説明

エンジンの排気冷却構造

【課題】 エンジンとウォーターロックとの間を結ぶ排気管の長さを短くしても冷却水のエンジン側への逆流を効果的に防止できるエンジンの排気冷却構造を提供すること。
【解決手段】 排気ガス通路28bを形成する内管28と、内管28の外周側に形成され内管28との間に冷却水通路29aを形成する排気ホース29とを備えた排気管21と、上流端に形成された排気管接続部22aを介して排気管21の下流側に接続されたウォーターロック22とでエンジン15の排気冷却構造20を構成した。そして、排気管接続部22aと排気ホース29とを接続して、内管28をウォーターロック22の内部側に延ばした。また、内管28の下流端側部分を、下流端に近づくほど直径が大きくなるベルマウス形状の広角部28aに形成した。そして、このエンジン15の排気冷却構造20をウォータービークル10に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス通路と冷却水通路とをウォーターロック内で合流させて、排気ガスと冷却水とを混合して外部に放出する排気管を備えたエンジンの排気冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンから排出された排気ガスを通過させる排気ガス通路と、エンジンを冷却した冷却水を通過させる冷却水通路とを所定部分で合流させ、排気ガスと冷却水とを混合して外部に放出する排気管を備えた排気冷却構造が乗物に用いられている。このような排気冷却構造を備えた乗物の中に、船底から吸い込んだ水を船尾後方に噴射することにより推進力を発生させて水上を航走するウォータービークル(小型滑走艇)がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このウォータービークルが備える排気冷却構造では、エンジンからウォーターロック(マフラー)に延びる排気管(排気マニホールド)が二重管で構成され、その内部側の内管内が排気ガスを通過させる排気ガス通路を構成し、外部側の外管と内管との間の部分が冷却水を通過させる冷却水通路を構成している。そして、外管はウォーターロックの近傍まで延び、ゴムチューブを介してウォーターロックに接続されている。また、内管はウォーターロックの内部まで延びている。このため、排気ガスは内管内を通ってウォーターロック内に放出され、冷却水は、外管と内管との間およびゴムチューブと内管との間を通ってウォーターロック内に放出される。そして、排気ガスと冷却水とはウォーターロック内で混合される。
【特許文献1】特開平8−53098号公報
【発明の開示】
【0004】
しかしながら、前述した従来の排気冷却構造では、ウォーターロック内で排気ガスと冷却水とが混合するため、エンジンの排気脈動の影響によってウォーターロック内に開口する排気管の内管から冷却水がエンジン側に吸い込まれる虞がある。このため、排気脈動の影響を低減させる目的で、例えば、排気管をエンジンの側部から一旦エンジンの前側に延ばしエンジンの前部を囲ったのちに後方のウォーターロックに向けて延ばすことにより排気管の長さを長くした排気冷却構造も使用されている。しかしながら、エンジンルームが狭いウォータービークル等の小型船舶においては、長い排気管を設置するための設計上での自由度が低いため、長さの短い排気管を用いながら排気脈動による冷却水のエンジン側への吸い込みを効果的に防止できる排気冷却構造が望まれていた。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、エンジンとウォーターロックとの間を結ぶ排気管の長さを短くしても冷却水のエンジン側への逆流を効果的に防止できるエンジンの排気冷却構造を提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係るエンジンの排気冷却構造の構成上の特徴は、エンジンから排出された排気ガスを通過させる排気ガス通路を形成する内管と、内管の外周側に形成され内管との間にエンジンを冷却した冷却水を通過させる冷却水通路を形成する外管とからなる排気管と、内部に水逆流防止構造が形成されているとともに、上流端に排気管接続部が形成され、排気管接続部を介して排気管の下流側に接続されたウォーターロックとを備えたエンジンの排気冷却構造であって、ウォーターロックの排気管接続部と排気管の外管とを接続するとともに、排気管の内管をウォーターロックの内部側に延ばすことによって、排気管接続部と内管との間に、冷却水通路から流れてくる冷却水をウォーターロック内に開放するための冷却水開放口を形成し、冷却水開放口から放出される冷却水と排気ガス通路から放出される排気ガスとをウォーターロック内で混合させるとともに、内管の下流端側部分を、下流端に近づくほど直径が大きくなるように形成して、ウォーターロック内に放出される冷却水が拡散するようにしたことにある。
【0007】
このように構成した本発明に係るエンジンの排気冷却構造では、ウォーターロックの排気管接続部と排気管の外管とを接続するとともに、排気管の内管をウォーターロックの内部側に延ばしている。そして、内管の下流端側部分を、下流端に近づくほど直径が大きくなるように形成している。このため、排気ガスは、排気管の排気ガス通路からウォーターロック内に進行方向を外周側にやや膨張させるようにして噴射され、冷却水は、排気管の冷却水通路からウォーターロック内に内管の外周面に沿って進んだのちに外周側に拡散するように噴射される。
【0008】
この場合、冷却水は内管の開口から離れるようにして進むため、エンジンの排気脈動によって、排気管内をエンジン側に逆流することが防止される。その際、冷却水は、ウォーターロックの内壁の広範囲の部分に当たるため、ウォーターロックの冷却効果が向上する。そして、排気管内への逆流を防止され、かつウォーターロックを冷却した冷却水は排気ガスと混合される。なお、内管の下流端部側を上流側部分と同じ直径の真っ直ぐな管状にした場合には、排気ガスが内管から開放されたところで乱流が発生し易く、その乱流により排気効率が低下する虞があるが、内管の下流端側部分を、下流端に近づくほど直径が大きくなるように形成することにより、排気ガスをウォーターロック内に開放しやすくなり排気効率が向上する。
【0009】
また、本発明に係るエンジンの排気冷却構造の他の構成上の特徴は、内管の下流端側部分を、滑らかな曲面を描くように徐々に外周側に広がったベルマウス形状に形成することにより、下流端に近づくほど直径が大きくなるようにしたことにある。これによると、冷却水の冷却水通路からウォーターロック内への噴射が滑らかな曲面に沿ってスムーズに拡散するように行われるため、さらに効果的な、排気管への逆流防止およびウォーターロックの冷却が可能になる。また、排気効率も向上する。
【0010】
また、本発明に係るエンジンの排気冷却構造のさらに他の構成上の特徴は、冷却水開放口を構成する排気管接続部と内管との間の長さが、排気管接続部の下流端と内管の下流端との間の長さよりも短くなるようにしたことにある。このように、冷却水開放口から内管の下流端までの長さを、排気管接続部と内管との間の長さよりも長くすることにより、冷却水開放口からの冷却水の噴射の勢いが妨げられることがないので、冷却水の噴射効率を低下させることなく、内管の下流端による冷却水の拡散効果を発揮させることができる。
【0011】
また、本発明に係るエンジンの排気冷却構造のさらに他の構成上の特徴は、内管の下流端の外径が、排気管接続部の内径よりも小さくなるようにしたことにある。これによると、内管の下流端による冷却水の拡散をより広範囲にすることができ、ウォーターロックの冷却効果が向上する。すなわち、内管の下流端の外径を、排気管接続部の内径よりも大きくした場合には、冷却水は、ウォーターロック内の上流側部分に偏って進んでいき、内管の下流端部側を上流側部分と同じ直径の真っ直ぐな管状にした場合には、冷却水は拡散せずにウォーターロック内の下流側に偏って進んでいく。このため、内管の下流端側部分の直径を大きくするとともに、内管の下流端の外径を、排気管接続部の内径よりも小さくすることにより、冷却水の拡散を適度な状態にすることができる。
【0012】
また、本発明に係るエンジンの排気冷却構造のさらに他の構成上の特徴は、水逆流防止構造を、ウォーターロックの内部を上流側部分と下流側部分とに区画するパーテーションと、パーテーションを貫通して設けられ排気ガスと冷却水とを上流側部分から下流側部分に通すパーテーションパイプとで構成し、パーテーションパイプを、内管の下流端の内周面に接する接線のうちの内管の中心軸と交差する接線の内部側に位置させたことにある。これによると、排気ガスが進む方向にパーテーションパイプが位置するようになるため、排気効率が向上する。
【0013】
また、本発明に係るエンジンの排気冷却構造のさらに他の構成上の特徴は、エンジンの排気冷却構造がウォータービークルに設けられたものであることにある。ウォータービークルのような小型船舶においては、エンジンルームが狭いため排気管を短くして排気管が占めるスペースを小さくすることが好ましい。そして、本発明に係るエンジンの排気冷却構造によれば、排気管を短くしても冷却水の逆流を防止することができる。このため、本発明に係るエンジンの排気冷却構造をウォータービークルに設けることによって、短い排気管を用いて、その配置が容易になるとともに、冷却水のエンジン側への逆流を効果的に防止できるウォータービークルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るエンジンの排気冷却構造を備えたウォータービークル10を示している。このウォータービークル10では、船体11がデッキ11aとハル11bで構成されており、その船体11の上部における中央よりもやや前部側部分に操舵ハンドル12が設けられ、船体11の上部における中央部にシート13が設けられている。そして、船体11内の底部における前部側部分には燃料を収容するための燃料タンク14が設置され、船体11内の底部における中央部にエンジン15が設置されている。
【0015】
また、船体11の後端部には、推進機16が設置されており、この推進機16はインペラ軸(図示せず)を介してエンジン15に連結されている。そして、推進機16の後端部には、操舵ハンドル12の操作に応じて、後部側を左右に移動させることにより、ウォータービークル10の進行方向を左右に変更させるデフレクター17が取り付けられている。また、エンジン15には、燃料タンク14から供給される燃料と空気との混合気をエンジン15に送り込む吸気装置(図示せず)と、エンジン15から排出される排気ガスを船体11の後端部から外部に放出する排気装置18とが接続されている。
【0016】
エンジン15は、各気筒を構成する吸気弁と排気弁との開閉駆動により、吸気弁側に設けられた吸気装置から燃料と空気との混合気を取り込み、排気弁側に設けられた排気装置18に排気ガスを送り出す。その際、吸気弁側からエンジン15内に供給される混合気はエンジン15が備える点火装置の点火によって爆発し、この爆発によって、エンジン15内に設けられたピストンが上下に移動する。そして、そのピストンの移動によってクランク軸が回転駆動される。
【0017】
このクランク軸はインペラ軸に連結されており、回転力をインペラ軸に伝達してインペラ軸を回転駆動させる。また、インペラ軸の後端部は、推進機16内に配置されたインペラに連結されており、このインペラの回転によって、ウォータービークル10に推進力が生じる。推進機16は、船体11の底部に開口する水導入口16aと船尾に開口する水噴射口(図示せず)とを備えており、水導入口16aから導入される海水をインペラの回転により水噴射口から噴射させることにより船体11に推進力を生じさせる。
【0018】
なお、図示は省略しているが、吸気装置は、エンジン15に接続された吸気管や、吸気管に接続されたスロットルボディ等で構成されている。そして、船外の空気を吸気ダクトおよび吸気ボックスを介して吸引し、その空気の流量を、スロットルボディに設けられたスロットルバルブを開閉操作することにより調節して、エンジン15に供給する。また、その際、エンジン15に供給される空気に、燃料供給装置を介して燃料タンク14から供給される燃料を混合させる。
【0019】
排気装置18は、図2および図3に示した排気冷却構造20を備えており、エンジン15の側部に接続された排気管21と、排気管21の後端部に接続されたタンク状のウォーターロック22と、ウォーターロック22の後部に接続された排気管23等で構成されている。排気管21は、エンジン15の各気筒における排気弁側からエンジン15の側部に延びて集合したのちに、そのまま後方に向って延びている。そして、排気管21の後端部は、ウォーターロック22の前部に連通している。また、ウォーターロック22の後部上面からは、排気管23が後方に向って延びている。この排気管23は、ウォーターロック22の後部上面から一旦上方に延びたのちに下方後部に延びて、下流端部は船体11の後端下部に開口している。
【0020】
排気管21は、エンジン15側に設置された上流管21aと、上流管21aとウォーターロック22とを接続する接続管21bとで構成されており、上流管21aは、図2および図3に示したように、内管24と外管25とからなるアルミ二ウム製の二重管で構成されている。そして、内管24内が、エンジン15から排出される排気ガスを通過させるための排気ガス通路24aを構成し、内管24の外周面と外管25の内周面との間が、エンジン15等を冷却したのちの冷却水を通過させるための冷却水通路25aを構成している。
【0021】
冷却水通路25a内を通過する冷却水は、船体11の底部における後部側部分から取り込まれた海水等の水からなっており、この冷却水は、船体11内に設置された各冷却水路(図示せず)を通過したのちに冷却水通路25aからエンジン15等の各部分に送られる。また、上流管21aの下流端部側の周面における所定部分には、円筒接続部25bが設けられており、この円筒接続部25bとエンジン15等の所定部分とは冷却水ホース(図示せず)を介して接続されている。このため、冷却水通路25aからエンジン15等の各部分に送られエンジン15等を冷却した冷却水は、冷却水ホース内を通って円筒接続部25bから上流管21a内に戻ってくる。
【0022】
また、上流管21aの下流側端部には、ねじ穴を備えた複数のねじ形成部26が円周方向に一定間隔を保って形成されており、そのねじ形成部26のねじ穴の下流側の端面側から上流側に向かって上流管21aと接続管21bとを連結するボルト26aが差し込まれている。また、上流管21aの下流端側部分には、円周方向に間隔を保って上流側から下流側に連通する穴部が設けられており、円筒接続部25bから流れてくる冷却水は、この穴部を介して、接続管21b側に流れるようになっている。
【0023】
接続管21bは、上流管21aの下流端に連結されるテールパイプ27と、テールパイプ27の下流側内周面からウォーターロック22の内部に延びる内管28と、テールパイプ27の下流側外周面からウォーターロック22に向って延びる排気ホース29とで構成されている。テールパイプ27は、内管31と外管32とからなる軸方向の長さが短い二重管で構成されており、内管31内が内管24内の排気ガス通路24aに連通する排気ガス通路31aを構成し、内管31の外周面と外管32の内周面との間が、冷却水ホースおよび円筒接続部25bを介して冷却水通路25aに連通する冷却水通路32aを構成している。
【0024】
また、テールパイプ27における上流管21aに連結される上流端側部分には、ねじ穴を備えた複数のねじ形成部27aが円周方向に一定間隔を保って形成されており、そのねじ形成部27aのねじ穴の下流側の端部から上流側に向かって前述したボルト26aが差し込まれている。すなわち、上流管21aとテールパイプ27とは、それぞれねじ形成部26,27aに形成されたねじ穴にボルト26aを螺合させることにより連結されている。
【0025】
また、上流管21aとテールパイプ27との接合面には、シール用のガスケット34が設置されている。このガスケット34には、ボルト26aを通すための穴、排気ガス通路24a,31aを連通させるための穴および円筒接続部25bと冷却水通路32aを連通させるための穴が設けられており、これらの穴によって、上流管21aからテールパイプ27に排気ガスおよび冷却水が流れることができるとともに、上流管21aとテールパイプ27とをボルト26aで連結することができる。さらに、テールパイプ27の上流端側部分には、外管32の内面と外面との間を貫通する穴部を備えた突部27bが形成されており、その突部27bの穴部内に冷却水通路32a内を通過する冷却水の温度を測定する温度センサ35が取り付けられている。
【0026】
内管28は、アルミ二ウム製の円筒状パイプからなっており、その先端部(下流端部)に、先端側に行くほど直径が徐々に大きくなった滑らかなベルマウス形状の広角部28aを形成して構成されている。そして、この内管28は、上流端部をテールパイプ27の下流側部分の内面に螺合させることによって、テールパイプ27に固定されており、その下流端はウォーターロック22の内部に延びている。この内管28の内部は、排気ガス通路24a,31aに連通する排気ガス通路28bを構成する。
【0027】
排気ホース29は、可撓性を有する円筒状のゴムからなっており、その上流端部内に、テールパイプ27の下流側部分を差し込ませることによって、テールパイプ27に連結されている。また、ウォーターロック22の上流側端部には、円筒状の排気管接続部22aが設けられており、排気ホース29の下流端部は、ウォーターロック22まで延びて排気管接続部22aの外周面を覆っている。この排気ホース29と内管28との間には空間部が形成されており、この空間部で、冷却水通路32aに連通する冷却水通路29aが構成されている。
【0028】
そして、排気ホース29の上流側部分とテールパイプ27および排気ホース29の下流側部分と排気管接続部22aは、それぞれ、互いの対向部分を一対の締付け部材36で締め付けられることにより固定されている。締付け部材36は、それぞれ排気ホース29とテールパイプ27および排気ホース29と排気管接続部22aとの対向部分を水密的にシールした状態でその外周面を円周に沿って巻かれたスチールバンド36aと、スチールバンド36aの両端部を締め付けるねじ部材36bとで構成されている。
【0029】
したがって、各ねじ部材36bを所定の方向に回転操作することにより、それぞれのスチールバンド36aが円周に沿って締付けられる。これによって、排気ホース29とテールパイプ27および排気ホース29と排気管接続部22aとの対向部分がシールされた状態で互いに固定される。なお、内管31,28で本発明の内管が構成され、外管32と排気ホース29とで本発明の外管が構成される。また、冷却水通路29aは、内管28の外周面と排気管接続部22aの内周面との間に形成される空間部に連通しており、この空間部の下流端部で冷却水開放口が構成される。
【0030】
ウォーターロック22は、容器状の二つの部材の開口同士を溶接で接続してタンク状に形成した形状になっており、その上流端に前述した排気管接続部22aが設けられている。排気管接続部22aは、図3に示したように、ウォーターロック22に対して軸方向の角度を左右方向にずらすように傾斜して形成されており、接続管21bに対しては同軸になるように接続されている。また、ウォーターロック22の内部は、パーテーション37で上流側部分と下流側部分とに区画されている。このパーテーション37は、一方の面の中央側部分が窪み、他方の面の中央側部分が突出した曲面状の板部材で構成されており、凹部側の面を上流側に向けてウォーターロック22の前後方向の中心よりもやや後部側(下流側)に設置されている。
【0031】
そして、パーテーション37における内管28の広角部28aに略対向する部分に上下に間隔を保って一対のパーテーションパイプ38,39が、パーテーション37を貫通して設けられている。このパーテーションパイプ38,39は円筒状に形成されており、その上流端部は、内管28の広角部28aと同様のベルマウス形状の広角部38a,39aに形成されている。さらに、パーテーション37の下端側部分には、ウォーターロック22の上流側部分に溜まった冷却水を下流側部分に流すための、水抜き孔37aが形成されている。そして、ウォーターロック22の下流側部分には、排気管23の上流端側部分が、ウォーターロック22の天井部を貫通して入ってきており、その下端部は、ウォーターロック22の底部近傍まで延びている。
【0032】
このように構成された接続管21bとウォーターロック22とは、図4に示した位置関係になるようにして接続されている。すなわち、内管28の外周面と排気管接続部22aの内周面との間の長さをd1とし、排気管接続部22aの下流端と内管28の広角部28aの先端部との間の長さをd2とすると、長さd2は、長さd1よりも長くなるように設定されている。また、広角部28aの先端部の直径をD1とし、排気管接続部22aの内径をD2とすると、直径D1は、内径D2よりも短くなるように設定されている。さらに、広角部28aの内周面の先端部が接線方向に広がる角度をθとすると、パーテーションパイプ38,39は、この角度θの範囲内に位置するように設置されている。
【0033】
このように配置することにより、内管28の外周面と排気管接続部22aの内周面との間に形成される冷却水開放口からウォーターロック22の上流側部分に放出される冷却水が、適度な状態に広がるようになり、エンジン15に排気脈動が発生しても内管28内に逆流することを防止されるとともに、内管28内からウォーターロック22の上流側部分に放出される排気ガスとともに、効率よくウォーターロック22の下流側部分に進入していくようになる。
【0034】
つぎに、以上のように構成されたウォータービークル10を走行させるときの操作について説明する。まず、スタートスイッチ(図示せず)をオンに操作することによって、ウォータービークル10は航走可能な状態になり、シート13に座った運転者が操舵ハンドル12を操舵するとともに、スロットルレバー(図示せず)を操作することによりウォータービークル10は各操作に応じて所定の方向に所定の速度で航走を開始する。このウォータービークル10の航走の際、エンジン15から排出される排気ガスは、排気管21の排気ガス通路24a,31a,28bを通ってウォーターロック22内の上流側部分に流れる。
【0035】
また、エンジン15等を冷却してエンジン15側から流れてくる冷却水は、冷却水ホース、円筒接続部25bおよび冷却水通路32a,29aを通ってウォーターロック22内の上流側部分に流れる。この際、排気ガスは、図2に矢印aで示したように、内管28の広角部28aからやや広がるようにして噴射される。また、冷却水は、矢印bで示したように内管28の広角部28aによって拡散されるように広がる。このため、エンジン15に排気脈動が生じても、冷却水は内管28の内部側に逆流することなくウォーターロック22の壁面の広範囲の部分や排気ガスを冷却する。
【0036】
そして、排気ガスと冷却水は、混合した状態でパーテーションパイプ38,39を通過してウォーターロック22の下流側部分に入り、さらに、排気管23を通って船外に放出される。この際、パーテーションパイプ38,39の上流端に広角部38a,39bが形成されているため、排気ガスと冷却水とがパーテーションパイプ38,39内に入るときの流れがスムーズになり、効果的に排気ガスと冷却水とをパーテーションパイプ38,39内を通過させることができる。
【0037】
また、冷却水がウォーターロック22の上流側部分に溜まった場合には、パーテーション37の下端側部分に設けられた水抜き孔37aを通って、ウォーターロック22の下流側部分に流れる。そして、ウォーターロック22内の冷却水は、排気ガスの流れに乗って排気ガスとともに排出される。さらに、このウォータービークル10においては、排気管23とウォーターロック22によって船外の海水が逆流して排気管21側に浸入することも防止される。
【0038】
このように、本実施形態に係るエンジンの排気冷却構造20では、排気管21の接続管21bの外管を構成する排気ホース29をウォーターロック22の排気管接続部22aに接続し、内管28をウォーターロック22の内部側に延ばしている。そして、内管28の下流端側部分を、下流端に近づくほど直径が大きくなる広角部28aに形成している。このため、排気ガスは内管28内からウォーターロック22内にやや進路を広げるようにして噴射され、冷却水は、冷却水開放口から内管28の外周面に沿うようにしてウォーターロック22内に噴射される。
【0039】
この場合、冷却水は内管28の広角部28aによって広範囲に拡散されるため、エンジン15の排気脈動によって、排気管21内をエンジン15側に逆流することが防止される。また、拡散された冷却水が、ウォーターロック22の内壁の広範囲の部分に当たるため、ウォーターロック22の冷却効果が向上する。また、排気ガスも進路を広げるようにして進むため乱流が発生し難くなり、排気効率が向上する。さらに、冷却水開放口を構成する内管28の外周面と排気管接続部22aの内周面との間の長さd1を、排気管接続部22aの下流端と内管28の広角部28aの先端部との間の長さd2よりも短くしたため、冷却水開放口からの冷却水の噴射の勢いを広角部28aで妨げることなく、内管28の広角部28aによる冷却水の拡散効果を十分に発揮させることができる。
【0040】
また、内管28の広角部28aの先端部の直径D1を、排気管接続部22aの内径D2よりも短くしたため、内管28の広角部28aによる冷却水の拡散をより広範囲にすることができ、ウォーターロック22の冷却効果がさらに向上する。さらに、内管28の広角部28aの先端部が接線方向に広がる角度θの範囲内に、パーテーションパイプ38,39を設置するとともに、パーテーションパイプ38,39の上流端に広角部38a,39bを形成したため、排気効率が向上する。また、排気冷却構造20をこのように構成したため、排気管21の長さを短くしても冷却水のエンジン15側への逆流を効果的に防止できるウォータービークル10を得ることができる。
【0041】
また、本発明に係るエンジンの排気冷却構造は、前述した実施形態に限るものでなく適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、内管28の広角部28aを滑らかな曲面で構成されるベルマウス形状にしているが、この広角部としては、この形状に限らず、漏斗状に形成したり、階段状に直径を大きくしたりすることもできる。また、広角部の開口の形状も円形、楕円形、四角形等種々の形状にすることができる。さらに、前述した実施形態では、図2ないし図4に示したように、排気管接続部22aをウォーターロック22と一体で構成しているが、この排気管接続部22aはウォーターロック22と別体で構成して、固定部材を用いる等所定の方法で互いに連結してもよい。
【0042】
また、前述した実施形態では、排気冷却構造20をウォータービークル10に設けているが、本発明に係るエンジンの排気冷却構造20は、ウォータービークル10に限らず、排気ガス通路と冷却水通路とからなる排気管を備えたエンジンの排気冷却構造であれば他の乗物等にも用いることができる。また、エンジンの排気冷却構造を構成する他の部分の構造や材質等についても、本発明の技術的範囲内で適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの排気冷却構造を備えたウォータービークルを示す側面図である。
【図2】図1に示したウォータービークルが備えるエンジンの排気冷却構造を示した縦断面図である。
【図3】図1に示したウォータービークルが備えるエンジンの排気冷却構造を示した横断面図である。
【図4】接続管とウォーターロックとの位置関係を説明した縦断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10…ウォータービークル、15…エンジン、20…排気冷却構造、21…排気管、21b…接続管、22…ウォーターロック、22a…排気管接続部、24a,28b,31a…排気ガス通路、25a,29a,32a…冷却水通路、28…内管、28a…広角部、29…排気ホース、37…パーテーション、38,39…パーテーションパイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出された排気ガスを通過させる排気ガス通路を形成する内管と、前記内管の外周側に形成され前記内管との間にエンジンを冷却した冷却水を通過させる冷却水通路を形成する外管とからなる排気管と、
内部に水逆流防止構造が形成されているとともに、上流端に排気管接続部が形成され、前記排気管接続部を介して前記排気管の下流側に接続されたウォーターロックとを備えたエンジンの排気冷却構造であって、
前記ウォーターロックの排気管接続部と前記排気管の外管とを接続するとともに、前記排気管の内管を前記ウォーターロックの内部側に延ばすことによって、前記排気管接続部と前記内管との間に、冷却水通路から流れてくる冷却水を前記ウォーターロック内に開放するための冷却水開放口を形成し、前記冷却水開放口から放出される冷却水と前記排気ガス通路から放出される排気ガスとを前記ウォーターロック内で混合させるとともに、前記内管の下流端側部分を、下流端に近づくほど直径が大きくなるように形成して、前記ウォーターロック内に放出される冷却水が拡散するようにしたことを特徴とするエンジンの排気冷却構造。
【請求項2】
前記内管の下流端側部分を、滑らかな曲面を描くように徐々に外周側に広がったベルマウス形状に形成することにより、下流端に近づくほど直径が大きくなるようにした請求項1に記載のエンジンの排気冷却構造。
【請求項3】
前記冷却水開放口を構成する前記排気管接続部と前記内管との間の長さが、前記排気管接続部の下流端と前記内管の下流端との間の長さよりも短くなるようにした請求項1または2に記載のエンジンの排気冷却構造。
【請求項4】
前記内管の下流端の外径が、前記排気管接続部の内径よりも小さくなるようにした請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載のエンジンの排気冷却構造。
【請求項5】
前記水逆流防止構造を、前記ウォーターロックの内部を上流側部分と下流側部分とに区画するパーテーションと、前記パーテーションを貫通して設けられ排気ガスと冷却水とを前記上流側部分から前記下流側部分に通すパーテーションパイプとで構成し、前記パーテーションパイプを、前記内管の下流端の内周面に接する接線のうちの前記内管の中心軸と交差する接線の内部側に位置させた請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載のエンジンの排気冷却構造。
【請求項6】
前記エンジンの排気冷却構造がウォータービークルに設けられたものである請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載のエンジンの排気冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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