説明

オゾン濃縮装置

【課題】気化部におけるオゾン分解を防止でき、装置の破損の虞を無くすことが可能なオゾン濃縮装置を提供する。
【解決手段】気化部2の液体オゾンを気化部2の底面2cを介して外側から加熱する加熱部40を設け、液体オゾンが供給される入口2aを中心として、気化部2内の液体オゾンと底面2cとの間の温度差を中心側と外周側とで略均一にするように加熱部40へ加熱流体G1,G2,G3を供給し、気化部2内において入口2a側における液体オゾンと底面2cとの間の温度差(過熱度)と外周側の過熱度の不均一化を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾナイザで生成されたオゾンガスを濃縮するオゾン濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体等の製造に用いられる高濃度オゾンガスは、オゾンを含有するオゾンガスをオゾン濃縮装置で濃縮することで生成される。このオゾン濃縮装置としては、空気や酸素を基にオゾン発生器(オゾナイザ)で生成されたオゾンガスを、タンク状のオゾン液化室で冷却し液体オゾンと酸素とに分離境界面を境として分離し、オゾン液化室の上部から酸素を排気すると共にオゾン液化室の底部に液体オゾンを貯え、この液化室に貯えられた液体オゾンを、当該液体オゾンにより液封する連通管(液封部)を経由してタンク状のオゾン気化室(気化部)に導入し、当該オゾン気化室の底面に液体オゾンを貯留し、その液体オゾンを加熱して気化し濃縮オゾン(高濃度オゾンガス)を得る装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平1−257103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、高濃度オゾンガス(一般的にはオゾンの体積比率が10%以上)は、例えば、金属微粒子の触媒作用、高温、衝撃力、オゾンで分解する有機性ガス等のトリガーがあると、自己分解して発熱し(O→1.5O+143kJ/mol)、その分解時の発熱で他のオゾンガスが加熱されて自己分解したり、液体オゾンが加熱されて気化し自己分解するという連鎖反応を起こす虞がある。
【0004】
従って、上記濃縮装置にあっては、上記トリガー等が要因となってオゾン気化部で万一オゾン分解が生じると、これにより、気化部に貯えられている液体オゾンが加熱されて気化し連鎖的にオゾン分解が生じる結果、温度が急上昇すると共に体積が急膨張して圧力が急上昇し、装置の破損を招く虞がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、気化部におけるオゾン分解を防止し、装置の破損の虞を無くすことが可能なオゾン濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、気化部が従来技術のような構成であり、特に気化部の底面から液体オゾンを供給するような構造を有するオゾン濃縮装置にあっては、冷却部によって冷却された直後の液体オゾンが、気化部の底面の入口から供給され、気化部の液体オゾンは、入口が最も温度が低く、外周側へ行くに従って温度は高くなるため、入口側における液体オゾンと底面との間の温度差(過熱度)は、外周側における液体オゾンと底面との間の温度差(過熱度)に比べて大きくなり、大量の気泡が発生し易くなり、この気泡の破裂がトリガーとなりオゾン分解が生じる虞があることを見出した。さらに、入口側と外周側とで、液体オゾンと底面との間の温度差(過熱度)をできるだけ少なくすれば、気化部におけるオゾン分解を防止できることを見出した。
【0007】
そこで、本発明に係るオゾン濃縮装置は、オゾナイザで生成されたオゾンガスをオゾン沸点以下の温度まで冷却し液体オゾンと非凝縮気体とに分離する冷却手段と、冷却手段により分離された液体オゾンを加熱して気化し濃縮オゾンを得る気化部と、を具備するオゾン濃縮装置において、気化部には、気化部内の液体オゾンを気化部の底面を介して外側から加熱する加熱部が設けられており、液体オゾンが供給される入口を中心として、気化部内の液体オゾンと底面との間の温度差を中心側と外周側とで略均一にするように加熱部へ加熱流体を供給することを特徴としている。
【0008】
このようなオゾン濃縮装置によれば、気化部内の液体オゾンと気化部の底面との間の温度差が、中心となる入口側と外周側とで略均一となるように加熱部へ加熱流体が供給されるため、気化部内において過熱度の不均一化が防止され、これによって、オゾン分解が抑制され、装置の破損の虞が無くされる。
【0009】
ここで、加熱部としては、入口を中心として径方向の異なる位置に複数の区画が設けられ、区画のそれぞれに温度の異なる加熱流体が各々供給され、中心側の区画から外周側の区画へいくにしたがって、供給される加熱流体の温度が高くなるものが挙げられる。このような加熱部では、中心側と外周側とで異なる温度の加熱流体が供給され、中心側における液体オゾン及び底面の間の温度差と、外周側における液体オゾン及び底面の間の温度差が、容易に略均一とされるため、気化部内において過熱度の不均一化が一層防止され、これによって、オゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされる。
【0010】
また、加熱部として、入口を中心として径方向の異なる位置に複数の区画が設けられ、径方向に隣り合う区画同士はそれぞれ連通され、外周側の区画から加熱流体を供給し、中心側の前記区画から排気するものも挙げられる。このような加熱部では、加熱流体が外周側の区画から供給され中心側の区画から排気されるまでの過程で、その加熱流体の温度が徐々に下がってゆくため、液体オゾンと底面との間の温度差が、中心側と外周側とで、容易に且つ効率よく略均一とされる。従って、気化部内において過熱度の不均一化が一層防止され、これによって、オゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされる。
【0011】
また、液体オゾンと非凝縮気体との分離境界面と気化部との間を、液封を可能とする液封部で接続し、封部内には、毛細管力を発現する充填材が充填されていることが好ましい。このような構成を採用した場合、液封部内の充填材の毛細管力により液体オゾンは気化部に良好に導かれるため、液体オゾンは微量ずつ入口から外周側に行き渡り、上記気化部の作用、すなわち、入口側と外周側との過熱度の均一化を図るという作用を、一層好適に奏することが可能とされる。また、気化部で万一オゾン分解が生じても、発生する熱は液封部内にあっては充填材の熱容量により吸収されると共に当該充填材により液体オゾンの量が一層低減されることになり、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によるオゾン濃縮装置によれば、気化部におけるオゾン分解を防止でき、装置の破損の虞を無くすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明によるオゾン濃縮装置の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るオゾン濃縮装置を備えた高濃度オゾンガス生成装置を示す概略構成図、図2は、図1中のオゾン濃縮装置の冷却部、液封配管、気化部を示す概略構成図であり、本実施形態の高濃度オゾンガス生成装置は、例えば半導体製造装置の酸化膜の形成等に用いる高濃度オゾンガス(一般的にオゾンの体積比率が約10%以上)を生成するもので、この高濃度オゾンガスを連続して生成するのが可能な装置である。
【0014】
図1に示すように、高濃度オゾンガス生成装置200は、オゾンガス(オゾンの体積比率が約10%程度)を生成するオゾナイザ10と、冷却手段1及び気化部2を備えオゾナイザ10からのオゾンガスを濃縮し高濃度オゾンガスを生成するオゾン濃縮装置100と、を具備している。
【0015】
オゾナイザ10は、配管27を介して導入される酸素又は空気を基に、オゾンガス(オゾンの体積比率が約10%程度)を生成するものである。
【0016】
冷却手段1は、オゾナイザ10からのオゾンガスを冷却し液体オゾンと非凝縮気体とに分離するものである。この冷却手段1は、オゾナイザ10に接続されて当該オゾナイザ10からのオゾンガスを導入する導入配管3を、極低温に冷却する極低温冷凍機4を備えている。
【0017】
ここでは、極低温冷凍機4としてクライオ冷凍機が用いられ、当該クライオ冷凍機4のクライオヘッド4aに取り付けられた下部銅板4bと上部銅板4cとを冷却部4xとして、この冷却部4xを構成する銅板4b,4c間に導入配管3を密着状態で挟み冷却する。これにより、銅板4b,4c間の導入配管3が、オゾンガスを液体オゾンと非凝縮気体とに分離するための冷却管3cとされる。
【0018】
この冷却部4xは、冷却管3c中のオゾンガスを、オゾンの沸点(−111.9°C)以下で、且つ、酸素の沸点(−183°C)より高い温度に冷却し、液体オゾンと、酸素を主体とする非凝縮気体とに分離する。また、この冷却部4xは、気化部2側まで延出する延出部4yを備えている。
【0019】
冷却管3cは、冷却部4xでの入口3aから出口3bに向けて下り勾配とされており、当該冷却管3c内に液体オゾンが貯留してしまうことが防止されている。
【0020】
冷却管3cの出口3bには、上方に向かう気体配管5と下方に向かう液封配管6とが合流して接続されている。気体配管5は、冷却管3cで分離された酸素を主体とする非凝縮気体を、出口3bから上方に導くものである。この気体配管5は、その出口が配管27に接続され、分離された非凝縮気体をオゾナイザ10に戻す構成とされている。
【0021】
一方、液封配管6は、図1及び図2に示すように、冷却管3cの出口3bと気化部2の入口2aとを接続し、冷却管3cで分離され出口3bより液下する液体オゾンを気化部2に導くためのものであると共に、当該液体オゾンにより、冷却管3c及び気体配管5側と、気化部2側とを液封するものである。
【0022】
ここでは、液封配管6としてU字管が用いられ、当該U字管6内であって冷却管3cの出口3bより多少下方位置に、液体オゾンと非凝縮気体との分離境界面7が位置する構成とされている。
【0023】
この液封配管6内には、毛細管力を発現し、液封配管6内の液体オゾンを気化部2内に導く充填材8が充填されている。ここでは、充填材8は、金網状充填材であり、毛細管力を発現すべく密に構成されている。
【0024】
この充填材8としては、金網状充填材に限定されるものではなく、例えば密に配置される細い金属材料やガラス繊維、例えば多数配置される細かいシリカゲルやポーラスシリカ等であっても良く、要は、毛細管力を発現する充填材であれば良い。そして、液封配管6は、冷却部4xの延出部4y内を通されて銅板4b,4c間に密着状態で挟まれ、当該延出部4yにより冷却される。
【0025】
気化部2は、液封配管6からの液体オゾンを気化するためのもので、円筒状の胴部を有し、下部が下細りの擂り鉢状に閉じられて下端に入口2aが設けられていると共に、上部が上細りの擂り鉢状に閉じられて上端に出口2bが設けられている。
【0026】
この気化部2の入口2aは、底部の略中央に設けられていると共に、分離境界面7以上の高さにあり、金網状の充填材8は、液体オゾンを毛細管力により気化部2の底部内に供するように入口2aを通して内部に進入している。
【0027】
図3及び図4に示すように、底面2c上には、上方に突出するフィン31a,31b,31c,31dが入口2aを中心として環状に断続的に設けられており、このフィン31a〜31dは底面2cを内側と外側とで区切っている。また、環状方向に隣り合うフィン31a〜31d同士の間には液体オゾンが通過する流路となる連通部32a,32b,32c,32dが各々設けられている。これらのフィン31a〜31d、連通部32a〜32dは、入口2aを中心とした四等配の位置に設けられている。
【0028】
また、フィン31a〜31dの外側には、フィン33a,33b,33c,33dが入口2aを中心として環状に断続的に設けられ、そのフィン33a〜33d同士の間には連通部34a,34b,34c,34dが設けられ、これらのフィン33a〜33d、連通部34a〜34dは入口2aを中心とした四等配の位置に設けられている。更に、これらのフィン33a〜33d、連通部34a〜34dの外側には、同様にしてフィン及び連通部が幾重にも設けられている。これらの連通部は、内側の連通部に対して、これに径方向に隣接する外側の連通部が径方向に重ならないように配置されている。そして、底面2cの全領域にわたってフィン及び連通部より成るフィンパターン35が形成される。この底面2c及びフィンパターン35により広い伝熱面積が確保されている。なお、底面2c及びフィンパターン35におけるフィンと連通部は、ここでは、ステンレス鋼により形成されている。
【0029】
このように、底面2c及びフィンパターン35はステンレス鋼で形成されているため、オゾンにより直後は酸化されるが、継続してオゾンに浴することにより、表面に不導体被膜が形成され(不導体処理)、オゾンにより酸化されなくなる。なお、底面2c及びフィンパターン35はチタンで形成されていてもよい。
【0030】
図5に示すように、フィン上部36の内縁部36a及び外縁部36bは円弧状に構成されている。また、径方向に隣り合うフィン同士の間には凹部37が形成され、その凹部37におけるフィン底部38の内縁部38a及び外縁部38bも円弧状に構成されている。そして、フィン上部36の円弧とフィン底部38の円弧とは直線で結ばれており、また、径方向に隣り合うフィン同士の間隔は、上方側が下方側よりも大きく構成されている。なお、フィンパターン35におけるフィンの縁部は、フィン上部36及びフィン底部38の内外縁部に限らず、図5において図示されない部分(例えば、側縁部)も全て円弧状に構成されている。
【0031】
また、フィン上部36の円弧の半径rは0.05〜1mm程度とされ、その中心角Aは180°より小(好ましくは120°〜160°)とされており、フィン底部38の円弧の半径Rはフィン上部36よりも大きく、且つ0.1〜2mm程度とされ、その中心角Bは180°より小(好ましくは120°〜160°)とされる。なお、底面2c及びフィンパターン35は、バフ研磨の後、電解研磨を施すことにより鏡面仕上げとされる。
【0032】
そして、液封配管6の充填材8を介して気化部2内に供給される液体オゾンの液面50は、フィン上部36の上端よりも低い位置となるように設定されている。
【0033】
また、図3に示すように、気化部2の底板2dの下面には、この底板2dを介して気化部2内の液体オゾンを加熱するための加熱部40が設けられており、この加熱部40は、液封配管6と同軸のドーナツ形状に構成されている。この加熱部40は、その外周壁40aが底板2dの外周面と同一径とされると共に、その内周壁40bが液封配管6よりも大きな径とされ、底壁40eにより閉じられている。
【0034】
そして、加熱部40の外周壁40a、内周壁40b及び底壁40eと底板2dにより画成される内部は空洞となっており、その内部空間は、図6に示すように、液封配管6と同軸に設けられ径の異なる環状の仕切板40c,40dで区切られ、外周壁40aと仕切板40cとの間に外側の区画41が、仕切板40cと仕切板40dとの間に中側の区画42が、40dと40bとの間に内側の区画43が各々設けられる。
【0035】
図3及び図6に示すように、外周壁40aには区画41に加熱ガスG1(温度T1)を導入するための導入管45aが接続され、この外周壁40aにおける導入管45aの反対の位置には、加熱ガスG1を区画41から排出する排出管45bが接続されている。また、仕切板40cには外周壁40aを貫通して区画42に加熱ガスG2(温度T2)を導入するための導入管46aが接続されて導入管45aの下方に設けられ、仕切板40cにおける導入管46aの反対側の位置には、外周壁40aを貫通し加熱ガスG2を区画42から排出する排出管46bが接続されている。同様に、仕切板40dには、外周壁40a及び仕切板40cを貫通して区画43に加熱ガスG3(温度T3)を導入するための導入管47aが接続されて導入管46aの下方に設けられ、仕切板40dにおける導入管47aと反対側の位置には、外周壁40a及び仕切板40cを貫通して加熱ガスG3を区画43から排出する排出管47bが接続されている。この加熱ガスの温度の関係は、T1>T2>T3となっている。そして、加熱ガスG1,G2,G3の温度T1,T2,T3は、気化部2内の液体オゾンが、図9における非沸騰域あるいは核沸騰域におけるB点以下で気化されるように設定されている。
【0036】
なお、気化部2の底板2dの下面には、加熱ガスからの熱を効率よく液体オゾンに伝達させるための環状のフィン48が、区画41,42,43に突出するように設けられている。
【0037】
図1及び図2に示すように、この気化部2内の下部より上側には、気化により生成される高濃度の濃縮オゾン(高濃度オゾンガス)の通過を可能とする充填材20が充填されている。ここでは、充填材20は、金網状充填材とされているが、例えば、金属波板状充填材や、シリカゲルやポーラスシリカ等であっても良く、要は、濃縮オゾンの通過を可能とする充填材であれば良い。なお、気化部2内の金網状充填材20は、液封配管6内の金網状充填材8より粗に構成されている。因みに、液封配管6及び気化部2内の両方に多数のシリカゲルやポーラスシリカを充填する場合には、気化部2内に、液封配管6内より大きいシリカゲルやポーラスシリカを充填することが好ましい。
【0038】
この気化部2の出口2bには、図1に示すように、バルブV1を有する高濃度オゾンガス配管11が接続され、この高濃度オゾンガス配管11のバルブV1より上流には、バルブV2、オゾンキラー13を有する排気管12が接続されている。高濃度オゾンガス配管11は、気化部2で生成された高濃度オゾンガスを後段に供するためのものであり、排気管12は、余剰高濃度オゾンガスをオゾンキラー13により酸素に分解し大気に放出するためのものである。
【0039】
そして、冷却手段1の冷却部4x、導入配管3における冷却部4x側の部分、気体配管5における冷却部4x側の部分、液封配管6、気化部2、高濃度オゾンガス配管11におけるバルブV1より気化部2側の部分は、容器14内に収容され、当該容器14は、真空ポンプ15の駆動により内部が真空状態とされた真空断熱容器とされている。
【0040】
この真空断熱容器14内における高濃度オゾンガス配管11及び気体配管5には、オゾン分解が生じた際の配管内の圧力上昇に応じて圧力が設定圧以上になると当該配管内の圧力を開放する圧力開放弁16,17が各々配設されている。ここでは、圧力開放弁16,17として安全弁が用いられているが、配管内の圧力上昇に応じて圧力が設定圧以上になると一部が破壊し圧力を開放する破壊弁等であっても良い。そして、液体オゾンの全部が万一オゾン分解して圧力開放弁16,17が圧力を真空断熱容器14内に開放した場合に配管内の圧力がオゾンガスの供給圧以下となるように、真空断熱容器14内の空隙部の容積が設定されている。
【0041】
このように構成された高濃度オゾンガス生成装置200によれば、酸素又は空気を基にオゾナイザ10でオゾンガスが生成され、このオゾンガスは導入配管3を通してオゾン濃縮装置100に導入され、冷却手段1の冷却部4xで極低温に冷却される。このオゾンガスは、冷却管3cの出口3b付近で、液体オゾンと、酸素を主体とする非凝縮気体とに分離され、非凝縮気体は気体配管5を通してオゾナイザ10に戻されオゾンガスの生成に供され、一方、液体オゾンは液封配管6に流れ込む。
【0042】
この液封配管6内に流れ込んだ液体オゾンは、液封配管6内の充填材8の毛細管力により気化部2側へ進行していく。ここで、液体オゾンと非凝縮気体との分離境界面7は、液封配管6内であって冷却管3cの出口3bより多少下方に位置し、一方、液体オゾンの気化部2側の液面は、気化部2の入口2aが分離境界面7以上の高さにあるため、入口2a以下の位置にある。
【0043】
この液封配管6内の液体オゾンは、毛細管力により更に充填材8を伝っていき、入口2aを通して気化部2の底部内に良好に導かれて微量ずつ進入する。この液体オゾンは底面2cの入口2a付近に貯まりながら、図4に示す連通部32a〜32dを通過する。ここで、連通部32a〜32dはこれにより外側の連通部34a〜34dと径方向に重なっていないので、液体オゾンはフィン33a〜33dにより外側への進行が妨げられながら、連通部34a〜34dを通過する。このような作用がフィンパターン35全体において奏されながら、液体オゾンは外側へ進行していき、入口2aから供給された液体オゾンは、ショートパスすることなく底面2c全体に満遍なく広がるこことなる。
【0044】
この底面2cに満遍なく広がった液体オゾンは、液体オゾンを気化させるために必要な液位を確保した状態で、フィンの体積分だけ、気化部2の底部に貯留される液体オゾンの量が少なくされている。そして、このように貯留された液体オゾンは加熱部40により加熱される。
【0045】
加熱部40は、図3に示すように、導入管45aから加熱ガスG1を導入し、外側の区画41内に加熱ガスG1を送り込むことにより底板2dを介して液体オゾンを加熱し、また、中側の区画42内に加熱ガスG1より低温の加熱ガスG2を送り込んで液体オゾンを加熱し、また、内側の区画43内に加熱ガスG2より低温の加熱ガスG3を送り込んで液体オゾンを加熱する。
【0046】
ここで、液体オゾンは、加熱部40の加熱ガスG1,G2,G3により非沸騰域あるいは独立気泡の条件である核沸騰域におけるB点以下で気化される。従って、低い熱流束で気泡の発達が抑えられた状態で液体オゾンは気化する。このとき、底面2c及びフィンパターン35により広い熱伝達面積が確保されているため、効率よく液体オゾンが気化する。
【0047】
ここで、気化部2にあっては、冷却管3によって冷却された直後の液体オゾンが、液封配管6を介して底面2cの入口2aから供給されるため、入口2a付近の液体オゾンが最も温度が低く、外周側へ行くに従ってその温度は高くなる。よって、入口2a側における液体オゾンと底面2cとの間の温度差(過熱度)は、外周側における液体オゾンと底面2cとの間の温度差(過熱度)に比べて大きい。本実施形態では、このような温度分布をもつ気化部2に対して加熱ガスG1,G2,G3が供給される。
【0048】
従って、最も液体オゾンの温度が高い外周側は最も温度が高い加熱ガスG1で加熱され、最も液体オゾンの温度が低い入口2a側は最も温度が低い加熱ガスG3で加熱されることとなる。これによって、入口2a側における液体オゾン及び底面2cの間の温度差(過熱度)と、外周側における液体オゾン及び底面2cの間の温度差(過熱度)が、略均一とされる。
【0049】
ここで、本実施形態に係る加熱部40で液体オゾンを加熱した場合と、区画を設けない加熱部に、加熱ガスを導入して加熱した場合の比較を行う。図7(b)に示すように、区画を設けない加熱部にて加熱した場合は、外周側の液体オゾンの温度T6と底面の温度T7との温度差に比べて、入口側の温度差が大きくなっている。それに対して、本実施形態に係る加熱部40にて加熱した場合は、外周側の液体オゾンの温度T4と底面2cの温度T5との温度差と、入口2a側の温度差がほぼ同一となっている。以上より、本実施形態に係る加熱部40を採用することにより、外周側の温度差と入口2a側との温度差が確実に略均一とされ、気泡の発生が抑止される。
【0050】
ここで、液体オゾンが加熱部40によって加熱される際、フィンパターン35の表面にて気泡が発生しても、本実施形態では、フィンパターン35におけるフィンの縁部は円弧状に構成されているため、その位置において気泡が発生しても上方に離脱し易くなり、合体気泡の発生が防止される。また、フィンの縁部が鋭利な形状である場合は、気泡が接触破裂する虞があるが、フィンの縁部が円弧状に構成されているため、気泡の接触による破裂が防止される。また、フィン上部36の円弧とフィン底部38の円弧とは直線で結ばれており、一層気泡の接触による破裂が防止される。更に、フィンが鏡面仕上げされることによって平面平滑度が向上し、微小ピットが減少するため、より一層気泡の接触による破壊が防止される。また、フィンパターン35における径方向に隣り合うフィン同士の間隔は、上方側が下方側よりも大きく構成されており、凹部37が上方に向かって広がるような形状となるため、凹部37で発生した気泡が上方に一層離脱し易くされている。
【0051】
そして、このように液体オゾンは、オゾン分解が抑制された状態で気化し、加熱部40で液体オゾンを加熱することによって、オゾンガスが生成され、この高濃度オゾンガスは、充填材20を通過して出口2bから排出される。
【0052】
そして、本実施形態にあっては、オゾンの体積比率が100%近くの高濃度オゾンガスが生成される。この高濃度オゾンガスは、後段の使用に供す場合には高濃度オゾンガス配管11に流され、一方、余剰高濃度オゾンガスは排気管12に流されオゾンキラー13により酸素に分解されてから大気に放出される。
【0053】
このように、本実施形態のオゾン濃縮装置100にあっては、気化部2内の液体オゾンと底面2cとの間の温度差が、中心となる入口2a側と外周側とで略均一となるように加熱部40へ加熱ガスが供給されるため、気化部2内において過熱度の不均一化が防止され、これによって、オゾン分解が抑制され、装置の破損の虞が無くされている。なお、図7で説明したように、入口2a側の過熱度が大きいと、大量の気泡が発生し易くなり、この気泡の破裂がトリガーとなりオゾン分解が生じる虞があるので好ましくない。
【0054】
また、本実施形態にあっては、中心である入口2a側と外周側とで異なる温度の加熱ガスが供給され、入口2a側における液体オゾン及び底面2cの間の温度差と、外周側における液体オゾン及び底面2cの間の温度差が、容易に略均一とされるため、気化部2内において過熱度の不均一化が一層防止され、これによって、オゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされている。
【0055】
また、底面2cに内側と外側とを区切るフィンが設けられているため、液体オゾンを気化させる際の単位面積あたりの熱伝達面積が大きく確保されると共に、フィンの内側と外側とを連通する連通部により液体オゾンが底面2cの全領域にわたって満遍なく及ぶため、低い熱流束で液体オゾンを気化させ気泡の発生を抑え破裂によるオゾン分解を防止しつつ、大きくされた熱伝達面積により、効率よく大量の液体オゾンを気化させることが可能とされている。また、液体オゾンを気化させるために必要な液位を確保した状態で、フィンにより気化部2に貯留する液体オゾンが減少されるため、一層オゾン分解が防止される。以上により、効率のよい液体オゾンの気化が可能とされていると共に、装置の破壊の虞が無くされている。
【0056】
なお、通常の気化装置においては、高い熱流束(単位面積当たりに伝えられる熱量)で効率よく液体を気化させるため、液体中に発生した蒸気泡を核として気泡を生じさせる核沸騰域(図9参照)にて沸騰させるが、このように高い熱流束にて加熱すると急激な気化が起こり大量の気泡が発生し、この気泡の破裂がトリガーとなりオゾン分解が生じる虞があるので好ましくない。また、フィンを設けずに低い熱流束にて気化させた場合、大気圧下では大量の液体オゾンを気化することができず、好ましくない。
【0057】
また、本実施形態にあっては、フィンパターン35においては、連通部が、径方向に隣接する連通部と、径方向に重ならないように設けられているため、液体オゾンがショートパスすることなく底面の全領域にわたって一層満遍なく及ぶこととなり、確実に伝熱面積を大きくすることが可能とされている。
【0058】
また、フィンの縁部が円弧状に構成されているため、その位置において気泡が発生しても上方に離脱し易くなり、合体気泡による破裂の虞が無くされていると共に、フィンの縁部に対する気泡の接触による破裂が防止されている。また、フィン上部36の円弧とフィン底部38の円弧とは直線で結ばれているため、一層気泡の接触による破裂が防止される。また、フィンパターン35における凹部37が上方に向かって広がるような形状であるため、凹部37で発生した気泡が上方に一層離脱し易くされている。これによって、オゾン分解を一層防止することが可能とされている。
【0059】
また、分離境界面7と気化部2との間が、液封を可能とする液封配管6で接続され、液体オゾンが液封配管6内に存在すると共に分離境界面7が液封配管6内に位置しているため、従来に比して液体オゾンの量が大幅に低減されている。従って、気化部2で万一オゾン分解が生じても、液体オゾンの気化量が大幅に少なくされて連鎖的なオゾン分解が抑制され、装置の破損の虞が無くされている。
【0060】
また、液封配管6内には、毛細管力を発現する充填材8が充填されているため、液封配管6内の充填材8の毛細管力により液体オゾンは気化部2に微量ずつ良好に導かれ、上記気化部の作用、すなわち気化部2の底面2cの内側から外側まで液体オゾンを少ない量で満遍なく行きわたらせるという作用を、一層好適に奏することが可能とされている。また、気化部2で万一オゾン分解が生じても、発生する熱は液封配管6内にあっては充填材8の熱容量により吸収されると共に当該充填材8により液体オゾンの量が一層低減されることになり、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされている。
【0061】
また、気化部2の入口2aが分離境界面7以上の高さにあり、充填材8の上端が気化部2の入口2aを通して内部に進入しているため、液体オゾンは、その液面が気化部2に進入すること無く充填材8の毛細管力により気化部2内に進入して良好に気化し、このように、気化部2内での液体オゾンは極めて少量であるため、気化部2で万一オゾン分解が生じても、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされている。
【0062】
また、気化部2内には、濃縮オゾンの通過を可能とする充填材20が充填されているため、気化部2で万一オゾン分解が生じても、発生する熱は気化部2内の充填材20の熱容量により吸収される。このため、気化部2内での濃縮オゾンの連鎖的なオゾン分解が抑制され、装置の破損の虞が一層無くされている。
【0063】
また、液封配管6は冷却手段1により冷却されるため、気化部2で万一オゾン分解が生じても、発生する熱は液封配管6では冷却手段1により冷却される。このため、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされている。また、液封配管6内の液体オゾンの気化により気泡が生じると充填材8の毛細管作用が途切れる虞があるが、液封配管6が冷却手段1により冷却されるため、気泡の発生が抑制され、毛細管作用が確実に働くことになっている。
【0064】
また、冷却部4x、液封配管6、気化部2、圧力開放弁16,17が真空断熱容器14内に収容され、液体オゾンの全部が万一オゾン分解して圧力開放弁16,17が圧力を真空断熱容器14内に開放した場合に配管内の圧力がオゾンガスの供給圧以下となるように、真空断熱容器14内の空隙部の容積が設定されているため、オゾン分解時のガス圧が圧力開放弁16,17を介して真空断熱容器14内の空隙部に良好に開放され、装置の破損の虞が一層無くされている。また、真空断熱状態14により、冷却手段1による冷却及び気化部2での加熱が効率的に成されるようになっている。
【0065】
更にまた、冷却手段1の冷却部4xにより冷却され液封配管6に接続されるオゾン流路が、液封配管6との接続部側、すなわち出口3b側に向かって下り勾配にされているため、当該流路に液体オゾンが貯留することが防止され、装置の破損の虞が一層無くされている。
【0066】
図8は、他の加熱部を示す横断面図であり、図6に対応する断面図である。この加熱部140が先の加熱部40と違う点は、独立した区画41,42,43のそれぞれに異なる温度の加熱ガスG1,G2,G3を導入することによって液体オゾンを加熱する加熱部40に代えて、区画41と42とを連通すると共に区画42と区画43を連通し、更に導入管45aから導入した加熱ガスGを区画41,42,43の順に通過させて、排出管47bから排出する加熱部140を用いた点である。
【0067】
このような加熱部140では、加熱ガスGが外周側の区画41から供給され区画43から排気されるまでの過程で、その加熱ガスGの温度が徐々に下がってゆくため、液体オゾンと底面2cとの間の温度差が、入口2a側と外周側とで、容易に且つ効率よく略均一とされる。従って、気化部内において過熱度の不均一化が一層防止され、これによって、オゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされる。
【0068】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態においては、フィンを環状に断続的に設け、環状方向に隣り合うフィンの間に連通部を設けるようにしているが、環状のフィンに径方向へ向かって貫通穴を開けることにより連通部を形成してもよい。このときの貫通穴の縁部は円弧状とするのが好ましい。
【0069】
また、入口2aを底面2cの中心に設けるようにしているが、中心以外の位置に設けてもよく、更に、気化部2の側面に設けてもよい。この場合には、フィンや加熱部40の中心も入口2aに対応してずらされ、上方から見て例えば同心円状ではなく円弧状に形成される場合もある。更に、加熱部の区画は多角形状でもよく、要は、入口2aを中心として径方向の異なる位置に設けられた区画であればよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、特に好ましいとして、加熱部40に加熱ガスを導入しているが、これに限定されるものではなく、液体を導入してもよく、要は流体であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に係るオゾン濃縮装置を備えた高濃度オゾンガス生成装置を示す概略構成図である。
【図2】図1中のオゾン濃縮装置の冷却部、液封配管、気化部を示す概略構成図である。
【図3】図1中のオゾン濃縮装置の気化部の構成を示す縦断面図である。
【図4】図3に示されるIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図3中のフィンを示す拡大断面図である。
【図6】図3に示されるVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】気化部の底面と液体オゾンとの温度差を示す線図であり、(a)は本実施形態に係る加熱部を採用した時の温度差を示す線図、(b)は加熱部に区間を設けない場合の温度差を示す線図である。
【図8】他の加熱部を示す横断面図であり、図6に対応する断面図である。
【図9】液体オゾンの沸騰曲線と沸騰領域を示す線図である。
【符号の説明】
【0072】
1…冷却手段、2…気化部、2a…入口、2c…底面、6…液封配管(液封部)、7…分離境界面、8…充填材、10…オゾナイザ、40,140…加熱部、41,42,43…区画、100…オゾン濃縮装置、200…高濃度オゾンガス生成装置、G,G1,G2,G3…加熱ガス(加熱流体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾナイザで生成されたオゾンガスをオゾン沸点以下の温度まで冷却し液体オゾンと非凝縮気体とに分離する冷却手段と、
前記冷却手段により分離された液体オゾンを加熱して気化し濃縮オゾンを得る気化部と、を具備するオゾン濃縮装置において、
前記気化部には、前記気化部内の前記液体オゾンを前記気化部の底面を介して外側から加熱する加熱部が設けられており、
前記液体オゾンが供給される入口を中心として、前記気化部内の前記液体オゾンと前記底面との間の温度差を前記中心側と外周側とで略均一にするように前記加熱部へ加熱流体を供給することを特徴とするオゾン濃縮装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記入口を中心として径方向の異なる位置に複数の区画が設けられ、
前記区画のそれぞれに温度の異なる前記加熱流体が各々供給され、
前記中心側の区画から前記外周側の区画へいくにしたがって、供給される前記加熱流体の温度が高くなることを特徴とする請求項1記載のオゾン濃縮装置。
【請求項3】
前記加熱部は、前記入口を中心として径方向の異なる位置に複数の区画が設けられ、
径方向に隣り合う前記区画同士はそれぞれ連通され、前記外周側の区画から前記加熱流体を供給し、前記中心側の区画から排気することを特徴とする請求項1記載のオゾン濃縮装置。
【請求項4】
前記液体オゾンと前記非凝縮気体との分離境界面と前記気化部との間を、液封を可能とする液封部で接続し、
前記液封部内には、毛細管力を発現する充填材が充填されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のオゾン濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−7337(P2008−7337A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176700(P2006−176700)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】