説明

オイルストレーナ

【課題】限られたスペースでフィルタの面積を確保することができるオイルストレーナを提供する。
【解決手段】オイルストレーナ1が、動力伝達機構とこの動力伝達機構を潤滑するオイルとが収納された第1のケース5と、この第1のケース5に組み付けられオイルを吐出する吐出口7が設けられた第2のケース9と、第1のケース5内に配置されオイルを吸入する吸入口11と、第1のケース5と第2のケース9との組付部13に設けられ第2のケース9の組付部13から吐出口7までの空間部S2を第1のケース5の内部から区画するシール手段15と、第2のケース9の空間部S2に配置され吸入口11から吸入して吐出口7から吐出されるオイルをろ過するフィルタ17とを有した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用されるオイルストレーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケース内に収容されたオイルをろ過するオイルストレーナとしては、吸入口が設けられた下側ケーシングと、吐出口が設けられた上側ケーシングと、下側ケーシングと上側ケーシングとの間に設けられ吸入口から吸入して吐出口から吐出されるオイルをろ過するフィルタエレメントとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このオイルストレーナでは、フィルタエレメントに磁性を帯びさせることにより、オイルに混入した金属粉などをフィルタエレメントに磁着させている。これにより、オイルパンの底部にマグネットを取り付ける必要がなく、フィルタエレメントのみでオイル中の金属粉を除去できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−296015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなオイルストレーナでは、オイルをろ過するフィルタが上下に分割された分割ケーシングに収容され、この分割ケーシングがオイルが収容されたケース内に配置されている。
【0006】
しかしながら、オイルが収容されたケース内にフィルタが内蔵されたケーシングを配置させる構成では、フィルタの面積がケーシングに依存されるので、フィルタの面積を最大でもケーシングの断面積とすることしかできなかった。
【0007】
また、フィルタの面積を拡大させようとすると、ケーシングが大型化してしまう。このため、ケース内のケーシングの配置面積も拡大させなければならず、ケースの大幅な設計変更を伴ってコスト高となってしまう。
【0008】
そこで、この発明は、限られたスペースでフィルタの面積を確保することができるオイルストレーナの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、動力伝達機構とこの動力伝達機構を潤滑するオイルとが収納された第1のケースと、この第1のケースに組み付けられ前記オイルを吐出する吐出口が設けられた第2のケースと、前記第1のケース内に配置され前記オイルを吸入する吸入口と、前記第1のケースと前記第2のケースとの組付部に設けられ前記第2のケースの前記組付部から前記吐出口までの空間部を前記第1のケースの内部から区画するシール手段と、前記第2のケースの空間部に配置され前記吸入口から吸入して前記吐出口から吐出される前記オイルをろ過するフィルタとを有することを特徴とする。
【0010】
このオイルストレーナでは、シール手段が第2のケースの組付部から吐出口までの空間部を第1のケースの内部から区画し、フィルタが区画された第2のケースの空間部に配置されているので、第1のケースと第2のケースとに直接フィルタを配置させることができ、フィルタ専用のケーシングを適用する必要がない。
【0011】
従って、このようなオイルストレーナでは、フィルタ専用のケーシングを配置させていたスペース全体をフィルタの配置スペースとして拡大させることができ、限られたスペースでフィルタの面積を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、限られたスペースでフィルタの面積を確保することができるオイルストレーナを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るオイルストレーナの正面図である。
【図2】(a)は本発明の実施の形態に係るオイルストレーナの枠体の正面図である。(b)は本発明の実施の形態に係るオイルストレーナの枠体の側面図である。
【図3】図1のX−X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図3を用いて本発明の実施の形態に係るオイルストレーナについて説明する。
【0015】
本実施の形態に係るオイルストレーナ1は、動力伝達機構3とこの動力伝達機構3を潤滑するオイルとが収納された第1のケース5と、この第1のケース5に組み付けられオイルを吐出する吐出口7が設けられた第2のケース9と、第1のケース5内に配置されオイルを吸入する吸入口11と、第1のケース5と第2のケース9との組付部13に設けられ第2のケース9の組付部13から吐出口7までの空間部S2を第1のケース5の内部から区画するシール手段15と、第2のケース9の空間部S2に配置され吸入口11から吸入して吐出口7から吐出されるオイルをろ過するフィルタ17とを有する。
【0016】
また、吸入口11は、第1のケース5内で重力方向に向けて開口されている。
【0017】
図1〜図3に示すように、第1のケース5は、構成部材の一部であるギヤ部材19などの動力伝達機構3が収納されていると共に、動力伝達機構3を潤滑・冷却するオイルが収納されている。このオイルは、第1のケース5の重力方向である底部側に溜められ、動力伝達機構3の摺動部やギヤの噛み合い部などを潤滑・冷却すると共に、図示外のオイルポンプによって第2のケース9側に流入される。
【0018】
第2のケース9は、組付部13で開口を第1のケース5の開口に合わせるように組み付けられている。この第2のケース9の開口とは反対側の底部には、オイルポンプに連通された吐出口7が設けられている。この吐出口7は、吸入口11から吸入されたオイルをオイルポンプ側に吐出する。
【0019】
吸入口11は、第1のケース5内に位置するように枠体21と連続する一部材として形成されている。また、吸入口11の開口は、第1のケース5の底部側、すなわち重力方向に向けて拡径されるように形成され、第1のケース5の底部に溜められたオイルの油面に浸されている。このように吸入口11の開口を設けることにより、車両の走行状態によって第1のケース5の底部でオイルに偏りができたとしても、吸入口11の開口が常時オイルの油面に浸され、吸入口11からオイルを確実に吸入させることができる。この吸入口11が設けられた枠体21には、シール手段15が設けられている。
【0020】
シール手段15は、Oリングからなり、枠体21の四角状に形成されたフランジ部23の外周に組み付けられている。また、シール手段15の外周面は、第1のケース5と第2のケース9との組付部13において、第2のケース9の開口側に設けられた凹部の内周面に密着されている。このシール手段15は、第1のケース5の空間部S1と第2のケース9の組付部13から吐出口7までの空間部S2とを区画している。この空間部S2には、フィルタ17が配置されている。
【0021】
フィルタ17は、枠体21の四角状に形成された筒部25の各面にそれぞれ4つ設けられている。このフィルタ17は、外周側が板状に形成されて枠体21に固定され、中央部が格子状に形成されたメッシュ部27となっている。このフィルタ17には、吸入口11から吸入されたオイルが流入され、メッシュ部27でオイルに混入された金属粉などの混入物をろ過して吐出口7側に流出させる。このとき、フィルタ17は、枠体21の筒部25の全面に設けられているので、オイルに混入された混入物を筒部25内に留めて、第1のケース5内や第2のケース9内での混入物の浮遊を防止でき、収容された各部材の耐久劣化の促進を防止することができる。
【0022】
このように構成されたオイルストレーナ1は、オイルポンプの作動により、図3の矢印で示すように、吸入口11から第1のケース5内のオイルを枠体21の筒部25内に吸入する。この吸入されたオイルは、フィルタ17によってろ過され、第2のケース9の空間部S2内に流出される。そして、空間部S2内に流出されたオイルは、吐出口7からオイルポンプ側に吐出される。
【0023】
このようなオイルストレーナ1では、シール手段15が第2のケース9の組付部13から吐出口7までの空間部S2を第1のケース5の内部から区画し、フィルタ17が区画された第2のケース9の空間部S2に配置されているので、第1のケース5と第2のケース9とに直接フィルタ17を配置させることができ、フィルタ専用のケーシングを適用する必要がない。
【0024】
従って、このようなオイルストレーナ1では、フィルタ専用のケーシングを配置させていたスペース全体をフィルタ17の配置スペースとして拡大させることができ、限られたスペースでフィルタ17の面積を確保することができる。
【0025】
また、吸入口11は、第1のケース5内で重力方向に向けて開口されているので、第1のケース5内でオイルが偏った場合でも吸入口11からオイルを吸入させることができる。
【0026】
なお、本発明の実施の形態に係るオイルストレーナでは、ギヤを有する動力伝達機構を収容するケースに適用しているが、エンジンなどの近傍に設けられた動力伝達機構に設けられるオイルパンに対しても適用することができる。
【0027】
このような場合でも、エンジンオイルが収納されたオイルパンを第1のケースとし、オイルパンに組み付けられエンジンオイルを吐出する吐出口が設けられたケースを第2のケースとすることで、本発明のオイルストレーナをオイルパン内蔵タイプとすることができ、フィルタ専用のケーシングを適用することなく、フィルタの面積を確保することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…オイルストレーナ
3…動力伝達機構
5…第1のケース
7…吐出口
9…第2のケース
11…吸入口
13…組付部
15…シール手段
17…フィルタ
S2…空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達機構とこの動力伝達機構を潤滑するオイルとが収納された第1のケースと、
この第1のケースに組み付けられ前記オイルを吐出する吐出口が設けられた第2のケースと、
前記第1のケース内に配置され前記オイルを吸入する吸入口と、
前記第1のケースと前記第2のケースとの組付部に設けられ前記第2のケースの前記組付部から前記吐出口までの空間部を前記第1のケースの内部から区画するシール手段と、
前記第2のケースの空間部に配置され前記吸入口から吸入して前記吐出口から吐出される前記オイルをろ過するフィルタと、
を有することを特徴とするオイルストレーナ。
【請求項2】
請求項1記載のオイルストレーナであって、
前記吸入口は、前記第1のケース内で重力方向に向けて開口されていることを特徴とするオイルストレーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−92878(P2012−92878A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239594(P2010−239594)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000225050)GKNドライブラインジャパン株式会社 (409)
【Fターム(参考)】