説明

オリゴペプチドの局所適用及び経皮送達のための組成物及び方法

本発明は、動物の組織におけるシナプス伝達を減少させるためのオリゴペプチドの経皮適用に関する。一態様において、本発明は、オリゴペプチド及び場合により、本明細書に記載した正に荷電した分岐基又は「有効」基を有する正に荷電した「骨格」を含む担体を含む組成物に関する。最も好ましくは、正に荷電した担体は、長鎖の正に荷電したポリペプチド又は正に荷電した非ペプチジルポリマー、例えばポリアルキレンイミンである。本発明は、有効量のそのような組成物を局所に、好ましくは、そのような治療を必要とする被験者又は患者の皮膚に適用することにより、組織におけるシナプス伝達を減少させる生物学的効果を生じさせる方法にさらに関する。本発明は、オリゴペプチド及び場合により担体並びに使用可能な製剤を製造するために必要とされるような追加の品目、又はそのような製剤を製造するために使用することができるプレミックスを含む組成物を調製又は製剤化するためのキットも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれている、2005年3月3日に出願した米国特許仮出願第60/658,741号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、動物の組織におけるシナプス伝達を減少させることを目的とするオリゴペプチドの経皮適用に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、オリゴペプチドを含む新規組成物、より具体的には、皮膚又は上皮を通したオリゴペプチドの輸送又は送達(「経皮送達」とも称せられる)を可能にし、従って本明細書で述べるような種々の治療、麻酔及び/又は美容の目的で、被験者にオリゴペプチドを提供するための局所適用に使用することができるような組成物に関する。
【0004】
ボツリヌス毒素(ボツリン毒素又はボツリヌス神経毒としても知られている)は、グラム陽性細菌クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)により産生される神経毒である。これは、シナプス伝達即ち神経筋接合部を横切るアセチルコリンの遊離を妨害することにより筋肉の麻痺を生じさせるように作用し、他でも同様に作用すると考えられている。これらの作用は、正常ならば筋肉の痙攣又は収縮を惹起するシグナルを本質的に遮断して、麻痺を生じさせる。
【0005】
Allan B. Scottが、1973年に最初にサルでボツリヌス毒素A(BTX−A)を使用した。Scottは、3カ月持続する可逆的眼筋麻痺を示した(Lamanna, Science, 130:763-772 (1959))。その後間もなく、ヒトにおける、斜視、眼瞼痙攣及び痙性斜頚のBTX−Aによる治療の成功が報告された(Baron et al., In: Baron EJ, Peterson LR, FinegoldSM (Eds), Bailey & Scotts Diagnostic Microbiology, St. Louis, MO: Mosby Year Book, 504-523 (1994); Carruthers and Carruthers, Adv Dermatol, 12:325-348 (1997); Markowitz, In: Strickland GT (Eds) Hunters Tropical Medicine, 7th ed. Philadelphia: W.B. Saunders, 441-444 (1991))。1986年に、眼科形成外科医と皮膚科医からなるJean及びAlastair Carruthers夫妻チームは、眉間部の運動に関連するしわの治療のために、BTX−Aの美容的使用を展開し始めた(Schantz and Scott, In Lewis GE (Ed) Biomedical Aspects of Botulinum, New York: Academic Press, 143-150 (1981))。Carruthersらは、しわの治療のためのBTX−Aの使用から、1992年に、影響力のあるこの取り組みを出版するに至った(Schantz and Scott, In Lewis GE (Ed) Biomedical Aspects of Botulinum, New York: Academic Press, 143-150 (1992))。1994年までに、上記のチームは、顔面における他の運動に関連するしわについての経験を報告した(Scott, Ophthalmol, 87:1044-1049 (1980))。このことが、結果として、美容のBTX−A治療時代の誕生につながった。
【0006】
皮膚は、外部環境の脅威から身体の器官を保護し、体温を保つサーモスタットとして作用する。皮膚は、各々特化された機能を有する数種の異なる層から構成されている。主要な層には、表皮、真皮及び皮下組織が挙げられる。表皮は、結合組織を構成する真皮の上に覆い被さる上皮細胞層の重層する層である。表皮及び真皮の両者は、脂肪組織の内層である皮下組織によりさらに支持されている。
【0007】
皮膚の最上層である表皮の厚さは、わずか0.1〜1.5ミリメートルである(Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。それはケラチノサイトからなり、分化の状態に基づいて数層に分かれる。表皮は、さらに角質層と顆粒マルピーギ細胞及び基底細胞からなる生きている表皮とに分類される。角質層は吸湿性で、その柔軟性及び柔らかさを維持するために少なくとも10重量%の水分を必要とする。吸湿性は、一部ケラチンの保水能力に帰せられる。角質層が柔軟性及び柔らかさを失うと、それは粗で脆くなり、乾燥した皮膚になる。
【0008】
表皮の直下にある真皮の厚さは、1.5〜4ミリメートルである。それは皮膚の3層の中で最も厚いものである。さらに、真皮は、汗腺及び脂腺(ポア又はコメドと呼ばれる皮膚の開口部を通して物質を分泌する)、毛包、神経端、血管及びリンパ管を含む皮膚構造の大部分があるところでもある(Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。しかしながら、真皮の主要成分はコラーゲン及びエラスチンである。
【0009】
皮下組織は皮膚の最も深部の層である。それは、体熱保持のための絶縁体として、及び器官保護のためのショック吸収体としての両方の役割を果たす(Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。それに加えて、皮下組織はエネルギー貯蔵のための脂肪も蓄える。皮膚のpHは、通常5と6の間である。この酸性は、皮脂腺の分泌物からの両性アミノ酸、乳酸、及び脂肪酸の存在に基づいている。「酸被膜」という用語は、皮膚の大部分の上にある水溶性物質の存在を指す。皮膚の緩衝能力は、一部、皮膚角質層に貯蔵されているこれらの分泌物に基づいている。
【0010】
皮膚の主機能の1つは、水及び正常なホメオスタシスに有害な可能性のある物質の輸送に対する障壁を提供することである。丈夫で耐久性のある、半透性の皮膚がなければ身体は急速に脱水するであろう。皮膚は有害な物質の身体への進入を防止することに役立つ。大部分の物質はこの障壁に浸透することができないが、皮膚の透過性を選択的に増大させるために、多数の戦略が開発され、さまざまな成功を収めている。
【0011】
ボツリヌス毒素A型は、人類に知られている最も致死的な天然の生物因子であるといわれている。同時に、ボツリヌス毒素の筋肉麻痺効果が治療効果のために使用されてきた。ボツリヌス毒素の制御された投与は、状態、例えば、機能亢進性骨格筋により特徴づけられる神経筋疾患を治療する筋肉麻痺を提供するために使用されてきた。ボツリヌス毒素で治療されてきた状態には、片側顔面痙攣、成人発症痙性斜頚、裂肛、眼瞼痙攣、脳性麻痺、痙性斜頚、片頭痛、斜視、顎関節症、並びに種々のタイプの筋肉の引きつり及び痙攣が含まれる。より最近、ボツリヌス毒素の筋肉麻痺効果は、しわ、眉間しわ線、及びその他の顔面筋の痙攣又は収縮の結果の治療など顔面の治療的及び美容的適用に利用されている。
【0012】
現在使用されているすべての治療において、ボツリヌス毒素は注意深く制御された又はモニターされた注射により投与され、治療部位に毒素の大きい貯蔵器を作り出している。局所的治療への二三の散発的言及は文献に存在する。例えば、ボツリヌス毒素は局所に適用することができると、Eric R. Firstの米国特許第6063768号中で主張されているが、これをどのようにして達成することができるかに関して情報は与えられていない。発明者としてFirstの名があるもう1つの特許、(Pearce及びFirstの)米国特許第6087327号中で、ボツリヌス毒素はゼラチン安定剤を含む通常のリン酸緩衝液に溶解することにより、局所に投与することができ、イヌの鼻腔内に局所投与することができるという言及がされている。この特許は、そのような実験が実施されたShaariらによる発表(Otolaryngol. Head Neck Surg. 112; 566, 1995)を挙げている。独国特許出願公開第19852981号には、多汗症の治療のためのボツリヌス毒素及びジメチルスルホキシドを含む局所用組成物が記載されている。1人の患者が治療された例が含まれている。
【0013】
米国特許第5670484号(Binder)には、ボツリヌス毒素を含む神経毒を使用して皮膚細胞増殖疾患(例えば、乾癬及び皮膚炎)を治療することにおけるボツリヌス毒素の使用が記載されている。この特許では、組成物を局所に適用することができると主張されているが、適当な製剤の例は示されておらず、試験例ではボツリヌス毒素は注射により投与されている。米国特許出願公開第2003/0113349号(Coleman III)は、ボツリヌス毒素を含む局所用製剤を皮膚における腺の機能亢進状態を治療するために使用できることを提示している。しかしながら、その記載は皮膚腺の状態に関するもので、経皮適用を論じていない。さらに、本明細書で論じた大部分の出版物のように、これも実施例を含んでいない。最後に、米国特許出願公開第2004/0009180号(Donovan)は、多くの状態のための局所治療におけるボツリヌス毒素の使用を開示しており、そのいくつかは経皮送達、例えば、筋肉を弛緩させるための局所適用を、明らかに含んでいる。この発表は経皮送達が増強剤の使用により達成されるとはっきり述べている。この目的のために適当といわれる増強剤には、ポリアルコールを含む種々のアルコール、アミン、アミド、トランスフェローム(transferome)及びリポソームが含まれる。実施例はすべて現在形で書かれていて、一部又は全部が実験的よりも概念的であることを示している。
【0014】
ボツリヌス毒素療法と関連する問題を解決する1つの取り組みは、SNARE複合体に干渉するこの毒素のフラグメント又は他の作用薬を使用することである。SNARE複合体は、神経伝達物質を含む小胞がニューロン細胞膜と融合してそれらの内容物を排出する過程である、ニューロンのエキソサイトーシスで中心的役割を演じる3つのタンパク質の集合体である(Gutierrez, L.M., et al. FEBS Lett. 372, 39-43 (1995); Gutierrez, L.M., et al. J. Biol. Chem. 272, 2634-2639 (1997); Ferrer-Montiel, A.V., et al. FEBS Lett. 435,84-88 (1998))。
【0015】
この研究の結果、20アミノ酸以上の有効なオリゴペプチドが同定された。しかしながら、これらの作用薬は、ボツリヌス毒素自体と同様に、皮膚に浸透する能力は極端に乏しいことも見出された。より最近、グルタミン酸−グルタミン酸−メチオニン−グルタミン−アルギニン−アルギニン(EEMQRR)の配列の6アミノ酸ペプチドが、1つのモデルにおいて若干の活性を保有することが示された(C. Blanes-Mira, et al. International Journal of Cosmetic Science, 2002, 24, 303-310)。
【0016】
このヘキサペプチドは、皮膚浸透を改良するために誘導体化されて10%などの非常に高い濃度で使用されたとき、ある場合(アセチルヘキサペプチド即ちARGIRELINE(登録商標))には、しわを減少させることができる。しかしながら、このペプチドの経皮浸透は、パルミチン酸エステルで誘導体化され、又はアセチル化された(ARGIRELINE(登録商標))ときでさえ、非常に低くとどまっているので、しわ減少の効果を出すには経費のかかる化合物の高濃度が必要になる(化合物の大部分は皮膚を透過しない)。完全なボツリヌス毒素に比較して安全という利点はありそうであるが、それでも、皮膚透過性が低いことにより高負荷で与えることが必要になるこれらの適用において、安全が確認されなければならない。従って、投与経路に関係したボツリヌス毒素の限界は、これらの作用薬についても依然として大きく残る。
【特許文献1】米国特許第6063768号
【特許文献2】米国特許第6087327号
【特許文献3】独国特許出願公開第19852981号
【特許文献4】米国特許第5670484号
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0113349号
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0009180号
【非特許文献1】Lamanna, Science, 130:763-772 (1959)
【非特許文献2】Baron et al., In: Baron EJ, Peterson LR, Finegold SM (Eds), Bailey & Scotts Diagnostic Microbiology, St. Louis, MO: Mosby Year Book, 504-523 (1994)
【非特許文献3】Carruthers and Carruthers, Adv Dermatol, 12:325-348 (1997)
【非特許文献4】Markowitz, In: Strickland GT (Eds) Hunters Tropical Medicine, 7th ed. Philadelphia: W.B. Saunders, 441-444 (1991)
【非特許文献5】Schantz and Scott, In Lewis GE (Ed) Biomedical Aspects of Botulinum, New York: Academic Press, 143-150 (1981)
【非特許文献6】Schantz and Scott, In Lewis GE (Ed) Biomedical Aspects of Botulinum, New York: Academic Press, 143-150 (1992)
【非特許文献7】Scott, Ophthalmol, 87:1044-1049 (1980)
【非特許文献8】Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998)
【非特許文献9】Shaari et al., Otolaryngol Head Neck Surg 112; 566, (1995)
【非特許文献10】Gutierrez, L.M., et al FEBS Lett 372, 39-43 (1995)
【非特許文献11】Gutierrez, L.M., et al. J Biol Chem. 272, 2634-2639 (1997)
【非特許文献12】Ferrer-Montiel, A.V., et al. FEBS Lett. 435,84-88 (1998)
【非特許文献13】C. Blanes-Mira, et al. International Journal of Cosmetic Science, 2002, 24, 303-310
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ボツリヌス毒素の治療的使用と関連する少なくとも2つの問題があることは明らかである。第1は、その使用の厳密な医学的管理が必要になるボツリヌス毒素固有の毒性である。第2は、皮膚に浸透して、必要とされる部位に到達して生物学的効果を発揮できるボツリヌス毒素を得ることにおける大きい困難である。本発明は、ボツリヌス毒素と同様な生物活性を有するが、毒性はずっと低いレベルであり、皮膚浸透を増大させる低い分子量を有するオリゴペプチドを提供することにより、これら両方の問題に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一態様において、本発明は、オリゴペプチド及び場合により、本明細書に記載した正に荷電した分岐基又は「有効」基を有する正に荷電した「骨格」を含む担体を含む組成物に関する。最も好ましくは、正に荷電した担体は、長鎖の正に荷電したポリペプチド又は正に荷電した非ペプチジルポリマー、例えば、ポリアルキレンイミンである。さらに本発明は、有効量のそのような組成物を局所に、好ましくは、そのような治療を必要とする被験者又は患者の皮膚に適用することにより、組織におけるシナプス伝達を減少させる生物学的効果を生じさせる方法に関する。
【0019】
本発明は、前記のオリゴペプチド及び場合により担体並びに使用可能な製剤を作製するために必要とされるような追加の品目、又は上記のような製剤を製造するために使用することができるプレミックスを含む組成物を調製又は製剤化するためのキットも提供する。或いは、キットは被験者にオリゴペプチド及び担体を別々に、しかし組み合わせて投与する手段を含む。
【0020】
本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む6〜約20アミノ酸の第1のオリゴペプチドを含み、-(gly)n1-(arg)n2(下付き文字n1は0〜約20の整数であり、下付き文字n2は独立に約5〜約25の奇数の整数である)、HIV−TAT、アンテナペディアPTD、及びHIV−TAT若しくはアンテナペディアPTDのフラグメント又はそれらの混合物から独立に選択された、正に荷電した分岐基が結合した第2のオリゴペプチドを含む担体をさらに含む組成物も提供する。
【0021】
本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む6〜約20アミノ酸の第1のオリゴペプチドを含み、-(gly)n1-(arg)n2(下付き文字n1は0〜約20の整数であり、下付き文字n2は独立に約5〜約25の奇数の整数である)、HIV−TAT、アンテナペディアPTD、及びHIV−TAT若しくはアンテナペディアPTDのフラグメント又はそれらの混合物から独立に選択された、正に荷電した分岐基が結合した第2のオリゴペプチドを含む担体をさらに含む組成物の治療有効量を投与することを含む、ジストニー、筋痙攣、自律神経障害、脳性麻痺、パーキンソン病、振戦、てんかん、内耳障害、筋疾患、神経絞扼障害、多汗症、ざ瘡、粘膜分泌、乾癬、糖尿病関連皮膚疾患、創傷治癒、乳腺疾患、発毛、泌尿器系疾患、神経精神障害、癌及び高カルシウム血症からなるリストから選択された医学的状態と関連する症状を軽減する方法も提供する。
【0022】
本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む7〜約20アミノ酸のオリゴペプチドを含む化合物も提供する。いくつかの実施形態において、オリゴペプチドは8、9又は10〜約20アミノ酸を含むことができる。
【0023】
本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む7〜約20アミノ酸のオリゴペプチドを含む化合物の治療有効量を投与することを含む、ジストニー、筋痙攣、自律神経障害、脳性麻痺、パーキンソン病、振戦、てんかん、内耳障害、筋疾患、神経絞扼障害、多汗症、ざ瘡、粘膜分泌、乾癬、糖尿病関連皮膚疾患、創傷治癒、乳腺疾患、発毛、泌尿器系疾患、神経精神障害、癌及び高カルシウム血症からなるリストから選択された医学的状態と関連する症状を軽減する方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、組成物、及び適当な製剤の局所適用によるオリゴペプチドの送達、特に経皮送達の方法を提供する。
【0025】
オリゴペプチドは6〜約20アミノ酸を含み、且つアミノ酸配列EEMQRR(配列番号1)を含む。オリゴペプチドは経皮送達されるべきなので、6を超える最大で約20アミノ酸のサイズで可能な限り少ないアミノ酸を含むことが好ましい。いくつかの実施形態で、オリゴペプチドは7、8、9又は10〜約20個のいずれかのアミノ酸を含み、且つアミノ酸配列EEMQRR(配列番号1)を含む。アミノ酸はD又はL型のいずれであってもよい。経皮送達を強化するために、このオリゴペプチドは、アセチル基、アミド基、リン酸エステル基、又は限定されることなくパルミトイル基を含む脂肪酸を含むがこれらに限定されない荷電した基の付加又は類似の修飾により修飾されていてもよい。いくつかの実施形態で、オリゴペプチドは配列番号1に直接隣接した3〜14個の中性即ち非極性アミノ酸の配列を含み、その結果オリゴペプチドは両親媒性を与えられ、皮膚に浸透する能力が増強される。オリゴペプチドのこれらの修飾は、オリゴペプチドのC末端若しくはN末端のいずれか又は両端にあってもよい。修飾を1つのオリゴペプチドに対して組み合わせることもでき、限定するものではない例として、オリゴペプチドは、N末端でアセチル化されて、且つC末端に中性アミノ酸を含むことができ、或いはその逆も可能である。いくつかの実施形態においては、異なる修飾をしたオリゴペプチドを組み合わせることもできた。
【0026】
正に荷電した担体と一緒にオリゴペプチドが使用される実施形態のために、オリゴペプチドは、オリゴペプチドと正に荷電した担体との間の非共有結合相互作用を増強する、配列番号1に隣接するアミノ酸配列を含むことができる。例えば、酸性の負に荷電したアミノ酸の配列は正に荷電した担体と強く相互作用するであろう。そのようなオリゴペプチドの2つの限定するものではない実施形態は、デカペプチドDDDDEEMQRR(配列番号2)及びEEMQRRDDDD(配列番号3)である。いくつかの実施形態において、異なるオリゴペプチドの混合物を使用することができる。例えば、デカペプチドDDDDEEMQRR配列番号2及びEEMQRRDDDD配列番号3の両者を組み合わせて使用することができた。
【0027】
オリゴペプチドのアミノ酸配列1は、ボツリヌス毒素と同様にSNARE複合体の機能に干渉して、アセチルコリンの遊離を抑制し、シナプス伝達が減少する結果を生ずる。配列番号1は、ボツリヌス毒素と同様な生物学的効果を有することが示されている(C. Blanes-Mira, et al. International Journal of Cosmetic Science, 2002, 24, 303-310)。
【0028】
シナプス伝達を減少させる配列番号1の能力を考えると、このオリゴペプチドで治療できる多数の医学的状態がある。これらには、慢性的筋収縮又は痙攣が疼痛又は不能を惹起する状態が含まれるが、これらに限定はされない。それらの状態には、片頭痛若しくは他の頭痛、脳性麻痺、パーキンソン病、てんかん、振戦、ジストニー、筋痙攣、自律神経障害、斜視及び口蓋ミオクローヌスが含まれるが、これらに限定はされない。学説に限定されず、本発明のオリゴペプチドの投与は、侵されている筋肉に届く神経のインパルスを遮断又は減少させ、それにより状態を回復又は軽減させるであろう。本発明は、顔面の細い線即ちしわを減少又は除去することにより美容的外観を改善することを意図するものではない。
【0029】
本発明のオリゴペプチドは、種々の腺の状態を治療するために使用することもできる。多くの腺組織は自律神経インパルスにより制御されているので、本発明のオリゴペプチドは、これらの神経インパルスを遮断し、それによりこれらの組織からの分泌を減少させるために使用することができる。この治療から恩恵を得るであろう特別の医学的状態には、多汗症、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、乳腺疾患及び過剰粘膜分泌が含まれるが、これらに限定はされない。
【0030】
機構は明らかではないが、SNARE複合体に対する本発明のオリゴペプチドの活性に類似の活性を有する神経毒化合物は、乾癬、糖尿病の皮膚症状及び創傷治癒などのある増殖性皮膚疾患において活性を有することが見出されている。本発明のオリゴペプチドによる治療は、増殖性皮膚疾患の症状を軽減又は回復させると期待される。
【0031】
本発明により、本明細書に記載した有効基を有する正に荷電した担体分子は、オリゴペプチドを筋肉及び/又は他の皮膚関連構造に経皮投与することを可能にする、オリゴペプチドのための輸送系として適当であることが見出された。輸送はオリゴペプチドの共有結合修飾なしで起こる。
【0032】
「正に荷電した」とは、担体が、少なくともいくつかの生理学的適合性の条件を含む少なくともいくつかの溶液相条件下で正電荷を有することを意味する。より具体的に、本明細書で使用する「正に荷電した」は、関心のある基が、すべてのpH条件下で荷電する官能性、例えば第4級アミンを含む、又は第1級アミンの場合におけるpH変化などのある溶液相条件下で正電荷を獲得できる官能性を含むことを意味する。より好ましくは、本明細書で使用する「正に荷電した」は、生理学的適合性の条件を通してアニオンと会合する性質を有するこれらの基を指す。当業者に明らかであるように、正に荷電した部分を複数有するポリマーは、ホモポリマーである必要はない。正に荷電した部分の他の例は、先行技術において周知であり、当業者に明らかであるように、容易に利用することができる。
【0033】
一般的に、正に荷電した担体(「正に荷電した骨格」とも称せられる)は、典型的には原子の直鎖であって、鎖中に生理的pHで正電荷を帯びる基を有するか、又は骨格から伸びた側鎖に結合した正電荷を帯びる基を有するかのいずれかである。好ましくは、正に荷電した骨格それ自体は明確な酵素的又は治療的生物活性を有しないであろう。線状の骨格は炭化水素骨格であり、いくつかの実施形態においては、窒素、酸素、イオウ、ケイ素及びリンから選択されたヘテロ原子により中断されている。骨格鎖原子の大部分は通常炭素である。さらに、骨格は、しばしば、反復単位のポリマー(例えば、アミノ酸、ポリ(エチレンオキシ)、ポリ(プロピレンアミン)、ポリアルキレンイミン等)であるが、ヘテロポリマーであってもよい。実施形態の一群において、正に荷電した骨格は、多数のアミン窒素原子が正電荷を帯びたアンモニウム基(四置換)として存在するポリプロピレンアミンである。他の実施形態において、正に荷電した骨格は非ペプチジルポリマーであり、それは、約10,000〜約2,500,000、好ましくは約100,000〜約1,800,000、及び最も好ましくは約500,000〜約1,400,000の分子量を有するポリアルキレンアミン、例えば、ポリエチレンアミン若しくはポリプロピレンイミンなどのヘテロ又はホモポリマーであってよい。実施形態の他の群において、骨格は、正に荷電した基(例えば、アンモニウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、グアニジニウム基、又はアミジニウム基)を含む複数の側鎖部分を結合している。この実施形態の群における側鎖部分は、骨格に沿って一貫した距離間隔で又は変化する間隔で置かれることができる。さらに、側鎖の長さは同様でも異なってよい。例えば、実施形態の一群において、側鎖は、1〜20個の炭素原子を有し、上記の正に荷電した基の1つの遠位端(骨格から離れた)で末端となる線状又は分岐炭化水素鎖であってよい。本発明のすべての態様において、担体とオリゴペプチドとの結びつきは、非共有結合相互作用によるものであり、その例にはイオン相互作用、水素結合、ファンデアワールス力、又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0034】
実施形態の一群において、正に荷電した骨格は、複数の正に荷電した側鎖(例えば、リジン、アルギニン、オルニチン、ホモアルギニン等)を有するポリペプチドである。好ましくは、ポリペプチドは約10,000〜約1,500,000、より好ましくは約25,000〜約1,200,000、及び最も好ましくは約100,000〜約1,000,000の分子量を有する。当業者は、本発明のこの部分においてアミノ酸が使用されるとき側鎖は結合の中心でD又はL型(R又はS立体配置)のいずれかを有することができることを理解するであろう。或いは、骨格は、ペプトイドなどポリペプチドの類似体であってもよい。例えば、Kessler, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32:543 (1993); Zuckermann et al. Chemtracts-Macromol. Chem. 4:80 (1992);及びSimon et al. Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 89:9367 (1992))を参照されたい。簡単に述べると、ペプトイドは、側鎖がα炭素原子よりもむしろ骨格窒素原子に結合したポリグリシンである。上記のように、側鎖部分は通常正に荷電した基で末端となり、正に荷電した骨格成分を提供する。ペプトイドの合成は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,877,278号に記載されている。この用語が本明細書において使用されるとき、ペプトイド骨格構造を有する正に荷電した骨格は、それらがα炭素位置に天然に生ずる側鎖を有するアミノ酸で構成されていないので、「非ペプチド」と見なされる。
【0035】
種々の他の骨格が、例えば、Fletcher et al. ((1998) Chem. Rev. 98:763)により概説され、その総説中に引用されている文献により詳説されているように、例えば、エステル結合、チオアミド(−CSNH−)、逆チオアミド(−NHCS−)、アミノメチレン(−NHCH−)、若しくは逆向きのメチレンアミノ(−CHNH−)基、ケトメチレン(−COCH−)基、ホスフィネート(−PORCH−)、ホスホンアミデート及びホスホンアミデートエステル(−PORNH−)、逆ペプチド(−NHCO−)、trans−アルケン(−CR=CH−)、フルオロアルケン(−CF=CH−)、ジメチレン(−CHCH−)、チオエーテル(−CHS−)、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH−)、メチレンオキシ(−CHO−)、テトラゾール(CN)、スルホンアミド(−SONH−)、メチレンスルホンアミド(−CHRSONH−)、逆スルホンアミド(−NHSO−)などの代替基でペプチドのアミド結合を置き換え、並びに、骨格をマロン酸エステル及び/又はgem−ジアミノアルキルサブユニットで置き換えた、ポリペプチドの立体的又は電子的模倣体を利用して使用され得る。前述の置換の多くは、α−アミノ酸から形成された骨格に比較してほぼ等比体積のポリマー骨格を生ずる。
【0036】
上で提供された骨格の各々に、正に荷電した基を有する側鎖基を付け加えることができる。例えば、スルホンアミドで結合した骨格(−SONH−及び−NHSO−)は、窒素原子に結合した側鎖基を有することができる。同様に、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH−)結合は、ヒドロキシサブユニットに結合した側鎖基を担持することができる。当業者は、標準的合成方法を使用して、正に荷電した側鎖基を提供するように、他の結合の化学的性質を容易に適合させることができる。
【0037】
一実施形態において、正に荷電した骨格は、分岐基(有効基とも称せられる)を有するポリペプチドである。本明細書で使用する有効基又は分岐基は、正に荷電した骨格が組織又は細胞膜を通して移行することを促進する効果を有する任意の作用物質である。有効基又は分岐基の例には、-(gly)n1-(arg)n2(下付き文字n1は0〜20の整数であり、いくつかの実施形態では0〜8であり、他の実施形態では2〜5であり、下付き文字n2は独立に約5〜約25の、いくつかの実施形態では約7〜約17の、他の実施形態では約7〜約13の奇数の整数である)、HIV−TAT若しくはそのフラグメント、又はアンテナペディアのタンパク質導入ドメイン若しくはそのフラグメントが挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる実施形態は、HIV−TATフラグメントが式(gly)p-RGRDDRRQRRR-(gly)q、(gly)p-YGRKKRRQRRR-(gly)q又は(gly)-RKKRRQRRR-(gly)q(下付き文字p及びqは各々独立に0〜20の整数である)を有し、フラグメントはそのC末端又はN末端のいずれかにより骨格に結合しているものである。好ましいHIV−TATフラグメントは、下付き文字p及びqが各々独立に0〜8、より好ましくは2〜5であるものである。他の実施形態において、正に荷電した側鎖又は分岐基は、アンテナペディア(Antp)タンパク質導入ドメイン(PTD)又は活性を保持しているそのフラグメントである。正に荷電した担体も、側鎖の正に荷電した分岐基を全担体重量の百分率として少なくとも約0.05%、約0.05〜約45重量%、またいくつかの実施形態では約0.1〜約30重量%の量で含むことができる。式-(gly)n1-(arg)n2を有する正に荷電した分岐基に対して、その量は約0.1〜約25%である。
【0038】
他の実施形態において、骨格部分はポリリジンであり、正に荷電した分岐基がリジン側鎖のアミノ基に結合している。ポリリジンは、約10,000〜約1,500,000、いくつかの実施形態では約25,000〜約1,200,000、また他の実施形態では約100,000〜約1,000,000の分子量を有することができる。ポリリジンは、例えば、70,000を超える分子量を有するポリリジン、70,000〜150,000の分子量を有するポリリジン、150,000〜300,000の分子量を有するポリリジン、及び300,000を超える分子量を有するポリリジンなどの市販ポリリジン(Sigma Chemical Company社製、St. Louis, Missouri, USA)のいずれでもよい。適当なポリリジンの選択は、組成物の残余の成分に依存し、組成物の全体の正味の正電荷を提供するために十分で、負に荷電した成分の長さの合計の1〜4倍の長さを提供するであろう。適当な正に荷電した分岐基即ち有効基には、例えば、-gly-gly-gly-arg-arg-arg-arg-arg-arg-arg(-Gly3Arg7)又はHIV−TATが含まれる。他の実施形態においては、正に荷電した骨格は、例えば約1,000,000の分子量を有するポリエチレンイミンなどの長鎖ポリアルキレンイミンである。
【0039】
ポリペプチド若しくはポリアルキレンイミンを含み、上記の分岐基を有する正に荷電した骨格又は担体は新規化合物であり、本発明の態様を形成する。
【0040】
本発明の一実施形態においては、正に荷電した分岐基を有する正に荷電した担体のみが、ボツリヌス毒素の経皮送達に必要である。ある実施形態においては、正に荷電した担体は、複数の上記の正に荷電した側鎖基を有するポリペプチド(例えばリジン、アルギニン、オルニチン、ホモアルギニン等)である。ポリペプチドは少なくとも約10,000の分子量を有する。他の実施形態において、正に荷電した担体は、少なくとも約100,000の分子量を有する正に荷電した複数の側鎖基を有するポリアルキレンイミンなどの非ペプチジルポリマーである。そのようなポリアルキレンイミンには、ポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンが含まれる。いずれの例においても、経皮送達のための唯一の必要な作用剤として使用するために、正に荷電した担体分子は、-(gly)n1-(arg)n2(下付き文字n1は0〜20の整数であり、いくつかの実施形態では0〜8であり、さらに他の実施形態では2〜5であり、下付き文字n2は独立に約5〜約25の、いくつかの実施形態では約7〜約17の、及び他の実施形態では約7〜約13の奇数の整数である)、HIV−TAT若しくはそのフラグメント、又はアンテナペディアPTD若しくはそのフラグメントを含む正に荷電した分岐基即ち有効基を含む。側鎖又は分岐基は、上記の一般式-(gly)n1-(arg)n2を有する。他の実施形態は、分岐基又は有効基が、式(gly)p-RGRDDRRQRRR-(gly)q、(gly)p-YGRKKRRQRRR-(gly)q又は(gly)p-RKKRRQRRR-(gly)qを有するHIV−TATフラグメント(下付き文字p及びqは各々独立に0〜20の整数である)であり、そのフラグメントはそのC末端又はN末端のいずれかにより担体分子に結合しているものである。側鎖の分岐基は結合の中心でD又はL型(R又はS立体配置)のいずれかを有することができる。適当なHIV−TATフラグメントは、下付き文字p及びqが各々独立に0〜8、及びいくつかの実施形態においては2〜5の整数であるものである。他の実施形態は、分岐基がアンテナペディアPTD基又はその基の活性を保持しているそのフラグメントであるものである。これらは、当技術分野において、例えばConsole et al., J Biol. Chem. 278:35109 (2003)により知られている。正に荷電した担体は、正に荷電した分岐基を、全担体重量の百分率として少なくとも約0.05%、約0.05〜約45重量%、また他の実施形態では約0.1〜約30重量%の量で含む。式-(gly)n1-(arg)n2を有する正に荷電した分岐基に対して、その量は約0.1〜約25%である。
【0041】
他の実施形態において、担体はリジンの側鎖アミノ基に結合した正に荷電した分岐基を有するポリリジンである。この特別の実施形態で使用されるポリリジンは、例えば70,000を超える分子量を有するポリリジン、70,000〜150,000の分子量を有するポリリジン、150,000〜300,000の分子量を有するポリリジン、及び300,000を超える分子量を有するポリリジンなどの市販ポリリジン(例えばSigma Chemical Company社製、St. Louis, Missouri, USA)のいずれでもよい。しかしながら、適当なポリリジンは少なくとも約10,000の分子量を有する。適当な正に荷電した分岐基即ち有効基には、例えば-gly-gly-gly-arg-arg-arg-arg-arg-arg-arg(-G1y3Arg7)、HIV−TAT又はそのフラグメント、及びアンテナペディアPTD又はそのフラグメントが含まれる。
【0042】
本発明の他の実施形態において、担体は比較的短いポリリジン又はポリエチレンイミン(PEI)骨格(線状であっても分岐していてもよい)であり、正に荷電した分岐基を有する。そのような担体は、輸送効率を劇的に低下させる治療用組成物中の骨格及びボツリヌス毒素の制御されない凝集を最小化するのに有用である。担体が比較的短い線状ポリリジン又はPEI骨格であるとき、骨格は、75,000未満の、いくつかの実施形態においては30,000未満の、及び他の実施形態においては25,000未満の分子量を有するであろう。しかしながら、担体が比較的短い分岐ポリリジン又はPEI骨格であるときには、骨格は、60,000未満の、いくつかの実施形態においては55,000未満の、及び他の実施形態においては50,000未満の分子量を有するであろう。しかしながら、本明細書に記載するような分配剤が組成物中に含まれていれば、分岐したポリリジン及びPEI骨格の分子量は75,000までであってよく、一方線状ポリリジン及びPEI骨格の分子量は150,000までであってよい。
【0043】
本発明の組成物は、特定の治療を必要とする被験者又は患者即ちヒト又はその他の動物の皮膚又は上皮に適用される製品の形態をしている。「必要とする」という用語は、例えば多汗症、ざ瘡又は分泌若しくは汗の過剰産生を伴う他の状態を治療する薬学的及び健康関連の必要性を含むことを意味する。一般的に、組成物はオリゴペプチドを担体と、及び通常は1つ又は複数の薬学的に許容される追加の担体又は賦形剤と混合することにより調製される。それらの最も単純な形態では、それらは緩衝食塩水などの単純な水溶性の、薬学的に許容される担体又は希釈剤を含むことができる。しかしながら、組成物は、局所医薬用又は薬用化粧品組成物に典型的な他の成分、即ち、皮膚科学的に又は薬学的に許容される担体、媒体、又は媒質、即ち適用されると思われる組織に適合性の担体、媒体、又は媒質を含むことができる。本明細書で使用する「皮膚科学的に又は薬学的に許容される」という用語は、そのように記述されるその組成物又は成分が、不適切な毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応等がなくて、これらの組織と接触して使用、又は一般的に患者に使用するのに適していることを意味する。本発明の組成物は、考慮している分野において、特に化粧品及び皮膚科において従来使用されている任意の成分を、必要に応じて含むことができる。組成物は、小アニオン、好ましくは多価アニオン、例えば、リン酸、アスパラギン酸又はクエン酸アニオンの一定量を含むこともできる。
【0044】
それらの形態に関して、本発明の組成物は、溶液剤、乳液剤(マイクロエマルション剤を含む)、懸濁液剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、又は皮膚及び、組成物を使用することができる他の組織に適用するために使用される他の代表的固体若しくは液体組成物を含むことができる。そのような組成物は、オリゴペプチド及び担体に加えて、抗菌剤、加湿剤及び水和剤、浸透剤、防腐剤、乳化剤、天然若しくは合成油、溶媒、界面活性剤、洗剤、ゲル化剤、皮膚軟化薬、酸化防止剤、香料、充填剤、増粘剤、ワックス、臭気吸収材、色素、着色剤、粉末、粘度調節剤及び水などの、並びに場合により麻酔薬、かゆみ止め、植物抽出物、品質改良剤、暗色化剤、淡色化剤、光沢材、保湿剤、雲母、鉱物、ポリフェノール、シリコーン若しくはその誘導体、日焼け止め、ビタミン及び植物医薬を含む、そのような製品で通常使用される他の成分を含むことができる。
【0045】
本発明による組成物は、放出制御(controlled-release)又は徐放性組成物の形態にすることができ、その場合、オリゴペプチド及び任意選択の担体はカプセル化されるか、又は、それらが制御された様式で時間をかけて皮膚に放出されるような材料の中に他の方法で含まれる。オリゴペプチド及び任意選択の担体は基剤、リポソーム、小胞、マイクロカプセル、微小球等の中に、又は固体粒子状材料の中に含ませることができ、それらのすべては、オリゴペプチドの時間をかけた放出を提供するために選択され、及び/又は構成される。オリゴペプチド及び任意選択の担体は一緒に(例えば同じカプセル中に)又は別々に(別のカプセル中に)カプセル化することができる。
【0046】
特別の実施形態において、組成物は、ゲル化剤及び/又は粘度改良剤を含む。これらの作用剤は、組成物の適用を容易に及び正確にするように、通常、組成物の粘度を増大させるために添加される。それに加えて、これらの作用剤は、オリゴペプチドの活性の低下を惹起する傾向がある、オリゴペプチド/担体水溶液の乾燥を防止するのに役立つ。適当な作用剤は、荷電していなくて、オリゴペプチドの活性又はオリゴペプチド−担体複合体の皮膚に移動する効率に干渉しないものである。ゲル化剤は、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などのあるセルロース系ゲル化剤であってよい。いくつかの実施形態において、オリゴペプチド−担体複合体は2〜4%のHPCを有する組成物中で製剤化される。或いは、オリゴペプチド−担体複合体を含む溶液の粘度を、ポリエチレングリコール(PEG)を添加することにより変化させることができる。他の実施形態において、オリゴペプチド−担体複合体溶液は、Cetaphil(登録商標)保湿剤などの予め混合した粘性作用剤と配合される。
【0047】
本発明の組成物は、分配剤を含んでいてもよい。本明細書で使用する「分配剤」は、本発明のオリゴペプチドと担体との望ましくない又は制御されない凝集を防止又は最小化する性質を有する何らかの物質又は添加剤である。分配剤は、例えば、容量の制約により濃縮されたオリゴペプチド溶液を使用しなければならないときに有用になり得る。これらの場合に、分配剤はオリゴペプチドを分散状態に保ち、それにより分配剤がなければ起こるであろうオリゴペプチドの凝集を防止する。一般的に分配剤は、(1)刺激性でなく、(2)オリゴペプチドを破壊せず、(3)透過性を少しも増加させず、(4)信頼できる且つ安定な粒子サイズを与え、(5)電荷を有せず、(6)オリゴペプチドと経皮用担体との複合体に干渉しない。適当な分配剤の例は、エタノール(EtOH)である。いくつかの実施形態において、EtOHは組成物の20%未満であり、他の実施形態においては組成物の5%未満である。
【0048】
オリゴペプチドは、腺の排出を減少させ、又は他の望ましい効果を生じさせるために、有効量で皮膚内の腺構造に送達することができる。この様式でのオリゴペプチドの局所送達は、投薬量を減少させ毒性を減少させて、注射用又は埋め込み用組成物に比較して、所望の効果を得るためのより精密な用量最適化を可能にする。手掌に発症する多汗症の場合に、オリゴペプチドの吸収が最大化されるように、オリゴペプチドを手袋と組み合わせて適用することができる。
【0049】
本発明の組成物は、有効量のオリゴペプチドを投与するように適用される。本明細書で使用する「有効量」という用語は、シナプス伝達の所望の減少を生じさせるのに十分であるが、言うまでもなく安全な量、即ち重大な副作用を避けるのに十分なだけ低い、上で定義したオリゴペプチドの量を意味する。所望の効果には、筋肉の弛緩、振戦の減少、及び腺分泌産生量の減少が含まれるが、これらに限定はされない。本発明の組成物は、単回投与治療として適用するために適当な有効量のオリゴペプチドを含むことができ、又は、投与の場所で希釈するため、若しくは複数回適用で使用するために、より濃縮することができる。本発明の正に荷電した担体の使用により、オリゴペプチドは、多汗症又はざ瘡などの状態を治療するために被験者に経皮投与することができる。オリゴペプチドは、筋肉に又は他の皮膚関連構造に経皮送達するために局所投与される。限定するものではない例として、例えば、脚、肩、背中(腰背部を含む)、腋窩、手掌、足、頚部、鼠径部、手及び足の甲、肘、上腕、膝、太腿、殿部、胴、骨盤、又はオリゴペプチドの投与が望まれる任意の他の身体部分に投与を行うことができる。
【0050】
組成物は、医師又は他の健康管理専門家の指示により又は指示の下に投与される。それらは、単回治療又は時間をかけた一連の定期的治療で投与することができる。上述の目的のオリゴペプチドの経皮送達のために、上記の組成物は、効果が望まれる1カ所又は数カ所の位置で皮膚に局所的に適用される。実施形態では、オリゴペプチドの水溶液を直接皮膚に適用し、オリゴペプチドの活性低下に通じるであろう溶液の乾燥を防止するために、治療域を覆うか(例えば、Cetaphil(登録商標)保湿剤で)、又はバリア(例えば、Telfa)で治療域を封入することが好ましい。いくつかの実施形態においては、オリゴペプチドの適用される量を、如何なる副作用も望ましくない結果も生じないで所望の結果を生ずるであろう適用率及び適用頻度で注意して適用すべきである。従って、例えば、本発明の局所用組成物は、皮膚表面1cm当たり約0.1〜約800μg、好ましくは約1.0〜約50μgの率のオリゴペプチドで適用すべきである。これらの範囲の高い方の用量は、例えば、放出制御材料と組み合わせて使用するか、又は除去するまでの皮膚上の滞留時間を短くして許容される。
【0051】
溶液の有効性を保つためには、オリゴペプチド組成物の適用に先立つ皮膚表面の適切な準備が大切である。例えば、適用に先立って皮膚表面の油を除去清浄する目的で、皮膚表面に界面活性剤を導入することは、界面活性剤がボツリヌス毒素の活性を破壊するように思われるので、驚くほど逆効果を招く。たとえその後でオリゴペプチド溶液の適用前に皮膚を水で数回洗浄しても、このことは起こる。乳児を拭くのに見られるものなど極めて穏やかな界面活性剤でさえ、この現象を引き起こすようである。従って、本発明の組成物を投与する方法においては、水だけを使用して皮膚を前清浄する。水のみで洗浄することは、ボツリヌス毒素の経皮輸送を中程度に改善するようでもある。
【0052】
それに加えて、オリゴペプチド複合体の適用に先立って、角質層を減少させるために皮膚を剥がすことができる。原理的に、皮膚を剥がす過程はオリゴペプチドの経皮輸送の効率増強に通じるはずである。しかしながら、皮膚を剥がすために使用される方法が重要である。例えば、ヒト又は動物の角質層をアセトンの媒介により減少させると、その後に適用されるオリゴペプチドの活性は低下するようである。対照的に、テープストリッピング(即ち皮膚にテープを貼ってそれからテープを除去する)は、オリゴペプチドのより深い浸透及び用量の減少を可能にするようである。皮膚表面の擦過(例えば、研磨パッドの使用による)はテープストリッピングと同様な効果を生ずると推定される。
【0053】
組成物を含み、それがさらに本明細書で定義された分岐基の結合した正に荷電した骨格を有する担体とオリゴペプチドとを含む、オリゴペプチドの経皮透過のためのデバイスも本発明に含まれる。そのようなデバイスは、皮膚パッチのように構造の簡単なものであってもよく、又は組成物を分配して分配をモニターする手段、及び場合により分配された物質に対する被験者の反応のモニターを含めて、1つ又は複数の見方で被験者の状態をモニターする手段を備えたより複雑なデバイスであってもよい。
【0054】
組成物は、一般的にも、またそのようなデバイスにおいても、予め製剤化するか若しくはそのようなデバイスに予め充填するか又は、例えば、適用時に若しくはそれに先立って配合するように、2つの成分(オリゴペプチド及び場合により担体)を含むキットを使用して後で調製ことができる。担体分子の量又はオリゴペプチドに対するその比は、関心のある組成物に使用するためにどの担体が選択されるかに依存するであろう。与えられた場合における担体分子の適当な量又は比は、例えば、下で述べるような1つ又は複数の実験を行うことにより容易に決定することができる。
【0055】
一般的に、本発明は、オリゴペプチドをそれが必要な被験者又は患者に投与する方法も含み、有効量のオリゴペプチドを、場合により、本明細書に記載した正に荷電した分岐基の結合した正に荷電した骨格を含む担体と併せて局所投与することを含む。「と併せて」は、2つの成分(オリゴペプチド及び担体)が、それらを1つの組成物中に配合して次にそれを被験者に投与するか、又はそれらを別々に投与するがそれらが一緒に作用して有効量の治療用タンパク質の必要な送達を提供するかのいずれかを含む組合せ手順で投与されることを意味する。例えば、最初に担体を含む組成物を被験者の皮膚に適用して、次にオリゴペプチドを含む皮膚パッチ又は他のデバイスを適用することができる。オリゴペプチドは皮膚パッチ又は他の分配デバイス中に乾燥形態で導入することができて、パッチ適用の前に正に荷電した担体を皮膚に適用することができ、その結果その2つが一緒に作用して所望の経皮送達が行われる。従って、その意味で、2つの物質(担体及びオリゴペプチド)は、組合せで作用するか或いはその部位で組成物又は組合せを形成するように相互作用する。従って、本発明は、皮膚を通してオリゴペプチドを分配するためのデバイスと、被験者の皮膚若しくは上皮に適用するのに適した担体又は骨格を含む液剤、ゲル剤、クリーム剤等との両方を含むキットも含む。本発明の組成物を、健康管理の専門家の指示下に又は患者若しくは被験者により投与するためのキットは、その目的のために適した特製アプリケーターも含むことができる。
【0056】
本発明の組成物、キット及び方法は、より高い活性及び可能性として改善された薬物動態を有する、より純粋なオリゴペプチドの送達を可能にする。それに加えて、担体は安定剤として作用して、外来の補助的なタンパク質(例えば、400〜600mgの範囲のヒト血清アルブミン又は250〜500mgの範囲の組換え血清アルブミン)及び/又は多糖安定剤の必要性を減少させ、オリゴペプチドに対する免疫応答の有益な減少をもたらすことができる。それに加えて、組成物はpHが約4.5〜約6.3の範囲の生理的環境における使用に適していて、そのようなpHを有することができる。本発明の組成物は、室温又は冷蔵条件下のいずれでも保存することができる。
【0057】
次は、本発明実施の代表的な例であるが、本発明はこれらに限定されない。それらは、オリゴペプチドの共有結合による修飾を必要とせずに官能性オリゴペプチドの皮膚を通る送達、汗の産生を減少させるオリゴペプチドの能力、及び筋収縮力を減少させるオリゴペプチドの能力を例示する。
【実施例1】
【0058】
マウス後足モデルにおけるBOTOX(登録商標)及びオリゴペプチドEEMQRRによる汗の抑制
方法:
動物の治療の24時間前にピロカルピン溶液及び齧歯類麻酔薬を調製した。ピロカルピン溶液は15ml遠心チューブ中で0.9%NaCl中1mg/mlの濃度で作製した。その溶液はボルテックスで2分間よく混合してから、PURADISC 25 TFディスポフィルターを通して滅菌バイアルに濾過することにより滅菌した。次にピロカルピン溶液をフォイルで覆った。3.75mlの100mg/mlケタミン、3.00mlの20mg/mlキシラジン、及び23.25mlの食塩水を配合してボルテックスでよく混合することにより齧歯類麻酔薬カクテルを調製した。
【0059】
2%ヨウ素溶液を、50ml遠心チューブ中の70%エタノール中で、ボルテックスによりよく混合し、続いて15分間超音波処理してから再びボルテックスにかけることにより調製した。それからチューブをパラフィルムで覆った。
【0060】
リジン−アスパラギン−アルギニン(KNR)骨格及びリジン−アスパラギン−トレオニン(KNT)骨格を、脱イオンHO中の1mg/ml溶液として調製した。BOTOX(登録商標)(ボツリヌス毒素A型、Allergan Inc.社製、Irvine CA)を1.0mlの0.9%塩化ナトリウム中で100unit/mlの濃度に復元した。オリゴペプチドEEMQRRは、脱イオンHO中で1mg/mlの濃度に調製した。
【0061】
本研究においては、6群で実験を行った。
BO:BOTOX(登録商標)単独
BP:KNR+BOTOX(登録商標)
BQ:KNT+BOTOX(登録商標)
BR:オリゴペプチドEEMQRR単独
BS:KNR+オリゴペプチドEEMQRR
BT:KNT+オリゴペプチドEEMQRR
【0062】
群の各々の治療のための原液は次のように調製した。
BO:70μlBOTOX(登録商標)及び70μlPBS
BP:70μlBOTOX(登録商標)、35μlKNR骨格及び35μlPBS
BQ:70μlBOTOX(登録商標)、35μlKNT骨格及び35μlPBS
BR:70μlオリゴペプチドEEMQRR及び70μlPBS
BS:70μlオリゴペプチドEEMQRR、35μlKNR骨格及び35μl PBS
BT:70μlオリゴペプチドEEMQRR、35μlKNT骨格及び35μl PBS
【0063】
群:一群当たり6足、但し、BQ及びBTは群当たり5足
【0064】
研究手順
1.0.07mlの麻酔薬カクテルを腹腔内に注射し、必要なときにはイソフルランで補完して動物を麻酔した。
【0065】
2.合計20μlの各治療溶液を指定した後足に局所的に適用した。治療溶液を後足に擦りつけて後足底を完全に被うためにピペットのチップを使用した。動物の右後足にBotox処置を、左後足にオリゴペプチドEEMQRR処置を行った。
【0066】
3.治療溶液を乾燥させるために、動物を2分間加熱ランプに下に置いてから、足を5分間風乾した。
【0067】
4.ステップ2〜3を、治療溶液を全部適用して動物の後足に吸収させるまで繰り返した。通常、これは10μlを2回適用して達成された。
【0068】
5.治療溶液が完全に乾燥した後、約50μlのCetaphil(登録商標)クリームを後足に適用した。
【0069】
6.動物の生存の徴候を、麻酔から回復するまでモニターした。
【0070】
1週間後に、汗の産生をヨウ素デンプン反応を使用して評価した。ヨウ素デンプン反応は次の手順により実施した。
【0071】
1.動物は、0.07mlの麻酔薬カクテルを腹腔内に注射し、必要なときにはイソフルランで補完して麻酔した。ブースター投与が必要ならば、0.03mlの麻酔薬カクテルを与えた。
【0072】
3.10分後動物が完全に麻酔され、安定な生存の徴候を有しているときに、両後足に2%ヨウ素エタノール溶液を塗布した。
【0073】
4.足を乾燥させるために、動物を2分間加熱ランプ下に置いてから、足を5分間風乾した。
【0074】
5.次にヨウ素を塗布した足を写真撮影した。
【0075】
6.汗の分泌を誘導するために、動物の腹腔内に0.9%塩化ナトリウム中1mg/mlのピロカルピンHClを0.10ml注射した。この注射は、麻酔薬カクテルの注射後約30分に行った。
【0076】
7.次に、デンプン粉末をパウダーの付いていない手袋を着用した指で足に擦りつけて、後足をデンプン粉末で完全に覆った。過剰のデンプンは小さな絵筆で除去した。次にデンプンを緻密なベロアパッドで大まかに適用した。それからこのステップを繰り返して、後足に薄い粉末残渣を残した。手袋は各処置ステップごとに交換した。
【0077】
8.尿及び他の分泌についてマウスを観察した。尿を動物の後足に接触させてはいけない。動物を乾燥表面上に保つこと。
【0078】
9.ピロカルピン注射後10、20、及び60分に後足の写真を撮った(青黒色の陽性スポットを記録するため)。
【0079】
10.生存マウスを観察して回復を待った。
【0080】
観察及び結果:青黒色の陽性スポットは、典型的には、ピロカルピン注射後50〜60分に最もよく見えた。ヨウ素デンプン反応は、付属の代表的写真で示したように、両方の処置に対して、治療群は対照よりも淡い青黒色陽性スポットを有することを示した。オリゴペプチドEEMQRRに輸送体を足したものは、オリゴペプチドEEMQRR単独よりも顕著によく機能する。オリゴペプチドEEMQRR単独はBotox単独よりもわずかに優れている。その結果、驚くことに、(1)オリゴペプチドは局所に適用されたときに分泌状態に干渉し得る、(2)この過程は、治療効果のためには、経皮輸送増強剤を本質的に必要とする、(3)これらの効果を、このモデルの適当な経皮輸送増強剤を使用して、天然の完全なボツリヌス毒素の効果に接近させることができる。
【実施例2】
【0081】
ヒト患者における腋窩多汗症を治療するためのオリゴペプチドEEMQRRの局所適用
方法:
本研究における参加者は、研究に参加する前から既に存在する主観的腋窩多汗症を有していた。重量測定による腋窩発汗は両腕で50mg/5分を超えていた。被験者は18歳以上で健康であり、抗コリン薬又はアミノグリコシド又はカルシウムチャンネル遮断薬で同時に治療していなかった(不使用期間60日)。
【0082】
重量測定:
順化及び投薬域の準備:
患者を休息位で72〜77°F(22〜25℃)の室温で15分間順応させた。患者はシャツを全部脱ぎ両腋窩を露出した。各腋窩で毛の生えた皮膚を1cm超える投薬域地図を描いた。投薬域を、50mlコニカルチューブから予め濡らした滅菌ガーゼパッドで、下から上へ同じ方向へガーゼの一面を使用して5回長く撫でて洗い清めた。この洗浄ステップをさらに3回繰り返した。腋窩の上から下へ乾燥滅菌ガーゼをしっかり当てて動かし、腋窩を乾燥し、次に腋窩の下のひだに濾紙を置くことによりさらに乾燥して、濾紙を試験部位に置いて5分間そのままにした。患者は休息位で両腕を身体から離して坐った。患者は最初の重量測定の前1分間腋窩を触らずに休息した。
【0083】
汗産生の測定(重量測定):
患者は45度の角度に傾斜して、腋窩を十分露出させるために両手を一緒に頭の後ろに当てた。予め秤量した濾紙をコニカルチューブから取り出して、濾紙の先端を腋窩のひだの線に合わせてそれを患者の腋窩の下に置いた。患者は両腕を身体の脇に下し、両腕を体幹に密着させて坐った。濾紙を両腋窩の下に確実に置いたときに計時を開始した。2つの腋窩は同時に測定した。5分後、濾紙を腋窩から取り外して、各々を同じそれぞれのコニカルチューブに置き、チューブから汗が蒸発するのを防止するためにキャップを堅く締めた。汗の産生は1分の間隔でさらに2回繰り返した。
【0084】
ヨウ素デンプン反応:
患者は腋窩を十分露出させるために両手を一緒に頭の後ろに当てた。ヨウ素溶液を滅菌ガーゼパッドで腋窩域に適用してから、完全に風乾させた。ヨウ素により覆った部位を綿球を使用して薄いデンプン層で被包した。患者は両腕を体幹に密着させて坐った。5分後に、患者は腋窩を十分露出させるために、両腕を上げて両手を一緒に頭の後ろに当てた。左右の腋窩の開始前の状態及びヨウ素デンプン反応後を写真撮影した。腋窩は先ず70%EtOHで、次いで滅菌脱イオン水で清浄した。
【0085】
治療製剤及び適用:
製剤:
第1処置:
左腕:600μlのKN−T(食塩水及び1%EtOH中に1mg/ml)を600μlのオリゴペプチドEEMQRR(1%EtOHを足した食塩水中に10%)に加え、反転により混合し、混合物を5分間室温で静置した。600μlの4%HPC(1%EtOH)を加え、徹底的に混合した。その均一な溶液を3mlの注射器に移した。
【0086】
右腕:600μlのKN−T(食塩水及び1%EtOH中に1mg/ml)を600μlの食塩水(1%EtOH添加)に加え、反転により混合し、混合物を5分間室温で静置した。600μlの4%HPC(1%EtOH)を混合物に加え、徹底的に混合した。その均一な溶液を3mlの注射器に移した。
【0087】
第2の処置:
左腕:500μlのKN−T(食塩水及び5%EtOH中に1mg/ml)を500μlのテトラ−アスパラギン酸−オリゴペプチドEEMQRR(食塩水及び5%EtOH中に10%)に加え、反転により混合し、混合物を5分間室温で静置した。500μlの4%HPC(1%EtOH)を加え、徹底的に混合した。その均一な溶液を3mlの注射器に移した。
【0088】
右腕:500μlのKN−T(食塩水及び5%EtOH中に1mg/ml)を500μlの食塩水(5%EtOH添加)に加え、反転により混合し、混合物を5分間室温で静置した。500μlの4%HPC(1%EtOH)を混合物に加え、徹底的に混合した。その均一な溶液を3mlの注射器に移した。
【0089】
【表1】

【0090】
薬剤適用:
滅菌手袋を着用して、薬剤を投薬部位に注射器で均一に広げ、指で1分間マッサージした。患者は両腕を身体の横に下げて1時間インキュベートした。インキュベート終了時に投薬部位を滅菌ガーゼで清浄した。
【0091】
結果:
【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【実施例3】
【0094】
マウスモデルにおける筋力発生に対して局所適用するRevance担体とD10、SNARE撹乱オリゴペプチドとの複合体
材料及び方法:
D10(修飾アセチルヘキサペプチド、Revance Therapeutics社製、Mountain View, CA)
ポリリジンペプチド(担体):Kn21T
【0095】
【表4】

【0096】
研究計画:
体重27〜33gの雄CD1マウス(Charles River社、Wilmington, MA)を使用した。マウスは5群に分けて収容し、治療前に食糧及び水の不断給餌を可能にした。動物は、酸素と混合した1.5%イソフルランを使用して麻酔し、研究期間中麻酔したままにした。Andis Edjer IIコードレス充電式電気バリカン(Andis社製、Sturtevant, WI)で、各マウスの後肢の投薬部位を注意して剃毛した。投薬部位は、アセトン洗浄又は脱イオン水洗浄で準備した。投薬部位は処置適用前に完全に乾燥させた。処置しない正常マウス並びに基剤の製剤(無毒素)を等容量で局所適用して処置したマウスを対照にした。局所処置の2〜3.5時間後に筋収縮力を測定した。
【0097】
D10(修飾アセチルヘキサペプチド)調製:
1.ミクロ遠心チューブ中で、0.9%のNaCl及び5%のEtOHを含むKn21T担体の1.0mg/ml原液を作製し、ボルテックスにより混合した。
【0098】
2.遠心チューブ中で10%D10溶液を作製し、ボルテックスにより混合した。
【0099】
3.ステップ1から100μlの担体を取り、それをステップ2からの100μlの10%D10に加えてミクロ遠心チューブに入れ、その混合物を、複合体が形成されるようにチューブを直立させて室温で5分間置き、それから投薬する前に再度静かに反転させた。
【0100】
4.ステップ3から200μlの混合物をピペットで取り出して、それを後肢に適用した。
【0101】
局所適用:
1.酸素と混合した1.5%イソフルランでマウスを麻酔した。
【0102】
2.ピペットを使用して担体/毒素混合物をマウス後脚(剃毛してある)にゆっくりと適用して広げ、ニトリルゴム手袋を着用して混合物を右後脚にマッサージし、マウスは麻酔したまま30分間インキュベートした。次に動物を覚醒させて足の動きを観察した(DAS)。動物は、処置後2〜3.5時間に行う筋力発生試験まで、再び麻酔しておいた。
【0103】
a.局所適用後30分間置いておく間、加熱ランプに後肢を直接曝すことはなかった。
【0104】
筋収縮力発生:
四肢は、動くのを防止するために、大腿骨と脛骨を通したキルシュナー鋼線を使用して、木製のテーブルに留めることにより固定した。腓腹筋はその場に残した。針金縫合糸をアキレス腱の下端の周囲で結んだ。次に腱を縫合糸から遠位で横に切断し、縫合糸を力変換器(FT03型、Grass社製、West Warwick, RI)に取り付け、力変換器はさらに力変換増幅器(13−G4615−50型、Gould社製、Cleveland, OH)に接続した。D10処置した側の坐骨神経を、最大等尺性単収縮が得られるまで、電圧を上げて直接刺激した(SD9刺激装置、Grass社製、West Warwick, RI)。次に、最大の強直性の力が発生するまで刺激の周波数を増加させた。単収縮は1つの運動単位の刺激により発生させられ、強直は超最大の刺激によりすべての運動単位の総和を適用することにより発生させられる。同じ手順を対照四肢で繰り返した。応答は、力変換器に結合させた較正してある記録用オシレータ(RS3800、Gould社製、Cleveland, OH)で記録した。(Ma J, Elsaidi GA, Smith TL, et al. Time course of recovery of juvenile skeletal muscle after botulinum toxin A injection. Am. J. Phys. Med. Rehabil. 2004; 83(10):774-780)。
【0105】
結果:
C57BL/6マウスの筋力発生の正常値は、以前のボツリヌス毒素Aの注射による研究において60±15グラムの平均単収縮力及び240±30グラムの強直力を有している。今回の予備的な前臨床研究においては、同程度の54±2グラムの平均単収縮力及び241±20グラムの強直力が見出された。
【0106】
担体と共に局所適用したD10の筋力発生を評価したとき、それは小さい応答を示し、担体と共に「Revance D10溶液」の局所単回投与で処置した動物において、記録の上で、対照に対して単収縮は約56%減及び強直応答は37%減という結果になった。表3は、単収縮及び強直の平均筋力発生及び減少率(%)のまとめを示す。
【0107】
【表5】

【0108】
結論:
本研究は、マウスの肢を通しての10%D10の局所適用は、運動力発生を効果的に減少させることができることを証明することに役立ち、治療の利益を示す。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】2匹の異なるマウスにおいて、担体なしで(a及びc)オリゴペプチドEEMQRR(左足)若しくはボツリヌス毒素(右足)の、又はKNRと共に(b及びd)オリゴペプチドEEMQRR(左足)若しくはボツリヌス毒素(右足)の局所適用後7日にヨウ素デンプン染色(青黒色で陽性)により可視化したマウスの足の発汗を示す一連の写真である。
【図1−1】

【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む6〜約20アミノ酸のオリゴペプチドを含み、-(gly)n1-(arg)n2(下付き文字n1は0〜約20の整数であり、下付き文字n2は独立に約5〜約25の奇数の整数である)、HIV−TAT、アンテナペディアPTD、及びHIV−TAT若しくはアンテナペディアPTDのフラグメント又はそれらの混合物から独立に選択された、正に荷電した分岐基が結合した正に荷電した担体をさらに含む組成物。
【請求項2】
配列番号1がオリゴペプチドのC末端を構成する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
オリゴペプチドのN末端が3〜約14個の中性アミノ酸を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
オリゴペプチドのN末端が4個のアスパラギン酸分子を含む請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
配列番号1がオリゴペプチドのN末端を構成する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
オリゴペプチドのC末端が3〜約14個の中性アミノ酸を含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
オリゴペプチドのC末端が4個のアスパラギン酸分子を含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
オリゴペプチドが誘導体化されている請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
オリゴペプチドが、アセチル基、パルミトイル基からなる群から選択された分子で誘導体化されている請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
オリゴペプチドが組換えにより産生される請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
クリーム剤、ローション剤、軟膏、ゲル剤又は液剤である請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
緩衝剤をさらに含む請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
放出制御組成物である請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
食塩水をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
緩衝剤をさらに含む請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
正に荷電した担体が、-(gly)n1-(arg)n2(下付き文字n1は約0〜約20の整数であり、下付き文字n2は独立に約5〜約25の奇数の整数である)から独立に選択された正に荷電した分岐基を有する第2のオリゴペプチドを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
下付き文字n1が0〜約8の整数である請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
下付き文字n1が約2〜約5の整数である請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
下付き文字n2が約7〜約17の奇数の整数である請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
下付き文字n2が約7〜約13の奇数の整数である請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
担体が、HIV−TAT及びそのフラグメントから選択された、正に荷電した分岐基が結合した第2のオリゴペプチドを含む請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
分岐基が、式(gly)p-RGRDDRRQRRR-(gly)q、(gly)p-YGRKKRRQRRR-(gly)q、又は(gly)p-RKKRRQRRR-(gly)q(式中、下付き文字p及びqは各々独立に0〜20の整数である)を有する正に荷電したHIV−TATフラグメントである請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
正に荷電した分岐基が、全担体重量の少なくとも約0.05重量%を占める請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
正に荷電した分岐基が、全担体重量の約0.5〜約45重量%を占める請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
正に荷電した分岐基が、全担体重量の約0.1〜約30重量%を占める請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
骨格が正に荷電したオリゴペプチドを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
骨格が正に荷電したポリリジンを含む請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
ポリリジンが約10,000〜1,500,000の分子量を有する請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
ポリリジンが約25,000〜約1,200,000の分子量を有する請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
ポリリジンが約100,000〜約1,000,000の分子量を有する請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
骨格が正に荷電した非ペプチド担体を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
骨格が正に荷電したポリアルキレンイミンを含む請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
ポリエチレンイミンが約10,000〜約2,500,000の分子量を有する請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
ポリエチレンイミンが約100,000〜約1,800,000の分子量を有する請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
ポリエチレンイミンが約500,000〜約1,400,000の分子量を有する請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
請求項1に記載の組成物の治療有効量を投与することを含む、ジストニー、筋痙攣、自律神経障害、脳性麻痺、パーキンソン病、振戦、てんかん、内耳障害、筋疾患、神経絞扼障害、多汗症、ざ瘡、粘膜分泌、乾癬、糖尿病関連皮膚疾患、創傷治癒、乳腺疾患、発毛、泌尿器系疾患、神経精神障害、癌及び高カルシウム血症からなるリストから選択された医学的状態と関連する症状を軽減する方法。
【請求項38】
頭皮、顔面、頚部、肩、腕、腋窩、手、手掌、背中、脚、足及び足底からなる群から選択された身体領域に、組成物を投与することをさらに含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
医学的状態が自覚的又は臨床的多汗症である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
組成物を腋窩に投与する請求項39に記載の方法。
【請求項41】
組成物を顔面に投与する請求項39に記載の方法。
【請求項42】
組成物を前頭部に投与する請求項39に記載の方法。
【請求項43】
組成物を手掌に投与する請求項39に記載の方法。
【請求項44】
組成物を足底に投与する請求項39に記載の方法。
【請求項45】
配列番号1のアミノ酸配列を含む7〜約20アミノ酸のオリゴペプチドを含む化合物。
【請求項46】
オリゴペプチドが8〜約20アミノ酸である請求項45に記載の化合物。
【請求項47】
オリゴペプチドが9〜約20アミノ酸である請求項45に記載の化合物。
【請求項48】
オリゴペプチドが10〜約20アミノ酸である請求項45に記載の化合物。
【請求項49】
請求項45に記載の化合物の治療有効量を投与することを含む、ジストニー、筋痙攣、自律神経障害、脳性麻痺、パーキンソン病、振戦、てんかん、内耳障害、筋疾患、神経絞扼障害、多汗症、ざ瘡、粘膜分泌、乾癬、糖尿病関連皮膚疾患、創傷治癒、乳腺疾患、発毛、泌尿器系疾患、神経精神障害、癌及び高カルシウム血症からなるリストから選択された医学的状態と関連する症状を軽減する方法。
【請求項50】
頭皮、顔面、頚部、肩、腕、腋窩、手、手掌、背中、脚、足及び足底からなる群から選択された身体領域に、化合物を投与することをさらに含む請求項49に記載の方法。
【請求項51】
医学的状態が自覚的又は臨床的多汗症である請求項50に記載の方法。
【請求項52】
化合物を腋窩に投与する請求項51に記載の方法。
【請求項53】
化合物を顔面に投与する請求項51に記載の方法。
【請求項54】
化合物を前頭部に投与する請求項51に記載の方法。
【請求項55】
化合物を手掌に投与する請求項51に記載の方法。
【請求項56】
化合物を足底に投与する請求項51に記載の方法。
【請求項57】
配列番号1のアミノ酸配列を含む6〜約20アミノ酸のオリゴペプチドを含む組成物の治療有効量を被験者に局所投与するためのキットであって、前記組成物並びに-(gly)n1-(arg)n2(下付き文字n1は0〜約20の整数であり、下付き文字n2は独立に約5〜約25の奇数の整数である)、HIV−TAT、アンテナペディアPTD、及びHIV−TAT若しくはアンテナペディアPTDのフラグメントから独立に選択された正に荷電した分岐基又はそれらの混合物が結合した正に荷電した担体を含むキット。
【請求項58】
特製アプリケーターをさらに含む請求項57に記載のキット。
【請求項59】
特製アプリケーターが健康管理専門家により使用されるように設計されている請求項58に記載のキット。
【請求項60】
特製アプリケーターが被験者による自己投与のために設計されている請求項58に記載のキット。
【請求項61】
化合物及び担体を含む予め製剤化された組成物を含む請求項57に記載のキット。
【請求項62】
化合物及び担体が、投与の前に配合されるように別々に製剤化されている請求項57に記載のキット。
【請求項63】
化合物が、皮膚を通して化合物を被験者に投与するためのデバイスに含まれている請求項57に記載のキット。
【請求項64】
デバイスが皮膚パッチである請求項63に記載のキット。
【請求項65】
担体が、正に荷電した分岐基が結合したポリマー骨格をさらに含み、担体と化合物との間の結びつきが非共有結合である請求項57に記載のキット。
【請求項66】
結合している正に荷電した分岐基が、-(gly)n1-(arg)n2(下付き文字n1は0〜約20の整数であり、下付き文字n2は独立に約5〜約25の奇数の整数である)、HIV−TAT及びそのフラグメント、並びにアンテナペディアPTD又はそれらの混合物から独立に選択される請求項65に記載のキット。
【請求項67】
化合物が、皮膚を通してオリゴペプチドを被験者に投与するためのデバイスに含まれている請求項66に記載のキット。
【請求項68】
デバイスが皮膚パッチである請求項67に記載のキット。

【公表番号】特表2008−531725(P2008−531725A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558267(P2007−558267)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/007600
【国際公開番号】WO2006/094193
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(504319459)ルバンス セラピュティックス インク. (12)
【Fターム(参考)】