オフセット印刷装置
【課題】印刷法によりカラーフィルタを製造する際に、ブランケット胴への印刷部材の塗布及びブランケット胴から不要印刷部材の円筒形状の凸版への転写除去及び透明基板への印刷部材の転写の各工程を同時に行なうことが出来ようにすることにより、連続的・効率的にカラーフィルターを製造することの出来るオフセット印刷装置を提供する。
【解決手段】ブランケットおよび版は共にロール状であり、中心軸方向を揃えて接しており、前記版には、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理する非画線部パターン状に対応した凸部が設けられていると共に、さらに、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理した前記版の凸部表面からインキを除去する手段を備える構成とする。
【解決手段】ブランケットおよび版は共にロール状であり、中心軸方向を揃えて接しており、前記版には、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理する非画線部パターン状に対応した凸部が設けられていると共に、さらに、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理した前記版の凸部表面からインキを除去する手段を備える構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、カラーフィルターの製造に好適なオフセット印刷装置の改良に関する。
【背景技術】
【０００２】
カラーフィルターを印刷法により製造するにあたって、平板状の透明基板からなる被印刷体に着色パターンを印刷形成する場合、一般的に、固定された水平印刷定盤に、対向するブランケット胴が直線的に往復移動を行ない、印刷版または被印刷体を転動して印刷を行なう方式が採用される。
【０００３】
印刷装置としては、印刷版またはブランケット胴に印刷インキを供給した後、ブランケット胴を水平移動させて、水平印刷定盤とブランケット胴との間で印刷版または被印刷体を加圧しながら、印刷版またはブランケット胴に供給された印刷インキを、ブランケット胴に巻かれたブランケット（ゴム弾性面）表面にて、画線部となるパターン状に形成し、インキパターンを被印刷体に転移させる形式のオフセット印刷装置が使用される。
【０００４】
オフセット印刷方式によるカラーフィルタの製造方法としては、以下の特許文献などで報告されている。
【特許文献１】特開２０００−１４１５９０号公報
【特許文献２】特開２００４−３１７７９１号公報
【０００５】
特許文献１によるカラーフィルターの製造方法（オフセツト印刷方法）は、
凹版にインキを供給し、余分なインキをドクタブレードでかきとつた後、該凹版上のインキパターンをブランケツトで受理し、受理した該ブランケツト上のインキパターンを被印刷物に転移させて印刷を行なうオフセツト印刷方法において、
前記凹版上のインキパターンのブランケツトによる受理の後、次の印刷のために凹版にインキを供給するまでの間に、前記凹版内に残留しているインキにインキ溶剤を供給する工程を具備し、これにより、その残留インキを溶解し、次の印刷のために凹版に供給するインキと混合して再使用することを特徴とする。（請求項１）
【０００６】
特許文献２によるカラーフィルターの製造方法（オフセツト印刷装置）は、
凸版胴の周囲に、転写の工程の上流から下流に向かって、インキ供給部が設けられて前記凸版胴にそれぞれ異なった色のインキを転写する複数の凹版胴、及び前記凸版胴から該凸版胴に転写されたインキを透明基板に転写するための圧胴が配置されていることを特徴とする凹版と凸版の組み合わせによる多色同時印刷装置（請求項１）である。
【０００７】
特許文献１によるカラーフィルターの製造方法（オフセツト印刷方法）では、
凹版の洗浄工程により印刷作業が中断されて製造効率が落ちたり、また製造タクトを稼ぐためには凹版を複数枚準備する必要があり、これが製造コスト上昇の原因となっているという問題点に鑑み、凹版洗浄で印刷作業を中断させることなく連続印刷が可能な効率の良いオフセット印刷方法および装置を提供することを目的としている。
【０００８】
しかし、特許文献１に説明される方法では、凹版およびワークとなるガラス基板（被印刷体）は、共に平板状であり、これらは同一平面に直列に配置されている。
そのため、ブランケツトからワーク（被印刷体）にインキパターンを転移（印刷）している間に、次の印刷のためにインキを供給するまでの間に、凹版表面にインキ溶剤を供給して凹版の洗浄を行ない、印刷作業の中断状態を短時間化してはいるが、ブランケツトには次の印刷のためにインキパターンを形成する工程が必要であり、その間、ワーク（被印刷体）は待機状態にあるため、完全な連続印刷とは言えず、間欠的な印刷である。
また、１回の印刷（ブランケツトからワークへのインキ転移）による最大印刷サイズは、ブランケツト周面のサイズに限られる。
【０００９】
特許文献２によるカラーフィルターの製造方法（オフセツト印刷装置）では、間欠的ではなく完全な連続印刷が可能な構成ではある。
特許文献２では、最終的にワーク（被印刷体）に転移（印刷）することになるインキパターンを、凸版胴の表面に形成するにあたっては、複数の凹版胴からそれぞれ異なる色のインキパターンを転写する。
そのため、複数の凹版胴から凸版胴の表面に転写された時点で、インキパターンが規定されていなければならず、凹版胴と凸版胴との間では厳格なアライメントが要求される。
また、上記構造上、最終的なカラーフィルターとなるインキパターンは、（例えば、Ｒ・Ｇ・Ｂ３色の）ストライプ状のカラーパターンの形成には適しているが、マトリクス状のカラーパターンの形成は困難である。
【００１０】
昨今では、液晶ディスプレイに対する画面の大型化への要求が高く、それに応じてカラーフィルターの大サイズ化（例えば、1500ｍｍ×1800ｍｍサイズ以上）に対する市場要求が急激に高まっている。、
そのため、いかに大型化に対応するかが重要視されている。
【００１１】
一方で、従来の印刷法によるカラーフィルターの製造工程は、一般的に、
印刷部材（インキ）供給装置から転写装置（ブランケット）に印刷部材を供給する工程（工程−１）、
転写装置を介して、不要な印刷部材（非画線部）を平板状の刷版にのせる工程（工程−２）、
必要な印刷部材（画線部）を、転写装置を介して製品に転写する工程（工程−３）、
転写装置に残存した印刷部材を除去する工程（工程−４）、
刷版に残った不要な印刷部材の除去をする工程（工程−５）
といった各工程と、適当な温度でのベークをする工程が必要であり、連続的に品質の安定したカラーフィルターを製造するためには前記各工程が逐次終了しなければならないので、工程−５を他の工程−３，４，１の動作時に同時に行ったとしても、工程−１，２，３，４は同時に行なうことは出来ないため、製品を完成するために要する時間（以下、タクトと呼ぶ）は、工程−１，２，３，４それぞれの工程に要する時間の積算となる。
【００１２】
従って、カラーフィルターが大型化すると、従来の印刷法では、転写装置や印刷版洗浄装置の往復移動距離が長くなり、生産性を向上させることが困難であった。
【００１３】
また、タクトが長くなればなるほど、印刷部材供給装置において印刷部材の乾き防止の工夫が必要となる。
例えば、コーターを使用して印刷部材を供給する場合には、他の工程が終了するまでの待ち時間が長時間になると、供給装置の印刷部材吐出口付近の印刷部材が乾燥し固化してパーティクルの原因となる危険性がある。
そこで、前記印刷部材吐出口の乾燥防止装置や洗浄装置が必要となり、装置の複雑化やコストアップの要因となっていた。
【００１４】
さらに、前記印刷法によるカラーフィルター製造装置では、転写装置にブランケット胴を駆動させるための手段としてモーターや減速機などの駆動部を備えており、印刷版に不要印刷部材を転写除去するときや透明基板上にパターンを印刷する際に、印刷版及び透明基板の上部を前記駆動部が移動する。
その際、駆動部から発生したパーティクルが製品に付着し、品質の低下につながる要因となっていた。
【００１５】
また、前記印刷法では平板状の刷版に残った不要な印刷部材の除去をする工程において有機溶剤等を前記平板状の刷版上に散布して印刷部材を溶解させ、それをゴムのブレードまたはドクターで掻き取るといった手法をとっていた。
この場合、ブレードやドクターと印刷版の摩擦により削り粕が発生したり、印刷版が摩滅するといった問題がある。
【００１６】
一方、従来のグラビア印刷方式のように、円筒形状凸版の不要印刷部材をスキージなどで掻きとる方法の場合、版の凹凸とスキージのこすれによるスキージの削り粕が発生することにより、その削り粕がブランケット胴に転移しさらに印刷部材の転写される透明基板に達することにより、カラーフィルタの品質を劣化させるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１７】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、印刷法によりカラーフィルタを製造する際に、
ブランケット胴への印刷部材の塗布及びブランケット胴から不要印刷部材の円筒形状の凸版への転写除去及び透明基板への印刷部材の転写の各工程を同時に行なうことが出来るようにすること、
カラーフィルターの印刷面を下向きに配置すること、
円筒形状の凸版に接触することなく不要印刷部材の除去洗浄及び版乾燥を行なうことが出来るようにすること、
などにより、パーティクルによるカラーフィルターの品質低下を防ぎ、連続的・効率的にカラーフィルターを製造することの出来るオフセット印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【００１８】
上記目的を達成する為になされた請求項1に記載の発明は、
ブランケット表面にインキを供給するディスペンサ装置、
前記ブランケット表面のインキを、非画線部パターン状に選択的に受理する版、
前記版により除去されずに残ったブランケット表面の画線部パターン状のインキパターンを、被印刷物上に転移する前記ブランケット、
とを少なくとも具備するオフセット印刷装置において、
ブランケットおよび版は共にロール状であり、中心軸方向を揃えて接しており、
前記版には、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理する非画線部パターン状に対応した凸部が設けられていると共に、
さらに、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理した前記版の凸部表面からインキを除去する手段を備えることを特徴とするオフセット印刷装置である。
上記構成により、ブランケット胴へのインキの塗布およびロール状版による不要インキの転写除去および被印刷体へのインキパターンの転写を同時に行なうことが可能である。
【００１９】
ブランケット表面から選択的にインキを受理した前記版の凸部表面からインキを除去する手段は、ロール状版に非接触で行なわれることが好ましく、有機溶剤などの洗浄液，インキを流水洗浄するための純水，前記版を乾燥するエアーなどの流体のみが接触するような構成とする。（請求項４）
上記構成により、パーティクルの発生をなくし、高品質なカラーフィルターを製造することが一層可能となる。
【発明の効果】
【００２０】
本発明によるオフセット印刷装置（カラーフィルター製造装置）によると、ブランケット胴への印刷部材の塗布、円筒形状凸版による転写除去、透明基板への印刷部材の転写及び円筒形状凸版の洗浄を同時に行うことの出来る装置を得ることにより、連続的に効率よくカラーフィルターを製造することが出来る。
また、上記カラーフィルター製造装置において、透明基板への印刷部材転写面を下面に配置することにより、印刷直後のウェットな状態でカラーフィルタ印刷面にパーティクルが載ることがなく高品質なカラーフィルターを得ることが出来る。
さらに、上記カラーフィルター製造装置において、円筒形状凸版に接触することなく洗浄を行うことによりパーティクルによる品質劣化を防ぐことが出来高品質なカラーフィルターを製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２１】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明のカラーフィルター製造装置の基本となる構成断面図を示す説明図である。
ブランケットを装着する為のブランケット胴１，印刷部材を塗布するブランケット２，透明基板１０をブランケット胴１に押し付ける為の圧胴５，ブランケット胴１に装着されたブランケット２に印刷部材（インキ）を塗布する為の印刷部材供給部４，円筒形状凸版３の周囲には洗浄液噴霧ノズル６，純水噴霧ノズル７，乾燥装置９が配置され、さらに洗浄液の作用や噴霧された純水により円筒形状凸版から除去された不要印刷部材を吸引する吸引口８、を少なくとも有する構成である。
以下、本カラーフィルタ製造装置による印刷工程について説明する。
【００２２】
ブランケット胴１が回転しながら印刷部材供給部４より供給された印刷部材がブランケット上に塗布される。
円筒形状の凸版とブランケット胴は適当なニップ圧で圧着されており、塗布された印刷部材はブランケットと円筒状凸版の圧着部において印刷部材の不要部分が円筒状凸版３表面に転写除去される。
【００２３】
ブランケット２上に残った印刷部材はさらに連続してブランケット胴１が回転することにより透明基板１０との接触点に到達する。
このとき、透明基板１０は適切な位置に印刷が施されるように位置調整された状態でブランケット胴１と圧胴５の間に供給される。
ブランケット胴１と圧胴５の間に供給された透明基板１０はニップされブランケット胴１の円周回転方向に沿って移動しながら透明基板１０に印刷部材が転写され、製品（カラーフィルター）が完成する。
【００２４】
ここで、透明基板１０をニップする方法は透明基板１０の背面より圧胴５で押す方式であっても、逆に転写装置側からニップをかける方式でも、透明基板１０の載っている定盤高さを上下する方式等でも良い。
【００２５】
一方、円筒形状凸版３に転写除去された不要印刷部材は、同凸版の回転により洗浄液噴霧エリアに到達する。洗浄液噴霧エリアでは、洗浄液噴霧ノズル６により洗浄液が不要印刷部材の塗膜上に噴霧される。
前記洗浄液によって不要印刷部材は円筒形状凸版表面にて溶解または剥離するか、もしくは剥離しやすい状態となる。
洗浄液噴霧用ノズルはノズル先端の形状により広範囲に均一に噴霧できることが好ましく、この場合1流体ノズル、2流体ノズルのどちらを用いてもかまわないが、2流体ノズルを使用することにより印刷部材の剥離が促進されより高い洗浄効果を得ることが出来、結果洗浄液の省液についても効果的である。
【００２６】
次に、円筒形状凸版３がさらに連続的に回転することにより、前記不要印刷部材の洗浄液が噴霧されたエリアは純水スプレーによる洗浄エリアにて流水洗浄される。
ここでは、純水吐出ノズル７から噴出された純水は円筒形状凸版３に到達しその打撃力により、前記不要印刷物や洗浄液が洗い流される。
【００２７】
純水洗浄エリアにおいて円筒形状凸版３表面より除去された不要印刷部材及び洗浄液及び純水は、純水洗浄エリアの下部に設けられた廃液及び排気用の吸引口８より吸引除去される。
前記吸引口８からの吸い込み作用により、洗浄部チャンバー内は常に負圧に保たれ洗浄液ミストなどがチャンバー外に噴出すことを防止される。
さらに円筒形状凸版３が回転をすると、純水洗浄された円筒形状凸版３の洗浄部分は版面を乾燥させる乾燥部に達する。乾燥部では、エアブローにより版面の乾燥が促進され、ブランケット胴との接点において転写除去が可能となる。
以上のようにして、洗浄液噴霧，純水スプレー洗浄及び版表面の乾燥が同時にかつ連続的に行なわれることになり、製品（カラーフィルター）が完成する為に必要な全ての工程を連続して同時に行うことが出来るため、連続的・効率的にカラーフィルターを製造することが出来る。
【実施例】
【００２８】
図１に示す実施形態での装置における実施例として、以下の構成の装置を採用した。
透明基板１０をニップする方法：基板１０背面より圧胴で押す方法
印刷部材の供給方法：ダイコート法
ブランケット２：シリコンゴム
洗浄液：アルカリ洗浄液
【図面の簡単な説明】
【００２９】
【図１】本発明によるオフセット印刷装置（カラーフィルタ製造装置）の実施形態についての概要を示す説明図。
【符号の説明】
【００３０】
１・・・ブランケット胴
２・・・ブランケット
３・・・円筒形状の凸版（ロール状版）
４・・・印刷部材供給装置
５・・・圧胴
６・・・洗浄液供給ノズル
７・・・純水供給ノズル
８・・・吸引口
９・・・乾燥装置
１０・・透明基板
【技術分野】
【０００１】
本発明は、カラーフィルターの製造に好適なオフセット印刷装置の改良に関する。
【背景技術】
【０００２】
カラーフィルターを印刷法により製造するにあたって、平板状の透明基板からなる被印刷体に着色パターンを印刷形成する場合、一般的に、固定された水平印刷定盤に、対向するブランケット胴が直線的に往復移動を行ない、印刷版または被印刷体を転動して印刷を行なう方式が採用される。
【０００３】
印刷装置としては、印刷版またはブランケット胴に印刷インキを供給した後、ブランケット胴を水平移動させて、水平印刷定盤とブランケット胴との間で印刷版または被印刷体を加圧しながら、印刷版またはブランケット胴に供給された印刷インキを、ブランケット胴に巻かれたブランケット（ゴム弾性面）表面にて、画線部となるパターン状に形成し、インキパターンを被印刷体に転移させる形式のオフセット印刷装置が使用される。
【０００４】
オフセット印刷方式によるカラーフィルタの製造方法としては、以下の特許文献などで報告されている。
【特許文献１】特開２０００−１４１５９０号公報
【特許文献２】特開２００４−３１７７９１号公報
【０００５】
特許文献１によるカラーフィルターの製造方法（オフセツト印刷方法）は、
凹版にインキを供給し、余分なインキをドクタブレードでかきとつた後、該凹版上のインキパターンをブランケツトで受理し、受理した該ブランケツト上のインキパターンを被印刷物に転移させて印刷を行なうオフセツト印刷方法において、
前記凹版上のインキパターンのブランケツトによる受理の後、次の印刷のために凹版にインキを供給するまでの間に、前記凹版内に残留しているインキにインキ溶剤を供給する工程を具備し、これにより、その残留インキを溶解し、次の印刷のために凹版に供給するインキと混合して再使用することを特徴とする。（請求項１）
【０００６】
特許文献２によるカラーフィルターの製造方法（オフセツト印刷装置）は、
凸版胴の周囲に、転写の工程の上流から下流に向かって、インキ供給部が設けられて前記凸版胴にそれぞれ異なった色のインキを転写する複数の凹版胴、及び前記凸版胴から該凸版胴に転写されたインキを透明基板に転写するための圧胴が配置されていることを特徴とする凹版と凸版の組み合わせによる多色同時印刷装置（請求項１）である。
【０００７】
特許文献１によるカラーフィルターの製造方法（オフセツト印刷方法）では、
凹版の洗浄工程により印刷作業が中断されて製造効率が落ちたり、また製造タクトを稼ぐためには凹版を複数枚準備する必要があり、これが製造コスト上昇の原因となっているという問題点に鑑み、凹版洗浄で印刷作業を中断させることなく連続印刷が可能な効率の良いオフセット印刷方法および装置を提供することを目的としている。
【０００８】
しかし、特許文献１に説明される方法では、凹版およびワークとなるガラス基板（被印刷体）は、共に平板状であり、これらは同一平面に直列に配置されている。
そのため、ブランケツトからワーク（被印刷体）にインキパターンを転移（印刷）している間に、次の印刷のためにインキを供給するまでの間に、凹版表面にインキ溶剤を供給して凹版の洗浄を行ない、印刷作業の中断状態を短時間化してはいるが、ブランケツトには次の印刷のためにインキパターンを形成する工程が必要であり、その間、ワーク（被印刷体）は待機状態にあるため、完全な連続印刷とは言えず、間欠的な印刷である。
また、１回の印刷（ブランケツトからワークへのインキ転移）による最大印刷サイズは、ブランケツト周面のサイズに限られる。
【０００９】
特許文献２によるカラーフィルターの製造方法（オフセツト印刷装置）では、間欠的ではなく完全な連続印刷が可能な構成ではある。
特許文献２では、最終的にワーク（被印刷体）に転移（印刷）することになるインキパターンを、凸版胴の表面に形成するにあたっては、複数の凹版胴からそれぞれ異なる色のインキパターンを転写する。
そのため、複数の凹版胴から凸版胴の表面に転写された時点で、インキパターンが規定されていなければならず、凹版胴と凸版胴との間では厳格なアライメントが要求される。
また、上記構造上、最終的なカラーフィルターとなるインキパターンは、（例えば、Ｒ・Ｇ・Ｂ３色の）ストライプ状のカラーパターンの形成には適しているが、マトリクス状のカラーパターンの形成は困難である。
【００１０】
昨今では、液晶ディスプレイに対する画面の大型化への要求が高く、それに応じてカラーフィルターの大サイズ化（例えば、1500ｍｍ×1800ｍｍサイズ以上）に対する市場要求が急激に高まっている。、
そのため、いかに大型化に対応するかが重要視されている。
【００１１】
一方で、従来の印刷法によるカラーフィルターの製造工程は、一般的に、
印刷部材（インキ）供給装置から転写装置（ブランケット）に印刷部材を供給する工程（工程−１）、
転写装置を介して、不要な印刷部材（非画線部）を平板状の刷版にのせる工程（工程−２）、
必要な印刷部材（画線部）を、転写装置を介して製品に転写する工程（工程−３）、
転写装置に残存した印刷部材を除去する工程（工程−４）、
刷版に残った不要な印刷部材の除去をする工程（工程−５）
といった各工程と、適当な温度でのベークをする工程が必要であり、連続的に品質の安定したカラーフィルターを製造するためには前記各工程が逐次終了しなければならないので、工程−５を他の工程−３，４，１の動作時に同時に行ったとしても、工程−１，２，３，４は同時に行なうことは出来ないため、製品を完成するために要する時間（以下、タクトと呼ぶ）は、工程−１，２，３，４それぞれの工程に要する時間の積算となる。
【００１２】
従って、カラーフィルターが大型化すると、従来の印刷法では、転写装置や印刷版洗浄装置の往復移動距離が長くなり、生産性を向上させることが困難であった。
【００１３】
また、タクトが長くなればなるほど、印刷部材供給装置において印刷部材の乾き防止の工夫が必要となる。
例えば、コーターを使用して印刷部材を供給する場合には、他の工程が終了するまでの待ち時間が長時間になると、供給装置の印刷部材吐出口付近の印刷部材が乾燥し固化してパーティクルの原因となる危険性がある。
そこで、前記印刷部材吐出口の乾燥防止装置や洗浄装置が必要となり、装置の複雑化やコストアップの要因となっていた。
【００１４】
さらに、前記印刷法によるカラーフィルター製造装置では、転写装置にブランケット胴を駆動させるための手段としてモーターや減速機などの駆動部を備えており、印刷版に不要印刷部材を転写除去するときや透明基板上にパターンを印刷する際に、印刷版及び透明基板の上部を前記駆動部が移動する。
その際、駆動部から発生したパーティクルが製品に付着し、品質の低下につながる要因となっていた。
【００１５】
また、前記印刷法では平板状の刷版に残った不要な印刷部材の除去をする工程において有機溶剤等を前記平板状の刷版上に散布して印刷部材を溶解させ、それをゴムのブレードまたはドクターで掻き取るといった手法をとっていた。
この場合、ブレードやドクターと印刷版の摩擦により削り粕が発生したり、印刷版が摩滅するといった問題がある。
【００１６】
一方、従来のグラビア印刷方式のように、円筒形状凸版の不要印刷部材をスキージなどで掻きとる方法の場合、版の凹凸とスキージのこすれによるスキージの削り粕が発生することにより、その削り粕がブランケット胴に転移しさらに印刷部材の転写される透明基板に達することにより、カラーフィルタの品質を劣化させるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１７】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、印刷法によりカラーフィルタを製造する際に、
ブランケット胴への印刷部材の塗布及びブランケット胴から不要印刷部材の円筒形状の凸版への転写除去及び透明基板への印刷部材の転写の各工程を同時に行なうことが出来るようにすること、
カラーフィルターの印刷面を下向きに配置すること、
円筒形状の凸版に接触することなく不要印刷部材の除去洗浄及び版乾燥を行なうことが出来るようにすること、
などにより、パーティクルによるカラーフィルターの品質低下を防ぎ、連続的・効率的にカラーフィルターを製造することの出来るオフセット印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【００１８】
上記目的を達成する為になされた請求項1に記載の発明は、
ブランケット表面にインキを供給するディスペンサ装置、
前記ブランケット表面のインキを、非画線部パターン状に選択的に受理する版、
前記版により除去されずに残ったブランケット表面の画線部パターン状のインキパターンを、被印刷物上に転移する前記ブランケット、
とを少なくとも具備するオフセット印刷装置において、
ブランケットおよび版は共にロール状であり、中心軸方向を揃えて接しており、
前記版には、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理する非画線部パターン状に対応した凸部が設けられていると共に、
さらに、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理した前記版の凸部表面からインキを除去する手段を備えることを特徴とするオフセット印刷装置である。
上記構成により、ブランケット胴へのインキの塗布およびロール状版による不要インキの転写除去および被印刷体へのインキパターンの転写を同時に行なうことが可能である。
【００１９】
ブランケット表面から選択的にインキを受理した前記版の凸部表面からインキを除去する手段は、ロール状版に非接触で行なわれることが好ましく、有機溶剤などの洗浄液，インキを流水洗浄するための純水，前記版を乾燥するエアーなどの流体のみが接触するような構成とする。（請求項４）
上記構成により、パーティクルの発生をなくし、高品質なカラーフィルターを製造することが一層可能となる。
【発明の効果】
【００２０】
本発明によるオフセット印刷装置（カラーフィルター製造装置）によると、ブランケット胴への印刷部材の塗布、円筒形状凸版による転写除去、透明基板への印刷部材の転写及び円筒形状凸版の洗浄を同時に行うことの出来る装置を得ることにより、連続的に効率よくカラーフィルターを製造することが出来る。
また、上記カラーフィルター製造装置において、透明基板への印刷部材転写面を下面に配置することにより、印刷直後のウェットな状態でカラーフィルタ印刷面にパーティクルが載ることがなく高品質なカラーフィルターを得ることが出来る。
さらに、上記カラーフィルター製造装置において、円筒形状凸版に接触することなく洗浄を行うことによりパーティクルによる品質劣化を防ぐことが出来高品質なカラーフィルターを製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２１】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明のカラーフィルター製造装置の基本となる構成断面図を示す説明図である。
ブランケットを装着する為のブランケット胴１，印刷部材を塗布するブランケット２，透明基板１０をブランケット胴１に押し付ける為の圧胴５，ブランケット胴１に装着されたブランケット２に印刷部材（インキ）を塗布する為の印刷部材供給部４，円筒形状凸版３の周囲には洗浄液噴霧ノズル６，純水噴霧ノズル７，乾燥装置９が配置され、さらに洗浄液の作用や噴霧された純水により円筒形状凸版から除去された不要印刷部材を吸引する吸引口８、を少なくとも有する構成である。
以下、本カラーフィルタ製造装置による印刷工程について説明する。
【００２２】
ブランケット胴１が回転しながら印刷部材供給部４より供給された印刷部材がブランケット上に塗布される。
円筒形状の凸版とブランケット胴は適当なニップ圧で圧着されており、塗布された印刷部材はブランケットと円筒状凸版の圧着部において印刷部材の不要部分が円筒状凸版３表面に転写除去される。
【００２３】
ブランケット２上に残った印刷部材はさらに連続してブランケット胴１が回転することにより透明基板１０との接触点に到達する。
このとき、透明基板１０は適切な位置に印刷が施されるように位置調整された状態でブランケット胴１と圧胴５の間に供給される。
ブランケット胴１と圧胴５の間に供給された透明基板１０はニップされブランケット胴１の円周回転方向に沿って移動しながら透明基板１０に印刷部材が転写され、製品（カラーフィルター）が完成する。
【００２４】
ここで、透明基板１０をニップする方法は透明基板１０の背面より圧胴５で押す方式であっても、逆に転写装置側からニップをかける方式でも、透明基板１０の載っている定盤高さを上下する方式等でも良い。
【００２５】
一方、円筒形状凸版３に転写除去された不要印刷部材は、同凸版の回転により洗浄液噴霧エリアに到達する。洗浄液噴霧エリアでは、洗浄液噴霧ノズル６により洗浄液が不要印刷部材の塗膜上に噴霧される。
前記洗浄液によって不要印刷部材は円筒形状凸版表面にて溶解または剥離するか、もしくは剥離しやすい状態となる。
洗浄液噴霧用ノズルはノズル先端の形状により広範囲に均一に噴霧できることが好ましく、この場合1流体ノズル、2流体ノズルのどちらを用いてもかまわないが、2流体ノズルを使用することにより印刷部材の剥離が促進されより高い洗浄効果を得ることが出来、結果洗浄液の省液についても効果的である。
【００２６】
次に、円筒形状凸版３がさらに連続的に回転することにより、前記不要印刷部材の洗浄液が噴霧されたエリアは純水スプレーによる洗浄エリアにて流水洗浄される。
ここでは、純水吐出ノズル７から噴出された純水は円筒形状凸版３に到達しその打撃力により、前記不要印刷物や洗浄液が洗い流される。
【００２７】
純水洗浄エリアにおいて円筒形状凸版３表面より除去された不要印刷部材及び洗浄液及び純水は、純水洗浄エリアの下部に設けられた廃液及び排気用の吸引口８より吸引除去される。
前記吸引口８からの吸い込み作用により、洗浄部チャンバー内は常に負圧に保たれ洗浄液ミストなどがチャンバー外に噴出すことを防止される。
さらに円筒形状凸版３が回転をすると、純水洗浄された円筒形状凸版３の洗浄部分は版面を乾燥させる乾燥部に達する。乾燥部では、エアブローにより版面の乾燥が促進され、ブランケット胴との接点において転写除去が可能となる。
以上のようにして、洗浄液噴霧，純水スプレー洗浄及び版表面の乾燥が同時にかつ連続的に行なわれることになり、製品（カラーフィルター）が完成する為に必要な全ての工程を連続して同時に行うことが出来るため、連続的・効率的にカラーフィルターを製造することが出来る。
【実施例】
【００２８】
図１に示す実施形態での装置における実施例として、以下の構成の装置を採用した。
透明基板１０をニップする方法：基板１０背面より圧胴で押す方法
印刷部材の供給方法：ダイコート法
ブランケット２：シリコンゴム
洗浄液：アルカリ洗浄液
【図面の簡単な説明】
【００２９】
【図１】本発明によるオフセット印刷装置（カラーフィルタ製造装置）の実施形態についての概要を示す説明図。
【符号の説明】
【００３０】
１・・・ブランケット胴
２・・・ブランケット
３・・・円筒形状の凸版（ロール状版）
４・・・印刷部材供給装置
５・・・圧胴
６・・・洗浄液供給ノズル
７・・・純水供給ノズル
８・・・吸引口
９・・・乾燥装置
１０・・透明基板
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ブランケット表面にインキを供給するディスペンサ装置、
前記ブランケット表面のインキを、非画線部パターン状に選択的に受理する版、
前記版により除去されずに残ったブランケット表面の画線部パターン状のインキパターンを、被印刷物上に転移する前記ブランケット、
とを少なくとも具備するオフセット印刷装置において、
ブランケットおよび版は共にロール状であり、中心軸方向を揃えて接しており、
前記版には、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理する非画線部パターン状に対応した凸部が設けられていると共に、
さらに、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理した前記版の凸部表面からインキを除去する手段を備えることを特徴とするオフセット印刷装置。
【請求項２】
被印刷物は平板状の透明基板であり、
画線部パターンはカラーフィルタの色パターンであり、
前記色パターンを構成する色数分のディスペンサ装置を有することを特徴とするカラーフィルタ製造のための請求項１記載のオフセット印刷装置。
【請求項３】
前記ブランケット表面の画線部パターン状のインキパターンを被印刷物上に転移する際、下から上に向かって転移する構成であることを特徴とする請求項１または２に記載のオフセット印刷装置。
【請求項４】
ブランケット表面から選択的にインキを受理した版の凸部表面からインキを除去する手段として、
前記版表面に、有機溶剤などの洗浄液の噴霧を行なう洗浄液噴霧ノズル、
インキを流水洗浄するための純水噴出しノズル、
洗浄液および純水による洗浄の行なわれた前記版の乾燥機構、
を、少なくとも具備することを特徴とする請求項１〜３の何れかに記載のオフセット印刷装置。
【請求項１】
ブランケット表面にインキを供給するディスペンサ装置、
前記ブランケット表面のインキを、非画線部パターン状に選択的に受理する版、
前記版により除去されずに残ったブランケット表面の画線部パターン状のインキパターンを、被印刷物上に転移する前記ブランケット、
とを少なくとも具備するオフセット印刷装置において、
ブランケットおよび版は共にロール状であり、中心軸方向を揃えて接しており、
前記版には、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理する非画線部パターン状に対応した凸部が設けられていると共に、
さらに、前記ブランケット表面から選択的にインキを受理した前記版の凸部表面からインキを除去する手段を備えることを特徴とするオフセット印刷装置。
【請求項２】
被印刷物は平板状の透明基板であり、
画線部パターンはカラーフィルタの色パターンであり、
前記色パターンを構成する色数分のディスペンサ装置を有することを特徴とするカラーフィルタ製造のための請求項１記載のオフセット印刷装置。
【請求項３】
前記ブランケット表面の画線部パターン状のインキパターンを被印刷物上に転移する際、下から上に向かって転移する構成であることを特徴とする請求項１または２に記載のオフセット印刷装置。
【請求項４】
ブランケット表面から選択的にインキを受理した版の凸部表面からインキを除去する手段として、
前記版表面に、有機溶剤などの洗浄液の噴霧を行なう洗浄液噴霧ノズル、
インキを流水洗浄するための純水噴出しノズル、
洗浄液および純水による洗浄の行なわれた前記版の乾燥機構、
を、少なくとも具備することを特徴とする請求項１〜３の何れかに記載のオフセット印刷装置。
【図１】
【公開番号】特開２００６−２８１４８３（Ｐ２００６−２８１４８３Ａ）
【公開日】平成１８年１０月１９日（２００６．１０．１９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−１０１１７７（Ｐ２００５−１０１１７７）
【出願日】平成１７年３月３１日（２００５．３．３１）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年１０月１９日（２００６．１０．１９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年３月３１日（２００５．３．３１）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
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