説明

オイルミスト除去装置

【課題】外部からの動力供給が不要であり、排気流を受けた風車の受動回転のみにより、排気流に含まれるオイルミストを効率的に除去する装置を提供する。
【解決手段】オイルミスト除去装置1は、筺体2と、その内部に収容された風車ユニット6により構成される。筺体2内部が排気流通路MFDをなす中空体として構成され、該排気流MFの流通方向における一端に排気流入口2Jが、他端に排気流出口2Dが形成される。風車ユニット6は、軸流型風車として構成された複数の動翼3と、整流部をなす複数の静翼4とが排気流流れ方向に複数配置される。動翼3は、回転軸線Oが排気流MFの方向を向くよう筺体2の内部に流れ方向に同軸的かつ各々遊転可能に配置され、受風面3Rにて排気流MFを受けて遊転することにより、該排気流MFを送風面3F側にて回転軸線Oの方向に生ずる軸流成分と回転半径方向外向きに生ずる遠心流成分とに分解しつつ送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルミスト除去装置に関するものであり、特に、排煙ダクトに取り付けて使用し、排煙中に含まれるオイルミストやオイルミストを捕捉して排出量を低減するためのオイルミスト除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなオイルミスト除去装置として、煙入口と煙出口とを有したケーシングの内部に遠心型風車として構成された動翼と静翼とを交互に配置し、動翼をモータにより強制回転駆動してオイルミストを除去しつつ排出するようにしたオイルミスト除去装置が開示されている(特許文献1)。動翼は円板状の基体の主面法線方向に旋回羽根が立設され、モータ駆動による回転に伴いケーシング内に吸い込んだ気流は該旋回羽根に沿って遠心流に転換される。該遠心流はケーシング内面に衝突し、気流に含まれているオイルミストが油滴化する。一方、衝突後の遠心流は動翼の下流側に配置されている静翼にて、同様に立設された案内羽根により中心軸側に方向転換され、回転軸近傍の貫通孔を介して次段の動翼に向け流出する(文献中に詳細な説明がないので、そのように推定する)。気流はここで再び遠心流に転換され、ケーシング内面との衝突(オイルミストの油滴化)→静翼案内羽根による中心軸側への方向転換→次段動翼への流出の過程を繰り返し、オイルミストが段階的に除去されてゆく構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−239323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の装置では、動翼が遠心型風車として構成されており、気流は、半径方向外方(動翼旋回羽根による遠心流)→ケーシング内面への衝突→半径方向内方(静翼による中心軸側への流れ案内)、という形でつづら折れ的に方向を変化させるため流れ抵抗が非常に大きい。そのため、モータなどの外部動力を用いて動翼を相当強力に回転駆動しなければ十分なオイルミスト除去効果が達成できず、駆動部の大型化やエネルギー消費量の増大を招く欠点がある。
【0005】
本発明の課題は、外部からの動力供給が不要であり、排気流を受けた風車の受動回転のみにより、排気流に含まれるオイルミストやオイルミストなどを効率的に除去することができ、ひいては小型軽量で省エネ型のオイルミスト除去装置を提供することにある。
【課題を解決する手段及び発明の効果】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のオイルミスト除去装置は、
内部が排気流通路をなす中空体として構成され、該排気流の流通方向における一端に排気流入口が、他端に排気流出口が形成された筺体と、
回転軸線が排気流方向を向くよう筺体の内部に流れ方向に複数同軸的かつ各々遊転可能に配置され、また、該回転軸線方向における上流側に受風面が形成され下流側に送風面が形成され、受風面にて排気流を受けて遊転することにより、該排気流を送風面側にて回転軸線方向に生ずる軸流成分と回転半径方向外向きに生ずる遠心流成分とに分解しつつ送出する複数の軸流型風車と、
軸流型風車の外周縁との間に隙間が形成されるように、該軸流型風車の外側を周方向に取り囲む形で筺体内部に形成され、該軸流型風車の遠心流を衝突させることにより、排気流に含まれるオイルミストを捕捉するオイルミスト捕捉部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記本発明の構成によると、軸流型風車を筺体内に配置し、筺体内に排気流を導入して該軸流型風車を遊転させるように構成するとともに、該軸流型風車の遠心流を衝突させることにより、該排気流に含まれるオイルミストをオイルミスト捕捉部に捕捉させる。軸流型風車においては、受けた排気流の一部が遠心流成分となってオイルミスト捕捉部に向かい、そこでオイルミストが捕捉される一方、一部が軸流成分の形で下流側に逃がされる。この軸流成分は、下流側の次段の軸流型風車に供給され、同様に遠心流成分と軸流成分とに分解される。その結果、供給される排気流に含まれるオイルミストは、複数段の軸流側風車を通過するに伴い、その都度、遠心流成分に乗って段階的に除去されるとともに、軸流成分の形で一部が下流側に逃がされる分だけ流通抵抗が減少する。その結果、外部からの動力供給が不要な遊転機構により風車を回転させるだけでオイルミストを十分に除去することができる。
【0008】
オイルミスト捕捉部は、軸流型風車が発生する遠心流成分を衝突させることができるよう、風車の外側に配置してあればよいが、この場合、筺体の内壁面をオイルミスト捕捉部に兼用する構成とすれば、部品点数の削減を図ることができる。ただし、筺体内壁面の内側を別途、オイルミスト捕捉部となる板やシートなどで覆うことももちろん可能である。
【0009】
次に、筺体内部においては、該軸流型風車による排気流の受風方向を、該軸流型風車による排気流の風力の回転トルク変換効率が向上する向きに整流する整流部を、軸流型風車の上流側に隣接配置する形で設けることができる。このような整流部を設けることで、排気流の風力をより効率的に軸流型風車の回転力に変換でき、オイルミスト除去能力を高めることができる。
【0010】
軸流型風車は、回転軸線と直交する平面から傾斜形態で立ち上がる風車羽根が、回転軸線周りに複数放射状に配置された動翼として構成することができ、整流部は、回転軸線と直交する仮想平面から傾斜形態で立ち上がる風車羽根が、該平面に対する傾斜方向が動翼とは逆向きとなるように回転軸線周りに複数放射状に配置され、かつ筺体内に非回転となるように取り付けられた静翼として構成することができる。このような静翼を整流部として配置することにより、その風車羽根を通過する気流は動翼の風車羽根の受風面に対し、その法線方向に近づくように方向転換された形で供給されるようになり、動翼の回転効率を高めることができる。
【0011】
上記の動翼及び静翼はそれぞれ、前記仮想平面と平行に配置される板状基材を備え、該板状基材には各々風車羽根に対応する内縁形状となる貫通窓が回転軸線周りに放射状となるように複数形成され、該動翼又は静翼の回転方向における風車羽根の一方の縁が、貫通窓の対応する内周縁にて板状基材に傾斜形態にて結合されてなる構造を有するものとして構成できる。板状基材に貫通窓を形成し、その内周縁に風車羽根を傾斜形態で結合することにより、風車羽根の傾斜角度に応じた軸流成分と遠心流成分との分解比率を容易に調整できる。
【0012】
静翼の板状基材は、外周縁部が筺体の内面に結合されるとともに、回転軸線周りにおける風車羽根の放射状の配列の外周縁よりも外側における通気断面積を、動翼の外周縁と筺体の内面との間に形成される隙間の通気断面積よりも小さく設定することができる。これにより、静翼の風車羽根の外側をバイパスして動翼側に回り込む気流の発生が抑制され、排気流を効率よく静翼に導くことができる。
【0013】
複数の動翼の板状基材は、複数の静翼の板状基材を貫通して配置される共通の回転軸に対し相対回転不能に取り付け、該回転軸を、静翼の板状基材の貫通位置に設けられたベアリングにより回転可能に支持することができる。動翼を共通の回転軸に取り付けて一体回転可能に構成することで、各動翼の回転位相を一致させることができ、排気流の動翼回転力への変換効率を一層高めることができる。
【0014】
動翼及び静翼は、風車羽根の外周縁に対応する周回形状に沿って、当該風車羽根の貫通窓への結合縁となるべき区間を除く形で板材に切れ目を形成し、該板材の切れ目の内側に位置する部分を、板状基材をなす残余の部分に対し結合縁となるべき区間を折り目として傾斜形態に曲げ起す形で風車羽根を形成することができる。特に、金属板材を板状基材として用いる場合は、風車羽根の結合縁を残す形で貫通窓を打ち抜き形成し、そのまま打ち抜いた窓内部の部分を、打ち抜きパンチによりノックアウトする形で曲げ起して風車羽根にする、という極めて単純な金属加工によって安価にかつ能率的に形成できる利点がある。他方、プラスチック板材を使用する場合は、実際に打ち抜き加工を行うのではなく、当該風車形状を金型成型により形成することも可能である。
【0015】
貫通窓は、回転軸線に関する半径方向に沿って形成される1対の長辺区間と、回転軸線に関する周方向に沿って形成される1対の短辺区間とに囲まれた台形または扇型に形成され、風車羽根は1対の長辺区間の一方を結合縁とする形で該貫通窓の内周縁に結合することができる。これにより、風車回転掃引領域に対し貫通窓あるいは風車羽根をより密に配置することができ、風車の回転効率を高めることができる。
【0016】
動翼と、該動翼に対し風上方向に隣接する静翼との対は、筺体内部にて回転軸線方向に複数配置することができる。これにより、排気流中のオイルミストの除去能力を一層高めることができる。なお、動翼の回転軸線と直交する平面による筺体の断面形状を、静翼を形成する板状基材の平面形状に一致させ、該板状基材の外周縁を筺体の内面に結合することにより、静翼側の板状基材を、当該動翼の配置空間を軸線方向両側にて区画する仕切り板として機能させることができる。動翼が個別に配置される空間(以下、動翼空間という)を静翼の板状基材にて区画することで、静翼を通過した排気流を極めて効率的に対応する動翼に供給できる。このとき、オイルミスト捕捉部をなす筺体壁部の底には、動翼空間ごとにドレン孔を形成しておくと、捕集されたオイルミストを抜き取る上での便宜を図ることができる。
【0017】
動翼及び静翼を上記のように交互に配置する構成においては、動翼及び静翼をそれぞれ、仮想平面と平行に配置される板状基材を備え、該板状基材には各々風車羽根に対応する内縁形状となる貫通窓が回転軸線周りに放射状となるように複数形成され、該動翼又は静翼の回転方向における風車羽根の一方の縁が、貫通窓の対応する内周縁にて板状基材に傾斜形態にて結合されてなる構造を有するものとして構成できる。このとき、複数の動翼と静翼とは、風車羽根の仮想平面からの立ち上がり方向が、静翼が風上方向及び動翼が風下方向となり、かつ、風車羽根が非突出となる側の板状基材の主表面同士の対向間隔が、これと反対側の主表面同士の対向間隔よりも小さくなるよう交互に配置することができる。これにより、隣接する静翼と動翼との配置間隔を縮小することができ、ひいては静翼により整流された排気流を減衰させることなく動翼に導くことができるので、排気流の風車回転力への変換効率をより高めることができる。
【0018】
なお、上記のような動翼と静翼との組のさらに下流側において筺体の内部には、動翼よりも遠心流成分が大きくなるように構成された補助風車を遊転可能に配置することができる。動翼よりも遠心流発生が優位となる補助風車を下流側に配置することで、動翼群を通過した時点で排気流に残留していたオイルミストを効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のオイルミスト除去装置の一使用形態を模式的に示す説明図。
【図2】本発明のオイルミスト除去装置の第一実施形態を示す四面図。
【図3】図2の側面図を拡大して示す図。
【図4】動翼の側面図及び正面図。
【図5】静翼の側面図及び正面図。
【図6】風車羽根の形成形態を示す拡大図。
【図7】図6の風車羽根をその変形態様とともに示す断面図。
【図8】動翼の作用を示す斜視図。
【図9】静翼の作用を示す斜視図。
【図10】動翼の作用を、次段の静翼への気流形成形態とともに示す側面模式図。
【図11】動翼と静翼とを交互に配置する場合の作用を説明する側面模式図。
【図12】本発明のオイルミスト除去装置の第二実施形態を示す二面図。
【図13】本発明のオイルミスト除去装置の第三実施形態を示す二面図。
【図14】本発明のオイルミスト除去装置の第四実施形態を示す正面図。
【図15】本発明のオイルミスト除去装置の第五実施形態を示す側面図。
【図16】本発明のオイルミスト除去装置の第六実施形態を示す三面図。
【図17】本発明のオイルミスト除去装置の第七実施形態を示す四面図。
【図18】図17のオイルミスト除去装置に使用する静翼、動翼及び補助風車を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明のオイルミスト除去装置の適用形態の一例を示す模式図である。具体的には、本発明の装置を焼き肉店や網焼き店などの店舗の排煙装置に適用した例であり、店舗200内には食品を焼いて調理するためのコンロ102が置かれ、その上方には該コンロ102で発生する煙SMを集めるための集煙フード105が配置されている。集煙フード105には、金属ないし樹脂で構成された入口側排煙ダクト104Aの一端が接続されている。該入口側排煙ダクト104Aは天井板103を貫いて天井裏空間に入り込み、側方に屈曲して壁部110に向け伸びている。一方、天井板103の上面には本発明の一実施形態であるオイルミスト除去装置1が脚部81を介して固定されており、その一方の側面に開口する排気流入口2Jに入口側排煙ダクト104Aの他端が接続されている。また、オイルミスト除去装置1の他方の側面には排気流出口2Dが開口し、ここに出口側排煙ダクト104Bの一端が接続されている。そして、店舗200の壁部屋外側にはモーター駆動される排気ファン102が取り付けられ、出口側排煙ダクト104Bの他端がこれに接続されている。なお、オイルミスト除去装置1は吊り固定具82により天井板103’の下面に吊下げ形態で固定してもよい。
【0021】
図2は、オイルミスト除去装置1の一構成例を示す四面図である。オイルミスト除去装置1の要部は、筺体2と、その内部に収容された風車ユニット6により構成される。筺体2内部が排気流通路MFDをなす中空体として構成され、該排気流MFの流通方向における一端に排気流入口2Jが、他端に排気流出口2Dが形成される。そして、排気流MFの流通方向における一方の端部に排気流入口2Jが、他方の端部に出口側ダクト接続部26Dがそれぞれ形成されている。
【0022】
筺体2は、ステンレス鋼板等の金属板材からなる短辺側側壁22,22、長辺側側壁23,23、天板24及び底板21により、排気流MFの流通方向に長い直方体形状に構成される。短辺側側壁22,22の一方には入口側排煙ダクト104Aを着脱可能に接続するための入口側ダクト接続部26Jが、また、他方には出口側排煙ダクト104Bを着脱可能に接続するための出口側ダクト接続部26Dがそれぞれ形成されている。各接続部26J,26Dはそれぞれ筺体2の内部に連通する筒状の金属部材であり、外側の開口がそれぞれ排気流入口2J及び排気流出口2Dとされている。また、脚部81(ないし吊り固定具82)は、短辺側側壁22,22又は長辺側側壁23,23に固定されている。また、図3に示すように、入口側ダクト接続部26J及び出口側ダクト接続部26Dは筒状に形成され、蛇腹状の入口側排煙ダクト104A及び出口側排煙ダクト104Bが、それぞれ各ダクト接続部26J,26Dに外側から差し込み装着されるようになっている。
【0023】
次に、風車ユニット6は、軸流型風車として構成された複数の動翼3と、整流部をなす複数の静翼4とが排気流流れ方向に複数配置されたものである。動翼3は、回転軸線Oが排気流MFの方向を向くよう筺体2の内部に流れ方向に同軸的かつ各々遊転可能に配置されている。図4は、動翼3の1枚を拡大して示すものであり、該回転軸線O方向における上流側に受風面3Rが形成され下流側に送風面3Fが形成され、受風面3Rにて排気流MFを受けて遊転することにより、図8に示すように、該排気流MFを送風面3F側にて回転軸線O方向に生ずる軸流成分AFと回転半径方向外向きに生ずる遠心流成分CRFとに分解しつつ送出する。
【0024】
図3に示すように、筺体2の内壁面2Wは動翼3の外側を周方向に取り囲むとともに、動翼3の外周縁との間には隙間が形成されている。該内壁面2Wは、動翼3の遠心流を衝突させることにより、排気流MFに含まれるオイルミストを捕捉するオイルミスト捕捉部として機能している。また、静翼4は、筺体2の内部にて動翼3の上流側に隣接配置され、該動翼3による排気流MFの受風方向を、排気流MFの風力の回転トルク変換効率が向上する向きに整流する役割を果たす。
【0025】
図4に示すように、動翼3は、回転軸線Oと直交する仮想平面VPから傾斜形態で立ち上がる風車羽根31が、回転軸線Oの周りに複数放射状に配置されたものとして構成されている。具体的には、仮想平面VPと平行に配置される円板状の板状基材34を備え、該板状基材34には各々風車羽根31に対応する内縁形状となる貫通窓32が回転軸線O周りに放射状となるように複数形成されている。そして、図6及び図7に示すように、動翼3の回転方向における風車羽根31の一方の縁が、貫通窓32の対応する内周縁33にて板状基材34に傾斜形態にて結合されている。
【0026】
一方、図5に示すように、静翼4は、回転軸線Oと直交する仮想平面VPから傾斜形態で立ち上がる風車羽根41が、該平面VPに対する傾斜方向が動翼3とは逆向きとなるように回転軸線Oの周りに複数放射状に配置され、筺体2内に非回転となるように取り付けられる。具体的には、静翼4は、仮想平面VPと平行に配置される板状基材44を備え、該板状基材44には各々風車羽根41に対応する内縁形状となる貫通窓42が回転軸線Oの周りに放射状となるように複数形成されている。風車羽根41は、動翼3の回転方向における2つの縁のうち、動翼3側と反対側の縁が、貫通窓42の対応する内周縁にて板状基材44に傾斜形態にて結合されている。
【0027】
また、図2及び図11に示すように、動翼3と静翼4との対は、筺体2内部にて回転軸線O方向に複数配置されている。動翼3の回転軸線Oと直交する平面による筺体2の断面形状は、静翼4を形成する板状基材44の平面形状に一致している。そして、該板状基材44の外周縁を筺体2の内面に結合することにより、静翼4側の板状基材44は、当該動翼3の配置空間を軸線O方向の両側にて区画する仕切り板として機能している。従って、動翼3が個別に配置される空間(以下、動翼空間という)は、静翼4の板状基材44にて区画された構造となっている。また、オイルミスト捕捉部2Wをなす筺体2の壁部の底には、動翼空間ごとにドレン孔21dが形成され、捕集されたオイルミストを抜き取る上での便宜が図られている。
【0028】
また、図2及び図11に示すように、複数の動翼3と静翼4とは、風車羽根31,41の仮想平面からの立ち上がり方向が、静翼4が風上方向及び動翼3が風下方向となるように設定されている。また、風車羽根31,41が非突出となる側の板状基材34,44の主表面同士の対向間隔は、これと反対側の主表面同士の対向間隔よりも小さくなるよう交互に配置されている。これにより、隣接する静翼4と動翼3との配置間隔が縮小されていることがわかる。
【0029】
図5及び図9に示すように、静翼4の板状基材44は正方形状に形成され、図3に示すように、外周縁部にて筺体2の内面に結合される。具体的には、図9に示すように、外周縁にそって直角に曲げ返す形で結合代部48が形成され、これに貫通形成されるねじ穴48hにて図示しないボルト等により筺体2の壁部に締結結合される。
【0030】
図5に示すように、静翼4の板状基材は、風車羽根41の円状の配列と、正方形状の基材外周縁との間の領域が中実の気流遮断領域(ただし、貫通形態で形成された風圧調整孔44aを除く)となっている。他方、図4に示すように、動翼3は円板状に形成され、筺体2の正方形状の断面内縁との間の領域は、全体にわたって気流の通過を許容する隙間空間となっている。すなわち、図4と図5とを対比すれば明らかな通り、回転軸線Oの周りにおいて、静翼4の風車羽根41の放射状の配列の外周縁よりも外側における通気断面積は、動翼3の外周縁と筺体2の内面との間に形成される隙間の通気断面積よりも小さく設定されている。
【0031】
次に、図4、図5に示すように、複数の動翼3の板状基材34(図4)は、複数の静翼4の板状基材44(図5)を貫通して配置される共通の回転軸5に対し相対回転不能に取り付けられる。該回転軸5は、静翼4の板状基材44の貫通位置に設けられたベアリング53により回転可能に支持されている。具体的には、動翼3の板状基材34の中央には軸固定スリーブ52がボルト37を介して取り付けられ、該回転軸5は該軸固定スリーブ52に対しセットボルト(図示せず)等を介して回転不能に取り付けられる。また、ベアリング53は、外輪が静翼4の板状基材44に、内輪が回転軸5にそれぞれ回転不能に取り付けられる。
【0032】
図6及び図7に示すように、動翼3及び静翼4(以下、動翼3側の符号で代表させる)は、風車羽根31の外周縁に対応する周回形状に沿って、当該風車羽根41の貫通窓32への結合縁33となるべき区間を除く形で板材に切れ目を形成し、該板材の切れ目の内側に位置する部分を、板状基材34をなす残余の部分に対し結合縁33となるべき区間を折り目33として傾斜形態に曲げ起す形で風車羽根31が形成されている。特に、ステンレス鋼板やアルミ板材などの金属板材を板状基材34として用いる場合は、風車羽根31の結合縁33を残す形で貫通窓32を打ち抜き形成し、そのまま打ち抜いた窓内部の部分を、打ち抜きパンチによりノックアウトする形で曲げ起して風車羽根31にする、という極めて単純な金属加工によって安価にかつ能率的に形成できる(ただし、プラスチック板材を使用することもでき、この場合は、実際に打ち抜き加工を行うのではなく、当該風車形状を金型成型により形成することも可能である)。
【0033】
貫通窓32は、回転軸線Oに関する半径方向に沿って形成される1対の長辺区間32r,33と、回転軸線Oに関する周方向に沿って形成される1対の短辺区間32p,32kとに囲まれた台形または扇型に形成されている。そして、風車羽根31は1対の長辺区間の一方を結合縁33とする形で該貫通窓32の内周縁33に結合されている。この実施形態では、貫通窓32(及び風車羽根31)は、回転軸線の中心に関する半径方向に所定の角度間隔で形成される半径方向内縁32r及び折り目(結合縁)33と、両者を該半径方向内外にてそれぞれ連結する円弧状(直線状でもよい)の周方向内縁32p,32kに囲まれた扇型(ないし台形)状に形成されている。
【0034】
なお、図7の左に示すように、半径方向を法線とする平面による風車羽根31の断面形状は直線状となっているが、打ち抜きパンチの先端面形状の変更により、同図右に示すように、円弧状に湾曲した断面形態とすることも可能である。
【0035】
以下、オイルミスト除去装置1の作用について説明する。図1において、コンロ102で発生する煙SMは集煙フード105に集められる。排気ファン102を作動させると、コンロ102で発生する煙SMは集煙フード105に集められつつ排気流MFとなって入口側排煙ダクト104Aに吸い込まれ、オイルミスト除去装置1を通過してオイルミストや煙粒子が取り除かれ、浄化済み排気流VFとなって出口側排煙ダクト104Bに流れ込み、排気ファン102を経て屋外へ排出される。
【0036】
オイルミスト除去装置1内では、遊転可能な軸流型風車として構成された動翼3は、受風面3Rにて排気流MFを受けて回転し、図3に示すように、送風面3F側にて、排気流MFを回転軸線O方向に生ずる軸流成分AFと回転半径方向外向きに生ずる遠心流成分CRFとに分解しつつ送出する。図10に示すように、遠心流成分CRFは動翼34の外周面から放出されるとともに、筺体2の内壁面2Wに衝突し、排気流MFに含まれるオイルミスト(や、煙粒子などの汚染物)が、該内壁面2Wをオイルミスト捕捉部としてこれに捕捉される。
【0037】
すなわち、動翼3においては、受けた排気流MFの一部が遠心流成分CRFとなって内壁面2Wに向かい、そこでオイルミストが捕捉される一方、一部が軸流成分AFの形で下流側に逃がされる。この軸流成分AFは、下流側の次段の軸流型風車3に供給され、同様に遠心流成分CRFと軸流成分AFとに分解される。その結果、供給される排気流MFに含まれるオイルミストは、複数段の動翼3(軸流側風車)を通過するに伴い、その都度、遠心流成分CRFに乗って段階的に除去されるとともに、軸流成分AFの形で一部が下流側に逃がされる分だけ流通抵抗が減少する。その結果、外部からの動力供給が不要な遊転機構により風車を回転させるだけでオイルミストを十分に除去することができる。
【0038】
また、図10に示すように、各動翼3の上流側には静翼4が配置されているが、該静翼4は、動翼3から放出される排気流MFの受風方向を、該動翼3による排気流MFの風力の回転トルク変換効率が向上する向きIFに整流する整流部の役割を果たす。図4及び図5に示すように、静翼4は、具体的には、回転軸線Oと直交する仮想平面VPから傾斜形態で立ち上がる風車羽根41が、該平面VPに対する傾斜方向が動翼3とは逆向きとなるように回転軸線Oの周りに複数放射状に配置されている。動翼3から放出される排気流MFの向きは回転軸線Oの向きに平行であるが、静翼4の風車羽根41を通過する際に該排気流MFは、次段の動翼3の風車羽根31の受風面3Rに対し、該風車羽根31の法線方向に近づくように(すなわち、回転トルク変換効率が向上する向きIFに)方向転換された形で供給され、次段の動翼3の回転効率が高められる。そして、このような動翼3と静翼4との対が複数段設けられ、かつ、複数の動翼3が動相かつ同軸に設けられて一体回転する構造となっていることで、排気流MFの風力を動翼3の回転力に無駄なく変換することができ、排気流MF中のオイルミストの除去能力が一層高められている。
【0039】
また、静翼4側の板状基材44が、当該動翼3の配置空間を軸線O方向の両側にて区画する仕切り板として機能し、動翼3が個別に配置される動翼空間が、静翼4の板状基材44にて区画された構造となっているので、静翼4の風車羽根41の外側をバイパスして動翼3側に回り込む気流の発生が抑制され、動翼3から次段の静翼4に対し排気流MFを効率よく導くことができる。また、図3に示すように、動翼空間ごとにドレン孔21dが形成されているが、該ドレン孔21dは、常時はボルトやキャップ等でふさいでおき、内部に捕捉されたオイルミストがたまってくれば、随時該ドレン孔21dを開いてオイルを抜き取ればよい。
【0040】
以下、オイルミスト除去装置1の種々の変形例について説明する。
図12の構成では、底板21の下側に、漏斗状のドレン捕集部28を取り付けた例を示す。ドレン捕集部28の底部にはドレン回収部29が着脱可能に取り付けられている。底板21の、各動翼空間に対応する位置に開けられたドレン孔21dはキャップ等でふさがれず、解放状態とされており、筺体2の壁面を流下する回収済みのオイルはドレン孔21dからドレン捕集部28上に落下し、ドレン回収部29に集められる。ドレン回収部29は随時取り外し、溜まったオイル等を廃棄すればよい。図13は、底板21の下側に、図12のドレン捕集部の代わりにラック21を取り付け、該ラック21に引き出し状のオイル回収パン30を設けた例である。
【0041】
図14の構成は、筺体2及び静翼4の外形を円状とした構成例を示す。これにより、筺体2内に風が淀みやすい角部が生じなくなり、気流抵抗が減少するので、動翼3の回転効率、ひいてはオイルミストの捕捉能力をより高めることができる。なお、筺体2の底部には、図12と同様のドレン回収部29が設けられている。
【0042】
図15の構成では、筺体2の両端に各ダクト接続部がフランジ221fとして形成され、ダクト204A,204B側のフランジ204fを重ね合わせてボルトナット221B等のフランジ締結具により締結結合するようにしてある。
【0043】
図16のオイルミスト除去装置100の構成では、竪型に構成された外部筺体120が設けられ、その頂部120Tの側面に形成された排気流入口126から排気流を吸い込むようになっている。風車ユニット6を区画する筺体2は、外部筺体120の下部120Bの内部において、その天板120Uに対し吊下げ形態で固定されている。動翼3の回転軸5は、垂直方向に配置される形となり、排気流VFは外部筺体120の底面に当たった後、その側壁部に形成された排気流出口26から排出されるようになっている。
【0044】
図17の構成では、筺体2が、底部が円弧状に湾曲した断面形態を有している。また、動翼3と静翼4との組のさらに下流側において筺体2の内部に、動翼3よりも遠心流成分CRFが大きくなるように構成された補助風車6が遊転可能に配置されている。動翼3よりも遠心流発生が優位となる補助風車6を下流側に配置することで、動翼3群を通過した時点で排気流MFに残留していたオイルミストを効果的に除去することができる。
【0045】
図18は、その静翼4、動翼3及び補助風車6の構成例を示すものである。動翼3は図4と同様の構成である。他方、静翼4は、板状基材44の矩形をなす上半分にのみ結合代部48が形成されている。補助風車6は動翼3と同様の構成であるが、軸流成分よりも遠心流成分が優位となるように、板状基材に対する風車羽根の傾斜角度が動翼3よりも大きく設定されている。図17に示すように、該補助風車6は、風車羽根が非突出となる面を互いに重ね合わせた2枚を1対とする形で設けられている(図17では、該対を複数設けているが、1組のみを設ける形でもよい)。
【符号の説明】
【0046】
1 オイルミスト除去装置
2 筺体
2J 排気流入口
2D 排気流出口
2W オイルミスト捕捉部
3 軸流型風車
31 風車羽根
32 貫通窓
34 板状基材
4 静翼(整流部)
41 風車羽根
42 貫通窓
44 板状基材
5 回転軸
6 補助風車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が排気流通路をなす中空体として構成され、該排気流の流通方向における一端に排気流入口が、他端に排気流出口が形成された筺体と、
回転軸線が排気流方向を向くよう前記筺体の内部に流れ方向に複数同軸的かつ各々遊転可能に配置され、また、該回転軸線方向における上流側に受風面が形成され下流側に送風面が形成され、前記受風面にて前記排気流を受けて遊転することにより、該排気流を前記送風面側にて前記回転軸線方向に生ずる軸流成分と回転半径方向外向きに生ずる遠心流成分とに分解しつつ送出する軸流型風車と、
前記軸流型風車の外周縁との間に隙間が形成されるように、該軸流型風車の外側を周方向に取り囲む形で前記筺体内部に形成され、該軸流型風車から放出される遠心流を衝突させることにより、前記排気流に含まれるオイルミストを捕捉するオイルミスト捕捉部と、
を備えたことを特徴とするオイルミスト除去装置。
【請求項2】
前記筺体の内壁面が前記オイルミスト捕捉部に兼用されている請求項1記載のオイルミスト除去装置。
【請求項3】
前記筺体内部にて前記軸流型風車の上流側に隣接配置され、該軸流型風車による前記排気流の受風方向を、該軸流型風車による前記排気流の風力の回転トルク変換効率が向上する向きに整流する整流部が設けられている請求項1又は請求項2に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項4】
前記軸流型風車は、前記回転軸線と直交する平面から傾斜形態で立ち上がる風車羽根が、前記回転軸線周りに複数放射状に配置された動翼として構成され、
前記整流部は、前記回転軸線と直交する仮想平面から傾斜形態で立ち上がる風車羽根が、該平面に対する傾斜方向が前記動翼とは逆向きとなるように前記回転軸線周りに複数放射状に配置され、かつ前記筺体内に非回転となるように取り付けられた静翼からなる請求項3記載のオイルミスト除去装置。
【請求項5】
前記動翼及び前記静翼はそれぞれ、前記仮想平面と平行に配置される板状基材を備え、該板状基材には各々前記風車羽根に対応する内縁形状となる貫通窓が前記回転軸線周りに放射状となるように複数形成され、該動翼又は静翼の回転方向における前記風車羽根の一方の縁が、前記貫通窓の対応する内周縁にて前記板状基材に傾斜形態にて結合されてなる構造を有する請求項4記載のオイルミスト除去装置。
【請求項6】
前記静翼の前記板状基材は、外周縁部が前記筺体の内面に結合されるとともに、前記回転軸線周りにおける前記風車羽根の放射状の配列の外周縁よりも外側における通気断面積が、前記動翼の外周縁と前記筺体の内面との間に形成される隙間の通気断面積よりも小さく設定されてなる請求項5記載のオイルミスト除去装置。
【請求項7】
複数の前記動翼の前記板状基材は、複数の前記静翼の前記板状基材を貫通して配置される共通の回転軸に対し相対回転不能に取り付けられるとともに、該回転軸は、前記静翼の前記板状基材の貫通位置に設けられたベアリングにより回転可能に支持されてなる請求項5又は請求項6に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項8】
前記動翼及び前記静翼は、前記風車羽根の外周縁に対応する周回形状に沿って、当該風車羽根の前記貫通窓への結合縁となるべき区間を除く形で板材に切れ目を形成し、該板材の前記切れ目の内側に位置する部分を、前記板状基材をなす残余の部分に対し前記結合縁となるべき区間を折り目として傾斜形態に曲げ起す形で前記風車羽根が形成されてなる請求項7記載のオイルミスト除去装置。
【請求項9】
前記貫通窓は、前記回転軸線に関する半径方向に沿って形成される1対の長辺区間と、前記回転軸線に関する周方向に沿って形成される1対の短辺区間とに囲まれた台形または扇型に形成され、前記風車羽根は1対の前記長辺区間の一方を前記結合縁とする形で該貫通窓の内周縁に結合されてなる請求項7又は請求項8に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項10】
前記動翼と、該動翼に対し風上方向に隣接する前記静翼との対が、前記筺体内部にて前記回転軸線方向に複数配置されている請求項3ないし請求項9のいずれか1項に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項11】
前記動翼及び前記静翼はそれぞれ、前記仮想平面と平行に配置される板状基材を備え、該板状基材には各々前記風車羽根に対応する内縁形状となる貫通窓が前記回転軸線周りに放射状となるように複数形成され、該動翼又は静翼の回転方向における前記風車羽根の一方の縁が、前記貫通窓の対応する内周縁にて前記板状基材に傾斜形態にて結合されてなる構造を有するとともに、
複数の前記動翼と前記静翼とは、前記風車羽根の前記仮想平面からの立ち上がり方向が前記静翼が風上方向及び前記動翼が風下方向となり、かつ、前記風車羽根が非突出となる側の前記板状基材の主表面同士の対向間隔が、これと反対側の主表面同士の対向間隔よりも小さくなるよう交互に配置されてなる請求項10記載のオイルミスト除去装置。
【請求項12】
前記動翼と前記静翼との組のさらに下流側において前記筺体の内部に遊転可能に配置され、前記動翼よりも遠心流成分が大きくなるように構成された補助風車が配置されてなる請求項4ないし請求項11のいずれか1項に記載のオイルミスト除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−120947(P2012−120947A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271623(P2010−271623)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(394013943)福助工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】