説明

エンジン用の排気構造

エンジン10用の排気構造16、及び、かかる排気構造16を含むエンジン10は、エンジンからの排気流れに対する第1排気ダクト18及び第2排気ダクト20を含む。バルブ装置が設けられ、好ましくは、エンジン10の各シリンダ12に対応する別の第1及び第2排気バルブ22,24を含み、第1排気期間中に第1排気ダクト18に、続く第2排気期間中に第2排気ダクト20に、選択的に方向付ける。入口26を有するタービン28は、第1排気ダクト18に接続される。タービン28に駆動可能に接続され、タービン28により駆動されるコンプレッサ32は第2ダクト20に接続される。好ましくはタービン28により駆動されるコンプレッサ32は排気からエネルギを抽出し、排気系16内の背圧を低減し、これにより、ポンピング損失を低減し、また、第2ダクト20は、タービン28が少なくとも主要な第2排気フェーズ中に排気の背圧を増加しないように、第2排気期間中にタービンをバイパスする。結果、排気系及びエンジンの効率が全体として向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン用の排気構造、特に往復動型又はロータリ型のエンジン用の排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現代のエンジンの効率及び燃料経済性を改善する継続的な必要性がある。非効率性の1つの領域は、エンジンの“息つき”に関する。エンジンの“息つき”中、ピストンは、シリンダ内に新鮮な空気若しくは空気と燃料の混合物を引き、次いで圧縮後にそれを追い出し、ストロークを動力付けるよう機能しない。この息つきは、エンジンの出力から直接的に仕事を取り(ポンピング損失として知られている)、従って、エンジンの燃料経済性を悪化する(絞り弁式エンジンでより顕著)。多大な労力は、燃料経済性を高めるために最小のポンピング損失でエンジンを作動させることに費やされている。
【0003】
より効率的に動作させるため、現代のエンジンは、排気タービンにより駆動されてよい(ターボチャージング)若しくはエンジンにより駆動されてよい(スパーチャージング)吸気側コンプレッサにより“ブースト”されてもよい。これは、ポンピング損失を低減し、また、出力を増大して、エンジンの小型化(低減された行程容積)を可能とする。しかしながら、エンジン駆動されるコンプレッサは、エンジンから望ましくない態様で仕事を取る。ターボチャージングシステムにおける吸気側コンプレッサを駆動するために排気内のタービンを使用することは、排気から廃棄エネルギを抽出し、エンジンから仕事を取るのを防止して更に効率を改善する。より具体的には、燃焼及び主出力ストロークの後、排気バルブが開く前、シリンダ圧は、典型的には、排気系の圧力よりも高い。これは、“ブローダウン”と称される、排気バルブが開く時にシリンダから外に出るガスの初期の流れを生み、これによりタービンを駆動することができるが、続いて、ピストンは、排気系の圧力に抗して残りの排気ガスを追い出すために仕事をしなければならない。しかし、全ての排気ガスが排気タービンを通って流れる場合、排気ストローク中にタービンの前後で圧力降下が増加する。この圧力は、ピストンに作用して排気側でポンピング損失を増加させ、いくらかの利点を打ち消す。
【0004】
このようなタービン装置に関連したポンピング損失を低減するために、分割した排気構造を提供することが提案されてきた。かかる構造は、1921年のかなり前に特許文献1で提案されており、より最近では、特許文献2,3があり、また、非特許文献4でも提案される。かかる提案では、排気は分割され、適切なバルブ装置は、吸気側コンプレッサを駆動するために第1の“ブローダウン”排気期間中にタービンに排気を向け、次いで、第2の排気期間中に、タービンをバイパスし、これにより、排気側の背圧を低減し、排気がより容易にエンジンから排出することを可能とし、排気側のポンピング損失を低減する。従来のターボチャージング装置よりも改善が証明されているが、バイパス流れに関連した顕著なポンピング損失が依然として存在し、これは、タービンで使用される初期の排気ブローダウンからのガスイナーシャとエネルギの損失に起因して、ターボチャージされない排気に比べても増加されうる。
【0005】
その他は、ターボチャージングとはある程度対照的な提案として、エンジンからの排気ガスを積極的に抽出するために排気内にポンプ若しくはコンプレッサを配置することであり、これにより、排気ガスを追い出す際にピストンによりなされる仕事及びあらゆるポンピング損失を低減し、若しくは、極端な場合は、ピストンに正の力を与える。かかる提案の例は、特許文献5、6に記載され、特許文献5の場合、排気ポンプは、スパーチャージング装置と同様に、エンジンにより駆動され、また、特許文献6の場合、排気コンプレッサは、逆ターボチャージング装置に幾分類似し、新鮮な空気若しくは空気と燃料の混合物のシリンダへの吸入により駆動される吸気側タービンにより駆動される。しかし、これらの提案の双方では、排気側のポンピング損失は低減されるものの、エンジンからの仕事側取られるか、若しくは、吸気側のポンピング損失が増加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】GB179926
【特許文献2】GB2185286
【特許文献3】US6883319
【非特許文献4】"Divided Exhaust Period - A Gas Exchange System for Turbocharged SI Engines" by CE. M[omicron]ller, P. Johansson, B. Grandin and F. Lindstrom, (SAE Technical Paper 2005-01-1150, 2005)
【特許文献5】WO9728360
【特許文献6】US4439983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、これらの装置の全てはポンピング損失を低減し及び/又は効率を改善するものの、これらの利得は、他の損失によりある程度相殺され低減される。例えば、エンジン出力を増大しエンジン効率を改善するためのターボチャージャー装置の場合、背圧の増加とポンピング損失がある。従来のスロットルを置換する吸気側タービンにより駆動される排気ポンプの場合、エンジンの応答性の損失がある。エンジンにより駆動されるスパーチャージャー若しくは排気ポンプでは、いくらかのエンジン出力は、関連する性能に使用され、効率が損失する。これらの提案は、それ故に、妥協を表し、他の問題も有する。実際に、ターボチャージング装置のみが広く採用されている。
【0008】
それ故に、上述の問題点を対処し及び/又は既存の装置に対する改善又は代替をより一般的に提供する、改善されたエンジン排気構造及びエンジン構造を提供することが望ましい。より具体的には、特に排気側のポンピング損失を低減し及び/又は排気の効率を改善し及び/又はエンジン全体の効率を改善する改善されたエンジン排気構造に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、添付の請求項に記載されるような、エンジン用の排気構造及びかかる排気構造を含むエンジンが提供される。
【0010】
本発明の第1局面の実施例では、エンジン用の排気構造であって、エンジンからの排気流れに対する第1排気ダクトと、エンジンからの排気流れに対する第2排気ダクトと、エンジンからの排気を、第1排気期間中に第1排気ダクトに、続く第2排気期間中に第2排気ダクトに、選択的に方向付けるバルブ装置とを含む排気構造が提供される。排気構造は、更に、第1排気ダクトに接続される入口を有するタービンと、タービンに駆動可能に接続され、タービンにより駆動され、第2排気ダクトに接続される入口を有するコンプレッサと、を含む。
【0011】
この構造によれば、タービンは、第1(ブローダウン)排気期間中に排気ガスからエネルギを抽出し、これは、タービン/コンプレッサの回転イナーシャを介して使用され、コンプレッサを駆動して、シリンダからの排気ガスを積極的に抽出し、第2排気期間中に排気システムの背圧及び排気側のポンピング損失を低減する。タービンは、また、第2排気期間中に効率的にバイパスされ、従って、排気側の背圧及び排気側のポンピング損失を増加しない。これは、排気側のポンピング損失の顕著な低減をもたらすことが見出され、効率及び燃料経済性の改善が得られる。
【0012】
特に注記すべきこととして、これは、従来の提案でのアプローチや従来使用されてきたアプローチとは異なるアプローチに基づくものである。全ての従来の装置は、エンジンの一方側にコンプレッサ/ポンプを、エンジンの他方側にタービンを有し、若しくは、エンジン自体により損失を伴って駆動されている。この装置は、異なる、いくらか対抗するアプローチを採用し、コンプレッサ及びコンプレッサを駆動するタービンの双方は、エンジンの同一の排気側にあり、双方は、異なる動作上の排気期間内であるが、排気からのエネルギを引き出し、エネルギを供給して排気からガスを抽出する。
【0013】
好ましい実施例では、第1及び第2期間は、第1期間がエンジンのピストンが最大変位(即ち下死点)に近づくときに対応し、そこでは、ほとんど動かず、ピストンによりなされる仕事がほとんど無く、排気側のポンピング損失にほとんど影響しない。
【0014】
タービンは、好ましくは、第2排気ダクト及び/又はコンプレッサ入口に接続される出口を有する。
【0015】
バルブ装置は、好ましくは、第2排気期間中に第2及び第1排気ダクトの双方にエンジンからの排気を選択的に方向付けてもよい。或いは、バルブ装置は、第1排気期間中に第1排気ダクトだけに、続く第2排気期間中に第2排気ダクトだけに、選択的に方向付けてもよい。更に、バルブ装置は、好ましくは、別々の第1排気バルブと第2排気バルブとを含み、特に好ましくは、エンジンの各シリンダに対応付けられた別々の第1排気バルブと第2排気バルブとを含む。
【0016】
第1排気期間は、好ましくは、ピストンが実質的に静止しているときの期間に対応する。第2排気期間は、好ましくは、排気ストローク中のピストンが動いているときの期間に対応する。
【0017】
排気構造は、少なくとも第2排気ダクトに接続され、使用時に第2排気ダクトを流れる排気ガスを冷却する熱交換器又はクーラを更に含んでよい。これは、排気側の背圧を更に低減する。熱交換器又はクーラの出口は、好ましくは、コンプレッサの入口に接続される。
【0018】
排気構造は、第2タービンを更に含み、第2タービンは、第2排気ダクトに接続される入口と、コンプレッサの入口に接続される出口とを有し、エンジンの吸気側コンプレッサに駆動可能に接続される。
【0019】
本発明の第2局面の実施例では、上述の排気構造を含むエンジンが提供される。
【0020】
エンジンは、エンジンへの吸気流れを圧縮する吸気側コンプレッサを更に含む。吸気側コンプレッサは、タービンに駆動可能に接続され、タービンにより駆動されてもよい。或いは、より好ましくは、排気構造は、第2タービンを更に含み、第2タービンは、第2排気ダクトに接続される入口と、コンプレッサの入口に接続される出口とを有し、エンジンの吸気側コンプレッサに駆動可能に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例による3シリンダのエンジンに適用される排気及び吸気系の概略図。
【図2】図1に示すエンジン及び排気系のシリンダの1つに関連する排気バルブの開タイミングを示すグラフ。
【図3】本発明の代替実施例による、図1に類する3シリンダのエンジンに適用される排気及び吸気系の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
これより、図面を参照して、本発明が例示により説明される。
【0023】
図1を参照するに、往復動型のエンジン10は、少なくとも1つの往復動するピストン(図示せず)を含み、ピストンは、対応するシリンダ12内に配置され、クランクシャフト(図示せず)を回転させるために従来的な態様で接続される。シリンダ12内のピストンの動きは、行程容積を画成する。吸気側装置14は、新鮮な空気、空気と燃料の混合物、若しくは、燃料と空気とEGR(排気ガスの再循環)の混合物をシリンダ12のそれぞれに供給し、供給された新鮮な空気等は、次いで、シリンダ12内のピストンの動きにより圧縮される。燃焼は、次いで、シリンダ12内で起こり、膨張するガスがピストン及びクランクシャフトを駆動する。燃焼ガスは、次いで、シリンダ12及びエンジン10から排気系16を介して排出される。エンジン10は、任意の数のシリンダ12及び対応するピストンを有してもよく、この特定の実施例では、エンジン10は、3つのシリンダ12を有する。吸気側装置14は、従来のキャブレータや燃焼噴射装置や他の知られた吸気側装置を含んでよい。一般的にいって、これまで説明されたエンジンは、従来のものであり公知であり、本発明は、ディーゼル点火エンジン、ガソリン火花点火エンジン、ガスエンジン、HCCI(混合圧縮自己着火燃焼:Homogeneous-Charge Compression-Ignition combustion)エンジン、2若しくは4ストロークエンジンを含む、全ての種類のエンジンに適用可能である。本発明は、また、例えばロータリエンジンのような、非往復動型のエンジンにも適用可能である。
【0024】
図1に更に示すように、本発明の実施例の排気系16は、特許文献1−3に記載されるものに類する分割された排気装置を含む。排気系16は、第1排気ダクト18及び第2排気ダクト20を含み、この実施例では、第1排気ダクト18及び第2排気ダクト20は、それぞれのシリンダ12に接続される別々のマニホルドを含む。
【0025】
バルブ装置は、この実施例では、シリンダ12のそれぞれにおいて少なくとも2つの別の排気バルブ22,24を含み、排気バルブ22,24は、以下で更に説明されるように、シリンダ12のそれぞれからのマニホルド及び排気ダクト18,20のそれぞれ内への排気流れを選択的に制御する。かかる2つの排気バルブの構造は、特許文献1、3に記載されるものに類する。更に、かかるシリンダ12内の排気バルブ22,24の詳細、及び、それらの開き方や動作態様は良く知られている。また、理解されるように、他の実施例では、他のバルブ装置は、シリンダ12のそれぞれからの第1及び第2排気ダクト18,20のそれぞれ内への排気流れを選択的に制御するために利用されてもよい。例えば、各シリンダ12は、シリンダからの排気ガスの流れを制御するための単一の排気バルブを含んでよく、この場合、第1若しくは第2排気ダクト18,20からの排気流れを選択する別のセレクタバルブが存在するが、かかる構造は、開示され説明されるものよりも、より複雑で望ましさに劣る。また、理解されるように、各ダクト18,20に対してシリンダ1つ当たりより多くの排気バルブが存在してもよい。例えば、第1排気ダクト18に接続され、タービンに排気を供給する各シリンダ内に1つの排気バルブと、次いで、第2排気フェーズ中に排気を改善するために第2ダクトに接続されるシリンダ1つ当たり2つの排気バルブが存在してもよい。他の構造及びバルブ数も可能である。
【0026】
第1排気ダクト18は、タービン28の入口26に接続され、タービン28は、コンプレッサ32を駆動するためにドライブシャフト30を介して駆動可能に接続される。第2排気ダクト20は、任意的な熱交換器36を介して、コンプレッサ32の入口34に接続され、コンプレッサ32は、大気への出口38を有する。触媒や粒子フレームのような追加の排気構成要素は、この排気系内に配置されてもよい。第2排気ダクト20は、従って、タービン28をバイパスするための手段を提供する。タービンの出口40は、好ましくは、第2排気ダクト20に接続され、タービン28からのガスが、コンプレッサ32の入口34に適合される場合に任意的な熱交換器36を通って流れるようにする。
【0027】
タービン28及びコンプレッサポンプ32は、本分野で知られるようなこの特定の用途に適切に最適化された任意の従来のタービン及びコンプレッサ装置であってよい。コンプレッサ32は、この実施例でコンプレッサとして説明されるが、実際には、掃気ポンプを含み、若しくは、実際には、任意のポンプ装置を含み、原理上、その入口34からコンプレッサを通してその出口38へと空気を抽出し吸引するように適合される。
【0028】
動作時、それぞれのシリンダ12の排気ストローク中、バルブ装置は、動作してシリンダ12からの排気ガスを、第1排気フェーズ若しくは期間中に、第1排気ダクト18を介して排出し、次いで、続く第2排気フェーズ中に、第2排気ダクト20若しくは双方を介して排出する。バルブ装置は、排他的に動作してよく、この場合、排気ガスは、第1若しくは第2ダクト18,20を介して排他的に方向付けられ、若しくは、組み合わせで動作してもよく、この場合、第1期間中に排気ガスは、第1排気ダクト18を介して排出され、第2期間では、バルブ装置が開けられ、排気ガスが双方の排気ダクトを通って排出するのを可能とする。双方のダクト18,20を介して排出することが好ましく、これにより、第2排気フェーズ中に第1排気ダクト18及びタービン28を通る排気の流れが依然として存在することを保証し、さもなければ、タービン28は、第1排気ダクト18を圧縮し、タービン28は、タービン28(及びそれに伴いコンプレッサ)が回転するのを停止する強い力を受けるだろう。好ましい構成では、第2バルブ24が開くときの第2排気フェーズ中、タービン28はバイパス(迂回)されて、これにより、タービン出口40は、タービン入口26に効率的に接続され、同一(若しくは非常に近い)圧力になるだろう。かくして、タービン28の前後で圧力降下がなくなり、従って、エネルギがタービン28によりタービン28を駆動するために抽出されないだけでなく、タービン28を顕著に減速させる逆の圧力降下やタービン28への負荷も存在しないだろう。タービン28は、それ故に、そのイナーシャに起因して回転し続けるだろう。尚、排気を使用し双方の排気ダクト18,20に第2排気フェーズ中に供給することは、排気出口面積を増加し、従って、更に如何なる背圧も低減する。
【0029】
この特定の実施例では、第1排気ダクト22は、それぞれのシリンダ12の第2バルブ24の前に開くように構成される。これは、図2に示され、この場合、バルブリフト及び第1バルブ22の開きは、ライン140で示され、第2バルブの開きは、ライン142で示され、ノミナルなクランク角との相対で示されている。初期の比較的高い圧力の結果、シリンダ12内の排気ガスは、排気ストロークの開始時、ブローダウン流れとして、第1排気フェーズでは第1排気バルブ22を通り第1排気ダクト18内へ排気される。タービン28は、第1排気フェーズで排気ガスの初期の比較的高い圧力のブローダウン流れからエネルギを抽出し、それを用いてコンプレッサ32を駆動する。特に注記すべきこととして、この初期のブローダウン流れ及びシリンダ12からの排気の流れは、ピストンが下死点付近にある間(図2におけるバルブ開のタイミングで示されるように)にあるときに生じる。この点では、往復動するピストンの比較的小さい変位があり、従って、高い初期の圧力に結合されて、無視できる仕事がピストン(及び従ってエンジン)によりなされ、タービン28の如何なる背圧にも抗してシリンダ12からのこの初期の排気及びブローダウン流れを駆動する。タービン28及び第1排気ダクト18により提供される背圧は、それ故に、ピストン及びエンジンへの任意の逆の力若しくはトルクに関して無視できる影響を持つ。続く排気ストロークでは、第2排気フェーズにおいて、ピストンは、下死点から離れる方向に動き、より大きく動き始め、第2排気バルブ24が開き、シリンダ12からの排気が第2排気ダクト20内に流れタービン28をバイパスすること可能とし、低い背圧でタービン28により提供される背圧の無い、より阻害される度合いが小さい流れを提供する。その結果、シリンダからの第2排気フェーズ中の排気ガスの後の流れは、第2排気ダクト20内へと好ましく流れる。それ故に、ピストンがより大きく動き出す際、ピストンは、第1ダクトのみを通り、第2排気ダクト20より提供されるより低い排気側の背圧を受ける。その結果、排気側のポンピング損失が低減される。
【0030】
更に、上述の図示された本実施例では、第2排気ダクト20は、コンプレッサ32に接続される。タービン28により駆動されるコンプレッサ32及び第1排気でブローダウン流れから効果的に抽出されるエネルギは、第2排気ダクト20から排気ガスを引く。コンプレッサ32は、排気系16を減圧するように機能する。これは、ピストンが抗力を受ける第2排気ダクト20の背圧を低減し、従って、排気側の圧力損失を低減する。実際に、究極的には、圧力及び背圧は、第2排気ダクト20内の準大気圧まで低減されることができ、これにより、この排気ストローク中にもピストンを駆動することができる。更に、シリンダ12から排気を引くことによりコンプレッサ32は、シリンダ12から排気をより良好に掃気する。これは、ノッキング限界を増加し、より高い圧力及び温度の燃焼を可能とし、エンジン動作の効率を改善する。更に、背圧の低下は、排気ストロークの終了時、及び、次の吸気/導入ストロークの開始時のシリンダ12内の圧力も低減する。その結果、シリンダ12内へのガスの導入及び吸気流れも改善することができ、構造は、吸気側のポンピング損失及びシリンダ12内へのガスの絞りに対して有利な作用を有することができる。
【0031】
第2排気フェーズ中にタービン28は、第1排気ダクト18を通る排気ガスの流れにより駆動されていないが、その自身のイナーシャ及びコンプレッサ32のドライブシャフト32のイナーシャに起因して回転し続けるだろう。更に、共通の排気マニホルドを備えるマルチシリンダ型のエンジン10では、タービン28は、コンプレッサ32への駆動を提供し続けるように続いて作動するシリンダからの初期の排気流れが供給される。
【0032】
タービン28の出口40は、また、好ましくは、第2排気ダクト20及びそれ故にコンプレッサ32に接続され、追加的にコンプレッサ32は、タービン38を介して排気を吸引して引くだろう。これは、タービン28の前後の圧力降下を増加し、従って、損失及び非効率性を増加することなく抽出される出力を増大する。更に、また、それは、第2排気フェーズ中、タービン28を通る排気ガスの残留流れを継続する。
【0033】
本分野で知られるような種々の排気ダクト18,20の注意深い調整により、これらの制限的な流れ及び圧力降下は、最適な動作を保証しポンピング損失が最小になるのを保証するように最適化されることができる。
【0034】
熱交換器若しくはクーラ36は、好ましくは、コンプレッサ32への入口34の上流側に介在され、第2排気ダクトに接続されてもよく、第2排気ダクトからの排気ガスを冷却する。この熱交換器36は、第2ダクト20からの排気流れの温度を低下し、コンプレッサ32の性能を改善し、これにより、第2排気ダクト20内の背圧を更に低減し、さらには、排気側のポンピング損失を低減する。熱交換器36は、冷却されてもよく、メインエンジン10の冷却システム(図示せず)により排気流れから抽出された熱は除去される。或いは、より好ましくは、熱交換器36により排気流れから抽出された熱は、更なるエネルギを提供する他の既知のエネルギ回収システムで使用されてもよく、これにより、エンジン10のエネルギ効率を更に改善する。熱交換器36は、コンプレッサ32の入口34に搬送される全体の排気温度も低減し、従って、コンプレッサ32の熱要件を低減し、コストを低減し、信頼性を改善し、全体としての性能32を改善する。
【0035】
この排気系構造16を用いると、全体としての排気系の圧力及び従ってポンピング損失は、コンプレッサ32により低減され、コンプレッサは、効果的には、タービン28により排気から抽出された廃棄仕事により駆動される一方、分割された第1及び第2排気ダクト18,20の使用により、追加のポンピング損失や、かかるタービン28を有することに関連した損失を受けることもない。即ち、この排気系16は、排気系の背圧を排気ストローク中に増大することなく、タービン28の使用により排気から有用な仕事を巧みに抽出する一方、更に、この抽出された仕事を使用して、コンプレッサの使用により、排気側の背圧を低下し、それ故に、実際にポンピング損失を低減する。その結果、モデル化では、この構成は、2.5%以上の燃料消費の低減を生むことがわかり、また、コンプレッサ、タービン特性及びバルブタイミングの最適化により、広いエンジン速度範囲に亘って4%より大きい燃料の利点を与えることが予測された。
【0036】
図3は、第2実施例及び結合されたシステムを示し、ここでは、図1の排気系構造16は、従来のタイプのターボジャージング構造と結合されている。これは、吸気側コンプレッサ48にドライブシャフト46により駆動可能に接続される第2タービン44を介在させることにより達成され、この吸気側コンプレッサ48は、エンジンのシリンダ12からの吸気流れを従来の態様で圧縮する。この実施例は、一般的に、図1に示す実施例に類似し、同様の参照符号が、対応する要素に対して使用される。
【0037】
この代替構造では、第2タービン44は、コンプレッサ32及び任意的な熱交換器36の上流側であるが、第1タービン28からの出口40の下流側で、第2排気ダクト20内に配置される。第2タービン44の入口50は、第2排気ダクト20に接続され、また、好ましくは図示のように、第1タービン28の出口40に接続され、当該タービン28からの排気流れと共に第2排気ダクト20からの排気流れを全体として受ける。第2タービン44の出口52は、次いで、排気コンプレッサ32の入口34に接続され、この場合、熱交換器36を介して接続される。第1タービン28を通って流れた第1排気フェーズ内の初期のブローダウン流れは、それ故に、更に、そこからエネルギを抽出するため、第2タービン44を通って方向付けられ、また、第2排気ダクト20を通る主要な排気流れも第2タービン44を通って流れる。この構造では、第2タービン44は、第2排気ダクト20において、第2排気フェーズ及びメイン排気ストローク中にピストン上に作用する背圧を増加させるが、これは、コンプレッサ32により提供される全体としての排気システム16内の背圧の低下により相殺される。特に、コンプレッサ32は、タービン44の出口圧力を低下し、従って、抽出されたエネルギの所与の量に対して、対応する入口圧力を低下し、それ故に、第2排気ダクトにおける圧力を低下する。更に、吸気側コンプレッサ48により提供される吸気側のポンピング損失の低減、及び、入口をブーストすることにより提供される全体としての改善は、背圧及び吸気側のポンピング損失の如何なる増加も相殺する。
【0038】
本実施例の第2タービン44は、他の構成で置換されうり、実際に、更なるバイパスダクト及びバイパス構造は、第2タービン44により提供される背圧が大きい場合に、第2タービン44まわりに設けられる。実際に、更なる代替実施例では、第1タービン28は、おそらく、その全体が放出される第2タービン44及び第1タービン28に接続されるドライブシャフト46により吸気側コンプレッサ48を駆動する。しかし、これは、タービン28の大きさの変更を必要とする一方、これは、部品数を減らし、熱力学的に良好であり、特定の異なる動作条件及び要求に対して最適化された2つの別のタービンを容易に提供する。
【0039】
この構造は、比較できるような自然吸気式のエンジンに対して上述の実施例により提供されるものに、従来の態様でターボジャージされるエンジンに対して燃料経済性に類似の予測される改善を有する。
【0040】
理解されるように、上述の特定の実施例に関して多くの他の修正及び変更が可能ある。例えば、タービン28の出口40は、大気に直接排気されてもよいが、かかる構造では、効果が低減される。詳細な構造における他の変更は、広範な現在の及び将来のタービンエンジンと共に、例えば可変バルブタイミングや排ガス再循環及び吸気側スロットルタービンの使用のような他のエネルギ技術と組み合わせで適用可能である。本発明は、全ての種類のエンジンに適用されることができ、また、静的な発電と共に自動車用途を含む広範な用途に対して適用されることができる。
【0041】
本発明の動作の原理及びモードは、その好ましい実施例で説明され図示されてきた。しかし、理解されるべきこととして、本発明は、具体的に説明され図示された態様以外の態様で、その精神や範囲から逸脱することなく実現されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン用の排気構造であって、
前記エンジンからの排気流れに対する第1排気ダクトと、
前記エンジンからの排気流れに対する第2排気ダクトと、
前記エンジンからの排気を、第1排気期間中に前記第1排気ダクトに、続く第2排気期間中に前記第2排気ダクトに、選択的に方向付けるバルブ装置と、
前記第1排気ダクトに接続される入口を有するタービンと、
前記タービンに駆動可能に接続され、前記タービンにより駆動され、前記第2排気ダクトに接続される入口を有するコンプレッサと、を含む排気構造。
【請求項2】
前記タービンは、前記第2排気ダクト及び/又はコンプレッサの入口に接続される出口40を有する、請求項1に記載の排気構造。
【請求項3】
前記バルブ装置は、前記第2排気期間中に前記第2及び第1排気ダクトの双方に前記エンジンからの排気を選択的に方向付ける、請求項1に記載の排気構造。
【請求項4】
前記バルブ装置は、前記第1排気期間中に前記第1排気ダクトだけに、続く第2排気期間中に前記第2排気ダクトだけに、選択的に方向付ける、請求項1又は2に記載の排気構造。
【請求項5】
前記バルブ装置は、別々の第1排気バルブと第2排気バルブとを含む、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の排気構造。
【請求項6】
前記エンジンの各シリンダに対応付けられた別々の第1排気バルブと第2排気バルブとを含む、請求項5に記載の排気構造。
【請求項7】
少なくとも前記第2排気ダクトに接続され、使用時に前記第2排気ダクトを流れる排気ガスを冷却する熱交換器又はクーラを更に含む、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の排気構造。
【請求項8】
前記熱交換器又はクーラの出口は、前記コンプレッサの入口に接続される、請求項7に記載の排気構造。
【請求項9】
前記第1排気期間は、前記エンジンの燃焼室の容積に実質的に変化が無いときの期間に対応する、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の排気構造。
【請求項10】
少なくとも1つの往復動するピストンを備えるエンジン用の請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の排気構造。
【請求項11】
前記第1排気期間は、前記ピストンが実質的に静止しているときの期間に対応する、請求項10に記載の排気構造。
【請求項12】
前記第2排気期間は、排気ストローク中の前記ピストンが動いているときの期間に対応する、請求項10又は11に記載の排気構造。
【請求項13】
前記エンジンへの吸気流れを圧縮する吸気側コンプレッサを駆動する第2タービンを更に含み、前記第2タービンは、前記第2排気ダクトに接続される入口と、前記コンプレッサの入口に接続される出口とを有する、請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の排気構造。
【請求項14】
請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の排気構造を含むエンジン。
【請求項15】
当該エンジンへの吸気流れを圧縮する吸気側コンプレッサを含む、請求項14に記載のエンジン。
【請求項16】
前記吸気側コンプレッサは、前記タービンに駆動可能に接続され、前記タービンにより駆動される、請求項10に記載のエンジン。
【請求項17】
前記排気構造は、第2タービンを更に含み、前記第2タービンは、前記第2排気ダクトに接続される入口と、前記コンプレッサの入口に接続される出口とを有し、当該エンジンの吸気側コンプレッサに駆動可能に接続される、請求項15に記載のエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−505994(P2012−505994A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531574(P2011−531574)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051390
【国際公開番号】WO2010/043910
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511094587)ラフバラ・ユニバーシティ (3)
【氏名又は名称原語表記】LOUGHBOROUGH UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Loughborough Leicestershire LE11 3TU GB
【Fターム(参考)】