説明

エンドトキシンが除去された精製水の製造方法

【課題】逆浸透処理によって人工透析液に使用する精製水を製造するさい、原料水のエンドトキシンを予め低減して逆浸透処理の効率を向上させる。
【解決手段】エンドトキシンが少ない精製水を原水から製造する方法において、少なくとも、前記原水に1mM以上50mM以下のNaClを添加する操作、含有するエンドトキシンを200単位/L以下にする電解処理操作、逆浸透膜による逆浸透処理操作の各操作を順次行なうものであって、前記電解処理操作は、ダイヤモンド薄膜の作用電極11と、作用電極と0.05ないし1.0mmの間隙を以って対向する対極13とを有する電解装置により、水の電解が発生する電圧未満の電圧により電解を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工透析器などに使用するエンドトキシンが除去された精製水を、水道水などの原水から製造するための水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンドトキシンはグラム陰性桿菌の細胞膜外壁を構成するリボ多糖であり、溶菌や菌体の破壊によって溶出して細菌毒素として作用する。グラム陰性桿菌であれば大腸菌のような一般的な細菌も上記のような毒作用の原因となり、人工透析の透析液などを介してエンドトキシンが体内に入ると悪寒、発熱、敗血症などを発生させることがある。また発熱を起こさない量のエンドトキシンでも炎症性サイトカインが生成し、長期の人工透析患者においてはこれにより発生した蛋白質の蓄積により、透析アミロイド症の原因となる。
【0003】
人工透析の透析液は原液を精製水で稀釈して作製されるが、この稀釈のための精製水は水道水などの原水を処理して得ている。一般の水道水は殺菌処理を受けているため菌類は1L当たり100以下と少なく飲料用には適しているが、エンドトキシンは通常10000単位/L程度含まれており医療用としては不適当である。透析用水としては10単位/L以下であること、望ましくは0まで低減することが求められている。このため透析用水は逆浸透処理により精製して作製するのが一般的であり、逆浸透膜は水分子のみを通過させるので、エンドトキシンなどは除去される。さらに逆浸透処理をする前に、原水中の微生物や微粒子をフィルターで除去したり、イオン交換樹脂の層を通過させて軟水化などの処理をしたり、活性炭により塩素イオンなどを除去するなどの前処理を組み合わせることが多い。
【0004】
しかしながら、このように逆浸透膜以外に種々の手段を併用してもエンドトキシンが完全に無い精製水を製造することは困難なのが実情であり、このため特別な手段をさらに併用することが提案されている。たとえば特開2007−237062号公報(特許文献1)には、逆浸透処理後の精製水をさらに電気再生式純水装置で処理することにより、エンドトキシンを完全に除去できるとしている。この電気再生式純水装置はアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合した樹脂をアニオン交換膜、カチオン交換膜で隔てられた充填室に充填し、これと平行して設けた電極間に通電するものである。これによりイオン交換樹脂の充填室から処理済みの精製水を取り出すことができる。
【0005】
さらに特許文献1においては逆浸透処理の前処理についても示されており、活性炭などで塩素イオンなどのアニオン類を除去した後、陽イオン交換樹脂などでカチオン類を除去し、さらに紫外線照射装置より紫外線を照射して滅菌を行なった後に逆浸透処理を行なうとしている。
【0006】
また特開2007−252396号公報(特許文献2)にも逆浸透膜処理水を電気式脱イオン水製造装置を通すことにより、精製水中の微生物やエントドキシンを除去する方法が開示されている。引用文献2によると電気式脱イオン水製造装置は、カチオン交換膜とアニオン交換膜で区画される脱塩室にイオン交換体を充填し、この脱塩室の両側に濃縮室を設け、これらの脱塩室と濃縮室を陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室の間に配置したものであり、電圧を印加しながら精製水を得ることができる。
【0007】
また引用文献2においても、逆浸透膜装置の負荷を低減して処理効率を向上させるための前処理装置を設けることが好ましいとしている。そして前処理装置の例として、上流側から順に、細孔径が0.5〜10μm程度のフィルター、イオン交換樹脂が充填された軟化装置、活性炭装置および前段のフィルターよりも細孔径が小さなフィルター装置を組み合わせたものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−237062号公報
【特許文献2】特開2007−252396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の特許文献1や特許文献2に記載の方法においては、脱イオン作用と電解による殺菌作用によって系内に細菌が繁殖するのを防止するので、エンドトキシンの無い精製水を得ることができるとしている。しかし逆浸透膜で濾過された精製水は水分子のみである筈のところ、多くの場合にエンドトキシンが含有しているのが実情である。
【0010】
逆浸透膜による濾過の効率は原水の水質の影響を受け、原水中にエンドトキシン量が多いと、濾過水のエンドトキシンも増加し、またエンドトキシンを阻止する率を向上させようとすると濾過の効率が低下する。このためエンドトキシン含有量が10単位/L以下の精製水を得ようとすると処理した原水の10%程度しか精製水が得られないのが一般的である。
【0011】
先に説明したように特許文献1や特許文献2の精製水製造装置においては、逆浸透膜装置の負荷を低減して処理効率を向上させる目的で前処理装置を設けている。しかしながらこれら文献に示されている前処理装置においては、微生物や微粒子を除去するためのフィルターや、カチオンやアニオンを除去するためのイオン交換樹脂や活性炭による装置であって、エンドトキシン自体を除去するものではない。このため従来から実施されている前処理方法では、逆浸透膜処理の処理効率の向上は限られたものであった。
【0012】
このようなことから本発明は逆浸透処理を行なう前の原料水に対してエンドトキシンを減少できるような前処理を行うことにより、逆浸透膜による濾過の効率を大幅に向上させて高能率にエンドトキシンの少ない精製水を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記課題を解決するものであって、エンドトキシンが少ない精製水を原水から製造する方法において、少なくとも、前記原水に1mM以上50mM以下のNaClを添加する操作、含有するエンドトキシンを200単位/L以下にする電解処理操作、逆浸透膜による逆浸透処理操作の各操作を順次行なうものであって、前記電解処理操作は、ダイヤモンド薄膜を基板に生成させた作用電極と、作用電極と0.05ないし1.0mmの間隙を以って対向する対極とを有し、前記間隙を被処理水の流路とする電解装置により、水の電解が発生する電圧未満の電圧を前記作用電極と対極間に印加して電解を行なうものであることを特徴とするエンドトキシンが除去された精製水の製造方法である。ここにおいて、作用電極に印加する電解電圧は、Ag/AgCl基準電極に対して1.3〜2.2Vであることも特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
水道水には通常10000単位/L程度のエントドキシンが存在するが、本発明によれば逆浸透処理操作の前に電解処理操作を行なってエンドトキシンの量を200単位/L以下に低減することが可能である。これにより逆浸透膜による濾過の効率を向上させてエンドトキシンの少ない精製水を低コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の水処理方法に使用する装置の配置図である。
【図2】本発明の水処理方法に使用する装置の配置図である。
【図3】本発明に使用する電解装置を示す軸方向に平行な断面図である。
【図4】図3におけるA−A´矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の精製水の製造方法は、基本的には被処理水に対して逆浸透膜を通過させる逆浸透処理操作を行なうことにより精製水を製造するものであるが、前段に電解処理操作を付加してこれによりエンドトキシンが大幅に低減された水に対して逆浸透処理操作を行なうことを特徴点としている。
【0017】
本発明の方法においては、さらに電解処理操作の前にNaClの添加操作を行なう。これは後に説明するように本発明における電解処理操作が水の電解が生じないような低電圧で行われるので、被処理水の電気伝導度を確保するためにNaClを添加するものである。
【0018】
本発明の精製水の製造方法に使用する装置の配置図を図1に示す。1は原水槽であるが、ここからポンプ7で送給された原料水はNaCl添加装置2を経て電解処理装置3に送られる。そして電解処理装置3から出た被処理水は脱イオン処理装置4を経て逆浸透処理装置5に送られ、得られた精製水は精製水槽6に貯められる。上記のうちNaCl添加装置、電解処理装置、逆浸透処理装置は少なくとも設けるべきものであって、脱イオン処理装置は必要に応じて設ける。また例えば被処理水中の微生物や微粒子を除去するためのフィルターなどを必要に応じて追加することができる。
【0019】
なお図2に配置図を示すように電解処理装置3により電解が行なわれた被処理水は貯水槽8に一旦貯められ、貯水槽8から脱イオン処理装置4を経て逆浸透処理装置5に被処理水が送給されるようにしてもよい。なお9はポンプであるが、ポンプは図1や図2に記載が無い位置にも適宜設けることができる。貯水槽8は複数あっても良く、その場合には1つの貯水槽に被処理水が流入しているとき、他の貯水槽から被処理水を送り出すこともできる。図2のような配置にすることにより、電解処理装置と逆浸透処理装置との処理速度が一致しなくても円滑な処理が可能になり、またそれぞれの処理装置に最適な加圧力に被処理液を維持できる。
【0020】
本発明の精製水の製造方法に使用する電解装置は、ダイヤモンド薄膜を基板に生成させた作用電極と、作用電極と間隙を以って対向する対極とを有し、この間隙を被処理水の流路とするものである。図3および図4はこのような電解装置を示すものであって、図3は軸方向に平行な断面図、図4は図3におけるA−A´矢視断面図である。これらの図において11は作用電極であって(図4では位置関係を2点鎖線で示している)、薄い板状の電導性の基板の少なくとも表側の面、すなわち図4において少なくとも左側の面に硼素をドープすることにより導電性としたダイヤモンド被膜が形成されている。また12は弗素樹脂など耐薬品性の電気絶縁体からなるスペーサであって、図4に見るように一つの細長い穴121が開いている。また13はチタンなどの耐蝕性を有する導電体のブロックからなる対極であって、スペーサ12を挟んで作用電極11のダイヤモンドが形成された面と対向している。したがって作用電極と対極との間隔はスペーサの厚みによって定められる。
【0021】
前記スペーサ12の穴121によって形成される一つの空間14にそれぞれ開口して、被処理液の導入口15および排出口16があるが、これらはいずれも対極13のブロックに設けられている。なお17、18は被処理液のそれぞれ導入、排出のための流体継手、19は対極13への通電端子である。
【0022】
また30は参照電極であって、先端が対極と同一面になるように対極のブロックにねじ込んで取り付けられている。ここではAg−AgCl系の例を示しているが、弗素樹脂のような耐薬品性の容器301の中に飽和KCl溶液をゼラチンによりゲル状にしたものが電解液302として充填されている。さらにこの中に表面をAgClにしたAg線が電極材303として挿入されている。また304は参照電極の電解液302と被処理液とを隔てる多孔質セラミックスなどのフィルターである。
【0023】
また作用電極11の電極板の裏面、すなわち対極13と対向する面の反対側には作用電極への通電板20が設けられ、作用電極11に接触している。21は作用電極11への通電端子である。また22は電気絶縁体からなるシールカバーであって、Oリング23、24でシールすることにより電解装置の内部を密閉する。また前記の通電板20の一部にOリング26を設けてその内側に被処理液が入らないようにし、液体を介さず直接に通電板を電極板の裏面に電気的接触させる。また27は対極13の金属ブロック全体を覆う絶縁カバーである。
【0024】
本発明の方法は上記のような電解装置を使用して、Ag/AgCl基準電極に対して1.3〜2.2Vの電圧を作用電極に印加して電解を行なう。本発明における電解処理は水の電解が生じない限度の電圧で行なうものであるが、上記のように電解装置の作用電極としてダイヤモンド電極を使用することにより高い電圧でなければ分解しない分子の原子間の結合を切断することも可能となり、本発明が目的とするエンドトキシンの分解、不活性化を行なうことができる。すなわち従来の電解装置における作用電極である白金電極などでは電解電圧が1.2Vを超えると水の電気分解が発生するが、本発明で使用する電解装置は約2.5V(Ag/AgCl基準電極に対して)まで水の電気分解が発生しない。水が電解するような条件においても並行してエンドトキシンの分解は行なわれるが、水の電解が発生するとこれにエネルギーが費やされるのでエンドトキシンの分解状況が不安定になる。なお2.2Vを超えると添加したNaClが電解するおそれがあるので、2.2V以下が好ましく、一方、電解電圧は高い方がエンドトキシンの分解が促進されるので1.3V以上が好ましい。
【0025】
なお上記の電解装置において、作用電極11の裏面および端面は必ずしもダイヤモンド被膜が形成されているわけではなく、また通電板20についても当然にダイヤモンド被膜が無い。したがって被処理液がダイヤモンド被膜が無い部分に回り込むと水の電解が発生するおそれがあるが、液の流れの無い個所では電解により発生した気泡がその部分に止まり、金属の表面が気泡で覆われて通電しなくなるので水の電解はそれ以上進行しない。
【0026】
本発明において水が電解しない電圧範囲でエンドトキシンの分解を行なうには、作用電極11のダイヤモンド被膜を有する面と対極13との間隔を1.0mm以下といった狭い間隙にする必要がある。なお作用電極と対極との間隔は0.05mmより小さいと作用電極と対極とが接触するおそれがあるので、0.05mm以上が適当である。なお、このような電解によるエンドトキシンの分子の分解が、なぜ作用電極と対極とを0.05ないし1.0mmといった狭い間隙をもって対向させた場合にのみ発生するのかは不明である。
【0027】
なお作用電極と対極との間隔が1.0mmより大きくても、水の電解が生じない電圧範囲において電解電流は観測されるが、これは成分の分解によるものではなく分子からの電子の離脱によるものである。この場合、検出される電流は1μA以下の程度であって、本発明の場合よりずっと小さい。すなわち本発明における電解処理操作において被処理水を電解したときの電流値は、作用電極の実効面積、すなわち図3、図4においてスペーサの穴121に面した部分の面積が、約2.8cmの場合において数十μA〜数百μA程度である。
【0028】
上記のように本発明における電解処理は水の電解が生じない限度の電圧で行なうので、水中に電解質が少なくて電気伝導度が小さいと電流が流れず、電解処理が困難になる。原水としては水道水を使用することが一般的であるが、水道水には硬度に対応したカルシウムイオンや殺菌のため添加された次亜塩素酸ナトリウムなどの電解質が存在する。しかし電気伝導度を確保するための電解質としてこれらを利用するには、その量が不安定であったり不充分なことがある。
【0029】
そこで本発明においては、原水に電解質がどれだけ含有しているかに係わり無く、NaClを添加することにより電気伝導度を安定的に確保する。添加する電解質としてNaClを特に選択するのは、後の操作に使用するイオン交換樹脂や逆浸透膜に悪影響を与えないこと、もともと血液中に存在する成分であって万が一精製水に混入することがあっても害とならないことによる。添加操作はNaCl溶液の注入によって行ない、添加する濃度は1mM(mmol/L)以上であれば必要な電気伝導度を得ることができる。一方50mMを超えると効果は飽和し、また電解処理後の除去の負担が増加する。したがってNaClの添加量は1mM以上50mM以下が好ましい。
【0030】
このようにNaClを添加した被処理水は電解処理装置により電解が行なわれ、エンドトキシンが分解される。電解は水の電解が発生する電圧未満の電圧を作用電極と対極間に印加して行なうが、先にも述べたようにAg/AgCl基準電極に対して1.3〜2.2Vの範囲が好ましい。通常の水道水に含まれるエンドトキシンの分量は10000単位/L程度であるが、本発明における電解処理操作により200単位/L以下、通常50単位/L程度まで低下させることができる。
【0031】
このようにして電解処理操作によりエンドトキシンを低減させた被処理水は、逆浸透処理操作によってさらにエンドトキシンを低減させるが、電解処理後に予め電解質などの不純物を除去して逆浸透処理の負担を軽減することが好ましい。このためにはイオン交換樹脂による脱イオン処理装置を電解処理装置の後に設ければよい。
【0032】
エンドトキシンが電解処理操作により200単位/L以下にされた被処理水は、逆浸透処理操作によって10単位/L以下にまで低減される。逆浸透処理操作のための装置については特に限定するものではなく、逆浸透モジュールとこれに処理水を高圧で供給するポンプから成っている。逆浸透モジュールとしては平面膜モジュール、スパイラルモジュール、管型モジュールのいずれであってもよい。
【0033】
逆浸透膜の性質として、除去すべき物質の初期濃度が高いほど除去の効率が低下する。逆浸透処理を行なうに従って浸透膜の上流側には不純物が濃縮して処理の続行が困難になるので、これを濃縮水として廃棄する必要がある。このためエンドトキシンの分量が10000単位/L程度である通常の水道水を原水として逆浸透処理したとき、透析水として得られるのは処理した水の10%程度である。一方、本発明においては逆浸透処理に供される被処理水のエンドトキシン含有量を電解処理により200単位/L以下まで低減するので濾過の効率を向上させることができる。その結果、逆浸透処理後の精製水のエンドトキシンの含有量を10単位/L以下にする場合においても、処理した水の50%以上が利用可能である。
【実施例1】
【0034】
水道水を原水として電解処理操作を行なったのち逆浸透処理を行なって精製水を製造した。電解処理操作はNaClが10mMの濃度になるようにNaCl溶液を注入して行なった。また比較のためNaClを添加しない水道水に対しても行なった。電解処理操作は図3および図4に示した電解装置を使用し、作用電極と対極との間隔を0.5mmとし、被処理水を1.5ml/minの流速で流して電圧を変更した条件で電解を行ない、エンドトキシンの含有量を測定した。各条件の試料は、被処理水を電解装置に5分以上通過させた後、電解装置から出た水をエンドトキシンの汚染の無い容器に採取した。なおエンドトキシン濃度の測定は和光純薬株式会社製のリムルス試薬を使用して行なった。
【0035】
電解電圧(Ag/AgCl基準電極に対して)と電解処理後に残存するエンドトキシンとの関係を表1に示す。なお水道水である原水のエンドトキシン含有量は12500単位/Lであった。また表1に示す電圧の範囲において水の電解は発生しなかった。表1で見るように電解電圧1.0Vではほとんどエンドトキシンの低下が無いが、1.3V以上になると急激に低下し、一方、電解電圧を1.9Vを超えて高くしてもエンドトキシンの低下が頭打ちになることが判る。またNaClを添加した場合には、添加しない場合に比べてエンドトキシンの低下効果が大きいことが判る。
【0036】
【表1】

【0037】
電解処理をした被処理水をイオン交換樹脂による脱イオン処理装置に通したのち、逆浸透処理を行なった。その結果、エンドトキシンを40単位/Lまで低下させた被処理水においては収率70%でエンドトキシンがゼロの精製水が得られた。またエンドトキシンを200単位/Lまで低下させた被処理水においては、エンドトキシンがゼロの精製水の収率は45%であった。
【実施例2】
【0038】
実施例1で使用した電解装置において、スペーサ11の厚みが異なるものを使用することにより作用電極11と対極13との電極間隔を変える実験を行なった。また参照電極30の先端位置はいずれの場合も対極の電極面と同じにしたので、参照電極と対極との間隔も作用電極と対極との間隔と同じになる。被処理水を1.5ml/minの流速で流しつつ各電極間隔で電解を行ない、エンドトキシンの含有量を測定した。電解装置の作用電極印加電圧はAg/AgCl基準電極に対してすべて1.9Vにしたが、水の電解は発生しなかった。使用した被処理水はNaClを10mMの濃度になるように添加したものであり、試料の採取方法や測定方法も実施例1と同様で、被処理水のエンドトキシン含有量は実施例1と同様に12500単位/Lである。
【0039】
作用電極と対極との間隔と、電解処理後に残存するエンドトキシンとの関係を表2に示す。表2で見るように電極の間隔が1.0mm以下の条件ではエンドトキシンが大きく低下しており、間隔が狭い方が低下が大きい。一方、2.0mmの場合にはエンドトキシンの低下が見られなかった。電極の間隔が1.0mm以下の条件では200μA前後の電解電流が観察されたが、2.0mmの場合には電解電流は測定感度ぎりぎりのわずかしか検出されなかった。
【0040】
【表2】

【符号の説明】
【0041】
1 原水槽
2 NaCl添加装置
3 電解処理装置
4 脱イオン処理装置
5 逆浸透処理装置
6 精製水槽
7 ポンプ
8 貯水槽
9 ポンプ
11 作用電極
12 スペーサ
121 穴
13 対極
14 空間
15、16 溶出液の導入口および排出口
17、18 流体継手
19 通電端子
20 通電板
21 通電端子
22 シールカバー
23、24、26 Oリング
27 絶縁カバー
30 参照電極
301 容器
302 電解液
303 電極材
304 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドトキシンが少ない精製水を原水から製造する方法において、少なくとも、前記原水に1mM以上50mM以下のNaClを添加する操作、含有するエンドトキシンを200単位/L以下にする電解処理操作、逆浸透膜による逆浸透処理操作の各操作を順次行なうものであって、前記電解処理操作は、ダイヤモンド薄膜を基板に生成させた作用電極と、作用電極と0.05ないし1.0mmの間隙を以って対向する対極とを有し、前記間隙を被処理水の流路とする電解装置により、水の電解が発生する電圧未満の電圧を前記作用電極と対極間に印加して電解を行なうものであることを特徴とするエンドトキシンが除去された精製水の製造方法。
【請求項2】
作用電極に印加する電解電圧は、Ag/AgCl基準電極に対して1.3〜2.2Vであることを特徴とする請求項1に記載のエンドトキシンが除去された精製水の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−183450(P2012−183450A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46440(P2011−46440)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(598165068)有限会社コメット (6)
【Fターム(参考)】