説明

オリゴヌクレオチドプローブ及びその利用

【課題】より設計自由度が高く汎用性の高い蛍光オリゴヌクレオチドプローブの提供。
【解決手段】ステム及びループを形成可能なオリゴヌクレオチドプローブであって、ステムの隣り合うヌクレオチド間に配置される少なくとも1個の式(1)のフルオロホアと、前記ステムの隣り合うヌクレオチド間の前記少なくとも1個のフルオロホアに対応する部位に配置されるユニットに連結される少なくとも1個のクエンチャーとを備えるプローブを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチドプローブ及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドプローブには、蛍光を自己生成するプローブがある。こうした蛍光自己生成プローブとして、モレキュラービーコンが知られている。モレキュラービーコンは、標的核酸をハイブリダイズすると検出可能な蛍光シグナルを発するオリゴヌクレオチドである(特許文献1)。モレキュラービーコンは、ステム・ループ構造を有しており、蛍光物質(フルオロホア)と蛍光発色阻害物質(クエンチャー)とを両末端に有する人工オリゴヌクレオチドである。モレキュラービーコンは、通常、単鎖の状態では、ステム領域が二重鎖を形成し、両末端に導入したフルオロホアとクエンチャーとが互いに近接する結果、フルオロホアの蛍光がクエンチャーにより消光されている。一方、プローブ中のループ領域の塩基配列と相補的であるオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションしたときには、フルオロホアとクエンチャーとが引き離されて蛍光シグナルが発せられる。このようなモレキュラービーコンをプローブとして用いることで、ターゲットを蛍光標識しなくても標的核酸とのハイブリダイゼーションを検出することができる。
【0003】
従来この種のモレキュラービーコンは、リアルタイムPCR等において増幅産物の検出に用いられるなど液相反応を主体に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−329209号公報
【発明の概要】
【0005】
モレキュラービーコンは、ステムの融解温度より十分低い温度では安定したステムを形成して消光するが、標的核酸が存在すると標的核酸とのハイブリダイゼーションによりステムが開いてフルオロホアに基づく蛍光を発する。しかしながら、このような標的核酸との挙動及び発色強度は、温度によって大きく変化する。すなわち、ステムの融解温度よりも低い温度条件下で標的核酸が存在するとモレキュラービーコンは標的核酸と二重鎖を形成して蛍光を発するが、温度が上がれば、モレキュラービーコンは、標的核酸から離れて消光してしまう。したがって、標的核酸非存在時の消光状態を確保してバックグラウンドを低下させるためには、ステムの融解温度を十分に高くして安定した消光状態を形成させるようにする必要がある。同時に、標的核酸とモレキュラービーコンとハイブリダイズをより確実に検出するには、モレキュラービーコンと標的核酸との融解温度をできるだけ高くしステムの融解温度に近づけることが好ましい。
【0006】
しかしながら、モレキュラービーコン全体の長さにはある程度制限があるため、ステムの融解温度を上げるためにステムを長くすると、プローブの設計自由度が低下し標的核酸の検出特異性が低下するおそれがあった。
【0007】
また、特に、多種類の標的核酸にそれぞれ対応して検出するモレキュラービーコンを固相担体に固定化したモレキュラービーコンアレイを考慮したとき、検出精度を確保するためには、ステムの融解温度を高めるとともに十分に長い標的核酸とハイブリダイズ可能に設計するのが好ましい。しかしながら、上記した同様の理由から、モレキュラービーコンでこれらの双方を同時に実現することは困難であった。
【0008】
すなわち、従来のモレキュラービーコンでは、バックグラウンドを抑制しつつ標的核酸に対する特異性を確保することは極めて困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、より設計自由度が高く汎用性の高い蛍光オリゴヌクレオチドプローブ及びその利用を提供することをその目的とする。
【0010】
本発明者らは、ステムの形成に伴うによる近接効果及び標的核酸との二重鎖形成による離反効果にのみ大きく依存して消光・発光するのでなく、ステムの形成によって近接されることで安定なスタック構造を形成できるようにフルオロホアとクエンチャーとを配置することにより、より確実に消光できしかもステム熱的安定性を向上できるという知見を得た。また、標的核酸との二重鎖形成時にフルオロホアを標的核酸との二重鎖内にくるようにすることで発光を増強できる場合があるという知見を得た。これらの知見に基づき本発明者らは、本発明を完成するに至った。本明細書の開示によれば、以下の手段が提供される。
【0011】
本明細書の開示によれば、ステム及びループを形成可能なオリゴヌクレオチドプローブであって、前記ステムの隣り合うヌクレオチド間に配置される以下の式(1)で表されるユニットに連結される少なくとも1個のフルオロホアと、
【化1】

(式中、Xはフルオロホアを表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。)
前記ステムの隣り合うヌクレオチド間の前記少なくとも1個のフルオロホアと対合可能な部位に配置される以下の式(2)で表されるユニットに連結される少なくとも2個のクエンチャーと、
【化2】

(式中、Yはクエンチャーを表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。)
を備える、プローブが提供される。なお、上記式(1)及び(2)において、ホスホジエステル結合におけるリン酸基(PO3-)は、非解離型(PO3H)であってもよい。
【0012】
本明細書の開示のオリゴヌクレオチドプローブにおいて、前記フルオロホアは、標的核酸と特異的にハイブリダイゼーションする塩基配列を構成するヌクレオチド鎖の内部に配置されていることが好ましい。本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブにおいては、前記フルオロホアは、シアニン系色素、メロシアニン系色素、縮合芳香族環系色素及びキサンテン系色素からなる群から選択されるいずれかであり、前記クエンチャーは、アゾ系色素からなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。より好ましくは、前記フルオロホアは、Cy3、Cy5、 チアゾールオレンジ、オキサゾールイエロー、ペリレン、フルオレッセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン及びテキサスレッドからなる群から選択されるいずれかであり、前記クエンチャーは、メチルレッド、アゾベンゼン及びメチルチオアゾベンゼンから選択されるいずれかであることが好ましい。
【0013】
また、前記フルオロホアは、縮合芳香環系色素であり、前記クエンチャーは、アントラキノン又はその誘導体であることが好ましく、前記フルオロホアはペリレンであり、前記クエンチャーはアントラキノンであることがより好ましい。
【0014】
また、本明細書の開示のオリゴヌクレオチドプローブは、一つの前記ステムと一つの前記ループを形成可能であることが好ましい。
【0015】
本明細書の開示によれば、標的核酸を検出するためのプローブ固定化体であって、固相担体と、前記標的核酸の少なくとも一部と特異的にハイブリダイゼーション可能な塩基配列を有し、前記固相担体に保持された上記いずれのオリゴヌクレオチドプローブと、を備える、固定化体が提供される。本明細書に開示のプローブ固定化体において、前記固相担体は、プレート状体であることが好ましい。また、本明細書に開示のプローブ固定化体は、複数の標的核酸をそれぞれ検出可能な複数のオリゴヌクレオチドプローブをアレイ状に備えることが好ましい。また、本明細書に開示のプローブ固定化体は、SNPs又は遺伝子変異の検出用であることが好ましい。
【0016】
本明細書の開示によれば、標的核酸の検出方法であって、本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブであって、前記標的核酸の少なくとも一部と特異的にハイブリダイゼーション可能な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプローブを用いて、前記オリゴヌクレオチドプローブの前記フルオロホアに基づくシグナルを検出する、方法が提供される。
【0017】
本明細書の開示の検出方法においては、複数の標的核酸に対応してハイブリダイゼーション可能な複数の前記オリゴヌクレオチドプローブを固相担体上に保持した固定化体を用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本明細書の開示のオリゴヌクレオチドプローブの概要をその一例を挙げて説明する図である。
【図2】本明細書の開示のオリゴヌクレチドプローブをモレキュラービーコン型プローブとした場合の一例を示す図である。
【図3A】チアゾールオレンジを備える各種オリゴヌクレオチドの吸収スペクトルを示す図である。
【図3B】チアゾールオレンジを備える各種オリゴヌクレオチドの蛍光スペクトルを示す図である。
【図4】ペリレンを備えるオリゴヌクレオチドの蛍光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書の開示は、蛍光オリゴヌクレオチドプローブに関し、さらに、当該プローブの固定化体、当該プローブを利用した標的核酸の検出方法に関する。本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブによれば、標的核酸が存在しないときには、ステムにおいて1個のフルオロホアと2個のクエンチャーが安定したスタック構造を形成して熱的安定性を高めるとともに安定的に消光する。一方、標的核酸が存在するときには、オリゴヌクレオチドプローブは、その中の標的核酸と特異的にハイブリダイゼーションする塩基配列を構成するヌクレオチド鎖(以下、プローブ配列ともいう。)において、標的核酸とハイブリダイゼーションする。この結果、ステムが崩壊し、フルオロホアはクエンチャーにより消光されなくなり蛍光を発する。
【0020】
本明細書の開示のオリゴヌクレオチドプローブによれば、ステムがフルオロホアとクエンチャーとにより熱的に安定化されているため、より高い融解温度を得やすくなり、しかもより長いあるいはより多様な標的核酸(プローブ配列)を選択することができる。このため、標的核酸の種類、ハイブリダイゼーション条件に応じて、オリゴヌクレオチドプローブをより高い自由度で設計できる汎用性に優れたオリゴヌクレオチドプローブが提供される。また、1個のフルオロホアに対して2個のクエンチャーを対合させることにより、バックグラウンドレベルをより低減してより高い感度で標的核酸を検出できる。
【0021】
さらに、フルオロホアとクエンチャーとを、従来のモレキュラービーコンのようにその両末端に位置させる必要がないため、固相担体への固定化が容易であり、固定化による消光や蛍光への影響を回避又は抑制できる。
【0022】
以下、本明細書に開示される手段の実施形態として、蛍光オリゴヌクレオチドプローブ、その固定化体及び標的核酸の検出方法について、適宜図面を参照しながら説明する。図1は、本明細書の開示の蛍光オリゴヌクレオチドプローブの一例としてのモレキュラービーコン型プローブの作用を示す図であり、図2は、モレキュラービーコン型プローブを固相担体上に備えた状態の一例を示す図である。
【0023】
なお、本明細書においてオリゴヌクレオチドは、検出しようとする天然、天然由来の及び非天然のDNAやRNAとハイブリダイゼーションする機能を発揮可能に天然あるいは非天然の塩基、ヌクレオチドやヌクレオシドを備えるものであればよい。また、オリゴヌクレオチドは、プローブとしての用途を考慮するとおおよそ10mer〜100mer程度を意味するが、特にその数を限定するものではなく100merを越える場合であっても、本明細書においてオリゴヌクレオチドプローブに含まれる。また、本明細書において標的核酸とは、採取源等特に限定するものではなく、検出しようとする天然、天然由来のあるいは非天然のDNA(1重鎖であっても2重鎖であってもよい。)やRNA(1重鎖であっても、2重鎖であってもよい)、あるいはこれらのキメラ及びハイブリットとすることができる。なお、天然由来のDNAとは、天然のDNAの塩基配列に基づいて遺伝子工学的、酵素合成にあるいは化学合成により作製したDNAを意味する。
【0024】
(オリゴヌクレオチドプローブ)
本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブは、図1及び図2に示すように、ステム及びループを形成可能であり、そのステムにおいてフルオロホアとクエンチャーとを備えている。
【0025】
本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブは、少なくとも1個のステムと少なくとも1個のループを形成可能であればよく、それぞれを複数個形成可能であってもよい。したがって、図1及び図2に示すように1個のステムと1個のループとを備えるいわゆるモレキュラービーコン型のプローブを形成可能であってもよいし、tRNAあるいはその類の構造体などの、複数のステム及び複数のループを形成可能であってもよい。後述するように、本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブは、最も簡易なモレキュラービーコン型を採ることでも、十分な検出特異性を得ることができる。
【0026】
なお、本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブがステム及びループを形成可能であるとは、互いに対合して少なくとも1個のステムを形成する一対のステム形成鎖を備えるとともに、当該ステム形成鎖によって形成されるステムに連続してループを形成するループ形成鎖を備えていることが意味している。本明細書において、単にステム又はループに言及するとき、これらが形成された状態を意図している。
【0027】
ステムを形成するステム形成鎖の長さは特に限定しないが、それぞれのステム形成鎖は、4以上9以下の塩基対を形成する鎖長とすることができる。モレキュラービーコン型プローブとしては、8以上40以下の塩基対を形成する鎖長とすることが好ましく、より好ましくは15以上30以下である。なお、本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブにおけるステムは、オリゴヌクレオチド鎖の両末端側で構成されるものに限定されない。一方のステム形成鎖がオリゴヌクレオチドプローブの末端以外の部分にあって他方のステム形成鎖が当該プローブ末端にあってもよいし、双方のステム形成鎖がプローブ末端以外の部分にあってもよい。
【0028】
また、ループを形成可能なループ鎖の長さも特に限定しないが、5以上40以下程度とすることができる。例えば、モレキュラービーコンとしては、8以上30以下とすることが好ましく、より好ましくは10以上20以下である。
【0029】
本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブは、少なくとも1個のステムの一方のステム形成鎖に少なくとも一つのフルオロホアを備え、他方のステム形成鎖に少なくとも2つのクエンチャーを備えており、一つのフルオロホアに対して2つのクエンチャーが対合可能に配置されている。すなわち、一つのフルオロホアと2つのフルオロホアからなる対合ユニットを、ステムにおいて形成可能となっている。対合ユニットの数や配置形態は特に限定されない。図1に示すように、対合ユニットはステムにおいて1個であってもよいし、2個以上であってもよい。また、対合ユニットは、例えば、図1に示すように、一方のステム形成鎖において一つのフルオロホアを備え、他方のステム形成鎖に2つのクエンチャーを備えて、対合ユニットを形成できるが、この対合ユニットに加えて、一方のステム形成鎖に複数のフルオロホアを備え、他方のステム形成鎖に複数のクエンチャー(複数のフルオロホアの2倍数)を備えて、フルオロホアの個数に対応する対合ユニットを形成してもよい。さらに、一方のステム形成鎖に一つの対合ユニットのフルオロホアを備え、他の一つの対合ユニットのクエンチャーを備えるようにしてもよい。
【0030】
こうした対合ユニットを形成可能とすることで、プローブの末端でなく、より内側で、5’末端または3’末端から3塩基相当部位あるいは4塩基相当部位より内側となるようなステム内位置でも感度よくターゲット配列を検出できるようになる。すなわち、オリゴヌクレオチドの配列中にあってもその配列に依存性を抑制できる。また、ターゲット配列がループからステムに及ぶような場合であっても、感度よく、ターゲット配列を検出できるようになる。
【0031】
一つのステムにおいて複数個の対合ユニットを形成可能とする場合、異種類のフルオロホアを用いることもできるが、好ましくは、同一波長域で検出可能な蛍光を発し、同程度に消光するフルオロホアの組み合わせを用いることが好ましい。より好ましくは、同一のフルオロホアを用いる。また、一つの対合ユニットにおいて2つのクエンチャーは消光可能である限り、同つであっても異なっているもよいが、同一であってもよい。
【0032】
一つの対合ユニットを構成する2つのクエンチャーは、一つのステム形成鎖に連続して備えられている。すなわち、2つのクエンチャー間には、ヌクレオチドを含んでいない。複数の対合ユニットを形成可能とする場合には、隣合う対合ユニットの同一のステム形成鎖上のフルオロホアの間には1以上のヌクレオチドがあってもよいし、なくてもよいが、フルオロホアの会合によるクエンチが起きる場合は、ヌクレオチドが1以上あるほうが好ましい。同様に、隣合う対合ユニットの同一のステム形成鎖上のクエンチャーの間には1以上のヌクレオチドがあってもよいし、なくてもよい。介在されるヌクレオチドにおける塩基は、特に限定しないで、プリン系塩基及び/又はピリミジン系塩基から選択されてもよいし、人工的に合成された塩基であってもよい。
【0033】
また、対合するステム形成鎖において、フルオロホア及びクエンチャーは、いずれもオリゴヌクレオチドプローブの5’末端及び3’末端よりも外側に連結されるものではない。フルオロホア及びクエンチャーは、最も末端側にある場合であっても、最末端のヌクレオチドよりも内側(最末端が5’末端の場合にはより3’側に、同3’末端の場合にはより5’末端側に)に備えられている。
【0034】
フルオロホアは、上記のとおりステム内に配置されるが、好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブのプローブ配列の内部に配置される。フルオロホアは、その種類により標的核酸とのハイブリダイゼーションにより二重鎖を形成したとき、その二重鎖内にインターカレーションされることで、蛍光が増強されることがあるからである。このようなフルオロホアについては後述する。
【0035】
フルオロホア及びクエンチャーは、また、隣接するヌクレオチドの塩基の種類やさらにそのヌクレオチドに隣接する遠位のヌクレオチドの塩基種類も特に限定されない。
【0036】
フルオロホアは、ステム形成鎖のヌクレオチド間に式(1)で表されるユニットにXとして含まれている。フルオロホア(X)は、ユニットの一部としてあるいはY以外のユニット部分に連結されて、結果としてステムに備えられる。式(1)における、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を意味している。R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を意味している。ただし、R2は、R1のポリアルキレン鎖の5’側の酸素原子から2つ目の炭素原子に結合していることが好ましい。Zは、直接の結合であってもよいし、フルオロホアとの連結基であり特に限定されない。例えば、−NHCO−、NHCS−、CONH−、−O−等あるいはこれらの基を含むものが挙げられる。
【0037】
上記R1〜R2の置換基としては、未置換の又はハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基で当業者で置換された炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4のアルキル基又はアルコキシ基;未置換又はハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基等で置換された炭素原子2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜4のアルケニル基若しくはアルキニル基;水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基又はカルボキシ基等が挙げられる。さらに、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基又はカルボキシ基が挙げられる。R1の置換基は、アルキレン鎖のいずれの炭素原子に連結されていてもよいが、R2と同様に、5’の酸素から2つ目又は3つ目の炭素原子に連結されることが好ましい。
【0038】
ステムにおいて対合されるフルオロホア及びクエンチャーに関し、式(1)及び式(2)における、R1におけるアルキレン鎖の炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
例えば、式(1)又は式(2)で表されるユニットとして以下のものが挙げられる。
【0040】
【化3】

【化4】

【化5】

【0041】
式(1)においてXはフルオロホアを表す。フルオロホアは、シアニン系色素、メロシアニン系色素、アクリジン系色素、クマリン系色素、エチジウム系色素、フラビン系色素、縮合芳香環系色素、キサンテン系色素等が挙げられ、これらから適宜選択して使用できる。なかでも、シアニン系色素、クマリン系色素、エチジウム系色素、縮合芳香族環色素、キサンテン系色素が好ましく用いることができる。より好ましくは、Cy3,Cy5,チアゾールオレンジ、オキサゾールイエロー、ペリレン、フルオレッセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン及びテキサスレッドからなる群から選択されるいずれかである。なかでもチアゾールオレンジなどのシアニン系色素をもちいることが好ましい。フルオロホアとして使用する化合物は、式(1)で表されるユニットに連結されるために適宜誘導体化されていてもよいし、クエンチャーとの対合を考慮して連結基との間に、置換されていてもよいアルキレン鎖、アルケニレン基、アルキニレン基が付与されていてもよい。また、式(1)で表されるユニットに対して連結されるフルオロホア上の原子は特に限定されない。
【0042】
インターカレーションにより蛍光が増強するフルオロホアとしては、チアゾールオレンジ、オキサゾールオレンジ、ペリレン等が挙げられる。これらのフルオロホアは、プローブ配列内部に配置させてインターカレートさせることが好ましい。一方、フルオロホアやR1、R2の組み合わせにより、フルオロホアの蛍光強度がインターカレートによって減少する場合には、フルオロホアはインターカレートしないようにし、反対にクエンチャーがインターカレートするようにビーコンを設計する方が好ましい。
【0043】
式(1)において連結されるフルオロホア(X)としては以下ものが挙げられる。なお、以下の例の各種化合物は例示であり、水素原子はいずれも適宜置換基で置換されていてもよい。また、連結基への連結部分(点線部分)において、置換されていてもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基を介在させてもよい。
【0044】
【化6】

【化7】

【0045】
クエンチャーは、ステム形成鎖のヌクレオチド間に以下の式(2)で表されるユニットに含まれている。すなわち、クエンチャー(Y)は、ユニットの一部としてあるいはY以外のユニット部分に連結されて、結果としてステムに備えられる。式(2)における、R1、R2及びZは、式(1)におけるのと同義である。また、R1〜R2の置換基も式(1)におけるのと同義である。
【0046】
式(2)においてYはクエンチャーを表す。クエンチャーとしては、使用するフルオロホアとを本明細書に開示におけるスタック構造の形成により消光できるものであれば特に限定されないが、例えば、アゾベンゼン及びその誘導体が挙げられる。これらはいずれも光異性化する化合物であるが、-N=N-の存在により消光作用を奏するものと考えられる。クエンチャーとしては好ましくは、メチルレッド、アゾベンゼン及びメチルチオアゾベンゼンから選択されるいずれかである。典型的なアゾ系クエンチャーは、ペリレンなどの多環縮合系のフロオロホアとの関係において、フルオロホアのHOMOがクエンチャーのHOMOより低いタイプのクエンチャーで、換言すれば還元力の強いクエンチャーであるということができる。
【0047】
また、クエンチャーとしては、アントラキノン骨格を有する化合物が挙げられる。アントラキノン骨格を有する化合物としては、アントラキノンの他、アントラキノンのベンゼン環を構成する炭素原子に結合する1個又は2個以上の水素原子を、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基等から選択される1種又は2種以上の官能基で置換した各種のアントラキノン誘導体が挙げられる。各種のアントラキノン誘導体は、例えば、東京化成株式会社等からから容易に入手できる。例えば、アントラキノン誘導体としては、天然には、コチニール色素、アリザリン等のアカネ色素、ラック色素の化合物が挙げられる。アントラキノン誘導体としては、フルオロホアよりも低いLUMOを持つアントラキノン誘導体ならば、どのような誘導体でも使用することが出来るが、ニトロ基やカルボキシル基など、LUMOのエネルギー準位を上げない電子吸引性の置換基が好ましい。好ましくはアントラキノンである。アントラキノンなど典型的なアントラキノン系のクエンチャーは、ペリレンなどの縮合芳香環系のフロオロホアとの関係において、フルオロホアのLUMOがクエンチャーのLUMOより高いという条件を満たしたクエンチャーで、酸化力の強いクエンチャーということができる。
【0048】
また、クエンチャーは、消光能力の観点から、その極大吸収波長が、対を形成するフルオロホアの極大吸収波長との差が150nm以内であることが好ましい。クエンチャーの極大吸収波長とフロオロホアの極大吸収波長との差は、より好ましくは100nm以内であり、さらに好ましくは50nm以内である。さらに、クエンチャーの極大吸収波長は、フルオロホアの極大吸収波長よりも短波長側にあることが好ましい。用いるフルオロホアとの関係で、クエンチャーの極大吸収長を制御することで、クエンチャーを最適化することができる。
【0049】
クエンチャーの極大吸収波長の制御(長波長側又は短波長側へのシフト)は、例えば、クエンチャーの基本骨格に対して電子吸引性基や電子供与性基などを導入するなどによって可能である。例えば、後段の〔化8B〕に示すように、メチルレッド等のアゾベンゼン系骨格のアゾ基に対してオルト位又はパラ位に電子吸引性基(例えば、ニトロ基、ハロゲン)や電子供与性基(例えば、メトキシ基)を適宜導入することが考えられる。
【0050】
クエンチャーとして使用する化合物は、式(2)で表されるユニットに連結されるために適宜誘導体化されていてもよいし、クエンチャーとの対合を考慮して連結基との間に置換されていてもよいアルキレン鎖が付与されていてもよい。また、クエンチャーの連結基との連結部分は、適宜選択される。
【0051】
式(2)において連結されるクエンチャー(Y)としては以下のものが挙げられる。なお、以下の例の各種化合物は例示であり、水素原子はいずれも適宜置換基で置換されていてもよい。また、連結基への連結部分(点線部分)において、置換されていてもよいアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基を介在させてもよい。また、式(2)で表されるユニットに対して連結されるフルオロホア上の原子は特に限定されない。
【0052】
【化8A】

【0053】
【化8B】

【0054】
【化9】

【0055】
なお、本明細書に開示におけるフルオロホアとクエンチャーとの組合せは、以下に示す蛍光消光作用に基づいて選択することができる。一般に蛍光消光は、1)フェルスター型の励起エネルギー移動、2)電子移動型の二種類がある。フェルスター型のエネルギー移動に基づく蛍光消光では、フルオロホアの蛍光スペクトルとクエンチャーの吸収スペクトルが重なっている必要がある。従ってフェルスター型の励起エネルギー移動を利用する場合は、このような条件を満足するようなフルオロホアとクエンチャーの組み合わせを選ぶのが好ましい。なおフェルスター型ならばフルオロホアとクエンチャーの距離が2〜10nm離れていても消光させることが出来るが、本明細書に開示ではフルオロホアとクエンチャーが接触しているので、蛍光−吸収スペクトルの条件さえ満たしていればフェルスター型で十分に消光可能である。
【0056】
一方2)の電子移動型では、フルオロホアとクエンチャーそれぞれの最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギー順位の関係が重要である。フルオロホアの蛍光のメカニズムは、HOMOからLUMOに励起された電子が再びHOMOに戻る際に、励起エネルギーを蛍光という形で放出することに基づく。フルオロホアのHOMOにある二つの電子のうち一つが光励起されてLUMOに移動すると、フルオロホアのHOMOが空になる。クエンチャーのHOMOのエネルギー順位がフルオロホアのHOMOより高い場合には、空になったフルオロホアのHOMOに、クエンチャーのHOMOにある電子が移動する。すると励起されたフルオロホアの電子は、元のHOMOに戻れなくなるので、蛍光を発することが出来ない。またクエンチャーのLUMOがフルオロホアのHOMOより低い場合は、励起されてLUMOに遷移した電子がクエンチャーのLUMOに移動するため、元のHOMOに戻れなくなり、蛍光を発することが出来ない。すなわち電子移動型での蛍光消光は、1)フルオロホアのHOMOがクエンチャーのHOMOより低い、あるいは2)フルオロホアのLUMOがクエンチャーのLUMOより高いという条件を満たした組み合わせが好ましい。更に電子移動は短距離でしか起きないので、フルオロホアとクエンチャーは接触していることが望ましい。本明細書に開示ではフルオロホアとクエンチャーが接触(スタッキング)しているので、上記の条件さえ満たした組み合わせならば電子移動型で十分に消光可能である。なお、本明細書に開示のフルオロホアとクエンチャーの組み合わせは、ほとんどが電子移動型の消光を起こすための条件を満たしている。
【0057】
なお、アントラキノン又はその誘導体によるペリレン等の縮合芳香環系フルオロホアのクエンチは、励起電子がアントラキノンのLUMOへ移動することで起きる。すなわち“電子トラップ”によるクエンチである。電子移動型のクエンチ現象は、本来的に電子が移動しやすいことのほか、アントラキノン系クエンチャーと縮合芳香環系フルオロホアとによる対合形成が強固であることによって一層電子移動が促進されていることが推論される。アントラキノン系クエンチャーと縮合芳香環系フルオロホアとの対合の数が増加することにより、それに応じてこうした電子移動型のトラップ現象が一層強化されるとともに、フルオロホアから対を形成していない方のクエンチャーへ天然の塩基対を通じて電子が移動しやすくなっていることでさらに強化されるものと考えられる。一方、アゾ系のクエンチャーは、フルオロホアの励起でHOMOに生じた正孔(ホール)に、アゾ系のクエンチャーのHOMOに存在する電子が移動することによるクエンチ、すなわち“ホールトラップ”型である。ホールよりも電子の方が移動度が大きいため、“電子トラップ”型のペリレン−アントラキノンの方が効率よくクエンチすることができる。
【0058】
フルオロホア及びクエンチャーを導入することは、例えば、通常の固相合成法において、ヌクレオチドに対応するアミダイト誘導体に代えてこの種のユニットを導入なアミダイド誘導体を用いることによって可能となる。例えば、D−トレオニールや3−アミノ1,2−プロパンジールなどのアミノアルキルジオール類のアミノ基をアリルオキシカルボニル基などの適当な保護基で保護した上、一方の水酸基をジメトキシトリチルクロリド等で保護し、その後、他方の水酸基に2−シアノエチルN,N,N,N−テトライソプロピルホスホロジアミダイドを導入する。そしてこのアミダイト体に対して、フルオロホア又はクエンチャーを導入してアミダイトモノマー化してもよい。例えば、アゾベンゼン系化合物、ペリレン系化合物については、例えば、ネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法で、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)誌2003年125巻2217−2223頁記載の方法で、テトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)誌2007年第48巻6759−6762頁記載の方法を適用することができる。こうしたモノマーを取得した場合には、従来公知のDNA合成法、例えばネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法にしたがって、所望の部位にフルオロホア又はクエンチャーを連結したユニットを備えるオリゴヌクレオチドを合成することができる。
【0059】
また、フルオロホアやクエンチャーは、アリルオキシカルボニル基等でアミノ基を保護した上記アミダイト体を所望の位置に備えるオリゴヌクレオチドを合成後に導入してもよい。例えば、アミノ基を保護したままのユニットを備えたオリゴヌクレオチドをCPG担体上においてアミノ基を脱保護した後、当該アミノ基と反応可能にカルボン酸基やイソシアネート基を導入したあるいは保持するフルオロホアやクエンチャーを反応させることで、フルオロホア等を導入してもよい。
【0060】
以上説明した本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブは、蛍光シグナルを自己生成するプローブであるため、標的核酸を蛍光物質等で標識する必要がないことのほか、標的核酸の設計自由度が高く、高い特異性での検出が可能となる利点がある。さらに、ステム内にフルオロホア及びクエンチャーを備えることから、固相担体への固定化の容易性ほか固定化が発光・消光に及ぼす影響を回避又は抑制することができる。
【0061】
本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブは、従来モレキュラービーコンが適用されるリアルタイムPCRなどの液相での標的核酸の検出のほか、遺伝子発現パターン、疾患分類、疾病等の原因遺伝子解析、遺伝子診断などの遺伝子発現モニタリング、SNPなどの多型検出、各種変異の検出に有利である。特に、多型や変異などの検出に有利であり、さらに網羅的な多型や変異の検出に有利である。特に、本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブのフルオロホア及びクエンチャーを備えるステムは、フルオロホア及びクエンチャーを含まない以外は同一のステムよりも熱的安定性が高くなり、Tmが上昇する。このため、長い配列を標的核酸とするプローブ配列を備えることができ、特異性の高いDNA解析が可能となる。また、複数の好ましくは数十以上の多数のSNPや変異部位などを有する標的核酸を同時に検出可能なモレキュラービーコンプローブを固定化するアレイにあっては、多数の標的核酸に区別するのに十分に長いプローブ配列を備える必要がある。従来のモレキュラービーコンの場合、ステムを長くするとループをこのような場合には、本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブは、ステムのTmが高くしかもフルオロホアを含んだ範囲をプローブ配列とすることができ、結果としてプローブ配列をより長く確保できる点において有利である。
【0062】
(プローブ固定化体)
本明細書に開示のプローブ固定化体は、固相担体と、前記標的核酸と特異的にハイブリダイゼーション可能な塩基配列を有し、本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブと、を備えることができる。本明細書に開示のプローブ固定化体においては、モレキュラービーコンをプローブとして用いることが好ましい。
【0063】
固相担体は、例えばビーズであってもよいし平板であってもよく、材質は特に限定されないが、ガラス製又はプラスチック製の固相担体を用いることができる。好ましくは、固相担体は平板状であり、2種類以上のオリゴヌクレオチドプローブが一定の配列で固定されたアレイである。アレイは、多数個のオリゴヌクレオチドプローブを固定でき、同時に網羅的に各種の多型や変異を検出するのに都合がよい。また、アレイは、一つの固相担体上に複数個の区画された個別のアレイ領域を備えていてもよい。これらの個別のアレイ領域は、それぞれ同一のセットのオリゴヌクレオチドプローブが固定化されていてもよいし、それぞれ別のセットのオリゴヌクレオチドプローブが固定化されていてもよい。
【0064】
オリゴヌクレオチドプローブの固定化形態は特に限定されない。共有結合性であってもよいし非共有結合性であってもよい。オリゴヌクレオチドプローブは、従来公知の各種の方法で固相担体表面に固定化することができる。また、固相担体表面に対しては適当なリンカー配列を備えていてもよい。本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブは、その末端にフルオロホアとクエンチャーとを備えていないため、固相担体への固定化を従来と同様の手法で容易に行うことができる。
【0065】
このようなプローブ固定化体の用途は特に限定されないで、遺伝子発現パターン、疾患分類、疾病等の原因遺伝子解析、遺伝子診断などの遺伝子発現モニタリング、SNPなどの多型検出、各種変異の検出に有利である。特に、多型や変異などの検出に有利であり、さらに網羅的な多型や変異の検出に有利である。
【0066】
(標的核酸の検出方法)
本明細書に開示の標的核酸の検出方法は、本明細書に開示のオリゴヌクレオチドプローブであって、標的核酸と特異的にハイブリダイゼーション可能な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプローブを用いて、前記モレキュラービーコンの前記フルオロホアに基づくシグナルを検出する方法とすることができる。本明細書に開示の検出方法においては、オリゴヌクレオチドプローブはモレキュラービーコンであることが好ましく、より好ましくは、複数のオリゴヌクレオチドプローブ(典型的にはモレキュラービーコン)を固相担体に固定化した固定化体を用いることが好ましい。
【0067】
本明細書に開示の検出方法においては、例えば、以下のように実施することができる。まず、複数の標的核酸と特異的にハイブリダイゼーション可能なモレキュラービーコンを固相担体に固定化したアレイを準備する。その後、標的核酸を含む可能性のある核酸試料(典型的には、血液や組織から採取した生体試料から核酸を抽出して得られたもの又はさらに一定条件下PCR等で増幅したものなど)を、所定組成のハイブリダイゼーション液の存在下にアレイ上のモレキュラービーコンに供給する。所定のハイブリダイゼーション条件下、ハイブリダイゼーション反応を実施する。ハイブリダイゼーション温度は、ステムのTm及びプローブ配列と標的核酸とのTmのいずれよりも低い温度とすることが好ましい。予め定めた間経過後、アレイを洗浄し、核酸試料中に存在した標的核酸とのハイブリダイゼーションをフルオロホアの発する蛍光シグナルを検出することによって行う。蛍光シグナルの検出は、蛍光スキャナー等により行うことができる。取得した蛍光シグナルに基づき、標的核酸の検出、同定、定量等に必要な解析を行う。
【0068】
以下、本明細書の開示を実施例を挙げて具体的に説明するが、以下の実施例は本明細書に開示を限定するものではない。
【実施例1】
【0069】
(アリルオキシカルボニル((allyloxy)carbonyl )基で保護したD-トレオニノール(D-threoninol)のアミダイトモノマー化 )
本実施例では、フルオロホア又はクエンチャーを連結するユニット(炭素数3)のアミダイトモノマー(化合物A)を以下のスキームに従い合成した。300mlのナスフラスコにD−トレオニノール(0.99g,9.41mmol)をテトラヒドロフラン(THF)75mlに溶解させ、トリエチルアミン15mlを加え、攪拌した。次に、75mlのTHFに溶解させておいたクロロギ酸アリル(1.01ml,9.51mmol)を、氷浴中で上記のTHF溶液に滴下した。15分後に氷浴を除いて室温に戻し、そのまま攪拌を続け、THF溶液を滴下し終わってから1時間30分後に反応を停止した。この後、溶媒をエバポレーターで留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 クロロホルム:メタノール=3:1)で精製し、化合物1−1を得た。
【0070】
【化10】

【0071】
次に、得られた化合物1(1.72g、9.09mmol)を200mlの二口ナスフラスコに採取し、窒素下で脱水ピリジン30mlを加えて溶解させ、これにN,N,ジイソプロピリエチルアミン(DIPEA:1.54mL、9.09mmol)を加えて攪拌した。次に、50mlの二口ナスフラスコにジメトキシトリチルクロリド(DMT−Cl:3.08g、9.09mmol)とジメチルアミノピリジン(DMAP:0.14g、1.14mmol)を加え、さらに溶媒として脱水ジクロロメタン10mlを加えて溶解させた。えこのジクロロメタン溶液を、上記のピリジン溶液に氷浴中でゆっくりと滴下した。15分ほど氷浴下で攪拌した後に氷浴を取り除いて室温で攪拌を続け、ジクロロメタン溶液滴下後4時間30分後に反応を停止した。溶媒をエバポレーターで留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=66:33:3)で精製し、化合物1−2を得た。
【0072】
化合物1−2(0.74g,1.51mmol)を二口ナスフラスコに採取し、脱水アセトニトリル8mlで3回共沸して水分を除去した後、脱水アセトニトリル30mlを加えて溶解させ、これに更に2−シアノエチルN,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロジアミダイト(2−cyanoethyl N,N,N¢,N¢ −tetraisopropylphosphordiamidite:0.54g,1.79mmol)を加えて攪拌した。別の二口ナスフラスコに1H−テトラゾール(1H−tetrazole:0.137g、1.51mmol)を採取し、脱水アセトニトリル8mlで3回共沸して水分を除去した後、脱水アセトニトリル15mlを加えて溶解させた。この1H−テトラゾール溶液を、上記の化合物1−2のアセトニトリル溶液に氷浴下で滴下し、15分程度攪拌した後に氷浴を除き、室温に戻して更に攪拌を続けた。この後およそ1時間30分程度で反応を停止した。この後溶媒をエバポレーターで留去した後、残ったオイル状の化合物に酢酸エチルを加えて溶解した。この酢酸エチル溶液を、分液ロートを用いて重炭酸ナトリウムの飽和水溶液で2回振とうし、続いて塩化ナトリウムの飽和水溶液で同様に2回振とうした。この後、硫酸マグネシウムを加えて水分を除いてから酢酸エチルをエバポレーターで留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=50:50:3)精製し、化合物Aを得た。
【実施例2】
【0073】
(アリルオキシカルボニル((allyloxy)carbonyl )基で保護した3−アミノ1,2−プロパンジオール(3-amino-1,2-propanediol)のアミダイトモノマー化)
本実施例では、フルオロホア又はクエンチャーを連結するユニット(炭素数2)のアミダイトモノマー(化合物B)を以下のスキームに従い合成した。
【0074】
【化11】

【0075】
200mlのナスフラスコに3−アミノ1,2−プロパンジオール(3−amino−1,2−propanediol)(1.0g,11mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)30mlに溶解させ、トリエチルアミン15mlを加え、攪拌した。次に、20mlのDMFに溶解させておいたクロロギ酸アリル(1.4ml,11mmol)を、氷浴中で上記のDMF溶液に滴下した。15分後に氷浴を除いて室温に戻し、そのまま攪拌を続け、DMF溶液を滴下し終わってから2時間後に反応を停止した。この後、溶媒をエバポレーターで留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 クロロホルム:メタノール=3:1)で精製し、化合物1−3を得た。原料として化合物1−3を使用する以外は実施例1と同様の方法で化合物1−4続いて化合物Bを得た。
【0076】
以下に示す化合物Cはネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法で、化合物Dはジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)誌2003年125巻2217−2223頁記載の方法で、化合物Eはテトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)誌2007年第48巻6759−6762頁記載の方法で得た。
【0077】
【化12】

【実施例3】
【0078】
(チアゾール・オレンジ(TO−1、TO−2)の合成)
本実施例では、フルオロホアとしてのチアゾールオレンジ誘導体を以下のスキームに従い、合成した。
【0079】
【化13】

【0080】
200mlのナスフラスコに2−(メチルチオ)ベンゾチアゾール(2.04g,11.3mmol)を秤り取り、5mlのエタノールを加えて溶解させ、この溶液にヨードメタン(1.5ml、24.1mmol)を加えてから65℃で3時間加熱還流した。生成した沈殿を吸引ろ過で回収し、化合物2−1(0.52g)を得た。
【0081】
次に200mlのナスフラスコにブロモ酢酸(1.94g、14.0mmol)を秤取り、酢酸エチル10mLを加えて溶解させた。これにレピジン(2ml、15.1mmol)を加え、室温で2時間30分攪拌した。生成した沈殿を吸引ろ過で回収し、化合物2−2(0.41g)を得た。上記と同様に次に200mlのナスフラスコにブロモ酪酸(8.08g、52.8mmol)を秤取り、酢酸エチル10mlを加えて溶解させた。これにレピジン(7ml、52.8mmol)を加え、80℃で終夜攪拌した。生成した沈殿を吸引ろ過で回収し、化合物2−3(4.85g)を得た。
【0082】
チアゾールオレンジTO−1は、化合物2−1(0.42g,2mmol)と化合物2−2(0.41g,2mmol)を脱水エタノール10mlを加えて溶解させ、60℃で5分間還流した後にトリエチルアミン(0.27ml,2mmol)を加え、赤色に変化した後に攪拌しながら室温に戻した。この赤色の反応溶液にジエチルエーテル150mlを加えて生成した沈殿を吸引ろ過で回収し、チアゾールオレンジ(TO−1,0.59g)を得た。チアゾールオレンジTO−2は、化合物2−3を用いる以外は同様の手法で得た。
【実施例4】
【0083】
(オリゴヌクレオチドの合成)
本実施例では、以下に示すクエンチャーが導入されたオリゴヌクレオチド及びフルオロホアが導入されたオリゴヌクレオチドをそれぞれ合成した。ただし、PEはペリレンを表し、MRはメチルレッドを表し、Azoはアゾベンゼンを表す。
【0084】
【表1】

【0085】
(アゾベンゼン、メチルレッド、ペリレンを導入したオリゴヌクレオチドの合成)
クエンチャーとしてのアゾベンゼン、メチルレッド、あるいはペリレンを導入したDNAの合成は、ABI394型DNA合成機を使用し、対応するホスホロアミダイトモノマー(化合物C,D,E)と4つの天然の塩基に対応する市販のホスホロアミダイトモノマーを用いてネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法で合成・精製した。
【0086】
(チアゾールオレンジ(TO−1、TO−2)およびFITCのオリゴヌクレオチドへの導入)
チアゾールオレンジ(TO−1、TO−2)とFITCのオリゴヌクレオチドへの導入は、アリルオキシカルボニル基で保護したホスホロアミダイトモノマーを経由した以下のスキームに示す方法で行った。
【0087】
【化14】

【0088】
ABI394型DNA合成機を使用し、D−トレオニノールのアミノ基をアリルオキシカルボニル基で保護したホスホロアミダイトモノマーA、4つの天然の塩基に対応する市販のホスホロアミダイトモノマー、および既述のアミダイトモノマーC,D,Eを適宜用いて、コントロールドポアグラス(CPG)担体上に所定の配列を持つDNAを伸長させた(化合物3−1)。このCPG担体(10mg,0.45μmol)を、フィルターを装着しているプラスチックのシリンジに秤取り、アセトニトリル1mLで3回、続いてジクロロメタン1mLで3回洗浄した。次にPd(Ph(5.2mg,4.5μmol)を溶解させたジクロロメタン溶液500μLにN−メチルアニリン48.8μL(450μmol)を加え、これを上述のCPG担体(化合物4−1)に加えて35℃で3時間反応させることで、アリルオキシカルボニル基のみをCPG担体上から脱保護した(化合物3−2)。
【0089】
次にチアゾールオレンジTO−1(10mg、45μmol)とpyridinium para−toluenesulfonate(PPTS:11.3mg,45μmol)を400μLのDMFに溶解させ、これにbenzotriazol−1−yl−oxytripyrrolidinophosphonium hexafluorophosphate(PyBOP:59mg,112μmol)のDMF溶液100μlを加えたものを、上記のCPG担体(化合物3−2)が入ったシリンジに加え、3日間室温で振とうした。この後、反応溶液をろ過で除き、続いて0.1MのPPTSのDMF溶液1mLをシリンジに加えて1分間振とうしてCPG担体を洗浄し、更にDMF1mLで3回、続いてジクロロメタン1mlで3回洗浄して、TO−1を導入したCPG担体を得た(化合物3−3)。
【0090】
続いて、ネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法でCPG担体からDNAを切り出し、高速液体クロマトグラフィーで同誌同頁に記載の方法で目的とするDNAを分離精製した(化合物3−4)。
【0091】
チアゾールオレンジTO−2を導入したDNAは、TO−1の代わりにTO−2を用いる以外は上記と同様の方法で得た。
【0092】
FITC導入DNAは、FITC(14.02mg、18μmol)のDMF溶液(500μL)にDIPEA(6.12μl,18μmol)を加え、これをアリルオキシカルボニル基のみを脱保護したCPG担体(10mg,0.36μmol)(化合物3−2)に加え三日間攪拌した後、TO導入DNAと同様の操作を行うことで調製した。
【0093】
化合物Aに代えて化合物Bを用いること以外は上記と全く同様の手法で、TO−1,TO−2,あるいはFITCを導入して連結基R1(C2:炭素数2)を含むオリゴヌクレオチドを合成した(化合物3−5)。
【実施例5】
【0094】
(クエンチャーとの組み合わせによる蛍光消光の確認)
各種のフルオロホアがクエンチャーとの“塩基対形成”によって消光することを確認するため、実施例4で合成したオリゴヌクレオチドを用いて蛍光および吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルおよび蛍光スペクトル測定のための溶液の条件は以下の通りである。
【0095】
Fa配列のオリゴヌクレオチド:5μmol/l
Qb配列あるいはNbのオリゴヌクレオチド:5μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
【0096】
なお、フルオロホアを含む各種オリゴヌクレオチドFaの標的核酸として、Faと相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド(クエンチャー含まず)(Nb)を別途用意した。結果を図3A及び図3Bに示す。
【0097】
図3Aに、Fa−C2−TO1(一本鎖)とFa−C3−TO1/Qb−MR二重鎖それぞれの20℃における吸収スペクトルを示し、図3Bに、蛍光スペクトルを示す。図3Aに示すように、チアゾールオレンジに基づく515nmの吸収がQb−MRとの二重鎖形成で大きく減少した。この事実は、クエンチャーであるメチルレッドとチアゾールオレンジがスタッキング(積層構造)していることを示している。またFa−C2−TO1/Qb−MR二重鎖の融解温度Tmは54℃と、チアゾールオレンジとメチルレッドの入っていない天然のDNA二重鎖(5’−GGTATCGCAATC−3’/3’−CCATAGCGTTAG−5’)のTm(48℃)より高かった。この事実もチアゾールオレンジとメチルレッドの強固なスタッキングを支持している。同様の吸収スペクトル変化とTmの上昇は、Fa−C2−TO2/Qb−MR,Fa−C3−TO1/Qb−MR、およびFa−C3−TO2/Qb−MRでも観察された。
【0098】
蛍光スペクトルも図3Bに示すように(511nm励起)、一本鎖状態のFa−C2−TO1と比べてFa−C2−TO1/Qb−MR二重鎖からのチアゾールオレンジに基づく533nmの蛍光強度は1/10に低下した。一方、Fa−C2−TO1を相補オリゴヌクレオチド(Nb)と二重鎖形成させたところ、一本鎖状態のFa−C2−TO1と比べて533nmの蛍光強度が20℃で2倍に増強した。従ってこの組み合わせでビーコンを作成すると、20倍程度のシグナル/ノイズ比が期待できることがわかった。
【0099】
次にペリレンを含むFa−C3−PEを、Qb−MRあるいはQb−Azoと二重鎖形成させた。結果を図4に示す。図4に示すように、425nmで励起した場合の461nmの蛍光強度は、図4に示したように20℃で一本鎖のFa−C3−PEよりもQb−MRで1/15に、Qb−Azoでは1/30に低下した。一方、Fa−C3−PEをNbと二重鎖形成させたところ、一本鎖のFa−C3−PEと同程度の蛍光が観察された。従ってペリレンの場合アゾベンゼン組み合わせると、20℃前後で30倍程度のシグナル/ノイズ比が期待できることがわかった。
【実施例6】
【0100】
実施例5の結果に基づいて、以下の表2に示すモレキュラービーコン型のオリゴヌクレオチドプローブを設計し合成した。各種モレキュラービーコンは、実施例1〜3で合成又は準備した各種アミダイドモノマー及び各種フルオロホア及びクエンチャーを用いて実施例4に記載の方法に準じて合成した。なお、各種配列も併せて示す。
【0101】
【表2】

【0102】
【化15】

*下線部がステム形成鎖である。
なお比較例のMB0Fに用いた5’末端のFITCと3’末端のMRは、本明細書に開示のビーコンへの導入に使用したリンカーと異なり、以下の構造を持つ。
【化16】

【0103】
これらのビーコンのうちMB1-C2-TO1-MR及びMB2-C2-TO1-MRに標的核酸であるMBtを加える前後での蛍光強度の変化を観察した。蛍光スペクトル測定のための溶液の条件は以下の通りとした。結果を表3及び表4に示す。
【0104】
ビーコンの濃度:0.2μmol/l
標的核酸Nbの濃度:0.4μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
【0105】
<MB1−C2−TO1−MR>
MB1−C2−TO1−MRにMB−tを加える前後での520nmでの励起における531nmのチアゾールオレンジからの蛍光強度を以下の表に示す。
【0106】
【表3】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:high;走査速度:200 nm/min
【0107】
表3に示すように、このモレキュラービーコン型プローブは、広い温度範囲にわたってバッググランド値(MB−t添加前)はおおよそ安定し、シグナル強度比も広い温度で安定化していた。後述する比較例との対比から、このモレキュラービーコン型プローブはステムの熱安定性に優れる傾向があることがわかった。また、シグナル強度比も安定化されているため、SNPや変異などの変異を検出するのに都合がよいことがわかった。
【0108】
<MB2−C2−TO1−MR>
MB2−C2−TO1−MRにMBtを加える前と後での、510nmでの励起における531nmのチアゾールオレンジからの蛍光強度を以下に示す。
【0109】
【表4】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:high;走査速度:200 nm/min
【0110】
表4に示すように、このモレキュラービーコン型プローブは、30℃〜50℃にかけてバッググランド(MB−t添加前)はおおよそ安定し、シグナル強度比もこの範囲で安定化する傾向があった。後述する比較例との対比から、このモレキュラービーコン型プローブはステムの熱安定性に優れる傾向があることがわかった。また、シグナル強度比も安定化されているため、SNPや変異などの変異を検出するのに都合がよいことがわかった。
【0111】
<比較例:MB0F>
比較例として、MB−contにMBtを加える前後での494nmでの励起における520nmのFITCからの蛍光強度を以下に示す。
【0112】
【表5】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0113】
表5に示すように、従来のモレキュラービーコンは、温度上昇とともにバッググランド(MB−t添加前)が上昇し、40℃以上で急激に増加した。一方、ハイブリダイゼーションによる発光(MB−t添加後)は50℃以上で急激に減少した。この結果、40℃以上では、急激にシグナル強度比が低下した。SNPや変異などを検出するには相対的に高いハイブリダイゼーション温度が必要とされることから、SNPや変異などの検出には不向きであることがわかった。また、このような不安定性から固相反応では一層のバラツキが推測され、固相反応にも不向きであることがわかった。
【0114】
<MB1−C3−PE−Azo>
MB1−C3−PE−AzoにMBtを加える前後での425nmでの励起における460nmのペリレンからの蛍光強度を以下の表に示す。
【0115】
【表6】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0116】
<MB2−C3−PE−Azo>
MB2−C3−PE−AzoにMBtを加える前後での425nmでの励起における460nmのペリレンからの蛍光強度を以下の表に示す。
【0117】
【表7】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0118】
表6及び表7に示すように、ハイブリダイゼーション温度の違いによる蛍光強度比の変化は抑制されていることがわかった。
【実施例7】
【0119】
以下に示す化合物Anthは、ケミカル・コミュニケーションズ(Chemical Communications)誌2006巻5062−5064に記載の方法で得た。
【化17】

【0120】
(4-[4-メチルチオフェニルアゾ]安息香酸を含むアミダイトモノマーの合成)
以下のスキームに従い、4-[4-メチルチオフェニルアゾ]安息香酸を含むアミダイトモノマーを合成した。まず、パラ-ニトロソ安息香酸エチル(4-1)を、ジャーナル・オブ・ジ・オーガニック・ケミストリー(Journal of the Organic Chemistry)誌1970年第35巻505−508頁に記載の方法で合成した。このニトロソ化合物4−1を二口ナスフラスコに入れ窒素置換し、p−メチルチオアニリン4−2を加え、更に酢酸を溶媒として加えて、遮光しながら終夜反応させた。この反応溶液に蒸留水を加えた後に、酢酸エチルを加えて分液漏斗で十分に振とうした。続いて酢酸エチル層を蒸留水、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒の酢酸エチルを留去した。得られたものを更にシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、化合物4−3を得た(収率50%)。
【0121】
得られた化合物4−3にエタノールと2Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えて溶解し、遮光しながら17時間攪拌した。この後塩酸を加えてpHを5程度にしてから酢酸エチルを加えて分液漏斗で十分に振とうした。続いて、酢酸エチル層を蒸留水、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒の酢酸エチルを留去し、パラ-ニトロソ安息香酸4−4を得た(収率99%以上)。次に、アゾベンゼンの代わりにパラ-ニトロソ安息香酸4−4を用いる以外はネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法に従って、アミダイトモノマー4−5を得た。
【0122】
【化18】

【0123】
(Cy3を含むアミダイトモノマーの合成)
以下のスキームに従い、Cy3を含むアミダイトモノマーを合成した。まず、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)誌2001年第125巻361−362ページ記載の方法で、Cy3(5−1)を得た。次に、アゾベンゼンの代わりにCy3(5-1)を用いる以外はネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法に従って、アミダイトモノマー5−2を得た。
【化19】

【0124】
続いて以下の表6に示すモレキュラービーコン型のオリゴヌクレオチドプローブを設計し合成した。各種モレキュラービーコンは、実施例1〜3で合成又は準備した各種アミダイドモノマー及び各種フルオロホア及びクエンチャーを用いて実施例4に記載の方法に準じて合成した。なお、各種配列も併せて示す。
【0125】
【表8】

【0126】
なお、表8にある略号は、以下の図に示したとおりである。なお実施例6の表2に用いた略号も、以下の図と全く同じである。
【化20】

【0127】
これらのビーコンにつき、標的核酸であるMBtを加える前後での蛍光強度の変化を観察した。蛍光スペクトル測定のための溶液の条件は以下の通りとした。結果を表9〜表15に示す。
ビーコンの濃度:0.2μmol/l
標的核酸Nbの濃度:0.4μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
【0128】
1.ペリレン−(4-[4-メチルチオフェニルアゾ]安息香酸による消光−発光の確認
<MB1−C3−PE−S>
MB1−C3−PE−SにMBtを加える前後での425nmでの励起における460nmのペリレンからの蛍光強度を以下の表に示す。
【0129】
【表9】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0130】
<MB2−C3−PE−S>
MB2−C3−PE−SにMBtを加える前後での425nmでの励起における460nmのペリレンからの蛍光強度を以下の表に示す。
【0131】
【表10】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0132】
表9及び10に示すように、ペリレンに対して4-[4-メチルチオフェニルアゾ]安息香酸を用いることで、標的核酸の供給により消光−発光現象を確認できた。したがって、ペリレンをフルオロホアとして、4-[4-メチルチオフェニルアゾ]安息香酸をクエンチャーとして用いることができることがわかった。
【0133】
2.ペリレン−アントラキノンによる消光−発光の確認
<MB1−C3−PE−Q>
MB1−C3−PE−QにMBtを加える前後での425nmでの励起における460nmのペリレンからの蛍光強度を以下の表に示す。
【0134】
【表11】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0135】
<MB2−C3−PE−Q>
MB2−C3−PE−QにMBtを加える前後での425nmでの励起における460nmのペリレンからの蛍光強度を以下の表に示す。
【0136】
【表12】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0137】
<MB3−C3−PE−Q>
MB3−C3−PE−QにMBtを加える前後での425nmでの励起における460nmのペリレンからの蛍光強度を以下の表に示す。
【0138】
【表13】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0139】
表11〜13に示すように、ペリレンに対してアントラキノンを用いることで、標的核酸の供給により消光−発光現象を確認できた。したがって、ペリレンをフルオロホアとして、アントラキノンをクエンチャーとして用いることができることがわかった。特に、表13に示すように、ペリレン及びアントラキノンをモレキュラービーコンの対合するステム鎖に2個づつ備えることで、安定した消光と強い発光を確認できた。以上の結果から、ビーコンが閉じた状態での消光が、シグナル強度比の向上に寄与していることが判る。これは対を形成しているペリレンとアントラキノン同士だけで蛍光消光が起きているのではなく、対を形成していない方のアントラキノンへ天然の塩基対を通じて電子が移動したことで蛍光消光が起きたものと考えられる。すなわち、ステム部分に導入した2つのペリレン−アントラキノンの対はそれぞれ独立に機能しているのではなく、安定した消光に相乗的に寄与していることがわかった。
【0140】
3.Cy3−MRによる消光−発光の確認
<MB1−C3−Cy3−MR>
MB1−C3−Cy3−MRにMBtを加える前後での546nmでの励起における563nmのCy3からの蛍光強度を以下の表に示す。
【0141】
【表14】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0142】
<MB2−C3−Cy3−MR>
MB2−C3−Cy3−MRにMBtを加える前後での546nmでの励起における563nmのCy3からの蛍光強度を以下の表に示す。
【0143】
【表15】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0144】
表14及び15に示すように、Cy3に対してメチルレッドを用いることで、標的核酸の供給により消光−発光現象を確認できた。したがって、Cy3をフルオロホアとして、メチルレッドをクエンチャーとして用いることができることがわかった。
【実施例8】
【0145】
(MRNO2を含むアミダイトモノマーの合成)
以下のスキームに従い、MRNO2を含むアミダイトモノマーを合成した。4−アミノ−3−ニトロ安息香酸を酢酸と水の混合溶媒に溶解し、これに亜硝酸ナトリウムの塩酸酸性溶液を加え15−20℃で15分間攪拌し、さらに氷水を加えることでジアゾニウム塩の水溶液を得た。次にN,N−ジメチルアニリンの塩酸酸性溶液を氷浴上で0-5℃に保ちつつ、上記ジアゾニウム塩の水溶液を滴下することで、4’−ジメチルアミノ―2−ニトロアゾベンゼン―4−カルボン酸(6−1)を得た。次に、アゾベンゼンの代わりに4’−ジメチルアミノ―2−ニトロアゾベンゼン―4−カルボン酸(6−1)を用いる以外はネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法に従って、アミダイトモノマー(6−2)を得た。
【化21】

【0146】
続いて以下の表16に示すモレキュラービーコン型のオリゴヌクレオチドプローブを設計し合成した。各種モレキュラービーコンは、実施例1〜3で合成又は準備した各種アミダイドモノマー及び各種フルオロホア及びクエンチャーを用いて実施例4に記載の方法に準じて合成した。なお、各種配列も併せて示す。
【表16】

【0147】
表16にある略号は、以下の図に示したとおりである。なお、表2と表8に用いた略号も、以下の図と全く同じである。
【0148】
【化22】

【0149】
これらのビーコンにつき、標的核酸であるMBtあるいはMBt2を加える前後での蛍光強度の変化を観察した。蛍光スペクトル測定のための溶液の条件は以下の通りとした。結果を表17〜表20に示す。
ビーコンの濃度:0.2μmol/l
標的核酸Nbの濃度:0.4μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
【0150】
<MB1−C3−Cy3−MRNO2>
MB1−C3−Cy3−MRNO2にMB−tを加える前後での546nmでの励起における566nmのCy3からの蛍光強度を以下の表に示す。
【0151】
【表17】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0152】
MB1−C3−Cy3−MRNO2にMB−t2を加える前後での546nmでの励起における566nmのCy3からの蛍光強度を以下の表に示す。
【表18】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0153】
<MB2−C3−Cy3−MRNO2>
MB2−C3−Cy3−MRNO2にMB−tを加える前後での546nmでの励起における566nmのCy3からの蛍光強度を以下の表に示す。
【0154】
【表19】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0155】
MB2−C3−Cy3−MRNO2にMB−t2を加える前後での546nmでの励起における566nmのCy3からの蛍光強度を以下の表に示す。
【0156】
【表20】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500、励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min
【0157】
表17〜20に示すように、Cy3に対してMRNO2を用いることで、標的核酸の供給により消光−発光現象を確認できた。したがって、Cy3をフルオロホアとして、MRNO2をクエンチャーとして用いることができることがわかった。また、Cy3の極大吸収波長は546nmであり、MRNO2は513nmであり、その差は33nmであった。
さらに、表17と表19のように標的核酸がビーコンの蛍光色素側の鎖と二重鎖を形成しても、表18と表20のようにビーコンのクエンチャー側の鎖と二重鎖を形成しても、消光−発光現象を確認できた。
【実施例9】
【0158】
本実施例では、フルオロホア:クエンチャー(1:2)の会合を形成可能なモデル二重鎖につき、会合に伴う消光能を評価した。まず、以下の各種類の修飾DNAを合成し、クエンチャー色素を二つ連続して導入した場合の消光の程度を観察した。
蛍光鎖 1a-Cy3 5’-GGTATC-Cy3-GCAATC-3’
消光鎖 1b-MR 3’-CCATAG-MR-CGTTAG-5’
1b-NMR 3’-CCATAG-NMR-CGTTAG-5’
1b-2 MR 3’-CCATAG-MR-MR-CGTTAG-5’
1b- 2NMR 3’-CCATAG-MR-MR-CGTTAG-5’
1b-MR-NMR 3’-CCATAG-MR-NMR-CGTTAG-5’
1b-NMR-MR 3’-CCATAG-NMR-MR-CGTTAG-5’
【0159】
【化23】

【0160】
次に、蛍光鎖1a-Cy3を0.2 μM、消光鎖を蛍光鎖の2倍過剰(0.4μM)の濃度になるよう、バッファー溶液([NaCl] = 100 mM、pH 7.0 10 mM リン酸緩衝液)に溶解し、546nmでの励起における564nmのCy3からの蛍光強度を測定した。結果を表21に示す。
【0161】
【表21】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:5 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:high;走査速度:200 nm/min;測定温度:20℃
【0162】
表21に示すように、一つのフルオロホアに対して同一あるいは異なるクエンチャーを二つ連続的に導入することで、フルオロホア(Cy3)の蛍光を、より効率的に消光することができることがわかった。
【実施例10】
【0163】
本実施例では、ダブルクエンチャー型ビーコンによる標的核酸検出の感度について評価した。実施例8の結果に基づき、以下の構成のビーコンを設計・合成した。
【0164】
(ビーコン)
dqMB1-cy3-NMR 5’-TG-Cy3-GTCCTTGAGAAAGGGCGAC-NMR-NMR-CA-3’
dqMB2-cy3-NMR 5’-TGG-Cy3-TCCTTGAGAAAGGGCGA-NMR-NMR-CCA-3’
Mb1-cy3-NMR 5’-TG-Cy3-GTCCTTGAGAAAGGGCGAC-NMR-CA-3’
Mb2-cy3-NMR 5’-TGG-Cy3-TCCTTGAGAAAGGGCGA-NMR-CCA-3’
(標的核酸)
Sba 3’-ACCAGGAACTCTTTCCCG-5’
Sbb 3’-GAACTCTTTCCCGCTGGT-5’
【0165】
これらのビーコンにつき、標的核酸であるSbaあるいはSbbを加える前後での蛍光強度の変化を観察した。蛍光スペクトル測定のための溶液の条件は以下の通りとした。546nmでの励起における564nmの蛍光強度から算出した結果を表22に示す。
(蛍光スペクトル測定条件)ビーコンの濃度:0.2μmol/l;標的核酸の濃度:0.4μmol/l;塩化ナトリウム:0.1mol/l;リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
【0166】
【表22】

(蛍光測定の条件)分光蛍光光度計:日本分光製FP-6500、;励起バンド幅:3 nm;蛍光バンド幅:3 nm;レスポンス:0.1 sec;感度:middle;走査速度:200 nm/min;測定温度:20℃
【0167】
以上のように、フルオロホアとクエンチャーのステム内の位置に依存せず、良好なS/N比を示した。特に、感度の低かったMb2-cy3-NMRにおいて、ダブルクエンチャー型にすることで(dbMB2-cy3-NMR)、S/N比の顕著な改善効果があることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステム及びループを形成可能なオリゴヌクレオチドプローブであって、
前記ステムの隣り合うヌクレオチド間に配置される以下の式(1)で表されるユニットに連結される少なくとも1個のフルオロホアと、
【化24】

(式中、Xはフルオロホアを表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。)
前記ステムの隣り合うヌクレオチド間の前記少なくとも1個のフルオロホアに対応する部位に配置される以下の式(2)で表されるユニットに連結される少なくとも2個のクエンチャーと、
【化25】

(式中、Yはクエンチャーを表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。)
を備える、プローブ。
【請求項2】
前記フルオロホアは、標的核酸と特異的にハイブリダイゼーションする塩基配列を構成するヌクレオチド鎖の内部に配置される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記フルオロホアは、シアニン系色素、メロシアニン系色素、縮合芳香環系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素及びアクリジン系色素からなる群から選択されるいずれかであり、前記クエンチャーは、アゾ系色素からなる群から選択されるいずれかである、請求項1又は2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記フルオロホアは、Cy3、Cy5、チアゾールオレンジ、オキサゾールイエロー、ペリレン、フルオレッセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、クマリン及びアクリジンから選択されるいずれかであり、前記クエンチャーは、メチルレッド、アゾベンゼン及びメチルチオアゾベンゼンから選択されるいずれかである、請求項3に記載のプローブ。
【請求項5】
前記フルオロホアは、縮合芳香環系色素であり、前記クエンチャーは、アントラキノン又はその誘導体である、請求項3に記載のプローブ。
【請求項6】
前記フルオロホアはペリレンであり、前記クエンチャーはアントラキノンである、請求項5に記載のプローブ。
【請求項7】
一つの前記ステムと一つの前記ループを形成可能である、請求項1〜6のいずれかに記載のプローブ。
【請求項8】
標的核酸を検出するためのプローブ固定化体であって、
固相担体と、
前記標的核酸の少なくとも一部と特異的にハイブリダイゼーション可能な塩基配列を有し、前記固相担体に保持された請求項1〜7のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブと、
を備える、固定化体。
【請求項9】
前記固相担体は、プレート状体である、請求項8に記載の固定化体。
【請求項10】
複数の前記標的核酸をそれぞれ検出可能な複数のオリゴヌクレオチドプローブを備える、請求項8又は9に記載の固定化体。
【請求項11】
SNP又は遺伝子変異の検出用である、請求項8〜10のいずれかに記載の固定化体。
【請求項12】
標的核酸の検出方法であって、
請求項1〜7のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブであって、前記標的核酸の少なくとも一部と特異的にハイブリダイゼーション可能な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプローブを用いて、前記オリゴヌクレオチドプローブの前記フルオロホアに基づくシグナルを検出する、方法。
【請求項13】
複数の標的核酸に対応してハイブリダイゼーション可能な複数の前記オリゴヌクレオチドプローブを固相担体上に保持した固定化体を用いる、請求項12に記載の方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−135823(P2011−135823A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298160(P2009−298160)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、文部科学技術省、科学技術総合研究委託事業「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成 分析・診断医工学による予防早期医療の創生」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】