オフセット印刷紙用塗料
【課題】オフセットインクの重合性あるいは架橋性成分を固定するための触媒系を含む、オフセット紙用塗料を提供する。
【解決手段】そのような触媒系を塗料に添加すると、化学的乾燥時間を実質的に低減することができ、そのような触媒は好ましくはMn(2−エチルヘキサノアート、bpy)のような遷移金属錯体/塩である。
【解決手段】そのような触媒系を塗料に添加すると、化学的乾燥時間を実質的に低減することができ、そのような触媒は好ましくはMn(2−エチルヘキサノアート、bpy)のような遷移金属錯体/塩である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に枚葉給紙型石版オフセット印刷紙用の塗料、並びにそのような塗料を塗布された紙、および基材にそのような塗料を塗布する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングされた非木材ファインペーパーの1つの重要な用途は、枚葉給紙型石版オフセット印刷工程の分野である。この市場においては、製造工程にかかる時間を短縮し、取り扱いを容易にするため、再印刷及び加工(converting)に要する時間の短縮に向けての、はっきりとした動向がある。
【0003】
印刷業者たちは、紙がほぼ即座に(すなわち、30分以内で)再印刷され、且つ加工されれば、工程の効率がより高まるため、明らかに利益を受ける。最近の印刷業界におけるワークフローは、完全にデジタル化され、印刷工程そのものがそれをできるという前提で、一連の印刷ジョブ(例えばCD挿入物)の同日処理が可能となっている。全工程のスピードアップを妨げている、一連のワークフローにおける唯一の要件は、インク紙の相互作用、すなわち、加工前の十分な乾燥である。ゆえに、インク乾燥時間が、全体の枚葉給紙型石版オフセット印刷工程における、ネック、あるいは速さを決定する工程であると言うことができる。
【0004】
加工にかかる時間を短縮するには、印刷されたインクの、適切な物理的乾燥要件と十分な(しかし必ずしも100%完成されたものである必要はない)化学的乾燥要件を必要とする。
【0005】
数件の研究の結果によって実証されているように、物理的乾燥要件は、例えば、塗層の孔隙率及び/又は表面エネルギーを、下記のように調節することによって増加できる。
−印刷機に紙がある間の初期のインクセッティング(ink setting)があまり速すぎない。
−印刷直後のインクセッティング時間に対して、インクセッティングができるだけ速い。
【0006】
初期インクセッティングに対する誘導時間(induction period)が、印刷機の作業性に関する問題を避けるため、且つ、印刷面の質の低下を避けるために必要である。優れた印刷品質を得るために、表面エネルギーの調節もまた必要であると考えられる。
【0007】
枚葉給紙型オフセット石版印刷工程においては、使用される速乾性インクは、主としてインクカラー顔料、少なくとも部分的に不飽和及び/又は共役樹脂、乾性油(少なくとも部分的に不飽和及び/又は共役植物あるいは生物油)および(例えば、全ての流れ特性を調節するための)高沸点炭化水素(鉱物)溶剤から成る。塗工紙に印刷されると、適度に速くかなり選択的な、塗料且つ原紙への鉱物油相の浸透を伴った、初期の物理的な吸収工程が始まる。残った樹脂と乾性油リッチ相が、インク組成物の同時変化によって沈殿する。これによって、比較的高粘度となり、結果的に、(インクカラー顔料を含んだまま)多かれ少なかれ、塗布面上且つ幾分上部で固化(たびたび「セット」と称される)し、最適な印刷光沢性のための最良の条件を提供する。
【0008】
一般的に、このような「セット」インク膜は、十分に剛性があり、限られた機械的力に耐え、且つ、紙の第一の面の印刷が終わると非常に速く第二の面の再印刷を可能にする。しかし、通常、印刷した紙の印刷画像を損なうことなく、即座の「安全」なさらなる取り扱いあるいは加工(例えば、折りたたむ、切る)のために必要なその剛性(とりわけ、湿潤摩擦抵抗、耐摩耗性)は、十分に発現しない。実際、次の加工段階が実施できるまで、数時間から1日以上まで必要とされるだろう。印刷工程を経済面で有意義なものにするため、印刷業者にとって、この時間間隔を最小にすることが重要である。
【0009】
周知の方法は、いわゆる酸化重合あるいは架橋反応である、印刷されたインク層のさらなる化学的乾燥段階を開始することである。たとえば亜麻仁油などの植物性乾性油部分且つ樹脂部分の両方は、部分的に(好ましくは共役)不飽和脂肪酸をベースとする。空気中(あるいは堆積されたシート間)の酸素が、これらの脂肪酸且つ樹脂の二重結合に付加し、ヒドロペルオキシドをまず形成する。これらヒドロぺルオキシドの連続的な劣化の後、結果として生じる遊離基は非常に反応性が高い。これらの基は、他の脂肪酸分子を攻撃、付加し、新しい(より大きい)遊離基を形成する。これによって、重合が生じ、最終的に架橋されたインクネットワーク(ink network)が形成される。速度決定段階、ヒドロぺルオキシドの形成且つ劣化が、インク中の特殊な触媒種(いわゆる一次/二次/補助ドライヤあるいは乾燥剤)の存在によって目に見えてスピードアップする。コバルトのような遷移金属の脂肪酸塩(例えば、ナフテン酸塩あるいはオクト酸塩)を、印刷前にインクに添加することが可能である。これらの触媒は印刷インクに少量添加され、乾燥時間を100から200時間(非触媒状態)から1から10時間(触媒状態)に、目に見えて短縮する。このインクの架橋反応経路の複雑なメカニズムは、図1において概略的に示される。この化学的乾燥は、機械力への抵抗を著しく向上させる。
【0010】
インク系における以前の触媒ドライヤ系は、化学的乾燥挙動の速度を上げ、且つ消費者にとって使いやすい挙動を提供するために、例えば市販のアルキド樹脂、溶剤ベースの塗料にも適用される。塗料市場における最新の開発は、水溶性の塗料システムの開発である。塗布後の化学的乾燥挙動の速度も上げるために、特別に工夫された、水分散性の触媒乾燥系が開発された。事実、公知の一次/二次/補助ドライヤ系が、専用の乳化剤の組み合わせで改質され、十分に水分散性となった。
【0011】
現在の、印刷機の通常の作動方法は、ゆえに、触媒ドライヤ系を含む市販のインクを適用、及び/又はいわゆるドライヤ系を印刷前にインクに添加して、化学的乾燥速度をさらに向上させることである。これは、しかしながら、いくつかの欠点を有する。例えば、実際の問題は、いわゆる、インク系の「開放時間(open time)が目に見えて減少し、その結果、印刷する者が、1日に規則的に8時間稼働させた終わりに印刷機を洗浄するか、あるいは、たとえばオキシムのような、毒性の皮張り防止剤をインクに添加しなければならなくなる。別の欠点として、それぞれの紙の吸収性且つその他の印刷特性によっては、印刷する者が、標準的なインクだけではなく、ドライヤ系を添加した数種の(より高価な)印刷用インクを使用しなければならなくなることがある。
【発明の開示】
【0012】
本発明の目的は、ゆえに、印刷工程の向上、とりわけ、印刷された枚葉給紙をさらに処理、再印刷及び/又は加工するために待機しなければならない時間を短縮させることにある。
【0013】
本発明は、とりわけオフセットインクの重合性又は架橋性の成分を固定するための触媒系を含むオフセット紙用の塗料を提供することによって、上述の問題を解決する。
【0014】
このような触媒系は、あらゆる(水性)の塗料配合物に導入できる。しかし、オフセットインクの塗料内部へのはっきりとした物理的吸収を示す塗料構造に導入された場合、特に活性が高まる。標準的には、このように比較的速い、インクセット挙動は、塗料構造が、適当な孔径分布を有する高い空隙率を有している場合に得られる。好ましくは、ゆえに、トップコートは、WO2004/030917に記載されているような、速いセットオフ(set−off)を有するべきであり、その内容はこれに関連して盛り込まれている。好ましくは、インクセットオフは30秒で0.7未満、0.5未満又は0.3未満、好ましくは、0.15から0.5の間の範囲、あるいは120秒で0.1未満あるいは0.05未満である。
【0015】
触媒系は、1つ又は数種(混合物として)の触媒又は触媒的活性要素を有し、触媒系の全活性を支持する、添加物、配位子、塩等を結果として含む系として理解されるべきである。たとえば、触媒効果を、酸素あるいは水素-過酸化物をゆっくりと放出する化合物を添加物として提供することによって支持することができる。
【0016】
ゆえに、本発明の1つの目的は、請求項1の塗料、請求項32の紙、請求項34の方法及び36の使用である。
【0017】
従って、本発明の1つの重要な特徴は、驚いたことに、特に水分散性又は水溶性触媒の(一次)ドライヤ系を、優先的に、バランスの取れた配位子/キレート系及び/又は他の添加剤と混ぜ合わせて、例えば枚葉給紙オフセット用の非木材の塗布グレードのトップコート層に(又は、例えば、時に場合によりわずかな有色の触媒系を隠すためトップコートの裏側の中間塗層に)組み込むことができるという事実である。このようにして、ペーパーコート自体に固有の化学的乾燥能力を直接組み込んだ、新しいタイプのグラフィックコート紙を提供し、さらに、インク系自体の従来の化学的乾燥能力に取って代わることさえ可能となる。化学的インク乾燥時間を、とりわけ、以下の理由から、この方法によって目に見えて低減することができる。
−化学的乾燥プロセスは、まず、印刷されたインク層の両側で始まる。
−物理的吸収を経た適切な輸送(transportation)プロセスの場合、化学的に反応させられるべき不飽和インク要素(触媒がオフセットインクの重合性又は架橋性成分を固定している)は、紙の内側で触媒乾燥種と最も近接している。
−物理的吸収を経た適切な輸送プロセスの場合、そのとき鉱油は主に分離されているため、架橋結合されるべき系はより濃縮され、結果として反応速度が高められる。
−多孔質塗料系の酸素が触媒種の近くに存在するため、酸素の拡散限界が、化学的反応の誘導時間が最小であるために、最良の結果で最小限に抑えられる。
【0018】
当該技術による塗料の場合、化学的乾燥成分(生物オイルビヒクル及びインクの不飽和樹脂部分の架橋)は、仮にそうであったとしても、紙の表面によってそれほど影響を受けないように見える。驚いたことに、実のところは、紙のトップコートに適当な触媒系を組み込むことにより、インクに触媒系を組み込むよりも、ときに、化学的乾燥時間を低減することがある。それに加え、驚いたことに、このような塗料に加えられるドライヤ系は、たとえ紙が長時間(通常は半年から一年)保存されていようと、安定している。特にインクに加えられたドライヤと塗料に存在するドライヤの相乗的な組み合わせが、当該技術による系を用いて達成可能な値を大きく下回る乾燥時間につながる。触媒は塗料上に印刷されたオフセットインクの不飽和成分の酸化重合又は架橋結合を触媒する。特に、触媒は、オフセットインクの少なくとも部分的に不飽和及び/又は共役の脂肪酸及び樹脂部分を固定する。
【0019】
本発明の概念は、例えば、JP−60−161461に開示されたような、特定のものをシールするための塗料とは、完全に且つ基本的に異なることに留意されたい。この文献において、シーリング塗料は、塗布工程直後又は工程中に架橋結合される、特定のメラミン成分を含む。このような塗料で覆われるべき基材は、シーリング塗料の塗布より前に印刷されていることは可能だが、シーリング塗料によって形成された構造により、一般的な技術によっては、特にオフセット印刷を用いずに、その後の印刷を行うことは不可能であろう。これらの場合、触媒は、塗布工程の前及び工程中には、シーリング塗料中に存在するが、塗布直後には、塗布工程中及び工程直後のメラミン部分の架橋結合のために使い果たされるため、もはや存在していないだろう。従って、これにより、基底構造の表面を完全にシールする塗膜となる。
【0020】
ゆえに、このような種類の塗料は、下記の点で提案された塗料とは異なる。まず、触媒が、後で塗布されるオフセットインク用の触媒として働くことができない。オフセットインクを吸収できず、その結果、場合により残っている触媒を、例えばオフセットインクをシーリング塗料の表面に蒸着するために使用することは不可能だろうから、このような塗料を用いて形成された構造はオフセット紙として使用することができない。したがって、JP−60−161461で提供された触媒系は、p−トルエンスルホン酸であると記載されているが、まず第一にオフセット印刷インクを架橋結合せず、第二に塗料が凝固した後は利用できない。それに対し、本発明による塗料は、オフセットインク用の触媒系が印刷可能な構造で利用できる系の提供を目的とする。
【0021】
このような塗料に適用されるオフセット印刷インクの乾燥時間は、2時間を下回り、さらには1時間を下回るまで低減することができ、0.5時間以下の値になる場合もある。
【0022】
原則として、オフセット印刷インク用の添加剤として知られている1次ドライヤ系は、本発明の塗料にとっての触媒として利用できる。本発明の第1の好ましい実施形態において、触媒は遷移金属錯体又は遷移金属塩であって、遷移金属錯体又は塩の金属イオンは、優先的に、Ti、V、Cr、Ni、Mn、Fe、Co、Ce、Cu又はそれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0023】
遷移金属錯体は、1以上の遷移金属から形成される錯体であり、言い換えると、遷移金属の配位化合物である(例えば、Roempp Chemie Lexikon、Georg Thieme Verlag、1995のキーワード“Uebergangsmetallkomplexe”参照)。これは、一般化学、特に、それだけに限らないが、例えば無機触媒作用において、当該技術者に周知の用語であり、遷移金属とは、無機化学のIUPAC規則1.21により、不完全なd殻を持つ原子又は不完全なd殻をもつカチオンを形成することができる原子だと定義されている(例えば、Roempp Chemie Lexikon、Georg Thieme Verlag、1995のキーワード“Uebergangsmetallkomplexe”参照)。
【0024】
一般的に、触媒は以下の構造を持つことができる。
(M+n)(X−k)m
ここで、Mは、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びCeのような遷移金属群から選ばれ、X−kは、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、他のカルボン酸塩、ナフテン酸塩、EDTA、DTPA及びNTA、アミノ酸及び以下に示されるような中性配位子(k=0)又は帯電した配位子(k<>0)を表し、+nは金属の原子価状態、−kは帯電した配位子(X)の原子価状態、mは配位子の数である。
【0025】
すべてのXは等しくてもよいが、1つのMで数個の異なるXであってもよい。例えば、それらのいくつかは帯電されており、いくつかは帯電されていなくてもよい。そのため、例えば触媒は、帯電された配位子に加えて、2,2−ビピリジル、イミダゾール、ピラゾール、脂肪族及び芳香族アミン、1,10−フェナントロリン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン及び他の配位子系のような、有機配位子等の中性配位子、特に2以上の窒素、酸素、及び/又は硫黄原子を含む有機配位子を含むことができる。
【0026】
遷移金属錯体系用の配位子(上記X−k)としては、硫酸塩、カルボン酸塩(特にC6からC18の脂肪族カルボン酸塩)のような系及び/又はサリチル酸塩、EDTA、DTPA及びNTA、アミノ酸等のような酸化金属への電子移動を促進する系が可能である。例としては、アセチルアセトン(AA)、ジベンゾイルメタン(DBM)、ジピバロイルメタン(dpm)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、EDTA、例えばジソルビンE39、又はトライロンC(共にEDTA−Na4=エチレンジアミン四酢酸、四ナトリウム塩)、ジソルビンA40(NTA−Na3=ニトリロ三酢酸、三ナトリウム塩)のようなNTA、ジソルビンH40(HEDTA−Na3=ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、三ナトリウム塩)のようなHEDTA、ジソルビンEDG(EDG−Na2=エタノールジグリシネート、ジナトリウム塩)のようなEDG、ジソルビンE40(DTPA−Na5=ジエチレントリアミン五酢酸、五ナトリウム塩)のようなDTPA、ジソルビンE−Mn−13([EDTA・Mn]Na2)、ジソルビンE−Mn−6([EDTA・Mn]K2)のような系がある。
【0027】
さらに、例えば、SB1、SB2及びSB4のような以下に挙げるシッフ塩基配位子が可能である。ここで、SB1は、室温、エタノール中でのピリジン-2−カルバルデヒドと1,2−エチレンジアミン(1:1当量)の反応で得られ、SB2は、室温、エタノール中でのピリジン−2−カルバルデヒドと1,3−ジアミノプロパン(1:1当量)の反応で得られ、SB4は、室温、エタノール中でのピリジン−2−カルバルデヒドと1,3−ジアミノプロパン(1:1当量)の反応で得られる。
【化1】
【0028】
少なくとも上述の配位子SB2は、上述の3つの配位子のうちで好適であるが、このように、ここに記載した、つまり、紙塗料用の触媒のための配位子としての、特定の使用の範囲においてだけでなく、単独並びに例えばFe又はMnのような遷移金属との錯体であっても、十分に新しく独創的であるという点にも留意されたい。
【0029】
さらに、次のシッフ塩基配位子SB13とSB14が可能であり、ここでSB13(好ましくは)は、室温、エタノール中でのピリジン−2−カルバルデヒドと1,3−ジアミノプロパン(2:1当量)の反応を経て得られ、SB14は、室温、エタノール中でのサリチルアルデヒドと2−アミノメチルピリジン(1:1当量)の反応を経て得られる。
【化2】
【0030】
触媒系及び/又は塗料は、さらに、例えば還元性生体分子のような還元剤を含む。このような系は、遷移金属の触媒下で、自動酸化される。例えば、トコフェロール、ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、(ヒドロキシ)−ドーパミン、エピネフリン、アスコルビン酸、その誘導体及び組み合わせのような、モノ−、オリゴ−及びポリ−ヒドロキシ置換の(ヘテロ)−芳香族化合物が可能である。
【0031】
好ましくは、触媒系は還元性の成分を含まない。
【0032】
特に好ましいのは、Mn、Co、V、Fe又はその混合物からなる群より選ばれた遷移金属に基づく一次ドライヤ触媒であり、特にMn単独では、特に強力で効果的であることが証明された。
【0033】
上述の一次ドライヤ触媒系の効果は、付加的に存在するいわゆる二次ドライヤによって支持され得る。このような二次ドライヤは、例えば、塩、例えばカルボン酸塩、錯体等のようなイオンの形の、Pb、Bi、Ba、Al、Sr、Zrをベースとすることができる。
【0034】
もし、例えば、塩、例えばカルボン酸塩、錯体等の、同じくイオンの形のCa、Zn、Li、Kなどの補助的なドライヤが、さらに付加されると、触媒効果のさらなる又は別の支持が起こり得る。
【0035】
上述のように、触媒系の触媒作用は、触媒系の一部としての、遅い過酸化水素又は酸素放出化合物、好ましくは(塗膜した及び/又はリン酸塩をインターカレートした)無機酸素放出化合物の存在により支持され得る。(遅い)酸素(又は過酸化水素)(塗膜した)解除剤の例としては、例えば、持続放出特性が最大一年の、過ホウ酸ナトリウム一水和物、過ホウ酸ナトリウム四水和物、過炭酸ナトリウム、過酸化マグネシウム、ORC=リン酸をインターカレートしたMgO2(リジエイネシス製造)、例えばIxper 35M又はDrillox M(ソルベイ社製造)、Ixper 75C(ソルベイ社製造)、Ixper 60C(ソルベイ社製造)、PermeOx Plus(FMC製造)のような(過)酸化物マグネシウム又はカルシウム、過酸化亜鉛、カリウム単過硫酸塩である。
【0036】
別の好適な実施形態によると、触媒として使用される遷移金属錯体/塩は、カルボン酸及び/又はナフテン酸錯体である。カルボン酸錯体/塩の場合、効果的であることを示せたのは、炭素数2から18、好ましくは6から12のアルキル鎖を有するカルボン酸であり、置換されていても置換されていなくてもよい。特に適切な系は、2エチルヘキサノアート錯体、特にマンガン(2エチルヘキサノアート)錯体である。また、単純マンガン塩も効果を示す。ナフテン酸錯体/塩の場合、ナフテン酸アニオンは炭素数1から12、好ましくは4から8のアルキル鎖を有し、アルキル鎖及びシクロペンタンユニットは置換されていてもされていなくてもよい。本発明の塗料の他の好ましい実施形態によると、触媒として用いられる遷移金属錯体/塩は、少なくとも1つの二座配位子を含むか、又は二座配位子により補充される。このような二座配位子は、上述のカルボン酸又はナフテン酸配位子系と組み合わせて好適に用いることができる。例えば5原子を有するキレート環に至る二座配位子系は、特に有益である。金属原子へのリンクを供給するために用いられる原子は、N、O、S及び/又はP、あるいはその組み合わせからなる群より選ぶことができる。ゆえに、有益な二座配位子系は、金属原子との結合を形成するために使用可能な、適切なsp3又はsp2混成N原子及び/又はO原子を有する有機分子を含む。
【0037】
特に好ましいのは、例えば、2,2’−ビピリジン(bpy)、2−アミノメチルピリジン、2−ヒドロキシメチルピリジン、又は1,10−フェナントロリンからなる群より選ばれるような、ジアミン又はアルカノールアミンの形の配位子であり、置換されていてもされていなくてもよい。配位子は、好ましくは、側基で置換されており、これにより安定性が増し、水中での触媒系の溶解度又は分散性が増す。このことは、塗料が水ベース基材に蒸着されるため重要である。
【0038】
特に適切な系は、例えばMnが塩錯体として存在し、さらにbpyが通常(わずかに)モル過剰状態で存在する、Mn bpy系からなる又は含む触媒によって与えられる。上述のように、このような系は、カルボン酸マンガン又はナフテン酸マンガンとの混合構造として供給され、例えば、Mn(2−エチルヘキサノアート、bpy)のような、Mn(2−エチルヘキサノアート)とbpyの組み合わせが適切である。
【0039】
本発明の塗料の他の好ましい実施形態によると、触媒、例えば一次ドライヤ錯体/塩の金属部分は、塗料中に、表面(top)紙塗料の合計乾燥重量の0.01から0.5重量%、好ましくは塗料の合計乾燥重量の0.05から0.2重量%存在する。
【0040】
さらに、配位子の1つが、よく平衡制御された状態で、一次ドライヤ系の遷移金属イオンに比べて過剰に存在する場合、優れた触媒効果を達成できることを示し得る。ゆえに、他の好ましい実施形態によると、遷移金属錯体/塩が少なくとも1つの二座配位子を優先的に含み、配位子に対する金属の割合が1:1から1:8又は最大1:20の範囲にある。
【0041】
抄紙機における塗膜工程に適した触媒系を提供するために、存在する遷移金属錯体及び/又は配位子の溶解度/分散性を増すための添加剤を加えることが有利である。分散性を高めるための添加剤は、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール又はプロピレン−グリコール−モノメチル−エーテルのようなアルコール又はグリコール・エーテルから選ぶことができる。それらの添加剤は、塗料配合物に加えることも可能であるし、塗料配合物への導入前に、遷移金属錯体及び/又は他の成分の溶液/分散液に加えることもできる。
【0042】
遷移金属錯体及び配位子の溶解度/分散性を増すためのこのような添加剤は、「共溶媒」として作用している。これらの1つの特性は、遷移金属、及び/又は、錯化剤/配位子、又は中性配位子、及び/又は、補助ドライヤのような成分を溶かす一定の能力を有するだけでなく、同時に、水への一定の溶解度を有することである。そのため、それらはある種の媒介物である(「可溶化原理」)。有利な点は、
−溶解状態でのドライヤ系の最高活性、
−全紙塗膜の改良された安定性及び均質性、それゆえ、例えば、抄紙機における改良された作業性
である。適切な共溶媒の例としては、エタノール、アセトン、アルコールエーテル、アルコールエステル、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等である。
【0043】
原理的には、本概念は、いかなる(水性の)塗料配合物にも適用できる。しかしながら、塗料が高い空隙率と、適切な多孔性形態及び/又は適切な孔壁表面エネルギーを有する場合には、例えば上述の好ましい十分に早いインクの物理吸着及びそれに相当する十分に短いセットオフ値につながり、有益であると判明している。他の好ましい実施形態によると、塗料は、バインダと、滑剤、増粘剤等の添加剤を乾燥重量で5から20部実質的に補充した顔料を、乾燥重量で100部含み、顔料部分は、微細から超微細の炭酸カルシウム(CaCO3)及び/又はカオリンあるいはクレイを含み、最大10から20部を、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−クロロエチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、アセタール、ポリフェニレンスルフィド、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレンラテックス、ポリアクリルアミド、及びその合金、混合、混合物及び誘導体で作り得る、合成固体又は空胞化した高分子顔料によって置換されてもよい。また、スチレンマレイン酸共重合体ラテックス(SMA)又はスチレンマレイミド共重合体ラテックス(SMI)、上記の構造を有するこれらの混合物及びその誘導体も可能である。
【0044】
原則として、触媒はトップコーティングにしか加えないが、トップコートの真下の層に加えてもよい。触媒系を含むトップコートの厚さは通常、10から30g/m2の範囲、好ましくは10から15g/m2の範囲である。
【0045】
印刷シート又は塗料はさらに、顔料部分の少なくとも一部分、好ましくは微粒子シリカが、微量の金属好ましくは遷移金属を含み、あるいは選択的且つ意図的に濃縮されさえし、少なくとも1つの金属が、10ppbより多く存在し、あるいは少なくとも1つの金属又は金属の合計が500ppbより多く存在することを特徴とする。その際、この金属は上述の意味で触媒として作用する。例えば、鉄はそのような量で存在することができるが、銅、コバルト、マンガン等も有利である。
【0046】
通常、この開示においてシリカについて述べる場合、この用語は、コロイド状シリカ(液相中の微細なシリカ粒子の懸濁、粒子は非結晶質で、通常無孔構造で形は球状である)、沈降シリカ(広範な細孔構造を有する多孔質粒子)、発煙(fumed)シリカ(無孔)及びシリカゲル(一次粒子として重合ケイ酸塩粒子を有する含水二酸化ケイ素の多孔質体非結晶質形、粒子は高表面積で高空隙率、これら四種類の定義については、Ferdi Schueth、Kenneth W.SingとJens Weitkamp編、Wiley−VCH、「多孔質体ハンドブック」第三巻の例えば1551−1557頁参照)を含むと解釈されるべきである。好ましくは沈降シリカ、より好ましくは、固有の高空隙率を有するシリカゲル(キセロゲル及びエアロゲル)が用いられ、以下でシリカという用語が使用される場合には、これらを意味する。
【0047】
金属は、元素であれイオンの形であれ、インクの化学的乾燥に寄与する。金属の含有量が多いと、特定の適した空隙率及び/又は表面積を有する顔料の乾燥重量部分の低さを補填することができるので、例えば、顔料部分が微粒子炭酸塩及び/又は微粒子カオリンを乾燥重量80から95部と微粒子シリカを乾燥重量6から25部含む場合、より高い金属含有量を有するなら、シリカの含有量はより小さくすることが可能である。好ましくは、シリカゲルの含有量は10部より高くするべきであり、好ましくは、12部以上であるべきである。
【0048】
顔料の1つ、特にシリカ部分に存在する場合、特にドライヤ金属として作用するか又はドライヤ機能に関係する金属には、3つのグループがある。
A)一次又はトップ又は表面ドライヤ金属:+2(II)と+3(III)原子価を有するマンガン等のすべての遷移金属。それらは、酸素(O2)と乾性油との反応により形成される、過酸化物の形成及び特に分解を触媒する。この酸化又は遊離基作用により、ポリマーとポリマーの架橋を形成し(最上層乾燥)、また、乾性油分子上に水酸基/カルボニル基/カルボキシル基を形成する。最も重要なものは、Co、Mn、V、CeとFeであり、Cr、Ni、RhとRuも可能である。
B)二次又はスルー又は配位ドライヤ金属:含酸素(O)基がこれらのドライヤによって用いられ(しかし、常に一次ドライヤと組み合わせて、結合錯体形成を介して)、特定の架橋を形成する。最も重要なものは、Zr、La、Nd、Al、Bi、Sr、Pb、Baである。
C)補助ドライヤ金属又はプロモーター金属:それら自体は、乾燥作用を直接行わないが、一次又は二次ドライヤとの特別な相互作用を介して(又は、一次及び二次ドライヤの溶解度上昇を介してともいう)、それらの活動を支持できる。最も重要なものは、Ca、K、Li及びZnで、特にそれらのカルボン酸塩である。
【0049】
補助ドライヤ金属は、0.02から0.2%NaのNa−(2−EH)(DS紙トップコート)、0.05から0.2%KのK−(2−EH)、0.05から0.2%KのK−リノレアート、0.01から0.2%LiのLi−(2−EH)、0.05から0.2%CaのCa−ビス−(2−EH)等の金属カルボン酸塩(例えば、水又は2−ブトキシエタノールに溶かした)でもよい。ここで、EHはエチルヘキサノアートである。これらの補助ドライヤ金属カルボン酸塩はまた、実際の触媒として単独でも使用できる。
【0050】
二次又は補助ドライヤ系として、Zr(acac)4、Ti(acac)4、Li(acac)、K(acac)、Li(dpm)、K(dpm)の使用も可能である。モル比1:1Li/MnのLi(acac)は、Mn−アセテートの乾燥活性を著しく高めることを示し得る。
【0051】
これらの金属の著しい活性を有するために、それらが、下限値10ppbから最大次の上限値で、顔料中に(好ましくはシリカ中に)存在しなければならない。
−一次ドライヤ金属:Ceは最大20ppm、それ以外すべて最大10ppm。
−二次ドライヤ金属:Zr、Al、Sr及びPbはすべて最大20ppm、それ以外すべて最大10ppm。
−補助ドライヤ金属:すべて最大20ppm。
【0052】
これらの金属のいくつかの特定の組み合わせは特に効果的である。例えば、Co+Mn、Co+Ca+Zr又はLa又はBi又はNd、Co+Zr/Ca、Co+La等である。例えば、Mn(II+III)アセテート(インクの表面だけが速く乾燥し、酸素に配向して閉じられる)と何らかのカリウム(K)塩(マンガン活性を活性化するため)、場合によりジルコニウム(Zr)塩(乾燥を介してインクのかさを増やし、印刷されたインク層の湿潤インク摩擦挙動を改善するため)との組み合わせが可能である。
【0053】
他の好ましい実施形態によると、印刷シートの塗料は、トップコート及び/又はトップコートの真下の中間層がさらに、好ましくは遷移金属錯体/塩、遷移金属カルボン酸錯体/塩、マンガン錯体/塩、マンガンカルボン酸錯体/塩及び/又は酢酸マンガン又はマンガンアセチルアセテート錯体/塩(例えば、Mn(II)(Ac)2・4H2OやMn(III)(Ac)3・2H2Oのようなn=2,3のMn(アセテート)nあるいはn=2,3のMn(acac)n)から選択される化学的乾燥補助剤を含み、マンガン(Mn)錯体/塩の適切な触媒作用のために、好ましくは、Mn(II)とMn(III)が併存するか、又はその混合物で存在し、この化学的乾燥補助剤は好ましくは乾燥重量0.5から3部、好ましくは乾燥重量1から2部存在する。上述のマンガン(Mn)錯体/塩のような金属触媒系の場合には、触媒系の金属部分が塗料の全乾燥重量の、0.05から0.6重量%、好ましくは0.02から0.4重量%、塗料中に存在することが好ましい。このような系の触媒活性を支持又は高めるために、二次ドライヤ及び/又は補助ドライヤとそれらを組み合わすことも可能である。また、金属系に対して異なる配位子を提供することにより、触媒活性を高めることもできるので、例えば上述の酢酸錯体/塩はbpy配位子と混合することが可能である。また、Li(acac)のような他の金属錯体/塩と組み合わすこともできる。さらに、必要な酸素又は過酸化水素を拡散限界なしにスポットに直接有するために、触媒系を無機過酸化物と組み合わせることによって、強化が可能である。オフセットインクの重合性又は架橋性成分を固定するためにこのような触媒系を使用することは、完全に異なる性質の塗料にとっても有利であり、塗料中にシリカを有するという概念に必ずしも結びつけられないということが、指摘されなければならない。このような微量金属(metal traces)中に、意図的に無機顔料を濃縮することができる。通常、鉄の含有量は500ppbを超えることが好ましく、マンガンの含有量は20ppbを超えることが好ましい。
【0054】
ドライヤ系の例:
水又は共溶媒(2−ブトキシエタノール)に溶解させたもの:
a)0.004から0.2%Feの、Fe(II)SO4・7H2O、Fe(II)−(エチルヘキサノアート)、Fe(II)アセテート、Fe(II)シトラート、Fe(II)グルコナート、Fe(II)EDTA、0.2%MnのMn(II)SO4・H2O、
b)金属1モルに対して配位子2モルの配位子2−エチル−4−エチルイミダゾール
【0055】
主な一次ドライヤとして、Mn−サルフェイト、−ホスフェート、−カルボナート、−クロリド及び特にMn(II)−アセテートのような、無色のMn(II)塩。無色のMn(II)−[2−EH]と褐色のMn(III)−[2−EH]の混合物の利点は、コスト、安全な特性、色である。また、最小限必要とされるイオン形Mn(III)アセテート(褐色)をそのままで(in situ)組み込むことにより、Mn(II)アセテート(ライトピンク)を活性化することができる。このような系は配位子(bpy、SB2、SB13等)と組み合わせることができるので、ドライヤ活性を著しく且つ魅力的に高めることができる。
【0056】
最終的に配位子と結合される、より複雑な金属塩/錯体:すぐに使用できる「ワンパッケージ」一次ドライヤ系。その原理は、最終的に既に配位子を備えた、結晶性ドライヤ錯体を、事前合成/事前分離することである。製紙業務においては、完全に水溶性か又は共溶媒を用いて、紙塗料に単一のドライヤ化合物を組み込むことだけが必要である。例としては、
[Mn(II+III)エチルヘキサノアート、bpy]錯体=[MnII2MnIII2O2(エチルヘキサノアート)6(bpy)2]、
[Mn(acac)2bpy]、ここでacacはアセチルアセトン、
[Mn(acac)3]又は(水溶性型)Na[MnII(acac)2]又はK[MnII(acac)2]又はNH4[MnII(acac)2]、
[MnIII(pppy)(dpm)]、ここでpppyは新しい三脚型配位子
【化3】
ここで、R1=R2=H、dpm=ジピバロイルメタンである。
【0057】
Omo Power触媒MnMeTACN(Polymer 45(2004)7431−7436)のような漂白触媒系のベースとなる遷移金属(好ましくはFe、Mn)も可能である。
【0058】
本発明は、さらに、優先的にトップコートとして、上述の塗料で塗膜された紙に関する。そのようなトップコートの真下に、好ましくは付加的な塗膜があり、特に、層構造におけるインクの物理的吸収プロセスを支持する。そのような付加的中間塗膜のために、以下のような配合が可能である。
超微細CaCo3乾燥重量100部、スチレンブタジエン合成バインダ5から10部、潤滑油1部、加工でんぷん1部、PVA1部、CMC1部。
【0059】
さらに、本発明は、上述の塗料の製造方法に関し、遷移金属錯体/塩を、撹拌塗料配合に優先的に水溶液又は水分散液として加え、最終塗料配合が紙基材上に塗膜される。塗膜工程は、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーコーター、カーテンコーター又は他のコーターシステム等の一般的技術を用いて実施することができ、紙は塗膜工程後カレンダ処理することができる。
【0060】
上記方法の好ましい実施形態によると、遷移金属錯体/塩の付加と同時に、キレート剤及び/又は錯化剤/配位子を、好ましくは遷移金属含有量を超えて(モル基準で)塗料配合物に加える。ここで、キレート剤は水溶液又は水分散液として加えられ、溶解度/分散性を高め、触媒系又はその成分の安定性を高めるために、1又は複数の添加剤(可溶化原理を用いる共溶媒)を含むことができる。
【0061】
さらに、本発明は、塗料用の添加剤としての、オフセットインクの重合性又は架橋性成分を固定するための触媒の使用に関する。このような触媒は、優先的に、水溶性又は水分散性遷移金属錯体/塩であり、上に述べたような特性を有する。
【0062】
本発明のさらなる実施形態は、従属項で述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明の好ましい実施形態の添付図面を、図1から10に示す。
驚いたことに、ラボでの印刷条件下で(プリューフバウ試験機、湿し水なし)、本出願人から商標名MagnoStarで入手可能な普通紙上に印刷されたインク層(市販のBlack Tempo Max、BTM、スイスのSICPA社から入手可能)の化学的乾燥時間の著しい低減が可能であることが証明された。その目的のために、水分散性のマンガンベースの触媒ドライヤ錯体Mn−(2−エチルヘキサノアート)が、第2の配位子bpyで優先的に満たされて、そのトップコートに均質的に混入された。0.2重量%Mnの錯体Mn−(2−エチルヘキサノアート)だけを用いた場合、印刷したBTMインクの化学的乾燥時間(親指テストThumb testにより評価)は4時間(ブランクblank)から2時間(=50%)まで低減した。高速セッティング中間層がある場合には、乾燥時間は、さらに約1時間低減し、3時間(ブランク)から1〜2時間になった。bpyを付加すると、結果はさらにもっと改良された。つまり、0.1重量%Mnでモル比bpy/Mn=6のとき、化学的インク乾燥時間0.5〜1時間(=12.5〜25%)が達成された。0.2重量%Mnでbpy/Mn=3のときには、0.5時間(=12.5%)もの低い化学的インク乾燥時間を達成することさえできた。
【0064】
実験の詳細
材料
化学的ドライヤ錯体
−Nuodex Web Mn9:Mn−(2−エチルヘキサノアート)錯体として9,0±0.2重量%のマンガン、及び水性系に適合させるための特殊な界面活性剤混合物を含む。Elementis Servo、Delden、NL(オランダ)から市販されている。
−Drymax(Elementis Servo、Delden、NLから市販されている):付加的なマンガンドライヤ促進用に使用されるキレート剤。2,2’−ビピリジル(bpy、2−エチルヘキサノアートの次にマグネシウムに対して超活性な配位子)約30重量%と、N−メチル−2−ピロリドン最大約60重量%(不活性材料、bpyの水溶解度を増すための共溶媒)を含む。
【0065】
紙基材
A:250gsm見返し品質用のトップコート層なし標準MagnoStar紙。トップコート層なしのこの基材の表面塗膜層は、乾燥重量100部のかなり粗い炭酸カルシウム(CaCO3)、合成ラテックスバインダ10部、加工でんぷん1部、PVA1部、CMC1部、滑剤1部を含んでいた。
B:250gsm見返し用、トップコートなしの、特定の多孔性中間層を有する実験用製造紙(experimental mill produced paper)。トップコート層なしのこの基材の表面の塗膜層(トップコートの塗布後多孔性中間層として作用する)は、微細(トップコートほど超微細でなく、標準ほど粗くはない)炭酸カルシウム(CaCO3)100部、スチレンブタジエン合成バインダ10部、滑剤1部、加工でんぷん1部、PVA1部、CMC1部を含んでいた。
【0066】
紙トップコート
乾燥重量100部の超微細炭酸カルシウム(CaCO3)、合成ラテックスバインダ10部、加工でんぷん1部、PVA2部、滑剤Caステアレート1部、粘度挙動を固定するためにさらに必要な合成増粘剤を例えば0.05部。
【0067】
印刷インク
−Tempo Max(SICPA、CH(スイス))、黒。大抵の市販のインク同様、組成及び不飽和値の詳細は入手不可能。酸化力的に多少「速乾性」のモデルインクとして選択。おそらく、なんらかのドライヤ錯体を限られた量含む。
−Bio2(BASF/K&E、DE)、シアン:特別に調合された、紙インク相互作用研究用の100%生物学的モデルインク。組成:インク顔料17部+バイオバインダ60部、アルキド樹脂9部+バイオオイル9.5部+特有の添加剤2部+乾燥剤2.5部+鉱物油0部。生物学的部分の組成及び不飽和値の詳細は入手不可能。
【0068】
トップコートへのドライヤ錯体混入/トップコート塗布
室温で約10分間、小型の開放容器中でよく撹拌したトップコート剤に(マリンタイプ撹拌器)、Nuodex Web Mn9と(必要に応じて)Drymaxを少量、同時にゆっくりと(二つの給送装置を介して)加える。金属と配位子を要望どおり加え、具体的なデータは表中に示される。
活性ドライヤ錯体が八面体に囲まれたモノメタル/配位子錯体と仮定される場合、1モルのマンガン金属に対し1から(最大)8モルのbpyが可能であろう。しかしながら、錯体が1部分内にいくつかの金属原子を有する多核錯体であることも推測される。
錯体付加後塗料が一定の濃厚化挙動を起こす場合には、例えばPolysalzタイプの、なんらかの付加的分散剤を加えれば十分である。
トップコートと混入されたドライヤを、デュアルコートされたA又はB基材の片側上に、使用可能なバード(Bird)塗布器又はラボスケールの試験的コーターで塗布した。塗布されたトップコートの量は、層厚約11〜12μmで約15g/m2/面としてテストされた。これはこれらのトップコート用の製紙業務によく合っている。
【0069】
ラボ印刷方法
GTM1002に従い、(混入されたドライヤ有り及び無しの)塗膜紙のサンプルを調整した後、印刷インク(黒の)Tempo max又は(青の)Bio2を、ESTM2302、多色インクセッティング、11−2−2004の改訂0の指示に従い、プリューフバウ印刷装置で紙試料上に塗布した。それは、インク0.24g、印刷圧1000N、印刷速度0.5m/s、アルミニウム印刷リールで、標準ロング試料キャリヤを用いることを意味する。
注意:印刷されたインク層厚は約1〜2μmと測定された。
【0070】
分析的乾燥試験方法
分析的測定はすべて、調整済みのラボにおいて調整済みの紙(GTM 1002)に対し行った。次の分析的乾燥試験方法を選び、適用した。
印刷されたインクの物理的「セッティング」時間:
セットオフテスト(ESTM 2301):紙試料をプリューフバウ印刷装置で標準インク(Huber 520068)を用いて印刷する(100%)。数回の比較的短い時間間隔をおいて(15、30、60、120秒)、印刷した試料の一部を同じブランク紙に対して反対にする(表対裏)。カウンタ紙上の各領域に転写されたインクの密度を測定し、時間に対しプロットした。この方法は、枚葉給紙のオフセット印刷用に用いられる紙の(物理的)セットオフ(パイルシミュレーション)の測定を記述するために記録される。
印刷されたインクの化学的乾燥時間:
親指テスト(Thumb test)、(非標準):工業用印刷の(及び塗料試験領域における)一般的な実践に沿って、数回の時間間隔(15、30、60、90・・・分)で、親指を(肌の油脂の影響を避けるために)(特殊な)家庭用ティッシュペーパーで覆って、しっかりと(しかし、常にほぼ同じ力で)押し付け、同時に、印刷されたインク層内で90°を超えて回す。完全に濡れた段階の場合、インクはすべてふき取られ、紙基材上に明らかな白いスポットが残る。完全に化学的に乾燥したインクの場合には、何の損傷も見られない。1人の同じ操作者が一連の操作のすべてを実行することが好ましい。親指テストは化学的及び物理的乾燥の組み合わせの指標となるということも注意するべきである。しかしながら、親指テスト結果へ主に寄与するのは化学的乾燥であることが示される。
【0071】
結果
この報告における検討を、三つの主な部分に細かく分ける。
【0072】
パートI:インクに付加した、使用したマンガンドライヤ製品Nuodex Web Mn9の固有の触媒インク乾燥活性の前評価
【0073】
この目的のために、市販のMagnoStar 250gsm紙上に印刷した時の、Nuodex Web Mn9製品[Mn−(2−エチルヘキサノアート)の形で0.1及び0.5重量%Mn]に付加的に混ぜるか混ぜないか(そのまま)した、Black Tempo Max印刷インクの物理的及び化学的乾燥能力を決定した。さらに、よく乾燥させた市販の紙に比較して、このMagnoStar品質の乾燥挙動(及び一定方法でのその加工能力)をランク付けするため、250gsmの市販の紙基材、紙1、紙2及び紙3を、比較用印刷基材として評価した。
【0074】
Black Tempo Maxインク「そのまま」で印刷した、複数の市販の250gsmWFC(非木材塗膜の)紙の親指テスト分析を実施した。異なる紙基材の挙動の間に目覚ましい差が見られた。紙1は速乾性を示し、Magnostarは比較的遅い乾燥挙動を示す。結果を表1にまとめる。
【0075】
Black Tempo Maxインクに0.1重量%Mn及び0.5重量%Mnをそれぞれ添加して印刷した、複数の市販の250gsmWFC紙の親指テスト分析を実施した。特にMagnoStarの乾燥挙動の改善がはっきりと観察された。結果をまた表1にまとめる。
【0076】
パートII:化学的インク乾燥能力を高めるため、紙のトップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体を混入。
【0077】
Nuodex Web Mn9のようなマンガン錯体を定量(乾燥重量塗料配合と比較した一次ドライヤ金属の重量%として示すと、0、0.05、0.1及び0.5重量%Mn)、トップコート組成中に混ぜた(上記参照)。処理したトップコートを250gsm見返し用の中間塗膜紙基材:A及びBにバード(Bird)塗布した。見返しをラボ印刷し、乾燥挙動をテストした。
【0078】
結果は以下のとおりである。:
Mn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体を様々な量混入した、MagnoStar250gsmに、Black Tempo Maxインクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。触媒濃度増加に対する化学的乾燥速度の増加を簡単に認識できた。結果を表2にまとめる。
【0079】
Mn−(2−エチルヘキサノエアート)触媒ドライヤ錯体を混入した、「高速セッティング」MagnoStar 250gsmに、Black Tempo Maxインクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。結果を表2にまとめる。
【0080】
パートIII:化学的インク乾燥能力を高めるため、紙のトップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)触媒ドライヤ錯体を混入。
【0081】
パートIIの補足で、このパートにおいては、Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)ドライヤ錯体に意図的に「その場で(in situ)」反応させるために、Mn−(2−エチルヘキサノアート)錯体の次に、複数の超過量の配位子bpy(Drymax製品等の)をトップコート中に混ぜた。印刷インクBlack Tempo Maxの次に、Bio2型インクもラボ印刷で使用した。
【0082】
結果は以下のとおりである。:
bpyなしのMn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体を混入した、「標準」MagnoStar 250gsmに、Black Tempo Maxインクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。結果を表3にまとめる。
【0083】
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)(0.1重量%Mn)触媒ドライヤ錯体及び、異なる超過量のbpyを混入した、「標準」MagnoStar 250gsmに、Black Tempo Maxインクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。ここでは、bpyの存在量/超過量が増加すると化学的乾燥速度が劇的に増加することが明らかとなり、その結果を表3にまとめる。
【0084】
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)(0.2重量%Mn)触媒ドライヤ錯体及び、異なる超過量のbpyを混入した、「標準」MagnoStar 250gsmに、Black Tempo Maxインクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。その効果は表3においてより一層明らかで、表4からわかるように、0.2%Mnと1.68%bpyで、乾燥時間は0.5時間未満まで落ちている。
【0085】
Bio2インクを用いて印刷した場合、非常によく似た結果が得られる。
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)(0.1重量%Mn)触媒ドライヤ錯体及び、異なる超過量のbpyを混入した、「標準」MagnoStar 250gsmの見返しに、Bio2インクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。結果を表3にまとめる。
【0086】
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)(0.1重量%Mn)触媒ドライヤ錯体及び、異なる超過量のbpyを混入した、「標準」MagnoStar 250gsmの見返しに、Bio2インクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。結果を表3にまとめる。
【0087】
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)(0.2重量%Mn)触媒ドライヤ錯体及び、異なる超過量のbpyを混入した、「標準」MagnoStar 250gsmの見返しに、Bio2インクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。結果を表4にまとめる。
【0088】
考察
結論パートI:使用したマンガンドライヤ製品Nuodex Web Mn9の固有の触媒インク乾燥活性の前評価
【0089】
市販の「クラス最高の」250gsm WFC紙のいくつかに、Black Tempo Maxインク(そのまま、又は市販のマグネシウムドライヤを添加して)を印刷し、乾燥/加工特性に関する、親指テストの結果を表1に表す。相当するMagnoStar 250gsm(市販完成品)乾燥テストの結果も含まれている。
【0090】
【表1】
【0091】
以下の結論を導き出せる:
−有効成分Mn−(2−エチルヘキサノアート)錯体を有する市販のドライヤ製品Nuodex Web Mn9は、水性塗料タイプの化学的乾燥用に特別に開発されたものであるが、インクに加えて、化学的乾燥用にも有効である。
−Black Tempo Maxインク「そのまま」で印刷した、MagnoStarの化学的乾燥時間は、紙1(係数>2.0)、紙2(係数>1.5)よりもかなり長く、紙3(係数>1.0)よりもいくらか長い。
−紙2以外の、関係するすべての紙に対して、一般に印刷時印刷業者が行うように、付加的に印刷インクにマンガンドライヤ錯体を加えることにより、化学的インク乾燥時間をかなり短縮できる(紙1に対しては最大50%まで)ようである。
−MagnoStarに関しては、印刷インクにマンガンドライヤ錯体(0.1重量%Mn)を添加したものでさえ、その化学的インク乾燥時間は、インク「そのまま」を用いて印刷した、紙1の化学的インク乾燥時間に匹敵できない(係数1.5だけ、遅い)。これらの条件下での同様のMagnoStarの化学的インク乾燥時間は、インクそれ自体を用いて印刷した時の、紙2の乾燥時間には等しく、紙3の乾燥時間よりは良い。
−速い化学的インク乾燥挙動が良い加工能力にとって不可欠であるとすれば、MagnoStarの加工能力を「クラス最高の」競争紙である紙1まで高めるためには、特別な対策を必要とすることは明らかだと思われる。注意:紙1は、良好な乾燥を示す一方で、ピッキング(MagnoStarの4xに対し2xしかフリーでない)や低級な印刷光沢に対しては非常に敏感である。
【0092】
結論パートII:化学的インク乾燥能力を高めるため、紙のトップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体を混入。
【0093】
Mn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体を異なる濃度でトップコートに混入した、カレンダ未処理の「標準」250gsm MagnoStarに、ラボでBlack Tempo Maxインクを印刷して行った親指テストの結果を、表2にまとめる。
【0094】
【表2】
【0095】
以下の結論が導き出せる:
−マンガンドライヤ錯体を添加しない(カレンダ未処理の)「標準」MagnoStarの、ラボでの化学的インク乾燥能力は、市販の250gsm (カレンダ処理済み)MagnoStarの乾燥能力より若干速い(表1参照)。
−標準的な濃度範囲0〜0.2重量%Mnにおいて、「標準」MagnoStarの、ラボでの化学的インク乾燥能力は、4時間(ブランク)から2時間(=50%残余乾燥時間)へと最も改良された。
−タイプBの「高速」中間層を塗布した、「高速セッティング」MagnoStarのラボ結果の場合、同じ濃度範囲0〜0.2重量%Mnにおいて、化学的インク乾燥能力は、3時間(ブランク)から1〜2時間に改良され、実際にも、約50%の乾燥時間の改良がみられた。明らかに、絶対的な意味での「高速」中間層Bを塗布することにより、関係するマグネシウム濃度の全範囲に渡って、化学的インク乾燥能力は1時間改良された。
【0096】
結論パートIII:化学的インク乾燥能力を高めるため、紙のトップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)触媒ドライヤ錯体を混入。
【0097】
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)触媒ドライヤ錯体を異なる濃度でトップコートに混入した、「標準」250gsm MagnoStarに、Black Tempo Maxインク又はBio2インクをラボで印刷した時の親指テストの結果を、表3(0.1重量%Mnと異なる割合bpy/Mn)及び表4(0.2重量%Mnと異なる割合bpy/Mn)にまとめる。
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
以下の結論が導き出せる:
−印刷した、0.1重量%Mn、Black Tempo Maxの化学的乾燥能力は、第2の配位子bpyを共に付加したことで、モル比(mol/mol)bpy/Mn=5.9のとき、同じく4時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=12.5〜25%残余乾燥時間)へとさらに改良された。同様に、0.2重量%Mnの高濃度及び第2の配位子bpyの共付加においては、印刷したBlack Tempo Maxの化学的インク乾燥能力はさらに改良され、モル比(mol/mol)bpy/Mn=3.0で、3〜4時間(ブランク)からたったの0.5時間(=12.5〜16.7%残余乾燥時間)となった。
【0101】
これらの結果を図2のグラフにまとめる。図2は、トップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)ドライヤ錯体を混入した「標準」MagnoStarに、実験室で、Black Tempo Maxインクを印刷したときの化学的インク乾燥能力を、bpy含有量の関数として示す。
【0102】
図3では、トップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)触媒ドライヤ錯体を混入した、試験したすべての「標準」MagnoStar紙に対して、標準的なセットオフテスト結果(=初期の物理的インクセッティング)が、前記ドライヤ錯体の存在によってそれほど影響を受けないことが実証された。このことは、実際の条件下での最適な印刷能率にとって、例えば印刷機の最小付着物に対して、重要である。
【0103】
0.1重量%Mnでの、印刷したBio2インクの化学的乾燥能力は、第2の配位子bpyを共に付加したことで、モル比bpy/Mn=20.1では、6時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=8.3〜16.7%残余乾燥時間)へとさらに改良された。同様に、0.2重量%Mnの高濃度及び第2の配位子bpyの共付加では、印刷したBio2の化学的インク乾燥能力はさらに改良され、モル比bpy/Mn=3.0で6時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=8.3〜16.7%残余乾燥時間)となった。
【0104】
これらの結果を図4のグラフにまとめる。図4は、トップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)ドライヤ錯体を混入した「標準」MagnoStarに、Bio2インクをラボで印刷したときの化学的インク乾燥能力を示す。
【0105】
結論
−塗料に混入した場合、水性塗料系用のMn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体は、WFC枚葉給紙用紙上に印刷されたインク層の化学的乾燥に対しても有効である。
−印刷インクにマグネシウムドライヤ錯体を付加しても(印刷業務における標準的な「こつ」)、MagnoStarの化学的インク乾燥時間は、インク「そのまま」で印刷した他の用紙の化学的インク乾燥時間には匹敵できない(係数1.5だけ、遅い)。
−トップコートに標準濃度範囲0〜0.2重量%Mnを混入した場合、「標準」MagnoStarのラボでの化学的インク乾燥能力は、4時間(ブランク)から2時間(=50%残余乾燥時間)へと最も良く改良された。
−0.1重量%Mnをトップコートに混入したとき、印刷したBlack Tempo Maxの化学的乾燥能力は、第2の配位子bpyを共付加したことで、モル比bpy/Mn=5.9のとき、同じく4時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=12.5〜25%残余乾燥時間)へとさらに改良された。同様に、より高い濃度0.2重量%Mn及び第2の配位子bpyの共付加では、印刷されたBlack Tempo Maxの化学的インク乾燥能力はさらに改良され、モル比bpy/Mn=3.0で3〜4時間(ブランク)からたったの0.5時間(=12.5〜16.7%残余乾燥時間)となった。
−トップコートに0.1重量%Mnを混入して、印刷したBio2インクの化学的乾燥能力は、第2の配位子bpyの共付加で、モル比bpy/Mn=20.1のとき6時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=8.3〜16.7%残余乾燥時間)へとさらに改良された。同様に、より高い濃度0.2重量%Mn及び第2の配位子bpyの共付加では、印刷したBio2インクの化学的インク乾燥能力はさらに改良され、モル比bpy/Mn=3.0で6時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=8.3〜16.7%残余乾燥時間)となった。
【0106】
パートIV:さらなる実験結果
顔料としてのシリカゲルを組み合わせて塗料中に化学的乾燥助剤を用いる可能性を評価するため、及び、裏移り防止粉末及び/又は赤外乾燥及び/又はOPニスを用いずに、本発明による紙を使用する可能性をテストするために、さらにより詳細な分析を行った。
【0107】
裏移り防止粉末は、固化防止剤とフロー剤を加えた純粋な食品用でんぷんの混合で、広い粒子径範囲(〜15から〜70μm)で使用可能である。でんぷんは、タピオカ、小麦、とうもろこし、又はジャガイモであってもよい。印刷表面一体にまくと、それは、基材の前又は印刷側が、基材の後ろ又は印刷されていない側に密に接触することを防ぐ。でんぷん粒子がスペーサとして働くため、空気が側面から、及び基材の前と後ろの間から入ることができる。インク面を横切るこの空気の自由な流れは、表面酸化や架橋結合により「乾燥し」又は硬化するインクが、空気中の酸素に露出することを可能にする。その後、インクは硬化し、その最終的な酸化及び架橋結合状態となる。
【0108】
オフセットパウダーは、言うまでもなく、それらの最終的な特性に達するために酸化/架橋結合を必要とするインクを用いる加工(converting)塗布において、非常に重要な役割を果たす。オフセットパウダーは非常に有益であるが、それらは、不利な特性を与える可能性がある。完璧な外観が必要とされる場合に印刷された基材がさらに加工される塗布においては、オフセットパウダーの使用は適切でないかもしれない。例えば、透明フィルムへの接着剤を用いてラミネート加工されることになる印刷された基材の場合である。塗布は、光沢及び光学的に完璧な外観が必要なラベルであるかもしれない。ふりかけたオフセットパウダーは、まばらなほこり又は他の汚染物質のように作用する。つまり、それは、ラミネートに表面欠陥を生じ、最終的な外観を著しく損ねるだろう。表面欠陥は、ラミネーションの陥没(entrapped)となり、「丘と谷」外観の一因となる。これは、非常に小さなスケールであるかもしれないが、しばしば、厳重な検査で不十分とされる外観をもたらすには十分である。オフセットパウダーの使用が適切でない他の塗布は、イン・モールドラベル処理用のラベルを作るために使用される印刷された基材の上である。この処理では、紙又はプラスチックの基材上に印刷されたラベルが、成形工程中、射出又はブロー成形容器の一体部分となる。よくある「ノー・ラベル」外観に対しては、その光学特性は、消費者がどのような環境下でもラベルが見えないようでなければならない。オフセットパウダー、ほこり又はいかなる同様のものの小さいしみが、このようなラベルの外観を損ね、不満足にする。
【0109】
従来の上質紙上では、塗料は、次の表に与えるような配合で塗布され、基材は、塗膜重量11gsmのプレコート層で両面を塗布され、トップコート層も同じく11gsmであった。
調査したプレコート層の配合を表5に示し、トップコート層の配合と、トップコート層がプレコート層にどのように結合されるかを表6に示した。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
すべての塗膜はスクラッチがなく作業性が良好で、紙の光沢能力も高く、ニップ荷重200kN/mで紙の光沢度(55%DIN75°)に達した。
【0113】
トップコーティングに使用されるシリカの量が多ければ多いほど、通常、紙の光沢は低くなる。酢酸マンガンの付加は紙の光沢にさほどの影響を与えない。プレコーティングにシリカを使用することは、トップコートされた紙の光沢の若干の低下につながる(カレンダ処理前)。
【0114】
他の触媒系を上回る多くの利点ゆえに、優先的に、Mn(II)アセテートが使用されるが、このようなマンガン錯体の使用は、既に上で示したように、本塗料に限定されることなく、他のいかなる塗料にも拡大適用できる。酢酸マンガン系は、においがなく、低価格で、より容易に水に溶ける塩であり、輝度/色合いへの影響がより少なく、環境/健康への問題がない。実のところ、このような系の十分な触媒活性のために、Mn(II)とMn(III)を塗料(トップコート又はトップコートの真下にある第2の塗料)に同時に有することが有利であると思われる。Mn(II)及び少なくともいくらかのMn(III)アセテートが存在する場合には、最適活性が達成される。同時に、II型の次に、必要なMn(III)アセテートを本質的に導入し、最小量の、通常茶色を帯び、実際にはかなり水に不溶のMn(III)型を作ることのできる、1つの有利な方法を、以下に示す。
【0115】
a)Mnイオンを自由な触媒種として十分に利用できるように保つため、0.1pphのポリザルツ(Polysalz)を添加。もし、この成分を加えなければ、Mnイオンの最もおそらく高い価数が、塗料中の炭酸カルシウム分散を強く干渉し、又は抑制され、二重層との相互作用を介してそれらを不安定にし/凝固し、そのため塗膜の品質も低下する。
b)Mnアセテートは、トップコートの組成に最後の成分としてゆっくりと加える。ここで、大体pH=8.5〜9で始めるのが好ましい。最大10のより高いpHが可能で、その結果(いくらかのMn(III))は十分ではあるだけでなく、Mnアセテートの溶解挙動がより良い/より速い。
c)Mnアセテートの溶解後(視覚的判断)、再びpHを最大約8.5に調整することが好ましい(溶解している酸がMnアセテートと反応すると、pHは通常下がる)。
d)最後に、触媒サイクル用にすべて利用可能にするため、Mnアセテートを分子レベルまで完全に溶かすために、さらなる混合時間(本応用では通常30分)をもつことが有益であると思われる。
【0116】
Mnアセテートは好ましくは、トップコートの合計乾燥重量中の重量0.1〜0.6%マンガン(=II+III)存在する。最も好ましくは、0.2〜0.4%存在することである。Mn(II)アセチルアセトナートのような、他のMn−塩/錯体でも可能であるということも注意すべきである。Mnアセテートの単独の触媒活性は、様々な対策によって強化及び/又は支持することができる。つまり、A)二次ドライヤ及び/又は補助ドライヤとの組み合わせ、B)関連(responsible)配位子との組み合わせ、例えば、bpyと組み合わせると、活性は非常に高く、Nuodex Web Mn9/bpyのような系にほぼ等しくなり、他の配位子と組み合わせると、その活性は魅力的なレベルまで著しく増加させることができる。C)Liアセチルアセトナート等の系の添加、D)必要な酸素を、拡散限界なしにスポットで直接有するために、過酸化物(適当に安定化しているが利用可能な形で)を添加。
【0117】
無鉛ガソリン(white gas)試験及び湿潤インク摩擦(wet ink rub)試験の結果をそれぞれ示す、図5及び6からわかるように、基準トップコートでプリコート中にシリカを有する紙IID_7は、ラボでの化学的乾燥時間が最も遅いことを示している。トップコート中にシリカを有すると、化学的乾燥時間は3又は2時間(シリカの量をより多くする場合)に達することが可能である。紙IID_11は、8%シリカと組み合わせて、酢酸マンガンを用いたものであるが、(3時間ではなく)2時間というさらなる改善につながった。この場合、また、試験紙上のドット(テールより決定的)は3から4時間で乾燥する。シリカを使用することで、湿潤インク摩擦挙動(ESTM 2303)もインクの耐毛羽立ち性(GTM 2312−1)も改善される。
完全を期すために、使用した試験の定義をここに示すことにする。
【0118】
無鉛ガソリン(white gas)試験(ESTM 2310):
無鉛ガソリン試験は、紙上に印刷された枚葉給紙オフセットインク被膜が化学的に乾燥するのに必要な時間を評価するために使用される。
定義:化学的インク乾燥:酸化重合/自家重合により、インクの不飽和植物性油脂の、一部から全部の架橋結合。
原理:1つの試料をプリューフバウ印刷装置で標準の市販インクを用いて印刷する。時間間隔を数回おいて、印刷した試料の一部を無鉛ガソリンと接触させる。無鉛ガソリンはインク被膜が完全に架橋結合されていない限り、紙上のインク被膜を溶かすことができる。無鉛ガソリンが、もはや、インク被膜を溶かさない時点で、このサンプルは化学的に乾燥したとみなされる。
装置:プリューフバウ印刷装置、アルミニウムプリューフバウリール40mm、プリューフバウ試料キャリヤ;Tempo Max Black(SICPA)、FOGRA−ACET装置
【0119】
サンプリングとテストピースの作成:無鉛ガソリン試験用に、少なくとも5cm長さの細長い一片を切り取る。その際:
1.プリューフバウ印刷装置の印刷ニップの圧力を800Nに調節し、
2.印刷速度を0.5m/sに調節する。
3.許容誤差0.005gでインクの重さを測り、インク量をプリューフバウ印刷装置のスタンプ部(inking part)に塗布する。
4.30秒間インクを広げ、
5.試料キャリヤにテストピースを固定し、
6.スタンプ部にアルミニウムプリューフバウリールを置いて、30秒間インクを写し取る。
7.インク付けされたアルミニウムプリューフバウリールを右側の(right)印刷ユニットにおき、
8.インク付けされたアルミニウムプリューフバウリールに接触させて(against)試料キャリヤをおき、印刷速度の電源を入れ、
9.印刷速度の電源を切って、
10.印刷時刻を記録し(例えば、無鉛ガソリン試験開始時刻)、
11.紙の坪量に相当する厚さのカードを選び、
12.少なくとも5cm長さの細長い一片を切り取り、
13.細長い一片の先端をテープで厚みカードに貼り付け、
14.FOGRA−ACET装置のパッドホルダにフェルトパッドを置き、
15.0.5mlの無鉛ガソリンをすべてガラスのシリンジを用いてポンプで注入し、フェルトパッド上に塗布する。
16.試験されるべき試料を具備した厚みカードをカードホルダに置き、
17.FOGRA−ACET装置を閉めて、直ちに、カードホルダに取り付けられた試験試料を具備する厚みカードを装置から引っ張り、
18.試料の化学的乾燥を評価する。
19.試料が完全に乾燥する(インク層の溶解がないことが見られる)まで、1時間毎にこの操作を繰り返す。
結論:印刷されたインク塗膜の化学的乾燥時間は、試験される試料上のインクを溶かすことのできない時点での時間である。化学的乾燥時間は時間で示される。
【0120】
湿潤インク摩擦試験(ESTM 2303)
目的:この方法は、完全に乾燥する前に、印刷後時間間隔を数回おいて、紙とボードの摩擦抵抗の評価を記述する。引用規格/関連する国際標準:GTM 1001:サンプリング、GTM 1002:調節のための標準大気、ESTM 2300:プリューフバウ印刷装置の説明と手順。関連する試験方法の説明:プリューフバウマニュアル。
定義:
−インク摩擦:剪断又は研磨等の機械的応力を受けると、たとえ、完全に乾いていても、インク層が損傷され、印刷された製品上のマーキングの原因となり得る。
−化学的乾燥:枚葉給紙オフセットにおける、重合反応によるインク被膜の硬化。
−湿潤インク摩擦値:印刷後、所定の時間の、湿潤インク摩擦試験中にカウンタ紙をマークしたインク量の大きさ。
原理:テストピースに、市販のインクを用いてプリューフバウ印刷装置で印刷する。時間間隔を数回おいて、印刷されたテストピースの一部をブランク紙(同じ紙)に対して5回こする。印刷の損傷と白紙上のマーキングを評価し、時間スケールに対してプロットする。印刷インクはTempo Max black(SICPA、CH)を用いた。
【0121】
ラボ手順:
1.印刷圧力を800Nに調節する。
2.許容誤差0.01gでインクの重さを測り、インクの量をプリューフバウ印刷装置のスタンプ部に塗布する。
3.30秒間インクを広げ(インクの分布時間は操作をより簡単にするため、60秒まで延長することができる)、
4.短い試料キャリヤにテストピースを固定し、
5.スタンプ部分にアルミニウムプリューフバウリールを置いて、30秒間インクを写し取る。
6.インク付けされたリールの重さを測定し(m1)、
7.インク付けされたアルミニウムプリューフバウリールを印刷ユニットにおき、
8.インク付けされたアルミニウムリールに接触させて(against)試料プレートをおき、テストピースを0.5m/sで印刷し、
9.試料が印刷された時刻を記録し、
10.印刷後、インク付けされたリールの重さを再び測り(m2)、インクの移動Itをグラムで決定し(注意:インク移動ItはIt=m1−m2より与えられ、m1は印刷前のインク付けされたリールの重さ、m2は印刷後の同じリールの重さである)、
11.プリューフバウインク摩擦抵抗テスター上の摩擦数を5に調整し、
12.プリューフバウピースカッターで、印刷された細長い一片に円形の一片を切り取る。
13.プリューフバウテストピースカッターの1つに接触させて(against)テストピースを押し付け、紙キャリヤ上に同じ紙のブランク紙の細長い一片を固定し、
14.印刷後規定の時間間隔をおいて、ブランク紙の紙と印刷された円形の一片をプリューフバウ装置上に向かい合わせて置き、摩擦を開始する(5回)。
15.印刷後、すべての規定の時間間隔に対して操作を再開し、紙の乾燥を、ブランク紙上のマーキング/印刷された紙の損傷の密度の関数として評価する。
【0122】
下の表は、印刷のために重さを測定されるべきインクの量と、インクの摩擦試験の実施が可能な、印刷後の時間の1例を与える:
グレード インク量 摩擦時間(分)
グロス 0.30g 15/30/60/120/480
シルク/マット 0.30g 30/60/240/360/480
【0123】
結果の評価:結果は、測定されたものと、視覚的に評価したものの両方である。視覚的評価:試験したブランク紙試料のすべてを、ブランク紙をマークしたインクの量の関数として、最良から最悪まで順序付ける。測定:カラータッチ(Colour Touch)装置を用いて、ブランク紙試料の色スペクトルを測定(光源紫外線排除)する。未試験のブランク紙の色スペクトルを測定。試験した試料の色スペクトルは、使用インクに特有の、確定した波長で吸収のピークを有する(これはインクの色である)。試験した試料と未試験の白の試料の間の、この波長における立体角反射率の差が、インク摩擦のしるしである。SICPA Tempo Max Blackを用いると、ピークの波長は575nmであり、
インク摩擦=(R試料−Rブランク)575nm
である。
【0124】
図7から9からわかるように、最も遅いインクセッティングは、プレコートにシリカを含み、シリカも酢酸マンガンも含まない基準トップコートの紙IID_7に見られる。トップコート中のシリカ含有量が増加すると、初期のインクセッティング挙動が速くなる。プレコートにシリカを使用することにより、シリカを用いないプレコートに比べて、セットオフが僅かに速くなる。短時間でも長時間でも、インクセッティング値は極端に小さい。すべての紙のオフセット適合性(ドライ)並びに多色繊維ピッキングレベルはかなり低い(オフセット適合性はほとんどの場合0、最良値は紙IID_7)。
【0125】
これらの実験で使用した具体的な化学的乾燥助剤は、Mn(II)(Ac)2・4H2OとMn(III)(Ac)3を含む酢酸マンガンである。この特定の遷移金属錯体は、非常に効果的な化学的乾燥助剤であり、シリカとの組み合わせで相乗効果を示し、トップコート又はプレコートに用いるための、一般的に有益な化学的乾燥助剤である点に留意されたい。
【0126】
印刷特性:
試験した紙(すべて135g/m2):市販の試験紙(CTP)、D6、D7、D8、D9、D10、D11、D12(すべて上述)
印刷条件:プリンタ:Grafi−Media(Zwalmen、NL)、プレス機:Ryobi 5色、インク色順に:Sicpa Tempo Max B、C、M、Y、印刷速度:11,000シート/時、セットオフ防止粉末:有り/無し、赤外線ドライヤ:無し
実施した試験:折り試験:クロス折り(1バックル折り、1ナイフ折り、湾曲なし)、湿潤インク摩擦試験、無鉛ガソリン試験、ブロッキング試験(セットオフ防止粉末)。試験時間:1/2時間、1時間、2時間、3時間、4時間、24時間、48時間超。
【0127】
ブロッキング試験結果:
D6 300%面積において極めて少量のマーキング
D7 ごくわずかなマーキング(D6よりは良い)
D8 300%面積においてごくわずかなマーキング(〜D6)
D9 マーキング無し
D10 マーキング無し
D11 300%面積においてごくわずかなマーキング(D6よりは少し多いが、CTPよりは少ない)
D12 300%面積においてわずかなマーキング(D6よりは少し多いが、CTPよりは少ない)
CTP マーキング
D8粉末有 マーキング無し
D11粉末有 マーキング無し
CTP粉末有 マーキング無し
【0128】
どの紙にもブロッキングは見られない。セットオフ防止粉末を用いて印刷した紙には、マーキングは全く見られない。最もマーキングの多い紙はCTPである。D9とD10(及びD8とD11も僅かに少ない程度で)には、マーキングは全く見られない:それらは、セットオフ防止粉末なしで印刷可能である。
【0129】
折り試験の結果:
折り試験は、バックルホルダーで行われた。ハリタ(Haletra)の印刷機とは対照的に、第2の折りに対する湾曲測定モジュールがないため、折りはやや厳密さに欠ける。折り試験は、0(可視的なマーキングは無し)から5(非常に強いマーキング)の指標を使って評価される。折り試験の結果を、表7にまとめる。
【0130】
【表7】
【0131】
折りでのマーキングの全般的レベルは、専門家(印刷業者)グループにより、非常に良いと評価された。1/2時間と∞(一週間)の間のマーキングの差は皆無かそれに近く、化学的乾燥の折り試験への影響は小さいことを暗示するであろう。
【0132】
湿潤インク摩擦の結果:
湿潤インク摩擦試験を、印刷したシート、300%面積B、C、Mに行った。この試験の結果を図10にグラフでまとめる。すべての紙が、全般的に非常に良好な湿潤インク摩擦レベルを示す。
最も良い紙はD11、その後に、D7、D8、D9とD10が続く。D6、D12及びCTPはマーキングと似たレベルである。
【0133】
無鉛ガソリン試験の結果
印刷したシート、300%面積B、C、Mに、無鉛ガソリン試験を行った。結果を表8にまとめる。
【0134】
【表8】
【0135】
最も速い紙はD9とD10で、1/2時間後に乾燥する。最も遅い紙はCTPで、その後にD6が続く。
【0136】
この実験部分から次の結論を導き出すことができる:
−D9とD10は、セットオフ防止粉末なしで印刷可能である。
−D7、D11も、セットオフ防止粉末なしでも印刷可能である(臨界領域に少しだけマーキングがある)。
湿潤インク摩擦試験に対しては、そのレベルは非常に良いが、D11、続いてD7とD8が最も良い結果を示した。
【0137】
他の方法はドライヤ系の化学的又は物理的固定化である。シリカと特にサイロイド(Syloid)C803のようなシリカゲルの巨大な内部細孔表面に、上述の触媒ドライヤ系を化学的に固定することが可能である。実際に、適切な有機シロキサン化合物が、シリカの表面で、水酸基に化学的に固定されることは可能であり、SB2のような配位子がこの固定されたシロキサン化合物と化学的に反応でき、最終的に一次金属ドライヤ塩又は錯体(例えば、[Mn(acac)3]や[Mn−アセテート])が、配位結合によりこの固定された配位子に結合することができる。
【0138】
下記のような利点がある。:
−ドライヤ錯体の最終的な有毒性をより少なく抑える
−最終的な変色をより少なくするか完全に抑制する
−湿し水がある場合の(工業的印刷処理で)、ドライヤの不活性化を場合により少なくできる。
【0139】
他の方法は、シリカ又は他の鉱物の巨大な内部の細孔系に、液体ドライヤ系を物理的に吸収することである。高い毛管力の存在により、いわゆる支持液相触媒(SLPC)としてのそれらの挙動は、上記化学的に固定された変異体に等しく、同じぐらい活性であるが、著しく安い。
【0140】
上述した実験のすべては、説明のためだけのものであり、添付の請求項に定義された範囲を制限するために用いられるべきでないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】触媒インク架橋結合の化学的プロセスの概略図である。
【図2】トップコート中にMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)ドライヤ錯体を混入した「標準」MagnoStarに、ラボで、Black Tempo Maxインクを印刷して実施した親指テストによって決定された化学的インク乾燥能力を、異なるMn含有量(Mnなしの基準と0.1及び0.2重量%Mn)に対して、金属に対する配位子のモル比の関数として示した図である。
【図3】Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)触媒ドライヤ錯体を混入した、「標準」MagnoStar 250gsm見返しに、Black tempo Maxインクを印刷し、0.1及び0.2重量%Mn、例えば異なる超過量bpyで行ったときのセットオフテストの結果を、金属に対する配位子のモル比の関数として示す。
【図4】トップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)ドライヤ錯体を混入した「標準」MagnoStarに、Bio2インクをラボで印刷したときの親指テストによる化学的インク乾燥能力を、異なるMn含有量(Mnなしの基準と0.1及び0.2重量%Mn)に対して、金属に対する配位子のモル比の関数として示す。
【図5】カレンダ処理した紙の無鉛ガソリン試験結果である。
【図6】カレンダ処理した紙の湿潤インク摩擦抵抗試験結果である。
【図7a】カレンダ処理した紙のトップサイドに対するセットオフ値を示す。
【図7b】カレンダ処理した紙のワイヤーサイドに対するセットオフ値を示す。
【図8a】カレンダ処理済紙のトップサイドに対する多色インクセッティング値を示す。
【図8b】カレンダ処理済紙のワイヤーサイドに対する多色インクセッティング値を示す。
【図9】カレンダ処理済紙に対するオフセット安定性及び多色繊維ピッキング(MCFP)を示す。
【図10】カレンダ処理済紙に対する湿潤インク摩擦試験結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に枚葉給紙型石版オフセット印刷紙用の塗料、並びにそのような塗料を塗布された紙、および基材にそのような塗料を塗布する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングされた非木材ファインペーパーの1つの重要な用途は、枚葉給紙型石版オフセット印刷工程の分野である。この市場においては、製造工程にかかる時間を短縮し、取り扱いを容易にするため、再印刷及び加工(converting)に要する時間の短縮に向けての、はっきりとした動向がある。
【0003】
印刷業者たちは、紙がほぼ即座に(すなわち、30分以内で)再印刷され、且つ加工されれば、工程の効率がより高まるため、明らかに利益を受ける。最近の印刷業界におけるワークフローは、完全にデジタル化され、印刷工程そのものがそれをできるという前提で、一連の印刷ジョブ(例えばCD挿入物)の同日処理が可能となっている。全工程のスピードアップを妨げている、一連のワークフローにおける唯一の要件は、インク紙の相互作用、すなわち、加工前の十分な乾燥である。ゆえに、インク乾燥時間が、全体の枚葉給紙型石版オフセット印刷工程における、ネック、あるいは速さを決定する工程であると言うことができる。
【0004】
加工にかかる時間を短縮するには、印刷されたインクの、適切な物理的乾燥要件と十分な(しかし必ずしも100%完成されたものである必要はない)化学的乾燥要件を必要とする。
【0005】
数件の研究の結果によって実証されているように、物理的乾燥要件は、例えば、塗層の孔隙率及び/又は表面エネルギーを、下記のように調節することによって増加できる。
−印刷機に紙がある間の初期のインクセッティング(ink setting)があまり速すぎない。
−印刷直後のインクセッティング時間に対して、インクセッティングができるだけ速い。
【0006】
初期インクセッティングに対する誘導時間(induction period)が、印刷機の作業性に関する問題を避けるため、且つ、印刷面の質の低下を避けるために必要である。優れた印刷品質を得るために、表面エネルギーの調節もまた必要であると考えられる。
【0007】
枚葉給紙型オフセット石版印刷工程においては、使用される速乾性インクは、主としてインクカラー顔料、少なくとも部分的に不飽和及び/又は共役樹脂、乾性油(少なくとも部分的に不飽和及び/又は共役植物あるいは生物油)および(例えば、全ての流れ特性を調節するための)高沸点炭化水素(鉱物)溶剤から成る。塗工紙に印刷されると、適度に速くかなり選択的な、塗料且つ原紙への鉱物油相の浸透を伴った、初期の物理的な吸収工程が始まる。残った樹脂と乾性油リッチ相が、インク組成物の同時変化によって沈殿する。これによって、比較的高粘度となり、結果的に、(インクカラー顔料を含んだまま)多かれ少なかれ、塗布面上且つ幾分上部で固化(たびたび「セット」と称される)し、最適な印刷光沢性のための最良の条件を提供する。
【0008】
一般的に、このような「セット」インク膜は、十分に剛性があり、限られた機械的力に耐え、且つ、紙の第一の面の印刷が終わると非常に速く第二の面の再印刷を可能にする。しかし、通常、印刷した紙の印刷画像を損なうことなく、即座の「安全」なさらなる取り扱いあるいは加工(例えば、折りたたむ、切る)のために必要なその剛性(とりわけ、湿潤摩擦抵抗、耐摩耗性)は、十分に発現しない。実際、次の加工段階が実施できるまで、数時間から1日以上まで必要とされるだろう。印刷工程を経済面で有意義なものにするため、印刷業者にとって、この時間間隔を最小にすることが重要である。
【0009】
周知の方法は、いわゆる酸化重合あるいは架橋反応である、印刷されたインク層のさらなる化学的乾燥段階を開始することである。たとえば亜麻仁油などの植物性乾性油部分且つ樹脂部分の両方は、部分的に(好ましくは共役)不飽和脂肪酸をベースとする。空気中(あるいは堆積されたシート間)の酸素が、これらの脂肪酸且つ樹脂の二重結合に付加し、ヒドロペルオキシドをまず形成する。これらヒドロぺルオキシドの連続的な劣化の後、結果として生じる遊離基は非常に反応性が高い。これらの基は、他の脂肪酸分子を攻撃、付加し、新しい(より大きい)遊離基を形成する。これによって、重合が生じ、最終的に架橋されたインクネットワーク(ink network)が形成される。速度決定段階、ヒドロぺルオキシドの形成且つ劣化が、インク中の特殊な触媒種(いわゆる一次/二次/補助ドライヤあるいは乾燥剤)の存在によって目に見えてスピードアップする。コバルトのような遷移金属の脂肪酸塩(例えば、ナフテン酸塩あるいはオクト酸塩)を、印刷前にインクに添加することが可能である。これらの触媒は印刷インクに少量添加され、乾燥時間を100から200時間(非触媒状態)から1から10時間(触媒状態)に、目に見えて短縮する。このインクの架橋反応経路の複雑なメカニズムは、図1において概略的に示される。この化学的乾燥は、機械力への抵抗を著しく向上させる。
【0010】
インク系における以前の触媒ドライヤ系は、化学的乾燥挙動の速度を上げ、且つ消費者にとって使いやすい挙動を提供するために、例えば市販のアルキド樹脂、溶剤ベースの塗料にも適用される。塗料市場における最新の開発は、水溶性の塗料システムの開発である。塗布後の化学的乾燥挙動の速度も上げるために、特別に工夫された、水分散性の触媒乾燥系が開発された。事実、公知の一次/二次/補助ドライヤ系が、専用の乳化剤の組み合わせで改質され、十分に水分散性となった。
【0011】
現在の、印刷機の通常の作動方法は、ゆえに、触媒ドライヤ系を含む市販のインクを適用、及び/又はいわゆるドライヤ系を印刷前にインクに添加して、化学的乾燥速度をさらに向上させることである。これは、しかしながら、いくつかの欠点を有する。例えば、実際の問題は、いわゆる、インク系の「開放時間(open time)が目に見えて減少し、その結果、印刷する者が、1日に規則的に8時間稼働させた終わりに印刷機を洗浄するか、あるいは、たとえばオキシムのような、毒性の皮張り防止剤をインクに添加しなければならなくなる。別の欠点として、それぞれの紙の吸収性且つその他の印刷特性によっては、印刷する者が、標準的なインクだけではなく、ドライヤ系を添加した数種の(より高価な)印刷用インクを使用しなければならなくなることがある。
【発明の開示】
【0012】
本発明の目的は、ゆえに、印刷工程の向上、とりわけ、印刷された枚葉給紙をさらに処理、再印刷及び/又は加工するために待機しなければならない時間を短縮させることにある。
【0013】
本発明は、とりわけオフセットインクの重合性又は架橋性の成分を固定するための触媒系を含むオフセット紙用の塗料を提供することによって、上述の問題を解決する。
【0014】
このような触媒系は、あらゆる(水性)の塗料配合物に導入できる。しかし、オフセットインクの塗料内部へのはっきりとした物理的吸収を示す塗料構造に導入された場合、特に活性が高まる。標準的には、このように比較的速い、インクセット挙動は、塗料構造が、適当な孔径分布を有する高い空隙率を有している場合に得られる。好ましくは、ゆえに、トップコートは、WO2004/030917に記載されているような、速いセットオフ(set−off)を有するべきであり、その内容はこれに関連して盛り込まれている。好ましくは、インクセットオフは30秒で0.7未満、0.5未満又は0.3未満、好ましくは、0.15から0.5の間の範囲、あるいは120秒で0.1未満あるいは0.05未満である。
【0015】
触媒系は、1つ又は数種(混合物として)の触媒又は触媒的活性要素を有し、触媒系の全活性を支持する、添加物、配位子、塩等を結果として含む系として理解されるべきである。たとえば、触媒効果を、酸素あるいは水素-過酸化物をゆっくりと放出する化合物を添加物として提供することによって支持することができる。
【0016】
ゆえに、本発明の1つの目的は、請求項1の塗料、請求項32の紙、請求項34の方法及び36の使用である。
【0017】
従って、本発明の1つの重要な特徴は、驚いたことに、特に水分散性又は水溶性触媒の(一次)ドライヤ系を、優先的に、バランスの取れた配位子/キレート系及び/又は他の添加剤と混ぜ合わせて、例えば枚葉給紙オフセット用の非木材の塗布グレードのトップコート層に(又は、例えば、時に場合によりわずかな有色の触媒系を隠すためトップコートの裏側の中間塗層に)組み込むことができるという事実である。このようにして、ペーパーコート自体に固有の化学的乾燥能力を直接組み込んだ、新しいタイプのグラフィックコート紙を提供し、さらに、インク系自体の従来の化学的乾燥能力に取って代わることさえ可能となる。化学的インク乾燥時間を、とりわけ、以下の理由から、この方法によって目に見えて低減することができる。
−化学的乾燥プロセスは、まず、印刷されたインク層の両側で始まる。
−物理的吸収を経た適切な輸送(transportation)プロセスの場合、化学的に反応させられるべき不飽和インク要素(触媒がオフセットインクの重合性又は架橋性成分を固定している)は、紙の内側で触媒乾燥種と最も近接している。
−物理的吸収を経た適切な輸送プロセスの場合、そのとき鉱油は主に分離されているため、架橋結合されるべき系はより濃縮され、結果として反応速度が高められる。
−多孔質塗料系の酸素が触媒種の近くに存在するため、酸素の拡散限界が、化学的反応の誘導時間が最小であるために、最良の結果で最小限に抑えられる。
【0018】
当該技術による塗料の場合、化学的乾燥成分(生物オイルビヒクル及びインクの不飽和樹脂部分の架橋)は、仮にそうであったとしても、紙の表面によってそれほど影響を受けないように見える。驚いたことに、実のところは、紙のトップコートに適当な触媒系を組み込むことにより、インクに触媒系を組み込むよりも、ときに、化学的乾燥時間を低減することがある。それに加え、驚いたことに、このような塗料に加えられるドライヤ系は、たとえ紙が長時間(通常は半年から一年)保存されていようと、安定している。特にインクに加えられたドライヤと塗料に存在するドライヤの相乗的な組み合わせが、当該技術による系を用いて達成可能な値を大きく下回る乾燥時間につながる。触媒は塗料上に印刷されたオフセットインクの不飽和成分の酸化重合又は架橋結合を触媒する。特に、触媒は、オフセットインクの少なくとも部分的に不飽和及び/又は共役の脂肪酸及び樹脂部分を固定する。
【0019】
本発明の概念は、例えば、JP−60−161461に開示されたような、特定のものをシールするための塗料とは、完全に且つ基本的に異なることに留意されたい。この文献において、シーリング塗料は、塗布工程直後又は工程中に架橋結合される、特定のメラミン成分を含む。このような塗料で覆われるべき基材は、シーリング塗料の塗布より前に印刷されていることは可能だが、シーリング塗料によって形成された構造により、一般的な技術によっては、特にオフセット印刷を用いずに、その後の印刷を行うことは不可能であろう。これらの場合、触媒は、塗布工程の前及び工程中には、シーリング塗料中に存在するが、塗布直後には、塗布工程中及び工程直後のメラミン部分の架橋結合のために使い果たされるため、もはや存在していないだろう。従って、これにより、基底構造の表面を完全にシールする塗膜となる。
【0020】
ゆえに、このような種類の塗料は、下記の点で提案された塗料とは異なる。まず、触媒が、後で塗布されるオフセットインク用の触媒として働くことができない。オフセットインクを吸収できず、その結果、場合により残っている触媒を、例えばオフセットインクをシーリング塗料の表面に蒸着するために使用することは不可能だろうから、このような塗料を用いて形成された構造はオフセット紙として使用することができない。したがって、JP−60−161461で提供された触媒系は、p−トルエンスルホン酸であると記載されているが、まず第一にオフセット印刷インクを架橋結合せず、第二に塗料が凝固した後は利用できない。それに対し、本発明による塗料は、オフセットインク用の触媒系が印刷可能な構造で利用できる系の提供を目的とする。
【0021】
このような塗料に適用されるオフセット印刷インクの乾燥時間は、2時間を下回り、さらには1時間を下回るまで低減することができ、0.5時間以下の値になる場合もある。
【0022】
原則として、オフセット印刷インク用の添加剤として知られている1次ドライヤ系は、本発明の塗料にとっての触媒として利用できる。本発明の第1の好ましい実施形態において、触媒は遷移金属錯体又は遷移金属塩であって、遷移金属錯体又は塩の金属イオンは、優先的に、Ti、V、Cr、Ni、Mn、Fe、Co、Ce、Cu又はそれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0023】
遷移金属錯体は、1以上の遷移金属から形成される錯体であり、言い換えると、遷移金属の配位化合物である(例えば、Roempp Chemie Lexikon、Georg Thieme Verlag、1995のキーワード“Uebergangsmetallkomplexe”参照)。これは、一般化学、特に、それだけに限らないが、例えば無機触媒作用において、当該技術者に周知の用語であり、遷移金属とは、無機化学のIUPAC規則1.21により、不完全なd殻を持つ原子又は不完全なd殻をもつカチオンを形成することができる原子だと定義されている(例えば、Roempp Chemie Lexikon、Georg Thieme Verlag、1995のキーワード“Uebergangsmetallkomplexe”参照)。
【0024】
一般的に、触媒は以下の構造を持つことができる。
(M+n)(X−k)m
ここで、Mは、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びCeのような遷移金属群から選ばれ、X−kは、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、他のカルボン酸塩、ナフテン酸塩、EDTA、DTPA及びNTA、アミノ酸及び以下に示されるような中性配位子(k=0)又は帯電した配位子(k<>0)を表し、+nは金属の原子価状態、−kは帯電した配位子(X)の原子価状態、mは配位子の数である。
【0025】
すべてのXは等しくてもよいが、1つのMで数個の異なるXであってもよい。例えば、それらのいくつかは帯電されており、いくつかは帯電されていなくてもよい。そのため、例えば触媒は、帯電された配位子に加えて、2,2−ビピリジル、イミダゾール、ピラゾール、脂肪族及び芳香族アミン、1,10−フェナントロリン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン及び他の配位子系のような、有機配位子等の中性配位子、特に2以上の窒素、酸素、及び/又は硫黄原子を含む有機配位子を含むことができる。
【0026】
遷移金属錯体系用の配位子(上記X−k)としては、硫酸塩、カルボン酸塩(特にC6からC18の脂肪族カルボン酸塩)のような系及び/又はサリチル酸塩、EDTA、DTPA及びNTA、アミノ酸等のような酸化金属への電子移動を促進する系が可能である。例としては、アセチルアセトン(AA)、ジベンゾイルメタン(DBM)、ジピバロイルメタン(dpm)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、EDTA、例えばジソルビンE39、又はトライロンC(共にEDTA−Na4=エチレンジアミン四酢酸、四ナトリウム塩)、ジソルビンA40(NTA−Na3=ニトリロ三酢酸、三ナトリウム塩)のようなNTA、ジソルビンH40(HEDTA−Na3=ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、三ナトリウム塩)のようなHEDTA、ジソルビンEDG(EDG−Na2=エタノールジグリシネート、ジナトリウム塩)のようなEDG、ジソルビンE40(DTPA−Na5=ジエチレントリアミン五酢酸、五ナトリウム塩)のようなDTPA、ジソルビンE−Mn−13([EDTA・Mn]Na2)、ジソルビンE−Mn−6([EDTA・Mn]K2)のような系がある。
【0027】
さらに、例えば、SB1、SB2及びSB4のような以下に挙げるシッフ塩基配位子が可能である。ここで、SB1は、室温、エタノール中でのピリジン-2−カルバルデヒドと1,2−エチレンジアミン(1:1当量)の反応で得られ、SB2は、室温、エタノール中でのピリジン−2−カルバルデヒドと1,3−ジアミノプロパン(1:1当量)の反応で得られ、SB4は、室温、エタノール中でのピリジン−2−カルバルデヒドと1,3−ジアミノプロパン(1:1当量)の反応で得られる。
【化1】
【0028】
少なくとも上述の配位子SB2は、上述の3つの配位子のうちで好適であるが、このように、ここに記載した、つまり、紙塗料用の触媒のための配位子としての、特定の使用の範囲においてだけでなく、単独並びに例えばFe又はMnのような遷移金属との錯体であっても、十分に新しく独創的であるという点にも留意されたい。
【0029】
さらに、次のシッフ塩基配位子SB13とSB14が可能であり、ここでSB13(好ましくは)は、室温、エタノール中でのピリジン−2−カルバルデヒドと1,3−ジアミノプロパン(2:1当量)の反応を経て得られ、SB14は、室温、エタノール中でのサリチルアルデヒドと2−アミノメチルピリジン(1:1当量)の反応を経て得られる。
【化2】
【0030】
触媒系及び/又は塗料は、さらに、例えば還元性生体分子のような還元剤を含む。このような系は、遷移金属の触媒下で、自動酸化される。例えば、トコフェロール、ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、(ヒドロキシ)−ドーパミン、エピネフリン、アスコルビン酸、その誘導体及び組み合わせのような、モノ−、オリゴ−及びポリ−ヒドロキシ置換の(ヘテロ)−芳香族化合物が可能である。
【0031】
好ましくは、触媒系は還元性の成分を含まない。
【0032】
特に好ましいのは、Mn、Co、V、Fe又はその混合物からなる群より選ばれた遷移金属に基づく一次ドライヤ触媒であり、特にMn単独では、特に強力で効果的であることが証明された。
【0033】
上述の一次ドライヤ触媒系の効果は、付加的に存在するいわゆる二次ドライヤによって支持され得る。このような二次ドライヤは、例えば、塩、例えばカルボン酸塩、錯体等のようなイオンの形の、Pb、Bi、Ba、Al、Sr、Zrをベースとすることができる。
【0034】
もし、例えば、塩、例えばカルボン酸塩、錯体等の、同じくイオンの形のCa、Zn、Li、Kなどの補助的なドライヤが、さらに付加されると、触媒効果のさらなる又は別の支持が起こり得る。
【0035】
上述のように、触媒系の触媒作用は、触媒系の一部としての、遅い過酸化水素又は酸素放出化合物、好ましくは(塗膜した及び/又はリン酸塩をインターカレートした)無機酸素放出化合物の存在により支持され得る。(遅い)酸素(又は過酸化水素)(塗膜した)解除剤の例としては、例えば、持続放出特性が最大一年の、過ホウ酸ナトリウム一水和物、過ホウ酸ナトリウム四水和物、過炭酸ナトリウム、過酸化マグネシウム、ORC=リン酸をインターカレートしたMgO2(リジエイネシス製造)、例えばIxper 35M又はDrillox M(ソルベイ社製造)、Ixper 75C(ソルベイ社製造)、Ixper 60C(ソルベイ社製造)、PermeOx Plus(FMC製造)のような(過)酸化物マグネシウム又はカルシウム、過酸化亜鉛、カリウム単過硫酸塩である。
【0036】
別の好適な実施形態によると、触媒として使用される遷移金属錯体/塩は、カルボン酸及び/又はナフテン酸錯体である。カルボン酸錯体/塩の場合、効果的であることを示せたのは、炭素数2から18、好ましくは6から12のアルキル鎖を有するカルボン酸であり、置換されていても置換されていなくてもよい。特に適切な系は、2エチルヘキサノアート錯体、特にマンガン(2エチルヘキサノアート)錯体である。また、単純マンガン塩も効果を示す。ナフテン酸錯体/塩の場合、ナフテン酸アニオンは炭素数1から12、好ましくは4から8のアルキル鎖を有し、アルキル鎖及びシクロペンタンユニットは置換されていてもされていなくてもよい。本発明の塗料の他の好ましい実施形態によると、触媒として用いられる遷移金属錯体/塩は、少なくとも1つの二座配位子を含むか、又は二座配位子により補充される。このような二座配位子は、上述のカルボン酸又はナフテン酸配位子系と組み合わせて好適に用いることができる。例えば5原子を有するキレート環に至る二座配位子系は、特に有益である。金属原子へのリンクを供給するために用いられる原子は、N、O、S及び/又はP、あるいはその組み合わせからなる群より選ぶことができる。ゆえに、有益な二座配位子系は、金属原子との結合を形成するために使用可能な、適切なsp3又はsp2混成N原子及び/又はO原子を有する有機分子を含む。
【0037】
特に好ましいのは、例えば、2,2’−ビピリジン(bpy)、2−アミノメチルピリジン、2−ヒドロキシメチルピリジン、又は1,10−フェナントロリンからなる群より選ばれるような、ジアミン又はアルカノールアミンの形の配位子であり、置換されていてもされていなくてもよい。配位子は、好ましくは、側基で置換されており、これにより安定性が増し、水中での触媒系の溶解度又は分散性が増す。このことは、塗料が水ベース基材に蒸着されるため重要である。
【0038】
特に適切な系は、例えばMnが塩錯体として存在し、さらにbpyが通常(わずかに)モル過剰状態で存在する、Mn bpy系からなる又は含む触媒によって与えられる。上述のように、このような系は、カルボン酸マンガン又はナフテン酸マンガンとの混合構造として供給され、例えば、Mn(2−エチルヘキサノアート、bpy)のような、Mn(2−エチルヘキサノアート)とbpyの組み合わせが適切である。
【0039】
本発明の塗料の他の好ましい実施形態によると、触媒、例えば一次ドライヤ錯体/塩の金属部分は、塗料中に、表面(top)紙塗料の合計乾燥重量の0.01から0.5重量%、好ましくは塗料の合計乾燥重量の0.05から0.2重量%存在する。
【0040】
さらに、配位子の1つが、よく平衡制御された状態で、一次ドライヤ系の遷移金属イオンに比べて過剰に存在する場合、優れた触媒効果を達成できることを示し得る。ゆえに、他の好ましい実施形態によると、遷移金属錯体/塩が少なくとも1つの二座配位子を優先的に含み、配位子に対する金属の割合が1:1から1:8又は最大1:20の範囲にある。
【0041】
抄紙機における塗膜工程に適した触媒系を提供するために、存在する遷移金属錯体及び/又は配位子の溶解度/分散性を増すための添加剤を加えることが有利である。分散性を高めるための添加剤は、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール又はプロピレン−グリコール−モノメチル−エーテルのようなアルコール又はグリコール・エーテルから選ぶことができる。それらの添加剤は、塗料配合物に加えることも可能であるし、塗料配合物への導入前に、遷移金属錯体及び/又は他の成分の溶液/分散液に加えることもできる。
【0042】
遷移金属錯体及び配位子の溶解度/分散性を増すためのこのような添加剤は、「共溶媒」として作用している。これらの1つの特性は、遷移金属、及び/又は、錯化剤/配位子、又は中性配位子、及び/又は、補助ドライヤのような成分を溶かす一定の能力を有するだけでなく、同時に、水への一定の溶解度を有することである。そのため、それらはある種の媒介物である(「可溶化原理」)。有利な点は、
−溶解状態でのドライヤ系の最高活性、
−全紙塗膜の改良された安定性及び均質性、それゆえ、例えば、抄紙機における改良された作業性
である。適切な共溶媒の例としては、エタノール、アセトン、アルコールエーテル、アルコールエステル、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等である。
【0043】
原理的には、本概念は、いかなる(水性の)塗料配合物にも適用できる。しかしながら、塗料が高い空隙率と、適切な多孔性形態及び/又は適切な孔壁表面エネルギーを有する場合には、例えば上述の好ましい十分に早いインクの物理吸着及びそれに相当する十分に短いセットオフ値につながり、有益であると判明している。他の好ましい実施形態によると、塗料は、バインダと、滑剤、増粘剤等の添加剤を乾燥重量で5から20部実質的に補充した顔料を、乾燥重量で100部含み、顔料部分は、微細から超微細の炭酸カルシウム(CaCO3)及び/又はカオリンあるいはクレイを含み、最大10から20部を、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−クロロエチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、アセタール、ポリフェニレンスルフィド、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレンラテックス、ポリアクリルアミド、及びその合金、混合、混合物及び誘導体で作り得る、合成固体又は空胞化した高分子顔料によって置換されてもよい。また、スチレンマレイン酸共重合体ラテックス(SMA)又はスチレンマレイミド共重合体ラテックス(SMI)、上記の構造を有するこれらの混合物及びその誘導体も可能である。
【0044】
原則として、触媒はトップコーティングにしか加えないが、トップコートの真下の層に加えてもよい。触媒系を含むトップコートの厚さは通常、10から30g/m2の範囲、好ましくは10から15g/m2の範囲である。
【0045】
印刷シート又は塗料はさらに、顔料部分の少なくとも一部分、好ましくは微粒子シリカが、微量の金属好ましくは遷移金属を含み、あるいは選択的且つ意図的に濃縮されさえし、少なくとも1つの金属が、10ppbより多く存在し、あるいは少なくとも1つの金属又は金属の合計が500ppbより多く存在することを特徴とする。その際、この金属は上述の意味で触媒として作用する。例えば、鉄はそのような量で存在することができるが、銅、コバルト、マンガン等も有利である。
【0046】
通常、この開示においてシリカについて述べる場合、この用語は、コロイド状シリカ(液相中の微細なシリカ粒子の懸濁、粒子は非結晶質で、通常無孔構造で形は球状である)、沈降シリカ(広範な細孔構造を有する多孔質粒子)、発煙(fumed)シリカ(無孔)及びシリカゲル(一次粒子として重合ケイ酸塩粒子を有する含水二酸化ケイ素の多孔質体非結晶質形、粒子は高表面積で高空隙率、これら四種類の定義については、Ferdi Schueth、Kenneth W.SingとJens Weitkamp編、Wiley−VCH、「多孔質体ハンドブック」第三巻の例えば1551−1557頁参照)を含むと解釈されるべきである。好ましくは沈降シリカ、より好ましくは、固有の高空隙率を有するシリカゲル(キセロゲル及びエアロゲル)が用いられ、以下でシリカという用語が使用される場合には、これらを意味する。
【0047】
金属は、元素であれイオンの形であれ、インクの化学的乾燥に寄与する。金属の含有量が多いと、特定の適した空隙率及び/又は表面積を有する顔料の乾燥重量部分の低さを補填することができるので、例えば、顔料部分が微粒子炭酸塩及び/又は微粒子カオリンを乾燥重量80から95部と微粒子シリカを乾燥重量6から25部含む場合、より高い金属含有量を有するなら、シリカの含有量はより小さくすることが可能である。好ましくは、シリカゲルの含有量は10部より高くするべきであり、好ましくは、12部以上であるべきである。
【0048】
顔料の1つ、特にシリカ部分に存在する場合、特にドライヤ金属として作用するか又はドライヤ機能に関係する金属には、3つのグループがある。
A)一次又はトップ又は表面ドライヤ金属:+2(II)と+3(III)原子価を有するマンガン等のすべての遷移金属。それらは、酸素(O2)と乾性油との反応により形成される、過酸化物の形成及び特に分解を触媒する。この酸化又は遊離基作用により、ポリマーとポリマーの架橋を形成し(最上層乾燥)、また、乾性油分子上に水酸基/カルボニル基/カルボキシル基を形成する。最も重要なものは、Co、Mn、V、CeとFeであり、Cr、Ni、RhとRuも可能である。
B)二次又はスルー又は配位ドライヤ金属:含酸素(O)基がこれらのドライヤによって用いられ(しかし、常に一次ドライヤと組み合わせて、結合錯体形成を介して)、特定の架橋を形成する。最も重要なものは、Zr、La、Nd、Al、Bi、Sr、Pb、Baである。
C)補助ドライヤ金属又はプロモーター金属:それら自体は、乾燥作用を直接行わないが、一次又は二次ドライヤとの特別な相互作用を介して(又は、一次及び二次ドライヤの溶解度上昇を介してともいう)、それらの活動を支持できる。最も重要なものは、Ca、K、Li及びZnで、特にそれらのカルボン酸塩である。
【0049】
補助ドライヤ金属は、0.02から0.2%NaのNa−(2−EH)(DS紙トップコート)、0.05から0.2%KのK−(2−EH)、0.05から0.2%KのK−リノレアート、0.01から0.2%LiのLi−(2−EH)、0.05から0.2%CaのCa−ビス−(2−EH)等の金属カルボン酸塩(例えば、水又は2−ブトキシエタノールに溶かした)でもよい。ここで、EHはエチルヘキサノアートである。これらの補助ドライヤ金属カルボン酸塩はまた、実際の触媒として単独でも使用できる。
【0050】
二次又は補助ドライヤ系として、Zr(acac)4、Ti(acac)4、Li(acac)、K(acac)、Li(dpm)、K(dpm)の使用も可能である。モル比1:1Li/MnのLi(acac)は、Mn−アセテートの乾燥活性を著しく高めることを示し得る。
【0051】
これらの金属の著しい活性を有するために、それらが、下限値10ppbから最大次の上限値で、顔料中に(好ましくはシリカ中に)存在しなければならない。
−一次ドライヤ金属:Ceは最大20ppm、それ以外すべて最大10ppm。
−二次ドライヤ金属:Zr、Al、Sr及びPbはすべて最大20ppm、それ以外すべて最大10ppm。
−補助ドライヤ金属:すべて最大20ppm。
【0052】
これらの金属のいくつかの特定の組み合わせは特に効果的である。例えば、Co+Mn、Co+Ca+Zr又はLa又はBi又はNd、Co+Zr/Ca、Co+La等である。例えば、Mn(II+III)アセテート(インクの表面だけが速く乾燥し、酸素に配向して閉じられる)と何らかのカリウム(K)塩(マンガン活性を活性化するため)、場合によりジルコニウム(Zr)塩(乾燥を介してインクのかさを増やし、印刷されたインク層の湿潤インク摩擦挙動を改善するため)との組み合わせが可能である。
【0053】
他の好ましい実施形態によると、印刷シートの塗料は、トップコート及び/又はトップコートの真下の中間層がさらに、好ましくは遷移金属錯体/塩、遷移金属カルボン酸錯体/塩、マンガン錯体/塩、マンガンカルボン酸錯体/塩及び/又は酢酸マンガン又はマンガンアセチルアセテート錯体/塩(例えば、Mn(II)(Ac)2・4H2OやMn(III)(Ac)3・2H2Oのようなn=2,3のMn(アセテート)nあるいはn=2,3のMn(acac)n)から選択される化学的乾燥補助剤を含み、マンガン(Mn)錯体/塩の適切な触媒作用のために、好ましくは、Mn(II)とMn(III)が併存するか、又はその混合物で存在し、この化学的乾燥補助剤は好ましくは乾燥重量0.5から3部、好ましくは乾燥重量1から2部存在する。上述のマンガン(Mn)錯体/塩のような金属触媒系の場合には、触媒系の金属部分が塗料の全乾燥重量の、0.05から0.6重量%、好ましくは0.02から0.4重量%、塗料中に存在することが好ましい。このような系の触媒活性を支持又は高めるために、二次ドライヤ及び/又は補助ドライヤとそれらを組み合わすことも可能である。また、金属系に対して異なる配位子を提供することにより、触媒活性を高めることもできるので、例えば上述の酢酸錯体/塩はbpy配位子と混合することが可能である。また、Li(acac)のような他の金属錯体/塩と組み合わすこともできる。さらに、必要な酸素又は過酸化水素を拡散限界なしにスポットに直接有するために、触媒系を無機過酸化物と組み合わせることによって、強化が可能である。オフセットインクの重合性又は架橋性成分を固定するためにこのような触媒系を使用することは、完全に異なる性質の塗料にとっても有利であり、塗料中にシリカを有するという概念に必ずしも結びつけられないということが、指摘されなければならない。このような微量金属(metal traces)中に、意図的に無機顔料を濃縮することができる。通常、鉄の含有量は500ppbを超えることが好ましく、マンガンの含有量は20ppbを超えることが好ましい。
【0054】
ドライヤ系の例:
水又は共溶媒(2−ブトキシエタノール)に溶解させたもの:
a)0.004から0.2%Feの、Fe(II)SO4・7H2O、Fe(II)−(エチルヘキサノアート)、Fe(II)アセテート、Fe(II)シトラート、Fe(II)グルコナート、Fe(II)EDTA、0.2%MnのMn(II)SO4・H2O、
b)金属1モルに対して配位子2モルの配位子2−エチル−4−エチルイミダゾール
【0055】
主な一次ドライヤとして、Mn−サルフェイト、−ホスフェート、−カルボナート、−クロリド及び特にMn(II)−アセテートのような、無色のMn(II)塩。無色のMn(II)−[2−EH]と褐色のMn(III)−[2−EH]の混合物の利点は、コスト、安全な特性、色である。また、最小限必要とされるイオン形Mn(III)アセテート(褐色)をそのままで(in situ)組み込むことにより、Mn(II)アセテート(ライトピンク)を活性化することができる。このような系は配位子(bpy、SB2、SB13等)と組み合わせることができるので、ドライヤ活性を著しく且つ魅力的に高めることができる。
【0056】
最終的に配位子と結合される、より複雑な金属塩/錯体:すぐに使用できる「ワンパッケージ」一次ドライヤ系。その原理は、最終的に既に配位子を備えた、結晶性ドライヤ錯体を、事前合成/事前分離することである。製紙業務においては、完全に水溶性か又は共溶媒を用いて、紙塗料に単一のドライヤ化合物を組み込むことだけが必要である。例としては、
[Mn(II+III)エチルヘキサノアート、bpy]錯体=[MnII2MnIII2O2(エチルヘキサノアート)6(bpy)2]、
[Mn(acac)2bpy]、ここでacacはアセチルアセトン、
[Mn(acac)3]又は(水溶性型)Na[MnII(acac)2]又はK[MnII(acac)2]又はNH4[MnII(acac)2]、
[MnIII(pppy)(dpm)]、ここでpppyは新しい三脚型配位子
【化3】
ここで、R1=R2=H、dpm=ジピバロイルメタンである。
【0057】
Omo Power触媒MnMeTACN(Polymer 45(2004)7431−7436)のような漂白触媒系のベースとなる遷移金属(好ましくはFe、Mn)も可能である。
【0058】
本発明は、さらに、優先的にトップコートとして、上述の塗料で塗膜された紙に関する。そのようなトップコートの真下に、好ましくは付加的な塗膜があり、特に、層構造におけるインクの物理的吸収プロセスを支持する。そのような付加的中間塗膜のために、以下のような配合が可能である。
超微細CaCo3乾燥重量100部、スチレンブタジエン合成バインダ5から10部、潤滑油1部、加工でんぷん1部、PVA1部、CMC1部。
【0059】
さらに、本発明は、上述の塗料の製造方法に関し、遷移金属錯体/塩を、撹拌塗料配合に優先的に水溶液又は水分散液として加え、最終塗料配合が紙基材上に塗膜される。塗膜工程は、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーコーター、カーテンコーター又は他のコーターシステム等の一般的技術を用いて実施することができ、紙は塗膜工程後カレンダ処理することができる。
【0060】
上記方法の好ましい実施形態によると、遷移金属錯体/塩の付加と同時に、キレート剤及び/又は錯化剤/配位子を、好ましくは遷移金属含有量を超えて(モル基準で)塗料配合物に加える。ここで、キレート剤は水溶液又は水分散液として加えられ、溶解度/分散性を高め、触媒系又はその成分の安定性を高めるために、1又は複数の添加剤(可溶化原理を用いる共溶媒)を含むことができる。
【0061】
さらに、本発明は、塗料用の添加剤としての、オフセットインクの重合性又は架橋性成分を固定するための触媒の使用に関する。このような触媒は、優先的に、水溶性又は水分散性遷移金属錯体/塩であり、上に述べたような特性を有する。
【0062】
本発明のさらなる実施形態は、従属項で述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明の好ましい実施形態の添付図面を、図1から10に示す。
驚いたことに、ラボでの印刷条件下で(プリューフバウ試験機、湿し水なし)、本出願人から商標名MagnoStarで入手可能な普通紙上に印刷されたインク層(市販のBlack Tempo Max、BTM、スイスのSICPA社から入手可能)の化学的乾燥時間の著しい低減が可能であることが証明された。その目的のために、水分散性のマンガンベースの触媒ドライヤ錯体Mn−(2−エチルヘキサノアート)が、第2の配位子bpyで優先的に満たされて、そのトップコートに均質的に混入された。0.2重量%Mnの錯体Mn−(2−エチルヘキサノアート)だけを用いた場合、印刷したBTMインクの化学的乾燥時間(親指テストThumb testにより評価)は4時間(ブランクblank)から2時間(=50%)まで低減した。高速セッティング中間層がある場合には、乾燥時間は、さらに約1時間低減し、3時間(ブランク)から1〜2時間になった。bpyを付加すると、結果はさらにもっと改良された。つまり、0.1重量%Mnでモル比bpy/Mn=6のとき、化学的インク乾燥時間0.5〜1時間(=12.5〜25%)が達成された。0.2重量%Mnでbpy/Mn=3のときには、0.5時間(=12.5%)もの低い化学的インク乾燥時間を達成することさえできた。
【0064】
実験の詳細
材料
化学的ドライヤ錯体
−Nuodex Web Mn9:Mn−(2−エチルヘキサノアート)錯体として9,0±0.2重量%のマンガン、及び水性系に適合させるための特殊な界面活性剤混合物を含む。Elementis Servo、Delden、NL(オランダ)から市販されている。
−Drymax(Elementis Servo、Delden、NLから市販されている):付加的なマンガンドライヤ促進用に使用されるキレート剤。2,2’−ビピリジル(bpy、2−エチルヘキサノアートの次にマグネシウムに対して超活性な配位子)約30重量%と、N−メチル−2−ピロリドン最大約60重量%(不活性材料、bpyの水溶解度を増すための共溶媒)を含む。
【0065】
紙基材
A:250gsm見返し品質用のトップコート層なし標準MagnoStar紙。トップコート層なしのこの基材の表面塗膜層は、乾燥重量100部のかなり粗い炭酸カルシウム(CaCO3)、合成ラテックスバインダ10部、加工でんぷん1部、PVA1部、CMC1部、滑剤1部を含んでいた。
B:250gsm見返し用、トップコートなしの、特定の多孔性中間層を有する実験用製造紙(experimental mill produced paper)。トップコート層なしのこの基材の表面の塗膜層(トップコートの塗布後多孔性中間層として作用する)は、微細(トップコートほど超微細でなく、標準ほど粗くはない)炭酸カルシウム(CaCO3)100部、スチレンブタジエン合成バインダ10部、滑剤1部、加工でんぷん1部、PVA1部、CMC1部を含んでいた。
【0066】
紙トップコート
乾燥重量100部の超微細炭酸カルシウム(CaCO3)、合成ラテックスバインダ10部、加工でんぷん1部、PVA2部、滑剤Caステアレート1部、粘度挙動を固定するためにさらに必要な合成増粘剤を例えば0.05部。
【0067】
印刷インク
−Tempo Max(SICPA、CH(スイス))、黒。大抵の市販のインク同様、組成及び不飽和値の詳細は入手不可能。酸化力的に多少「速乾性」のモデルインクとして選択。おそらく、なんらかのドライヤ錯体を限られた量含む。
−Bio2(BASF/K&E、DE)、シアン:特別に調合された、紙インク相互作用研究用の100%生物学的モデルインク。組成:インク顔料17部+バイオバインダ60部、アルキド樹脂9部+バイオオイル9.5部+特有の添加剤2部+乾燥剤2.5部+鉱物油0部。生物学的部分の組成及び不飽和値の詳細は入手不可能。
【0068】
トップコートへのドライヤ錯体混入/トップコート塗布
室温で約10分間、小型の開放容器中でよく撹拌したトップコート剤に(マリンタイプ撹拌器)、Nuodex Web Mn9と(必要に応じて)Drymaxを少量、同時にゆっくりと(二つの給送装置を介して)加える。金属と配位子を要望どおり加え、具体的なデータは表中に示される。
活性ドライヤ錯体が八面体に囲まれたモノメタル/配位子錯体と仮定される場合、1モルのマンガン金属に対し1から(最大)8モルのbpyが可能であろう。しかしながら、錯体が1部分内にいくつかの金属原子を有する多核錯体であることも推測される。
錯体付加後塗料が一定の濃厚化挙動を起こす場合には、例えばPolysalzタイプの、なんらかの付加的分散剤を加えれば十分である。
トップコートと混入されたドライヤを、デュアルコートされたA又はB基材の片側上に、使用可能なバード(Bird)塗布器又はラボスケールの試験的コーターで塗布した。塗布されたトップコートの量は、層厚約11〜12μmで約15g/m2/面としてテストされた。これはこれらのトップコート用の製紙業務によく合っている。
【0069】
ラボ印刷方法
GTM1002に従い、(混入されたドライヤ有り及び無しの)塗膜紙のサンプルを調整した後、印刷インク(黒の)Tempo max又は(青の)Bio2を、ESTM2302、多色インクセッティング、11−2−2004の改訂0の指示に従い、プリューフバウ印刷装置で紙試料上に塗布した。それは、インク0.24g、印刷圧1000N、印刷速度0.5m/s、アルミニウム印刷リールで、標準ロング試料キャリヤを用いることを意味する。
注意:印刷されたインク層厚は約1〜2μmと測定された。
【0070】
分析的乾燥試験方法
分析的測定はすべて、調整済みのラボにおいて調整済みの紙(GTM 1002)に対し行った。次の分析的乾燥試験方法を選び、適用した。
印刷されたインクの物理的「セッティング」時間:
セットオフテスト(ESTM 2301):紙試料をプリューフバウ印刷装置で標準インク(Huber 520068)を用いて印刷する(100%)。数回の比較的短い時間間隔をおいて(15、30、60、120秒)、印刷した試料の一部を同じブランク紙に対して反対にする(表対裏)。カウンタ紙上の各領域に転写されたインクの密度を測定し、時間に対しプロットした。この方法は、枚葉給紙のオフセット印刷用に用いられる紙の(物理的)セットオフ(パイルシミュレーション)の測定を記述するために記録される。
印刷されたインクの化学的乾燥時間:
親指テスト(Thumb test)、(非標準):工業用印刷の(及び塗料試験領域における)一般的な実践に沿って、数回の時間間隔(15、30、60、90・・・分)で、親指を(肌の油脂の影響を避けるために)(特殊な)家庭用ティッシュペーパーで覆って、しっかりと(しかし、常にほぼ同じ力で)押し付け、同時に、印刷されたインク層内で90°を超えて回す。完全に濡れた段階の場合、インクはすべてふき取られ、紙基材上に明らかな白いスポットが残る。完全に化学的に乾燥したインクの場合には、何の損傷も見られない。1人の同じ操作者が一連の操作のすべてを実行することが好ましい。親指テストは化学的及び物理的乾燥の組み合わせの指標となるということも注意するべきである。しかしながら、親指テスト結果へ主に寄与するのは化学的乾燥であることが示される。
【0071】
結果
この報告における検討を、三つの主な部分に細かく分ける。
【0072】
パートI:インクに付加した、使用したマンガンドライヤ製品Nuodex Web Mn9の固有の触媒インク乾燥活性の前評価
【0073】
この目的のために、市販のMagnoStar 250gsm紙上に印刷した時の、Nuodex Web Mn9製品[Mn−(2−エチルヘキサノアート)の形で0.1及び0.5重量%Mn]に付加的に混ぜるか混ぜないか(そのまま)した、Black Tempo Max印刷インクの物理的及び化学的乾燥能力を決定した。さらに、よく乾燥させた市販の紙に比較して、このMagnoStar品質の乾燥挙動(及び一定方法でのその加工能力)をランク付けするため、250gsmの市販の紙基材、紙1、紙2及び紙3を、比較用印刷基材として評価した。
【0074】
Black Tempo Maxインク「そのまま」で印刷した、複数の市販の250gsmWFC(非木材塗膜の)紙の親指テスト分析を実施した。異なる紙基材の挙動の間に目覚ましい差が見られた。紙1は速乾性を示し、Magnostarは比較的遅い乾燥挙動を示す。結果を表1にまとめる。
【0075】
Black Tempo Maxインクに0.1重量%Mn及び0.5重量%Mnをそれぞれ添加して印刷した、複数の市販の250gsmWFC紙の親指テスト分析を実施した。特にMagnoStarの乾燥挙動の改善がはっきりと観察された。結果をまた表1にまとめる。
【0076】
パートII:化学的インク乾燥能力を高めるため、紙のトップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体を混入。
【0077】
Nuodex Web Mn9のようなマンガン錯体を定量(乾燥重量塗料配合と比較した一次ドライヤ金属の重量%として示すと、0、0.05、0.1及び0.5重量%Mn)、トップコート組成中に混ぜた(上記参照)。処理したトップコートを250gsm見返し用の中間塗膜紙基材:A及びBにバード(Bird)塗布した。見返しをラボ印刷し、乾燥挙動をテストした。
【0078】
結果は以下のとおりである。:
Mn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体を様々な量混入した、MagnoStar250gsmに、Black Tempo Maxインクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。触媒濃度増加に対する化学的乾燥速度の増加を簡単に認識できた。結果を表2にまとめる。
【0079】
Mn−(2−エチルヘキサノエアート)触媒ドライヤ錯体を混入した、「高速セッティング」MagnoStar 250gsmに、Black Tempo Maxインクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。結果を表2にまとめる。
【0080】
パートIII:化学的インク乾燥能力を高めるため、紙のトップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)触媒ドライヤ錯体を混入。
【0081】
パートIIの補足で、このパートにおいては、Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)ドライヤ錯体に意図的に「その場で(in situ)」反応させるために、Mn−(2−エチルヘキサノアート)錯体の次に、複数の超過量の配位子bpy(Drymax製品等の)をトップコート中に混ぜた。印刷インクBlack Tempo Maxの次に、Bio2型インクもラボ印刷で使用した。
【0082】
結果は以下のとおりである。:
bpyなしのMn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体を混入した、「標準」MagnoStar 250gsmに、Black Tempo Maxインクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。結果を表3にまとめる。
【0083】
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)(0.1重量%Mn)触媒ドライヤ錯体及び、異なる超過量のbpyを混入した、「標準」MagnoStar 250gsmに、Black Tempo Maxインクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。ここでは、bpyの存在量/超過量が増加すると化学的乾燥速度が劇的に増加することが明らかとなり、その結果を表3にまとめる。
【0084】
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)(0.2重量%Mn)触媒ドライヤ錯体及び、異なる超過量のbpyを混入した、「標準」MagnoStar 250gsmに、Black Tempo Maxインクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。その効果は表3においてより一層明らかで、表4からわかるように、0.2%Mnと1.68%bpyで、乾燥時間は0.5時間未満まで落ちている。
【0085】
Bio2インクを用いて印刷した場合、非常によく似た結果が得られる。
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)(0.1重量%Mn)触媒ドライヤ錯体及び、異なる超過量のbpyを混入した、「標準」MagnoStar 250gsmの見返しに、Bio2インクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。結果を表3にまとめる。
【0086】
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)(0.1重量%Mn)触媒ドライヤ錯体及び、異なる超過量のbpyを混入した、「標準」MagnoStar 250gsmの見返しに、Bio2インクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。結果を表3にまとめる。
【0087】
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)(0.2重量%Mn)触媒ドライヤ錯体及び、異なる超過量のbpyを混入した、「標準」MagnoStar 250gsmの見返しに、Bio2インクを用いて印刷し、親指テスト分析を実施した。結果を表4にまとめる。
【0088】
考察
結論パートI:使用したマンガンドライヤ製品Nuodex Web Mn9の固有の触媒インク乾燥活性の前評価
【0089】
市販の「クラス最高の」250gsm WFC紙のいくつかに、Black Tempo Maxインク(そのまま、又は市販のマグネシウムドライヤを添加して)を印刷し、乾燥/加工特性に関する、親指テストの結果を表1に表す。相当するMagnoStar 250gsm(市販完成品)乾燥テストの結果も含まれている。
【0090】
【表1】
【0091】
以下の結論を導き出せる:
−有効成分Mn−(2−エチルヘキサノアート)錯体を有する市販のドライヤ製品Nuodex Web Mn9は、水性塗料タイプの化学的乾燥用に特別に開発されたものであるが、インクに加えて、化学的乾燥用にも有効である。
−Black Tempo Maxインク「そのまま」で印刷した、MagnoStarの化学的乾燥時間は、紙1(係数>2.0)、紙2(係数>1.5)よりもかなり長く、紙3(係数>1.0)よりもいくらか長い。
−紙2以外の、関係するすべての紙に対して、一般に印刷時印刷業者が行うように、付加的に印刷インクにマンガンドライヤ錯体を加えることにより、化学的インク乾燥時間をかなり短縮できる(紙1に対しては最大50%まで)ようである。
−MagnoStarに関しては、印刷インクにマンガンドライヤ錯体(0.1重量%Mn)を添加したものでさえ、その化学的インク乾燥時間は、インク「そのまま」を用いて印刷した、紙1の化学的インク乾燥時間に匹敵できない(係数1.5だけ、遅い)。これらの条件下での同様のMagnoStarの化学的インク乾燥時間は、インクそれ自体を用いて印刷した時の、紙2の乾燥時間には等しく、紙3の乾燥時間よりは良い。
−速い化学的インク乾燥挙動が良い加工能力にとって不可欠であるとすれば、MagnoStarの加工能力を「クラス最高の」競争紙である紙1まで高めるためには、特別な対策を必要とすることは明らかだと思われる。注意:紙1は、良好な乾燥を示す一方で、ピッキング(MagnoStarの4xに対し2xしかフリーでない)や低級な印刷光沢に対しては非常に敏感である。
【0092】
結論パートII:化学的インク乾燥能力を高めるため、紙のトップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体を混入。
【0093】
Mn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体を異なる濃度でトップコートに混入した、カレンダ未処理の「標準」250gsm MagnoStarに、ラボでBlack Tempo Maxインクを印刷して行った親指テストの結果を、表2にまとめる。
【0094】
【表2】
【0095】
以下の結論が導き出せる:
−マンガンドライヤ錯体を添加しない(カレンダ未処理の)「標準」MagnoStarの、ラボでの化学的インク乾燥能力は、市販の250gsm (カレンダ処理済み)MagnoStarの乾燥能力より若干速い(表1参照)。
−標準的な濃度範囲0〜0.2重量%Mnにおいて、「標準」MagnoStarの、ラボでの化学的インク乾燥能力は、4時間(ブランク)から2時間(=50%残余乾燥時間)へと最も改良された。
−タイプBの「高速」中間層を塗布した、「高速セッティング」MagnoStarのラボ結果の場合、同じ濃度範囲0〜0.2重量%Mnにおいて、化学的インク乾燥能力は、3時間(ブランク)から1〜2時間に改良され、実際にも、約50%の乾燥時間の改良がみられた。明らかに、絶対的な意味での「高速」中間層Bを塗布することにより、関係するマグネシウム濃度の全範囲に渡って、化学的インク乾燥能力は1時間改良された。
【0096】
結論パートIII:化学的インク乾燥能力を高めるため、紙のトップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)触媒ドライヤ錯体を混入。
【0097】
Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)触媒ドライヤ錯体を異なる濃度でトップコートに混入した、「標準」250gsm MagnoStarに、Black Tempo Maxインク又はBio2インクをラボで印刷した時の親指テストの結果を、表3(0.1重量%Mnと異なる割合bpy/Mn)及び表4(0.2重量%Mnと異なる割合bpy/Mn)にまとめる。
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
以下の結論が導き出せる:
−印刷した、0.1重量%Mn、Black Tempo Maxの化学的乾燥能力は、第2の配位子bpyを共に付加したことで、モル比(mol/mol)bpy/Mn=5.9のとき、同じく4時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=12.5〜25%残余乾燥時間)へとさらに改良された。同様に、0.2重量%Mnの高濃度及び第2の配位子bpyの共付加においては、印刷したBlack Tempo Maxの化学的インク乾燥能力はさらに改良され、モル比(mol/mol)bpy/Mn=3.0で、3〜4時間(ブランク)からたったの0.5時間(=12.5〜16.7%残余乾燥時間)となった。
【0101】
これらの結果を図2のグラフにまとめる。図2は、トップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)ドライヤ錯体を混入した「標準」MagnoStarに、実験室で、Black Tempo Maxインクを印刷したときの化学的インク乾燥能力を、bpy含有量の関数として示す。
【0102】
図3では、トップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)触媒ドライヤ錯体を混入した、試験したすべての「標準」MagnoStar紙に対して、標準的なセットオフテスト結果(=初期の物理的インクセッティング)が、前記ドライヤ錯体の存在によってそれほど影響を受けないことが実証された。このことは、実際の条件下での最適な印刷能率にとって、例えば印刷機の最小付着物に対して、重要である。
【0103】
0.1重量%Mnでの、印刷したBio2インクの化学的乾燥能力は、第2の配位子bpyを共に付加したことで、モル比bpy/Mn=20.1では、6時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=8.3〜16.7%残余乾燥時間)へとさらに改良された。同様に、0.2重量%Mnの高濃度及び第2の配位子bpyの共付加では、印刷したBio2の化学的インク乾燥能力はさらに改良され、モル比bpy/Mn=3.0で6時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=8.3〜16.7%残余乾燥時間)となった。
【0104】
これらの結果を図4のグラフにまとめる。図4は、トップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)ドライヤ錯体を混入した「標準」MagnoStarに、Bio2インクをラボで印刷したときの化学的インク乾燥能力を示す。
【0105】
結論
−塗料に混入した場合、水性塗料系用のMn−(2−エチルヘキサノアート)触媒ドライヤ錯体は、WFC枚葉給紙用紙上に印刷されたインク層の化学的乾燥に対しても有効である。
−印刷インクにマグネシウムドライヤ錯体を付加しても(印刷業務における標準的な「こつ」)、MagnoStarの化学的インク乾燥時間は、インク「そのまま」で印刷した他の用紙の化学的インク乾燥時間には匹敵できない(係数1.5だけ、遅い)。
−トップコートに標準濃度範囲0〜0.2重量%Mnを混入した場合、「標準」MagnoStarのラボでの化学的インク乾燥能力は、4時間(ブランク)から2時間(=50%残余乾燥時間)へと最も良く改良された。
−0.1重量%Mnをトップコートに混入したとき、印刷したBlack Tempo Maxの化学的乾燥能力は、第2の配位子bpyを共付加したことで、モル比bpy/Mn=5.9のとき、同じく4時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=12.5〜25%残余乾燥時間)へとさらに改良された。同様に、より高い濃度0.2重量%Mn及び第2の配位子bpyの共付加では、印刷されたBlack Tempo Maxの化学的インク乾燥能力はさらに改良され、モル比bpy/Mn=3.0で3〜4時間(ブランク)からたったの0.5時間(=12.5〜16.7%残余乾燥時間)となった。
−トップコートに0.1重量%Mnを混入して、印刷したBio2インクの化学的乾燥能力は、第2の配位子bpyの共付加で、モル比bpy/Mn=20.1のとき6時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=8.3〜16.7%残余乾燥時間)へとさらに改良された。同様に、より高い濃度0.2重量%Mn及び第2の配位子bpyの共付加では、印刷したBio2インクの化学的インク乾燥能力はさらに改良され、モル比bpy/Mn=3.0で6時間(ブランク)からたったの0.5〜1時間(=8.3〜16.7%残余乾燥時間)となった。
【0106】
パートIV:さらなる実験結果
顔料としてのシリカゲルを組み合わせて塗料中に化学的乾燥助剤を用いる可能性を評価するため、及び、裏移り防止粉末及び/又は赤外乾燥及び/又はOPニスを用いずに、本発明による紙を使用する可能性をテストするために、さらにより詳細な分析を行った。
【0107】
裏移り防止粉末は、固化防止剤とフロー剤を加えた純粋な食品用でんぷんの混合で、広い粒子径範囲(〜15から〜70μm)で使用可能である。でんぷんは、タピオカ、小麦、とうもろこし、又はジャガイモであってもよい。印刷表面一体にまくと、それは、基材の前又は印刷側が、基材の後ろ又は印刷されていない側に密に接触することを防ぐ。でんぷん粒子がスペーサとして働くため、空気が側面から、及び基材の前と後ろの間から入ることができる。インク面を横切るこの空気の自由な流れは、表面酸化や架橋結合により「乾燥し」又は硬化するインクが、空気中の酸素に露出することを可能にする。その後、インクは硬化し、その最終的な酸化及び架橋結合状態となる。
【0108】
オフセットパウダーは、言うまでもなく、それらの最終的な特性に達するために酸化/架橋結合を必要とするインクを用いる加工(converting)塗布において、非常に重要な役割を果たす。オフセットパウダーは非常に有益であるが、それらは、不利な特性を与える可能性がある。完璧な外観が必要とされる場合に印刷された基材がさらに加工される塗布においては、オフセットパウダーの使用は適切でないかもしれない。例えば、透明フィルムへの接着剤を用いてラミネート加工されることになる印刷された基材の場合である。塗布は、光沢及び光学的に完璧な外観が必要なラベルであるかもしれない。ふりかけたオフセットパウダーは、まばらなほこり又は他の汚染物質のように作用する。つまり、それは、ラミネートに表面欠陥を生じ、最終的な外観を著しく損ねるだろう。表面欠陥は、ラミネーションの陥没(entrapped)となり、「丘と谷」外観の一因となる。これは、非常に小さなスケールであるかもしれないが、しばしば、厳重な検査で不十分とされる外観をもたらすには十分である。オフセットパウダーの使用が適切でない他の塗布は、イン・モールドラベル処理用のラベルを作るために使用される印刷された基材の上である。この処理では、紙又はプラスチックの基材上に印刷されたラベルが、成形工程中、射出又はブロー成形容器の一体部分となる。よくある「ノー・ラベル」外観に対しては、その光学特性は、消費者がどのような環境下でもラベルが見えないようでなければならない。オフセットパウダー、ほこり又はいかなる同様のものの小さいしみが、このようなラベルの外観を損ね、不満足にする。
【0109】
従来の上質紙上では、塗料は、次の表に与えるような配合で塗布され、基材は、塗膜重量11gsmのプレコート層で両面を塗布され、トップコート層も同じく11gsmであった。
調査したプレコート層の配合を表5に示し、トップコート層の配合と、トップコート層がプレコート層にどのように結合されるかを表6に示した。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
すべての塗膜はスクラッチがなく作業性が良好で、紙の光沢能力も高く、ニップ荷重200kN/mで紙の光沢度(55%DIN75°)に達した。
【0113】
トップコーティングに使用されるシリカの量が多ければ多いほど、通常、紙の光沢は低くなる。酢酸マンガンの付加は紙の光沢にさほどの影響を与えない。プレコーティングにシリカを使用することは、トップコートされた紙の光沢の若干の低下につながる(カレンダ処理前)。
【0114】
他の触媒系を上回る多くの利点ゆえに、優先的に、Mn(II)アセテートが使用されるが、このようなマンガン錯体の使用は、既に上で示したように、本塗料に限定されることなく、他のいかなる塗料にも拡大適用できる。酢酸マンガン系は、においがなく、低価格で、より容易に水に溶ける塩であり、輝度/色合いへの影響がより少なく、環境/健康への問題がない。実のところ、このような系の十分な触媒活性のために、Mn(II)とMn(III)を塗料(トップコート又はトップコートの真下にある第2の塗料)に同時に有することが有利であると思われる。Mn(II)及び少なくともいくらかのMn(III)アセテートが存在する場合には、最適活性が達成される。同時に、II型の次に、必要なMn(III)アセテートを本質的に導入し、最小量の、通常茶色を帯び、実際にはかなり水に不溶のMn(III)型を作ることのできる、1つの有利な方法を、以下に示す。
【0115】
a)Mnイオンを自由な触媒種として十分に利用できるように保つため、0.1pphのポリザルツ(Polysalz)を添加。もし、この成分を加えなければ、Mnイオンの最もおそらく高い価数が、塗料中の炭酸カルシウム分散を強く干渉し、又は抑制され、二重層との相互作用を介してそれらを不安定にし/凝固し、そのため塗膜の品質も低下する。
b)Mnアセテートは、トップコートの組成に最後の成分としてゆっくりと加える。ここで、大体pH=8.5〜9で始めるのが好ましい。最大10のより高いpHが可能で、その結果(いくらかのMn(III))は十分ではあるだけでなく、Mnアセテートの溶解挙動がより良い/より速い。
c)Mnアセテートの溶解後(視覚的判断)、再びpHを最大約8.5に調整することが好ましい(溶解している酸がMnアセテートと反応すると、pHは通常下がる)。
d)最後に、触媒サイクル用にすべて利用可能にするため、Mnアセテートを分子レベルまで完全に溶かすために、さらなる混合時間(本応用では通常30分)をもつことが有益であると思われる。
【0116】
Mnアセテートは好ましくは、トップコートの合計乾燥重量中の重量0.1〜0.6%マンガン(=II+III)存在する。最も好ましくは、0.2〜0.4%存在することである。Mn(II)アセチルアセトナートのような、他のMn−塩/錯体でも可能であるということも注意すべきである。Mnアセテートの単独の触媒活性は、様々な対策によって強化及び/又は支持することができる。つまり、A)二次ドライヤ及び/又は補助ドライヤとの組み合わせ、B)関連(responsible)配位子との組み合わせ、例えば、bpyと組み合わせると、活性は非常に高く、Nuodex Web Mn9/bpyのような系にほぼ等しくなり、他の配位子と組み合わせると、その活性は魅力的なレベルまで著しく増加させることができる。C)Liアセチルアセトナート等の系の添加、D)必要な酸素を、拡散限界なしにスポットで直接有するために、過酸化物(適当に安定化しているが利用可能な形で)を添加。
【0117】
無鉛ガソリン(white gas)試験及び湿潤インク摩擦(wet ink rub)試験の結果をそれぞれ示す、図5及び6からわかるように、基準トップコートでプリコート中にシリカを有する紙IID_7は、ラボでの化学的乾燥時間が最も遅いことを示している。トップコート中にシリカを有すると、化学的乾燥時間は3又は2時間(シリカの量をより多くする場合)に達することが可能である。紙IID_11は、8%シリカと組み合わせて、酢酸マンガンを用いたものであるが、(3時間ではなく)2時間というさらなる改善につながった。この場合、また、試験紙上のドット(テールより決定的)は3から4時間で乾燥する。シリカを使用することで、湿潤インク摩擦挙動(ESTM 2303)もインクの耐毛羽立ち性(GTM 2312−1)も改善される。
完全を期すために、使用した試験の定義をここに示すことにする。
【0118】
無鉛ガソリン(white gas)試験(ESTM 2310):
無鉛ガソリン試験は、紙上に印刷された枚葉給紙オフセットインク被膜が化学的に乾燥するのに必要な時間を評価するために使用される。
定義:化学的インク乾燥:酸化重合/自家重合により、インクの不飽和植物性油脂の、一部から全部の架橋結合。
原理:1つの試料をプリューフバウ印刷装置で標準の市販インクを用いて印刷する。時間間隔を数回おいて、印刷した試料の一部を無鉛ガソリンと接触させる。無鉛ガソリンはインク被膜が完全に架橋結合されていない限り、紙上のインク被膜を溶かすことができる。無鉛ガソリンが、もはや、インク被膜を溶かさない時点で、このサンプルは化学的に乾燥したとみなされる。
装置:プリューフバウ印刷装置、アルミニウムプリューフバウリール40mm、プリューフバウ試料キャリヤ;Tempo Max Black(SICPA)、FOGRA−ACET装置
【0119】
サンプリングとテストピースの作成:無鉛ガソリン試験用に、少なくとも5cm長さの細長い一片を切り取る。その際:
1.プリューフバウ印刷装置の印刷ニップの圧力を800Nに調節し、
2.印刷速度を0.5m/sに調節する。
3.許容誤差0.005gでインクの重さを測り、インク量をプリューフバウ印刷装置のスタンプ部(inking part)に塗布する。
4.30秒間インクを広げ、
5.試料キャリヤにテストピースを固定し、
6.スタンプ部にアルミニウムプリューフバウリールを置いて、30秒間インクを写し取る。
7.インク付けされたアルミニウムプリューフバウリールを右側の(right)印刷ユニットにおき、
8.インク付けされたアルミニウムプリューフバウリールに接触させて(against)試料キャリヤをおき、印刷速度の電源を入れ、
9.印刷速度の電源を切って、
10.印刷時刻を記録し(例えば、無鉛ガソリン試験開始時刻)、
11.紙の坪量に相当する厚さのカードを選び、
12.少なくとも5cm長さの細長い一片を切り取り、
13.細長い一片の先端をテープで厚みカードに貼り付け、
14.FOGRA−ACET装置のパッドホルダにフェルトパッドを置き、
15.0.5mlの無鉛ガソリンをすべてガラスのシリンジを用いてポンプで注入し、フェルトパッド上に塗布する。
16.試験されるべき試料を具備した厚みカードをカードホルダに置き、
17.FOGRA−ACET装置を閉めて、直ちに、カードホルダに取り付けられた試験試料を具備する厚みカードを装置から引っ張り、
18.試料の化学的乾燥を評価する。
19.試料が完全に乾燥する(インク層の溶解がないことが見られる)まで、1時間毎にこの操作を繰り返す。
結論:印刷されたインク塗膜の化学的乾燥時間は、試験される試料上のインクを溶かすことのできない時点での時間である。化学的乾燥時間は時間で示される。
【0120】
湿潤インク摩擦試験(ESTM 2303)
目的:この方法は、完全に乾燥する前に、印刷後時間間隔を数回おいて、紙とボードの摩擦抵抗の評価を記述する。引用規格/関連する国際標準:GTM 1001:サンプリング、GTM 1002:調節のための標準大気、ESTM 2300:プリューフバウ印刷装置の説明と手順。関連する試験方法の説明:プリューフバウマニュアル。
定義:
−インク摩擦:剪断又は研磨等の機械的応力を受けると、たとえ、完全に乾いていても、インク層が損傷され、印刷された製品上のマーキングの原因となり得る。
−化学的乾燥:枚葉給紙オフセットにおける、重合反応によるインク被膜の硬化。
−湿潤インク摩擦値:印刷後、所定の時間の、湿潤インク摩擦試験中にカウンタ紙をマークしたインク量の大きさ。
原理:テストピースに、市販のインクを用いてプリューフバウ印刷装置で印刷する。時間間隔を数回おいて、印刷されたテストピースの一部をブランク紙(同じ紙)に対して5回こする。印刷の損傷と白紙上のマーキングを評価し、時間スケールに対してプロットする。印刷インクはTempo Max black(SICPA、CH)を用いた。
【0121】
ラボ手順:
1.印刷圧力を800Nに調節する。
2.許容誤差0.01gでインクの重さを測り、インクの量をプリューフバウ印刷装置のスタンプ部に塗布する。
3.30秒間インクを広げ(インクの分布時間は操作をより簡単にするため、60秒まで延長することができる)、
4.短い試料キャリヤにテストピースを固定し、
5.スタンプ部分にアルミニウムプリューフバウリールを置いて、30秒間インクを写し取る。
6.インク付けされたリールの重さを測定し(m1)、
7.インク付けされたアルミニウムプリューフバウリールを印刷ユニットにおき、
8.インク付けされたアルミニウムリールに接触させて(against)試料プレートをおき、テストピースを0.5m/sで印刷し、
9.試料が印刷された時刻を記録し、
10.印刷後、インク付けされたリールの重さを再び測り(m2)、インクの移動Itをグラムで決定し(注意:インク移動ItはIt=m1−m2より与えられ、m1は印刷前のインク付けされたリールの重さ、m2は印刷後の同じリールの重さである)、
11.プリューフバウインク摩擦抵抗テスター上の摩擦数を5に調整し、
12.プリューフバウピースカッターで、印刷された細長い一片に円形の一片を切り取る。
13.プリューフバウテストピースカッターの1つに接触させて(against)テストピースを押し付け、紙キャリヤ上に同じ紙のブランク紙の細長い一片を固定し、
14.印刷後規定の時間間隔をおいて、ブランク紙の紙と印刷された円形の一片をプリューフバウ装置上に向かい合わせて置き、摩擦を開始する(5回)。
15.印刷後、すべての規定の時間間隔に対して操作を再開し、紙の乾燥を、ブランク紙上のマーキング/印刷された紙の損傷の密度の関数として評価する。
【0122】
下の表は、印刷のために重さを測定されるべきインクの量と、インクの摩擦試験の実施が可能な、印刷後の時間の1例を与える:
グレード インク量 摩擦時間(分)
グロス 0.30g 15/30/60/120/480
シルク/マット 0.30g 30/60/240/360/480
【0123】
結果の評価:結果は、測定されたものと、視覚的に評価したものの両方である。視覚的評価:試験したブランク紙試料のすべてを、ブランク紙をマークしたインクの量の関数として、最良から最悪まで順序付ける。測定:カラータッチ(Colour Touch)装置を用いて、ブランク紙試料の色スペクトルを測定(光源紫外線排除)する。未試験のブランク紙の色スペクトルを測定。試験した試料の色スペクトルは、使用インクに特有の、確定した波長で吸収のピークを有する(これはインクの色である)。試験した試料と未試験の白の試料の間の、この波長における立体角反射率の差が、インク摩擦のしるしである。SICPA Tempo Max Blackを用いると、ピークの波長は575nmであり、
インク摩擦=(R試料−Rブランク)575nm
である。
【0124】
図7から9からわかるように、最も遅いインクセッティングは、プレコートにシリカを含み、シリカも酢酸マンガンも含まない基準トップコートの紙IID_7に見られる。トップコート中のシリカ含有量が増加すると、初期のインクセッティング挙動が速くなる。プレコートにシリカを使用することにより、シリカを用いないプレコートに比べて、セットオフが僅かに速くなる。短時間でも長時間でも、インクセッティング値は極端に小さい。すべての紙のオフセット適合性(ドライ)並びに多色繊維ピッキングレベルはかなり低い(オフセット適合性はほとんどの場合0、最良値は紙IID_7)。
【0125】
これらの実験で使用した具体的な化学的乾燥助剤は、Mn(II)(Ac)2・4H2OとMn(III)(Ac)3を含む酢酸マンガンである。この特定の遷移金属錯体は、非常に効果的な化学的乾燥助剤であり、シリカとの組み合わせで相乗効果を示し、トップコート又はプレコートに用いるための、一般的に有益な化学的乾燥助剤である点に留意されたい。
【0126】
印刷特性:
試験した紙(すべて135g/m2):市販の試験紙(CTP)、D6、D7、D8、D9、D10、D11、D12(すべて上述)
印刷条件:プリンタ:Grafi−Media(Zwalmen、NL)、プレス機:Ryobi 5色、インク色順に:Sicpa Tempo Max B、C、M、Y、印刷速度:11,000シート/時、セットオフ防止粉末:有り/無し、赤外線ドライヤ:無し
実施した試験:折り試験:クロス折り(1バックル折り、1ナイフ折り、湾曲なし)、湿潤インク摩擦試験、無鉛ガソリン試験、ブロッキング試験(セットオフ防止粉末)。試験時間:1/2時間、1時間、2時間、3時間、4時間、24時間、48時間超。
【0127】
ブロッキング試験結果:
D6 300%面積において極めて少量のマーキング
D7 ごくわずかなマーキング(D6よりは良い)
D8 300%面積においてごくわずかなマーキング(〜D6)
D9 マーキング無し
D10 マーキング無し
D11 300%面積においてごくわずかなマーキング(D6よりは少し多いが、CTPよりは少ない)
D12 300%面積においてわずかなマーキング(D6よりは少し多いが、CTPよりは少ない)
CTP マーキング
D8粉末有 マーキング無し
D11粉末有 マーキング無し
CTP粉末有 マーキング無し
【0128】
どの紙にもブロッキングは見られない。セットオフ防止粉末を用いて印刷した紙には、マーキングは全く見られない。最もマーキングの多い紙はCTPである。D9とD10(及びD8とD11も僅かに少ない程度で)には、マーキングは全く見られない:それらは、セットオフ防止粉末なしで印刷可能である。
【0129】
折り試験の結果:
折り試験は、バックルホルダーで行われた。ハリタ(Haletra)の印刷機とは対照的に、第2の折りに対する湾曲測定モジュールがないため、折りはやや厳密さに欠ける。折り試験は、0(可視的なマーキングは無し)から5(非常に強いマーキング)の指標を使って評価される。折り試験の結果を、表7にまとめる。
【0130】
【表7】
【0131】
折りでのマーキングの全般的レベルは、専門家(印刷業者)グループにより、非常に良いと評価された。1/2時間と∞(一週間)の間のマーキングの差は皆無かそれに近く、化学的乾燥の折り試験への影響は小さいことを暗示するであろう。
【0132】
湿潤インク摩擦の結果:
湿潤インク摩擦試験を、印刷したシート、300%面積B、C、Mに行った。この試験の結果を図10にグラフでまとめる。すべての紙が、全般的に非常に良好な湿潤インク摩擦レベルを示す。
最も良い紙はD11、その後に、D7、D8、D9とD10が続く。D6、D12及びCTPはマーキングと似たレベルである。
【0133】
無鉛ガソリン試験の結果
印刷したシート、300%面積B、C、Mに、無鉛ガソリン試験を行った。結果を表8にまとめる。
【0134】
【表8】
【0135】
最も速い紙はD9とD10で、1/2時間後に乾燥する。最も遅い紙はCTPで、その後にD6が続く。
【0136】
この実験部分から次の結論を導き出すことができる:
−D9とD10は、セットオフ防止粉末なしで印刷可能である。
−D7、D11も、セットオフ防止粉末なしでも印刷可能である(臨界領域に少しだけマーキングがある)。
湿潤インク摩擦試験に対しては、そのレベルは非常に良いが、D11、続いてD7とD8が最も良い結果を示した。
【0137】
他の方法はドライヤ系の化学的又は物理的固定化である。シリカと特にサイロイド(Syloid)C803のようなシリカゲルの巨大な内部細孔表面に、上述の触媒ドライヤ系を化学的に固定することが可能である。実際に、適切な有機シロキサン化合物が、シリカの表面で、水酸基に化学的に固定されることは可能であり、SB2のような配位子がこの固定されたシロキサン化合物と化学的に反応でき、最終的に一次金属ドライヤ塩又は錯体(例えば、[Mn(acac)3]や[Mn−アセテート])が、配位結合によりこの固定された配位子に結合することができる。
【0138】
下記のような利点がある。:
−ドライヤ錯体の最終的な有毒性をより少なく抑える
−最終的な変色をより少なくするか完全に抑制する
−湿し水がある場合の(工業的印刷処理で)、ドライヤの不活性化を場合により少なくできる。
【0139】
他の方法は、シリカ又は他の鉱物の巨大な内部の細孔系に、液体ドライヤ系を物理的に吸収することである。高い毛管力の存在により、いわゆる支持液相触媒(SLPC)としてのそれらの挙動は、上記化学的に固定された変異体に等しく、同じぐらい活性であるが、著しく安い。
【0140】
上述した実験のすべては、説明のためだけのものであり、添付の請求項に定義された範囲を制限するために用いられるべきでないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】触媒インク架橋結合の化学的プロセスの概略図である。
【図2】トップコート中にMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)ドライヤ錯体を混入した「標準」MagnoStarに、ラボで、Black Tempo Maxインクを印刷して実施した親指テストによって決定された化学的インク乾燥能力を、異なるMn含有量(Mnなしの基準と0.1及び0.2重量%Mn)に対して、金属に対する配位子のモル比の関数として示した図である。
【図3】Mn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)触媒ドライヤ錯体を混入した、「標準」MagnoStar 250gsm見返しに、Black tempo Maxインクを印刷し、0.1及び0.2重量%Mn、例えば異なる超過量bpyで行ったときのセットオフテストの結果を、金属に対する配位子のモル比の関数として示す。
【図4】トップコートにMn−(2−エチルヘキサノアート、bpy)ドライヤ錯体を混入した「標準」MagnoStarに、Bio2インクをラボで印刷したときの親指テストによる化学的インク乾燥能力を、異なるMn含有量(Mnなしの基準と0.1及び0.2重量%Mn)に対して、金属に対する配位子のモル比の関数として示す。
【図5】カレンダ処理した紙の無鉛ガソリン試験結果である。
【図6】カレンダ処理した紙の湿潤インク摩擦抵抗試験結果である。
【図7a】カレンダ処理した紙のトップサイドに対するセットオフ値を示す。
【図7b】カレンダ処理した紙のワイヤーサイドに対するセットオフ値を示す。
【図8a】カレンダ処理済紙のトップサイドに対する多色インクセッティング値を示す。
【図8b】カレンダ処理済紙のワイヤーサイドに対する多色インクセッティング値を示す。
【図9】カレンダ処理済紙に対するオフセット安定性及び多色繊維ピッキング(MCFP)を示す。
【図10】カレンダ処理済紙に対する湿潤インク摩擦試験結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセットインクの重合性又は架橋性成分を固定するための触媒系を含む、オフセット紙用塗料。
【請求項2】
前記触媒系が、前記塗料上に印刷されるオフセットインクの不飽和成分の酸化重合又は架橋結合を触媒する、請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
前記触媒系が、前記オフセットインクの脂肪酸及び樹脂部分、特に前記オフセットインクの、不飽和、部分的に不飽和、及び/又は共役の脂肪酸及び樹脂部分を固定する、請求項1又は2に記載の塗料。
【請求項4】
前記触媒系が、遷移金属錯体及び/又は遷移金属塩を含む、請求項1から3のいずれかに記載の塗料。
【請求項5】
前記触媒系が、水溶性又は水分散性である、請求項4に記載の塗料。
【請求項6】
前記遷移金属錯体/塩中の遷移金属が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、又はその混合物からなる群より選ばれる、請求項4又は5に記載の塗料。
【請求項7】
前記遷移金属錯体/塩中の遷移金属が、V、Mn、Fe、Co、又はその混合物からなる群より選ばれ、前記遷移金属錯体/塩が好ましくはMnである、請求項4又は5に記載の塗料。
【請求項8】
前記遷移金属錯体/塩をベースとする一次ドライヤ触媒系が、Pb、Bi、Ba、Al、Sr、Zr又はその混合物を塩、錯体等のイオンの形で含む二次ドライヤ系により補充される、請求項4から7のいずれかに記載の塗料。
【請求項9】
前記遷移金属錯体/塩をベースとする一次ドライヤ触媒系が、Ca、Zn、Li、K、又はその混合物を塩、好ましくはカルボン酸塩、錯体等のイオンの形で含む補助ドライヤ系により補充される、請求項4から8のいずれかに記載の塗料。
【請求項10】
前記遷移金属錯体/塩が、カルボン酸及び/又はナフテン酸錯体/塩である、請求項4から9のいずれかに記載の塗料。
【請求項11】
前記遷移金属錯体/塩が、炭素数2から18、好ましくは6から12の置換または非置換のアルキル鎖をもつカルボン酸塩である、請求項10に記載の塗料。
【請求項12】
前記遷移金属錯体/塩が、2−エチルヘキサノアート−錯体/塩である、請求項11に記載の塗料。
【請求項13】
前記遷移金属錯体/塩が、少なくとも1つの二座配位子を含む、請求項4から12のいずれかに記載の塗料。
【請求項14】
前記配位子が、ジアミンである、請求項13に記載の塗料。
【請求項15】
前記少なくとも1つの配位子が、2,2’−ビピリジン、2-アミノメチルピリジン、2−ヒドロキシメチルピリジン、又は1,10−フェナントロリンからなる群より選ばれる、置換されてもよい配位子である、請求項13又は14に記載の塗料。
【請求項16】
前記配位子が、溶解度及び/又は分散性及び/又は安定性を増加させるために置換される、請求項15に記載の塗料。
【請求項17】
前記触媒系が、Mn2,2’−ビピリジンからなる又は含む、請求項1から16のいずれかに記載の塗料。
【請求項18】
前記触媒系が、金属部分を含み、且つ、前記一次触媒系の金属部分が、塗料中に、塗料の合計乾燥重量の0.01から0.5重量%、好ましくは塗料の合計乾燥重量の0.05から0.20重量%存在する、請求項1から17のいずれかに記載の塗料。
【請求項19】
前記触媒系が、遷移金属並びに少なくとも1つの二座配位子を含み、且つ、配位子に対する金属の割合が、1:1から1:8又は最大1:20の範囲にある、請求項1から18のいずれかに記載の塗料。
【請求項20】
前記触媒系に含まれる、前記遷移金属錯体/塩及び/又は配位子の溶解度/分散性を増加させるための添加剤が存在している、請求項1から19のいずれかに記載の塗料。
【請求項21】
TAPPI75degによる表面の光沢が、75%を超える、請求項1から20のいずれかに記載の塗料。
【請求項22】
DIN75degによる光沢が、45を超える、好ましくは50を超える、請求項1から21のいずれかに記載の塗料。
【請求項23】
5から20部のバインダ及び添加剤により補充された顔料を乾燥重量で100部含み、且つ、前記顔料部分はCaCO3、特に超微細又はクレイCaCO3又はその混合物を含み、前記顔料部分は、固体又は空胞化した合成高分子顔料により、10から20部まで置換されてもよい、請求項1から22のいずれかに記載の塗料。
【請求項24】
10から30g/m2、好ましくは15g/m2の範囲の厚みを有するトップコートとして塗布される、請求項1から23のいずれかに記載の塗料。
【請求項25】
前記塗料に塗布されるオフセット印刷インクの乾燥時間が、2時間未満、好ましくは1時間未満、特に好ましくは0.5時間以下である、請求項1から24のいずれかに記載の塗料。
【請求項26】
顔料部分、好ましくは微粒子シリカ/シリカゲルの少なくとも1部分が、微量な金属、好ましくは遷移金属を含み又は選択的に濃縮され、少なくとも1つの金属が、10ppbより多く、好ましくは500ppbより多く、前記シリカ及び/又は他の顔料に存在していることを特徴とする、請求項1から25のいずれかに記載の塗料。
【請求項27】
Co、Mn、V、Ce、Fe、Cr、Ni、Rh、Ru、又はその組み合わせが、好ましくは、10ppbを超えて10ppmまで顔料中に存在し、場合によっては、Zr、La、Nd、Al、Bi、Sr、Pb、Ba又はその組み合わせと共同して、好ましくは、10ppbを超えて10ppm又は20ppmまで顔料中に存在し、場合によっては、Ca、K、Li、Zn又はその組み合わせと共同して、好ましくは、10ppbを超えて10ppm又は20ppmまで顔料中に存在することを特徴とする、請求項26に記載の塗料。
【請求項28】
Co+Mn、Co+Ca+Zr又はLi又はBi又はNd、Co+Zr/Ca、Co+La、Mn+K及び/又はZrから選ばれる組み合わせが存在することを特徴とする、請求項27に記載の塗料。
【請求項29】
前記トップコート及び/又は第2の層が、触媒系をマンガン錯体/塩、マンガンカルボン酸錯体/塩及び/又は酢酸マンガン錯体/塩又はその混合物の形で含むことを特徴とする、請求項1から28のいずれかに記載の塗料。
【請求項30】
前記触媒系が、合計乾燥塗膜重量の、乾燥重量0.5から3部、好ましくは乾燥重量1から2部存在することを特徴とする、請求項1から29のいずれかに記載の塗料。
【請求項31】
トップコート及び/又は第2の層が、触媒系を、マンガン錯体/塩、カルボン酸マンガン錯体/塩、及び/又は酢酸マンガン又はマンガンアセチルアセテート錯体/塩の形で含み、Mn錯体の触媒活性のために、Mn(II)並びにMn(III)が、同時に、又は混合物として存在し、前記触媒系の金属部分が、塗料の合計乾燥重量の0.05から0.6重量%、好ましくは0.02から0.4重量%、塗料中に存在することを特徴とする、請求項1から30のいずれかに記載の塗料。
【請求項32】
トップコートとして、請求項1から31のいずれかに記載の塗料を用いて塗膜された紙。
【請求項33】
前記トップコートの下に、好ましくは(preferentially)又は選択的に前記触媒系を備えた、さらなる塗膜がある、請求項32に記載の紙。
【請求項34】
前記触媒系に水溶液又は水分散液として含まれる前記遷移金属錯体/塩が、撹拌された塗料配合物に加えられ、最終的な塗料配合物が紙基材上に塗布される、請求項1から31のいずれかに記載の塗料の製造方法。
【請求項35】
前記遷移金属錯体/塩の添加と同時に、キレート剤及び/又は配位子が、好ましくは遷移金属含有量を上回って、前記塗料配合物に加えられ、前記キレート剤及び/又は配位子が、水溶液又は水分散液として加えられ、前記キレート剤の溶解度/分散性を増加するための助剤を含んでもよい、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
塗料、特に高光沢のオフセット紙の塗料用添加剤として、オフセットインクの重合性又は架橋性成分を固定するための触媒系の使用。
【請求項37】
前記触媒系が、水溶性又は水分散性遷移金属錯体/塩を、好ましくはカルボン酸塩として且つ二座配位子と組み合わせて含む、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
好ましくは、インクの化学的乾燥を改良するために触媒系をも含むオフセットインクを用いるオフセット印刷工程での、請求項32又は33のいずれかに記載の紙の使用。
【請求項1】
オフセットインクの重合性又は架橋性成分を固定するための触媒系を含む、オフセット紙用塗料。
【請求項2】
前記触媒系が、前記塗料上に印刷されるオフセットインクの不飽和成分の酸化重合又は架橋結合を触媒する、請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
前記触媒系が、前記オフセットインクの脂肪酸及び樹脂部分、特に前記オフセットインクの、不飽和、部分的に不飽和、及び/又は共役の脂肪酸及び樹脂部分を固定する、請求項1又は2に記載の塗料。
【請求項4】
前記触媒系が、遷移金属錯体及び/又は遷移金属塩を含む、請求項1から3のいずれかに記載の塗料。
【請求項5】
前記触媒系が、水溶性又は水分散性である、請求項4に記載の塗料。
【請求項6】
前記遷移金属錯体/塩中の遷移金属が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、又はその混合物からなる群より選ばれる、請求項4又は5に記載の塗料。
【請求項7】
前記遷移金属錯体/塩中の遷移金属が、V、Mn、Fe、Co、又はその混合物からなる群より選ばれ、前記遷移金属錯体/塩が好ましくはMnである、請求項4又は5に記載の塗料。
【請求項8】
前記遷移金属錯体/塩をベースとする一次ドライヤ触媒系が、Pb、Bi、Ba、Al、Sr、Zr又はその混合物を塩、錯体等のイオンの形で含む二次ドライヤ系により補充される、請求項4から7のいずれかに記載の塗料。
【請求項9】
前記遷移金属錯体/塩をベースとする一次ドライヤ触媒系が、Ca、Zn、Li、K、又はその混合物を塩、好ましくはカルボン酸塩、錯体等のイオンの形で含む補助ドライヤ系により補充される、請求項4から8のいずれかに記載の塗料。
【請求項10】
前記遷移金属錯体/塩が、カルボン酸及び/又はナフテン酸錯体/塩である、請求項4から9のいずれかに記載の塗料。
【請求項11】
前記遷移金属錯体/塩が、炭素数2から18、好ましくは6から12の置換または非置換のアルキル鎖をもつカルボン酸塩である、請求項10に記載の塗料。
【請求項12】
前記遷移金属錯体/塩が、2−エチルヘキサノアート−錯体/塩である、請求項11に記載の塗料。
【請求項13】
前記遷移金属錯体/塩が、少なくとも1つの二座配位子を含む、請求項4から12のいずれかに記載の塗料。
【請求項14】
前記配位子が、ジアミンである、請求項13に記載の塗料。
【請求項15】
前記少なくとも1つの配位子が、2,2’−ビピリジン、2-アミノメチルピリジン、2−ヒドロキシメチルピリジン、又は1,10−フェナントロリンからなる群より選ばれる、置換されてもよい配位子である、請求項13又は14に記載の塗料。
【請求項16】
前記配位子が、溶解度及び/又は分散性及び/又は安定性を増加させるために置換される、請求項15に記載の塗料。
【請求項17】
前記触媒系が、Mn2,2’−ビピリジンからなる又は含む、請求項1から16のいずれかに記載の塗料。
【請求項18】
前記触媒系が、金属部分を含み、且つ、前記一次触媒系の金属部分が、塗料中に、塗料の合計乾燥重量の0.01から0.5重量%、好ましくは塗料の合計乾燥重量の0.05から0.20重量%存在する、請求項1から17のいずれかに記載の塗料。
【請求項19】
前記触媒系が、遷移金属並びに少なくとも1つの二座配位子を含み、且つ、配位子に対する金属の割合が、1:1から1:8又は最大1:20の範囲にある、請求項1から18のいずれかに記載の塗料。
【請求項20】
前記触媒系に含まれる、前記遷移金属錯体/塩及び/又は配位子の溶解度/分散性を増加させるための添加剤が存在している、請求項1から19のいずれかに記載の塗料。
【請求項21】
TAPPI75degによる表面の光沢が、75%を超える、請求項1から20のいずれかに記載の塗料。
【請求項22】
DIN75degによる光沢が、45を超える、好ましくは50を超える、請求項1から21のいずれかに記載の塗料。
【請求項23】
5から20部のバインダ及び添加剤により補充された顔料を乾燥重量で100部含み、且つ、前記顔料部分はCaCO3、特に超微細又はクレイCaCO3又はその混合物を含み、前記顔料部分は、固体又は空胞化した合成高分子顔料により、10から20部まで置換されてもよい、請求項1から22のいずれかに記載の塗料。
【請求項24】
10から30g/m2、好ましくは15g/m2の範囲の厚みを有するトップコートとして塗布される、請求項1から23のいずれかに記載の塗料。
【請求項25】
前記塗料に塗布されるオフセット印刷インクの乾燥時間が、2時間未満、好ましくは1時間未満、特に好ましくは0.5時間以下である、請求項1から24のいずれかに記載の塗料。
【請求項26】
顔料部分、好ましくは微粒子シリカ/シリカゲルの少なくとも1部分が、微量な金属、好ましくは遷移金属を含み又は選択的に濃縮され、少なくとも1つの金属が、10ppbより多く、好ましくは500ppbより多く、前記シリカ及び/又は他の顔料に存在していることを特徴とする、請求項1から25のいずれかに記載の塗料。
【請求項27】
Co、Mn、V、Ce、Fe、Cr、Ni、Rh、Ru、又はその組み合わせが、好ましくは、10ppbを超えて10ppmまで顔料中に存在し、場合によっては、Zr、La、Nd、Al、Bi、Sr、Pb、Ba又はその組み合わせと共同して、好ましくは、10ppbを超えて10ppm又は20ppmまで顔料中に存在し、場合によっては、Ca、K、Li、Zn又はその組み合わせと共同して、好ましくは、10ppbを超えて10ppm又は20ppmまで顔料中に存在することを特徴とする、請求項26に記載の塗料。
【請求項28】
Co+Mn、Co+Ca+Zr又はLi又はBi又はNd、Co+Zr/Ca、Co+La、Mn+K及び/又はZrから選ばれる組み合わせが存在することを特徴とする、請求項27に記載の塗料。
【請求項29】
前記トップコート及び/又は第2の層が、触媒系をマンガン錯体/塩、マンガンカルボン酸錯体/塩及び/又は酢酸マンガン錯体/塩又はその混合物の形で含むことを特徴とする、請求項1から28のいずれかに記載の塗料。
【請求項30】
前記触媒系が、合計乾燥塗膜重量の、乾燥重量0.5から3部、好ましくは乾燥重量1から2部存在することを特徴とする、請求項1から29のいずれかに記載の塗料。
【請求項31】
トップコート及び/又は第2の層が、触媒系を、マンガン錯体/塩、カルボン酸マンガン錯体/塩、及び/又は酢酸マンガン又はマンガンアセチルアセテート錯体/塩の形で含み、Mn錯体の触媒活性のために、Mn(II)並びにMn(III)が、同時に、又は混合物として存在し、前記触媒系の金属部分が、塗料の合計乾燥重量の0.05から0.6重量%、好ましくは0.02から0.4重量%、塗料中に存在することを特徴とする、請求項1から30のいずれかに記載の塗料。
【請求項32】
トップコートとして、請求項1から31のいずれかに記載の塗料を用いて塗膜された紙。
【請求項33】
前記トップコートの下に、好ましくは(preferentially)又は選択的に前記触媒系を備えた、さらなる塗膜がある、請求項32に記載の紙。
【請求項34】
前記触媒系に水溶液又は水分散液として含まれる前記遷移金属錯体/塩が、撹拌された塗料配合物に加えられ、最終的な塗料配合物が紙基材上に塗布される、請求項1から31のいずれかに記載の塗料の製造方法。
【請求項35】
前記遷移金属錯体/塩の添加と同時に、キレート剤及び/又は配位子が、好ましくは遷移金属含有量を上回って、前記塗料配合物に加えられ、前記キレート剤及び/又は配位子が、水溶液又は水分散液として加えられ、前記キレート剤の溶解度/分散性を増加するための助剤を含んでもよい、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
塗料、特に高光沢のオフセット紙の塗料用添加剤として、オフセットインクの重合性又は架橋性成分を固定するための触媒系の使用。
【請求項37】
前記触媒系が、水溶性又は水分散性遷移金属錯体/塩を、好ましくはカルボン酸塩として且つ二座配位子と組み合わせて含む、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
好ましくは、インクの化学的乾燥を改良するために触媒系をも含むオフセットインクを用いるオフセット印刷工程での、請求項32又は33のいずれかに記載の紙の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2008−520759(P2008−520759A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540612(P2007−540612)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012249
【国際公開番号】WO2006/053719
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(505115005)エスエーピーピーアイ ネザーランズ サーヴィシーズ ビー.ヴイ (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012249
【国際公開番号】WO2006/053719
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(505115005)エスエーピーピーアイ ネザーランズ サーヴィシーズ ビー.ヴイ (9)
【Fターム(参考)】
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