説明

オプチニューリンおよび緑内障

遺伝子オプチニューリン中の、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連している特定の変異の存在について試料を試験する、オプチニューリン関連の緑内障もしくはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在することまたは存在しないことを診断する方法が記載されている。また、オプチニューリンポリペプチドの発現における変性の存在について試料を試験する方法、ならびにオプチニューリンポリペプチドの活性の変性の存在について試料を試験する方法も記載されている。また、オプチニューリン治療剤を利用した緑内障の治療方法も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体が参照として本明細書中に組み込まれる、2001年12月24日出願の米国仮出願第60/344,754号の利益を請求する2002年1月30日出願の米国第10/060,981号の一部継続出願である2002年2月28日出願の米国第10/090,118号の継続出願である2002年10月25日出願の米国第10/281,457号の継続出願である。
【0002】
政府支援
本発明は、全体的にまたは部分的に、国立衛生研究所(国立眼病研究所)による助成金RO1-EY09947によって支援されたものである。米国政府が本発明の権利の一部を保有する。
【0003】
緑内障とは、眼に影響を与えるいくつかの異なる疾患から生じる特定のパターンの視野損失および視神経乳頭損傷を特徴とする、進行性の視神経症である。米国では約247万人が緑内障に罹患しており(Quigley, H. A.およびVitale, S.、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.、38:83、(1997))、100,000人を超える米国人が毎年この状態を発症すると予想されている。さらに、世界中で6700万人が緑内障を患っていると推定される(Quigley, H. A.、Br. J. Ophthalmol.、80:389、(1996))。この状態の最も一般的な型は原発性開放隅角緑内障(POAG)である。緑内障性視神経損傷および特徴的な視野損失は、この状態の2つの主要な臨床的徴候である(Crick, R. P.、Lancet、1:205、(1974); Quigley, H. A.、N. Engl. J Med.、328:1097、(1993); Wilson, R.およびMatrone, J.、「The Glaucomas」、第2巻、753-768頁(Ritch, S. M.およびKrupin, T.編、セントルイス:Mosby、1996))。緑内障性損傷の最も一般的な知られている危険因子は上昇した眼圧(IOP)であるが、これは疾病自体に対応するものではなく、また、数々の他の危険因子が現在調査されている。POAGを罹患している患者の約1/3から1/2(すなわち、米国だけで120万人)は、IOPが22mmHg未満の統計的に正常な範囲内にある(Tielsch, J. M.他、JAMA、266:269、(1991); Hitchings, R. A.、Br. J. Ophthalmol.、76:494、(1992); Grosskreutz, C.およびNetland, P. A.、Int. Ophthalmol. Clin.、34: 173、(1994); Werner, E. B.、「The Glaucomas」第2巻、768-797頁(Ritch, S. M.およびKrupin, T.編、セントルイス: Mosby、1996)。このような患者は、低眼圧緑内障または正常眼圧緑内障(LTGまたはNTG)を罹患していると考えられており、典型的な視神経乳頭緑内障性陥凹および視野損失を示す(Hitchings, R. A.およびAnderton, S. A.、Br. J. Ophthalmol.、67:818、(1983))。
【背景技術】
【0004】
過去10年間の間に、様々な緑内障の遺伝型について8つの異なる遺伝子座位が同定された。2つの座位が原発性性先天性緑内障(PCG)に、1つが若年発症緑内障(JOAG)に、別の5つが成人発症POAGについて報告されている(Sarfarazi, M.およびStoilov, I.、「Ophthalmic Fundamentals: Glaucoma (Sassani, J. W.編(Slack Inc.、ニュージャージー州Thorofare、1999)、15-31頁)。しかし、原因遺伝子はこの状態の2つの稀な型、すなわちPCG(Stoilov, I.他、Hum. Mol. Genet.、6:641、(1997))およびJOAG(Stone, E. M.他、Science、275:668、(1997))でのみ同定されている。進行中の研究によりチトクロームP4501B1がPCGの主要な遺伝子(すなわち、家族性症例の85%および散発性症例の33%)であることが示されているが(Stoilov, I.他、Am. J Hum. Genet.、62:573、(1998))、JOAGおよびPOAG対象のどちらもの小さなサブセット(すなわち3.0〜4.0%)で、ミオシリン遺伝子中の変異が主に関与している。ミオシリン変異のほとんどがJOAG症例で同定されているが(すなわち2.0〜2.5%)、この遺伝子が変異していない他のJOAGファミリーも存在する(Stoilova, D.他、J. Med. Genet.、35:989、(1998))。さらに、成人発症POAG症例では少数のみの変異が報告されている(すなわち、1.0〜1.5%)。現在のところ、成人発症POAG表現型の原因である他の遺伝子は同定されていない。
【特許文献1】米国仮出願第60/344,754号、2001年12月24日出願
【特許文献2】米国第10/060,981号、2002年1月30日出願
【特許文献3】米国第10/090,118号、2002年2月28日出願
【特許文献4】米国第10/281,457号、2002年10月25日出願
【非特許文献1】Quigley, H. A.およびVitale, S.、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.、38:83、(1997)
【非特許文献2】Quigley, H. A.、Br. J. Ophthalmol.、80:389、(1996)
【非特許文献3】Crick, R. P.、Lancet、1:205、(1974)
【非特許文献4】Quigley, H. A.、N. Engl. J Med.、328:1097、(1993)
【非特許文献5】Wilson, R.およびMatrone, J.、「The Glaucomas」、第2巻、753-768頁(Ritch, S. M.およびKrupin, T.編、セントルイス: Mosby、1996)
【非特許文献6】Tielsch, J. M.他、JAMA、266:269、(1991)
【非特許文献7】Hitchings, R. A.、Br. J. Ophthalmol.、76:494、(1992)
【非特許文献8】Grosskreutz, C.およびNetland, P. A.、Int. Ophthalmol. Clin.、34: 173、(1994)
【非特許文献9】Werner, E. B.、「The Glaucomas」第2巻、768-797頁(Ritch, S. M.およびKrupin, T.編、セントルイス: Mosby、1996
【非特許文献10】Hitchings, R. A.およびAnderton, S. A.、Br. J. Ophthalmol.、67:818、(1983)
【非特許文献11】Sarfarazi, M.およびStoilov, I.、「Ophthalmic Fundamentals: Glaucoma (Sassani, J. W.編(Slack Inc.、ニュージャージー州Thorofare、1999)、15-31頁
【非特許文献12】Stoilov, I.他、Hum. Mol. Genet.、6:641、(1997))
【非特許文献13】Stone, E. M.他、Science、275:668、(1997)
【非特許文献14】Stoilov, I.他、Am. J Hum. Genet.、62:573、(1998)
【非特許文献15】Stoilova, D.他、J. Med. Genet.、35:989、(1998)
【非特許文献16】Li, Y.他、Mol. Cell. Biol.、18:1601、(1998)
【非特許文献17】Faber, P. W.他、Hum. Mol. Genet.、7:1463、(1998)
【非特許文献18】Schwamborn, K.他、J. Biol. Chem.、275:22780、(2000)
【非特許文献19】Moreland, R. J.他、Nucleic Acids Res.、28:1986、(2000)
【非特許文献20】Hattula, K.およびPeranen, J.、Curr. Bio.、10:1603、(2000)
【非特許文献21】「Current Protocols in Molecular Biology」、Ausubel, F.他編、John Wiley & Sons (2001年までの補足を含む)
【非特許文献22】Krause, M. H.およびS. A. Aaronson、Methods in Enzymology、200:546-556、(1991)
【特許文献5】米国特許第5,288,611号
【特許文献6】米国特許第4,851,330号
【非特許文献23】Nielsen, P. E.他、Bioconjugate Chemistry、1994、5、American Chemical Society、1頁、(1994)
【非特許文献24】Saiki, R.他、(1986)、Nature、(London)、324:163-166
【非特許文献25】ChurchおよびGilbert、(1988)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:1991-1995
【非特許文献26】Sanger, F.他、(1977)、Proc. Natl. Acad. Sci.、74:5463-5467
【非特許文献27】Beavis他、米国特許第5,288,644号
【非特許文献28】Sheffield, V. C.他、(19891)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:232-236
【非特許文献29】Orita, M.他、(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:2766-2770
【非特許文献30】Flavell他、(1978)、Cell、15:25
【非特許文献31】Geever他、(1981)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、78:5081
【非特許文献32】Cotton他、(1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85:4397-4401
【非特許文献33】Myers, R. M.他、(1985)、Science、230:1242
【非特許文献34】David他、米国特許第4,376,110号
【非特許文献35】aptamer.icmb.utexas.edu/のアプタマーデータベース
【非特許文献36】Gening, L. V.他、Biotechniques、31(4):828、830、832、834、(2001)
【非特許文献37】Bowie他、Science、247:1306-1310、(1990)
【非特許文献38】Cunningham他、Science、244:1081-1085、(1989)
【非特許文献39】Smith他、J. Mol. Biol.、224:899-904、(1992)
【非特許文献40】de Vos他、Science、255:306-312、(1992)
【非特許文献41】Wilm他、Nature、379(6564):466-469、(1996)
【非特許文献42】Jacoby、Methods in Enzymology、第104巻、Academic Press、New York、(1984)
【非特許文献43】Scopes、Protein Purification, Principles and Practice、第2版、Springer-Verlag、New York、(1987)
【非特許文献44】Deutscher編、Guide to Protein Purification, Methods in Enzymology、第182巻、(1990)
【非特許文献45】KohlerおよびMilstein、(1975)、Nature、256:495-497
【非特許文献46】Kozbor他、(1983)、Immunol. Today、4:72)
【非特許文献47】Cole他、(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.、77-96頁
【非特許文献48】Current Protocols in Immunology、(1994)、Coligan他編、John Wiley & Sons, Inc.、New York、NY
【非特許文献49】Current Protocols in Immunology
【非特許文献50】Galfre他、(1977)、Nature、266:55052
【非特許文献51】R. H. Kenneth、Monoclonal Antibodies : A New Dimension In Biological Analyses、Plenum Publishing Corp.、New York、New York、(1980)
【非特許文献52】Lerner、(1981)、Yale J. Biol. Med.、54:387-402
【特許文献7】米国特許第5,223,409号
【特許文献8】国際公開公報WO 92/18619号
【特許文献9】国際公開公報WO 91/17271号
【特許文献10】国際公開公報WO 92/20791号
【特許文献11】国際公開公報WO 92/15679号
【特許文献12】国際公開公報WO 93/01288号
【特許文献13】国際公開公報WO 92/01047号
【特許文献14】国際公開公報WO 92/09690号
【特許文献15】国際公開公報WO 90/02809号
【非特許文献53】Fuchs他、(1991)、Bio/Technology、9:1370-1372
【非特許文献54】Hay他、(1992)、Hum. Antibod. Hybridomas、3:81-85
【非特許文献55】Huse他、(1989)、Science、246:1275-1281
【非特許文献56】Griffiths他、(1993)、EMBO J.、12:725-734
【特許文献16】米国特許第5,176,996号
【特許文献17】米国特許第5,264,564号
【特許文献18】米国特許第5,256,775号
【非特許文献57】Van der Krol他、(1988)、Biotechniques、6:958-976
【非特許文献58】Stein他、(1988)、Cancer Res、48:2659-2668
【非特許文献59】Wagner, R.、(1994)、Nature、372:333
【非特許文献60】Letsinger他、(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:6553-6556
【非特許文献61】Lemaitre他、(1987)、Proc. Natl. Acad Sci. USA、84:648-652
【特許文献19】国際公開公報WO 88/09810号
【特許文献20】国際公開公報WO 89/10134号
【非特許文献62】Krol他、(1988)、BioTechniques、6:958-976
【非特許文献63】Zon、(1988)、Phare. Res.、5:539-549
【非特許文献64】Gautier他、(1987)、Nucl. Acids Res.、15:6625-6641
【非特許文献65】Inoue他、(1987)、Nucl. Acids Res.、15:6131-6148
【非特許文献66】Inoue他、(1987)、FEBS Lett.、215:327-330
【非特許文献67】Stein他、(1988)、Nucl. Acids Res.、16:3209
【非特許文献68】Sarin他、(1988)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、85:7448-7451
【特許文献21】国際公開公報WO 90/11364号
【非特許文献69】Sarver他、(1990)、Science、247:1222-1225
【特許文献22】米国特許第5,093,246号
【非特許文献70】HaseloffおよびGerlach、(1988)、Nature、334:585-591
【非特許文献71】Zaug他、(1984)、Science、224:574-578
【非特許文献72】ZaugおよびCech、(1986)、Science、231:470-475
【非特許文献73】Zaug他、(1986)、Nature、324:429-433
【特許文献23】国際公開公報WO 88/04300号
【非特許文献74】BeenおよびCech、(1986)、Cell、47:207-216
【非特許文献75】Smithies他、(1985)、Nature、317:230-234
【非特許文献76】ThomasおよびCapecchi、(1987)、Cell、51:503-512
【非特許文献77】Thompson他、(1989)、Cell、5:313-321
【非特許文献78】Helene, C.、(1991)、Anticancer Drug Des.、6(6):569-84
【非特許文献79】Helene, C.他、(1992)、Ann. N.Y. Acad. Sci.、660:27-36
【非特許文献80】Maher, L. J.、(1992)、Bioassays、14(12):807-15
【特許文献24】Meade他、米国特許第4,873,316号
【特許文献25】米国特許第4,736,866号
【特許文献26】米国特許第4,870,009号
【特許文献27】米国特許第4,873,191号
【非特許文献81】Hogan、Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)
【非特許文献82】Bradley、(1991)、Current Opinion in Bio/Technology、2:823-829
【特許文献28】国際公開公報WO 90/11354号
【特許文献29】国際公開公報WO 91/01140号
【特許文献30】国際公開公報WO 92/0968号
【特許文献31】国際公開公報WO 93/04169号
【非特許文献83】Wilmut他、(1997)、Nature、385:810-813
【特許文献32】国際公開公報WO 97/07668号
【特許文献33】国際公開公報WO 97/07669号
【非特許文献84】Sarfarazi, M.他、Am. J. Hum. Genet.、62:641、(1998)
【非特許文献85】Yuan, L.およびNeufeld, A. H.、Glia、32:42、(2000)
【非特許文献86】Tezel, G.およびWax, M. B.、J. Neurosci.、20:8694、(2000)
【非特許文献87】Wold, W. S.、J. Cell Biochem.、53:329(1993)
【非特許文献88】McGiff, J. C.他、Curr. Opin. Nephrol. Hypertens.、10:231、(2001)
【非特許文献89】Gasser, P.他、Angiology、41:214、(1990)
【非特許文献90】Rankin, S. J.、Surv. Ophthalmol.、43、Suppl 1:S176、(1999)
【非特許文献91】Van Buskirk, E. M.他、Am. J. Ophthalmol.、109:511、(1990)
【非特許文献92】Caprioli, J.およびSpaeth, G. L.、Am. J. Ophthaltiiol.、97:730、(1984)
【非特許文献93】Netland, P. A.他、Am. J. Ophthalmol.、115:608、(1993)
【非特許文献94】Chen, P.他、J. Biol. Chem.、273:5815、(1998)
【非特許文献95】Wellington, C. L.他、J. Neural. Transm.、Suppl. 1、(2000)
【非特許文献96】Sanches, I.他、Neuron、22:623、(1999)
【非特許文献97】Moritz, O.他、Mol. Biol. Cell、12:2341、(2001)
【非特許文献98】Schwambom, K.他、J. Biol. Chem.、275:22780、(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書中に記載するように、一遺伝子であるオプチニューリン中の変異が緑内障および緑内障の危険性の増大に関連づけられた。したがって、本発明は、個体においてオプチニューリン関連の緑内障もしくはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在することまたは存在しないことを診断する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この方法は、オプチニューリン遺伝子中に変性(たとえば変異)が存在することもしくは存在しないことを検出すること、またはオプチニューリンポリペプチドの発現もしくは組成の変性を検出することを含む。この変性は、定量的、定性的、または定量および定性の両方であることができる。この方法はまた、オプチニューリンポリペプチドの活性に変性が存在することまたは存在しないことを検出することを含み得る。遺伝子中に変性が存在すること、またはオプチニューリンポリペプチドの発現もしくは組成に変性が存在すること、またはオプチニューリンポリペプチドの活性に変性が存在することは、オプチニューリン関連の緑内障もしくはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大の指標である。遺伝子中に変性が存在しないこと、またはオプチニューリンポリペプチドの発現もしくは組成に変性が存在しないこと、またはオプチニューリンポリペプチドの活性に変性が存在しないことは、オプチニューリン関連の緑内障もしくはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことの指標である。
【0007】
本発明はさらに、オプチニューリンまたはオプチニューリン相互作用ポリペプチドをコードしている核酸;オプチニューリンポリペプチドまたはオプチニューリン相互作用ポリペプチド;オプチニューリンポリペプチドまたはオプチニューリン相互作用ポリペプチドの活性を変性させる薬剤などのオプチニューリン治療剤を投与することによる、緑内障もしくは緑内障の危険性の増大を処置する方法に関する。緑内障または緑内障の危険性の増大を処置する方法はまた、アンチセンス療法、リボザイム、および相同組換えの使用も含む。本発明はさらに、緑内障の処置または緑内障の危険性の増大の処置のための医薬品を製造するためのオプチニューリン治療剤の使用に関する。
【0008】
本発明の方法により、高齢世代など、危険性の高い個体においてこの疾患をスクリーニングすること、ならびに緑内障の治療的および予防的処置のいずれをも容易にすることが可能となる。
【0009】
本発明の前述のおよび他の目的、特徴ならびに利点は、添付の図面に例示するように、以下の本発明の好ましい実施形態のより具体的な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、成人発症の原発性開放隅角緑内障(POAG)に関連していると同定された遺伝子に関する。本明細書中に記載するように、本出願人らは一遺伝子であるオプチニューリン中に一連の変異を同定した。この変異は、それぞれの家系内の成人発症低眼圧緑内障(LTG)/原発性開放隅角緑内障(POAG)の表現型の主要な原因である。出願人らはさらに、オプチニューリン遺伝子中に、緑内障の危険性の増大に関連している変異を同定した。オプチニューリンは最初、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)誘発性タンパク質として同定され(Li, Y.他、Mol. Cell. Biol.、18:1601、(1998))、FIP-2(アデノウイルスE3-15.7K相互作用蛋白質2から)と命名された。次いで、これはハンチンチン相互作用タンパク質L(HYPL)(Faber, P. W.他、Hum. Mol. Genet.、7:1463、(1998))、NEMO-関連タンパク質(NRP)(Schwamborn, K.他、J. Biol. Chem.、275:22780、(2000))、転写因子IIIA相互作用タンパク質(TFIIIA-INTP)(Moreland, R. J.他、Nucleic Acids Res.、28:1986、(2000))、およびRAB8相互作用タンパク質(Hattula, K.およびPeranen, J.、Curr. Bio.、10:1603、(2000))としても同定された。本研究では、このタンパク質の新しい名称として「オプチニューリン(optineurin)」(視神経症誘発(Optic Neuropathy Inducing)タンパク質)を使用する。オプチニューリン中に1つもしくは複数の変異が存在することによりオプチニューリンのDNAまたはタンパク質結合能力が妨げられるかもしれず、別の変異によるタンパク質の未熟切断がもたらされる。証拠により、オプチニューリンとE3-14.7Kタンパク質との直接の相互作用が、恐らくTNF-αまたはFas-リガンド経路を利用して、アポトーシス、炎症または血管収縮を媒介することが示されている。オプチニューリンはまた、細胞形態形成および膜輸送(RAB8)、ベシクル輸送(ハンチンチン)、転写活性化(TFIIIA)ならびに2つのキナーゼのアセンブリまたは活性において、他のタンパク質との相互作用を介して機能する。
【0011】
したがって、本発明は緑内障を治療する方法に関し、また、オプチニューリン遺伝子もしくはオプチニューリンポリペプチド中に変性が存在することまたは存在しないことを検出すること、あるいはオプチニューリンポリペプチドの活性の変性またはオプチニューリン相互作用ポリペプチドの変性を検出することによる、個体において緑内障もしくは緑内障の危険性の増大が存在することまたは存在しないことを検出するための方法およびキットにも関する。オプチニューリン遺伝子またはオプチニューリンポリペプチド中の1つもしくは複数の変性の存在に関連している緑内障は、本明細書中で「オプチニューリン関連の緑内障」と呼ばれ、オプチニューリン遺伝子またはオプチニューリンポリペプチド中の1つもしくは複数の変性に関連している緑内障の危険性の増大は、本明細書中で「オプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大」と呼ばれる。
【0012】
本明細書中で使用する用語「緑内障」とは、原発性先天緑内障または小児緑内障などの遺伝性緑内障;若年発症緑内障および成人または遅発型POAGのいずれをも含めた原発性開放隅角緑内障(POAG);続発性緑内障;色素性緑内障;低眼圧緑内障(LTG);ならびに正常眼圧緑内障(NTG)を指す。特定の実施形態では、緑内障は低眼圧緑内障(LTG)、正常眼圧緑内障(NTG)または原発性開放隅角緑内障(POAG)であることができる。本明細書中で使用する、緑内障の「危険性の増大」とは、別の個体または個体群が緑内障を発生する可能性より統計的に有意である、個体が緑内障を発生する可能性を指す。
【0013】
診断方法および診断用のキット
オプチニューリン遺伝子および核酸に基づいた方法
本発明の一実施形態では、オプチニューリン関連の緑内障の診断、またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大の診断は、緑内障もしくは緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子中に変性が存在することまたは存在しないことを検出することによって行われる。本明細書中で使用する用語「オプチニューリン遺伝子」とは、オプチニューリンポリペプチド(腫瘍壊死因子-α(TNF-α)誘発性タンパク質(FIP-2);ハンチンチン相互作用タンパク質L(HYPL);NEMO関連タンパク質(NRP);転写因子IIIA相互作用タンパク質(TFIIIA-INTP);またはRAB8相互作用タンパク質としても知られる)をコードしている核酸(たとえば、DNA、RNA、cDNA)を指す。本明細書中で使用する「遺伝子」とは、翻訳された核酸だけでなく、翻訳されていない核酸(たとえばプロモーター領域)も含む。
【0014】
配列情報には、GenBank受託番号AF420371-3;配列番号1、3、および5(それぞれオプチニューリンのアイソフォーム1、2および3をコードしている核酸);ならびに配列番号2、4および6(それぞれオプチニューリンのアイソフォーム1、2および3)を参照されたい。配列番号1は、ヌクレオチド1〜310の5'非翻訳領域、ヌクレオチド311から2044のコードされたアイソフォーム(配列番号2)、およびヌクレオチド2045〜2077の3'非翻訳領域を含めた、オプチニューリンのアイソフォーム1をコードしている。配列番号3は、ヌクレオチド1〜89の5'非翻訳領域、ヌクレオチド90〜1823のコードされたアイソフォーム(配列番号4)、およびヌクレオチド1824〜1856の3'非翻訳領域を含めた、オプチニューリンのアイソフォーム2をコードしている。配列番号5は、ヌクレオチド1〜241の5'非翻訳領域、ヌクレオチド242〜1975のコードされたアイソフォーム(配列番号6)、およびヌクレオチド1976〜2008の3'非翻訳領域を含めた、オプチニューリンのアイソフォーム3をコードしている。
【0015】
また、たとえばAH009711;AF061034;AF283519-27を参照されたい。また、Li, Y.他、Mol. Cell. Biol.、18:1601、(1998); Faber, P. W.他、Hum. Mol. Genet.、7:1463(1998); Schwamborn, K.他、J Biol. Chem.、275:22780、(2000); Moreland, R. J.他、Nucleic Acids Res.、28:1986、(2000);ならびにHattula, K.およびPeranen, J.、Curr. Bio.、10:1603、(2000)も参照されたい。これらのGenBank受託番号、特にGenBank受託番号AF420371-3の教示全体、およびこれらの参考文献の教示全体は、その全体で本明細書中に参照として組み込まれている。
【0016】
「変性」とは、オプチニューリンをコードしている核酸の既知の配列と比較した、オプチニューリンポリペプチドをコードしている核酸の変化(たとえば、1つもしくは複数のヌクレオチドの挿入、欠失、または変化)である。この変性は、フレームシフト変異をもたらす、単一ヌクレオチドもしくは複数のヌクレオチドの挿入または欠失などオプチニューリン遺伝子中の変異;コードされているアミノ酸の変化をもたらす、少なくとも1つのヌクレオチドの変化;未熟ストップコドンの発生をもたらす、少なくとも1つのヌクレオチドの変化;ヌクレオチドでコードされている1つもしくは複数のアミノ酸の欠失をもたらす、いくつかのヌクレオチドの欠失;遺伝子のコード配列の中断をもたらす、不等組換えや遺伝子転換などによる1つまたはいくつかのヌクレオチドの挿入;遺伝子の全体または一部の複製;遺伝子の全体または一部の転移;あるいは遺伝子の全体または一部の再編成であることができる。単一の遺伝子中に複数のこのような変異が存在してもよい。このような配列変化は、オプチニューリン遺伝子にコードされているポリペプチドの変異を引き起こす。たとえば、変異がフレームシフト変異である場合、フレームシフトによりコードされているアミノ酸に変化がもたらされる可能性があり、かつ/または未熟ストップコドンの発生がもたらされる可能性があり、その結果、切断されたポリペプチドの産生がもたらされる。あるいは、緑内障に関連している変性は、1つまたは複数のヌクレオチド中の同義変異であることができる(すなわち、オプチニューリン遺伝子によってコードされているポリペプチドに変化をもたらさない変異)。このような変性は、スプライシング部位を変性する、mRNAの安定性もしくは運搬に影響を与える、または他の様式で遺伝子の転写もしくは翻訳に影響を与えるかもしれない。上述の任意の変異を有するオプチニューリン遺伝子は、本明細書中で「変異遺伝子」と呼ばれる。
【0017】
本発明の特定の実施形態では、変性は、オプチニューリン遺伝子のコドン50におけるGAGからAAGへの変化;コドン127の後におけるAGの挿入;またはコドン545におけるCGGからCAGへの変化である。これらの変性は緑内障に関連しており、これらの変性が1つまたは複数存在することにより緑内障が診断される。別の特定の実施形態では、変性は、コドン98におけるATGからAAGへの変化であり、この変性の存在は緑内障の危険性の増大の指標であり、またこれが存在することにより緑内障の危険性の増大が診断される。
【0018】
緑内障または緑内障の危険性の増大を診断する第1の方法では、サザン分析などのハイブリダイゼーション方法を使用する(「Current Protocols in Molecular Biology」、Ausubel, F.他編、John Wiley & Sons (2001年までの補足を含む)参照;この文書はその全体が参照として本明細書中に組み込まれる)。たとえば、ゲノムDNA、RNA、もしくはcDNAの試験試料は、たとえば緑内障を罹患していること、緑内障の欠陥を有していること、または緑内障の危険性が増大していることが疑われる個体などの個体(「試験個体」)から得られる。個体は成人、小児、または胎児であることができる。試験試料は、血液試料、血清試料、リンパ液試料、眼からの液体試料(たとえば前眼房由来の液体)、羊水の試料、脳脊髄液の試料、または皮膚、筋肉、頬粘膜、結膜粘膜、胎盤、胃腸管もしくは他の器官由来の組織試料など、核酸(たとえばDNA、RNA)を含む任意の源由来であることができる。胎児の細胞または組織由来のDNAの試験試料は、羊水穿刺または漿膜柔毛採取などによる適切な方法によって得ることができる。その後、DNA、RNA、またはcDNA試料を検査してオプチニューリン遺伝子中に変性が存在するかどうかを決定する。
【0019】
所望する場合は、オプチニューリン遺伝子中に変性が存在するか存在しないかを評価する前に、試料の増幅(たとえばポリメラーゼ連鎖反応による)を行うことができる。増幅は、オプチニューリン遺伝子を含む核酸の全体または一部分に使用することができ、その場合、この一部分は変性を含むオプチニューリン遺伝子の部分(たとえば以下に記載するように、変性を含むエキソン4、エキソン6、または他のエキソンなど、1つもしくは複数のエキソン)を含む。好ましい実施形態では、この一部分はオプチニューリン遺伝子の少なくとも1つのエキソンを含む。
【0020】
変性が存在することまたは存在しないことは、ゲノムDNA、RNA、もしくはcDNA中の遺伝子の、核酸プローブへのハイブリダイゼーションによって示すことができる。本明細書中で使用する「核酸プローブ」とは、目的遺伝子(オプチニューリン)にハイブリダイズする一本鎖オリゴヌクレオチドである。プローブの適切な長さは、典型的には15から30個のヌクレオチドの範囲である。短いプローブは一般に、鋳型と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するのにより低い温度を要する。核酸プローブはDNAプローブまたはRNAプローブであることができ、核酸プローブはオプチニューリン遺伝子中に少なくとも1つの変性を含む。プローブは、遺伝子全体、遺伝子断片、遺伝子を含むベクター、遺伝子のエキソンなどを含むことができる。
【0021】
緑内障または緑内障の危険性の増大の存在を診断するために、オプチニューリン遺伝子を含む試験試料を少なくとも1つの核酸プローブと接触させることによって、ハイブリダイゼーション試料を形成する。ハイブリダイゼーション試料は、核酸プローブの、オプチニューリン遺伝子への特異的ハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な条件下に維持する。本明細書中で使用する「特異的ハイブリダイゼーション」とは正確なハイブリダイゼーションを示す(たとえばミスマッチなし)。特異的ハイブリダイゼーションは、たとえば高ストリンジェンシー条件または中程度のストリンジェンシー条件下で行うことができる。
【0022】
ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー条件」とは、インキュベーションおよび洗浄条件、たとえば、特定の核酸の、第2の核酸へのハイブリダイゼーションを可能にする温度および緩衝液濃度の条件を指す、当分野の用語である。第1の核酸は第2の核酸に完全に(すなわち、100%)相補的であり得、または第1の核酸と第2の核酸は完全ではない度合のある程度の相補性を共有し得る(たとえば70%、75%、85%、95%、98%)。たとえば、特定の高ストリンジェンシー条件を使用して、完全に相補的な核酸を相補性がより低い核酸から区別することができる。
【0023】
核酸ハイブリダイゼーションの「高ストリンジェンシー条件」、「中程度のストリンジェンシー条件」および「低ストリンジェンシー条件」は、「Current Protocols in Molecular Biology」の2.10.1-2.10.16頁および6.3.1-6頁(その教示が参照として本明細書中に組み込まれているAusubel, F. M.他、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons、(1998))に記載されている。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する正確な条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤やSDSなどの変性剤のイオン強度(たとえば0.2×SSC、0.1×SSC)、温度(たとえば室温、42℃、68℃)および濃度だけでなく、核酸配列の長さ、塩基組成、ハイブリダイズする配列間のミスマッチの割合、ならびに他の同一でない配列内におけるその配列のサブセットの発生頻度などの要素にも依存する。したがって、高、中程度、または低ストリンジェンシーの条件は経験的に決定することができる。
【0024】
ハイブリダイゼーションが全く起こらないストリンジェンシーレベルからハイブリダイゼーションが最初に観察されるレベルまでハイブリダイゼーション条件を変化させることによって、所定の配列が試料中の最も類似した配列と(たとえば選択的に)ハイブリダイズすることを可能にする条件が決定できる。
【0025】
例示的な条件は、中程度または低ストリンジェンシー条件の洗浄条件の決定を記載している、Krause, M. H.およびS. A. Aaronson、Methods in Enzymology、200:546-556、(1991). Also, in, Ausubel他、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons、(1998)に記載されている。洗浄とは通常、ハイブリッドの最少相補性レベルを決定するために条件が設定されているステップである。一般に、相同的ハイブリダイゼーションのみが起こる最も低い温度から開始して、(SSC濃度を一定に維持したまま)最終洗浄温度を1℃下げる毎に、ハイブリダイズする配列間のミスマッチの最大程度が1%増加する。一般に、SSCの濃度を2倍にすることによってTmが-17℃上昇する。これらの指針を使用して、洗浄温度は、得ようとするミスマッチのレベルに応じて、高、中程度または低ストリンジェンシーについて経験的に決定することができる。
【0026】
たとえば、低ストリンジェンシーの洗浄は、0.2×SSC/0.1% SDSを含む溶液中で、10分間、室温で洗浄することを含むことができ、中程度のストリンジェンシーの洗浄は、0.2×SSC/0.1% SDSを含む事前に温めた溶液(42℃)溶液中で、15分間、42℃で洗浄することを含むことができ、高ストリンジェンシーの洗浄は、0.1×SSC/0.1% SDSを含む事前に温めた(68℃)溶液中で、15分間、68℃で洗浄することを含むことができる。さらに、所望する結果を得るために、当分野で知られているように洗浄を繰り返してまたは連続的に行うことができる。標的核酸分子と使用するプライマーもしくはプローブとの間の同一性または類似性を同程度に維持したまま、例として与えられる1つまたは複数のパラメータを当分野で知られているように変化させることによって、同等の条件を決定することができる。
【0027】
特に好ましい実施形態では、特異的ハイブリダイゼーションのハイブリダイゼーション条件は高ストリンジェンシーである。その後、標準の方法を使用して、存在する場合は特異的ハイブリダイゼーションを検出する。核酸プローブと試験試料中のオプチニューリン遺伝子との間で特異的ハイブリダイゼーションが起こる場合は、オプチニューリン遺伝子は、核酸プローブ中に存在する変性を有する。この方法では、複数の核酸プローブを同時に使用することもできる。核酸プローブの任意の1つが特異的ハイブリダイゼーションすることは、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子中に変性が存在することの指標であり、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が診断される。特異的ハイブリダイゼーションが存在しないことは、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子中に変性が存在しないことの指標であり、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障が存在しないことまたはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことが診断される。
【0028】
別のハイブリダイゼーション方法では、緑内障もしくは緑内障の危険性の増大に関連している変性が存在することまたは存在しないことを同定するために、ノーザン分析(Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel, F.他編、John Wiley & Sons(上記)参照)を使用する。ノーザン分析には、適切な手段によって個体からRNAの試験試料を得る。上述のように、核酸プローブの、個体由来のRNAへの特異的ハイブリダイゼーションは、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子中に変性が存在することの指標であり、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が診断される。上述のように、核酸プローブの、個体由来のRNAへの特異的ハイブリダイゼーションが存在しないことは、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子中に変性が存在しないことの指標であり、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことが診断される。
【0029】
核酸プローブの使用の代表的な例は、たとえば、米国特許第5,288,611号および第4,851,330号を参照されたい。
【0030】
あるいは、上述のハイブリダイゼーション方法において、核酸プローブの代わりにペプチド核酸(PNA)プローブを使用することができる。PNAとは、N-(2-アミノエチル)グリシン単位などのペプチド様の無機主鎖を有し、メチレンカルボニルリンカーによってグリシンの窒素に付着した有機塩基(A、G、C、TまたはU)を有する、DNA擬態である(たとえば、Nielsen, P. E.他、Bioconjugate Chemistry、1994、5、American Chemical Society、1頁、(1994参照)。PNAプローブは、緑内障に関連している変性を有する遺伝子に特異的にハイブリダイズするよう設計することができる。上述のように、PNAプローブの、個体由来のRNAへの特異的ハイブリダイゼーションは、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子中に変性が存在することの指標であり、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が診断される。上述のように、PNAプローブの、個体由来のRNAへの特異的ハイブリダイゼーションが存在しないことは、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子中に変性が存在しないことの指標であり、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことが診断される。
【0031】
本発明の別の方法では、遺伝子中の変異もしくは変性が制限部位の作製または排除をもたらす場合は、変異遺伝子あるいは変性を含む遺伝子を検出するために制限消化による変異分析を使用することができる。ゲノムDNAを含む試験試料を個体から得る。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、試験個体由来の試験試料のゲノムDNA中のオプチニューリン遺伝子(および必要な場合はそのフランキング配列)を増幅することができる。記載のように(Current Protocols in Molecular Biology(上記)参照)RFLP分析を実施する。関連DNA断片の消化パターンは、緑内障もしくは緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子中に変異または変性が存在することあるいは存在しないことを示し、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障または緑内障のオプチニューリン関連の危険性の増大が存在することあるいは存在しないことが診断される。
【0032】
オプチニューリン遺伝子中の特定の変性を検出するために、配列分析を使用することもできる。DNAまたはRNAの試験試料を試験個体から得る。PCRもしくは他の適切な方法を使用して、遺伝子、および/または必要な場合はそのフランキング配列を増幅することができる。標準の方法を使用して、オプチニューリン遺伝子の配列または遺伝子の断片(たとえば1つもしくは複数のエキソン)、あるいはcDNAまたはcDNAの断片、あるいはmRNAもしくはmRNAの断片を決定する。遺伝子、遺伝子断片、cDNA、cDNA断片、mRNA、またはmRNA断片の配列を、それぞれに応じて適切に遺伝子、cDNA、またはmRNAの既知の核酸配列と比較する。オプチニューリン遺伝子中に変性が存在することは、個体が緑内障または緑内障の危険性の増大に関連している変性を有することを示しており、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が診断される。オプチニューリン遺伝子中に変性が存在しないことは、個体が緑内障または緑内障の危険性の増大に関連している変性を有さないことを示しており、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことが診断される。
【0033】
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドも、増幅したオリゴヌクレオチドと対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブとのドットブロットハイブリダイゼーションを使用することによって、オプチニューリン遺伝子中の変性の存在を検出するために使用することができる(たとえば、Saiki, R.他、(1986)、Nature、(London)、324:163-166参照)。「対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド」(本明細書中では「対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブ」とも呼ばれる)とは、約10〜50塩基対、好ましくは約15〜30塩基対の、オプチニューリン遺伝子に特異的にハイブリダイズし、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連している変性を含むオリゴヌクレオチドである。オプチニューリン遺伝子中の特定の変性に特異的な対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを、標準の方法を使用して調製することができる(Current Protocols in Molecular Biology(上記)参照)。緑内障または緑内障の危険性の増大に関連している遺伝子中の変性を同定するために、DNAの試験試料を個体から得る。PCRを使用してオプチニューリン遺伝子の全体または断片、およびそのフランキング配列を増幅することができる。標準の方法を使用して、増幅したオプチニューリン遺伝子(または遺伝子の断片)を含むDNAをドットブロットし(Current Protocols in Molecular Biology(上記)参照)、ブロットをオリゴヌクレオチドプローブと接触させる。その後、プローブの、増幅したオプチニューリン遺伝子への特異的ハイブリダイゼーションの存在を検出する。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブの、個体由来のDNAへの特異的ハイブリダイゼーションは、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子中の変性の指標であり、したがって、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大の指標である。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブの、個体由来のDNAへの特異的ハイブリダイゼーションが存在しないことは、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子中に変性が存在しないことの指標であり、したがって、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことの指標である。
【0034】
オプチニューリン遺伝子中の変性を検出するために、他の核酸分析方法を使用することができる。代表的な方法には、たとえば、直接手動配列決定法(ChurchおよびGilbert、(1988)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:1991-1995; Sanger, F.他、(1977)、Proc. Natl. Acad. Sci.、74:5463-5467; Beavis他、米国特許第5,288,644号);自動蛍光配列決定法;一本鎖コンホメーション変性アッセイ(SSCP);固定変性ゲル電気泳動法(CDGE);変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE)(Sheffield, V. C.他、(19891)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:232-236)、移動度シフト分析法(Orita, M.他、(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:2766-2770)、制限酵素分析法(Flavell他、(1978)、Cell、15:25; Geever他、(1981)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、78:5081);ヘテロ二重鎖分析法;化学ミスマッチ切断法(CMC)(Cotton他、(1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85:4397-4401);RNase保護アッセイ(Myers, R. M.他、(1985)、Science、230:1242);大腸菌(E. coli)mutSタンパク質などの、ヌクレオチドのミスマッチを認識するポリペプチドの使用;対立遺伝子特異的PCRが含まれる。
【0035】
オプチニューリンポリペプチドに基づいた方法
本発明の別の実施形態では、オプチニューリン関連の緑内障もしくはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在することまたは存在しないことの診断は、オプチニューリンポリペプチドの発現および/あるいは組成を検査することによっても行うことができる。個体由来の試験試料を、オプチニューリン遺伝子にコードされているポリペプチドの発現の変性および/もしくは組成の変性が存在することまたは存在しないことについて評価する。オプチニューリン遺伝子にコードされているポリペプチドの発現の変性は、たとえば、定量的なポリペプチド発現の変性(すなわち、産生されるポリペプチドの量)であることができ、オプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドの組成の変性は、定性的なポリペプチド発現の変性である。このような変性のいずれもが存在し得る。本明細書中で使用するポリペプチドの発現または組成の「変性」とは、対照試料中のオプチニューリン遺伝子によるポリペプチドの発現または組成と比較した、試験試料の発現または組成の変性を指す。対照試料とは、試験試料に対応し(たとえば同種の細胞由来)、かつ緑内障に罹患しておらず、緑内障の危険性が増大していない個体由来の試料である。対照試料と比較した、試験試料中のポリペプチドの発現または組成の変性は、オプチニューリン関連の緑内障もしくはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大の指標である。対照試料と比較した、試験試料中のポリペプチドの発現または組成に変性が存在しないことは、オプチニューリン関連の緑内障もしくはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことの指標である。
【0036】
分光分析、比色分析、電気泳動、等電点分離法、および免疫ブロッティングなどの免疫アッセイ(たとえば、David他、米国特許第4,376,110号)を含めた、オプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドの発現または組成を検査する様々な手段を使用することができる(Current Protocols in Molecular Biology、特に第10章も参照)。たとえば、変異オプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドに特異的に結合する抗体、または非変異遺伝子にコードされるポリペプチドに特異的に結合する抗体を使用したウエスタンブロット分析を使用して、多型もしくは変異オプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドが試験試料中に存在すること、または非多型もしくは非変異遺伝子にコードされるポリペプチドが試験試料中に存在しないことを同定することができる。多型もしくは変異遺伝子にコードされるポリペプチドが存在すること、または非多型もしくは非変異遺伝子にコードされるポリペプチドが存在しないことは、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連している変性の指標であり、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が診断される。多型もしくは変異遺伝子にコードされるポリペプチドが存在しないこと、または非多型もしくは非変異遺伝子にコードされるポリペプチドが存在することは、緑内障または緑内障の危険性の増大に関連している変性が存在しないことの指標であり、したがって、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことが診断される。
【0037】
本方法の一実施形態では、試験試料中のオプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドのレベルすなわち量を、対照試料中のオプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドのレベルすなわち量と比較する。試験試料中のポリペプチドのレベルすなわち量が対照試料中のポリペプチドのレベルすなわち量より高いまたは低いことは(ただし差が統計的に有意である)、オプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドの発現の変性の指標であり、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が診断される。対照試料中のポリペプチドのレベルすなわち量と試験試料中のポリペプチドのレベルすなわち量との間で統計的に差がない場合は、オプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドの発現に変性が存在しないことの指標であり、これによりオプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことが診断される。
【0038】
あるいは、試験試料中のオプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドの組成を、対照試料中のオプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドの組成と比較する。対照試料中のポリペプチドの組成と比較した、試験試料中のポリペプチドの組成の差により、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が診断される。対照試料中のポリペプチドの組成と比較して、試験試料中のポリペプチドの組成に差が存在しないことにより、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことが診断される。
【0039】
別の実施形態では、試験試料および対照試料の、ポリペプチドのレベルすなわち量ならびに組成のいずれをも評価することができる。対照試料と比較した試験試料中のポリペプチドの量すなわちレベルの差;対照試料と比較した試験試料の組成の差;または量すなわちレベルの差および組成の差の両方が、オプチニューリン関連の緑内障もしくはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大の指標である。量すなわちレベルの差および組成の差がどちらも存在しないことは、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことの指標である。
【0040】
オプチニューリンポリペプチドに基づいた他の方法
本発明の別の実施形態では、オプチニューリン関連の緑内障もしくはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在することまたは存在しないことの診断は、オプチニューリンポリペプチドの活性を検査することによっても行うことができる。個体由来の試験試料を、対照試料中のオプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドの活性と比較して、オプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドの活性に変性が存在することまたは存在しないことについて評価する。以下に記載し、図2に示すように、オプチニューリンは、E3-14.7K、TNF-α経路の構成要素、およびFASリガンド経路の構成要素を含めた様々なタンパク質と相互作用する。これらのタンパク質は、本明細書中では「オプチニューリン相互作用ポリペプチド」と呼ばれる。
【0041】
オプチニューリン遺伝子にコードされるポリペプチドの活性の変性は、たとえば、オプチニューリンポリペプチドとオプチニューリン相互作用ポリペプチドとの間の相互作用の増大または低減であることができる。オプチニューリンの、オプチニューリン相互作用ポリペプチドとの相互作用のレベルすなわち量を、試験試料および対照試料(たとえば、ネイティブオプチニューリンポリペプチドを含む試料)で評価することができる。対照試料と比較した、試験試料中の相互作用の量すなわちレベルの差は、オプチニューリン中に変性が存在することの指標であり、したがって、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大指標である。相互作用の量すなわちレベルの差が存在しないことは、このような変性が存在しないことの指標であり、したがって、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことの指標である。たとえば、以下で述べるように、オプチニューリンのC末端部分はハンチンチンと相互作用する。対照試料中のオプチニューリンとハンチンチンとの間の相互作用の量すなわちレベルと比較した、試験試料中のオプチニューリンとハンチンチンとの間の相互作用の量すなわちレベルの変性は、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大の指標である。
【0042】
別の例では、オプチニューリン相互作用ポリペプチドの活性の量すなわちレベルを、オプチニューリンの活性の量すなわちレベルの間接的な尺度として使用することができる。対照試料と比較した、試験試料中のオプチニューリン相互作用ポリペプチドの活性の量すなわちレベルの差は、オプチニューリン中に変性が存在することの指標であり、したがって、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大の指標である。オプチニューリン相互作用ポリペプチドの活性の量すなわちレベルに差が存在しないことは、このような変性が存在しないことの指標であり、したがって、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在しないことの指標である。たとえば、以下で述べるように、オプチニューリンは、(直接、または他のタンパク質との相互作用を介してのどちらかで)TNF-αの産生を抑制することができる。したがって、TNF-αの産生の量を評価することができ、これをオプチニューリン活性の量の代理として使用することができる。対照試料中のTNF-αの量すなわちレベルと比較した、試験試料中のTNF-αの量すなわちレベルの変性(たとえばTNF-αの量の増加)は、オプチニューリンの変異が存在することの指標であり、したがって、オプチニューリン関連の緑内障またはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大が存在することの指標である。
【0043】
キット
診断方法に有用なキットは、たとえばハイブリダイゼーションプローブ、制限酵素(たとえばRFLP分析用)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド、変異もしくは非変異(ネイティブ)オプチニューリンポリペプチドに結合する抗体、オプチニューリン遺伝子を含む核酸を増幅する手段、またはオプチニューリン遺伝子の核酸配列を分析するもしくはオプチニューリンポリペプチドのアミノ酸配列を分析する手段などを含めた、本明細書中に記載した任意の方法で有用な構成要素を含む。
【0044】
治療方法
本発明はまた、オプチニューリン治療剤を使用した、緑内障または緑内障の危険性の増大を処置する方法(予防的および/もしくは治療的方法)、ならびに緑内障または緑内障の危険性の増大の処置のための医薬品を製造するためのオプチニューリン治療剤の使用にも関する。この方法は、オプチニューリン関連の緑内障もしくはオプチニューリン関連の緑内障の危険性の増大を診断された、または罹患していると疑われる個体で使用できるだけでなく、オプチニューリンに関連しているもの以外の緑内障もしくは緑内障の危険性の増大を診断された、または罹患していると疑われる個体でも使用することができる。これは、この方法が、緑内障の経過を変性することによりこのような個体で同様に有用であり得るからである。以下に記載し、図2に示すように、オプチニューリンはE3-14.7K、TNF-α経路の構成要素、およびFASリガンド経路の構成要素を含めた様々なタンパク質と相互作用する。「オプチニューリン相互作用ポリペプチド」と呼ばれるこれらのタンパク質は、これらとオプチニューリンとの間の活性および相互作用を変性して緑内障を処置するための、オプチニューリン治療剤の適切な標的である。
【0045】
「オプチニューリン治療剤」とは、オプチニューリンポリペプチドの活性および/またはオプチニューリン遺伝子の発現を変性する(たとえば増強もしくは阻害する)、緑内障の処置に使用される薬剤である(たとえばオプチニューリン作用剤もしくは拮抗剤)。この療法は、個体においてオプチニューリンポリペプチドの活性を阻害、変性、置き換えるもしくは補うように、または個体においてオプチニューリン相互作用ポリペプチドの活性を阻害、変性、置き換えるもしくは補うように設計されている。
【0046】
オプチニューリン治療剤は、たとえば、追加のタンパク質を提供することまたはオプチニューリンの転写もしくは翻訳をアップレギュレートすること;オプチニューリンポリペプチドの翻訳後プロセッシングを変性すること;オプチニューリンのスプライシング変異体の転写を変性すること;あるいはオプチニューリンポリペプチドの活性を変性する(たとえばオプチニューリンに結合することによって)、またはオプチニューリンの転写または翻訳を変性する(アップレギュレートもしくはダウンレギュレートする)ことなど、様々な手段によって、オプチニューリンの活性または遺伝子の発現を変性することができる。他のオプチニューリン治療剤は、オプチニューリン相互作用ポリペプチドをコードしている遺伝子、またはオプチニューリンが関与する経路中の他の遺伝子の活性もしくは発現を変性するために、オプチニューリン相互作用ポリペプチドを標的とすることができる。
【0047】
代表的なオプチニューリン治療剤には、いくつかの異なる薬剤のクラスが含まれる。
【0048】
核酸
一実施形態では、オプチニューリン治療剤は、遺伝子、cDNA、mRNA、オプチニューリンポリペプチドをコードしている核酸(たとえば、配列番号1、3、もしくは5)、またはオプチニューリンの変異体をコードしている核酸(ただし、変異体をコードしている核酸(変異体核酸分子)は必ずしも天然に存在する必要はないがオプチニューリンのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている)などの、核酸であることができる。したがって、たとえば、天然に存在するヌクレオチド配列とは異なるが、遺伝コードの縮重によりオプチニューリンをコードしている配列を含むDNA分子が企図され、一部分(断片)をコードしている、またはオプチニューリンの類似体もしくは誘導体などの変異体ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列も企図される。このような変異体は、対立遺伝子変異もしくは単一ヌクレオチド多型の場合のように天然に存在するものであるか、または様々な変異誘発物質もしくは変異原性プロセスによって誘発されたものなど天然に存在しないものであることができる。意図される変異には、それだけには限定されないが、付加および欠失を含めた保存的または非保存的なアミノ酸の変化をもたらし得る1つもしくは複数のヌクレオチドの付加、欠失および置換が含まれる。好ましくは、ヌクレオチド(および/もしくは生じるアミノ酸)の変化はサイレントであるか保存されている、すなわち、これによりオプチニューリンの特徴または活性(たとえば、以下に詳述する、他の特異的タンパク質と相互作用する能力)が変化しない。核酸分子の他の変性には、たとえば、標識、メチル化、ならびに非荷電結合(たとえばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート)、荷電結合(たとえばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート)、ペンダント部分(たとえばポリペプチド)、インターカレート剤(たとえばアクリジン、ソラレン)、キレート化剤、アルキル化剤、および改変結合(たとえばαアノマー核酸)などのヌクレオチド内改変が含まれ得る。また、水素結合および他の化学的相互作用によって指定された配列に結合する能力に関して核酸分子を模倣する合成分子も含まれる。このような分子には、たとえば、分子の主鎖においてリン酸結合がペプチド結合で置換される分子が含まれる。
【0049】
他のオプチニューリン治療剤には、他の分子に結合するその能力に基づいて選択されたDNAまたはRNA分子であるアプタマーが含まれる(たとえば、aptamer.icmb.utexas.edu/のアプタマーデータベース参照; Gening, L. V.他、Biotechniques、31(4):828、830、832、834、(2001)も参照。
【0050】
タンパク質およびポリペプチド
別の実施形態では、オプチニューリン治療剤は、オプチニューリンポリペプチド(たとえば配列番号2、4および6)、ペプチド擬態、またはオプチニューリンポリペプチドの誘導体、あるいはオプチニューリン遺伝子にコードされる別のスプライシング変異体またはその断片もしくは誘導体であることができる。断片(特にオプチニューリンの活性を保持している断片)を含む融合タンパク質または他のポリペプチドを使用することができ、配列の異なる変異体(sequencing variant)を包含するオプチニューリンポリペプチドも使用することができる。
【0051】
活性断片は、全オプチニューリンポリペプチドと同じ機能(以下に記載のように、他の特異的タンパク質と相互作用する能力)の1つまたは複数を行う。たとえば、活性断片は、周知の方法を用いたタンパク質配列の分析によって同定されているドメイン、セグメント、あるいはモチーフ、たとえば、シグナルペプチド、細胞外ドメイン、1つまたは複数の膜貫通セグメントもしくはループ、リガンド結合領域、Znフィンガードメイン、DNA結合ドメイン、アシル化部位、グリコシル化部位、またはリン酸化部位を含むことができる。活性断片は、個別(他のアミノ酸もしくはポリペプチドに融合していない)であるか、またはより大きなポリペプチド内にあることができる。さらに、いくつかの断片が単一のより大きなポリペプチド内に含まれることができる。
【0052】
変異体には、生物内の同一遺伝子座位にコードされている実質的に相同なポリペプチド、すなわち対立遺伝子変異体、ならびに他のスプライシング変異体が含まれる。変異体には、生物内の他の遺伝子座位に由来するが、上述のオプチニューリン遺伝子または核酸にコードされるポリペプチドと有意に相同性を有するポリペプチドも包含される。変異体にはまた、これらのタンパク質と実質的に相同または同一であるが、他の生物に由来するタンパク質、すなわち相同分子種も含まれる。変異体にはまた、これらのタンパク質と実質的に相同または同一であるが、化学合成によって生成されるタンパク質も含まれる。変異体にはまた、これらのタンパク質と実質的に相同または同一であり、組換え方法によって生成されるタンパク質も含まれる。類似性は、保存的アミノ酸置換によって決定される。このような置換は、ポリペプチド内の所定のアミノ酸の置換を、同様の特徴を有する別のアミノ酸で行う置換である。保存的置換は、表現型的にサイレントである可能性が高い。保存的置換として典型的に見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIleの1つの、別の1つによる置換え;ヒドロキシル残基SerおよびThrの入替え、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGln間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香性残基PheおよびTyr間の置換えである。どのアミノ酸変化が表現型的にサイレントであるかに関する指針は、Bowie他、Science、247:1306-1310、(1990)に見つかる。変異体ポリペプチドは、1つもしくは複数の置換、欠失、挿入、逆位、融合、および切断またはこれらの任意のものの組合せによって、アミノ酸配列が異なることができる。さらに、変異体ポリペプチドは、完全に機能するか、または1つもしくは複数の活性で機能を欠いていることができる。完全に機能的な変異体は、典型的には、保存的な変異、または非致命的残基もしくは非致命的領域内の変異しか含まない。機能的な変異体はまた、機能に変化をもたらさない、または有意でない変化をもたらす、類似のアミノ酸の置換も含むことができる。あるいは、このような置換は、機能にある程度の正または負の影響を与えるかもしれない。機能的でない変異体は、典型的には1つもしくは複数の非保存的なアミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、または切断、あるいは致命的残基または致命的領域に置換、挿入、逆位、もしくは欠失を含む。機能に重要なアミノ酸は、部位特異的突然変異誘発やアラニンスキャニング突然変異誘発などの当分野で周知の方法によって同定することができる(Cunningham他、Science、244:1081-1085、(1989))。ポリペプチドの活性に重要な部位も、結晶化、核磁気共鳴または光親和性標識などの構造解析によって決定することができる(Smith他、J. Mol. Biol.、224:899-904、(1992); de Vos他、Science、255:306-312、(1992))。
【0053】
本明細書中に記載するオプチニューリンポリペプチドおよび他のポリペプチドは、天然に存在する源から単離するか、化学的に合成するか、または組換えによって生成することもできる。たとえば、本明細書中に記載する核酸分子を使用して、微生物細胞または真核細胞のプロセスによってコードされたタンパク質の組換型を生成することができる。ポリヌクレオチド配列を発現ベクターなどの遺伝子構築体内にライゲートすること、真核(酵母、トリ、昆虫、植物、哺乳動物)もしくは原核(細菌細胞)のいずれかの宿主内に形質転換または形質移入させることは、他の周知のタンパク質を生成するために使用される標準の手順である。同様の手順もしくはそれを改変した手順を使用して、微生物手段または組織培養技術によって組換えタンパク質を調製することができる。タンパク質イオンは、様々な方法によって細胞培養物から単離または精製する(たとえば均一になるまで)ことができる。これらには、それだけには限定されないが、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、エタノール沈殿、アフィニティークロマトグラフィー、および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が含まれる。使用する具体的な方法はタンパク質の特性に依存し、当分野の技術者により適切な方法が容易に理解されるであろう。たとえば、タンパク質またはタンパク質の同定に関して言えば、ゲル分析によって同定されたバンドをHPLCによって精製することができ、生じた精製タンパク質の配列決定を行うことができる。あるいは、当分野で知られている方法によって精製タンパク質を酵素的に消化してタンパク質断片を精製し、それらの配列決定を行うことができる。配列決定は、たとえばWilm他(Nature、379(6564):466-469、(1996))の方法によって行うことができる。タンパク質は、Jacoby、Methods in Enzymology、第104巻、Academic Press、New York、(1984); Scopes、Protein Purification, Principles and Practice、第2版、Springer-Verlag、New York、(1987);およびDeutscher編、Guide to Protein Purification, Methods in Enzymol
ogy、第182巻、(1990)に記載のように、タンパク質の生化学および精製の慣用の手段によって単離して、実質的に純粋な、すなわち細胞成分不純物を20、5または1%しか含まない生成物が得られ得る。
【0054】
抗体および他の小分子
別の実施形態では、オプチニューリン治療剤は抗体(たとえば、変異オプチニューリンポリペプチドに対する抗体、非変異オプチニューリンポリペプチドに対する抗体、またはオプチニューリンポリペプチドの特定のスプライシング変異体に対する抗体);リボザイム;ペプチド擬態;オプチニューリンポリペプチドの活性および/または遺伝子の発現を変性する小分子もしくは他の薬剤(たとえば、オプチニューリン遺伝子の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートするもの);あるいはオプチニューリン遺伝子の発現もしくはオプチニューリンポリペプチドの活性を変性(たとえば増強もしくは阻害)する、オプチニューリンポリペプチドの翻訳後プロセッシングを変性する、またはオプチニューリンスプライシング変異体の転写を調節する別の薬剤(たとえば、どのスプライシング変異体が発現されるかに影響を与える薬剤、もしくは発現される各スプライシング変異体の量に影響を与える薬剤)であることができる。
【0055】
たとえば、変異オプチニューリンポリペプチドに対する抗体を使用して変異タンパク質の活性を阻害することができる。本明細書中で使用する用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のある部分、すなわち抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。ポリペプチドに特異的に結合する分子とは、ポリペプチドまたはその断片に結合するが、試料、たとえば前記ポリペプチドを自然に含む生体試料中の他の分子と実質的に結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のある部分の例には、抗体をペプシンなどの酵素で処理することによって作製することができるF(ab)およびF(ab')2断片が含まれる。ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらを使用することもできる。本明細書中で使用する用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」とは、1種のタンパク質(たとえば変異オプチニューリン)の特定のエピトープと免疫反応を起こす能力を有する抗原結合部位を、1種のみ含む抗体分子群を指す。したがって、モノクローナル抗体組成物は、典型的には、それが免疫反応を起こす特定のポリペプチドに対して単一の結合親和性を示す。
【0056】
ポリクローナル抗体は、適切な対象を所望する免疫原、たとえばオプチニューリンポリペプチドまたはその断片で免疫化することによって、上述のように調製することができる。免疫化した対象における抗体力価は、固定したポリペプチドを用いた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの標準の技術によって経時的にモニターすることができる。所望する場合は、前記ポリペプチドに対する抗体分子を哺乳動物から(たとえば血液から)単離し、タンパク質Aクロマトグラフィーなどの周知の技術によってさらに精製してIgG画分を得ることができる。免疫化後の適切な時間の後、たとえば抗体力価が最も高いときに、抗体産生細胞を対象から得て、それをKohlerおよびMilstein、(1975)、Nature、256:495-497に最初に記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor他、(1983)、Immunol. Today、4:72)、EBVハイブリドーマ技術(Cole他、(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.、77-96頁)またはトリオーマ技術などの標準の技術によってモノクローナル抗体を調製するために使用することができる。ハイブリドーマを生成する技術は周知である(一般に、Current Protocols in Immunology、(1994)、Coligan他編、John Wiley & Sons, Inc.、New York、NY参照)。手短に述べると、不死化細胞系(典型的にはミエローマ)を上述のように免疫原で免疫化した哺乳動物由来のリンパ球(典型的には脾細胞)と融合し、生じたハイブリドーマ細胞の培養物上清をスクリーニングして、目的のタンパク質に結合するモノクローナル抗体を産生しているハイブリドーマを同定する。
【0057】
リンパ球と不死化細胞系との融合に使用される多数の周知のプロトコルのうち任意のものを適用して、オプチニューリンポリペプチドに対するモノクローナル抗体を産生することができる(たとえば、Current Protocols in Immunology(上記); Galfre他、(1977)、Nature、266:55052; R. H. Kenneth、Monoclonal Antibodies : A New Dimension In Biological Analyses、Plenum Publishing Corp.、New York、New York、(1980); およびLerner、(1981)、Yale J. Biol. Med.、54:387-402参照。さらに、当業者は、同様に有用なこのような方法の多くの変形が存在することを理解されよう。
【0058】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製する代わりに、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリ(たとえば抗体ファージディスプレイライブラリ)を前記ポリペプチドでスクリーニングし、それによって前記ポリペプチドに結合する免疫グロブリンライブラリメンバーを単離することによって、モノクローナル抗体を同定および単離することができる。ファージディスプレイライブラリを作製およびスクリーニングするキットが市販されている(たとえば、PharmaciaのRecombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01;およびStratageneのSurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリの作製およびスクリーニングで使用するために特に受け入れられる方法および試薬の例は、たとえば、米国特許第5,223,409号;国際公開公報WO 92/18619号;国際公開公報WO 91/17271号;国際公開公報WO 92/20791号;国際公開公報WO 92/15679号;国際公開公報WO 93/01288号;国際公開公報WO 92/01047号;国際公開公報WO 92/09690号;国際公開公報WO 90/02809号; Fuchs他、(1991)、Bio/Technology、9:1370-1372; Hay他、(1992)、Hum. Antibod. Hybridomas、3:81-85; Huse他、(1989)、Science、246:1275-1281; Griffiths他、(1993)、EMBO J.、12:725-734に見つかる。
【0059】
さらに、標準の組換えDNA技術を使用して作製することができる、ヒト部分とヒトでない部分のいずれをも含むキメラおよびヒト化モノクローナル抗体などの組換え抗体を使用することができる。このようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当分野で知られている組換えDNA技術によって産生することができる。
【0060】
オプチニューリン相互作用剤
第4の実施形態では、オプチニューリン治療剤は、オプチニューリンと相互作用するポリペプチド(「オプチニューリン相互作用ポリペプチド」);オプチニューリンと相互作用するこのようなポリペプチドをコードしている核酸;オプチニューリン相互作用ポリペプチドの発現もしくは活性を変性する薬剤;および/またはオプチニューリンとオプチニューリン相互作用ポリペプチドとの間の相互作用を変性する薬剤であることができる。たとえば、以下に詳述し、図2に示すように、オプチニューリンは、FASリガンド経路に関連するタンパク質およびTNF-α経路に関連するタンパク質(たとえばハンチンチン、カスパーゼ9)、ならびにRAB-8、TFIIIA、およびE3-14.7Kに関連するタンパク質と相互作用する。オプチニューリンはさらに、細胞質ホスホリパーゼおよびチトクロームP450と相互作用する。さらにオプチニューリンは、フィードバック機構によってTNF-αと作用し、それにより視神経症において神経保護作用の役割を果たすと考えられる。したがって、オプチニューリンと相互作用するこれらポリペプチドの任意の1つの発現が変性(増加または減少)されることによりオプチニューリンの活性の量が変性され、その結果、これをオプチニューリンの神経保護作用の役割を増強させるために使用することができる。たとえば、オプチニューリンおよびTNF-αのフィードバック機構の点から見て、また緑内障を罹患している患者で見つかるTNF-αの増加の点から見て、TNF-αの産生を制御する薬剤またはTNF-αの量を減少させる薬剤はオプチニューリンと同様の様式で機能する、すなわち、TNF-αを減少させてTNF-αの効果に対する神経保護として作用するであろう。したがって、特定の実施形態では、前記薬剤はTNF-αの発現を変性する薬剤である。オプチニューリン相互作用ポリペプチドの発現または活性を変性する薬剤は、たとえば、本明細書中に記載する任意の種類の薬剤であることができる(たとえば核酸、ポリペプチドまたはタンパク質、抗体など)。
【0061】
所望する場合は、複数のオプチニューリン治療剤を同時に使用することができる。オプチニューリン治療剤は、治療上有効な量(すなわち、疾病に関連している症状を改善させること、(たとえば特に緑内障の危険性が増大した個体で)疾病の発症を予防もしくは遅らせること、および/または疾病の症状の重篤度もしくは頻度を低下させることなどによる、疾病を処置するのに十分な量)で投与する。特定の疾患または状態の処置に治療上有効な量は、疾患または状態の性質に依存し、標準の臨床技術によって決定することができる。さらに、至適用量範囲の同定を補助するために、任意選択でin vitroまたはin vivoのアッセイを使用してもよい。配合物中で使用する正確な用量は投与経路および疾病または疾患の重篤度にも依存し、担当医の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。有効な用量は、in vitroまたは動物モデルの試験システムから誘導した用量応答曲線から推定し得る。
【0062】
本明細書中で使用する用語「処置」とは、疾病に関連している症状の改善だけでなく、疾病の発症の予防または遅延、ならびに疾病の症状の重篤度または頻度の低下も指す。したがって、本明細書中で使用する「緑内障の処置」とは、緑内障の症状が現れた後の処置(治療的処置)だけでなく、予防的処置(症状の出現の前)も指す。疾病の発症を遅らせる、または疾病の症状を完全に防ぎ得るので、処置は緑内障の危険性の増大が同定された個体において特に有用であるかもしれない。したがって、処置は、緑内障を罹患している個体だけでなく、緑内障を発生する危険性にある個体(たとえば、緑内障の危険性の増大に関連しているオプチニューリン遺伝子に変性を有する個体など、緑内障の危険性が増大した個体)にも用いることができる。
【0063】
本発明の一実施形態では、緑内障の処置に核酸を使用する。上述の核酸を、単独で、または上述のように薬剤組成物中で使用することができる。たとえば、オプチニューリン遺伝子もしくはオプチニューリンポリペプチドをコードしているcDNAを、単独でまたはベクター内に含ませて、細胞がネイティブオプチニューリンポリペプチドを産生するように(in vitroもしくはin vitroで)細胞内に導入することができる。別の例では、オプチニューリン相互作用ポリペプチドをコードしている遺伝子もしくはオプチニューリン相互作用ポリペプチドをコードしているcDNAを、単独でまたはベクター内に含ませて、細胞がネイティブオプチニューリン相互作用ポリペプチドを産生するように(in vitroもしくはin vivoで)細胞内に導入することができる。必要な場合は、遺伝子もしくはcDNAまたは遺伝子もしくはcDNAを含むベクターで形質転換した細胞を、疾病に罹患している個体内に導入(または再導入)することができる。したがって、性質上ポリペプチドのネイティブな発現および活性が欠如している細胞、または変異した発現および活性を有する細胞を遺伝子操作して、所望のポリペプチド(たとえば、オプチニューリンポリペプチド、またはたとえばオプチニューリンポリペプチドの活性断片)を発現させることができる。好ましい実施形態では、オプチニューリンポリペプチドをコードしている核酸またはその活性断片もしくは誘導体をウイルスベクターなどの発現ベクター内に導入し、このベクターを動物のネイティブオプチニューリンの発現が欠如している適切な細胞内に導入することができる。たとえば、緑内障の処置には、核酸を含むベクターを眼内に導入することができる。このような方法では、活性のあるオプチニューリンポリペプチドが誘発によってまたは構成的に発現されるように細胞群を遺伝子操作することができる。ウイルス性および非ウイルス性移送システムを含めた他の遺伝子を使用することができる。あるいは、リン酸カルシウム共沈殿、機械的技法(たとえば微量注入);リポソームによる膜融合に媒介される移送;または直接のDNAの取り込みなど、非ウイルス性遺伝子移送方法も使用することができる。
【0064】
あるいは、本発明の別の実施形態では、上述の核酸またはこのような核酸に相補的な核酸を、オプチニューリン遺伝子のmRNAおよび/もしくはゲノムDNA(またはオプチニューリン相互作用ポリペプチドをコードしている遺伝子のmRNAおよび/もしくはゲノムDNA)に特異的にハイブリダイズする核酸(たとえばオリゴヌクレオチド)を投与するあるいはin situで作製する「アンチセンス」療法で使用することができる。mRNAおよび/もしくはDNAに特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸は、たとえば翻訳ならびに/あるいは転写を阻害することによって、オプチニューリンポリペプチドまたはオプチニューリン相互作用ポリペプチドの発現を阻害する。アンチセンス核酸の結合は、慣用の塩基対相補性によるもの、またはたとえばDNA二重鎖への結合の場合は二重らせんの主溝の特異的な相互作用によるものであることができる。
【0065】
アンチセンス構築体は、たとえば上述のように発現プラスミドとして送達することができる。プラスミドが細胞内で転写される際、オプチニューリンポリペプチド(もしくはオプチニューリン相互作用ポリペプチド)をコードしているmRNAおよび/またはDNAの一部分に相補的なRNAが産生される。あるいは、アンチセンス構築体は、ex vivoで作製して細胞内に導入するオリゴヌクレオチドプローブであることができる。その後、アンチセンス構築体はmRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズすることによって発現を阻害する。一実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブは内在性ヌクレアーゼ、たとえばエキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに耐性のある改変オリゴヌクレオチドであり、したがってこれらはin vivoで安定となる。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用する核酸分子の例は、DNAのホスホラミデート、ホスホチオエート、およびメチルホスホネート類似体である(米国特許第5,176,996号;第5,264,564号;および第5,256,775号も参照)。さらに、アンチセンス療法に有用なオリゴマーを構築する一般的な手法は、たとえばVan der Krol他((1988)、Biotechniques、6:958-976);およびStein他((1988)、Cancer Res、48:2659-2668)にも記載されている。アンチセンスDNAに関しては、翻訳開始部位、たとえばオプチニューリン遺伝子配列の-10と+10の間の領域に由来するオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
【0066】
アンチセンス療法を行うためには、オプチニューリン(もしくはオプチニューリン相互作用ポリペプチド)をコードしているmRNAに相補的なオリゴヌクレオチド(mRNA、cDNAまたはDNA)を設計する。アンチセンスオリゴヌクレオチドはmRNA転写物に結合して翻訳を妨げる。絶対的な相補性が好ましいが、必須ではない。本明細書中で使用する、RNAの一部分に「相補的」な配列とは、配列がRNAとハイブリダイズして安定な二重鎖を形成するのに十分な相補性を有することを指す。二本鎖アンチセンス核酸の場合は、二重鎖DNAの鎖の一本をこのように試験するか、または三重鎖の形成をアッセイし得る。ハイブリダイズする能力は、上述のように相補性の度合およびアンチセンス核酸の長さのいずれにも依存する。一般に、ハイブリダイズする核酸が長ければ長いほど、それはRNAとの塩基ミスマッチをより多く含んでも依然として安定な二重鎖(または場合によっては三重鎖)を形成し得る。当分野の技術者は、標準の手順を使用することによって許容されるミスマッチの度合を確認することができる。
【0067】
転写を阻害するための三重らせんの形成に使用する核酸分子は、好ましくは一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチドからなる。このようなオリゴヌクレオチドの塩基組成は、一般に二重鎖の一方の鎖にプリンまたはピリミジンのいずれかのかなり大きなストレッチが存在することを要する、Hogsteenの塩基対合の法則による三重らせんの形成を促進するはずである。ヌクレオチド配列はピリミジンに基づいていてもよく、これにより、生じる三重らせんの3本の関連する鎖にわたってTATおよびCGCのトリプレットがもたらされる。ピリミジンに富んだ分子は、その鎖に平行な方向で、二重鎖の鎖の一方のプリンに富んだ領域に塩基の相補性をもたらす。さらに、プリンに富んだ核酸分子、たとえばG残基のストレッチを含む核酸分子を選択してもよい。このような分子は、プリン残基の大多数が標的二重鎖の一方の鎖上に位置する、GC対に富んだDNAに重鎖と三重らせんを形成し、三重鎖の3本の鎖にわたるCGCトリプレットをもたらす。三重らせんの形成の標的にすることができる潜在的な配列は、まず二重鎖の一方の鎖と、次いで他方の鎖と塩基対合して、プリンまたはピリミジンのいずれかのかなり大きなストレッチが二重鎖の一方の鎖上に存在する必要性が排除されるように、5'-3'と3'-5'が交互する様式で合成される「スイッチバック」核酸分子を作製することによって増加することができる。
【0068】
好ましい実施形態では、メッセージの5'末端に相補的なオリゴヌクレオチド、たとえば、5'非翻訳配列からAUG開始コドンを含むところまでが、翻訳を阻害するために使用される。しかし、mRNAの3'非翻訳配列に相補的な配列もmRNAの翻訳の阻害に有効であることが最近示された(Wagner, R.、(1994)、Nature、372:333)。したがって、オプチニューリン遺伝子(もしくはオプチニューリン相互作用ポリペプチドをコードしている遺伝子)の5'または3'非翻訳非コード領域のいずれかに相補的なオリゴヌクレオチドも、内在性mRNAの翻訳を阻害するアンチセンス手法において使用することができる。mRNAの5'非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補配列を含むことができる。mRNAコード領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドも、本発明に従って使用することができる。can領域配列に相補的なアンチセンスヌクレオチドを使用することができるが、転写された非翻訳領域に相補的なものも使用することができる。オプチニューリンmRNAの5'領域、3'領域、またはコード領域のどれにハイブリダイズするよう設計したかにかかわらず、アンチセンス核酸は好ましくは長さが少なくとも6個のヌクレオチド、より好ましくは長さが6から約50個のヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドである。特定の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドは少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも24個のヌクレオチド、または少なくとも50個のヌクレオチドである。
【0069】
所望する場合は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが遺伝子の発現を阻害する能力を定量するためのin vitro研究を行うことができる。このような研究では、オリゴヌクレオチドのアンチセンスによる遺伝子阻害と非特異的な生物学的作用とを区別する対照を利用する。これらの研究では、標的RNAまたはタンパク質のレベルを内部対照RNAまたはタンパク質のレベルと比較することができる。好ましい実施形態では、対照オリゴヌクレオチドは試験オリゴヌクレオチドとほぼ同じ長さであり、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列は、標的配列への特異的ハイブリダイゼーションを妨げるのに十分なだけアンチセンス配列と異なる。
【0070】
アンチセンス療法で使用するオリゴヌクレオチドは、一本鎖あるいは二本鎖の、DNA、RNA、キメラ混合物またはそれらの誘導体もしくはそれらを改変したものであることができる。オリゴヌクレオチドは、たとえば分子の安定性やハイブリダイゼーションなどを向上させるために、塩基部分、糖部分、またはリン酸主鎖を改変することができる。オリゴヌクレオチドは、ペプチドなどの他の付属基(たとえばin vivoで宿主細胞を標的とするため)、または細胞膜(たとえば、Letsinger他、(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:6553-6556; Lemaitre他、(1987)、Proc. Natl. Acad Sci. USA、84:648-652;国際公開公報WO 88/09810号参照)もしくは血液脳関門(たとえば、国際公開公報WO 89/10134号参照)を通過する運搬を促進する薬剤、またはハイブリダイゼーションにより作動する切断剤(たとえば、Krol他、(1988)、BioTechniques、6:958-976参照)もしくはインターカレート剤(たとえば、Zon、(1988)、Phare. Res.、5:539-549参照)を含むことができる。このために、オリゴヌクレオチドを別の分子、たとえばペプチド、ハイブリダイゼーションにより作動する架橋結合剤、運搬剤、ハイブリダイゼーションにより作動する切断剤などにコンジュゲートさせ得る。
【0071】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それだけには限定されないが、5-フルオロウラシル、5-ウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキュエオシン(queosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキュエオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キュエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンを含む群から選択される修飾された塩基部分を少なくとも1種(または複数種)含むことができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、それだけには限定されないが、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロース、およびヘキソースを含む群から選択される少なくとも1種の改変糖部分も含むことができる。別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミドチオエート、ホスホラミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタールまたはその類似体からなる群から選択された少なくとも1種の改変リン酸主鎖を含む。さらに別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはα-アノマーオリゴヌクレオチドである。α-アノマーオリゴヌクレオチドは、通常のβユニットとは対照的に鎖が互いに平行に並ぶ、相補的なRNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成する(Gautier他、(1987)、Nucl. Acids Res.、15:6625-6641)。オリゴヌクレオチドは、2'-O-メチルリボヌクレオチド(Inoue他、(1987)、Nucl. Acids Res.、15:6131-6148)、またはキメラRNA-DNA類似体(Inoue他、(1987)、FEBS Lett.、215:327-330)である。
【0072】
オリゴヌクレオチドは、当分野で周知である本明細書中に記載の標準の方法(たとえば、自動DNA合成機(Biosearch、Applied Biosystemsなどから市販されているものなど)によって合成することができる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドはStein他((1988)、Nucl. Acids Res.、16:3209)の方法によって合成することができ、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは細孔性ガラス(controlled pore glass)ポリマー支持体などを使用することによって調製することができる(Sarin他、(1988)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、85:7448-7451)。
【0073】
アンチセンス分子をin vivoで、オプチニューリン(またはオプチニューリン相互作用ポリペプチド)を発現する細胞内に送達する。アンチセンスDNAまたはRNAを細胞に送達するためにはいくつかの方法を使用することができる。たとえば、アンチセンス分子を組織部位内に直接注入することができ、あるいは所望する細胞を標的とするよう設計した改変アンチセンス分子(たとえば、受容体に特異的に結合するペプチドもしくは抗体または標的細胞表面上に発現される抗体に連結しているアンチセンス分子)を全身投与することができる。あるいは、好ましい実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドを強力なプロモーター(たとえばpolIIIまたはpolII)の制御下に置く、組換えDNA構築体を利用する。標的細胞を患者内に形質移入させるためにこのような構築体を使用することで、内在転写物と相補的な塩基対を形成する一本鎖RNAが十分な量転写され、したがって、mRNAの翻訳が妨げられる。たとえば、ベクターを、細胞内に取り込まれてアンチセンスRNAの転写を指示するようにin vivoで導入することができる。このようなベクターは、所望するアンチセンスRNAが産生されるように転写されることができる限りは、エピソームで在りつづけても、染色体中に組み込まれてもよい。このようなベクターは、当分野で標準の上述した組換えDNA技法によって構築することができる。たとえば、組織部位(たとえば眼内組織)内に直接導入することができる組換えDNA構築体を調製するために、プラスミド、コスミド、YACまたはウイルスベクターを使用することができる。あるいは、所望の組織に選択的に感染するウイルスベクターを使用することができ、この場合は、別の経路によって投与を行ってもよい(たとえば全身投与)。
【0074】
オプチニューリンmRNA転写物を触媒的に切断するよう設計されたリボザイム分子も、オプチニューリンmRNAの翻訳およびオプチニューリンポリペプチドの発現を妨げるため、特に、たとえば変異オプチニューリンポリペプチドの翻訳を妨げるために使用することができる(たとえば、国際公開公報WO 90/11364号、およびSarver他、(1990)、Science、247:1222-1225参照)。あるいは、オプチニューリン相互作用ポリペプチドをコードしている遺伝子のmRNA転写物を触媒的に切断するようにこれらを設計することができる。リボザイムとは、RNAの特異的な切断を触媒する能力を有する酵素RNA分子である。リボザイム作用の機構は、リボザイム分子の相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、次いでヌクレオチド鎖内の切断を含む。リボザイム分子の組成には標的遺伝子のmNRAに相補的な1つまたは複数の配列が含まれており、また、mRNA切断を担う触媒的配列が含まれていなければならない。この配列には米国特許第5,093,246号を参照されたい。任意の潜在的なRNA標的内の特異的なリボザイム切断部位は、以下の配列、すなわちGUA、GUUおよびGUCを含むリボザイム切断部位について目的の分子を調査することによって、最初に同定する。同定した後、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する約15から20個のリボヌクレオチドの短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列を不適切にする、二次構造などの予想される構造的特徴について評価し得る。候補配列の適合性は、リボヌクレアーゼ保護アッセイを使用して、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにおけるその接近性を試験することによっても評価することができる。部位特異的な認識配列の場所でmRNAを切断するリボザイムを使用して、オプチニューリンmRNAを破壊することができる。別の実施形態では、ハンマーヘッドリボザイムを使用する。ハンマーヘッドリボザイムは、2塩基の配列、すなわち5'-UG-3'を有する標的mRNAと相補的塩基対を形成するフランキング領域によって指示される位置でmRNAを切断する。ハンマーヘッドリボザイムの構築および産生は、HaseloffおよびGerlachに、より完全に記載されている((1988)、Nature、334:585-591)。リボザイムは、効率を高め、かつ機能的でないmRNA転写物の細胞内蓄積を最小限にするために、切断認識部位がオプチニューリンmRNAの5'末端付近に位置するように遺伝子操作されていることが好ましい。
【0075】
本発明中で使用するリボザイムには、Thomas Cechおよび共同研究者によって広範に記載されている(Zaug他、(1984)、Science、224:574-578; ZaugおよびCech、(1986)、Science、231:470-475; Zaug他、(1986)、Nature、324:429-433;国際公開公報WO 88/04300号; BeenおよびCech、(1986)、Cell、47:207-216)、Tetrahymena tlierrnophila中に天然に存在するもの(IVS、またはL-19 IVS RNAとして知られる)など、RNAエンドリボヌクレアーゼ(本明細書中では以降「Cech型リボザイム")も含めることができる。Cech型リボザイムは、標的RNA配列とハイブリダイズする8塩基対の活性部位を有し、ハイブリダイズした後に標的RNAの切断が行われる。本発明はさらに、オプチニューリン内に存在する8塩基対の活性部位を標的とするCech型リボザイムも包含する。
【0076】
アンチセンス手法と同様に、リボザイムは改変オリゴヌクレオチド(たとえば安定性、標的化などの改善)から構成されていることができ、in vivoでオプチニューリンを発現する細胞に送達される(たとえば眼細胞)。送達の好ましい方法は、内在性のメッセージを破壊し、翻訳を阻害するために十分な量のリボザイムが形質移入した細胞によって産生されるように強力な構成的プロモーターの制御下にある、リボザイムを「コードしている」DNA構築体の使用を含む。リボザイムは、アンチセンス分子とは異なり触媒的であるため、良い効率に低い細胞内濃度しか必要でない。
【0077】
内在性のオプチニューリン遺伝子の発現、特に変異オプチニューリン遺伝子の発現は、標的化した相同組換えを使用してオプチニューリン遺伝子もしくはそのプロモーター、またはオプチニューリン相互作用ポリペプチドの遺伝子もしくはプロモーターを不活性化すなわち「ノックアウト」することによっても低下させることができる(たとえば、Smithies他、(1985)、Nature、317:230-234; ThomasおよびCapecchi、(1987)、Cell、51:503-512; Thompson他、(1989)、Cell、5:313-321参照)。たとえば、in vivoでオプチニューリンを発現する細胞に形質移入させるために、選択マーカーおよび/もしくは負の選択マーカーを存在させてまたは存在させずに、内在性オプチニューリン遺伝子に相同的なDNA(オプチニューリン遺伝子のコード領域もしくは制御配列のどちらか)が隣接している、機能的でないオプチニューリン遺伝子(もしくは全く関連性のないDNA配列)を使用することができる。相同組換えによるDNA構築体の挿入により、オプチニューリン遺伝子の不活性化がもたらされる。オプチニューリン相互作用ポリペプチドをコードしている遺伝子にも同様の方法を使用することができる。組換えDNA構築体は、上述のように、適切なベクターを使用してin vivoで必要とされる部位に直接投与するか、または標的化することができる。あるいは、非変異オプチニューリンまたはオプチニューリン相互作用ポリペプチドの発現は、同様の方法を用いて増大させることができる。すなわち、上述のように、標的化した相同組換えを使用して、非変異の機能的な遺伝子を含むDNA構築体を変異遺伝子の代わりに細胞に挿入することができる。
【0078】
あるいは、内在性のオプチニューリン遺伝子の発現、またはオプチニューリン相互作用ポリペプチドをコードしている遺伝子の発現は、遺伝子の制御配列(すなわちプロモーターおよび/もしくはエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的として、身体内において標的細胞内のオプチニューリン遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成することによって低下させることができる(一般に、Helene, C.、(1991)、Anticancer Drug Des.、6(6):569-84; Helene, C.他、(1992)、Ann. N.Y. Acad. Sci.、660:27-36;およびMaher, L. J.、(1992)、Bioassays、14(12):807-15参照)。同様に、アンチセンス構築体は、オプチニューリンポリペプチドの1つの正常な生物学的活性を拮抗することによって、組織の操作、たとえばin vivoおよびex vivoの組織培養物のいずれもの組織分化において使用することができる。さらに、アンチセンス技法(たとえばアンチセンス分子の微量注入、またはその転写物がオプチニューリンのmRNAもしくは遺伝子配列に関してアンチセンスであるプラスミドを用いた形質移入)を使用して、発生上の現象におけるオプチニューリンの役割、ならびに成体組織におけるオプチニューリンの正常な細胞性機能を調査することができる。このような技術は細胞の培養において利用することができるが、トランスジェニック動物の作製においても使用することができる。
【0079】
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書中に記載するように、オプチニューリンポリペプチドの活性を変性(たとえば増強もしくは阻害)するポリペプチドおよび/または薬剤を、緑内障を処置あるいは予防するために使用することができる。本明細書中に記載するように、オプチニューリン相互作用ポリペプチドの活性を変性(たとえば増強もしくは阻害)するポリペプチドおよび/または薬剤も、緑内障を処置あるいは予防するために使用することができる。ポリペプチドもしくは薬剤は、上述のように組成物として送達することができ、または単独で送達することができる。これらを全身投与することができ、または特定の組織(たとえば眼組織)を標的とすることができる。このタンパク質および/または薬剤は、たとえば化学合成;組換えによる産生;in vivoでの産生(たとえば、Meade他の米国特許第4,873,316号などのトランスジェニック動物)を含めた様々な手段によって生成することができ、本明細書中に記載のような標準的な手段を使用して単離することができる。
【0080】
上記処置方法の任意の組合せ(たとえば、変異オプチニューリンmRNAを標的としたアンチセンス療法と組み合わせた、非変異オプチニューリンポリペプチドの投与)も使用することができる。
【0081】
処置方法用の組成物
上述の処置方法では、所望する場合は薬剤組成物中に組み込むことができる薬剤を利用する。たとえば、タンパク質もしくはタンパク質、断片、融合タンパク質またはそのプロドラッグ、あるいはオプチニューリンをコードしている核酸もしくはオプチニューリンの活性を変性する薬剤を含むヌクレオチドもしくは核酸構築体(ベクター)を、生理的に許容される担体または賦形剤と共に配合して薬剤組成物を調製することができる。担体および組成物は無菌的であることができる。配合物は、投与様式に適合しているべきである。
【0082】
適切な製薬上許容される担体には、それだけには限定されないが、水、塩溶液(たとえばNaCl)、生理食塩水、緩衝生理食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアガム、植物性油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロースやデンプンなどの炭水化物、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど、ならびにそれらの組合せが含まれる。所望する場合は、薬剤を補助剤、たとえば、活性化合物と有害な反応を起こさない、潤滑剤、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色料、香味剤および/または芳香性物質などと混合することができる。
【0083】
所望する場合は、組成物は少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。この組成物は、液剤、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性配合物、または散剤であることができる。この組成物は、従来の結合剤やトリグリセリドなどの担体と共に坐薬として配合することができる。経口配合物は、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリン酸ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準の担体を含むことができる。
【0084】
これらの組成物の導入方法には、それだけには限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、眼内、静脈内、皮下、局所、経口および鼻腔内が含まれる。好ましい実施形態では、組成物は眼内に導入する(たとえば点眼剤)。他の適切な導入方法には、遺伝子療法(以下に記載)、再充電可能な装置または生分解性装置、粒子加速装置(「遺伝子銃」)および徐放性ポリマー装置も含まれ得る。薬剤組成物はまた、他の薬剤とのコンビナトリアル療法の一部としても投与することができる。
【0085】
組成物は、人間への投与に適合した薬剤組成物として、通常の手順に従って配合することができる。たとえば、静脈内投与用の組成物は通常、無菌的な等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合は、この組成物は可溶化剤および注入部位での痛みを和らげるために局所麻酔も含んでいてよい。一般に、成分は、剤形単位(unit dosage form)、たとえば活性剤の量を示したアンプルやサシェなどの気密密閉された容器内の乾燥した凍結乾燥散剤または水を含まない濃縮物として、個別にまたは混合して供給する。組成物をインフュージョンによって投与する場合は、無菌的な製薬グレードの水、生理食塩水またはデキストロース/水を含むインフュージョン瓶を用いて分配することができる。組成物を注射によって投与する場合は、投与の前に成分を混合し得るように滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0086】
局所的な施用には、局所的な施用に適合し、かつ好ましくは水より大きな動的粘度を有する担体を含む、非噴霧形態の、粘性から半固体または固体までの形態を使用することができる。適切な配合物には、それだけには限定されないが、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、軟膏(ointment)、散剤、浣腸、ローション、ゾル、リニメント剤、軟膏剤(salve)、エアロゾルなど、所望する場合は滅菌するか、または、たとえば保存料、安定剤、湿潤剤、緩衝剤もしくは浸透圧に影響を与えるための塩などの補助剤と混合するものが含まれる。薬剤を化粧品配合物に取り込ませてもよい。局所的な施用には、活性成分が、好ましくは固体または液体の不活性な担体物質と一緒にスクイーズボトルにパッケージされているか、または加圧揮発性成分、通常はガス状の噴霧剤、たとえば加圧空気と混合されている、噴霧可能なエアロゾル調製物も適している。
【0087】
本明細書中に記載する薬剤は、中性または塩の形態で配合することができる。製薬上許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなど遊離アミノ基で形成した塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなど遊離カルボキシル基で形成した塩が含まれる。
【0088】
薬剤は治療上有効な量で投与する。特定の疾患または状態の処置に対して治療上有効となる薬剤量は疾患または状態の性質に依存し、標準的な臨床技術によって決定することができる。さらに、至適用量範囲の同定を補助するためにin vitroまたはin vivoアッセイを任意選択で使用してもよい。配合物中で使用する正確な用量は、投与経路および疾病または疾患の重篤度にも依存し、担当医の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。有効な用量は、in vitroまたは動物モデルの試験システムから誘導した用量応答曲線から推定し得る。
【0089】
本発明はまた、処置方法に使用できる薬剤組成物の1つもしくは複数の成分を充填した1つもしくは複数の容器を含む、製薬パックまたはキットも提供する。任意選択で、このような容器に、製薬製品もしくは生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形の通知を備えることができ、この通知は人間に投与するための製造、使用、または販売についての政府機関の承認を反映している。パックまたはキットには、投与様式、薬物投与の順序(たとえば個別に、連続的にもしくは同時に)などに関する情報を示すラベルを付けることができる。パックまたはキットはまた、患者に療法を受けるように思い出させる手段を含んでいてもよい。パックまたはキットは、組合せ療法の単一の単位用量であるか、複数の単位用量であることができる。具体的には、薬剤は分離されているか、または単一のバイアルもしくは錠剤中に存在する任意の組合せで混合されていることができる。ブリスター包装または他の分配手段内にまとめた薬剤が好ましい。本発明の目的では、単位用量とは、各薬剤の個々の薬力学に依存し、標準的な時間経過の間にFDAに認可された用量で投与する用量を意味することを意図する。
【0090】
トランスジェニック動物または相同組換え動物
本発明はまた、ヒトでないトランスジェニック動物の作製にも関する。たとえば、一実施形態では、オプチニューリンをコードしている核酸を含む宿主細胞(たとえば、受精卵母細胞または胚性幹細胞内にオプチニューリンポリペプチドをコードしている核酸)を使用する。このような宿主細胞を使用して、外来ヌクレオチド配列がゲノム内に導入されたヒトでないトランスジェニック動物または内在ヌクレオチド配列が変性された相同組換え動物を作製することができる。あるいは、本発明は、ネイティブオプチニューリンが変性されたヒトでない動物の作製にも関する。
【0091】
このような動物は、オプチニューリン関連の緑内障のプロセスを調査するために、ヌクレオチド配列およびこの核酸にコードされているポリペプチドの機能および/または活性を研究すること、ならびにそれらの活性のモジュレーターを同定および/または評価することに有用である。本明細書中で使用する「トランスジェニック動物」とは、動物内の1つまたは複数の細胞が導入遺伝子を含む、ヒトでない動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはラットやマウスなどのげっ歯類、または霊長類である。トランスジェニック動物の他の例には、ヒトでない霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、および両生類が含まれる。導入遺伝子とは、細胞のゲノムに組み込まれる外来性DNAであり、その細胞からトランスジェニック動物が発生してDNAは動物の成体のゲノム中に残り、その結果、トランスジェニック動物の1種もしくは複数の細胞種または組織内にコードされた遺伝子産物の発現が指示される。本明細書中で使用する「相同組換え動物」とは、動物の発生より前に内在性遺伝子と動物の細胞、たとえば動物の胚細胞内に導入された外来性DNA分子(たとえば内在性遺伝子の変異型)との間の相同組換えによって内在性遺伝子が変性された、ヒトでない動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはマウスである。
【0092】
胚操作および微量注入によるトランスジェニック動物、特にマウスなどの動物の作製方法は当分野で慣用となっており、たとえば、米国特許第4,736,866号および第4,870,009号、米国特許第4,873,191号およびHogan、Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)に記載されている。相同組換えベクターおよび相同組換え動物を構築する方法は、Bradley、(1991)、Current Opinion in Bio/Technology、2:823-829および国際公開公報WO 90/11354号、WO 91/01140号、WO 92/0968号、およびWO 93/04169号にさらに記載されている。本明細書中に記載するヒトでないトランスジェニック動物のクローンは、Wilmut他、(1997)、Nature、385:810-813ならびに国際公開公報WO 97/07668号およびWO 97/07669号に記載されている方法に従っても作製することができる。
【0093】
オプチニューリン遺伝子の緑内障との関連の同定、および一タンパク質群とのその既知の相互作用により、この眼疾患群の病因に関与している生化学的経路を検査する最初の機会が提供される。さらに、緑内障の発生の有意な寄与因子としてのこの遺伝子を同定することで、高齢世代など、危険性の高い個体でこの疾患についてスクリーニングすること、ならびに疾病の予防的および治療的処置が可能となる。
【0094】
以下の例は、本発明を例示する目的で提供されており、本発明の範囲を限定するものと理解されるべきでない。本明細書中で引用するすべての参考文献が、その全体で参照として本明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0095】
オプチニューリンの同定およびPOAGとの関連
家族由来の物質
変異をスクリーニングするために、GLC1E座位を10p14〜p15にマッピングするために最初に使用された大きな家族(Sarfarazi, M.他、Am. J. Hum. Genet.、62:641、(1998))を含めた成人発症緑内障の54家族の、合計147人の生存している罹患した対象を使用した。これら家族の大多数がLTG構成員(すなわちIOP≦22mmHg)のみを示したが、他のファミリーは、異なる構成員でLTGおよび中程度に上昇したIOP(すなわち23〜26mmHg)の混ざった臨床的徴候を示した。さらに、124人の主にLTGおよび散発性の対象を、1種のオプチニューリンエキソンのみの変異のスクリーニングに使用した。
【0096】
GLC1E原因遺伝子としてのオプチニューリンの同定
記載のように、ABI-377自動DNAシーケンサーで罹患した対象の配列決定を直接行った(Stoilova, D.他、J. Med. Genet.、35:989、(1998)参照)。配列決定は、発表されている連関した家族由来の試料で行った(Sarfarazi, M.他、Am. J. Hum. Genet.、62:641 (1998))。4つの候補遺伝子、すなわちIL2RA(インターロイキン2受容体α)、IL15RA(インターロイキン15受容体α)、GATA3(GATA結合タンパク質3)およびNAPOR(神経芽細胞アポトーシス関連RNA結合タンパク質)の最初のスクリーニングでは疾病を引き起こす変異が全く同定されなかったが、いくつかのサイレント(第3塩基のコドンの)変化、SNPおよび挿入/欠失の変性が同定された。第5の遺伝子を検査し、その配列決定により、オプチニューリンのエキソン4中にミスセンス変異(GAG→AAG;E50K)が同定された(GenBank受託番号AF420371からAF420373;配列番号1、3、5も参照)。追加の罹患した兄弟姉妹、およびより関係の遠い罹患した親族の配列決定により、それらのすべてでE50K変異の存在が確認された(表1)。
【0097】
【表1】

【0098】
E50K変異の一本鎖コンホメーション多型(SSCP)アッセイにより、この大きな家族(15人の生存している罹患者を含めた49人のメンバー)の完全な分離が示された。この変異は、540人の正常な対照染色体中に存在していなかった。成人発症緑内障の54家族のSSCPスクリーニングにより、別の6つの家系でも同じE50K変異が同定された。この変異は、38人の罹患者、15人の無症候性の遺伝子キャリア、50人の非罹患者、および20人の配偶者を含めた124人の構成員の分離を示した。その結果、E50Kは再発性変異であることが結論づけられた。E50K変異を有する38人の罹患した対象のうち、7人(すなわち18.4%)のIOPが23〜26mmHgで記録され、残りの個体のIOP値は11〜21mmHgの範囲であった。
【0099】
2つのさらなる変異(2塩基対AGの挿入およびR545Q)が、正常なIOPを有する2つの他の家族で同定された(表1)。
【0100】
エキソン6中の第2の変異(ASP127の後の2塩基対「AG」の挿入)がLTG対象で観察された。この変異では、挿入点の後の読み枠がシフトし、新しい未熟ストップコドンで最終的に停止されるまでに22個の新しいアミノ酸が翻訳される。これにより、このタンパク質は正常タンパク質の76%で切断される。
【0101】
エキソン16中の第3の変異(CGG→CAG;R545Q)が、別の関連性のないLTG対象で同定された。この変異は、100を超える正常な染色体中には存在しなかった。
【0102】
エキソン5中の第4の配列変化(ATG→AAG;M98K)は、全169人の発端患者のうち23人(すなわち13.6%)で記録されていた(すなわち、45家族ならびに124人の他の散発性および主にLTGの対象は、このエキソンについてのみスクリーニングした)。これら23人の対象のうち3人のみで、正常範囲より高いIOP値(すなわち23、26および40mmHg)が記録されており、残りの20人の対象は以前にLTGと診断されていた。M98K変化も、422人の正常な対照染色体のうち9人(すなわち2.1%)で存在していた。しかし、これら9人の対象は総合的な緑内障の検査を受けておらず、したがって、そのうち1人または複数人がいつかは緑内障を発症する可能性が高い。いずれにせよ、罹患者(13.6%)と正常対照(2.1%)との頻度で観察された差は非常に有意であり(X2=30.99; df=1; P=2.18×10-7)、変性アミノ酸がマカクでも保存されているので(以下参照)、M98Kは確かに緑内障の危険性に関連する因子を表している。
【0103】
総合すると、オプチニューリン遺伝子中の配列変性は、成人発症緑内障の16.67%から17.98%(178人中32人)の原因であるかもしれない(上記表1参照)。家族および/または散発性の症例で追加の変異も存在するかもしれない。いくつかのフランキングDNAおよびオプチニューリン遺伝子内マーカーの遺伝子型決定ならびに検査によっては、これら7家族に共通するハプロタイプが同定されなかった。
【0104】
オプチニューリン中の追加の配列変性
8つのさらなる配列変性が同定された(表2参照)。これらの変化は配列決定ヒト小柱網(HTM)およびリンパ球から調製したゲノムDNA、BACクローンおよびcDNAの配列決定を行うことによって確認した。観察された変化は我々の試料すべてで一貫しているが、FIP-2の試料(受託番号AF061034)とは異なることが見出された。
【0105】
【表2】

【0106】
オプチニューリンのゲノムおよびタンパク質構造
オプチニューリンはGLC1E座位にマッピングされており、その物理的な位置は10p14にまで絞られる。図1に示すように、この遺伝子はその4'非翻訳領域(UTR)で3つの非コードエキソンを含み、全部で577個のアミノ酸(aa)をコードしている別の13のエキソンを含む。図1には、他の既知のタンパク質と相互作用するおおよその領域が示されており、推定機能的ドメイン、各エキソンの大きさ、ならびに観察される変異の位置および種類も示されている。5'-UTRでスプライシングが確認され、これにより少なくとも3つの異なるアイソフォーム(受託番号AF420371〜3)が生じたが、これらはいずれもコードエキソンを変性していなかった。
【0107】
オプチニューリンは、2つの推定bZIP転写因子基本モチーフ、いくつかのロイシンジッパードメインおよびC2H2型Znフィンガーを含む細胞性タンパク質である(図1)。この酸性タンパク質(pI=5.15)はグルタミン酸(15.8%)およびロイシン(11.8%)のどちらにも富んでいる。
【0108】
他の種のオプチニューリン
この研究の間、マウスのオプチニューリン遺伝子もクローニングした。マウスの遺伝子は584aa(67kDa)をコードしており、ヒトオプチニューリンに78%の同一性を示す。また、マウス遺伝子も13のコードエキソンに分けられ、その境界は完全にヒト遺伝子と保存的である。公開データベースを検査することにより、カニクイマカクのオプチニューリンの完全なcDNA配列(571aa;65kDa)ならびにラット(Moreland, R. J.他、Nucleic Acids Res.、28:1986、(2000))、ブタおよびウシの他の部分配列が同定された。全体的に、ヒトオプチニューリンはマウス、ラット、ブタおよびウシのその相同体と78%〜85%の同一性を有し、マカクと96%の同一性を有している。興味深いことに、本研究のそれぞれ7人および23人の発端患者で観察されたE50K変異およびM98K変異のいずれもが、ヒトとマカクで保存されている。M98Kの進化的保存性は、この変異が緑内障の危険因子であることをさらに裏付けている。E50K変異は、マウスおよびウシでさらに保存されている。
【0109】
ヒトオプチニューリンの眼での発現および眼内でない発現
PCR増幅により、HTM、非色素毛様体上皮(NPCE)、網膜、脳、副腎皮質、肝臓、胎児、リンパ球ならびに正常真皮線維芽細胞(NHDF)および変異真皮線維芽細胞(E50K-DF)から調製した試料中で、オプチニューリンの発現が示された。放射標識したオプチニューリンに特異的なcDNAプローブ(約2.0kb)を用いてノーザン分析を行い、(1)小柱網および(2)非色素毛様体上皮から確立した2つのヒト細胞系由来のポリA+RNAの5マイクログラムとハイブリダイズさせた。ノーザンブロッティングにより、約2.0kbのメッセージの主要なバンドがHTMおよびNPCE細胞系のいずれもで記録された。これは、3.6kbのメッセージより3〜4倍多かった。これらの転写物は一般に、心臓、脳、胎盤、肝臓、骨格筋、腎臓、および膵臓で以前に報告されているメッセージと矛盾していない(Li, Y.他、Mol. Cell. Biol.、18:1601、(1998))。
【0110】
ウエスタン分析
ヒト、マカク、マウス、ラット、ブタおよびウシのcDNA配列アラインメントでは、これらの種にわたって有意な度合のタンパク質の保存が示された。さらに、選択された抗ペプチド抗体を調製した。オプチニューリンのN末端(MSHQPLSCLTEKEDSPSE、配列番号7)およびC末端(EVLPDIDTLQIHVMDCII、配列番号8)由来の2つの異なる18個のアミノ酸のペプチドを使用してニワトリを免疫化し、抗オプチニューリン抗体を得た。
【0111】
抗オプチニューリン抗体を使用して標準のELISA、免疫ブロット、および免疫細胞化学アッセイを展開した。これらのアッセイにおける抗体の特異性は、2つの個別の方法によって記録した。第1に、調査中に実施したどの実験でも反応しなかった非免疫の免疫グロブリンを特異性の対照として使用した。第2に、オプチニューリン特異的ペプチド抗体を用いて抗ヒトオプチニューリン抗体を事前に吸着させた。事前の吸着により、試験した細胞におけるすべての免疫反応性が無効となった。
【0112】
これらの選択した抗ペプチド抗体は、マウスおよびマカクオプチニューリンの既知の配列で100%保存されていた。様々な細胞種を使用してウエスタン分析を行った。細胞を氷冷したプロテアーゼ阻害剤緩衝液(10mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中にRocheのプロテアーゼ阻害剤カクテル1錠)で洗浄した。1%のCHAPSを添加したプロテアーゼ阻害剤緩衝液を加えることによって細胞を溶解した。細胞溶解液(1レーンあたり約40μgのタンパク質)を4〜15%のTris-HCl勾配ゲルに供し、PVDF膜上にブロットした。PBST(PBSと0.5%のTween 20)中の5%乾燥スキムミルクを用いて非特異的ハイブリダイゼーションを遮断した。膜を1/100で一次抗体(ヒトオプチニューリン抗ペプチド抗体、上述のようにニワトリで産生させた)でプローブした。洗浄後、膜を1:10,000で二次抗体(HRPとコンジュゲートさせたウサギ抗ニワトリ抗体)と共にインキュベートした(Sigma)。Opti-4CNキット(Bio-Rad)を使用して比色検出を行った。これらの抗体のうち1種が、HTM、NPCE、E50K-EF、NHDFおよびHeLaを含めた様々な細胞系由来の全細胞抽出物中の約66kDaのタンパク質と交差反応した。
【0113】
オプチニューリンがHTMおよびNPCEのどちらもで検出され、後者は分泌性上皮の構成要素であるので、本発明者らは、眼房水中のオプチニューリンの発現を決定することにした。この目的のために、ヒトおよび他の7種の眼房水からZooウエスタンブロットを調製した。マウス遺伝子のクローニングによりタンパク質の大きさが67kDaであると予測されたので、別の対象としてNIH3T3細胞系を使用した。ヒト(66kDa)、マカク(65kDa)およびマウス(67kDa)の既知の配列に基づいたものを含めて、すべての試料で同様の大きさのタンパク質の存在が示された。このタンパク質の存在は、これらの動物の選択した群から調製した眼組織のホモジネートでさらに確認された。これらのデータは、オプチニューリンが進化の間高度に保存されている分泌性タンパク質であることを示している。
【0114】
オプチニューリンの免疫細胞化学的分析
このタンパク質の細胞局在性を研究するために、初代細胞系(NHDFおよびE50K-DF)および形質転換させた細胞系(HTMおよびNPCE)の両方を使用した。免疫細胞化学的研究により、核近辺の小胞構造体に関連しているオプチニューリン内在性タンパク質の粒子状の染色が実証された。細胞を6穴プレートに播種し、48時間、ガラス製カバーガラス上で増殖させた(24時間後に培地を一度交換した)。その後、細胞をPBSで2回洗浄し、4%のパラホルムアルデヒド中で20分間、氷上で固定し、PBSで2回洗浄し、0.1%のTriton X-100中で10分間透過化処理した。PBSで2回洗浄した後、非特異的ハイブリダイゼーションをPBS中の4%のウシ血清アルブミンで30分間遮断した。細胞を1/200で一次抗体と共に1時間インキュベートした。洗浄後、細胞を、1/500でAlexa Fluor 488(緑)またはAlexa Fluor 594(赤)で標識した二次抗体(ヤギ抗ニワトリ、Molecular Probes, Inc.)と共に45分間インキュベートした。核酸染色には、洗浄後、細胞を1/200でTO-PRO-3ヨウ素と共に30分間インキュベートした。ゴルジ体の染色には、細胞を1/3000でBODIPY FL C5-セラミドと共に30分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、カバーガラスを退色防止試薬と一緒にスライド上に載せ、Zeiss 410レーザー走査共焦点顕微鏡で検査した。
【0115】
ウイルスで形質転換させたおよび形質転換させていない正常細胞系のいずれもで、この内在性タンパク質の一貫した核周囲局在化が見られた。ゴルジの特異的染色により、このタンパク質の核周囲局在化はゴルジ複合体および小胞の構造体にまで広がっていることが示された。対照として、非免疫の免疫グロブリンおよびオプチニューリンに特異的なペプチド抗原の使用を用いた。これらはどの細胞種とも反応しなかった。
【0116】
研究の間、正常線維芽細胞およびE50K変異線維芽細胞の培養物は自然かつ同等に増殖したが、E50K変異細胞中の内在性タンパク質の量は正常細胞よりも相当に低かった。変異細胞はオプチニューリンに対して完全に陰性であるか、または非常に弱く陽性であった。さらに、正常細胞の70〜80%と比較して、E40K細胞では10〜20%だけがオプチニューリンポリペプチドに対して陽性であった。さらに、非常に限られたE50K陽性細胞中では、オプチニューリンポリペプチドは核の周囲に少なく、よりまとまっていないように見える。したがって、E50Kオプチニューリン変異の効果は、影響を受けた細胞中で合成を低下させ、タンパク質産物を再分配させると考えられる。検査した特定の他の細胞では、オプチニューリンは細胞質中では良好に検出されなかった。予測されていたこのタンパク質の不安定性とその不均一な細胞内分布とを合わせると、オプチニューリンは、成熟細胞から迅速に分泌されるか、または成熟細胞から除去される際に、恐らくはその3'UTR中の分解シグナルによって、過渡的に発現されることが示唆される。この予測は、このタンパク質の濃度が時間と共に、細胞内で観察されたレベルよりはるかに高いレベルで細胞培地内に蓄積されたことに支持されている。
【0117】
考察
成人発症性の低眼圧緑内障(LTG)/POAGの9家族で疾病を引き起こす3つの変性がオプチニューリン遺伝子中で同定され、23人の(初発)LTG発端患者で危険性に関連した変性が同定された(上記表1参照)。保存的な推定では、この遺伝子の変異が研究した全緑内障患者の16.67%から17.98%の原因であることを示している(表1参照)。米国だけで120万人までのLTG対象および247万人までのPOAG対象が存在するので、オプチニューリン変異のスクリーニングにより200,000例を超えるLTGの症例および440,000例までのPOAGの症例が検出される。この数値の2倍までの個体が、同定可能な臨床的徴候や症状なしに既にこの状態に罹患しているかもしれない。マウス、ウシおよびマカクでも保存されている再発性の変異(E50K)が、第1の推定bZIP転写因子ドメインの基本領域中に同定された。bZIPドメインは配列特異的なDNA結合のための基本領域を有するので、E40Kはオプチニューリンのこの潜在的なDNA結合能力を抑制していると考えられる。読み枠をシフトさせ、正常なタンパク質を75%で切断させるエキソン6中の「AG」の挿入(Asp127の後)である第2の変異が見つかった。この切断されたタンパク質は、オプチニューリンのRAB8、TFIIIA、ハンチンチンおよびE3-14.7Kタンパク質との正常な相互作用を失っていると予測される(図1参照)。第3の変異(R545Q)はエキソン16中で同定された。この変異は既知のタンパク質ドメインの一部ではないが、オプチニューリン分子中の唯一のC2H2 Znフィンガーモチーフに近接している。このようなドメインは通常転写因子内に見つかるので、観察された変異はオプチニューリンのこの潜在的な機能に干渉する可能性が高い。別の変性(M98K)がオプチニューリンのエキソン5中で観察された。この変性は、主にLTGの発端患者の13.61%、および正常対照の2.13%(p<0.00001)に存在する。この配列変化は第2の推定bZIP転写因子の基本ドメイン内に位置しており(図1参照)、また、マカクでも保存されているので、この状態の別の危険因子であると考えられる。
【0118】
オプチニューリンは現在までに、既知のどのタンパク質とも顕著な相同性を有することが知られていない。しかし、いくつかの他のタンパク質とのその相互作用は確立されている。図2は、オプチニューリンの他のタンパク質との相互作用および代替経路におけるその潜在的な関与を例示する図を提供している。FASリガンド(左)およびTNF-α(右)の2つの代替経路におけるオプチニューリンの潜在的な関与が示されている。相互作用を中実矢印で示し、下流効果を中空矢印で示す。先端が円の矢印は、1つのタンパク質の別のタンパク質に対する遮断効果を示す。アデノウイルスE3-14.7Kがオプチニューリンの最後の172個のアミノ酸と相互作用することが以前に報告されている(Li, Y.他、Mol. Cell. Biol.、18:1601、(1998))。この特異的な相互作用は、その受容体(すなわちTNFR1およびRIP)に誘発されるTNF-α細胞の死滅に対するE3-14.7Kの保護効果を遮断することができる。TNF-αはまた、オプチニューリンの発現を時間依存的な様式で直接誘発させることもできる(id.)。これは、オプチニューリンが、平衡をアポトーシスの誘発の方へシフトすることができるTNF-αシグナル伝達経路の構成要素であることを示唆している。さらに、TNF-αは、POAG/LTS対象の視神経乳頭における損傷の重篤度を著しく増大させることが報告されている(Yuan, L.およびNeufeld, A. H.、Glia、32:42、(2000); Tezel, G.およびWax, M. B.、J. Neurosci.、20:8694、(2000))。反応性視神経乳頭アストロサイトおよびグリア細胞によるこのサイトカインの産生は、過剰の一酸化窒素を誘発させ、網膜神経節細胞のアクソンに対して神経毒となるようにさせ得る(id.)。したがって、正常な内在性オプチニューリンは、直接または他のタンパク質とのその相互作用によって、恐らくはフィードバック機構を通じてTNF-αの産生を抑制し、その結果、この視神経症群に対して神経保護的な役割を果たすことができると考えられる。したがって、緑内障患者における変異型のオプチニューリンは、数十年間の通常の生活にわたって不十分な神経保護を提供し、その結果この視神経症の遅発性の提示をもたらすと考え
られる。
【0119】
図2に示すように、TNF-αは、細胞質ホスホリパーゼA2(cPLA2)を活性化させてアラキドン酸(AA)およびその潜在的な産物である炎症の媒体を放出させることを含む(Wold, W. S.、J. Cell Biochem.、53:329(1993))。E3-14.7Kはこの炎症性反応を遮断することができるので(id.)、オプチニューリンがこのタンパク質と相互作用することによってもその遮断能力を逆転し得ると考えられる。したがって、TNF-α経路におけるオプチニューリンの関与は、潜在的にアポトーシスまたは炎症のいずれかをもたらす可能性がある。第3の代替経路では、チトクロームP450はAAを、緑内障の表現型に直接関係しているかもしれない生物活性分子へと代謝することができる。チトクロームP4501B1における変異が原発性先天緑内障の原因であることが以前に示されており、これを支持している(Stoilov, I.他、Hum. Mol. Genet.、6:641、(1997); Stoilov, I.他、Am. J. Hum. Genet.、62:573、(1998))。血管収縮およびイオン運搬(McGiff, J. C.他、Curr. Opin. Nephrol. Hypertens.、10:231、(2001))に直接関係付けられているAA代謝物の1つは、20-ヒドロキシエイコサテトラエノイン酸(20-HETE)である。LTG患者で再発性血管攣縮が頻繁に報告されており(Gasser, P.他、Angiology、41:214、(1990); Rankin, S. J.、Surv. Ophthalmol.、43、Suppl 1:S176、(1999))、また、血管収縮は眼房水の産生の減少をもたらすので(Van Buskirk, E. M.他、Am. J. Ophthalmol.、109:511、(1990))、AA-P450経路によるオプチニューリンの変異はLTG患者で報告されている構造的な損傷において役割を果たしていると考えられる(Caprioli, J.およびSpaeth, G. L.、Am. J. Ophthaltiiol.、97:730、(1984))。LTGの処置におけるカルシウムチャネル遮断剤の有効性(Netland, P. A.他、Am. J. Ophthalmol.、115:608、(1993))、およびヒト冠動脈細胞培養物中で観察されるオプチニューリンポリペプチドの発現が、この仮説をさらに支持している。血管攣縮はLTGだけでなくレイノー病および偏頭痛でも存在し(Gasser, P.他、Angiology、41:214、(1990))、これら2つの状態は高圧POAGで頻繁に報告されている。
【0120】
E3-14.7Kのカスパーゼ-8(CASP8)との相互作用はFasリガンドに誘発されるアポトーシスを効率的に遮断することができるので(Chen, P.他、J. Biol. Chem.、273:5815、(1998))、オプチニューリンは、E3-14.7KおよびCASP8とタンパク質複合体を形成してアポトーシスを阻害するか、あるいはTNF-αで以前に報告されたように(Li, Y.他、Mol. Cell. Biol.、18:1601、(1998))、この相互作用はE3-14.7Kの保護的効果を逆転させ、その結果アポトーシスを誘発させ得ると考えられる。したがって、オプチニューリンのE3-14.7Kとの相互作用は、TNF受容体およびFasのどちらよりも下流にあるシグナル伝達経路を調節し得る。
【0121】
E3-14.7Kに加えて、オプチニューリンのC末端部分もハンチントン病(HD)の欠陥タンパク質であるハンチンチンと相互作用する(Faber, P. W.他、Hum. Mol. Genet.、7:1463、(1998))。ハンチンチンは抗アポトーシス効果を有すると報告されている(Wellington, C. L.他、J. Neural. Transm.、Suppl. 1、(2000))。ハンチンチンおよびE3-14.7KはどちらもオプチニューリンのC末端に結合するので、ハンチンチンのオプチニューリンへの結合により、通常オプチニューリンに媒介されるアポトーシスシグナルが中和される可能性がある(Li, Y.他、Mol. Cell. Biol.、18:1601、(1998))。同様に、E3-14.7KはCASP8と相互作用してFASリガンドに誘発されるアポトーシスを阻害する(Chen, P.他、J. Biol. Chem.、273:5815、(1998))。HD中の拡大したポリグルタミン反復によって誘発される細胞死にはCASP8が必要であるので(Sanches, I.他、Neuron、22:623、(1999))、オプチニューリン-ハンチンチン-CASP8-E3-14.7K間の潜在的な多次元タンパク質複合体の形成がHDおよびPOAGのいずれにもおける神経変性に共通の役割を果たすかもしれない。さらに、オプチニューリンは、ハンチンチンを、オプチニューリンのN末端領域に結合する小さなGTP加水分解タンパク質であるRAB8に間接的に連結させる(Hattula, K.およびPeranen, J.、Curr. Biol.、10:1603、(2000))。RAB8によるアクチンおよび微小管の再編成が細胞形状の劇的な変化を指示するので、RAB8-オプチニューリン-ハンチンチンの相互作用によって形成される複合体分子が細胞形態形成、膜輸送(RAB8による)またはベシクル輸送(ハンチンチンによる)の制御において中心的な役割を果たす可能性が高い。オプチニューリンのゴルジ体における免疫細胞化学的な位置決定により、タンパク質輸送がこの分子の機能の1つであることが示唆される。最近では、新しいアフリカツメガエルのトランスジェニックモデルで、RAB8タンパク質の変異型が網膜変性を引き起こし(Moritz, O.他、Mol. Biol. Cell、12:2341、(2001))、また、このタンパク質が桿体におけるポストゴルジ膜のドッキングに関与していることが示されている(id.)。
【0122】
オプチニューリンの中央のロイシンに富んだドメイン(図1)は、TFIIIAのN末端部分と相互作用する(Moreland, R. J.他、Nucleic Acids Res.、28:1986、(2000))。後者は5SリボソームDNAの内部制御配列に結合し、その後、TFIIIBおよびTFIIICと共同して、RNAポリメラーゼIIIによる遺伝子転写のための安定な開始前複合体を形成する。オプチニューリンのTFIIIAとの相互作用により、この分子が不活性状態から活性状態へと変換され、したがってその転写が活性される可能性が高い。
【0123】
オプチニューリンは、NEMO(NF-κB必須モジュレーターまたはFIP3)関連タンパク質(NRP)としてもクローニングされているが、NF-κBシグナル伝達に対して全く効果を有さないことが示されている(Schwambom, K.他、J. Biol. Chem.、275:22780、(2000))。ホルボールエステルはオプチニューリンのリン酸化を誘発したが、同時にその半減期も減少させた(id.)。このリン酸化は、内在性オプチニューリンの細胞内局在化に影響を与えないと報告されている(id.)。このリン酸化を担っている特定のキナーゼ活性は同定されていないが、本発明者らは、オプチニューリンが、85kDAおよび180kDAの分子量を有する2つの未知のキナーゼのアセンブリおよび活性内で機能することができることを示した。
【0124】
本明細書中で引用した参考文献の教示は、その全体が組み込まれている。
【0125】
好ましい実施形態を参照して本発明を具体的に示したが、当分野の技術者には、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の形態および詳細に様々な変化を行い得ることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】他の既知のタンパク質と相互作用するおおよその領域、推定機能的ドメイン、エキソンの大きさ、および観察された変異の位置および種類を含めた、オプチニューリンのゲノム構造を示す図である。
【図2】オプチニューリンと他のタンパク質との相互作用ならびにFASリガンド(左)およびTNF-α(右)の代替経路におけるオプチニューリンの潜在的な関与を示す図である。相互作用を中実矢印で示し、下流効果を中空矢印で示し、1つのタンパク質の別のタンパク質に対する遮断効果を先端が円の矢印で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号1の約10から約50個のヌクレオチドのオリゴヌクレオチド、配列番号3、配列番号3の約10から約50個のヌクレオチドのオリゴヌクレオチド、配列番号5、配列番号5の約10から約50個のヌクレオチドのオリゴヌクレオチド、または、前述の核酸分子の1つの相補体を含む単離された核酸分子であって、前記核酸分子が少なくとも1個のヌクレオチドの変性を有し、前記変性がオプチニューリン関連の緑内障もしくは緑内障のオプチニューリンに関連した危険性が存在することの指標である単離された核酸分子。
【請求項2】
前記変性により、前記核酸分子にコードされるポリペプチドの配列に変化が生じる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
前記変性が、コドン50におけるGAGからAAGへの変化、コドン127の後におけるAGの挿入、コドン545におけるCGGからCAGへの変化、コドン98におけるATGからAAGへの変化、前述の変性の1つの相補的変化、または前述の変性の1つもしくは複数を含む組合せである、請求項2に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
前記緑内障が原発性開放隅角緑内障である、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離核酸。
【請求項5】
配列番号2、配列番号2の活性断片、配列番号4、配列番号4の活性断片、配列番号6、または配列番号6の活性断片を含む精製されたポリペプチドであって、前記ポリペプチドが少なくとも1個のアミノ酸の変性を有し、前記変性がオプチニューリン関連の緑内障もしくは緑内障のオプチニューリンに関連した危険性が存在することの指標であり、前記活性断片がオプチニューリンポリペプチドの少なくとも1つの機能を行うポリペプチド。
【請求項6】
前記変性が、コドン50におけるグルタミン酸からリジンへの変性、コドン127の後における未熟ストップ、コドン545におけるアルギニンからグルタミンへの変性、コドン98におけるメチオニンからリジンへの変性、または前述の変性の1つまたは複数を含む組合せである、請求項5に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項7】
前記緑内障が原発性開放隅角緑内障である、請求項5または6に記載の精製されたポリペプチド。
【請求項8】
オプチニューリン核酸中の変性またはオプチニューリンポリペプチド中の変性が、オプチニューリン関連の緑内障もしくは緑内障のオプチニューリンに関連した危険性が存在することまたは存在しないことの指標である、
オプチニューリン核酸中の変性、または
オプチニューリンポリペプチド中の変性
について試料を評価することを含む、個体由来の試料中においてオプチニューリン関連の緑内障もしくは緑内障のオプチニューリンに関連した危険性が存在することまたは存在しないことを検出する方法。
【請求項9】
前記オプチニューリン核酸が配列番号1、配列番号3、または配列番号5の少なくとも約10から約50個のヌクレオチドの断片を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記変性が、コドン50におけるGAGからAAGへの変化、コドン127の後のAGの挿入、コドン545におけるCGGからCAGへの変化、コドン98におけるATGからAAGへの変化、または前述の変性の1つもしくは複数を含む組合せである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
評価が、オプチニューリン核酸の全体もしくは一部分の配列決定を行うこと、または核酸プローブをオプチニューリン核酸にハイブリダイズさせることを含む、請求項9あるいは10に記載の方法。
【請求項12】
オプチニューリンポリペプチドが配列番号2、配列番号4、または配列番号6の少なくとも活性断片を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記変性が、コドン50におけるグルタミン酸からリジンへの変性、コドン127の後における未熟ストップ、コドン545におけるアルギニンからグルタミンへの変性、コドン98におけるメチオニンからリジンへの変性、または前述の変性の1つもしくは複数の組合せである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
オプチニューリン関連の緑内障の存在に関連しているオプチニューリン核酸中の変性を検出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記変性が、コドン50におけるGAGからAAGへの変化、コドン127の後のAGの挿入、コドン545におけるCGGからCAGへの変化、または前述の変性の1つもしくは複数を含む組合せである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
個体においてオプチニューリン関連の緑内障を診断することをさらに含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
緑内障のオプチニューリンに関連した危険性の存在に関連している、オプチニューリン核酸中の変性を検出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記変性がコドン98におけるATGからAAGへの変化である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
個体において緑内障のオプチニューリンに関連した危険性を診断することをさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
オプチニューリン関連の緑内障が存在しないことに関連している、オプチニューリン核酸中に変性が存在しないことを検出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
緑内障のオプチニューリンに関連した危険性が存在しないことに関連している、オプチニューリン核酸中に変性が存在しないことを検出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
前記緑内障が原発性開放隅角緑内障である、請求項8から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
個体にオプチニューリン治療剤を治療上有効な量で投与することを含む、個体において緑内障を処置する方法。
【請求項24】
個体にオプチニューリン治療剤を治療上有効な量で投与することを含む、緑内障の危険性が増大した個体を処置する方法。
【請求項25】
オプチニューリン治療剤が、オプチニューリンポリペプチドの発現を変化させる薬剤、オプチニューリンポリペプチドの組成を変化させる薬剤、オプチニューリンポリペプチドの活性を変化させる薬剤、オプチニューリンポリペプチドの翻訳後プロセッシングを変化させる薬剤、オプチニューリンスプライシング変異体の転写を調節する薬剤、オプチニューリン相互作用ポリペプチド、およびオプチニューリン相互作用ポリペプチドの発現または活性を変化させる薬剤からなる群から選択される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
オプチニューリン核酸もしくはオプチニューリンポリペプチドの発現、組成または活性において変性が存在することあるいは存在しないことを検出することを含む、個体においてオプチニューリン関連の緑内障または緑内障のオプチニューリンに関連した危険性の増大が存在することあるいは存在しないことを診断する方法であって、発現、組成、または活性において変性が存在することが、オプチニューリン関連の緑内障もしくは緑内障のオプチニューリンに関連した危険性の増大の指標であり、発現、組成、または活性において変性が存在しないことが、オプチニューリン関連の緑内障もしくは緑内障のオプチニューリンに関連した危険性の増大が存在しないことの指標である方法。
【請求項27】
前記オプチニューリン核酸が配列番号1、配列番号3、または配列番号5を含み、前記オプチニューリンポリペプチドが配列番号2、配列番号4、または配列番号6を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記変性が、オプチニューリンポリペプチドの組成もしくは活性における定性的な変性、オプチニューリンポリペプチドの発現もしくは活性における定量的な変性、またはそれらの組合せである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
オプチニューリンに特異的に結合する抗体を使用してオプチニューリンポリペプチド中に変性が存在することまたは存在しないことを検出する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
オプチニューリン核酸中の変性、オプチニューリンポリペプチド中の変性、またはこれらの両方について個体由来の試料を評価することを含む、個体において緑内障または緑内障の危険性を検出する方法。
【請求項31】
前記オプチニューリン核酸が少なくとも配列番号1、配列番号3、または配列番号5の約10から約50個のヌクレオチドの断片を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記変性が、コドン50におけるGAGからAAGへの変化、コドン127の後のAGの挿入、コドン545におけるCGGからCAGへの変化、コドン98におけるATGからAAGへの変化、または前述の変性の1つもしくは複数を含む組合せである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
評価が、オプチニューリン核酸の全体もしくは一部分の配列決定を行うこと、または核酸プローブをオプチニューリン核酸にハイブリダイズさせることを含む、請求項31あるいは32に記載の方法。
【請求項34】
オプチニューリンポリペプチドが少なくとも配列番号2、配列番号4、または配列番号6の活性断片を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記変性が、コドン50におけるグルタミン酸からリジンへの変性、コドン127の後における未熟ストップ、コドン545におけるアルギニンからグルタミンへの変性、コドン98におけるメチオニンからリジンへの変性、または前述の変性の1つもしくは複数を含む組合せである、請求項34に記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−501806(P2006−501806A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−556554(P2003−556554)
【出願日】平成14年12月18日(2002.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2002/041116
【国際公開番号】WO2003/056037
【国際公開日】平成15年7月10日(2003.7.10)
【出願人】(504242674)ユニヴァーシティ・オブ・コネティカット (1)
【出願人】(504242113)セント・ジョージズ・エンタープライズィズ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】