説明

オステオポンチンの機能エピトープ、それと特異的に結合するモノクローナル抗体およびその抗腫瘍薬の製造のための用途

本発明は、オステオポンチンの機能エピトープ、それと特異的に結合するモノクローナル抗体、免疫抱合体およびその抗腫瘍薬の製造のための用途を公開した。さらに、前述モノクローナル抗体をコードする配列及びこの配列を含むベクターと宿主細胞を公開した。また、本発明のモノクローナル抗体或いは免疫抱合体はオステオポンチンの検出に有用である。本発明のモノクローナル抗体或いは免疫抱合体によれば、OPNの転移を促進するシグナル伝達経路を遮断し、腫瘍の発展と転移を防止することによって、腫瘍を抑制する効果を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、生物技術分野に属し、より具体的に、一種のタンパク質の機能エピトープ、この機能エピトープと特異的に結合するモノクローナル抗体およびその抗腫瘍薬の製造のための用途に関する。
【0002】
[背景技術]
腫瘍は、我が国の国民の生命及び健康を深刻に脅かす疾患であり、腫瘍の手術切除後5年では、生存率が40%程度に達するが、約半分の患者が術後転移・再発が現れる。どうやって腫瘍の切除後の高転移再発率を抑えることによって腫瘍患者の治療効果を向上させるかは、世界中の医学研究で取り組んでいる重要な課題である。腫瘍細胞の転移機構を深く研究することは、腫瘍の転移・再発の分子的機構を解明し、転移を促進するシグナル伝達経路を知り、転移を抑制する有効な作用段階を探し、新薬の開発と臨床の治療により有効な阻害標的を提供し、腫瘍患者の生存率を向上させることに寄与する。
【0003】
腫瘍転移の分子的機構の研究によると、多種の要素が腫瘍細胞の転移と密接に関連し、たとえば、p16変異、p53変異、p21、c-erbB-2、mdm-2、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)、上皮成長因子受容体(EGF-R)、マトリックスメタロプロテアーゼ-2(MMP-2)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)及びその受容体とプラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)、細胞間接着分子-1(ICAM-1)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)等が肝臓癌の侵襲性と正相関の因子である(Yamaguchi H, Wyckoff J, Condeelis J. Cell migration in tumors.「腫瘍における細胞移動」Curr Opin Cell Biol. 2005 ;17(5):559-64. Huber MA, Kraut N, Beug H. Molecular requirements for epithelial-mesenchymal transition during tumor progression. 「腫瘍進行期間における上皮-間葉転換の分子学的要件」Curr Opin Cell Biol. 2005 年10月;17(5):548-58.)。
【0004】
近年の研究によって、オステオポンチン(Osteopontin,OPN)が腫瘍細胞の転移において非常に重要な作用を発揮することが見出され(Rangaswami H, Bulbule A, Kundu GC. Osteopontin: role in cell signaling and cancer progression.「オステオポンチンの細胞シグナル伝達及び癌の進行における作用」Trends Cell Biol. 2006年2月;16(2):79-87.)、各国の研究チームの協力で、OPNの転移シグナル経路に対する促進の分野では新な報告が続出し、その腫瘍細胞の転移に対する促進機能の主要な面について異なる角度から解釈され、OPNシグナル経路の腫瘍細胞の転移に対する促進における重要な制御作用が世界中の腫瘍転移の研究分野において注目の研究課題となった。
【0005】
オステオポンチンは、一種の重要な腫瘍転移を促進する糖タンパクシグナル分子として、骨格組織、腎臓組織、大脳組織、腺上皮細胞、血管平滑筋細胞、活性化マクロファージ、リンパ細胞及び腫瘍細胞のいずれにおいても発現される(Weber GF, Ashkar S, Glimcher MJ, Cantor H. Receptor-ligand interaction between CD44 and osteopontin (Eta-1).「CD44とオステオポンチン(Eta-1)の間の受容体-リガンド相互作用」 Science (Washington, DC) 1996;271: 509-12.)。OPNは、腫瘍組織の細胞外マトリックスにおいて、腫瘍細胞の表面のCD44(Miyauchi A, Alvarez J, Greenfield EM等.Recognition of osteopontin and related peptides by an αvβ3 integrin stimulates immediate cell signals in osteoclasts.「αvβ3 インテグリンにより識別されるオステオポンチン及び関連ペプチドの破骨細胞における細胞シグナルに対する刺激」 J Biol Chem 1991;266:20369-7)及びインテグリン(Teramoto H, Castellone MD, Malek RL, Letwin N, Frank B, Gutkind JS, Lee NH. Autocrine activation of an osteopontin-CD44-Rac pathway enhances invasion and transformation by H-RasV12.「オステオポンチン-CD44-Rac経路の自己分泌の活性化のH-RasV12による転化と侵襲に対する促進」Oncogene. 2005年1月 13;24(3):489-501.)の二つの重要な受容体の下流のシグナル経路を活性化することにより、腫瘍細胞の細胞外マトリックスに対する分解、細胞移動及び細胞の抗アポトーシス能を促進することができ、以下の方面が含まれる。
【0006】
OPNシグナルは、受容体のCD44に認識され、腫瘍細胞のRhoファミリー低分子量Gタンパク質、例えばRacの活性化を引起し(Teramoto H等,同上,Oncogene. 2005 Jan 13;24(3):489-501.)、低分子量Gタンパク質が細胞外の化学走化シグナルを下流のエフェクタータンパク質、例えばWASP(Wiskott-Aldrich syndrome protein、ウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク)ファミリーのメンバーに伝達し、WASPタンパクがアクチン(Actin)の重合反応を触媒するアクチン関連タンパク質(Arp2/3)抱合体と結合して活性化させることにより,腫瘍細胞の骨格リモデリング及び細胞膜突出の形成を誘導し、細胞の移動能を向上させる(Wolf K, Mazo I, Leung H等. Compensation mechanism in tumor cell migration: mesenchymal-amoeboid transition after blocking of pericellular proteolysis.「腫瘍細胞の移動の代償機構:細胞外タンパク質分解が遮断後の間葉-アメーバー様移行」 J Cell Biol 2003; 160: 267-77.)。移動細胞の引張られた先端において、活性化されたWASPタンパクが突出した細胞膜にインテグリン依存の細胞接着を形成させ、マトリックスメタロプロテアーゼの局部的な累積を誘導し、細胞外マトリックスの分解を促進する(Nicholson, K.M. とAnderson, N.G. (2002) The protein kinase B/Akt signaling pathway in human malignancy.「人悪性腫瘍におけるプロテインキナーゼB/Artのシグナル伝達経路」 Cell. Signal. 14, 381-395)。また、OPN-CD44の下流経路は、Aktキナーゼを標的分子の一つとするPI-3Kを活性化し、Aktキナーゼが細胞周期の進行を制御し、細胞の生存、細胞のアンカー非依存性成長及び細胞移動などの過程を促進し、OPNの腫瘍の抗アポトーシスと細胞移動能に対する促進を誘導する(Lin, Y.H.とYang-Yen, H.F. (2001) The osteopontin-CD44 survival signal involves activation of the phosphatidylinositol 3-kinase/Akt signaling pathway.「オステオポンチン-CD44生存シグナルのホスファチジルイノシトール3-キナーゼ/Aktシグナル伝達経路の活性化への関与」 J. Biol. Chem. 276, 46024-46030. Philip, S.とKundu, G.C.(2003) Osteopontin induces nuclear factorkB mediated promatrix metalloproteinase-2 activation through I kappa B alpha/IKK signaling pathways and curcumin (diferulolylmethane) downregulates these pathways. 「オステオポンチンがIκBα/IKKシグナル伝達経路及びその下流のクルクミンによって誘導する核内因子kBによるマトリックスメタロプロテアーゼ-2前駆体の活性化」J. Biol. Chem. 278, 14487-14497)。OPNは、受容体αvβ3に認識されると、NIKとMEKK1を活性化し、それぞれ下流のNF-κBとAP-1の活性化・核内移行を引起し、エフェクター遺伝子のuPAとMMPsの発現のアップレギュレートを誘導し、細胞外マトリックスに対する分解を促進する(Rangaswami, H.等(2004) Nuclear factor inducing kinase plays a crucial role in osteopontin induced MAPK/IκBa kinase dependent nuclear factor-κB mediated promatrixmetalloproteinase-9 activation.「核内因子誘導キナーゼのオステオポンチンによって誘導されるMAPK/ IκBaキナーゼ依存性核内因子κBによるマトリックスメタロプロテアーゼ-9前駆体の活性化における重要な役割」J. Biol. Chem. 279, 38921-38935,Rangaswami, H.等(2005) JNK1 differentially regulates osteopontin induced nuclear factor inducing kinase/MEKK1 dependent activating protein-1-mediated promatrix metalloproteinase-9 activation.「JNK1のオステオポンチンによって誘導される核内因子誘導キナーゼ/MEKK1依存性アクチベータータンパク質1によるマトリックスメタロプロテアーゼ-9前駆体の活性化に対する分化調節」 J. Biol. Chem. 280, 19381-19392)。同時に、腫瘍細胞によって分泌されるOPNは、自己分泌と傍分泌の経路にて血管内皮細胞増殖因子VEGFの発現を促進することにより、血管内皮細胞の増殖と腫瘍内部における毛細管の形成を促進することができる(Goutam Chakraborty等(2008) Osteopontin Promotes Vascular Endothelial Growth Factor-Dependent Breast Tumor Growth and Angiogenesis via Autocrine and Paracrine Mechanisms.「オステオポンチンの自己分泌と傍分泌の機構による血管内皮細胞増殖因子依存性乳腺腫瘍の成長と血管形成に対する促進」 Cancer Res 2008;68: 152-161)。以上のように、OPNシグナル経路の機能の発揮は、腫瘍転移細胞の細胞外マトリックスに対する浸潤の完成、血液又はリンパ循環による外周の組織・器官への拡散、及び転移病巣の形成の各段階において、多方面の重要な制御機能を示す。
【0007】
抗OPN抗体でOPNの転移を促進するシグナル伝達経路を遮断すれば、腫瘍細胞の接着と移動の過程を有効に遮断し、腫瘍細胞の細胞マトリックスへの浸潤を防止し、腫瘍の毛細管の形成を抑制することにより、腫瘍の発展と転移を防止することが可能になる。
【0008】
[発明の内容]
本発明の目的は、オステオポンチンの特定の機能エピトープに対するモノクローナル抗体を提供することにより、腫瘍を治療する効果を得ることにある。
【0009】
本発明の第一は、NXPYである(ただし、X=A又はGで、Y=S、T、N又はPである。)オステオポンチンの機能エピトープを提供する。
【0010】
一つの好適な例において、前述機能エピトープは、NAPSである。もう一つの好適な例において、前述機能エピトープは、オステオポンチンの第7エクソンの212-215aaにある。
【0011】
本発明の第二は、前述の機能エピトープと特異的に結合する抗オステオポンチンのモノクローナル抗体を提供する。
【0012】
一つの好適な実施形態において、前述モノクローナル抗体の重鎖可変領域のCDRアミノ酸配列は、それぞれGYTFTTYVMH、YINPYNDGSKYNEKFKG及びHYGGSPAY(例えば、図4のH1A12VHbを参照)から、軽鎖可変領域のCDRアミノ酸配列は、それぞれRSSQSLVHSNGNTYLH、KVSNRFS及びSQSTHVPWT(例えば、図4のH1A12VLbを参照)から選ばれる。
【0013】
もう一つの好適な実施形態において、前述モノクローナル抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号4或いは配列番号19から、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6或いは配列番号21から選ばれる。
【0014】
もう一つの好適な実施形態において、前述モノクローナル抗体の定常領域は、マウス抗体の定常領域或いはヒト抗体の定常領域から選ばれる。
【0015】
もう一つの好適な例において、前述定常領域は、マウスIgGである。一つの好適な例において、前述モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法又は組換えDNA法で製造されたもの、或いはファージ抗体ライブラリーから分離されたものである。もう一つの好適な例において、前述モノクローナル抗体は、キメラ抗体或いはヒト化抗体である。
【0016】
本発明の第三は、本発明のモノクローナル抗体をコードするDNA分子を提供する。
【0017】
もう一つの好適な例において、前述DNA分子において、重鎖可変領域をコードするヌクレチオド配列は、配列番号3或いは配列番号18で、且つ軽鎖可変領域をコードするヌクレチオド配列は、配列番号5或いは配列番号20である。
【0018】
本発明の第四は、本発明の上述のDNA分子を含有するベクターを提供する。
【0019】
本発明の第五は、本発明のベクターを含む、或いはゲノムに本発明のDNA分子が組み込まれている宿主細胞を提供する。
【0020】
一つの好適な例において、前述宿主細胞は、原核細胞、好ましくは細菌細胞、或いは、低等真核細胞、好ましくは酵母細胞、或いは、高等真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞である。
【0021】
本発明の第六は、(a)本発明のモノクローナル抗体と、(b)薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、又は酵素からなる群から選ばれる抱合部分と、を含む免疫抱合体(immunoconjugate)を提供する。
【0022】
本発明の第七は、本発明の抗オステオポンチンのモノクローナル抗体或いは免疫抱合体の抗腫瘍薬の製造のための用途を提供する。
【0023】
もう一つの好適な例において、前述腫瘍は、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、肉腫、或いは副腎、胆嚢、骨、骨髄、脳、乳腺、胆管、胃腸管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓腺、副甲状腺、陰茎、前列腺、皮膚、唾液腺、脾臓、睾丸、胸腺、甲状腺又は子宮由来の腫瘍組織、中枢神経系腫瘍、眼部腫瘍、内分泌腺腫瘍、神経内分泌系腫瘍、胃腸管膵臓線内分泌系腫瘍、生殖系腫瘍、或いは頭頚部腫瘍から選ばれる。
【0024】
一つの好適な例において、前述中枢神経系腫瘍は、神経膠腫或いは星細胞腫から選ばれる。もう一つの好適な例において、前述眼部腫瘍は、基底細胞癌、扁平上皮癌或いは黒色腫から選ばれる。
【0025】
本発明の第八は、本発明の抗オステオポンチンのモノクローナル抗体或いは免疫抱合体と、薬学的に允許される担体と、を含む薬物組成物を提供する。
【0026】
一つの好適な例において、前述薬物組成物は、0.00001〜99.9wt%、好ましくは0.0001-90wt%、より好ましくは0.001-75wt%、さらに好ましくは0.01-50wt%の前述のモノクローナル抗体或いは免疫抱合体を含む。
【0027】
もう一つの好適な例において、前述薬物組成物は、さらに、TNF-α、TGF-β、IFN-α、アンジオスタチン、エンドスタチン、グリフォスフィン(Glyfosfin)、ヘマトポルフィリン、リコベタイン(Lycobetaine)、アタンシエマルション(Brucea Javanica oil emulsion)、エトポシド、ジアンヒドロガラクチトール、アドリアマイシン、タモキシフェン、フルオロウラシル、ノルカンタリジン(Norcantharidin)、テガジフール(Tegadifur)、ククルビタシン、ハリングトニン(Harringtonine)、ポニシジン(Ponicidin)、イリスキノン(Irisquinone)、ポサベルプチダム(Posaverptidum)、シタラビン、カルボプラチン、パクリタキセル、レンチナン、フルタミド、イホスファミド、ウベニメクス、酢酸リュープロレリン、ドキシフルリジン、ロバプラチン、イリノテカン、レトロゾール、又はテニポシドからなる群から選ばれる他の抗腫瘍活性物質を含む。
【0028】
本発明の第九は、本発明の抗オステオポンチンのモノクローナル抗体或いは免疫抱合体を含むオステオポンチン検出用キットを提供する。
【0029】
本発明の第十は、(i)検出される標本を本発明の抗オステオポンチンのモノクローナル抗体或いは免疫抱合体と接触させることと、(ii)抗原-抗体複合体が形成すると、標本におけるオステオポンチンの存在が示されるように、抗原-抗体複合体の形成の有無を検出すること、或いは、標本におけるオステオポンチンの含有量を表すように、形成された抗原-抗体複合体の量を定量的に検出することと、を含む生物標本におけるオステオポンチンの存在の有無或いはその含有量を検出する方法を提供する。
【0030】
一つの好適な例において、前述標本は、前処理されたものでも、前処理されていないものでもよく、好ましくは、抽出、精製又は濃縮などを経たものである。
【0031】
本発明の他の主旨は、本文の公開される内容によって、この分野の技術者にとっては明らかになっている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、ヒト・マウスOPNの真核発現・精製後のSDS-PAGE電気泳動図である。Mは、タンパク質の標準分子量を示す。
【図2】図2は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12のウェスタンブロット法による測定結果である。
【図3】図3は、ヒト化抗体h1A12の分子シミュレーションの構造の簡略図である。FR領域残基は濃灰色のリボンで、CDR領域残基は淡灰色のリボンで、CDR領域から5Å以内の9つの重要なマウス由来のFR領域残基は黒色の球棒状で表される。
【図4】図4は、ヒト化抗体h1A12の重鎖(図4A)及び軽鎖(図4B)のアミノ酸配列と関連配列との比較図である。ただし、1A12VHと1A12VLは、それぞれマウス由来のモノクローナル抗体1A12の重鎖と軽鎖の可変領域を示す。ヒト化抗体h1A12の重鎖と軽鎖のフレームワーク領域として、それぞれヒト抗体CAA79298.1の重鎖の可変領域とヒト抗体BAC01734.1の軽鎖の可変領域を選んだ。h1A12VHaとh1A12VHbは、それぞれのヒト化抗体の重鎖の可変領域を、h1A12VLaとh1A12VLbは、それぞれのヒト化抗体の軽鎖の可変領域を示す。ダッシュは、ヒト抗体CAA79298.1或いはBAC01734.1における相応の残基と同様のアミノ酸を示し、括弧内に表されるのはCDR領域である。アミノ酸は、Kabatの番号付け系に従って番号を付けられている[E.A. Kabat, T.T. Wu, H.M. Perry, K.S. Gottesman, C. Foeller, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth ed., United States Department of Health and Human Services, Bethesda, MD, 1991.]。
【図5】図5は、ヒト化抗体1A12の抗原結合活性の実験結果である。
【図6】図6は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12、キメラ抗体c1A12及びヒト化抗体h1A12の腫瘍細胞の接着に対する遮断の結果である。
【図7】図7は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12、キメラ抗体c1A12及びヒト化抗体h1A12の腫瘍細胞の基底膜への侵襲に対する抑制の結果である。
【図8】図8は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12、キメラ抗体c1A12及びヒト化抗体h1A12の腫瘍細胞の損傷切痕の修復に対する抑制の結果である。
【図9】図9は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12、キメラ抗体c1A12及びヒト化抗体h1A12の腫瘍細胞の軟寒天上のコロニー形成に対する抑制の結果である。
【図10】図10は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12、キメラ抗体c1A12及びヒト化抗体h1A12のHUVEC細胞の増殖に対する影響である。
【図11】図11は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12、キメラ抗体c1A12及びヒト化抗体h1A12のHUVECの毛細管様の管状構造の形成に対する影響である。
【図12】図12は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12、キメラ抗体c1A12及びヒト化抗体h1A12の鶏胚漿尿膜CAMの血管形成に対する抑制の結果で、図示において、各コラム図で左から右へ、それぞれPBS、VEGF、OPN、OPN+無関連抗体、OPN+1A12、OPN+c1A12、OPN+h1a12である。
【図13】図13は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12、キメラ抗体c1A12及びヒト化抗体h1A12のOPNによって誘導される角膜の新生血管の形成に対する影響である。
【図14】図14は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12のマウス体内の腫瘍の成長に対する抑制作用である。
【図15】図15は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12のマウス体内の乳腺癌の肺転移に対する抑制作用である。
【図16】図16は、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12のマウス体内の乳腺癌の腫瘍組織における血管密度に対する影響である。
【図17】図17は、抗OPNモノクローナル抗体1A12の3回のスクリーニング後の産出効率の比較図である。
【図18A】図18は、抗OPNモノクローナル抗体1A12の陽性ファージELISAとウェスタンブロットの同定図であり、図18Aは、ファージELISAの同定図で、図18Bは、1A12の陽性ファージELISAとウェスタンブロットの同定図である。
【図18B】図18は、抗OPNモノクローナル抗体1A12の陽性ファージELISAとウェスタンブロットの同定図であり、図18Aは、ファージELISAの同定図で、図18Bは、1A12の陽性ファージELISAとウェスタンブロットの同定図である。
【図19】図19は、ソフトウエアAlign Xによる抗OPNモノクローナル抗体1A12の結合エピトープの配列解析の結果である。
【図20】図20は、各種の配列エピトープの抗OPNモノクローナル抗体1A12との結合力の比較である。
【図21】図21は、抗OPNモノクローナル抗体1A12の特異的認識エピトープのOPN分子における相応の部位である。
【0033】
[具体的な実施形態]
本発明者は、長期にわたって深く研究したところ、オステオポンチンの特定の機能エピトープに対抗するモノクローナル抗体を獲得し、さらにキメラのモノクローナル抗体及びヒト化抗体を製造し、且つそのコード配列を解明した。研究によって、本発明者は、さらに、本発明のモノクローナル抗体が腫瘍の転移に抑制作用を持ち、腫瘍の治療に有用であることを証明した。これに基づき、本発明者が本発明を完成した。
【0034】
具体的に、本発明者は、まず、分子生物学的技術でヒトとマウスのOPN遺伝子をクローンし、真核細胞でヒトとマウスのOPNタンパクを発現させ、且つ細胞融合-ハイブリドーマの方法によりマウス抗ヒトOPNモノクローナル抗体1A12を製造し、さらにこのモノクローナル抗体の遺伝子に対してクローン及びその配列の測定を行った。
【0035】
本発明は、さらに、コンピュータ支援設計によってヒト化抗体h1A12のアミノ酸配列を設計することを含む抗オステオポンチンのヒト化抗体の製造方法を公開する。全遺伝子でh1A12の重鎖と軽鎖の可変領域の遺伝子を合成して遺伝子組換えによってそれぞれヒト抗体の重鎖と軽鎖の定常領域の遺伝子と連接し、真核発現ベクターにクローンし、それぞれヒト化抗体の軽鎖と重鎖の発現ベクターを構築し、さらに軽鎖と重鎖の発現ベクターをリポソーム法でCHO細胞にコトランスフェクションした後、スクリーニング、培養精製を行うことにより得る。キメラのモノクローナル抗体c1A12は、同様な方法を参照して得ることができる。
【0036】
発明者は、乳腺癌細胞株MDA-MB-435sで一連の実験を行うことにより、本発明に公開されたマウス抗ヒトOPNモノクローナル抗体1A12、ヒト-マウスキメラ抗体c1A12及びヒト化抗体h1A12の腫瘍細胞に対する抑制作用を検証した。細胞付着実験の結果は、抗hOPN抗体が有効にMDA-MB-435s細胞とhOPNとの結合を遮断できることを示し、細胞侵襲実験の結果は、抗hOPN抗体が有効にhOPN 存在下MDA-MB-435sの基底膜に対する侵襲を遮断できることを表明し、損傷切痕実験の結果は、抗hOPN抗体が有効に細胞の損傷切痕の修復を遮断できることを示し、軟寒天コロニー形成実験の結果は、抗hOPN抗体がMDA-MB-435s細胞の軟寒天上のコロニー形成の大きさを抑えられることを示した。それに対して、対照としての無関連抗体は上述作用がないことにより、本発明に公開された上述抗hOPN抗体が有効に腫瘍の転移病巣の形成を抑制できる作用を説明した。
【0037】
さらに、本発明者は、ヒト血管内皮細胞HUVECで一連の実験を行うことにより、本発明のマウス抗ヒトOPNモノクローナル抗体1A12、ヒト-マウスキメラ抗体c1A12及びヒト化抗体h1A12の腫瘍の血管生成に対する抑制作用を検証した。3H混入実験は、抗hOPN抗体が有効に内皮細胞の増殖を抑制できることを示し、HUVEC管状構造実験の結果は、抗hOPN抗体が血管内皮細胞の体外における血管形成を抑制できることを表明し、鶏胚漿尿膜(CAM)血管形成実験及びウサギ角膜新生血管形成実験は、抗hOPN抗体が体内において毛細管の形成を抑制できることを証明した。それに対して、対象としての無関連抗体は上述作用がないことにより、本発明に公開された上述抗hOPN抗体が有効に腫瘍の血管形成を抑制できることを説明した。
【0038】
同時に、本発明者は、乳腺癌細胞株MDA-MB-435sでマウスの体内においてマウス乳腺癌の原発腫瘍と乳腺癌の肺転移の動物モデルを構築し、且つこのモデルで抗OPNモノクローナル抗体1A12の腫瘍の進行、転移及び内部の血管形成を抑制する作用を検証した。それに対して、対象としての無関連抗体は上述作用がないことにより、本発明に公開された抗hOPN抗体1A12が有効に腫瘍の進行、血管形成を抑制し、且つ腫瘍の転移を遮断する作用を持つことを説明した。
【0039】
さらに、本発明者は、ファージディスプレイ技術で抗hOPN抗体1A12が作用するOPNのNAPSである機能エピトープを同定し、さらに、OPN分子の作用標的を解明した。より具体的に、本発明の出願者は、モノクローナル抗体のエピトープのスクリーニング、ファージクローンELISA及びウェスタンブロット法による同定、配列決定及び配列解析によってOPNの機能エピトープを推測し、さらにファージクローンと抗体結合能分析によって最強の結合力のクローンを選んで一連のオリゴペプチドを合成し、これらのオリゴペプチドと特異的抗体との結合実験によってこのエピトープを同定した。
【0040】
本発明のモノクローナル抗体及びその製造
ここで用いられる用語の「モノクローナル抗体」とは、一類のほぼ均一なコロニーから得られた抗体で、すなわち、少数のあり得る自然発生の突然変異以外、このコロニーに含まれる単独の抗体が同様である。モノクローナル抗体は、高度特異的に単一の抗原部位に対するものである。そして、通常のポリクローナル抗体製剤(通常は異なる抗原決定基に対する異なる抗体である)と違い、各モノクローナル抗体は、抗原における単一の抗原決定基に対するものである。それらの特異性以外、モノクローナル抗体の利点は、ハイブリドーマの培養によって合成されるので、他の免疫グロブリンに汚染される恐れがないことにある。修飾語の「モノクローナル」は、抗体の特性を表し、ほぼ均一な抗体コロニーから得られることで、何らかの特殊な方法で抗体を生産する必要があると理解されるべきではない。
【0041】
ここで用いられるように、用語の「抗体」又は「免疫グロブリン」とは、同様な構造特徴を持つ約150000ダルトンのヘテロテトラマーの糖タンパクで、二つの同じ軽鎖(L)と二つの同じ重鎖(H)からなるものである。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合しているが、重鎖間のジスルフィド結合の数は、免疫グロブリンのアイソタイプによるものである。各重鎖および軽鎖も、それぞれ一定の間隔の鎖内ジスルフィド結合を有する。各重鎖は、一つの末端に可変領域(VH)を有し、その先に多数の定常領域を有する。各軽鎖は、一方の末端に可変領域(VL)を有し、他方の末端に定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の一つ目の定常領域と、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と対向している。特殊なアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変領域の間に界面を形成している。
【0042】
ここで用いられるように、用語の「可変」とは、抗体において可変領域のある部分が配列で異なっており、これによって各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性が構成されることを指す。しかし、可変性は、均一に抗体の可変領域全体に分布しているわけではない。軽鎖と重鎖の可変領域における相補性決定領域(CDR)又は超可変領域と呼ばれる3つの断片に集中している。可変領域において、比較的に保存的な部分は、フレームワーク領域 (FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変領域に、それぞれ、基本的にβシート構造となっており、連結ループを形成する3つのCDRで連結され、場合によって部分βシート構造となる4つのFR領域が含まれる。各鎖におけるCDRは、FR領域で密接し、且つ他方の鎖のCDRと一緒に抗体の抗原結合部位を形成している(Kabat等, NIH Publ. No. 91-3242, 卷I,647-669ページ(1991)を参照)。定常領域は、抗体と抗原との結合には直接関与しないが、例えば抗体の抗体依存細胞毒性に参与するなどの異なるエフェクター機能を示す。
【0043】
脊椎動物の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常領域のアミノ酸配列に基づき、明らかに異なる二種類(κとλと呼ばれる)のいずれかに分類することができる。免疫グロブリンは、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づき、異なるクラスに分類することができる。免疫グロブリンには、主として5つのクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、そのうちのいくつかは、さらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3およびIgG-4やIgA-1およびIgA-2に分類することができる。異なるクラスの免疫グロブリンの重鎖の定常領域に応じて、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。各クラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造は本分野の技術者にとって熟知である。
【0044】
例えば、本発明のモノクローナル抗体は、重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号4或配列番号19から、軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号6或いは配列番号21から選ばれることが好ましく、定常領域は、マウス抗体の定常領域或いはヒト抗体の定常領域から選ばれるもの、たとえば、マウスIgGであってもよい。
【0045】
本発明の一つの実施形態において、重鎖可変領域のCDR1-3のアミノ酸配列は、それぞれGYTFTTYVMH、YINPYNDGSKYNEKFKG及びHYGGSPAY(図4のH1A12VHbを参照)から、軽鎖可変領域のCDR1-3のアミノ酸配列は、それぞれRSSQSLVHSNGNTYLH、KVSNRFS及びSQSTHVPWT(図4のH1A12VLbを参照)から選ばれる。
【0046】
モノクローナル抗体は、本分野の技術者に熟知の各種の方法で製造することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(最初はKohler等, Nature, 256:495(1975)で提出)、または、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)で製造することができる。また、モノクローナル抗体は、例えばClackson等, Nature, 352:624-628(1991)及びMarks等, J. Mol. Biol., 222:581-597(1991)に記載された技術でファージ抗体ライブラリーから分離して得たものでもよい。
【0047】
本発明のモノクローナル抗体は、キメラ抗体或いはヒト化抗体でもよい。本発明において、特に断らない限り、「1A12」はマウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12を、「c1A12」はヒト-マウスキメラ抗hOPNモノクローナル抗体c1A12を、「h1A12」はヒト化抗hOPNモノクローナル抗体h1A12を表す。c1A12の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号4で、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6で、定常領域は、ヒト抗体の定常領域である。h1A12の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号19で、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号21で、定常領域は、ヒト抗体の定常領域である。
【0048】
また、本発明は、前述の抗hOPNモノクローナル抗体の相応のアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体、前述の抗hOPNモノクローナル抗体の可変領域鎖を有するモノクローナル抗体、及びこれらの鎖を有する他のタンパク質又はタンパク質抱合体と融合発現産物を含む。具体的に、本発明は、超可変領域(相補性決定領域、CDR)が本発明の軽鎖及び重鎖の超可変領域と同様で、或いは少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を持つものであれば、この超可変領域を含有する軽鎖及び重鎖を有する任意のタンパク質又はタンパク質抱合体と融合発現産物(すなわち免疫抱合体と融合発現産物)を含む。本分野の技術者に知られるように、免疫抱合体と融合発現産物は、薬物、毒素、サイトカイン(cytokine)、放射性核種、酵素又は他の診断・治療分子と前述の抗hOPNモノクローナル抗体又はその断片と結合してなる抱合体を含む。さらに、本発明は、前述の抗hOPNモノクローナル抗体又はその断片と結合した細胞表面マーカー或いは抗原を含む。
【0049】
本発明は、完全のモノクローナル抗体だけではなく、免疫活性を有する抗体断片、例えばFab又は(Fab')2断片、抗体の重鎖、抗体の軽鎖も含む。
【0050】
抗hOPNモノクローナル抗体又はその断片のコード分子、この分子を含有する発現ベクター及び宿主細胞
さらに、本発明は、前述の抗hOPNモノクローナル抗体又はその断片をコードするDNA分子を提供する。これらのDNA分子の配列は、通常の技術で、例えば、PCR増幅 或いはゲノムライブラリースクリーニングなどの方法によって得ることができる。また、軽鎖及び重鎖のコード配列を一体に融合し、一本鎖抗体を形成してもよい。
【0051】
例えば、本発明のDNA分子は、重鎖可変領域をコードするヌクレチオド配列である配列番号3或いは配列番号18、軽鎖可変領域をコードするヌクレチオド配列である配列番号5或いは配列番号20を含んでもよい。例えば、c1A12の重鎖可変領域をコードするヌクレチオド配列は配列番号3に、軽鎖可変領域のヌクレチオド配列は配列番号5に示された。h1A12の重鎖可変領域をコードするヌクレチオド配列は配列番号18に、軽鎖可変領域のヌクレチオド配列は配列番号20に示された。また、本発明は、上述ヌクレチオド配列を含有する発現ベクターであるpcDNA3.1/ZEO(+)及びpcDNA3.1 (+)を公開した。さらに、本発明は、上述発現ベクターに形質転換された宿主細胞であるCOS、CHO細胞を公開した。
【0052】
関連の配列を獲得すれば、組換え法で大量に関連配列を獲得することができる。この場合、通常、その配列をベクターにクローンした後、細胞に導入し、さらに通常の方法で増殖させた宿主細胞から関連配列を分離して得る。
【0053】
また、特に断片の長さが短い場合、人工合成の方法で関連配列を合成してもよい。通常、まず多数の小さい断片を合成し、そして連接させることにより、配列の長い断片を得ることができる。
【0054】
現在、前述の本発明の抗hOPNモノクローナル抗体(又はその断片、或いはその誘導体)をコードするDNA配列を全部化学合成で獲得することがすでに可能である。さらに、このDNA配列を本分野で周知の各種の既知のDNA分子(或いはベクターなど)や細胞に導入してもよい。また、化学合成で本発明のタンパク質配列に突然変異を導入することもできる。
【0055】
さらに、本発明は、上述の適当なDNA配列及び適当なプロモーター或いは制御配列を含むベクターに関する。これらのベクターは、タンパク質を発現できるように、適当な宿主細胞の形質転換に用いることができる。宿主細胞は、原核細胞、例えば細菌細胞、或いは、低等真核細胞、例えば酵母細胞、或いは、高等真核細胞、例えば哺乳動物細胞でもよい。
【0056】
さらに、本発明は、本発明の抗hOPNモノクローナル抗体を生産することが可能なハイブリドーマ細胞系、好ましくは高力価の抗hOPNモノクローナル抗体のハイブリドーマ細胞系を提供する。
【0057】
本発明の抗hOPNモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを獲得するには、本分野の技術者は本発明の抗体の構造(例えば抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域)を非常に便利に知り、そして以下の方法で本発明のモノクローナル抗体を製造することができる。
【0058】
まず、本発明のモノクローナル抗体をコードするヌクレチオド配列及びその配列と作用可能に連結した発現調節配列を含有する発現ベクターを提供する。
【0059】
ここで用いられる用語の「発現調節配列」とは、通常、ヌクレチオド配列の発現制御に関与する配列のことを指す。発現調節配列は、目的ヌクレチオド配列と作用可能に連結したポロモーター及び終結シグナルを含む。通常、さらに、ヌクレチオド配列の適当な翻訳に必要な配列を含む。「作用可能に連結した」とは、直鎖状DNA配列のある部分が同直鎖状DNA配列の他の部分の活性に影響できることを指す。例えば、プロモーター又はエンハンサーはコード配列の転写を増加させた場合、これらとコード配列とは作用可能に連結した。
【0060】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNA配列は、本分野の技術者に熟知の通常の手段で得られる。例えば、本発明に公開された配列に基づき、人工合成或いはPCR法による増幅でそのモノクローナル抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードするヌクレチオド配列を得ることができる。その後、本分野で熟知の各種の方法で、好適な制限酵素切断部位の選択によって、それぞれ発現ベクターが有する重鎖定常領域のコード配列と軽鎖定常領域のコード配列の前に位置し、且つ同一のリーディングフレームにあるように、これらのヌクレチオド配列を好適な発現ベクターに挿入する。本発明で用いられる発現ベクターは、本分野の技術者に既知の各種の市販の発現ベクター、例えばpPICZα、pPIC9Kである。
【0061】
そして、上述で得られた発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換する。「宿主細胞」は、一般的に原核細胞と真核細胞とを含む。常用の原核宿主細胞の例として、大腸菌、枯草菌などを含む。常用の真核宿主細胞として、酵母細胞、昆虫細胞や、哺乳動物細胞を含む。本発明において、哺乳動物細胞が好ましい。通常、哺乳動物細胞系が真核細胞由来のポリペプチドを発現する宿主細胞として用いられる。哺乳動物細胞の培養物における増殖は、本分野で熟知である。「組織培養」,Academic Press, Kruse及びPatterson編(1973)を参照し、ここに参考として取り入れる。好ましい哺乳動物細胞は、多くの入手可能な無限増殖性細胞系である。これらの無限増殖性細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Vero細胞、Hela細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝臓癌細胞(例えばHep G2)及び他の多くの細胞系を含むが、これらに限定されない。これらの細胞は、タンパク質分子に正確な折り畳み、正確なジスルフィド結合の形成及び正確な部位のグリコシル化を含む翻訳後の修飾を提供する。
【0062】
発現ベクターで宿主細胞を形質転換する方法はたくさんあるが、用いられる形質転換のプロトコールが形質転換しようとする宿主にもよる。異質ポリヌクレチオドを哺乳動物細胞に導入する方法は、本分野で知られているが、デキストランによるトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン(1,5-ジメチル-1,5-ジアザウンデカメチレンポリメトブロミド)によるトランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポフェクション及びDNAの細胞核への直接マイクロインジェクションを含む。本発明において、好ましい方法は、エレクトロポレーション法やリポフェクション法等である。例えば、Invitrogen社のリポフェクション法キットでCOS細胞、CHO細胞などの宿主細胞へのトランスフェクションを行うことができる。
【0063】
その後、本発明のモノクローナル抗体の発現に適切な条件で、形質転換で得られた宿主細胞を培養する。そして、通常のグロブリンの精製工程、例えばプロテインA-Sepharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィーやアフィニティークロマトグラフィーなどの本分野の技術者に熟知の通常の分離精製手段で精製し、本発明のヒト由来抗HOPNモノクローナル抗体を得る。
【0064】
モノクローナル抗体の同定、発現及び精製
得られたモノクローナル抗体は、通常の手段で同定することができる。例えば、モノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降、或いは体外結合試験(例えば放射免疫測定(RIA)又は酵素結合免疫吸着測定(ELISA))で測定することができる。モノクローナル抗体の結合親和力は、例えばMunson等, Anal. Biochem.,107:220(1980)のScatchard分析で測定することができる。
【0065】
本発明の抗hOPNモノクローナル抗体は、細胞内又は細胞膜において発現し、或いは細胞外に分泌することができる。必要であれば、その物理・化学的特性及び他の特性を利用して各種の分離方法で組換えタンパク質を分離・精製することができる。これらの方法は、本分野の技術者に熟知である。これらの方法の例として、通用の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心、浸透圧ショック、超音波処理、超遠心、分子篩クロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び他の各種の液体クロマトグラフィー技術、並びにこれらの方法の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0066】
薬物組成物
さらに、本発明は、腫瘍を治療する薬物組成物であって、薬学的に有効量の本発明のモノクローナル抗体或いはその免疫抱合体と、薬学的に允許される担体と、を含む薬物組成物を提供する。
【0067】
ここで用いられる用語の「薬学的に允許される」とは、分子自体と組成物を適当に動物或いはヒトに投与する場合、不利な反応、アレルギー反応或いは他の不良反応が生じないことを指す。ここで用いられる「薬学的に允許される担体」は、本発明の活性物質と相容性を持ち、すなわち、本発明の活性物質と混合可能で、通常、大幅に薬物組成物の効果を降下させないはずである。これらの担体は、本分野の技術者に熟知である。「レミントンの医薬科学」(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Pub. Co.,N.J. 1991年)において、薬学的に允許される担体に関する十分な検討が見つけられる。
【0068】
このような担体は、食塩水、緩衝液、ブドウ糖、水、グリセリン、エタノール、佐剤、及びその組合せを含むが、これらに限定されない。さらに、これらの担体には、補助的な物質、例えば湿潤剤或いは乳化剤、pH緩衝物質等が存在してもよい。
【0069】
本発明の組成物は、経口投与及び静脈内、筋肉内又は皮下などの様態で投与することができるが、好ましくは、経口又は静脈内注射で投与する。
【0070】
通常、本発明の薬物組成物において、本発明のモノクローナル抗体或いは免疫抱合体の有効成分は、組成物の合計重量の0.00001〜99.9wt%、好ましくは0.0001-90wt%、より好ましくは0.001-75wt%、さらに好ましくは0.01-50wt%を占める。残量は、薬学的に允許される担体及び他の添加剤などの物質である。
【0071】
本発明の薬物組成物は、必要により各種の剤形に調製することができ、且つ医者が患者の種類、年齢、体重及び基本病状、投与の様態などの要素によって患者に有益な投与量を決めて使用することができる。投与の様態は、例えば灌注及び他の治療の様態を使用してもよい。
【0072】
薬物組成物の使用時、安全有効量の抗hOPNモノクローナル抗体或いは免疫抱合体を哺乳動物に使用するが、その安全有効量は、通常、0.1μg-5mg/kg体重で、多くの場合に、約3mg/kg体重未満で、好ましくはこの投与量が約1-10μg/kg体重-約1mg/kg体重である。勿論、具体的な投与量は、さらに投与の様態、患者の健康状況などの要素を考えるべきで、すべては熟練の医者の技能範囲に含まれる。
【0073】
本発明のモノクローナル抗体或いは免疫抱合体は、腫瘍の付着と移動を抑制し、腫瘍細胞のマトリックスへの浸潤を防止し、腫瘍細胞のアポトーシスを促進することができるが、前述の腫瘍は、例えば、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、肉腫、或いは副腎、胆嚢、骨、骨髄、脳、乳腺、胆管、胃腸管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓腺、副甲状腺、陰茎、前列腺、皮膚、唾液腺、脾臓、睾丸、胸腺、甲状腺又は子宮由来の腫瘍組織、中枢神経系の腫瘍、例えば神経膠腫或いは星細胞腫、眼部腫瘍(例えば基底細胞癌、扁平上皮癌或いは黒色腫)、内分泌腺腫瘍、神経内分泌系腫瘍、胃腸管膵臓線内分泌系腫瘍、生殖系腫瘍、或いは頭頚部腫瘍から選ばれるが、これらに限定されない。
【0074】
本発明の薬物組成物は、より優れた治療効果を得るため、さらに、他の抗腫瘍活性物質を含んでも、或いは他の抗腫瘍活性物質と併用してもよい。前述他の抗腫瘍活性物質は、TNF-α、TGF-β、IFN-α、アンジオスタチン、エンドスタチン、グリフォスフィン、ヘマトポルフィリン、リコベタイン、アタンシエマルション、エトポシド、ジアンヒドロガラクチトール、アドリアマイシン、タモキシフェン、フルオロウラシル、ノルカンタリジン、テガジフール、ククルビタシン、ハリングトニン、ポニシジン、イリスキノン、ポサベルプチダム、シタラビン、カルボプラチン、パクリタキセル、レンチナン、フルタミド、イホスファミド、ウベニメクス、酢酸リュープロレリン、ドキシフルリジン、ロバプラチン、イリノテカン、レトロゾール、又はテニポシドを含むが、これらに限定されない。
【0075】
二種或いは二種以上の薬物を併用して投与する場合、一般的に、二種の薬物がそれぞれ単独で投与する場合より優れた効果がある。好ましくは、併用する薬物或いは他の製剤は、本発明のモノクローナル抗体の治療活性を関与しない。
【0076】
hOPN検出用キット
さらに、本発明は、前述の抗hOPNモノクローナル抗体或いはその活性断片、免疫抱合体を含むhOPN検出用キットを提供する。本発明のキットで生物標本におけるhOPNの存在の有無或いはその含有量を検出することができる。この検出方法は、(a)標本を本発明のキットにおける抗hOPNモノクローナル抗体或いはその免疫抱合体と接触させることと、(b)抗原-抗体複合体が形成すると、標本におけるオステオポンチンの存在が示されるように、抗原-抗体複合体の形成の有無を検出すること、或いは、標本におけるhOPNの含有量を表すように、形成された抗原-抗体複合体の量を定量的に検出することと、を含む。前述標本は、前処理されたものでも、前処理されていないものでもよく、例えば抽出、精製又は濃縮などを経たものである。
【0077】
前述キットは、容器及び容器内にある本発明のモノクローナル抗体、或いは前述モノクローナル抗体付き検出プレート、並びに取扱説明書を含む。このキットには、さらに、検出に必要な他の試薬、例えば緩衝液、指示薬などが含まれてもよい。本分野の技術者は、具体的な要求に合わせてキットの内容物を調整することができる。
【0078】
[実施例]
以下、実施例、実験例によって、さらに本発明を説明するが、これらの実施例、実験例は本発明の制限にはならないと理解されるものである。実施例には、伝統的な方法、例えば、ベクターやプラスミドを構築する方法、タンパク質をコードする遺伝子をこのようなベクターやプラスミドに挿入する方法、或いはプラスミドを宿主細胞に導入する方法並びにクラシックな細胞融合とモノクローナル抗体のスクリーニング及び精製の方法などの詳細な記述が含まれていない。このような方法は、本分野における普通の技術者には周知で、且つSambrook, J., Fritsch, E.F.及びManiais,T.(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold spring Harbor Laboratory Press(「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」第2版、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社)を含む多くの出版物に記述されている。特に断らない限り、%と部は、重量で計算される。本発明の実施例或いは実施例において、由来が表記されていない原料・補助材はすべて市販品である。
【0079】
実施例 抗OPNモノクローナル抗体の製造
実施例1.ヒトOPNのcDNA断片のクローニング
GENEBANKに提供されたヒトOPNの資料及び配列を参照し、以下のプライマーを合成した。
【0080】
OPNセンスプライマー(プライマー1):GGG AAGCTT ACCATGAGAATTGCAGTGATTTG (Hind III)(配列番号8)
OPNアンチセンスプライマー(プライマー2):GCC GGTACC ATTGACCTCAGAAGATGCAC(Kpn I)(配列番号9)
ヒト肝臓癌細胞株LM3(上海中山病院から購入)を増幅し、TRISOLキット(INVITROGEN)でRNAを抽出し、RT-PCR(PROMEGA)によって94℃で5分間、そして94℃で45秒、58℃で30秒、72℃で45秒を一つのサイクルとして30サイクル、さらに72℃で10分間処理し、963bpのDNA断片を得た。ゲル回収キット(上海生工)で断片を回収した後、制限酵素のHind III及びKpn Iで酵素切断し、ゲル電気泳動で回収した後、Hind III及びKpn Iで二重酵素切断されたプラスミドベクターと連結し、大腸菌DH10Bを形質転換した後、スクリーニングし、断片が挿入された陽性クローンを得た。DNA配列決定によって、OPN遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号1に示されたものであることが確認された。
【0081】
実施例2.マウスOPNのcDNA断片のクローニング
GENEBANKに提供されたマウスOPNの資料及び配列を参照し、以下のプライマーを合成した。
【0082】
マウスOPNセンスプライマー(プライマー3):AT AAGCTT GGATGACGACGACAAGATGAGAATTGCAGTGATT (Hind III)(配列番号10)
マウスOPNアンチセンスプライマー(プライマー4):AT CTCGAG TTAATTGACCTCAGAAGA (Kpn I)(配列番号11)
マウス脾臓のTリンパ細胞を分離し、ConAで30時間活性化させた後、TRISOLキット(INVITROGEN)でRNAを抽出し、RT-PCR(PROMEGA)によって、94℃、そして94℃で45秒、55℃で30秒、72℃で45秒を一つのサイクルとして30サイクル、さらに72℃で10分間という反応条件でホットスタートPCRを行った。932bpのDNA断片を得た。ゲル回収キット(上海生工)で断片を回収した後、制限酵素のHind III及びKpn Iで切断し、ゲル電気泳動で回収した後、Hind III及びKpn Iで二重酵素切断されたプラスミドベクターと連結し、大腸菌DH10Bを形質転換した後、スクリーニングし、断片が挿入された陽性クローンを得た。DNA配列決定によって、マウスOPN遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号2に示されたものであることが確認された。
【0083】
実施例3.ヒト・マウスOPNの真核細胞発現及び精製
実施例2で得られた正確な配列のヒト・マウスOPN遺伝子断片を相応の制限酵素で酵素切断して回収した後、pPICZαプラスミドに組込んだ。ピキア酵母細胞にトランスフェクションし、単独のクローン酵母を選び、ヒト・マウスOPNタンパクの発現を誘導し、酵母細胞の発現上清を収集し、アニオン交換、分子篩精製を経て、SDS-PAGEによって純ヒト・マウスOPNタンパクを得たことが実証された。精製後、SDS-PAGE電気泳動をし、結果は図1に示された。
【0084】
実施例4.マウス抗ヒトOPNモノクローナル抗体のスクリーニング及び製造
100μgのヒトOPNと同体積のフロインドアジュバントを乳化した後、腹腔内注射でBALB/Cマウスに免疫接種し、二週間おきに一回目と同じ投与量で免疫強化接種を行い、合計3回の免疫接種後、血清における抗OPN抗体価の高いマウスを選び、その脾臓リンパ細胞を分離し、クラシックなPEG法によって、マウス脾臓リンパ細胞をNS-1細胞と細胞融合させた。10μg/mlのヒトOPNで96ウェルプレートを被覆し、ELISA法でスクリーニングを繰り返し、安定して抗hOPN抗体を発現できるハイブリドーマ細胞株1A12を得た。モノクローナル細胞株1A12を大量に増殖させ、5×106/匹でBALB/Cマウスに腹腔内注射を行い、10日程度でマウスの腹水の収集を始め、プロテインAカラムを用いて、アフィニティークロマトグラフィーによって抗hOPNモノクローナル抗体を精製した。
【0085】
ウェスタンブロット試験の結果から、マウス抗hOPNモノクローナル抗体1A12は、人OPNタンパクと特異的に結合すると同時に、マウスOPNタンパクとも交差反応が生じることが示された。結果は図2に示された。
【0086】
実施例5.マウス抗ヒトOPN無関連対照モノクローナル抗体23C3D3のスクリーニング及び製造
100μgのヒトOPNと同体積のフロインドアジュバントを乳化した後、腹腔内注射でBALB/Cマウスを免疫接種し、二週間おきに一回目と同じ投与量で免疫強化接種を行い、合計3回の免疫接種後、血清における抗OPN抗体価の高いマウスを選び、その脾臓リンパ細胞を分離し、クラシックなPEG法によって、マウス脾臓リンパ細胞をNS-1細胞と細胞融合させた。10μg/ml のKLH-WLVPDP(上海業力会社により合成)で96ウェルプレートを被覆し、ELISA法でスクリーニングを繰り返し、安定して抗hOPN特異エピトープの抗体を発現できるハイブリドーマ細胞株23C3D3を得た。モノクローナル細胞株を大量に増殖させ、5×106/匹でBALB/Cマウスに腹腔内注射を行い、10日程度でマウスの腹水の収集を始め、プロテインAカラムを用いて、アフィニティークロマトグラフィーによって抗hOPN特異エピトープの無関連対照モノクローナル抗体23C3D3を精製した。
【0087】
実験例6.1A12モノクローナル抗体の可変領域の遺伝子のクローニング及び配列決定
1A12のハイブリドーマ細胞を5×106〜1×107個収集し、TRIzol(Invitrogen、カタログ番号:15596-026)でその全RNAを抽出し、マウス定常領域の配列に基づき、以下のプライマーを設計した。
【0088】
HGSP1: 5’-GATACTGTGATCTGTTTG-3’ (配列番号12)
HGSP2: 5’-TCGCAGATGAGTCTGGAC-3’( 配列番号13)
HGSP3: 5’-ATGAACACACTCACATTG-3’ ( 配列番号14)
LGSP1: 5’-GAGGTTATGACTTTCATAGTCAGC-3’ ( 配列番号15)
LGSP2: 5’-AACACTGTCCAGGACACCATCTCG-3’ ( 配列番号16)
LGSP3: 5’-TCTGGGATAGAAGTTGTTCATGAG-3’ ( 配列番号17)
Invitrogen 5’RACEキット(カタログ番号:18374-058)を使用し、それぞれHGSP1、LGSP1をプライマーとし、第一鎖cDNAを合成した。TdTとdCTPの作用で、第一鎖cDNAの3’末端にポリCテールを加えた。それぞれHGSP2、HGSP3、LGSP2、LGSP3を5’プライマーとし、ネステッドPCRによってVH、VLのPCR産物を得た。PCR産物をpGEM-Tベクターに組込んだ。クローンを選んでプラスミドを抽出し、制限酵素によって陽性クローンと同定され、配列決定によってその配列が決定された。1A12モノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列は配列番号3で、アミノ酸配列は配列番号4で、1A12モノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列は配列番号5で、アミノ酸配列は配列番号6である。
【0089】
実施例7.ヒト抗体の軽・重鎖定常領域の遺伝子のクローニング
リンパ細胞分離液(鼎国生物技術発展会社製)で健康なヒトリンパ細胞を分離し、Trizolキット(Invitrogen社製)で全RNAを抽出し、文献(Cell,1980,22:197-207)及び文献(Nucleic Acids Research,1982,10:4071-4079)に報告された配列に従ってそれぞれプライマーを設計し、RT-PCR反応で抗体の重鎖及び軽鎖の定常領域の遺伝子を増幅した。PCR産物をアガロースゲル電気泳動で精製して回収し、pGEM-Tベクターに組込み、配列決定で検証したところ、正確なクローンを得たことが確認された。配列番号22と配列番号23は、それぞれ重鎖定常領域(CH)のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を示す。配列番号24と配列番号25は、それぞれ軽鎖定常領域(CL)のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を示す。本実施例における正確なクローンをpGEM-T/CH及びpGEM-T/CLと表記する。
【0090】
実施例8.抗hOPNキメラ抗体c1A12の構築
1A12の重鎖可変領域の遺伝子1A12VHとpGEM-T/CHベクターを鋳型とし、94℃で15分間、そして94℃で50秒、58℃で50秒、72℃で50秒を一つのサイクルとして30サイクル、さらに72℃で10分間という反応条件でオーバーラップPCRによってキメラ抗体の重鎖の遺伝子を合成した。そして、このキメラ重鎖の遺伝子の5’末端に制限酵素切断部位HindIIIとシグナルペプチドの遺伝子配列を、3’末端に翻訳終止コドンTAAと制限酵素切断部位EcoRIを含有するようにした。シグナルペプチドの遺伝子配列はATGGATTTTCAGGTGCAGATTTTCAGCTTCCTGCTAATCAGTGCCTCAGTCATAATATCCAGAGGA(配列番号 26)である。最後に、アガロースゲル電気泳動でPCR増幅産物を分離し、目的バンドを回収してpGEM-Tベクターに組込み、陽性クローンをスクリーニングし、配列決定を行った。配列決定で正確なクローンを選んでHindIII及びEcoRIで酵素切断し、アガロースゲル電気泳動でキメラ抗体の重鎖断片c1A12VHCHを精製して回収し、HindIII及びEcoRIで二重酵素切断されたプラスミドpcDNA3.1(+)(米国Invitrogen社製)と連結し、キメラ重鎖の真核発現ベクターpcDNA3.1(+)(c1A12VHCH)を構築した。
【0091】
1A12の軽鎖可変領域の遺伝子1A12VLとpGEM-T/CLベクターを鋳型とし、95℃で15分間、そして94℃で50秒、58℃で50秒、72℃で50秒を一つのサイクルとして30サイクル、さらに72℃で10分間という反応条件でオーバーラップPCRによってキメラ抗体の軽鎖の遺伝子を合成し、5’末端に制限酵素切断部位HindIIIとシグナルペプチドの遺伝子配列を、3’末端に翻訳終止コドンTAAと制限酵素切断部位EcoRIを含有するPCR産物c1A12VLCLを得た。シグナルペプチドの遺伝子配列はATGGATTTTCAGGTGCAGATTTTCAGCTTCCTGCTAATCAGTGCCTCAGTCATAATATCCAGAGGA(配列番号 26)である。アガロースゲル電気泳動でPCR産物を精製して回収し、pGEM-Tベクター(Promega社製)に組込み、陽性クローンをスクリーニングし、配列決定を行った。配列決定で正確なクローンを選んでHindIII及びEcoRIで二重酵素切断し、アガロースゲル電気泳動でキメラ抗体の軽鎖断片c1A12VLCLを精製して回収し、HindIII及びEcoRIで酵素切断されたプラスミドpcDNA3.1/ZEO (+)(米国Invitrogen社製)と連結し、キメラ軽鎖の真核発現ベクターpcDNA3.1/ZEO(+)(c1A12VLCL)を構築した。
【0092】
構築されたキメラ重鎖及び軽鎖の発現ベクターをリポフェクション法でCOS-1細胞 (ATCC CRL 1650)にコトランスフェクションし、72時間後培養上清を採って分析し、以下のようにELISAによって培養上清におけるキメラ抗体c1A12の含有量を確認した。ヒツジ抗ヒトIgG(Fc)でELISAプレートを被覆し、2%BSA-PBSで37℃で2時間ブロックし、測定しようとする培養上清と標準品(ヒト骨髄腫IgG1,κ)を入れ、37℃で2時間インキュベートし、HRP-ヒツジ抗ヒトκを入れて結合反応を行い、37℃で1時間インキュベートし、TMBを入れて37℃で5分間作用させ、最後にH2SO4で反応を終止させ、OD450値を測定した。
【0093】
実施例9.マウス由来1A12モノクローナル抗体の可変領域(Fv)の三次元構造のホモロジーモデリング
Accelrys社のInsight IIプログラムパッケージで1A12マウス由来モノクローナル抗体の可変領域の三次元構造をシミュレーションした。まず、BLASTプログラムでタンパク質構造データベース(Protein Data Bank、PDB)からそれぞれ1A12の重鎖及び軽鎖の可変領域のタンパク質の鋳型タンパク質を見つけた。一番高い相同性を持つ抗体1PLGを1A12のモデリング鋳型に選択し、Insight IIプログラムで1A12の三次元構造をモデリングした(図3)。
【0094】
実施例10.抗hOPNヒト化抗体h1A12の設計及び構築
BLASTプログラムでGenbankのデータベースからそれぞれ1A12の軽鎖及び重鎖の可変領域と最も類似のヒト由来鋳型を見つけた。1A12の重鎖の可変領域と一番高い相同性を持つヒト由来抗体は、ヒト抗体のCAA79298.1抗体(emb|CAA79298.1|)で、類似度が67%で、1A12の軽鎖の可変領域と一番高い相同性を持つヒト由来抗体は、ヒト抗体のBAC01734.1(dbj|BAC01734.1|)で、類似度が81%である。それで、CAA79298.1及びBAC01734.1をそれぞれ1A12の重鎖及び軽鎖のヒト化の鋳型として使用した。
【0095】
まず、1A12の重鎖及び軽鎖のCDR領域をそれぞれ直接ヒト由来鋳型のCAA79298.1及びBAC01734.1に移植し、CDR移植抗体を構成し、重鎖はh1A12Haで、軽鎖はh1A12Laであった。h1A12Ha及びh1A12Laの可変領域配列は図4に示される通りである。全遺伝子でヒト化抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域の遺伝子(h1A12VHa及びh1A12VLa)を合成し、さらにh1A12VHa遺伝子とpGEM-T/CHベクターを鋳型とし、95℃で15分間、そして94℃で50秒、58℃で50秒、72℃で50秒を一つのサイクルとして30サイクル、さらに72℃で10分間という反応条件でオーバーラップPCRによってヒト化抗体の重鎖の遺伝子を合成した。そして、このヒト化重鎖の遺伝子の5’末端に制限酵素切断部位HindIIIとシグナルペプチドの遺伝子配列を、3’末端に翻訳終止コドンTAAと制限酵素切断部位EcoRIを含有するようにした。シグナルペプチドの遺伝子配列はATGGATTTTCAGGTGCAGATTTTCAGCTTCCTGCTAATCAGTGCCTCAGTCATAATATCCAGAGGA(配列番号 26)である。最後に、アガロースゲル電気泳動でPCR増幅産物を分離し、目的バンドを回収してpGEM-Tベクターに組込み、陽性クローンをスクリーニングし、配列決定を行った。配列決定で正確なクローンを選んでHindIII及びEcoRIで酵素切断し、アガロースゲル電気泳動でヒト化抗体の重鎖断片h1A12VHaCHを精製して回収し、HindIII及びEcoRIで酵素切断されたプラスミドpcDNA3.1(+)(米国Invitrogen社製)と連結し、ヒト化重鎖の真核発現ベクターpcDNA3.1(+)(h1A12VHaCH)を構築した。
【0096】
h1A12VLa遺伝子とpGEM-T/CLベクターを鋳型とし、95℃で15分間、そして94℃で50秒、58℃で50秒、72℃で50秒を一つのサイクルとして30サイクル、さらに72℃で10分間という反応条件でオーバーラップPCRによってヒト化抗体の軽鎖の遺伝子を合成し、5’末端に制限酵素切断部位HindIIIとシグナルペプチドの遺伝子配列を、3’末端に翻訳終止コドンTAAと制限酵素切断部位EcoRIを含有するPCR産物h1A12VLaCLを得た。シグナルペプチドの遺伝子配列はATGGATTTTCAGGTGCAGATTTTCAGCTTCCTGCTAATCAGTGCCTCAGTCATAATATCCAGAGGA(配列番号 26)である。配列決定で正確なクローンを選んでHindIII及びEcoRIで酵素切断し、アガロースゲル電気泳動でヒト化抗体の軽鎖断片h1A12VLaCLを精製して回収し、HindIII及びEcoRIで酵素切断されたプラスミドpcDNA3.1/ZEO(+)ベクター(米国Invitrogen社製)と連結し、ヒト化軽鎖の真核発現ベクターpcDNA3.1/ZEO(+)(h1A12VLaCL)を構築した。
【0097】
構築されたヒト化重鎖及び軽鎖の発現ベクターをリポフェクション法でCOS-1細胞 (ATCC CRL 1650)にコトランスフェクションし、72時間後培養上清を採って分析し、以下のようにELISAによって培養上清におけるヒト化抗体(h1A12Ha/ h1A12La)の含有量を確認した。ヒツジ抗ヒトIgG(Fc)でELISAプレートを被覆し、2%BSA-PBSで37℃で2時間ブロックし、測定しようとする培養上清と標準品(ヒト骨髄腫IgG1,κ)を入れ、37℃で2時間インキュベートし、HRP-ヒツジ抗ヒトκを入れて結合反応を行い、37℃で1時間インキュベートし、TMBを入れて37℃で5分間作用させ、最後にH2SO4で反応を終止させ、OD450値を測定した。
【0098】
2μg/mlのOPNでELISAプレートを被覆し、ELISA法によってトランスフェクションで得られたヒト化抗体のhOPNと特異的に結合する活性を検出したところ、c1A12キメラ抗体と比べ、h1A12Haとh1A12Laからなるヒト化抗体(h1A12Ha/ h1A12La)は活性が殆ど喪失したことを見出した。従って、高親和力のヒト化抗体を獲得するため、h1A12抗体の結合活性に影響する可能性があるFR領域のマウス由来残基を分析し、且つ復帰突然変異させる必要がある。モデリングで得られたh1A12抗体の可変領域の三次元構造(図3)を分析することにより、CDR領域から5Å以内の空間範囲には、元抗体CDR配座に影響でき、且つヒト由来鋳型における相応の位置と異なるFR領域の残基が9つあり、それぞれL3Leu、L45Lys、L46Leu、H24Ser、H38Lys、H48Ile、H94Serであることを発見した。これらのマウス由来アミノ酸残基を構築されたCDR移植抗体に保留することにより、ヒト化抗体(h1A12Hb/h1A12Lb)が得られた。h1A12Hb及びh1A12Lbの可変領域のアミノ酸配列は図4に示される通りである。配列番号18と配列番号19は、それぞれh1A12Hbの可変領域のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を示す。配列番号20と配列番号21は、それぞれh1A12Lbの可変領域のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を示す。それぞれ全遺伝子でヒト化抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域の遺伝子(h1A12VHb/h1A12VLb)を合成し、且つヒト化抗体(h1A12Ha/h1A12La)と同様な方法で軽鎖発現ベクターpcDNA3.1/ZEO(+)(h1A12VLbCL)及び重鎖発現ベクターpcDNA3.1(+)(h1A12VHbCH)を構築した。その後、軽・重鎖発現ベクターをCOS-1細胞にコトランスフェクションし、ELISA法によって抗体の抗原結合活性を測定し、OPNタンパク(2μg/ml)でELISAプレートを被覆し、4℃で一晩置き、2%BSA-PBSで37℃で2hブロックし、測定しようとするh1A12の培養上清を入れ、37℃で2hインキュベートし、HRP-ウサギ抗ヒトIgGを入れて結合反応を行い、37℃で1hインキュベートし、TMBを入れて37℃で5分間作用させ、最後にH2SO4で反応を終止させ、A450とA630の値を測定した。h1A12のOPNと特異的に結合する結果を図5に示し、OPNとの結合活性はc1A12キメラ抗体と類似であることを発見し、このヒト化抗体(h1A12Hb/ h1A12Lb)をh1A12と名付けた。
【0099】
実施例11.抗hOPNヒト化抗体h1A12の安定発現及び精製
上述構築されたc1A12又はh1A12の軽・重鎖のプラスミドをリポフェクション法でCHO-K1細胞(ATCC CRL-9618)にコトランスフェクションし、トランスフェクションから24h後、細胞を600μg/mlのG418及び250μg/mlのZeocinを含有する選択培地に移して耐性クローンをスクリーニングした。細胞の培養上清を取ってELISA検出で高発現クローンをスクリーニングし、スクリーニングで得られた高発現クローンを無血清培地で増殖培養し、プロテインAアフィニティーカラム(GE社製)でキメラ抗体c1A12又はヒト化抗体h1A12を分離・精製し、最後に紫外線吸収法で定量した。
【0100】
実験例I.抗hOPN抗体の腫瘍細胞に対する作用効果の実験
MDA-MB-435s(中国科学院上海細胞学研究所から購入)、無関連抗体(23C3D3)。
【0101】
実験例I-1.細胞付着実験
96ウェルプレート(Greiner)を10μg/mlのhOPN(実施例3から)或いはBSA(SIGMA)で被覆し、4℃で一晩置き、1%BSA/PBSで37℃で1時間ブロックし、非特異的結合部位を遮断した。MDA-MB-435s細胞を0.2%EDTAで消化し、0.25%BSA/DMEMに再懸濁し、細胞濃度を5×105個細胞/mlに調整した。各ウェルに細胞を100μlずつ加え、処理群では同時に25μg/mlのマウス抗ヒトOPN抗体1A12、ヒト-マウスキメラ抗体c1A12とヒト化抗体h1A12を入れ、対照群では25μg/mlの無関連抗体を入れた。細胞を37℃の細胞インキュベーターで2時間インキュベートした後、PBSで2回洗浄し、未付着の細胞を洗い流した。各ウェルに1%ホルマリンを100μlずつ加え、4℃で細胞を10分間固定した。PBSで洗浄した後、各ウェルに0.5%のクリスタルバイオレットを100μlずつ加え、室温で細胞を30分間染色した。各ウェルに2%Triton X-100を50μlずつ加えて細胞を溶解し、595nmでOD値を測定した。
【0102】
実験結果は、図6のように、抗hOPN抗体は、25μg/mlで有効にMDA-MB-435s細胞とhOPNの結合を遮断することができ、1A12、c1A12とh1A12の間に顕著な差異がなかったが、無関連の対照抗体はこのような作用がなかった。
【0103】
実験例I-2.細胞侵襲実験
細胞侵襲実験は、Transwellチャンバー系(Corning)で行い、メンブレンの孔径の大きさは8μmであった。チャンバーの上層を人工基底膜成分であるマトリゲル(Matrigel)で被覆し、ドラフトチャンバーで乾燥し、DMEMで37℃でそれを1時間ゲル化した。MDA-MB-435s細胞を0.2%EDTAで消化し、0.25%BSA/DMEMに再懸濁し、細胞濃度を5×105個細胞/mlに調整した。チャンバーの上層に細胞懸濁液(処理群では同時に25μg/mlのマウス抗ヒトOPN抗体1A12、ヒト-マウスキメラ抗体c1A12とヒト化抗体h1A12を入れ、対照群では25μg/mlの無関連抗体を入れた)を100μl入れ、チャンバーの下層に0.25%BSA/DMEM(OPN含有又は未含有)を入れ、37℃の細胞インキュベーターで24時間インキュベートした。インキュベート後、綿棒でチャンバー上層の細胞を掻き除き、基底膜を貫いて下層に達した細胞をPBSで洗浄した後、1%ホルマリンで固定し、0.5%のクリスタルバイオレットで染色し、200倍の顕微鏡で観察し、各視野における細胞の数を計数した。
【0104】
実験結果は、図7のように、抗hOPN抗体は、25μg/mlで有効にMDA-MB-435sのhOPN存在下の基底膜に対する侵襲を遮断することができたが、無関連の対照抗体はこのような作用がなく、1A12、c1A12とh1A12の間に顕著な差異がなかった。
【0105】
実験例I-3.損傷切痕実験
MDA-MB-435s細胞を12ウェルプレートでコンフルエンスに近い状態(>90%)まで培養し、PBSで洗浄した後、無血清DMEMで細胞に対して一晩血清飢餓処理を行った。10μlピペットチップの先端で単層細胞に画線し、PBSで浮遊した細胞を洗い流した。25μg/mlのマウス抗ヒトOPN抗体1A12、ヒト-マウスキメラ抗体c1A12とヒト化抗体h1A12を入れ、対照群では25μg/mlの無関連抗体を入れ、無関連抗体の処理を行った。細胞を37℃の細胞インキュベーターで24時間インキュベートした後、結果を基準線を越えた細胞数で示した。
【0106】
実験結果は、図8のように、抗OPNモノクローナル抗体は、25μg/mlで有効に細胞の損傷切痕の修復を抑制することができたが、無関連の対照抗体はこのような作用がなかった。1A12、c1A12とh1A12の間に顕著な差異がなかった。
【0107】
実験例I-4.軟寒天コロニー形成実験
軟寒天コロニー形成実験は、二層軟寒天系で行った。2.5%溶けた寒天粉を37℃に加熱しておいたDMEM培地と混合し、0.5%の寒天粉溶液とし、さらにDMEMで濃度が0.3%の寒天粉溶液に希釈した。24ウェル細胞培養プレートの各ウェルに0.5%寒天粉溶液を500μlずつ加え、4℃で凝固させた後、37℃の細胞インキュベーターに移して保温した。MDA-MB-435s細胞を0.2%EDTAで消化した後、0.3%寒天粉溶液で再懸濁し、細胞濃度を5×103個細胞/mlに調整した。24ウェルプレートの各ウェルに細胞懸濁液を500μlずつ加えて凝固させた。次の日から、1日おきに細胞培養プレートの各ウェルに1A12、c1A12とh1A12或いは無関連抗体(23C3D3)(25μg/ml)を入れて処理し、3週間後形成したコロニーの大きさを観察し、細胞数が10個を超えた集団を1つのコロニーとした。
【0108】
実験結果は、図9のように、抗OPNの1A12抗体は、MDA-MB-435s細胞の軟寒天上のコロニー形成の大きさを抑制することができたが、対照抗体はこのような作用がなかった。1A12、c1A12とh1A12の間に顕著な差異がなかった。この抗体は、有効に腫瘍の転移病巣の形成を抑制することができ、且つキラメ抗体とヒト化抗体がマウス由来モノクローナル抗体の生物学機能を保留したことが示された。
【0109】
実験例II.抗OPN抗体の血管形成の抑制効果の実験
実験II-1.3H-TdR取り込み法によるヒト血管内皮細胞(HUVEC)の増殖の測定
3H-TdR取り込み法によってHUVEC細胞の増殖を測定し、OPNの細胞生存に対する保護作用及び抗OPN抗体のOPNの保護作用に対する抑制を確認した。96ウェルプレートの各ウェルにHUVECを2×104ずつ接種し、完全培地で24時間培養した。細胞に対して以下の異なる処理をし、処理時間は24時間とした。
【0110】
i. M200 + LCGS(補充培養物)
ii. M200 + 1% BSA
iii. M200 + 1%BSA + OPN
iv. M200 + 1%BSA + OPN + マウス抗OPN抗体1A12
v. M200 + 1%BSA + OPN + ヒト-マウスキメラ抗OPN抗体c1A12
vi. M200 + 1%BSA + OPN + ヒト化抗OPN抗体h1A12
vii. M200 + 1%BSA + OPN + 無関連抗体
24時間後:1 uCi/ウェルの3Hチミジンを入れ、37℃で6時間培養し、PBSで1回洗浄した。氷冷の10%トリクロロ酢酸/H2O、4℃、10 min、冷ddH2Oで2回洗浄した。細胞の溶解:各ウェルに0.5N NaOH/0.5%SDSを0.1mlずつ加えて細胞を室温で10 min溶解した。各ウェルに0.5N HClを0.2mlずつ加え、均一に混合し、多岐細胞収集器で収集した。
【0111】
3H-TdR取り込み法による細胞増殖の実験結果は図10に示された。実験結果は、OPNが存在する場合、3H-TdR取り込みが1%BSA処理群より、3.08±0.64倍増加したが、抗OPN抗体1A12、c1A12とh1A12を加えた後、3H-TdR取り込みがOPN群より顕著に低下した。実験結果は、血清が除去された場合、OPNはHUVECの生存を促進することができ、この作用が抗OPN抗体で顕著に抑制できる(P<0.01)ことを説明した。
【0112】
実験例II-2.1A12、c1A12及びh1A12の毛細管様の管状構造の形成に対する抑制機能
HUVECをLCGS含有M200培地で80%融合まで培養した。実験の前日に、-20℃で保存されたマトリゲルを取り、4℃で3〜12時間自然溶解させた。冷凍しておいたピペットチップと96ウェルプレートでマトリゲルを分配し、全過程は氷の上で行われた。96ウェルプレートの各ウェルにマトリゲルを60μlずつ加え、注意して泡を除去し、37℃で1時間インキュベートしてゲルを凝固させた。各ウェルにHUVEC(2×104/ウェル)を100μlずつ加え、軽くマトリゲルの表面に加え、処理群では同時に抗hOPN抗体1A12、c1A12とh1A12を加えた。37℃の細胞インキュベーターで12時間培養した。6時間後、毛細管様の管状構造の形成の様子を観察した。
【0113】
HUVEC管状構造実験の結果は図11に示された。結果から、抗hOPN抗体はHUVECの管状構造形成能を降下させることができるが、対照抗体はこのような効果がないことが明らかになった。1A12、c1A12とh1A12の間に顕著な差異がなかった。
【0114】
実験例II-3.1A12、c1A12及びh1A12の鶏胚漿尿膜(CAM)の血管形成の抑制実験
受精率>90%の種鶏場から購入のレグホーン種鶏胚を使用した。8日齢の鶏胚を取り、消毒後、鋭端手術用ブレードで鶏胚トップの気室中央の位置に小さい切口を入れ、注意して周囲の卵殻と卵殻膜を取り除き、1 cm×1 cmの小穴を開け、検出しようとする物質/ゼラチンスポンジをCAMの表面に加え、検出しようとする物質の成分は以下の通りである。i) PBS、ii)HOPN、iii)ヒトOPN(250 ng)、iv)ヒトOPN(250 ng)+無関連対照抗体(1 μg)、v)ヒトOPN(250 ng)+マウス抗OPN抗体1A12(1 μg)、vi)ヒトOPN(250 ng)+ヒト-マウスキメラ抗OPN抗体c1A12(1 μg)、vii)ヒトOPN(250 ng)+ヒト化抗OPN抗体h1A12(1 μg)。
【0115】
すでに形成した緻密な血管網から離れるように、検出しようとする物質/ゼラチンスポンジをCAMの表面に加えた。滅菌透明粘着テープで封じ、72時間以上孵化を継続した。解剖顕微鏡で担体の端縁から2mm以内における血管の数を観察し、血管形成の様子を分析し、「血管指数」(Ribatti, D., B. Nico, A. Vacca, 等The gelatin sponge-chorioallantoic membrane assay.「ゼラチンスポンジ-漿尿膜検定法」Nat Protoc, 2006, 1(1): 85-91.)を使用し、解剖顕微鏡で同じ拡大倍率で血管を計数し、各群の標本の血管計数の結果を「平均値±標準偏差(X~±S)」で示し、多重比較の分散分析のqテストで各群の群間差異を比較し、SPSS統計ソフトで行った。
【0116】
実験結果は、図12のように、ヒトOPNタンパクは、PBSと比べ、顕著に鶏胚CAMの新生血管形成を促進することができ、微血管がゼラチンスポンジを中心として輻射状に分布し、統計学上顕著な有意差があった(P<0.01)。OPNの血管形成促進能はHOPNの作用に近かった。抗OPN抗体1A12と2H8は、OPNによって誘導されるCAM血管形成に対して顕著な抑制作用を持った(P<0.01)。
【0117】
実験例II-4.1A12、c1A12及びh1A12のウサギ角膜の新生血管形成の抑制実験
無菌条件で、最終濃度が12%(w/v)になるようにHydron粉剤を無水エタノールに溶解させ、37℃の条件で振蕩して溶解させ、12%のHydron鋳型溶液とし、室温で保存した。無菌条件で、アルサルミン粉末を無菌Milli Q水に加え、最終濃度が100μg/μlの懸濁液とし、4℃で保存し、使用直前にボルテックスで均一に混合した。各徐放小丸剤はそれぞれ200 ngのhOPNと50 μgのアルサルミンを含有し、抗体群では同時に1 μgの抗OPN抗体或いは無関連の対照抗体を含有した。12%のHydron鋳型溶液とhOPN-アルサルミン-PBS混合液を1:1の体積比で均一に混合し、ボルテックスで1 min振蕩した。混合したHydron-アルサルミン-hOPN溶液5μlを無菌のパラフィルム(Parafilm)の表面に加え、クリーンベンチで約30min乾燥し、十分に重合させた。眼科ピンセットでそれを直径が2mmで、大きさが均一の丸形薬丸に成形した。-20℃で保存した。各群に目が4つずつで、実験例II-3と同様に群分けと対照を設置した。
【0118】
3%ペントバルビタールナトリウムで耳縁静脈麻酔(1ml/kg体重)を行い、1%テトラカインで両眼角膜表面麻酔を行い、超音波角膜厚測定装置で角膜の厚さを測定した。眼科手術用切開刀で角膜の中央に長さが約3mmの半厚さの切口を入れ、幅2mmの強膜トンネル刀で12時又は3時の方向に沿って角強膜縁部に潜行トンネルを作り、トンネルが角膜マトリックス層内に位置し、トンネルの頂端は角膜縁部から約1mmであった。顕微ピンセットでHydron/アルサルミン徐放小丸剤をトンネルの頂端に入れた。手術後、切口にクロルテトラサイクリン眼軟膏を塗った。術後の1日目から、二重盲検の観察者が毎日スリットランプでウサギ角膜の新生血管の様子を観察した。スリットランプによる観察は10日まで行った。最長血管長さ(VL)及び血管時計角度(CN、30度=1CN)を測定し、以下の式で計算した。
【0119】
面積(mm2) = 0.2 × π × VL (mm) × CN (mm)
実験結果は図13に示された。1A12、c1A12及びh1A12の処理群では、新生血管の面積がOPN群より顕著に減少し、新生血管の長さが無関連抗体群より短縮し、且つ面積が顕著に小さくなった(P<0.01)。でも、1A12、c1A12とh1A12の間に顕著な差異がなかった。
【0120】
実験例III.マウス抗ヒトOPN抗体1A12のマウス体内における腫瘍転移及び血管形成の抑制実験
実験例III-1.マウス抗ヒトOPN抗体1A12のマウス体内における腫瘍転移の抑制実験
MDA-MB-435s細胞を消化し、無血清DMEMで再懸濁させ、細胞濃度を5×107細胞/1mlに調整した。各群に4〜6週齢雌ヌードマウスを10匹ずつとし、ペントバルビタールナトリウムで腹腔内麻酔を行った。無菌条件で、皮膚を消毒し、右側の第二乳頭に0.5mmの切口を入れ、皮下組織を分離し、乳腺の脂肪パッドを露出させた。25ゲージの注射針で細胞懸濁液を吸引し、100μl(5×106細胞/匹)の接種体積で乳腺の脂肪パッド内部に注射し、皮膚を縫合した。動物をランダムに4群に分け、腫瘍細胞の接種の次の日から、それぞれ以下のような治療方案を受けた。
【0121】
・ 1A12:5 mg/kg、週に2回。
【0122】
・ 対照抗体:5 mg/kg、週に2回。
【0123】
週に1回ヌードマウスの腫瘍形成の様子を観察し、ノギスで腫瘍の最大径(長さ)及びその垂直距離(幅)を測定し、公式:体積=0.52×長さ×幅2で腫瘍体積を算出した。腫瘍体積を時間に対して腫瘍成長曲線を作成した。各処理群では、各群に実験動物を12匹とし、中の6匹は正所性腫瘍の成長の大きさを観察するためのもので、10週で終わった。残りの6匹は、自発性肺転移を観察するためのもので、原発性腫瘍の大きさが1000mm3になった時点で終わった。
【0124】
接種後の10週目に、マウスを頚椎脱臼で殺めた。各群のマウスの腫瘍組織を採取し、10%中性ホルマリンで固定してパラフィンで包埋し、H&E染色後腫瘍組織と肺組織を観察した。顕微鏡で肺転移病巣の大きさと数を観察した。
【0125】
腫瘍の大きさを時間に対して腫瘍成長曲線を作成した。結果は、図14のように、10週間経過の時点で、抗OPN抗体群(1A12)は、腫瘍の大きさが明らかに無関連抗体治療群(P<0.05)よりも小さかった。肺転移病巣が現れたヌードマウスにおいて、肺転移病巣組織の切片が図15に示され、結果から、抗OPN抗体1A12で処理した後、肺転移の数が減少しただけではなく、転移病巣も小さかったことがわかった。対照抗体処理群の肺組織において、大きい転移病巣がよく見られ、且つ多くの転移病巣が大きい転移病巣に融合した。
【0126】
実験例III-2.マウス抗ヒトOPN抗体1A12の腫瘍内部の微血管密度(MVD)に対する影響
マウスの正所性腫瘍組織を採用し、採取後素早く液体窒素で凍結し、凍結チャンバー式凍結ミクロトームで、8μmで連続切片を行った。取出した後、5min乾燥し、-20℃でアセトンで30min固定し、IHC染色を行った。ラット抗マウスCD31モノクローナル抗体(使用濃度1:100)で4℃で一晩インキュベートし、第二抗体はヒツジ抗ラットIgG/PE(使用濃度1:100)。Hochest33258で対比染色を行い、蛍光顕微鏡で撮影した。
【0127】
CD31タンパクは主に血管内皮細胞の細胞膜で発現され、単独の血管内皮細胞と微血管はいずれにもCD31タンパクの発現がある。抗CD31抗体によって、腫瘍内の微血管が観察され(図16)、顕微鏡での観察結果から、抗OPN抗体1A12処理群では、MVDが顕著に無関連の対照抗体処理群より少なかったことがわかった(P<0.01)。
【0128】
実験例IV.1A12モノクローナル抗体の抗原エピトープの同定実験
実験例IV-1.マウス抗hOPNモノクローナル抗体(1A12)の抗原エピトープのスクリーニング
ランダムペプチドライブラリー免疫スクリーニング法を使用し、全過程は96ウェルプレートで行った。100μg/ml、100μl/ウェルの1A12抗体で4℃で一晩被覆し、10%脱脂粉乳(TBSTで希釈)で一晩ブロックし、1×TBST(Tween-20 0.1%)で6回洗浄し、ファージランダムペプチドライブラリー(NEBから購入、Ph.D.-12TM ファージディスプレイペプチド実験室キット Phage Display Peptide Library Kit)4×1010 pfu + 正常マウス血清100μlを室温で1時間軽く振蕩した。1×TBST(Tween-20 0.1%)で15回洗浄し、1mg/ml BSA含有グリシン-Cl(Glycine-Cl pH 2.2)で溶出させ、室温で15min軽く振蕩し、Tris-Cl(pH 9.1) 15μlで中和した。10μlを抗体価の測定に、残りは増幅に供した。増幅産物はPEG/NaClで沈殿させ、抗体価を測定し、同時に2回目のスクリーニングを行い、同様に3回目のスクリーニングを行った。毎回インプット(input)されたファージ数は同一で(4×1010 pfu)、3回のスクリーニングでアウトプット(output)されたファージ数はそれぞれ6.9×102 pfu、2.99×106 pfu、1.69×108 pfuで、スクリーニング効率は、それぞれ1回目の4333倍と240000倍で、結果から、図17のように、スクリーニングによる蓄積効果が顕著であることが明らかになった。
【0129】
実験例IV-2.無関連の対照抗体23C3D3に相応のファージクローンのスクリーニング
ランダムペプチドライブラリー免疫スクリーニング法を使用し、全過程は96ウェルプレートで行った。100μg/ml、100μl/ウェルの23C3D3抗体で4℃で一晩被覆し、10%脱脂粉乳(TBSTで希釈)で一晩ブロックし、1×TBST(Tween-20 0.1%)で6回洗浄し、ファージランダムペプチドライブラリー(NEBから購入、Ph.D.-12TM ファージディスプレイペプチド実験室キット Phage Display Peptide Library Kit)4×1010 pfu + 正常マウス血清100μlを室温で1時間軽く振蕩した。1×TBST(Tween-20 0.1%)で15回洗浄し、1mg/ml BSA含有グリシン-Cl(pH 2.2)で溶出させ、室温で15min軽く振蕩し、Tris-Cl(pH 9.1) 15μlで中和した。10μlを抗体価の測定に、残りは増幅に供した。増幅産物はPEG/NaClで沈殿させ、抗体価を測定し、同時に2回目のスクリーニングを行い、同様に3回目のスクリーニングを行った。23C3D3抗体でプレートを被覆し、ELISA法で検出し、陽性反応のクローンである5F12を選び、対照ファージとした。
【0130】
実験例IV-3.ファージクローンのELISA及びウェスタンブロット法による同定
ELISAは96ウェルプレートで行い、100μg/ml、50μl/ウェルの1A12モノクローナル抗体で4℃で一晩被覆し、10%脱脂粉乳(TBSTで希釈)で37℃で2時間ブロックし、1×TBST(Tween-20 0.1%)で5回洗浄し、各モノクローナルファージの増殖上清をいずれも5×108pfu/50μl になるように1×TBSで希釈し、マウス抗ヒトOPNモノクローナル抗体(Santa Cruz)を対照抗体とし、5F12(このクローンは23C3D3の陽性クローンである)を陰性対照ファージとした。室温で1時間結合させ、1×TBST(Tween-20 0.1%)で5回洗浄した後、各ウェルに1:5000で希釈したHRP標識の抗-M13抗体(Pharmacia #27-9411-01)を200μlずつ加え、室温で1時間振蕩して作用させ、1×TBST(Tween-20 0.1%)で5回洗浄し、晶美社のELISA検出キットのA:B=1:1の新制の反応基質を50μl/ウェル加え、室温で1-5分間作用させた。2N H2SO4で反応を終止させた。各クローンは、いずれも1A12及び対照抗体23C3D3に対して平行重複ウェルを3つ設けて検出した。OD450の記録結果から、図18Aのように、陽性クローンと抗体の反応が特異的であることが明らかになった。
【0131】
ウェスタンブロット法の手順:増殖後のファージのモノクローナル上清を20%PEG/NaClで沈殿精製した後、1×1010pfu/レーンで10% SDS-PAGE電気泳動を行い、360mAの一定電流で1時間電気泳動した後ニトロセルロース膜に移し、10%脱脂粉乳で4℃で一晩或いは室温で2時間ブロックし、1×TBST(Tween-20 0.1%)で毎回10分間で3回洗浄し、10μg/mlの第一抗体と室温で1時間反応させ、1×TBST(Tween-20 0.1%)で毎回10分間で5回洗浄し、1:1000で希釈したHRP標識のウサギ抗マウスIgG(北京中山社)と室温で1時間反応させ、ECLキット(Tiangen社)で1-2分間反応させ、医療用青感光性X線フィルムで押して露光した。図18Bにおいて、左の図は1A12モノクローナル抗体でのハイブリダイぜーションで、右の図は無関連抗体23C3D3でのハイブリダイぜーションで、矢印が目的バンドを示し、結果は、図18Bのように、陽性クローンと抗体の反応が特異的であることを示した。
【0132】
実験例IV-4.抗体の認識エピトープの配列決定及び配列分析
一本鎖DNA抽出キット(上海捷瑞社)で鋳型を調製し、-96プライマーで配列決定を行い、クロム酸塩(Chromas)で配列を読み出し、100個の陽性クローンのうち独立の配列が4つあった。 AlignXで分析したところ、一致の配列であるNXNNAPを持ち、またGとAはいずれも非極性の芳香族アミノ酸で、S、T、N、Pはいずれも極性の無電荷アミノ酸であるため、抗原hOPNの配列において、NAPSの相同モチーフが見つけられたことにより、1A12の可能な抗原エピトープはNAPSである。結果が図19に示された。
【0133】
実験例IV-5.ファージクローンと抗体の結合能力の分析
各クローンをそれぞれ5×107pfuで抗体で被覆された96ウェルプレートに投入し、同様な条件のスクリーニング(対照抗体:23C3D3、無関連の対照抗体:5F12)後、溶出されたファージに対して抗体価を測定した(blood 2006-04-014639を参照)。結果は、hOPN配列中のエピトープのNAPSにおいて、APSは1A12-hOPNの結合の誘導に重役を担い、たんなるN又はNNでは両者の結合が誘導できず、エピトープのモチーフの2番目のアミノ酸の位置でAとGはいずれも非極性の脂肪族アミノ酸なので入れ替わっても結合能力に影響を及ばず、エピトープのモチーフの4番目のアミノ酸の位置で、極性の無電荷アミノ酸(例えば:S、T、N、P)であれば、結合能力に影響を及ばない。この実験は、さらに、1A12のエピトープはNAPSであることを証明した。結果が図20に示された。
【0134】
実験は、1A12抗体の特異的認識のエピトープはNAPSで、ヒトOPNの第7エクソンに位置する新規なエピトープであることを示し、エピトープの位置及び配列は図21に示され、アミノ酸配列が配列番号7に示された。
【0135】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NXPYである(ただし、X=A又はGで、Y=S、T、N又はPである。)オステオポンチンの機能エピトープ。
【請求項2】
請求項1に記載の機能エピトープと特異的に結合する抗オステオポンチンのモノクローナル抗体。
【請求項3】
前述モノクローナル抗体の重鎖可変領域のCDRアミノ酸配列は、それぞれGYTFTTYVMH、YINPYNDGSKYNEKFKG或いはHYGGSPAYから、軽鎖可変領域のCDRアミノ酸配列は、それぞれRSSQSLVHSNGNTYLH、KVSNRFS或いはSQSTHVPWTから選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
前述モノクローナル抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号4或いは配列番号19から、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6或いは配列番号21から選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
前述モノクローナル抗体の定常領域は、マウス抗体の定常領域或いはヒト抗体の定常領域から選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
請求項2-5のいずれかに記載のモノクローナル抗体をコードするDNA分子。
【請求項7】
請求項6に記載のDNA分子を含有するベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターを含む、或いはゲノムに請求項6に記載のDNA分子が組み込まれている宿主細胞。
【請求項9】
(a) 請求項2に記載のモノクローナル抗体と、
(b)薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、又は酵素からなる群から選ばれる抱合部分と、
を含む免疫抱合体。
【請求項10】
請求項2に記載の抗オステオポンチンのモノクローナル抗体或いは請求項9に記載の免疫抱合体の抗腫瘍薬の製造のための使用。
【請求項11】
請求項2に記載の抗オステオポンチンのモノクローナル抗体或いは請求項9に記載の免疫抱合体と、薬学的に允許される担体と、を含む薬物組成物。
【請求項12】
請求項2に記載の抗オステオポンチンのモノクローナル抗体或いは請求項9に記載の免疫抱合体を含むオステオポンチン検出用キット。
【請求項13】
生物標本におけるオステオポンチンの存在の有無或いはその含有量を検出する方法であって、
(i)検出される標本を請求項2に記載の抗オステオポンチンのモノクローナル抗体或いは請求項9に記載の免疫抱合体と接触させることと、
(ii)抗原-抗体複合体が形成すると、標本におけるオステオポンチンの存在が示されるように、抗原-抗体複合体の形成の有無を検出すること、或いは、標本におけるオステオポンチンの含有量を表すように、形成された抗原-抗体複合体の量を定量的に検出することと、
を含む検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−525795(P2010−525795A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504425(P2010−504425)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【国際出願番号】PCT/CN2008/070576
【国際公開番号】WO2008/128455
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509296281)シャンハイ・ナショナル・エンジニアリング・リサーチ・センター・オブ・アンチボディー・メディシン・カンバニー,リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI NATIONAL ENGINEERING RESEARCH CENTER OF ANTIBODY MEDICINE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 3, No. 399, Libing Road, Zhangjiang Hi−Tech Park, Shanghai 201203, P.R. China
【Fターム(参考)】