説明

エンジンフードの取付構造およびこれを備えた建設機械

【課題】エンジンフードやヒンジ部分にかかる負荷を低減することが可能なエンジンフードの取付構造およびこれを備えた建設機械を提供する。
【解決手段】エンジンフード21の取付構造20では、エンジンルーム6を構成する外装フレーム31の一部(取付座部31a)に、エンジンフード21のヒンジ22が取り付けられている。エンジンフード21の開閉をロックするロック部23も、エンジンルーム6の上面に対して取り付けられている。エンジンフード21に含まれるヒンジ22やロック部23等の部材は、全て同じ振動系であるエンジンルーム6側に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に搭載されたエンジン等の動力源を収納するエンジンルームの一部を覆うように取り付けられたエンジンフードの取付構造およびこれを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設機械においては、動力源を含む動力室から発生する騒音を遮断するために、これらを格納する動力室を外装カバーによって覆った構造が一般的に用いられている。
一方、外装カバーによって覆われた動力室内の動力源は、定期的な整備点検が必要であり、緊急を要するメンテナンス等が必要な場合もある。この場合、例えば、ボルトやナット等の締結部材によってフレームに固定された外装カバーをその都度取り外して作業を行うことは非常に非効率であり、オペレータに負担がかかるおそれがある。
【0003】
そこで、動力室内に格納された機器類のメンテナンス等が必要になった場合でも、容易に外装カバーの内部のメンテナンス等を行うことを可能とするために、外装カバーの上面を覆うように取り付けられたエンジンフードの開閉構造が提案されている。
例えば、特許文献1には、水平方向に沿って配置された軸周りに回動可能なヒンジを介してエンジンフードの開閉を行うエンジンフードの取付構造が開示されている。
【特許文献1】特開2006−056326号公報(平成18年3月2日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のエンジンフードの取付構造では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたエンジンフードの取付構造では、外装カバー側とカウンタウェイト側という異なる振動系にまたがるようにしてエンジンフードが取り付けられているため、振動によってエンジンフード本体やヒンジ部分に大きな負荷がかかるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、エンジンフードやヒンジ部分にかかる負荷を低減することが可能なエンジンフードの取付構造およびこれを備えた建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るエンジンフードの取付構造は、カウンタウェイトを搭載した建設機械のエンジンルームの上部を覆うエンジンフードの取付構造であって、エンジンフードと、ヒンジと、ロック部と、を備えている。エンジンフードは、カウンタウェイト側を回動軸として前後方向において開閉される。ヒンジは、カウンタウェイト側の端部であって、エンジンルームと同一の振動系の部材に対して取り付けられており、エンジンフードを開閉するための回動軸を含むように構成されている。ロック部は、エンジンフードにおけるヒンジとは反対側の端部に配置されており、エンジンフードをエンジンルーム側に固定する。
【0007】
ここでは、例えば、油圧ショベルやホイルローダ等のように車体の後方にカウンタウェイトを搭載した建設機械において、エンジン等の動力源を収納するエンジンルームの上面を覆うように取り付けられたエンジンフードを、前後方向において開閉する。また、このエンジンフードを開閉させる回動軸となるヒンジが、エンジンルームを構成するフレーム等におけるカウンタウェイト側に取り付けられている。さらに、エンジンフードを閉じた際にエンジンルーム側の上面に固定するためのロック部を、ヒンジ側とは反対側に設けている。そして、このヒンジとロック部とが、エンジンルームと同一の振動系部材に対して取り付けられている。
【0008】
ここで、エンジンルームと同一の振動系部材とは、エンジンルームを構成するフレームや外装カバー等が含まれ、カウンタウェイト等のような別の振動系部材は含まれないものとする。
これにより、エンジンルーム内に収納されたエンジン等の動力源による振動や、作業中における作業機に対して加わる衝撃による振動が発生した場合でも、エンジンフードはヒンジ、ロック部とともに同一の振動系部材に対して固定されているため、ヒンジやロック部、エンジンフード自体にかかる負荷を低減することができる。この結果、エンジンフードやヒンジ、ロック部における変形や破損を効果的に防止することができる。
【0009】
第2の発明に係るエンジンフードの取付構造は、第1の発明に係るエンジンフードの取付構造であって、エンジンルームを覆う外装フレームをさらに備えている。そして、ヒンジは、外装フレームに対して取り付けられている。
ここでは、エンジンルームを構成する外装フレームに対して、ヒンジを取り付けている。
【0010】
これにより、エンジンルームの上面を覆うように取り付けられるエンジンフードのヒンジを、エンジンルームと同一の振動系部材に対して取り付けることができる。この結果、エンジンフード自体やヒンジ、ロック部にかかる負荷を低減して、ヒンジ等の変形や破損の発生を防止することができる。
【0011】
第3の発明に係るエンジンフードの取付構造は、第2の発明に係るエンジンフードの取付構造であって、ヒンジは、外装フレームに設けられた延長部に対して取り付けられている。
ここでは、エンジンフードのヒンジを、外装フレームを従来よりも延長して形成される延長部に対して取り付けている。
これにより、エンジンルームを構成する外装フレームの一部に対してヒンジを取り付けることで、エンジンフードおよびヒンジ、ロック部を、同一の振動系部材であるエンジンルーム側に取り付けることができる。この結果、車体の振動によってエンジンフードやヒンジ、ロック部にかかる負荷を低減することができる。
【0012】
第4の発明に係るエンジンフードの取付構造は、第2または第3の発明に係るエンジンフードの取付構造であって、ヒンジは、外装フレームに設けられた増設部に対して取り付けられている。
ここでは、エンジンフードのヒンジを、外装フレームの一部を従来よりも増設して形成される増設部に対して取り付けている。
【0013】
これにより、エンジンルームを構成する外装フレームの一部に対してヒンジを取り付けることで、エンジンフードおよびヒンジ、ロック部を、同一の振動系部材であるエンジンルーム側に取り付けることができる。この結果、車体の振動によってエンジンフードやヒンジ、ロック部にかかる負荷を低減することができる。
【0014】
第5の発明に係る建設機械は、第1から第4の発明のいずれか1つに係るエンジンフードの取付構造と、カウンタウェイトと、エンジンルームと、を備えている。
ここでは、上述したエンジンフードの取付構造が採用された建設機械として、本発明を特定している。
これにより、例えば、油圧ショベルやホイルローダ等の建設機械、特に中型以上の建設機械において、車体に振動が発生した場合でも、エンジンフードのロック側やヒンジ側にかかる負荷を低減することができる。この結果、エンジンフードやヒンジ、ロック部側の変形や破損を防止することができる。
【0015】
第6の発明に係る建設機械は、第5の発明に係る建設機械であって、カウンタウェイトは、建設機械に搭載されたキャブ、およびエンジンルームに対して、平面視において重複しないように配置されている。さらに、キャブ、エンジンルームおよびカウンタウェイトの順に前方から配置されている。
ここでは、本発明のエンジンフードの取付構造が搭載される建設機械として、例えば、6t以上の中型の油圧ショベル等の構成をキャブ、エンジンルーム、カウンタウェイトの配置によって特定する。
【0016】
ここで、「キャブ、エンジンルームおよびカウンタウェイトが平面視において重複しないように」とは、比較的小型の建設機械に見られるように、エンジンルームの上にキャブが配置されているような建設機械は排除されることを意味する。
これにより、特に、車体の振動が大きくなりやすい中型機以上の建設機械に搭載されたエンジンフードの取付構造において、ヒンジやロック部、エンジンフード自体にかかる負荷の大きさを効果的に低減することができる。
【0017】
第7の発明に係る建設機械は、第5または第6の発明に係る建設機械であって、カウンタウェイトとエンジンルームとは、建設機械の前後方向に沿って配置されたメインフレーム上にそれぞれ搭載されている。
ここでは、エンジンフードが上面に取り付けられるエンジンルームと、車体の後方に配置されるカウンタウェイトとが、それぞれメインフレーム上に載置されるようにして取り付けられる。
【0018】
ここで、エンジンルーム内で振動が発生した場合や、作業機等に加えられた衝撃によって振動が発生した場合には、メインフレームを介して、別の振動系部材となるカウンタウェイトに対しても振動が伝達される。
これにより、エンジンフードおよびそのヒンジ、ロック部が、エンジンルームとは別の振動系部材となるカウンタウェイト側には取り付けられていないため、エンジンフードやヒンジ、ロック部に対してかかる負荷を大幅に低減することができる。
【0019】
第8の発明に係る建設機械は、第5から第7の発明のいずれか1つに係る建設機械であって、カウンタウェイトは、エンジンルームと隣接する側に切り欠き部を有している。
ここでは、カウンタウェイトが、エンジンルーム側の端部に切り欠き部を有している。
ここで、切り欠き部とは、カウンタウェイトの幅方向における一部に形成された凹部等が含まれる。
【0020】
これにより、カウンタウェイトを車体後方に搭載する際に、エンジンフードの取付部分であるヒンジ部分と、カウンタウェイトとが干渉してしまうことを回避することができる。この結果、カウンタウェイト搭載時における作業性、組立て性を向上させることが可能になる。
【0021】
第9の発明に係る建設機械は、第8の発明に係る建設機械であって、切り欠き部には、エンジンルーム内に設置された配管類が配置されている。
ここでは、上述したカウンタウェイトのエンジンルーム側の端部に形成された切り欠き部を、配管スペースとして利用する。
ここで、この切り欠き部に通される配管としては、エンジンルーム内に存在するアフタークーラ用の配管や、燃料配管、尿素水用の配管等が含まれる。
これにより、組立て性向上のために形成されたカウンタウェイトの切欠き部を、配管スペースとして活用することで、エンジンルーム内の構成をより効率よく配置することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るエンジンフードの取付構造によれば、エンジンルーム内に収納されたエンジン等の動力源による振動や、作業中における作業機に対して加わる衝撃による振動が発生した場合でも、ヒンジやロック部、エンジンフード自体にかかる負荷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係るエンジンフードの取付構造を搭載した油圧ショベル(建設機械)1について、図1〜図11を用いて説明すれば以下の通りである。
[油圧ショベル1全体の構成]
本実施形態に係る油圧ショベル1は、図1に示すように、下部走行体2と、旋回台3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジンルーム6と、機器室9と、キャブ10と、エンジンフード21の取付構造20と、メインフレーム30(図4参照)と、を備えている。
【0024】
下部走行体2は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル1を前進、後進させるとともに、上面側に旋回台3を旋回可能な状態で搭載している。
旋回台3は、下部走行体2上において、任意の方向に旋回可能であって、上面に作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジンルーム6と、キャブ10とを搭載している。
【0025】
作業機4は、ブーム11と、ブーム11の先端に取り付けられたアーム12と、アーム12の先端に取り付けられたバケット13とを含むように構成されている。そして、作業機4は、図示しない油圧回路に含まれる各油圧シリンダ11a,12a,13a等によって、ブーム11やアーム12、バケット13等を上下に移動させながら、土砂や砂礫等の掘削を行う土木工事の現場において作業を行う。
【0026】
カウンタウェイト5は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回台3上におけるエンジンルーム6の後方に設けられている。また、カウンタウェイト5は、図9に示すように、メインフレーム30に含まれており前後方向に沿って配置された一対のI型フレーム30aにおける後端部に設置された載置部30aa上に搭載されている。さらに、カウンタウェイト5は、図4に示すように、エンジンルーム6と隣接する側の面における左右方向におけるほぼ中央部分に、切欠き(切り欠き部)5aを有している。切欠き5aは、図10および図11に示すように、エンジンルーム6内に配置されたアフタークーラ32の配管P1が設置される。このように、カウンタウェイト5に形成された切欠き5aを配管スペースとして利用することで、エンジンルーム6内の構成を効率よく配置することができる。
【0027】
エンジンルーム6は、図4および図5に示すように、カウンタウェイト5に隣接するように、メインフレーム30上における旋回台3の後端部に配置されている。また、エンジンルーム6は、図9に示すように、一対のI型フレーム30a,30aと、4本の脚部フレーム41a〜41d、4本の梁部フレーム42a〜42dを含む外装フレーム31によって外郭部分が形成され、内部にエンジン6a等の収納空間を形成している。そして、エンジンルーム6は、下部走行体2や作業機4を駆動するための動力源であるエンジン6a(図3参照)やアフタークーラ32(図10および図11参照)等を内部の収納空間に収納している。また、エンジンルーム6は、図9に示すように、4本の脚部フレーム41a〜41dが立設されることで、メインフレーム30に対して取り付けられている。つまり、エンジンルーム6とカウンタウェイト5とは、隣接配置されているものの、直接的に取り付けられている関係にはなく、メインフレーム30を介して互いに接続されている。このため、エンジンルーム6とカウンタウェイト5とは、エンジンルーム6内のエンジン6aの振動や作業機4等からの衝撃等に起因して振動する際には、それぞれ別々の振動系として機能する。さらに、エンジンルーム6は、図2および図3に示すように、上面にメンテナンス用の開口部を有しており、メンテナンス時以外はこの開口を、ヒンジ22を介して開閉可能なエンジンフード21によって覆っている。
【0028】
機器室9は、作業機4の後方に配置されており、図示しない燃料タンク、作動油タンクおよび操作弁等を収容する。
キャブ10は、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であって、作業機4の先端部を見通せるように、旋回台3上における作業機4の側方となる左側前部に配置されている。
【0029】
エンジンフード21の取付構造20は、図2および図3に示すように、エンジンルーム6の上面の一部を覆うように取り付けられたエンジンフード21のエンジンルーム6上への取付構造であって、ヒンジ22やロック部23を含むように構成されている。なお、このエンジンフード21および取付構造20の構成については、後段にて詳述する。
メインフレーム30は、図4に示すように、旋回台3の底部分を構成するフレームであって、この上にエンジンルーム6やカウンタウェイト5等がそれぞれ載置される。なお、このメインフレーム30に対するエンジンルーム6やカウンタウェイト5の搭載に関しては、後段にて詳述する。
【0030】
ここで、本実施形態の油圧ショベル1では、上述した構成のうち、キャブ10、エンジンルーム6およびカウンタウェイト5が、図5に示すように、平面視において重複しない状態で、かつこの順番で前方から順に配置されている。このような配置は、例えば、6tクラス以上の中型の油圧ショベルにみられるものである。
(エンジンフード21の構成)
エンジンフード21は、図2および図3に示すように、エンジンルーム6内のメンテナンス時等に開閉される略箱型形状の蓋部材であって、カウンタウェイト5側に取り付けられたヒンジ22を回動中心として前後方向に開閉される。このため、エンジンフード21は、開口部を大きくしてメンテナンス性を向上させるために、できる限り大きく構成されていることが好ましい。また、エンジンフード21は、閉状態において、前後方向においてキャブ10とカウンタウェイト5との間に挟まれるように配置されたエンジンルーム6の上面の一部を覆うように取り付けられている。そして、エンジンフード21は、図3、図6〜図8に示すように、カウンタウェイト5側の端部に取り付けられたヒンジ22と、キャブ10側の端部に取り付けられたロック部23と、取っ手24と、を有している。
【0031】
ヒンジ22は、図8に示すように、回動軸22aを中心として互いに回動可能な2つの台座22b,22cを含むように構成されている。そして、ヒンジ22の一方の台座22cは、カウンタウェイト5におけるエンジンルーム6側の面に形成された切欠き5aの上方に配置された外装フレーム31の取付座部(増設部)31aに対して取り付けられる。また、ヒンジ22の他方の台座22bは、エンジンフード21のカウンタウェイト5側の面に取り付けられる。ここで、ヒンジ22の取付位置は、エンジンルーム6を構成する外装フレーム31におけるカウンタウェイト5との境界部分となっている。これは、エンジンルーム6内のメンテナンス性を向上させるために、エンジンルーム6の上面開口とこれを覆うエンジンフード21とを、できる限り大きく設計したことに起因するものである。
【0032】
ロック部23は、エンジンフード21におけるキャブ10側の面に一対取り付けられており、エンジンフード21が閉状態(図2および図6参照)のときに開状態(図3および図7参照)へと移行しないように、エンジンルーム6の上面に対してエンジンフード21を固定する。
取っ手24は、エンジンフード21における一対のロック部23の間に配置されており、エンジンフード21の開閉を行う際に持ち手として利用される。
【0033】
(エンジンフード21の取付構造20の構成)
エンジンフード21の取付構造20は、上述した、エンジンフード21と、ヒンジ22とロック部23と、を含むように構成されている。
そして、本実施形態では、上述したように、エンジンルーム6の上面の一部を覆うように取り付けられたエンジンフード21と、エンジンフード21の開閉を行うヒンジ22と、エンジンフード21が閉状態の場合に開状態への移行を規制するロック部23とが、同一の振動系であるエンジンルーム6の外装フレーム31(取付座部31a)に対して固定されている。つまり、エンジンフード21のヒンジ22は、エンジンルーム6とは別の振動系となるカウンタウェイト5側には接続されておらず、エンジンフード21に含まれる部材は、全てエンジンルーム6側に接続されている。
【0034】
具体的には、上記振動系の違いは、油圧ショベル1が障害物を乗り越えた場合における重力加速度の比率(差)によって表すことができる。
つまり、両側の履帯Pによって同時に障害物を乗り越えた場合には、外装フレーム31はカウンタウェイト5に対して、約2.2〜2.3倍の重力加速度で振動する。また、片側の履帯Pによって同時に障害物を乗り越えた場合には、外装フレーム31はカウンタウェイト5に対して、約2.7〜2.8倍の重力加速度で振動する。
【0035】
このように、油圧ショベル1の後方部分の構造上の特徴により、エンジンルーム6の外装フレーム31と、カウンタウェイト5との間で、重力加速度に大きな差が生じることになる。
これにより、油圧ショベル1において、エンジンルーム6内のエンジン6aの振動や作業機4への衝撃等に起因する振動が発生した場合でも、エンジンフード21が異なる振動系にまたがって取り付けられていないため、エンジンフード21やヒンジ22等に掛かる負荷を低減することができる。この結果、エンジンフード21やヒンジ22、ロック部23等の変形や破損を防止することができる。
【0036】
[本エンジンフード21の取付構造20の特徴]
(1)
本実施形態のエンジンフード21の取付構造20では、図8に示すように、エンジンルーム6を構成する外装フレーム31の一部(取付座部31a)に、エンジンフード21のヒンジ22が取り付けられている。そして、エンジンフード21の開閉をロックするロック部23も、図6に示すように、エンジンルーム6の上面に対して取り付けられている。つまり、エンジンフード21に含まれるヒンジ22やロック部23等の部材は、全て同じ振動系であるエンジンルーム6側に取り付けられている。
【0037】
これにより、エンジンルーム6内に収納されたエンジン6aの振動や、作業機4に加えられた衝撃に起因する振動等が発生した場合、エンジンフード21は、メンテナンス性等を考慮してできる限り大きく設計されていたとしても、カウンタウェイト5等のような異なる振動系にまたがって取り付けられていない。このため、エンジンフード21やヒンジ22等に掛かる負荷を、従来よりも効果的に低減することができる。この結果、エンジンフード21が変形したり、ヒンジ22部分が破損したりする等の問題の発生を、効果的に防止することができる。
【0038】
(2)
本実施形態のエンジンフード21の取付構造20では、図8に示すように、エンジンフード21のヒンジ22を、エンジンルーム6の外郭を構成する外装フレーム31に対して取り付けている。
これにより、エンジンルーム6という共通の振動系に対して、エンジンフード21、ヒンジ22およびロック部23を固定することができる。よって、振動発生時におけるヒンジ22等にかかる負荷を低減して、その変形や破損等の発生を防止することができる。
【0039】
(3)
本実施形態の油圧ショベル1では、図8に示すように、外装フレーム31を増設して設けられた取付座部31aに対して、エンジンフード21のヒンジ22が取り付けられている。
これにより、外装フレーム31に連結された取付座部31aに対して取り付けられたヒンジ22は、外装フレーム31と同じ振動系部材となるため、エンジンフード21やヒンジ22等に掛かる負荷を効果的に低減することができる。
【0040】
(4)
本実施形態の油圧ショベル1は、図1に示すように、上述したエンジンフード21の取付構造20と、メインフレーム30の後端部に載置されたカウンタウェイト5と、外装フレーム31によって構成されるエンジンルーム6と、を含むように構成されている。
これにより、油圧ショベル1において振動が発生した場合でも、エンジンフード21やヒンジ22等に掛かる負荷を低減して、エンジンフード21等の変形や破損を効果的に防止することができる。
【0041】
(5)
本実施形態の油圧ショベル1では、図5等に示すように、キャブ10と、エンジンルーム6と、カウンタウェイト5とが、平面視において重複しないように、かつ前方からこの順に配置されている。
ここで、キャブ10、エンジンルーム6およびカウンタウェイト5とが平面視において重ならない配置とは、例えば、6tの中型機以上の比較的大型の油圧ショベル1において特有の構成である。
【0042】
これにより、エンジン6aの出力や作業機4のパワーが大きくなる等の理由により、比較的大きな振動が発生し易い中型機以上の油圧ショベル1において振動が発生した場合でも、エンジンフード21やそのヒンジ22等に掛かる負荷を低減して、これらの変形や破損を防止することができる。
(6)
本実施形態の油圧ショベル1では、図4および図9に示すように、カウンタウェイト5とエンジンルーム6とが、それぞれ別々にメインフレーム30に対して搭載されている。
【0043】
これにより、カウンタウェイト5とエンジンルーム6とは、それぞれ別の振動系として機能する。しかし、エンジンフード21のヒンジ22等は、カウンタウェイト5側へ取り付けられていない。このため、油圧ショベル1の車体が振動した場合でも、エンジンフード21やヒンジ22に掛かる負荷を低減して、エンジンフード21等の変形や破損を防止することができる。
【0044】
(7)
本実施形態の油圧ショベル1では、図4および図8に示すように、カウンタウェイト5におけるエンジンルーム6側の面の一部に、切欠き5aを設けている。
ここで、上述したエンジンフード21のヒンジ22は、エンジンフード21を前後方向において開閉可能とし、かつできる限り大きくするために、エンジンルーム6におけるカウンタウェイト5との境界ぎりぎりの部分に取り付けられている。このため、油圧ショベル1を組み立てる際に、最後にカウンタウェイト5を車体後部に載置する際に、ヒンジ22がカウンタウェイト5と干渉して、組立て時における作業性が低下してしまうおそれがある。
【0045】
このため、カウンタウェイト5側におけるヒンジ22の取付箇所に対応する部分に切欠き5aを設けることで、カウンタウェイト5をメインフレーム30の最後部へ載置する際の互いの干渉を防止して、組立て性を向上させることができる。
(8)
本実施形態の油圧ショベル1では、図8および図10、図11に示すように、カウンタウェイト5におけるエンジンルーム6側の面に形成された切欠き5aの空間内に、エンジンルーム6内に設置されたアフタークーラ32の配管P1を配置している。
【0046】
これにより、カウンタウェイト5を搭載する際のヒンジ22等との干渉防止用に形成されたカウンタウェイト5の切欠き5aを、配管P1のスペースとしても利用することができる。この結果、エンジンルーム6内に収納されるエンジン6a等の配置を効率的に行うことができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
(A)
上記実施形態では、ヒンジ22が、外装フレーム31の増設部としての取付座面31aに対して固定されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、外装フレームの増設部の替わりとして、図12に示すように、外装フレームの一部を延長した延長部31bに対してヒンジ22の一方の台座22cを取り付けるようにしてもよい。
【0048】
この場合でも、部品点数を増やすことなく、エンジンルーム6上におけるカウンタウェイト5側の端部にヒンジ22を取り付けることができるため、エンジンフード21のヒンジ22、ロック部23を共通の振動源であるエンジンルーム6(エンジンルーム6を構成する外装フレーム31)上に設置することができる。この結果、建設機械の車体が振動した場合でも、エンジンフード21やヒンジ22、ロック部23等に掛かる負荷を低減することができるという、上記と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(B)
上記実施形態では、ヒンジ22が、外装フレーム31の一部に対して固定されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、エンジンルームを構成する外装フレーム以外の他の部材に対してヒンジが取り付けられていてもよい。
【0050】
この場合でも、エンジンルームと同じ振動系の部材である限り、エンジンフードに掛かる負荷を低減することができる。
(C)
上記実施形態では、カウンタウェイト5におけるエンジンルーム6に隣接する側の面の一部に形成された切欠き5a内に、アフタークーラ32用の配管P1を配置した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、図13に示すように、尿素水等のような液体還元剤を用いてエンジンの排気ガス中の窒素酸化物を還元浄化するために、エンジンルーム6内におけるカウンタウェイト5側の最後端部に配置された尿素水タンク50に接続された配管P2を配置するようにしてもよい。
あるいは、上述したアフタークーラ32の配管P1と尿素水タンク50の配管P2とをそれぞれカウンタウェイトの切欠き部分に配置してもよい。
【0052】
この場合でも、カウンタウェイト5を搭載する際のヒンジ等との干渉防止用に形成されたカウンタウェイト5の切欠き5aを、配管P1,P2のスペースとしても利用することで、エンジンルーム6内に収納されるエンジン6a等の配置を効率的に行うことができる。
(D)
上記実施形態では、カウンタウェイト5におけるエンジンルーム6との隣接する面の一部に、カウンタウェイト5を搭載時の干渉防止用、かつ配管設置用のスペースとして、切欠き5aを設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
例えば、切欠き5aとしては、カウンタウェイトの全幅方向に沿って溝状に形成されたものであってもよいし、カウンタウェイトの高さ方向における中央部付近に形成された穴のようなものであってもよい。
(E)
上記実施形態では、6t以上の中型機以上の油圧ショベル1に対して、本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
例えば、中型機や大型機に限らず、小型の油圧ショベル等に対しても本発明の適用は当然に可能である。
ただし、車体に生じる振動の大きさ等を考慮すると、中型機以上に対して適用されることで、より効果を大きなものにすることができるという点で、上記実施形態のように、中型機以上の建設機械に対して適用されることが好ましい。
【0055】
(F)
上記実施形態では、本発明のエンジンフード21の取付構造20が適用される建設機械として、油圧ショベル1を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、油圧ショベル以外にも、図14に示すように、キャブ120およびカウンタウェイト130を搭載し、駆動輪114によって走行するホイルローダ(建設機械)100のエンジンルーム111に対しても同様に適用は可能である。
【0056】
なお、ホイルローダに対して本発明を適用した場合でも、油圧ショベルと同様に、小型機と比較して振動が大きい中型機以上に適用されることが、より効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のエンジンフードの取付構造は、エンジンルーム内に収納されたエンジン等の動力源による振動や、作業中における作業機に対して加わる衝撃による振動が発生した場合でも、ヒンジやロック部、エンジンフード自体にかかる負荷を低減することができるという効果を奏することから、エンジンフードの開閉機構を備えた各種建設機械に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンフードの取付構造を採用した油圧ショベルの外観の構成を示す斜視図。
【図2】図1の油圧ショベルの後方に搭載されたエンジンフードの取付構造を含むエンジンルームおよびカウンタウェイト周辺の構成を示す斜視図。
【図3】図2のエンジンルームの上面に取り付けられたエンジンフードの開状態を示す斜視図。
【図4】図1の油圧ショベルに含まれるメインフレームとその後端に載置されたカウンタウェイトを示す斜視分解図。
【図5】図2等のエンジンルームおよびカウンタウェイトの周辺の構成を示す平面図。
【図6】図2等のエンジンルームの上面に取り付けられたエンジンフードの取付構造を含む周辺の構成を示す側面図。
【図7】図6のエンジンフードの開閉状態を示す側面図。
【図8】図6および図7に含まれるエンジンフードの取付構造周辺の構成を示す拡大図。
【図9】図2等に含まれるカウンタウェイトおよびエンジンルームのメインフレームへの取付け部分を示す側面図。
【図10】図2および図3等に含まれるエンジンルーム内の構成を示す側面図。
【図11】図10のエンジンルーム内の構成を示す平面図。
【図12】本発明の他の実施形態に係るエンジンフードの取付構造周辺の構成を示す拡大図。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係る油圧ショベルのエンジンルーム内の構成を示す斜視図。
【図14】本発明のさらに他の実施形態に係るホイルローダの構成を示す側面図。
【符号の説明】
【0059】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 旋回台
4 作業機
5 カウンタウェイト
5a 切欠き(切り欠き部)
6 エンジンルーム
6a エンジン
9 機器室
10 キャブ
11 ブーム
11a ブームシリンダ
12 アーム
12a アームシリンダ
13 バケット
13a バケットシリンダ
20 エンジンフードの取付構造
21 エンジンフード
22 ヒンジ
22a 回動軸
22b 台座
22c 台座
23 ロック部
24 取っ手
30 メインフレーム
30a I型フレーム
30aa 載置部
31 外装フレーム
31a 取付座部(増設部)
31b 延長部
32 アフタークーラ
41a〜41d 脚部フレーム
42a〜42d 梁部フレーム
100 ホイルローダ(建設機械)
111 エンジンルーム
114 駆動輪
120 キャブ
130 カウンタウェイト
P1 配管(アフタークーラの配管)
P2 配管(尿素水タンクの配管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンタウェイトを搭載した建設機械のエンジンルームの上部を覆うエンジンフードの取付構造であって、
前記カウンタウェイト側を回動軸として前後方向において開閉されるエンジンフードと、
前記カウンタウェイト側の端部であって、前記エンジンルームと同一の振動系の部材に対して取り付けられており、前記エンジンフードを開閉するための回動軸を含むヒンジと、
前記エンジンフードにおける前記ヒンジとは反対側の端部に配置されており、前記エンジンフードを前記エンジンルーム側に固定するロック部と、
を備えているエンジンフードの取付構造。
【請求項2】
前記エンジンルームを覆う外装フレームをさらに備えており、
前記ヒンジは、前記外装フレームに対して取り付けられている、
請求項1に記載のエンジンフードの取付構造。
【請求項3】
前記ヒンジは、前記外装フレームに設けられた延長部に対して取り付けられている、
請求項2に記載のエンジンフードの取付構造。
【請求項4】
前記ヒンジは、前記外装フレームに設けられた増設部に対して取り付けられている、
請求項2または3に記載のエンジンフードの取付構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のエンジンフードの取付構造と、
前記カウンタウェイトと、
前記エンジンルームと、
を備えている建設機械。
【請求項6】
前記カウンタウェイトは、前記建設機械に搭載されたキャブ、および前記エンジンルームに対して、平面視において重複しないように、かつ前記キャブ、前記エンジンルームおよび前記カウンタウェイトの順に前方から配置されている、
請求項5に記載の建設機械。
【請求項7】
前記カウンタウェイトと前記エンジンルームとは、前記建設機械の前後方向に沿って配置されたメインフレーム上にそれぞれ搭載されている、
請求項5または6に記載の建設機械。
【請求項8】
前記カウンタウェイトは、前記エンジンルームと隣接する側に切り欠き部を有している、
請求項5から7のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項9】
前記切り欠き部には、前記エンジンルーム内に設置された配管類が配置されている、
請求項8に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−247100(P2008−247100A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88600(P2007−88600)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】