説明

オリゴヌクレオチド修飾粒子をベースとするバイオバーコード

【課題】サンプル中の1つまたは複数のタンパク質、たとえば抗体の有無を検出するためのスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】本発明は、サンプル中の1つまたは複数の標的分析物、たとえば抗体などのタンパク質の有無を検出するためのスクリーニング方法、組成物、およびキットに関する。特に、本発明は、1溶液中で複数のタンパク質構造またはその他の標的分析物を検出するために生化学的バーコードとしてリポーター・オリゴヌクレオチドを利用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中の1つまたは複数のタンパク質、たとえば抗体の有無を検出するためのスクリーニング方法に関する。特に、本発明は、1溶液中で複数のタンパク質構造を検出するために生化学的バーコードとしてリポーター・オリゴヌクレオチドを利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2001年3月28日出願の米国特許出願第09/820,279号の一部継続であり、本願明細書に援用する2000年3月28日出願の米国仮特許出願第60/192,699号、および2001年11月13日出願の米国仮特許出願第60/350,560号の恩典を主張する。本出願で報告される研究は、NSF、ARO、およびNIHの助成金によって一部資金を得ている。したがって、米国政府は、本出願に記載の発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
タンパク質の検出は、分子生物学の研究と医学的用途の双方にとって重要である。現在、蛍光、質量分析法、ゲル電気泳動、レーザー・スキャニングおよび電気化学をベースとする診断法が、さまざまなタンパク質構造を同定するために利用可能である1〜4。血液細胞の遺伝学的なタンパク質変異体を同定し、疾患を診断し、組織中で分子プローブを突き止め、分子を精製し、または分離工程を行うため、抗体を用いた反応が広く用いられる。医学的診断用途(たとえば、マラリアおよびHIV)の場合、エライザ、ウエスタンブロッティングなどの抗体検査、および間接的蛍光抗体検査は、単一の標的タンパク質構造を同定するために極めて有用である6、7。複数の抗体の存在について迅速かつ同時にサンプルをスクリーニングすることは、研究と臨床応用のいずれにおいても有益と思われる。しかしながら、前述の関連プロトコルを用いる均一系アッセイ条件下で1溶液中のいくつかのタンパク質構造を同時に検出することは困難で費用がかかり、多大な時間を必要とする。
【特許文献1】米国特許第4,650,770号
【特許文献2】2002年12月28日出願の米国特許出願第10/034,451号
【特許文献3】2002年12月28日出願の国際特許出願第PCT/US01/50825号
【特許文献4】米国特許第5,472,881号
【特許文献5】米国特許出願第09/760,500号
【特許文献6】米国特許出願第09/820,279号
【特許文献7】2001年1月12日出願の国際特許出願番号第PCT/US01/01190号
【特許文献8】2001年3月28日出願の国際特許出願番号第PCT/US01/10071号
【特許文献9】1999年6月25日出願の米国特許出願第09/344,667号
【特許文献10】2000年6月26日出願の米国特許出願第09/603,830号
【特許文献11】2001年1月12日出願の米国特許出願第09/760,500号
【特許文献12】2001年3月28日出願の米国特許出願第09/820,279号
【特許文献13】2001年8月10日出願の米国特許出願第09/927,777号
【特許文献14】1997年7月21日出願の国際特許出願第PCT/US97/12783号
【特許文献15】2000年6月26日出願の国際特許出願第PCT/US00/17507号
【非特許文献1】サムブルックら(Sambrook et al.)、Molecular Cloning:A Laboratory Mannual(第2版、1989年)
【非特許文献2】ビー ディー ヘームスおよびエス ジェー ヒギンス(B.D.Hames and S.J.Higgins)編、Gene Probes 1(IRL Press、New York、1995年)
【非特許文献3】シュミット ジー(Schmid、G.)(編)Clusters and Colloids(VCH、Weinheim、1994年)
【非特許文献4】ハヤット エム エー(Hayat、M.A.)(編)Colloidal Gold:Principles,Methods,and Applications(Academic Press、San Diego、1991年)
【非特許文献5】マサール アール(Massart,R.)、IEEE Taransactions On Magnetics、第17巻、1247ページ(1981年)
【非特許文献6】アフマディー ティー エスら(Ahmadi,T.S.et al.)、Science、第272巻、1924ページ(1996年)
【非特許文献7】ヘングライン エイら(Henglein,A.et al.)、J.Phys.Chem.、第99巻、14129ページ(1995年)
【非特許文献8】カーチス エイ シーら(Curtis,A.C.et al.)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、第27巻、1530ページ(1988年)
【非特許文献9】ウェラー(Weller)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、第32巻、41ページ(1993年)
【非特許文献10】ヘングライン(Henglein)、Top.Curr.Chem.、第143巻、113ページ(1988年)
【非特許文献11】ヘングライン(Henglein)、Chem.Rev.、第89巻、1861ページ(1989年)
【非特許文献12】ブルス(Brus)、Appl.Phys.A.、第53巻、465ページ(1991年)
【非特許文献13】バーンスマン(Bahncmann)、Photochemical Conversion and Storage of Solar Energy(ペリゼッティ(Pelizetti)およびスキアヴェロ(Schiavello)編、1991年)、251ページ
【非特許文献14】ワン(Wang)およびヘロン(Herron)、J.Phys.Chem.、第95巻、525ページ(1991年)
【非特許文献15】オルシャフスキーら(Olshavsky et al.)、J.Am.Chem.Soc.、第112巻、9438ページ(1990年)
【非特許文献16】ウチダら(Uchida et al.)、J.Phys.Chem.、第95巻、5382ページ(1992年)
【非特許文献17】ホワイトサイズ(Whitesides)、Proceedings of the Robert A.Welch Foundation 39th Conference On Chemical Research Nanophase Chemistry、テキサス州ヒューストン、109〜121ページ(1995年)
【非特許文献18】ムシックら(Mucic et al.)、Chem.Commun.、555〜557ページ(1996年)
【非特許文献19】バーウェル(Burwell)、Chemical Technology、第4巻、370〜377ページ(1974年)
【非特許文献20】マッテウッチ(Matteucci)およびカルザース(Caruthers)、J.Am.Chem.Soc.、第103巻、3185〜3191ページ(1981年)
【非特許文献21】グラバールら(Grabar et al.)、Anal.Chem.、第67巻、735〜743ページ
【非特許文献22】ヌッゾら(Nuzzo et al.)、J.Am.Chem.Soc.、第109巻、2358ページ(1987年)
【非特許文献23】アラーラ(Allara)およびヌッゾ(Nuzzo)、Langmuir、第1巻、45ページ(1985年)
【非特許文献24】アラーラ(Allara)およびトンプキンス(Tompkins)、J.Colloid Interface Sci.、第49巻、410〜421ページ(1974年)
【非特許文献25】イラー(Iler)、The Chemistry Of Silica、第6章、(Wiley、1979年)
【非特許文献26】ティモンズ(Timmons)およびズィスマン(Zisman)、J.Phys.Chem.、第69巻、984〜990ページ(1965年)
【非特許文献27】ソリアガ(Soriaga)およびハバード(Hubbard)、J.Am.Chem.Soc.、第104巻、3937ページ(1982年)
【非特許文献28】ハバード(Hubbard)、Acc.Chem.Res.、第13巻、177ページ(1980年)
【非特許文献29】ヒックマンら(Hickman et al.)、J.Am.Chem.Soc.、第111巻、7271ページ(1989年)
【非特許文献30】マオズ(Maoz)およびサギフ(Sagiv)、Langmuir、第3巻、1045ページ(1987年)
【非特許文献31】マオズ(Maoz)およびサギフ(Sagiv)、Langmuir、第3巻、1034ページ(1987年)
【非特許文献32】ワッセルマンら(Wasserman et al.)、Langmuir、第5巻、1074ページ(1989年)
【非特許文献33】エルテコバ(Eltekova)およびエルテコフ(Eltekov)、Langmuir、第3巻、951ページ(1987年)
【非特許文献34】レックら(Lec et al.)、J.Phys.Chem.、第92巻、2597ページ(1988年)
【非特許文献35】エフ エクスタイン(F.Eckstein)(編)Oligonucleotides and Analogues、第1版(Oxford University Press、New York、1991年)
【非特許文献36】クリセイら(Chrisey et al.)、Nucleic Acids Res.、第24巻、3031〜3039ページ(1996年)
【非特許文献37】クリセイら(Chrisey et al.)、Nucleic Acids Res.、第24巻、3040〜3047ページ(1996年)
【非特許文献38】ツィンマーマン(Zimmermann)およびコクス(Cox)、Nucleic Acids Res.、第22巻、492ページ(1994年)
【非特許文献39】ボトムリーら(Bottomly et al.)、J.Vac.Sci.Technol.A、第10巻、591ぺージ(1992年)
【非特許文献40】ヘグナーら(Hegner et al.)、FEBS Lett.、第336巻、452ページ(1993年)
【非特許文献41】バッセルら(Bassell et al.)、J.Cell Biol.、第126巻、863〜876ページ(1994年)
【非特許文献42】ブラウン−ハウランドら(Braun−Howland et al.)、Biotechniques、第13巻、928〜931ページ(1992年)
【非特許文献43】ブラウンら(Braun et al.)、Nature、第391巻、775ページ(1998年)
【非特許文献44】フレンス(Frens)、Nature Phys.Sci.、第241巻、20ページ(1973年)
【非特許文献45】グラバール(Grabar)、Anal.Chem.、第67巻、735ページ(1995年)
【非特許文献46】エクスタイン エフ(Eckstein F.)(編)Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach(IRL Press、Oxford、1991年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、サンプル中の1つまたは複数のタンパク質、たとえば抗体の有無を検出するためのスクリーニング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、サンプル中の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる粒子複合体プローブを提供するステップであって、該DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、該粒子に結合した該オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合した該オリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、該DNAバーコードは、該粒子に結合した該オリゴヌクレオチドの少なくとも一部および該特異結合性相補体が結合した該オリゴヌクレオチドとハイブリダイズされるステップ;
分析物と粒子複合体プローブ間の特異結合性相互作用を可能にし、分析物の存在下で凝集性複合体を生成するのに有効な条件下で、サンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップ;
凝集性複合体を単離し、該凝集性複合体を脱ハイブリダイズして該DNAバーコードを遊離するのに有効な条件下に該凝集性複合体を供するステップ;
DNAバーコードを単離するステップ;および
DNAバーコードの存在を検出するステップ、からなる方法を要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、サンプル中の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、該DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、該粒子に結合した該オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合した該オリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有するステップ;
粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドに対するDNAバーコードのハイブリダイゼーションを可能にし、分析物と分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとの間の特異結合性相互作用を可能にするのに有効な条件下で、サンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップであって、前記接触が分析物の存在下で凝集性複合体の生成をもたらすステップ;
凝集性複合体を単離し、該凝集性複合体を脱ハイブリダイズしてDNAバーコードを遊離するのに有効な条件下に凝集性複合体を供するステップ;
DNAバーコードを単離するステップ;および
DNAバーコードの存在を検出するステップ、からなる方法を要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる粒子複合体プローブであって、DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、DNAバーコードは、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズされる粒子複合体プローブを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3の記載の発明において、粒子がナノ粒子からなることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3の記載の発明において、粒子が金属、半導体、絶縁体、または磁性ナノ粒子であることを要旨とする。
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項3の記載の発明において、粒子が金ナノ粒子であることを要旨とする。
本発明は、1溶液中で複数のタンパク質構造を検出するために生化学的バーコードとしてオリゴヌクレオチドを利用する方法、組成物およびキットに関する。この手法は、オリゴヌクレオチド鎖によって機能化されたタンパク質認識要素と、金ナノ粒子の凝集をもたらすハイブリダイゼーション事象により金ナノ粒子の物理的性質(たとえば、光学的、電気的、機械的)を著しく変化させうるというこれまでの知見とを、うまく利用している8〜12。個々の調整可能なハイブリダイゼーション特性と融解特性とを有する様々なオリゴヌクレオチド配列、および、融解の際には変化して多重分析物アッセイにおける一連の分析物を脱符号化(decode)するナノ粒子に関係する物理的特徴によって、各タンパク質認識要素を符号化(encode)することが可能である、というのが概略的な構想である。
【0010】
本発明の一実施形態では、サンプル中の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対し特異的に結合する相補体(特異結合性相補体)が結合したオリゴヌクレオチドからなる粒子複合体プローブを提供するステップであって、DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部はDNAバーコードの第1の部分と相補的な配列を有し、特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドはDNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、DNAバーコードは、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズされるステップ;
分析物と粒子複合体プローブ間の特異結合性相互作用を可能にし分析物の存在下で凝集性複合体を生成するのに有効な条件下で、サンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップ;および
凝集体生成が起きたか否かを観察するステップ、からなる方法を提供する。
【0011】
標的分析物の存在下では、粒子複合体プローブと標的分析物との間の結合性相互作用の結果として凝集体が生成する。この凝集体は、任意の好適な手段によって検出することができる。
【0012】
本発明の別の実施形態では、サンプル中の1つまたは複数の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および特定の標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる1つまたは複数のタイプの粒子複合体プローブを提供するステップであって、(i)DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、(ii)粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、(iii)特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、(iv)各タイプの粒子複合体プローブ中のDNAバーコードは、異なっており、かつ特定の標的分析物の識別子としての役割を果たす配列を有するステップ;
分析物と粒子複合体プローブとの間の特異結合性相互作用を可能にし、分析物の存在下で凝集性複合体を生成するのに有効な条件下で、サンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップ;
凝集性複合体を単離するステップ;および
凝集性複合体を分析し、異なる配列を有する1つまたは複数のDNAバーコードの存在を判定するステップ、からなる方法を提供する。
【0013】
各タイプの粒子複合体プローブは、特定の標的分析物のためにあらかじめ定められたリポーター・オリゴヌクレオチドすなわちバーコードを含む。標的分析物の存在下では、ナノ粒子複合体と標的分析物との間の結合性相互作用の結果としてナノ粒子凝集体が生成される。これらの凝集体を、任意の好適な手段、たとえば熱変性によって単離し分析し、1つまたは複数の異なるタイプのリポーター・オリゴヌクレオチドの存在を検出することが可能である。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態では、サンプル中の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる粒子複合体プローブを提供するステップであって、DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、DNAバーコードは、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズされるステップ;
分析物と粒子複合体プローブとの間の特異結合性相互作用を可能にし、分析物の存在下で凝集性複合体を生成するのに有効な条件下で、サンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップ;
凝集性複合体を単離し、凝集性複合体を脱ハイブリダイズしてDNAバーコードを遊離するのに有効な条件下に凝集性複合体を供するステップ;
DNAバーコードを単離するステップ;および
DNAバーコードの存在を検出するステップ、からなる方法を提供する。
【0015】
標的分析物の存在下では、ナノ粒子複合体と標的分析物との間の結合性相互作用の結果としてナノ粒子凝集体が生成される。これらの凝集体を単離し、凝集体を脱ハイブリダイズしてリポーター・オリゴヌクレオチドを遊離するのに有効な条件下に供する。次いで、リポーター・オリゴヌクレオチドを単離する。望ましい場合には、PCR増幅を含む任意の好適な手段によってリポーター・オリゴヌクレオチドを増幅することができる。分析物の検出は、DNAチップなどの任意の好適な手段によってリポーター・オリゴヌクレオチドすなわちバイオバーコードの存在を確認することにより間接的に行なわれる。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態では、サンプル中の1つまたは複数の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および特定の標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる1つまたは複数のタイプの粒子複合体プローブを提供するステップであって、(i)DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、(ii)粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、(iii)特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、(iv)各タイプの粒子複合体プローブ中のDNAバーコードは、異なっており、かつ特定の標的分析物の識別子としての役割を果たす配列を有するステップ;
分析物と粒子複合体プローブとの間の特異結合性相互作用を可能にし、1つまたは複数の分析物の存在下で凝集性複合体を生成するのに有効な条件下でサンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップ;
凝集性複合体を単離し、凝集性複合体を脱ハイブリダイズしてDNAバーコードを遊離するのに有効な条件下に凝集性複合体を供するステップ;
DNAバーコードを単離するステップ;および
さまざまな配列を有する1つまたは複数のDNAバーコードの存在を検出するステップであって、特定のDNAバーコードの同定がサンプル中の特定の標的分析物の存在を示すステップ、からなる方法を提供する。
【0017】
1つまたは複数の標的分析物の存在下では、粒子複合体プローブと標的分析物との間の結合性相互作用の結果として凝集体が生成される。これらの凝集体を単離し、凝集体を脱ハイブリダイズしてリポーター・オリゴヌクレオチドを遊離するのに有効な条件下に供する。次いで、リポーター・オリゴヌクレオチドを単離する。望ましい場合には、PCR増幅を含む任意の好適な手段によってリポーター・オリゴヌクレオチドを増幅することができる。分析物検出は、DNAチップなどの任意の好適な手段によってリポーター・オリゴヌクレオチドまたはバイオバーコードの存在を確認することにより間接的に行われる。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態では、サンプル中の1つまたは複数の抗体の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および特定の標的抗体に対するハプテンが結合したオリゴヌクレオチドからなる1つまたは複数のタイプの粒子複合体プローブを提供するステップであって、(i)DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、(ii)粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、(iii)特定の標的抗体に対するハプテンが結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、(iv)各タイプの粒子複合体プローブ中のDNAバーコードは、異なっており、かつ特定の標的抗体の識別子としての役割を果たす配列を有するステップ;
抗体と粒子複合体プローブとの間の特異結合性相互作用を可能にし、1つまたは複数の標的抗体の存在下で凝集性複合体を生成するのに有効な条件下でサンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップ;
凝集性複合体を単離し、凝集性複合体を脱ハイブリダイズしてDNAバーコードを遊離するのに有効な条件下に凝集性複合体を供するステップ;
DNAバーコードを単離するステップ;および
さまざまな配列を有する1つまたは複数のDNAバーコードの存在を検出するステップであって、特定のDNAバーコードの同定が、特定の標的抗体の存在を示すステップ、からなる方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、in situで粒子複合体プローブを生成する必要のあるサンプル中で標的分析物の存在を検出するための方法も提供する。本発明の一実施形態では、標的分析物の存在を検出するための方法は、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有するステップ;
粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドに対するDNAバーコードのハイブリダイゼーションを可能にし、分析物と分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとの間の特異結合性相互作用を可能にするのに有効な条件下で、サンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップであって、前記接触が分析物の存在下で凝集性複合体の生成をもたらすステップ;および
凝集体生成が起きたか否かを観察するステップ、からなる。
【0020】
本発明の別の実施形態では、サンプル中の1つまたは複数の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した1つまたは複数のタイプの粒子、1つまたは複数のタイプのDNAバーコード、および特定の標的分析物に対する特異結合性相補体が結合した1つまたは複数のタイプのオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、(i)各タイプのDNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、(ii)粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、1つまたは複数のタイプのDNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、(iii)特異結合性相補体が結合した各タイプのオリゴヌクレオチドは、あるタイプのDNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、(iv)各タイプのDNAバーコードは、特定の標的分析物に関する識別子としての役割を果たし、別のタイプのDNAバーコードとは異なる配列を有するステップ;
粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したあるタイプのオリゴヌクレオチドに対する各タイプのDNAバーコードのハイブリダイゼーションを可能にし、特定の標的分析物と特定の標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したあるタイプのオリゴヌクレオチドとの間の特異結合性相互作用を可能にするのに有効な条件下で、サンプルを、オリゴヌクレオチドが結合した1つまたは複数のタイプの粒子、1つまたは複数のタイプのDNAバーコード、および特定の標的分析物に対する特異結合性相補体が結合した1つまたは複数のタイプのオリゴヌクレオチドと接触させるステップであって、前記接触が、1つまたは複数の特定の標的分析物の存在下で凝集性複合体の生成をもたらすステップ;
凝集性複合体を単離するステップ;および
凝集性複合体を分析し、1つまたは複数のDNAバーコードの存在を判定するステップであって、特定のDNAバーコードの存在がサンプル中の特定の標的分析物の存在を示すステップ、からなる方法を提供する。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態では、サンプル中の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的で
ある配列を有するステップ;
粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドに対するDNAバーコードのハイブリダイゼーションを可能にし、分析物と分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとの間の特異結合性相互作用を可能にするのに有効な条件下でサンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップであって、前記接触が分析物の存在下で凝集性複合体の生成をもたらすステップ;
凝集性複合体を単離し、凝集性複合体を脱ハイブリダイズしてDNAバーコードを遊離するのに有効な条件下に凝集性複合体を供するステップ;
DNAバーコードを単離するステップ;および
DNAバーコードの存在を検出するステップ、からなる方法を提供する。
【0022】
本発明のさらに別の実施形態では、サンプル中の1つまたは複数の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した1つまたは複数のタイプの粒子、1つまたは複数のタイプのDNAバーコード、および特定の標的分析物に対する特異結合性相補体が結合した1つまたは複数のタイプのオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、(i)各タイプのDNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、(ii)粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、1つまたは複数のタイプのDNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、(iii)特異結合性相補体が結合した各タイプのオリゴヌクレオチドは、あるタイプのDNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、(iv)各タイプのDNAバーコードは、特定の標的分析物に関する識別子としての役割を果たし、別のタイプのDNAバーコードとは異なる配列を有するステップ;
粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したあるタイプのオリゴヌクレオチドに対する各タイプのDNAバーコードのハイブリダイゼーションを可能にし、特定の標的分析物と特定の標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したあるタイプのオリゴヌクレオチドとの間の特異結合性相互作用を可能にするのに有効な条件下で、サンプルを、オリゴヌクレオチドが結合した1つまたは複数のタイプの粒子、1つまたは複数のタイプのDNAバーコード、および特定の標的分析物に対する特異結合性相補体が結合した1つまたは複数のタイプのオリゴヌクレオチドと接触させるステップであって、前記接触が1つまたは複数の特定の標的分析物の存在下で凝集性複合体の生成をもたらすステップ;
凝集性複合体を単離し、凝集性複合体を脱ハイブリダイズしてDNAバーコードを遊離するのに有効な条件下に凝集性複合体を供するステップ;
DNAバーコードを単離するステップ;および
さまざまな配列を有する1つまたは複数のDNAバーコードの存在を検出するステップであって、特定のDNAバーコードの同定が特定の標的分析物の存在を示すステップ、からなる方法を提供する。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態では、サンプル中の1つまたは複数の抗体の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した1つまたは複数のタイプの粒子、1つまたは複数のタイプのDNAバーコード、および特定の抗体に対するハプテンが結合した1つまたは複数のタイプのオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、(i)各タイプのDNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、(ii)粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、1つまたは複数のタイプのDNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、(iii)特定の抗体に対するハプテンが結合した各タイプのオリゴヌクレオチドは、あるタイプのDNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、(iv)各タイプのDNAバーコードは、特定の標的抗体に関する識別子とし
ての役割を果たし、別のタイプのDNAバーコードとは異なる配列を有するステップ;
粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部およびハプテンが結合したあるタイプのオリゴヌクレオチドに対する各タイプのDNAバーコードのハイブリダイゼーションを可能にし、特定の標的抗体と特定の標的抗体に対するハプテンが結合したあるタイプのオリゴヌクレオチドとの間の特異結合性相互作用を可能にするのに有効な条件下で、サンプルを、オリゴヌクレオチドが結合した1つまたは複数のタイプの粒子、1つまたは複数のタイプのDNAバーコード、および特定の標的抗体に対するハプテンが結合した1つまたは複数のタイプのオリゴヌクレオチドと接触させるステップであって、前記接触が1つまたは複数の特定の標的抗体の存在下で凝集性複合体の生成をもたらすステップ;
凝集性複合体を単離し、凝集性複合体を脱ハイブリダイズしてDNAバーコードを遊離するのに有効な条件下に凝集性複合体を供するステップ;
DNAバーコードを単離するステップ;および
さまざまな配列を有する1つまたは複数のDNAバーコードの存在を検出するステップであって、特定のDNAバーコードの同定が特定の標的抗体の存在を示すステップ、からなる方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、標的分析物検出のためのキットも提供する。本発明の一実施形態では、サンプル中の標的分析物を検出するためのキットであって、オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる粒子複合体プローブであって、DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、DNAバーコードは、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズされる粒子複合体プローブ、ならびに検出可能な変化を観察するための任意選択の基材を含む、少なくとも1つの容器からなるキットを提供する。
【0025】
本発明の別の実施形態では、サンプル中の1つまたは複数の標的分析物を検出するための、少なくとも1つまたは複数の容器からなるキットであって、該容器には、オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および特定の標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなるあるタイプの粒子複合体プローブであって、(i)DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、(ii)粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、(iii)特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、(iv)各タイプの粒子複合体プローブ中のDNAバーコードは、異なっており、かつ特定の標的分析物に関する識別子としての役割を果たす配列を有する粒子複合体プローブが含まれるキットであり、検出可能な変化を観察するための基材が場合により含まれるキットを提供する。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態では、少なくとも1対の容器および検出可能な変化を観察するための任意選択の基材を含む、標的分析物を検出するためのキットであって、
対の第1の容器には、オリゴヌクレオチドが結合した粒子と少なくとも2つの部分のある配列を有するDNAバーコードとからなる粒子プローブが含まれ、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、
対の第2の容器には、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、標的分析物の特異結合性ペア相補体と共有結合させるのに用いることが可能な部分を有するオリゴヌクレオチドが含まれるキット、を提供する。
【0027】
本発明のさらに別の実施形態では、少なくとも2対以上の容器を含む、サンプル中の複数の標的分析物を検出するためのキットであって、
各対の第1の容器には、オリゴヌクレオチドが結合した粒子、および少なくとも2つの部分のある配列を有するDNAバーコードを有する粒子複合体プローブが含まれ、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、少なくとも2つの部分を有するDNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、
各対の第2の容器には、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、標的分析物の特異結合性ペア相補体と共有結合させるのに用いることが可能な部分を有するオリゴヌクレオチドが含まれ、
粒子複合体プローブのタイプに対するDNAバーコードは、異なっており、かつ標的分析物の識別子としての役割を果たす配列を有し、検出可能な変化を観察するための基材が任意選択で含まれるキット、を提供する。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態では、第1の容器および少なくとも2対以上の容器を含む、サンプル中の複数の標的分析物を検出するためのキットであって、
第1の容器には、オリゴヌクレオチドが結合した粒子を有する粒子複合体プローブが含まれ、
対の第1の容器には、少なくとも2つの部分の配列を有するDNAバーコードが含まれ、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、
各対の第2の容器には、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、標的分析物の特異結合性ペア相補体と共有結合させるのに用いることが可能な部分を有するオリゴヌクレオチドが含まれ、
各対の容器のうち第1の容器中に存在するDNAバーコードは、標的分析物の識別子としての役割を果たし、容器の別の対におけるDNAバーコードとは異なる配列を有し、検出可能な変化を観察するための基材が場合により含まれるキット、を提供する。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態では、上記のいずれのキットの粒子も、金属、半導体、絶縁体、または磁性ナノ粒子などのナノ粒子からなり、金ナノ粒子であることが好ましい。
また、本発明には、サンプル中の1つまたは複数の標的分析物を検出するためのシステムであって、
1つまたは複数のタイプの粒子複合体プローブであって、各粒子複合体プローブが、オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および特定の標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる粒子複合体プローブと、(i)DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、(ii)粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、(iii)特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、(iv)各タイプの粒子複合体プローブ中のDNAバーコードは、異なっており、かつ特定の標的分析物の識別子としての役割を果たす配列を有することと、からなるシステムも含まれる。
【0030】
このシステムにおける粒子は、金属、半導体、絶縁体、または磁性ナノ粒子などのナノ粒子からなることが好ましく、金ナノ粒子であることが好ましい。
また、本発明には、オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる粒子複合体プローブであって、DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、DNAバーコードは、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチド
とハイブリダイズされる粒子複合体プローブ、も含まれる。このプローブにおける粒子は、金属、半導体、絶縁体、または磁性ナノ粒子などのナノ粒子からなることが好ましく、金ナノ粒子であることが好ましい。
【0031】
また、本発明には、標的分析物に対して特異的な標的相補体が結合したオリゴヌクレオチド配列も含まれる。
また、本発明には、特定の標的分析物の存在に関する識別子としての役割を果たすオリゴヌクレオチド配列からなるDNAバーコードも含まれる。
【0032】
また、本発明には、オリゴヌクレオチド配列からなる2つ以上のDNAバーコードも含まれ、各DNAバーコードは、異なるオリゴヌクレオチド配列を有し、特定の標的分析物の存在に関する識別子としての役割を果たす。
【0033】
本願明細書で使用する、オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子、複合物、粒子、ラテックス・ミクロスフェアなどの「タイプ」とは、それらに結合されたオリゴヌクレオチドの1つまたは複数のタイプが同じである複数の品目を指す。また、「オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子」または「オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子」は、「ナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物」、または本発明の検出方法の場合には、「ナノ粒子‐オリゴヌクレオチド・プローブ」、「ナノ粒子プローブ」、もしくは単に「プローブ」とも呼ばれることがある。
【0034】
用語「ナノ粒子複合体」または「ナノ粒子複合体プローブ」は、ナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物、リポーター・オリゴヌクレオチド、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる複合物を指す。
【0035】
用語「分析物」は、検出すべき化合物または組成物を指し、薬剤、代謝物、殺虫剤、汚染物質などが含まれる。分析物は、特異結合性ペア(sbp)のメンバーからなることが可能であり、一価(モノエピトープ(monoepitopic))もしくは多価(ポリエピトープ(polyepitopic))の、通常抗原もしくはハプテンの、少なくとも1つの共通エピトープ部位もしくは決定基を共有する単一化合物もしくは複数の化合物であるリガンドであってもよい。分析物は、細菌などの細胞もしくはA、B、Dなどの血液型抗原もしくはHLA抗原を有する細胞の一部、または微生物、たとえば、細菌、真菌、原生動物、もしくはウイルスであることが可能である。
【0036】
多価リガンド分析物は、通常ポリ(アミノ酸)、すなわちポリペプチドおよびタンパク質、多糖、核酸、およびそれらの組合せである。このような組合せには、細菌、ウイルス、染色体、遺伝子、ミトコンドリア、核、細胞膜などの成分が含まれる。
【0037】
主として、本発明を適用することが可能であるポリエピトープのリガンド分析物は、少なくとも約5,000、通常少なくとも約10,000の分子量を有するであろう。ポリ(アミノ酸)の範疇では、当該ポリ(アミノ酸)は一般に約5,000から5,000,000までの分子量、より一般的には約20,000から1,000,000までの分子量のはずである。当該ホルモンの中では、分子量は、通常約5,000から60,000までの分子量に及ぶであろう。
【0038】
類似の構造的特徴を有するタンパク質、特定の生物学的機能を有するタンパク質、特定の微生物、特に病原微生物に関係するタンパク質などのファミリーに関しては多種多様なタンパク質が考えられる。このようなタンパク質には、たとえば、免疫グロブリン、サイトカイン、酵素、ホルモン、がん抗原、栄養マーカー、組織特異抗原などが含まれる。
【0039】
本発明において注目するタンパク質、血液凝固因子、タンパク質ホルモン、抗原性多糖、微生物及び他の病原体のタイプは、その開示内容が本願明細書に援用される特許文献1に具体的に開示されている。
【0040】
モノエピトープのリガンド分析物は、一般に約100〜2,000の分子量、より一般的には125〜1,000の分子量であろう。
分析物は、宿主由来の体液などのサンプル中に直接見いだされる分子であってもよい。サンプルを直接検査することが可能であり、分析物をより容易に検出可能とするために前処理をしてもよい。さらに、当該分析物がサンプル中に存在する場合にのみ存在が検出されるはずの、当該分析物と相補的な特異結合性ペアのメンバーなどの当該分析物を証明することができる試剤を検出することによって、当該分析物を測定してもよい。したがって、分析物を証明することができる試剤は、アッセイにおいて検出される分析物になる。体液は、たとえば、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞便、痰、脳脊髄液、汗、粘液などであることが可能である。
【0041】
用語「特異結合性ペア(sbp)のメンバー」は、2つの異なる分子の一方であって、他の分子の特定の空間的かつ中心的な構成(organization)に関して特異的に結合し、それによって同構成に関して相補的であると定義される、表面上または空洞内の領域を有するものを指す。特異結合性ペアのメンバーは、リガンドおよびレセプター(アンチリガンド(antiligand))と呼ばれる。これらは、通常は抗原‐抗体などの免疫学的ペアのメンバーと思われるが、ビオチン‐アビジン、ホルモン‐ホルモンレセプター、核酸二重鎖、IgG‐プロテインA、ポリヌクレオチド対(DNA‐DNA、DNA‐RNAなど)などの他の特異結合性ペアは免疫学的ペアではないが本発明およびsbpメンバーの定義に含まれる。
【0042】
用語「リガンド」は、それに対するレセプターが自然に存在するか、または調製することが可能である、任意の有機化合物を指す。また、リガンドという用語にはリガンド類似体が含まれ、該リガンド類似体は、通常は有機ラジカルまたは分析物類似体で、分子量は通常100を超え、レセプターに関して類似のリガンドと競合することが可能な修飾リガンドであり、この修飾により別の分子に該リガンド類似体を結び付ける手段が提供される。リガンド類似体は、リガンド類似体をハブまたは標識に連結するが必要ではない結合によって水素が置換されていることだけでなく、リガンドとは一般に異なるものである。リガンド類似体は、リガンドと同様にレセプターに結合することが可能である。類似体は、たとえば、リガンドに対する抗体のイディオタイプを対象とする抗体であることもありうる。
【0043】
用語「レセプター」または「アンチリガンド」は、分子の特定の空間的かつ中心的な構成、たとえばエピトープ部位または決定基を認識する能力のある任意の化合物または組成物を指す。例示的なレセプターには、天然に存在するレセプター、たとえば、サイロキシン結合グロブリン、抗体、酵素、Fabフラグメント、レクチン、核酸、アビジン、プロテインA、バルスター(barstar)、補体成分C1qなどが含まれる。アビジンには、卵白アビジン、およびストレプトアビジンなどの他の供給源に由来するビオチン結合タンパク質が含まれることを意図している。
【0044】
用語「特異的結合(特異結合)」は、他の分子の認識が実質的に低いのに比べ、2つの異なる分子のうち一方を他方に関して特異的に認識することを指す。一般に、分子は、2分子間の特異的認識を生じさせる表面上または空洞内の領域を有している。典型的な特異的結合は、抗体‐抗原相互作用、酵素‐基質相互作用、ポリヌクレオチドの相互作用などである。
【0045】
用語「非特異的結合」は、特異的表面構造と比較的無関係な分子間の非共有結合を指す。非特異的結合は、分子間の疎水性相互作用を含むいくつかの因子により生じうる。
用語「抗体」は、他の分子の特定の空間的かつ中心的な構成に特異的に結合し、それによって該構成に関して相補的であると定義される免疫グロブリンを指す。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであることが可能であり、宿主の免疫および血清の採集などの当技術分野で良く知られている技法により(ポリクローナル)、または継続的なハイブリッド細胞系を調製し分泌タンパク質を採集することにより(モノクローナル)、または天然の抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列を少なくともコードするヌクレオチド配列またはそれらの変異誘発物をクローニングし発現させることによって調製することが可能である。抗体には、完全長の免疫グロブリンまたはそれらの断片が含まれ、免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3、IgMなどのさまざまなクラスおよびアイソタイプが含まれる。それらの断片には、Fab、FvおよびF(ab’)、Fab’などが含まれる。さらに、特定の分子に対する結合親和性が維持される限りは、必要に応じて免疫グロブリンまたはそれらの断片の凝集体、ポリマー、および複合物を用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明は、1溶液中で複数のタンパク質構造を検出するために生化学的バーコードとしてオリゴヌクレオチドを利用する方法に関する(図1)。この手法は、オリゴヌクレオチド鎖によって機能化されたタンパク質認識要素、および金ナノ粒子の凝集をもたらすハイブリダイゼーションなる事象は、金ナノ粒子の物理的性質(たとえば、光学的、電気的、機械的)を著しく変化させることが可能であるというこれまでの知見をうまく利用している8〜12。個々の調整可能なハイブリダイゼーション特性と融解特性とを有する様々なオリゴヌクレオチド配列、および、融解の際には変化して多重分析物アッセイにおける一連の分析物を脱符号化(decode)するナノ粒子に関係する物理的特徴によって、各タンパク質認識要素を符号化(encode)することが可能である、というのが概略的な構想である。したがって、DNA結合凝集体の融解温度と、融解の際に変化して多重分析物アッセイにおける一連の分析物を脱符号化するナノ粒子に関係する物理的特性とを使用することが一般的に可能である。本願明細書におけるバーコードは、脱符号化される情報が、あらかじめ設計されたオリゴヌクレオチド配列中に保存された化学的情報の形態であるという点で、ナノロッド23、フルオロフォア標識ビーズ24および量子ドット25などの物理的診断マーカーに基づくバーコードとは異なっている。
【0047】
本発明の一態様では、サンプル中の標的分析物、たとえば抗体の存在を検出するための方法を提供する。下記実施例に示す免疫グロブリンE(IgE)または免疫グロブリンG1(IgG1)などの抗体は、適切なハプテン(IgG1の場合にはビオチン、IgEの場合にはジニトロフェニル(DNP);図1(A))で修飾されたオリゴヌクレオチド鎖で予めハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド修飾プローブにより検出することが可能である13,14。下記実施例に示す概念実証アッセイにおけるDNA配列は、IgG1およびIgEとのプローブ反応から生成する2つの異なる凝集体が異なる温度で融解することが確実と思われる方法で設計した(図1(B))。IgG1用プローブは、IgE用プローブよりも長い配列を有し、G、C塩基含有量も高い。したがって、前者の配列は、後者の配列よりも高い温度で融解する。このような配列による違いにより、プローブと反応してナノ粒子凝集体を生成したのがどの標的であったかを同定するための符号として使用可能な異なる融解特性を有するプローブを調製することができる。3つの異なるシステム、すなわち(1)1つの標的抗体(IgG1またはIgE)が存在する2つのプローブ;(2)2つの異なる標的抗体が存在する2つのプローブ;および(3)標的抗体が存在しない対照について検討した。
【0048】
本発明のこの態様では、サンプル中の標的分析物、たとえば抗体の存在を検出するため
の方法であって、オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子プローブを、標的分析物を含有する可能性のあるサンプルと接触させることからなる方法を提供する。ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、ハイブリダイゼーションの結果として、リポーター・オリゴヌクレオチドの第1の部分と結合する。リポーター・オリゴヌクレオチドの第2の部分は、ハイブリダイゼーションの結果として、分析物に対する特異結合性相補体(たとえば、抗原)が結合したオリゴヌクレオチドと結合する。接触は、分析物とナノ粒子プローブとの間の特異結合性相互作用を可能にするのに有効な条件下で行う。標的分析物の存在下では、ナノ粒子凝集体が生成される。これらの凝集体は、任意の好適な手段によって検出することができる。
【0049】
本発明を実施する際には、オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子を、標的分析物に対する特異結合性相補体で修飾されたオリゴヌクレオチド、およびリポーター・オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることによってナノ粒子複合体プローブを調製する。ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、リポーター・オリゴヌクレオチドの第1の部分と相補的である配列を有する。特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、リポーター・オリゴヌクレオチドの第2の部分と相補的である配列を有する。成分間のハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な条件下で、リポーター・オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、ナノ粒子複合体プローブを生成する。成分の十分なハイブリダイゼーションを可能にするナノ粒子複合体溶液を調製する際には、任意の好適な溶媒およびハイブリダイゼーション条件を用いることができる。成分を、0.3M NaClおよび10mMリン酸緩衝液(pH7)からなるリン酸緩衝溶液(PBS)中で室温において約2〜3時間ハイブリダイズさせることが好ましい。ハイブリダイゼーション混合物中のナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物の濃度は、約2〜約50nMであり、約13nMであることが好ましい。ハプテン修飾オリゴヌクレオチドの濃度は、一般に約50〜約900nMであり、約300nMであることが好ましい。リポーター・オリゴヌクレオチドの濃度は、一般に約50〜約900nMであり、約300nMであることが好ましい。未反応のハプテン修飾オリゴヌクレオチドおよびリポーター・オリゴヌクレオチドは、任意の好適な手段、好ましくはハイブリダイゼーション混合物を遠心分離(12,000rpm、20分間)した後に上清をデカンテーションによって任意で除去してもよく、除去することが好ましい。調製した複合体は、0.3M NaClおよび10mMリン酸緩衝液(pH7〜7.4)、0.01%アジド溶液中で4〜6℃において保存した。
【0050】
サンプル中の標的分析物、たとえば抗体の存在を検出するための典型的アッセイは以下の通りである。オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子、リポーター・オリゴヌクレオチド、および標的分析物に対する特異結合性相補体を有するオリゴヌクレオチドからなるナノ粒子複合体プローブを含有する溶液を、標的タンパク質を含有すると考えられる水性サンプル溶液と混合する。水性サンプル溶液中の総タンパク質含有量は、一般に約5〜約100ug/mlであり、通常は約43ug/mlである。反応混合物中のナノ粒子の濃度は、一般に約2〜約20nMであり、通常は約〜13nMである。得られる混合物の総容積は、一般に約100〜約1000uLであり、約400uLであることが好ましい。標的分析物を含有すると考えられる水性サンプル溶液を調製する際には任意の好適な溶媒を用いることができ、0.3M NaClおよび10mMリン酸緩衝液(pH7〜7.4)からなるPBSが好ましい。
【0051】
次いで、得られたアッセイ混合物を、特異結合性ペア、たとえばタンパク質‐ハプテンの複合体生成を容易にするのに十分な、約35〜約40℃の温度、好ましくは37℃において、約30〜約60分の間、好ましくは約50分間インキュベートする。標的タンパク質が存在する場合には、粒子の凝集が起き、沈殿とともに金ナノ粒子プラズモンバンドの
シフトおよび赤色から紫色への変色をもたらす。ハイブリダイズした生成物を遠心分離し(たとえば、3000rpmで2分間)、未反応成分を含有する上清を分析に先立ってデカンテーションにより除去する。
【0052】
望ましい場合には、オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子、リポーター・オリゴヌクレオチド、およびハプテン修飾オリゴヌクレオチドの全てを、標的分析物を含有すると考えられるサンプルと混合することにより、アッセイ混合物内でin situでナノ粒子複合体プローブを調製してもよい。すべての成分、特に相補DNA鎖間の完全なハイブリダイゼーションを確実にするため、アッセイ混合物を−15℃において20分間インキュベートしてハイブリダイゼーションを促進させ(ベケル社(Boekel)製Tropicooler(登録商標)Hot/Coldブロックインキュベータ)、4℃において24時間保存する。しかしながら、本発明を実施する際には、アッセイ反応を実施する前にナノ粒子複合体プローブを調製し、ナノ粒子複合体プローブ内のDNAバーコードの量を増加させることが好ましい。
【0053】
どのタンパク質が存在するかを決定するため、温度の関数として260nmにおける吸光度をモニターする凝集体の融解分析を溶液中で行うことができる。たとえば、1つまたは2つの既知の標的分析物:IgG1およびIgEを含有するサンプルの分析について説明する実施例3の図2を参照のこと。実施例3で述べるように、前述のプロトコルによりIgG1をプローブで処理する場合、溶液はピンクがかった青色に変化し、ナノ粒子凝集体の生成を示す。標的タンパク質は存在しないがバックグラウンドタンパク質が存在する対照実験では、識別可能な沈殿は認められない。溶液の融解分析は、融解温度(Tm)55℃とともに鋭い相転位を示している。これは、IgG1標的について予想された相転位である(図2A(破線))。新たなプローブ溶液にIgEを添加すると、同様の変色が観察されるが、融解分析からは、この標的について予想される相転位であるTm36℃を伴う曲線が得られる(図2A(実線))。注目すべきことに、プローブ溶液に両方のタンパク質標的を添加すると、溶液は濃紫色に変化し、融解分析は、2つの明確なトランザクション(transaction)を示す。この曲線の一次導関数は、それぞれ36および55℃に中心のある2つのピークを示す(図2B)。このことは、2つの別個の会合体が生成し、オリゴヌクレオチド・バーコードに由来するそれらの融解特性を用いて2つのタンパク質標的を区別することが可能であることを示している。
【0054】
本発明の別の態様では、上記の凝集法戦略の変形形態を用い、前述のシステムの感度を高め、1溶液中で調べることが可能な標的数を増加させることが可能である。たとえば、実施例4の図3を参照のこと。この戦略により、特定の標的分析物に割り当てられたDNAバイオバーコードまたは独自のリポーター・オリゴヌクレオチドにより、タンパク質標的を間接的に検出することが可能である。一般に、標的分析物用のリポーター・オリゴヌクレオチドの好適な長さ、GC含量、および配列、ならびに選択は、アッセイの前にあらかじめ定められる。たとえば、12量体オリゴヌクレオチドは、412種類の異なる配列を有し、それらの多くを用いて図1Aに示すように目的の多価タンパク質用のバーコードを調製することが可能である。アッセイのこの変形形態では、生成する凝集体の融解特性を溶液中では測定せず、遠心分離(たとえば、3000rpmで2分間)により、未反応のプローブおよび標的分子から凝集体内のリポーター・オリゴヌクレオチドまたはDNAバイオバーコードを分離する。次いで、任意の好適な手段によって、たとえば溶液に水を加えることによって凝集体を変性させ、リポーター・オリゴヌクレオチドまたはバーコードを遊離させる。リポーター・オリゴヌクレオチドが少量である場合には、当技術分野で知られている方法によって増幅することができる。たとえば、非特許文献1および非特許文献2を参照のこと。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅が好ましい。粒子およびタンパク質を、任意の好適な手段、たとえば遠心濾過装置(ミリポア社(Millipore)Microcon(登録商標)YM‐100、3500rpmで25分間)によ
ってリポーター・オリゴヌクレオチドから分離することが可能である。リポーター・オリゴヌクレオチドを単離したら、オリゴヌクレオチド・アレイ上に捕捉し、多くの好適なDNA検出アッセイのうちの1つを用いて同定することが可能である(図3)。IgG1およびIgEに関する本願明細書に記載の実施例の場合には、対象のバーコード(図1のA3およびB3)の半分と相補的であるオリゴヌクレオチドで機能化された(直径250μmのスポット)顕微鏡用スライド上にリポーター・オリゴヌクレオチドを捕捉する。バーコードがオリゴヌクレオチド・アレイによって捕捉されれば、バーコードの残りの部分と相補的であるDNA修飾粒子をアレイとハイブリダイズさせることが可能である(実験の項を参照)。標準的なスキャン測定の手法[11](写真現像溶液による処理を含む)により現像されれば、フラットベッド・スキャナを用いて結果を定量することが可能である(図4)11。IgG1が存在する場合には、IgG1のために設計されたスポットのみが測定可能なシグナルを示す。同様に、IgEが存在する唯一のタンパク質である場合には、IgEのために設計されたスポットのみがシグナルを示す。最後に、両方のタンパク質が存在する場合には、両スポットが強いシグナルを示す。
【0055】
本発明は、1溶液中で単一または複数の多価タンパク質を検出するために、オリゴヌクレオチドにより大きく機能化されたナノ粒子プローブ(好ましくは金ナノ粒子プローブ)を使用するための2つの戦略を提供するという理由から重要である。実際、1サンプル中の複数のタンパク質の検出は面倒で、時間がかかり、高額な費用を要するプロトコルが必要である。この点で、他の研究者は最近、1溶液中で複数のタンパク質標的を認識するためにフルオロフォア標識ペプチド核酸およびDNAマイクロアレイを用いている15〜17。しかしながら、この方法は、オリゴヌクレオチドで標識したタンパク質のマイクロアレイ表面への結合に依存する。本願明細書に記載の方法の最終工程は、通常のDNAの表面化学反応にのみ基づいている。したがって、前記工程に最新のナノ粒子DNA検出法9、11の多くの高感度の態様を援用することは可能であるが、同工程は検出の際に存在するタンパク質を得ることなく、DNAではなくタンパク質を検出することができる。表面アッセイの場合、タンパク質は短いオリゴヌクレオチドに比べて扱いがより困難である。なぜなら、タンパク質は、より非特異的に固体支持体へ結合する傾向があり、大きなバックグラウンド・シグナルにつながることが多いためである。最後に、均一系アッセイの場合には、これらのナノ粒子構造に関係する非常に鋭敏な融解プロファイルにより、通常の幅広いDNA融解挙動を示すプローブによって可能と思われるよりも多くのバイオバーコードを設計することができるはずである。
【0056】
本発明は、検出アッセイにおける使用に適した、オリゴヌクレオチドを結合した任意の好適な粒子の使用法を企図している。しかしながら、本発明を実施する際にはナノ粒子が好ましい。粒子のサイズ、形および化学組成は、DNAバーコードを含んで得られるプローブの特性に寄与するはずである。これらの特性には、光学特性、光電子特性、電気化学特性、電子特性、種々の溶液における安定性、孔およびチャネルのサイズの違い、フィルタとしての役割を果たす際の生理活性分子の分離能などが含まれる。さまざまなサイズ、形および/または化学組成を有する粒子の混合物の使用法、ならびに均一なサイズ、形および/または化学組成を有するナノ粒子の使用法が企図されている。好適な粒子の例には、ナノサイズおよびミクロサイズの(nano− and microsized)コア粒子、凝集体粒子、等方性粒子(球状粒子など)および異方性粒子(非球状ロッド、4面体、プリズムなど)ならびに本願明細書に援用する特許文献2および特許文献3に記載の粒子などのコア‐シェル粒子が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の実施に有用なナノ粒子には、金属(たとえば、金、銀、銅および白金)、半導体(たとえば、CdSe、CdS、およびZnSでコーティングされたCdSまたはCdSe)および磁性(たとえば、フェロマグネタイト(ferromagnetite))コロイド材料が含まれる。本発明の実施に有用な他のナノ粒子には、ZnS、ZnO、T
iO、AgI、AgBr、HgI、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In、InSe、Cd、CdAs、InAsおよびGaAsが含まれる。ナノ粒子のサイズは、好ましくは約5nmから約150nm(平均直径)まで、より好ましくは約5から約50nmまで、最も好ましくは約10から約30nmまでである。ナノ粒子は、ロッド、プリズム、または4面体であってもよい。
【0058】
金属、半導体および磁性ナノ粒子を製造する方法は、当技術分野でよく知られている。たとえば、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8を参照のこと。
【0059】
ZnS、ZnO、TiO、AgI、AgBr、HgI、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In、InSe、Cd、CdAs、InAsおよびGaAsナノ粒子を製造する方法も、当技術分野で知られている。たとえば、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16を参照のこと。
【0060】
また、好適なナノ粒子は、たとえば、テッド・ペラ社(Ted Pella、Inc.)(金)、アマシャム社(Amersham Corporation)(金)およびナノプローブス社(Nanoprobes、Inc.)(金)から市販されている。
【0061】
現在は、核酸を検出するのに金ナノ粒子を用いることが好ましい。金コロイド粒子は、それらの美しい色を生み出す帯域(バンド)に関して高い吸光係数を有する。これらの強い色は、粒径、濃度、粒子間距離、ならびに凝集の程度および凝集体の形(幾何学的形状)によって変化し、これらの材料を比色アッセイにとって特に魅力的にしている。たとえば、金ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドおよび核酸とハイブリダイゼーションさせると、肉眼で見ることができる迅速な変色をもたらす(たとえば、実施例を参照のこと)。
【0062】
オリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合するために、ナノ粒子、オリゴヌクレオチドまたは双方を官能基化する。そのような方法は当技術分野で知られている。たとえば、3’末端または5’末端においてアルカンチオールにより官能基化されたオリゴヌクレオチドは、金ナノ粒子と容易に結合する。非特許文献17を参照のこと。また、非特許文献18(3’チオールDNAを平らな金表面に結合する方法について記載している;この方法を用いてオリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合することが可能である)を参照のこと。また、アルカンチオール法を用い、他の金属、半導体および磁性コロイドならびに上記に列挙した他のナノ粒子にオリゴヌクレオチドを結合することが可能である。オリゴヌクレオチドを固体表面に接続するための他の官能基には、ホスホロチオエート基(オリゴヌクレオチド−ホスホロチオエートの金表面との結合については特許文献4を参照)、置換アルキルシロキサン(オリゴヌクレオチドのシリカおよびガラス表面との結合については非特許文献19および非特許文献20を、アミノアルキルシロキサンの結合およびメルカプトアルキルシロキサンの同様の結合については非特許文献21を参照)が含まれる。また、末端が5’チオヌクレオシドまたは3’チオヌクレオシドであるオリゴヌクレオチドも、オリゴヌクレオチドを固体表面に結合するのに使用することができる。以下の参照文献は、オリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合するのに用いることができる他の方法について記載している:非特許文献22(金上のジスルフィド)、非特許文献23(アルミニウム上のカルボン酸)、非特許文献24(銅上のカルボン酸)、非特許文献25(シリカ上のカルボン酸)、非特許文献26(白金上のカルボン酸)、非特許文献27(白金上の芳香環化合物)、非特許文献28(白金上のスルホラン、スルホキシドおよび他の官能基化された溶媒)、非特許文献29(白金上のイソニトリル)、非特許文献30(シリカ上のシラン)、非特許文献31(シリカ上のシラン)、非特許文献32(シリカ上のシラン)、非特許
文献33(二酸化チタン上およびシリカ上の芳香族カルボン酸、アルデヒド、アルコールおよびメトキシ基)、非特許文献34(金属上のリジッドなホスフェート)。
【0063】
特許文献5〜8は、本発明を実施する際に有用である環状ジスルフィドで官能基化されたオリゴヌクレオチドについて記載している。環状ジスルフィドは、それらの環内に、2個のイオウ原子を含む5または6個の原子を有することが好ましい。好適な環状ジスルフィドは市販されているが周知の方法によって合成してもよい。還元型の環状ジスルフィドも使用可能である。
【0064】
リンカーは、環状ジスルフィドに結合された炭化水素部分からさらになることが好ましい。好適な炭化水素は市販されており、環状ジスルフィドに結合される。炭化水素部分は、ステロイド残基であることが好ましい。環状ジスルフィドに結合されたステロイド残基からなるリンカーを用いて調製されたオリゴヌクレオチド‐ナノ粒子複合物は、リンカーとしてアルカンチオールまたは非環式ジスルフィドを用いて調製された複合物に比べ、チオール(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)溶液中で使用されるジチオスレイトール)に対して著しく安定であることが予想外に見いだされた。実際、本発明のオリゴヌクレオチド‐ナノ粒子複合物は、300倍以上安定であることが分かった。この予想外の安定性は、おそらく各オリゴヌクレオチドが単一のイオウ原子ではなく2個のイオウ原子を介してナノ粒子にしっかり固定されていることに起因している。特に、環状ジスルフィドの隣接する2個のイオウ原子は、オリゴヌクレオチド‐ナノ粒子複合物を安定化するのに有利であろうキレート化効果を有すると考えられる。また、リンカーの大きな疎水性ステロイド残基も、水溶性分子のナノ粒子表面への接近からナノ粒子を守ることによって複合物の安定性に寄与しているように見える。
【0065】
上記に鑑み、環状ジスルフィドの2個のイオウ原子は、双方のイオウ原子がナノ粒子と同時に結合することが可能であるように互いに十分近接していることが好ましい。2個のイオウ原子は、互いに隣接していることが最も好ましい。また、炭化水素部分は、ナノ粒子の表面を守る大きな疎水表面をもたらすように大きくなければならない。
【0066】
環状ジスルフィド・リンカーが用いられたオリゴヌクレオチド‐環状ナノ粒子複合物は、特許文献5〜8に記載のように、サンプル中の標的分析物を検出するための診断アッセイにおけるプローブとして用いることができる。これらの複合物は、それらが使用される診断アッセイの感度を向上させることが分かった。特に、環状ジスルフィドに結合されたステロイド残基からなるリンカーを用いて調製されたオリゴヌクレオチド‐ナノ粒子複合物を用いるアッセイは、リンカーとしてアルカンチオールまたは非環式ジスルフィドを用いて調製された複合物を用いるアッセイよりも約10倍以上感度が良いことが分かった。
【0067】
各ナノ粒子は、複数個のオリゴヌクレオチドが結合したものとする。結果として、各ナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物は、相補的配列を有する複数個のオリゴヌクレオチドまたは核酸と結合することが可能である。
【0068】
規定の配列のオリゴヌクレオチドは、本発明の実施におけるさまざまな目的で使用される。あらかじめ定められた配列のオリゴヌクレオチドを製造する方法はよく知られている。たとえば、非特許文献1および非特許文献35を参照のこと。オリゴリボヌクレオチドとオリゴデオキシリボヌクレオチドの双方にとって固相合成法が好ましい(DNAを合成するよく知られた方法は、RNAを合成するためにも有用である)。また、オリゴリボヌクレオチドおよびオリゴデオキシリボヌクレオチドは、酵素的に調製することも可能である。標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドの場合には、タンパク質などの特異結合性相補体をオリゴヌクレオチドに結合するのに適した任意の方法を使用してよい。
【0069】
ナノスフェア表面上にオリゴヌクレオチドを結合するのに適した任意の方法を使用可能である。表面上にオリゴヌクレオチドを接続するための特に好ましい方法は、本願明細書に援用する特許文献7〜15に記載のエージング工程に基づいている。エージング工程は、安定性および選択性が予想外に強化されたナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物を提供する。この方法は、好ましくはナノ粒子に結合可能な官能基からなる部分が共有結合しているオリゴヌクレオチドを提供することからなる。それらの部分および官能基は、オリゴヌクレオチドのナノ粒子との結合(すなわち、化学吸着または共有結合による)を可能にする部分であり官能基である。たとえば、5’または3’末端に共有結合したアルカンチオール、アルカンジスルフィドまたは環状ジスルフィドを有するオリゴヌクレオチドを用い、金ナノ粒子を含むさまざまなナノ粒子にオリゴヌクレオチドを結合させることが可能である。
【0070】
官能基によってオリゴヌクレオチドの少なくとも一部をナノ粒子と結合させるのに十分な時間、水中でオリゴヌクレオチドをナノ粒子と接触させる。このような時間は実験的に決定することが可能である。たとえば、約12〜24時間で良好な結果を得られることが分かった。オリゴヌクレオチドを結合させるための他の好適な条件も実験的に決定することが可能である。たとえば、約10〜20nMのナノ粒子濃度および室温におけるインキュベーションは良好な結果をもたらす。
【0071】
次に、少なくとも1種類の塩を水に加えて塩溶液を生成する。塩は、任意の好適な水溶性塩でよい。たとえば、塩は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、2種類以上のこれらの塩の組合せ、またはリン酸緩衝液に溶かしたこれらの塩の1つであってもよい。塩は、濃溶液として加えることが好ましいが、固体として加えてもよい。塩を水に全て一度に加えることは可能であり、または塩を徐々に時間をかけて加える。「徐々に時間をかけて」とは、一定時間の間隔をおいて少なくとも二分して塩を加えることを意味する。好適な時間間隔は実験的に決定することが可能である。
【0072】
塩溶液のイオン強度は、オリゴヌクレオチド相互の少なくとも一部の静電気斥力、および、負の電荷を帯びたオリゴヌクレオチドの正の電荷を帯びたナノ粒子に対する静電気引力、または負の電荷を帯びたオリゴヌクレオチドの負の電荷を帯びたナノ粒子からの静電気斥力のいずれかに打ち勝つのに十分でなければならない。徐々に時間をかけて塩を加えることによって静電気引力および斥力を徐々に減らすことは、ナノ粒子上にオリゴヌクレオチドの最大の表面密度をもたらすことが分かった。各塩または塩の組合せについての好適なイオン強度は、実験的に決定することが可能である。リン酸緩衝液に溶かして塩化ナトリウムの終濃度を約0.1Mから約1.0Mとすると(塩化ナトリウムの濃度を徐々に時間をかけて高めることが好ましい)、良好な結果をもたらすことが分かった。
【0073】
塩を加えた後、十分に加えたオリゴヌクレオチドをナノ粒子と結合させて安定なナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物を生成するのに十分な時間、塩溶液中でオリゴヌクレオチドおよびナノ粒子をインキュベートする。以下で詳細に説明するように、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの表面密度の増加は、複合物を安定化することが分かった。このインキュベーション時間は、実験的に決定することが可能である。約24〜48、好ましくは40時間の総インキュベーション時間は、良好な結果をもたらすことが分かった(これはインキュベーションの合計時間である;上記のように塩濃度は、この合計時間をかけて徐々に増加させることが可能である)。本願明細書においては、塩溶液におけるこの第2のインキュベーション時間を「エージング」工程と呼ぶ。この「エージング」工程に好適な他の条件も、実験的に決定することが可能である。たとえば、室温およびpH7.0におけるインキュベーションは良好な結果をもたらす。
【0074】
「エージング」工程を使用することによって生成される複合物は、「エージング」工程なしに生成される複合物よりもかなり安定であることが見出されている。前述のように、この安定性の増大は、「エージング」工程によって得られる、ナノ粒子表面上のオリゴヌクレオチド密度の増大によるものである。「エージング」工程によって得られる表面密度は、ナノ粒子のサイズおよびタイプならびにオリゴヌクレオチドの長さ、配列および濃度に左右されるはずである。ナノ粒子を安定にするのに十分な表面密度ならびにナノ粒子およびオリゴヌクレオチドの望ましい組合せについてそのような表面密度を得るのに必要な条件は、実験的に決定することが可能である。一般に、安定なナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物を提供するには少なくとも10ピコモル/cmの表面密度で十分であろう。表面密度は、少なくとも15ピコモル/cmであることが好ましい。表面密度があまりに大きい場合に、複合物のオリゴヌクレオチドが核酸およびオリゴヌクレオチド標的とハイブリダイズする能力が減少することがあるため、表面密度は約35〜40ピコモル/cm以下であることが好ましい。
【0075】
本願明細書で使用する「安定(な)」とは、複合物が製造されてから少なくとも6ヶ月間、大部分のオリゴヌクレオチドはナノ粒子との結合を維持し、そのオリゴヌクレオチドは、核酸を検出する方法およびナノファブリケーションの方法において遭遇する標準的条件下で核酸およびオリゴヌクレオチド標的とハイブリダイズすることができることを意味する。
【0076】
認識部分およびスペーサー部分からなる認識オリゴヌクレオチドを使用することにより、ナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物のハイブリダイゼーション効率を劇的に向上させうることが分かった。「認識オリゴヌクレオチド」とは、核酸またはオリゴヌクレオチド標的の配列の少なくとも一部と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドである。この実施形態では、認識オリゴヌクレオチドは認識部分およびスペーサー部分からなり、核酸またはオリゴヌクレオチド標的とハイブリダイズするのは認識部分である。認識オリゴヌクレオチドのスペーサー部分は、ナノ粒子と結合可能なように設計される。たとえば、スペーサー部分は、それと共有結合された部分を有し、その部分は、ナノ粒子と結合可能な官能基からなる。これらは、前述のような部分および官能基である。認識オリゴヌクレオチドのスペーサー部分がナノ粒子と結合する結果、認識部分はナノ粒子の表面から間隔をおいて配置され、その標的とのハイブリダイゼーションにとってより好都合である。認識部分のナノ粒子からの良好な間隔を提供するスペーサー部分の長さおよび配列は、実験的に決定することが可能である。少なくとも約10個のヌクレオチド、好ましくは10〜30個のヌクレオチドからなるスペーサー部分が良好な結果をもたらすことが分かった。スペーサー部分は、ナノ粒子または核酸標的もしくはオリゴヌクレオチド標的と結合する認識オリゴヌクレオチドの能力を妨害しない任意の配列を有しうる。たとえば、スペーサー部分は、相互に、認識オリゴヌクレオチドの配列と、または認識オリゴヌクレオチドの核酸標的もしくはオリゴヌクレオチド標的と相補的な配列であってはならない。スペーサー部分のヌクレオチドの塩基は、すべてアデニン、すべてチミン、すべてシチジン、またはすべてグアニンであることが好ましく、さもないと今述べた問題点の1つの原因となるであろう。塩基はすべてアデニンまたはすべてチミンであることがより好ましい。塩基はすべてチミンであることが最も好ましい。
【0077】
認識オリゴヌクレオチドの他に希釈オリゴヌクレオチドを使用することが、複合物を調整して生成する手段を提供し、望ましいレベルのハイブリダイゼーションをもたらすことがさらに分かった。希釈および認識オリゴヌクレオチドは、複合物を調製するためにナノ粒子と接触させる溶液中のそれらの比とほぼ同じ比率でナノ粒子に結合することが分かった。したがって、ナノ粒子に結合した希釈オリゴヌクレオチドと認識オリゴヌクレオチドの比を、複合物が望ましい数のハイブリダイゼーション事象に関与するように制御するこ
とが可能である。希釈オリゴヌクレオチドは、認識オリゴヌクレオチドがナノ粒子に結合され、または核酸もしくはオリゴヌクレオチド標的と結合する能力を妨害しない任意の配列を有しうる。たとえば、希釈オリゴヌクレオチドは、認識オリゴヌクレオチドの配列または認識オリゴヌクレオチドの核酸もしくはオリゴヌクレオチド標的の配列と相補的な配列を有してはならない。また、希釈オリゴヌクレオチドは、認識オリゴヌクレオチドがそれらの核酸またはオリゴヌクレオチド標的と結合することが可能であるように、認識オリゴヌクレオチドよりも長さが短いことが好ましい。認識オリゴヌクレオチドがスペーサー部分を有する場合には、希釈オリゴヌクレオチドは、スペーサー部分とほぼ同じ長さであることが最も好ましい。このように、希釈オリゴヌクレオチドは、核酸またはオリゴヌクレオチド標的とハイブリダイズする認識オリゴヌクレオチドの認識部分の能力を妨害しない。希釈オリゴヌクレオチドは、認識オリゴヌクレオチドのスペーサー部分の配列と同様の配列を有することがより好ましい。
【0078】
サンプル中の標的分析物の存在を検出するには、粒子複合体プローブ、好ましくはナノ粒子複合体プローブを用いる。これらの粒子複合体は、実際のアッセイ行う前、またはアッセイを行う間にin situで生成することができる。これらの複合体は、オリゴヌクレオチドを結合した粒子、好ましくはナノ粒子、リポーター・オリゴヌクレオチド、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる。DNAバーコードすなわちリポーター・オリゴヌクレオチドは、少なくとも2つの部分を有する配列を有し、オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションを介して結びつく。ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドは、リポーター・オリゴヌクレオチドの一部およびリポーター・オリゴヌクレオチドの第2の部分と相補的である配列を有し特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドと相補的な配列を有する。リポーター・オリゴヌクレオチドは、少なくとも2つの部分を有し、オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションを介して結びつく。標的分析物を含有するサンプル中で用いられた場合、ナノ粒子複合体は標的分析物と結合し、凝集が起きる。前述のように複数の標的が存在する場合、凝集体を単離し、さらに融解分析にかけて特定の標的分析物を同定することができる。代替例として、凝集体を脱ハイブリダイズしてリポーター・オリゴヌクレオチドを遊離させることが可能である。次いで、これらのリポーター・オリゴヌクレオチドを、任意の好適な検出プローブを用いる任意の好適なDNA検出システムによって検出することが可能である。
【0079】
本発明の別の態様では、凝集体の脱ハイブリダイゼーションによって遊離されたリポーター・オリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドが結合した基材を用いて検出することが可能である。前記オリゴヌクレオチドは、リポーター・オリゴヌクレオチドの少なくとも一部と相補的な配列を有する。リポーター・オリゴヌクレオチドを検出する方法の一部の実施形態は、リポーター・オリゴヌクレオチドを捕捉するために相補的オリゴヌクレオチドが結合された基材を利用する。次いで、これらの捕捉されたリポーター・オリゴヌクレオチドを任意の好適な手段によって検出する。基材を用いることにより、検出可能な変化(シグナル)を増幅し、アッセイの感度を向上させることが可能である。
【0080】
検出可能な変化の観察を可能にする任意の基材を使用しうる。好適な基材には、透明な固体表面(たとえば、ガラス、石英、プラスチックおよび他のポリマー)、不透明な固体表面(たとえば、TLCシリカ・プレート、濾紙、ガラス繊維フィルタ、硝酸セルロース膜、ナイロン膜などの白色個体表面)、および導電性固体表面(たとえば、インジウムスズ酸化物(ITO))が含まれる。基質は任意の形または厚さでよいが、一般には平坦で薄いであろう。ガラス(たとえば、スライド・ガラス)またはプラスチック(たとえば、マイクロタイター・プレートのウエル)などの透明な基材が好ましい。
【0081】
オリゴヌクレオチドを基材に結合させるのに適したいずれの方法も使用することができる。例を挙げれば、オリゴヌクレオチドを、たとえば非特許文献36〜40および非特許文献18に記載のようにして基材に結合することが可能である。
【0082】
基材に接続されたオリゴヌクレオチドは、検出されるリポーター・オリゴヌクレオチドの配列の第1の部分と相補的な配列を有する。基材上のオリゴヌクレオチドのリポーター・オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを可能にするのに有効な条件下でリポーター・オリゴヌクレオチドを基材と接触させる。このようにしてリポーター・オリゴヌクレオチドが基材と結合する。ナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物などの検出プローブを加える前に、結合していないリポーター・オリゴヌクレオチドをすべて基材から洗浄することが好ましい。
【0083】
本発明の一態様では、基材上のオリゴヌクレオチドと結合したリポーター・オリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドを結合した第1のタイプのナノ粒子と接触させる。オリゴヌクレオチドは、リポーター・オリゴヌクレオチドの配列の第2の部分と相補的な配列を有し、接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドのリポーター・オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを可能にするのに有効な条件下で行う。このようにして第1のタイプのナノ粒子が基材と結合する。ナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物を基材と結合させた後、基材を洗浄し、結合していないナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物をすべて除去する。
【0084】
第1のタイプのナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、すべて同じ配列を有しても、または検出されるリポーター・オリゴヌクレオチドの別の部分とハイブリダイズする、異なる配列を有してもよい。異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを用いる場合、各ナノ粒子は、その異なるオリゴヌクレオチドすべてを結合してもよいが、異なるオリゴヌクレオチドは異なるナノ粒子に接続していることが好ましい。あるいは、第1のタイプの各ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが複数の異なる配列を有し、それらのうちの少なくとも1つは、検出すべきリポーター・オリゴヌクレオチドの一部とハイブリダイズしなければならない。
【0085】
場合により、基材に結合した第1のタイプのナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物を、オリゴヌクレオチドが結合した第2のタイプのナノ粒子と接触させる。これらのオリゴヌクレオチドは、第1のタイプのナノ粒子に結合されたオリゴヌクレオチドの1つまたは複数の配列の少なくとも一部と相補的な配列を有し、接触は、第1のタイプのナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが第2タイプのナノ粒子上のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするのを可能にするのに有効な条件下で行う。ナノ粒子が結合した後で、基材を洗浄し、結合していないナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物をすべて除去することが好ましい。
【0086】
ハイブリダイゼーションの組合せにより検出可能な変化が生じる。検出可能な変化は、複数のハイブリダイゼーションの結果検出可能な変化が増幅されることを除いて、前述の変化と同様である。特に、第1のタイプの各ナノ粒子は、複数のオリゴヌクレオチド(同一または異なる配列を有する)が接続されているので、第1のタイプの各ナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物は、複数の第2のタイプのナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物とハイブリダイズすることが可能である。また、第1のタイプのナノ粒子−オリゴヌクレオチド複合物は、検出すべきリポーター・オリゴヌクレオチドの2つ以上の部分とハイブリダイズさせることができる。複数のハイブリダイゼーションによってもたらされる増幅は、変化を初めて検出可能にし、または検出可能な変化の大きさを増大させることができる。この増幅は、アッセイの感度を高め、少量のリポーター・オリゴヌクレオチドの検出を可能にする。
【0087】
望ましい場合には、第1および第2のタイプのナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物の逐次追加によってナノ粒子の付加的層を積み上げることが可能である。このように、標的核酸1分子当たり固定化されるナノ粒子数をさらに増加させ、これに応じたシグナルの強度を増大させることが可能である。
【0088】
また、相互に直接ハイブリダイズするように設計された第1および第2のタイプのナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物を用いる代わりに、結合しているオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの結果としてナノ粒子を一緒に結合させることに役立つと思われるオリゴヌクレオチドを有するナノ粒子が使用できると考えられる。
【0089】
基材を用いる場合には、標的リポーター・オリゴヌクレオチドの複数の部分を検出するため、複数の異なるリポーター・オリゴヌクレオチドを検出するため、または双方を検出するために、アレイ中の基材に複数の初期タイプのナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物またはオリゴヌクレオチドを結合することが可能である。たとえば、基材にスポットの列を備え、各スポットは、標的リポーター・オリゴヌクレオチドの部分と結合するように設計されたさまざまなタイプのオリゴヌクレオチドを含める。1つまたは複数のリポーター・オリゴヌクレオチドを含有するサンプルを各スポットに供し、適切なオリゴヌクレオチド−ナノ粒子複合物を用いて前述の方法のうちの1つで残りのアッセイを行う。
【0090】
最後に、基材を用いる場合には、銀染色によって検出可能な変化を生成し、またはさらに増強することが可能である。銀染色は、銀の還元を触媒する任意のタイプのナノ粒子について用いることが可能である。貴金属(たとえば、金および銀)でできたナノ粒子が好ましい。非特許文献41および42を参照のこと。核酸の検出に用いられているナノ粒子が銀の還元を触媒しない場合には、銀イオンを核酸と複合体形成させ、還元を触媒することが可能である。非特許文献43を参照のこと。また、核酸上のリン酸基と反応させることが可能な銀染色も知られている。
【0091】
銀染色を用い、前述のアッセイを含む基材上で行われる任意のアッセイにおいて検出可能な変化を生成または増強することが可能である。特に、銀染色は、ナノ粒子の層の使用を多くの場合に省略することが可能であるように、単一タイプのナノ粒子を用いるアッセイの感度を非常に増大させることが分かった。
【0092】
基材上で行われるリポーター・オリゴヌクレオチドを検出するためのアッセイでは、検出可能な変化をオプティカル・スキャナで観察することが可能である。好適なスキャナには、コンピュータに文書を取り込むために用いられる反射モードで操作する可能なスキャナ(たとえば、フラットベッド・スキャナ)、この機能を実行する能力があり、または同タイプの光学系を利用する他の装置、任意のタイプのグレースケール感応性測定装置、および本発明に従って基材をスキャンするように改変された標準的スキャナ(たとえば、基材のホルダーを備えるように改変されたフラットベッド・スキャナ)が含まれる(現時点では、透過モードで動作するスキャナを用いることが可能かどうかは分かっていない)。スキャナの解像度は、基材上の反応領域がスキャナの単一画素より大きいように十分でなければならない。任意の基材にスキャナを使用することが可能であるが、ただしアッセイによって生みだされる検出可能な変化は基材を背景にして観察が可能でなければならない(たとえば、銀染色によって生成されるスポットなどの灰色のスポットは、白色の背景では観察することが可能であるが、灰色の背景で観察することは不可能である)。スキャナは、白黒スキャナであることが可能であり、カラー・スキャナであることが好ましい。スキャナは、コンピュータに文書を取り込むのに使用されるタイプの標準的カラー・スキャナであることが最も好ましい。このようなスキャナは、安価で容易に入手が可能である。たとえば、Epson Expression636(600×600dpi)、UMAX Astra1200(300×300dpi)、Microtec1600(160
0×1600dpi)を使用することが可能である。基材をスキャンすることによって得られる画像を処理するためのソフトウェアが搭載されたコンピュータにスキャナを連結する。ソフトウェアは、Adobe Photoshop5.2およびCorel Photopaint8.0などの容易に入手が可能である標準的ソフトウェアであることが可能である。グレースケール測定を計算するためのソフトウェアの使用は、アッセイの結果を定量する手段を提供する。また、ソフトウェアは、着色スポットの色数を提供することが可能であり、核酸の存在の定性的な判定、核酸の量、またはその双方を提供するように再検討することが可能であるスキャン画像(たとえば、プリントアウト)を作製することが可能である。コンピュータは、容易に入手が可能である標準的パーソナル・コンピュータであることが可能である。したがって、標準的ソフトウェアが搭載された標準的コンピュータに連結された標準的スキャナの使用は、アッセイを基材上で行った場合に核酸を検出および定量する便利かつ容易で安価な手段を提供することが可能である。また、スキャンをコンピュータに保存し、さらに参照または使用するために結果の記録を保存することが可能である。勿論、望ましい場合には、より高性能な機器およびソフトウェアを使用することが可能である。
【0093】
任意の標的リポーター・オリゴヌクレオチドのアッセイでは、ユニバーサルなナノ粒子‐オリゴヌクレオチド複合物を使用することができる。この「ユニバーサル・プローブ」は、単一配列のオリゴヌクレオチドが結合されており、リポーター・オリゴヌクレオチドの一部と相補的である。ユニバーサル・プローブに結合されたオリゴヌクレオチドは、支持体に結合されたリポーター・オリゴヌクレオチドの一部とハイブリダイズすることが可能である。第1の部分は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部と相補的である。第2の部分は、検出すべき核酸の配列の一部と相補的である。結合オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション後に、検出すべき核酸の複数部分または異なる核酸標的に「ユニバーサル・プローブ」が結合することが可能である場合には、同一の第1の部分および異なる第2の部分を有する複数の結合オリゴヌクレオチドを使用することが可能である。
【0094】
用語「ある(aまたはan)」ものは、1つまたは複数のものを指すことに注意すべきである。たとえば、「ある特徴」は、1つまたは複数の特徴または少なくとも1つの特徴を指す。したがって、用語「ある(aまたはan)」、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」は本願明細書では互換的に用いられる。また、用語「からなる(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」を互換的に用いてきたことにも注意すべきである。
【実施例1】
【0095】
(オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子の調製)
A.金(gold)ナノ粒子の調製
オリゴヌクレオチド修飾した13nmの金(Au)粒子を、文献の方法によって調製した(〜110個のオリゴヌクレオチド/粒子)18〜20。金コロイド(直径13nm)は、非特許文献44および45に記載のように、HAuClのクエン酸塩の還元によって調製した。簡潔に説明すると、すべてのガラス器具を王水(HClを3部、HNOを1部)で洗浄し、Nanopure(登録商標)HOですすぎ、次いで使用前にオーブンで乾燥した。HAuClおよびクエン酸ナトリウムは、アルドリッチケミカルカンパニー社(Aldrich Chemical Company)から購入した。HAuClの水溶液(1mM、500mL)を撹拌しながら還流させ、次いで38.8mMクエン酸3ナトリウム溶液50mLを素早く加えると、溶液の色が淡黄色から深赤色に変化した。変色後、溶液をさらに15分還流し、室温まで冷却させ、続いてマイクロンセパレーションインコーポレイティッド社(Micron Separations Inc.)の0.45μmナイロン・フィルタで濾過した。金コロイドの特徴は、ヒューレット・
パッカード(Hewlett Packard)8452Aダイオード・アレイ分光光度計を用いる紫外可視分光法、および日立(Hitachi)8100透過型電子顕微鏡を用いる透過型電子顕微鏡法(TEM)によって明らかにした。直径13nmの金粒子の典型的な溶液は、518〜520nmに中心がある特徴的な表面プラズモンバンドを示した。直径13nmの金粒子は、10〜72ヌクレオチドの範囲の標的およびプローブ・オリゴヌクレオチド配列と凝集した場合に目に見える変色を生じるであろう。
【0096】
B.オリゴヌクレオチドの合成
オリゴヌクレオチドは、ホスホアミダイト化学反応を用いる単一カラム式のMilligene Expedite DNA合成装置を用い、1マイクロモルのスケールで合成した(非特許文献46)。すべての溶液はミリジーン社(Milligene)から購入した(DNA合成用)。平均カップリング効率は98から99.8%まで変化し、最後のジメトキシトリチル(DMT)保護基はオリゴヌクレオチドから切断せず、精製に役立てた。
【0097】
3’チオール‐オリゴヌクレオチドの場合には、Thiol‐Modifier C3
S‐S CPG支持体をグレンリサーチ社(Glen Research)から購入し、自動合成装置で使用した。最後のジメトキシトリチル(DMT)保護基は除去せず、精製に役立てた。合成後、担持されたオリゴヌクレオチドを濃水酸化アンモニウム1mL中に55℃で16時間置き、固体支持体からオリゴヌクレオチドを切断し、塩基から保護基を除去した。
【0098】
アンモニアを蒸発させた後、254nmにおけるDNAの紫外シグナルをモニターしながら、流速1mL/分で0.03M酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)、pH7および95%CHCN/5%0.03M TEAAの1%/分グラジエントによるHP ODS Hypersil(登録商標)カラム(5μm、250×4mm)を用いた分取用逆相HPLCによってオリゴヌクレオチドを精製した。DMT保護された12塩基の修飾オリゴマーの保持時間は30分であった。続いて、精製オリゴヌクレオチドを80%酢酸溶液中に30分間浸漬することによってDMTを切断し、続いて蒸発させた。オリゴヌクレオチドを水500μL中に再分散させ、酢酸エチル(3×300μL)で抽出した。溶媒の蒸発後、オリゴヌクレオチド(10OD)を50℃において一晩、0.04M DTT、0.17Mリン酸緩衝液(pH8)溶液100μL中に再分散させ3’ジスルフィドを切断した。この溶液(<10OD)の一定量を脱塩用NAP‐5カラムにより精製した。オリゴヌクレオチドの量は、260nmにおける吸光度によって決定した。純度は、254nmにおけるDNAの紫外シグナルをモニターしながら、流速1mL/分で10mM NaOH(pH12)および10mM NaOHの2%/分グラジエントによるDionex Nucleopac(登録商標)PA‐100カラム(250×4mm)を用いるイオン交換HPLCによって評価した。保持時間(T)が18.5、18.9および22分である3本のピークが観察された。T=22.0分の主要な単一ピークはジスルフィドによるものとされ、面積は79%であった。より短い18.5および18.9分という保持時間の2本のピークは、面積がそれぞれ〜9%および12%であり、酸化された不純物および残留チオール・オリゴヌクレオチドによるものとされた。
【0099】
5’アルキルチオール修飾オリゴヌクレオチドは、以下のプロトコルを用いて調製した。1)CPGに結合し、脱トリチル化されたオリゴヌクレオチドは、標準的手順を用いる自動DNA合成装置(Expedite)で合成した;2)CPGカートリッジを取り外し、使い捨てタイプのシリンジを両端に接続した;3)5‐Thiol‐Modifier C6‐ホスホアミダイト(グレンリサーチ社(Glen Research))20μmoleを含有する乾燥アセトニトリル溶液200μLを標準的「テトラゾール活性化剤溶液」200μLと混合し、シリンジのうち1本を経由してオリゴヌクレオチド‐CP
Gが入ったカートリッジ中に導入した;4)同溶液を、カートリッジ内をゆっくりと10分間前後運動させ、次いで排出し、続いて乾燥アセトニトリル(2×1mL)で洗浄した;5)THF/ピリジン/水に溶かした0.02Mヨウ素700μLで中間体のホスファイトを酸化し(30秒)、続いてアセトニトリル/ピリジン(1:1、2×1mL)および乾燥アセトニトリルで洗浄した。次いで、3’‐アルキルチオール・オリゴヌクレオチドで記載したように、トリチルオリゴヌクレオチド誘導体を単離し精製した。次いで、乾燥オリゴヌクレオチドサンプルに50mM AgNO溶液15μL(10ODの場合)を加えることによって(20分間)トリチル保護基を切断すると、乳白色の懸濁液が得られた。DTTの10mg/mL溶液20μLを加えることによって過剰の硝酸銀を除去すると(5分の反応時間)、直ちに黄色の沈殿を生成し、これを遠心分離によって除去した。次いで、オリゴヌクレオチド溶液(<10OD)の一定量を精製のために脱塩用NAP‐5カラムに移した。得られた5’アルキルチオール・オリゴヌクレオチドの最終的な量および純度は、3’アルキルチオール・オリゴヌクレオチドについて前述した技法を用いて評価した。イオン交換HPLCによって2本の主要ピークが観察され、保持時間は19.8分(チオールのピーク、面積で16%)および23.5分(ジスルフィドのピーク、面積で82%)であった。
【0100】
C.オリゴヌクレオチドの金粒子への接続
金コロイドの水溶液1mL(17nM)を、水に溶かした過剰(3.68υM)のチオール‐オリゴヌクレオチド(長さ22塩基)と混合し、混合物を室温に12〜24時間放置した。次いで、溶液を0.1M NaCl、10mMリン酸緩衝液(pH7)とし、40時間放置した。この「エージング」工程は、チオール‐オリゴヌクレオチドによる表面被覆率を増大させ、金表面からオリゴヌクレオチド塩基を解離させるために設計された。次に、Eppendorf Centrifuge5414において14,000rpmで約25分間溶液を遠心分離すると、(260nmにおける吸光度が示すように)大部分のオリゴヌクレオチドを含有する極めて淡いピンク色の上清が(520nmにおける吸光度が示すように)7〜10%のコロイド状の金と共に、およびチューブの底には堅くしまり暗色のゼラチン状の残渣が得られた。上清を除去し、緩衝液(10mMリン酸塩、0.1M NaCl)約200μL中に残渣を再懸濁し、再度遠心分離した。上清溶液を除去後、残渣を緩衝液(10mMリン酸塩、0.3M NaCl、0.01%NaN)1.0mL中に入れた。得られた赤色のマスター溶液は、室温で数ヶ月の放置、シリカ薄層クロマトグラフィ(TLC)プレート上へのスポッティング(実施例4を参照のこと)、および1M NaCl、10mM MgCl、または高濃度のサケ精子DNAを含有する溶液への添加に際して安定であった(すなわち、赤色のままで凝集しなかった)。
【実施例2】
【0101】
(ハプテン修飾オリゴヌクレオチドの調製)
ハプテン修飾オリゴヌクレオチドは、標準的な固相DNA合成手順を用い、A1の場合にはビオチン‐トリエチレン・グリコール・ホスホアミダイトおよびB1の場合には2,4‐ジニトロフェニル−トリエチレン・グリコール・ホスホアミダイト(グレンリサーチ社(Glen research))で調製した21
【0102】
ビオチン修飾オリゴヌクレオチドは、以下のプロトコルを用いて調製した:CPGに結合し、脱トリチル化されたオリゴヌクレオチドは、標準的手順21を用いる自動DNA合成装置(Expedite)で合成した。次いで、CPGカートリッジを取り外し、使い捨てタイプのシリンジを両端に接続した。ビオチン‐トリエチレン・グリコール・ホスホルアミダイト20μmoleを含有する乾燥アセトニトリル溶液200μLを標準的「テトラゾール活性化剤溶液」200μLと混ぜ、シリンジのうち1本を経由してオリゴヌクレオチド‐CPGが入ったカートリッジに導入した。同溶液を、カートリッジ内をゆっくりと10分間前後運動させ、次いで排出し、続いて乾燥アセトニトリル(2×1mL)で
洗浄した。その後、THF/ピリジン/水に溶かした0.02Mヨウ素700μLで中間体のホスファイトを酸化し(30秒)、続いてアセトニトリル/ピリジン(1:1、2×1mL)および乾燥アセトニトリルで洗浄し、続いて窒素流でカラムを乾燥した。トリチル保護基は除去せず、精製に役立てた。担持されたオリゴヌクレオチドを濃水酸化アンモニウム1mL中に55℃で16時間置き、固体支持体からオリゴヌクレオチドを切断し、塩基から保護基を除去した。アンモニアを蒸発後、254nmにおけるDNAの紫外シグナルをモニターしながら、流速1mL/分で0.03M酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)、pH7および95%CHCN/5%0.03M TEAAの1%/分グラジエントによるHP ODS Hypersil(登録商標)カラム(5μm、250×4mm)を用いる分取用逆相HPLCによってオリゴヌクレオチドを精製した。DMTで保護されたオリゴヌクレオチドの保持時間は〜32分であった。続いて、精製オリゴヌクレオチドを80%酢酸溶液中に30分間浸漬することによってDMTを切断し、続いて蒸発させた。オリゴヌクレオチドを水500μL中に再分散させ、酢酸エチル(3×300μL)で抽出し乾燥した。同様のプロトコルを用い、2,4‐ジニトロフェニル‐トリエチレン・グリコール・ホスホアミダイトを用いてDNP修飾オリゴヌクレオチドを合成した。
【実施例3】
【0103】
(ナノ粒子複合体プローブを用いるアッセイ)
オリゴヌクレオチドで修飾した13nmの金粒子を、実施例1に記載のように調製した。ハプテン修飾オリゴヌクレオチドを、標準的な固相DNA合成手順21を用い、A1の場合にはビオチン‐トリエチレン・グリコール・ホスホアミダイトおよびB1の場合には2,4‐ジニトロフェニル‐トリエチレン・グリコール・ホスホアミダイト(グレンリサーチ社(Glen research))で実施例2に記載のように調製した。本研究で用いるPBS緩衝溶液は、0.3M NaClおよび10mMリン酸緩衝液(pH7)からなる。IgEおよびIgG1は、シグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich)[米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)所在]から購入し、使用前に0.05%Tween20およびバックグラウンドタンパク質(10ug/mlリゾチーム、1%ウシ血清アルブミン、および5.3ug/ml抗ジゴキシン;各10uL)を含む0.3M PBS緩衝液に溶かした(最終濃度:4.3×10−8b/μl)。
【0104】
プローブを調製するため、オリゴヌクレオチド修飾粒子(13nM、300μL)を、図1に配列を示すハプテン修飾相補オリゴヌクレオチド(10μMを10μL)およびバイオバーコードDNA(10μMを10μL)と室温で2〜3時間ハイブリダイズさせた。未反応のハプテン修飾オリゴヌクレオチドおよびバイオバーコードを、ナノ粒子プローブの遠心分離(12,000rpm、20分)および続く上清のデカンテーションによって除去した。
【0105】
IgEおよび/またはIgG1の典型的なアッセイでは、プローブ(〜13nM)を含有する溶液に標的タンパク質(各々43μg/mlを40μl)を加え、混合物を37℃で50分間インキュベートしてタンパク質‐ハプテン複合体形成を促進した。すべての成分、特に相補DNA鎖間の完全な反応を確実にするため、溶液を−15℃で20分間インキュベートしてハイブリダイゼーションを促進し(ベケル社(Boekel)製Tropicooler(登録商標)Hot/Coldブロックインキュベータ)、4℃で24時間保存した。標的タンパク質が存在する場合には、粒子凝集が起こり、沈殿とともに金ナノ粒子プラズモンバンドのシフトおよび赤色から紫色への変色をもたらす。ハイブリダイズした生成物を遠心分離し(3000rpmで2分間)、未反応成分を含有する上清を分析に先立ってデカンテーションにより除去した。どのタンパク質が存在するかを決定するため、温度の関数として260nmにおける吸光度をモニターする融解分析を溶液中で行う(図2)。前述のプロトコルによりIgG1をプローブで処理する場合、溶液はピンク
がかった青色に変化し、ナノ粒子凝集体の生成を示す。標的タンパク質は存在しないがバックグラウンドタンパク質が存在する対照実験では、識別可能な沈殿は認められない。溶液の融解分析は、融解温度(Tm)55℃とともに鋭い相転位を示している。これは、IgG1標的についての予想相転位である(図2A(点線))。新たなプローブ溶液にIgEを添加すると、同様の変色が観察されるが、融解分析からは、この標的について予想される相転位であるTm36℃を伴う曲線が得られる(図2A(実線))。注目すべきことに、プローブ溶液に両方のタンパク質標的を添加すると、溶液は濃紫色に変化し、融解分析は、2つの明確なトランザクション(transaction)を示す。この曲線の一次導関数は、それぞれ36および55℃に中心のある2つのピークを示す(図2B)。このことは、2つの別個の会合体が生成し、オリゴヌクレオチド・バーコードに由来するそれらの融解特性を用いて2つのタンパク質標的を区別することが可能であることを示している。
【実施例4】
【0106】
(ナノ粒子複合体プローブを用いるアッセイ)
この戦略の変形形態を用い、前述のシステムの感度を増加させ、1溶液中で調べることが可能である標的数を増やすことが可能である(図3)。この戦略により、DNAバイオバーコードを用いてタンパク質標的を間接的に検出することが可能である。12量体オリゴヌクレオチドは、412種類の異なる配列を有し、それらの多くを用いて図1Aに示すように目的の多価タンパク質用のバーコードを調製することが可能である。アッセイのこの変形形態では、生成する凝集体の融解特性を溶液中では測定せず、遠心分離(3000rpmで2分間)により未反応のプローブおよび標的分子から凝集体内のDNAバイオバーコードを分離する。次いで、溶液に水を加えることによって凝集体を変性させ、複合体形成したDNAを遊離させる。粒子およびタンパク質は、遠心濾過装置(ミリポア(Millipore)Microcon(登録商標)YM‐100、3500rpmで25分間)によってDNAバーコードから分離することが可能である。DNAバーコードを単離したら、それらをオリゴヌクレオチド・アレイ上に捕捉し、多くのDNA検出アッセイのうちの1つを用いて同定することが可能である(図3)。本願明細書に記載のIgG1およびIgEに関する実施例の場合には、該バーコードの半分と相補的であるオリゴヌクレオチドで機能化された(直径250μmのスポット)顕微鏡用スライド上にバーコードを捕捉する(図1のA3およびB3)。バーコードがオリゴヌクレオチド・アレイによって捕捉されると、バーコードの残りの部分と相補的であるDNA修飾粒子をアレイとハイブリダイズさせることが可能である(実験の項を参照)。標準的なスキャン測定の手法[11](写真現像溶液による処理を含む)により現像されれば、フラットベッド・スキャナを用いて結果を定量することが可能である(図4)11。IgG1が存在する場合には、IgG1のために設計されたスポットのみが測定可能なシグナルを示す。同様に、IgEが存在する唯一のタンパク質である場合には、IgEのために設計されたスポットのみがシグナルを示す。最後に、両方のタンパク質が存在する場合には、両スポットが強いシグナルを示す。
【0107】
スキャン法によるDNAバイオバーコード検出の場合には、DNA/金ナノ粒子会合体をポリスチレンの1.5mLバイアル中で遠心分離し(3000rpmで2分間)、上清を除去した。凝集体にPBS緩衝溶液(700μl)を加え、この手順を繰り返して未反応タンパク質およびアッセイ成分から凝集体を確実に単離した。次いで、凝集体の入ったバイアルに水500μlを加えて凝集体を変性させた。マイクロアレイを用意し、文献の方法に従ってDNAハイブリダイゼーション法を用いた11、22。単離したDNAバイオバーコードを、A2修飾ナノ粒子またはB2修飾ナノ粒子(2nM)とあらかじめ混合し、DNAマイクロアレイに曝露し、ハイブリダイゼーション用チャンバ(グレイスバイオラボ社(GRACE BIO‐LABS))中で室温で3時間インキュベートした。次いで、0.3M NaNOおよび10nM NaHPO/NaHPO緩衝液(
pH4)でアレイを洗浄し、室温で3分間Silver Enhancer Solution(シグマ社(Sigma))中に浸した。スライドを水で洗浄し、次いでフラットベッド・スキャナで分析した。
【0108】
【表1】

【表2】

【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】DNA/金ナノ粒子をベースとするタンパク質検出スキームを示す図。(A)ハプテン修飾ナノ粒子プローブの調製。(B)タンパク質結合プローブを用いるタンパク質検出。配列Aには9個のG、C対が存在するが、配列Bに存在するのはわずか2個のG、C対であることに注意。
【図2】DNAおよびタンパク質によって連結された金ナノ粒子凝集体についての熱変性プロファイルを示す図。260nmにおける吸光度を上昇する温度(毎分1℃、1分の保持時間)の関数としてモニターした。各紫外可視スペクトルを、凝集体を浮遊させるために絶え間なく撹拌しながら測定した。融解分析を行う前に、すべての凝集体を0.3M PBS1mlに懸濁した。A)1つの標的抗体を含む2つのプローブは、IgE(実線)、IgG1(点線)を示す;すべてのデータは正規化されている;(B)両標的抗体を含む2つのプローブを示す。挿入図;熱変性曲線の一次導関数。
【図3】タンパク質のバイオバーコードとしてDNAを用いる、アレイをベースとするタンパク質検出スキームを示す図。
【図4】DNAバイオバーコードのスキャン測定によるDNAアレイ検出を示す図。左のカラムはIgG1に関するバイオバーコードの検出用であり、右のカラムはIgEに関するバイオバーコード用である。捕捉オリゴヌクレオチドは、IgG1システムの場合には5’チオール修飾‐ATAACTAGAACTTGAであり、IgEシステムの場合には5’チオール修飾‐TTATCTATTATTである。各スポットは直径が約250umであり、Epson Expression 1640XLフラットベッド・スキャナ(米国エプソン社(Epson America)[米国カリフォルニア州ロングビーチ(Longbeach)所在])でグレースケールにより読み取る。これらのアッセイについて検討したが、同アッセイは20nMから700nMの標的濃度範囲にわたって有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる粒子複合体プローブを提供するステップであって、該DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、該粒子に結合した該オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合した該オリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、該DNAバーコードは、該粒子に結合した該オリゴヌクレオチドの少なくとも一部および該特異結合性相補体が結合した該オリゴヌクレオチドとハイブリダイズされるステップ;
分析物と粒子複合体プローブ間の特異結合性相互作用を可能にし、分析物の存在下で凝集性複合体を生成するのに有効な条件下で、サンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップ;
凝集性複合体を単離し、該凝集性複合体を脱ハイブリダイズして該DNAバーコードを遊離するのに有効な条件下に該凝集性複合体を供するステップ;
DNAバーコードを単離するステップ;および
DNAバーコードの存在を検出するステップ、からなる方法。
【請求項2】
サンプル中の標的分析物の存在を検出するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、該DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、該粒子に結合した該オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合した該オリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有するステップ;
粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドに対するDNAバーコードのハイブリダイゼーションを可能にし、分析物と分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとの間の特異結合性相互作用を可能にするのに有効な条件下で、サンプルを粒子複合体プローブと接触させるステップであって、前記接触が分析物の存在下で凝集性複合体の生成をもたらすステップ;
凝集性複合体を単離し、該凝集性複合体を脱ハイブリダイズしてDNAバーコードを遊離するのに有効な条件下に凝集性複合体を供するステップ;
DNAバーコードを単離するステップ;および
DNAバーコードの存在を検出するステップ、からなる方法
【請求項3】
オリゴヌクレオチドが結合した粒子、DNAバーコード、および標的分析物に対する特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドからなる粒子複合体プローブであって、DNAバーコードは少なくとも2つの部分を有する配列を有し、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、DNAバーコードの第1の部分と相補的である配列を有し、特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドは、DNAバーコードの第2の部分と相補的である配列を有し、DNAバーコードは、粒子に結合したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部および特異結合性相補体が結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズされる粒子複合体プローブ。
【請求項4】
粒子がナノ粒子からなる、請求項3に記載のプローブ。
【請求項5】
粒子が金属、半導体、絶縁体、または磁性ナノ粒子である、請求項3に記載のプローブ。
【請求項6】
粒子が金ナノ粒子である、請求項3に記載のプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−143(P2008−143A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231588(P2007−231588)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【分割の表示】特願2002−578491(P2002−578491)の分割
【原出願日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願人】(501216012)ナノスフェアー インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】NANOSPHERE INC.
【Fターム(参考)】