説明

エンドトキシン濃度の簡易測定器

【課題】 従来の高価なエンドトキシン濃度測定装置より機構が簡素化されており、ひいては低価格であり、また測定操作が非熟練者であっても簡単にでき、小型軽量で任意の測定場所に移動でき、簡単な操作で、クロスコンタミネーション(混合汚染)を起こすことなく、病院などで検体液のエンドトキシン濃度を現場でオンライン測定できるエンドトキシン濃度の簡易測定器の提供。
【解決手段】 検体採取口に穿刺して検体を採取する手段部分(a)、透過光通過部分(b)及び両者を結合する結合手段部分(c)からなるエンドトキシン濃度測定セル(A)、並びに該透過光通過部分(b)の所定位置に装着する透過光強度測定手段(B)を含むことを特徴とする検体中のエンドトキシン濃度の簡易測定器にて提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中のエンドトキシン濃度の簡易測定器に関し、更に詳しくは従来の高価なエンドトキシン濃度測定装置より機構が簡素化されており、ひいては低価格であり測定操作が非熟練者であっても簡単にでき、小型軽量で任意の測定場所に移動でき、簡単な操作で、クロスコンタミネーション(混合汚染)を起こすことなく、病院などで透析液などの検体中のエンドトキシン濃度を現場でオンライン測定もできるエンドトキシン濃度の簡易測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
エンドトキシンは、グラム陰性細菌の外膜に存在する耐熱性の毒素であり菌体内毒素と言われ、本体はリポ多糖であるとされている。
リポ多糖はリピドAとよばれる脂質と糖鎖からなるが、エンドトキシンとしての活性中心はリピドAにあり、分離したリピドAでほぼすべての活性が再現される。
【0003】
エンドトキシンは血液凝固の反応促進、血小板・白血球の減少、血圧の低下、ショックなど循環系への影響、発熱、サイトカインの誘導、免疫系への影響など多彩な生物活性を示す(竹沢真吾編、透析液エンドトキシンがよくわかる本、15〜24頁及び45〜51頁(1995)、東京医学社)。
エンドトキシンを一構成成分としているグラム陰性細菌は、空気中、水中あるいは食品中に存在し、菌体が機械的損傷を受けたり、死菌が溶解したりあるいは菌体が分裂したりする際にエンドトキシンが溶液中に放出され、溶液中に存在することとなる。
【0004】
したがって、エンドトキシンは、直接的または間接的に、注射液、輸液、透析液などの医薬品と、その中間製品、これらの原料の一部となる精製水中に混入したり、存在したりすると、上記した多彩な生物活性を示す弊害があるので、エンドトキシンの濃度を測定することは、医療に使用中、或いは医薬品として製造中または貯蔵中の注射液、輸液、透析液などの医薬品と、その中間製品、又はこれらの原料の一部となる精製水の品質管理に必要である。また、エンドトキシンの濃度を測定することは、生菌の増殖を早期に検出する手段としても有効である。現状ではエンドトキシン濃度をオンライン測定する装置は存在せず、検体液を採取してオフラインでエンドトキシン濃度を測定して、これらの品質管理に役立てている。
【0005】
エンドトキシンの濃度を定量測定する方法としては、唯一リムルス試験(Limulus test)がある。この方法は、カブトガニ(Limulus polyphemus)の血球中に存在する前凝固性酵素(Proclotting Enzyme)をエンドトキシンが活性化し、凝固酵素(Clotting Enzyme)とする反応を利用したものであり、カブトガニ血球抽出成分(Limulus amebocyte lysate)を試薬として使用する方法であり、ゲル化法と、高感度測定法として比濁法と比色法との三つの方法がある。
【0006】
比色法は、発色合成基質法とも呼ばれ、エンドトキシンとリムルス・アメボサイト・ライセート中のC因子系反応によって最終的に活性化された凝固酵素が、コアグロゲンをコアグリンに変換する際にコアグロゲンが加水分解を受ける部位のアミノ酸配列と類似の配列をもつ合成ペプチドに、発色基として例えばパラニトロアニリンを結合させた発色合成基質(Boc−Leu−Gly−Arg−pNAなど)を用い、活性化された凝固酵素のアミダーゼ活性によって遊離するパラニトロアニリンの吸光度を測定してエンドトキシン量を定量する方法である。
【0007】
比色法には、一定時間内に遊離するパラニトロアニリンの量が検体液中のエンドトキシン濃度に比例することに基づき、反応を所定時間で停止してパラニトロアニリンの吸光度を測定するエンドポイント法と、吸光度の経時変化率、又は、所定の吸光度に達する時間を測定するカイネティック法がある。
カイネティック法の内、前者は吸光度の経時変化率が検体液中のエンドトキシン濃度に比例することに基づくもので比色反応速度法、後者は、所定の吸光度に達する時間の対数が検体液中のエンドトキシン濃度の対数に逆比例することに基づくもので比色反応時間法と、それぞれ呼ばれている。カイネティック法が感度、精度ともに高く、エンドトキシン濃度の低い検体液に適した方法である。
【0008】
比濁法は、カブトガニ血球中に存在している凝固性蛋白(Coaggulogen)に前記凝固酵素が作用して、凝固蛋白(Coaggulin)にして、ゲルを形成する(エンドトキシン濃度が低い場合は全体をゲル化させるには至らないが)過程で発生する濁度変化を光学分析装置により測定する方法であり、これにもエンドポイント法とカイネティック法があり定量的な方法である。エンドポイント法は、一定時間内に到達する濁度(吸光度)がエンドトキシン濃度に比例することに基づく方法である。カイネティック法には、濁度(吸光度)の経時変化率がエンドトキシン濃度に比例することに基づく比濁反応速度法と濁度の変化率が予め設定した閾値に達する時間の対数がエンドトキシン濃度の対数に反比例することに基づく比濁反応時間法がある。カイネティック法が一般に用いられている(竹沢真吾編、透析液エンドトキシンがよくわかる本、36〜39頁(1995)、東京医学社)。
【0009】
上記のエンドトキシン濃度のいずれの測定方法においても、従来、下記の工程からなる測定方法が多く実施されている。
(1) 注射器の針の先端を検体採取口に穿刺して検体を注射器に採取するか、検体採取口の開閉弁を開いて初流を除いて検体を清潔な容器に採取する第1工程(病院など検体液のET濃度を知りたい需要者の現場に於て行われる。)
(2) 安定剤入り測定専用バイアル(ゴム栓付きガラス容器)に注射器から検体液を注入し振動して混合し、冷蔵保管する第2工程(需要者の現場に於て行われる。)
(3) 第2工程で準備された検体液入りバイアルを、多数の検体を同時に測定できるエンドトキシン濃度測定装置を設置し、エンドトキシン濃度測定熟練者がいる(エンドトキシン濃度測定を引受ける)施設(外注先と呼称することもある)に輸送し、冷蔵保管する第3工程(以下にて、第3工程以降を外注と呼称することもある。)
(4) 第3工程の後、需要者より輸送されてきた多数の検体夫々と標準エンドトキシン溶液から、所定量を夫々の検体受容部(例えば、一枚のプレートに設けられた多数の窪みなどの個々)にピペッタで注入する第4工程
(5) 第4工程で準備された夫々の検体が注入された検体受容部に所定量のリムルス試薬をピペッタで注入する第5工程
(6) 第5工程で準備された検体とリムルス試薬を振動混合した後一定の温度に静置して吸光度または濁度の経時変化を測定し、各検体のエンドトキシン濃度を得る第6工程
(7) 第6工程で得られた各検体のエンドトキシン濃度を病院などの需要者に報告する第7工程
【0010】
しかしながら、従来の上記の測定方法では下記の問題点がある。
(1) 注射器の針の先端を検体液採取口に穿刺して検体液を注射器に採取する第1工程と、安定剤入りバイアルに注射器から検体液を注入する第2工程、更に測定する窪みに注入する第4工程が別工程になっているので、作業が面倒で時間がかかる。
(2) 多数個(例えば、生化学工業株式会社製のウエルリーダーでは:96−2(標準エンドトキシン水溶液)=94個の検体を纏めて測定できるので、検体の採取から測定まで時間が経過し、エンドトキシン濃度を検体液採取と同時に測定する要請がある場合対応できない。
また、検体の経時変化により変質し、測定値が正しい値から乖離することがある。
【0011】
(3) 一度に多数の検体を測定する測定装置、例えば生化学工業株式会社製のウエルリーダーでは、検体を入れる窪み(ウエル)が密集・隣接した状態でプレートに並べられており、検体と標準エンドトキシン水溶液(濃度2水準)を定量ピペッタ(接液部はディスポーザブル)で、順次、個々の窪みに注入していく。
引き続き、リムルス試薬を接液部がディスポーザブル部品の定量ピペッタで、順次、個々の窪みに注入していく。この操作は、窪みに検体などの液を注入する際に目的の窪み以外の窪みに飛沫を入れることがあり、このような事故を避けるには手技の熟練を要する。事故に対する保険として、同一検体を2ヶ所の窪みに注入することがあるが、効率が悪くなり、コスト上昇の一因となる。
【0012】
(4) 従来のエンドトキシン濃度の測定装置は、高価であり、個々の病院等では、購入しても稼動率が低く、採算に合わないので、バイアルに検体を採取し、検査会社などに輸送し、エンドトキシン濃度の測定会社では、各病院などから集めたバイアルが纏まった段階で測定し、依頼病院に報告する。したがって、エンドトキシン濃度を検体液採取後、速やかに知ることはできなく、輸送、報告の費用も余分にかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の従来技術の問題点に鑑み、従来の高価なエンドトキシン濃度測定装置より機構が簡素化されており、ひいては低価格であり、また、検体採取とリムルス試薬との混合が簡単な操作で、或いは半自動的に行われ、測定操作が非熟練者であっても簡単にでき、小型軽量で任意の測定場所に移動でき、簡単な操作で、クロスコンタミネーション(混合汚染)を起こすことなく、病院などで透析液などの検体中のエンドトキシン濃度を現場でオフライン測定もオンライン測定も簡単にできるエンドトキシン濃度の簡易測定器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記の課題に鑑み、従来は検体を採取する注射器と検体を保管し、またはリムルス試薬と反応させて測定する容器が分離されていたものを一体化し、一体化したものに減容積、減圧、脱気膜の空気抜き窓、検体に溶解するシール体、検体で膨潤する塗膜、シールキャップ、初流トラップなどを選択して加え、更に、従来はリムルス試薬が粉末か液状であったものを錠剤または顆粒とするなどの工夫考案を加えることによって、従来は検体液は一旦採取した後人手で操作してエンドトキシン濃度測定手段に計量して移していたものを一体化したエンドトキシン濃度測定セルに直接自動的に採取できる機構とすると簡便且つ良好な結果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、エンドトキシン濃度測定セル(A)の内腔に流入する検体の流れをジェット流にすることができる手段(f)が設置されているエンドトキシン濃度の簡易測定器が提供される。
【0016】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記手段(f)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)の検体流路の一部に具えたオリフィスプレート(g)であることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器が提供される。
【0017】
また、本発明の第3の発明によれば、検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段部分(a)の内壁に、検体で膨潤する塗膜(i)が設置されていることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器が提供される。
【0018】
また、本発明の第4の発明によれば、検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、上記のエンドトキシン濃度測定セル(A)の検体を採取する手段部分(a)を検体採取口に穿刺した時に、その先端が検体流の中央部に出るように、該測定セル(A)の検体を採取する手段部分(a)と結合手段部分(c)の接合部付近に、穿刺の深さを確定するための手段(m)を設けたことを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器が提供される。
【0019】
また、本発明の第5の発明によれば、検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)の少なくとも一端に、検体が接触するまでシールすることが可能で、かつ、検体によって溶解するフィルムまたは栓からなるシール体(h)が設置されていることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器が提供される。
【0020】
また、本発明の第6の発明によれば、検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、エンドトキシン濃度測定セル(A)の透過光通過部分(b)又は結合部分(c)の壁面の一部に、疎水性の脱気膜からなる空気抜き窓(e)が設置されていることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器が提供される。
【0021】
また、本発明の第7の発明によれば、検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、エンドトキシン濃度測定セル(A)の透過光通過部分(b)の外部に、クリップで潰した状態のゴム弾性部分を持つ中空体(d)が設置され、その際、該中空体(d)の基部が透過光通過部分(b)または結合手段部分(c)の内腔と連通していることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエンドトキシン濃度の簡易測定器は、従来の高価なエンドトキシン濃度測定装置より機構が簡素化されており、延いては低価格であり、また測定操作が非熟練者であっても簡単にでき、小型軽量で任意の測定場所に移動でき、簡単な操作で、クロスコンタミネーション(混合汚染)を起こすことなく、病院などで検体液のエンドトキシン濃度を現場でオンライン測定もできる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のエンドトキシン濃度の簡易測定器について、各項目毎に詳細に説明する。
【0024】
1. エンドトキシン濃度の簡易測定器
本発明のエンドトキシン濃度の簡易測定器の基本構成は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段部分(a)、透過光通過部分(b)及び両者を結合する結合手段部分(c)からなるエンドトキシン濃度測定セル(A)、並びに該透過光通過部分(b)の所定位置に装着する透過光強度測定手段(B)からなり、その外観を図4に示した。
各構成要素を以下に説明する。
【0025】
1.1 エンドトキシン濃度測定セル(A)
エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段部分(a)、透過光通過部分(b)及び両者を結合する結合手段部分(c)からなり、その外観を図1に示した。
【0026】
1.1.1 検体採取口に穿刺して検体を採取する手段部分(a)
検体採取口に穿刺して検体を採取する手段部分(a)とは、図1の符号2で示してあり、注射針の形状と機能を有するものであれば、いかなる形状であっても良い。以下の説明では、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段部分(a)を、注射針と略称することもある。
注射針の材料としては、機械的強度が強靭で、腐食しなく、検体やリムルス試薬に悪影響をあたえる成分を含有しない金属やプラスチックであれば、いかなる材料であってもよいが、ステンレススチールが好ましい。
【0027】
注射針は、先端は、図5に示すように、サンプリングポートのゴム栓に突き刺し、貫通させるので、貫通し易いように削られていることが好ましい。注射針の長さは、検体採取口に穿刺した時に先端が検体採取口から検体の流れ中に所定範囲の距離出るように設定する。通常、15〜30mmの範囲が好ましい。
また、注射針の後端は、図1に示すように、結合手段部分(c)(符号3)の先端部3aに結合されており、結合の方法は、接着でも、市販の注射器のような嵌合でもよい。
【0028】
1.1.2 透過光通過部分(b)
本発明において透過光通過部分(b)とは、図1の符号4に示す部分であり、そこにおいて、検体とリムルス試薬が反応して混合液中に微粒子を発生させ、または発色基パラニトロアニリンを遊離させ、そこに発光ダイオードからの光をあて、該混合液による散乱または吸収を発生させる場所である。
透過光通過部分(b)の素材としては、光束を透過させる部分は透明性が要求されるので、透明度の高いプラスチックが好ましい。
【0029】
形状、容積固定の測定セルには、ポリメチルメタクリレート、ポリ4メチルペンテン1、ポリエチレンテレフタレート等の透明な硬質プラスチック、また、容積可変の測定セルには、透明度の高いグレードのポリプロピレン、ポリエチレン等の軟質プラスチックで作ることが好ましい。
透過光通過部分(b)の形状は、少量の検体とリムルス試薬の混合液量で光路長をできるだけ長くするため、細長い筒形にして、光束が入出射する両端面間の光路長を15mm以上にすることが、低濃度の検体でも30分で測定できるために好ましい。エンドトキシン濃度が低い検体を簡単な装置で短時間に測定するには、経時変化を測定する透過光強度の初期透過光強度に対する比の対数値が光路長に比例することを利用することが必須である。
【0030】
1.1.3 結合手段部分(c)
本発明において、結合手段部分(c)とは、図1の符号3に示す様に、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段部分(a)と透過光通過部分(b)とを結合する部分である。
この部分は、結合の役割だけでなく、後に詳述するように、透過光通過部分(b)の検体とリムルス試薬を揺すって混合する場合には、液が移動できる空間を提供し、また、初流を排除するトラップ手段を設ける場所ともなる。透過光通過部分(b)と一体に成形することができる。また、流入する検体のジェット流によって検体とリムルス試薬の混合が充分に行われ、更に揺すって混合する必要がなく、また、検体採取が良好で検体から初流を排除するトラップを設けることも必要ない場合は、検体を採取する手段部分(a)との接合部として透過光通過部分(b)からの突起にすることもできる。
【0031】
1.2 透過光強度測定手段(B)
本発明において、透過光強度測定手段(B)とは、図2に示すように、電源部6、発光ダイオード(LED)7、集光レンズ9、フォトトランジスター(PT)10、演算・表示部13からなる。
図3に示すように、集光レンズ9からの光線9をエンドトキシン濃度測定セル14の透過光通過部分(b)の片方の端部から入射し、採取した検体とリムルス試薬の混合により生じた混合液を透過させ、透過光を他方の端部から出射させ、フォトトランジスター(PT)10で透過光を電気信号に変換し、その強度の経時変化を予め標準エンドトキシンで測定した変化量と演算・表示部13で比較演算してエンドトキシン濃度を表示する。集光レンズで入射面に集めた光線を更にコリメートレンズで並行光線にすることは好ましいが、並行光線から外れる角度が(90−全反射角[°])より小さい光線は測定セルの側面で全反射されて、図2に示すように全光路長透過するので、装置の簡素化を優先させる方がより好ましい。
透過光強度測定手段(B)の光源が発光ダイオードであり、光検出器がフォトトランジスターであり、測定セル(A)の位置を定めて固定し、測定セル(A)に面した部分を艶消しの黒色にして微粒子による散乱光が側面で反射して測定セルに再入射しないようにしたものが好ましい。また、光束が測定セルに入射する面積を一定にする窓(n)を具えて、測定セルに入射する光量が常に一定であるようにしたものが好ましい。
【0032】
1.3 エンドトキシン濃度の簡易測定器の選択部分
本発明のエンドトキシン濃度の簡易測定器の基本構成は上記した如くであるが、課題を解決するための要件として下記のように、複数の方法から選択して構成要素(部分、手段や部品等)を追加して採用する。
【0033】
1.3.1 内腔容積の減少
本発明のエンドトキシン濃度測定セル(A)の、透過光通過部分(b)及び結合手段部分(c)の内容積を測定時の内容積から所定値に減少させた状態にして、後述する検体に容易に溶解するシール体(1.3.6)、逆止弁(1.3.8)、またはシールキャップ(1.3.9)の何れかを採用することで注射針の先端から空気が入らないように封印して、使用前における弾性回復による内容積の戻りを防止することができる。
透過光通過部分(b)及び結合手段部分(c)の内腔の容積を所定値に減少させるには、透過光通過部分(b)及び結合手段部分(c)の素材を、例えば、透明度の高いグレードのポリプロピレンやポリエチレンの様な可撓性フィルムとすれば、この部分を押しつぶし扁平状態にして内容積を減少させることができる。
【0034】
内腔容積を減少した状態に封印しておくと、注射針の先端が検体採取口のゴム栓を穿刺した時、または突き抜けて検体と接触した時に封印が破れて検体が測定セルに自動的に流入する。即ち、検体流の圧力(ゲージ圧)と押しつぶされた扁平状態からの弾性復元力により、減少させてあった所定の内容積に略等しい量の検体を自動的に内腔に充填することが可能となる効果がある。すなわち、オペレーターは、熟練者でなくともよく、この作業工程は測定セルの注射針を検体採取口に穿刺するだけでできるのでコストダウンが計れる。
【0035】
1.3.2 内腔圧力の減圧
0.3MPa以内の差圧では変形しないエンドトキシン濃度測定セル(A)の、透過光通過部分(b)及び結合手段部分(c)からなる内腔の圧力を予め所定の圧力に減圧し、後述する検体に容易に溶解するシール体(1.3.6)、逆止弁(1.3.8)、またはシールキャップ(1.3.9)の何れかで注射針の先端から空気が入らないように封印して注射針の先端が検体採取口のゴム栓を穿刺した時、または突き抜けて検体と接触するまでは所定の減圧状態を維持することによって、検体の流入により内圧の上昇して検体流の圧力に等しくなって流入が停止するまで検体が自動的に流入する。
【0036】
1.3.3 中空体(d)
エンドトキシン濃度測定セル(A)の、透過光通過部分(b)及び結合手段部分(c)からなる部分を可撓性プラスチックで形成し、変形させて内腔の容積を測定時の内容積から所定値に減少させた状態にしておく代わりに、ゴム弾性中空体の内容積を予め減少させたものを結合手段部分(c)連結して置く。注射針の先端が検体採取口のゴム栓を突き抜けて検体と接触した段階で、ゴム弾性中空体の内容積を強制的に減少させていた部品、例えばクリップを外すことによって、検体が流入する容積と減圧を発生させる。
図8(A)、(B)に示す様に、クリップ24で潰した状態のゴム弾性中空体(d)25を、エンドトキシン濃度測定セル(A)の透過光通過部分(b)22の外部に具え、かつ、該中空体(d)25の基部は、例えば、エンドトキシン濃度測定セル(A)の透過光通過部分(b)22または結合手段部分(c)3の内腔と連通する突起部に締め付けるように嵌合させる。
【0037】
図8(C)に示すように、クリップ24を除去した状態では、ゴム弾性部分を持つ中空体(d)25は、ゴム弾性によって原形26に復元しようとして内腔は減圧状態となり、検体流との圧力差と協働して、検体を自動的に流入させ、測定セルの内圧と等しくなると自動的に停止する。すなわち、オペレーターは、熟練者でなくともよく、この作業工程は自動化できるのでコストダウンが計れる。
【0038】
1.3.4 空気抜き窓(e)
図5に示す様に、エンドトキシン濃度測定セル(A)の透過光通過部分(b)又は結合手段部分(c)の壁面の一部に疎水性の脱気膜からなる空気抜き窓(e)20又は21を具える。
疎水性の脱気膜としては、ポリプロピレン、フッ素樹脂などの疎水性が高く、孔径がサブミクロン以下の多孔質膜(小孔径のMF膜)を使用する。これらの脱気膜は、ポリプロピレンや高密度ポリエチレン等の結晶性プラスチックのフィルムを1軸または2軸に5〜10倍に延伸して製造した微細孔フィルムが好ましい。ポリオレフィン、弗素樹脂などの溶液から相分離させせるかまたは共存物を除去することによって製造した微細孔フィルムでも良いが、強度が劣る。前者の例としてセルガード(登録商標)(ヘキスト社製)が挙げられる。
【0039】
エンドトキシン濃度測定セル(A)の内腔(透過光通過部分(b)4及び結合手段部分(c))に、内容積を変えないで検体を導入するには、内腔の空気を系外に排除しなければならない。
その手段として疎水性の脱気膜を具えれば、そこから空気は外部に押し出され、排除された空間に検体が入っていくことができる。
脱気膜は、疎水性であるから、検体がその表面に接触しても、0.3MPa以下の圧力では、そこから外部に漏れていくことはない。検体が微細孔の入口を覆うことによって空気も通れなくなり、内腔の空気が逃げ口を失って、検体の流入が自動的に停止する。
【0040】
1.3.5 検体の流れをジェット流にすることができる手段(f)
エンドトキシン濃度測定セル(A)の内腔に流入する検体の流れをジェット流にすることができる手段(f)を具える。
その手段(f)の具体例としては、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段部分(a)の検体流路の一部に、オリフィスプレート(g)を設ける。
オリフィスプレートの中心に開いている穴の径を、オリフィスプレートの径の1/10〜1/15にしておけば、穴の面積に略逆比例してオリフィスプレート(g)を出ていく検体流は流速を増し、ジェット流とすることができる。
【0041】
エンドトキシン濃度測定セル(A)の内腔に流入する検体の流れをジェット流にすれば、内腔に予め収納されているリムルス試薬と激しく衝突し、混合が速く行われ、揺する必要もなく、延いてはいてはいては検体とリムルス試薬との反応が速くなり、エンドトキシン濃度の測定時間が短縮される利点がある。
特に、リムルス試薬が錠剤または大粒の顆粒の形状の場合は、効果が大である。
【0042】
1.3.6 注射針の一端に検体に溶解するシール体(h)
注射針の少なくとも一端に、検体が接触するまでシールすることが可能なフィルムまたは栓からなるシール体(h)を設ける。
シール体(h)の素材としては、デンプン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性ポリマーが挙げられる。
【0043】
注射針の入口または出口に、検体によって溶解するフィルムまたは栓からなるシール体(h)を設けておけば、検体に接触しない場合(使用前)は予め減少させた測定セルの容積や圧力を復元しようとして外気が流入することを阻止できる。また、リムルス試薬が測定セルから外部に漏れることを防止し、外気と遮断することでリムルス試薬の劣化や変質を防止する。 検体が注射針の内部を通過する場合は、速やかに溶解し、検体を測定セル(A)の内腔に導入することができる。
【0044】
1.3.7 注射針の内壁に、水で膨潤する塗膜(i)
注射針の内壁に、水で膨潤する塗膜(i)を設ける。
水で膨潤する塗膜(i)は、ポリメタクリル酸2ヒドロキシエチル(HEMA)、ポリアクリル酸ナトリウム−澱粉グラフト共重合物などの高度に吸水膨潤するポリマーを塗布することによって形成される。塗膜は架橋構造になっていることが好ましい。
【0045】
検体が注射針の内部を通過しエンドトキシン濃度測定セル(A)の内腔に所定量が充填された後も検体流と測定セルの内腔が連通した状態のままであると、逆流して注射針から外部に流出して、或いは、拡散によって混合液中のリムルス試薬が検体流を汚染する。また、逆流量が多い場合は、エンドトキシン濃度の正確な量を測定することは出来ない。注射針の内壁に、水で膨潤する塗膜(i)を形成させておけば、検体が注射針の内部を通過しエンドトキシン濃度測定セル(A)の内腔に所定量が充填された後は、検体中の水分によって塗膜(i)は膨潤し、注射針の内部を塞ぎ、逆汚染と測定値の誤りを自動的に阻止し、操作が簡単な測定セルを検体採取口に穿刺したままでのオンライン測定における安全性と信頼性の確保ができ、延いてはコストが削減できる。
【0046】
1.3.8 逆止弁(j)
図10に示すように、注射針と、結合手段部分(c)との境界付近に、低差圧で作動する逆止弁(j)を具える。
逆止弁(j)は、注射針外部と測定セル内腔の差圧が設定圧(検体流の最低圧の約50〜70%)よりも低いとき(使用前)は、図10(B)に示すように、弁28の裏にあるコイルばね29で弁28が注射針出口または接合部(5)に押し上げ付けられ、注射針の下方出口を塞いだ状態にある。
注射針の先端が検体流に入ったとき、その圧力(設定圧の1.4〜2倍以上の圧力)で逆止弁(j)の弁28は、図10(A)に示す様に押し戻され、検体は測定セルの内腔に入って行く。
【0047】
所定量の検体が測定セルの内腔に入り、差圧が設定値以下になると、コイルばね29の復元力で弁28は再び注射針出口または接合部(5)に押付けられて(図10(B)の状態に戻り、)検体の流入は自動的に停止する。
逆止弁(j)を設けることにより、使用前及び検体採取後は、測定セル(A)の内腔と外部を遮断して、使用前においては測定セルの予め設定した減容または減圧を保持する効果と、リムルス試薬の外部への漏出と品質劣化の防止の効果があり、検体採取後は、測定セルの内腔に存在する混合液による検体流への逆汚染と測定値の誤りを防止する効果がある。
【0048】
1.3.9 注射針の先端にシールキャップ(k)
検体が注射針の内部を通過しエンドトキシン濃度測定セル(A)の内腔に所定量が充填されるまでは、測定セル(A)の内腔には、エンドトキシン濃度の正確な測定値を得られなくするような、ゴミや反応阻害物質は入ってはならない。
測定セルの外部との開通部は注射針にシールキャップ(k)を嵌めて、外部との連通を閉ざすと共に、注射針の鋭利な先端を覆って不測の事故を防止する。
シールキャップ(k)は、2種類に分かれる。まず、測定セルが予め内容積を減じたゴム弾性中空体を具えたものと、疎水性の脱気膜を具えたものは、測定セルの内腔と注射針の外部との間に圧力差がないので、穿刺する前に手でキャップを外して使用することができ、市販の注射針用キャップのようなものを使用できる。なお、注射針の入口先端または出口後端に、検体によって溶解するフィルムまたは栓からなるシール体(h)を設けておけば、検体に接触しない場合(使用前)はリムルス試薬が測定セルの外に出て減ることを阻止できる。
他方、測定セルの内容積または内圧を減少させてある測定セルは注射針の先端が検体採取口のゴム栓に刺さるまでは気密を保つことが必要なため、注射針の先端に、図9に示す様にシールキャップ(k)27を設ける。
シールキャップ(k)の素材は検体採取時に注射針の先端で容易に貫通できる程度の強度でであることと、注射針に密着して気密を保持し、且つ、外気圧に押されてずれて行かないことが要求されるので、ゴムまたはポリオレフィンなどの軟質プラスチックが好ましく、後者は熱収縮させて注射針に密着させる。
【0049】
1.3.10 初流をトラップする手段(l)
図11に示す様に、トラップ手段(l)を設ける。
トラップ手段とは、結合手段部分(c)に流入する検体の初流を取り込んで、採種した検体から排除する手段である。初流を排除する理由は、下記の理由による。
採取口の壁面や接合部付近で停滞流がないことを常に確認することはできないため、検体採取の手順として、初流(最初に採取した検体)は棄てて検体として採用しないことがより確実な方法として望ましい。
【0050】
本発明では、注射器を穿刺し直して新しい検体を採取することは採用できない。一回の穿刺で採取する検体から初流部分を取り除いて一定量流入後の検体を測定セルの測定部に導入することが望ましいので、検体の流入経路に初流を取り込むトラップを設ける。
トラップ手段(l)の取りつけ方としては、図11(A)に示す様に、エンドトキシン濃度測定セル(A)の結合手段部分(c)を傾斜導管にし、その一部に初流を貯留するトラップ容器31の入口を設ける場合と、図11(B)に示す様に、エンドトキシン濃度測定セル(A)の結合手段部分(c)の測定部分(b)の入口付近に障壁を設け、その手前に初流を貯留するトラップ容器の入口を設ける場合とがある。どちらも、初流を採取したトラップ容器31が検体で充たされた後の検体が測定部分(b)に流入する。検体を採取後にトラップ容器31の連結部32をクリップで挟み、初流と測定に使用する検体が混合しないようにする。
【0051】
1.3.11 穿刺の深さを固定する手段(m)
図5に示す様に、穿刺深さを決める手段(m)を、例えば、注射針の根元か結合手段部分(c)の先端に、所定の深さ穿刺すると検体採取口のゴム栓に突当ってそれ以上注射針が進入することに抵抗する鍔などのストッパーを付ける。
検体を採取するときは、図6に示すように、注射針の先端を、検体流路に設けた検体採取口のゴム栓に穿刺して検体流に入れ、ここで検体を注射針に取り入れ、さらに測定セルの内腔へと導入する。
検体採取口は、停滞流がない構造であることが条件であるが、その壁面や接合部付近ではこの条件が常に充たされていることを常に確認することはできない。本発明は仮に停滞流があっても、誰が穿刺しても、検体の代表的な流動部分を確実に採取しなければならない。
そのためには、注射針(a)の先端が検体の流れの略中央で停止するように穿刺の深さを確定する手段が必要である。その手段として、注射針(a)と測定セル(A)の結合手段部分(c)の接合部付近に、所定の深さ穿刺すると検体採取口のゴム栓に突当ってそれ以上の進入に抵抗する鍔などのストッパーを設けて、注射針(a)の先端が検体採取口から検体流路の直径の約1/2突き出して検体流の中央に出たことが判明し、且つ、それ以上は進入しないようにする。これによって、検体採取口の内面付近に停滞流があっても、誰が穿刺しても、一回の穿刺で検体流の中央部分を確実に採取することが可能になり、安定した採取と測定ができる効果がある。
【0052】
1.3.12 粉末、錠剤、顆粒の形状のリムルス試薬
本発明においては、リムルス試薬が、検体に容易に溶解する材料で一体に包れているか、またはカプセルに収納されている粉末の形状で、または錠剤若しくは大粒の顆粒の形状で、エンドトキシン濃度測定セル(A)の透過光通過部分(b)の内腔に予め収納されていることが、リムルス試薬を検体と混合するまで透過光通過部分(b)に保持する上で望ましい。リムルス試薬が裸の粉末状のままであれば、測定セルの容積または圧力を所定値まで減少させる時に排出される空気の流れによってその一部が流失して、所定量全量を測定セルに保持することができなくなる。また、所定量全量が保持されたとしても、使用するまでの間にリムルス試薬の一部が結合手段部分(c)に移動した場合、検体採取後短時間内に結合手段部分(c)の混合液を透過光通過部分(b)に移動させるのでリムルス試薬の一部が未溶解のまま(c)に残留する可能性があり、誤った測定値を得ることになる。
このように、リムルス試薬を透過光通過部分(b)から出て行かないようにすることは、(a)を穿刺するだけで検体を自動的に採取する手段として、測定セルの内容積や内圧を予め減少させる場合に、測定セルから出て行く空気の流れに乗ってリムルス試薬の一部が失われることを防止する効果がある。
なお、粉末状のリムルス試薬は市販されておりオブラート等の検体に容易に溶解する材料で包むことができる。錠剤または顆粒の形状のリムルス試薬は、粉末状のリムルス試薬をデンプン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等の検体に容易に溶解するバインダーで固め、錠剤製造器または顆粒製造装置を用いて造ることができる。
【0053】
2. エンドトキシンを含む検体
本発明においてエンドトキシンを含む検体とは、注射液、輸液、透析液などの医薬品と、その中間製品、又はこれらの原料の一部となる精製水などであり、検体は貯糟、タンク、ガラス瓶、プラスチック容器、プラスチックバッグ等の貯蔵手段に貯蔵されており、或は連続的に輸送されており、検体を本来の目的で使用するときは、貯蔵手段又は輸送手段の一部を出発点とするパイプ、管、ホース等の輸送手段で検体が使用される使用場所や使用機器に送られる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
エンドトキシン濃度の簡易測定器を、下記のように、部品を製作又は購入し、それらを組合せて完成した。
まず、注射針(23ゲージ)、ポリメタクリレート製のパイプ(外径10mm、内径5mm)とシート(厚さ2mm)から、アクリル接着剤と室温硬化型シリコン樹脂接着剤でこれらを接合し、図1に示す様な、エンドトキシン濃度測定セルを作製した。
脱気膜の窓は、結合部分(c)になるパイプに直径2mmの孔を穿ち、その上に直径6mmの円形に切り出したセルガード脱気膜を同心円になるように置き、直径3mmの孔を中央に穿った10mmx12mm角のシートを加熱してパイプに密着するように曲げたものを重ね、パイプとシートを接着して脱気膜の窓を作成した。
リムルス試薬は、円筒の端部に円板を接合する前に粉末のリムルス試薬(シングルテストワコーの2検体分)をパイプ内に入れた。
発光ダイオード(LED)とその電源部、集光レンズ、フォトトランジスター(PT)、演算・表示部を購入し、これらを電線で図2に示すように繋ぎ、各パーツを架台の所定位置に配置し、ケーシングを被せ透過光強度測定手段を作製した。なお、上記の架台及びケーシングは、外部の明かりを遮蔽するとともに、エンドトキシン濃度測定セルを所定位置に配置、固定し、保護するために兼用して使用される部分も含む。
ついで、エンドトキシン濃度測定セルを架台の所定の位置に配置、固定し、図3に示すエンドトキシン濃度の簡易測定器を作製した。
【0056】
[参考例1]
実施例1で作成したエンドトキシン濃度の簡易測定器を使用して検体のエンドトキシン濃度の測定を下記の方法で行った。
まず、検体採取口に相当するものとして、広口下口壜のコックを外してゴム栓を取り付けて、検体採取口に相当する容器を用意して、エンドトキシンフリーの精製水で洗浄した。
つぎに、標準検体に相当するものとして、透析液原液をエンドトキシンフリーの精製水で35倍に希釈した透析液に標準エンドトキシンを添加して混合した試験液各1Lを作成した。濃度は、10EU/L、30EU/Lと100EU/Lの3水準にした。
図5(C)に示すように、エンドトキシン濃度測定セルの注射針で下口壜のゴム栓を貫通させた。試験液が測定セルの結合手段部分(c)と透過光通過部分(b)の内腔に導入され(b)の液面が(c)の上面に設置された脱気膜より僅かに高い位置になって流入が停止した。注射針を抜いて注射針が上になる姿勢にして(c)の試験液を(b)に落とし、測定セルを揺すって粉末のリムルス試薬を溶解し、透過光強度測定手段にセットして透過光強度の経時変化を測定して検量線を作成した。
つぎに、上記試験液を適当に混合して検体に相当する試験液を作成し、同様の手順で透過光強度の経時変化を測定してエンドトキシン濃度を測定した。試験液の一部を市販のエンドトキシン濃度測定器で測定して比較したところ、±10%の範囲で一致した値が得られた。
以上の結果から、上記の簡単な操作で、短時間に測定結果が得られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】エンドトキシン濃度測定セル。図(A)は正面図、図(B)は側面図。
【図2】透過光強度測定手段。
【図3】エンドトキシン濃度の簡易測定器の内部構造を示す図。
【図4】エンドトキシン濃度の簡易測定器の外観断面図。
【図5】検体採取口に穿刺して検体を採取するときの姿勢を示す図。図(A)及び図(B)はストッパーが無く、穿刺が浅い状態の図、図(C)は、ストッパーがゴムに当たって常に一定の穿刺の深さが確保されている場合の図。
【図6】エンドトキシン濃度測定セルの注射針の先端を検体流路に設けた検体採取口に穿刺して横向きで検体を採取している図。
【図7】エンドトキシン濃度測定セルを穿刺した検体採取口を回転させて下向きにし、透過光強度測定手段を取り付けてオンラインで透過光強度を測定している図。図(A)は正面図、図(B)は側面図。
【図8】ゴム弾性部分を持つ中空体。図(A)は使用前の押し潰された状態の中空体の正面図、図(B)は側面図。図(C)は、検体採取中の膨張中の中空体の正面図。
【図9】シールキャップと注射針との関係を示す図。図(A)はシールキャップが注射針の先端に装着されている図、図(B)はシールキャップがサンプリングポートのゴム栓に押付けられて移動し、注射針が穿孔して開通している図。
【図10】逆止弁付き測定セル。図(A)は検体採取口に穿刺して検体を採取している状態の正面図(弁は開放状態)、図(B)は使用前、または検体採取完了時の側面図(弁は逆止状態)。
【図11】初流を排除するトラップ手段。図(A)は結合手段部(c)が傾斜導管となっている場合、図(B)は結合手段部(c)が非傾斜導管となっていて、透過光通過部(b)との境界に障壁がある場合。
【符号の説明】
【0058】
1 エンドトキシン濃度測定セル
2 検体を採取する手段部分
2a 検体を採取する手段部分の先端(入口)
2b 検体を採取する手段部分の後端(出口)
3 結合手段部分
3a 結合手段部分の先端部
3b 結合手段部分の後端部
4 透過光通過部分
4a 透過光通過部分の光入口
4b 透過光通過部分の光出口
5 検体を採取する手段部分の接合固定部
6 電源部
7 発光ダイオード(LED)
8 集光レンズ
9 光線
10 フォトトランジスター(PT)
11 電気信号
12 電流
13 演算・表示部
14 エンドトキシン濃度測定セル部分
15 エンドトキシン濃度測定セル部分のガイド兼固定具
16 透過光強度測定手段のケーシング
17 サンプリングポートのゴム栓
18 液面
19 空気
20 脱気膜(位置A)
21 脱気膜(位置B)
22 検体とリムルス試薬の混合液
23 検体流
24 クリップ
25 クリップで潰した状態のゴム弾性中空体部分
26 膨張させた状態のゴム弾性中空体部分
27 シールキャップ
28 弁(弾性体)
29 コイルばね
30 傾斜導管
31 トラップ容器
32 初流検体を採取後にクリップする場所を示す線
33 穿刺の深さを固定する手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、エンドトキシン濃度測定セル(A)の内腔に流入する検体の流れをジェット流にすることができる手段(f)が設置されているエンドトキシン濃度の簡易測定器。
【請求項2】
前記手段(f)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)の検体流路の一部に具えたオリフィスプレート(g)であることを特徴とする請求項1に記載のエンドトキシン濃度の簡易測定器。
【請求項3】
検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段部分(a)の内壁に、検体で膨潤する塗膜(i)が設置されていることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器。
【請求項4】
検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、上記のエンドトキシン濃度測定セル(A)の検体を採取する手段部分(a)を検体採取口に穿刺した時に、その先端が検体流の中央部に出るように、該測定セル(A)の検体を採取する手段部分(a)と結合手段部分(c)の接合部付近に、穿刺の深さを確定するための手段(m)を設けたことを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器。
【請求項5】
検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)の少なくとも一端に、検体が接触するまでシールすることが可能で、かつ、検体によって溶解するフィルムまたは栓からなるシール体(h)が設置されていることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器。
【請求項6】
検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、エンドトキシン濃度測定セル(A)の透過光通過部分(b)又は結合部分(c)の壁面の一部に、疎水性の脱気膜からなる空気抜き窓(e)が設置されていることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器。
【請求項7】
検体とリムルス試薬を混合させた混合液の透過光強度の経時変化を測定して得られる所定時間における変化量から検体のエンドトキシン濃度を測定するための簡易測定器であって、
該簡易測定器は、エンドトキシン濃度測定セル(A)および透過光強度測定手段(B)を含み、
その際、エンドトキシン濃度測定セル(A)は、検体採取口に穿刺して検体を採取する手段を有する部分(a)と、透過光通過部分(b)と、両者を結合する結合部分(c)とから構成されるとともに、透過光強度測定手段(B)とは、透過光通過部分(b)の所定位置で装着されることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器であって、
更に、エンドトキシン濃度測定セル(A)の透過光通過部分(b)の外部に、クリップで潰した状態のゴム弾性部分を持つ中空体(d)が設置され、その際、該中空体(d)の基部が透過光通過部分(b)または結合手段部分(c)の内腔と連通していることを特徴とするエンドトキシン濃度の簡易測定器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−275638(P2008−275638A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162656(P2008−162656)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【分割の表示】特願2002−258939(P2002−258939)の分割
【原出願日】平成14年9月4日(2002.9.4)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【出願人】(502218570)株式会社メディカルシード (5)
【Fターム(参考)】