説明

エンジン停止制御装置

【課題】ブレーキの操作の検出により車両が駐車操作中又は渋滞中であることを判定し、駐車操作中又は渋滞中であるときにはエンジンの停止が発生しないようにする。
【解決手段】過去の一定時間Tの間においてブレーキペダルの踏まれた回数Mを求める(ステップS11)。この回数Mによりブレーキの操作が行われた頻度がわかる。回数Mがしきい値Nを超えるときは(ステップS12のY)、駐車操作中フラグを“1”とする(ステップS17)。これはドライバーが駐車の操作を実行中である(又は、渋滞中である)ことを示している。この場合は、アイドリングストップ禁止フラグを“1”に設定し(ステップS18)、アイドリングストップの実行を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン停止制御装置に関し、特に、車両が停止状態又は予め定められた速度以下である等の条件でエンジンを停止し、その後に予め定められた条件を満たしたときはエンジンを再始動する制御をおこなう、エンジン停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シフトレバーがリバースに操作されたときに車両が車庫入れ操作中であると認識し、その後、シフトレバーをリバース以外に操作しても車速が所定値以上に達しなければアイドリング停止を禁止することが開示されている。
特許文献2には、車両の駐車操作時にエンジンの停止を妨げること、駐車操作の識別基準が操舵機構の動作に関する情報(ステアリングホイールに加えられるトルク)、後退ギア入れに関する情報を利用することが開示されている。
【0003】
特許文献3には、セレクトレバーのセレクト位置が後退位置にあるときには、エンジンの停止を禁止することが開示されている。
特許文献4には、車両の発進後に車両が所定の速度に達するまではエンジンが停止するのを防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011‐27072公報
【特許文献2】特開2008‐510926公報
【特許文献3】特開2000‐320365公報
【特許文献4】特開平11‐257121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の停止の際又は車両の停止前の減速の際に車両のエンジンを自動停止させて、無駄な燃料の消費を低減させるアイドリングストップ機能が知られている。
しかし、アイドリングストップ機能を備えた車両を駐車スペースに入れるためにドライバーが駐車操作を行う際には、車両を前進、後退させるための発進、停止を何回か繰り返して車両の位置を調整する場合が多い。そのため、駐車操作中に頻繁にエンジンの始動、停止を繰り返すこととなって、エンジンの始動、停止に必要な燃料や電力が増大し、アイドリングストップ機能を備えていない場合よりも燃料消費が増加してしまう。また、アイドリングストップを行う度に駐車操作が中断されることになるので、ドライバーに違和感を与え、また、駐車完了に要する時間も長くなってしまう。
【0006】
そこで、駐車操作中等にアイドリングストップが発生しないようにする技術が知られている(特許文献1〜4)。
しかしながら、ブレーキの操作の検出により車両が駐車操作中又は渋滞中であることを的確に判定し、駐車操作中又は渋滞中であるときにはアイドリングストップ機能によるエンジンの自動停止が発生しないようにする技術については知られていなかった。
本発明の目的は、ブレーキの操作の検出により車両が駐車操作中又は渋滞中であることを判定し、駐車操作中又は渋滞中であるときにはエンジンの停止が発生しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の実施態様は、車両の速度を検出する速度検出手段と、前記速度検出手段による検出により前記車両が停止状態又は予め定められた第1の速度以下であるときはエンジンを停止し又その後に予め定められた条件を満たしたときは前記エンジンを再始動する制御手段と、を備えているエンジン停止制御装置において、前記車両のブレーキの操作を検出するブレーキ操作検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段の検出するブレーキの操作の頻度がしきい値より大きいときは前記エンジンの停止を禁止する、ことを特徴とするエンジン停止制御装置である。
【0008】
(2)この場合に、前記車両の変速機のレンジの位置を検出するレンジ位置検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記レンジ位置検出手段が検出した前記レンジの位置が駐車レンジであるときは前記禁止を解除する、ことを特徴とするようにしてもよい。
(3)また、前記制御手段は、前記速度検出手段により検出した前記車両の速度が前記第1の速度より大きな予め定められた第2の速度以上であるときは前記禁止を解除する、ことを特徴とするようにしてもよい。
【0009】
(4)さらに、前記制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段が検出した前記ブレーキの操作がポンピングブレーキの操作か否かを判断しポンピングブレーキの操作でないと判断した当該ブレーキの操作に基づいて該ブレーキの操作の頻度が前記しきい値より大きいか否かを判断する、ことを特徴とするようにしてもよい。
【0010】
(5)前記制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段で前記ブレーキが操作なしの状態から操作ありの状態に変化した際に前記速度検出手段の検出により前記車両は停止しておらず且その後前記ブレーキ操作検出手段で前記ブレーキの操作を検出している最中に前記速度検出手段の検出により前記車両は停止していない場合に当該ブレーキの操作を前記ポンピングブレーキの操作であると判断する、ことを特徴とするようにしてもよい。
(6)前記制御手段は、前記速度検出手段の検出した車両の速度が高くなるのに応じて前記しきい値として大きな値を用いる、ことを特徴とするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
(1)の実施態様によれば、ブレーキの操作の検出により車両が駐車操作中又は渋滞中であることを判定し、駐車操作中又は渋滞中であるときには制御手段によるエンジンの停止が行われないようにすることができる。
(2)の実施態様によれば、ドライバーが駐車操作を完了したと判断される場合には制御手段によるエンジンの停止が行われるようにすることができる。
【0012】
(3)の実施態様によれば、ドライバーが駐車操作を中断したと判断される場合には制御手段によるエンジンの停止が行われるようにすることができる。
(4)の実施態様によれば、ポンピングブレーキを除いたブレーキの操作により車両が駐車操作中又は渋滞中であることを判定することができる。
【0013】
(5)の実施態様によれば、ブレーキ操作と車両の速度とに基づいてポンピングブレーキと判定することができる。
(6)の実施態様によれば、車両の速度に応じて車両が駐車操作中又は渋滞中であることを的確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態であるエンジン停止制御装置を実現する制御系の電気的な接続を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態であるエンジン停止制御装置のアイドリングストップ機能に基づく制御の内容を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態であるエンジン停止制御装置の駐車操作中判定処理のフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態であるエンジン停止制御装置のブレーキ頻度テーブルの説明図である。
【図5】本発明の一実施形態であるエンジン停止制御装置のブレーキ頻度テーブルを説明するグラフである。
【図6】本発明の一実施形態であるエンジン停止制御装置の駐車操作中判定処理について説明するタイミングチャートである。
【図7】本発明の別の実施形態であるエンジン停止制御装置のブレーキ操作判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のエンジン停止制御装置を実現する制御系の電気的な接続を示すブロック図である。
本実施形態のエンジン停止制御装置が適用される車両は、原動機としてのエンジン、エンジンの回転駆動力を変速する変速機、変速機の出力で駆動される駆動輪、駆動輪に対して制動力を付与するブレーキ、エンジンの回転駆動力で駆動される発電機で発電された電力を蓄電し、スタータモータや補機類に電力を供給するバッテリ等を備えている。
【0016】
原動機としてのエンジンとしては種々のエンジンを適用することができるが、例えば、比較的小排気量の直列多気筒エンジンを適用している。なお、原動機に電動機を併設する、いわゆるハイブリッドシステムを適用することもできる。また、変速機には、種々の変速機を適用することができるが、例えば、ベルト式の無断変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)を適用している。さらに、ブレーキには種々のブレーキを適用することができるが、例えば、マスタシリンダを介在する液圧足踏み式ブレーキを適用している。
【0017】
エンジンはエンジンコントローラ2によって運転状態が制御される。エンジンコントローラ2によるエンジンの運転状態の制御要素としては、例えば燃料噴射装置による燃料噴射量、点火プラグによる点火時期などがある。
アイドリングストップコントローラ1は、マイクロコンピュータを中心に構成され、車両のアイドリングストップ機能の制御を行う。アイドリングストップコントローラ1には、エンジンコントローラ2、ブレーキスイッチ3、車速センサ4、及び、シフトポジションスイッチ5が接続されている。
ブレーキスイッチ3は、ブレーキペダルが踏みこまれているか否かを検出するスイッチである。車速センサ4は、車両の速度を検出するセンサである。シフトポジションスイッチ5は、変速機のシフトポジション(レンジの位置)を検出するスイッチである。
【0018】
アイドリングストップコントローラ1は、アイドリングストップ機能の制御を行う。具体的には、車両が停止したとき、又は、車両が停車前の減速中で第1の速度である一定速度以下となったとき等、予め定められたアイドリングストップ条件が成立したときに、エンジンコントローラ2にアイドリングストップ条件の成立を報知し、これを受けてエンジンコントローラ2がエンジンを停止する。また、その後、予め定められた条件(アイドリングストップ解除条件)を満たしたときは、アイドリングストップコントローラ1がエンジンコントローラ2にアイドリングストップ解除条件の成立を報知し、これを受けてエンジンコントローラ2がエンジンを再起動する。
【0019】
図2は、アイドリングストップ機能に基づく制御の内容を説明するフローチャートである。
アイドリングストップコントローラ1は、まず、アイドリングストップ条件が成立したか否かを判断する(ステップS1)。アイドリングストップ条件としては、車両が停止したこと、又は、車両が停車前の減速中で第1の速度である一定速度以下となったことが必須条件として挙げられる。その他には、一例を挙げれば、ブレーキペダルが踏みこまれていること、アクセルペダルが解放されていること、シフトポジションがD(ドライブ)レンジにあること、等の条件を満たすことが必要である。
【0020】
アイドリングストップ条件が成立しているときは(ステップS1のY)、アイドリングストップ禁止フラグが“1”であるか否かを判断する(ステップS2)。詳細は後述するが、アイドリングストップ禁止フラグは、アイドリングストップ条件が成立していてもアイドリングストップの実行を禁止することを示すフラグである。
【0021】
アイドリングストップ禁止フラグが“1”であるときは(ステップS2のY)、アイドリングストップは禁止し(ステップS3)、アイドリングストップ制御は行わない。よってエンジンはアイドリングストップ機能によっては停止しない。アイドリングストップ禁止フラグが“0”であるときは(ステップS2のN)、アイドリングストップは許可し(ステップS3)、アイドリングストップ制御を行なう。これによりアイドリングストップ機能によってエンジンが停止することがある。
【0022】
図3は、駐車操作中判定処理のフローチャートである。
この駐車操作中判定処理は、アイドリングストップコントローラ1が実行するもので、ドライバーが駐車の操作を実行中か(又は、渋滞中か)否かを判断し、駐車の操作を実行中(又は渋滞中)であるときは、アイドリングストップ禁止フラグを“1”とする処理である。
【0023】
アイドリングストップコントローラ1は、まず、予め定められた一定時間、例えば、現在からみた過去の一定時間を“T”とし、この時間Tの間においてブレーキスイッチ3で検出されたブレーキペダルの踏まれた回数“M”を求める(ステップS11)。この回数Mによりブレーキの操作が行われた頻度がわかる。
なお、ブレーキの操作が行われた頻度を求める手段は、このステップS11の処理に限定されるものではない。例えば、単位時間当たりのブレーキの操作の回数とすることができる。これは、例えば、現在から10秒前までの間にブレーキが操作された回数を10秒間で除算して算出した1秒あたりのブレーキ操作回数(単位:回/秒)である。また、ブレーキの操作の間隔とすることもできる。例えば、現在から10秒前までの間にブレーキが操作された回数で10秒間を除算して算出した時間(単位:秒)である。
【0024】
次に、後述するブレーキ頻度テーブル(図4)を参照し、回数Mのしきい値となる値“N”とステップS11で求めた回数Mとを比較する(ステップS12)。その結果、回数Mがしきい値N以下であるときは(ステップS12のN)、駐車操作中フラグを“0”とする(ステップS13)。駐車操作中フラグは、ドライバーが駐車の操作を実行中(又は、渋滞中)であることを示すフラグであり、“0”であるときはドライバーが駐車の操作を実行中でない(又は、渋滞中でない)ことを示している。この場合は、アイドリングストップ禁止フラグを“0”に設定し(ステップS14)、アイドリングストップの実行を許可する。
【0025】
一方、回数Mがしきい値Nを超えるときは(ステップS12のY)、ステップS15が“Y”で、かつ、ステップS16が“Y”である限りは(ステップS15,S16については後述)、駐車操作中フラグを“1”とする(ステップS17)。駐車操作中フラグが“1”であるときはドライバーが駐車の操作を実行中である(又は、渋滞中である)ことを示している。この場合は、アイドリングストップ禁止フラグを“1”に設定し(ステップS18)、アイドリングストップの実行を禁止する。
【0026】
すなわち、ブレーキペダルの操作を検出して、その操作の頻度を判定することで、車両が駐車操作中又は渋滞中であることを判定し、駐車操作中又は渋滞中であるときには、アイドリングストップ制御によるエンジンの停止が行われないようにすることができる。
次に、回数Mがしきい値Nを超えるときは(ステップS12のY)、ステップS15に進む。ステップS15では、シフトポジションスイッチ5が検出するシフトポジションがP(パーキング)レンジ以外か否かを判断する。シフトポジションがPレンジであるときは(ステップS15のN)、前述のステップS13,S14に進み、アイドリングストップの実行を許可する。
【0027】
これは、時間Tの間にブレーキペダルの踏まれた回数M、すなわち、ブレーキの操作の頻度が大きくて、駐車の操作がなされていると判断される場合であったとしても、シフトポジションがPレンジであるときは、その駐車の操作を終了して駐車が完了したと判断されるため、アイドリングストップの実行を許可するものである。
【0028】
また、シフトポジションがPレンジ以外のときは(ステップS15のY)、ステップS16に進み、車速センサ4で検出した車両の速度“spd”と、第2の速度となる速度“V”とを比較する(ステップS16)。速度Vは、車両の速度spdの予め定められたしきい値となるものであり、前述の第1の速度となる一定速度より値が大きい。そして、車両の速度spdが速度V以上であるときは(ステップS16のN)、前述のステップS13,S14に進み、アイドリングストップの実行を許可する。
【0029】
これは、時間Tの間にブレーキペダルの踏まれた回数M、すなわち、ブレーキの操作の頻度が大きくて、駐車の操作がなされていると判断された場合でも、車両の速度spdが速度V以上と高くなった場合は、ドライバーは駐車操作を行ったが、その後、操作を中断した場合であると判断できるので、アイドリングストップの実行を許可するものである。
図4は、ブレーキ頻度テーブルの説明図である。図5は、ブレーキ頻度テーブルを説明するグラフである。
【0030】
ブレーキ頻度テーブルは、前述のステップS12で説明したとおり、回数Mのしきい値となる値Nが登録されたテーブルである。ここでは、車両の速度に応じた複数のしきい値Nが登録されている。このしきい値Nは、ある速度の範囲では車両の速度が高くなるのにつれて値が大きくなるように決められている。
これは、ブレーキペダルの操作がある程度頻繁に行われていても、車両の速度が高い場合は駐車の操作中ではない(又は渋滞中ではない)と考えられるため、車両の速度が高くなるのに応じてしきい値Nの値も大きくし、車両の速度に応じて駐車操作中又は渋滞中であることを的確に判定することができるようにするものである。
【0031】
図6は、駐車操作中判定処理について説明するタイミングチャートである。
このタイミングチャートにおいて、“駐車操作中判定”は、駐車操作中フラグが“1”でドライバーが駐車の操作中(又は渋滞中)と判断されるときを“成立”、駐車操作中フラグが“0”でドライバーが駐車の操作中(又は渋滞中)でないと判断されるときを“不成立”として示している。“車速”は車速センサ4で検出した車両の速度を示している。“ブレーキスイッチ”はブレーキスイッチ3で検出したブレーキペダルの踏み込みの有無を“on”“off”で示している。“ブレーキ回数”は時間Tの間にブレーキペダルの踏まれた回数Mの時間変化を示している。“アイドルストップ許可”はアイドリングストップ禁止フラグが“0”となってアイドリングストップが“許可”されたか、“1”となって“不許可”されたかを示している。“Rレンジ”“Dレンジ”“Pレンジ”はシフトポジションスイッチ5が検出するシフトポジションで、R(リバース)レンジ、D(ドライブ)レンジ、P(パーキング)レンジがそれぞれ“on”なのか“off”なのかを示している。
【0032】
このタイミングチャートの例では、縦長の波線で示すある時点において、ブレーキペダルの操作がなされている。“ブレーキ回数”に示される横長の矢印は前述の時間Tの範囲を示している。“車速”に示される横長の波線は前述のしきい値となる速度Vの値を示している。縦長の波線で示すある時点で行われたブレーキペダルの操作により、時間Tにおけるブレーキペダルの踏まれた回数Mがしきい値Nを超えている(この例では、しきい値Nは2)(ステップS12のY)。この場合に、車両の速度spdが速度Vを下回っていて(ステップS16のY)、シフトポジションはPレンジ以外であるため(ステップS15のY)、“駐車操作中判定”は、駐車操作中フラグが“1”で駐車の操作中(又は渋滞中)と判断される“成立”となる。この場合は、アイドリングストップが禁止されることになる。
【0033】
その後、しばらく時間が経過すると、シフトポジションはPレンジになり(ステップS15のN)、“駐車操作中判定”は、駐車操作中フラグが“0”で駐車の操作中(又は渋滞中)ではないと判断される“不成立”となる。この場合は、アイドリングストップが許可されることになる。
次に、別の実施の形態について説明する。
【0034】
この実施の形態のエンジン停止制御装置も、適用される車両の構成は前述の実施の形態と同様であり、制御系の構成も図1を参照して前述した実施の形態と同様である。また、図2〜図6を参照して前述した制御内容と同一の制御を行っている。
本実施の形態が前述の実施の形態と異なるのは、図2〜図6を参照して前述した制御内容に加えて、図7を参照して後述する制御も実行している点にある。
【0035】
図3の処理では、ドライバーが駐車の操作中である(又は渋滞中である)と判断したときに、アイドリングストップを禁止する制御を行っている。この場合のドライバーが駐車の操作中である(又は渋滞中である)との判断の中には、ドライバーがポンピングブレーキの操作を行っている場合も含まれうる。
そこで、図7の処理は、ドライバーがポンピングブレーキの操作を行っているか否かを判断し、ポンピングブレーキの操作であるときは、当該ブレーキ操作を図3の処理のブレーキ回数Mから除外して、ポンピングブレーキの操作によりアイドリングストップが禁止されないようにするものである。
【0036】
図7は、ブレーキ操作判定処理のフローチャートである。
まず、アイドリングストップコントローラ1は、ブレーキスイッチ3により、ブレーキの操作がoffからonに変化したか否かを判断する(ステップS21)。ブレーキの操作がoffからonに変化したときは(ステップS21のY)、車両の速度spdが所定速度“A”より大きいか否かを判断する(ステップS22)。所定速度Aは、停車状態と判定されるような所定速度であり、一例を挙げれば、5km/hである。車両の速度spdが所定速度A以下の場合は(ステップS22のN)、今回のブレーキ操作を、図3のステップS11におけるブレーキ回数Mの数としてはカウントしない。すなわち、ブレーキ操作頻度を算出するブレーキの操作とはしない(ステップS25)。
【0037】
車両の速度spdが所定速度Aより大きい場合は(ステップS22のY)、ブレーキの操作が一定時間onか否かを判断し(ステップS23)、ブレーキの操作がonであれば(ステップS23のY)、車両の速度spdが所定速度A以下か否かを判断する(ステップS24)。車両の速度spdが所定速度Aより大きい場合は(ステップS24のN)、ステップS23の判断に戻り、ブレーキの操作がoffになっていれば(ステップS23のN)、当該ブレーキ操作はポンピングブレーキの操作であると判断されるので、図3のステップS11におけるブレーキ回数Mの数としてはカウントしない。すなわち、ブレーキ操作頻度を算出するブレーキの操作とはしない(ステップS25)。
【0038】
一方、この場合に、車両の速度spdが所定速度A以下の場合は(ステップS24のY)、当該ブレーキ操作はポンピングブレーキの操作でないと判断されるので、図3のステップS11におけるブレーキ回数Mの数としてカウントする。すなわち、ブレーキ操作頻度を算出するブレーキの操作とする(ステップS26)。
すなわち、ブレーキの操作がoffからonに変化したときに車両が停止状態と判断される速度ではなく、そのブレーキの操作のon中に車両が停止状態と判断される速度にならない場合には、ポンピングブレーキの操作であると判断する。一方、ブレーキの操作がoffからonに変化したときに車両が停止状態と判断される速度ではなく、そのブレーキの操作のon中に車両が停止状態と判断される速度になる場合には、ポンピングブレーキの操作ではないと判断する。
【0039】
なお、ポンピングブレーキの操作か否かの判断手法はこれに限定されるものではない。例えば、前回ブレーキの操作がonになってから今回ブレーキの操作がonになるまでのブレーキ操作がoffの間にアクセル操作がされていないことでポンピングブレーキの操作であると判断することができる。また、前回ブレーキの操作がonになってから今回ブレーキの操作がonになるまでのブレーキ操作のoffの時間が所定時間以下であることでポンピングブレーキの操作であると判断することもできる。
【0040】
本実施の形態では、図7の処理を追加することにより、ポンピングブレーキを除いたブレーキの操作により車両が駐車操作中(又は渋滞中)であることを判定することができる。
なお、以上説明した各実施の形態の説明は、本発明を限定するものでないことは言うまでもない。
【0041】
例えば、駐車の操作として、ドライバーの操作によるもののみならず、自動駐車の場合においても本発明を適用可能である。また、渋滞の際に先行車両に追従して自動ブレーキが働く場合においても本発明を適用可能である。
前述のしきい値Nは前述の例とは異なり固定値としてもよいし、走行中の車両のブレーキの操作頻度を計測し、その計測した値に基づいてしきい値Nを補正するようにしてもよい。
【0042】
また、前述の制御でアイドリングストップが許可された場合には、アイドリングストップが許可された時点で前述のアイドリングストップ条件が成立していればアイドリングストップを行うようにしてもよいし、アイドリングストップ条件が次回成立した際にアイドリングストップを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 アイドリングストップコントローラ
2 エンジンコントローラ
3 ブレーキスイッチ
4 車速センサ
5 シフトポジションスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段による検出により前記車両が停止状態又は予め定められた第1の速度以下であるときはエンジンを停止し又その後に予め定められた条件を満たしたときは前記エンジンを再始動する制御手段と、
を備えているエンジン停止制御装置において、
前記車両のブレーキの操作を検出するブレーキ操作検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段の検出するブレーキの操作の頻度がしきい値より大きいときは前記エンジンの停止を禁止する、
ことを特徴とするエンジン停止制御装置。
【請求項2】
前記車両の変速機のレンジの位置を検出するレンジ位置検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記レンジ位置検出手段が検出した前記レンジの位置が駐車レンジであるときは前記禁止を解除する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン停止制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記速度検出手段により検出した前記車両の速度が前記第1の速度より大きな予め定められた第2の速度以上であるときは前記禁止を解除する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン停止制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段が検出した前記ブレーキの操作がポンピングブレーキの操作か否かを判断しポンピングブレーキの操作でないと判断した当該ブレーキの操作に基づいて該ブレーキの操作の頻度が前記しきい値より大きいか否かを判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン停止制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段で前記ブレーキが操作なしの状態から操作ありの状態に変化した際に前記速度検出手段の検出により前記車両は停止しておらず且その後前記ブレーキ操作検出手段で前記ブレーキの操作を検出している最中に前記速度検出手段の検出により前記車両は停止していない場合に当該ブレーキの操作を前記ポンピングブレーキの操作であると判断する、ことを特徴とする請求項4に記載のエンジン停止制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記速度検出手段の検出した車両の速度が高くなるのに応じて前記しきい値として大きな値を用いる、ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン停止制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−11180(P2013−11180A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142778(P2011−142778)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】