説明

オイルフィルタ

【課題】エンジンに対する取り付け・取り外しの作業及びフィルタエレメントの交換の作業が容易になるようにする。
【解決手段】有底筒状をなすケーシング2と、この中心部に軸方向に延在する態様で設けられた中心筒状部3と、これとケーシングとの間に画成されるエレメント収容室4に収容された筒状をなすフィルタエレメント5とを有し、中心筒状部は、ケーシングの底壁12の内面からケーシングの開放部8側に向けて突出した態様で設けられて、その先端部9がエンジン本体11に対して着脱自在に連結され、フィルタエレメントは、中心筒状部の先端部から中心筒状部に外嵌されると共に、その中心筒状部の先端部に着脱自在に係合する抜け止め部材13で中心筒状部に対して固定されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンに着脱自在に取り付けられて、潤滑・冷却用のオイルをろ過するオイルフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンには、潤滑や冷却の用途で用いられるオイルをろ過してオイル内の異物を取り除くオイルフィルタが設けられている。この種のオイルフィルタでは、ろ紙の折り返しによるヒダ部が周方向に多数並んで全体として厚肉な円筒状をなすフィルタエレメントを、有底円筒状をなすケーシング内に収容して、未ろ過オイルを外側からフィルタエレメントに流入させて、フィルタエレメントの内側からろ過済みオイルを回収するようにした構成のものが広く用いられている。
【0003】
また、この種のオイルフィルタでは、経年使用によりフィルタエレメントが目詰まりを起こすことでろ過機能が低下すると、オイルフィルタを交換する必要があるため、エンジンに着脱自在に取り付けられる構成となっており、例えばケーシングを2分割してその一方をエンジン側に形成した構成のものや、ケーシングの中心部を貫通するセンタボルトをエンジン側にねじ込んで取り付ける構成のもの(ボルトオン型)や、ケーシングの開放部にめねじが形成された部材を設けて、ケーシングを回転させることでエンジンに取り付ける構成のもの(スピンオン型)が知られている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−291939号公報
【特許文献2】特開2004−251185号公報
【特許文献3】特開2005−171985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のケーシングを2分割した構成のオイルフィルタでは、オイルフィルタを交換する際に、ケーシングとは別にフィルタエレメントをエンジン側から取り外すしたりエンジン側に取り付けたりする必要があり、エンジンに対する取り付け・取り外し時の作業性が悪いという問題があった。
【0006】
また、前記のボルトオン型のオイルフィルタでは、センタボルトを取り外すと、その挿通孔から高温のオイルが漏れ出すため、火傷を負わないように慎重に作業を進める必要があり、エンジンに対する取り付け・取り外し時の作業性が悪いという問題があった。
【0007】
また、前記のスピンオン型のオイルフィルタでは、めねじが形成された部材がケーシングの開放部を覆うように設けられていることから、このめねじが形成された部材をケーシングから取り外さなければ、フィルタエレメントを取り出すことができないため、フィルタエレメントの交換が難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、エンジンに対する取り付け・取り外しの作業及びフィルタエレメントの交換の作業が容易になるように構成されたオイルフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、有底筒状をなすケーシング(2・102)と、このケーシングの中心部に軸方向に延在する態様で設けられた中心筒状部(3・103)と、この中心筒状部と前記ケーシングとの間に画成されるエレメント収容室(4・104)に収容された筒状をなすフィルタエレメント(5)とを有し、前記中心筒状部の周壁に、その内部に画成されたオイル回収路(6・106)と前記エレメント収容室の2次側(4b・104b)とを連通する態様で、ろ過済みオイル用流通孔(7・107)が開設されたオイルフィルタ(1・101)であって、前記中心筒状部は、前記ケーシングの底壁(12・112)の内面から前記ケーシングの開放部(8・108)側に向けて突出した態様で設けられて、その先端部(9・109)がエンジン本体(11)に対して着脱自在に連結され、前記フィルタエレメントは、前記中心筒状部の先端部から前記中心筒状部に外嵌されると共に、その中心筒状部の先端部に着脱自在に係合する抜け止め部材(13)で前記中心筒状部に対して固定された構成とする。
【0010】
これによると、フィルタエレメントが中心筒状部を介してケーシングに一体に保持されるため、エンジン本体に対する取り付け・取り外しの作業が容易になる。しかも、抜け止め部材を中心筒状部から取り外すことで、フィルタエレメントを中心筒状部から抜き取ることができ、フィルタエレメントの交換の作業が容易になる。
【0011】
前記課題を解決するためになされた第2の発明は、前記第1の発明において、前記エレメント収容室の1次側(4a・104a)と2次側(4b・104b)とを連通するバイパス通路(21・121)を開閉するリリーフバルブ(22)をさらに有し、このリリーフバルブは、前記中心筒状部の内部において前記オイル回収路より前記ケーシングの底壁側に画成されたバルブ収容室(23・123)に収容された構成とする。
【0012】
これによると、フィルタエレメントの目詰まりなどによりエレメント収容室の1次側と2次側との圧力差が過大となることに起因するフィルタエレメントの破損を防止することができる。しかも、リリーフバルブが中心筒状部の内部に収容されることから、リリーフバルブがフィルタエレメントを脱着する際の邪魔にならないため、フィルタエレメントの脱着が容易になる。
【0013】
前記課題を解決するためになされた第3の発明は、前記第2の発明において、前記バイパス通路は、前記エレメント収容室の1次側のオイルを前記バルブ収容室に導くように前記ケーシングの底壁側に設けられた1次側通路(24・124)と、前記バルブ収容室と前記エレメント収容室の2次側とを連通する態様で前記中心筒状部の周壁に開設された未ろ過オイル用流通孔(25・125)とで構成され、前記リリーフバルブは、前記バルブ収容室内を軸方向に進退して前記未ろ過オイル用流通孔を開閉するように設けられた弁体(26)と、この弁体を全閉位置に向けて付勢するばね(27)とを備えた構成とする。
【0014】
これによると、中心筒状部の周壁をリリーフバルブのハウジングに兼用することができるため、小型化を図ると共に製造コストを削減することができる。
【0015】
前記課題を解決するためになされた第4の発明は、前記第1〜第3の発明において、前記ケーシングは、その底壁の内面から軸方向に突出する連結凸部(17)を備え、前記中心筒状部は、前記ケーシングと予め別体で成形されて、前記ケーシングの底壁側の基端部(18)に前記連結凸部を嵌入させた態様で前記ケーシングの底壁に対して固定された構成とする。
【0016】
これによると、中心筒状部とケーシングとが予め別体で成形されて両者を組み付けるようにしたため、製造が容易になる。そして、中心筒状部の基端部に連結凸部を嵌入させて固定するため、中心筒状部を高い支持剛性をもってケーシングに固定することができる。
【0017】
さらに、中心筒状部とケーシングとを組み付ける前に、中心筒状部におけるケーシングの底壁側の基端部の開口からリリーフバルブを挿入することで、リリーフバルブを中心筒状部に組み付けることができ、組み付けが容易になる。
【0018】
前記課題を解決するためになされた第5の発明は、前記第4の発明において、前記1次側通路は、前記ケーシングの底壁に当接する前記中心筒状部の端面に径方向に形成された径方向溝(31)と、前記中心筒状部の端面の内周側に周方向に形成された周方向溝(32)と、前記連結凸部の外周面に軸方向に形成された軸方向溝(33)とで形成され、前記周方向溝を介して前記径方向溝と前記軸方向溝とが連通された構成とする。
【0019】
これによると、肉厚を増大することなく中心筒状部とケーシングの連結凸部との接合剛性を保ちながら1次側通路を設けることができる。しかも、周方向溝を介して径方向溝と軸方向溝とが連通されるので、径方向溝と軸方向溝とが整合するように中心筒状部と連結凸部との相対角度を合わせる面倒がなくなる。
【0020】
前記課題を解決するためになされた第6の発明は、前記第4・第5の発明において、前記連結凸部の頂面(29)に、軸方向に突出した態様で前記弁体を規制する突起(35)が形成され、前記連結凸部の頂面と前記弁体の前面とが常時離間した状態に保持されるようにした構成とする。
【0021】
これによると、1次側通路を介して弁体の前面側に導入されたオイルの圧力で弁体を全閉位置から開く際に、弁体においてオイルの圧力が作用する受圧面積が大きくなるため、リリーフバルブの開動作を迅速に行わせることができる。
【0022】
前記課題を解決するためになされた第7の発明は、前記第4・第5の発明において、前記連結凸部の頂面に、前記1次側通路と連通された態様で凹部(51)が形成された構成とする。
【0023】
これによると、1次側通路を介して弁体の前面側に導入されるオイルの圧力で弁体を全閉位置から開く際に、弁体においてオイルの圧力が作用する受圧面積が大きくなるため、リリーフバルブの開動作を迅速に行わせることができる。
【0024】
前記課題を解決するためになされた第8の発明は、前記第1〜第7の発明において、前記中心筒状部における前記ケーシングの底壁側の基端部(18)に、径方向外向きに延出したフランジ(19)が形成され、前記フィルタエレメントが、前記フランジと前記抜け止め部材との間に挟み込まれた態様で前記中心筒状部に固定された構成とする。
【0025】
これによると、フィルタエレメントを中心筒状部に確実に固定することができ、また、フィルタエレメントの固定のためにケーシングの底壁に大きな荷重を作用させずに済むため、撓みやすいケーシングの底壁の変形を避けることができる。しかも、一端側でフィルタエレメントが中心筒状部のフランジに密接し、他端側でフィルタエレメントが抜け止め部材に密接することで、エレメント収容室の1次側と2次側とを確実に仕切ることができる。
【0026】
前記課題を解決するためになされた第9の発明は、前記第1〜第3の発明において、前記中心筒状部(103)は、前記ケーシング(102)と予め別体で成形されると共に、当該中心筒状部を前記ケーシングの底壁(112)に連結する連結筒状部(117)が、前記ケーシングと予め別体で成形されて前記ケーシングの底壁に固着され、前記中心筒状部が、前記ケーシングの底壁側の基端部(118)を前記連結筒状部に嵌合させた態様でその連結筒状部を介して前記ケーシングの底壁に対して固定された構成とする。
【0027】
これによると、中心筒状部とケーシングとが予め別体で成形されて両者を組み付けるようにしたため、製造が容易になる。さらに、中心筒状部をケーシングに固定するための連結筒状部をケーシングと別部材としたため、より一層製造が容易となる。そして、中心筒状部の基端部を連結筒状部に嵌合させて固定するため、中心筒状部を高い支持剛性をもってケーシングに固定することができる。
【0028】
前記課題を解決するためになされた第10の発明は、前記第9の発明において、前記ケーシングの底壁の内面側に凹部(133)が径方向に形成されると共に、前記連結筒状部における前記ケーシングの底壁側に径方向外向きに延出したフランジ(119)が形成され、前記底壁における前記凹部間に設けられた凸部(134)に前記フランジが接合されて前記連結筒状部が前記ケーシングの底壁に固定され、前記底壁の凹部と前記連結筒状部のフランジとの間に画成された空室(135)における外周側の開放部(135a)を前記エレメント収容室(104)の1次側(104a)に連通させると共に中心側の開放部(135b)を前記中心筒状部の内部に連通させて前記1次側通路(124)が形成された構成とする。
【0029】
これによると、ケーシングの底壁側にのみ凹凸を設ける加工を施すことで1次側通路を設けることができ、連結筒状部の端面は平坦で、連結筒状部に特別な加工を施す必要がないため、連結筒状部の寸法、特にケーシングの底壁に接合されるフランジの肉厚を小さくすることができる。
【0030】
さらに、連結筒状部のフランジにより連結筒状部とケーシングの底壁とを大きな面積で当接させて接合することができるため、連結筒状部をケーシングの底壁に強固に固定して、中心筒状部を支持する連結筒状部の支持剛性を高めることができる。
【0031】
前記課題を解決するためになされた第11の発明は、前記第9・第10の発明において、前記連結筒状部における前記ケーシングの底壁側に径方向外向きに延出したフランジが形成され、前記フィルタエレメントが、前記連結筒状部のフランジと前記抜け止め部材との間に挟み込まれた態様で前記中心筒状部に固定された構成とする。
【0032】
これによると、フィルタエレメントを中心筒状部に確実に固定することができ、また、フィルタエレメントの固定のためにケーシングの底壁に大きな荷重を作用させずに済む。しかも、一端側でフィルタエレメントが中心筒状部のフランジに密接し、他端側でフィルタエレメントが抜け止め部材に密接することで、エレメント収容室の1次側と2次側とを確実に仕切ることができる。
【0033】
前記課題を解決するためになされた第12の発明は、前記第1〜第11の発明において、前記フィルタエレメントは、ろ過シート材の折り返しによるヒダ部(41)が周方向に多数並んで全体として厚肉な円筒状をなし、その中心部に嵌挿された筒状のホルダ(43)に保持されると共に、前記ヒダ部を径方向に対して傾斜させた状態でエレメントケース(44)内に収容された構成とする。
【0034】
これによると、フィルタエレメントの外周側をエレメントケースが覆うことで、フィルタエレメントのヒダ部が径方向に対して傾斜した状態に保持され、単位容積当たりのフィルタエレメントの表面積(ろ過面積)が増大するため、ろ過機能を向上させると共に省スペース化を図ることができる。
【0035】
前記課題を解決するためになされた第13の発明は、前記第12の発明において、前記エレメントケースが、前記フィルタエレメントの外周側を部分的に覆う周壁(46)と、前記中心筒状部が挿入される中心孔(48)が開設された底壁(47)とを備えた有底筒状をなし、前記周壁で覆われない前記フィルタエレメントの部分が前記ケーシングの底壁側に位置するように設けられた構成とする。
【0036】
これによると、ケーシングの開放部側から導入されたオイルが、ケーシングの開放部と相反する底壁側からフィルタエレメントに進入するため、オイルがフィルタエレメントを通過する距離を長く確保することができ、これによりろ過効率を高めることができる。
【0037】
しかも、フィルタエレメントにおけるケーシングの開放部側の部分がエレメントケースによって覆われるため、オイルの逆流を抑制することができ、逆止弁を廃止することができる。このため、製造コストを削減することができ、さらに一般的にゴム材で形成される逆止弁がなくなることで、再利用が容易になる。しかも、逆止弁がないため、オイルフィルタ内に洗浄液を逆流方向に流通させることができ、これによりオイルフィルタを分解することなくフィルタエレメントの洗浄を行うことができる。
【発明の効果】
【0038】
このように本発明によれば、フィルタエレメントが中心筒状部を介してケーシングに一体に保持されるため、エンジン本体に対する取り付け・取り外しの作業が容易になる。しかも、抜け止め部材を中心筒状部から取り外すことで、フィルタエレメントを中心筒状部から抜き取ることができ、フィルタエレメントの交換の作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るオイルフィルタを示す断面図である。
【図2】図1に示したオイルフィルタの取付状況を示す図である。
【図3】図1に示したオイルフィルタの組立状況を示す図である。
【図4】図1に示したオイルフィルタの組立状況を示す図である。
【図5】図1に示したオイルフィルタにおけるリリーフバルブの全開状態を示す断面図である。
【図6】図1に示した1次側通路を示す斜視図である。
【図7】図1に示した連結凸部を示す斜視図である。
【図8】図1に示したフィルタエレメントを示す要部断面図である。
【図9】図7に示した連結凸部の別例を示す斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るオイルフィルタを示す断面図である。
【図11】図10に示したオイルフィルタの組立状況を示す図である。
【図12】図10に示したオイルフィルタにおけるリリーフバルブの全開状態を示す断面図である。
【図13】図10に示したケーシングの底壁及び連結筒状部を示す斜視図であり、(A)に組み付け前の状態を、(B)に組み付け後の状態をそれぞれ示す。
【図14】図10に示したXIV−XIV線で切断した断面図である。
【図15】図10に示したXV−XV線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0041】
<第1の実施形態>
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係るオイルフィルタ1は、有底円筒状をなすケーシング2と、このケーシング2の中心部に軸線方向に延在する態様で設けられた中心筒状部3と、この中心筒状部3とケーシング2との間に画成されるエレメント収容室4に収容された円筒状をなすフィルタエレメント5とを有している。
【0042】
中心筒状部3の周壁には、その内部に画成されたオイル回収路6とエレメント収容室4の2次側(クリーン側)4bとを連通する態様で、ろ過済みオイル用流通孔7が開設されており、未ろ過オイルがケーシング2の開放部8からエレメント収容室4の1次側(ダスト側)4aに導入され、フィルタエレメント5とろ過済みオイル用流通孔7を通過してオイル回収路6に流入したろ過済みオイルが中心筒状部3におけるケーシング2の開放部8側の先端部9から回収されるようになっている。
【0043】
中心筒状部3は、ケーシング2の底壁12の内面からケーシング2の開放部8側に向けて軸方向に突出した態様で設けられて、その先端部9がエンジン本体11に対して着脱自在に連結される。図2に示すように、エンジン本体11には取付筒体14が予め固定されており、この取付筒体14に形成されたおねじに、中心筒状部3の先端部9に形成されためねじを螺合させることで、オイルフィルタ1がエンジン本体11に取り付けられ、作業者は、手指でケーシング2を把持して、あるいは適宜な工具をケーシング2に係合させて、ケーシング2を回転させることで、オイルフィルタ1の取り付け・取り外しを行うことができる。
【0044】
ケーシング2は、その開放部8がエンジン本体11の取付面11aで閉鎖された態様でエンジン本体11に取り付けられ、その開放部8側の端部15に嵌め込まれたオーリング16がエンジン本体11の取付面に圧接してシールが行われる。
【0045】
図3に示すように、フィルタエレメント5は、中心筒状部3の先端部9から中心筒状部3に外嵌されると共に、その中心筒状部3の先端部9に着脱自在に係合する抜け止め部材13で中心筒状部3に対して固定されるようになっている。特にここでは、抜け止め部材13が、中心筒状部3の先端部9に形成されたおねじに螺合するナットとなっている。なお、抜け止め部材は、止め輪などのように中心筒状部3に弾発的に係合してフィルタエレメント5を係止する構成のものも可能である。
【0046】
これにより、フィルタエレメント5が中心筒状部3を介してケーシング2に一体に保持されるため、エンジン本体11に対する取り付け・取り外しの作業が容易になる。しかも、抜け止め部材13を中心筒状部3から取り外すだけで、フィルタエレメント5を中心筒状部3から抜き取ることができ、フィルタエレメント5の交換が容易になる。
【0047】
図4に示すように、ケーシング2は、その底壁12の内面から軸方向に突出する連結凸部17を備え、中心筒状部3は、ケーシング2と予め別体で成形されて、ケーシング2の底壁12側の基端部18に連結凸部17を嵌入させた態様でケーシング2の底壁12に対して固定される。特にここでは、連結凸部17の周面に形成されたおねじに、中心筒状部の基端部18に形成されためねじを螺合させることで固定されるようになっている。また、工具で強固に締め付けることができるように、中心筒状部3の基端部18の外周が6角形に形成されている(図6参照)。
【0048】
なお、中心筒状部3の基端部18と連結凸部17との接触面に接着剤を塗布して、中心筒状部3の基端部18と連結凸部17とを螺合に加えて接着固定するようにすると良い。
【0049】
このように中心筒状部3とケーシング2とが予め別体で成形されて両者を組み付けるようにしたため、製造が容易になる。そして、中心筒状部3の基端部18に連結凸部17を嵌入させて固定するため、中心筒状部3を高い支持剛性をもってケーシング2に固定することができる。なお、中心筒状部3は、ケーシング2と一体成形することも可能である。
【0050】
図1に示したように、中心筒状部3におけるケーシング2の底壁12側の基端部18には、径方向外向きに延出したフランジ19が形成され、フィルタエレメント5が、フランジ19と抜け止め部材13との間に挟み込まれた態様で中心筒状部3に固定される。
【0051】
これにより、フィルタエレメント5を中心筒状部3に確実に固定することができ、また、フィルタエレメント5の固定のためにケーシング2の底壁12に大きな荷重を作用させずに済むため、撓みやすいケーシング2の底壁12の変形を避けることができる。しかも、一端側でフィルタエレメント5が中心筒状部3のフランジ19に密接し、他端側でフィルタエレメント5が抜け止め部材13に密接することで、エレメント収容室4の1次側4aと2次側4bとを確実に仕切ることができる。
【0052】
また本オイルフィルタ1は、図1に示したように、エレメント収容室4の1次側4aと2次側4bとを連通するバイパス通路21を開閉するリリーフバルブ22を有しており、このリリーフバルブ22は、中心筒状部3の内部においてオイル回収路6よりケーシング2の底壁12側に画成されたバルブ収容室23に収容されている。
【0053】
これにより、フィルタエレメント5の目詰まりなどによりエレメント収容室4の1次側4aと2次側4bとの圧力差が過大となることに起因するフィルタエレメント5の破損を防止することができる。
【0054】
さらに、図4に示したように、中心筒状部3とケーシング2とを組み付ける前に、中心筒状部3におけるケーシング2の底壁12側の基端部18の開口からリリーフバルブ22を挿入することで、リリーフバルブ22を中心筒状部3に組み付けることができ、組み付けが容易になる。しかも、リリーフバルブ22が中心筒状部3の内部に収容されていることから、リリーフバルブ22がフィルタエレメント5を脱着する際の邪魔にならないため、フィルタエレメント5の脱着が容易になる。
【0055】
図1に示したように、バイパス通路21は、エレメント収容室4の1次側4aのオイルをバルブ収容室23に導くようにケーシング2の底壁12側に設けられた1次側通路24と、バルブ収容室23とエレメント収容室4の2次側4bとを連通する態様で中心筒状部3の周壁に開設された未ろ過オイル用流通孔25とで構成され、リリーフバルブ22は、バルブ収容室23内を軸方向に進退して未ろ過オイル用流通孔25を開閉するように設けられた弁体26と、この弁体26を全閉位置に向けて付勢するばね27とを備えている。
【0056】
これにより、中心筒状部3の周壁をリリーフバルブ22のハウジングに兼用することができるため、小型化を図ると共に製造コストを削減することができる。
【0057】
ばね27は、その一端が弁体26の背面に当接すると共に、中心筒状部3の周壁から内向きに延出された環状凸部28に他端が当接して、弁体26を連結凸部17の頂面29に近接する向きに付勢し、弁体26が連結凸部17に規制されて未ろ過オイル用流通孔25を閉鎖する全閉位置に保持される。
【0058】
弁体26の前面には、1次側通路24を介してエレメント収容室4の1次側4aの圧力が作用し、弁体26の背面には、オイル回収路6とバルブ収容室23とを連通させることで、エレメント収容室4の2次側4bの圧力が作用している。
【0059】
このため、フィルタエレメント5の目詰まりなどによりエレメント収容室4の1次側4aと2次側4bとの圧力差が過大となり、弁体26の前面に作用する1次側4aの圧力が、弁体26の背面に作用する2次側4bの圧力にばね27の付勢力を加えたものより大となると、図5に示すように、弁体26が後退して未ろ過オイル用流通孔25が開放され、エレメント収容室4の1次側4aのオイルが、1次側通路24及び未ろ過オイル用流通孔25を通ってエレメント収容室4の2次側4bに流入した後、ろ過済みオイル用流通孔7を通ってオイル回収路6に流入し、中心筒状部3の先端部9側から回収される。
【0060】
図6に示すように、1次側通路24は、中心筒状部3の基端部18においてケーシング2の底壁12に当接するフランジ19の端面に径方向に形成された径方向溝31と、フランジ19の端面の内周側に周方向に形成された周方向溝32と、連結凸部17の外周面に軸方向に形成された軸方向溝33とで形成され、周方向溝32を介して径方向溝31と軸方向溝33とが連通されている。特にここでは、中心筒状部3側の径方向溝31及び周方向溝が6つ形成され、連結凸部17側の軸方向溝33が4つ形成されている。
【0061】
中心筒状部3側の径方向溝31は、フランジ19の内外を相互に連通し、周方向溝32は、径方向溝31の内端側の開放部を相互に連通し、エレメント収容室4の1次側4aのオイルが、径方向溝31を径方向内向きに流通した後、連結凸部17側の軸方向溝33に流入し、径方向溝31と軸方向溝33とが整合しない部分では、オイルが径方向溝31から周方向溝32を通って軸方向溝33に流入する。連結凸部17側の軸方向溝33は、ケーシング2の底壁12の内面近傍から連結凸部17の頂面29に至る範囲に形成されている(図7参照)。
【0062】
これにより、肉厚を増大することなく中心筒状部3とケーシング2の連結凸部17との接合剛性を保ちながら1次側通路24を設けることができる。しかも、周方向溝32を介して径方向溝31と軸方向溝33とが連通されるので、径方向溝31と軸方向溝33とが整合するように中心筒状部3と連結凸部17との相対角度を合わせる面倒がなくなる。
【0063】
また、図1に示したように、連結凸部17の頂面29に、軸方向に突出した態様でリリーフバルブ22の弁体26を規制する突起35が形成され、連結凸部17の頂面29と弁体26の前面とが常時離間した状態に保持されるようになっている。
【0064】
これにより、1次側通路24を介して弁体26の前面側に導入されたオイルの圧力で弁体26を全閉位置から開く際に、弁体26においてオイルの圧力が作用する受圧面積が大きくなるため、リリーフバルブ22の開動作を迅速に行わせることができる。連結凸部17の頂面29に突起35がなく、連結凸部17の頂面29と弁体26の前面とが全面的に当接していると、連結凸部17の周面に形成された軸方向溝33の頂面29側の開放面でのみオイルの圧力が弁体26に作用するため、弁体26の受圧面積が小さく、リリーフバルブ22の開動作時の応答性が低下し、望ましくない。
【0065】
図8に示すように、フィルタエレメント5は、ろ過シート材の折り返しによるヒダ部41が周方向に多数並んで全体として厚肉な円筒状をなし、その中心部に嵌挿された筒状のホルダ43に保持されると共に、ヒダ部41を径方向に対して傾斜させた状態でエレメントケース44内に収容されている。ホルダ43には、オイルが流通する多数の孔45が開設されている。フィルタエレメント5のヒダ部41の径方向に対する傾斜角度θは約60°とすると良い。フィルタエレメント5を構成するろ過シート材には、紙製のものも可能であるが、ステンレススチール製メッシュを用いると、洗浄が容易になる。
【0066】
これにより、フィルタエレメント5の外周側をエレメントケース44が覆うことで、ヒダ部41が径方向に対して傾斜した状態に保持され、単位容積当たりのフィルタエレメント5の表面積(ろ過面積)が増大するため、ろ過機能を向上させると共に省スペース化を図ることができる。
【0067】
エレメントケース44は、図1に示したように、フィルタエレメント5の外周側を部分的に覆う周壁46と、中心筒状部3が挿入される中心孔48が開設された底壁47とを備えた有底円筒状をなし、開放部49より外側で周壁46で覆われないフィルタエレメント5の部分がケーシング2の底壁12側に位置するように設けられている。
【0068】
これにより、ケーシング2の開放部8側から導入されたオイルが、ケーシング2の底壁12側からフィルタエレメント5に進入するため、オイルがフィルタエレメント5を通過する距離を長く確保することができ、これによりろ過効率を高めることができる。中心筒状部3のろ過済みオイル用流通孔7は、ケーシング2の開放部8側に位置するため、エレメントケース44が存在しないと、ろ過済みオイル用流通孔7よりケーシング2の開放部8側のフィルタエレメント5の部分をオイルが通過するようになり、オイルがフィルタエレメント5を通過する距離が短くなり、望ましくない。
【0069】
しかも、フィルタエレメント5におけるケーシング2の開放部8側の部分がエレメントケース44によって覆われるため、オイルの逆流を抑制することができ、逆止弁を廃止することができる。このため、製造コストを削減することができ、さらに一般的にゴム材で形成される逆止弁がなくなることで、再利用が容易になる。しかも、逆止弁がないため、オイルフィルタ1内に洗浄液を逆流方向に流通させることができ、これによりオイルフィルタ1を分解することなくフィルタエレメント5の洗浄を行うことができる。
【0070】
エレメントケース44は、中心孔48の開口縁部が抜け止め部材13とホルダ43との間に挟み込まれることで、抜け止め部材13によってフィルタエレメント5と共に中心筒状部3に固定される。また、エレメントケース44は、図3に示したように、フィルタエレメント5及びホルダ43と一体化された状態で取り扱うことができるため、分解・組み立てが容易になる。
【0071】
なお、エレメントケース44の周壁46や底壁47にスリットを設けるようにしても良い。これにより、ろ過済みオイル用流通孔7を挟んでエレメントケース44の開放部49と相反する側のフィルタエレメント5の部分にもオイルが通過するようになり、オイルがフィルタエレメント5を全体的に且つ均一に通過するようになる。特にスリットを軸方向に延在するように設けてオイルの整流を図るようにすると良い。
【0072】
このように構成されたオイルフィルタ1では、オーリング16を除く構成部品を全て金属製とすることができる。例えば、ケーシング2はアルミニウム合金のダイキャストにより製作することができ、中心筒状部3は、炭素鋼(例えばS45C)の切削加工により製作することができ、フィルタエレメント5はステンレススチール製メッシュで製作することができ、リリーフバルブ22の弁体26は鋼板(例えばSP)の絞り加工により製作することができ、エレメントケース44はアルミニウム合金のインパクト成形により製作することができる。これにより、再利用が容易になり、環境保護に貢献することができる。
【0073】
ところで、以上の例では、リリーフバルブ22が開く際の弁体26の受圧面積を大きく確保するため、図7に示したように、連結凸部17の頂面29に突起35が形成された構成としたが、図9に示すように、連結凸部17の頂面29に、軸方向溝33と連通された態様で凹部51が形成された構成としても良い。特にここでは凹部51が径方向に溝状に形成されている。このような構成でも、全閉位置での連結凸部17と弁体26との当接面積を小さくして、弁体26の受圧面積を大きく確保することができる。
【0074】
なお、このように全閉位置での連結凸部17と弁体26との当接面積を小さくすることで、弁体26の受圧面積を大きく確保することができるが、連結凸部17と弁体26との当接面積を小さくすると、連結凸部17と弁体26との衝突時に弁体26に作用する応力が大きくなるため、リリーフバルブ22の耐久性が低下する場合がある。このため、弁体26の材質や必要とされるリリーフバルブ22の応答性などを勘案して、突起35や凹部51を大きさを設定すると良い。
【0075】
<第2の実施形態>
図10に示すように、本発明の第2の実施形態に係るオイルフィルタ101は、有底円筒状をなすケーシング102と、このケーシング102の中心部に軸線方向に延在する態様で設けられた中心筒状部103と、この中心筒状部103とケーシング102との間に画成されるエレメント収容室104に収容された円筒状をなすフィルタエレメント5とを有している。
【0076】
中心筒状部103の周壁には、その内部に画成されたオイル回収路106とエレメント収容室104の2次側(クリーン側)104bとを連通する態様で、ろ過済みオイル用流通孔107が開設されており、未ろ過オイルがケーシング102の開放部108からエレメント収容室104の1次側(ダスト側)104aに導入され、フィルタエレメント5とろ過済みオイル用流通孔107を通過してオイル回収路106に流入したろ過済みオイルが中心筒状部103におけるケーシング102の開放部108側の先端部109から回収されるようになっている。
【0077】
中心筒状部103は、ケーシング102の底壁112の内面からケーシング102の開放部108側に向けて軸方向に突出した態様で設けられて、その先端部109がエンジン本体11に対して着脱自在に連結される。図2に示す例と同様に、エンジン本体11には取付筒体14が予め固定されており、この取付筒体14に形成されたおねじに、中心筒状部103の先端部109に形成されためねじを螺合させることで、オイルフィルタ101がエンジン本体11に取り付けられ、作業者は、手指でケーシング102を把持して、あるいは適宜な工具をケーシング102に係合させて、ケーシング102を回転させることで、オイルフィルタ101の取り付け・取り外しを行うことができる。
【0078】
ケーシング102は、その開放部108がエンジン本体11の取付面11aで閉鎖された態様でエンジン本体11に取り付けられ、その開放部108側の端部115に嵌め込まれたオーリング116がエンジン本体11の取付面に圧接してシールが行われる。
【0079】
図3に示す例と同様に、フィルタエレメント5は、中心筒状部103の先端部109から中心筒状部103に外嵌されると共に、その中心筒状部103の先端部109に着脱自在に係合する抜け止め部材13で中心筒状部103に対して固定されるようになっている。特にここでは、抜け止め部材13が、中心筒状部103の先端部109に形成されたおねじに螺合するナットとなっている。なお、抜け止め部材は、止め輪などのように中心筒状部103に弾発的に係合してフィルタエレメント5を係止する構成のものも可能である。
【0080】
これにより、フィルタエレメント5が中心筒状部103を介してケーシング102に一体に保持されるため、エンジン本体11に対する取り付け・取り外しの作業が容易になる。しかも、抜け止め部材13を中心筒状部103から取り外すだけで、フィルタエレメント5を中心筒状部103から抜き取ることができ、フィルタエレメント5の交換が容易になる。
【0081】
図11に示すように、中心筒状部103は、ケーシング102と予め別体で成形されると共に、その中心筒状部103をケーシング102の底壁112に連結する連結筒状部117が、ケーシング102と予め別体で成形されてケーシング102の底壁112に固着され、中心筒状部103が、ケーシング102の底壁112側の基端部118を連結筒状部117に嵌合させた態様でその連結筒状部117を介してケーシング102の底壁112に対して固定される。特にここでは、連結筒状部117に形成されためねじに、中心筒状部103の基端部118に形成されたおねじを螺合させることで固定されるようになっている。
【0082】
なおここでは、中心筒状部103の基端部118を連結筒状部117の内部に嵌入させる構成としたが、これとは逆に、中心筒状部103の基端部118の内部に連結筒状部117を嵌入させる構成も可能である。この場合、連結筒状部117におねじが、中心筒状部103の基端部118にめねじがそれぞれ形成される。
【0083】
中心筒状部103には、連結筒状部117の端面117aに当接して中心筒状部103の基端部118が連結筒状部117の内部に過度に入り込むことを規制するストッパー120がフランジ状に設けられている。このストッパー120により、連結筒状部117の底壁112側の端面117bと、中心筒状部103の基端部118側の端面103aとが概ね整合する軸方向位置に中心筒状部103が固定される(図10参照)。
【0084】
これにより、過剰な締め付けトルクによる連結筒状部117の破損を防止すると共に、中心筒状部103を支持する連結筒状部117の支持剛性を高めることができる。また、連結筒状部117の端面117bから中心筒状部103の基端部118が突出することを防止して、後述するバイパス通路121の1次側通路124でのオイルの流れが阻害されることを避けることができる。
【0085】
なお、中心筒状部103の基端部118と連結筒状部117との接触面に接着剤(例えばエポキシ係接着剤)を塗布して、中心筒状部103の基端部118と連結筒状部117とを螺合に加えて接着により固定するようにすると良い。これにより、中心筒状部103と連結筒状部117と螺合の弛みを確実に防止すると共に、締め付けトルクを小さくすることができる。
【0086】
このように中心筒状部103とケーシング102とが予め別体で成形されて両者を組み付けるようにしたため、製造が容易になる。さらに、中心筒状部103をケーシング102に固定するための連結筒状部117をケーシング102と別部材としたため、より一層製造が容易となる。そして、中心筒状部103の基端部118を連結筒状部117に嵌合させて固定するため、中心筒状部103を高い支持剛性をもってケーシング102に固定することができる。
【0087】
図10に示したように、連結筒状部117におけるケーシング102の底壁112側には、径方向外向きに延出したフランジ119が形成され、フィルタエレメント5が、連結筒状部117のフランジ119と抜け止め部材13との間に挟み込まれた態様で中心筒状部103に固定される。
【0088】
これにより、フィルタエレメント5を中心筒状部103に確実に固定することができ、また、フィルタエレメント5の固定のためにケーシング102の底壁112に大きな荷重を作用させずに済む。しかも、一端側でフィルタエレメント5が連結筒状部117のフランジ119に密接し、他端側でフィルタエレメント5が抜け止め部材13に密接することで、エレメント収容室104の1次側104aと2次側104bとを確実に仕切ることができる。
【0089】
ケーシング102の底壁112と周壁113とは、鋼板のプレス加工により予め別体に成形され、底壁112の外周部と周壁113の端部とを二重巻き締めにより結合して一体化されている。周壁113は、軸方向の中心部分が拡径された樽形状をなしており、断面が多角形状をなす工具係合部となっている(図15参照)。
【0090】
底壁112では、巻き締め結合部131の内側に、L字形状の断面をなす環状段部132が設けられている。この環状段部132により、オイルフィルタ101をエンジン本体11に取付けたときに、ケーシング102の底壁112が弾性変形し易くなるため、オイルフィルタ101の内部の密閉性をより一層向上させることができる。
【0091】
また本オイルフィルタ101は、エレメント収容室104の1次側104aと2次側104bとを連通するバイパス通路121を開閉するリリーフバルブ22を有しており、このリリーフバルブ22は、中心筒状部103の内部においてオイル回収路106よりケーシング102の底壁112側に画成されたバルブ収容室123に収容されている。
【0092】
これにより、フィルタエレメント5の目詰まりなどによりエレメント収容室104の1次側104aと2次側104bとの圧力差が過大となることに起因するフィルタエレメント5の破損を防止することができる。しかも、リリーフバルブ22が中心筒状部103の内部に収容されていることから、リリーフバルブ22がフィルタエレメント5を脱着する際の邪魔にならないため、フィルタエレメント5の脱着が容易になる。
【0093】
バイパス通路121は、エレメント収容室104の1次側104aのオイルをバルブ収容室123に導くようにケーシング102の底壁112側に設けられた1次側通路124と、バルブ収容室123とエレメント収容室104の2次側104bとを連通する態様で中心筒状部103の周壁に開設された未ろ過オイル用流通孔125とで構成され、リリーフバルブ22は、バルブ収容室123内を軸方向に進退して未ろ過オイル用流通孔125を開閉するように設けられた弁体26と、この弁体26を全閉位置に向けて付勢するばね27とを備えている。
【0094】
これにより、中心筒状部103の周壁をリリーフバルブ22のハウジングに兼用することができるため、小型化を図ると共に製造コストを削減することができる。
【0095】
ばね27は、その一端が弁体26の背面に当接すると共に、中心筒状部103に直径方向に配置されたスプリングピン128に他端が当接して、弁体26をケーシング102の底壁112に近接する向きに付勢する。バルブ収容室123の底壁112側にはオイル導入室130が設けられており、このオイル導入室130は弁体26より小径に形成され、オイル導入室130とバルブ収容室123との間の段差部129に弁体26が規制されて未ろ過オイル用流通孔125を閉鎖する全閉位置に保持される。
【0096】
図15に示したように、スプリングピン128は、ろ過済みオイル用流通孔107と概ね同一の軸方向位置で、ろ過済みオイル用流通孔107に対して周方向にずらした角度位置に取り付けられ、中心筒状部103の周壁に開設された取付孔139に圧入して固定される。図11に示したように、中心筒状部103とケーシング102とを組み付ける前に、中心筒状部103の先端部109側の開口から弁体26及びばね27を挿入した上で、スプリングピン128を中心筒状部103に取り付けることで、リリーフバルブ22が中心筒状部3に組み付けられる。
【0097】
図10に示したように、弁体26の前面には、1次側通路124を介してエレメント収容室104の1次側104aの圧力が作用し、弁体26の背面には、オイル回収路106とバルブ収容室123とを連通させることで、エレメント収容室104の2次側104bの圧力が作用している。
【0098】
このため、フィルタエレメント5の目詰まりなどによりエレメント収容室104の1次側104aと2次側104bとの圧力差が過大となり、弁体26の前面に作用する1次側104aの圧力が、弁体26の背面に作用する2次側104bの圧力にばね27の付勢力を加えたものより大となると、図12に示すように、弁体26が後退して未ろ過オイル用流通孔125が開放され、エレメント収容室104の1次側104aのオイルが、1次側通路124、オイル導入室130、バルブ収容室123及び未ろ過オイル用流通孔125を通ってエレメント収容室104の2次側104bに流入した後、ろ過済みオイル用流通孔107を通ってオイル回収路106に流入し、中心筒状部103の先端部109側から回収される。
【0099】
図13(A)に示すように、ケーシング102の底壁112の内面側に凹部133が径方向に形成されている。特にここでは、凹部133が、ケーシング102の底壁112の中心から放射状に複数(ここでは6つ)設けられている。一方、前記のように、連結筒状部117における底壁112側には径方向外向きに延出したフランジ119が形成されており、この連結筒状部117のフランジ119が底壁112における凹部133間に設けられた凸部134に接合されて、連結筒状部117がケーシング102の底壁112に固定される。
【0100】
また、図13(B)に示すように、底壁112の凹部133と連結筒状部117のフランジ119との間に画成された空室135における外周側の開放部135aをエレメント収容室104の1次側104aに連通させると共に、中心側の開放部135bを中心筒状部103の内部のオイル導入室130に連通させて、1次側通路124が形成される(図10参照)。
【0101】
底壁112における凹部133及び凸部134は環状段部132の内周側に形成され、凸部134の頂面134aは環状段部132の側面132aよりも低く形成され、凸部34の頂面134aと環状段部132の側面132aとの間に段差138が形成されており、組み付け状態で環状段部132の内側に連結筒状部117のフランジ119が入り込んで環状段部132がフランジ119の外周側を取り囲む形態となる。
【0102】
環状段部132の内周面132bは、連結筒状部117のフランジ119より大径に形成され、フランジ119により凹部133の一部が覆われて残部が開放され、ここに外周側の開放部135aが、フランジ119の外周面と環状段部132の内周面132bとの間に開口するように画成される。
【0103】
凸部134は環状段部132の内周面132bから径方向内向きに延びた態様で形成され、凸部134の内端側、すなわち底壁112の中心部には、凹部133内を流通したオイルが集合する集合室137が形成されている。この集合室137は、中心筒状部103の内部のオイル導入室130と連通されている(図10参照)。
【0104】
したがって、エレメント収容室104の1次側104aのオイルは、外周側の開放部135aから凹部133内に流入して、凹部133と連結筒状部117の端面117bとの間の空室135を径方向内向きに流通した後、中心側の開放部135bから集合室137に流入し、ついで、中心筒状部103の内部のオイル導入室130を通ってバルブ収容室123に至る(図12参照)。
【0105】
底壁112の凸部134の頂面134aは平坦に形成され、ここに接合される連結筒状部117のフランジ119側の端面117bも平坦に形成されている。この凸部134の頂面134aと連結筒状部117の端面117bとは、図14中に×印で示す位置でスポット溶接により溶着される。なお、連結筒状部117の端面117bには、スポット溶接用の図示しない突起が形成される。
【0106】
これにより、ケーシング102の底壁112側にのみ凹凸を設ける加工を施すことで1次側通路124を設けることができ、連結筒状部117の端面117bは平坦で、連結筒状部117に特別な加工を施す必要がないため、連結筒状部117の寸法、特に底壁112に接合されるフランジ119の肉厚を小さくすることができる。
【0107】
また、連結筒状部117のフランジ119により連結筒状部117とケーシング102の底壁112とを大きな面積で当接させて接合することができるため、連結筒状部117をケーシング102の底壁112に強固に固定して、中心筒状部103を支持する連結筒状部117の支持剛性を高めることができる。
【0108】
この他の構成、例えばフィルタエレメント5やエレメントケース44に関する構成などは、第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0109】
このように構成されたオイルフィルタ101では、オーリング116を除く構成部品を全て金属製とすることができる。例えば、ケーシング102の底壁112及び周壁113、連結筒状部117、エレメントケース44、リリーフバルブ22の弁体26は、鋼板のプレス加工により製作することができ、中心筒状部103は、炭素鋼(例えばS45C)の切削加工により製作することができ、フィルタエレメント5はステンレススチール製メッシュで製作することができ、これにより、再利用が容易になり、環境保護に貢献することができる。また、フィルタエレメント5を構成するろ過シート材には、紙製のものも可能であるが、ステンレススチール製メッシュを用いると、洗浄により再度使用可能となり、新品に交換せずに済む。
【0110】
前記の例では、図14に示したように、ケーシング102の底壁112において、プレス加工が容易なように、凹部133の外周側の隅部を円弧状に湾曲させると共に、凸部134の内周側の端部を円弧状に湾曲させて、ケーシング102の開放部108側からの矢視で全体として花びら形状をなすように形成したが、凹部133は外周側と中心部とを連通させることができれば良く、このような形状に限定されない。例えば、凹部や凸部を直線的な外形に形成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0111】
1・101 オイルフィルタ
2・102 ケーシング
3・103 中心筒状部
4・104 エレメント収容室、4a・104a 1次側、4b・104b 2次側
5 フィルタエレメント
6・106 オイル回収路
7・107 ろ過済みオイル用流通孔
8・108 開放部
9・109 先端部
11 エンジン本体
12・112 底壁
13 抜け止め部材
14 取付筒体
15・115 端部
17 連結凸部
18 基端部
19 フランジ
21・121 バイパス通路
22 リリーフバルブ
23・123 バルブ収容室
24・124 1次側通路
25・125 未ろ過オイル用流通孔
26 弁体
27 ばね
29 頂面
31 径方向溝
32 周方向溝
33 軸方向溝
35 突起
41 ヒダ部
43 ホルダ
44 エレメントケース
46 周壁
47 底壁
48 中心孔
51 凹部
113 周壁
117 連結筒状部、117a・117b 端面
118 基端部
119 フランジ
133 凹部
134 凸部
135 空室、135a 外周側の開放部、135b 中心側の開放部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状をなすケーシングと、このケーシングの中心部に軸方向に延在する態様で設けられた中心筒状部と、この中心筒状部と前記ケーシングとの間に画成されるエレメント収容室に収容された筒状をなすフィルタエレメントとを有し、前記中心筒状部の周壁に、その内部に画成されたオイル回収路と前記エレメント収容室の2次側とを連通する態様で、ろ過済みオイル用流通孔が開設されたオイルフィルタであって、
前記中心筒状部は、前記ケーシングの底壁の内面から前記ケーシングの開放部側に向けて突出した態様で設けられて、その先端部がエンジン本体に対して着脱自在に連結され、前記フィルタエレメントは、前記中心筒状部の先端部から前記中心筒状部に外嵌されると共に、その中心筒状部の先端部に着脱自在に係合する抜け止め部材で前記中心筒状部に対して固定されたことを特徴とするオイルフィルタ。
【請求項2】
前記エレメント収容室の1次側と2次側とを連通するバイパス通路を開閉するリリーフバルブをさらに有し、このリリーフバルブは、前記中心筒状部の内部において前記オイル回収路より前記ケーシングの底壁側に画成されたバルブ収容室に収容されたことを特徴とする請求項1に記載のオイルフィルタ。
【請求項3】
前記バイパス通路は、前記エレメント収容室の1次側のオイルを前記バルブ収容室に導くように前記ケーシングの底壁側に設けられた1次側通路と、前記バルブ収容室と前記エレメント収容室の2次側とを連通する態様で前記中心筒状部の周壁に開設された未ろ過オイル用流通孔とで構成され、前記リリーフバルブは、前記バルブ収容室内を軸方向に進退して前記未ろ過オイル用流通孔を開閉するように設けられた弁体と、この弁体を全閉位置に向けて付勢するばねとを備えたことを特徴とする請求項2に記載のオイルフィルタ。
【請求項4】
前記ケーシングは、その底壁の内面から軸方向に突出する連結凸部を備え、前記中心筒状部は、前記ケーシングと予め別体で成形されて、前記ケーシングの底壁側の基端部に前記連結凸部を嵌入させた態様で前記ケーシングの底壁に対して固定されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のオイルフィルタ。
【請求項5】
前記1次側通路は、前記ケーシングの底壁に当接する前記中心筒状部の端面に径方向に形成された径方向溝と、前記中心筒状部の端面の内周側に周方向に形成された周方向溝と、前記連結凸部の外周面に軸方向に形成された軸方向溝とで形成され、前記周方向溝を介して前記径方向溝と前記軸方向溝とが連通されたことを特徴とする請求項4に記載のオイルフィルタ。
【請求項6】
前記連結凸部の頂面に、軸方向に突出した態様で前記弁体を規制する突起が形成され、前記連結凸部の頂面と前記弁体の前面とが常時離間した状態に保持されるようにしたことを特徴とする請求項4若しくは請求項5に記載のオイルフィルタ。
【請求項7】
前記連結凸部の頂面に、前記1次側通路と連通された態様で凹部が形成されたことを特徴とする請求項4若しくは請求項5に記載のオイルフィルタ。
【請求項8】
前記中心筒状部における前記ケーシングの底壁側の基端部に、径方向外向きに延出したフランジが形成され、前記フィルタエレメントが、前記フランジと前記抜け止め部材との間に挟み込まれた態様で前記中心筒状部に固定されたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のオイルフィルタ。
【請求項9】
前記中心筒状部は、前記ケーシングと予め別体で成形されると共に、当該中心筒状部を前記ケーシングの底壁に連結する連結筒状部が、前記ケーシングと予め別体で成形されて前記ケーシングの底壁に固着され、前記中心筒状部が、前記ケーシングの底壁側の基端部を前記連結筒状部に嵌合させた態様でその連結筒状部を介して前記ケーシングの底壁に対して固定されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のオイルフィルタ。
【請求項10】
前記ケーシングの底壁の内面側に凹部が径方向に形成されると共に、前記連結筒状部における前記ケーシングの底壁側に径方向外向きに延出したフランジが形成され、前記底壁における前記凹部間に設けられた凸部に前記フランジが接合されて前記連結筒状部が前記ケーシングの底壁に固定され、前記底壁の凹部と前記連結筒状部のフランジとの間に画成された空室における外周側の開放部を前記エレメント収容室の1次側に連通させると共に中心側の開放部を前記中心筒状部の内部に連通させて前記1次側通路が形成されたことを特徴とする請求項9に記載のオイルフィルタ。
【請求項11】
前記連結筒状部における前記ケーシングの底壁側に径方向外向きに延出したフランジが形成され、前記フィルタエレメントが、前記連結筒状部のフランジと前記抜け止め部材との間に挟み込まれた態様で前記中心筒状部に固定されたことを特徴とする請求項9若しくは請求項10に記載のオイルフィルタ。
【請求項12】
前記フィルタエレメントは、ろ過シート材の折り返しによるヒダ部が周方向に多数並んで全体として厚肉な円筒状をなし、その中心部に嵌挿された筒状のホルダに保持されると共に、前記ヒダ部を径方向に対して傾斜させた状態でエレメントケース内に収容されたことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のオイルフィルタ。
【請求項13】
前記エレメントケースが、前記フィルタエレメントの外周側を部分的に覆う周壁と、前記中心筒状部が挿入される中心孔が開設された底壁とを備えた有底筒状をなし、前記周壁で覆われない前記フィルタエレメントの部分が前記ケーシングの底壁側に位置するように設けられたことを特徴とする請求項12に記載のオイルフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−47396(P2011−47396A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27784(P2010−27784)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】