014】
まず、本発明の一実施形態に係るエンジン31の吸気構造を適用したコンバイン1の全体構成について説明する。
【0015】
図1、図2に示すように、コンバイン1には、機体の機体フレーム2に対して、走行部3と、刈取部4と、脱穀部5と、選別部6と、穀粒貯溜部7と、排藁処理部8と、エンジン部9と、ミッション部10と、操縦部11とが備えられる。
【0016】
走行部3は機体フレーム2の下部に設けられる。走行部3は左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置12等を有して、クローラ式走行装置12により機体を前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0017】
刈取部4は機体フレーム2の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部4は分草具13や引起装置14や切断装置15や搬送装置16等を有して、分草具13により圃場の穀稈を分草し、引起装置14により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置15により引起後の穀稈を切断し、搬送装置16により切断後の穀稈を脱穀部5側へ搬送することができるように構成される。
【0018】
脱穀部5は機体フレーム2の左側前部に設けられ、刈取部4の後方に配置される。脱穀部5は搬送装置17や扱胴18(図3参照)や受網等を有して、搬送装置17により刈取部4から搬送されてくる穀稈を受け継いで排藁処理部8側へ搬送し、扱胴18(図3参照)および受網により搬送中の穀稈を脱穀し、その脱穀物を漏下させることができるように構成される。
【0019】
選別部6は機体フレーム2の左側部に設けられ、脱穀部5の下方に配置される。選別部6は揺動選別装置や風選別装置や穀粒搬送装置や藁屑排出装置等を有して、揺動選別装置により脱穀部5から落下する脱穀物を穀粒と藁屑や塵埃等とに揺動選別し、風選別装置により揺動選別後のものを更に穀粒と藁屑や塵埃等とに風選別し、穀粒搬送装置により選別後の穀粒を穀粒貯溜部7側へ搬送する一方、藁屑排出装置により藁屑や塵埃等を外部へ排出することができるように構成される。
【0020】
穀粒貯溜部7は機体フレーム2の右側後部に設けられ、脱穀部5および選別部6の右側方に配置される。穀粒貯溜部7は穀粒タンク21や穀粒排出装置22等を有して、穀粒タンク21により選別部6から搬送されてくる穀粒を貯溜し、穀粒排出装置22により貯溜中の穀粒を任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
【0021】
排藁処理部8は機体フレーム2の左側後部に設けられ、脱穀部5の後方に配置される。排藁処理部8は排藁搬送装置や排藁切断装置等を有して、排藁搬送装置により脱穀部5から搬送されてくる脱穀済みの穀稈を受け継いでこれを排藁として外部へ排出する、もしくは排藁切断装置へ搬送し、排藁切断装置により切断してから外部へ排出することができるように構成される。
【0022】
エンジン部9は機体フレーム2の右側前部に設けられ、穀粒貯溜部7の前方に配置される。エンジン部9はエンジン31等を有して、動力をエンジン31からこれを駆動源とする各部の装置に適宜の動力伝達機構を介して供給し、エンジン31により各部の装置を駆動させることができるように構成される。
【0023】
ミッション部10は機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部9の前方に配置される。ミッション部10はトランスミッション25等を有して、エンジン部9のエンジン31の動力が走行部3や刈取部4等の各装置へ供給される前に、トランスミッション25により当該動力を変速することができるように構成される。
【0024】
操縦部11は機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部9およびミッション部10の上方に配置される。操縦部11は操縦席26やステアリングハンドル27を含む操作具類等を有して、操縦席26に操縦者を着座させ、操作具類により各部の装置を操作することができるように構成される。
【0025】
このようにして、コンバイン1は、操縦部11での操作具類の操作によって、エンジン部9からエンジン31の動力を各部の装置に供給する等して、走行部3にて機体を走行させながら、刈取部4で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部5で刈取部4からの穀稈を脱穀し、選別部6で脱穀部5からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部7で選別部6からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部8で脱穀部5からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0026】
次に、エンジン部9の構成について説明する。
【0027】
エンジン部9は操縦部11に下方に配置される。図3に示すように、エンジン部9では、エンジン31が機体フレーム2の右側前部に支持され、その周囲にエンジンルーム30が形成される。エンジンルーム30において、エンジン31の右側方にはラジエータ32が右側方に向かって設けられ、これらのエンジン31とラジエータ32との間に冷却ファン33が設けられる。
【0028】
冷却ファン33はエンジン31から右側方へ突出される回転軸に支持され、この回転軸が同じくエンジン31から右側方へ突出されるクランク軸37にプーリやベルトを介して連動連結されることで、エンジン31の駆動にともなって回転可能とされる。なお、エンジン31に付設される冷却水ポンプやオルタネータ等も冷却ファン33と同様にして駆動可能とされる。
【0029】
ラジエータ32の右側方にはエンジンカバー35が設けられる。エンジンカバー35にはエンジン冷却用の外気を冷却風としてエンジンルーム30に取り入れる開口として、外気取入口が形成される。そして、図2に示すように、この外気取入口に除塵装置36が設けられる。
【0030】
このような構成により、エンジンルーム30で冷却ファン33が回転されるときに、その吸引力によって、エンジン冷却用の外気が外気取入口から除塵装置36を介してエンジンルーム30に取り入れられ、除塵装置36による除塵された外気が冷却風としてラジエータおよびエンジン31に向けて送られた後、エンジンルーム30の外部に脱穀部5側から放出可能とされる。
【0031】
また、図3、図4、図5に示すように、エンジン部9では、エンジンルーム30において、エンジン31のシリンダブロックの上部に固設されるシリンダヘッド34近傍に、過給機40や、エアクリーナ45や、マフラー55等が設けられる。
【0032】
過給機40はシリンダヘッド34の前面側に設けられる。過給機40はブロアホイールを内蔵するコンプレッサケース41と、タービンホイールを内蔵するタービンケース42とを有し、シリンダヘッド34に対して、コンプレッサケース41が右側に、タービンケース42が左側に位置するように配置される。
【0033】
エアクリーナ45はシリンダヘッド34の右後部の上方に設けられる。エアクリーナ45は、下流側(吸気排出側)でコンプレッサケース41の上流側(吸気取入側)に第一吸気管51を介して接続され、上流側でプレクリーナ48に吸気ダクト49を介して接続される。プレクリーナ48は、操縦部11と穀粒貯溜部7との間であって、穀粒貯溜部7の穀粒タンク21の上面よりも高い位置に配置される。
【0034】
そして、エアクリーナ45に接続されるコンプレッサケース41が、下流側で吸気マニホールド38に第二吸気管52を介して接続される。この吸気マニホールド38はシリンダヘッド34の後面側に備えられる。こうして、吸気マニホールド38の上流側に、吸気ダクト49や第一吸気管51や第二吸気管52等でエンジン31の吸気通路が形成される。
【0035】
このような構成により、エンジン31の吸気系においては、プレクリーナ48からエアクリーナ45に吸い込まれた空気が、エアクリーナ45により更に浄化処理された後、過給機40のコンプレッサケース41から吸気マニホールド38を経由してエンジン31の各気筒に供給可能とされる。
【0036】
また、マフラー55はシリンダヘッド34の前面側に設けられ、過給機40(タービンケース42)の左側方に配置される。マフラー55はその長手方向を左右方向として水平に延長され、その下方に配置される排気マニホールド39またはシリンダブロック等にボルト等を介して着脱可能に締結される。マフラー55は上流側(排気取入側)でタービンケース42の下流側(排気排出側)に排気管56を介して接続される。
【0037】
マフラー55の下流側にはテールパイプ58が接続され、その接続部から後方へ向けて水平に延出される。テールパイプ58はシリンダヘッド34の左側面側を通ってエンジン31の後側方まで延出された後、後上方へ向けて屈曲しつつ延出されて、脱穀部5よりも高い位置であって、プレクリーナ48よりも低い位置で、プレクリーナ48から離れる方向に開口される。
【0038】
そして、マフラー55に接続されるタービンケース42が、上流側で排気マニホールド39に接続される。この排気マニホールド39はシリンダヘッド34の前面側に備えられる。こうして、排気マニホールド39の下流側に、エンジン31の排気通路が排気管56やテールパイプ58等で形成される。
【0039】
このような構成により、エンジン31の排気系においては、エンジン31の各気筒から排気マニホールド39に排出された排気ガスが、マフラー55を経由して、テールパイプ58から外部に放出可能とされる。
【0040】
つづいて、エンジン31の吸気構造について、二つの吸気管51・52の配管構造を中心に説明する。
【0041】
図3、図4、図5に示すように、過給機40は、シリンダヘッド34の前面側に設けられ、クランク軸37を軸方向(左右方向)に挟んだ一方側、クランク軸37よりも前方側に配置される。過給機40のコンプレッサケース41は、エアクリーナ45からの空気を吸入するための吸気入口41aと、吸気マニホールド38へ向けて圧縮空気を排出するための吸気出口とを有し、吸気入口41aを通じて第一吸気管51に、吸気出口を通じて第二吸気管52に連通される。
【0042】
コンプレッサケース41の吸気入口41aは、コンプレッサケース本体の右側部に設けられ、右側方に向かって略水平に開口される。このコンプレッサケース41の吸気入口41aは、クランク軸37よりも前方側に位置し、その開口方向がクランク軸37の軸方向と略平行となるように配置される。一方、コンプレッサケース41の吸気出口はコンプレッサケース本体の後部に設けられ、後方に向かって開口される。
【0043】
エアクリーナ45はシリンダヘッド34の右後部の上方に設けられ、クランク軸37を軸方向(左右方向)に挟んだ他方側、クランク軸37よりも後方側に配置される。エアクリーナ45はプレクリーナ48からの空気を吸入するための吸気入口と、浄化した空気を過給機40のコンプレッサケース41へ向けて排出するための吸気出口45aとを有して、吸気入口を通じて吸気ダクト49に、吸気出口45aを通じて第一吸気管51に連通される。
【0044】
エアクリーナ45は、また、冷却ファン33の後部の上方に設けられ、平面視において冷却ファン33と一部重複するように配置される。同時に、エアクリーナ45は側面視において冷却ファン33の回転軌跡33aと重複せず、その外側に位置するように配置される。
【0045】
エアクリーナ45の吸気出口45aは、エアクリーナ45本体の左側部に設けられ、左側方に向かって開口される。このエアクリーナ45の吸気出口45aは、クランク軸37よりも後方側に位置し、その開口方向がクランク軸37の軸方向と略平行となるように設定される。一方、エアクリーナ45の吸気入口は、エアクリーナ45本体の後部に設けられ、後方に向かって開口される。
【0046】
こうして、エアクリーナ45と過給機40とが、エンジン31の上方で、エアクリーナ45の吸気出口45aとコンプレッサケース41の吸気入口41aとがそれぞれクランク軸37を軸方向に挟んだ一方側と他方側とに位置して互いに向き合って、各々の前後位置が異なると同時に、各々の上下位置が異なるように配置される。
【0047】
具体的には、エアクリーナ45と過給機40とが、エンジン31の上方で、エアクリーナ45の吸気出口45aとコンプレッサケース41の吸気入口41aとがそれぞれクランク軸37を軸方向に挟んだ後方側と前方側とに位置して互いに向き合って、コンプレッサケース41の吸気入口41aがエアクリーナ45の吸気出口45aよりも前方に位置すると同時に、下方に位置するように配置される。
【0048】
さらに、過給機40とその右後方に配置されたエアクリーナ45とが、エンジン31の上方で、クランク軸37の軸方向に互いに重複しない、即ち正面視において左右方向に重複しないように配置されたうえ、コンプレッサケース41の吸気入口41aとエアクリーナ45の吸気出口45aとが各々の左右位置が略同一となる、または離れるように配置される。
【0049】
また、二つの吸気管51・52のうち、一方の第一吸気管51は、シリンダヘッド34の上方で過給機40のコンプレッサケース41とエアクリーナ45との間に介設される。第一吸気管51は、上流側に円弧状に湾曲する上流側湾曲部51aを、下流側に同様に円弧状に湾曲する下流側湾曲部51bを有し、これらの上流側湾曲部51aと下流側湾曲部51bとを連結部51cにて連結することでS字状に形成される。
【0050】
第一吸気管51は、上流側湾曲部51aと下流側湾曲部51bとを連結する連結部51cをクランク軸37の略直上方に位置させることで、側面視また平面視においてS字状となるように配置される。ここでは、連結部51cはクランク軸37の軸方向、即ち左右方向に直線状に延長されて、クランク軸37と平行に配置される。
【0051】
なお、連結部51cは少なくとも中央部付近がクランク軸37の略直上方に位置して、上流側が下流側湾曲部51bに対向し、下流側が上流側湾曲部51aに対向するように、クランク軸37の軸方向に対して傾斜する方向に直線状に延長する形状であってもよい。
【0052】
上流側湾曲部51aはクランク軸37を挟んだ一方側、即ちクランク軸37よりも後方側に位置するようにシリンダヘッド34の後部の上方に配置される。上流側湾曲部51aは左側方に向かって突出した形状とされ、第二吸気管52の上方で当該第二吸気管52と平面視において一部重複するように配置される。
【0053】
下流側湾曲部51bはクランク軸37を挟んだ他方側、即ちクランク軸37よりも前方側に位置するようにシリンダヘッド34の前部に上方に配置される。下流側湾曲部51bは右側方に向かって突出した形状とされ、冷却ファン33よりも左方側で平面視において当該冷却ファン33と重複しないように配置される。
【0054】
また、上流側湾曲部51aには連結部51cと平行する上流側端部51dが連続され、その右側の端面に吸気入口51eが備えられる。吸気入口51eは下流側湾曲部51bの突出端面よりも左方側に配置され、右側方に向かって略水平に開口される。そしてこの吸気入口51eはエアクリーナ45の吸気出口45aに面して配置される。
【0055】
下流側湾曲部51bには連結部51cと平行する下流側端部51fが連続され、その左側の端面に吸気出口51gが備えられる。吸気出口51gは上流側湾曲部51aの突出端面よりも右方側に配置され、左側方に向かって開口される。そしてこの吸気出口51gはコンプレッサケース41の吸気入口41aに面して配置される。
【0056】
こうして、第一吸気管51が、エンジン31の上方で、吸気入口51eと吸気出口51gとがそれぞれクランク軸37を軸方向に挟んだ一方側と他方側とに位置して互いに向き合って、各々の前後位置が異なると同時に、上下位置が異なるように配置される。
【0057】
具体的には、第一吸気管51が、エンジン31の上方で、吸気入口51eと吸気出口51gとがそれぞれクランク軸37を軸方向に挟んだ後方側と前方側とに位置して互いに向き合って、吸気出口51gが吸気入口51eよりも前方に位置すると同時に、下方に位置するように配置される。
【0058】
さらに、第一吸気管51が、エンジン31の上方で、吸気入口51eと吸気出口51gとが各々の左右位置が略同一となる、または離れるように配置される。これにより、第一吸気管51が、エアクリーナ45とコンプレッサケース41との間に、吸気入口51eをエアクリーナ45の吸気出口45aに、吸気出口51gをコンプレッサケース41の吸気入口41aにあわせた状態で配置される。
【0059】
また、図5、図6に示すように、第一吸気管51の吸気入口51eと吸気出口51gとは、それぞれの中心51m・51nが第一吸気管51の軸心51hと略同一面上に位置するように配置される。このことから、エアクリーナ45の吸気出口45aとコンプレッサケース41の吸気入口41aも、それぞれの中心45b・41bが第一吸気管51の軸心51hと略同一面上に位置するように配置される。
【0060】
こうして、第一吸気管51が、エンジン31の上方で、過給機40のコンプレッサケース41とエアクリーナ45との間で仮想的な傾斜面上に、前側となるコンプレッサケース41側に位置する下流側端部51fが低くなり、後側となるエアクリーナ45側に位置する上流側端部51dが高くなるように位置して、側面視において前低後高の直線状に配置される。
【0061】
そして、第一吸気管51の下流側端部51fの吸気出口51gが過給機40のコンプレッサケース41の吸気入口41aに接続される一方、上流側端部51dの吸気入口51eがエアクリーナ45の吸気出口45aに接続される。これにより、コンプレッサケース41とエアクリーナ45とが第一吸気管51を介して接続され、吸気系において、エアクリーナ45からの空気が第一吸気管51を通じてコンプレッサケース41に導入可能とされる。
【0062】
また、他方の第二吸気管52はシリンダヘッド34の直上付近で過給機40のコンプレッサケース41と吸気マニホールド38との間に介設される。第二吸気管52は略直線状に形成され、クランク軸37の軸方向に対して傾斜するように前後方向にシリンダヘッド34の上面に沿って延長される。そして、第二吸気管52は前側となる上流側端部52aが後側となる下流側端部52bよりも右寄りとなるように配置される。
【0063】
そのうえ、第二吸気管52は第一吸気管51、特にその上流側湾曲部51aの下方に配置される。また、第二吸気管52は冷却ファン33の上部の左側方に位置して、側面視において冷却ファン33の回転軌跡33aと一部重複するように配置される。つまり、第二吸気管52はその一部が冷却ファン33による冷却風の通路上に位置するように配置される。
【0064】
そして、第二吸気管52の上流側端部52aの吸気入口が過給機40のコンプレッサケース41の吸気出口に接続される一方、第二吸気管52の下流側端部52bの吸気出口が吸気マニホールド38の吸気入口38aに接続される。これにより、コンプレッサケース41と吸気マニホールド38とが第二吸気管52を介して接続され、吸気系において、コンプレッサケース41からの圧縮空気が第二吸気管52を通じて吸気マニホールド38に導入可能とされる。
【0065】
以上のように、本発明の一実施形態に係るエンジン31の吸気構造は、エンジン31に吸入される空気を過給する過給機40と、エンジン31に吸入される空気を浄化するエアクリーナ45と、エアクリーナ45の吸気出口45aと過給機40のコンプレッサケース41に備えられる吸気入口41aとに接続されエアクリーナ45からの空気を過給機40に導入可能とする第一吸気管51と、過給機40の吸気出口41aと吸気マニホールド38の吸気入口38aとに接続され過給機40からの圧縮空気をエンジン31に導入可能とする第二吸気管52とを備えて、エンジン31の上方に構成されるものであって、エアクリーナ45と過給機40とは、エアクリーナ45の吸気出口45aと過給機40の吸気入口41aとがそれぞれエンジン31のクランク軸37を軸方向に挟んだ一方側と他方側とに位置して互いに向き合い、各々の開口方向が平行となるように配置し、第一吸気管51は、上流側で湾曲する上流側湾曲部51aと、下流側で湾曲する下流側湾曲部51bとを有して、エアクリーナ45と過給機40との間でS字状に形成する構成とされる。
【0066】
これにより、エンジン31の吸気構造の適用場所が、エンジンルーム30内のエンジン31上方の限られた狭いスペースであっても、第一吸気管51をエアクリーナ45と過給機40との間に効率よくコンパクトに配置しながら、できるだけ長くして設置することが可能となる。また、S字状に形成されることから、第一吸気管51がエンジン31からエアクリーナ45へ伝わる振動を吸収するクッションとして機能することとなる。したがって、エンジン31からエアクリーナ45へ伝わる振動を十分に軽減して、この振動による騒音を低減するとともに、エアクリーナ45またはその支持部の損傷を抑制することもできる。
【0067】
ここで、エンジン31の吸気構造は、さらにエアクリーナ45と過給機40とが、クランク軸37の軸方向に互いに重複しない、具体的には、正面視において左右方向に重複しないように配置する構成される。しかも、このエンジン31の吸気構造は、エアクリーナ45と過給機40とは、各々の開口方向がクランク軸37の軸方向と平行となるように配置するとともに、第一吸気管51は、上流側湾曲部51aと下流側湾曲部51bとを連結する連結部51cがクランク軸37と平行にその軸方向に延長するように形成する構成とされる。
【0068】
これにより、第一吸気管51をコンパクトに配置しながら、その長さをエアクリーナ45と過給機40との間でできるだけ長く確保することが可能となる。したがって、エンジン31からエアクリーナ45へ伝わる振動を軽減して、この振動による騒音を低減するとともに、エアクリーナ45またはその支持部の損傷を抑制することを図ることができる。
【0069】
本発明の一実施形態に係るエンジン31の吸気構造は、第一吸気管51の上流側湾曲部51aが平面視において第二吸気管52と重複するように第二吸気管52の上方に第一吸気管51を配置し、側面視においてクランク軸37に設けられる冷却ファン33の回転軌跡33aと一部重複するように該冷却ファン33の側方に第二吸気管52を配置する構成とされる。
【0070】
これにより、エンジン31の吸気構造の適用場所がエンジンルーム30内のエンジン31上方の限られた狭いスペースであっても、第一吸気管51をエアクリーナ45と過給機40との間に効率よくコンパクトに配置しながら、できるだけ長くして設置することが可能となる。したがって、エンジン31からエアクリーナ45へ伝わる振動を十分に軽減して、この振動による騒音を低減するとともに、エアクリーナ45またはその支持部の損傷を抑制することもできる。また、過給機40で圧縮されて高温となった第二吸気管52を通る圧縮空気を、冷却ファン33による冷却風にて冷却することができる。
【0071】
本発明の一実施形態に係るエンジン31の吸気構造は、平面視において冷却ファン33と一部重複し、側面視において冷却ファン33の回転軌跡33aの外側に位置するとともに、過給機40よりも上方に、エアクリーナ45を配置する構成とされる。
【0072】
これにより、過給機40で圧縮されて高温となった第二吸気管52を通る圧縮空気を、エアクリーナ45によって邪魔されることなく、冷却ファン33による冷却風にて冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】コンバインの全体的な構成を示した左側面図。
【図2】コンバインの全体的な構成を示した右側面図。
【図3】エンジン部の構成を示した正面模式図。
【図4】エンジンの吸気構造の構成を示した平面模式図。
【図5】エンジンの吸気構造の構成を示した左側面模式図。
【図6】第一吸気管の構成を示した斜視図。
【符号の説明】
【0074】
1 コンバイン
31 エンジン
33 冷却ファン
33a 回転軌跡
37 クランク軸
40 過給機
41 コンプレッサケース
41a 吸気入口
45 エアクリーナ
45a 吸気出口
51 第一吸気管
51a 上流側湾曲部
51b 下流側湾曲部
52 第二吸気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに吸入される空気を過給する過給機と、
前記エンジンに吸入される空気を浄化するエアクリーナと、
前記エアクリーナの吸気出口と前記過給機の吸気入口とに接続され、該エアクリーナからの空気を該過給機に導入可能とする第一吸気管と、
前記過給機の吸気出口と前記エンジンの吸気入口とに接続され、該過給機からの圧縮空気を該エンジンに導入可能とする第二吸気管とを備えて、
エンジンの上方に構成されるエンジンの吸気構造において、
前記エアクリーナと前記過給機とは、該エアクリーナの吸気出口と該過給機の吸気入口とがそれぞれエンジンのクランク軸を軸方向に挟んだ一方側と他方側とに位置して互いに向き合い、各々の開口方向が平行となるように配置し、
前記第一吸気管は、上流側で湾曲する上流側湾曲部と、下流側で湾曲する下流側湾曲部とを有して、前記エアクリーナと前記過給機との間でS字状に形成することを特徴とする、エンジンの吸気構造。
【請求項2】
前記第一吸気管は、その上流側湾曲部が平面視において前記第二吸気管と重複するように、該第二吸気管の上方に配置し、
前記第二吸気管は、側面視においてクランク軸に設けられる冷却ファンの回転軌跡と一部重複するように、該冷却ファンの側方に配置することを特徴とする、請求項1に記載のエンジン給気構造。
【請求項3】
前記エアクリーナは、平面視において前記冷却ファンと一部重複し、側面視において前記冷却ファンの回転軌跡の外側に位置するように配置するとともに、前記過給機よりも上方に配置することを特徴とする、請求項2に記載のエンジン気給構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−59834(P2010−59834A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225227(P2008−225227)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】