説明

オイルセパレータ付圧縮機

【課題】分離パイプを精度良く圧入できるオイルセパレータ付圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮機構と、圧縮機構を収容する円筒形ハウジングと、ハウジング内に形成され圧縮機構から吐出したガスをハウジング外へ吐出させる吐出通路と、吐出通路の途上に配設された遠心分離方式のオイルセパレータとを備え、オイルセパレータは吐出通路の一部を形成するオイル分離室18とオイル分離室に圧入固定された分離パイプ21とを有し、分離パイプ圧入方向側のハウジング外面に、分離パイプ圧入方向に直交する平坦面23が形成されており、分離パイプの圧入方向は円筒形の中心軸線へ向けて径方向内方であり、ハウジングの円筒形の外形は半円柱形状のキャビティーを有する一対の金型を用いて鋳造形成され、分離パイプの圧入方向は前記一対の金型のスライド方向に対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮機構と、オイルセパレータ付圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧縮機構と、圧縮機構を収容するハウジングと、ハウジング内に形成され圧縮機構から吐出したガスをハウジング外へ吐出させる吐出通路と、吐出通路の途上に配設された遠心分離方式のオイルセパレータとを備え、オイルセパレータは吐出通路の一部を形成するオイル分離室とオイル分離室に圧入固定された分離パイプとを有するオイルセパレータ付圧縮機が特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2001−295767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のオイルセパレータ付圧縮機には、分離パイプ圧入時にハウジングが不安定になって、分離パイプを精度良く圧入できないという問題があった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、分離パイプを精度良く圧入できるオイルセパレータ付圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては、圧縮機構と、圧縮機構を収容する円筒形ハウジングと、ハウジング内に形成され圧縮機構から吐出したガスをハウジング外へ吐出させる吐出通路と、吐出通路の途上に配設された遠心分離方式のオイルセパレータとを備え、オイルセパレータは吐出通路の一部を形成するオイル分離室とオイル分離室に圧入固定された分離パイプとを有し、分離パイプ圧入方向側のハウジング外面に、分離パイプ圧入方向に直交する平坦面が形成されており、分離パイプの圧入方向は円筒形の中心軸線へ向けて径方向内方であり、ハウジングの円筒形の外形は半円柱形状のキャビティーを有する一対の金型を用いて鋳造形成され、分離パイプの圧入方向は前記一対の金型のスライド方向に対して傾斜しており、前記平坦面は、円筒形ハウジングを鋳造する際の前記一対の金型の抜き勾配を利用して鋳造形成されていることを特徴とするオイルセパレータ付圧縮機を提供する。
本発明においては、分離パイプ圧入時の平面受け部として、分離パイプ圧入方向に直交する平坦面を分離パイプ圧入方向側のハウジング外面に形成したので、分離パイプを精度良く圧入することができる。
本発明においては、ハウジングは円筒形であり、円筒形ハウジングは一般に鋳造形成される。分離パイプの圧入方向が円筒形の中心軸線へ向けて径方向内方であり、ハウジングの円筒形の外形が半円柱形状のキャビティーを有する一対の金型を用いて鋳造形成され、分離パイプの圧入方向が前記一対の金型のスライド方向に対して傾斜している場合は、前記平坦面は一対の金型の一方によって形成されることになる。この場合は、前記一方の金型の抜き勾配を利用して前記平坦面を鋳造形成するのが望ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明においては、分離パイプ圧入時の平面受け部として、分離パイプ圧入方向に直交する平坦面を分離パイプ圧入方向側のハウジング外面に形成したので、分離パイプを精度良く圧入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施例に係るオイルセパレータ付圧縮機を説明する。
図1に示すように、スクロール型圧縮機Aは、端板1aと渦巻体1bとを有する固定スクロール1と、端板2aと渦巻体2bとを有する可動スクロール2とを備えている。渦巻体1b、2bは互いに噛合し、複数対の作動空間3を形成している。
スクロール型圧縮機は、有底円筒形のケーシング4aとフロントハウジング4bとを備えている。ケーシング4aとフロントハウジング4bとは一体に接合され、中心軸線Xを有する円筒形のハウジング4を形成している。ハウジング4は固定スクロール1と可動スクロール2とを収容している。
固定スクロールの端板1aはケーシング4aに嵌合固定されている。嵌合固定部をシールするOリングが配設されている。端板1aを境にして、ハウジング4内に吸入室5と吐出室6とが形成されている。
固定スクロールの端板1aの中心に吐出孔1cが形成されている。吐出孔1cは端板1aに取り付けられた吐出弁を介して吐出室6に連通している。
吸入室5はフロントハウジング4bに形成された図示しない吸入ポートに連通している。吸入ポートは空調装置の低圧側回路に接続している。
吐出室6はケーシング4aに形成された吐出ポート7(図2参照)に連通している。吐出ポート7は空調装置の高圧側回路に接続している。
【0007】
吸入室5内に主軸8が配設されている。主軸8はラジアルベアリング9、10を介してフロントハウジング4bに回転可能に支持されている。主軸8の一端はフロントハウジング4bを貫通しハウジング外へ延びている。
電磁クラッチ11が、ラジアルベアリング12を介してフロントハウジング4bに回転可能に支持されている。
主軸8の他端に偏心ピン13が固定されている。ブッシュ14が偏心ピン13に摺動可能に外嵌合している。ブッシュ14はラジアルベアリング15を介して可動スクロール2の端板2aの背面に形成されたボス2c内に収容されている。
可動スクロール2とフロントハウジング4bとの間にボールカップリング16が配設されている。
主軸8、偏心ピン13、ブッシュ14、ボールカップリング16、可動スクロール2、固定スクロール1によって圧縮機構が形成されている。圧縮機構はハウジング4内に収容されている。
【0008】
図1、2に示すように、ケーシング4a内に、吐出ガス導入口17を介して吐出室6に連通すると共に吐出ポート7に連通する真直円柱状のオイル分離室18が形成されている。オイル分離室18の中心軸線Yは中心軸線Xと直交している。オイル分離室18の一端は中心軸線Xの近傍に在り、他端はケーシング4a外周面に開口するオイル分離室穿設用の案内穴19に接続している。案内穴19は吐出ポート7に連通している。案内穴19はケーシング4aの外周面に開口しており当該開口は蓋部材20によって閉鎖されている。吐出室6、吐出ガス導入口17、オイル分離室18、案内穴19、吐出ポート7は、圧縮機構から吐出したガスをハウジング4外へ吐出させる吐出通路を形成している。
オイル分離室18内に、且つオイル分離室18と同軸に、且つオイル分離室18の周側壁から環状隙間18aを隔てて分離パイプ21が配設されている。分離パイプ21の一端は中心軸線Xの近傍に在り、他端はオイル分離室18の他端に圧入固定されている。吐出ガス導入口17は環状隙間18aに対して接線方向に差し向けられている。吐出ガス導入口17と環状隙間18aと分離パイプ21とにより、遠心分離方式のオイルセパレータ22が形成されている。
【0009】
図2に太矢印で示すように、分離パイプ20の圧入方向は円筒形のケーシング4aの中心軸線Xへ向けて径方向内方であり、分離パイプ圧入方向側のケーシング4a周壁外面に、分離パイプ20に対峙して、分離パイプ圧入方向に直交する平坦面23が形成されている。
ケーシング4aの円筒形の外形は、半円柱形状のキャビティーを有する一対の金型を用いて鋳造形成される。図2から分かるように、分離パイプ21の圧入方向が金型スライド方向に対して傾斜している。この結果、平坦面23は二つの金型の一方によって形成される。従って、前記一方の金型の抜き勾配を利用して平坦面23を鋳造形成するのが望ましい。切削加工や研削加工を要することなく梨子地のままで平坦面23を形成することができる。
【0010】
本実施例に係るスクロール型圧縮機においては、図示しない駆動源の動力が電磁クラッチ11を介して主軸8の一端に伝達され、主軸8が回転駆動される。主軸8の回転が偏心ピン13とブッシュ14とにより旋回運動に変換されて可動スクロール2に伝達され、可動スクロール2が旋回運動する。空調装置の低圧側回路から吸入ポートを通って吸入室5へ吸引された冷媒ガスが、渦巻体1b、2bによって形成される外周側の一対の作動空間3内に取り込まれる。ボールカップリング16により可動スクロール2の自転が阻止される。
一対の作動空間3が体積を減少させつつ固定スクロール1の中心へ向けて移動し、作動空間3内の冷媒ガスが圧縮される。高圧の冷媒ガスが、固定スクロール1の端板1aに形成された吐出孔1cと吐出弁とを介して吐出室6へ吐出する。高圧の冷媒ガスは、吐出室6から吐出ガス導入口17を通って、オイル分離室18の環状隙間18aに接線方向に流入し、環状隙間18a内を旋回しつつ分離パイプ21の前記一端へ向けて流れ、分離パイプ21へ流入し、分離パイプ21の他端から案内穴19と吐出ポート7を経て空調装置の高圧側回路へ流出する。
【0011】
高圧の冷媒ガスが環状隙間18a内を旋回しつつ分離パイプ21の前記一端へ向けて流れる際に、遠心力により冷媒ガス中に分散浮遊したオイルミストが冷媒ガスから分離されてオイル分離室18の周側壁に付着する。オイル分離室18の周側壁に付着したオイルミストは液滴を形成しつつオイル分離室18の底部へ向けて流れ、オイル分離室18の底部に蓄積される。オイル分離室18の底部に蓄積されたオイルは、図示しないオイル通路を介して吸入室5へ戻され、圧縮機構の各種摺動部を潤滑する。
【0012】
本実施例に係るスクロール型圧縮機Aにおいては、分離パイプ圧入時の平面受け部として、分離パイプ圧入方向に直交する平坦面23を分離パイプ圧入方向側のケーシング周壁外面に形成したので、工作台の平坦な上面に平坦面23を当接させた状態で圧入作業を行うことにより、分離パイプ21を精度良くオイル分離室18に圧入することができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、スクロール型圧縮機のみならず、遠心分離方式のオイルセパレータを備える各種圧縮機に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る圧縮機の断面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【符号の説明】
【0015】
1 固定スクロール
1a 端板
1b 渦巻体
1c 吐出孔
2 可動スクロール
2a 端板
2b 渦巻体
4 ハウジング
5 吸入室
6 吐出室
18 オイル分離室
18a 環状隙間
21 分離パイプ
23 平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機構と、圧縮機構を収容する円筒形ハウジングと、ハウジング内に形成され圧縮機構から吐出したガスをハウジング外へ吐出させる吐出通路と、吐出通路の途上に配設された遠心分離方式のオイルセパレータとを備え、オイルセパレータは吐出通路の一部を形成するオイル分離室とオイル分離室に圧入固定された分離パイプとを有し、分離パイプ圧入方向側のハウジング外面に、分離パイプ圧入方向に直交する平坦面が形成されており、分離パイプの圧入方向は円筒形の中心軸線へ向けて径方向内方であり、ハウジングの円筒形の外形は半円柱形状のキャビティーを有する一対の金型を用いて鋳造形成され、分離パイプの圧入方向は前記一対の金型のスライド方向に対して傾斜しており、前記平坦面は、円筒形ハウジングを鋳造する際の前記一対の金型の抜き勾配を利用して鋳造形成されていることを特徴とするオイルセパレータ付圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−102741(P2012−102741A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5962(P2012−5962)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【分割の表示】特願2008−120809(P2008−120809)の分割
【原出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】