説明

エンジン始動システム

【課題】ハイブリッド車両に搭載されるエンジンの始動過程でクラッチの解放操作ができない故障が生じても振動の発生を抑制できるエンジン始動システムを提供する。
【解決手段】本発明のエンジン始動システムは、クラッチトルクTqcを増加させる半係合操作を行った後に、電磁クラッチを解放できない故障Fが発生した場合、電磁クラッチのエンジン側の回転速度Neがモータ・ジェネレータ側の回転速度Ninを超えない限度に達した時期t3にモータトルクTqmを低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の走行中に電動機のトルクを利用してエンジンを始動させるエンジン始動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン始動システムとして、ハイブリッド車両のEV走行モード中にエンジンの始動要求があった場合にクラッチを介して電動機のトルクをエンジンに伝達してエンジンを始動させ、その始動過程における振動を抑制するためにクラッチのエンジン側及び電動機側の回転速度が一致した時にクラッチを解放し又は締結力を低減させるものが知られている(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−5957号公報
【特許文献2】特開2008−44599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムは、エンジンの始動過程でクラッチの解放操作ができない故障が発生した場合にその故障への対策がなされていない。従って、エンジンの始動過程でクラッチに上記故障が発生すると解放操作が不能になるため、クラッチが係合したままエンジン側回転数が電動機側回転数を超えて振動が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ハイブリッド車両に搭載されるエンジンの始動過程でクラッチの解放操作ができない故障が生じても振動の発生を抑制できるエンジン始動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンジン始動システムは、走行用駆動力を出力する動力伝達経路にクラッチを介してエンジンが連結されるとともに、前記動力伝達経路に電動機が連結されたハイブリッド車両に適用され、前記エンジンが停止した走行モード中に前記エンジンの始動要求があった場合に前記電動機のトルクを利用して前記エンジンを始動させるエンジン始動システムにおいて、前記エンジンをクランキングするために前記クラッチを滑らせながら係合する半係合操作と、前記エンジンのクランキング開始後に前記エンジンの回転速度が始動可能限度を超えたことを条件として前記クラッチを解放する解放操作とを実行するクラッチ制御手段と、前記半係合操作後に前記クラッチを解放できない故障が発生した場合、前記クラッチのエンジン側回転速度が動力伝達経路側回転速度を超えない限度に達した時期に前記電動機のトルクを低減させるフェールセーフ手段と、を備えるものである(請求項1)。
【0007】
このエンジン始動システムによれば、エンジンの始動過程でクラッチを解放できない故障が発生した場合に、クラッチのエンジン側回転速度が動力伝達経路側回転速度を超えない限度に達した時期に電動機のトルクが低減する。従って、クラッチが解放できないままエンジン側回転速度が動力伝達経路側回転速度を超えることによって発生する振動を低減することができる。
【0008】
本発明のエンジン始動システムの一態様において、前記フェールセーフ手段は、前記故障が発生した場合に前記エンジンに対してフューエルカットを行いながら前記電動機のトルクを低減させてもよい(請求項2)。この態様によれば、電動機のトルクを低減する際にフューエルカットも行われるのでエンジンの出力トルクが低減する。従って、上述の振動を更に抑制できる。
【0009】
上述の振動を抑制するためには、クラッチのエンジン側回転速度が動力伝達経路側回転速度を超えない限度に達した時期に電動機のトルクを低減させればよい。例えば、前記フェールセーフ手段は、前記エンジン側回転速度と前記動力伝達経路側回転速度とが一致した時期に又は前記エンジン側回転速度と前記動力伝達経路側回転速度との差が所定の安全マージン未満となった時期に前記電動機のトルクを低減させてもよい(請求項3)。この態様によれば、いずれの時期に電動機のトルクを低減させても上述の振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明のエンジン始動システムによれば、エンジンの始動過程でクラッチを解放できない故障が発生した場合に電動機のトルクが低減するため、クラッチが解放できないままエンジン側回転速度が動力伝達経路側回転速度を超えることによって発生する振動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一形態に係る始動システムが適用された車両の概要を示した図。
【図2】始動制御の制御ルーチンの一例を示したフローチャート。
【図3】電磁クラッチが正常時の制御結果の一例を示したタイミングチャート。
【図4】電磁クラッチが故障時の制御結果の一例を示したタイミングチャート。
【図5】本発明の始動システムを適用可能な車両の他の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、車両1は内燃機関2及び電動機としてのモータ・ジェネレータ3が走行用動力源として設けられたいわゆるハイブリッド車両として構成されている。内燃機関(以下、エンジンという。)2は火花点火型の内燃機関として構成されている。エンジン2の出力軸2aは、電磁クラッチ7を介してオートメーテッドトランスミッション(AMT)8と接続されている。電磁クラッチ7はAMT8の変速操作に合わせて係合操作及び解放操作が行なわれる。また、電磁クラッチ7は供給電流の強さを変化させることで動力の伝達率をほぼ無段階で調整できる。従って、電磁クラッチ7への供給電流の強さを制御することによって、電磁クラッチ7を滑らせながら係合する半係合操作が可能である。
【0013】
AMT8は前進4段の複数の変速段から一つの変速段を選択できる。AMT8による変速段の選択は車両1の車速やアクセル開度に基づいて自動的に行なわれる。また、AMT8がマニュアルモードへ切り替えられることにより、不図示のシフトノブを運転者が操作することによって変速段が選択される。
【0014】
AMT8は、入力軸10と、これと平行に延びている出力軸11と、これら入力軸10と出力軸11との間に設けられた第1〜第4ギア対G1〜G4とを備えている。第1〜第4ギア対G1〜G4は第1速〜第4速に対応する。なお、車両1の後退走行は第1速が選択された状態でモータ・ジェネレータ8が逆転することにより実施される。第1ギア対G1は互いに噛み合う第1ドライブギア13及び第1ドリブンギア14を含む。第2ギア対G2は互いに噛み合う第2ドライブギア15及び第2ドリブンギア16を含む。第3ギア対G3は互いに噛み合う第3ドライブギア17及び第3ドリブンギア18を含む。第4ギア対G4は互いに噛み合う第4ドライブギア19及び第4ドリブンギア20を含む。各ギア対G1〜G4のギア比は、第1ギア対G1、第2ギア対G2、第3ギア対G3、第4ギア対G4の順に小さくなるように設定されている。
【0015】
第1ドライブギア13及び第2ドライブギア15は、それぞれ入力軸10と一体に回転するように入力軸10に設けられている。一方、第3ドライブギア17及び第4ドライブギア19は、それぞれ入力軸10に対して相対回転可能なように入力軸10に設けられている。第1ドリブンギア14及び第2ドリブンギア16は、それぞれ出力軸11に対して相対回転可能なように出力軸11に設けられている。一方、第3ドリブンギア18及び第4ドリブンギア20は、それぞれ出力軸11と一体に回転するように出力軸11に設けられている。
【0016】
AMT8には、上記複数の変速段のいずれか一つを有効化するため、結合装置C1〜C4が設けられている。各結合装置C1〜C4は周知の噛み合い式クラッチとして構成されており、不図示の操作機構にて操作される。第1結合装置C1は第1ドリブンギア14を出力軸11に結合させて第1ドリブンギア14と出力軸11とを一体回転させる係合状態と、その結合を解放する解放状態との間で動作できる。同様に、第2結合装置C2は第2ドリブンギア16を出力軸11に結合させて第2ドリブンギア16と出力軸11とを一体回転させる係合状態と、その結合を解放する解放状態との間で動作できる。また、第3結合装置C3は第3ドライブギア17を入力軸10に結合させて第3ドライブギア17と入力軸10とを一体回転させる係合状態と、その結合を解放する解放状態との間で動作できる。同様に、第4結合装置C4は第4ドライブギア19を入力軸11に結合させて第4ドライブギア19と入力軸11とを一体回転させる係合状態と、その結合を解放する解放状態との間で動作できる。AMT8は、これらの結合装置C1〜C4のいずれか一つが係合状態となることによって上記複数の変速段のいずれか一つを有効化できる。
【0017】
出力軸11には第1出力ギア21が一体回転するように設けられている。第1出力ギア21は、不図示の駆動輪に連結された差動機構25のケースに設けられたリングギア26と噛み合っている。AMT8から出力されたトルクはリングギア26及び差動機構25を介して左右の駆動輪に伝達される。AMT8から駆動輪に至る動力伝達経路は走行用駆動力を出力するためのものであるから本発明に係る動力伝達経路に相当する。モータ・ジェネレータ3のトルクはギア列28を介して出力軸11に伝達される。ギア列28は、出力軸11と一体回転する第2出力ギア29と、第2出力ギア29と噛み合った状態でモータ軸3aと一体回転するモータドライブギア30とを含む。
【0018】
エンジン2、モータ・ジェネレータ3、電磁クラッチ7及びAMT8のそれぞれに対する制御は、コンピュータユニットとして構成された電子制御ユニット(ECU)40にて行われている。ECU40は車両1の適正な走行状態を得るための各種制御プログラムを保持している。ECU40は、これらのプログラムを実行することにより上述したエンジン2等の制御対象に対する制御を行っている。ECU40には車両1の走行状態に関係する情報を出力する種々のセンサが接続されている。例えば、入力軸10の回転速度に応じた信号を出力する入力側レゾルバ41、出力軸11の回転速度に応じた信号を出力する出力側レゾルバ42、エンジン2のクランク角に応じた信号を出力するクランク角センサ43、及びアクセル開度に応じた信号を出力するアクセル開度センサ44がECU40に電気的に接続されている。
【0019】
ECU40が行なう制御としては、エンジン2及びモータ・ジェネレータ3を走行用動力源とするハイブリッド走行モードやエンジン2を停止した状態でモータ・ジェネレータ3のみを走行用動力源とする電気走行モード等の各種の走行モードを切り替える走行モード切替制御がある。その走行モード切替制御に付随してエンジン2の停止制御や始動制御が行なわれる。更に、車両1の減速時に駆動輪から入力される動力を利用してモータ・ジェネレータ3で発電する回生制御も行なわれる。以下、ECU40が実行する制御のうち本発明に関連する制御について説明し、その他の制御については説明を省略ないし簡略化する。
【0020】
ECU40は、不図示のバッテリの蓄電率が不足する等の禁止条件が成立する場合を除いて車両1の停車に合わせてエンジン2を停止させ、運転者の発進意図が反映された発進操作に合わせて内燃機関2を再始動させるいわゆるアイドルストップ制御を行なう。また、ECU40は電気走行モード中に要求駆動力の増大に合わせてエンジンを始動させて電気走行モードからハイブリッド走行モードへ走行モードを切り替える場合がある。この走行モードを切り替える過程でエンジン2の始動を実現するため、ECU40は図2の始動制御を行なう。図2のルーチンのプログラムはECU40の記憶されており、適時に読み出されて数msec程度の所定間隔で繰り返し実行される。
【0021】
ステップS1において、ECU40はエンジン2の始動要求の有無を判定する。始動要求が有る場合はステップS2に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。始動要求は電気走行モードで走行中に要求駆動力が閾値を超えて増大する等の始動条件が成立した場合に発生する。
【0022】
ステップS2において、ECU40は電磁クラッチ7の半係合操作を開始してクラッチトルクを増加させると同時に、電磁クラッチ7の損失を補償して車両1が減速しないようにモータ・ジェネレータ3のトルク(モータトルク)を増加させる。これにより、エンジン2はクランキングされる。なお、ステップS2の処理一回当たりのクラッチトルク及びモータトルクの増加量は適宜設定される。
【0023】
ステップS3において、ECU40はエンジン2の回転速度Neが始動可能限度Necを超えたか否かを判定する。始動可能限度Necはエンジン2に固有のものであり、ファイヤリングを行って始動可能となるエンジン2の回転速度の限界値である。回転速度Neが始動可能限度Necを超えた場合はステップS4に進み、そうでない場合はステップS2に戻る。
【0024】
ステップS4において、ECU40はエンジン2に対してファイヤリングを行い、同時にクラッチトルク及びモータトルクをそれぞれ低減させる。すなわち、ECU40はファイヤリング及びモータトルクの低減を行いながら、電磁クラッチ7に対する解放操作を開始する。
【0025】
ステップS5において、ECU40はクラッチトルクTqcが基準トルクTqclaよりも大きいか否かを判定する。基準トルクTqclaは振動を発生させないクラッチトルクの下限値である。クラッチトルクTqcが基準トルクTqclaよりも大きい場合はステップS6に進み、そうでない場合はステップS12に進む。
【0026】
ステップS6において、ECU40は電磁クラッチ7の故障を判定する。クラッチトルクTqが基準トルクTqclaを超えている原因が電磁クラッチ7を解放できない故障であるか否かを判定する。その故障の判定は、電磁クラッチ7への供給電流とクラッチトルクTqとの関係を正常時の当該関係と比較することにより行われる。電磁クラッチ7が上記のように故障している場合はステップS7に進み、そうでない場合はステップS12に進む。
【0027】
ステップS7において、ECU40はエンジン2に対してフューエルカットを実行する。それにより、エンジン2のトルクが低下するので振動を抑えることが可能となる。
【0028】
ステップS8において、ECU40は入力軸10の回転速度Ninとエンジン2の回転速度Neとの差が安全マージンβ未満か否かを判定する。安全マージンβは制御遅れなどを考慮して適宜設定される。その差が安全マージンβ未満となった時期は、電磁クラッチ7のエンジン側回転速度が動力伝達経路側回転速度を超えない限度に達した時期に相当する。本形態は、エンジン2の出力軸2a及び入力軸10のそれぞれが電磁クラッチ7に直結されているので、エンジン2の回転速度はエンジン側回転速度に、入力軸10の回転速度は動力伝達経路側回転速度にそれぞれ相当する。なお、ステップS8の処理を、安全マージンβを設定せずに電磁クラッチ7のエンジン側回転速度と動力伝達経路側回転速度とが一致したか否かを判定する処理に変更することも可能である。
【0029】
ステップS9において、ECU40はモータトルクを低減させる。その低減の程度は適宜設定してよい。本形態において、ECU40は故障した電磁クラッチ7が負担するクラッチトルク分だけモータトルクを低減させる。
【0030】
ステップS10において、ECU40はフューエルカットを解除する。これにより、エンジン2のトルクは増加する。
【0031】
ステップS11において、ECU40は走行用駆動源のトルクをモータ・ジェネレータ3のトルクからエンジン2のトルクへすり替える。具体的には、モータ・ジェネレータ3のトルクを更に低減させながら、その低減操作と同時進行でエンジン2のトルクを増加させる。
【0032】
ステップS12において、ECU40は入力軸10の回転速度Ninとエンジン2の回転速度Neとの差が安全マージンα未満となったか否かを判定する。安全マージンαはステップS8の安全マージンβと同じでもよいし、異なっていてもよい。当該差が安全マージンα未満の場合はステップS13に進み、そうでない場合は解放操作を続行させるためステップS4に戻る。
【0033】
ステップS13において、ECU40は電磁クラッチ7を係合操作して滑らせながら走行用駆動源のトルクをモータ・ジェネレータ3のトルクからエンジン2のトルクへすり替える。電磁クラッチ7の係合が完全に行われると走行モードがエンジン2を駆動源とする走行モードへ切り替えられる。
【0034】
以上説明した図2の始動制御が行なわれることによって、図3及び図4に示した制御結果が得られる。図3に示すように、電磁クラッチ7が正常な場合、始動要求の発生時t0から半係合操作が開始されてクラッチトルクTqcが増加する。そして、時刻t1から時刻t2までクラッチトルクTqcが一定に維持される。それにより、エンジン2がクランキングされてその回転速度Neが徐々に上昇する。エンジン2のクランキングに並行して、エンジン2のファイヤリングが行われる。つまり、時刻t1から時刻t2の間にフューエルカット(F/C)の実行を管理するフラグがONからOFFに切り替わる。
【0035】
電磁クラッチ7の半係合操作に伴う損失を補償するため、モータ・ジェネレータ3のトルクTqmはクラッチトルクTqcと同様に変化する。エンジン2の回転速度Neが始動可能限度Necに時刻t2に達すると電磁クラッチ7の解放操作が開始されてクラッチトルクTqcが低下する。その解放操作に合わせてモータ・ジェネレータ3のトルクTqmもクラッチトルクTqcと同じように低下する。エンジン2の回転速度Neが入力軸10の回転速度Ninに達する時刻t3までに、電磁クラッチ7は完全に解放されてクラッチトルクTqcが0になっている。そのため、電磁クラッチ7で振動は発生しない。その後、時刻t4で電磁クラッチ7の係合操作が開始され、その係合操作と同時進行でモータ・ジェネレータ3のトルクTqmが徐々に低減して0に至る。これにより、走行用駆動源のトルクがモータ・ジェネレータ3のトルクTqmからエンジン2のトルクへすり替わる。そして、時刻t5で電磁クラッチ7が完全に係合して走行モードがエンジン2を駆動源とする走行モードへ切り替わる。
【0036】
一方、図4に示すように、電磁クラッチ7に上述した故障が発生した場合、時刻t2においてエンジン2の回転速度Neが始動可能限度Necへ達しても、故障Fにより電磁クラッチ7の解放操作ができない。そのため、クラッチトルクTqcは一定のままである。時刻t2における故障Fの判定に応答して、フューエルカットが行われてファイヤリングが中断される。そして、エンジン2の回転速度Neが入力軸10の回転速度Ninに達する時刻t3の直前にモータ・ジェネレータ3のトルクTqmが電磁クラッチ7が負担するクラッチトルクTqc分だけ低減される。これにより、故障が発生したままモータ・ジェネレータ3のトルクTqmが低減されずに維持される場合よりもエネルギーが減少する。そのため、電磁クラッチ7で発生する振動が抑制される。その後、時刻t4でファイヤリングが再開される。ファイヤリングの再開と同時にモータ・ジェネレータ3のトルクTqmが低減されて0に至る。これにより、走行用駆動源のトルクがモータ・ジェネレータ3のトルクTqmからエンジン2のトルクへすり替わる。なお、トルクTqmが0に至ってトルクがすり替えられた後にエンジン2で走行を続けることは困難なので運転者に停車を促す警告を出力してもよい。
【0037】
上記形態において、ECU40は図2の制御ルーチンを実行することにより本発明のクラッチ制御手段及びフェールセーフ手段としてそれぞれ機能する。但し、本発明は上記形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。クラッチの故障時にフューエルカットを行うことは必須ではない。フューエルカットを行わなくても電動機のトルクを低減することにより振動を抑制することは可能である。
【0038】
本発明のエンジン始動システムが適用可能な車両としては図1の形態に限らない。例えば、図5に示すように、電動機としてのモータ・ジェネレータ61が内蔵された変速機60を搭載した車両1′でもよい。電動機の搭載箇所に制限はない。従って、電動機は、クラッチよりも出力側に設けられていればよい。例えば、電動機は、駆動輪が連結される差動機構や、駆動輪と差動機構との間に設けられてもよい。更に、電動機はインホイールモータとして駆動輪の内部に設けられてもよい。車両に搭載される変速機としては、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)でも、無段変速機(CVT)でも、オートマチックトランスミッション(AT)でも構わない。
【符号の説明】
【0039】
1、1′ 車両
2 エンジン
3 モータ・ジェネレータ(電動機)
7 電磁クラッチ(クラッチ)
40 ECU(クラッチ制御手段、フェールセーフ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用駆動力を出力する動力伝達経路にクラッチを介してエンジンが連結されるとともに、前記動力伝達経路に電動機が連結されたハイブリッド車両に適用され、前記エンジンが停止した走行モード中に前記エンジンの始動要求があった場合に前記電動機のトルクを利用して前記エンジンを始動させるエンジン始動システムにおいて、
前記エンジンをクランキングするために前記クラッチを滑らせながら係合する半係合操作と、前記エンジンのクランキング開始後に前記エンジンの回転速度が始動可能限度を超えたことを条件として前記クラッチを解放する解放操作とを実行するクラッチ制御手段と、前記半係合操作後に前記クラッチを解放できない故障が発生した場合、前記クラッチのエンジン側回転速度が動力伝達経路側回転速度を超えない限度に達した時期に前記電動機のトルクを低減させるフェールセーフ手段と、を備えることを特徴とするエンジン始動システム。
【請求項2】
前記フェールセーフ手段は、前記故障が発生した場合に前記エンジンに対してフューエルカットを行いながら前記電動機のトルクを低減させる、請求項1に記載のエンジン始動システム。
【請求項3】
前記フェールセーフ手段は、前記エンジン側回転速度と前記動力伝達経路側回転速度とが一致した時期に又は前記エンジン側回転速度と前記動力伝達経路側回転速度との差が所定の安全マージンを超えた時期に前記電動機のトルクを低減させる、請求項1又は2に記載のエンジン始動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87648(P2013−87648A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226692(P2011−226692)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】