説明

エンターテイメント素材または個々のプレゼンテータの心理的影響を判定する方法

少なくとも第1回目およびそれ以降の物語を有するエンターテイメント素材の心理的影響を判定する方法であって、
(a)被験者の目標グループに第1回目の物語を提示するステップと、
(b)所定期間経過後に、被験者の目標グループにそれ以降の物語を提示するステップと、
(c)それ以降の物語を被験者の目標グループに提示している間に、被験者の目標グループの脳活動を判定するステップと、
(d)ステップ(c)で判定された脳活動のレベルを参照して、エンターテイメント素材の心理的影響を評価するステップを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現在、テレビプログラム、特別フィルムのような、新しく作成されたエンターテイメント素材商業的成功の可能性または、メッセージを提示する個人、または公職を求める個人に対する反応は、典型的には、素材または個人を見たことのある試験視聴者、または試験視聴者から選ばれたフォーカスグループのアンケート調査により評価されている。そのような方法は、今では、試験視聴者の感情的反応を利用するという点においては不十分であると認識されている。エンターテイメント素材の商業的成功または失敗に重要な役割を果たすのは、素材または個人への共感度(engagement)レベル、興奮の感覚、種々のキャラクタの好感度のような感情的な反応である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、エンターテイメント素材の可能性のある商業的成功または個人に対する反応の評価のより正確な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
一般的に述べれば、本発明は、エンターテイメント素材または個人に対する心理的および特に感情的な反応を判定するための言葉による反応ではなく、脳活動の測定に基づく方法を提供する。
【0004】
本発明によれば、少なくとも第1回目およびそれ以降の物語を有するエンターテイメント素材の心理的影響を判定する方法が提供され、本方法は、
(a)被験者の目標グループに第1回目の物語を提示するステップと、
(b)所定期間経過後に、被験者の目標グループにそれ以降の物語を提示するステップと、
(c)それ以降の物語を被験者の目標グループに提示している間に、被験者の目標グループの脳活動を判定するステップと、
(d)ステップ(c)で判定された脳活動のレベルを参照して、エンターテイメント素材の心理的影響を評価するステップを含む。
【0005】
本発明はまた、エンターテイメント素材における役柄に対して、俳優のグループから1人の俳優の適合性を判定する方法を提供し、本方法は、
(a)各俳優に、同じ台本を読ませ、または同じ役柄を演じさせることにより別々に演技させるステップと、
(b)ステップ(a)における各俳優の演技を、試験視聴者に提示するステップと、
(c)各演技に対して別々に、試験視聴者の脳活動を判定するステップと、
(d)ステップ(c)で判定された脳活動を参照することにより、役柄に対する俳優の適合性を判定するステップを含む。
【0006】
本発明はまた、公的役割に対して、人間のグループから1人の人間を選択することを判定する方法を提供し、本方法は、
(a)公的役割に関連するプレゼンテーションを別々に各人間に行わせるステップと、
(b)ステップ(a)の各プレゼンテーションを、試験視聴者に提示するステップと、
(c)各人間に対して別々に、試験視聴者の脳活動を判定するステップと、
(d)ステップ(c)において判定された脳活動を参照することにより、その役割に対する人間を選択するステップを含む。
【0007】
本発明はまた、少なくとも第1回目およびそれ以降の物語を有するエンターテイメント素材の心理的影響を判定するシステムを提供し、本システムは、
(a)以前にエンターテイメント素材の第1回目の物語を見たことのある被験者の目標グループに対して、エンターテイメント素材のそれ以降の物語を表示する表示手段と、
(b)それ以降の物語を、被験者の目標グループに提示している間に、被験者の目標グループの脳活動を判定する判定手段と、
(c)判定手段により判定された脳活動レベルを参照して、エンターテイメント素材の心理的影響を評価する評価手段を含む。
【0008】
本発明はまた、エンターテイメント素材において演技をする俳優を評価する方法を提供し、本方法は、
(a)1人または2人以上の俳優が演技するエンターテイメント素材を視聴者に提示するステップと、
(b)ステップ(a)におけるエンターテイメント素材のプレゼンテーションの間に、視聴者の脳活動を判定するステップと、
(c)俳優がエンターテイメント素材に登場するときに、各俳優に対して脳活動レベルを別々に平均するステップと、
(d)ステップ(c)において判定された別々の脳活動を参照して、各俳優の心理的影響を評価するステップを含む。
【0009】
被験者が、聴衆に話し掛けている個人またはエンターテイメント素材を見ている間に脳活動が測定される。エンターテイメント素材は、既成のテレビプログラムまたは新しく制作されたパイロットプログラムからの物語を含むことができる。素材は、アニメーションまたはストーリーボードの形態で提示することもできる。
【0010】
1つの実施の形態においては、既成のプログラムまたは、プログラムの新しく開発されたパイロット的物語を評価する手順を下記に説明する。
1.目標グループから選んだ個人、またはプログラムに対して適切な視聴者が、エンターテイメントプログラムの1つまたは2つの物語を見る。
2.翌日に、被験者がプログラムの次の物語を見ている間に脳活動が測定される。
【0011】
アニメーションまたはストーリーボードしか利用できない状況においては、被験者がアニメーションまたはストーリーボードを見ている間に脳活動が測定される。
【0012】
完成されたプログラムまたは初期素材の人気の可能性を判定するためには、もっとも重要な尺度は、共感度(Engagement)であり、それは、4箇所の前頭および前頭葉前部部位における脳活動の重み付き平均により与えられる。これは、次の式により与えられる。
【0013】
共感度(engagement)=(b1*電極F3における脳活動+b2*電極Fp1における脳活動+b3*電極F4における脳活動+b4*電極Fp2における脳活動)、
ここにおいて、b1=0.1、b2=0.4、b3=0.1、b4=0.4 式1
もし逆写像技術が使用されると、適切な式は、
共感度(engagement)=(d1*右眼窩前頭皮質(ブロートマン(Brodman)領野11近傍)+d2*右側背前頭葉前部皮質(ブロートマン(Brodman)領野9近傍)+d3*左眼窩前頭皮質(ブロートマン(Brodman)領野11近傍)+d4*左側背前頭葉前部皮質(ブロートマン(Brodman)領野9近傍))、
ここにおいてd1=0.1、d2=0.4、d3=0.1、d4=0.4である 式2
である。
【0014】
共感度(engagement)の測定値は、プログラムアイデアが、アニメーションまたはストーリーボードの形態で試験視聴者に提示されたときに、プログラムのアイディアの人気の可能性を評価するためにも使用できる。被験者がアニメーションまたはストーリーボードを見るときのより高い共感度(engagement)は、完成したプログラムは、試験視聴者には人気があるという高い可能性に関連している。
【0015】
エンターテイメント素材における個人または種々のキャラクタのいずれかに対する視聴者の反応は、脳活動からも評価できる。個人または俳優に対する、より大きな視聴者の容認は、俳優が主演しているときのより高い共感度(engagement)により示される。
【0016】
好感度、または個人または俳優がどの程度視聴者に好かれているかは、引き付け度−反発度(Attraction−Repulsion)の尺度により示される。
【0017】
引き付け度−反発度(Attraction−Repulsion)(好き−嫌いと称される場合もある)は、左前頭/前頭葉前部および右前頭/前頭葉前部部位における脳活動の差により与えられる。引き付け度(Attraction)は、右と比較して、左大脳半球におけるより大きな脳活動により示され、反発度(Repulsion)は、左と比較して、右大脳半球におけるより大きな脳活動により示される。
【0018】
引き付け度(Attraction)=(a1*電極F3において記録された脳活動+a2*電極Fp1において記録された脳活動−a3*電極F4において記録された脳活動−a4*電極Fp2において記録された脳活動)、
ここにおいて、a1=a2=a3=a4=1.0 式3
引き付け度(Attraction)の測定値が正の場合は、参加者がキャラクタまたは個人が魅力的で好感が持てると感じていることに関連し、一方、負の測定値は、反発(Repulsion)または嫌悪に関連している。
【0019】
逆写像技術が使用されると、適切な式は、
引き付け度(Attraction)=(c1*右眼窩前頭皮質(ブロートマン(Brodman)領野11近傍)における脳活動+c2*右側背前頭葉前部皮質(ブロートマン(Brodman)領野9近傍)における脳活動+c3*左眼窩前頭皮質(ブロートマン(Brodman)領野11近傍)における脳活動+c4*左側背前頭葉前部皮質(ブロートマン(Brodman)領野9近傍))における脳活動)、
ここにおいて、c1=1、c2=1、c3=1、c4=1 式4
である。
【0020】
記憶への印象度(memorability)または俳優の役柄がどの程度まで、長期記憶に符号化されたかは、俳優の役柄に関連する「詳細および言葉による記憶に対する長期記憶符号化」に依存する。これは、好ましくは、俳優が主演しているときの、左大脳半球の電極C3、F3、およびF7からほぼ等距離にある左前頭部位におけるSSVEP位相の進みまたは振幅変化により示される。逆写像技術が使用されると、左大脳皮質における適切な位置は、ブロートマン(Brodman)領野6、44、45、46および47の近傍である。
【0021】
「感情的および言葉によらない記憶に対する長期記憶符号化」は、俳優の役柄に関連している。これは、好ましくは、俳優が主演しているときの、左大脳半球の電極C4、F4、およびF8からほぼ等距離にある左前頭部位におけるSSVEP位相の進みと振幅変化により示される。逆写像技術が使用されると、右大脳皮質における適切な位置は、ブロートマン(Brodman)領野6、44、45、46および47の近傍である。
【0022】
個人によるスピーチ、またはプログラム、またはプログラムにおける場面に関連する感情的興奮は、感情強度の尺度で与えられる。
【0023】
感情強度は、好ましくは、右半球大脳電極O2、P4、およびT6からほぼ等距離の右頭頂側頭部位における脳活動で示される。逆写像技術が使用されると、右大脳皮質における適切な位置は、右頭頂側頭接合部の近傍である。
【0024】
共感度(Engagement)、引き付け度−反発度(Attraction−Repulsion)、および感情強度の脳活動の測定値は、所与の役柄に対して、最も適切な演技者または俳優を選択するために使用することもできる。この場合は、視聴者は、プログラムにおける所与の場面を演じる役について各応募者を見ることになる。共感度(Engagement)と好感度(Likeability)(引き付け度−反発度(Attraction−Repulsion)のスコア上で)の最高レベルを引き出した俳優がその役柄に最も適切ということになる。選挙スピーチまたはプレゼンテーションを行っている個人の場合、スピーチにおいて、異なる点に関連する共感度(Engagement)、引き付け度−反発度(Attraction−Repulsion)、および感情強度の測定値は、視聴者から最も強い反応を引き出した要因を特定することを可能にする。最も強い反応を引き出した要因は、このように、より広い視聴者に最も強い影響を与えたものである。
【0025】
エンターテイメント素材を評価するこの方法は、インターネットを介してコンピュータに取り込まれたエンターテイメントや、携帯電話や他のデジタルメディアに取り込まれたエンターテイメントのような、異なるメディアでも使用できる。
脳活動の測定
脳活動の測定に対しては多くの方法が利用できる。それらの方法が所有しなければならない主要な機能は、十分な時間分解能または脳活動における急速な変化を追尾する能力である。自発的な脳の電気的活動、または脳電図(EEG)、または定常状態視覚誘発電位(Steady State Visually Evoked Potential(SSVEP))である連続的な視覚フリッカにより誘発される脳の電気的活動は、十分な時間分解能で、脳活動における変化を測定するために使用できる脳の電気的活動の2例である。等価なものとして、自発的な磁気的な脳活動、または脳磁図(MEG)と、連続的な視覚フリッカにより誘発される脳の磁気的活動である、定常状態視覚誘発反応(Steady State Visually Evoked Response(SSVER))がある。
脳電図と脳磁図(EEGとMEG)
EEGとMEGは、頭皮表面またはその近傍において記録された、自発的な脳の電気的および磁気的活動の記録である。脳活動は、下記のEEGまたはMEG成分から評価できる。
1.ガンマまたは高周波数EEGまたはMEG活動
これは一般的には、35Hzと80Hzの間の周波数を含むEEGまたはMEG活動として定義される。ガンマ活動の高められたレベルは、脳活動の高められたレベルに関連しており、特に認識に関連している(Fitzgibbon SP,Pope KJ,Mackenzie L,Clark CR,Willoughby JO. 「認知作業拡大ガンマEEGパワー」(Cognitive tasks augment gamma EEG power),Clin Neurophysiol.2004:115:1802−1809)。
【0026】
頭皮EEGガンマ活動が、脳活動の指標として使用される場合は、適切な頭皮記録部位は、上記の一覧表示のようになる。上記の一覧表示された特別な脳部位におけるEEGガンマ活動が、脳活動の指標として使用される場合は、LORETAのような逆写像技術を使用しなければならない(Pascual−Marqui,Michel C,Lehmann D (1994):「低分解能電磁断層撮影法:脳における電気的活動を局在化する新しい方法」(Low resolution electromagnetic tomography:a new method for localizing electrical activity in the brain),Int J Psychophysiol 18:49−65)。
【0027】
上記に一覧表示した特別な脳部位でのMEGガンマ活動が、脳活動の指標として使用される場合は、複検出器MEG記録システムを、MEG逆写像技術と連係して使用しなければならない(Uutela K,Ha・・ma・・la・・inen M,Somersalo E(1999):「最小電流推定値を使用する磁気脳電測定データの視覚化」(Visualization of magnetoencephalographic data using minimum current estimates),Neuroimage 10:173−180 and Fuchs M,Wagner M,Kohler T,Wischmann HA(1999):「線形および非線形電流密度再構成」(Linear and nonlinear current density reconstructions),J Clin Neurophysiol 16:267−295参照)。
2.EEGまたはMEGアルファ活動の周波数
脳活動はまた、アルファ周波数範囲(8.0Hz−13.0Hz)における進行中のEEGまたはMEGの周波数における変化によっても示される。増大する周波数は、増大する活動を示している。周波数は、高い時間分解能で評価する必要がある。「瞬間的周波数」を測定するために使用できる2つの技術は、複合変調(Walter D,「複合変調の方法」(The Method of Complex Demodulation).Electroencephalog.Clin.Neurophysiol,1968 Suppl 27:53−7)と、「ヒルベルト変換の使用」(the use of the Hilbert Transform)の使用(Leon Cohen,「時間周波数解析」(”Time−frequency analysis”),Prentice−Hall,1995)である。増大する脳活動は、アルファ周波数範囲におけるEEGの瞬間周波数の増加により示される。
【0028】
頭皮EEGアルファ活動の周波数が、脳活動の指標として使用されると、適切な頭皮記録部位は、上記に一覧表示してある。上記に一覧表示した特別な脳部位でのEEGアルファ活動の周波数が、脳活動の指標として使用されると、LORETAのような逆写像技術を使用しなければならない(Pascual−Marqui,Michel C,Lehmann D (1994):「低分解能電磁断層撮影法:脳における電気的活動を局在化する方法」(Low resolution electromagnetic tomography:a new method for localizing electrical activity in the brain),Int J Psychophysiol 18:49−65)。
【0029】
上記に一覧表示した特別な脳部位におけるMEGアルファ活動の周波数が脳活動の指標として使用される場合は、複検出器MEG記録システムが、MEG逆写像技術と提携して使用されなければならない(Uutela K,Ha・・ma・・la・・inen M,Somersalo E(1999):「最小電流推定値を使用する磁気脳電測定データの視覚化」(Visualization of magnetoencephalographic data using minimum current estimates),Neuroimage 10:173−180 and Fuchs M,Wagner M,Kohler T,Wischmann HA(1999):「線形および非線形電流密度再構成」(Linear and nonlinear current density reconstructions),J Clin Neurophysiol 16:267−295参照)。
3.脳活動の指標としてのSSVEPまたはSSVER位相
脳活動はまた、定常状態視覚誘発電位(Steady State Visually Evoked Potential(SSVEP))または定常状態視覚誘発反応(Steady State Visually Evoked Response(SSVER))の位相により示すこともできる。
【0030】
米国特許第4,955,938号、第5,331,969号、および第6,792,304号(その内容は、本明細書に参考文献として組み込んである)は、被験者から、定常状態視覚誘発電位(SSVEP)を得るための技術を開示している。この技術は、定常状態視覚誘発反応(SSVER)を得るためにも使用できる。これらの特許は、SSVEPとSSVER位相と、それに対する変化を迅速に得るための、フーリエ解析の使用を開示している。SSVEPとSSVER振幅および位相を計算するための好適な方法が下記にまとめられている。
SSVEPとSSVER振幅および位相
デジタル化された脳の電気的活動(脳電図またはEEG)と、脳の磁気的活動(MEG)は共に、刺激ゼロクロッシングのタイミングで、特別な刺激周波数におけるフリッカにより誘発されたSSVEPまたはSSVERを、記録されたEEGまたはMEGから、または、人工産物を除去し、信号対雑音比を高めるために独立成分解析(ICA)を使用して前処理されたEEGまたはMEGデータから計算することを可能にする。[Bell A.J.and Sejnowski T.J.1995,「ブラインド分離およびブラインドデコンボルーションへの情報最大化アプローチ」(An information maximisation approach to blind separation and blind deconvolution),Neural Computation,7,6,1129−1159;T−P.Jung,S.Makeig,M.Westerfield,J.Townsend,E.Courchesne and T.J.Sejnowskik,「単一試行事象関連電位の独立成分解析」(Independent component analysis of single−trial event−related potential) Human Brain Mapping,14(3):168−85,2001]
所与の刺激周波数の各刺激サイクルに対するSSVEPまたはSSVER振幅と位相の計算。式5と6を使用し、フーリエ技術を使用して達成される計算を下記に示す。
【0031】
【数1】

【0032】
SSVEPフーリエ成分の計算で、ここでanとbnはそれぞれ、余弦および正弦フーリエ係数である。nはn番目の刺激サイクルを示し、Sは、1刺激サイクル当りの試料数(16)であり、Δτは、試料間の時間間隔であり、Tは、1サイクルの周期であり、f(nT+iΔτ)は、EEGまたはMEG信号(未処理、またはICAを使用して前処理済)である。
【0033】
【数2】

【0034】
ここで、AnとBnは、下記の式7を使用して計算された、重複平滑化フーリエ係数である。
【0035】
【数3】

【0036】
振幅と位相成分は、単一サイクルフーリエ係数(anとbn)または、複数サイクルに渡って平滑化することにより計算された係数(AnとBn)のいずれかを使用して計算できる。
【0037】
式6と7は、一人の被験者に対して、平滑化SSVEPまたはSSVER係数を計算するための手順を示している。まとめられたデータに対して、所与の電極に対するSSVEPまたはSSVER係数(AnとBn)は、被験者全員に対して、または選択された被験者のグループに対して平均化される。
【0038】
平滑化において使用されるサイクル数が増大するにつれ、信号対雑音比は増大するが、時間分解能は減少する。平滑化に使用されるサイクル数は、典型的には5より大きく、130より小さい。
【0039】
式6と7は、頭蓋骨とより深い部位に接する皮質表面において推測される脳の電気的活動と同様に、頭皮SSVEPデータに適用される。眼窩前頭皮質または腹内側皮質のような脳のより深い部位における活動は、EMSE(Source Signal Imaging,Inc,2323 Broadway,Suite 102,San Diego,CA 92102,USA)およびLORETA(Pascual−Marqui,Michel C,Lehmann D (1994):「低分解能電磁断層撮影法:脳における電気的活動を局在化する方法」(Low resolution electromagnetic tomography:a new method for localizing electrical activity in the brain),Int J Psychophysiol 18:49−65)のような多数の利用できる逆写像技術を使用して決定できる。上記に一覧表示された特別な脳部位におけるSSVER振幅または位相の変化が、脳活動の指標として使用される場合は、複検出器MEG記録システムを、MEG逆写像技術と連係して使用しなければならない(Uutela K,Ha・・ma・・la・・inen M,Somersalo E(1999):「最小電流推定値を使用する磁気脳電測定データの視覚化」(Visualization of magnetoencephalographic data using minimum current estimates),Neuroimage 10:173−180,and Fuchs M,Wagner M,Kohler T,Wischmann HA(1999):「線形および非線形電流密度再構成」(Linear and nonlinear current density reconstructions),J Clin Neurophysiol 16:267−295参照)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明を、添付された図面を参照することにより、ここで更に説明をする。
【0041】
図1は、被験者または被験者のグループの、ビデオスクリーン3とラウドスピーカ2で提示された視聴覚用素材に対する反応を判定するためのシステム50を図示している。本システムは、ハードウェアの種々の部分を制御し、下記に説明するように、被験者7の脳活動から導出された信号に対して計算を行うコンピュータ1を含む。コンピュータ1はまた、スクリーン3上で、および/またはラウドスピーカ2を介して、1人または複数の被験者7に提示できる画像と音を保持する。
【0042】
テスト対象の被験者または複数の被験者7には、被験者7の頭皮上の種々の部位から、脳の電気的活動を得るための複数の電極を含むヘッドセット5が取り付けられる。SSVERが使用される場合は、ヘッドセット5における記録電極は使用されず、9 Burbidge Street,Coquitlam,BC,CanadaのVSM Medtech Ltd.により製造されたCTF MEG Systemのような、商用のMEG記録システムを代わりに使用することができる。ヘッドセットは、図2に示されるように、半銀鏡8と、白の発光ダイオード(LED)アレイ9を含むバイザ4を含む。半銀鏡は、LEDアレイ9からの光を被験者7の眼に向けて導くように配置される。LEDアレイ9は、そこからの光強度が、制御回路6の制御により、シヌソイド的に変化するように制御される。制御回路6は、シヌソイド信号を生成するための波形生成器を含む。SSVERが使用される場合は、LEDアレイからの光は、ファイバ光学システムを介して、バイザに搬送される。回路6はまた、増幅器、フィルタ、アナログーデジタル変換器、および種々の電極信号をコンピュータ1に結合するためのUSBインタフェース、またはTCPインタフェース、または、他のデジタルインタフェースも含む。
【0043】
半透明スクリーン10は、各LEDアレイ9の前に位置している。スクリーン上には不透明パターンが印刷されている。不透明度は、スクリーンの中心の中心にある円形領域において最大である。円形領域から離れるに従って、不透明度は、円形領域円周からの半径方向の距離に沿って、滑らかに減衰し、好ましくは、不透明度は、式8により説明されたガウス関数として減衰する。スクリーンは、中心視野におけるフリッカを減少して、視覚的に提示された素材の明確な像を被験者に与える。中心の不透明円のサイズは、垂直および水平に、1度から4度の間の中心視野における視覚的フリッカを遮蔽するようなサイズである。
【0044】
r<Rならば、P=1
r>=Rならば、Pは、下記の式8により与えられる。
【0045】
【数4】

【0046】
ここでPは半透明スクリーン上のパターンの不透明度である。P=1.0の不透明度は、スクリーンを透過する光がまったくないことに対応し、P=0の不透明度は、完全な透明に対応する。
【0047】
Rは、中心不透明ディスクの半径であり、rは、不透明ディスクの中心からの半径方向の距離である。Gは、半径方向の距離に沿う、不透明度の減衰率を決定するパラメータである。典型的に、Gは、R/4と2Rの間の値を有する。図3は、ディスクの中心からの半径方向の距離に沿う不透明度の減衰を示している。図3において、R=1、G=2Rである。
【0048】
コンピュータ1は、ヘッドセット5の各電極またはMEGセンサからのSSVEPまたはSSVER振幅および位相を計算するソフトウェアを含む。
【0049】
SSVEPおよびSSVERを生成するために必要なハードウェアとソフトウェアの詳細はよく知られているので、詳細に説明する必要はない。この点に関しては、上述のSSVEP計算のためのハードウェアと技術の詳細を開示している米国特許の明細書を参照されたい。簡単に説明すれば、被験者7は、連続的な背景フリッカを周辺視野に与えるバイザ4を介してビデオスクリーン3を見る。背景フリッカの周波数は、典型的には、13Hzであるが、3Hzと50Hzの間で選択できる。複数のフリッカを同時に提示することもできる。周波数の数は、1から5の間で変えることができる。脳の電気的活動は、信号をフィルタ処理して増幅し、回路6でデジタル化し、その後、信号は格納と解析のためにコンピュータ1に転送されるような特殊化電子ハードウェアを使用して記録される。
【0050】
SSVEPを使用するときは、脳の電気的活動は、ヘッドセット5における複数の電極、またはElectro−cap(ECI Inc., Eaton,Ohio USA)のような市場で入手可能な別の複数電極システムを使用して記録される。SSVERを使用するときは、VSM MedTech Ltdにより製造されたCTF MEG Systemのような、商用MEG記録システムを使用できる。電極または磁気記録部位の数は、通常は8以上で、128以下であり、典型的には16から32の間である。
【0051】
各電極における脳の電気的活動は、信号調整システムと制御回路6に伝えられる。回路6は、複数ステージ固定ゲイン増幅、バンドパスフィルタ処理、および各チャネルに対するサンプリング保持回路を含む。増幅/フィルタ処理された脳活動は、300Hz以上の率で、16−24ビットの精度でデジタル化され、ハードディスク上に格納するためにコンピュータ1に転送される。各脳の電気的サンプリングのタイミングは、視聴覚素材の異なる成分のプレゼンテーション時とともに、10マイクロ秒の精度で登録されて格納される。市場で入手可能な、等価のMEG記録システムは同じ機能を果たす。
【0052】
SSVEPとSSVER振幅および位相は、上記に従って計算できる。
【0053】
1人または複数の被験者が評価対象の画像を見ている間に、視覚フリッカは、バイザ4内でスイッチが入れられ、脳の電気的活動は、コンピュータ1上で連続的に記録される。
【0054】
記録段階の最後に、SSVEPまたはSSVER振幅および位相は、各個人ごとに別々に計算される。すべての記録が完了したら、グループ平均データが、グループに含めるべき被験者(例えば、男性、女性、若年者、老年者)からの平滑化されたSSVEPまたはSSVER振幅および位相を平均することにより計算される。
例1
下記の手順は、新しいエンターテイメント素材、または新しい目標視聴者に対する、既存エンターテイメント素材のリリースの成功の可能性を評価するために使用される。
【0055】
この例においては、テスト対象のエンターテイメント素材に対して、適切な目標視聴者から抽出された50人から200人の参加者が研究のために採用される。すべての参加者は、エンターテイメント素材の少なくとも1つの物語またはその一部を、一箇所または複数個所、または自宅で見る。この例においては、視聴者の共感度(engagement)が重要であり、従って、ヘッドセット5内の電極は、前述した技術を使用して、共感度(engagement)の計算が可能になるように選択される。脳活動もまた、好ましくは、SSVEPを使用して判定される。目標視聴者の共感度(engagement)の測定値は、男性と女性で分けられ、その結果は、図4にグラフとしてプロットした。図4は、5種類に異なったタイプのプログラム、つまり、ドラマ、旅行、食べ物、ロマンス、およびドキュメンタリに対する男性および女性視聴者に対する共感度(engagement)の測定値を示している。その後、理想的には、24時間以上経過後に、下記により詳細に説明するように、参加者がエンターテイメント素材の続きの物語またはその一部を見ている間に、脳活動が記録される。
【0056】
脳活動を記録するために、選択された被験者数、例えば、50人をテストルーム内で着席させ、ヘッドセット5を被験者の頭に取り付ける。バイザ4は、決められた位置に設置され、スクリーン10による中心窩のブロックが、画像が提示されるスクリーン3上にフリッカが現れることを防止するように調整される。記録セッションにおける被験者数は可変であり、典型的には、1から100超の間で可変である。被験者をまとめて、平均反応を作成するときは、平均に含むべきデータの被験者数は、好ましくは、16人以上とすべきである。
【0057】
フリッカによる参加者の苛立ちまたは不快感を最小限に抑えるため、フリッカ刺激は強度が可変であり、プログラムの特別なセグメント、または特別な俳優などのような、クライアントが関心を持つ素材がスクリーン上に登場するときのみ、最高の強度に切り替わる。関心対象の素材がスクリーンに提示されていない間は、刺激の強度は、典型的にはゼロで、スクリーン上に関心対象の素材が登場しているときに使用される典型的な値の10%を超えない。好ましくは、刺激は、急激にはスイッチを入れずに、関心対象のセグメントが表示される前に緩やかに増大し、関心対象の素材の終了後に緩やかに減少する。典型的には、刺激は関心対象の素材の登場前に、30〜60秒の時間をかけて直線的に増大し、それにより、関心対象の素材登場前に最大値の60秒に到達する。すべての関心対象セグメントの最後に、場面の静止画像の30秒間のシーケンスと、音楽の伴奏が提示される。典型的には、60画像が30秒間提示され、各画像は、約0.5秒間提示される。隣接する場面の画像間の脳活動レベルは、関心対象セグメントの進行中の脳活動に対する基準レベルとして使用される。これにより、記録期間の時間経過に起因して起こりえる脳活動におけるいかなる長期変化の除去が可能になる。
【0058】
関心対象セグメントの最後における基準画像のシーケンスの終了直後に、刺激強度は、30秒の時間をかけて直線的に最小値に減少される。刺激強度の緩やかな直線的な増大および減少は、関心対象すべてのセグメントに対して行われる。
【0059】
適切な視聴者の共感度(engagement)は、上述のSSVEPの技術を使用して、男性および女性に対して別々に計算される新しいエンターテイメント素材の共感度(engagement)の典型的なセグメントの少なくとも5分に渡り時間平均された脳の共感度(engagement)の測定値により与えられる。男性に対しては、図から分かるように、最高の共感度(engagement)のプログラム、従って、成功の最高の可能性は、ドラマとドキュメンタリプログラムであり、一方、女性視聴者に対しては、ロマンスと食べ物のプログラムが最も成功の可能性がある。
例2
本発明はまた、エンターテイメント素材において主演する種々の俳優の心理的影響を判定するためにも使用できる。この例は、目標視聴者がエンターテイメント素材のより以前の物語を見ている必要がないことを除いて、例1に類似している。電極はまた、共感度(engagement)、好き−嫌い、詳細および言葉による記憶、言葉によらない特徴および感情の記憶、感情強度の評価を可能にするように選択される。ここでもまた、脳活動は、好ましくは、SSVEP技術を使用して測定される。この例では、エンターテイメント素材のセグメントは、そこで主演する3人の異なる俳優、つまり、俳優1、俳優2、および俳優3を有している。まとめられた反応は、種々の仮説的測定値に対してグラフとして図5にプロットされている。図5から、俳優1は、共感度(engagement)と、好感度と、感情強度について高い得点を得ていることは明白である。これは、視聴者は俳優1に共感でき(高い共感度(engagement)により示されている)、その俳優を好み(高い好感度)、その俳優がエキサイティングである(高い感情強度)と感じている。対照的に、俳優2は、嫌われ、強い感情を引き起こしている。この俳優は悪人の役柄を演じるのに良い選択である。最後に、俳優3は、ほどほどの共感度(engagement)を得ており、彼の役柄の詳細はよく記憶されている(高い詳細に対する記憶)。俳優3は、内容がより重要な状況において熟練した役柄により適しているといえる。
例3
本発明は、特別な役柄に対して俳優を選択するためにも使用できる。この適用においては、可能性のある俳優はそれぞれ同一の台本を読み、同一の役柄を演じることが要求される。脳活動は、与えられた役柄に対する各応募者を見ている間に試験視聴者から記録される。役柄の性質により(例えば、ヒーロー、悪人など)、所望の心理学反応を最も効果的に引き起こしている俳優が、その役柄に選択される。中心的なキャラクタに対する最も適切な尺度は、共感度(engagement)、好き−嫌い、および感情強度である。役柄が、熟練した、あるいは情報伝達の要素を有しているときは、長期記憶符号化もまた重要になる。
【0060】
この技術に精通した者には、本発明の方法は、エンターテイメント素材の商業的成功の可能性、俳優の適正、または公職への個人の適正を評価するための既知の技術と好適に匹敵していることを理解するであろう。エンターテイメント素材の場合、既知の解析的技術は、Qスコアのような行動的尺度を判定するために使用できる。Qスコアは、平均的視聴者が、特別なプログラムを見ることについて感じる希望を示している。典型的には、Qスコアは、目標視聴者が、多くの完全な物語を見た場合のプログラムに対してのみ入手可能である。新しいエンターテイメント素材の場合は、これは非常に時間がかかり、製作する費用が高い。対照的に、共感度(engagement)の測定値に基づく評価技術は、当然、相対的に安価で製作できるパイロットプログラムに基づいて人気の指標を与える。図6は、3つのテレビプログラム、つまり、スポーツ、ドラマ、および旅行を見ているときの5分間に渡る、150人の被験者から推定された100を、共感度(engagement)の平均レベルに乗算したものを示している。本発明に従って、脳活動から測定された共感度(engagement)のレベルは実線の黒のバーで示されている。既知のQスコア技術から得られた対応するデータは、縞模様のバーでプロットされている。本発明の技術がパイロットプログラムに基づいているにも拘わらず、本発明の技術とQスコアの結果の間には強い相関関係があることが分かる。
【0061】
この技術に精通した者には、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、多数の変形が可能であることは明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明のシステムの模式図である。
【図2】図2は、視覚フリッカ刺激を被験者に提示する方法をより詳細に示した模式図である。
【図3】図3は、半径の関数としての、スクリーンの不透明度を示すグラフである。
【図4】図4は、異なるタイプのエンターテイメント素材に対する、男性および女性被験者の視聴時の共感度(engagement)の測定値を図示している。
【図5】図5が、3人の異なる俳優に対する影響の異なる測定値を図示している。
【図6】図6は、本発明の技術と、既知の評価技術との間の相関関係を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1回目およびそれ以降の物語を有するエンターテイメント素材の心理的影響を判定する方法であって、
(a)被験者の目標グループに第1回目の物語を提示するステップと、
(b)所定期間経過後に、被験者の目標グループにそれ以降の物語を提示するステップと、
(c)それ以降の物語を、被験者の目標グループに提示している間に、被験者の目標グループの脳活動を判定するステップと、
(d)ステップ(c)で判定された脳活動のレベルを参照して、エンターテイメント素材の心理的影響を評価するステップを含む方法。
【請求項2】
ステップ(e)は、ステップ(c)において判定された脳活動を平均するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)は、第1回目および第2回目の物語を、被験者の目標グループに提示するステップを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エンターテイメント素材の物語は、アニメまたはストーリーボードの形式である請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)は、それ以降の物語または複数の物語を、視聴覚的なプレゼンテーションにおけるセグメントとして提示することと、
各セグメントの後に、基準素材を被験者の目標グループに提示することと、
基準素材を被験者の目標グループに提示している間に、脳活動の基準レベルを判定することと、
ステップ(c)において判定された脳活動のレベルから、脳活動の基準レベルを減算することにより、脳活動における長期変化の効果を除去することを含む請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
基準素材は、静止画像のシーケンスを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)は、それ以降の物語をビデオスクリーン上に表示することで行われる請求項1から6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)は、ガンマまたは高周波数EEGまたはMEG活動を判定することにより行われる請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
ステップ(c)は、周波数範囲8から13HzにおけるEEGまたはMEG活動を検出することにより行われる請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
ステップ(c)は、被験者の目標グループから得られたEEG信号における定常状態視覚誘発電位(SSVEP)の位相の評価、または被験者の目標グループから得られたMEG信号における定常状態視覚誘発反応(SSVER)の評価により行われる請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)は、
エンターテイメント素材との共感度(engagement)、
エンターテイメント素材の引き付け度−反発度(attraction−repulsion)、
エンターテイメント素材に関連する長期記憶符号化、および/または
エンターテイメント素材に関連する感情強度の評価
を可能にする出力EEG信号を得るために、電極を頭皮部位に設置するステップを含む請求項1から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
シヌソイド的に変化する視覚フリッカ刺激を、ステップ(c)中に各被験者に加えて、フーリエ係数を前記出力信号から計算することを可能にし、それにより、前記SSVEP振幅および/または位相差の計算を可能にするステップを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記SSVEP振幅および位相は、次の式で計算され、
【数1】

ここで、anとbnは、次の式で計算される余弦および正弦フーリエ係数であり、
【数2】

ここにおいて、
nとbnは、それぞれ余弦および正弦フーリエ係数、
nは、n番目のフリッカ刺激サイクルを示し、
Sはフリッカ刺激サイクル当たりの試料数、
Δτは、試料間の時間間隔、
Tは、1サイクルの周期、
f(nT+iΔτ)は、前記所定頭皮部位から得られたEEG信号(未処理またはICAを使用して前処理済)であり、AnとBnは、次の式
【数3】

を使用して計算された重複平滑化フーリエ係数である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各被験者の複数の頭皮部位からのEEG信号を得るステップと、
BESA、EMSA、またはLORETAのような逆写像技術を利用して、眼窩前頭皮質または腹内側皮質のような、各被験者の脳のより深い部位における活動を表現する修正EEG信号を生成するステップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
目標被験者の選択されたグループに対してフーリエ係数AnとBnを平均し、前記被験者のグループに対するSSVEP振幅とSSVEP位相差を計算するステップを含む請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
フリッカ信号は、各被験者の周辺視野にのみ加えられる請求項12から15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
フリッカ信号を、それぞれが不透明領域を含む第1および第2スクリーンを介して、各被験者の眼に向けて導くステップと、スクリーンを、前記不透明領域が前記フリッカ信号が各被験者の各眼の中心窩に当ることを防止するように、各被験者の相対位置に置くステップを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
各スクリーンの不透明度は、各被験者の各網膜に当るフリッカ信号の強度が、中心視野から周辺視野へ向けて値が減少するように、その不透明領域からの距離の関数として減少する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各スクリーンに、その不透明度を画定するためにマスキングパターンを適用するステップと、パターンを、各被験者の周辺視野に当るフリッカ信号の部分を画定する不透明領域とその周辺領域に隣接して、不透明度における変化に対してゼロまたは低勾配を提供するマスキングパターン関数に従って加えるステップを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
各スクリーンの不透明領域は円形であり、マスキングパターン関数は、スクリーンの不透明度Pが、次の式
【数4】

により定義されるように、ガウス関数であるように選択され、ここにおいて
rは不透明領域の中心からの半径方向距離、
Gは、半径方向距離に関する不透明度の降下率を決定するパラメータであり、
r<RのときP=1である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Gは、R/4と2/Rの範囲の値を有する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
部位O2、P4、およびT6からほぼ等距離にある部位において、各被験者の頭皮に電極を取り付け、前記電極からのEEG信号から、SSVEP振幅と位相差を計算し、それにより出力信号は、エンターテイメント素材または選択された俳優に関連する各被験者の感情強度を示すステップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項23】
逆写像を利用するステップは、右頭頂側頭接合部近傍の右大脳皮質における脳活動を判定し、それにより出力信号は、エンターテイメント素材または選択された俳優に関連する各被験者の感情強度を示す請求項14に記載の方法。
【請求項24】
3、F4、Fp1、およびFp2部位において、各被験者の頭皮に電極を取り付けるステップと、前記電極からのEEG信号から、SSVEP振幅と位相差を計算するステップと、式
引き付け度(attraction)=(a1*電極F3におけるSSVEP位相の進み+a2*電極Fp1におけるSSVEP位相の進み−a3*電極F4におけるSSVEP位相の進み−a4*電極Fp2におけるSSVEP位相の進み)、
ここにおいて、a1=a2=a3=a4=1.0
を使用して、引き付け度−反発度(attraction−repulsion)に対する値を計算するステップを含み、それにより、前記値は、エンターテイメント素材または選択された俳優に対する各被験者の好き−嫌いを示す請求項13に記載の方法。
【請求項25】
逆写像を利用するステップは、
ブロートマン(Brodman)領野11近傍の右眼窩前頭皮質、
ブロートマン(Brodman)領野9近傍の右側背前頭葉前部皮質、
ブロートマン(Brodman)領野11近傍の左眼窩前頭皮質、および
ブロートマン(Brodman)領野9近傍の左側背前頭葉前部皮質における脳活動を判定し、式
引き付け度(attraction)=(c1*右眼窩前頭皮質(ブロートマン(Brodman)領野11近傍)+c2*右側背前頭葉前部皮質(ブロートマン(Brodman)領野9近傍)+c3*左眼窩前頭皮質(ブロートマン(Brodman)領野11近傍)+c4*左側背前頭葉前部皮質(ブロートマン(Brodman)領野9近傍))、
ここにおいて、c1=1、c2=1、c3=1、c4=1
を使用して引き付け度−反発度(attraction−repulsion)に対する値を計算し、それにより、前記値は、エンターテイメント素材または選択された俳優に対する各被験者の好き−嫌いを示す請求項14に記載の方法。
【請求項26】
3、F4、Fp1、およびFp2部位において、各被験者の頭皮に電極を取り付けるステップと、前記電極から、SSVEP振幅と位相差を計算するステップと、式
共感度(engagement)=(b1*電極F3におけるSSVEP位相の進み+b2*電極Fp1におけるSSVEP位相の進み+b3*電極F4におけるSSVEP位相の進み+b4*電極Fp2におけるSSVEP位相の進み)、
ここにおいて、b1=0.1、b2=0.4、b3=0.1、b4=0.4
を使用して、前記部位における重み付き平均SSVEP位相の進みにより、広告の特徴における共感度(engagement)に対する値を計算するステップを含み、それにより、前記値は、エンターテイメント素材または選択された俳優における各被験者の共感度(engagement)を示す請求項13に記載の方法。
【請求項27】
逆写像を利用するステップは、
ブロートマン(Brodman)領野11近傍の右眼窩前頭皮質、
ブロートマン(Brodman)領野9近傍の右側背前頭葉前部皮質、
ブロートマン(Brodman)領野11近傍の左眼窩前頭皮質、および
ブロートマン(Brodman)領野9近傍の左側背前頭葉前部皮質における脳活動を判定し、
前記電極からの前記修正されたEEG信号からSSVEP振幅と位相差を計算し、式
共感度(engagement)=(d1*右眼窩前頭皮質(ブロートマン(Brodman)領野11近傍)+d2*右側背前頭葉前部皮質(ブロートマン(Brodman)領野9近傍)+d3*左眼窩前頭皮質(ブロートマン(Brodman)領野11近傍)+d4*左側背前頭葉前部皮質(ブロートマン(Brodman)領野9近傍))、
ここにおいて、d1=0.1、d2=0.4、d3=0.1、d4=0.4
を使用して共感度(engagement)に対する値を計算し、それにより、前記値は、エンターテイメント素材または選択された俳優における各被験者の共感度(engagement)を示す請求項14に記載の方法。
【請求項28】
エンターテイメント素材における役柄に対して、俳優のグループから1人の俳優の適合性を判定する方法であって、
(a)各俳優に、同じ台本を読ませ、または同じ役柄を演じさせることにより別々に演技させるステップと、
(b)ステップ(a)における各俳優の演技を、試験視聴者に提示するステップと、
(c)各演技に対して別々に、試験視聴者の脳活動を判定するステップと、
(d)ステップ(c)で判定された脳活動を参照することにより、役柄に対する俳優の適合性を判定するステップを含む方法。
【請求項29】
公的役割に対して、人間のグループから1人の人間を選択することを判定する方法であって、
(a)公的役割に関連するプレゼンテーションを別々に各人間に行わせるステップと、
(b)ステップ(a)の各プレゼンテーションを、試験視聴者に提示するステップと、
(c)各人間に対して別々に、試験視聴者の脳活動を判定するステップと、
(d)ステップ(c)において判定された脳活動を参照することにより、その役割に対する人間を選択するステップを含む方法。
【請求項30】
ステップ(c)は、試験視聴者の頭皮部位に電極を設置して、
共感度(engagement)、
引き付け度−反発度(attraction−repulsion)(好き−嫌い)および/または
感情強度の評価
を可能にするEEG信号を得るステップを含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
エンターテイメント素材において演技をする俳優を評価する方法であって、
(a)1人または2人以上の俳優が演技するエンターテイメント素材を視聴者に提示するステップと、
(b)ステップ(a)におけるエンターテイメント素材のプレゼンテーションの間に、視聴者の脳活動を判定するステップと、
(c)俳優がエンターテイメント素材に登場するときに、各俳優に対して脳活動レベルを別々に平均するステップと、
(d)ステップ(c)において判定された別々の脳活動を参照して、各俳優の心理的影響を評価するステップを含む方法。
【請求項32】
ステップ(b)は、頭皮部位に電極を設置し、
共感度(engagement)、
引き付け度−反発度(attraction−repulsion)(好き−嫌い)、
詳細と言葉による特徴に対する記憶、
言葉によらない特徴と感情に対する記憶、および/または
感情強度の評価
を可能にするEEG信号を得るステップを含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも第1回目およびそれ以降の物語を有するエンターテイメント素材の心理的影響を判定するシステムであって、
(a)以前にエンターテイメント素材の第1回目の物語を見たことのある被験者の目標グループに対して、エンターテイメント素材のそれ以降の物語を表示する表示手段と、
(b)それ以降の物語を、被験者の目標グループに提示している間に、被験者の目標グループの脳活動を判定する判定手段と、
(d)前記判定手段により判定された脳活動レベルを参照して、エンターテイメント素材の心理的影響を評価する評価手段を含むシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−512860(P2010−512860A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541682(P2009−541682)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/AU2006/002003
【国際公開番号】WO2008/077175
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(507290386)ニューロ−インサイト プロプライアタリー リミティド (4)
【Fターム(参考)】