説明

オイルミスト除去装置

【課題】メッシュの洗浄効果を向上し得て、長期的な稼動に耐え得ることかできるオイルミスト除去装置を提供する。
【解決手段】電動モータ12の外周を包囲する内筒13と、内筒13の外周を包囲する外筒14と、電動モータ12の出力軸11に固定されて中心側から外周側へと気流を案内する吸引ファン15と、外筒14の外部と内部とを連通する吸気口16と、吸引ファン15の回転に伴って発生した負圧によって吸気口16から吸気した気流を分離するサイクロン部18と、電動モータ12と吸引ファン15との間に配置された回転円板19と、回転円板19の外周付近に複数設けられて上下に流通する気流に対して回転時に衝突作用を及ぼすメッシュ20と、メッシュ20に向けて回転円板の下方から洗浄液を噴射する下側スプレー洗浄器52と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械内部で発生する油煙等の含塵気流からオイルミストを捕集・除去することができるオイルミスト除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工作機械内部で発生するオイルミストを含む含塵気流(油煙)からオイルミストを捕集・除去することができるオイルミスト除去装置が知られている。また、このようなオイルミスト除去装置にあっては、例えば、特許文献1のように、フィルタを使用せずに、サイクロン部と高速で回転する回転円板に設けたメッシュによってオイルミストを除去し捕集する技術が知られている。更に、メッシュの上方に洗浄口を設けて、メッシュにオイルミストの固着成分や粉塵成分などが付着した場合でも、洗浄口より導入した洗浄液や洗浄用エアによって洗浄する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−158634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、高濃度のオイルミストを含んだ気流を吸引する場合や、オイルミストに加えて粉塵やダストを多く含んだ含塵気流を吸引する場合には、メッシュに高濃度のオイルミスト或いは固着成分や粉塵成分が多く付着してしまい、頻繁に洗浄を行わなければならない。
【0005】
しかしながら、上述したように、メッシュの上方に配置された洗浄口から洗浄液を導入し洗浄する構成においては、例えば、オイルミスト除去装置を稼働しながらメッシュを洗浄した場合、気流の流れにのって洗浄水と共に固着成分や粉塵成分の飛沫が排気口から漏れて周囲に飛散してしまう虞がある。
【0006】
このため、洗浄処理を行う際には、オイルミスト除去装置の稼働を一旦停止(ファンを停止)しなければならず、工作機械の稼動状況に合わせて長期間連続稼動するような場合においては、洗浄処理を行うことができずにオイルミストの回収効率が低下する等の支障をきたすという問題があった。また、オイルミスト除去装置の洗浄時間中は、工作機械の稼働を停止しなければならず、工作機械の稼働率が低下してしまうという問題があった。加えて、オイルミスト除去装置の稼働を停止(ファンを停止)して洗浄処理を行った際には、回転円板は回転していないため、メッシュの一部分しか洗浄処理を行うことができないという問題も生じた。さらに、気流に含まれるオイルミストは、メッシュの下方側から吸引されるので、固着成分や粉塵成分は、メッシュの下面に多く付着し、どうしてもメッシュの上方から洗浄液を導入した場合、メッシュの下面に付着した固着成分や粉塵成分を全て取り除くことが難しいという問題も生じた。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、オイルミスト除去装置が稼動中でも、メッシュに付着した固着成分や粉塵成分を洗浄可能とし、特にメッシュの下部側に付着した固着成分や粉塵成分を綺麗に取り除き、長期的な稼動に耐え得るミスト除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のオイルミスト除去装置は、略鉛直方向に軸線を有する電動モータと、該電動モータの外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の内筒と、該内筒の外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の外筒と、前記電動モータの出力軸に固定されて中心側から外周側へと気流を案内する吸引ファンと、前記外筒の外壁面に設けられて前記外筒の外部と内部とを連通する吸気口と、前記吸引ファンの回転に伴って発生した負圧によって前記吸気口から吸気した気流を分離するように前記吸引ファンの下方に形成されたサイクロン部と、前記電動モータと前記吸引ファンとの間に配置されて前記出力軸と同軸に回転する回転円板と、該回転円板の外周付近に複数設けられて上下に流通する気流に対して回転時に衝突作用を及ぼすメッシュと、前記回転円板及び前記メッシュに向けて前記回転円板の下方から洗浄液を噴射する下側スプレー洗浄器と、を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明のオイルミスト除去装置によれば、高濃度のオイルミストを含んだ含塵気流を吸引する場合や、オイルミストに加えて塵埃やダスト等を含んだ含塵気流を吸引する場合においても、メッシュに付着した固着成分や粉塵成分の洗浄処理を行うことができ、特にメッシュの下面に付着した固着成分や粉塵成分を効率良く除去し得て、長期的な稼動に耐え得ることができる。また、吸引ファンを運転している最中であってもメッシュの洗浄処理を行い得て、洗浄処理に時間的な制約を受けることがなくなり、設置現場での機械停止の必要をなくして生産工程の効率化に貢献することができる。
【0010】
請求項2に記載のオイルミスト除去装置は、前記下側スプレー洗浄器は、前記電動モータが駆動している状態で、間欠して繰り返し洗浄動作を行なうことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の構成によれば、間欠で繰り返し洗浄動作を行うことから、メッシュ及び回転円板に付着した固着成分や粉塵成分のこびり付きを抑制し得て、洗浄液を節約しつつ効率良く洗浄処理を行うことができる。
【0012】
請求項3に記載のオイルミスト除去装置は、前記下側スプレー洗浄器は、前記吸気口から前記サイクロン部に連なる旋回気流が再度前記吸気口に至る直前の位置で前記サイクロン部に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の構成によれば、含塵空気内に比較的大きなダストが混入していた場合であっても、その比較的大きなダスト等は下側スプレー洗浄器よりも上流側のサイクロン部で分離されることから、その比較的大きなダストによってメッシュ洗浄が阻害され難く、メッシュの洗浄効果を向上することができる。
【0014】
請求項4に記載のオイルミスト除去装置は、前記下側スプレー洗浄器は、前記メッシュの径方向全幅に跨って洗浄水を噴射する下側スプレーノズルを備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の構成によれば、少ない洗浄液流量で回転円板及びメッシュを満遍なく洗浄することができる。
【0016】
請求項5に記載のオイルミスト除去装置は、略鉛直方向に軸線を有する電動モータと、該電動モータの外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の内筒と、該内筒の外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の外筒と、前記電動モータの出力軸に固定されて中心側から外周側へと気流を案内する吸引ファンと、前記外筒の外壁面に設けられて前記外筒の外部と内部とを連通する吸気口と、前記吸引ファンの回転に伴って発生した負圧によって前記吸気口から吸気した気流を分離するように前記吸引ファンの下方に形成されたサイクロン部と、前記電動モータと前記吸引ファンとの間に配置されて前記出力軸と同軸に回転する回転円板と、該回転円板の外周付近に複数設けられて上下に流通する気流に対して回転時に衝突作用を及ぼすメッシュと、前記回転円板及び前記メッシュに向けて前記回転円板の上方から洗浄液を噴射する上側スプレー洗浄器と、を備え、前記上側スプレー洗浄器から噴射される洗浄液は、前記回転円板の直角方向に対して傾きを有して噴射されることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の構成によれば、上側スプレー洗浄器によって上方から回転円板及びメッシュに洗浄液を噴射させることによって、下方からの下側スプレー洗浄器による洗浄では落しづらい固着成分や粉塵成分、特に回転円板及びメッシュの上面に付着した固着成分や粉塵成分を洗浄することができる。更に、上側スプレー洗浄器の噴射口を回転円板の直角方向に対して傾けているので、洗浄液は斜めからメッシュに噴射され、その噴射圧力よって回転円板が回転するので、メッシュ全周を洗浄することができる。
【0018】
請求項6に記載のオイルミスト除去装置は、略鉛直方向に軸線を有する電動モータと、該電動モータの外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の内筒と、該内筒の外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の外筒と、前記電動モータの出力軸に固定されて中心側から外周側へと気流を案内する吸引ファンと、前記外筒の外壁面に設けられて前記外筒の外部と内部とを連通する吸気口と、前記吸引ファンの回転に伴って発生した負圧によって前記吸気口から吸気した気流を分離するように前記吸引ファンの下方に形成されたサイクロン部と、前記電動モータと前記吸引ファンとの間に配置されて前記出力軸と同軸に回転する回転円板と、該回転円板の外周付近に複数設けられて上下に流通する気流に対して回転時に衝突作用を及ぼすメッシュと、前記回転円板及び前記メッシュに向けて前記回転円板の下方から洗浄液を噴射する下側スプレー洗浄器と、前記回転円板及び前記メッシュに向けて前記回転円板の上方から洗浄液を噴射する上側スプレー洗浄器と、を設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の構成によれば、下側スプレー洗浄器により、ファン運転中においてもメッシュを洗浄液で洗浄することができ、洗浄時間の制約がないので、工作機械を停止させる必要がなく、稼働に支障を与えることが無い。また、上側スプレー洗浄器によって上方から回転円板及びメッシュに洗浄液を噴射させることによって、下方からの下側スプレー洗浄器による洗浄では落し難い固着成分や粉塵成分、特に回転円板及びメッシュの上面に付着した固着成分や粉塵成分を洗浄することができる。よって、下側スプレー洗浄器と上側スプレー洗浄器の相互の洗浄作用により、回転円板のメッシュに付着した固着成分や粉塵成分を確実に取り除くことが可能となり、長期的な稼動に耐え得ることができる。
【0020】
請求項7に記載のオイルミスト除去装置は、前記下側スプレー洗浄器は、前記電動モータが駆動している間に間欠で繰り返して洗浄液を噴射し、前記上側スプレー洗浄器は、前記電動モータの駆動停止後に洗浄液を噴射することを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の構成によれば、運転中(ミスト吸引時)は、下側スプレー洗浄器による洗浄液の噴射により、間欠的に繰り返し洗浄を行うので、メッシュ(回転円板)には、固着成分や粉塵成分が堆積しない。さらに、回転円板停止後には、上側スプレー洗浄器による洗浄液の噴射により洗浄を行って、下側スプレー洗浄器では取り除ききれなかった固着成分や粉塵成分を落とすので、常にメッシュ(回転円板)は固着成分や粉塵成分が付着しない綺麗な状態となり、全自動でメンテナンスできるオイルミスト除去装置である。
【0022】
請求項8に記載のオイルミスト除去装置は、前記上側スプレー洗浄器から噴射される洗浄液は、前記回転円板の直角方向に対して傾きを有して噴射されることを特徴とする。
【0023】
請求項8に記載の構成によれば、上側スプレー洗浄器の噴射口を回転円板の直角方向に対して傾けているので、洗浄液は斜めからメッシュに噴射され、その噴射圧力よって回転円板が回転するので、回転円板の全周を洗浄することができる。よって、吸引ファンを運転させる必要がないので、洗浄液や固着成分や粉塵成分の飛沫がオイルミスト装置外部へと飛散することを防止することができる。
【0024】
請求項9に記載のオイルミスト除去装置は、前記上側スプレー洗浄器から噴射される洗浄液は、前記電動モータの駆動による前記回転円板の回転方向とはカウンタ方向に噴射するように傾いていることを特徴とする。
【0025】
請求項9に記載の構成によれば、上側スプレー洗浄器の噴射による洗浄時には、ファンの運転時と逆方向に回転円板が回転し、ファンも運転時とは逆方向(カウンタ方向)に回転するので、ファンの吸引力が作用せずに、オイルミスト装置の排気口から洗浄液や固着成分や粉塵成分の飛沫が洩れ出すことはない。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、メッシュの洗浄効果を向上し得て、長期的な稼動に耐え得ることかできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るオイルミスト除去装置の正面図である。
【図2】本発明に係るオイルミスト除去装置の平面図である。
【図3】本発明のオイルミスト除去装置を示し、図2のA−A線に沿う縦断面図である。
【図4】本発明のオイルミスト除去装置を示し、図3のB−B線に沿う平断面図である。
【図5】本発明のオイルミスト除去装置を示し、図3のC−C線に沿う平断面図である。
【図6】本発明のオイルミスト除去装置に適用される図5の矢視Dから見た上側スプレー洗浄器の拡大側面図である。
【図7】本発明のオイルミスト除去装置における洗浄タイミング例を示すタイミングチャートである。
【図8】本発明のオイルミスト除去装置の要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明のオイルミスト除去装置について、図面を参照して説明する。
【0029】
尚、以下に示す実施形態は本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【0030】
図1は本発明に係るオイルミスト除去装置の正面図、図2は本発明に係るオイルミスト除去装置の平面図、図3は本発明のオイルミスト除去装置を示し、図2のA−A線に沿う縦断面図、図4は本発明のオイルミスト除去装置を示し、図3のB−B線に沿う平断面図、図5は本発明のオイルミスト除去装置を示し、図3のC−C線に沿う平断面図、図6は本発明のオイルミスト除去装置に適用される図5の矢視Dから見た上側スプレー洗浄器の拡大側面図、図7は本発明のオイルミスト除去装置における洗浄タイミング例を示すタイミングチャート、図8は本発明のオイルミスト除去装置の要部の分解斜視図である。
【0031】
図1乃至図5において、オイルミスト除去装置10は、出力軸11の軸線(以下、軸線の基準とする)が略鉛直方向に延びる電動モータ12と、電動モータ12の外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の内筒13と、内筒13の外周を所定間隔を存して出力軸11と同軸上で包囲する略円筒形状の外筒14と、出力軸11に固定されて中心側から外周側へと気流を案内する吸引ファン15と、外筒14の外壁面から軸線と交差する接線方向に突出して外筒14の外部と内部とを連通する吸気口16を備えた吸気管17と、を備え、吸引ファン15の回転に伴って発生した負圧によって吸気口16から吸気した気流を分離するサイクロン部18が吸引ファン15の下方に形成されている。
【0032】
また、オイルミスト除去装置10は、サイクロン部18と吸引ファン15との間に配置されて出力軸11と同軸に回転する回転円板19と、回転円板19の外周付近に複数設けられて上下に流通する気流に対して回転時に衝突作用を及ぼすメッシュ20…と、回転円板19と吸引ファン15との間に配置されて回転円板19の回転方向と同方向に旋回する気流を中心側に案内する方向に湾曲した複数の案内羽根21…を有する固定羽根体22と、を備えている。
【0033】
吸引ファン15の回転に伴う吸引作用によって吸気口16から吸引したオイルミストを含む含塵気流は、旋回気流としてサイクロン部18の遠心作用にて含塵気流に含まれる切粉等の比較的大きなダストを分離する。同時に、その旋回気流の旋回方向と逆方向に回転する回転円板19のメッシュ20…によって旋回しながら上昇するオイルミスト等を衝突させつつ外周に弾き飛ばしたうえで、外筒14の下方に設けられた廃油口23から廃油するように構成されている。尚、ここでのオイルミスト等には、旋回気流中の、オイルミスト自体、塵埃、サイクロン部18で分離できなかったダスト(微細な研磨粉や切削粉)、オイルミストを含んだ塵埃を主とする固着成分、オイルミストが付着したダストを主とする粉塵成分、が含まれている。
【0034】
以下、本発明に係るオイルミスト除去装置10の具体的な構成を説明する。
【0035】
電動モータ12は、その下端が台座24に固定された複数の防振ダンパー25…を介してブラケット26に支持されている。また、電動モータ12は、外筒14の外壁面に固定された制御回路ユニット27から電源供給を受けると共にその回転数等が制御される。尚、ブラケット26は、底板28を支持している。
【0036】
内筒13は、その下端が底板28に支持されている。尚、内筒13はブラケット26で支持しても良い。また、内筒13は、吸気口16から吸気した気流のサイクロン部18における気流方向(旋回方向)を規定する複数の整流羽根29…と整流開口30…とを備えた整流板31を固定している。整流開口30…は、整流羽根29…の下方に対応して複数形成されている。この際、整流開口30…は、整流羽根29…を切り起こしで形成することによって同時に形成することも可能である。
【0037】
尚、整流板31に整流羽根29…を設けずに、パンチングメタル等で小径開口部(図示せず)だけを形成した場合、整流羽根29…による気流の方向規制は難しくなるものの、多数の小径開口部によって上昇する気流が分散されて整流効果を発揮することができ、回転円板19に衝突する割合を円周上で均等化することができるという効果を奏することができる。また、この小径開口部は、例えば、外筒14の一部に開閉蓋等を設けることによって異物除去効果を可能とした場合、回転円板19に手が触れないようにするガードの役目も果たすことができる。この際、整流羽根29…と小径開口部とを両方採用することが最も有効であるが、コストの削減のために小径開口部のみで実装することでも、十分に本発明の効果を発揮することができる。
【0038】
外筒14は、底板28に固定され、吸気管17及び廃油口23を一体に形成している。この際、吸気管17及び廃油口23は別体でも良い。廃油口23は底板28の上面と一部が同じ高さとされている。また、外筒14の上部には吸引ファン15及び固定羽根体22の外周を同軸に取り巻くように段階的に拡開された段差筒体32が設けられている。さらに、段差筒体32の上部には、複数の排気口33…を形成した有蓋円筒形状の気流旋回カバー34が設けられている。これにより、オイルミスト除去装置10の外観は、下方から順に、外筒14、段差筒体32、気流旋回カバー34、の三層構造で構成されている。
【0039】
尚、外筒14と内筒13との間に形成されるサイクロン部18の径方向の幅は底板28の径方向の幅で規定される。さらに、サイクロン部18の下端は底板28によって密閉されている。したがって、台座24、ブラケット26、内筒13、の各内側を無底空間(開放)とすることにより、電動モータ12を内筒13の下端から挿入し、内筒13の上端に突き当て状態で電動モータ12の上端と整流板31とをボルト固定する。尚、内筒13を出力軸11が貫通可能な有蓋円筒形状とし、その内向きフランジ状の蓋部に電動モータ12の上端と整流板31とをボルト固定しても良い。また、整流開口30…はサイクロン部18の径方向の幅の範囲で形成されている。
【0040】
気流旋回カバー34の内部には、吸引ファン15の上方に配置された気流旋回ガイド35及び排気マフラー36とが設けられている。尚、上述した複数の排気口33…は、気流旋回カバー34の上面(蓋面)中央寄りに、排気マフラー36の外周から内側を経由した排気を旋回状に排出する。
【0041】
気流旋回ガイド35は、円板状のベース板37と、このベース板37の外周に形成された一対の排気取入口38,38よりも内側に固定された略円弧形状の一対のガイド板39,39とを備えている。
【0042】
排気マフラー36は、吸引ファン15の外周から放出された気流がベース板37の排気取入口38,38の外側と気流旋回カバー34との間を旋回した後に排気取入口38,38の内側へと案内された排気を取り入れるように金網状の略円筒体から構成されている。また、排気マフラー36には、パンチングメタル等で形成された小径開口部が多数設けられており、排気気流の流通を分散させて整流させることができると共に、排気時の気流による風切り音は小径開口部では気流と一緒に通過するものの、小径開口部以外では風切り音が反射され、その周囲での音の打ち消し効果が発生して減音する効果がある。尚、小径開口部の開口率は50%程度と低くても良く、板厚が厚い材料を用いるのが良い。
【0043】
吸気口16は、電動モータ12の回転中心(出力軸11)と同軸な鉛直方向に中心軸を有する内筒13と外筒14との間、即ち、その鉛直中心軸とは交わらないオフセットした位置に開口され、サイクロン部18に気流を吸気する。この際、外筒14に接続される吸気管17は、サイクロン部18の周方向上流側を規定するように出力軸11の軸線方向と直交する外筒14の接線方向、即ちサイクロン部18の周方向中心線と吸気管17の中心軸線とが接線方向で連なるように突出されている。これにより、吸気口16からサイクロン部18への含塵気流の吸気が吸気管17によってスムーズにガイドされる。尚、吸気管17の先端には、オイルミスト除去装置10の設置場所に応じて外気(含塵空気)を効率良く吸い込むような配管やダクト等(図示せず)が接続される。
【0044】
吸引ファン15は、出力軸11が貫通する吸気開口40を形成した下部円板41と、出力軸11の先端にファン取付フランジ42を介して固定されて下部円板41と対向する上部円板43と、各円板41,43の間に設けられて吸引ファン15の回転方向に応じて吸気開口40から吸気した気流を外周へと案内するように湾曲された複数のフィン44…と、を備え、この複数のフィン44…によって気流を中心側から外周側へと案内することでサイクロン部18を負圧とし、吸気口16からオイルミストを含む含塵気流を吸引することができる。尚、上部円板43は、例えば、その中央側を山形状に盛り上げても良い。
【0045】
回転円板19は、円板取付フランジ45を介して出力軸11の中途部に固定されている。本実施の形態では、回転円板19の周縁部付近複数個所に略扇形状に形成された開口を塞ぐようにメッシュ20…が設けられている。尚、メッシュ20…は、回転円板19に多数の小さな穴を直接形成しても良い。また、メッシュ20…の密度等は電動モータ12のパワー、ダストの大きさ、オイルミストの種類等に応じて適宜設定することができる。回転円板19は、回転中のメッシュ20…への含塵気流の衝突突入角度が安定するように含塵気流を整流する吸気気流衝突作用部材として機能する。また、回転円板19の回転中心を回転軸としたことにより、回転円板19を停止させた際には、オイルミストの滴下及び凝縮により回転円板19のバランスが悪化することがなく、振動や騒音を低く抑えることができる。
【0046】
固定羽根体22は、回転円板19を通過した気流を吸引ファン15の中心側に向けて案内するもので、円板取付フランジ45が貫通する貫通穴46と複数の吸気穴47…とを形成した下部固定円板48と、出力軸11が貫通すると共に気流を集中的に案内するように中心に向けて山形状とされた上部固定円板49と、各固定円板48,49の間の周縁部に跨って設けられてノズル貫通孔50が形成された周壁51と、を備えている。複数の案内羽根21…は、各固定円板48,49の間に設けられて吸引ファン15の回転方向に沿ってサイクロン部18から吸気した気流を中心側へと案内するように湾曲されている。貫通穴46は中心に形成され、複数の吸気穴47…は、各案内羽根21…の間に位置してメッシュ20…と対向する位置に形成されている。尚、上部固定円板49は、周辺の平面部分と中心の山形部分とを別体で構成しても良い。
【0047】
メッシュ20…は、例えば、細かい多数の空隙を有する網目等が用いられているが、より好適には、細いワイヤ等の線材を放射状に並列に多数固定して構成すれば、電動モータ12の回転によって回転円板19に衝突するオイルミスト等を外周方向に弾き飛ばし易くすることができる。また、メッシュ20…の下方と上方とには、それぞれ下側スプレー洗浄器52と上側スプレー洗浄器53とが配置されている。
【0048】
下側スプレー洗浄器52は、外筒14を貫通して先端が上向きのエルボ型のものが用いられており、整流板31の下方に位置している。下側スプレー洗浄器52は、図4に示すように、平面視において、吸気口16からサイクロン部18の周方向に連なる気流旋回方向の吸気口16よりも下流側に配置されている。この際、上述したサイクロン部18の内部で発生する旋回気流による分離効果をできるだけ長く確保したうえで洗浄するように、吸気口16から最も離れた位置に配置するのが好ましい。このため、本実施の形態では、下側スプレー洗浄器52はサイクロン部18での含塵気流の周回基準(1周基準)の最下流付近、即ち、吸気口16からサイクロン部18に連なる旋回気流が再度吸気口16に至る直前の位置でサイクロン部18に設けられている。この周回基準(1周基準)の最下流付近に下側スプレー洗浄器52を配置することにより、含塵気流内に切粉等の比較的大きなダストが混入していた場合、その比較的大きなダストは、図4に模式的に示すように、下側スプレー洗浄器52よりも上流側のサイクロン部18で最大に分離したうえでメッシュ20…を洗浄するので、比較的大きなダストに阻害されることなく、確実に洗浄液をメッシュ20…に噴射することができる。更にサイクロン部18の分離効果を邪魔し難い位置に下側スプレー洗浄器52を配置したので、全体的な能力を低下させることはない。
【0049】
下側スプレー洗浄器52の先端部には、霧状の洗浄液を噴射するための下側スプレーノズル54が取り付けられている。本実施の形態においては、下側スプレーノズル54は、0.5mm程度の穴が中央に一箇所開口している。また、下側スプレーノズル54の噴射角度は、メッシュ20…の径方向全幅に跨って洗浄水を噴射することができる広噴角タイプのものが採用されている。この際、下側スプレーノズル54とメッシュ20…との相対距離は下側スプレーノズル54の噴射角度に応じた距離(上下可動又はエルボ交換)が確保される。尚、相対距離とメッシュ20…の幅とに応じて噴射角度を決定しても良い。ここで、広噴角タイプの下側スプレーノズル54を適用したのは、少ない洗浄液量でメッシュ20…の広域を霧状に噴射することができ、洗浄液の節約に貢献することができるためである。また、下側スプレーノズル54には1つ孔タイプのものを用いたが、孔数が増えるとそれだけ多くの洗浄水を必要とするため、少ない流量で噴霧効率の良い一つ孔の広噴角タイプを適用するのが好ましい。
【0050】
下側スプレーノズル54からの噴射された洗浄液は、整流板31に設けた整流開口30…を通過してメッシュ20…の下面側に噴射されて、付着した固着成分や粉塵成分と混ざり合い掻き飛ばす。その掻き飛ばされた固着成分や粉塵成分は、洗浄液とともに廃油口23から排出される。また、洗浄液は、給水配管55、下側電磁弁56、下側可撓性ホース57を通して下側スプレー洗浄器52に供給されて、下側電磁弁56の開閉制御によって、下側スプレーノズル54から洗浄液が噴射される。
【0051】
尚、下側スプレーノズル54から噴射される霧状の洗浄液の平均粒径は、比較的中霧程度の300〜400μmが好適である。また、下側スプレー洗浄器52から噴射される洗浄液は、制御回路ユニット27によって下側電磁弁56が制御されて、稼動中(吸引ファン15運転中)に、間欠で繰り返し洗浄動作を行うので、メッシュ20…に付着した固着成分や粉塵成分が固着する(こびり付く)前に洗浄処理を実行することができ、洗浄液を節約しながら、効率良くメッシュ20…を洗浄することができる。例えば、間欠で繰り返し洗浄を行う動作としては、数秒〜数十秒程度洗浄を行い、数十分〜数時間程度洗浄を休止した後、再度数秒〜数十秒程度洗浄を行うといった動作を繰り返す。この際、その洗浄時間や空き時間といった設定時間は、吸引するオイルミスト濃度やメッシュ20…の汚れ具合といった使用環境に応じて設定・選択することができる。
【0052】
上側スプレー洗浄器53は、段差筒体32を貫通してノズル貫通孔50から固定羽根体22の内部に洗浄液を噴射する上側スプレーノズル58…が水平に臨んでおり、図5に示すように、メッシュ20…に対向して配置されている。上側スプレー洗浄器53の具体的形状としては、直径十数mm(φ14)のパイプ形状(中空)であり、洗浄液を噴射する上側スプレーノズル58…は、数mm度(φ4mm)の丸穴を複数個形成(例えば、3つ)したものである。
【0053】
上側スプレーノズル58…は、鉛直方向に対して傾けて開口してある。例えば、図6に示すように、上側スプレーノズル58…を鉛直方向に対して傾ける角度θとしては、30〜45°程度が望ましい。これにより、上側スプレーノズル58…は、含塵気流からメッシュ20…でオイルミスト等を捕集している電動モータ12の稼動状態での回転円板19の回転方向に対して逆方向に回転円板19が回転する状態で回転円板19とでなす角度が鋭角となる。このように、上側スプレーノズル58…を鉛直方向に対して傾け、洗浄液を斜めからメッシュ20…に噴射することによって、その噴射圧力で回転円板19が稼動時の回転方向(図5の矢印E方向)とは逆方向(図5の矢印F方向)に回転し、回転円板19及びメッシュ20…を全面洗浄することができる。この際、電動モータ12を停止させて稼動時とは逆方向に回転円板19が回転すると、それに伴い吸引ファン15も回転するが、この回転も稼動時とは逆方向であるため、吸引ファン15の吸引力はサイクロン部18には作用せず、排気口33…から洗浄液並びに固着成分や粉塵成分が飛沫することは無い。この際、下側スプレーノズル54は、運転中に洗浄し、吸引ファン15の吸引力が作用するので、洗浄液の噴射圧力は小さくて済むため広噴角の霧状スプレーノズルを使用することができる。これに対して、上側スプレーノズル58…は、運転停止中に洗浄するため、汚れを落とすための噴射圧力が必要となるうえ、メッシュ20…に斜めから洗浄水を噴射させることによって、回転円板19を回転させるだけの噴射圧力が必要となる。したがって、本実施の形態では、数mm程度の丸孔を複数開口した。即ち、下側スプレーノズル54と同様に丸孔が一つの場合では、上述した圧力を確保すると、噴射角度が比較的狭いので、メッシュ20…の径方向全体を一度に洗浄することができなくなってしまう。
【0054】
また、上側スプレー洗浄器53は、制御回路ユニット27によって上側電磁弁59が制御されて、ファン停止後(回転円板19の停止後)に洗浄液を噴射させて洗浄動作を行う洗浄液を噴射させる洗浄時間は、数秒〜数十秒程度であり、吸引するミスト濃度やメッシュ20…の汚れ具合により、後述(図7参照)する制御回路ユニット27によって設定することができて、適宜洗浄時間を選択できる。
【0055】
尚、洗浄液は、給水配管55、上側電磁弁59、上側可撓性ホース60を通して上側スプレー洗浄器53に供給されて、上側電磁弁59の開閉制御によって、上側スプレーノズル58…から洗浄液が噴射される。上側スプレー洗浄器53は、メッシュ20…(回転円板19)の上方から洗浄液を噴射することによって、下側スプレー洗浄器52による洗浄では落しづらいメッシュ20…の上面に付着した固着成分や粉塵成分を洗浄することができる。尚、メッシュ20…から剥がされた固着成分や粉塵成分は、洗浄液とともに廃油口23から排出される。
【0056】
制御回路ユニット27は、詳細は図示しないが、電動モータ12及び各電磁弁56,59を制御するための制御基板や電源接続のための端子台等を備えている。また、制御基板には、ディップスイッチ等が搭載されていて、各種洗浄時間(下側スプレー洗浄器52の洗浄時間、上側スプレー洗浄器53の洗浄時間、洗浄休止時間等)を設定することができる。さらに、制御回路ユニット27には、釦を押すと起動する運転釦、釦を押すと停止する停止釦、及び通電すると点灯する通電ランプ、運転中(ファン起動中)に点灯する運転ランプ、洗浄中に点灯する点灯ランプ等を装備している。
【0057】
制御回路ユニット27の側方には、可撓性ホース57,60を接続した下側スプレー洗浄器52及び上側スプレー洗浄器53に対して、洗浄液の供給を制御する為の下側電磁弁56及び上側電磁弁59がそれぞれ設けられている。また、下側電磁弁56及び上側電磁弁59には、例えば、洗浄液に水道水を使用した場合、上水用配管や蛇口(図示せず)に接続された給水配管55が接続され、各電磁弁56,59の制御によって下側スプレー洗浄器52及び上側スプレー洗浄器53に洗浄液である水道水が供給される。尚、洗浄液に水道水を使用した場合において、下側電磁弁56及び上側電磁弁59の弁開時の水圧は0.1〜0.3(MPa)が適当な範囲である。
【0058】
次に、本発明のオイルミスト除去装置10におけるメッシュ20…の洗浄動作を、図7のタイムチャートに基づいて、オイルミスト除去装置10の下側スプレー洗浄器52及び上側スプレー洗浄器53の動作時間T1〜T5を用いて説明する。
【0059】
タイムチャート上段でオイルミスト除去装置10の運転を開始(例えば、制御回路ユニット27の運転釦を押下)すると、下側スプレー洗浄器52を示すタイムチャート中段で動作時間T1(sec)経過後、動作時間T2(sec)の間で下側電磁弁56が開弁し、下側スプレーノズル54から洗浄液が噴射される。
【0060】
また、タイムチャート中段で動作時間T3(hr)の間で下側電磁弁56が閉弁し、下側スプレーノズル54からは洗浄液の噴射が停止された後、タイムチャート中段で再度動作時間T2(sec)の間で下側電磁弁56が開弁し、下側スプレーノズル54から洗浄液が噴射される。以降、下側スプレー洗浄器52に関しては、オイルミスト除去装置10の運転が停止するまで(例えば、制御回路ユニット27の停止釦を押下)、動作時間T2とT3とを順次繰り返す。
【0061】
さらに、オイルミスト除去装置10の運転が停止すると、タイムチャート下段で動作時間T4(sec)経過後、動作時間T5(sec)の間で、上側電磁弁59が開弁し、上側スプレーノズル58…から洗浄液が噴射される。尚、本実施の形態においては、動作時間T5は、洗浄液の噴射圧力に応じて回転円板19が数回(例えば、3周)回転する時間に設定され、その洗浄回数は1稼動停止毎に1回である。
【0062】
尚、本実施例では、上述した動作時間T1〜T5は、T1=30(sec)、T2=2〜30(sec)、T3=0.5〜8(hr)、T4=30(sec)、T5=2〜60(sec)としたが、その動作時間T1〜T5は、吸引する含塵空気中に含まれるオイルミストの量、性状、運転時間などによって適宜設定・選択することができる。また、本実施例の洗浄液には、水道水の他、洗剤入り湯又は水、スチーム、アルカリ性電解水等でも良く、また上側スプレー洗浄器53については圧縮空気を使用しても構わない。
【0063】
上記の構成において、オイルミスト除去装置10は、図4の各矢印で示すように、オイルミストを含んだ気流は、吸気口16からサイクロン部18の吸気気流旋回作用(図8(イ)参照)によって旋回させられ、オイルミスト中の比較的大きな粉塵等は、外筒14の内壁に沿って凝集して底板28に落下され、廃油口23より外部に排出される。
【0064】
一方、微細な粉塵やオイルミストは、吸気気流旋回作用(図8(イ)参照)によって、旋回しつつ外筒14と内筒13の間を上昇し、整流板31の整流羽根29…の傾斜配置に伴って発生する吸気気流整流初期作用(図8(ロ)参照)によって、サイクロン部18から旋回気流方向に沿って上昇した気流が回転円板19の回転方向と対向する方向でさらに衝突突入角度が安定した状態で整流される。
【0065】
次に、回転円板19は、衝突突入角度が安定的に整流された気流が回転するメッシュ20…に衝突することでオイルミストを除去する吸気気流衝突作用(図8(ハ)参照)として機能する。尚、メッシュ20…を通過した気流は固定羽根体22の回転方向に旋回させられる。
【0066】
さらに、固定羽根体22は、回転円板19と吸引ファン15との間で回転円板19を通過した気流を吸引ファン15の吸気開口40に案内するように回転円板19の回転方向と同方向に旋回する気流を固定羽根体22の中央に案内する方向に湾曲した複数の案内羽根21…によって吸気気流整流作用(図8(ニ)参照)として機能する。この吸気気流整流作用(図8(ニ)参照)では、回転円板19での気流中のオイルミストとメッシュ20…の衝突による外周への弾き飛ばしを通過した清浄気流の流れを整流している。
【0067】
吸引ファン15は、その回転によって気流を外周に排気する気流吸引排出作用(図8(ホ)参照)を発生させ、この気流吸引排出作用(図8(ホ)参照)が実際に吸気口16から気流を吸気する作用を発生させている。
【0068】
気流旋回ガイド35は、気流旋回カバー34と協働して吸引ファン15からの排気気流を吸引ファン15の回転方向と同方向に旋回させる排気気流旋回作用(図8(ヘ)参照)として機能する。即ち、気流旋回ガイド35は、排気気流旋回方向に解放され且つ逆方向に遮蔽されており、吸引ファン15の二次側上部に連通口を介して流通可能に配置し、排気気流を旋回気流化する。そして、排気口33…は、その旋回作用を付与した排気気流を、そのまま外部へと排気(図8(ト)参照)する。
【0069】
このように、オイルミスト除去装置10によれば、フィルタを用いていないため、フィルタ目詰まりが発生せず、フィルタ交換のメンテナンス不要となる。
【0070】
この際、回転円板19の回転方向は略鉛直方向に回転軸を有しており、停止時のオイルミストの滴下および凝縮により回転円板19のバランスが悪化することがなく、振動や騒音を低く抑えることができる。
【0071】
また、回転円板19と吸引ファン15との間の案内羽根21…で気流を吸引ファン15に案内する固定羽根体22により、回転円板19での気流中のオイルミストとメッシュ20…の衝突による外周への弾き飛ばしを通過した清浄気流の流れを整流することで、吸引ファン15の吸引効率を高く維持することができ、排気気流を旋回気流化することで、排気口33…からの排気効率も上昇し、排気音が低減すると同時に吸引ファン15の吸引効率も上昇することができ、結果的に電動モータ12の消費電力を低減することができる。
【符号の説明】
【0072】
10…オイルミスト除去装置
11…出力軸
12…電動モータ
13…内筒
14…外筒
15…吸引ファン
16…吸気口
17…吸気管
18…サイクロン部
19…回転円板
20…メッシュ
52…下側スプレー洗浄器
53…上側スプレー洗浄器
54…下側スプレーノズル
55…給水配管
56…下側電磁弁
57…下側可撓性ホース
58…上側スプレーノズル
59…上側電磁弁
60…上側可撓性ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略鉛直方向に軸線を有する電動モータと、該電動モータの外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の内筒と、該内筒の外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の外筒と、前記電動モータの出力軸に固定されて中心側から外周側へと気流を案内する吸引ファンと、前記外筒の外壁面に設けられて前記外筒の外部と内部とを連通する吸気口と、前記吸引ファンの回転に伴って発生した負圧によって前記吸気口から吸気した気流を分離するように前記吸引ファンの下方に形成されたサイクロン部と、前記電動モータと前記吸引ファンとの間に配置されて前記出力軸と同軸に回転する回転円板と、該回転円板の外周付近に複数設けられて上下に流通する気流に対して回転時に衝突作用を及ぼすメッシュと、前記回転円板及び前記メッシュに向けて前記回転円板の下方から洗浄液を噴射する下側スプレー洗浄器と、を設けたことを特徴とするオイルミスト除去装置。
【請求項2】
前記下側スプレー洗浄器は、前記電動モータが駆動している状態で、間欠して繰り返し洗浄動作を行なうことを特徴とする請求項1に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項3】
前記下側スプレー洗浄器は、前記吸気口から前記サイクロン部に連なる旋回気流が再度前記吸気口に至る直前の位置で前記サイクロン部に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項4】
前記下側スプレー洗浄器は、前記メッシュの径方向全幅に跨って洗浄水を噴射する下側スプレーノズルを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のオイルミスト除去装置。
【請求項5】
略鉛直方向に軸線を有する電動モータと、該電動モータの外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の内筒と、該内筒の外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の外筒と、前記電動モータの出力軸に固定されて中心側から外周側へと気流を案内する吸引ファンと、前記外筒の外壁面に設けられて前記外筒の外部と内部とを連通する吸気口と、前記吸引ファンの回転に伴って発生した負圧によって前記吸気口から吸気した気流を分離するように前記吸引ファンの下方に形成されたサイクロン部と、前記電動モータと前記吸引ファンとの間に配置されて前記出力軸と同軸に回転する回転円板と、該回転円板の外周付近に複数設けられて上下に流通する気流に対して回転時に衝突作用を及ぼすメッシュと、前記回転円板及び前記メッシュに向けて前記回転円板の上方から洗浄液を噴射する上側スプレー洗浄器と、を備え、
前記上側スプレー洗浄器から噴射される洗浄液は、前記回転円板の直角方向に対して傾きを有して噴射されることを特徴とするオイルミスト除去装置。
【請求項6】
略鉛直方向に軸線を有する電動モータと、該電動モータの外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の内筒と、該内筒の外周を所定間隔を存して同軸上で包囲する略円筒形状の外筒と、前記電動モータの出力軸に固定されて中心側から外周側へと気流を案内する吸引ファンと、前記外筒の外壁面に設けられて前記外筒の外部と内部とを連通する吸気口と、前記吸引ファンの回転に伴って発生した負圧によって前記吸気口から吸気した気流を分離するように前記吸引ファンの下方に形成されたサイクロン部と、前記電動モータと前記吸引ファンとの間に配置されて前記出力軸と同軸に回転する回転円板と、該回転円板の外周付近に複数設けられて上下に流通する気流に対して回転時に衝突作用を及ぼすメッシュと、前記回転円板及び前記メッシュに向けて前記回転円板の下方から洗浄液を噴射する下側スプレー洗浄器と、前記回転円板及び前記メッシュに向けて前記回転円板の上方から洗浄液を噴射する上側スプレー洗浄器と、を設けたことを特徴とするオイルミスト除去装置。
【請求項7】
前記下側スプレー洗浄器は、前記電動モータが駆動している間に間欠で繰り返して洗浄液を噴射し、前記上側スプレー洗浄器は、前記電動モータの駆動停止後に洗浄液を噴射することを特徴とする請求項6に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項8】
前記上側スプレー洗浄器から噴射される洗浄液は、前記回転円板の直角方向に対して傾きを有して噴射されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項9】
前記上側スプレー洗浄器から噴射される洗浄液は、前記電動モータの駆動による前記回転円板の回転方向とはカウンタ方向に噴射するように傾いていることを特徴とする請求項5又は請求項8に記載のオイルミスト除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−55839(P2012−55839A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202290(P2010−202290)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)
【Fターム(参考)】