説明

エンボス加工装置およびエンボス加工方法

【課題】 基材表面に凹凸形状の絵柄を確実に形成することができ、かつこの絵柄にひずみ応力が残ることの少ないエンボス加工装置およびエンボス加工方法を提供する。
【解決手段】 エンボス加工装置10は凹凸形状12を有する絵柄ロール11と、絵柄ロール11との間で合成樹脂製基材20を挟持する支持ロール13とを備えている。絵柄ロール11は、超音波振動部を内蔵した回転駆動機構15によって回転駆動される。回転駆動機構15から、基材を軟化させる固有振動に対応する振動数の超音波振動が基材20に加えられて、基材20は軟化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はかばんや車の内装に設けられ、表面に皮模様や幾何学模様が付されたシートを製造するためのエンボス加工装置およびエンボス加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、かばんや車の内装に設けられ、表面に皮模様や幾何学模様が付されたシートを製造するために、エンボス加工方法が用いられている。
【0003】
このエンボス加工方法は、凹凸状表面を有する絵柄ロールと、支持ロールとの間に合成樹脂製基材または紙製基材等を挿入し、これらロール間で基材をプレスすることにより基材表面にエンボス加工を施して絵柄を形成するものである(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−143466
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように従来より基材を絵柄ロールと支持ロールとの間で挟持することにより、基材表面にエンボス加工を施す方法が知られている。
【0005】
しかしながら基材に対してエンボス加工を施す際、エンボス加工時に基材に弾性エネルギが蓄えられ、その後この弾性エネルギによって基材表面に形成された絵柄が平坦化して不明瞭となることがある。
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、基材にエンボス加工を施して基材に凹凸形状を形成するとともに、この凹凸形状が元に戻って平坦化することのないエンボス加工装置およびエンボス加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、凹凸形状を有する絵柄ロールと、この絵柄ロールとの間で合成樹脂、紙等の天然素材または合成樹脂と紙等の天然素材との積層体からなる基材を挟持して基材に凹凸形状を形成する支持ロールとを備え、絵柄ロールおよび支持ロールのうちいずれか一方に、振動を与える振動部を設け、この振動部により当該ロールに加えられる振動の振動数は、基材を軟化させる固有振動数に対応していることを特徴とするエンボス加工装置である。
【0008】
本発明は、振動部は絵柄ロールに連結されていることを特徴とするエンボス加工装置である。
【0009】
本発明は、絵柄ロールに加熱部を設けたことを特徴とするエンボス加工装置である。
【0010】
本発明は、凹凸形状を有する絵柄ロールと、支持ロールとの間に合成樹脂、紙等の天然素材または合成樹脂と紙等の天然素材との積層体からなる基材を挿入し、この基材を絵柄ロールと支持ロールとの間で挟持して基材に凹凸形状を形成する工程と、絵柄ロールおよび支持ロールのうちいずれか一方に、一定の振動数を有する振動を加える工程とを備え、当該ロールに加えられる振動の振動数は、基材を軟化させる固有振動数に対応していることを特徴とするエンボス加工方法である。
【0011】
本発明は、少なくとも絵柄ロールに一定の振動数を有する振動を加えることを特徴とするエンボス加工方法である。
【0012】
本発明は、絵柄ロールまたは支持ロールに一定の振動数を有する振動を加える際、少なくとも絵柄ロールを加熱することを特徴とするエンボス加工方法である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、基材に振動を加えて軟化させながら絵柄ロールと支持ロールとの間で基材を挟持することにより、基材表面に凹凸形状の絵柄を確実に形成することができる。またこのとき基材表面の絵柄にひずみ応力が残ることはなく、凹凸形状が元に戻って平坦化することも少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図3は、本発明によるエンボス加工装置およびエンボス加工方法の一実施の形態を示す図である。
【0015】
図1および図2に示すように、エンボス加工装置10は凹凸形状12を有する絵柄ロール11と、この絵柄ロール11との間で合成樹脂製基材20を挟持して基材20に凹凸形状からなる絵柄21を形成する支持ロール13とを備えている。
【0016】
また絵柄ロール11は超音波振動部を内蔵した一対の回転駆動機構15、15によりシャフト11aを介して回転駆動され、支持ロール13は一対の回転駆動機構16、16によりシャフト13aを介して回転駆動される。
【0017】
この場合、一対の回転駆動機構15、15は超音波振動部を内蔵し、絵柄ロール11を回転駆動させるとともに、超音波振動部により絵柄ロール11を図1の上下方向(矢印し方向)に超音波振動させるようになっている。
【0018】
また絵柄ロール11のシャフト11aに、加熱装置17が連結パイプ17aを介して連結され、加熱装置17からの加熱媒体によってシャフト11aおよび絵柄ロール11が加熱されるようになっている。
【0019】
一対の回転駆動機構15、15は超音波振動部を内蔵し、この超音波振動部を内蔵した回転駆動機構15によってシャフト11aを介して絵柄ロール11、11に振動を加え、後述のようにこの絵柄ロール11、11の振動が基材20に伝達されて基材20を軟化するようになっている。この場合、回転駆動機構15、15に加え、回転駆動機構16、16にも超音波振動部を内蔵させて支持ロール13に超音波振動を加えてもよい。
【0020】
さらに、加熱装置17を支持ロール13のシャフト13aにも連結して、この加熱装置17によって支持ロール13を加熱してもよい。
【0021】
次にこのような構成からなるエンボス加工装置を用いたエンボス加工方法について説明する。
【0022】
まず、絵柄ロール11と支持ロール13との間に合成樹脂製基材20が挿入され、この基材20が絵柄ロール11と支持ロール13との間で挟持される。
【0023】
この場合、合成樹脂製基材20として例えばフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂基材20が用いられる。
【0024】
合成樹脂製基材20として熱硬化性樹脂製基材20が選択された場合、加熱装置17は作動されず、常温に保たれた絵柄ロール11と支持ロール13との間で基材20が挟持され、かつ絵柄ロール11と支持ロール13とが各々回転駆動機構15、15および回転駆動機構16、16によって回転駆動される。
【0025】
このとき、超音波振動部を内蔵した回転駆動機構15、15によって、絵柄ロール11に対して超音波振動が与えられる。次に絵柄ロール11の超音波振動が基材20に伝達されて、基材20が軟化する。
【0026】
このように基材20が軟化することにより、絵柄ロール11の凹凸形状12が基材20に確実かつスムースに転写される。このようにして基材20の表面に凹凸形状からなる絵柄21が形成されたシートを得ることができる(エンボス加工)。
【0027】
次に図3により、基材20に超音波振動が伝達された場合の基材20の軟化作用について説明する。図3は、基材に加わる超音波振動の振動数と基材の軟化性を示す図である。
【0028】
合成樹脂製基材20に超音波振動が加わると、超音波振動エネルギによって基材20内部にひずみ応力が生じる。基材20は一般に貯蔵弾性率に比べて損失弾性率が大きくなる固有振動数Pを有しており、基材20にこの固有振動数Pに対応する振動数をもつ超音波振動が加わると、基材20内部のひずみ応力を液状的に緩和して基材20を軟化させることができる。
【0029】
なお、基材20に加える振動の振動数は、超音波の例を示したが、基材の種類により異なり16kHz〜40kHzが好ましい。
【0030】
本発明によれば、絵柄ロール11と支持ロール13との間で基材20を挟持して、基材20に対して絵柄ロール11の凹凸形状12を基材20表面に転写させるとともに、絵柄ロール11から基材20に対して超音波振動を与えることにより、基材20の表面に凹凸形状を確実に転写して基材20の表面に絵柄21を形成することができる。また基材20を軟化させた状態で、絵柄ロール11と支持ロール13との間で基材20を挟持して基材20に絵柄ロール11の凹凸形状を転写して絵柄21を形成するので、基材20表面の絵柄21にひずみ応力の残留が小さくなり、長時間を経ても絵柄21の凹凸形状が変形したり、平坦化して絵柄21が不鮮明となることが軽減される。
【0031】
なお、合成樹脂製基材20として熱硬化性樹脂製基材を用いた例を示したが、これに限らず合成樹脂製基材20として、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂製基材を用いてよい。
【0032】
また、合成樹脂製基材の替わりに、紙等の天然素材、または合成樹脂と紙等の天然素材との積層体からなる基材を用いてもよい。
【0033】
熱可塑性樹脂製基材20を用いた場合、基材20を絵柄ロール11と支持ロールと13との間で挟持する際、回転駆動機構15により絵柄ロール11から基材20に対して超音波振動を加えることができ、同時に加熱装置17により絵柄ロール11を介して基材20を加熱することができる。
【0034】
基材20として熱可塑性樹脂製基材を用いた場合は、基材20に対して超音波振動を加え、かつ基材20を加熱することにより、基材20の表面により確実に凹凸形状を転写して絵柄21を形成することができ、またこの絵柄21にひずみ応力が生じることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明によるエンボス加工装置の一実施の形態を示す図。
【図2】エンボス加工装置の絵柄ロールと支持ロールを示す拡大図。
【図3】基材に加わる超音波振動の振動数と基材の軟化性を示す図。
【符号の説明】
【0036】
10 エンボス加工装置
11 絵柄ロール
12 凹凸形状
13 支持ロール
15 回転駆動機構
16 回転駆動機構
17 加熱装置
20 基材
21 絵柄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状を有する絵柄ロールと、
この絵柄ロールとの間で合成樹脂、紙等の天然素材または合成樹脂と紙等の天然素材との積層体からなる基材を挟持して基材に凹凸形状を形成する支持ロールとを備え、
絵柄ロールおよび支持ロールのうちいずれか一方に、振動を与える振動部を設け、
この振動部により当該ロールに加えられる振動の振動数は、基材を軟化させる固有振動数に対応していることを特徴とするエンボス加工装置。
【請求項2】
振動部は絵柄ロールに連結されていることを特徴とする請求項1記載のエンボス加工装置。
【請求項3】
絵柄ロールに加熱部を設けたことを特徴とする請求項1記載のエンボス加工装置。
【請求項4】
凹凸形状を有する絵柄ロールと、支持ロールとの間に合成樹脂、紙等の天然素材または合成樹脂と紙等の天然素材との積層体からなる基材を挿入し、この基材を絵柄ロールと支持ロールとの間で挟持して基材に凹凸形状を形成する工程と、
絵柄ロールおよび支持ロールのうちいずれか一方に、一定の振動数を有する振動を加える工程とを備え、
当該ロールに加えられる振動の振動数は、基材を軟化させる固有振動数に対応していることを特徴とするエンボス加工方法。
【請求項5】
少なくとも絵柄ロールに一定の振動数を有する振動を加えることを特徴とする請求項4記載のエンボス加工方法。
【請求項6】
絵柄ロールまたは支持ロールに一定の振動数を有する振動を加える際、少なくとも絵柄ロールを加熱することを特徴とする請求項4記載のエンボス加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−76059(P2007−76059A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264202(P2005−264202)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】