説明

オブジェクト表示制御装置及びオブジェクト表示制御方法

【課題】AR技術におけるオブジェクトの出力処理又は表示処理に際して、ユーザに対して表示すべきオブジェクトの全部を出力・表示することを可能とする。
【解決手段】オブジェクト表示制御装置1では、視線基準位置情報取得部10により現実空間又は仮想空間における視線基準位置情報が取得され、可視オブジェクト判別部15により現実空間または仮想空間に存在するオブジェクトのうち、視線基準位置から少なくとも一部を視認可能なオブジェクトである可視オブジェクトが判別される。これにより、視線基準位置から少なくともオブジェクトの一部が視認可能であれば、当該オブジェクトが可視オブジェクトとして判別されるので、オブジェクトの出力処理または表示処理を実施する際に、可視オブジェクトに対応付けられた他のオブジェクト及び可視オブジェクト自体の全部を出力または表示させるといった制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクト表示制御装置及びオブジェクト表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、AR(Augmented Reality:拡張現実)技術を用いたサービスが開発・提供されている。例えば、移動端末の所在位置の周辺に配置されたオブジェクトを取得し、移動端末に備えられたカメラにより取得した画像に種々の情報や画像を含むオブジェクトを重畳表示する技術が知られている。この技術では、重畳表示されるオブジェクトには、例えば、仮想空間又は現実空間における構造物オブジェクトに関連する情報が含まれるので、画像中の構造物オブジェクトに関連する情報を提供することが可能となる。また、オブジェクトの一部分が他のオブジェクトに遮蔽されている場合には、当該部分を表示しないように制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−47972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オブジェクトの表示制御に関する上記従来技術では、一のオブジェクトの一部分が視線の基準位置からみて他のオブジェクトの背後に位置する場合には、当該一のオブジェクトの全部は表示されないこととなる。一方、AR技術の分野においては、一のオブジェクトの一部分が構造物等の他のオブジェクトに遮蔽されている場合であっても、当該一のオブジェクトの全部を表示させたい場合がある。特に、一のオブジェクトが他のオブジェクトに対応付けられると共に当該他のオブジェクトに関する情報を含むものである場合には、当該一のオブジェクトはユーザに対して表示すべきオブジェクトであり、一のオブジェクトの全部が表示されることが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、AR技術におけるオブジェクトの出力処理又は表示処理に際して、ユーザに対して表示すべきオブジェクトの全部を出力・表示することが可能なオブジェクト表示制御装置及びオブジェクト表示制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のオブジェクト表示制御装置は、現実空間又は仮想空間に配置されたオブジェクトの表示制御を行うオブジェクト表示制御装置であって、現実空間又は仮想空間における視線の基準位置である視線基準位置を示す視線基準位置情報を取得する視線基準位置情報取得手段と、現実空間または仮想空間に存在するオブジェクトのうち、視線基準位置から少なくとも一部を視認可能なオブジェクトである可視オブジェクトを判別する可視オブジェクト判別手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明のオブジェクト表示制御方法は、現実空間又は仮想空間に配置されたオブジェクトの表示制御を行うオブジェクト表示制御装置におけるオブジェクト表示制御方法であって、現実空間又は仮想空間における視線の基準位置である視線基準位置を示す視線基準位置情報を取得する視線基準位置情報取得ステップと、現実空間または仮想空間に存在するオブジェクトのうち、視線の基準位置から少なくとも一部を視認可能なオブジェクトである可視オブジェクトを判別する可視オブジェクト判別ステップとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のオブジェクト表示制御装置及びオブジェクト表示制御方法によれば、視線基準位置から少なくともオブジェクトの一部が視認可能であれば、当該オブジェクトが可視オブジェクトとして判別されるので、オブジェクトの出力処理または表示処理を実施する際に、可視オブジェクトに対応付けられた他のオブジェクト及び可視オブジェクト自体の全部を出力または表示させるといった制御が可能となる。これにより、ユーザに対して表示すべきオブジェクトの出力・表示が可能となる。
【0009】
なお、本発明におけるオブジェクトは、構造物を示すオブジェクト、及び構造物に付随する情報を表すオブジェクトを含む。構造物は、地表に存在する全ての物を含んでおり、建造物のみならず、自然の地形により形成された物も含む。また、構造物には、現実空間における構造物だけではなく、仮想空間内において仮想的に設けられた構造物も含まれる。構造物に付随する情報を表すオブジェクトは、当該構造物に関する各種のテキスト情報や画像といったものを含む。
【0010】
また、本発明のオブジェクト表示制御装置は、現実空間又は仮想空間においてオブジェクトが占める領域を定義可能な情報を含むオブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得手段と、オブジェクト情報に基づき、視線基準位置から見たオブジェクトの端部を通る視線であるオブジェクト接線と所定の基準方向とが成す角度であるオブジェクト接線角度を算出するオブジェクト接線角度算出手段と、視線基準位置とオブジェクトとの距離であるオブジェクト距離を算出するオブジェクト距離算出手段とを備え、可視オブジェクト判別手段は、オブジェクト接線角度算出手段により算出されたオブジェクト接線角度と、オブジェクト距離算出手段により算出されたオブジェクト距離とを用いて判断されたオブジェクト間の位置関係に基づき可視オブジェクトを判別することを特徴とする。
【0011】
この場合には、オブジェクト接線角度及びオブジェクト距離を用いてオブジェクト間の位置関係が判断される。そして、オブジェクト間の位置関係に基づき、視線基準位置から見て、オブジェクトの全部が視認可能、又は他のオブジェクトに隠蔽されていたとしても少なくとも一部を視認可能なオブジェクトが可視オブジェクトとして適切に判別される。
【0012】
また、本発明のオブジェクト表示制御装置では、オブジェクト情報は、平面上においてオブジェクトが占める領域の頂点の座標であるオブジェクト頂点座標を含み、オブジェクト接線角度算出手段は、視線基準位置と頂点座標とを通る直線をオブジェクト接線として求め、該オブジェクト接線に基づきオブジェクト接線角度を算出することを特徴とする。
【0013】
平面状においてオブジェクト占める領域がオブジェクト頂点座標により定義可能な場合には、視線基準位置を示す座標とオブジェクト頂点座標とを通る直線がオブジェクト接線として求められるので、容易にオブジェクト接線角度を算出することが可能となる。
【0014】
また、本発明のオブジェクト表示制御装置では、オブジェクト距離算出手段は、オブジェクト情報がオブジェクトの所在位置を示す代表座標を含む場合には、視線基準位置と代表位置との距離をオブジェクト距離として算出し、オブジェクト情報が平面上においてオブジェクトが占める領域の頂点の座標であるオブジェクト頂点座標を含む場合には、視線基準位置と、オブジェクト頂点座標から算出される重心位置との距離をオブジェクト距離として算出し、オブジェクト情報が、オブジェクトの現実空間における地理的な所在位置を示す位置情報を含む場合には、該位置情報に基づき求められた2次元平面上における座標と、視線基準位置との距離をオブジェクト距離として算出することを特徴とする。
【0015】
オブジェクトの所在位置を示す代表座標、オブジェクト頂点座標から算出される重心位置、又はオブジェクトの現実空間における地理的な所在位置を示す位置情報といった情報はオブジェクトの位置を示すものであるので、上記オブジェクト表示制御装置では、これらの情報に基づき適切にオブジェクト距離を算出できる。
【0016】
また、本発明のオブジェクト表示制御装置では、オブジェクト高さ方向接線角度算出手段を更に備え、オブジェクト情報は、オブジェクトの高さを示す高さ情報を含み、オブジェクト高さ方向接線角度算出手段は、高さ情報に基づき、視線基準位置から見たオブジェクトの上側端部を通る視線であるオブジェクト高さ方向接線が、仮想空間または現実空間における水平方向と成す角度であるオブジェクト高さ方向接線角度を算出し、可視オブジェクト判別手段は、オブジェクト接線角度算出手段により算出されたオブジェクト接線角度と、オブジェクト距離算出手段により算出されたオブジェクト距離と、オブジェクト高さ方向接線角度算出手段により算出されたオブジェクト高さ方向接線角度とを用いて判断されたオブジェクト間の位置関係に基づき可視オブジェクトを判別することを特徴とする。
【0017】
この場合には、オブジェクト接線角度、オブジェクト距離及びオブジェクト高さ方向接線角度を用いてオブジェクト間の位置関係が判断される。そして、オブジェクト間の位置関係に基づき、視線基準位置から見て、オブジェクトの全部が視認可能、又は他のオブジェクトにより一部が隠蔽されていたとしても当該他のオブジェクトの両側または上側に少なくとも一部を視認可能なオブジェクトが可視オブジェクトとして適切に判別される。
【0018】
また、本発明のオブジェクト表示制御装置は、オブジェクト情報を記憶するためのオブジェクト情報記憶手段を更に備え、オブジェクト情報取得手段は、オブジェクト情報記憶手段に記憶されたオブジェクト情報を取得することを特徴とする。この場合には、オブジェクト情報取得手段は、確実にオブジェクト情報を取得できる。
【0019】
また、本発明のオブジェクト表示制御装置は、他のオブジェクトとの関連付けを示す関連オブジェクト情報をオブジェクト情報として含むオブジェクトである付随オブジェクトに関するオブジェクト情報を、該付随オブジェクトの関連オブジェクト情報に示される他のオブジェクトが可視オブジェクトである場合に出力するオブジェクト情報出力手段を更に備えることを特徴とする。
【0020】
この場合には、付随オブジェクトの関連オブジェクト情報に示される他のオブジェクトが可視オブジェクトである場合に、当該付随オブジェクトが出力されるので、オブジェクトの出力処理または表示処理を実施する際に、当該付随オブジェクトの全部を出力または表示させるといった制御が可能となる。これにより、ユーザに対して表示すべきオブジェクトの出力・表示が可能となる。
【0021】
また、本発明のオブジェクト表示制御装置は、オブジェクト情報出力手段は、可視オブジェクト判別手段により判別された可視オブジェクトに関するオブジェクト情報を出力するオブジェクト情報出力手段を更に備えることを特徴とする。
【0022】
この場合には、可視オブジェクトとして判別されたオブジェクトのオブジェクト情報が出力されるので、オブジェクトの出力処理または表示処理を実施する際に、そのオブジェクトの全部を出力または表示させるといった制御が可能となる。これにより、ユーザに対して表示すべきオブジェクトの出力・表示が好適に行われる。
【0023】
また、本発明のオブジェクト表示制御装置は、オブジェクト情報出力手段を更に備え、可視オブジェクト判別手段は、可視オブジェクトのオブジェクト情報に、当該オブジェクトが可視オブジェクトである旨を示す可視属性を付し、オブジェクト情報出力手段は、視線基準位置から予め設定された所定の距離以内に位置するオブジェクトのオブジェクト情報を可視属性と共に出力することとしてもよい。
【0024】
この場合には、オブジェクト情報を受信した移動端末において、オブジェクトの表示処理を実施する際に、オブジェクトを表示させるか否かの判断及び制御が可能となる。これにより、ユーザに対して表示すべきオブジェクトの表示が好適に行われる。
【発明の効果】
【0025】
AR技術におけるオブジェクトの出力処理又は表示処理に際して、ユーザに対して表示すべきオブジェクトの全部を出力・表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】オブジェクト表示制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】オブジェクト表示制御装置のハードブロック図である。
【図3】オブジェクト情報記憶部の構成及び記憶されているデータの例を示す図である。
【図4】オブジェクト接線角度及びオブジェクト距離の例を示す図である。
【図5】オブジェクト表示制御装置において実施されるオブジェクト表示制御方法の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係るオブジェクト表示制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図7】第2実施形態に係るオブジェクト情報記憶部の構成及び記憶されているデータの例を示す図である。
【図8】オブジェクト高さ方向接線角度の例を示す図である。
【図9】第3実施形態に係るオブジェクト表示制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るオブジェクト表示制御装置の実施形態について図面を参照して説明する。なお、可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るオブジェクト表示制御装置1の機能的構成を示すブロック図である。なお、図1では、オブジェクト表示制御装置1と通信可能な移動端末2の機能的構成も示されている。オブジェクト表示制御装置1は、現実空間又は仮想空間に配置されたオブジェクトの表示制御を行う装置であって、本実施形態のオブジェクト表示制御装置1は、例えばサーバといったコンピュータにより構成される。
【0029】
また、移動端末2は、オブジェクト表示制御装置1からオブジェクト情報を受信し、受信したオブジェクト情報に基づきオブジェクトを表示する装置である。例えば、移動端末2が備える撮像装置(図示せず)により取得した現実環境の画像に、オブジェクトを重畳して表示することができる。表示画像中におけるオブジェクトは、表示画像中の現実環境の空間における、オブジェクト情報に含まれるオブジェクトの座標が示す位置に配置される。これにより、現実環境の画像に含まれる構造物にオブジェクトを対応付けた表示が可能となる。
【0030】
本実施形態では、オブジェクトは、大別して構造物を示すオブジェクトである構造物オブジェクト、及び構造物に付随する情報を表すオブジェクトである情報オブジェクト(付随オブジェクト)を含む。構造物は、地表に存在する全ての物を含んでおり、建造物のみならず、自然の地形により形成された物も含む。また、構造物には、現実空間における構造物だけではなく、仮想空間内において仮想的に設けられた構造物も含まれる。構造物に付随する情報を表す情報オブジェクトは、当該構造物に関する各種のテキスト情報や画像といったものを含み、当該構造物を示す構造物オブジェクトと対応付けられている。
【0031】
また、本実施形態は、AR技術を背景として、情報オブジェクトの表示制御を行うことを目的としている。ユーザは、視野範囲内にある構造物に関する情報を取得することを所望する。このため、ユーザの視線の基準位置から見て、ある構造物オブジェクトの少なくとも一部のみが視認可能である場合には、当該構造物オブジェクトに対応付けられた情報オブジェクトの全部をユーザに対して表示するといった制御が必要である。また、情報オブジェクト自体に位置や大きさ又は領域といった情報が定義されており、ユーザの視線の基準位置から見て、当該情報オブジェクトの少なくとも一部のみが視認可能である場合には、当該情報オブジェクトの全部をユーザに対して表示するといった制御が必要である。
【0032】
オブジェクト表示制御装置1は、機能的には、視線基準位置情報取得部10(視線基準位置情報取得手段)、オブジェクト情報記憶部11(オブジェクト情報記憶手段)、オブジェクト情報取得部12(オブジェクト情報取得手段)、オブジェクト接線角度算出部13(オブジェクト接線角度算出手段)、オブジェクト距離算出部14(オブジェクト距離算出手段)、可視オブジェクト判別部15(可視オブジェクト判別手段)及びオブジェクト情報出力部16(オブジェクト情報出力手段)を備える。
【0033】
図2は、オブジェクト表示制御装置1のハードウエア構成図である。オブジェクト表示制御装置1は、物理的には、図2に示すように、CPU101、主記憶装置であるRAM102及びROM103、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール104、ハードディスク、フラッシュメモリ等の補助記憶装置105、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置106、ディスプレイ等の出力装置107などを含むコンピュータシステムとして構成されている。図1に示した各機能は、図2に示すCPU101、RAM102等のハードウエア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール104、入力装置106、出力装置107を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置105におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。再び、図1を参照し、オブジェクト表示制御装置1の各機能部について詳細に説明する。
【0034】
視線基準位置情報取得部10は、移動端末2からユーザの視線の基準位置である視線基準位置情報を取得する部分である。本実施形態における移動端末2の位置情報は、移動端末2にオブジェクトを表示させる際の、仮想空間又は現実空間における視線の基準位置を示し、例えば、緯度及び経度により表される座標情報である。
【0035】
オブジェクト情報記憶部11は、オブジェクトに関する情報であるオブジェクト情報を記憶するための記憶手段である。図3は、オブジェクト情報記憶部11の構成及び記憶されているオブジェクト情報の例を示す図である。
【0036】
図3(a)は、構造物オブジェクトのオブジェクト情報の例を示す図である。図3(a)に示すように、オブジェクト情報記憶部11は、構造物オブジェクトを一意に識別する構造物オブジェクトIDに対応付けて、構造物名、住所、代表座標及び頂点座標を構造物情報として記憶している。
【0037】
図3(a)に示される代表座標は、当該構造物が占める領域内の任意の一点を示す座標(緯度,経度)であり、例えば、当該構造物が占める領域の重心点や、当該構造物の輪郭を形成する複数の頂点のうちの一点の座標である。また、図3(a)に示される頂点座標は、当該構造物の輪郭を形成する頂点の座標(緯度,経度)であると共に、2次元平面上において構造物オブジェクトが占める領域を定義可能な情報である。図3(a)に示すオブジェクト情報は、4点の頂点座標を有しているが、複雑な構造物の形状を示すために、さらに多くの頂点座標が含まれていても良い。また、図3(a)に示される住所は、構造物の現実空間における地理的な所在位置を示す情報である。
【0038】
図3(b)は、情報オブジェクトのオブジェクト情報の例を示す図である。オブジェクト情報記憶部11は、情報オブジェクトを一意に識別する情報オブジェクトIDに対応付けて、オブジェクト名、住所、代表座標及び頂点座標を構造物情報として記憶している。図3(b)に示される代表座標は、当該情報オブジェクトが占める領域内の任意の一点を示す座標(緯度,経度)であり、例えば、当該情報オブジェクトが占める領域の重心点や、当該情報オブジェクトの輪郭を形成する複数の頂点のうちの一点の座標である。図3(b)に示される頂点座標は、当該情報オブジェクトの輪郭を形成する頂点の座標(緯度,経度)であると共に、2次元平面上において情報オブジェクトが占める領域を定義可能な情報である。また、図3(b)に示される住所は、情報オブジェクトの現実空間における地理的な所在位置を示す情報である。
【0039】
図3(c)は、情報オブジェクトのオブジェクト情報の例を示す図である。図3(c)に示される情報オブジェクトのオブジェクト情報は、図3(b)に示すオブジェクト情報が頂点座標に関する情報を含んでいることに代えて、関連構造物オブジェクトID(関連オブジェクト情報)に関する情報を含んでいる。関連構造物オブジェクトIDは、他の構造物オブジェクトとの関連付けを示す情報である。換言するならば、図3(c)に示されるオブジェクト情報に係る情報オブジェクトは、関連構造物オブジェクトIDに示されるオブジェクトに付随する付随オブジェクトである。
【0040】
なお、関連構造物オブジェクトIDは、例えば、オブジェクト情報記憶部11に予め設定されて記憶されている。また、情報オブジェクト及び構造オブジェクトの位置関係に基づき、オブジェクト表示制御装置1が備える機能部(図示せず)により設定されることとしてもよい。
【0041】
例えば、構造物オブジェクト及び情報オブジェクトが共に代表座標をオブジェクト情報として有している場合には、代表座標により特定される両オブジェクトの所在位置間の距離が予め設定された一定の距離以内である場合に、当該構造物オブジェクトのオブジェクトIDが、当該情報オブジェクトの関連構造物オブジェクトIDとして記憶されることとしてもよい。ここで、一定の距離は、例えば20メートルとすることができる。なお、オブジェクト情報に代表座標が含まれておらず、頂点座標が含まれている場合には、複数の頂点座標から算出された重心位置の座標を、代表座標に代えて用いることが可能である。
【0042】
また、構造物オブジェクト及び情報オブジェクトが共に住所をオブジェクト情報として有している場合には、両オブジェクトの住所が一定以上一致する場合に、当該構造物オブジェクトのオブジェクトIDが、当該情報オブジェクトの関連構造物オブジェクトIDとして記憶されることとしてもよい。住所の一致判定には、例えば、いわゆるストリング解析といった方法を用いることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、オブジェクト情報記憶部11は、オブジェクト表示制御装置1に備えられることとしたが、オブジェクト表示制御装置1と通信可能な他の装置に備えられることとしてもよい。
【0044】
オブジェクト情報取得部12は、オブジェクト情報記憶部11に記憶されたオブジェクト情報を取得する部分である。具体的には、オブジェクト情報取得部12は、視線基準位置情報取得部10から視線基準位置情報を取得する。続いて、オブジェクト情報取得部12は、オブジェクト情報記憶部11を参照して、視線基準位置から予め設定された所定の距離以内に存在するオブジェクトのオブジェクト情報を取得する。ここで、所定の距離は、例えば、500メートルといった距離に設定される。
【0045】
オブジェクト接線角度算出部13は、オブジェクト情報に基づき、視線基準位置から見たオブジェクトの端部を通る視線であるオブジェクト接線と所定の基準方向とが成す角度であるオブジェクト接線角度を算出する部分である。図4(a)を参照して、オブジェクト接線角度算出部13によるオブジェクト接線角度の算出処理を具体的に説明する。
【0046】
オブジェクト接線角度算出部13は、まず、視線基準位置を原点とする2次元の座標系を設定する。ここで、オブジェクト接線角度を算出するための基準方向として、例えばX軸方向を設定することができる。続いて、オブジェクト接線角度算出部13は、原点を通る直線であると共に、視線基準位置から見たオブジェクトSの端部を通る視線をオブジェクト接線として生成する。そして、オブジェクト接線角度算出部13は、生成されたオブジェクト接線とX軸とが成す角のうち最大の角である最大角θmaxN及び最小の角である最小角θminNを、オブジェクト接線角度として算出する。図4(a)では、オブジェクトS及びオブジェクトSのそれぞれについて生成された最大角θmaxA及び最小角θminA、並びに最大角θmaxB及び最小角θminBが示されている。
【0047】
図4(a)の例に示すように、2次元平面上においてオブジェクトが占める領域の頂点の座標であるオブジェクト頂点座標がオブジェクト情報に含まれている場合には、オブジェクト接線角度算出部13は、視線基準位置と頂点座標とを通る直線をオブジェクト接線として求め、該オブジェクト接線に基づきオブジェクト接線角度を算出することができる。
【0048】
オブジェクト距離算出部14は、視線基準位置とオブジェクトとの距離であるオブジェクト距離を算出する部分である。オブジェクト距離の算出の例を具体的に説明すると、オブジェクト情報がオブジェクトの所在位置を示す代表座標を含む場合には、オブジェクト距離算出部14は、視線基準位置と代表位置との距離をオブジェクト距離として算出する。また、オブジェクト情報が2次元平面上においてオブジェクトが占める領域の頂点の座標であるオブジェクト頂点座標を含む場合には、オブジェクト距離算出部14は、視線基準位置と、オブジェクト頂点座標から算出される重心位置との距離をオブジェクト距離として算出することができる。また、オブジェクト情報が、例えば住所といった、オブジェクトの現実空間における地理的な所在位置を示す位置情報を含む場合には、オブジェクト距離算出部14は、該位置情報に基づき求められた2次元平面上における座標と、視線基準位置との距離をオブジェクト距離として算出することができる。図4(b)は、オブジェクトS及びオブジェクトSのそれぞれについて算出されたオブジェクト距離R,Rを示す図である。
【0049】
可視オブジェクト判別部15は、現実空間または仮想空間に存在するオブジェクトのうち、視線基準位置から少なくとも一部を視認可能なオブジェクトである可視オブジェクトを判別する部分である。より具体的には、可視オブジェクト判別部15は、オブジェクト接線角度算出部13により算出されたオブジェクト接線角度と、オブジェクト距離算出部14により算出されたオブジェクト距離とを用いて判断されたオブジェクト間の位置関係に基づき可視オブジェクトを判別する。次に、図4を参照して、可視オブジェクト判別部15による可視オブジェクト判別処理を具体的に説明する。
【0050】
可視オブジェクトであるか否かを判別する対象の判別対象オブジェクトをオブジェクトSとし、視線基準位置から見て判別対象オブジェクトを遮蔽するか否かを位置関係により判定する対象である位置関係判定対象オブジェクトをオブジェクトSとすると、下記式(1)及び式(2)が共に成立する場合には、オブジェクトSは、視線基準位置から視認不可能なオブジェクトである。
θminA≦θminB<θmaxB≦θmaxA…(1)
<R …(2)
従って、可視オブジェクト判別部15は、式(1)及び式(2)のいずれかが成立しない場合に、オブジェクトSを、オブジェクトSによって完全に遮蔽されることのない、少なくとも一部視認可能なオブジェクトとして判別する。
【0051】
可視オブジェクト判別部15は、視線基準位置から予め設定された所定の距離以内に存在するオブジェクトとしてオブジェクト情報取得部12により取得されたオブジェクト情報から、一のオブジェクト情報を判別対象オブジェクトとして抽出し、当該一のオブジェクト情報以外の全ての他のオブジェクトを位置関係判定対象オブジェクトとして抽出し、上記のような位置関係の判定を実施する。そして、当該一のオブジェクトが、全ての位置関係判定対象オブジェクトに対して、少なくとも一部視認可能なオブジェクトとして判別された場合に、可視オブジェクト判別部15は、当該一のオブジェクトを可視オブジェクトとして判別する。なお、ここで判別対象オブジェクト及び位置関係判定対象オブジェクトとして抽出されるオブジェクトは、位置及び領域を定義可能な情報を含む構造物オブジェクト(図3(a)参照)及び情報オブジェクト(図3(b))である。
【0052】
可視オブジェクト判別部15は、可視オブジェクトとして判別されたオブジェクトのオブジェクト情報をオブジェクト情報出力部16に送出することができる。また、可視オブジェクト判別部15は、可視オブジェクトとして判別されたオブジェクトのオブジェクト情報に、可視オブジェクトである旨の属性情報を付与してオブジェクト情報記憶部11に記憶させることとしてもよい。
【0053】
オブジェクト情報出力部16は、移動端末2に全部を表示させるべきオブジェクトのオブジェクト情報を、移動端末2に出力する部分である。より具体的には、オブジェクト情報出力部16は、情報オブジェクトの関連構造物オブジェクトIDに示される構造物オブジェクトが可視オブジェクトである場合に(図3(c)参照)、当該情報オブジェクトの関するオブジェクト情報を、移動端末2に出力する。図3(c)に示す例では、オブジェクトIDが「aaa」であるオブジェクトが可視オブジェクトとして判別された場合には、オブジェクト情報出力部16は、情報オブジェクトID「zzz」により識別される情報オブジェクトに関するオブジェクト情報を移動端末2に出力する。
【0054】
また、情報オブジェクトが図3(b)に示すように位置及び領域を定義可能な情報を有している場合には、オブジェクト情報出力部16は、可視オブジェクトとして判別された情報オブジェクトに関するオブジェクト情報を移動端末2に出力することができる。
【0055】
なお、可視オブジェクトとして判別されたオブジェクトのオブジェクト情報に、可視オブジェクトである旨の属性情報が可視オブジェクト判別部15により付される場合には、オブジェクト情報出力部16は、オブジェクト情報取得部12により取得された全てのオブジェクト情報を移動端末2に出力することとしてもよい。この場合には、移動端末2側において、可視オブジェクトである旨の属性情報に基づいてオブジェクトを表示させるか否かの判別が実施される。
【0056】
なお、本実施形態では、視線基準位置情報取得部10、オブジェクト情報記憶部11、オブジェクト情報取得部12、オブジェクト接線角度算出部13、オブジェクト距離算出部14、可視オブジェクト判別部15及びオブジェクト情報出力部16は、オブジェクト表示制御装置1に備えられることとしたが、上記各機能部10〜16はそれぞれ互いに通信可能な装置に分散されて備えられることとしてもよい。
【0057】
次に、移動端末2の機能を説明する。移動端末2は、機能的には、GPS20、位置情報送信部22、オブジェクト情報受信部23及びオブジェクト表示部24を備える。移動端末2は、図2に示したオブジェクト表示制御装置1のハードウエア構成と同様の構成を有するコンピュータであり、例えば、携帯電話や携帯端末といった装置により構成される。
【0058】
GPS20は、移動端末2の所在位置を測位する装置であり、測位された所在位置を示す位置情報を位置情報送信部22及びオブジェクト表示部24に送出する。移動端末2は、位置情報に基づき、移動端末2のユーザの視野範囲、または移動端末2が備える撮像装置(図示せず)の視野範囲を特定できる。なお、移動端末2がさらに方位センサ(図示せず)を備え、方位センサにより検出された方位情報を視野範囲の特定に用いることとしてもよい。
【0059】
位置情報送信部22は、移動端末2の所在位置を示す位置情報をオブジェクト表示制御装置1に送信する部分である。なお、本実施形態では、位置情報はGPS20により取得されることとしているが、例えば、WiFi、RFIDタグ、マーカ認識、画像認識といった方法により測位が実施され、位置情報が取得されることとしてもよい。
【0060】
オブジェクト情報受信部23は、オブジェクト表示制御装置1のオブジェクト情報出力部16から出力されたオブジェクト情報を受信する部分である。オブジェクト情報受信部23は、受信したオブジェクト情報をオブジェクト表示部24に送出する。
【0061】
オブジェクト表示部24は、オブジェクト情報受信部23から取得したオブジェクト情報に含まれるオブジェクトを、オブジェクト情報に示される当該オブジェクトの配置位置に対応させて表示する部分である。具体的には、オブジェクト表示部24は、移動端末2の撮像装置の視野範囲内に配置されたオブジェクトを表示する。
【0062】
本実施形態では、可視オブジェクトとして判別された構造物オブジェクトに対応付けられた情報オブジェクト、及び可視オブジェクトとして判別された情報オブジェクトに関するオブジェクト情報がオブジェクト情報受信部23により受信され、当該オブジェクト情報に係る情報オブジェクトがオブジェクト表示部24により表示されることとなる。従って、ユーザに対して表示すべき情報オブジェクトの表示が実現される。
【0063】
可視オブジェクトして判別されたオブジェクトを含む、オブジェクト情報取得部12により取得された全てのオブジェクト情報をオブジェクト情報受信部23が受信した場合には、オブジェクト表示部24は、受信したオブジェクト情報に基づき、可視オブジェクトとして判別された構造物オブジェクトに対応付けられた情報オブジェクト、及び可視オブジェクトとして判別された情報オブジェクトを表示することとしてもよい。
【0064】
続いて、図5を参照して、本実施形態のオブジェクト表示制御方法におけるオブジェクト表示制御装置1の動作について説明する。図5は、オブジェクト表示制御装置1において実施される処理内容を示すフローチャートである。
【0065】
まず、視線基準位置情報取得部10は、移動端末2からユーザの視線基準位置の位置情報を取得する(S1、位置情報取得ステップ)。続いて、オブジェクト情報取得部12は、ステップS1において取得された位置情報に示される視線基準位置から予め設定された所定の距離以内に存在するオブジェクトのオブジェクト情報を取得する(S2)。
【0066】
次に、可視オブジェクト判別部15は、視線基準位置から少なくとも一部を視認可能な構造物オブジェクト及び情報オブジェクトを可視オブジェクトとして判別する(S3、可視オブジェクト判別ステップ)。可視オブジェクトの判別は、オブジェクト接線角度算出部13により算出されたオブジェクト接線角度と、オブジェクト距離算出部14により算出されたオブジェクト距離とを用いて判断されたオブジェクト間の位置関係に基づき行われる。
【0067】
続いて、オブジェクト情報出力部16は、可視オブジェクトとして判別された構造物オブジェクトに関連付けられた情報オブジェクト、及び可視オブジェクトとして判別された情報オブジェクトを移動端末2に出力する(S4)。なお、ステップS4において、オブジェクト情報出力部16は、可視オブジェクトである旨の属性情報が付されたオブジェクト情報を含む、オブジェクト情報取得部12により取得された全てのオブジェクト情報を移動端末2に出力することとしてもよい。こうして、本実施形態の処理を終了する。
【0068】
以上説明した第1実施形態のオブジェクト表示制御装置1及びオブジェクト表示制御方法では、視線基準位置から少なくともオブジェクトの一部が視認可能であれば、当該オブジェクトが可視オブジェクト判別部15により可視オブジェクトとして判別されるので、オブジェクトの出力処理を実施する際に、可視オブジェクトに対応付けられた情報オブジェクト及び可視オブジェクトとして判別された情報オブジェクト自体の全部を出力させるといった制御が可能となる。これにより、ユーザに対して表示すべきオブジェクトの出力が可能となる。
【0069】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係るオブジェクト表示制御装置1の機能的構成を示すブロック図である。第2実施形態におけるオブジェクト表示制御装置1は、第1実施形態のオブジェクト表示制御装置1が有していた各機能部10〜16に加えて、オブジェクト高さ方向接線角度算出部17(オブジェクト高さ方向接線角度算出手段)を備える。
【0070】
オブジェクト高さ方向接線角度算出部17は、視線基準位置を通る直線であると共に、オブジェクトの高さ方向において該オブジェクトと接する接戦であるオブジェクト高さ方向接線が、仮想空間または現実空間における水平方向と成す角度であるオブジェクト高さ方向接線角度を算出する部分である。
【0071】
また、図7は、第2実施形態におけるオブジェクト情報記憶部11の構成及び記憶されている構造物オブジェクトのオブジェクト情報の例を示す図である。図7に示すように、オブジェクト情報記憶部11に記憶されたオブジェクト情報は、仮想空間又は現実空間において当該構造物オブジェクトが占める領域を3次元的に定義可能な複数の頂点座標(緯度,経度、高さ)を含んでいる。これにより、可視オブジェクトの判別処理において、構造物オブジェクトの高さを考慮することが可能となる。なお、図7に示す構造物オブジェクトの例では、説明の便宜のため、8個の頂点座標により構造物を直方体として定義しているが、さらに多くの頂点座標により更に複雑な形状の構造物が定義されることとしてもよい。
【0072】
次に、図8を参照して、オブジェクト高さ方向接線角度算出部17によるオブジェクト高さ方向接線角度の算出処理を具体的に説明する。なお、図8に示されるオブジェクトS及びオブジェクトSの配置は、図4に対応している。また、可視オブジェクトであるか否かを判別する対象の判別対象オブジェクトをオブジェクトSとし、視線基準位置から見て判別対象オブジェクトを遮蔽するか否かを位置関係により判定する対象である位置関係判定対象オブジェクトをオブジェクトSとする。
【0073】
オブジェクト高さ方向接線角度算出部17は、まず、水平方向(H軸)及び高さ方向(Z軸)からなり、視線基準位置を原点とする座標系を設定する。ここで、H軸の方向は、例えば、視線基準位置を含む水平面上において、オブジェクトSのオブジェクト高さ方向接線角度が最大となるような方向にとられる。
【0074】
続いて、オブジェクト高さ方向接線角度算出部17は、視線基準位置から見たオブジェクトの上側端部を通る視線であるオブジェクト高さ方向接線を生成する。そして、オブジェクト高さ方向接線角度算出部17は、生成されたオブジェクト高さ方向接線とH軸とが成す角度であるオブジェクト高さ方向接線角度を算出する。図8では、オブジェクトS,Sについて、オブジェクト高さ方向接線L,Lが生成され、オブジェクト高さ方向接線角度θ,θが生成されている。また、図8に示す例では、オブジェクトS,Sにおけるオブジェクト高さ方向接線L,Lの接点がそれぞれ座標(D,Z),(D,Z)であるので、オブジェクト高さ方向接線角度θ,θはそれぞれ、式(3)及び式(4)により算出される。
θ=arctan(Z/D) …(3)
θ=arctan(Z/D) …(4)
【0075】
第2実施形態における可視オブジェクト判別部15は、オブジェクト接線角度算出部13により算出されたオブジェクト接線角度と、オブジェクト距離算出部14により算出されたオブジェクト距離と、オブジェクト高さ方向接線角度算出部17により算出されたオブジェクト高さ方向接線角度とを用いて判断されたオブジェクト間の位置関係に基づき可視オブジェクトを判別する。次に、図4及び図8を参照して、第2実施形態における可視オブジェクト判別部15による可視オブジェクト判別処理を具体的に説明する。
【0076】
可視オブジェクトであるか否かを判別する対象の判別対象オブジェクトをオブジェクトSとし、視線基準位置から見て判別対象オブジェクトを遮蔽するか否かを位置関係により判定する対象である位置関係判定対象オブジェクトをオブジェクトSとすると、下記式(5)及び式(6)が共に成立する場合には、オブジェクトSは、2次元平面上では、視線基準位置から見てオブジェクトSに完全に遮蔽された状態にある。
θminA≦θminB<θmaxB≦θmaxA…(5)
<R …(6)
【0077】
しかし、式(5)及び式(6)が共に成立する場合であっても、図8(a)に示すように、式(7)が成立する場合には、
θ<θ …(7)
視線基準位置から、オブジェクトSの上方にオブジェクトSの少なくとも一部を視認可能である。
【0078】
一方、式(5)及び式(6)が共に成立し、且つ図8(b)に示すように、式(8)が成立する場合には、
θ>θ …(8)
オブジェクトSは、3次元空間において、視線基準位置から見てオブジェクトSに完全に遮蔽された状態となる。
【0079】
従って、可視オブジェクト判別部15は、式(5)、式(6)及び式(8)のいずれかの式が成立しない場合に、オブジェクトSを、オブジェクトSによって完全に遮蔽されることのない、少なくとも一部視認可能なオブジェクトとして判別する。
【0080】
以後においては第1実施形態と同様に、可視オブジェクト判別部15は、視線基準位置から予め設定された所定の距離以内に存在するオブジェクトとしてオブジェクト情報取得部12により取得されたオブジェクト情報から、一のオブジェクト情報を判別対象オブジェクトとして抽出し、当該一のオブジェクト情報以外の全ての他のオブジェクトを位置関係判定対象オブジェクトとして抽出し、上記のような位置関係の判定を実施する。そして、当該一のオブジェクトが、全ての位置関係判定対象オブジェクトに対して、少なくとも一部視認可能なオブジェクトとして判別された場合に、可視オブジェクト判別部15は、当該一のオブジェクトを可視オブジェクトとして判別する。
【0081】
以上説明した第2実施形態のオブジェクト表示制御装置1では、オブジェクト接線角度、オブジェクト距離及びオブジェクト高さ方向接線角度を用いてオブジェクト間の位置関係が判断される。そして、オブジェクト間の位置関係に基づき、視線基準位置から見て、オブジェクトの全部が視認可能、又は他のオブジェクトにより一部が隠蔽されていたとしても当該他のオブジェクトの両側または上側に少なくとも一部を視認可能なオブジェクトが可視オブジェクトとして適切に判別される。
【0082】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係るオブジェクト表示制御装置1Aの機能的構成を示すブロック図である。第1実施形態におけるオブジェクト表示制御装置1は、移動端末2から送信された位置情報に基づき非表示オブジェクトの判別を行い、オブジェクトを移動端末2に出力する構成を有しており、例えばサーバといった装置により構成されるものである(図1参照)。これに対し、第3実施形態のオブジェクト表示制御装置1Aは、自装置において取得した視線基準位置情報に基づき可視オブジェクトの判別を行い、オブジェクトを表示する構成を有している。第3実施形態のオブジェクト表示制御装置1Aは、例えば、携帯電話、移動端末といった装置により構成される。
【0083】
オブジェクト表示制御装置1Aは、機能的には、視線基準位置情報取得部10A(視線基準位置情報取得手段)、オブジェクト情報記憶部11A(オブジェクト情報記憶手段)、オブジェクト情報取得部12A(オブジェクト情報取得手段)、オブジェクト接線角度算出部13A(オブジェクト接線角度算出手段)、オブジェクト距離算出部14A(オブジェクト距離算出手段)、可視オブジェクト判別部15A(可視オブジェクト判別手段)、オブジェクト表示部16A(オブジェクト情報出力手段)、オブジェクト高さ方向接線角度算出部17(オブジェクト高さ方向接線角度算出手段)及びGPS20Aを備える。
【0084】
視線基準位置情報取得部10Aは、オブジェクト表示制御装置1Aの所在位置を示す位置情報を取得する部分である。位置情報は、GPS20Aにより測位される。視線基準位置情報取得部10Aは、取得した位置情報をオブジェクト情報取得部12Aに送出する。なお、本実施形態では、位置情報はGPS20Aにより取得されることとしているが、例えば、WiFi、RFIDタグ、マーカ認識、画像認識といった方法により測位が実施され、位置情報が取得されることとしてもよい。
【0085】
オブジェクト情報取得部12A、オブジェクト接線角度算出部13A、オブジェクト距離算出部14A及び可視オブジェクト判別部15Aはそれぞれ、図1におけるオブジェクト情報取得部12、オブジェクト接線角度算出部13、オブジェクト距離算出部14及び可視オブジェクト判別部15と同様の機能を有する。また、オブジェクト高さ方向接線角度算出部17Aは、図6におけるオブジェクト高さ方向接線角度算出部17と同様の機能を有する。
【0086】
オブジェクト表示部16Aは、可視オブジェクト判別部15Aにより可視オブジェクトとして判別された構造物オブジェクトに対応付けられた情報オブジェクト、及び可視オブジェクト判別部15Aにより可視オブジェクトとして判別された情報オブジェクトを、当該情報オブジェクトのオブジェクト情報に示される当該オブジェクトの所在位置に対応させて表示する部分である。オブジェクト表示部16Aは、可視オブジェクト判別部15A又はオブジェクト情報記憶部11Aから取得できる。
【0087】
これにより、オブジェクト表示部16Aは、例えば、オブジェクト表示制御装置1Aが備える撮像装置(図示せず)により取得した現実環境の画像に、オブジェクトを重畳して表示することができる。表示画像中におけるオブジェクトは、表示画像中の現実環境の空間における、オブジェクト情報に含まれるオブジェクトの座標が示す位置に配置される。これにより、現実環境の画像に含まれる構造物オブジェクトに情報オブジェクトを対応付けた表示が可能となる。なお、オブジェクト表示部16Aによるオブジェクトの表示処理は、オブジェクト情報の出力処理の一態様である。
【0088】
GPS20Aは、オブジェクト表示制御装置1Aの所在位置を測位する装置であり、測位された所在位置を示す位置情報を視線基準位置情報取得部10A及びオブジェクト表示部16Aに送出する。なお、オブジェクト表示制御装置1Aがさらに方位センサ(図示せず)を備え、方位センサにより検出された方位情報を撮像装置の視野範囲の特定に用いることとしてもよい。
【0089】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1,1A…オブジェクト表示制御装置、10,10A…視線基準位置情報取得部、11,11A…オブジェクト情報記憶部、12,12A…オブジェクト情報取得部、13,13A…オブジェクト接線角度算出部、14,14A…オブジェクト距離算出部、15,15A…可視オブジェクト判別部、16…オブジェクト情報出力部、16A…オブジェクト表示部、17,17A…オブジェクト高さ方向接線角度算出部、22…位置情報送信部、23…オブジェクト情報受信部、24…オブジェクト表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間又は仮想空間に配置されたオブジェクトの表示制御を行うオブジェクト表示制御装置であって、
前記現実空間又は前記仮想空間における視線の基準位置である視線基準位置を示す視線基準位置情報を取得する視線基準位置情報取得手段と、
前記現実空間または前記仮想空間に存在する前記オブジェクトのうち、前記視線基準位置から少なくとも一部を視認可能な前記オブジェクトである可視オブジェクトを判別する可視オブジェクト判別手段と、
を備えることを特徴とするオブジェクト表示制御装置。
【請求項2】
前記現実空間又は前記仮想空間においてオブジェクトが占める領域を定義可能な情報を含むオブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得手段と、
前記オブジェクト情報に基づき、前記視線基準位置から見た前記オブジェクトの端部を通る視線であるオブジェクト接線と所定の基準方向とが成す角度であるオブジェクト接線角度を算出するオブジェクト接線角度算出手段と、
前記視線基準位置と前記オブジェクトとの距離であるオブジェクト距離を算出するオブジェクト距離算出手段とを備え、
前記可視オブジェクト判別手段は、
前記オブジェクト接線角度算出手段により算出された前記オブジェクト接線角度と、前記オブジェクト距離算出手段により算出された前記オブジェクト距離とを用いて判断されたオブジェクト間の位置関係に基づき前記可視オブジェクトを判別する
ことを特徴とする請求項1に記載のオブジェクト表示制御装置。
【請求項3】
前記オブジェクト情報は、平面上において前記オブジェクトが占める領域の頂点の座標であるオブジェクト頂点座標を含み、
前記オブジェクト接線角度算出手段は、前記視線基準位置と前記頂点座標とを通る直線を前記オブジェクト接線として求め、該オブジェクト接線に基づき前記オブジェクト接線角度を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載のオブジェクト表示制御装置。
【請求項4】
前記オブジェクト距離算出手段は、
前記オブジェクト情報が前記オブジェクトの所在位置を示す代表座標を含む場合には、前記視線基準位置と前記代表位置との距離を前記オブジェクト距離として算出し、
前記オブジェクト情報が平面上において前記オブジェクトが占める領域の頂点の座標であるオブジェクト頂点座標を含む場合には、前記視線基準位置と、前記オブジェクト頂点座標から算出される重心位置との距離を前記オブジェクト距離として算出し、
前記オブジェクト情報が、前記オブジェクトの現実空間における地理的な所在位置を示す位置情報を含む場合には、該位置情報に基づき求められた2次元平面上における座標と、前記視線基準位置との距離を前記オブジェクト距離として算出する
ことを特徴とする請求項2または3に記載のオブジェクト表示制御装置。
【請求項5】
オブジェクト高さ方向接線角度算出手段を更に備え、
前記オブジェクト情報は、前記オブジェクトの高さを示す高さ情報を含み、
前記オブジェクト高さ方向接線角度算出手段は、
前記高さ情報に基づき、前記視線基準位置から見た前記オブジェクトの上側端部を通る視線であるオブジェクト高さ方向接線が、前記仮想空間または前記現実空間における水平方向と成す角度であるオブジェクト高さ方向接線角度を算出し、
前記可視オブジェクト判別手段は、
前記オブジェクト接線角度算出手段により算出された前記オブジェクト接線角度と、前記オブジェクト距離算出手段により算出された前記オブジェクト距離と、前記オブジェクト高さ方向接線角度算出手段により算出された前記オブジェクト高さ方向接線角度とを用いて判断されたオブジェクト間の位置関係に基づき前記可視オブジェクトを判別する
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のオブジェクト表示制御装置。
【請求項6】
前記オブジェクト情報を記憶するためのオブジェクト情報記憶手段を更に備え、
前記オブジェクト情報取得手段は、前記オブジェクト情報記憶手段に記憶された前記オブジェクト情報を取得する
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のオブジェクト表示制御装置。
【請求項7】
他のオブジェクトとの関連付けを示す関連オブジェクト情報を前記オブジェクト情報として含むオブジェクトである付随オブジェクトに関する前記オブジェクト情報を、該付随オブジェクトの関連オブジェクト情報に示される他のオブジェクトが前記可視オブジェクトである場合に、出力するオブジェクト情報出力手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のオブジェクト表示制御装置。
【請求項8】
前記オブジェクト情報出力手段は、
前記可視オブジェクト判別手段により判別された前記可視オブジェクトに関する前記オブジェクト情報を出力するオブジェクト情報出力手段を更に備える
ことを特徴とする請求項7に記載のオブジェクト表示制御装置。
【請求項9】
オブジェクト情報出力手段を更に備え、
前記可視オブジェクト判別手段は、前記可視オブジェクトの前記オブジェクト情報に、当該オブジェクトが可視オブジェクトであることを示す可視属性を付し、
前記オブジェクト情報出力手段は、前記視線基準位置から予め設定された所定の距離以内に位置するオブジェクトの前記オブジェクト情報を前記可視属性と共に出力する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のオブジェクト表示制御装置。
【請求項10】
現実空間又は仮想空間に配置されたオブジェクトの表示制御を行うオブジェクト表示制御装置におけるオブジェクト表示制御方法であって、
前記現実空間又は前記仮想空間における視線の基準位置である視線基準位置を示す視線基準位置情報を取得する視線基準位置情報取得ステップと、
前記現実空間または前記仮想空間に存在する前記オブジェクトのうち、前記視線の基準位置から少なくとも一部を視認可能な前記オブジェクトである可視オブジェクトを判別する可視オブジェクト判別ステップと、
を有することを特徴とするオブジェクト表示制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−164701(P2011−164701A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23405(P2010−23405)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】