説明

オイルミスト除去装置

【課題】本発明は、通路内を流れる空気の流速に左右されずにオイルミストを効率的に除去することができるオイルミスト除去装置を提供する。
【解決手段】オイルミスト8を含む空気からオイルミスト8を除去するオイルミスト除去装置1であって、前記空気が流入する流入口11と流出する流出口12とを有し、前記流入口11から流入する空気を遮るように邪魔板6を配設した通路5bと、前記通路5bに設けるとともに、前記空気の流量に応じて通路断面積を調整する調整手段である流速調整板7と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業機械等で発生するオイルミストを除去するオイルミスト除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、切削機等の工業機械の設備内で発生したミスト状の油であるオイルミストを回収する為にダクトを介してファンで吸い込み、オイルミストをフィルターで吸収させることで、オイルミストの除去が行われている。また、工業機械の使用に伴って発生したオイルミストを含む空気をブロアで吸引し、千鳥状(ジグザグ状)に配した邪魔板や仕切板を有する通路やフィルターに導き、オイルミストの分離除去を行い、オイルミストを分離除去した空気を排出するオイルミスト除去装置が公知となっている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2002−113316号公報
【特許文献2】特開2000−45749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、フィルターによりオイルミストを捕捉するに伴って、フィルターが目詰まりするようになり、その目詰まり状態等によって通路内の空気の流速が変化することがある。また、通路内の空気の流速が早すぎる場合には、邪魔板や仕切板部分で分離除去されないオイルミストが増加し、フィルターの目詰まりがさらに早まるという問題がある。
【0004】
すなわち、現状において、図7(a)に示すように、設備本体で発生したオイルミストを回収する為に、ダクト4を介してオイルミストコレクター3に繋ぎ、該オイルミストコレクター3が備えるフィルターによりオイルミストを捕捉しているが、フィルターのメンテナンス等が十分でない場合は、目詰まりが発生し、オイルミストがうまく捕捉されずに、オイルミストが排気口から排出されてしまうという問題がある。
【0005】
このように、フィルターのメンテナンスが十分に行われないことによりオイルミストコレクター3のフィルター性能が低下した場合、フィルターで捕捉されないオイルミストが、外部に排出されてしまい構内のオイルミスト濃度が上昇して作業環境が悪化する。
こうなった場合には、構内にオイルミストによる霞が発生する場合がある為、種々の対策が必要となってくる。具体的には、設備本体から発生するオイルミストが設備本体外へ漏れないようにする為の設備密閉化対策が必要となるが対策費用がかかる。もしくは、構内のオイルミスト濃度を下げる為、工場全体の換気が必要になり送風ファン取付等の対策が必要となるが対策費用がかかるといった課題がある。
また、オイルミスト濃度が上昇すると作業者の健康被害等発生する虞があるため、オイルミスト濃度がフィルターのメンテナンス状態に左右されないような根本的な対策が必要とされている。
【0006】
さらに、従来から用いられているオイルミスト除去装置では、フィルターメンテナンスの際のフィルター交換コストが増大したり、上述したようにフィルター目詰まりによりオイルミスト除去装置が機能せず、設備本体内が汚れてしまうことで設備清掃時間が増大することによるコスト増加を招いたりしてしまう。
そのため、従来から使用する設備に対して、構内のオイルミスト濃度を所定濃度以下にする為のオイルミスト回収対策やフィルターの目詰まり対策を、コストをかけずに実施することが望まれている。
【0007】
また、従来から用いられているオイルミスト除去装置においては、上流側(前段)にある邪魔板を配設した通路によるオイルミスト捕捉手段では、オイルミスト捕捉能力が通路内を流れる空気の流速に左右されてしまい、オイルミストを捕捉する能力を十分に発揮することがでなかったため、下流側(後段)に配置されるフィルターを介して空気を吸引するブロアやフィルターを内蔵した既存のオイルミストコレクター等の後段側オイルミスト捕捉手段の負荷が非常に大きかったのである。
【0008】
そこで、本発明は、通路内を流れる空気の流速に左右されずにオイルミストを効率的に除去することができるオイルミスト除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、
オイルミストを含む空気からオイルミストを除去するオイルミスト除去装置であって、
前記空気が流入する流入口と流出する流出口とを有し、前記流入口から流入する空気の流れを遮るように邪魔板を配設した通路と、
前記通路に設けるとともに、前記空気の流量に応じて通路断面積を調整する調整手段と、を設けたものである。
【0011】
請求項2においては、
前記調整手段は、
前記通路内の天井部から回動自在に垂下した可動邪魔板を備え、前記可動邪魔板が受けた風圧を利用して前記可動邪魔板を傾動させることにより、前記可動邪魔板に隣接する前記邪魔板との間隔を近接離間させるものである。
【0012】
請求項3においては、
前記調整手段は、
前記通路内の天井部から回動自在に垂下した可動邪魔板と、
該可動邪魔板を傾動させるべく駆動する駆動手段と、
前記通路内を流れる空気の流速もしくは流速を代表する値を検出する検出手段とを備え、
前記可動邪魔板を、前記検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段により駆動させて前記可動邪魔板に隣接する前記邪魔板との間隔を近接離間させるものである。
【0013】
請求項4においては、
前記通路は、
該通路内の底部に空気から分離除去されたオイルを排出するオイル排出口と、
該オイル排出口に対して所定間隔離間して前記オイル排出口の上方を覆うように配設され、前記オイル排出口からのオイルの逆流を防止する逆流防止手段と、
を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、調整手段により通路内の空気の流速を調整することが可能となり、流速に左右されることなく邪魔板によりオイルミストを効率的に分離除去することができる。
【0016】
請求項2においては、風圧を利用して通路内の空気の流速を調整することが可能となり、流速に左右されることなく邪魔板によりオイルミストを効率的に分離除去することができる。また、可動邪魔板を傾動する際に複雑な駆動手段を必要としないため、費用がかからず、故障も少なく、装置設置後のメンテナンスが不要となる。
【0017】
請求項3においては、調整手段により通路内の空気の流速を調整することが可能となり、流速に左右されることなく邪魔板によりオイルミストを効率的に分離除去することができる。
【0018】
請求項4においては、通路内が空気の流れにより負圧になった場合においても、オイル排出口からのオイルの逆流を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るオイルミスト除去装置の全体構成を示す模式断面図、図2はオイルミスト除去装置の内部を示す模式図、図3は邪魔板によりオイルミストを捕捉する原理を示すイメージ図であり、(a)はミスト付着時を示すイメージ図、(b)はミスト滴下時を示すイメージ図である。図4は回収容器サイズ・邪魔板サイズ等によるオイルミスト回収効果を説明する説明図、図5はオイルミスト除去装置の別実施例を示す模式断面図、図6はオイルミスト除去装置の別実施例を示す模式断面図、図7は従来と改善後のオイルミスト回収状態を示す模式図であり、(a)は従来の状態を示す模式図、(b)は本発明に係るオイルミスト除去装置を適用して改善した状態を示す模式図である。
なお、同様の用途及び機能を有する部材には同符号を付してその説明を省略する。
【実施例1】
【0020】
本発明に係るオイルミスト除去装置1は、例えば、図1に示すように、オイルミスト除去装置1を設備本体2と既設のオイルミストコレクター3との間を繋ぐダクト間に介装することで、設備本体2内から発生するオイルミスト8を含む空気からオイルミスト8を分離除去するとともに回収する装置である。設備本体2としては、例えば、金属加工として用いられる切削機などが挙げられる。該切削機により金属加工を行う際に、加工部位に切削油が供給され、切削時の切削屑などといっしょにオイルミスト8が発生する。本発明は、このようなオイルミスト8を除去する装置である。
【0021】
オイルミスト除去装置1は、装置本体である回収容器5と、邪魔板6と、流速調整板7と、逆流防止板9と、オイル回収管10と、から主に構成されている。
【0022】
回収容器5は、側面視略逆台形状の容器であり、一端にオイルミスト8を含んだ空気が流入する流入口11と、他端に回収容器5内を通過した空気を流出する流出口12が開口形成されていて、流入する空気の通路を構成している。
また、回収容器5は、四方の斜面部が連接して形成される傾斜底部5aを有しており、該傾斜底部5aの下端部には空気から分離除去されたオイルミスト8が液状となったオイルを排出するオイル排出口15を有している。
前記流入口11には設備本体2から延出されるダクト4aが接続されており、前記設備本体2から排気されるオイルミスト8を含んだ空気が、ダクト4aを通じて流入口11へ案内される。
前記流出口12は、ダクト4bを介して前記オイルミストコレクター3の吸気口13と接続されており、前記流出口12から排気された空気はダクト4bを通じて吸気口13へ案内される。
また、オイル排出口15には、オイル回収管10が接続されている。
【0023】
邪魔板6は、鉄製の板状部材であり、図1及び図2に示すように、回収容器5内の上下交互に、空気の流れ方向に所定間隔で千鳥状に複数配設されている。また、上下交互に配設された邪魔板6のうち、上部の邪魔板6(本実施例では二箇所)は回収容器5内の天井部に配設されており、下部の邪魔板6(本実施例では四箇所)は、回収容器5内の傾斜底部5aに配設されている。このように、邪魔板6を回収容器5内の上下に配設したことで、流入口11から流入する空気の進路を遮るようして、空気を蛇行状に導く通路5b(図1の点線矢印)を形成している。また、下部に配設された邪魔板6の下方(邪魔板6の下端部と傾斜底部5aとの間)に所定幅の隙間14(図2)が設けられている。邪魔板6は、図3に示すように、後述するオイルミストコレクター3のブロア18によって発生する所定の風速・風量の空気を用いて回収容器5内の邪魔板6にオイルミスト8を衝突させ比重の重い油を下方に落とし回収する手段である。すなわち、オイルミスト8を含む空気は、図3(a)に示すように、回収容器5内の邪魔板6表面に衝突して、粘度の高いオイルミスト8が邪魔板6表面に付着する。次に、邪魔板6表面に付着したオイルミスト8は、図3(b)に示すように、重力により滴下されつつ液状のオイルとなり、傾斜底部5a上に落下したオイルは、傾斜底部5a上を流れていき、隙間14を通過しながらオイル排出口15内に回収されるように構成されている。
【0024】
流速調整板7は、回収容器5内の通路5bを流れる空気の流速を調整する調整手段である。流速調整板7は、回収容器5内の天井部から垂下した正面視四角状の板状の可動邪魔板7aと、回動部7bと、から構成されている。
【0025】
可動邪魔板7aは、該可動邪魔板7aの上端部に図示しない挿通孔が二箇所穿設されており、該挿通孔に、リング状の支持リングを挿通するとともに、回収容器5内の天井部に突出するように設けられた支持部に穿設された二箇所の挿通孔に挿通することで回動部7bが形成され、可動邪魔板7aの上端部が回収容器5の長手方向略中央の天井部に回動自在に支持されている。また、回収容器5内の天井部から垂下した可動邪魔板7aは、前述した回収容器5内の下部に配設された邪魔板6に対して、空気の流れ方向に所定間隔にて隣接しており、可動邪魔板7aと前述した上下の邪魔板6とが、空気の流れ方向に所定間隔で千鳥状に配列されている。
このように流速調整板7を構成したことにより、通路5bの上流側から流入してくる空気の流れを風圧として可動邪魔板7a表面にて受けることで、そのときの風圧もしくは空気の流量に応じて流速調整板7は揺動可能となっている。すなわち、空気の流れを風圧として可動邪魔板7a表面で直接受け止めることで、該可動邪魔板7a自体が傾動するため、空気の風圧もしくは流量に応じて可動邪魔板7aと隣接する邪魔板6との間隔が近接離間可能となり、通路5bの通路断面積を調整することが可能となる。
例えば、可動邪魔板7aの傾動により、隣接する邪魔板6との間隔が狭まることにより、通路5bの通路断面積が減少し、流入口11から流入してくる空気の流速を遅くするように調整することが可能となる。このように、流入する空気の風圧を利用することで流速調整板7にて風速・風量を調整することが可能となっており、通路5b内に流れる空気が所定以上の流速となることを防ぐことができる。
なお、流速調整板7の回動部7bとしては、上述した構成に限定するものではなく、ヒンジ等を用いてもかまわない。
【0026】
オイル回収管10は、分離除去され集められたオイルを回収容器5から排出して設備本体2に回収するための配管である。オイル回収管10の一端は、回収容器5の下端部に開口されているオイル排出口15に連通されており、オイル回収管10の他端は図示しない設備本体2内の所定箇所(切削用オイル貯留タンク等)に連通している。これにより、オイルミスト除去装置1(回収容器5)内で分離除去されたオイルミスト8が、オイル回収管10を介して設備本体2に回収することができるとともに、再び切削用オイルとして再利用することが可能となっている。
なお、オイル回収管10の中途部にドレン弁を設けて、オイルが所定量貯留した際に、随時排出するように構成することも可能である。
【0027】
逆流防止板9は、平面視四角状の板状部材であり、回収容器5内の傾斜底部5aの下端部に開口されているオイル排出口15に対して所定間隔離間して前記オイル排出口15の上方を覆うように配設されており、回収容器5内が空気の流れにより負圧になった際に、オイル回収管10内から回収容器5内へのオイルの逆流を防止する。
【0028】
オイルミストコレクター3は、オイルミスト8を含んだ空気からオイルミスト8を捕集する装置であり、装置本体3aと、オイルミスト8や塵等を捕集するフィルター16・17と、上流側から装置本体3a内へと空気を吸引することが可能であるブロア18と、前記フィルター17にて捕集したオイルミスト8を貯留するミスト受け19と、回収容器5内の空気を吸入する吸気口13と、オイルミスト8捕集後の清浄な空気を排気する排気口20と、から主に構成されている。また、吸気口13は、前記回収容器5の流出口12とダクト4bを介して連結されている。こうして、オイルミストコレクター3のブロア18を駆動することで設備本体2内からオイルミスト8を含んだ空気を吸引し、回収容器5内の通路5bに吸込み気流の流れを発生させることができる。
【0029】
このように構成されたオイルミスト除去装置1を、図7(a)に示すような、従来の設備本体2とオイルミストコレクター3とを繋ぐダクト4間に介装する(図7(b))。そうして、オイルミスト除去装置1の後段のオイルミストコレクター3のブロア18を所定の風速・風量の空気の流れを発生させるべく駆動して、設備本体2で発生したオイルミスト8を含んだ空気をオイルミスト除去装置1の回収容器5内に取り入れる。回収容器5内の入った空気は、回収容器5内の上下交互に千鳥状に配設された複数の邪魔板6に衝突して比重の重いオイルを下方に落とし、オイルミスト8が液状となったオイルは傾斜底部5aの斜面上を下側に向けて流れ、隙間14を通過してオイル排出口15内へと入る。
【0030】
ここで、回収容器5内を流れる空気の風速(流速)が所定値より早い場合、流速調整板7は、風圧もしくは空気の流量に応じて揺動し、通路5bの下流側に向けて傾動することで、隣接する邪魔板6に近接する。こうして、この近接部分の通路5bの通路断面積が減少し、空気の流量が減少するように調整されることになる。このように風圧を利用して空気の流速を調整し、オイルミスト8をオイルミストコレクター3側に持っていかれないようにして、邪魔板6にオイルミスト8を効率よく付着させるようにしているのである。すなわち、流速調整板7にて風速・風量を調整することによりオイルミスト8がオイルミストコレクター3側へ流れていかないように構成しているのである。
このように、上流側ダクト4aから入ったオイルミスト8を含む空気は、回収容器5内の通路5bを通すことで、ほとんどのオイルミスト8が分離除去及び回収される。さらに、回収容器5の通路5bを通過した空気は、後段のオイルミストコレクター3内に吸気され、回収容器5で回収しきれなかったオイルミスト8がフィルター16・17を通過することにより回収され、オイルミスト8回収後の空気がオイルミストコレクター3の排気口20から外部に排出される時は清浄な空気となっている。そして、オイルミスト除去装置1により回収されたオイルは、オイル回収管10を介して設備本体2内に戻されて再利用される。
【0031】
このように、オイルミスト8を含む空気からオイルミスト8を除去するオイルミスト除去装置1であって、前記空気が流入する流入口11と流出する流出口12とを有し、前記流入口11から流入する空気の流れを遮るように邪魔板6を配設した通路5bと、前記通路5bに設けるとともに、前記空気の流量に応じて通路断面積を調整する調整手段である流速調整板7と、を設けたことにより、流速調整板7により通路5b内の空気の流速を調整することが可能となり、流速に左右されることなく邪魔板6によりオイルミスト8を効率的に分離除去することができる。
【0032】
また、前記調整手段である流速調整板7は、前記通路5b内の天井部から回動自在に垂下した可動邪魔板7aを備え、前記可動邪魔板7aが受けた風圧を利用して前記可動邪魔板7aを傾動させることにより、前記可動邪魔板7aに隣接する前記邪魔板6との間隔を近接離間させることにより、風圧を利用して通路5b内の空気の流速を調整することが可能となり、流速に左右されることなく邪魔板6によりオイルミスト8を効率的に分離除去することができる。また、可動邪魔板7aを傾動する際に複雑な駆動手段を必要としないため、費用がかからず、故障も少なく、装置設置後のメンテナンスが不要となる。
【0033】
また、前記通路5bは、該通路5b内の底部である傾斜底部5aに空気から分離除去されたオイルを排出するオイル排出口15と、該オイル排出口15に対して所定間隔離間して前記オイル排出口15の上方を覆うように配設することで、前記オイル排出口15からのオイルの逆流を防止する逆流防止手段である逆流防止板9と、を備えたことにより、通路5b内が空気の流れにより負圧になった場合においても、オイル排出口15からのオイルの逆流を防止できる。
【0034】
すなわち、本実施例に係るオイルミスト除去装置1は、邪魔板6を配した通路5b内に、該通路5b内を流れる空気の風圧に応じて可動する流速調整板7を有し、通路5b内の空気の流速が早い場合に流速調整板7により通路5bの通路断面積を絞ることで、オイルミスト8を捕捉できる空気の流速レベルまで流速を減少するように調整することが可能である。
なお、本実施例においては、オイルミスト除去装置1の後段にオイルミストコレクター3を接続しているが、特に限定するものではなく、オイルミスト除去装置1の流出口12の後段に直接ブロア等の送風手段を取り付けて構成してもかまわない。
【0035】
次に、オイルミスト除去装置1の回収容器5及び邪魔板6の好適な構成について実験検証した例を示す。
上述したオイルミスト除去装置1の構成においては、回収容器5や邪魔板6のサイズ等を検討することでオイルミスト除去効果をより高い装置とすることが可能であるため、回収容器5や邪魔板6のサイズが異なった条件において効果確認のための実験検証を実施した。以下に実験内容について説明する。
【0036】
図4に示すように、回収容器5の長さをL1(図5(a))、回収容器5の正面視(図5(b))における回収容器5の通路5b部の高さをH、幅をW、通路5bを遮る邪魔板6の高さをL2、ダクト4(4a・4b)の直径をDとする。
<実験条件>
容器:容器A(L:450mm、W:350mm、H:350mm)と容器B(L:600mm、W:350mm、H:350mm)
邪魔板枚数(流速調整板7含む):A(3、5、7枚)、B(3、5、7、10枚)
L2寸法:100mm、150mm、200mm
ダクト径D:φ150mm
オイルミストコレクター3風速:16.6m/s
このような実験条件の各回収容器5により1週間あたりのオイルミスト8回収量(L/w)を測定した結果を表1及び表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
このように、回収容器5の大きさと邪魔板枚数によるオイル回収量の検証を行った結果(表1、表2参照)、回収容器5としてはタイプBである600mm×350mm×350mm、邪魔板6の枚数は7枚(流速調整板7含む)、及びL2寸法が200mmである条件の回収容器5がオイルミスト回収量が多く好適であった。
このように、回収容器5の形状、大きさ、邪魔板(衝突板)6の枚数などを実験検証することにより回収容器5を好適なサイズに設定することで、オイルの回収効率をさらに向上させることができる。
【実施例2】
【0040】
本発明の別実施例について図5、図6を用いて説明する。
本実施例に係るオイルミスト除去装置30は、図5に示すように、通路5b内を流れる空気の流速を調整する調整手段として、前述した流速調整板7と、該流速調整板7の可動邪魔板7aを傾動させるべく駆動させる駆動手段であるアクチュエータ21と、通路5b内を流れる空気の風速を検出する風速検出手段22と、前述したオイルミストコレクター3が具備するブロア18のブロア回転速度を検出するブロア回転速度検出手段23と、前記検出手段22・23の検出結果に基づきアクチュエータ21を制御する制御手段24と、を具備している。
なお、前記風速検出手段22は、通路5b内を流れる空気の風速(流速)を検出する検出手段であるが、これの代わりに、空気の風量(流量)を検出する風量検出手段や空気の風圧を検出する風圧検出手段を用いることも可能である。すなわち、空気の流速もしくは流速の代表する値を検出する手段として、例えば、流速を検出する手段を前記風速検出手段22とし、流速を代表する値を検出する検出手段を前述した風圧検出手段、風量検出手段、又はブロア回転速度検出手段等を用いることが可能である。
また、本実施例においては、流速を検出する検出手段である風速検出手段22と流速を代表する値を検出する検出手段の一例であるブロア回転速度検出手段23との両方を用いた構成としているが、特に限定するものではなく、流速を検出する検出手段もしくは流速を代表する値を検出する検出手段のどちらか一方のみを配置する構成でもよく、例えば、風速検出手段22を省略してブロア回転速度検出手段23のみを配置する構成としてもかまわない。
【0041】
このようにオイルミスト除去装置30を構成することで、通路5b内を流れる空気の流速もしくは流速を代表する値(例えば、風速、風量、ブロア回転数が可変の場合のブロア速度など、通路5b内の流速を反映する値)を検出手段22・23により検出して、この検出結果に基づいて、制御手段24は予め設定されている所定の空気流量とするべく、アクチュエータ21を駆動させて、流速調整板7を所定角度に傾動させて隣接する邪魔板6に近接離間させることが可能である。
すなわち、本実施例に係るオイルミスト除去装置30は、邪魔板6を配した通路5b内の空気の流速もしくは流速の代表値を検出して、その検出結果に応じて流速調整板7をアクチュエータ21により可動させることが可能であり、所定の空気の流速もしくは流速を代表する値よりも高いと制御手段24が判断した場合に、可動邪魔板7aをアクチュエータ21により駆動させて隣接する邪魔板との間隔を狭めるようにして通路5bの通路断面積を減少するように制御することで、邪魔板6によってオイルミスト8を捕捉できる流速レベルまで空気の流速を減少するように調整することが可能である。
【0042】
このように、前記調整手段である流速調整板7は、前記通路5b内の天井部から回動自在に垂下した可動邪魔板7aと、該可動邪魔板7aを傾動させるべく駆動する駆動手段であるアクチュエータ21と、前記通路5b内を流れる空気の流速もしくは流速を代表する値を検出する検出手段とを備え、前記可動邪魔板7aを流速もしくは流速を代表する値の検出結果に基づいて前記アクチュエータ21により駆動させて前記可動邪魔板7aに隣接する前記邪魔板6との間隔を近接離間させることにより、通路5b内の空気の流速を調整することが可能となり、流速に左右されることなく邪魔板6によりオイルミストを効率的に分離除去することができる。
【0043】
また、本実施例に係るオイルミスト除去装置の構成は、流速調整板7を駆動手段であるアクチュエータ21にて駆動させる構成であるため、図6に示すオイルミスト除去装置40のように、空気が流れる通路を上下方向に形成した縦型の回収容器25を具備する構成することも可能であり、オイルミスト除去装置30と同様の作用効果を奏する。このような縦型の回収容器25を備えたオイルミスト除去装置40は、設置場所の狭い所に設置する場合などに好適となる。
【0044】
本発明に係るオイルミスト除去装置1・30・40をオイルミスト8が発生する工業機械等に適用することにより、暴露濃度上昇低減により作業環境が改善、作業者の健康障害を防止、ミストによる機器故障防止、フィルター交換回数低減、ミストによる設備清掃工数低減等の各効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例に係るオイルミスト除去装置の全体構成を示す模式断面図。
【図2】オイルミスト除去装置の内部を示す模式図。
【図3】邪魔板によりオイルミストを捕捉する原理を示すイメージ図であり、(a)はミスト付着時を示すイメージ図、(b)はミスト滴下時を示すイメージ図。
【図4】回収容器サイズ・邪魔板サイズ等によるオイルミスト回収効果を説明する説明図。
【図5】オイルミスト除去装置の別実施例を示す模式断面図。
【図6】オイルミスト除去装置の別実施例を示す模式断面図。
【図7】従来と改善後のオイルミスト回収状態を示す模式図であり、(a)は従来の状態を示す模式図、(b)は本発明に係るオイルミスト除去装置を適用して改善した状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0046】
1・30・40 オイルミスト除去装置
5a 傾斜底部
5b 通路
6 邪魔板
7 流速調整板
7a 可動邪魔板
8 オイルミスト
9 逆流防止板
11 流入口
12 流出口
15 オイル排出口
21 アクチュエータ
22 風速検出手段
23 ブロア回転速度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルミストを含む空気からオイルミストを除去するオイルミスト除去装置であって、
前記空気が流入する流入口と流出する流出口とを有し、前記流入口から流入する空気の流れを遮るように邪魔板を配設した通路と、
前記通路に設けるとともに、前記空気の流量に応じて通路断面積を調整する調整手段と、を設けたことを特徴とするオイルミスト除去装置。
【請求項2】
前記調整手段は、
前記通路内の天井部から回動自在に垂下した可動邪魔板を備え、前記可動邪魔板が受けた風圧を利用して前記可動邪魔板を傾動させることにより、前記可動邪魔板に隣接する前記邪魔板との間隔を近接離間させることを特徴とする請求項1に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項3】
前記調整手段は、
前記通路内の天井部から回動自在に垂下した可動邪魔板と、
該可動邪魔板を傾動させるべく駆動する駆動手段と、
前記通路内を流れる空気の流速もしくは流速を代表する値を検出する検出手段とを備え、
前記可動邪魔板を、前記検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段により駆動させて前記可動邪魔板に隣接する前記邪魔板との間隔を近接離間させることを特徴とする請求項1に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項4】
前記通路は、
該通路内の底部に空気から分離除去されたオイルを排出するオイル排出口と、
該オイル排出口に対して所定間隔離間して前記オイル排出口の上方を覆うように配設され、前記オイル排出口からのオイルの逆流を防止する逆流防止手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のオイルミスト除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−17823(P2010−17823A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182070(P2008−182070)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】