説明

オイルダムを備える液圧装置

液圧装置が、支持構造体と、支持構造体に対して回転可能に取り付けられた回転群とを含む。回転群は、シャフトと、複数の円周方向に間隔をおいて配置されたシリンダボアを有するシリンダ胴部とを含む。往復式のピストンがシャフトから延び、ピストンのそれぞれがシリンダボアのうちの関連付けられた1つの中へ延びる。結合アセンブリが、シャフトとシリンダ胴部とを、シャフトとシリンダ胴部とが一緒に回転するように結合している。液圧装置は、回転群と関連付けられ、結合アセンブリの潤滑部分に使用される作動液を取り込むように構成された少なくとも1つのオイルダムをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2009年12月22日に出願された米国特許出願第12/644,488号の出願日の利益を主張するものであり、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は液圧装置に関する。より詳細には、本発明は、回転群(rotating group)と、回転群と関連付けられた少なくとも1つのオイルダム(oil dam)とを有する液圧装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]回転群を有する液圧装置は公知である。そのような装置の1つが米国特許第4,991,492号明細書に開示されている。液圧装置の回転群は、シャフトと、結合(または三脚)アセンブリでシャフトに連結されているシリンダ胴部とを含む。シャフトに取り付けられたピストンが、シリンダ胴部に位置するシリンダボアの中へ延びる。シリンダ胴部がシャフトに対して角度をなすときに、ピストンはシリンダボア内で往復運動する。シリンダ胴部は、液圧装置が液圧ポンプと液圧モータの両方として動作することができるように、シャフトに対して傾けることができる。
【0004】
[0004]前述の液圧装置のような公知の液圧装置において、回転群は、回転群の潤滑および冷却のために作動液に浸漬されている。典型的には回転群は高速で、最大毎分5,000回転までで回転する。作動液内で回転群が回転すると、特に作動液の流れ抵抗による損失が生じる。
【0005】
[0005]これらの損失を低減するために、回転群が作動液に浸漬されていない液圧装置を提供することが望ましい。これを成し遂げるには、シャフトとシリンダ胴部との結合アセンブリの相対運動の位置に対して多少の潤滑が提供されるべきである。回転群の高速回転はそのような潤滑を困難にする。遠心力が潤滑流体を回転群の外部へ押し出そうとするからである。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本発明の少なくとも1つの実施形態は、支持構造体と、支持構造体に対して回転可能に取り付けられた回転群とを含む液圧装置を提供する。回転群は、シャフトと、複数の円周方向に間隔をおいて配置されたシリンダボアを有するシリンダ胴部とを含む。シャフトから往復式のピストンが延びており、ピストンのそれぞれがシリンダボアのうちの関連付けられた1つの中へ延びる。結合アセンブリがシャフトとシリンダ胴部とをシャフトとシリンダ胴部とが一緒に回転するように結合する。液圧装置は、回転群と関連付けられ、結合アセンブリの潤滑部分に使用される作動液を取り込むように構成された少なくとも1つのオイルダムをさらに含む。
【0007】
[0007]一実施形態によれば、液圧装置は、液圧装置内の圧力通路からオイルダムによって少なくとも一部が閉じられたキャビティへ潤滑を提供するための潤滑アセンブリをさらに含む。液圧装置は、シャフトと関連付けられたオイルダムを有してもよく、シリンダ胴部と関連付けられたオイルダムを有してもよく、シャフト・オイル・ダムとシリンダ胴部オイルダムの両方を有してもよい。
【0008】
[0008]一実施形態によれば、潤滑アセンブリは、第1の圧力通路と第2の圧力通路のうちの最低圧力の通路への流体の流れを開くための、第1の圧力通路と第2の圧力通路との圧力差に応答して段付きバルブボア内で移動可能なシャトル部分を有するバルブアセンブリを含み得る。
【0009】
[0009]次に本発明の実施形態を、添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】液圧装置と関連付けられたオイルダムを有する、本発明の一実施形態に従って構成された液圧装置の横断面図である。
【図2】図1の液圧装置のシリンダ胴部と、関連付けられたオイルダムとの横断面図である。
【図3】図1の液圧装置のためのシリンダ胴部オイルダムの下面図である。
【図4】図3の線4−4に沿ってとられた横断面図である。
【図5】図1の液圧装置のシャフトと関連付けられたオイルダムの上面図である。
【図6】図5の線6−6に沿ってとられた横断面図である。
【図7】図1の液圧装置のヨークに位置するバルブアセンブリの拡大図である。
【図8】結合シャフトと、シリンダ胴部オイルダムおよびシャフト・オイル・ダムの代替の実施形態とを示す斜視部分分解図である。
【図9】シリンダ胴部に取り付けられたオイルダムのさらに別の実施形態を示す部分断面図である。
【図10】液圧装置と関連付けられたオイルダムを有する、本発明の代替の実施形態に従って構成された液圧装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0020]図1は、本発明の一実施形態に従って構成された液圧装置10の横断面図である。以下でより詳細に論じるように、本発明の一実施形態において、図1の液圧装置10は液圧ポンプと液圧モータの両方として動作することができる。あるいは液圧装置10は、液圧ポンプと液圧モータの一方だけとして動作してもよい。
【0012】
[0021]液圧装置10は支持構造体12を含む。一例では、支持構造体12はハウジングとすることができる。支持構造体12は液圧装置10の回転群14を回転可能に支持する。回転群14はシャフト16を含み、図1にシャフト16の一部が示されている。シャフト16は、穴20がその中へ延びる端部18を含む。穴20は端壁22のところで終わり、円筒面24で形成される外周を有する。またシャフト16の端部18は、シャフト16の駆動ディスク26を形成する半径方向に外向きに延びるフランジ部分も含む。複数の半球形の穴が駆動ディスク26の中へ延びる。図1の28に半球形の穴のうちの1つが示されている。半球形の穴は、駆動ディスク26の円周周りに等間隔で配置されている。支持構造体に対するシャフトの回転を支持するために、駆動ディスク26に隣接して支持構造体12とシャフト16の外面との間に軸受34が延びる。
【0013】
[0022]また回転群14はシリンダ胴部36も含む。シリンダ胴部36の横断面が図2に示されている。シリンダ胴部36は、互いに対向する第1の端部38と第2の端部40とを含む。ブラインドホール42がシリンダ胴部36の第1の端部38の中へ延びる。ブラインドホール42は端壁44のところで終わり、シリンダ胴部36の中心線50を中心とする円筒面46で形成される外周を有する。シリンダ胴部36の第2の端部40から外向きにボス52が延びる。ボス52は円柱状の外面54を有し、第2の端部40を越えてシリンダ胴部36内へ延びる内部のローブを有するキャビティ56を画定する。図9に、ローブを有するキャビティ56の端面図を示す。ボス52は、ローブを有するキャビティ56を画定するための厚肉部分と薄肉部分の両方を含む。2つの貫通孔がブラインドホール42とローブを有するキャビティ56とを連結している。段付き貫通孔58がシリンダ胴部36の中心線50の近くに位置し、別の貫通孔60が中心線50から半径方向に離れて位置する。またシリンダ胴部36は、複数の円周方向に間隔をおいて配置されたシリンダボア62も含み、シリンダボア62のうちの1つが図2に示されている。
【0014】
[0023]シリンダ胴部36は液圧装置10のヨーク66において支持されている。図1に示すヨーク66は、留め具72によって結合されている上部ヨーク片68と下部ヨーク片70とを有する2つの部分からなるヨークである。ヨーク66はポートを有する環状プレート74を支持し、ポートのうちの1つが図1の76に示されている。シリンダ胴部36は、シリンダ胴部36のシリンダボア62が回転してポートとの流体連通し、またポートとの流体連通状態を脱するようにプレート74上で回転する。ヨーク66は第1の圧力通路80と第2の圧力通路82とを含み、作動液がプレート74のポートを出入りして流れるときに第1の圧力通路80と第2の圧力通路82とをそれぞれ通過する。図7に、ヨーク66の圧力通路80、82それぞれの部分を示す。液圧装置10の動作中に、圧力通路80または82の一方が高圧通路になり、圧力通路80または82の他方が低圧通路になる。ヨーク66は、シャフト16に対してシリンダ胴部36を傾けるために支持構造体12に対して傾けることができる。それだけに限らないが、1つまたは複数のセッティングピストン、リニアモータ、または回転モータを含む、支持構造体12に対してヨーク66を傾けるための任意の公知の手段が本発明の液圧装置10と共に使用され得る。
【0015】
[0024]また回転群14は複数のピストンも含み、複数のピストンのうちの1つが図1の88に示されている。各ピストン88は、環状の外面92と平坦な下面94によって形成される基部90を含む。ステム96が基部から下面94と逆方向に外向きに延びている。ステム96は、基部90から離れて延びるに従って幅広くなるようにテーパが付いている。各ピストン88は、ピストンリングを支持するように構成された平坦な上面100と環状の外面102とを有するヘッド部分98のところで終わる。
【0016】
[0025]ピストン88の数は、シリンダ胴部36内のシリンダボア62の数と等しい。一実施形態では、液圧装置10は9本のピストン88を含む。各ピストン88は、シリンダ胴部36のシリンダボア62のうちの関連付けられた1つの中へ延びる。各ピストン88の基部90は、駆動ディスク26の端面にある半球形の穴28のうちの関連付けられた1つにおいて受けられ、その内部で移動可能である。シリンダ胴部36がシャフト16の中心線106に対して角度をなすときに、ピストン88は、回転群14の回転中に、各ピストン88と関連付けられたシリンダボア62内で往復運動をする。シャフト16に対するシリンダ胴部36の角度が大きいほど、シリンダボア62内のピストン88の往復運動から生じる変位も大きい。
【0017】
[0026]結合アセンブリ112がシャフト16とシリンダ胴部36との間に配置され、シャフト16とシリンダ胴部36とを機械的に連結している。結合アセンブリ112は、シャフト16の穴20において受けられ、シャフトと共に回転するように固定された結合接手114を含む。図1には、シャフト16に対して結合接手114を固定する留め具116が示されている。留め具116に加えて、または留め具116の代替として、シャフト16に結合接手114を固定するための別の手段が使用されてもよいことを当業者は理解するであろう。結合接手114は内部のローブを有するキャビティ118を含む。一実施形態では、ローブを有するキャビティ118は、3つの円周方向に間隔をおいて配置されたローブを有し、図9に示すローブを有するキャビティ56と同様のものである。中央貫通孔が結合接手を貫通して延び、ローブを有するキャビティ118に連結している。圧縮ばね122とばねガイド123とが中央貫通孔において受けられ、支持ピン124の一部分を支持する。支持ピン124は、シャフト16に対して結合シャフト130の一端部を支持する。別の支持ピン126がシリンダ胴部36の段付き貫通孔58に位置し、シリンダ胴部36に対して結合シャフト130の反対側の端部を支持する。球形溝132(図8)が、関連付けられた支持ピン124または支持ピン126の一端部を受けるために結合シャフト130の各端部の中へ延びる。3つの間隔をおいて配置された脚が各端部において結合シャフト130から半径方向に外向きに延びる。図8には結合シャフト130の斜視図が示されており、シャフト端部に位置する脚が136で示され、シリンダ胴端部に位置する脚が138で示されている。結合シャフト130は結合シャフト130の両端の間に延びる。結合シャフト130の脚136と脚138とはそれぞれ、シャフト16とシリンダ胴部36とに対する結合シャフトの傾きを可能にするために関連付けられたローラを受ける。図1には、脚136上で受けられるローラ140と、脚138上で受けられるローラ142とが示されている。
【0018】
[0027]液圧装置10の回転群14は作動液に浸漬されない。よって、シャフト16とシリンダ胴部36との間に位置する液圧装置10の領域150には実質的に作動液がない。液圧装置10は、液圧装置10の動作中に、結合アセンブリ112の結合シャフト130上に位置するローラ140とローラ142とに潤滑を提供するための潤滑アセンブリを含む。潤滑アセンブリは、結合シャフト130の脚136上に位置し、シャフト16内に位置決めされたローラ140に潤滑を提供するためのシャフト潤滑部分と、結合シャフト130の脚138上に位置し、シリンダ胴部36内に位置決めされたローラ142に潤滑を提供するための胴部潤滑部分とを含む。
【0019】
[0028]シャフト潤滑部分は、結合接手114のローブを有するキャビティ118に流体を提供するための複数の流体経路を含む。経路のうちの1つが図1に示されている。その他の経路も同様に構成されている。図1に示す経路は、ピストン88を貫通して長手方向に延びる貫通孔154を含む。図1に示すように、貫通孔154は、ピストン88のヘッド部分98の平坦な上面100とピストンの基部90の平坦な下面94との間に延びる。ポート76からシリンダボア62に入る作動液が、ピストン88内の貫通孔154を通って、駆動ディスク26の半球形の穴28にあるピストン88の基部90の下方に位置するプールへ流れる。流れ経路部分156が、駆動ディスク26内の半球形の穴28のプールから駆動ディスクを通って中心線106と平行に延びる。次いで流れ経路部分156は、シャフト16の外面に沿って延びる。流れ経路部分156は、一部は、シャフト16の外面に機械加工で形成され、軸受34の密接な接触によって閉じられる溝を含んでいてもよい。流れ経路部分156は、半径方向に延びる流れ経路部分158、160と連結する。流れ経路部分158はシャフト16を貫通して半径方向に延び、流れ経路部分160は結合接手114を貫通してローブを有するキャビティ118まで半径方向に延びる。
【0020】
[0029]潤滑アセンブリの胴部潤滑部分は、ヨーク66の貫通孔内で固定され、シリンダ胴部36の第1の端部38上のブラインドホール42に延びるバルブアセンブリ166を含む。針軸受といった軸受168が、バルブアセンブリの周りでのシリンダ胴部の回転を可能にするために、バルブアセンブリ166とシリンダ胴部36との間に配置されている。バルブアセンブリ166は、図1に示すように、円筒形本体部分を通る中心線50に対して角度をなす段付きバルブボア172を有する円筒形本体部分170(図7)を含む。図7に最もよく示されるように、バルブボア172の第1の端部174と第2の端部176とは、それぞれ、バルブボアの中央部分178より直径が大きい。肩部180は、バルブボア172の第1の端部174とバルブボアの中央部分178との間の移行部を形成し、肩部182は、ボアの第2の端部174と中央部分178との間の移行部を形成する。図7に示すように、バルブボア172の第1の端部174は、第1のクロスポート186を経由してヨーク66の第1の圧力通路80と連通し、バルブボア172の第2の端部176は、第2のクロスポート188を経由してヨーク66の第2の圧力通路82と流体連通する。主潤滑通路190が、図7に示すように、バルブボア172の中央部分178から中心線50に沿って下方に延び、バルブアセンブリ166の円筒形本体部分170の下部端壁で終わる。半径方向の通路192が、プレート74に近い位置で、主潤滑通路190から円筒形本体部分170の外壁まで外向きに延びる。半径方向の通路192を通る流れが、軸受168に潤滑を提供する。
【0021】
[0030]バルブアセンブリ166のシャトル部分200がバルブボア172に位置している。シャトル部分200は、ヨーク66の第1の圧力通路80と第2の圧力通路82からバルブアセンブリ166の主潤滑通路190への潤滑流体の流れを制御する。シャトル部分200は実質的に骨型であり、狭い中央部分206によって連結された直径のより大きい第1の端部202と第2の端部204とを有する。シャトル部分200の中央区間206は、第1の端部区間202または第2の端部区間204の一方が第1の端部区間202または第2の端部区間204と関連付けられた肩部180または肩部182と接するときに、第1の端部区間202または第2の端部区間204の他方が他方の肩部180または肩部182から離れて位置するように、バルブボア172の中央部分178より長い。例えば、図7を参照すると、シャトル部分200の第1の端部区間202が肩部180に接するときに、第2の端部区間204は肩部182から離れて位置する。この例示の条件では、流体が、シャトル部分200の第2の端部区間204の辺りで、第2の圧力通路82からバルブボア172の第2の端部176の中へ流入し、バルブアセンブリ166の主潤滑通路190の中へ流入し得る。シャトル部分200は、ヨーク66の第1の圧力通路80と第2の圧力通路82との圧力差に、よって、バルブボア172の第1の端部174と第2の端部176との圧力差基づいて移動するように構成されている。高圧流体が、ヨーク66の低圧通路とバルブアセンブリ166の主潤滑通路190との間の流体連通を開くために、シャトル部分200の関連付けられた端部区間に作用して端部区間を押して端部区間と関連付けられた肩部と係合させる。
【0022】
[0031]バルブアセンブリ166の主潤滑通路190を通過する流体が、バルブアセンブリの円筒形本体部分170の下部端壁とシリンダ胴部の端壁44との間のシリンダ胴部36のブラインドホール42に位置する小さいチャンバに集まる。また、軸受168を潤滑するための半径方向の通路192を通過する流体もチャンバに集まる。チャンバ内の流体は、段付き貫通孔58と貫通孔60とを介してシリンダ胴部36のボス52のローブを有するキャビティ56と流体連通する。
【0023】
[0032]また、図1に示す液圧装置10は、シャフト16とシリンダ胴部36とに対する結合アセンブリ112の運動を潤滑する流体をそれぞれ取り込むためのローブを有するキャビティ118とキャビティ56とを少なくとも一部閉じるための、シャフト16とシリンダ胴部36とそれぞれ関連付けられたオイルダム212とオイルダム214も含む。図5に、シャフト・オイル・ダム212の上面図を示し、図6にシャフト・オイル・ダム212の横断面図を示す。シャフト・オイル・ダム212は環状であり、平坦な上壁222から下方に延びる円筒形の側壁220を含む。上壁222は、ローブを有するキャビティ118への開口の周辺部分を覆うように構成されており、中央開口226を形成するテーパ付き縁部224を含む。シャフト・オイル・ダム212の側壁220の外径は、シャフト・オイル・ダム212が穴20にしっかりと嵌まるように、シャフト16の穴20を形成する円筒面24の直径にほぼ等しい。図1に示す穴20の中へ組み付けられると、シャフト・オイル・ダム212は、結合接手114の真上に位置し、Oリング230と止め輪232との間に置かれる。止め輪232は、円筒面24に位置する溝にはまり、シャフト・オイル・ダムをシャフト16の穴20に固定し、シャフト・オイル・ダム212をシャフトと共に回転するよう固定するためにシャフト・オイル・ダム212の上壁222を係合するように構成されている。止め輪232の代替として、シャフト・オイル・ダム212を穴20において固定し、シャフト・オイル・ダム212をシャフト16と共に回転するように固定するための別の手段が使用されてもよい。シャフト・オイル・ダム212をシャフト16に対して固定するための別の手段の例には、シャフト・オイル・ダム212の穴20への圧入、接着剤、1つもしくは複数の留め具または接着剤と留め具との組み合わせを使用したシャフト16に対するシャフト・オイル・ダム212の保持、シャフト・オイル・ダム212とシャフト16の円筒面24または結合接手114の表面との間にねじ込み相互接続を設けることなどが含まれる。さらに別の代替として、シャフト・オイル・ダム212は、結合シャフト130を関連付けられたローラ140と共に挿入することを可能にするための措置が講じられる限り、シャフト16または結合接手114と一体形成されていてもよい。そのような措置には、図8を参照して説明するような、大きな中央開口や切欠きが含まれ得る。
【0024】
[0033]図3に、シリンダ胴部オイルダム214の下面図を示し、図4にシリンダ胴部オイルダム214の横断面図を示す。シリンダ胴部オイルダム214は環状であり、環状で略平坦な上壁240から下方に延びる略円筒形の側壁238を含む。いくつかのアーチ形の切欠き242が、側壁238の外周に間隔をおいて側壁238内へ延びる。切欠き242の数は、シリンダ胴部36内のシリンダボア62の数に等しい。側壁238の内径は、シリンダ胴部36の第2の端部40上でボス52を受けるためのサイズである。側壁238の長さは、ボス52の円柱状の外面54を完全に覆うために変えてもよい。上壁240は、結合シャフト230がそこを貫通して延びる中央開口244を形成する。図3に示す実施形態では、スプリングピンを受けるための3つの穴246が上壁240を貫通して延びる。図4には、穴246のうちの1つの横断面が示されており、図1には、シリンダ胴部オイルダム214をボス52に固定するために穴のうちの1つを貫通して延びるスプリングピンが示されている。図9に示す代替の実施形態では、スプリングピンを受けるための3つの穴250がシリンダ胴部オイルダム214の側壁238を貫通して延びる。図9の他の構造は前に使用したのと同じ参照番号を有する。シリンダ胴部オイルダムをシリンダ胴部と共に回転するようにボスに固定するためのスプリングピンの使用に加えて、またはその代替として、接着剤または他の留め具または両者の組み合わせが使用されてもよい。別の代替として、シリンダ胴部オイルダムはボス上に圧着されまたはスナップ嵌めされてもよい。さらに別の代替として、シリンダ胴部オイルダム214は、結合シャフト130を関連付けられたローラ142と共に挿入することを可能にするための措置が講じられる限り、シリンダ胴部36またはシリンダ胴部のボス52と一体形成されていてもよい。そのような措置には、図8を参照して説明するような、大きな中央開口や切欠きが含まれ得る。
【0025】
[0034]オイルダム212およびオイルダム214は、結合アセンブリ112のローラ140およびローラ142を潤滑するための潤滑流体を取り込むように働く。潤滑アセンブリのシャフト潤滑部分に提供される流体は、シャフト・オイル・ダム212によって結合接手114のローブを有するキャビティ118に取り込まれる。同様に、潤滑アセンブリの胴部潤滑部分に提供される流体も、シリンダ胴部オイルダム214によってボス52のローブを有するキャビティ56に取り込まれる。オイルダム212とオイルダム214との上壁222と上壁240とは、それぞれ、ローブを有するキャビティ118への開口とローブを有するキャビティ56への開口との周辺部分の上に張り出している。回転群14の高速回転により、ローブを有するキャビティ56とローブを有するキャビティ118とに位置する流体は、遠心力によって外向きに押し出される。オイルダム212とオイルダム214との張り出した部分は、液圧装置10の動作中に、ローラ140とローラ142とを潤滑するためにローブを有するキャビティ118とローブを有するキャビティ56とに流体を取り込む。
【0026】
[0035]図8は、結合シャフト130と、シャフト・オイル・ダム260とシリンダ胴部オイルダム262との代替の実施形態とをそれぞれ示す斜視部分分解図である。図8において、前述の構造と同様の構造は、前に使用したのと同じ参照番号で表示されている。図8では、シャフト・オイル・ダム260の上壁264は、図5および図6を参照して説明した上壁224よりも長い距離だけ内向きに延びる。その結果、上壁264内の開口266は、結合シャフト130の脚136を受けるには小さすぎるものになる。オイルダム260が脚136を受けることを可能にするために、3つの切欠き268(そのうちの2つが図示されている)が脚136を受けるために上壁264に形成されている。切欠き268は、シャフト・オイル・ダム260への結合シャフト130の挿入後にローラ140が脚136上に組み立てられるときには、脚136だけを受けるためのサイズとすることもでき、脚136とローラ140の両方を受けるためのサイズとすることもできる。同様に、シリンダ胴部オイルダム262の上壁272内の開口270も、結合シャフト130の脚138を受けるには小さすぎる。よって、シリンダ胴部オイルダム262も、脚138を受けるためのサイズの3つの切欠き274(そのうちの1つが完全に図示されている)を含む。切欠き274は、シリンダ胴部オイルダム262への結合シャフト130の挿入後にローラ142が脚138上に組み立てられるときには脚138だけを受けるためのサイズとすることもでき、脚138とローラ142の両方を受けるためのサイズとすることもできる。液圧装置10に組み立てるときに、切欠き268と切欠き274とは、ローブを有するキャビティ118とローブを有するキャビティ56それぞれのローブ間の厚肉部分の上に位置決めされ、脚136と脚138とは、オイルダム260とオイルダム262との、図8の276に示すような、へこんだ部分において受けられる。
【0027】
[0036]液圧装置10を組み立てる一方法によれば、シリンダ胴部オイルダム214をボス52に取り付けるためのスプリングピンがボスの穴の中へ挿入される。結合シャフト130がシリンダ胴部オイルダム214の中央開口244に挿入され、ローラ142が結合シャフトの脚138上に組み立てられる。グリースが支持ピン126を仮に支持するために段付き貫通孔58に配置され、支持ピン126はグリース内で位置決めされる。次いで結合シャフト130が、結合シャフト130の端部が支持ピン126によって支持されるようにボス52のローブを有するキャビティ56の中へ挿入される。接着剤がオイルダム214の内面に塗布され、オイルダム214は、スプリングピンがオイルダムの穴246において受けられるようにオイルダムをボス52の方へ押すことによってシリンダ胴部36に固定される。
【0028】
[0037]次に、結合接手114がシャフト16の穴20へ挿入され、シャフトに対して固定される。ばね122とばねガイド123とが結合接手114に対して位置決めされ、支持ピン124がばねガイド123に配置される。Oリング230が結合接手114の真上に組み立てられる。次にピストン88が、各ピストンを各ピストンと関連付けられた半球形の穴28に挿入することによってシャフト16に取り付けられる。次いで結合シャフト130が、止め輪232の中央開口とシャフト・オイル・ダム212とに挿入される。次に、ローラ140が結合シャフト130の脚136上に組み立てられ、結合シャフト130が、支持ピン124によって支持されるように結合接手114のローブを有するキャビティ118へ挿入される。シャフト・オイル・ダム212がOリング230と結合接手114との真上に位置決めされ、止め輪232によって所定の位置に固定される。最後に、回転群14が支持構造体12とヨーク66とに対して組み立てられる。
【0029】
[0038]図10は、本発明の代替の実施形態に従って構成された液圧装置10Aの横断面図である。図1に示す構成要素と同じ、または同様の図10の構成要素は、図1で使用したのと同じ参照番号で識別されている。図10の液圧装置10Aにおいて、潤滑アセンブリのシャフト潤滑部分は図1に示すシャフト潤滑部分とは異なる。図10の液圧装置10Aでは、ピストン88を貫通して長手方向に延びる貫通孔154は、単に、ピストンの運動を潤滑するために駆動ディスク26の半球形の穴28に潤滑を提供するにすぎない。シャフト潤滑部分は、バルブアセンブリ166の下流側に位置し、胴部潤滑部分から流体を提供される。シャフト潤滑部分は、内部のローブを有するキャビティ118に潤滑を提供するために、支持ピン124および支持ピン126と、結合シャフト130とを貫通して延びる流れ経路を含む。図10では、長手方向の流れ経路302が支持ピン124を貫通して延びる。また支持ピン126は長手方向の流れ経路304も含む。結合シャフト130は、対向する端部の間に延びる長手方向の流れ経路306と、ローラ140とローラ142それぞれの近くの脚136と脚138との表面に流体を提供するための、全体として308で示す複数の流れ経路とを含む。流れ経路308の一部分を形成する半径方向の経路は、潤滑流体をローラ140とローラ142とへ押すために、プラグによって閉じられている。また、シリンダ胴部36内の貫通孔60も、潤滑流体を、段付き貫通孔58を通して支持ピン124の長手方向の流れ経路302の中へ押し込むために、オリフィスプラグによって閉じられている。
【0030】
[0039]本明細書では本発明の原理、実施形態および動作を詳細に説明したが、本発明は、開示の特定の例示的形態だけに限定されるものと解釈すべきではない。よって当業者には、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく本明細書の実施形態の様々な改変が行われ得ることが明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体と、
前記支持構造体に対して回転可能に取り付けられ、シャフトと、複数の円周方向に間隔をおいて配置されたシリンダボアを有するシリンダ胴部とを含む回転群であって、往復式のピストンが前記シャフトから延び、前記ピストンのそれぞれが前記シリンダボアのうちの関連付けられた1つの中へ延び、結合アセンブリが前記シャフトと前記シリンダ胴部とを前記シャフトと前記シリンダ胴部とが一緒に回転するように結合する、回転群と、
前記回転群と関連付けられ、前記結合アセンブリの潤滑部分に使用される作動液を取り込むように構成された少なくとも1つのオイルダムと、
を備える液圧装置。
【請求項2】
前記回転群が作動液に浸漬されていない、請求項1に記載の液圧装置。
【請求項3】
当該液圧装置内の圧力通路から、前記オイルダムによって少なくとも一部が閉じられたキャビティに潤滑を提供するための潤滑アセンブリをさらに含む、請求項1に記載の液圧装置。
【請求項4】
前記オイルダムが、前記シャフトに対する前記結合アセンブリの一部分の運動のための潤滑を提供する流体を取り込むために前記シャフトと関連付けられている、請求項3に記載の液圧装置。
【請求項5】
前記オイルダムが、前記キャビティへの開口の周辺部分を覆うように構成された略平坦な上壁を有する環状部材である、請求項4に記載の液圧装置。
【請求項6】
前記オイルダムが、前記キャビティにおいて固定され、前記シャフトと共に回転するように固定されている、請求項5に記載の液圧装置。
【請求項7】
前記潤滑アセンブリが、前記オイルダムの下方の位置へ作動液を提供するためのシャフト潤滑部分を含み、該シャフト潤滑部分が、前記キャビティへ流体を供給するために前記シャフトを貫通して延びる半径方向に延びる流れ経路部分を含む、請求項4に記載の液圧装置。
【請求項8】
前記シャフト潤滑部分が、各ピストンを貫通して長手方向に延びる貫通孔と、前記ピストンを受けるための前記シャフト内の半球形の穴と前記半径方向に延びる流れ経路部分との間に延びる他の流れ経路部分とをさらに含む、請求項7に記載の液圧装置。
【請求項9】
前記潤滑システムが、前記シリンダ胴部のシリンダボアから前記シャフトに位置するキャビティへ流体を供給するための複数の流れ経路を含む、請求項4に記載の液圧装置。
【請求項10】
前記シリンダ胴部に対する前記結合アセンブリの一部分の運動のための潤滑を提供する流体を取り込むために前記シリンダ胴部と関連付けられたシリンダ胴部オイルダムをさらに含む、請求項4に記載の液圧装置。
【請求項11】
前記シリンダ胴部オイルダムが、前記シリンダ胴部の前記キャビティへの開口の周辺部分を覆うように構成された略平坦な上壁を有する環状部材である、請求項10に記載の液圧装置。
【請求項12】
前記シリンダ胴部のボスを受けるためのサイズの略円筒形の側壁が前記オイルダムの前記上壁から下方に延びる、請求項11に記載の液圧装置。
【請求項13】
前記シリンダ胴部オイルダムが前記シリンダ胴部に固定されており、前記シリンダ胴部と共に回転するように固定されている、請求項12に記載の液圧装置。
【請求項14】
前記潤滑アセンブリが前記シリンダ胴部キャビティへ作動液を供給するための胴部潤滑部分を含み、前記胴部潤滑部分が、前記圧力通路から、前記シリンダ胴部オイルダムによって少なくとも一部が閉じられている前記シリンダ胴部キャビティへ流体を供給するための通路を含む、請求項10に記載の液圧装置。
【請求項15】
前記圧力通路が第1の圧力通路であり、前記液圧装置が第2の圧力通路をさらに含み、前記胴部潤滑部分が、前記第1の圧力通路と前記第2の圧力通路との間に位置し、前記シリンダ胴部キャビティの流れを制御するように構成されたバルブアセンブリをさらに含む、請求項14に記載の液圧装置。
【請求項16】
前記バルブアセンブリが、前記第1の圧力通路と前記第2の圧力通路との圧力差に応答して前記バルブアセンブリの段付きバルブボア内で移動可能なシャトル部分を含み、前記シャトル部分が、前記第1の圧力通路と前記第2の圧力通路のうちの最低圧力の通路への流体の流れを開くように構成されている、請求項15に記載の液圧装置。
【請求項17】
前記オイルダムが、前記シリンダ胴部に対する前記結合アセンブリの一部分の運動のための潤滑を提供する流体を取り込むために前記シリンダ胴部と関連付けられたシリンダ胴部オイルダムである、請求項3に記載の液圧装置。
【請求項18】
前記オイルダムが、前記キャビティへの開口の周辺部分を覆うように構成された略平坦な上壁を有する環状部材である、請求項17に記載の液圧装置。
【請求項19】
前記シリンダ胴部のボスを受けるためのサイズの略円筒形の側壁が前記オイルダムの前記上壁から下方に延びる、請求項18に記載の液圧装置。
【請求項20】
前記潤滑アセンブリが、前記オイルダムの下方の位置へ作動液を供給するための胴部潤滑部分を含み、
前記圧力通路が第1の圧力通路であり、
当該液圧装置が第2の圧力通路をさらに含み、
前記胴部潤滑部分が、前記第1の圧力通路と前記第2の圧力通路との間に配置されたバルブアセンブリであって、前記第1の圧力通路と前記第2の圧力通路との圧力差に応答して該バルブアセンブリの段付きバルブボア内で移動可能なシャトル部分を有するバルブアセンブリをさらに含み、
前記シャトル部分が、前記第1の圧力通路と前記第2の圧力通路のうちの最低圧力の通路への流体の流れを開くように構成されている、請求項17に記載の液圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−515204(P2013−515204A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545959(P2012−545959)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/057577
【国際公開番号】WO2011/087576
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(598057523)パーカー・ハニフィン・コーポレーション (18)
【出願人】(511202779)カイネティクス ドライヴ ソリューションズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】