説明

エンドミルとそれを用いた加工方法

【課題】同一形状の半環状部材を対向させて環状に形成する環状部材の継ぎ合せ面の傾斜面を加工する際に、傘状エンドミルを使用して、勾配が逆な傾斜面を傘状エンドミルの移動のみで加工できるようにして、半環状部材の置換え毎に半環状部材と傘状エンドミルとの芯合せ作業を半減させて加工工数の低減する加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】同一形状の半環状タービン静翼1の一端に環状の軸線方向に沿って延在する第一C傾斜面113を有した第一継ぎ合せ面11と、他端に前記第一継ぎ合せ面11形状に倣う形状に形成された第二C傾斜面123とを有し、夫々の傾斜面11,12と同じ傾斜を有する傾斜部41にラフィングチップ5装着された傘状エンドミル4を定盤2に沿って移動させることで、第一C傾斜面113と、第二C傾斜面123とを切削加工可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半環状部材を対向させて、環状に継ぎ合せる合せ面を加工するエンドミルとそれを用いて加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直径の大きいタービンの静翼を製造する場合、半割りの同一形状の部品を製造して、それを対向させて環状に継ぎ合せる構造としている。
従って、半割り形状のタービン静翼を継ぎ合せる継ぎ合せ面は、組立時における合せ面のずれを防止するために、立体形状の合せ面にの凹凸が倣うような形状にする場合が多い。
【0003】
半環状部材の一端は半環状部材を組合せて環状にしたときの軸線を含む面に沿って形成された第一A面と、該A面に連続して軸線方向に沿って延在する第一傾斜面と、該第一傾斜面に連続して第一A面と平行に配置された第一B面とを有する第一接合面が形成されている。
一方、他端には第一接合面を倣うように当接する面が形成されている。
即ち、他端の第二接合面には、第一A面と当接する第二A面と、第一傾斜面に添った面の第二傾斜面及び第一B面と当接する第二B面とを有している。
第一A面と第二A面及び、第一B面と第二B面とが夫々凹凸の関係にある。
その結果、半割り状の同一形状の部品2個を対向させて、環状に継ぎ合せることが可能となる。
【0004】
ところが、第一傾斜面と第二傾斜面は傾斜の方向が異なっているため、図5に示すように、半環状部材01の接合面の加工は、基準加工面として、一端の第一A面011及び第一B面012と、第一A面011及び第一B面012を水平状に連続する水平部014(2点鎖線部)からなる鉤状に形成される。次の工程で、他端の第二A面、第二B面及び、第二A面と第二B面とを接続する水平部が形成される。(図示省略)
その後、エンドミル02によって水平部014を切削して第一傾斜面013が階段状に加工される。
ところが、エンドミルで第一傾斜面013の切削加工が完了すると、定盤上の半環状部材を反転する必要があり、半環状部材を反転後にエンドミルと半環状部材との芯合せを行い、固定する必要がある。
この反転作業は、第二A面と第二B面を接続する水平部(下向き面)に形成される第二傾斜面が下向き傾斜状態の切削加工となるため、加工精度が確保し難いためである。
特に、発電用等に使用される大型の静翼タービンの場合には、クレーン等を使用して2人がかりでセットしなければならず、その作業に多大な工数を必要とし、コストが高くなる要因となっていた。
【0005】
傾斜面を切削する特許文献1として、特開2004−34170号公報が知られている。図6に示すように特許文献1によると、案内ローラ070の周面070aとエンドミル010の刃部010aとでシート材020を挟み込み、エンドミル010の軸線を案内ローラ070の回転軸線Lに対し所定角度α分傾斜させて、案内ローラ070及びエンドミル010を所定の速度で回転させ傾斜面加工を行う技術が開示されている。
この場合でも、案内ローラ070の回転軸線Lに対し、エンドミル010の傾斜角度αを変更する場合は、傾斜角度αの調整と共に、傾斜角度αの変更に伴いエンドミル010とシート材020との相対位置関係がずれ、シート材020の切削加工範囲がずれるので、エンドミル010の軸線方向位置の修正も必要となり、調整作業に多数の工数を要する。
【0006】
また、エンドミル構造が特許文献2として、特開平7−195221号公報に開示されている。図7に示すように、工具本体080の外周部に複数の波形状の切れ刃081またはニックを有した切れ刃を設け、先端部にボール状のボール刃082を有したラフィングボールエンドミルが開示されている。
この場合、切れ刃が摩耗すると、工具全体080を交換する必要があり、材料価格の高価な高速度刃物鋼(俗称;ハイス)の無駄が大きくコスト的にも不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−34170号公報
【特許文献2】特開平7−195221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、同一形状の半環状部材を対向させて、環状に形成する環状部材の継ぎ合せ面の傾斜面を加工する際に、傘状エンドミルを使用して、勾配が逆の傾斜面を傘状エンドミルの移動のみで加工できるようにすることにより、半環状部材の反転毎に行う半環状部材と傘状エンドミルとの芯合せ作業を低減させて、加工工数の低減、継ぎ合せ面の加工精度向上を図った半環状部材の継ぎ合せ面を加工するエンドミルとそれを用いて加工する加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、同一形状の半環状部材を対向させて、環状に継ぎ合せる合せ面形状を有する前記半環状部材は、一端に前記環状の軸線方向に延在する第一傾斜面を有した第一継ぎ合せ面と、他端に前記第一継ぎ合せ面形状に倣う形状に形成され前記第一傾斜面と対向する形状を有する第二傾斜面とを有する第二継ぎ合せ面を有し、前記第一傾斜面と前記第二傾斜面の半環状部材の継ぎ合せ面加工方法において、
前記半環状部材を定盤上に固定して、前記半環状部材と、前記第一及び第二傾斜面と同じ傾斜を有する傾斜部に複数のラフィングチップが装着されている傘状エンドミルとの芯合せを行った後、前記傘状エンドミルにて前記第一傾斜面を形成する第一工程と、
前記傘状エンドミルを前記定盤に沿って前記他端に移動させ、前記傘状エンドミルにて前記第二継ぎ合せ面の前記第二傾斜面を形成する第二工程とを含む半環状部材の継ぎ合せ面の加工方法。
【0010】
かかる発明において、半環状部材の両端の形状が環状部材の軸線方向において対称形状となり、半環状部材両端の傾斜面切削を、傘状エンドミルを定盤に沿って、移動させることにより、傾斜面への切削押圧力方向が変わるだけで、半環状部材両端の傾斜面切削を行うことができるので、半環状部材を定盤上にてセットし直し(反転)、半環状部材とエンドミルとの芯合せ等の面倒な作業が低減でき、加工に要するコストが大幅に低減できる。
【0011】
また、本願発明において好ましくは、前記傘状エンドミルの先端部に装着されるラフィングチップは刃先の先端部にラフィング状のR形状刃部が形成されているとよい。
【0012】
このような構成にすることにより、傾斜面に接続する面と傾斜面との角部のR加工及び、傾斜面の切削加工とが同時にできるので、加工工数が減少し、コスト低減が可能となる。
【0013】
また、本願発明において好ましくは、前記傘状エンドミルは、前記傘状エンドミルの傾斜部に装着される前記ラフィング状の複数のチップが傘状円周上の回転方向前後位置で、前側の前記ラフィングチップの波形状位置と、後側の前記ラフィングチップの波形状位置とが前記傾斜部の傾斜に沿ってずらして装着されるとよい。
【0014】
このような構成にすることにより、円周方向ラフィング状の切削残りの部分を、傘状の円周方向で回転方向後方に装着され、且つ傾斜部の傾斜に沿ってずらして装着されたラフィングチップがワークを切削するので、ずらした量によって傾斜部の表面粗さが調整でき、ずらし量を少なくすれば微細の加工面となり、仕様要求の荒さ程度によっては仕上げ工程が省略できる。
更に、緻密な仕上げ面が必要な場合は、仕上げ工程のハイスによる作業時間が短縮され、ハイスの摩耗量も減少して、ハイスの交換時期が延長でき工数低減によるコスト低減が可能となる。
【0015】
本発明において、前記第一傾斜面を、前記第一及び第二傾斜面と同じ傾斜を有する傾斜部に切削仕上げ用の刃部を有した傘状仕上げハイスで仕上げ加工する第三工程と、前記傘状仕上げハイスを前記定盤に沿って前記他端側に移動させ、前記第二傾斜面を仕上げ形成するとよい。
【0016】
このような構成にすることにより、第一及び第二工程終了状態では加工された面が要求粗さを満たさない場合に、仕上げ加工を実施するが、仕上げ工程においても、該傘状エンドミルを定盤に沿って、移動させることにより、傾斜面への切削押圧力方向が変わるだけで、半環状部材両端の傾斜面切削を行うことができるので、半環状部材を定盤上にてセットし直し、半環状部材とエンドミルとの芯合せ等、面倒な作業が半減でき、加工に要するコストが大幅に低減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、傘状エンドミルを定盤に沿って移動させることにより、半環状部材の両端の形状が環状部材の軸線方向において対称形状となっている傾斜面切削を、傘状エンドミルの傾斜面への切削押圧力方向が変わるだけで、両端の傾斜面切削を行うことができ、加工に要するコストが大幅に低減できる。
また、傘状エンドミルの先端部に装着されるラフィングチップは刃先の先端部にラフィング状のR形状の刃部が設けられているので、傾斜面の切削と同時に、傾斜面に接続する面と傾斜面との屈曲部のR加工が行えるため、加工工数が減少し、コスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】は本発明の実施形態にかかる切削加工状況の概略図を示す。
【図2】は加工工程の加工形状とその順序を表す工程図をで、(A)は加工基準面の荒加工、(B)は基準平面仕上げ加工と、傾斜面荒加工、(C)は傾斜面仕上げ加工及び(D)はR部仕上げ加工図を示す。
【図3】本発明の実施形態にかかる傘状ラフィングチップ装着のエンドミル斜視図を示す。
【図4】本発明の実施形態にかかり、(A)はラフィングチップの斜視図、(B)はラフィングR部の平面視拡大図を示す。
【図5】従来技術における傾斜面の切削加工形態図を示す。
【図6】従来技術のおける他の切削加工形態図を示す。(特許文献1)
【図7】従来技術のおける他のラフィングエンドミルの外観図を示す。(特許文献2)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0020】
図1は半環状部材である半環状タービン静翼1を定盤2上にセット用ブロック3を介して、固定用クランプ(図示省略)にて固定した状態である。エンドミル4は半環状タービン静翼1の傾斜面を切削加工する工具である。
エンドミル4を固定すると共に回転駆動させるヘッド部8は図示されない工作機械の摺動ベッド上を定盤2に沿って移動(摺動)可能に保持されている。工作機械の摺動ベッドと定盤2との相対位置関係は精密に維持されている。
また、ヘッド部8は摺動ベッドの移動方向に対し、直角方向(定盤2との距離)、及び上下方向への移動が高精度に調整できる装置を有している。
尚、図において、半環状タービン静翼1は各個所の説明を明確にするため、継ぎ合せ部の形状は切削加工終了状態の形状を記載してある。
【0021】
図1に示すように、半環状タービン静翼1は半環状に形成され、一端には第一継ぎ合せ面11と、他端の第二継ぎ合せ面12とがA矢視方向で、図面上の上下方向において上下対称に形成されている。
半環状タービン静翼1は外周部となる外輪101と、タービンの出力軸であるロータ(図示省略)を外嵌する内輪102と、外輪101と内輪102との間にタービンの動翼に蒸気流が効率よく当たるように案内するノズル板103(翼)が固着されている。
【0022】
半環状タービン静翼1の一端の第一継ぎ合せ面11は軸線(環状に形成されたときの軸線)を含む面に沿って外輪101に形成された第一A面111、該第一A面111に連続して前記軸線方向に延在する傾斜面である第一C傾斜面113、該第一C傾斜面113に連続して前記第一A面111と平行に配置された第一B面112と、内輪102に形成され、第一A面111、第一C傾斜面113、及び第一B面112夫々と同一平面内に位置した、第一A´面114、第一C´傾斜面116、及び第一B´面115とで構成されている。
尚、以後説明の煩雑を防ぐため、第一A面111と第一A´面114とを併せて第一A面111と総称し、第一B面112と第一B´面115とを併せて第一B面112と総称し、第一C傾斜面113と第一C´傾斜面116とを併せて第一C傾斜面113と総称する。
【0023】
一方、他端の外輪101には第二継ぎ合せ面12が第一継ぎ合せ面11の形状に倣う形状に形成され、第一A面111と対向する形状を有する第二A面121、第一C傾斜面113と対向する形状を有する第二C傾斜面123、第一B面112と対向する形状を有する第二B面122と、内輪102に形成され、第一A面121、第一C傾斜面123、及び第一B面122夫々と同一平面内に位置した、第一A´面124、第一C´傾斜面126、及び第二B´面125とで構成されている。
尚、以後説明の煩雑を防ぐため、第二A面121と第二A´面124とを併せて第二A面121と総称し、第二B面122と第二B´面125とを併せて第二B面122と総称し、第二C傾斜面123と第二C´傾斜面126とを併せて第二C傾斜面123と総称する。
従って、半環状タービン静翼1は同一形状の物を2個対向させて、第一継ぎ合せ面11と、第二継ぎ合せ面12とを互いに当接させて固着させることにより環状に形成される。
このように半環状に形成することにより、製造設備の大きさを半分にして、設備投資を半減させることができると共に、取扱いが容易となりコスト低減効果も有している。
【0024】
第一継ぎ合せ面11及び第二継ぎ合せ面12の切削加工方法は、
半環状タービン静翼1がセット用ブロック3を介して定盤2上に載置され、固定用クランプ(図示省略)にて固定される。次に、半環状タービン静翼1の第一継ぎ合せ面11及び第二継ぎ合せ面12と切刃を有した切削工具(図示省略)との前後、左右、上下方向の芯合せを行い、切削加工の基準位置をセットする第1工程。
第2工程として、切削工具にて、第一継ぎ合せ面11の第一A面111を切削後、第一B面112を切削して、第一A面111と第一B面112間を鉤状に切削加工して、切削加工の基準面を形成する工程。(図2―Aの形状。斜線部を切削)
第3工程として、切削工具を定盤2に沿って他端である第二継ぎ合せ面12側に移動させ、第二継ぎ合せ面側12の第二A面121を切削後、第二B面122を切削して、第二A面121と第二B面122間を鉤状に切削加工して、切削加工の基準面を形成する工程。
尚、第二A面121と第二B面122の切削加工順序はどちらが先でも特別の理由はない。(図2―Aの形状。斜線部相当部を切削。)
【0025】
第4工程として、複数のラフィングチップ5が装着されているエンドミル02(図5参照。この行程は従来と同じ。)にて、第一継ぎ合せ面11の第一A面111と第一B面112間の鉤状に切削加工された部分を荒引き加工して、第一C傾斜面113を形成する。(図2―Bの形状に切削)
第5工程として、エンドミル02を定盤2に沿って第二継ぎ合せ面12の側に移動させ、エンドミル02を第一C傾斜面113に押圧した切削圧力方向をエンドミル02の軸線に対し、反対側に押圧して、第二継ぎ合せ面12の第二A面121と第二B面122間の鉤状に切削加工された部分を荒引き加工して、第二C傾斜面123を形成する。(図2―Bの形状に切削)
【0026】
第6行程として、第一継ぎ合せ面11の第一A面111と第一B面112をスローアウェイ式フライス工具で仕上げ加工をする。
第7工程として、フライス工具を定盤2に沿って第二継ぎ合せ面12の側に移動させ、同様に第二A面121と第二B面122の仕上げ加工を実施する。
【0027】
第8工程として、複数のラフィングチップ5が第一C及び第二C傾斜面113,123と同じ傾斜で、且つ傾斜と同じか、又は、若干長い長さ(A面からB面方向の長さ)を有する傾斜部41(図3)に装着された所謂、総型形状の傘状エンドミル4の先端部を、第一A面111と第一C傾斜部との屈曲部に芯合せを行う。傘状エンドミル4にて第一C傾斜面113を形成する。(いわゆる第一工程。)
第9工程として、傘状エンドミル4を定盤2に沿って第二継ぎ合せ面12側に移動させ、傘状エンドミル4の切削圧力方向を傘状エンドミルの軸線に対し、第一C傾斜面113に押圧した方向と反対側に押圧して、第二継ぎ合せ面12の第二A面121と第二B面122間の第二C傾斜面123を形成する。(いわゆる第二工程。)
【0028】
本実施形態において、傘状エンドミル4を保持しているヘッド部8は工作機械の摺動ベッド上を定盤2に沿って、定盤2との相対位置関係を高精度に維持しながら移動できるようになっており、且つ、第一及び第二C傾斜面113,123の傾斜と同じ傾斜を有する傘状エンドミル4の切削圧力方向がかわる構成なので、半環状タービン静翼1を反転させる従来の工法に比べ、加工精度を高くすることが容易となる。
また、半環状タービン静翼1を反転させる作業が省略できるので、半環状タービン静翼1と傘状エンドミル4との芯合せ作業が半減でき、加工工数減に伴うコスト低減が可能となる。
【0029】
本実施形態では、傘状エンドミル4に装着される複数のラフィングチップ5を図4に示すように、コーナ部にR形状の刃部を有したラフィングR部51を設け、少なくとも図3のB部に配置した。
これにより第一A面111と第一C傾斜面113との凹状の屈曲部の面取り第一Rを第一C傾斜面113切削加工と同時に行えるようにした。
また、コーナ部のR形状の刃部は他の平面部よりラフィングのピッチを小さくして、凹状の屈曲部の面取り第一Rの面粗さを小さくすることにより、コーナ部に発生しやすい応力を低減させる効果を有している。
【0030】
更に、傘状エンドミル4の傾斜面41に配置した複数のラフィングチップ5の配置を、
傾斜面41の円周上において、傘状エンドミル4の回転方向の前後位置で、前側のラフィングチップ5の波形状位置に対し、後側のラフィングチップ5の波形状位置が傾斜面41に沿ってずらして装着されている。
ずらす量を1/4ピッチ(ラフィング)にすると、ラフィングピッチの1/4の切削荒さになり、1/2ピッチにすると1/4ピッチの倍の荒さに切削される。
従って、ずらす量を少なくすることにより研削される第一C傾斜面(含む第二C傾斜面)の切削表面粗さを微細にすることができ、要求仕様によっては仕上げ工程を省略できる可能性もある。
また、前の工程では切削表面粗さが、要求仕様を満たさない場合は、更に、以下の工程を追加する。
【0031】
第10工程として、複数のラフィングチップ5を装着した傘状エンドミル4に換え、第一C及び第二C傾斜面113,123と同じ傾斜で、且つ傾斜と同じか、又は、若干長い長さ(A面からB面方向の長さ)を有した傾斜部の傾斜面に切削刃61を有した総型形状の傘状仕上げハイス6にて第一継ぎ合せ面11側の第一C傾斜面113を仕上げ加工するいわゆる第三工程。(図2−Cの形状)
第11工程として、傘状の仕上げハイス6を定盤2に沿って第二継ぎ合せ面12側に移動させ、第二継ぎ合せ面12側の第二C傾斜面123を仕上げ加工するいわゆる第四工程。(図2−Cの形状)
【0032】
第12工程として、傘状の仕上げハイス6に換え、切刃が凹状になったR状ハイス7(図2―D参照)にて、第一継ぎ合せ面11側の第一C傾斜面113と第一B面との凸状屈曲部の第二Rを面取りする仕上げ工程。(図2−Dの形状)
第13工程として、R状ハイス7を定盤2に沿って第二継ぎ合せ面12側に移動させて、第二継ぎ合せ面12側の第二C傾斜面123と第二B面122との凸状屈曲部の第二Rを面取りする仕上げ工程。(図2−Dの形状)
【0033】
以上の工程を経て半環状タービン静翼1の第一継ぎ合せ面11及び第二継ぎ合せ面12の合せ面の切削加工が終了する。
尚、本実施形態では、加工工程の始りを第一継ぎ合せ面11側から実施するように記載したが、第二継ぎ合せ面12側で終了し、次の形状の切削工程に移る場合、第二継ぎ合せ面12側で次の形状の切削工程を始め、切削工程終了後に、第一継ぎ合せ面11側に工具を移動させて、第一継ぎ合せ面11側において同じ形状の切削工程を実施するようにすることも可能であることは当然である。
【0034】
本実施形態によると、半環状タービン静翼1の両端に傾斜部を有した形状が、半環状タービン静翼1の軸線方向において対称形状となっている半環状タービン静翼1両端の第一及び第二傾斜面113,123の切削を、傘状エンドミル4を定盤に沿って、移動させることにより、第一及び第二傾斜面113,123への切削押圧力方向が変わるだけで、半環状タービン静翼1の両端の第一及び第二傾斜面113,123切削を可能としたので、半環状タービン静翼1を定盤2上にて反転させて、半環状タービン静翼1とエンドミルとの芯合せ等の面倒な作業が半減でき、加工工数の低減によるコスト低減ができる。
また、傘状エンドミル5の先端部に装着されるラフィングチップ5の刃先の先端部にラフィング状のR形状刃部を形成したので、第一A面111と第一傾斜面113及び第二A面と第二傾斜面123との屈曲部の第一R加工が、傾斜面加工と同時に行えるため、加工工数が減少し、コスト低減が可能となる。
尚、ラフィングチップ5の刃先の先端部にラフィング状のR形状刃部を形成したラフィングチップ5は傘状エンドミル4の先端部だけに使用するものではなく、傾斜部41の他の部分に装着して使用することにより、ラフィングチップ5の共通化、部品管理点数の増加抑制によるコスト低減効果を図れる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
同一形状の半環状部材を対向させて、環状に継ぎ合せる合せ面形状を有する前記半環状部材の接合面が環状の軸線方向に対して対称形状に形成されている傾斜面を、該傾斜面の傾斜に沿った傘状エンドミル加工を要するタービン静翼等に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 半環状タービン静翼
2 定盤
3 セット用ブロック
4 傘状エンドミル
5 ラフィングチップ
6 仕上げハイス
7 R状ハイス
11 第一継ぎ合せ面
12 第二継ぎ合せ面
41 傾斜部
51 ラフィングR部
61 切削刃
101 外輪
102 内輪
103 ノズル板
111 第一A面
112 第一B面
113 第一C面
121 第二A面
122 第二B面
123 第二C面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状の半環状部材を対向させて、環状に継ぎ合せる合せ面形状を有する前記半環状部材は、一端に前記環状の軸線方向に延在する第一傾斜面を有した第一継ぎ合せ面と、他端に前記第一継ぎ合せ面形状に倣う形状に形成され前記第一傾斜面と対向する形状を有する第二傾斜面とを有する第二継ぎ合せ面を有し、前記第一傾斜面と前記第二傾斜面の半環状部材の継ぎ合せ面加工方法において、前記半環状部材を定盤(定磐)上に固定して、前記半環状部材と、前記第一及び第二傾斜面と同じ傾斜を有する傾斜部に複数のラフィングチップが装着されている傘状エンドミルとの芯合せを行った後、前記傘状エンドミルにて前記第一傾斜面を形成する第一工程と、前記傘状エンドミルを前記定盤に沿って前記他端に移動させ、前記傘状エンドミルにて前記第二継ぎ合せ面の前記第二傾斜面を形成する第二工程とを含む半環状部材の継ぎ合せ面の加工方法。
【請求項2】
前記傘状エンドミルの先端部に装着されるラフィングチップは刃先の先端部にラフィング状のR形状刃部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の半環状部材の継ぎ合せ面の加工方法。
【請求項3】
前記傘状エンドミルは、前記傘状エンドミルの傾斜部に装着される前記ラフィング状の複数のチップが傘状円周上の回転方向前後位置で、前側の前記ラフィングチップの波形状位置と、後側の前記ラフィングチップの波形状位置とが前記傾斜部の傾斜に沿ってずらして装着されていることを特徴とする請求項1又は2記載の半環状部材の継ぎ合せ面の加工方法。
【請求項4】
本発明において、前記第一傾斜面を前記第一及び第二傾斜面と同じ傾斜を有する傾斜部に切削仕上げ用の刃部を有した傘状仕上げハイスで仕上げ加工する第三工程と、前記傘状仕上げハイスを前記定盤に沿って前記他端側に移動させ、前記傘状仕上げハイスを前記第一傾斜面に押圧した切削圧力方向を前記傘状仕上げハイスの軸線に対し、反対側に押圧して前記第二傾斜面を仕上げ形成する第四工程を含むことを特徴とする請求項1または3記載の半環状部材の継ぎ合せ面の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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