エンジン制御装置
【課題】今回より後のクランク角信号の信号周期を、極力小さい記憶容量で高精度に予測するエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン制御装置は、今回のクランク角度θを読込み(S400)、今回計測したクランク角信号の信号周期と、前回計測した信号周期との変化量αを算出し(S402)、クランク角度に応じて設定された角度特性係数K(θ)と変化量αとを乗算して補正量Hを算出する(S406)。エンジン制御装置は、今回までに計測した信号周期のうち補正対象となる基準信号周期T(i)として今回計測した信号周期と補正量Hとを加算して、今回よりも後の信号周期である補正信号周期T’(i+1)を予測する(S410)。エンジン制御装置は、補正信号周期T’(i+1)を逓倍数で割った周期の逓倍角度クロックを生成し、逓倍角度クロックに同期してエンジン制御を実行する。
【解決手段】エンジン制御装置は、今回のクランク角度θを読込み(S400)、今回計測したクランク角信号の信号周期と、前回計測した信号周期との変化量αを算出し(S402)、クランク角度に応じて設定された角度特性係数K(θ)と変化量αとを乗算して補正量Hを算出する(S406)。エンジン制御装置は、今回までに計測した信号周期のうち補正対象となる基準信号周期T(i)として今回計測した信号周期と補正量Hとを加算して、今回よりも後の信号周期である補正信号周期T’(i+1)を予測する(S410)。エンジン制御装置は、補正信号周期T’(i+1)を逓倍数で割った周期の逓倍角度クロックを生成し、逓倍角度クロックに同期してエンジン制御を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランク軸の回転に伴い所定の角度間隔で発生するクランク角信号に基づいてエンジンを制御するエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料噴射弁に対する燃料噴射制御等のエンジンを適切に運転するための制御を、クランク軸の回転角度であるクランク角度を表わすクランク角信号に基づいて実行することが知られている。
【0003】
クランク角信号は、例えば、外周に所定の角度間隔で歯を設けたクランクロータをクランク軸に設置し、クランク軸とともにクランクロータが回転するときのクランクロータの歯をクランクロータの外周側に設置したクランクセンサにより検出し、歯が通過する毎にクランクセンサがパルス信号を出力して生成される。クランク角信号の各パルスは、クランクロータに設けられた歯の角度間隔にしたがい、10°CA(CA:Crank Angle)、6°CA等の角度間隔で発生する。
【0004】
しかし、燃費やドライバビリティの向上のため、クランク角信号が表わすクランク角度よりもさらに高精度なクランク角度に基づいてエンジン制御を行うことが望まれている。
そこで、特許文献1に開示されているように、今回までのクランク角信号の信号周期を計測し、計測した信号周期に基づいて予め次回のクランク角信号の信号周期を予測することにより、予測した信号周期内においてクランク角信号が発生する角度間隔よりも詳細なタイミングでエンジン制御を行う技術が知られている。
【0005】
特許文献1では、今回の信号周期と前回の信号周期との差分と、前回の信号周期と前々回の信号周期との差分との比率を今回の信号周期と前回の信号周期との差分に乗算することにより、今回の信号周期と次回の信号周期との差分を求めている。そして、今回の信号周期と次回の信号周期との差分により今回の信号周期を補正して、次回の信号周期を予測している。
【0006】
また、特許文献2では、次回のインクリメント持続時間(信号周期)を、1機関サイクルの1/k(kは気筒数)倍前の信号周期、または(1/k)×1機関サイクルの倍数前の信号周期から予測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−263150号公報
【特許文献2】特開2003−166821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、特許文献1では、今回までのクランク角信号の信号周期の差分の比を今回の信号周期と次回の信号周期との差分の比に適用して信号周期を補正し、次回の信号周期を予測している。
【0009】
しかしながら、クランク角信号の信号周期の差分の比は、今回と次回とで常に同じ特性ではなくクランク角度に応じて異なることがあるので、特許文献1の補正方式では次回の信号周期を予測するときに大きな誤差が生じるおそれがある。
【0010】
また、特許文献2では、信号周期を予測するために、少なくとも1機関サイクルの(1/k)倍前の1気筒分の角度区間に対応する信号周期を記憶しておく必要がある。例えば、4気筒のエンジンでクランク角信号が6°CA毎に発生する場合、720°CA/4気筒/6°CA=30個の信号周期を記憶する必要があるので、記憶容量が大きくなるという問題がある。
【0011】
また、特許文献2のように、1機関サイクルの1/k(kは気筒数)倍前の信号周期、または(1/k)×1機関サイクルの倍数前の信号周期から今回の信号周期を予測する場合、エンジン回転速度の変化が激しい場合には、信号周期の予測誤差が大きくなるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、今回より後のクランク角信号の信号周期を、極力小さい記憶容量で高精度に予測するエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
エンジン回転速度は、気筒内の圧力とエンジンが受ける負荷の大きさとによりクランク角度に応じて変化する。したがって、クランク角信号の信号周期もクランク角度に応じて変化する。
【0014】
そこで、請求項1から50に記載の発明によると、計測手段は、エンジンのクランク軸の回転に伴い所定の角度間隔で発生する信号列であるクランク角信号の信号周期を計測し、補正手段は、今回までに計測手段が計測した信号周期に基づき、クランク角信号で表わされるクランク軸のクランク角度に応じて、今回までに計測手段が計測した信号周期のうち補正対象となる基準信号周期を補正して今回より後の信号周期を予測する。
【0015】
この構成によれば、今回までに計測された信号周期と、クランク角度に応じて変化する信号周期の変化特性とに基づいて基準信号周期を適切に補正し、今回よりも後の信号周期を高精度に予測することができる。
【0016】
そして、角度位置予測手段は、補正手段が予測した今回よりも後の信号周期の範囲において、クランク角信号の角度間隔よりも詳細なクランク角度位置を高精度に求めることができる。
【0017】
また、請求項1に記載の発明によると、例えば、今回、または今回よりも前の今回に極力近い信号周期を記憶しておき、この信号周期に基づき、クランク角度に応じて基準信号周期を補正することにより、今回よりも後の信号周期を予測することができる。これにより、今回より後の信号周期をクランク角度毎に予測するために今回よりも前の対応する信号周期をすべて記憶しておく必要がないので、今回よりも後の信号周期を予測するための記憶容量を極力小さくすることができる。
【0018】
ところで、少なくとも一つの気筒の圧縮行程では、エンジン回転速度が減速する所定の角度区間においてエンジン回転速度の減速量が大きくなり、この区間の前後よりもクランク角信号の信号周期の増加量が大きくなる。
【0019】
そこで、請求項2に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間において基準信号周期を補正する場合、この所定の角度区間の前後よりも基準信号周期の補正量を大きくする。
【0020】
この構成によれば、エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速するときの信号周期の変化特性に応じて、今回よりも後の信号周期を高精度に予測できる。
【0021】
請求項3に記載の発明によると、補正禁止手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間において、今回、補正手段が基準信号周期を補正して求めた補正後の信号周期が基準信号周期よりも小さくなる場合、補正手段による補正を禁止する。
【0022】
この構成によれば、圧縮行程においてエンジン回転速度が減速し信号周期が長くなる角度区間において、今回、基準信号周期を補正して求めた補正後の信号周期が基準信号周期よりも小さくなる異常が発生すると、補正手段による補正を禁止し、適切な処理を施すことができる。
【0023】
クランク角度の角度区間のうち上死点を含む前後の所定の角度区間は、上死点に向かって減速していたエンジン回転速度が上死点を超えて加速に転じる区間であり、エンジン回転速度の変化が小さい区間である。
【0024】
そこで、請求項4に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の上死点を含む前後の所定の角度区間の信号周期を予測する場合、この所定の角度区間の直前および直後における基準信号周期の補正量の絶対値よりも基準信号周期の補正量の絶対値を小さくする。
【0025】
これにより、エンジンの少なくとも一つの気筒の上死点を含む前後の所定の角度区間のようにエンジン回転速度の変化が小さい角度区間の信号周期を予測する場合、補正量を適切に求めることができる。
【0026】
ところで、少なくとも一つの気筒の燃焼行程では、エンジン回転速度が加速する所定の角度区間においてエンジン回転速度の加速量が小さくなり、信号周期の減少量が前回よりも小さくなる。
【0027】
そこで、請求項5に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において基準信号周期を補正する場合、前回よりも基準信号周期の補正量の絶対値を小さくする。
【0028】
この構成によれば、エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において、エンジン回転速度が加速するときの信号周期の変化特性に応じて、今回よりも後の信号周期を高精度に予測できる。
【0029】
請求項6に記載の発明によると、補正禁止手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において、今回、補正手段が基準信号周期を補正して求めた補正後の信号周期が基準信号周期よりも大きくなる場合、補正手段による補正を禁止する。
【0030】
この構成によれば、燃焼行程においてエンジン回転速度が加速し信号周期が短くなる角度区間において、今回、補正して求めた補正後の信号周期が基準信号周期よりも長くなる異常が発生すると、補正手段による補正を禁止し、適切な処理を施すことができる。
【0031】
ここで、燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間と、同じ気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間とは、加速と減速とでエンジン回転速度の変化特性は異なるが、逆の変化特性であると考えることができる。
【0032】
そこで、請求項7に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間におけるエンジン回転速度の減速特性を変換して、該当気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において基準信号周期を補正するときの補正量を算出する。
【0033】
これにより、燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間のように、前の角度区間と同じ補正方式では適切に信号周期を予測できない角度区間において、圧縮行程におけるエンジン回転速度の減速特性を燃焼行程における加速特性に変換することにより、適切に基準信号周期を補正できる。
【0034】
また、圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間では、その前の角度区間とエンジン回転速度の変化量の特性が異なるので、前の角度区間と同じ補正方式では適切に信号周期を予測することが困難な場合がある。
【0035】
ここで、圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間と、他の気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間とは、減速と加速とでエンジン回転速度の変化特性は異なるが、逆の変化特性であると考えることができる。
【0036】
そこで、請求項8に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間におけるエンジンの加速特性を変換して、他の気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間において基準信号周期を補正するときの補正量を算出する。
【0037】
これにより、圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間のように、前の角度区間と同じ補正方式では適切に信号周期を予測できない角度区間において、燃焼行程におけるエンジン回転速度の加速特性を圧縮行程における減速特性に変換することにより、適切に信号周期を補正できる。
【0038】
請求項9に記載の発明によると、補正手段は、減速特性または加速特性の一方の特性を変換して基準信号周期を補正する場合、基準信号周期の補正量の絶対値を、減速特性または加速特性の他方の特性における変化量の絶対値よりも大きくする。
【0039】
これにより、同じ気筒において圧縮行程の減速区間から燃焼行程の加速区間に移る場合、あるいは異なる気筒において燃焼行程の加速区間から圧縮行程の減速区間に移る場合のように、エンジン回転速度の変化特性が変わり変化量の絶対値が大きくなる角度区間において、高精度に基準信号周期を補正できる。
【0040】
請求項10に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの回転加速度の絶対値が所定値以下となる角度区間において、回転加速度の絶対値が所定値よりも大きい角度区間よりも基準信号周期の補正量を小さくする。
【0041】
このように、エンジンの回転加速度が所定値以下となる角度区間のように、エンジン回転速度の変化量が小さい、すなわちエンジンの回転加速度の絶対値が所定値よりも小さくノイズにより信号周期が変動しやすい角度区間において補正量の絶対値を小さくすることにより、基準信号周期を補正するときのノイズによる誤補正を極力小さくすることができる。
【0042】
請求項11に記載の発明によると、補正手段は、今回までに計測した信号周期に基づき、クランク角度とともにエンジン回転速度に応じて基準信号周期を補正し、今回よりも後の信号周期を予測する。
【0043】
この構成によれば、クランク角度に加えて、エンジン回転速度に応じて異なる信号周期の変化特性に基づいて基準信号周期を適切に補正し、今回よりも後の信号周期を高精度に予測することができる。
【0044】
請求項12に記載の発明によると、補正手段は、クランク角度に応じてクランク角信号の高周波成分を除去する。
この構成によれば、信号周期の変化量が小さくノイズ等の高周波成分により信号周期が変動しやすい角度区間において高周波成分を除去することにより、基準信号周期を補正するときの高周波成分による誤補正を極力小さくすることができる。
【0045】
請求項13に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの回転加速度が所定値以下となる角度区間において、クランク角信号の高周波成分を除去して基準信号周期を補正する。
【0046】
このように、エンジンの回転加速度が所定値以下となる角度区間のように、エンジン回転速度の変化量が小さく高周波成分により信号周期が変動しやすい角度区間において高周波成分を除去することにより、基準信号周期を補正するときの高周波成分による誤補正を極力小さくすることができる。
【0047】
ところで、エンジン回転速度が低速または中速の場合、信号周期は、圧縮行程および燃焼行程における筒内圧力とエンジンが受ける負荷とにより主に変化し、その変化はクランク角度に対して規則的で比較的滑らかであり大きい。これに対し、エンジン回転速度が高速の場合、クランク角度に応じた周期的な変化は小さくなり、不規則なノイズ等の高周波成分による変化が大きくなる。
【0048】
エンジン回転速度が高速の場合、クランク軸のねじれや機械的な振動により高周波成分が発生する。このように、高周波成分が発生している信号周期に対して補正処理を行うと、却って高周波成分が増幅され、補正誤差が大きくなることが考えられる。
【0049】
そこで、請求項14に記載の発明によると、補正手段は、エンジン回転速度が所定速度以上の場合、クランク角信号の高周波成分を除去して基準信号周期を補正する。これにより、エンジン回転速度が所定速度以上の高速であり、信号周期に高周波成分が発生しやすい場合、高回転高周波成分による影響を低減し、基準信号周期を高精度に補正できる。
【0050】
請求項15に記載の発明によると、補正手段は、エンジン回転速度が所定速度以上の場合、エンジン回転速度が所定速度未満の場合よりも基準信号周期の補正量を小さくする。
これにより、エンジン回転速度が所定速度以上の高速であり、信号周期に高周波成分が発生しやすい場合に、補正による高周波成分の影響を極力低減し、基準信号周期を高精度に補正できる。
【0051】
請求項16に記載の発明によると、補正手段は、エンジン回転速度が所定速度未満の場合、エンジン回転速度が所定速度以上の場合よりも基準信号周期の補正量を大きくする。
これにより、エンジン回転速度が所定速度未満の低速または中速であり、エンジン回転速度が高速時よりも信号周期に高周波成分が発生しにくい場合に、信号周期に対する補正効果を極力大きくし、基準信号周期を高精度に補正できる。
【0052】
請求項17に記載の発明によると、補正手段は、エンジン回転速度が第1速度以上になると、エンジン回転速度が第1速度未満の場合よりも基準信号周期の補正量を小さくし、エンジン回転速度が第1速度よりも遅い第2速度未満になると、エンジン回転速度が第2速度以上の場合よりも補正量を大きくする。
【0053】
この構成によれば、エンジン回転速度が第1速度以上になり補正量が大きくなると、エンジン回転速度が第1速度よりも遅い第2速度未満になるまで、補正量は変化しない。また、エンジン回転速度が第2速度未満になり補正量が小さくなると、エンジン回転速度が第2速度よりも速い第1速度以上になるまで、補正量は変化しない。
【0054】
その結果、エンジン回転速度が第1速度または第1速度よりも遅い第2速度付近で変動しても、補正量が頻繁に増減することを防止できるので、補正量が頻繁に増減することにより生じる異常動作の発生を防止でき、信頼性が向上する。
【0055】
請求項18に記載の発明によると、補正手段は、基準信号周期と基準信号周期の補正量とを加算して基準信号周期を補正する。この構成によれば、加算による簡単な演算で基準信号周期を補正できる。
【0056】
請求項19に記載の発明によると、補正手段は、基準信号周期の補正量を角度特性係数により決定する。この構成によれば、角度特性係数に応じて補正量が決定されるので、補正量を算出する処理を共通化できる。
【0057】
請求項20に記載の発明によると、角度特性係数は、クランク角度およびエンジン回転速度の少なくともいずれか一方に基づいて設定される。この構成によれば、クランク角度およびエンジン回転速度の少なくともいずれか一方に基づいて、補正量を容易に決定できる。
【0058】
請求項21に記載の発明によると、補正手段は、角度特性係数と今回までに計測された信号周期の時間変化により決定される変化量とを乗算して補正量を求める。この構成によれば、角度特性係数と信号周期の変化量とを乗算することにより、補正量を容易に算出できる。
【0059】
請求項22に記載の発明によると、角度特性係数は2のべき乗の加減算で決定される値である。この構成によれば、シフトと加減算とにより補正量を容易に算出できる。また、シフタと加減算器とを用いた簡単な回路で補正量を算出できる。
【0060】
請求項23に記載の発明によると、補正手段は、今回までに計測された2個の信号周期の差分に基づいて信号周期の変化量を求める。この構成によれば、信号周期を減算するという簡単な演算で変化量を求めることができる。
【0061】
請求項24に記載の発明によると、補正手段は、間に1周期以上の信号周期を挟んだ2個の信号周期の差分を小さくして信号周期の変化量を求める。
この構成によれば、間にn個以上の信号周期を挟んで計測された2個の信号周期の差分を小さくし変化量を求めるので、計測された信号周期に含まれるノイズの値も小さくなる。これにより、ノイズによる変化量の算出誤差を低減できる。
【0062】
請求項25に記載の発明によると、補正手段は、間に1周期以上の前記信号周期を挟んで計測された2個の信号周期の差分を、これら2個の信号周期が計測される順番の差で除算して変化量を求める。
【0063】
この構成によれば、間にn個の信号周期を挟んだ2個の信号周期の差分を、2個の信号周期が計測される順番の差である(n+1)で除算することにより変化量を求めるので、計測された信号周期に含まれるノイズの値も(n+1)で除算される。これにより、ノイズによる変化量の算出誤差を低減できる。
【0064】
請求項26に記載の発明によると、2個の信号周期が計測される順番の差は2のべき乗である。この構成によれば、順番の差による除算をシフト演算により容易に実行できる。
請求項27に記載の発明によると、補正手段は、連続して発生する2個の信号周期の差分を変化量とする。
【0065】
この構成によれば、間に1個異常の信号周期を挟んだ2個の信号周期の差分から変化量を算出する場合に比べ信号周期の変化量が平均化されないので、信号周期が大きく変化する場合に、信号周期の変化に応じて高精度に変化量を求めることができる。
【0066】
請求項28に記載の発明によると、補正手段は、2個の信号周期から変化量を求めるときに、それぞれ最新の信号周期を選択する。この構成によれば、最新の信号周期に基づいて変化量を高精度に求めることができる。
【0067】
請求項29に記載の発明によると、補正手段は、所定の角度区間において変化量を算出するときに選択する2個の信号周期のパターンを、所定の角度区間の前に変化量を算出するときのパターンから変更する。
【0068】
この構成によれば、例えばエンジン回転速度の変化特性が減速から加速に変わり、このエンジン回転速度の変化特性に応じて信号周期の変化特性が変わる所定の角度区間において、信号周期の変化特性に応じて適切な2個の信号周期を選択できる。
【0069】
請求項30に記載の発明によると、補正手段は、所定の角度区間において、この所定の角度区間の前に変化量を算出するときと変化量の正負を反転する。
この構成によれば、例えばエンジン回転速度の変化特性が減速から加速に変わり、このエンジン回転速度の変化特性に応じて信号周期の変化特性が変わる所定の角度区間において、信号周期の変化特性に応じて変化量の符号を適切に設定できる。
【0070】
請求項31に記載の発明によると、補正手段は、所定の角度区間において、基準信号周期を補正する補正量を0とする。この構成によれば、信号周期が殆ど変化しない角度区間において、信号周期を容易に予測できる。
【0071】
請求項32に記載の発明によると、補正手段は、計測手段により今回計測された信号周期を基準信号周期とする。この構成によれば、今回よりも後の信号周期を今回計測された最新の信号周期を補正して予測するので、予測精度が向上する。
【0072】
請求項33に記載の発明によると、補正手段は、補正により今回の直後の信号周期を予測する。
この構成によれば、例えば今回までに計測された信号周期の変化特性に応じて、今回の直後の信号周期を高精度に補正できる。
【0073】
請求項36に記載の発明によると、履歴記憶手段は、クランク角度をアドレスとして、アドレスと周期記憶部に記憶されている信号周期との関連付けを制御手段により変更できる設定レジスタを有する。
【0074】
この構成によれば、クランク角度と周期記憶部に記憶されている信号周期とを関連付ける設定レジスタの設定を変更することにより、クランク角度をアドレスとして周期記憶部から読み出す信号周期を容易に変更し、読み出した信号周期から補正量を算出できる。
【0075】
請求項37に記載の発明によると、履歴記憶手段は、設定レジスタを複数有し、エンジン回転速度に応じて使用する設定レジスタを変更する。
この構成によれば、エンジン回転速度に応じてクランク角度と周期記憶部に記憶されている信号周期との関連付けを変更できるので、エンジン回転速度に応じて適切な信号周期を選択できる。
【0076】
請求項38に記載の発明によると、周期記憶部は、クランク角度およびエンジン回転数の少なくとも一方に応じて予め設定された少なくとも2個のアドレスにより周期記憶部に記憶している信号周期を出力する。
【0077】
この構成によれば、クランク角度およびエンジン回転数の少なくとも一方に応じて予めアドレスが設定されているので、クランク角度およびエンジン回転数の少なくとも一方と周期記憶部に記憶されている信号周期とを関連付ける回路が不要である。
【0078】
請求項39に記載の発明によると、周期算出手段は、信号周期と所定の閾値とを比較してエンジン回転速度を判定する速度判定手段を有し、速度判定手段の判定結果に基づいて基準信号周期に対する補正処理を切り換える。
【0079】
この構成によれば、エンジン回転速度に応じて補正処理を切り換えるためにエンジン回転速度を算出する必要がないので、エンジン回転速度を算出する処理負荷を低減できる。
請求項40に記載の発明によると、周期算出手段は、基準信号周期と基準信号周期の補正量との加算または減算を制御手段の制御信号により切り換えられる加減算手段を有する。
【0080】
この構成によれば、エンジン回転速度が減速して信号周期が増加するときに、基準信号周期に補正量を加算する処理と、エンジン回転速度が加速して信号周期が減少するときに、基準信号周期から補正量を減算する処理とを、クランク角度に応じて容易に切り換えることができる。
【0081】
請求項41に記載の発明によると、周期算出手段は、変化量と角度特性係数とに基づいて補正量を算出する補正量算出手段と、基準信号周期と基準信号周期の補正量との加算または減算を制御手段の制御信号により切り換えられる加減算手段とを有する。
【0082】
この構成によれば、エンジン回転速度が減速して信号周期が増加するときに、変化量と角度特性係数とに基づいて算出された補正量を信号周期に加算する処理と、エンジン回転速度が加速して信号周期が減少するときに、変化量と角度特性係数とに基づいて算出された補正量を信号周期から減算する処理とを、クランク角度に応じて容易に切り換えることができる。
【0083】
請求項42に記載の発明によると、補正量算出手段は、変化量と角度特性係数とを乗算する乗算器を有する。この構成によれば、変化量と角度特性係数との乗算を乗算器により容易に実行できる。
【0084】
請求項43に記載の発明によると、補正量算出手段は、2個のシフタと加減算器とにより変化量と角度特性係数とを乗算し、角度特性係数の値に応じて2個のシフタと加減算器の機能を制御する補正制御手段を有する。
【0085】
この構成によれば、補正制御手段が角度特性係数の値に応じて2個のシフタと加減算器の機能を制御することにより、乗算器を用いることなく変化量と角度特性係数との乗算を実行できる。
【0086】
請求項44に記載の発明によると、周期算出手段は、変化量と角度特性係数とを乗算するときに使用する加減算器と、基準信号周期に補正量を加算または減算する加減算器とを共通化する。これにより、加減算器を1個削除できる。
【0087】
請求項45に記載の発明によると、周期算出手段は、クランク角度に応じて設定された角度特性係数を記憶する角度特性係数記憶部を有する。
この構成によれば、クランク角度と角度特性係数記憶部に記憶されている角度特性係数とが対応するので、クランク角度毎に角度特性係数を算出する必要がない。
【0088】
請求項46に記載の発明によると、角度特性係数記憶部は、クランク軸の回転に伴い、角度特性係数記憶部に記憶されている角度特性係数をクランク角度毎に順番に出力する。
この構成によれば、クランク角度毎に角度特性係数記憶部から角度特性係数を読み出すポインタを更新することにより、角度特性係数を簡単に読み出すことができる。
【0089】
請求項47に記載の発明によると、角度特性係数記憶部は、書き換え可能な記憶部である。
この構成によれば、書き換え可能な角度特性係数記憶部に記憶されている角度特性係数を書き換えることにより、角度特性係数記憶部またはソフトウェアを変更することなく、角度特性係数の値を変更できる。
【0090】
請求項48に記載の発明によると、角度特性係数記憶部の一部は角度特性係数の固定値を記憶しており、所定のクランク角度において固定値を出力する。
この構成によれば、クランク角度に応じて角度特性係数を変更せず同じ値の角度特性係数を使用する角度区間において、クランク角度毎に同じ値を記憶する必要がないので、角度特性係数記憶部に角度特性係数を記憶する容量を低減できる。
【0091】
請求項49に記載の発明によると、周期算出手段は、角度特性係数記憶部を複数系統有し、使用する角度特性係数記憶部をエンジン回転速度に応じて選択する。
この構成によれば、エンジン回転速度に応じて角度特性係数を変更するときに、ソフトウェアによる角度特性係数の変更が不要であるから、ソフトウェア処理の負荷を低減できる。
【0092】
請求項50に記載の発明によると、補正手段は、基準信号周期と、周期算出手段により補正された信号周期とのいずれか一方を選択するセレクタを有し、クランク角度またはソフト指令によりセレクタの出力を切り換える。
【0093】
この構成によれば、例えば予測される補正量と異なる異常な補正量が算出されたときに算出された補正量を無効にし、補正されていない基準信号周期を選択して今回よりも後の信号周期とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施形態によるエンジン制御装置を示す構成図。
【図2】角度予測部を示すブロック図。
【図3】クランク角度と信号周期との関係を示すタイムチャート。
【図4】周期補正処理を示すフローチャート。
【図5】クランク角度に応じた周期補正処理を示すタイムチャート。
【図6】(A)は低回転時、(B)は中回転時、(C)は高回転時の信号周期の変化を示すタイムチャート。
【図7】他の周期補正処理を示すフローチャート。
【図8】変化量算出処理を示すフローチャート。
【図9】他の変化量算出処理を示すフローチャート。
【図10】他の変化量算出処理を示すフローチャート。
【図11】他の変化量算出処理を示すフローチャート。
【図12】周期補正部を示すブロック図。
【図13】履歴記憶部を示すブロック図。
【図14】周期算出部を示すブロック図。
【図15】(A)は補正量算出部を示すブロック図、(B)はシフタ1、2の機能と算出される角度特性係数との関係を示す図。
【図16】周期補正処理を示すタイムチャート。
【図17】他の履歴記憶部を示すブロック図。
【図18】他の履歴記憶部を示すブロック図。
【図19】他の履歴記憶部を示すブロック図。
【図20】他の周期算出部を示すブロック図。
【図21】他の周期補正部を示すブロック図。
【図22】他の周期補正部を示すブロック図。
【図23】他の周期補正部を示すブロック図。
【図24】他の周期算出部を示すブロック図。
【図25】他の周期算出部を示すブロック図。
【図26】図25の回路による周期補正処理を示すタイムチャート。
【図27】他の周期補正部を示すブロック図。
【図28】変化量算出部を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0095】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。本実施形態によるエンジン制御装置を図1に示す。
(エンジン制御装置10)
エンジン制御装置10は、例えば4気筒のディーゼルエンジンにおいて燃料噴射制御等のエンジン制御を実行する電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)である。以下、エンジン制御装置10を、単に「ECU10」とも言う。
【0096】
ECU10は、マイコン20、EEPROM50、入力回路60、出力回路62、電源回路64等からなる。
ECU10は、入力回路60から各種センサ入力信号、スイッチ等の入力信号を入力し、他のECUへの出力信号、ならびにインジェクタ90への制御信号を出力回路62から出力する。
【0097】
マイコン20は、CPU22、ROM24、RAM26、A/D28、I/O30、タイマ部40等からなる。CPU22は、ROM24に記憶されている制御プログラムを実行することにより、各種センサ検出信号と、クランク角センサ80およびカム角センサ82の検出信号と、スイッチ等の入力信号とを入力回路60からI/O30を介して入力し、他のECUへの出力信号、ならびにインジェクタ90への制御信号をI/O30を介して出力回路62から出力する。
【0098】
CPU22は、各種制御の作業データの記憶領域としてRAM26を使用し、車両走行を停止してバッテリ70から供給される電力を電源回路64で遮断しても保存しておく必要のあるデータはEEPROM50に記憶する。
【0099】
タイマ部40は、クランク角センサ80から入力する信号列であるクランク角信号の信号周期を計測し、今回までに計測した信号周期から今回よりも後の信号周期を予測する角度予測部100を有している。角度予測部100の機能については後述する。
【0100】
(クランク角度)
クランク角センサ80は、電磁ピックアップ式のセンサであり、エンジンのクランク軸に固定されたクランクロータ4の外周と向き合って設置されている。クランクロータ4の外周には、所定の角度間隔として例えば10°間隔で歯が形成されている。クランク角センサ80は、クランクロータ4の歯と向き合う位置でパルス状のクランク角信号を出力する。
【0101】
ECU10は、単位時間当たりのクランク角信号のパルス数に基づき、単位時間当たりの回転角度をエンジン回転速度として算出する。
カム角センサ82は、クランク角センサ80と同じ電磁ピックアップ式のセンサであり、クランク軸が2回転する間に1回転するカム軸に固定されたカムロータ6の外周と向き合って設置されている。
【0102】
カムロータ6の外周には、4気筒のうち特定の気筒位置を示す歯が形成されている。カム角センサ82が出力するカム角信号は、クランク軸が2回転する720°CAを1サイクルとする。
【0103】
ECU10は、クランク角信号とカム角信号とに基づき、例えば#1気筒の上死点(TDC)を基準角度位置として検出する。そして、基準角度位置からのクランク角信号のパルスの信号数であるパルス数を、吸入行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程からなる1燃焼サイクルの角度周期である720°CA周期でカウントする。ECU10は、このパルスカウント数に基づいて、1燃焼サイクルのうち各気筒がどの行程のどの角度位置にあるかを示すクランク角度を検出する。
【0104】
(角度予測部100)
次に、タイマ部40においてクランク角信号の周期を予測する角度予測部100について説明する。
【0105】
図2に示すように、角度予測部100は、周期計測部102、周期補正部104、および逓倍角度クロック生成部106から構成されている。
周期計測部102は、10°毎に発生するクランク角信号のパルスとパルスとの時間間隔をタイマで計測することにより、クランク角信号の信号周期(クランク角信号の信号周期を、単に「信号周期」とも言う。)を計測する。
【0106】
さらに、周期計測部102は、クランク角信号の基準角度位置からのクランク角信号のパルス数を720°CA毎に計測する。周期計測部102が計測するクランク角信号のパルスカウント数によりクランク角度が検出される。
【0107】
周期補正部104は、周期計測部102が計測する今回のクランク角信号のパルスカウント数により各気筒の今回のクランク角度を検出し、今回検出した信号周期に対する補正量の算出方法を今回のクランク角度に応じて決定する。そして、周期補正部104は、今回の補正方法により今回までに計測したクランク角信号の信号周期に基づいて補正量を算出し、今回の信号周期を補正して次回の信号周期を予測する。
【0108】
逓倍角度クロック生成部106は、周期補正部104が予測した次回の信号周期を逓倍数で割った周期の逓倍角度クロックを生成する。ECU10は、逓倍角度クロック生成部106が出力する逓倍角度クロックに基づいて、クランクロータ4に形成された歯の角度間隔より詳細なクランク角度に同期して、燃料噴射制御等のエンジン制御を実行する。これにより、燃費やドライバビリティを向上できる。
【0109】
また、生成された逓倍角度クロックに基づいてエンジン制御を実行することで、予測された次回の信号周期からエンジン制御の実行タイミングを算出する処理を削減でき、少ない処理負荷で高精度なエンジン制御が可能である。
【0110】
以上説明した図1および図2において、ECU10は本発明のエンジン制御装置に相当し、周期計測部102は本発明の計測手段に相当し、周期補正部104は本発明の補正手段に相当し、逓倍角度クロック生成部106は本発明の角度位置予測手段に相当する。
【0111】
(信号周期の変化)
次に、クランク角信号の信号周期の変化について説明する。エンジンの回転速度は、各気筒の圧縮行程と燃焼行程とにおける筒内圧力の影響を受けて大きく変化する。よって、エンジン回転速度、つまり信号周期の変化は、図3に示すように、クランク角度と強い関係性がある。図3では、4気筒エンジンにおける信号周期と各気筒のクランク角度との関係を示している。着火は#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒の順である。
【0112】
信号周期はエンジンが受ける負荷トルクと各気筒の筒内圧力、特に圧縮行程および燃焼行程における筒内圧力の影響を受けて大きく変化する。例えば#1気筒が圧縮行程のとき、ピストンが#1TDCに近づくにつれて#1気筒の筒内圧力が増大し、負荷トルクと筒内圧力との合力によってピストンの上昇が妨げられるためエンジン回転速度は大きく減速する。その結果、所定の角度間隔で出力されるクランク信号の信号周期は長くなる。
【0113】
クランク角度が#1気筒の#1TDCを越えると#1気筒は燃焼行程に移行する。すると、TDCの前にクランク軸の回転を減速させる方向に作用していた筒内圧力は、TDCの後で回転を加速させる方向に作用するようになる。この時、筒内圧力と負荷トルクとが相反する方向に作用する。エンジンの有効仕事はTDCから約10°CA後に筒内圧力が最大となるとき最も大きくなるため、燃焼遅れを考慮してTDCから約10°CA後に筒内圧力が最大となるようにインジェクタ90の噴射時期が制御される。そのため、図3の例では、TDCから約10°CA経過する前のTDC直後のクランク角信号が出力される時点では、燃焼による圧力上昇は小さく回転変化が小さくなっている。
【0114】
その後、燃焼によって#1気筒の筒内圧力が爆発的に増大すると、エンジン回転速度は急激に加速され信号周期は短くなる。以上より、各気筒の圧縮行程および燃焼行程の筒内圧力の影響により、TDC付近の角度区間の前後ではエンジン回転速度および信号周期が、加速方向または減速方向に大きく変化する。
【0115】
燃焼によって爆発的に増加した#1気筒の筒内圧力は、ピストンの下降と共に徐々に減少する。その一方で、#3気筒では圧縮行程が進み、#3気筒の筒内圧力は徐々に増大していく。#1TDCと#3TDCとの中間角度付近では、#1気筒の筒内圧力および#3気筒の筒内圧力と負荷トルクとが釣り合い、エンジン回転速度の変化が小さくなる。この角度区間ではクランク軸の軸ねじれや機械振動といった不規則的なノイズ成分が現れる。
【0116】
#3気筒の圧縮行程がさらに進むと、#3気筒の筒内圧力と負荷トルクとの合力が#1気筒の1筒内圧力を上回り、エンジン回転速度は再び減速を始める。このように、エンジン回転速度および信号周期の変化特性とクランク角度との間には強い関係性がある。
【0117】
(周期補正処理1)
図4に、本実施形態による信号周期の補正処理を実行するフローチャートを示す。図4および以後に説明する各図のフローチャートにおいて、「S」はステップを表わしている。図4のフローチャートは、クランク角信号のパルスを検出したタイミングで実行される。
【0118】
図4においてECU10は、まず今回のクランク角度θを読込む(S400)。前述したように、クランク角度θは、クランク角信号のパルスカウント数に基づいて検出される。
【0119】
次に、今回までに計測された信号周期として、例えば今回と前回とのクランク角信号の信号周期と、前回と前々回とのクランク角信号の信号周期との変化量αを算出し(S402)、クランク角度に応じて設定された角度特性係数K(θ)を読込む(S404)。信号周期を補正するために今回までに計測された各信号周期はレジスタ等に記憶されており、角度特性係数は書き換え可能な不揮発性のEEPROM等に記憶されている。尚、角度特性係数K(θ)の読込みは変化量αの算出の前に行ってもよい。
【0120】
角度特性係数は、前述した信号周期の変化特性とクランク角度との関係性に基づいて、クランク角度に応じて予め設定されている。角度特性係数は、今回までに周期計測部102が計測したクランク角信号の信号周期に基づいて今回よりも後の信号周期を予測するときに、周期計測部102が計測した信号周期のうち補正対象である基準クランク角信号周期(以下、「基準信号周期」とも言う。)に対する補正量を決定する係数である。
【0121】
次にECU10は、変化量αと角度特性係数K(θ)とを乗算して、次式(1)から補正量Hを算出する(S406)。
補正量H=変化量α×角度特性係数K(θ) ・・・(1)
ECU10は、基準信号周期T(i)をレジスタ等から読込み(S408)、基準信号周期T(i)に補正量Hを加算して、今回と次回とのクランク角信号の信号周期である補正クランク角信号周期(以下、「補正信号周期」とも言う。)T’(i+1)を算出する(S410)。
【0122】
逓倍角度クロック生成部106では、図4の周期補正処理1で算出された補正信号周期を逓倍数で割った周期の逓倍角度クロックを生成する。
このように、今回の変化量αとクランク角度に応じて設定されている角度特性係数K(θ)とによって基準信号周期の補正量Hを決定することで、クランク角度に応じた信号周期の変化特性に基づいて、今回より後の次回の信号周期を高精度に予測できる。
【0123】
例えば、図3の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速し信号周期が長くなる角度区間のうち所定の角度区間においては、エンジン回転速度の減速量がその前後の角度区間よりも大きいので、この所定の角度区間で次回の信号周期を予測する場合、所定の角度区間の前後よりも基準信号周期を補正する補正量を大きくする。
【0124】
具体的には、図5において、信号周期T(2)、T(3)を計測する角度区間において補正信号周期T’(3)、T’(4)を予測する場合、信号周期T(3)、T(4)を計測する角度区間の前後のT(1)およびT(4)でT’(2)、T’(5)を予測するよりも角度特性係数を大きくし、補正量を大きくしている。図5では、T(1)を計測するタイミングでT’(2)を予測するときの予測式は記載されていないが、1.25よりも小さいものとする。
【0125】
また、図3の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速し信号周期が短くなる角度区間のうち所定の角度区間においては、エンジン回転速度の加速量が前回よりも小さいので、この所定の角度区間で次回の信号周期を予測する場合、前回よりも基準信号周期を補正する補正量の絶対値を小さくする。
【0126】
具体的には、図5において、信号周期T(7)、T(8)を計測する角度区間において補正信号周期T’(8)、T’(9)をそれぞれ予測する場合、前回、信号周期T(6)、T(7)を計測したときにT’(7)、T’(8)を予測したときよりも角度特性係数を小さくし補正量の絶対値を小さくしている。
【0127】
また、図3の各TDCを含む前後の所定の角度区間においては、エンジン回転速度の変化量がこの所定の角度区間の直前および直後よりも小さいので、この所定の角度区間の信号周期を予測する場合、所定の角度区間の直前および直後よりも補正量の絶対値を小さくする。
【0128】
具体的には、図5において、TDCを含む前後の所定の角度区間の信号周期T(5)、T(6)の予測周期である補正信号周期T’(5)、T’(6)を信号周期T(4)、T(5)を計測するタイミングで求める場合、信号周期T(5)の直前の信号周期T(4)の補正信号周期T’(4)、ならびに信号周期T(6)の直後の信号周期T(7)の補正信号周期T’(7)を予測するよりも、角度特性係数を小さくし補正量の絶対値を小さくしている。
【0129】
(エンジン回転速度と信号周期との関係)
図6に、エンジン回転速度が低回転時(A)、中回転時(B)、高回転時(C)における信号周期の変化特性を示す。
【0130】
図6において、Tmax、Tave、Tminはそれぞれエンジン回転状態が一定で定常運転した場合の信号周期の最大値、平均値、最小値を示す。信号周期は各気筒の圧縮行程と燃焼行程とにおける筒内圧力の影響を受け720/k[°CA](kは気筒数)周期で変化する。
【0131】
エンジンが低回転時には、筒内圧力が長時間作用するためエンジン回転速度の変化は大きく、エンジン回転速度が中回転、高回転と上昇するにしたがい、エンジン回転速度の変化は小さくなる。
【0132】
低回転時および中回転時には信号周期が変化する支配的要因は、圧縮行程および燃焼行程における筒内圧力と負荷トルクであり、クランク角度に応じて規則的で比較的滑らかで大きな変化をする特徴があるのに対し、高回転時では周期的な回転変化は小さく、不規則なノイズ成分が支配的となる。
【0133】
この不規則なノイズ成分はクランク軸の軸ねじれや機械振動によるものである。低回転時において信号周期が滑らかに変化する場合では、今回までの信号周期から次回の信号周期をある程度予測できるが、信号周期が振動的に激しく変動する高回転時では、補正処理によって不要なノイズ成分が強調され却って誤差が大きくなることがある。
【0134】
そこで本実施形態では、クランク角度に加え、エンジン回転速度に応じて信号周期の角度特性係数を設定することで、所定の回転速度以上の高回転域では、例えば信号周期の補正量を小さくしてノイズ成分による信号周期の補正精度の劣化を低減する。角度特性係数によるノイズの低減処理以外にも、平均化等のフィルタ処理により高周波成分を除去してもよい。
【0135】
以上説明した図4の周期補正処理1によると、今回までに計測された信号周期から信号周期の変化量を算出し、算出した変化量とクランク角度に応じて設定された角度特性係数とを乗算して補正量を算出している。そして、今回までに計測された信号周期のうち補正対象とする基準信号周期に補正量を加算して基準信号周期をクランク角度に応じて補正する。これにより、今回までに計測された信号周期に基づき、今回よりも後の信号周期をクランク角度に応じて高精度に予測することができる。
【0136】
また、最大でも今回までに計測された今回、前回および前々回の3個の信号周期に基づいて今回よりも後の信号周期を予測できるので、今回までに計測された信号周期を記憶する記憶容量を低減できる。
【0137】
以上説明した図4の周期補正処理1において、S400〜S410の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当する。
(周期補正処理2)
図7に、前述したクランク角度に加え、エンジン回転速度に応じて信号周期の角度特性係数を設定する周期補正処理2のフローチャートを示す。
【0138】
図7において、S420、S424、S430およびS432は、図4のSS400、S402、S408およびS410と対応しており、実質的に同一処理である。
図7の周期補正処理2では、S420でクランク角度θを読込むことに加え、S422においてエンジン回転速度NEを読込んでいる。そして、クランク角度θおよびエンジン回転速度NEに応じて予め設定されている角度特性係数K(θ,NE)を読込み(S426)、変化量αと角度特性係数K(θ,NE)とを乗算して補正量Hを算出する(S428)。
【0139】
このように、クランク角度θおよびエンジン回転速度NEに応じて予め設定されている角度特性係数K(θ,NE)を用いて補正量Hを算出することにより、例えば所定速度以上の高回転時において低回転時および中回転時よりも角度特性係数の値を小さくして補正量の絶対値を小さくする。これにより、高回転時において、ノイズ成分による信号周期の補正精度の劣化を低減できる。
【0140】
尚、エンジン回転速度が第1速度以上になると、エンジン回転速度が前記第1速度未満の場合よりも角度特性係数を小さくして信号周期の補正量の絶対値を小さくし、エンジン回転速度が第1速度よりも遅い第2速度未満になると、エンジン回転速度が第2速度以上の場合よりも角度特性係数を大きくして補正量の絶対値を大きくすることが望ましい。
【0141】
これにより、エンジン回転速度が第1速度以上になり補正量が大きくなると、エンジン回転速度が第1速度よりも遅い第2速度未満になるまで、補正量は変化しない。また、エンジン回転速度が第2速度未満になり補正量が小さくなると、エンジン回転速度が第2速度よりも速い第1速度以上になるまで、補正量は変化しない。
【0142】
その結果、エンジン回転速度が第1速度または第2速度付近で変動しても、補正量が頻繁に増減することを防止できるので、補正量が頻繁に増減することにより生じる異常動作の発生を防止でき、信頼性が向上する。
【0143】
以上説明した図7の周期補正処理2において、S420〜S432の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当する。
(変化量算出処理1)
図8に、図4のS402および図7のS424で実行される変化量αの算出処理のフローチャートを示す。
【0144】
ECU10は、今回までに計測したクランク角信号の2個の信号周期T(i−m)、T(i−n)を読込み(S440、S442)、次式(2)から信号周期の変化量αを算出する(S444)。式(2)では、2個の信号周期T(i−m)、T(i−n)の差分を、2個の信号周期が計測される順番の差の絶対値で除算して変化量αを算出している。
【0145】
α=(T(i−m)−T(i−n))/|n−m| ・・・(2)
尚、信号周期T(i)は、前回と今回とのクランク角信号のパルスの時間間隔を表わしている。そして、変化量αは、例えば、最新の2個の連続する信号周期の差を算出して求められる。この場合m=0、n=1、|n−m|=1である。
【0146】
式(2)の分母は、|n−m|≧2の場合に、複数区間離れた2個の信号周期の差を平均して今回よりも後の次回の信号周期に対応させるために1区間の信号周期の差に変換するための項である。
【0147】
間に1個以上の信号周期を挟んだ信号周期の差を信号周期が計測された順番で除算することにより、不規則的なノイズ成分を低減できる。例えば、連続する最新の2個の信号周期から変化量αを求める場合、つまりm=0、n=1、|n−m|=1の場合、例えば信号周期T(i)にノイズ成分Nが含まれているとすると、変化量αは次式(3)で算出される。
【0148】
α=T(i)−T(i−1)+N ・・・(3)
式(3)では、変化量αにノイズ成分Nがそのまま加算される。一方、互いに1区間離れた2個の信号周期から変化量αを算出する場合、つまりm=0、n=2、|n−m|=2の場合、変化量αは次式(4)で算出される。
【0149】
α={(T(i)−T(i−2))/2}+N/2 ・・・(4)
式(4)では、ノイズ成分Nを半減できる。したがって、2個の信号周期の間の区間をさらに離せば、ノイズ成分の影響をより低減できる。
【0150】
ただし、2個の信号周期の間の区間を離し過ぎると、信号周期の変化特性が平均化され、今回までに計測された信号周期の変化特性に適切に適応できない。したがって、ノイズ成分の発生量および信号周期の変化特性に基づいて、信号周期の間の区間数を適切に設定する必要がある。
【0151】
尚、式(2)において、間に1個以上の信号周期を挟んだ信号周期の差を|n−m|で除算する代わりに、|n−m|で除算するときよりも角度特性係数Kを小さい値に設定することにより、ノイズ成分を低減してもよい。この場合、間に1個以上の信号周期を挟んでいても、変化量αは次式(5)で算出される。
【0152】
α=T(i−m)−T(i−n) ・・・(5)
以上説明した図8の変化量算出処理1において、S440〜S444の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当する。
【0153】
(変化量算出処理2)
図9に、変化量αの他の算出処理のフローチャートを示す。図9の変化量算出処理2では、図3において圧縮行程が終了しTDCから燃焼行程に移行しエンジン回転速度が急激に上昇する角度区間、具体的には図5の角度区間Aにおいて次回の補正信号周期を予測するときの変化量の算出処理が、図8の変化量算出処理1に加わっている。
【0154】
図9のS450において、ECU10は今回検出したクランク角度θが図5の角度区間Aに含まれるか否かを判定する。
クランク角度θが角度区間Aに含まれない場合(S450:No)、ECU10は、S452〜S456において図8のS440〜S444と同一処理を実行する。
【0155】
クランク角度θが角度区間Aに含まれる場合(S450:Yes)、ECU10は、圧縮行程の減速区間における2個の信号周期T(i−p)、T(i−q)を読込み(S458、S460)、次式(6)から変化量αを求める(S462)。
【0156】
α=(T(i−p)−T(i−q))/|q−p| ・・・(6)
図5の角度区間Aでは、p=2、q=1と設定し、今回の信号周期T(6)を計測したときに、次式(7)から変化量を算出している。
【0157】
α=(T(4)−T(5))/|1| ・・・(7)
つまり、角度区間Aでは、通常の角度区間で今回と前回とで計測した信号周期を読込んでその差から変化量を算出する代わりに、前々回と前回とで計測した信号周期を読込み、信号周期の差を算出するときも、その順序を反転している。したがって、式(7)において変化量αの符号は「負」になる。
【0158】
このように、角度区間Aにおいて次回の信号周期を予測するために変化量を算出する場合、圧縮行程における減速特性を燃焼行程の加速特性に変換して変化量αを算出する。
図5の燃焼行程の角度区間Aにおいては、図9の変化量算出処理2で算出された変化量から、次回の補正信号周期T’(7)を次式(8)から算出する。
【0159】
T’(7)=T(6)+{(T(4)−T(5))/|1|}×1.5・・・(8)
このように、燃焼行程の角度区間Aにおいては、角度特性係数を1.5に設定することにより、圧縮行程の減速区間における信号周期の変化量(T(5)−T(4))の絶対値よりも、補正量の絶対値|(T(4)−T(5))/1|×1.5を大きくしている。
【0160】
以上説明した図9の変化量算出処理2おいて、S450〜S462の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当する。
(変化量算出処理3)
図10に、変化量αの他の算出処理のフローチャートを示す。図10の変化量算出処理3では、図3において一つの気筒の燃焼行程において加速区間が終了し他の気筒の圧縮行程の減速区間が始まり、エンジン回転速度の変化がこの前後の角度区間よりも小さい角度区間B(図5の角度区間Bも参照)において、次回の補正信号周期を予測するときの変化量の算出処理が、図9の変化量算出処理2に加わっている。
【0161】
図10のS470において、ECU10は今回検出したクランク角度θが図5の角度区間Aに含まれるか否かを判定する。クランク角度θが角度区間Aに含まれる場合(S470:Yes)、ECU10は、S472〜S476において図9のS458〜S462と同一処理を実行する。
【0162】
クランク角度θが角度区間Aに含まれず(S470:No)、角度区間Bにも含まれない場合(S478:No)、ECU10は、S480〜S484において図9のS452〜S456と同一処理を実行する。
【0163】
クランク角度θが角度区間Aに含まれず(S470:No)、角度区間Bに含まれる場合(S478:Yes)、ECU10は、角度区間B以外とは異なる選択パターンの2個の信号周期T(i−r)、T(i−s)を読込み(S486、S488)、次式(9)から変化量αを求める(S490)。
【0164】
α=(T(i−r)−T(i−s))/|r−s| ・・・(9)
図5に示す角度区間Bでは、r=0、s=2と設定し、次式(10)から変化量を算出している。
【0165】
α=(T(i)−T(i−2))/|2| ・・・(10)
このように、角度区間Bでは、間に1個以上の信号周期の挟んだ2個の信号周期の差を、信号周期が計測された順番の差で除算することにより、式(4)で説明したように、ノイズ成分の影響を低減できる。
【0166】
以上説明した図10の変化量算出処理3において、S470〜S490の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当する。
(変化量算出処理4)
図11に、変化量αの他の算出処理のフローチャートを示す。
【0167】
図11のS500〜S504は図8のS440〜S444と同一処理である。そして、S506においてECU10は、S504で算出した変化量αの値が負であるか否かを判定する。
【0168】
変化量αの値が正であれば(S506:No)、減速区間において信号周期を予測しており、基準信号周期よりも補正信号周期が大きくなると考えられる。このとき、検出したクランク角度θが加速区間を示していると(S508:Yes)、S504で算出した変化量はノイズやセンサ異常の発生により異常であると判断し、変化量αを「0」に設定し(S510)、補正を禁止する。
【0169】
変化量αの値が負であれば(S506:Yes)、加速区間において信号周期を予測しており、基準信号周期よりも補正信号周期が小さくなると考えられる。このとき、検出したクランク角度θが減速区間を示していると(S512:Yes)、S504で算出した変化量はノイズやセンサ異常の発生により異常であると判断し、変化量αを「0」に設定し(S510)、補正を禁止する。
【0170】
図11の変化量算出処理4では、図3において各気筒の圧縮行程の減速区間と燃焼行程における加速区間とにおいて算出した変化量αが、該当角度区間において算出されると考えられる変化量を満たさない場合、ノイズやセンサ異常により生じる変化量の異常と判断し、補正を禁止する。したがって、次回の補正信号周期は今回計測した信号周期(基準信号周期)と同じ値になる。これにより、信号周期の誤補正を防止できる。
【0171】
以上説明した図11の変化量算出処理4において、S500〜S504の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当し、S506〜S510の処理は本発明の補正禁止手段が実行する機能に相当する。
【0172】
(周期補正部の回路構成)
図12に、図2に示す周期補正部104の回路構成の一例である周期補正部110を示す。周期補正部110は、角度判定部112、履歴記憶部114、変化量算出部116、周期算出部118から構成されている。
【0173】
角度判定部112は、周期計測部102で計測されたクランク角信号のパルスカウント数を入力し、今回検出したクランク角度が各気筒のどの行程のどの角度位置であるかを判定する。
【0174】
そして、角度判定部112は、今回検出したクランク角度に応じて履歴出力制御信号を履歴記憶部114に出力する。履歴出力制御信号は、履歴記憶部114から出力される基準信号周期、履歴信号周期1、2を指定するとともに、履歴記憶部114に記憶されている信号周期を、変化量算出部116で変化量を算出するために使用する履歴信号周期1、2として出力するために信号周期に実施する前処理を指定する。
【0175】
さらに、角度判定部112は、今回検出したクランク角度に応じて、周期算出部118において補正量を算出するときに使用する角度特性係数を選択するための角度特性係数選択信号を出力する。
【0176】
履歴記憶部114は、周期計測部102が今回までに計測した複数の信号周期をレジスタ等に記憶する。そして、角度判定部112から出力される履歴出力制御信号に基づき、出力する基準信号周期、履歴信号周期1、2を選択するとともに、履歴信号周期1、2として出力する信号周期に前処理を実施する。
【0177】
変化量算出部116は、履歴記憶部114に記憶されている今回までの信号周期から、これまで説明した変化量αを算出する。
周期算出部118は、角度判定部112から出力される角度特性係数選択信号に基づいてクランク角度に応じた角度特性係数を選択し、変化量算出部116で算出された変化量αと選択した角度特性係数とを乗算し、今回計測した基準信号周期に加算して補正信号周期を算出する。
【0178】
以上説明した図12において、周期補正部110は本発明の補正手段に相当し、角度判定部112は本発明の角度検出手段および制御手段に相当し、履歴記憶部114は本発明の履歴記憶手段に相当し、変化量算出部116は本発明の変化量算出手段に相当し、周期算出部118は本発明の周期算出手段に相当する。
【0179】
(履歴記憶部の回路構成)
図13に、図12に示す履歴記憶部114の回路構成の一例である履歴記憶部120を示す。履歴記憶部120は、周期計測部102で計測された信号周期を履歴レジスタ122a、122b、122cに記憶する。本実施形態では、3個の履歴レジスタを備えている。尚、履歴レジスタの数は、基準信号周期を補正するために必要な信号周期の個数によっては、4個以上であってもよい。
【0180】
今回計測された最新の信号周期は履歴レジスタ122aに記憶され、それまで履歴レジスタ122a、122b、122cに記憶されていた信号周期は、履歴レジスタ122bから履歴レジスタ122cに、履歴レジスタ122aから履歴レジスタ122bに順次移動される。
【0181】
MUX(Multiplexer)126は、角度判定部112から出力される履歴出力制御信号に基づき、変化量を算出するために必要な信号周期を記憶している履歴レジスタを履歴レジスタ122a、122b、122cから選択して出力するとともに、基準信号周期を出力する。基準信号周期は、履歴レジスタ122a、122b、122cのうち今回計測された信号周期でもよいし、それ以外の信号周期でもよい。
【0182】
シフタ124a、124bは、角度判定部112から出力される履歴出力制御信号に基づき、MUX126から出力される信号周期に対し、間に1個以上の信号周期を挟んだ信号周期の差を信号周期が計測された順番で除算する場合に、除算に対応するシフト処理を実行する。したがって、間に1個以上の信号周期を挟んだ信号周期の差は2のべき乗であることが望ましい。
【0183】
尚、間に1個以上の信号周期を挟んだ信号周期の差を信号周期が計測された順番で除算して変化量、すなわち補正量を小さくすることに代えて角度特性係数を小さくする場合、図13のシフタ124a、124bを省略できる。
【0184】
以上説明した図13において、履歴記憶部120は本発明の履歴記憶手段に相当し、履歴レジスタ122a〜122cは本発明の周期記憶部に相当する。
(周期算出部の回路構成)
図14に、図12に示す周期算出部118の回路構成の一例である周期算出部130を示す。周期算出部130のカウンタ132は、角度判定部112から出力される角度特性係数選択信号、実際にはパルス信号のパルス数をカウントする。そして、角度特性係数記憶部134は、カウンタ132がカウントするカウント数をポインタとして、クランク角度に応じて使用する順番で記憶している角度特性係数を順次出力する。
【0185】
角度特性係数記憶部134は、レジスタ等の書き換え可能な記憶部で構成されている。したがって、角度特性係数記憶部134またはソフトウェアを変更することなく、角度特性係数記憶部134に記憶されている角度特性係数をソフトウェアにより変更することができる。
【0186】
固定係数記憶部136には、固定の角度特性係数(以下、「固定係数」とも言う。)が記憶されている。固定係数は、複数のクランク角度において一定の角度特性係数を使用するときに、その角度特性係数を固定係数として固定係数記憶部136に記憶しておくことにより、角度特性係数記憶部134の記憶容量を低減できる。
【0187】
例えば、通常は角度特性係数として固定係数記憶部136に記憶されている1.0を角度特性係数とし、その他のクランク角度において、角度特性係数記憶部134に記憶されているクランク角度に応じた角度特性係数を使用する。
【0188】
セレクタ138は、角度特性係数選択信号のパルスが発生していない「0」の場合は固定係数記憶部136から出力される固定係数を選択し、角度特性係数選択信号のパルスが発生している「1」の場合は角度特性係数記憶部134から出力される角度特性係数を選択する。
【0189】
補正量算出部140は、図12の変化量算出部116から出力される変化量αに、セレクタ138から出力される角度特性係数を乗算器等により乗算し補正量を算出する。この補正量は、例えば、圧縮行程の減速区間では正の値であり、燃焼行程の加速区間では負の値である。
【0190】
加算器142は、図12の履歴記憶部114から出力される基準信号周期と補正量算出部140から出力される補正量とを加算して、次回の信号周期として予測される補正信号周期を算出する。
【0191】
以上説明した図14において、周期算出部130は本発明の周期算出手段に相当し、角度特性係数記憶部134および固定係数記憶部136は本発明の角度特性係数記憶部に相当し、補正量算出部140は本発明の乗算器を有する補正量算出手段に相当する。
【0192】
(補正量算出部の回路構成)
図15の(A)に、図14に示す補正量算出部138の回路構成の一例である補正量算出部150を示す。補正量算出部150は、変化量αと角度特性係数とを乗算して補正量Hを算出する処理を、2個のシフタ154a、154bと1個の加減算器156とで実現している。この場合、角度特性係数は2のべき乗とその加減算で算出される値に設定されている。
【0193】
補正制御部152は、角度特性係数の値に応じてシフタ154a、154bのシフト量を切り換えるとともに、加減算器156の加算または減算を切り換える。
図15の(B)に、角度特性係数と、シフタ154a、154bにより変化量を乗算する乗算値と、加減算器156の加算または減算との関係の一例を示す。
【0194】
シフタ154a、154bの乗算値はシフト演算可能な2のべき乗である。例えば、角度特性係数が1.75の場合、シフタ154aは左1bit、シフタ154bは右2bitのシフト演算を行い、加減算器156は、シフタ154aの出力からシフタ154bの出力を減算する。
【0195】
このように、シフタ154a、154bのシフト量と、加減算器156の加算または減算とを角度特性係数に応じて切り換えることにより、0〜2.0の範囲で角度特性係数を設定できる。尚、シフタ154a、154bのシフト量をさらに大きくすることで、角度特性係数の設定範囲を大きくするとともに、乗算値を細かくすることができる。
【0196】
図16は、例えば、図12に示す周期補正部110が図13〜図15の回路を有する場合に実行される周期補正処理を示すタイムチャートである。基準信号周期は今回計測された最新の信号周期とし、変化量は最新の連続する2個の信号周期の差としている。
【0197】
t2のタイミングでの周期補正処理では、今回計測された最新の信号周期(0100h)を基準信号周期T(i)とし、基準信号周期(0100h)と、今回の直前のt1のタイミングで計測された信号周期(00E5h)との差(001Bh)が変化量αとして算出される。
【0198】
また、クランク角信号のパルスカウント数はクランク角度θを示し、角度特性係数Kを適用するクランク角度θになると図12に示す角度判定部112から角度特性係数選択信号としてパルスが出力される。
【0199】
前述したように、角度判定部112から角度特性係数選択信号としてパルスが出力される場合、クランク角度に応じて出力される角度特性係数は図14に示す角度特性係数記憶部134から選択される。図16においては、t2、t3、t4のタイミングで、角度特性係数記憶部134から出力される角度特性係数が選択されている。
【0200】
角度判定部112から角度特性係数選択信号としてパルスが出力されない場合、図14に示す固定係数記憶部136から出力される固定係数として1.0が選択される。図16においては、t5、t6のタイミングで、固定係数記憶部136から出力される固定係数(1.0)が選択されている。
【0201】
図16では、t2のタイミングで角度特性係数選択信号としてパルスが出力され、角度特性係数Kとして1.5dが出力される。そして、算出された変化量α(001Bh)と角度特性係数K(1.5d)との乗算により、補正量H(0028h)が算出される。基準信号周期T(i)=0100hと補正量H(0028h)との加算によって補正信号周期T'(i+1)=0128hが算出される。
【0202】
以上説明した図15の(A)において、補正量算出部150は本発明の補正量算出手段に相当し、補正制御部152は本発明の補正制御手段に相当し、シフタ154a、154bは本発明の補正量算出手段が有するシフタに相当し、加減算器156は本発明の補正量算出手段が有する加減算器に相当する。
【0203】
(履歴記憶部の他の回路構成)
図17に、図12に示す履歴記憶部114の回路構成の他の例である履歴記憶部160を示す。履歴記憶部160は、出力設定レジスタ162が追加されている以外は、図13に示す履歴記憶部120と実質的に同一構成である。
【0204】
出力設定レジスタ162には、角度区間A、角度区間Bもしくはそれ以外の角度区間のそれぞれについて、基準信号周期T(i)、履歴信号周期1、履歴信号周期2の三つの出力としてどの履歴レジスタ122a、122b、122cを選択するかと、クランク角度に応じたシフタ124a、124bのシフト量とが予め設定されている。
【0205】
MUX126は出力設定レジスタ162で定められた履歴レジスタ番号にしたがい、履歴レジスタ122a、122b、122cから基準信号周期T(i)、履歴信号周期1、履歴信号周期2に対応する履歴レジスタを選択する。
【0206】
出力設定レジスタ162の設定値はエンジン回転速度に応じてソフトウェアにより変更することができる。この構成とすることで、ソフトウェアによって柔軟に変化量αの算出方法を制御することができ信号周期の予測精度を向上させることができる。
【0207】
以上説明した図17において、履歴記憶部160は本発明の履歴記憶手段に相当し、出力設定レジスタ162は本発明の設定レジスタに相当する。
(履歴記憶部の他の回路構成)
図18に、図12に示す履歴記憶部114の回路構成の他の例である履歴記憶部170を示す。履歴記憶部170は、少なくとも2つの出力設定レジスタ176a、176bを備え、エンジン回転速度と所定の閾値との大小関係によって使用する出力設定レジスタを切り換える点で図17に示す履歴記憶部160と異なっており、それ以外の構成は図17に示す履歴記憶部160と実質的に同一構成である。尚、図18では、図17に図示されたシフタ124a、124bを省略している。
【0208】
図18に示す履歴記憶部170では、エンジン回転速度と回転速度閾値レジスタ172に設定されている所定速度とを比較器174で比較する。セレクタ178は、エンジン回転速度が所定速度未満の場合は、出力設定レジスタ176aを選択し、エンジン回転速度が所定速度を超える場合は、出力設定レジスタ176bを選択する。
【0209】
MUX126は、セレクタ178で選択された出力設定レジスタで定められた履歴レジスタ番号にしたがい、履歴レジスタ122a、122b、122cから基準信号周期T(i)、履歴信号周期1、履歴信号周期2に対応する履歴レジスタを選択する。
【0210】
この構成により、MUX126が選択する履歴レジスタ番号をエンジン回転速度に応じて変更する処理を、ソフトウェアによらず自動的に行うことができるので、処理速度が向上する。
【0211】
また、比較器174にヒステリシスの特性を持たせることで、回転速度閾値レジスタ172に設定されている所定速度の付近でエンジン回転速度が変動しても、選択される履歴レジスタとシフタによるシフト量とが頻繁に変化することを防止する。
【0212】
以上説明した図18において、履歴記憶部170は本発明の履歴記憶手段に相当し、出力設定レジスタ176a、176bは本発明の設定レジスタに相当する。
(履歴記憶部の他の回路構成)
図19に、図12に示す履歴記憶部114の回路構成の他の例である履歴記憶部180を示す。履歴記憶部180は、今回計測された信号周期と所定の閾値との大小関係によって使用する出力設定レジスタを切り換える点で図18に示す履歴記憶部170と異なっており、それ以外の構成は図18に示す履歴記憶部170と実質的に同一構成である。尚、図19では、図17に図示されたシフタ124a、124bを省略している。
【0213】
図19に示す履歴記憶部180では、今回計測された信号周期と信号周期閾値レジスタ182に設定されている所定信号周期とを比較器174で比較する。セレクタ178は、今回の信号周期が所定信号周期未満の場合は、出力設定レジスタ176aを選択し、今回の信号周期が所定信号周期を超える場合は、出力設定レジスタ176bを選択する。
【0214】
この構成により、MUX126が選択する履歴レジスタ番号を信号周期に応じて変更する処理を、ソフトウェアによらず自動的に行うことができるので、処理速度が向上する。
以上説明した図19において、履歴記憶部180は本発明の履歴記憶手段に相当する。
【0215】
(周期算出部の回路構成)
図20に、図12に示す周期算出部118の回路構成の他の例である周期算出部190を示す。周期算出部190は、少なくとも2つの角度特性係数記憶部134a、134を備え、エンジン回転速度と所定の閾値との大小関係によって使用する角度特性係数記憶部を切り換える点で図14に示す周期算出部130と異なっており、それ以外の構成は図14に示す周期算出部130と実質的に同一構成である。
【0216】
図20に示す周期算出部190では、エンジン回転速度と回転速度閾値レジスタ192に設定されている所定速度とを比較器194で比較する。セレクタ196は、エンジン回転速度が所定速度未満の場合は、角度特性係数記憶部134aを選択し、エンジン回転速度が所定速度を超える場合は、角度特性係数記憶部134bを選択する。
【0217】
セレクタ138は、角度特性係数選択信号のパルスが発生していない「0」の場合は固定係数記憶部136から出力される固定係数を選択し、角度特性係数選択信号のパルスが発生している「1」の場合はセレクタ196から出力される角度特性係数を選択する。
【0218】
この構成により、エンジン回転速度に応じて角度特性係数を切り換える処理を、ソフトウェアによらず自動的に行うことができるので、処理速度が向上する。
尚、エンジン回転速度と回転速度閾値レジスタ192に設定されている所定速度とを比較器194で比較する回路を、図18の履歴記憶部170においてエンジン回転速度と所定速度とを比較する回路と共通にしてもよい。
【0219】
また、エンジン回転速度に代えて、図19に示す履歴記憶部180と同様に、今回計測された信号周期と所定の信号周期とを比較し、角度特性係数記憶部134a、134bのいずれを選択するかを決定してもよく、その比較回路を履歴記憶部180の比較回路と共通にしてもよい。
【0220】
以上説明した図20において、周期算出部190は本発明の周期算出手段に相当し、角度特性係数記憶部134a、134bは本発明の角度特性係数記憶部に相当する。また、図19のように、今回計測された信号周期と所定の信号周期とを比較器174で比較することによりエンジン回転速度を判定して角度特性係数記憶部134a、134bのいずれを選択する場合、比較器174は本発明の速度判定手段に相当する。
【0221】
(周期補正部の回路構成)
図21に周期補正部の回路構成の他の例である周期補正部200を示す。周期補正部200では、今回計測された最新の信号周期を基準信号周期としている。したがって、周期算出部118は、変化量算出部116で算出された変化量から補正量を算出し、算出した補正量により最新の信号周期を補正する。
【0222】
この構成により、履歴記憶部202において基準信号周期を出力する回路を削減できる。また、最新の信号周期を補正対象である基準信号周期とするので、直前の信号周期の変化特性に基づいて次回の信号周期を高精度に予測できる。
【0223】
以上説明した図21において、周期補正部200は本発明の補正手段に相当し、履歴記憶部202は本発明の履歴記憶手段に相当する。
(周期補正部の回路構成)
図22に周期補正部の回路構成の他の例である周期補正部210を示す。周期補正部210では、最新の信号周期を基準信号周期とし、周期算出部118の出力と基準信号周期とのいずれかを、ソフトウェアの指令によりセレクタ212で選択する構成になっている。
【0224】
この構成によれば、セレクタ212以外の周期補正部210に異常が発生した場合、周期補正部210による信号周期の補正処理を禁止し、補正前の基準信号周期を補正信号周期として出力できる。その結果、周期補正部210の異常時に異常な補正信号周期を次回の信号周期とすることを防止するので、信頼性が向上する。
【0225】
また、例えば、エンジン回転速度が高回転時にソフトウェアの指令によりセレクタ212で基準信号周期を選択し、基準信号周期に対する補正処理を禁止してもよい。これにより、補正処理によって不要なノイズ成分が強調され却って誤差が大きくなる高回転時において、補正処理による信号周期の予測精度の劣化を防止することができる。
【0226】
また、TDC付近、ならびにTDCとTDCとの間の中間部分のように、信号周期の変化の小さい角度区間において、クランク角度に応じて角度判定部112から制御信号をセレクタ212に出力して基準信号周期を選択し、基準信号周期に対する補正処理を禁止してもよい。これにより、信号周期の変化が小さく補正処理によりノイズの影響を受けやすい角度区間において、補正処理による信号周期の予測精度の劣化を防止することができる。
【0227】
以上説明した図22において、周期補正部210は本発明の補正手段に相当し、セレクタ212は、今回までに計測された信号周期と補正された信号周期とのいずれか一方を選択する本発明のセレクタに相当する。
【0228】
(周期補正部の回路構成)
図23に周期補正部の回路構成の他の例である周期補正部220を示す。周期補正部220では、変化量算出部116で変化量を算出するときに使用する2個の信号周期の一方を常に最新の信号周期としている。したがって、履歴記憶部222から変化量算出部116に1個の履歴信号周期を出力すればよいので、履歴信号周期を出力する回路を履歴記憶部222から削減できる。
【0229】
ただし、図23の周期補正部220では、変化量算出部116で変化量を算出するときに使用する2個の信号周期の一方を常に最新の信号周期としているので、圧縮行程の減速特性を燃焼行程の加速特性に変換する式(8)に示す変化量の計算ができない。
【0230】
そこで、式(8)に代えて周期補正部220では、次式(11)に示すように変化量を算出し補正量を算出する。
T’(7)=T(6)−{(T(6)−T(4))/|2|}×3・・・(11)
つまり、本実施形態では、基準信号周期から補正量を減算して補正信号周期を算出している。したがって、角度区間Aにおいて、基準信号周期と補正量との加算を減算に切り換える必要がある。この加算と減算との切り換えは、角度判定部226から出力される補正符号制御信号と、次に説明する図24の周期算出部230の構成により実現できる。
【0231】
以上説明した図23において、周期補正部220は本発明の補正手段に相当し、履歴記憶部222は本発明の履歴記憶手段に相当し、周期算出部224は本発明の周期算出部に相当し、角度判定部226は本発明の角度検出手段および制御手段に相当する。
【0232】
(周期算出部の回路構成)
図24に、図23に示す周期算出部224の回路構成の一例である周期算出部230を示す。周期算出部230は、図14に示す周期算出部130の加算器142に代えて加減算器232を備えている。加減算器232における加算または減算は、角度判定部226から出力される補正符号制御信号により切り換えられる。補正符号制御信号はクランク角度が角度区間Aに含まれるときに加減算器232の減算を選択し、その他の角度区間では加減算器232の加算を選択する。
【0233】
以上説明した図24において、周期算出部230は本発明の周期算出手段に相当し、加減算器232は本発明の加減算手段に相当する。
(周期算出部の回路構成)
図25に、周期算出部の回路構成の他の例である周期算出部240を示す。周期算出部240は、図24の周期算出部230の補正量算出部140に図15の(A)の補正量算出部150を適用し、一部の回路を共通化したものである。角度特性係数が出力される回路は図24と同一であるため省略している。
【0234】
以下、周期算出部240の処理を図26のタイムチャートに基づいて説明する。図25および図26においてφはクロックを表わしている。また、図26のタイムチャートでは、角度特性係数選択信号が「H」であるから、固定の角度特性係数ではなく、クランク角度に応じた角度特性係数が選択される。
(1)クランク角信号の立ち上がりエッジが入力された次のクロックサイクルにおいてクロックφが「H」になると、セレクタ246、248は、補正制御部242から指令される角度特性係数の値に応じたシフト量によりシフタ244a、244bがそれぞれシフト処理した変化量を選択し、セレクタ250は補正制御部242から出力される加算または減算の切り換え信号を加減算器252に出力する。
【0235】
図26では、変化量αが0004hであり、角度特性係数が1.5dであるから、シフタ244aの出力は0004hをシフトせずに処理した0004hであり、シフタ244bの出力は0004dを右に1bitシフトして0.5倍した0002hである。そして、加減算器252には角度特性係数の1.5dに応じて(1.0+0.5)を実行する加算が選択されているので、加減算器252は補正量として0006hを出力する。
(2)クロックφが「H」から「L」になると、レジスタ254に加減算器252の出力である0006hが格納される。そして、セレクタ246はレジスタ254の出力を選択し、セレクタ248は基準信号周期を選択し、セレクタ250は補正符号制御信号を選択する。
【0236】
前述したように、補正符号制御信号はクランク角度が角度区間Aに含まれるときに加減算器252の減算を選択し、その他の角度区間では加減算器252の加算を選択する。図26のタイムチャートでは、クランク角度が角度区間Aではない場合を例示しているので、加減算器252は加算処理を行う。したがって、加減算器252は、基準信号周期の0080hとレジスタ254の出力との加算である0086hを出力する。
(3)次にクロックφが「L」から「H」になると、加減算器252の出力である0086hが補正信号周期としてレジスタ256に格納され、周期算出部240から出力される。
【0237】
図25の周期算出部240では、クロックφの「H」と「L」とにより加減算器252の入力を切り換え、その都度レジスタ254またはレジスタ256に加減算器252の出力を格納するので、1個の加減算器252を共有できる。
【0238】
以上説明した図25において、周期算出部240は本発明の周期算出手段に相当し、シフタ244a、244bは本発明の補正量算出手段が有するシフタに相当し、加減算器252は本発明の補正量算出手段が有する共通化された加減算器に相当する。
【0239】
(周期補正部の回路構成)
図27に周期補正部の回路構成の他の例である周期補正部260を示す。周期補正部260は、図21の周期補正部200の変化量算出部116に代えて、エンジン回転速度の加速区間または減速区間において、正常な変化量が算出されているか否かを判定する変化量算出部262を設置している。
【0240】
角度判定部264は、正常な変化量が算出されているか否かを変化量算出部262が判定するために、加速区間を表わす加速区間信号、ならびに減速区間を表わす減速区間信号を出力している。
【0241】
以上説明した図27において、周期補正部260は本発明の補正手段に相当し、角度判定部264は本発明の角度検出手段および制御手段に相当する。
(変化量算出部の回路構成)
図28に、図27の変化量算出部262の回路構成の一例である変化量算出部270を示す。
【0242】
減算器272は、履歴記憶部202から出力される履歴信号周期1と履歴信号周期2との差を算出し変化量として出力する。履歴信号周期1は履歴信号周期2よりも新しいタイミングの履歴信号周期である。したがって、履歴信号周期1および履歴信号周期2が正常であれば、減算器272の出力する変化量の値は、エンジン回転速度の減速区間において正の値になり、エンジン回転速度の加速区間において負の値になる筈である。
【0243】
比較器274は、減算器272の出力が正の値であれば「H」を出力し、減算器272の出力が負の値であれば「L」を出力する。
そして、論理ゲート276は、エンジン回転速度が加速区間で変化量が正の値であれば「H」を出力し、変化量が負の値であれば「L」を出力する。また、論理ゲート278は、エンジン回転速度が減速区間で変化量が正の値であれば「L」を出力し、変化量が負の値であれば「H」を出力する。
【0244】
論理ゲート276、278の出力の両方が「H」になり論理ゲート280から「H」が出力され、減算器272の出力である変化量がセレクタ282で選択されるのは、加速区間で変化量が負の値か、減速区間で変化量が正の値のときである。
【0245】
これに対し、ノイズの発生、センサまたは回路の異常により変化量の符号が加速区間および減速区間で想定される符号と異なる場合は、論理ゲート276、278の出力のいずれかが「H」になり、論理ゲート280から「H」が出力されるので、セレクタ282から変化量として0が出力される。この場合、周期補正処理が禁止されるので、次回の信号周期として基準信号周期がそのまま採用される。
【0246】
このように、図28の変化量算出部270では、ノイズの発生、センサまたは回路の異常により異常な変化量が算出される場合、周期補正処理が禁止されるので誤補正を防止できる。その結果、信頼性が向上する。
【0247】
以上説明した図28において、変化量算出部270は本発明の変化量算出手段に相当する。
[他の実施形態]
上記実施形態では、今回までに計測された信号周期の差分である変化量を算出し、この変化量をクランク角度に応じて補正することにより、今回計測された信号周期と次回の信号周期との差分を今回計測された信号周期に対する補正量とし、次回の信号周期を予測している。
【0248】
これに対し、今回計測された信号周期をクランク角度に応じて直接補正してもよい。例えば、今回計測された信号周期に角度特性係数を直接乗算してもよい。また、次回の信号周期ではなく、複数回後の信号周期を予測してもよい。
【0249】
また、信号周期の差分は、今回までに計測された2個の信号周期による1組の差分に限らず、複数組の差分をクランク角度に応じて重みづけして求めてもよい。
また、上記実施形態では、今回までに計測した信号周期に基づいて、今回までに計測した信号周期のうち補正対象となる基準信号周期をクランク角度に応じて補正し、今回より後の信号周期を予測した。
【0250】
これに対し、今回よりも前までに計測した信号周期に基づいて、今回よりも前までに計測した信号周期のうち補正対象となる基準信号周期をクランク角度に応じて補正し、基準信号周期より後で、かつ今回より前の過去の信号周期を予測してもよい。
【0251】
また、電動モータにも、回転子が回転する回転速度に回転角度に応じた変化特性がある。したがって、電動モータの回転軸の回転に伴い所定の回転角度で発生する信号列である回転角信号の信号周期にも、回転角度に応じた変化特性がある。
【0252】
そこで、電動モータにおいても、今回までに計測された信号周期に基づき、回転角信号で表わされる回転軸の回転角度に応じて、今回までに計測された信号周期のうち補正対象となる基準信号周期を補正して今回より後の信号周期を補正してもよい。
【0253】
これにより、予測した信号周期の範囲において、回転角信号の角度間隔よりも詳細な回転角度位置を求めることができる。
上記実施形態では、車両用ディーゼルエンジンのエンジン制御装置に適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、ガソリンエンジンのエンジン制御装置に適用してもよい。
【0254】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0255】
10:ECU(エンジン制御装置、計測手段、補正手段、角度位置予測手段、補正禁止手段)、102:周期計測部(計測手段)、104、110、200、210、220、260:周期補正部(補正手段)、106:逓倍角度クロック生成部(角度位置予測手段)、112、226、264:角度判定部(角度検出手段、制御手段)、114、120、160、170、180、202、222:履歴記憶部(履歴記憶手段)、116、262、270:変化量算出部(変化量算出手段)、118、130、190、224、230、240:周期算出部(周期算出手段)、122a、122b、122c:履歴レジスタ(周期記憶部)、134、134a、134b:角度特性係数記憶部(角度特性係数記憶部)、:固定係数記憶部(角度特性係数記憶部)、140、150:補正量算出部(補正量算出手段)、152:補正制御部(補正制御手段)、154a、154b:シフタ、156:加減算器、162、176a、176b:出力設定レジスタ(設定レジスタ)、174:比較器(速度判定手段)、212:セレクタ、244a、244b:シフタ、232:加減算器(加減算手段)、252:加減算器
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランク軸の回転に伴い所定の角度間隔で発生するクランク角信号に基づいてエンジンを制御するエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料噴射弁に対する燃料噴射制御等のエンジンを適切に運転するための制御を、クランク軸の回転角度であるクランク角度を表わすクランク角信号に基づいて実行することが知られている。
【0003】
クランク角信号は、例えば、外周に所定の角度間隔で歯を設けたクランクロータをクランク軸に設置し、クランク軸とともにクランクロータが回転するときのクランクロータの歯をクランクロータの外周側に設置したクランクセンサにより検出し、歯が通過する毎にクランクセンサがパルス信号を出力して生成される。クランク角信号の各パルスは、クランクロータに設けられた歯の角度間隔にしたがい、10°CA(CA:Crank Angle)、6°CA等の角度間隔で発生する。
【0004】
しかし、燃費やドライバビリティの向上のため、クランク角信号が表わすクランク角度よりもさらに高精度なクランク角度に基づいてエンジン制御を行うことが望まれている。
そこで、特許文献1に開示されているように、今回までのクランク角信号の信号周期を計測し、計測した信号周期に基づいて予め次回のクランク角信号の信号周期を予測することにより、予測した信号周期内においてクランク角信号が発生する角度間隔よりも詳細なタイミングでエンジン制御を行う技術が知られている。
【0005】
特許文献1では、今回の信号周期と前回の信号周期との差分と、前回の信号周期と前々回の信号周期との差分との比率を今回の信号周期と前回の信号周期との差分に乗算することにより、今回の信号周期と次回の信号周期との差分を求めている。そして、今回の信号周期と次回の信号周期との差分により今回の信号周期を補正して、次回の信号周期を予測している。
【0006】
また、特許文献2では、次回のインクリメント持続時間(信号周期)を、1機関サイクルの1/k(kは気筒数)倍前の信号周期、または(1/k)×1機関サイクルの倍数前の信号周期から予測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−263150号公報
【特許文献2】特開2003−166821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、特許文献1では、今回までのクランク角信号の信号周期の差分の比を今回の信号周期と次回の信号周期との差分の比に適用して信号周期を補正し、次回の信号周期を予測している。
【0009】
しかしながら、クランク角信号の信号周期の差分の比は、今回と次回とで常に同じ特性ではなくクランク角度に応じて異なることがあるので、特許文献1の補正方式では次回の信号周期を予測するときに大きな誤差が生じるおそれがある。
【0010】
また、特許文献2では、信号周期を予測するために、少なくとも1機関サイクルの(1/k)倍前の1気筒分の角度区間に対応する信号周期を記憶しておく必要がある。例えば、4気筒のエンジンでクランク角信号が6°CA毎に発生する場合、720°CA/4気筒/6°CA=30個の信号周期を記憶する必要があるので、記憶容量が大きくなるという問題がある。
【0011】
また、特許文献2のように、1機関サイクルの1/k(kは気筒数)倍前の信号周期、または(1/k)×1機関サイクルの倍数前の信号周期から今回の信号周期を予測する場合、エンジン回転速度の変化が激しい場合には、信号周期の予測誤差が大きくなるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、今回より後のクランク角信号の信号周期を、極力小さい記憶容量で高精度に予測するエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
エンジン回転速度は、気筒内の圧力とエンジンが受ける負荷の大きさとによりクランク角度に応じて変化する。したがって、クランク角信号の信号周期もクランク角度に応じて変化する。
【0014】
そこで、請求項1から50に記載の発明によると、計測手段は、エンジンのクランク軸の回転に伴い所定の角度間隔で発生する信号列であるクランク角信号の信号周期を計測し、補正手段は、今回までに計測手段が計測した信号周期に基づき、クランク角信号で表わされるクランク軸のクランク角度に応じて、今回までに計測手段が計測した信号周期のうち補正対象となる基準信号周期を補正して今回より後の信号周期を予測する。
【0015】
この構成によれば、今回までに計測された信号周期と、クランク角度に応じて変化する信号周期の変化特性とに基づいて基準信号周期を適切に補正し、今回よりも後の信号周期を高精度に予測することができる。
【0016】
そして、角度位置予測手段は、補正手段が予測した今回よりも後の信号周期の範囲において、クランク角信号の角度間隔よりも詳細なクランク角度位置を高精度に求めることができる。
【0017】
また、請求項1に記載の発明によると、例えば、今回、または今回よりも前の今回に極力近い信号周期を記憶しておき、この信号周期に基づき、クランク角度に応じて基準信号周期を補正することにより、今回よりも後の信号周期を予測することができる。これにより、今回より後の信号周期をクランク角度毎に予測するために今回よりも前の対応する信号周期をすべて記憶しておく必要がないので、今回よりも後の信号周期を予測するための記憶容量を極力小さくすることができる。
【0018】
ところで、少なくとも一つの気筒の圧縮行程では、エンジン回転速度が減速する所定の角度区間においてエンジン回転速度の減速量が大きくなり、この区間の前後よりもクランク角信号の信号周期の増加量が大きくなる。
【0019】
そこで、請求項2に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間において基準信号周期を補正する場合、この所定の角度区間の前後よりも基準信号周期の補正量を大きくする。
【0020】
この構成によれば、エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速するときの信号周期の変化特性に応じて、今回よりも後の信号周期を高精度に予測できる。
【0021】
請求項3に記載の発明によると、補正禁止手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間において、今回、補正手段が基準信号周期を補正して求めた補正後の信号周期が基準信号周期よりも小さくなる場合、補正手段による補正を禁止する。
【0022】
この構成によれば、圧縮行程においてエンジン回転速度が減速し信号周期が長くなる角度区間において、今回、基準信号周期を補正して求めた補正後の信号周期が基準信号周期よりも小さくなる異常が発生すると、補正手段による補正を禁止し、適切な処理を施すことができる。
【0023】
クランク角度の角度区間のうち上死点を含む前後の所定の角度区間は、上死点に向かって減速していたエンジン回転速度が上死点を超えて加速に転じる区間であり、エンジン回転速度の変化が小さい区間である。
【0024】
そこで、請求項4に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の上死点を含む前後の所定の角度区間の信号周期を予測する場合、この所定の角度区間の直前および直後における基準信号周期の補正量の絶対値よりも基準信号周期の補正量の絶対値を小さくする。
【0025】
これにより、エンジンの少なくとも一つの気筒の上死点を含む前後の所定の角度区間のようにエンジン回転速度の変化が小さい角度区間の信号周期を予測する場合、補正量を適切に求めることができる。
【0026】
ところで、少なくとも一つの気筒の燃焼行程では、エンジン回転速度が加速する所定の角度区間においてエンジン回転速度の加速量が小さくなり、信号周期の減少量が前回よりも小さくなる。
【0027】
そこで、請求項5に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において基準信号周期を補正する場合、前回よりも基準信号周期の補正量の絶対値を小さくする。
【0028】
この構成によれば、エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において、エンジン回転速度が加速するときの信号周期の変化特性に応じて、今回よりも後の信号周期を高精度に予測できる。
【0029】
請求項6に記載の発明によると、補正禁止手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において、今回、補正手段が基準信号周期を補正して求めた補正後の信号周期が基準信号周期よりも大きくなる場合、補正手段による補正を禁止する。
【0030】
この構成によれば、燃焼行程においてエンジン回転速度が加速し信号周期が短くなる角度区間において、今回、補正して求めた補正後の信号周期が基準信号周期よりも長くなる異常が発生すると、補正手段による補正を禁止し、適切な処理を施すことができる。
【0031】
ここで、燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間と、同じ気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間とは、加速と減速とでエンジン回転速度の変化特性は異なるが、逆の変化特性であると考えることができる。
【0032】
そこで、請求項7に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間におけるエンジン回転速度の減速特性を変換して、該当気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において基準信号周期を補正するときの補正量を算出する。
【0033】
これにより、燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間のように、前の角度区間と同じ補正方式では適切に信号周期を予測できない角度区間において、圧縮行程におけるエンジン回転速度の減速特性を燃焼行程における加速特性に変換することにより、適切に基準信号周期を補正できる。
【0034】
また、圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間では、その前の角度区間とエンジン回転速度の変化量の特性が異なるので、前の角度区間と同じ補正方式では適切に信号周期を予測することが困難な場合がある。
【0035】
ここで、圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間と、他の気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間とは、減速と加速とでエンジン回転速度の変化特性は異なるが、逆の変化特性であると考えることができる。
【0036】
そこで、請求項8に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間におけるエンジンの加速特性を変換して、他の気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間において基準信号周期を補正するときの補正量を算出する。
【0037】
これにより、圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間のように、前の角度区間と同じ補正方式では適切に信号周期を予測できない角度区間において、燃焼行程におけるエンジン回転速度の加速特性を圧縮行程における減速特性に変換することにより、適切に信号周期を補正できる。
【0038】
請求項9に記載の発明によると、補正手段は、減速特性または加速特性の一方の特性を変換して基準信号周期を補正する場合、基準信号周期の補正量の絶対値を、減速特性または加速特性の他方の特性における変化量の絶対値よりも大きくする。
【0039】
これにより、同じ気筒において圧縮行程の減速区間から燃焼行程の加速区間に移る場合、あるいは異なる気筒において燃焼行程の加速区間から圧縮行程の減速区間に移る場合のように、エンジン回転速度の変化特性が変わり変化量の絶対値が大きくなる角度区間において、高精度に基準信号周期を補正できる。
【0040】
請求項10に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの回転加速度の絶対値が所定値以下となる角度区間において、回転加速度の絶対値が所定値よりも大きい角度区間よりも基準信号周期の補正量を小さくする。
【0041】
このように、エンジンの回転加速度が所定値以下となる角度区間のように、エンジン回転速度の変化量が小さい、すなわちエンジンの回転加速度の絶対値が所定値よりも小さくノイズにより信号周期が変動しやすい角度区間において補正量の絶対値を小さくすることにより、基準信号周期を補正するときのノイズによる誤補正を極力小さくすることができる。
【0042】
請求項11に記載の発明によると、補正手段は、今回までに計測した信号周期に基づき、クランク角度とともにエンジン回転速度に応じて基準信号周期を補正し、今回よりも後の信号周期を予測する。
【0043】
この構成によれば、クランク角度に加えて、エンジン回転速度に応じて異なる信号周期の変化特性に基づいて基準信号周期を適切に補正し、今回よりも後の信号周期を高精度に予測することができる。
【0044】
請求項12に記載の発明によると、補正手段は、クランク角度に応じてクランク角信号の高周波成分を除去する。
この構成によれば、信号周期の変化量が小さくノイズ等の高周波成分により信号周期が変動しやすい角度区間において高周波成分を除去することにより、基準信号周期を補正するときの高周波成分による誤補正を極力小さくすることができる。
【0045】
請求項13に記載の発明によると、補正手段は、エンジンの回転加速度が所定値以下となる角度区間において、クランク角信号の高周波成分を除去して基準信号周期を補正する。
【0046】
このように、エンジンの回転加速度が所定値以下となる角度区間のように、エンジン回転速度の変化量が小さく高周波成分により信号周期が変動しやすい角度区間において高周波成分を除去することにより、基準信号周期を補正するときの高周波成分による誤補正を極力小さくすることができる。
【0047】
ところで、エンジン回転速度が低速または中速の場合、信号周期は、圧縮行程および燃焼行程における筒内圧力とエンジンが受ける負荷とにより主に変化し、その変化はクランク角度に対して規則的で比較的滑らかであり大きい。これに対し、エンジン回転速度が高速の場合、クランク角度に応じた周期的な変化は小さくなり、不規則なノイズ等の高周波成分による変化が大きくなる。
【0048】
エンジン回転速度が高速の場合、クランク軸のねじれや機械的な振動により高周波成分が発生する。このように、高周波成分が発生している信号周期に対して補正処理を行うと、却って高周波成分が増幅され、補正誤差が大きくなることが考えられる。
【0049】
そこで、請求項14に記載の発明によると、補正手段は、エンジン回転速度が所定速度以上の場合、クランク角信号の高周波成分を除去して基準信号周期を補正する。これにより、エンジン回転速度が所定速度以上の高速であり、信号周期に高周波成分が発生しやすい場合、高回転高周波成分による影響を低減し、基準信号周期を高精度に補正できる。
【0050】
請求項15に記載の発明によると、補正手段は、エンジン回転速度が所定速度以上の場合、エンジン回転速度が所定速度未満の場合よりも基準信号周期の補正量を小さくする。
これにより、エンジン回転速度が所定速度以上の高速であり、信号周期に高周波成分が発生しやすい場合に、補正による高周波成分の影響を極力低減し、基準信号周期を高精度に補正できる。
【0051】
請求項16に記載の発明によると、補正手段は、エンジン回転速度が所定速度未満の場合、エンジン回転速度が所定速度以上の場合よりも基準信号周期の補正量を大きくする。
これにより、エンジン回転速度が所定速度未満の低速または中速であり、エンジン回転速度が高速時よりも信号周期に高周波成分が発生しにくい場合に、信号周期に対する補正効果を極力大きくし、基準信号周期を高精度に補正できる。
【0052】
請求項17に記載の発明によると、補正手段は、エンジン回転速度が第1速度以上になると、エンジン回転速度が第1速度未満の場合よりも基準信号周期の補正量を小さくし、エンジン回転速度が第1速度よりも遅い第2速度未満になると、エンジン回転速度が第2速度以上の場合よりも補正量を大きくする。
【0053】
この構成によれば、エンジン回転速度が第1速度以上になり補正量が大きくなると、エンジン回転速度が第1速度よりも遅い第2速度未満になるまで、補正量は変化しない。また、エンジン回転速度が第2速度未満になり補正量が小さくなると、エンジン回転速度が第2速度よりも速い第1速度以上になるまで、補正量は変化しない。
【0054】
その結果、エンジン回転速度が第1速度または第1速度よりも遅い第2速度付近で変動しても、補正量が頻繁に増減することを防止できるので、補正量が頻繁に増減することにより生じる異常動作の発生を防止でき、信頼性が向上する。
【0055】
請求項18に記載の発明によると、補正手段は、基準信号周期と基準信号周期の補正量とを加算して基準信号周期を補正する。この構成によれば、加算による簡単な演算で基準信号周期を補正できる。
【0056】
請求項19に記載の発明によると、補正手段は、基準信号周期の補正量を角度特性係数により決定する。この構成によれば、角度特性係数に応じて補正量が決定されるので、補正量を算出する処理を共通化できる。
【0057】
請求項20に記載の発明によると、角度特性係数は、クランク角度およびエンジン回転速度の少なくともいずれか一方に基づいて設定される。この構成によれば、クランク角度およびエンジン回転速度の少なくともいずれか一方に基づいて、補正量を容易に決定できる。
【0058】
請求項21に記載の発明によると、補正手段は、角度特性係数と今回までに計測された信号周期の時間変化により決定される変化量とを乗算して補正量を求める。この構成によれば、角度特性係数と信号周期の変化量とを乗算することにより、補正量を容易に算出できる。
【0059】
請求項22に記載の発明によると、角度特性係数は2のべき乗の加減算で決定される値である。この構成によれば、シフトと加減算とにより補正量を容易に算出できる。また、シフタと加減算器とを用いた簡単な回路で補正量を算出できる。
【0060】
請求項23に記載の発明によると、補正手段は、今回までに計測された2個の信号周期の差分に基づいて信号周期の変化量を求める。この構成によれば、信号周期を減算するという簡単な演算で変化量を求めることができる。
【0061】
請求項24に記載の発明によると、補正手段は、間に1周期以上の信号周期を挟んだ2個の信号周期の差分を小さくして信号周期の変化量を求める。
この構成によれば、間にn個以上の信号周期を挟んで計測された2個の信号周期の差分を小さくし変化量を求めるので、計測された信号周期に含まれるノイズの値も小さくなる。これにより、ノイズによる変化量の算出誤差を低減できる。
【0062】
請求項25に記載の発明によると、補正手段は、間に1周期以上の前記信号周期を挟んで計測された2個の信号周期の差分を、これら2個の信号周期が計測される順番の差で除算して変化量を求める。
【0063】
この構成によれば、間にn個の信号周期を挟んだ2個の信号周期の差分を、2個の信号周期が計測される順番の差である(n+1)で除算することにより変化量を求めるので、計測された信号周期に含まれるノイズの値も(n+1)で除算される。これにより、ノイズによる変化量の算出誤差を低減できる。
【0064】
請求項26に記載の発明によると、2個の信号周期が計測される順番の差は2のべき乗である。この構成によれば、順番の差による除算をシフト演算により容易に実行できる。
請求項27に記載の発明によると、補正手段は、連続して発生する2個の信号周期の差分を変化量とする。
【0065】
この構成によれば、間に1個異常の信号周期を挟んだ2個の信号周期の差分から変化量を算出する場合に比べ信号周期の変化量が平均化されないので、信号周期が大きく変化する場合に、信号周期の変化に応じて高精度に変化量を求めることができる。
【0066】
請求項28に記載の発明によると、補正手段は、2個の信号周期から変化量を求めるときに、それぞれ最新の信号周期を選択する。この構成によれば、最新の信号周期に基づいて変化量を高精度に求めることができる。
【0067】
請求項29に記載の発明によると、補正手段は、所定の角度区間において変化量を算出するときに選択する2個の信号周期のパターンを、所定の角度区間の前に変化量を算出するときのパターンから変更する。
【0068】
この構成によれば、例えばエンジン回転速度の変化特性が減速から加速に変わり、このエンジン回転速度の変化特性に応じて信号周期の変化特性が変わる所定の角度区間において、信号周期の変化特性に応じて適切な2個の信号周期を選択できる。
【0069】
請求項30に記載の発明によると、補正手段は、所定の角度区間において、この所定の角度区間の前に変化量を算出するときと変化量の正負を反転する。
この構成によれば、例えばエンジン回転速度の変化特性が減速から加速に変わり、このエンジン回転速度の変化特性に応じて信号周期の変化特性が変わる所定の角度区間において、信号周期の変化特性に応じて変化量の符号を適切に設定できる。
【0070】
請求項31に記載の発明によると、補正手段は、所定の角度区間において、基準信号周期を補正する補正量を0とする。この構成によれば、信号周期が殆ど変化しない角度区間において、信号周期を容易に予測できる。
【0071】
請求項32に記載の発明によると、補正手段は、計測手段により今回計測された信号周期を基準信号周期とする。この構成によれば、今回よりも後の信号周期を今回計測された最新の信号周期を補正して予測するので、予測精度が向上する。
【0072】
請求項33に記載の発明によると、補正手段は、補正により今回の直後の信号周期を予測する。
この構成によれば、例えば今回までに計測された信号周期の変化特性に応じて、今回の直後の信号周期を高精度に補正できる。
【0073】
請求項36に記載の発明によると、履歴記憶手段は、クランク角度をアドレスとして、アドレスと周期記憶部に記憶されている信号周期との関連付けを制御手段により変更できる設定レジスタを有する。
【0074】
この構成によれば、クランク角度と周期記憶部に記憶されている信号周期とを関連付ける設定レジスタの設定を変更することにより、クランク角度をアドレスとして周期記憶部から読み出す信号周期を容易に変更し、読み出した信号周期から補正量を算出できる。
【0075】
請求項37に記載の発明によると、履歴記憶手段は、設定レジスタを複数有し、エンジン回転速度に応じて使用する設定レジスタを変更する。
この構成によれば、エンジン回転速度に応じてクランク角度と周期記憶部に記憶されている信号周期との関連付けを変更できるので、エンジン回転速度に応じて適切な信号周期を選択できる。
【0076】
請求項38に記載の発明によると、周期記憶部は、クランク角度およびエンジン回転数の少なくとも一方に応じて予め設定された少なくとも2個のアドレスにより周期記憶部に記憶している信号周期を出力する。
【0077】
この構成によれば、クランク角度およびエンジン回転数の少なくとも一方に応じて予めアドレスが設定されているので、クランク角度およびエンジン回転数の少なくとも一方と周期記憶部に記憶されている信号周期とを関連付ける回路が不要である。
【0078】
請求項39に記載の発明によると、周期算出手段は、信号周期と所定の閾値とを比較してエンジン回転速度を判定する速度判定手段を有し、速度判定手段の判定結果に基づいて基準信号周期に対する補正処理を切り換える。
【0079】
この構成によれば、エンジン回転速度に応じて補正処理を切り換えるためにエンジン回転速度を算出する必要がないので、エンジン回転速度を算出する処理負荷を低減できる。
請求項40に記載の発明によると、周期算出手段は、基準信号周期と基準信号周期の補正量との加算または減算を制御手段の制御信号により切り換えられる加減算手段を有する。
【0080】
この構成によれば、エンジン回転速度が減速して信号周期が増加するときに、基準信号周期に補正量を加算する処理と、エンジン回転速度が加速して信号周期が減少するときに、基準信号周期から補正量を減算する処理とを、クランク角度に応じて容易に切り換えることができる。
【0081】
請求項41に記載の発明によると、周期算出手段は、変化量と角度特性係数とに基づいて補正量を算出する補正量算出手段と、基準信号周期と基準信号周期の補正量との加算または減算を制御手段の制御信号により切り換えられる加減算手段とを有する。
【0082】
この構成によれば、エンジン回転速度が減速して信号周期が増加するときに、変化量と角度特性係数とに基づいて算出された補正量を信号周期に加算する処理と、エンジン回転速度が加速して信号周期が減少するときに、変化量と角度特性係数とに基づいて算出された補正量を信号周期から減算する処理とを、クランク角度に応じて容易に切り換えることができる。
【0083】
請求項42に記載の発明によると、補正量算出手段は、変化量と角度特性係数とを乗算する乗算器を有する。この構成によれば、変化量と角度特性係数との乗算を乗算器により容易に実行できる。
【0084】
請求項43に記載の発明によると、補正量算出手段は、2個のシフタと加減算器とにより変化量と角度特性係数とを乗算し、角度特性係数の値に応じて2個のシフタと加減算器の機能を制御する補正制御手段を有する。
【0085】
この構成によれば、補正制御手段が角度特性係数の値に応じて2個のシフタと加減算器の機能を制御することにより、乗算器を用いることなく変化量と角度特性係数との乗算を実行できる。
【0086】
請求項44に記載の発明によると、周期算出手段は、変化量と角度特性係数とを乗算するときに使用する加減算器と、基準信号周期に補正量を加算または減算する加減算器とを共通化する。これにより、加減算器を1個削除できる。
【0087】
請求項45に記載の発明によると、周期算出手段は、クランク角度に応じて設定された角度特性係数を記憶する角度特性係数記憶部を有する。
この構成によれば、クランク角度と角度特性係数記憶部に記憶されている角度特性係数とが対応するので、クランク角度毎に角度特性係数を算出する必要がない。
【0088】
請求項46に記載の発明によると、角度特性係数記憶部は、クランク軸の回転に伴い、角度特性係数記憶部に記憶されている角度特性係数をクランク角度毎に順番に出力する。
この構成によれば、クランク角度毎に角度特性係数記憶部から角度特性係数を読み出すポインタを更新することにより、角度特性係数を簡単に読み出すことができる。
【0089】
請求項47に記載の発明によると、角度特性係数記憶部は、書き換え可能な記憶部である。
この構成によれば、書き換え可能な角度特性係数記憶部に記憶されている角度特性係数を書き換えることにより、角度特性係数記憶部またはソフトウェアを変更することなく、角度特性係数の値を変更できる。
【0090】
請求項48に記載の発明によると、角度特性係数記憶部の一部は角度特性係数の固定値を記憶しており、所定のクランク角度において固定値を出力する。
この構成によれば、クランク角度に応じて角度特性係数を変更せず同じ値の角度特性係数を使用する角度区間において、クランク角度毎に同じ値を記憶する必要がないので、角度特性係数記憶部に角度特性係数を記憶する容量を低減できる。
【0091】
請求項49に記載の発明によると、周期算出手段は、角度特性係数記憶部を複数系統有し、使用する角度特性係数記憶部をエンジン回転速度に応じて選択する。
この構成によれば、エンジン回転速度に応じて角度特性係数を変更するときに、ソフトウェアによる角度特性係数の変更が不要であるから、ソフトウェア処理の負荷を低減できる。
【0092】
請求項50に記載の発明によると、補正手段は、基準信号周期と、周期算出手段により補正された信号周期とのいずれか一方を選択するセレクタを有し、クランク角度またはソフト指令によりセレクタの出力を切り換える。
【0093】
この構成によれば、例えば予測される補正量と異なる異常な補正量が算出されたときに算出された補正量を無効にし、補正されていない基準信号周期を選択して今回よりも後の信号周期とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施形態によるエンジン制御装置を示す構成図。
【図2】角度予測部を示すブロック図。
【図3】クランク角度と信号周期との関係を示すタイムチャート。
【図4】周期補正処理を示すフローチャート。
【図5】クランク角度に応じた周期補正処理を示すタイムチャート。
【図6】(A)は低回転時、(B)は中回転時、(C)は高回転時の信号周期の変化を示すタイムチャート。
【図7】他の周期補正処理を示すフローチャート。
【図8】変化量算出処理を示すフローチャート。
【図9】他の変化量算出処理を示すフローチャート。
【図10】他の変化量算出処理を示すフローチャート。
【図11】他の変化量算出処理を示すフローチャート。
【図12】周期補正部を示すブロック図。
【図13】履歴記憶部を示すブロック図。
【図14】周期算出部を示すブロック図。
【図15】(A)は補正量算出部を示すブロック図、(B)はシフタ1、2の機能と算出される角度特性係数との関係を示す図。
【図16】周期補正処理を示すタイムチャート。
【図17】他の履歴記憶部を示すブロック図。
【図18】他の履歴記憶部を示すブロック図。
【図19】他の履歴記憶部を示すブロック図。
【図20】他の周期算出部を示すブロック図。
【図21】他の周期補正部を示すブロック図。
【図22】他の周期補正部を示すブロック図。
【図23】他の周期補正部を示すブロック図。
【図24】他の周期算出部を示すブロック図。
【図25】他の周期算出部を示すブロック図。
【図26】図25の回路による周期補正処理を示すタイムチャート。
【図27】他の周期補正部を示すブロック図。
【図28】変化量算出部を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0095】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。本実施形態によるエンジン制御装置を図1に示す。
(エンジン制御装置10)
エンジン制御装置10は、例えば4気筒のディーゼルエンジンにおいて燃料噴射制御等のエンジン制御を実行する電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)である。以下、エンジン制御装置10を、単に「ECU10」とも言う。
【0096】
ECU10は、マイコン20、EEPROM50、入力回路60、出力回路62、電源回路64等からなる。
ECU10は、入力回路60から各種センサ入力信号、スイッチ等の入力信号を入力し、他のECUへの出力信号、ならびにインジェクタ90への制御信号を出力回路62から出力する。
【0097】
マイコン20は、CPU22、ROM24、RAM26、A/D28、I/O30、タイマ部40等からなる。CPU22は、ROM24に記憶されている制御プログラムを実行することにより、各種センサ検出信号と、クランク角センサ80およびカム角センサ82の検出信号と、スイッチ等の入力信号とを入力回路60からI/O30を介して入力し、他のECUへの出力信号、ならびにインジェクタ90への制御信号をI/O30を介して出力回路62から出力する。
【0098】
CPU22は、各種制御の作業データの記憶領域としてRAM26を使用し、車両走行を停止してバッテリ70から供給される電力を電源回路64で遮断しても保存しておく必要のあるデータはEEPROM50に記憶する。
【0099】
タイマ部40は、クランク角センサ80から入力する信号列であるクランク角信号の信号周期を計測し、今回までに計測した信号周期から今回よりも後の信号周期を予測する角度予測部100を有している。角度予測部100の機能については後述する。
【0100】
(クランク角度)
クランク角センサ80は、電磁ピックアップ式のセンサであり、エンジンのクランク軸に固定されたクランクロータ4の外周と向き合って設置されている。クランクロータ4の外周には、所定の角度間隔として例えば10°間隔で歯が形成されている。クランク角センサ80は、クランクロータ4の歯と向き合う位置でパルス状のクランク角信号を出力する。
【0101】
ECU10は、単位時間当たりのクランク角信号のパルス数に基づき、単位時間当たりの回転角度をエンジン回転速度として算出する。
カム角センサ82は、クランク角センサ80と同じ電磁ピックアップ式のセンサであり、クランク軸が2回転する間に1回転するカム軸に固定されたカムロータ6の外周と向き合って設置されている。
【0102】
カムロータ6の外周には、4気筒のうち特定の気筒位置を示す歯が形成されている。カム角センサ82が出力するカム角信号は、クランク軸が2回転する720°CAを1サイクルとする。
【0103】
ECU10は、クランク角信号とカム角信号とに基づき、例えば#1気筒の上死点(TDC)を基準角度位置として検出する。そして、基準角度位置からのクランク角信号のパルスの信号数であるパルス数を、吸入行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程からなる1燃焼サイクルの角度周期である720°CA周期でカウントする。ECU10は、このパルスカウント数に基づいて、1燃焼サイクルのうち各気筒がどの行程のどの角度位置にあるかを示すクランク角度を検出する。
【0104】
(角度予測部100)
次に、タイマ部40においてクランク角信号の周期を予測する角度予測部100について説明する。
【0105】
図2に示すように、角度予測部100は、周期計測部102、周期補正部104、および逓倍角度クロック生成部106から構成されている。
周期計測部102は、10°毎に発生するクランク角信号のパルスとパルスとの時間間隔をタイマで計測することにより、クランク角信号の信号周期(クランク角信号の信号周期を、単に「信号周期」とも言う。)を計測する。
【0106】
さらに、周期計測部102は、クランク角信号の基準角度位置からのクランク角信号のパルス数を720°CA毎に計測する。周期計測部102が計測するクランク角信号のパルスカウント数によりクランク角度が検出される。
【0107】
周期補正部104は、周期計測部102が計測する今回のクランク角信号のパルスカウント数により各気筒の今回のクランク角度を検出し、今回検出した信号周期に対する補正量の算出方法を今回のクランク角度に応じて決定する。そして、周期補正部104は、今回の補正方法により今回までに計測したクランク角信号の信号周期に基づいて補正量を算出し、今回の信号周期を補正して次回の信号周期を予測する。
【0108】
逓倍角度クロック生成部106は、周期補正部104が予測した次回の信号周期を逓倍数で割った周期の逓倍角度クロックを生成する。ECU10は、逓倍角度クロック生成部106が出力する逓倍角度クロックに基づいて、クランクロータ4に形成された歯の角度間隔より詳細なクランク角度に同期して、燃料噴射制御等のエンジン制御を実行する。これにより、燃費やドライバビリティを向上できる。
【0109】
また、生成された逓倍角度クロックに基づいてエンジン制御を実行することで、予測された次回の信号周期からエンジン制御の実行タイミングを算出する処理を削減でき、少ない処理負荷で高精度なエンジン制御が可能である。
【0110】
以上説明した図1および図2において、ECU10は本発明のエンジン制御装置に相当し、周期計測部102は本発明の計測手段に相当し、周期補正部104は本発明の補正手段に相当し、逓倍角度クロック生成部106は本発明の角度位置予測手段に相当する。
【0111】
(信号周期の変化)
次に、クランク角信号の信号周期の変化について説明する。エンジンの回転速度は、各気筒の圧縮行程と燃焼行程とにおける筒内圧力の影響を受けて大きく変化する。よって、エンジン回転速度、つまり信号周期の変化は、図3に示すように、クランク角度と強い関係性がある。図3では、4気筒エンジンにおける信号周期と各気筒のクランク角度との関係を示している。着火は#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒の順である。
【0112】
信号周期はエンジンが受ける負荷トルクと各気筒の筒内圧力、特に圧縮行程および燃焼行程における筒内圧力の影響を受けて大きく変化する。例えば#1気筒が圧縮行程のとき、ピストンが#1TDCに近づくにつれて#1気筒の筒内圧力が増大し、負荷トルクと筒内圧力との合力によってピストンの上昇が妨げられるためエンジン回転速度は大きく減速する。その結果、所定の角度間隔で出力されるクランク信号の信号周期は長くなる。
【0113】
クランク角度が#1気筒の#1TDCを越えると#1気筒は燃焼行程に移行する。すると、TDCの前にクランク軸の回転を減速させる方向に作用していた筒内圧力は、TDCの後で回転を加速させる方向に作用するようになる。この時、筒内圧力と負荷トルクとが相反する方向に作用する。エンジンの有効仕事はTDCから約10°CA後に筒内圧力が最大となるとき最も大きくなるため、燃焼遅れを考慮してTDCから約10°CA後に筒内圧力が最大となるようにインジェクタ90の噴射時期が制御される。そのため、図3の例では、TDCから約10°CA経過する前のTDC直後のクランク角信号が出力される時点では、燃焼による圧力上昇は小さく回転変化が小さくなっている。
【0114】
その後、燃焼によって#1気筒の筒内圧力が爆発的に増大すると、エンジン回転速度は急激に加速され信号周期は短くなる。以上より、各気筒の圧縮行程および燃焼行程の筒内圧力の影響により、TDC付近の角度区間の前後ではエンジン回転速度および信号周期が、加速方向または減速方向に大きく変化する。
【0115】
燃焼によって爆発的に増加した#1気筒の筒内圧力は、ピストンの下降と共に徐々に減少する。その一方で、#3気筒では圧縮行程が進み、#3気筒の筒内圧力は徐々に増大していく。#1TDCと#3TDCとの中間角度付近では、#1気筒の筒内圧力および#3気筒の筒内圧力と負荷トルクとが釣り合い、エンジン回転速度の変化が小さくなる。この角度区間ではクランク軸の軸ねじれや機械振動といった不規則的なノイズ成分が現れる。
【0116】
#3気筒の圧縮行程がさらに進むと、#3気筒の筒内圧力と負荷トルクとの合力が#1気筒の1筒内圧力を上回り、エンジン回転速度は再び減速を始める。このように、エンジン回転速度および信号周期の変化特性とクランク角度との間には強い関係性がある。
【0117】
(周期補正処理1)
図4に、本実施形態による信号周期の補正処理を実行するフローチャートを示す。図4および以後に説明する各図のフローチャートにおいて、「S」はステップを表わしている。図4のフローチャートは、クランク角信号のパルスを検出したタイミングで実行される。
【0118】
図4においてECU10は、まず今回のクランク角度θを読込む(S400)。前述したように、クランク角度θは、クランク角信号のパルスカウント数に基づいて検出される。
【0119】
次に、今回までに計測された信号周期として、例えば今回と前回とのクランク角信号の信号周期と、前回と前々回とのクランク角信号の信号周期との変化量αを算出し(S402)、クランク角度に応じて設定された角度特性係数K(θ)を読込む(S404)。信号周期を補正するために今回までに計測された各信号周期はレジスタ等に記憶されており、角度特性係数は書き換え可能な不揮発性のEEPROM等に記憶されている。尚、角度特性係数K(θ)の読込みは変化量αの算出の前に行ってもよい。
【0120】
角度特性係数は、前述した信号周期の変化特性とクランク角度との関係性に基づいて、クランク角度に応じて予め設定されている。角度特性係数は、今回までに周期計測部102が計測したクランク角信号の信号周期に基づいて今回よりも後の信号周期を予測するときに、周期計測部102が計測した信号周期のうち補正対象である基準クランク角信号周期(以下、「基準信号周期」とも言う。)に対する補正量を決定する係数である。
【0121】
次にECU10は、変化量αと角度特性係数K(θ)とを乗算して、次式(1)から補正量Hを算出する(S406)。
補正量H=変化量α×角度特性係数K(θ) ・・・(1)
ECU10は、基準信号周期T(i)をレジスタ等から読込み(S408)、基準信号周期T(i)に補正量Hを加算して、今回と次回とのクランク角信号の信号周期である補正クランク角信号周期(以下、「補正信号周期」とも言う。)T’(i+1)を算出する(S410)。
【0122】
逓倍角度クロック生成部106では、図4の周期補正処理1で算出された補正信号周期を逓倍数で割った周期の逓倍角度クロックを生成する。
このように、今回の変化量αとクランク角度に応じて設定されている角度特性係数K(θ)とによって基準信号周期の補正量Hを決定することで、クランク角度に応じた信号周期の変化特性に基づいて、今回より後の次回の信号周期を高精度に予測できる。
【0123】
例えば、図3の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速し信号周期が長くなる角度区間のうち所定の角度区間においては、エンジン回転速度の減速量がその前後の角度区間よりも大きいので、この所定の角度区間で次回の信号周期を予測する場合、所定の角度区間の前後よりも基準信号周期を補正する補正量を大きくする。
【0124】
具体的には、図5において、信号周期T(2)、T(3)を計測する角度区間において補正信号周期T’(3)、T’(4)を予測する場合、信号周期T(3)、T(4)を計測する角度区間の前後のT(1)およびT(4)でT’(2)、T’(5)を予測するよりも角度特性係数を大きくし、補正量を大きくしている。図5では、T(1)を計測するタイミングでT’(2)を予測するときの予測式は記載されていないが、1.25よりも小さいものとする。
【0125】
また、図3の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速し信号周期が短くなる角度区間のうち所定の角度区間においては、エンジン回転速度の加速量が前回よりも小さいので、この所定の角度区間で次回の信号周期を予測する場合、前回よりも基準信号周期を補正する補正量の絶対値を小さくする。
【0126】
具体的には、図5において、信号周期T(7)、T(8)を計測する角度区間において補正信号周期T’(8)、T’(9)をそれぞれ予測する場合、前回、信号周期T(6)、T(7)を計測したときにT’(7)、T’(8)を予測したときよりも角度特性係数を小さくし補正量の絶対値を小さくしている。
【0127】
また、図3の各TDCを含む前後の所定の角度区間においては、エンジン回転速度の変化量がこの所定の角度区間の直前および直後よりも小さいので、この所定の角度区間の信号周期を予測する場合、所定の角度区間の直前および直後よりも補正量の絶対値を小さくする。
【0128】
具体的には、図5において、TDCを含む前後の所定の角度区間の信号周期T(5)、T(6)の予測周期である補正信号周期T’(5)、T’(6)を信号周期T(4)、T(5)を計測するタイミングで求める場合、信号周期T(5)の直前の信号周期T(4)の補正信号周期T’(4)、ならびに信号周期T(6)の直後の信号周期T(7)の補正信号周期T’(7)を予測するよりも、角度特性係数を小さくし補正量の絶対値を小さくしている。
【0129】
(エンジン回転速度と信号周期との関係)
図6に、エンジン回転速度が低回転時(A)、中回転時(B)、高回転時(C)における信号周期の変化特性を示す。
【0130】
図6において、Tmax、Tave、Tminはそれぞれエンジン回転状態が一定で定常運転した場合の信号周期の最大値、平均値、最小値を示す。信号周期は各気筒の圧縮行程と燃焼行程とにおける筒内圧力の影響を受け720/k[°CA](kは気筒数)周期で変化する。
【0131】
エンジンが低回転時には、筒内圧力が長時間作用するためエンジン回転速度の変化は大きく、エンジン回転速度が中回転、高回転と上昇するにしたがい、エンジン回転速度の変化は小さくなる。
【0132】
低回転時および中回転時には信号周期が変化する支配的要因は、圧縮行程および燃焼行程における筒内圧力と負荷トルクであり、クランク角度に応じて規則的で比較的滑らかで大きな変化をする特徴があるのに対し、高回転時では周期的な回転変化は小さく、不規則なノイズ成分が支配的となる。
【0133】
この不規則なノイズ成分はクランク軸の軸ねじれや機械振動によるものである。低回転時において信号周期が滑らかに変化する場合では、今回までの信号周期から次回の信号周期をある程度予測できるが、信号周期が振動的に激しく変動する高回転時では、補正処理によって不要なノイズ成分が強調され却って誤差が大きくなることがある。
【0134】
そこで本実施形態では、クランク角度に加え、エンジン回転速度に応じて信号周期の角度特性係数を設定することで、所定の回転速度以上の高回転域では、例えば信号周期の補正量を小さくしてノイズ成分による信号周期の補正精度の劣化を低減する。角度特性係数によるノイズの低減処理以外にも、平均化等のフィルタ処理により高周波成分を除去してもよい。
【0135】
以上説明した図4の周期補正処理1によると、今回までに計測された信号周期から信号周期の変化量を算出し、算出した変化量とクランク角度に応じて設定された角度特性係数とを乗算して補正量を算出している。そして、今回までに計測された信号周期のうち補正対象とする基準信号周期に補正量を加算して基準信号周期をクランク角度に応じて補正する。これにより、今回までに計測された信号周期に基づき、今回よりも後の信号周期をクランク角度に応じて高精度に予測することができる。
【0136】
また、最大でも今回までに計測された今回、前回および前々回の3個の信号周期に基づいて今回よりも後の信号周期を予測できるので、今回までに計測された信号周期を記憶する記憶容量を低減できる。
【0137】
以上説明した図4の周期補正処理1において、S400〜S410の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当する。
(周期補正処理2)
図7に、前述したクランク角度に加え、エンジン回転速度に応じて信号周期の角度特性係数を設定する周期補正処理2のフローチャートを示す。
【0138】
図7において、S420、S424、S430およびS432は、図4のSS400、S402、S408およびS410と対応しており、実質的に同一処理である。
図7の周期補正処理2では、S420でクランク角度θを読込むことに加え、S422においてエンジン回転速度NEを読込んでいる。そして、クランク角度θおよびエンジン回転速度NEに応じて予め設定されている角度特性係数K(θ,NE)を読込み(S426)、変化量αと角度特性係数K(θ,NE)とを乗算して補正量Hを算出する(S428)。
【0139】
このように、クランク角度θおよびエンジン回転速度NEに応じて予め設定されている角度特性係数K(θ,NE)を用いて補正量Hを算出することにより、例えば所定速度以上の高回転時において低回転時および中回転時よりも角度特性係数の値を小さくして補正量の絶対値を小さくする。これにより、高回転時において、ノイズ成分による信号周期の補正精度の劣化を低減できる。
【0140】
尚、エンジン回転速度が第1速度以上になると、エンジン回転速度が前記第1速度未満の場合よりも角度特性係数を小さくして信号周期の補正量の絶対値を小さくし、エンジン回転速度が第1速度よりも遅い第2速度未満になると、エンジン回転速度が第2速度以上の場合よりも角度特性係数を大きくして補正量の絶対値を大きくすることが望ましい。
【0141】
これにより、エンジン回転速度が第1速度以上になり補正量が大きくなると、エンジン回転速度が第1速度よりも遅い第2速度未満になるまで、補正量は変化しない。また、エンジン回転速度が第2速度未満になり補正量が小さくなると、エンジン回転速度が第2速度よりも速い第1速度以上になるまで、補正量は変化しない。
【0142】
その結果、エンジン回転速度が第1速度または第2速度付近で変動しても、補正量が頻繁に増減することを防止できるので、補正量が頻繁に増減することにより生じる異常動作の発生を防止でき、信頼性が向上する。
【0143】
以上説明した図7の周期補正処理2において、S420〜S432の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当する。
(変化量算出処理1)
図8に、図4のS402および図7のS424で実行される変化量αの算出処理のフローチャートを示す。
【0144】
ECU10は、今回までに計測したクランク角信号の2個の信号周期T(i−m)、T(i−n)を読込み(S440、S442)、次式(2)から信号周期の変化量αを算出する(S444)。式(2)では、2個の信号周期T(i−m)、T(i−n)の差分を、2個の信号周期が計測される順番の差の絶対値で除算して変化量αを算出している。
【0145】
α=(T(i−m)−T(i−n))/|n−m| ・・・(2)
尚、信号周期T(i)は、前回と今回とのクランク角信号のパルスの時間間隔を表わしている。そして、変化量αは、例えば、最新の2個の連続する信号周期の差を算出して求められる。この場合m=0、n=1、|n−m|=1である。
【0146】
式(2)の分母は、|n−m|≧2の場合に、複数区間離れた2個の信号周期の差を平均して今回よりも後の次回の信号周期に対応させるために1区間の信号周期の差に変換するための項である。
【0147】
間に1個以上の信号周期を挟んだ信号周期の差を信号周期が計測された順番で除算することにより、不規則的なノイズ成分を低減できる。例えば、連続する最新の2個の信号周期から変化量αを求める場合、つまりm=0、n=1、|n−m|=1の場合、例えば信号周期T(i)にノイズ成分Nが含まれているとすると、変化量αは次式(3)で算出される。
【0148】
α=T(i)−T(i−1)+N ・・・(3)
式(3)では、変化量αにノイズ成分Nがそのまま加算される。一方、互いに1区間離れた2個の信号周期から変化量αを算出する場合、つまりm=0、n=2、|n−m|=2の場合、変化量αは次式(4)で算出される。
【0149】
α={(T(i)−T(i−2))/2}+N/2 ・・・(4)
式(4)では、ノイズ成分Nを半減できる。したがって、2個の信号周期の間の区間をさらに離せば、ノイズ成分の影響をより低減できる。
【0150】
ただし、2個の信号周期の間の区間を離し過ぎると、信号周期の変化特性が平均化され、今回までに計測された信号周期の変化特性に適切に適応できない。したがって、ノイズ成分の発生量および信号周期の変化特性に基づいて、信号周期の間の区間数を適切に設定する必要がある。
【0151】
尚、式(2)において、間に1個以上の信号周期を挟んだ信号周期の差を|n−m|で除算する代わりに、|n−m|で除算するときよりも角度特性係数Kを小さい値に設定することにより、ノイズ成分を低減してもよい。この場合、間に1個以上の信号周期を挟んでいても、変化量αは次式(5)で算出される。
【0152】
α=T(i−m)−T(i−n) ・・・(5)
以上説明した図8の変化量算出処理1において、S440〜S444の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当する。
【0153】
(変化量算出処理2)
図9に、変化量αの他の算出処理のフローチャートを示す。図9の変化量算出処理2では、図3において圧縮行程が終了しTDCから燃焼行程に移行しエンジン回転速度が急激に上昇する角度区間、具体的には図5の角度区間Aにおいて次回の補正信号周期を予測するときの変化量の算出処理が、図8の変化量算出処理1に加わっている。
【0154】
図9のS450において、ECU10は今回検出したクランク角度θが図5の角度区間Aに含まれるか否かを判定する。
クランク角度θが角度区間Aに含まれない場合(S450:No)、ECU10は、S452〜S456において図8のS440〜S444と同一処理を実行する。
【0155】
クランク角度θが角度区間Aに含まれる場合(S450:Yes)、ECU10は、圧縮行程の減速区間における2個の信号周期T(i−p)、T(i−q)を読込み(S458、S460)、次式(6)から変化量αを求める(S462)。
【0156】
α=(T(i−p)−T(i−q))/|q−p| ・・・(6)
図5の角度区間Aでは、p=2、q=1と設定し、今回の信号周期T(6)を計測したときに、次式(7)から変化量を算出している。
【0157】
α=(T(4)−T(5))/|1| ・・・(7)
つまり、角度区間Aでは、通常の角度区間で今回と前回とで計測した信号周期を読込んでその差から変化量を算出する代わりに、前々回と前回とで計測した信号周期を読込み、信号周期の差を算出するときも、その順序を反転している。したがって、式(7)において変化量αの符号は「負」になる。
【0158】
このように、角度区間Aにおいて次回の信号周期を予測するために変化量を算出する場合、圧縮行程における減速特性を燃焼行程の加速特性に変換して変化量αを算出する。
図5の燃焼行程の角度区間Aにおいては、図9の変化量算出処理2で算出された変化量から、次回の補正信号周期T’(7)を次式(8)から算出する。
【0159】
T’(7)=T(6)+{(T(4)−T(5))/|1|}×1.5・・・(8)
このように、燃焼行程の角度区間Aにおいては、角度特性係数を1.5に設定することにより、圧縮行程の減速区間における信号周期の変化量(T(5)−T(4))の絶対値よりも、補正量の絶対値|(T(4)−T(5))/1|×1.5を大きくしている。
【0160】
以上説明した図9の変化量算出処理2おいて、S450〜S462の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当する。
(変化量算出処理3)
図10に、変化量αの他の算出処理のフローチャートを示す。図10の変化量算出処理3では、図3において一つの気筒の燃焼行程において加速区間が終了し他の気筒の圧縮行程の減速区間が始まり、エンジン回転速度の変化がこの前後の角度区間よりも小さい角度区間B(図5の角度区間Bも参照)において、次回の補正信号周期を予測するときの変化量の算出処理が、図9の変化量算出処理2に加わっている。
【0161】
図10のS470において、ECU10は今回検出したクランク角度θが図5の角度区間Aに含まれるか否かを判定する。クランク角度θが角度区間Aに含まれる場合(S470:Yes)、ECU10は、S472〜S476において図9のS458〜S462と同一処理を実行する。
【0162】
クランク角度θが角度区間Aに含まれず(S470:No)、角度区間Bにも含まれない場合(S478:No)、ECU10は、S480〜S484において図9のS452〜S456と同一処理を実行する。
【0163】
クランク角度θが角度区間Aに含まれず(S470:No)、角度区間Bに含まれる場合(S478:Yes)、ECU10は、角度区間B以外とは異なる選択パターンの2個の信号周期T(i−r)、T(i−s)を読込み(S486、S488)、次式(9)から変化量αを求める(S490)。
【0164】
α=(T(i−r)−T(i−s))/|r−s| ・・・(9)
図5に示す角度区間Bでは、r=0、s=2と設定し、次式(10)から変化量を算出している。
【0165】
α=(T(i)−T(i−2))/|2| ・・・(10)
このように、角度区間Bでは、間に1個以上の信号周期の挟んだ2個の信号周期の差を、信号周期が計測された順番の差で除算することにより、式(4)で説明したように、ノイズ成分の影響を低減できる。
【0166】
以上説明した図10の変化量算出処理3において、S470〜S490の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当する。
(変化量算出処理4)
図11に、変化量αの他の算出処理のフローチャートを示す。
【0167】
図11のS500〜S504は図8のS440〜S444と同一処理である。そして、S506においてECU10は、S504で算出した変化量αの値が負であるか否かを判定する。
【0168】
変化量αの値が正であれば(S506:No)、減速区間において信号周期を予測しており、基準信号周期よりも補正信号周期が大きくなると考えられる。このとき、検出したクランク角度θが加速区間を示していると(S508:Yes)、S504で算出した変化量はノイズやセンサ異常の発生により異常であると判断し、変化量αを「0」に設定し(S510)、補正を禁止する。
【0169】
変化量αの値が負であれば(S506:Yes)、加速区間において信号周期を予測しており、基準信号周期よりも補正信号周期が小さくなると考えられる。このとき、検出したクランク角度θが減速区間を示していると(S512:Yes)、S504で算出した変化量はノイズやセンサ異常の発生により異常であると判断し、変化量αを「0」に設定し(S510)、補正を禁止する。
【0170】
図11の変化量算出処理4では、図3において各気筒の圧縮行程の減速区間と燃焼行程における加速区間とにおいて算出した変化量αが、該当角度区間において算出されると考えられる変化量を満たさない場合、ノイズやセンサ異常により生じる変化量の異常と判断し、補正を禁止する。したがって、次回の補正信号周期は今回計測した信号周期(基準信号周期)と同じ値になる。これにより、信号周期の誤補正を防止できる。
【0171】
以上説明した図11の変化量算出処理4において、S500〜S504の処理は本発明の補正手段が実行する機能に相当し、S506〜S510の処理は本発明の補正禁止手段が実行する機能に相当する。
【0172】
(周期補正部の回路構成)
図12に、図2に示す周期補正部104の回路構成の一例である周期補正部110を示す。周期補正部110は、角度判定部112、履歴記憶部114、変化量算出部116、周期算出部118から構成されている。
【0173】
角度判定部112は、周期計測部102で計測されたクランク角信号のパルスカウント数を入力し、今回検出したクランク角度が各気筒のどの行程のどの角度位置であるかを判定する。
【0174】
そして、角度判定部112は、今回検出したクランク角度に応じて履歴出力制御信号を履歴記憶部114に出力する。履歴出力制御信号は、履歴記憶部114から出力される基準信号周期、履歴信号周期1、2を指定するとともに、履歴記憶部114に記憶されている信号周期を、変化量算出部116で変化量を算出するために使用する履歴信号周期1、2として出力するために信号周期に実施する前処理を指定する。
【0175】
さらに、角度判定部112は、今回検出したクランク角度に応じて、周期算出部118において補正量を算出するときに使用する角度特性係数を選択するための角度特性係数選択信号を出力する。
【0176】
履歴記憶部114は、周期計測部102が今回までに計測した複数の信号周期をレジスタ等に記憶する。そして、角度判定部112から出力される履歴出力制御信号に基づき、出力する基準信号周期、履歴信号周期1、2を選択するとともに、履歴信号周期1、2として出力する信号周期に前処理を実施する。
【0177】
変化量算出部116は、履歴記憶部114に記憶されている今回までの信号周期から、これまで説明した変化量αを算出する。
周期算出部118は、角度判定部112から出力される角度特性係数選択信号に基づいてクランク角度に応じた角度特性係数を選択し、変化量算出部116で算出された変化量αと選択した角度特性係数とを乗算し、今回計測した基準信号周期に加算して補正信号周期を算出する。
【0178】
以上説明した図12において、周期補正部110は本発明の補正手段に相当し、角度判定部112は本発明の角度検出手段および制御手段に相当し、履歴記憶部114は本発明の履歴記憶手段に相当し、変化量算出部116は本発明の変化量算出手段に相当し、周期算出部118は本発明の周期算出手段に相当する。
【0179】
(履歴記憶部の回路構成)
図13に、図12に示す履歴記憶部114の回路構成の一例である履歴記憶部120を示す。履歴記憶部120は、周期計測部102で計測された信号周期を履歴レジスタ122a、122b、122cに記憶する。本実施形態では、3個の履歴レジスタを備えている。尚、履歴レジスタの数は、基準信号周期を補正するために必要な信号周期の個数によっては、4個以上であってもよい。
【0180】
今回計測された最新の信号周期は履歴レジスタ122aに記憶され、それまで履歴レジスタ122a、122b、122cに記憶されていた信号周期は、履歴レジスタ122bから履歴レジスタ122cに、履歴レジスタ122aから履歴レジスタ122bに順次移動される。
【0181】
MUX(Multiplexer)126は、角度判定部112から出力される履歴出力制御信号に基づき、変化量を算出するために必要な信号周期を記憶している履歴レジスタを履歴レジスタ122a、122b、122cから選択して出力するとともに、基準信号周期を出力する。基準信号周期は、履歴レジスタ122a、122b、122cのうち今回計測された信号周期でもよいし、それ以外の信号周期でもよい。
【0182】
シフタ124a、124bは、角度判定部112から出力される履歴出力制御信号に基づき、MUX126から出力される信号周期に対し、間に1個以上の信号周期を挟んだ信号周期の差を信号周期が計測された順番で除算する場合に、除算に対応するシフト処理を実行する。したがって、間に1個以上の信号周期を挟んだ信号周期の差は2のべき乗であることが望ましい。
【0183】
尚、間に1個以上の信号周期を挟んだ信号周期の差を信号周期が計測された順番で除算して変化量、すなわち補正量を小さくすることに代えて角度特性係数を小さくする場合、図13のシフタ124a、124bを省略できる。
【0184】
以上説明した図13において、履歴記憶部120は本発明の履歴記憶手段に相当し、履歴レジスタ122a〜122cは本発明の周期記憶部に相当する。
(周期算出部の回路構成)
図14に、図12に示す周期算出部118の回路構成の一例である周期算出部130を示す。周期算出部130のカウンタ132は、角度判定部112から出力される角度特性係数選択信号、実際にはパルス信号のパルス数をカウントする。そして、角度特性係数記憶部134は、カウンタ132がカウントするカウント数をポインタとして、クランク角度に応じて使用する順番で記憶している角度特性係数を順次出力する。
【0185】
角度特性係数記憶部134は、レジスタ等の書き換え可能な記憶部で構成されている。したがって、角度特性係数記憶部134またはソフトウェアを変更することなく、角度特性係数記憶部134に記憶されている角度特性係数をソフトウェアにより変更することができる。
【0186】
固定係数記憶部136には、固定の角度特性係数(以下、「固定係数」とも言う。)が記憶されている。固定係数は、複数のクランク角度において一定の角度特性係数を使用するときに、その角度特性係数を固定係数として固定係数記憶部136に記憶しておくことにより、角度特性係数記憶部134の記憶容量を低減できる。
【0187】
例えば、通常は角度特性係数として固定係数記憶部136に記憶されている1.0を角度特性係数とし、その他のクランク角度において、角度特性係数記憶部134に記憶されているクランク角度に応じた角度特性係数を使用する。
【0188】
セレクタ138は、角度特性係数選択信号のパルスが発生していない「0」の場合は固定係数記憶部136から出力される固定係数を選択し、角度特性係数選択信号のパルスが発生している「1」の場合は角度特性係数記憶部134から出力される角度特性係数を選択する。
【0189】
補正量算出部140は、図12の変化量算出部116から出力される変化量αに、セレクタ138から出力される角度特性係数を乗算器等により乗算し補正量を算出する。この補正量は、例えば、圧縮行程の減速区間では正の値であり、燃焼行程の加速区間では負の値である。
【0190】
加算器142は、図12の履歴記憶部114から出力される基準信号周期と補正量算出部140から出力される補正量とを加算して、次回の信号周期として予測される補正信号周期を算出する。
【0191】
以上説明した図14において、周期算出部130は本発明の周期算出手段に相当し、角度特性係数記憶部134および固定係数記憶部136は本発明の角度特性係数記憶部に相当し、補正量算出部140は本発明の乗算器を有する補正量算出手段に相当する。
【0192】
(補正量算出部の回路構成)
図15の(A)に、図14に示す補正量算出部138の回路構成の一例である補正量算出部150を示す。補正量算出部150は、変化量αと角度特性係数とを乗算して補正量Hを算出する処理を、2個のシフタ154a、154bと1個の加減算器156とで実現している。この場合、角度特性係数は2のべき乗とその加減算で算出される値に設定されている。
【0193】
補正制御部152は、角度特性係数の値に応じてシフタ154a、154bのシフト量を切り換えるとともに、加減算器156の加算または減算を切り換える。
図15の(B)に、角度特性係数と、シフタ154a、154bにより変化量を乗算する乗算値と、加減算器156の加算または減算との関係の一例を示す。
【0194】
シフタ154a、154bの乗算値はシフト演算可能な2のべき乗である。例えば、角度特性係数が1.75の場合、シフタ154aは左1bit、シフタ154bは右2bitのシフト演算を行い、加減算器156は、シフタ154aの出力からシフタ154bの出力を減算する。
【0195】
このように、シフタ154a、154bのシフト量と、加減算器156の加算または減算とを角度特性係数に応じて切り換えることにより、0〜2.0の範囲で角度特性係数を設定できる。尚、シフタ154a、154bのシフト量をさらに大きくすることで、角度特性係数の設定範囲を大きくするとともに、乗算値を細かくすることができる。
【0196】
図16は、例えば、図12に示す周期補正部110が図13〜図15の回路を有する場合に実行される周期補正処理を示すタイムチャートである。基準信号周期は今回計測された最新の信号周期とし、変化量は最新の連続する2個の信号周期の差としている。
【0197】
t2のタイミングでの周期補正処理では、今回計測された最新の信号周期(0100h)を基準信号周期T(i)とし、基準信号周期(0100h)と、今回の直前のt1のタイミングで計測された信号周期(00E5h)との差(001Bh)が変化量αとして算出される。
【0198】
また、クランク角信号のパルスカウント数はクランク角度θを示し、角度特性係数Kを適用するクランク角度θになると図12に示す角度判定部112から角度特性係数選択信号としてパルスが出力される。
【0199】
前述したように、角度判定部112から角度特性係数選択信号としてパルスが出力される場合、クランク角度に応じて出力される角度特性係数は図14に示す角度特性係数記憶部134から選択される。図16においては、t2、t3、t4のタイミングで、角度特性係数記憶部134から出力される角度特性係数が選択されている。
【0200】
角度判定部112から角度特性係数選択信号としてパルスが出力されない場合、図14に示す固定係数記憶部136から出力される固定係数として1.0が選択される。図16においては、t5、t6のタイミングで、固定係数記憶部136から出力される固定係数(1.0)が選択されている。
【0201】
図16では、t2のタイミングで角度特性係数選択信号としてパルスが出力され、角度特性係数Kとして1.5dが出力される。そして、算出された変化量α(001Bh)と角度特性係数K(1.5d)との乗算により、補正量H(0028h)が算出される。基準信号周期T(i)=0100hと補正量H(0028h)との加算によって補正信号周期T'(i+1)=0128hが算出される。
【0202】
以上説明した図15の(A)において、補正量算出部150は本発明の補正量算出手段に相当し、補正制御部152は本発明の補正制御手段に相当し、シフタ154a、154bは本発明の補正量算出手段が有するシフタに相当し、加減算器156は本発明の補正量算出手段が有する加減算器に相当する。
【0203】
(履歴記憶部の他の回路構成)
図17に、図12に示す履歴記憶部114の回路構成の他の例である履歴記憶部160を示す。履歴記憶部160は、出力設定レジスタ162が追加されている以外は、図13に示す履歴記憶部120と実質的に同一構成である。
【0204】
出力設定レジスタ162には、角度区間A、角度区間Bもしくはそれ以外の角度区間のそれぞれについて、基準信号周期T(i)、履歴信号周期1、履歴信号周期2の三つの出力としてどの履歴レジスタ122a、122b、122cを選択するかと、クランク角度に応じたシフタ124a、124bのシフト量とが予め設定されている。
【0205】
MUX126は出力設定レジスタ162で定められた履歴レジスタ番号にしたがい、履歴レジスタ122a、122b、122cから基準信号周期T(i)、履歴信号周期1、履歴信号周期2に対応する履歴レジスタを選択する。
【0206】
出力設定レジスタ162の設定値はエンジン回転速度に応じてソフトウェアにより変更することができる。この構成とすることで、ソフトウェアによって柔軟に変化量αの算出方法を制御することができ信号周期の予測精度を向上させることができる。
【0207】
以上説明した図17において、履歴記憶部160は本発明の履歴記憶手段に相当し、出力設定レジスタ162は本発明の設定レジスタに相当する。
(履歴記憶部の他の回路構成)
図18に、図12に示す履歴記憶部114の回路構成の他の例である履歴記憶部170を示す。履歴記憶部170は、少なくとも2つの出力設定レジスタ176a、176bを備え、エンジン回転速度と所定の閾値との大小関係によって使用する出力設定レジスタを切り換える点で図17に示す履歴記憶部160と異なっており、それ以外の構成は図17に示す履歴記憶部160と実質的に同一構成である。尚、図18では、図17に図示されたシフタ124a、124bを省略している。
【0208】
図18に示す履歴記憶部170では、エンジン回転速度と回転速度閾値レジスタ172に設定されている所定速度とを比較器174で比較する。セレクタ178は、エンジン回転速度が所定速度未満の場合は、出力設定レジスタ176aを選択し、エンジン回転速度が所定速度を超える場合は、出力設定レジスタ176bを選択する。
【0209】
MUX126は、セレクタ178で選択された出力設定レジスタで定められた履歴レジスタ番号にしたがい、履歴レジスタ122a、122b、122cから基準信号周期T(i)、履歴信号周期1、履歴信号周期2に対応する履歴レジスタを選択する。
【0210】
この構成により、MUX126が選択する履歴レジスタ番号をエンジン回転速度に応じて変更する処理を、ソフトウェアによらず自動的に行うことができるので、処理速度が向上する。
【0211】
また、比較器174にヒステリシスの特性を持たせることで、回転速度閾値レジスタ172に設定されている所定速度の付近でエンジン回転速度が変動しても、選択される履歴レジスタとシフタによるシフト量とが頻繁に変化することを防止する。
【0212】
以上説明した図18において、履歴記憶部170は本発明の履歴記憶手段に相当し、出力設定レジスタ176a、176bは本発明の設定レジスタに相当する。
(履歴記憶部の他の回路構成)
図19に、図12に示す履歴記憶部114の回路構成の他の例である履歴記憶部180を示す。履歴記憶部180は、今回計測された信号周期と所定の閾値との大小関係によって使用する出力設定レジスタを切り換える点で図18に示す履歴記憶部170と異なっており、それ以外の構成は図18に示す履歴記憶部170と実質的に同一構成である。尚、図19では、図17に図示されたシフタ124a、124bを省略している。
【0213】
図19に示す履歴記憶部180では、今回計測された信号周期と信号周期閾値レジスタ182に設定されている所定信号周期とを比較器174で比較する。セレクタ178は、今回の信号周期が所定信号周期未満の場合は、出力設定レジスタ176aを選択し、今回の信号周期が所定信号周期を超える場合は、出力設定レジスタ176bを選択する。
【0214】
この構成により、MUX126が選択する履歴レジスタ番号を信号周期に応じて変更する処理を、ソフトウェアによらず自動的に行うことができるので、処理速度が向上する。
以上説明した図19において、履歴記憶部180は本発明の履歴記憶手段に相当する。
【0215】
(周期算出部の回路構成)
図20に、図12に示す周期算出部118の回路構成の他の例である周期算出部190を示す。周期算出部190は、少なくとも2つの角度特性係数記憶部134a、134を備え、エンジン回転速度と所定の閾値との大小関係によって使用する角度特性係数記憶部を切り換える点で図14に示す周期算出部130と異なっており、それ以外の構成は図14に示す周期算出部130と実質的に同一構成である。
【0216】
図20に示す周期算出部190では、エンジン回転速度と回転速度閾値レジスタ192に設定されている所定速度とを比較器194で比較する。セレクタ196は、エンジン回転速度が所定速度未満の場合は、角度特性係数記憶部134aを選択し、エンジン回転速度が所定速度を超える場合は、角度特性係数記憶部134bを選択する。
【0217】
セレクタ138は、角度特性係数選択信号のパルスが発生していない「0」の場合は固定係数記憶部136から出力される固定係数を選択し、角度特性係数選択信号のパルスが発生している「1」の場合はセレクタ196から出力される角度特性係数を選択する。
【0218】
この構成により、エンジン回転速度に応じて角度特性係数を切り換える処理を、ソフトウェアによらず自動的に行うことができるので、処理速度が向上する。
尚、エンジン回転速度と回転速度閾値レジスタ192に設定されている所定速度とを比較器194で比較する回路を、図18の履歴記憶部170においてエンジン回転速度と所定速度とを比較する回路と共通にしてもよい。
【0219】
また、エンジン回転速度に代えて、図19に示す履歴記憶部180と同様に、今回計測された信号周期と所定の信号周期とを比較し、角度特性係数記憶部134a、134bのいずれを選択するかを決定してもよく、その比較回路を履歴記憶部180の比較回路と共通にしてもよい。
【0220】
以上説明した図20において、周期算出部190は本発明の周期算出手段に相当し、角度特性係数記憶部134a、134bは本発明の角度特性係数記憶部に相当する。また、図19のように、今回計測された信号周期と所定の信号周期とを比較器174で比較することによりエンジン回転速度を判定して角度特性係数記憶部134a、134bのいずれを選択する場合、比較器174は本発明の速度判定手段に相当する。
【0221】
(周期補正部の回路構成)
図21に周期補正部の回路構成の他の例である周期補正部200を示す。周期補正部200では、今回計測された最新の信号周期を基準信号周期としている。したがって、周期算出部118は、変化量算出部116で算出された変化量から補正量を算出し、算出した補正量により最新の信号周期を補正する。
【0222】
この構成により、履歴記憶部202において基準信号周期を出力する回路を削減できる。また、最新の信号周期を補正対象である基準信号周期とするので、直前の信号周期の変化特性に基づいて次回の信号周期を高精度に予測できる。
【0223】
以上説明した図21において、周期補正部200は本発明の補正手段に相当し、履歴記憶部202は本発明の履歴記憶手段に相当する。
(周期補正部の回路構成)
図22に周期補正部の回路構成の他の例である周期補正部210を示す。周期補正部210では、最新の信号周期を基準信号周期とし、周期算出部118の出力と基準信号周期とのいずれかを、ソフトウェアの指令によりセレクタ212で選択する構成になっている。
【0224】
この構成によれば、セレクタ212以外の周期補正部210に異常が発生した場合、周期補正部210による信号周期の補正処理を禁止し、補正前の基準信号周期を補正信号周期として出力できる。その結果、周期補正部210の異常時に異常な補正信号周期を次回の信号周期とすることを防止するので、信頼性が向上する。
【0225】
また、例えば、エンジン回転速度が高回転時にソフトウェアの指令によりセレクタ212で基準信号周期を選択し、基準信号周期に対する補正処理を禁止してもよい。これにより、補正処理によって不要なノイズ成分が強調され却って誤差が大きくなる高回転時において、補正処理による信号周期の予測精度の劣化を防止することができる。
【0226】
また、TDC付近、ならびにTDCとTDCとの間の中間部分のように、信号周期の変化の小さい角度区間において、クランク角度に応じて角度判定部112から制御信号をセレクタ212に出力して基準信号周期を選択し、基準信号周期に対する補正処理を禁止してもよい。これにより、信号周期の変化が小さく補正処理によりノイズの影響を受けやすい角度区間において、補正処理による信号周期の予測精度の劣化を防止することができる。
【0227】
以上説明した図22において、周期補正部210は本発明の補正手段に相当し、セレクタ212は、今回までに計測された信号周期と補正された信号周期とのいずれか一方を選択する本発明のセレクタに相当する。
【0228】
(周期補正部の回路構成)
図23に周期補正部の回路構成の他の例である周期補正部220を示す。周期補正部220では、変化量算出部116で変化量を算出するときに使用する2個の信号周期の一方を常に最新の信号周期としている。したがって、履歴記憶部222から変化量算出部116に1個の履歴信号周期を出力すればよいので、履歴信号周期を出力する回路を履歴記憶部222から削減できる。
【0229】
ただし、図23の周期補正部220では、変化量算出部116で変化量を算出するときに使用する2個の信号周期の一方を常に最新の信号周期としているので、圧縮行程の減速特性を燃焼行程の加速特性に変換する式(8)に示す変化量の計算ができない。
【0230】
そこで、式(8)に代えて周期補正部220では、次式(11)に示すように変化量を算出し補正量を算出する。
T’(7)=T(6)−{(T(6)−T(4))/|2|}×3・・・(11)
つまり、本実施形態では、基準信号周期から補正量を減算して補正信号周期を算出している。したがって、角度区間Aにおいて、基準信号周期と補正量との加算を減算に切り換える必要がある。この加算と減算との切り換えは、角度判定部226から出力される補正符号制御信号と、次に説明する図24の周期算出部230の構成により実現できる。
【0231】
以上説明した図23において、周期補正部220は本発明の補正手段に相当し、履歴記憶部222は本発明の履歴記憶手段に相当し、周期算出部224は本発明の周期算出部に相当し、角度判定部226は本発明の角度検出手段および制御手段に相当する。
【0232】
(周期算出部の回路構成)
図24に、図23に示す周期算出部224の回路構成の一例である周期算出部230を示す。周期算出部230は、図14に示す周期算出部130の加算器142に代えて加減算器232を備えている。加減算器232における加算または減算は、角度判定部226から出力される補正符号制御信号により切り換えられる。補正符号制御信号はクランク角度が角度区間Aに含まれるときに加減算器232の減算を選択し、その他の角度区間では加減算器232の加算を選択する。
【0233】
以上説明した図24において、周期算出部230は本発明の周期算出手段に相当し、加減算器232は本発明の加減算手段に相当する。
(周期算出部の回路構成)
図25に、周期算出部の回路構成の他の例である周期算出部240を示す。周期算出部240は、図24の周期算出部230の補正量算出部140に図15の(A)の補正量算出部150を適用し、一部の回路を共通化したものである。角度特性係数が出力される回路は図24と同一であるため省略している。
【0234】
以下、周期算出部240の処理を図26のタイムチャートに基づいて説明する。図25および図26においてφはクロックを表わしている。また、図26のタイムチャートでは、角度特性係数選択信号が「H」であるから、固定の角度特性係数ではなく、クランク角度に応じた角度特性係数が選択される。
(1)クランク角信号の立ち上がりエッジが入力された次のクロックサイクルにおいてクロックφが「H」になると、セレクタ246、248は、補正制御部242から指令される角度特性係数の値に応じたシフト量によりシフタ244a、244bがそれぞれシフト処理した変化量を選択し、セレクタ250は補正制御部242から出力される加算または減算の切り換え信号を加減算器252に出力する。
【0235】
図26では、変化量αが0004hであり、角度特性係数が1.5dであるから、シフタ244aの出力は0004hをシフトせずに処理した0004hであり、シフタ244bの出力は0004dを右に1bitシフトして0.5倍した0002hである。そして、加減算器252には角度特性係数の1.5dに応じて(1.0+0.5)を実行する加算が選択されているので、加減算器252は補正量として0006hを出力する。
(2)クロックφが「H」から「L」になると、レジスタ254に加減算器252の出力である0006hが格納される。そして、セレクタ246はレジスタ254の出力を選択し、セレクタ248は基準信号周期を選択し、セレクタ250は補正符号制御信号を選択する。
【0236】
前述したように、補正符号制御信号はクランク角度が角度区間Aに含まれるときに加減算器252の減算を選択し、その他の角度区間では加減算器252の加算を選択する。図26のタイムチャートでは、クランク角度が角度区間Aではない場合を例示しているので、加減算器252は加算処理を行う。したがって、加減算器252は、基準信号周期の0080hとレジスタ254の出力との加算である0086hを出力する。
(3)次にクロックφが「L」から「H」になると、加減算器252の出力である0086hが補正信号周期としてレジスタ256に格納され、周期算出部240から出力される。
【0237】
図25の周期算出部240では、クロックφの「H」と「L」とにより加減算器252の入力を切り換え、その都度レジスタ254またはレジスタ256に加減算器252の出力を格納するので、1個の加減算器252を共有できる。
【0238】
以上説明した図25において、周期算出部240は本発明の周期算出手段に相当し、シフタ244a、244bは本発明の補正量算出手段が有するシフタに相当し、加減算器252は本発明の補正量算出手段が有する共通化された加減算器に相当する。
【0239】
(周期補正部の回路構成)
図27に周期補正部の回路構成の他の例である周期補正部260を示す。周期補正部260は、図21の周期補正部200の変化量算出部116に代えて、エンジン回転速度の加速区間または減速区間において、正常な変化量が算出されているか否かを判定する変化量算出部262を設置している。
【0240】
角度判定部264は、正常な変化量が算出されているか否かを変化量算出部262が判定するために、加速区間を表わす加速区間信号、ならびに減速区間を表わす減速区間信号を出力している。
【0241】
以上説明した図27において、周期補正部260は本発明の補正手段に相当し、角度判定部264は本発明の角度検出手段および制御手段に相当する。
(変化量算出部の回路構成)
図28に、図27の変化量算出部262の回路構成の一例である変化量算出部270を示す。
【0242】
減算器272は、履歴記憶部202から出力される履歴信号周期1と履歴信号周期2との差を算出し変化量として出力する。履歴信号周期1は履歴信号周期2よりも新しいタイミングの履歴信号周期である。したがって、履歴信号周期1および履歴信号周期2が正常であれば、減算器272の出力する変化量の値は、エンジン回転速度の減速区間において正の値になり、エンジン回転速度の加速区間において負の値になる筈である。
【0243】
比較器274は、減算器272の出力が正の値であれば「H」を出力し、減算器272の出力が負の値であれば「L」を出力する。
そして、論理ゲート276は、エンジン回転速度が加速区間で変化量が正の値であれば「H」を出力し、変化量が負の値であれば「L」を出力する。また、論理ゲート278は、エンジン回転速度が減速区間で変化量が正の値であれば「L」を出力し、変化量が負の値であれば「H」を出力する。
【0244】
論理ゲート276、278の出力の両方が「H」になり論理ゲート280から「H」が出力され、減算器272の出力である変化量がセレクタ282で選択されるのは、加速区間で変化量が負の値か、減速区間で変化量が正の値のときである。
【0245】
これに対し、ノイズの発生、センサまたは回路の異常により変化量の符号が加速区間および減速区間で想定される符号と異なる場合は、論理ゲート276、278の出力のいずれかが「H」になり、論理ゲート280から「H」が出力されるので、セレクタ282から変化量として0が出力される。この場合、周期補正処理が禁止されるので、次回の信号周期として基準信号周期がそのまま採用される。
【0246】
このように、図28の変化量算出部270では、ノイズの発生、センサまたは回路の異常により異常な変化量が算出される場合、周期補正処理が禁止されるので誤補正を防止できる。その結果、信頼性が向上する。
【0247】
以上説明した図28において、変化量算出部270は本発明の変化量算出手段に相当する。
[他の実施形態]
上記実施形態では、今回までに計測された信号周期の差分である変化量を算出し、この変化量をクランク角度に応じて補正することにより、今回計測された信号周期と次回の信号周期との差分を今回計測された信号周期に対する補正量とし、次回の信号周期を予測している。
【0248】
これに対し、今回計測された信号周期をクランク角度に応じて直接補正してもよい。例えば、今回計測された信号周期に角度特性係数を直接乗算してもよい。また、次回の信号周期ではなく、複数回後の信号周期を予測してもよい。
【0249】
また、信号周期の差分は、今回までに計測された2個の信号周期による1組の差分に限らず、複数組の差分をクランク角度に応じて重みづけして求めてもよい。
また、上記実施形態では、今回までに計測した信号周期に基づいて、今回までに計測した信号周期のうち補正対象となる基準信号周期をクランク角度に応じて補正し、今回より後の信号周期を予測した。
【0250】
これに対し、今回よりも前までに計測した信号周期に基づいて、今回よりも前までに計測した信号周期のうち補正対象となる基準信号周期をクランク角度に応じて補正し、基準信号周期より後で、かつ今回より前の過去の信号周期を予測してもよい。
【0251】
また、電動モータにも、回転子が回転する回転速度に回転角度に応じた変化特性がある。したがって、電動モータの回転軸の回転に伴い所定の回転角度で発生する信号列である回転角信号の信号周期にも、回転角度に応じた変化特性がある。
【0252】
そこで、電動モータにおいても、今回までに計測された信号周期に基づき、回転角信号で表わされる回転軸の回転角度に応じて、今回までに計測された信号周期のうち補正対象となる基準信号周期を補正して今回より後の信号周期を補正してもよい。
【0253】
これにより、予測した信号周期の範囲において、回転角信号の角度間隔よりも詳細な回転角度位置を求めることができる。
上記実施形態では、車両用ディーゼルエンジンのエンジン制御装置に適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、ガソリンエンジンのエンジン制御装置に適用してもよい。
【0254】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0255】
10:ECU(エンジン制御装置、計測手段、補正手段、角度位置予測手段、補正禁止手段)、102:周期計測部(計測手段)、104、110、200、210、220、260:周期補正部(補正手段)、106:逓倍角度クロック生成部(角度位置予測手段)、112、226、264:角度判定部(角度検出手段、制御手段)、114、120、160、170、180、202、222:履歴記憶部(履歴記憶手段)、116、262、270:変化量算出部(変化量算出手段)、118、130、190、224、230、240:周期算出部(周期算出手段)、122a、122b、122c:履歴レジスタ(周期記憶部)、134、134a、134b:角度特性係数記憶部(角度特性係数記憶部)、:固定係数記憶部(角度特性係数記憶部)、140、150:補正量算出部(補正量算出手段)、152:補正制御部(補正制御手段)、154a、154b:シフタ、156:加減算器、162、176a、176b:出力設定レジスタ(設定レジスタ)、174:比較器(速度判定手段)、212:セレクタ、244a、244b:シフタ、232:加減算器(加減算手段)、252:加減算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランク軸の回転に伴い所定の角度間隔で発生する信号列であるクランク角信号の信号周期を計測する計測手段と、
今回までに前記計測手段が計測した前記信号周期に基づき、前記クランク角信号で表わされる前記クランク軸のクランク角度に応じて、今回までに前記計測手段が計測した前記信号周期のうち補正対象となる基準信号周期を補正して今回より後の前記信号周期を予測する補正手段と、
前記補正手段が予測した今回より後の前記信号周期の範囲において前記角度間隔よりも詳細なクランク角度位置を求める角度位置予測手段と、
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間において前記基準信号周期を補正する場合、この所定の角度区間の前後よりも前記基準信号周期の補正量を大きくすることを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間において、今回、前記補正手段が前記基準信号周期を補正して求めた補正後の前記信号周期が前記基準信号周期よりも小さくなる場合、前記補正手段による補正を禁止する補正禁止手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記エンジンの少なくとも一つの気筒の上死点を含む前後の所定の角度区間の前記信号周期を予測する場合、この所定の角度区間の直前および直後よりも前記基準信号周期の補正量の絶対値を小さくすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において前記基準信号周期を補正する場合、前回よりも前記基準信号周期の補正量の絶対値を小さくすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において、今回、前記補正手段が前記基準信号周期を補正して求めた補正後の前記信号周期が前記基準信号周期よりも大きくなる場合、前記補正手段による補正を禁止する補正禁止手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間におけるエンジン回転速度の減速特性を変換して、該当気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において前記基準信号周期を補正するときの補正量を算出することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間における前記エンジンの加速特性を変換して、他の気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間において前記基準信号周期を補正するときの補正量を算出することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項9】
前記補正手段は、前記減速特性または前記加速特性の一方の特性を変換して前記基準信号周期を補正する場合、前記基準信号周期の補正量の絶対値を、前記減速特性または前記加速特性の他方の特性における前記信号周期の変化量の絶対値よりも大きくすることを特徴とする請求項7または8に記載のエンジン制御装置。
【請求項10】
前記補正手段は、前記エンジンの回転加速度の絶対値が所定値以下となる角度区間において、前記回転加速度の絶対値が前記所定値よりも大きい角度区間よりも前記基準信号周期の補正量を小さくすることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項11】
前記補正手段は、今回までに計測された前記信号周期に基づき、前記クランク角度とともにエンジン回転速度に応じて前記基準信号周期を補正し、今回よりも後の前記信号周期を予測することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項12】
前記補正手段は、前記クランク角度に応じて前記クランク角信号の高周波成分を除去することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項13】
前記補正手段は、前記エンジンの回転加速度が所定値以下となる角度区間において、前記クランク角信号の高周波成分を除去して前記基準信号周期を補正することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項14】
前記補正手段は、エンジン回転速度が所定速度以上の場合、前記クランク角信号の高周波成分を除去して前記基準信号周期を補正することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項15】
前記補正手段は、エンジン回転速度が所定速度以上の場合、エンジン回転速度が所定速度未満の場合よりも前記基準信号周期の補正量を小さくすることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項16】
前記補正手段は、エンジン回転速度が所定速度未満の場合、エンジン回転速度が所定速度以上の場合よりも前記基準信号周期の補正量を大きくすることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項17】
前記補正手段は、エンジン回転速度が第1速度以上になると、エンジン回転速度が前記第1速度未満の場合よりも前記基準信号周期の補正量を小さくし、エンジン回転速度が前記第1速度よりも遅い第2速度未満になると、エンジン回転速度が前記第2速度以上の場合よりも前記補正量を大きくすることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項18】
前記補正手段は、前記基準信号周期と前記基準信号周期の補正量とを加算して前記基準信号周期を補正することを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項19】
前記補正手段は、前記基準信号周期の補正量を角度特性係数により決定することを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項20】
前記角度特性係数は、前記クランク角度およびエンジン回転速度の少なくともいずれか一方に基づいて設定されることを特徴とする請求項19に記載のエンジン制御装置。
【請求項21】
前記補正手段は、前記角度特性係数と今回までに計測された前記信号周期の時間変化により決定される変化量とを乗算して前記補正量を求めることを特徴とする請求項19または20に記載のエンジン制御装置。
【請求項22】
前記角度特性係数は2のべき乗の加減算で決定される値であることを特徴とする請求項21に記載のエンジン制御装置。
【請求項23】
前記補正手段は、今回までに計測された2個の前記信号周期の差分に基づいて前記変化量を求めることを特徴とする請求項21または22に記載のエンジン制御装置。
【請求項24】
前記補正手段は、間に1周期以上の前記信号周期を挟んだ2個の前記信号周期の差分を小さくして前記変化量を求めることを特徴とする請求項23に記載のエンジン制御装置。
【請求項25】
前記補正手段は、間に1周期以上の前記信号周期を挟んだ2個の前記信号周期の差分を、これら2個の前記信号周期が計測される順番の差で除算して小さくすることにより前記変化量を求めることを特徴とする請求項24に記載のエンジン制御装置。
【請求項26】
2個の前記信号周期が計測される順番の差は2のべき乗であることを特徴とする請求項25に記載のエンジン制御装置。
【請求項27】
前記補正手段は、連続して発生する2個の前記信号周期の差分を前記変化量とすることを特徴とする請求項23から26のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項28】
前記補正手段は、2個の前記信号周期から前記変化量を求めるときに、それぞれ最新の前記信号周期を選択することを特徴とする請求項23から27のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項29】
前記補正手段は、所定の角度区間において前記変化量を算出するときに選択する2個の前記信号周期のパターンを、前記所定の角度区間の前に前記変化量を算出するときのパターンから変更することを特徴とする請求項23から28のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項30】
前記補正手段は、所定の角度区間において、この所定の角度区間の前に前記変化量を算出するときと前記変化量の正負を反転することを特徴とする請求項23から29のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項31】
前記補正手段は、所定の角度区間において、前記基準信号周期を補正する補正量を0とすることを特徴とする請求項1から30のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項32】
前記補正手段は、前記計測手段により今回計測された前記信号周期を前記基準信号周期とすることを特徴とする請求項1から31のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項33】
前記補正手段は、補正により今回の直後の前記信号周期を予測することを特徴とする請求項1から32のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項34】
前記補正手段は、前記計測手段が計測した前記信号周期の履歴を周期記憶部に記憶する履歴記憶手段と、前記周期記憶部に記憶されている前記信号周期から前記信号周期の変化量を算出する変化量算出手段と、前記変化量算出手段が算出する前記変化量に基づいて前記基準信号周期を補正し今回よりも後の前記信号周期を算出する周期算出手段とを有し、
前記クランク角信号の信号数から前記クランク角度を検出する角度検出手段と、
前記角度検出手段が検出する前記クランク角度に基づいて、前記周期記憶部が出力する前記信号周期の選択と、前記変化量算出手段が前記変化量を算出する算出処理と、前記周期算出手段が前記基準信号周期を補正する補正処理とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から33のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項35】
前記履歴記憶手段は、少なくとも2個の前記信号周期を前記周期記憶部に記憶することを特徴とする請求項34に記載のエンジン制御装置。
【請求項36】
前記履歴記憶手段は、前記クランク角度をアドレスとして、前記アドレスと前記周期記憶部に記憶している前記信号周期との関連付けを前記制御手段により変更できる設定レジスタを有することを特徴とする請求項34または35に記載のエンジン制御装置。
【請求項37】
前記履歴記憶手段は、前記設定レジスタを複数有し、エンジン回転速度に応じて使用する前記設定レジスタを変更することを特徴とする請求項36に記載のエンジン制御装置。
【請求項38】
前記周期記憶部は、前記クランク角度およびエンジン回転数の少なくとも一方に応じて予め設定された少なくとも2個のアドレスにより前記周期記憶部に記憶している前記信号周期を出力することを特徴とする請求項34または35に記載のエンジン制御装置。
【請求項39】
前記周期算出手段は、前記信号周期と所定の閾値とを比較してエンジン回転速度を判定する速度判定手段を有し、前記速度判定手段の判定結果に基づいて前記基準信号周期に対する補正処理を切り換えることを特徴とする請求項34から38のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項40】
前記周期算出手段は、前記基準信号周期と前記基準信号周期の補正量との加算または減算を前記制御手段の制御信号により切り換えられる加減算手段を有することを特徴とする請求項34から38のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項41】
前記周期算出手段は、前記変化量と角度特性係数とに基づいて前記補正量を算出する補正量算出手段と、前記基準信号周期と前記基準信号周期の補正量との加算または減算を前記制御手段の制御信号により切り換えられる加減算手段とを有することを特徴とする請求項34から38のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項42】
前記補正量算出手段は、前記変化量と角度特性係数とを乗算する乗算器を有することを特徴とする請求項41に記載のエンジン制御装置。
【請求項43】
前記補正量算出手段は、2個のシフタと加減算器とにより前記変化量と角度特性係数とを乗算し、前記角度特性係数の値に応じて2個の前記シフタと前記加減算器の機能を制御する補正制御手段を有することを特徴とする請求項41に記載のエンジン制御装置。
【請求項44】
前記周期算出手段は、前記変化量と前記角度特性係数とを乗算するときに使用する加減算器と、前記基準信号周期と前記基準信号周期の補正量とを加算または減算する加減算器とを共通化することを特徴とする請求項43に記載のエンジン制御装置。
【請求項45】
前記周期算出手段は、前記クランク角度に応じて設定された角度特性係数を記憶する角度特性係数記憶部を有することを特徴とする請求項41から44のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項46】
前記角度特性係数記憶部は、前記クランク軸の回転に伴い、前記角度特性係数記憶部に記憶されている前記角度特性係数を前記クランク角度毎に順番に出力することを特徴とする請求項45に記載のエンジン制御装置。
【請求項47】
前記角度特性係数記憶部は、書き換え可能な記憶部であることを特徴とする請求項45または46に記載のエンジン制御装置。
【請求項48】
前記角度特性係数記憶部の一部は前記角度特性係数の固定値を記憶しており、所定の前記クランク角度において前記固定値を出力することを特徴とする請求項45から47のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項49】
前記周期算出手段は、前記角度特性係数記憶部を複数系統有し、使用する前記角度特性係数記憶部をエンジン回転速度に応じて選択することを特徴とする請求項45から48のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項50】
前記補正手段は、前記基準信号周期と、前記周期算出手段により補正された前記信号周期とのいずれか一方を選択するセレクタを有し、前記クランク角度またはソフト指令により前記セレクタの出力を切り換えることを特徴とする請求項34から49のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項1】
エンジンのクランク軸の回転に伴い所定の角度間隔で発生する信号列であるクランク角信号の信号周期を計測する計測手段と、
今回までに前記計測手段が計測した前記信号周期に基づき、前記クランク角信号で表わされる前記クランク軸のクランク角度に応じて、今回までに前記計測手段が計測した前記信号周期のうち補正対象となる基準信号周期を補正して今回より後の前記信号周期を予測する補正手段と、
前記補正手段が予測した今回より後の前記信号周期の範囲において前記角度間隔よりも詳細なクランク角度位置を求める角度位置予測手段と、
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間において前記基準信号周期を補正する場合、この所定の角度区間の前後よりも前記基準信号周期の補正量を大きくすることを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間において、今回、前記補正手段が前記基準信号周期を補正して求めた補正後の前記信号周期が前記基準信号周期よりも小さくなる場合、前記補正手段による補正を禁止する補正禁止手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記エンジンの少なくとも一つの気筒の上死点を含む前後の所定の角度区間の前記信号周期を予測する場合、この所定の角度区間の直前および直後よりも前記基準信号周期の補正量の絶対値を小さくすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において前記基準信号周期を補正する場合、前回よりも前記基準信号周期の補正量の絶対値を小さくすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において、今回、前記補正手段が前記基準信号周期を補正して求めた補正後の前記信号周期が前記基準信号周期よりも大きくなる場合、前記補正手段による補正を禁止する補正禁止手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記エンジンの少なくとも一つの気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間におけるエンジン回転速度の減速特性を変換して、該当気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間において前記基準信号周期を補正するときの補正量を算出することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記エンジンの少なくとも一つの気筒の燃焼行程においてエンジン回転速度が加速する角度区間のうち所定の角度区間における前記エンジンの加速特性を変換して、他の気筒の圧縮行程においてエンジン回転速度が減速する角度区間のうち所定の角度区間において前記基準信号周期を補正するときの補正量を算出することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項9】
前記補正手段は、前記減速特性または前記加速特性の一方の特性を変換して前記基準信号周期を補正する場合、前記基準信号周期の補正量の絶対値を、前記減速特性または前記加速特性の他方の特性における前記信号周期の変化量の絶対値よりも大きくすることを特徴とする請求項7または8に記載のエンジン制御装置。
【請求項10】
前記補正手段は、前記エンジンの回転加速度の絶対値が所定値以下となる角度区間において、前記回転加速度の絶対値が前記所定値よりも大きい角度区間よりも前記基準信号周期の補正量を小さくすることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項11】
前記補正手段は、今回までに計測された前記信号周期に基づき、前記クランク角度とともにエンジン回転速度に応じて前記基準信号周期を補正し、今回よりも後の前記信号周期を予測することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項12】
前記補正手段は、前記クランク角度に応じて前記クランク角信号の高周波成分を除去することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項13】
前記補正手段は、前記エンジンの回転加速度が所定値以下となる角度区間において、前記クランク角信号の高周波成分を除去して前記基準信号周期を補正することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項14】
前記補正手段は、エンジン回転速度が所定速度以上の場合、前記クランク角信号の高周波成分を除去して前記基準信号周期を補正することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項15】
前記補正手段は、エンジン回転速度が所定速度以上の場合、エンジン回転速度が所定速度未満の場合よりも前記基準信号周期の補正量を小さくすることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項16】
前記補正手段は、エンジン回転速度が所定速度未満の場合、エンジン回転速度が所定速度以上の場合よりも前記基準信号周期の補正量を大きくすることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項17】
前記補正手段は、エンジン回転速度が第1速度以上になると、エンジン回転速度が前記第1速度未満の場合よりも前記基準信号周期の補正量を小さくし、エンジン回転速度が前記第1速度よりも遅い第2速度未満になると、エンジン回転速度が前記第2速度以上の場合よりも前記補正量を大きくすることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項18】
前記補正手段は、前記基準信号周期と前記基準信号周期の補正量とを加算して前記基準信号周期を補正することを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項19】
前記補正手段は、前記基準信号周期の補正量を角度特性係数により決定することを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項20】
前記角度特性係数は、前記クランク角度およびエンジン回転速度の少なくともいずれか一方に基づいて設定されることを特徴とする請求項19に記載のエンジン制御装置。
【請求項21】
前記補正手段は、前記角度特性係数と今回までに計測された前記信号周期の時間変化により決定される変化量とを乗算して前記補正量を求めることを特徴とする請求項19または20に記載のエンジン制御装置。
【請求項22】
前記角度特性係数は2のべき乗の加減算で決定される値であることを特徴とする請求項21に記載のエンジン制御装置。
【請求項23】
前記補正手段は、今回までに計測された2個の前記信号周期の差分に基づいて前記変化量を求めることを特徴とする請求項21または22に記載のエンジン制御装置。
【請求項24】
前記補正手段は、間に1周期以上の前記信号周期を挟んだ2個の前記信号周期の差分を小さくして前記変化量を求めることを特徴とする請求項23に記載のエンジン制御装置。
【請求項25】
前記補正手段は、間に1周期以上の前記信号周期を挟んだ2個の前記信号周期の差分を、これら2個の前記信号周期が計測される順番の差で除算して小さくすることにより前記変化量を求めることを特徴とする請求項24に記載のエンジン制御装置。
【請求項26】
2個の前記信号周期が計測される順番の差は2のべき乗であることを特徴とする請求項25に記載のエンジン制御装置。
【請求項27】
前記補正手段は、連続して発生する2個の前記信号周期の差分を前記変化量とすることを特徴とする請求項23から26のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項28】
前記補正手段は、2個の前記信号周期から前記変化量を求めるときに、それぞれ最新の前記信号周期を選択することを特徴とする請求項23から27のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項29】
前記補正手段は、所定の角度区間において前記変化量を算出するときに選択する2個の前記信号周期のパターンを、前記所定の角度区間の前に前記変化量を算出するときのパターンから変更することを特徴とする請求項23から28のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項30】
前記補正手段は、所定の角度区間において、この所定の角度区間の前に前記変化量を算出するときと前記変化量の正負を反転することを特徴とする請求項23から29のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項31】
前記補正手段は、所定の角度区間において、前記基準信号周期を補正する補正量を0とすることを特徴とする請求項1から30のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項32】
前記補正手段は、前記計測手段により今回計測された前記信号周期を前記基準信号周期とすることを特徴とする請求項1から31のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項33】
前記補正手段は、補正により今回の直後の前記信号周期を予測することを特徴とする請求項1から32のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項34】
前記補正手段は、前記計測手段が計測した前記信号周期の履歴を周期記憶部に記憶する履歴記憶手段と、前記周期記憶部に記憶されている前記信号周期から前記信号周期の変化量を算出する変化量算出手段と、前記変化量算出手段が算出する前記変化量に基づいて前記基準信号周期を補正し今回よりも後の前記信号周期を算出する周期算出手段とを有し、
前記クランク角信号の信号数から前記クランク角度を検出する角度検出手段と、
前記角度検出手段が検出する前記クランク角度に基づいて、前記周期記憶部が出力する前記信号周期の選択と、前記変化量算出手段が前記変化量を算出する算出処理と、前記周期算出手段が前記基準信号周期を補正する補正処理とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から33のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項35】
前記履歴記憶手段は、少なくとも2個の前記信号周期を前記周期記憶部に記憶することを特徴とする請求項34に記載のエンジン制御装置。
【請求項36】
前記履歴記憶手段は、前記クランク角度をアドレスとして、前記アドレスと前記周期記憶部に記憶している前記信号周期との関連付けを前記制御手段により変更できる設定レジスタを有することを特徴とする請求項34または35に記載のエンジン制御装置。
【請求項37】
前記履歴記憶手段は、前記設定レジスタを複数有し、エンジン回転速度に応じて使用する前記設定レジスタを変更することを特徴とする請求項36に記載のエンジン制御装置。
【請求項38】
前記周期記憶部は、前記クランク角度およびエンジン回転数の少なくとも一方に応じて予め設定された少なくとも2個のアドレスにより前記周期記憶部に記憶している前記信号周期を出力することを特徴とする請求項34または35に記載のエンジン制御装置。
【請求項39】
前記周期算出手段は、前記信号周期と所定の閾値とを比較してエンジン回転速度を判定する速度判定手段を有し、前記速度判定手段の判定結果に基づいて前記基準信号周期に対する補正処理を切り換えることを特徴とする請求項34から38のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項40】
前記周期算出手段は、前記基準信号周期と前記基準信号周期の補正量との加算または減算を前記制御手段の制御信号により切り換えられる加減算手段を有することを特徴とする請求項34から38のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項41】
前記周期算出手段は、前記変化量と角度特性係数とに基づいて前記補正量を算出する補正量算出手段と、前記基準信号周期と前記基準信号周期の補正量との加算または減算を前記制御手段の制御信号により切り換えられる加減算手段とを有することを特徴とする請求項34から38のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項42】
前記補正量算出手段は、前記変化量と角度特性係数とを乗算する乗算器を有することを特徴とする請求項41に記載のエンジン制御装置。
【請求項43】
前記補正量算出手段は、2個のシフタと加減算器とにより前記変化量と角度特性係数とを乗算し、前記角度特性係数の値に応じて2個の前記シフタと前記加減算器の機能を制御する補正制御手段を有することを特徴とする請求項41に記載のエンジン制御装置。
【請求項44】
前記周期算出手段は、前記変化量と前記角度特性係数とを乗算するときに使用する加減算器と、前記基準信号周期と前記基準信号周期の補正量とを加算または減算する加減算器とを共通化することを特徴とする請求項43に記載のエンジン制御装置。
【請求項45】
前記周期算出手段は、前記クランク角度に応じて設定された角度特性係数を記憶する角度特性係数記憶部を有することを特徴とする請求項41から44のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項46】
前記角度特性係数記憶部は、前記クランク軸の回転に伴い、前記角度特性係数記憶部に記憶されている前記角度特性係数を前記クランク角度毎に順番に出力することを特徴とする請求項45に記載のエンジン制御装置。
【請求項47】
前記角度特性係数記憶部は、書き換え可能な記憶部であることを特徴とする請求項45または46に記載のエンジン制御装置。
【請求項48】
前記角度特性係数記憶部の一部は前記角度特性係数の固定値を記憶しており、所定の前記クランク角度において前記固定値を出力することを特徴とする請求項45から47のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項49】
前記周期算出手段は、前記角度特性係数記憶部を複数系統有し、使用する前記角度特性係数記憶部をエンジン回転速度に応じて選択することを特徴とする請求項45から48のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項50】
前記補正手段は、前記基準信号周期と、前記周期算出手段により補正された前記信号周期とのいずれか一方を選択するセレクタを有し、前記クランク角度またはソフト指令により前記セレクタの出力を切り換えることを特徴とする請求項34から49のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2013−104387(P2013−104387A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250070(P2011−250070)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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