説明

エンジンの排気浄化装置

【課題】液体還元剤又はその前駆体に由来する物質が混合装置に析出し難くする。
【解決手段】エンジンの排気浄化装置は、還元剤を使用して排気中のNOxを選択還元浄化するSCR触媒と、SCR触媒の排気上流に液体還元剤又はその前駆体を噴射供給する噴射ノズルと、噴射ノズルとSCR触媒との間に位置する排気通路に配設され、噴射ノズルから噴射供給された液体還元剤又はその前駆体と排気との混合を促進するフィン36Eを備えた混合装置(ミキサ)36と、を有する。そして、混合装置36のフィン36Eは、電力の供給を受けて発熱する電熱帯で構成される。このようにすれば、電熱帯からなるフィン36Eを適宜発熱させることで、ここに付着した液体還元剤又はその前駆体から結晶が析出することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気に含まれるNOx(窒素酸化物)を浄化する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気に含まれるNOxを浄化する排気浄化システムとして、特開2009−24654号公報(特許文献1)に記載される排気浄化装置が提案されている。この排気浄化装置は、エンジン排気通路に配設されたSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒の排気上流に、エンジン運転状態に応じた流量で液体還元剤又はその前駆体を噴射供給し、SCR触媒で排気中のNOxを選択的に還元反応させることで、NOxを無害成分に浄化処理する。また、この排気浄化装置では、噴射ノズルを含む噴射装置から噴射供給された液体還元剤又はその前駆体と排気との混合を促進するために、噴射ノズルとSCR触媒との間に位置する排気通路に混合装置(ミキサ)を配設する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−24654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排気通路に混合装置を配設することで、液体還元剤又はその前駆体と排気との混合が促進される一方、噴射ノズルから噴射供給された液体還元剤又はその前駆体が混合装置に付着し、液体還元剤又はその前駆体に由来する物質が析出されてしまうおそれがある。混合装置に液体還元剤又はその前駆体に由来する物質が過度に析出されると、排気通路における流路面積が小さくなり、例えば、排圧上昇による燃費や出力の低下の恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は従来技術の問題点に鑑み、液体還元剤又はその前駆体に由来する物質が混合装置に析出し難くした排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
エンジンの排気浄化装置は、還元剤を使用して排気中のNOxを選択還元浄化するSCR触媒と、SCR触媒の排気上流に液体還元剤又はその前駆体を噴射供給する噴射ノズルと、噴射ノズルとSCR触媒との間に位置する排気通路に配設され、噴射ノズルから噴射供給された液体還元剤又はその前駆体と排気との混合を促進するフィンを備えた混合装置と、を有する。そして、混合装置のフィンを、電力の供給を受けて発熱する電熱帯で構成する。
【発明の効果】
【0007】
液体還元剤又はその前駆体に由来する物質の融点以上までフィンを発熱させることで、フィンに付着した液体還元剤又はその前駆体から結晶が析出することを抑制できる。また、フィンに結晶が析出しても、これが融点以上まで加熱されて溶解するため、その結晶を容易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】排気浄化装置を搭載したディーゼルエンジンの概要図
【図2】混合装置の第1実施例を示す斜視図
【図3】混合装置の第2実施例を示し、(A)は正面図、(B)はA−A断面図
【図4】混合装置の第3実施例を示し、(A)は正面図、(B)はB−B断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。
図1は、排気浄化装置を搭載したディーゼルエンジンの概要を示す。
ディーゼルエンジン10の吸気マニフォールド12に接続される吸気管14には、吸気流通方向に沿って、吸気中の埃などを濾過するエアクリーナ16、ターボチャージャ18のコンプレッサ18A、ターボチャージャ18により高温となった吸気を冷却するインタークーラ20、吸気脈動を平滑化する吸気コレクタ22がこの順番で配設される。
【0010】
一方、ディーゼルエンジン10の排気マニフォールド24に接続される排気管26(排気通路)には、排気流通方向に沿って、ターボチャージャ18のタービン18B、連続再生式ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF;Diesel Particulate Filter)装置28、還元剤前駆体としての尿素水溶液を噴射供給する噴射ノズル30、尿素水溶液から生成されるアンモニアを使用してNOxを選択還元浄化するSCR触媒32、SCR触媒32を通過したアンモニアを酸化させる酸化触媒34がこの順番で配設される。連続再生式DPF装置28は、少なくともNO(一酸化窒素)をNO2(二酸化窒素)へと酸化させるDOC(Diesel Oxidation Catalyst)28Aと、PM(Particulate Matter)を捕集・除去するDPF28Bと、を有する。なお、DPF28Bの代わりに、その基体表面に触媒(活性成分及び添加成分)を担持させたCSF(Catalyzed Soot Filter)を使用することもできる。
【0011】
また、噴射ノズル30とSCR触媒32との間に位置する排気管26には、噴射ノズル30から噴射供給された尿素水溶液と排気との混合を促進するフィンを備えた混合装置36が配設される。混合装置36は、別名「ミキサ」と称され、例えば、ここを通過した流体にフィンで旋回流や乱流を生じさせるものである。
混合装置36は、図2に示すように、排気管26のフランジ間に挟持固定される略矩形形状の板部材36Aを有する。板部材36Aは、排気管26のフランジに固定するためのボルト挿通孔36Bが四隅に開設されると共に、板面の略中央に排気通路の一部となる円形穴36Cが開設される。円形穴36Cには、板面が排気流と略平行な複数の板材からなる格子状の支持部材36Dが配設され、その排気上流又は排気下流の少なくとも一方に、矩形形状の電熱帯からなる複数のフィン36Eの基端が取り付けられる。電熱帯からなるフィン36Eは、板部材36Aの外周に取り付けられた端子36Fに電力の供給を受けて発熱する。なお、電熱帯としては、例えば、FCHR−1を素材とする、鉄−クロム電熱帯(1種、2種)などを使用することができる。
【0012】
還元剤タンク38に貯蔵される尿素水溶液は、ポンプ及び流量制御弁が内蔵された還元剤添加ユニット40を経由して、噴射ノズル30に供給される。ここで、還元剤添加ユニット40としては、ポンプが内蔵されたポンプモジュールと、流量制御弁が内蔵されたドージングモジュールと、に2分割された構成であってもよい。
連続再生式DPF装置28と噴射ノズル30との間に位置する排気管26には、排気の温度(排気温度)を検出する温度センサ42が取り付けられる。温度センサ42の出力信号は、コンピュータを内蔵した還元剤添加コントロールユニット(DCU;Dosing Control Unit)44に入力される。また、DCU44は、エンジン運転状態としての回転速度及び負荷を任意の時点で読み込み可能とすべく、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークを介して、ディーゼルエンジン10を電子制御するエンジンコントロールユニット(ECU;Engine Control Unit)46に接続される。そして、DCU44は、ROM(Read Only Memory)などに記憶された制御プログラムを実行することで、排気温度、回転速度及び負荷に応じて還元剤添加ユニット40を電子制御する。
【0013】
ここで、ディーゼルエンジン10の負荷としては、例えば、燃料噴射量、吸気流量、吸気圧力、過給圧力、アクセル操作量などトルクと密接に関連する状態量を使用することができる。また、ディーゼルエンジン10の回転速度及び負荷は、ECU46から読み込む構成に限らず、公知のセンサを用いて直接検出するようにしてもよい。
かかる排気浄化装置において、ディーゼルエンジン10の排気は、排気マニフォールド24、ターボチャージャ18のタービン18Bを経て、連続再生式DPF装置26のDOC28Aに導入される。DOC28Aに導入された排気は、NOがNO2へと酸化されつつDPF28Bへと流れる。DPF28Bでは、排気中のPMが捕集・除去されると共に、DOC28Aにより生成されたNO2を使用してPMが連続的に酸化(焼却)される。
【0014】
また、エンジン運転状態に応じて噴射ノズル30から噴射供給(添加)された尿素水溶液は、混合装置36により排気との混合が促進されつつ、排気熱及び排気中の水蒸気を使用して加水分解され、還元剤として機能するアンモニアへと転化される。このアンモニアは、SCR触媒32において排気中のNOxと選択還元反応し、無害なH2O(水)及びN2(窒素)へと浄化されることは知られたことである。このとき、DOC28AによりNOがNO2へと酸化され、排気中のNOとNO2との比率が選択還元反応に適したものに改善されるため、SCR触媒32におけるNOx浄化率を向上させることができる。一方、SCR触媒32を通過したアンモニアは、その排気下流に配設された酸化触媒34により酸化されるので、アンモニアがそのまま大気中に放出されることを抑制できる。
【0015】
さらに、排気管26に配設された混合装置36は、噴射ノズル30から噴射供給された尿素水溶液と排気との混合を促進するフィン36Eが電熱帯から構成されているので、その端子36Fに電力を供給することで、次のような効果が奏される。即ち、電熱帯からなるフィン36Eを尿素の融点以上に加熱することで、フィン36Eに尿素水溶液が付着しても、これが溶質たる尿素の融点以上に昇温されるため、フィン36Eに尿素結晶が析出することを抑制できる。また、フィン36Eに付着した尿素水溶液から溶媒たる水が蒸発して尿素結晶が析出されても、これが溶解されて除去される。
【0016】
このため、混合装置36に尿素結晶が析出し難くなり、排圧上昇による燃費や出力の低下を抑制することができる。
混合装置36としては、図2に示すものに限らず、図3に示すように、排気管26の横断面上に配設された板部材36Aの円形穴36Cに対して、排気流の上流及び下流に複数回屈曲する少なくとも1条の電熱帯からなるフィン36Eを取り付けてもよい。即ち、少なくとも1条の電熱帯からなるフィン36Eを遮蔽物として、複数回屈曲する電熱帯の排気上流面を利用して混合を促進させる。
【0017】
また、他の混合装置36としては、図4に示すように、板部材36Aの円形穴36Cにおける複数の横断面に角度差(例えば、90°の角度差)をもって配設された、螺旋状に捩じられた少なくとも2条の電熱帯からなるフィン36Eを取り付けてもよい。即ち、電熱帯を捩じると共に、これを排気流通方向で角度差をもって少なくとも2重に配置することで、排気流を乱して混合を促進させる。
【0018】
このようにすれば、混合装置36の基本的な機能に加え、図2に示すような支持部材36Dを使用しなくとも、電熱帯からなるフィン36Eを取り付けることができ、部品点数の削減によるコスト低減などを期待することができる。
【0019】
なお、本発明は、液体還元剤又はその前駆体として、尿素水溶液を使用する排気浄化装置に限らず、炭化水素を主成分とする軽油などを使用する排気浄化装置にも適用することができる。また、本発明は、連続再生式DPF装置28とSCR触媒32及び酸化触媒34とが略S字状の排気通路に配設される排気浄化装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
26 排気管(排気通路)
30 噴射ノズル
32 SCR触媒
36 混合装置
36D 支持部材
36E フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤を使用して排気中の窒素酸化物を選択還元浄化するSCR触媒と、
前記SCR触媒の排気上流に液体還元剤又はその前駆体を噴射供給する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルと前記SCR触媒との間に位置する排気通路に配設され、前記噴射ノズルから噴射供給された液体還元剤又はその前駆体と排気との混合を促進するフィンを備えた混合装置と、
を含んで構成され、
前記混合装置のフィンは、電力の供給を受けて発熱する電熱帯からなることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項2】
前記混合装置のフィンは、前記排気通路の横断面上に配設された格子状の支持部材に基端が取り付けられた、矩形形状の複数の電熱帯からなることを特徴とする請求項1記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項3】
前記混合装置のフィンは、前記排気通路の横断面上に配設された、排気流の上流及び下流に複数回屈曲する少なくとも1条の電熱帯からなることを特徴とする請求項1記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項4】
前記混合装置のフィンは、前記排気通路の複数の横断面上に角度差をもって配設された、螺旋状に捩じられた少なくとも2条の電熱帯からなることを特徴とする請求項1記載のエンジンの排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−127307(P2012−127307A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281131(P2010−281131)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】