説明

オリゴマー−フェノチアジン結合体

本発明は、(とりわけ)オリゴマー−フェノチアジン結合体および関連化合物に関する。多数の投与の経路のいずれかによって投与されたときに、本発明の結合体は、結合体化されていないフェノチアジン化合物よりすぐれた利点を示す。本発明により、例えば、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物が提供される。水溶性であり、かつ、非ペプチド性のオリゴマーに対して、安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物、および任意に、薬学的に許容可能な賦形剤を含む、組成物もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)の下で2009年1月28日に出願された米国仮特許出願番号第61/148,016号の優先権の利益を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、(とりわけ)化学修飾を欠くフェノチアジンよりすぐれた特定の利点を有する化学修飾されたフェノチアジンを含む。本明細書に記載される化学修飾されたフェノチアジンは、(とりわけ)創薬、薬物療法、生理学、有機化学、および高分子化学の分野における適用に関し、および/またはその適用を有する。
【背景技術】
【0003】
フェノチアジン類は、抗ヒスタミン作用、鎮静作用、抗動揺病作用、制吐作用、および抗コリン作用を有することが示されてきた。これらは、一般的には、以下について示されている:1)血液または血漿に対するアレルギー反応の改善;2)急性徴候が制御された後でのエピネフリンおよび他の標準的な手段に対する付属物としてのアナフィラキシーにおいて;3)経口治療が不可能であるかまたは禁忌であるときの即時型の他の合併症のないアレルギー状態について;4)動揺病の積極的治療;5)手術前、手術後、および産科の(分娩の間の)鎮静;6)特定の型の麻酔および手術に付随する吐き気および嘔吐の予防および制御;7)手術後の痛みの制御のための鎮痛薬に対する補助剤として;8)鎮静および不安の救済のため、ならびに患者が容易に興奮させられることが可能である浅い眠りを生じるため;ならびに9)気管支鏡検査法の反復、眼科手術などの特別な外科手術の状況において、ならびにリスクが乏しい患者において静脈内で麻酔および鎮痛に対する補助剤としてのメペリジンまたは他の麻薬性鎮痛薬の量を減少させた、。フェノチアジン類はまた、獣医学におけるトランキライザーとしても示されている。最近、フェノチアジンは、細胞分裂から生じる各娘細胞へのゲノムの複製コピーの、微小管媒介性の紡錘体関連分配に関与する、KSPキネシンの阻害剤であることが示されている。それゆえに、フェノチアジンは、癌治療においても同様に役割を果たし得る。しかし、フェノチアジンの使用に伴って、注射部位における何らかの静脈血栓症の発生(incidents)に直面している。他の臨床的症例は、プロメタジンHClの使用を含めることが、注射の局所的部位における炎症および他の重篤な有害反応、特に、注射部位の末端の壊疽を示したことを報告している。塩酸プロメタジンはまた、筋肉炎症の徴候である、筋肉内注射後の血漿クレアチンキナーゼレベルを上昇されることもまた報告されている。
【0004】
従って、フェノチアジンの使用に付随するこれらのおよび/もしくは他の副作用が減少できるならば、またはそれらの薬理学が改善されてもよいならば、フェノチアジンを用いる薬物療法は改善される。それゆえに、新規なフェノチアジン化合物を開発するための大きな満たされていない必要性が存在する。
【0005】
本発明は、当該分野におけるこれらのおよび他の必要性に取り組むことを追求する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つ以上の実施形態において、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物が提供される。
【0007】
本発明の例示的な化合物は、以下の構造:
【0008】
【化1】

【0009】
を有する化合物を含み、ここで:
、R、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;またはRおよびRは窒素と一緒に複素環を形成し;
nは1以上の整数であり;
Xはスペーサー部分であり;ならびに
POLYは水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーである。
【0010】
さらなる例示的な化合物は、以下の構造:
【0011】
【化2】

【0012】
を有する化合物を含み、ここで:
、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;
nは1以上の整数であり;
Xはスペーサー部分であり;ならびに
POLYは水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーである。
【0013】
本発明の例示的な化合物は、以下の構造:
【0014】
【化3】

【0015】
を有する化合物を含み、
、R、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;またはRおよびRは窒素と一緒に複素環を形成し;
nは1以上の整数であり;
Xはスペーサー部分であり;ならびに
POLYは水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーである。
【0016】
「フェノチアジン残基」は、水溶性であり、非ペプチド性の1つ以上のオリゴマーに(直接的または間接的のいずれかで)結合するように働く1つ以上の結合の存在によって変化されるフェノチアジン化合物の構造を有する化合物である。
【0017】
この点に関して、受容体結合活性を有する任意のフェノチアジン化合物がフェノチアジン部分として使用できる。例示的なフェノチアジン部分は、式I:
【0018】
【化4】

【0019】
によって包含される構造を有し、ここで:
、R、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;またはRおよびRは窒素と一緒に複素環を形成し;ならびに
nは1以上の整数である。
【0020】
本発明の1つ以上の実施形態において、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物、および任意に薬学的に受容可能な賦形剤を含む組成物が提供される。
【0021】
本発明の1つ以上の実施形態において、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して、安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物を含む剤形が提供され、この化合物は剤形で存在する。
【0022】
本発明の1つ以上の実施形態において、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーをフェノチアジン部分に共有結合させることを包含する方法が提供される。
【0023】
本発明の1つ以上の実施形態において、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して、安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物を、治療の必要がある哺乳動物に投与することを包含する方法が提供される。
【0024】
本発明のこれらのおよび他の目的、態様、実施形態、および特徴は、以下の詳細な説明と合わせて読まれるときに、当業者にとってより完全に明白になる。
【0025】
(図面の簡単な説明)
この段落は意図的に空欄のままである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈が明確に他の意味を指し示さない限り、複数形の言及を含む。
【0027】
本発明を説明および特許請求する際に、以下の専門用語は、下記に記載される定義に従って使用される。
【0028】
「水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマー」は、室温で少なくとも35(重量)%水溶性、好ましくは70(重量)%より多く水溶性、より好ましくは95(重量)%より多く水溶性であるオリゴマーを示す。典型的には、「水溶性」オリゴマーのろ過していない水性調製物は、ろ過後の同じ溶液によって透過される光量の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも95%を透過する。しかし、水溶性オリゴマーは、少なくとも95(重量)%、水に溶解性であるかまたは水に完全に溶解性であることが最も好ましい。「非ペプチド性」であることに関して、オリゴマーは、アミノ酸残基の35(重量)%未満であるときに非ペプチド性である。
【0029】
「モノマー」、「モノマー性サブユニット」、および「モノマー単位」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、ポリマーまたはオリゴマーの基本構造単位の1つをいう。ホモオリゴマーの場合においては、単一の反復構造単位がオリゴマーを形成する。コオリゴマーの場合においては、2つ以上の構造単位が、パターン的にまたはランダムでのいずれかで反復され、オリゴマーを形成する。本発明に関連して使用される好ましいオリゴマーはホモオリゴマーである。水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーは、モノマーの鎖を形成するように連続的に結合された1つ以上のモノマーを含む。このオリゴマーは、単一モノマー型(すなわち、ホモオリゴマー性である)または2もしくは3モノマー型(すなわち、コオリゴマー性)から形成できる。
【0030】
「オリゴマー」は、約1個〜約30個のモノマーを保有する分子である。本発明における使用のための特定のオリゴマーには、以下により詳細に説明される、直鎖状、分枝状、またはフォーク状などの種々のジオメトリーを有するものが含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「PEG」または「ポリエチレングリコール」とは、任意の水溶性ポリ(エチレンオキサイド)を包含することを意味する。他に示されない限り、「PEGオリゴマー」またはオリゴエチレングリコールは、実質的にすべての(好ましくはすべての)モノマー性サブユニットがエチレンオキサイドサブユニットであるが、このオリゴマーは、例えば、結合体化のための独特なエンドキャッピング部分または官能基を含んでもよいものである。本発明における使用のためのPEGオリゴマーは、例えば、合成的変換の間、末端の酸素が置き換えられたか否かに依存して、以下の2つの構造:「−(CHCHO)−」または「−(CHCHO)n−1CHCH−」の1つを含む。上記に言及されるように、PEGオリゴマーについては、変数(n)は約1〜30の範囲であり、全体のPEGの末端基および構造は変動できる。PEGがさらに、例えば、低分子薬物に結合するための官能基、Aを含むとき、その官能基は、PEGオリゴマーに共有結合するときに、(i)酸素−酸素結合(−O−O−、過酸化物結合)、または(ii)窒素−酸素結合(N−O、O−N)の形成を生じない。
【0032】
「エンドキャップされた」または「末端キャップされた」という用語は、エンドキャッピング部分を有するポリマーの末端または終点をいうために本明細書で交換可能に使用される。典型的には、必ずしも必要ではないが、エンドキャッピング部分は、ヒドロキシまたはC1−20アルコキシ基を含む。従って、エンドキャッピング部分の例には、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、およびベンジルオキシ)、ならびにアリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロなどが含まれる。加えて、前述の各々のものの飽和型、不飽和型、置換型、および非置換型が想定される。さらに、エンドキャッピング部分はまたシランであり得る。エンドキャッピング基はまた、検出可能な標識を有利に含むこともできる。ポリマーが検出可能な標識を含むエンドキャッピング基を有するとき、ポリマーおよび/またはそのポリマーがカップリングする関心対象の部分(例えば、活性薬剤)の量または位置は、適切な検出器を使用することによって決定できる。このような標識には、非限定的に、蛍光性色素、化学発光剤、酵素標識において使用される部分、比色定量用部分(例えば、色素)、金属イオン、放射活性部分などが含まれる。適切な検出器には、光測定装置、フィルム、分光光度計などが含まれる。加えて、エンドキャッピング部分は標的部分を含んでもよい。
【0033】
「標的部分」という用語は、本発明の結合体が標的領域に局在化することを補助するため、例えば、細胞に入るかまたは受容体に結合することを補助する、分子構造をいうために本明細書で使用される。好ましくは、標的部分は、ビタミン、抗体、抗原、受容体、DNA、RNA、シアリルLewis X抗原、ヒアルロン酸、糖類、細胞特異的レクチン、ステロイドもしくはステロイド誘導体、RGDペプチド、細胞表面受容体のリガンド、血清成分、または種々の細胞内もしくは細胞外受容体に対して指向されるコンビナトリアル分子から構成される。標的部分は、脂質またはリン脂質もまた含んでもよい。例示的なリン脂質には、非限定的に、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、およびホスファチジルエタノールアミンが含まれる。これらの脂質は、ミセルまたはリポソームなどの型であってもよい。標的部分は検出可能な標識をさらに含んでもよく、あるいは検出可能な標識は標的部分として働いてもよい。結合体が標的可能な標識を含む標的基を有するとき、ポリマーおよび/またはそのポリマーがカップリングする部分(例えば、活性薬剤)の量および/または分布/位置は、適切な検出器を使用することによって決定できる。このような標識には、非限定的に、蛍光性色素、化学発光剤、酵素標識において使用される部分、比色定量用部分(例えば、色素)、金属イオン、放射活性部分、金粒子、量子ドットなどが含まれる。
【0034】
オリゴマーのジオメトリーまたは全体の構造に関して、「分枝」とは、分枝点から伸びる2つ以上のポリマーの「アーム」を有するオリゴマーをいう。
【0035】
オリゴマーのジオメトリーまたは全体の構造に関して、「フォーク状」とは、(典型的には、1つ以上の原子を通して)分枝点から伸びる2つ以上の官能基を有するオリゴマーをいう。
【0036】
「分枝点」とは、オリゴマーが直鎖状構造から1つ以上のさらなるアームまで分枝またはフォークになっている1つ以上の原子を含む二分枝点をいう
「反応性」または「活性化」という用語は、有機合成の従来的な条件下で、容易にまたは実用的な速度で反応する官能基をいう。このことは、反応しないか、または反応するために強力な触媒もしくは実用的でない反応条件を必要とするかのいずれかである基(すなわち、「非反応性」または「不活性」基)とは対照的である。
【0037】
反応混液中の分子上に存在する官能基に関して、「容易に反応性でない」とは、反応混液中で所望の反応を生じるために有効である条件下で基が大部分そのままで残っていることを示す。
【0038】
「保護基」は、特定の反応条件下で、分子中の特定の化学的に反応性の官能基の反応を妨害または遮断する部分である。保護基は、保護される化学反応基の型、ならびに利用される反応条件、および分子中のさらなる反応基または保護基の存在に依存して変動するかもしれない。保護されてもよい官能基には、例として、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが含まれる。カルボン酸のための代表的な保護基にはエステル(p−メトキシベンジルエステルなど)、アミド、およびヒドラジドが含まれ;アミノ基のための代表的な保護基にはカルバメート(tert−ブトキシカルボニルなど)およびアミドが含まれ;ヒドロキシル基のための代表的な保護基にはエーテルおよびエステルが含まれ;チオール基のための代表的な保護基にはチオエーテルおよびチオエステルが含まれ;カルボニル基のための代表的な保護基にはアセタールおよびケタールが含まれる、などである。このような保護基は当該分野において周知であり、例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999、およびそこに引用されている参考文献に記載されている。
【0039】
「保護型」の官能基は、保護基を持っている官能基をいう。本明細書で使用される場合、「官能基」またはいかなるその同義語も、その保護型を包含する。
【0040】
「生理学的に切断可能」または「加水分解性」または「分解性」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解される)比較的不安定な結合である。結合が水中で加水分解される傾向は、2つの中心原子を接続する結合の一般的な型に依存するのみならず、これらの中心原子に結合された置換基にもまた依存する。適切な加水分解性の不安定なまたは弱い結合には、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、オリゴヌクレオチド、チオエステル、および炭酸が含まれるがこれらに限定されない。
【0041】
「酵素的に分解可能な結合」とは、1種以上の酵素による分解に供される結合を意味する。
【0042】
「安定な」連結または結合とは、水中で実質的に安定である、換言すると、長時間にわたって、任意の適切な程度まで、生理学的条件下では加水分解を受けない化学結合をいう。加水分解的に安定な結合の例には以下が含まれるがこれらに限定されない:炭素−炭素結合(例えば、脂肪族鎖)、エーテル、アミド、ウレタン、アミンなど。一般的に、安定な結合は、生理学的条件下で、1日あたり、約1〜2%未満の加水分解の速度を示す結合である。代表的な化学結合の加水分解速度は、多くの標準的な化学の教科書において見い出すことができる。
【0043】
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ全体的にまたは完全に、例えば、ある所定の量の95%以上、より好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、なおより好ましくは99%以上、さらにより好ましくは99.9%以上を意味し、99.99%以上が最も好ましい。
【0044】
「単分散」とは、クロマトグラフィーまたは質量スペクトル測定によって決定されるように、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーが十分に規定された単一の分子量および規定された数のモノマーを有するオリゴマー組成物をいう。単分散オリゴマー組成物は、1つの意味において、純粋であり、すなわち、大きな分布ではなく、単一かつ(全体数として)規定された数のモノマーを実質的に有する。単分散オリゴマー組成物は、1.0005以下のMW/Mn値を持ち、より好ましくは、1.0000のMW/Mn値を持つ。拡大解釈すれば、単分散結合体から構成される組成物は、オリゴマーが治療部分に結合されないならば、組成物中のすべての結合体の実質的にすべてのオリゴマーが、大きな分布ではなく、単一かつ(全体数として)規定された数のモノマーを有し、1.0005のMW/Mn値を持ち、より好ましくは、1.0000のMW/Mn値を持つことを意味する。しかし、単分散結合体から構成される組成物は、溶媒、試薬、賦形剤などのような1種以上の非結合体物質を含んでもよい。
【0045】
オリゴマー組成物に関連する「二モード」とは、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーが、大きな分布ではなく、規定できかつ(全体数として)異なる数の2つのモノマーのうちの1つを有し、そしてそれらの分子量の分布は、分子量に対するフラクションの数をプロットしたときに、2つの別々の同定可能なピークとして現れる、オリゴマー組成物をいう。好ましくは、本明細書に記載される二モードオリゴマー組成物のために、各ピークは、一般的に、その平均の周りで対称であるが、2つのピークのサイズは異なっている可能性がある。理想的には、二モード分布における各ピークの多分散指数MW/Mnは1.01以下、より好ましくは1.001以下、なお好ましくは1.0005以下、そして最も好ましくは1.0000のMW/Mn値である。拡大解釈すれば、二モード結合体から構成される組成物は、オリゴマーが治療部分に結合されないならば、組成物中のすべての結合体の実質的にすべてのオリゴマーが、大きな分布ではなく、2つの(全体数として)規定可能でありかつ異なる数のモノマーのうちの1つを有し、1.01以下のMW/Mn値を持ち、より好ましくは、1.001以下のMW/Mn値を持ち、さらにより好ましくは1.0005以下のMW/Mn値を持ち、そして最も好ましくは1.0000のMW/Mn値を持つことを意味する。しかし、二モード結合体から構成される組成物は、溶媒、試薬、賦形剤などのような1種以上の非結合体物質を含んでもよい。
【0046】
「フェノチアジン」は、約1000ダルトン未満の分子量を有し、かつフェノチアジン治療剤としてのある程度の活性を有する、有機化合物、無機化合物、または有機金属化合物をいうために本明細書で広く使用される。化合物のフェノチアジン活性は、当該分野において公知であり、本明細書にもまた記載されるようなアッセイによって測定されてもよい。
【0047】
「生体膜」は、少なくともある外来性の実体またはさもなくば望ましくない物質に対する障壁として働く、細胞または組織で作られる任意の膜である。本明細書で使用される場合、「生体膜」には、例えば、血液脳関門(BBB);血液脳脊髄液関門;血液胎盤関門;血液乳関門;血液精巣隔壁;ならびに膣粘膜、尿道粘膜、肛門粘膜、頬粘膜、舌下粘膜、および直腸粘膜を含む粘膜関門を含む、生理学的な保護障壁と関連する生体膜が含まれる。文脈が明確に他のことを示さない限り、「生体膜」という用語は、中間胃腸管(例えば、胃および小腸)に付随する膜を含まない。
【0048】
「生体膜通過率」は、血液脳関門(「BBB」)などの生体膜を通過する化合物の能力の尺度を提供する。種々の方法が任意の所定の生体膜を通過する分枝の輸送を評価するために使用されてもよい。任意の所定の生物学的障壁(例えば、血液脳脊髄液関門、血液胎盤関門、血液乳関門、血液精巣隔壁など)と関連する生体膜通過率を評価するための方法は、公知であり、本明細書および/もしくは関連文献に記載されており、ならびに/または当業者によって決定されてもよい。
【0049】
「代謝速度の減少」とは、水溶性オリゴマーに結合していない小分子薬物(すなわち、小分子薬物それ自体)または参照標準物質の代謝の速度と比較した場合に、水溶性オリゴマー小分枝薬物結合体の代謝の速度の測定可能な減少をいう。「代謝の第1の通過率の減少」の特別な場合において、同じ「代謝速度の減少」が、小分子薬物(または参照標準物質)以外は要求され、対応する結合体は経口投与される。経口投与された薬物は、胃腸管から門脈循環まで吸収され、全身性循環に到達する前に肝臓を通過してもよい。肝臓は薬物代謝および生体内変換の主要な部位であるので、相当量の薬物が、全身性循環に到達する前に代謝される可能性がある。最初の通過代謝の程度、および、従って、そのあらゆる減少が、多くの異なるアプローチによって測定されてもよい。例えば、動物の血液サンプルは、時間の間隔をあけて回収されてもよく、血漿または血清は、代謝レベルについて、液体クロマトグラフィー/質量スペクトル分析によって分析されてもよい。最初の通過代謝および他の代謝プロセスに付随する「代謝の減少速度」を測定するための他の技術は公知であり、本明細書および/もしくは関連文献に記載され、ならびに/または当業者によって決定されてもよい。好ましくは、本発明の結合体は、以下の値の少なくとも1つを満足させる代謝減少の減少速度を提供してもよい:少なくとも約30%;少なくとも約40%;少なくとも約50%;少なくとも約60%;少なくとも約70%;少なくとも約80%;および少なくとも約90%。「経口で生物的に利用できる」化合物(小分子またはその結合体など)は、25%より多く、好ましくは、70%より多くが経口で投与されるときに生物学的利用能を有するものであり、ここで、化合物の生物学的利用能は、代謝されていない型で全身循環に到達する投与薬物の画分である。
【0050】
「アルキル」とは、約1〜20個の原子長の範囲である炭化水素鎖をいう。このような炭化水素鎖は、好ましくは飽和しているが、必ずしもその必要はなく、そして分枝鎖または直鎖であってもよい。例示的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、3−メチルペンチルなどが含まれる。本明細書で使用される場合、「アルキル」には、3つ以上の炭素原子が言及されるときには、シクロアルキルが含まれる。「アルケニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する2〜20個の炭素原子のアルキルである。
【0051】
「置換アルキル」または「置換Cq−rアルキル」という用語は、qおよびrがアルキル基中に含有される炭素原子の範囲を同定する整数であり、1個、2個、または3個のハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C1−7アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチルなど)、C1−7アルコキシ、C1−7アシルオキシ、C3−7複素環、アミノ、フェノキシ、ニトロ、カルボキシ、アシル、シアノによって置換されている上記のアルキル基を表す。置換アルキル基は、同じかまたは異なる置換基で、1回、2回、または3回置換されてもよい。
【0052】
「低級アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基をいい、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルによって例示される、直鎖または分枝鎖であってもよい。「低級アルケニル」とは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する2〜6個の炭素原子の低級アルキル基をいう。
【0053】
「非干渉性置換基」は、分子中に存在する場合に、分子内に含まれる他の官能基とは典型的には反応性ではない基である。
【0054】
「アルコキシ」とは、Rがアルキルまたは置換アルキルである、−O−R基をいい、好ましくは、C−C20アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシなど)、好ましくは、C−Cである。
【0055】
「薬学的に受容可能な賦形剤」または「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本発明の組成物に含まれてもよく、患者に顕著な有害な毒物学的な効果を引き起こさない成分をいう。
【0056】
「アリール」という用語は、14個までの炭素原子を有する芳香族基を意味する。アリール基には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタレニルなどが含まれる。「置換フェニル」および「置換アリール」とは、ハロ(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(例えば、C1−6アルキル)、アルコキシ(例えば、C1−6アルコキシ)、ベンジルオキシ、カルボキシ、アリールなどから選ばれた、1個、2個、3個、4個、または5個でそれぞれ置換されたフェニル基およびアリール基を意味する(例えば、1−2置換、1−3置換、または1−4置換)。
【0057】
化学部分は、全体を通して主として一価の化学部分(例えば、アルキル、アリールなど)として定義および言及される。それにも関わらず、このような用語は、当業者にとって明白である適切な構造的な状況下では、対応する多価部分を伝えるためにもまた使用される。例えば、「アルキル」部分は一般的には一価の基(例えば、CH−CH−)をいうが、特定の状況においては、二価の連結部分がアルキルであり得、この場合においては、当業者は、アルキルが二価の基(例えば、−CH−CH−)であることを理解し、これは「アルキレン」という用語と等価である(同様に、二価部分が必要とされ、「アリール」であると言及される状況において、当業者は、「アリール」という用語が対応する多価部分、アリーレンをいうことを理解する)。すべての原子は結合形成のためのそれらの通常の数の価数を有すると理解される(すなわち、Hは1、Cは4、Nは3、Oは2、そしてSは、Sの酸化状態に依存して2、4、または6である)。
【0058】
「薬理学的有効量」、「生理学的有効量」、および「治療有効量」は、血流中または標的組織中で所望レベルの活性薬剤および/または結合体を提供するために必要とされる、組成物中に存在する水溶性オリゴマー−小分子薬物結合体の量を意味するために、本明細書で交換可能に使用される。正確な量は、多数の因子、例えば、組成物の特定の活性薬剤、成分、および物理的特性、意図される患者の集団、患者の考慮すべき事柄に依存する可能性があり、本明細書に提供される情報、および関連文献において利用可能である情報に基づいて、当業者によって容易に決定されてもよい。
【0059】
「二官能性」オリゴマーは、典型的には、その末端に、そこに含まれる2つの官能基を有するオリゴマーである。官能基が同じであるとき、このオリゴマーはホモ二官能性であるといわれる。官能基が異なるとき、このオリゴマーはヘテロ二官能性といわれる。
【0060】
本明細書に記載される、塩基性反応物質または酸性反応物質には、中性、荷電性、およびその任意の対応する塩型が含まれる。
【0061】
「患者」という用語は、本明細書に記載されるような結合体の投与によって予防または治療できる状態に罹患しているかまたはその傾向がある生きている生物をいい、これにはヒトと動物の両方が含まれる。
【0062】
「任意の」または「任意に」とは、続けて記載される状況が、存在してもよいが、しかし必ずしも存在しなくてもよく、その結果、その記載は、その状況が存在する場合とその状況が存在しない場合を含むことを意味する。
【0063】
上記に示されるように、本発明は、(とりわけ)水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物に向けられている。
【0064】
「フェノチアジン残基」は、1つ以上の結合の存在によって変化されるフェノチアジン化合物の構造を有する化合物であり、その結合が、1つ以上の水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーを(直接的または間接的のいずれかで)結合するように働く。例示的なフェノチアジン化合物は、式I:
【0065】
【化5】

として本明細書に定義される構造の少なくとも1つによって包含される構造を有し、ここで:
、R、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;またはRおよびRは窒素と一緒に複素環を形成し;ならびに
nは1以上の整数である。
【0066】
本発明の1つ以上の実施形態において、フェノチアジンが以下の式:
【0067】
【化6】

によって包含される構造を有する、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物が提供される。
【0068】
本発明の1つ以上の実施形態において、フェノチアジンが以下の式:
【0069】
【化7】

によって包含される構造を有する、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物が提供される。
【0070】
本発明の1つ以上の実施形態において、フェノチアジンがメキタジン、プロメタジン、プロメジン、およびメチル硫酸チアジナミウムからなる群より選択される、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物が提供される。
【0071】
ある例において、フェノチアジンは、業者から入手することができる。加えて、フェノチアジンは、化学合成を通して入手できる。フェノチアジンの例ならびにフェノチアジンを調製するための合成アプローチの例は、文献中に、例えば、USPN 2519886、2530451、2607773、3987042、GB特許第641452号に記載されている。これらの(および他の)フェノチアジンの各々は、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに(直接的にまたは1つ以上の原子を通して)共有結合できる。
【0072】
本発明の例示的な化合物には、以下の構造:
【0073】
【化8】

を有する化合物が含まれ、ここで:
、R、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;またはRおよびRは窒素と一緒に複素環を形成し;
nは1以上の整数であり;
Xはスペーサー部分であり;ならびに
POLYは水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーである。
【0074】
本発明のさらなる例示的な化合物には、以下の構造:
【0075】
【化9】

を有する化合物が含まれ、ここで:
、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;またはRおよびRは窒素と一緒に複素環を形成し;
nは1以上の整数であり;
Xはスペーサー部分であり;ならびに
POLYは水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーである。
【0076】
本発明の例示的な化合物には、以下の構造:
【0077】
【化10】

を有する化合物が含まれ、ここで:
、R、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;またはRおよびRは窒素と一緒に複素環を形成し;
nは1以上の整数であり;
Xはスペーサー部分であり;ならびに
POLYは水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーである。
【0078】
オリゴマー含有化合物を形成するための(例えば、比較的純粋でない組成物とは対照的な単分散または二モードのオリゴマー組成物からの)個別のオリゴマーの使用は、対応する小分子薬物に付随する特定の特性を有利に変化させる可能性がある。例えば、本発明の化合物は、非経口、経口、経皮、口腔、肺、または鼻などの多数の適切な経路のいずれかによって投与されるときに、血液脳関門を通過する透過の減少を示す。経口送達が意図される場合に、胃腸(GI)壁を横切りながら、かつ全身循環まで、本発明の化合物は、遅く、最小限の、または有効でない血液脳関門の通過を示すことが好ましい。さらに、本発明の化合物は、すべてのオリゴマーを含まない化合物の生物活性および生物学的利用能と比較して、ある程度の生物活性および生物学的利用能を維持している。
【0079】
血液脳関門(「BBB」)に関して、この関門は、血液から脳までの薬物の輸送を制限する。この障壁は、密着結合によって結合された独特な内皮細胞の連続層からなる。BBBの全体の表層の95%より多くを含む大脳毛細血管は、中枢神経系への多くの溶質および薬物の侵入のための主要な経路を表す。
【0080】
血液脳関門の通過能力の程度が容易に知られていない化合物にとっては、このような能力は、本明細書に記載されるようなインサイチュラット脳灌流(「RBP」)モデルなどの適切な動物モデルを使用して決定されてもよい。手短に述べると、RBP技術は、頸動脈の挿管、続いて、制御条件下で化合物溶液を用いる灌流、続いて、脈管性間隙に残っている化合物を取り除くための洗浄フェーズを含む(このような分析は、例えば、Absorption Systems、Exton、PAなどの開発業務受託機関によって実施されてもよい)。RBPモデルの1つの例において、カニューレは、左頸動脈に配置され、側枝が結紮される。分析物を含む(典型的には5マイクロモル濃度レベルであるが必須ではない)生理緩衝液は、単回パス灌流実験において約10mL/分の流速で灌流される。30秒後、灌流は停止され、さらに30秒間の間、化合物を含まない緩衝液で脳内血管の内容物は洗い出される。次いで、脳組織が取り出され、タンデム質量スペクトル分析検出器を備えた液体クロマトグラフ(LC/MS/MS)を介して化合物濃度について分析される。あるいは、血液脳関門の透過性は、分子中の極性原子(通常、酸素、窒素、および結合した水素)の表面への寄与の合計として定義される、化合物の分子の極性表面面積(「PSA」)の計算に基づいて見積もりができる。PSAは、血液脳関門輸送などの化合物の輸送特性と相関することが示されてきた。化合物のPSAを決定するための方法は、例えば、Ertl,P.,et al.,J.Med.Chem.2000,43,3714−3717;および Kelder,J.,et al.,Pharm.Res.1999,16,1514−1519に見い出すことができる。
【0081】
血液脳関門に関して、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマー−小分子薬物結合体は、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに結合していない小分子薬物の通過速度と比較した場合に、減少している血液脳関門の通過速度を示す。本明細書に記載の化合物についての血液脳関門通過速度の例示的な減少には、水溶性オリゴマーに結合していない小分子薬物の血液脳関門通過速度と比較したときに、少なくとも約5%;少なくとも約10%;少なくとも約25%;少なくとも約30%;少なくとも約40%;少なくとも約50%;少なくとも約60%;少なくとも約70%;少なくとも約80%;または少なくとも約90%の減少が含まれる。本発明の結合体のための血液脳関門通過速度における好ましい減少は、少なくとも約20%である。
【0082】
所定の化合物が(その化合物が、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーを含むか否かに関わらず)フェノチアジンとして作用できるかを決定するためのアッセイは公知であり、および/または当業者によって調製されてもよく、ならびに下記にさらに説明される。
【0083】
これらの(および他の)フェノチアジン部分の各々は、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに、(直接的にまたは1つ以上の原子を通して)共有結合できる。
【0084】
小分子薬物の例示的な分子量には、約950ダルトン未満;約900ダルトン未満;約850ダルトン未満;約800ダルトン未満;約750ダルトン未満;約700ダルトン未満;約650ダルトン未満;約600ダルトン未満;約550ダルトン未満;約500ダルトン未満;約450ダルトン未満;約400ダルトン未満;約350ダルトン未満;および約300ダルトン未満の分子量が含まれる。
【0085】
本発明において使用される小分子薬物は、キラル化合物である場合、ラセミ混合物から得られてもよく、あるいは光学活性型、例えば、単一の光学活性エナンチオマー、またはエナンチオマーの任意の組み合わせもしくは比率(スケール付けされた混合物)で得られてもよい。加えて、小分子薬物は、1種以上の幾何異性体を有してもよい。幾何異性体に関して、組成物は、単一の幾何異性体または2種以上の幾何異性体の混合物を含むことができる。本発明における使用のための小分子薬物は、慣例的な活性型であり得、または一定の程度の修飾を有してもよい。例えば、小分子薬物は、オリゴマーの共有結合の前または後で、小分子薬物に結合された、標的化薬剤、タグ、またはトランスポーターを有してもよい。あるいは、小分子薬物は、リン脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンすなわち「DSPE」、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンすなわち「DPPE」など)または小さな脂肪酸などの、小分子薬物に結合された親油性部分を有してもよい。しかし、いくつかの場合において、小分子薬物部分は、親油性部分への結合を含んでいないことが好ましい。
【0086】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーにカップリングするためのフェノチアジン部分は、オリゴマーへの共有結合のために適切である遊離のヒドロキシル基、カルボキシル基、チオ基、アミノ基など(すなわち、「ハンドル」)を有する。加えて、フェノチアジン部分は、反応基の導入によって、好ましくは、オリゴマーと薬物の間の安定な共有結合の形成のために適切である官能基への既存の官能基の転換によって修飾されてもよい。
【0087】
従って、各オリゴマーは、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド;ビニルアルコール、1−プロぺノール、または2−プロペノールなどのオレフィンアルコール;ビニルピロリドン;アルキルが好ましくはメチルである、ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはヒドロキシアルキルメタクリレート;乳酸またはグリコール酸などのαヒドロキシ酸;ホスファゼン、オキサゾリン、アミノ酸、単糖などの炭水化物、マンニトールなどのアルジトール;およびN−アクリロイルモルホリンからなる群より選択される3つまでの異なるモノマー型から構成される。好ましいモノマー型には、アルキレンオキサイド、オレフィンアルコール、ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはメタクリレート、N−アクリロイルモルホリン、およびαヒドロキシ酸が含まれる。好ましくは、各オリゴマーは、独立して、この群から選択された2つのモノマー型のコオリゴマーであり、または、より好ましくは、この群から選択された1種のモノマー型のホモオリゴマーである。
【0088】
コオリゴマー型における2種のモノマー型は、同じモノマー型、例えば、2つのアルキレンオキサイド、例えば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのそれであってもよい。好ましくは、このオリゴマーは、エチレンオキサイドのホモオリゴマーである。通常、しかし、必須ではないが、小分子に共有結合していない末端(または複数の末端)はキャップされて、これを不活性化させる。あるいは、この末端は反応基を含んでもよい。末端が反応基である場合、この反応基は、最終的なオリゴマーの形成の条件下で、もしくは小分子薬物へのオリゴマーの共有結合の間に非反応性であるように選択されるか、またはこの反応基は必要に応じて保護される。1つの一般的な末端官能基は、特に、オリゴエチレンオキサイドについてのヒドロキシルすなわち−OHである。
【0089】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマー(例えば、本明細書に提供される種々の構造中の「POLY」)は、多数の異なるジオメトリーのいずれかを有する。例えば、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーは、直鎖状、分枝状、またはフォーク状であり得る。最も典型的には、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーは直鎖状であるか、または分枝状であり、例えば、1つの分枝点を有する。本明細書での議論の多くは、例証的なオリゴマーとしてポリ(エチレンオキサイド)に焦点を当てているが、本明細書に提示される議論および構造は、上記に記載される水溶性であり、非ペプチド性の任意のオリゴマーを包含するように容易に拡張できる。
【0090】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーの分子量は、リンカー部分を除外して、一般的には、相対的に低い。水溶性ポリマーの分子量の例示的な値には、約1500ダルトンより下;約1450ダルトンより下;約1400ダルトンより下;約1350ダルトンより下;約1300ダルトンより下;約1250ダルトンより下;約1200ダルトンより下;約1150ダルトンより下;約1100ダルトンより下;約1050ダルトンより下;約1000ダルトンより下;約950ダルトンより下;約900ダルトンより下;約850ダルトンより下;約800ダルトンより下;約750ダルトンより下;約700ダルトンより下;約650ダルトンより下;約600ダルトンより下;約550ダルトンより下;約500ダルトンより下;約450ダルトンより下;約400ダルトンより下;約350ダルトンより下;約300ダルトンより下;約250ダルトンより下;約200ダルトンより下;および約100ダルトンより下が含まれる。
【0091】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーの分子量(リンカーを除く)の例示的な範囲には、約100〜約1400ダルトン;約100〜約1200ダルトン;約100〜約800ダルトン;約100〜約500ダルトン;約100〜約400ダルトン;約200〜約500ダルトン;約200〜約400ダルトン;約75〜1000ダルトン;および約75〜約750ダルトンが含まれる。
【0092】
好ましくは、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマー中のモノマーの数は、以下の範囲の1つ以上に含まれる:約1から約30の間(両端を含む);約1から約25の間;約1から約20の間;約1から約15の間;約1から約12の間;約1から約10の間。特定の例において、オリゴマー(および対応する結合体)中の連続するモノマーの数は、1、2、3、4、5、6、7、または8のうちの1つである。さらなる実施形態において、オリゴマー(および対応する結合体)は、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20のモノマーを含む。なおさらなる実施形態において、オリゴマー(および対応する結合体)は、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30の連続するモノマーを保有する。従って、例えば、水溶性であり、非ペプチド性のポリマーはCH−(OCHCH−を含み、「n」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30であり得る整数であり、以下の範囲:約1から約25の間;約1から約20の間;約1から約15の間;約1から約12の間;約1から約10の間の1つ以上に含まれ得る。
【0093】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーが1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のモノマーを有するとき、これらの値は、それぞれ、約75ダルトン、約119ダルトン、約163ダルトン、約207ダルトン、約251ダルトン、約295ダルトン、約339ダルトン、約383ダルトン、約427ダルトン、および約471ダルトンの分子量を有するメトキシエンドキャップされたオリゴ(エチレンオキサイド)に対応する。オリゴマーが11、12、13、14、または15のモノマーを有するとき、これらの値は、それぞれ、約515ダルトン、約559ダルトン、約603ダルトン、約647ダルトン、および約691ダルトンに対応する分子量を有するメトキシエンドキャップされたオリゴ(エチレンオキサイド)に対応する。
【0094】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーがフェノチアジンに結合されるとき(オリゴマーがフェノチアジン上で有効に「成長する」ための1つ以上のモノマーの段階的付加とは対照的に)、水溶性であり、非ペプチド性の活性型オリゴマーを含む組成物が単分散性であることが好ましい。しかし、二モード組成物が利用される場合において、組成物は、上記の数のモノマーの任意の2つの周辺を中心とする二モード分布を有する。例えば、二モードオリゴマーは以下の例示的なモノマーサブユニットの組み合わせのいずれか1つを有してもよい:1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8、1−9、1−10など;2−3、2−4、2−5、2−6、2−7、2−8、2−9、2−10など;3−4、3−5、3−6、3−7、3−8、3−9、3−10など;4−5、4−6、4−7、4−8、4−9、4−10など;5−6、5−7、5−8、5−9、5−10など;6−7、6−8、6−9、6−10など;7−8、7−9、7−10など;および8−9、8−10など。
【0095】
ある場合において、水溶性であり、非ペプチド性の活性型オリゴマーを含む組成物は、三モード性または四モード性でさえあり、以前に記載されたように、一定の範囲のモノマー単位を保有する。十分に規定されたオリゴマー(すなわち、二モード性、三モード性、四モード性であるなど)の混合物を有するオリゴマー組成物は、所望のプロフィールのオリゴマー(モノマーの数のみが異なる2種のオリゴマーの混合物が二モード性であり;モノマーの数のみが異なる3種のオリゴマーの混合物が三モード性であり;モノマーの数のみが異なる4種のオリゴマーの混合物が四モード性である)を得るために精製された単分散性オリゴマーを混合することによって調製でき、または代替的に、所望のかつ規定された分子量範囲のオリゴマーの混合物を得るために、「中心カット」を回収することによって多分散オリゴマーのカラムクロマトグラフィーから得ることができる。
【0096】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーは、好ましくは、単分子または単分散性である組成物から得られることが好ましい。すなわち、この組成物中のオリゴマーは、分子量の分布ではなく、同じ別個の分子量の値を有する。いくつかの単分散オリゴマーは、Sigma−Aldrichなどの業者から購入することができ、または代替的には、Sigma−Aldrichなどからの市販の出発物質から直接的に調製できる。水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーは、Chen Y.,Baker,G.L.,J.Org.Chem.,6870−6873(1999)、WO 02/098949、および米国特許出願公開2005/0136031に記載されるように調製できる。
【0097】
存在する場合、スペーサー部分(これを通して、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーがフェノチアジン部分に結合する)は、単結合、酸素原子もしくは硫黄原子などの単一の原子、2つの原子、または多数の原子であってもよい。典型的には、しかし必須ではなく、スペーサー部分は、天然で直鎖状である。スペーサー部分「X」は、加水分解的に安定であり、好ましくは、酵素的にもまた安定である。好ましくは、スペーサー部分「X」は、約12原子未満、および好ましくは、約10原子未満、およびさらにより好ましくは、約8原子未満、およびさらにより好ましくは、約5原子未満の鎖長を有するものであり、それによって、長さは単一鎖中の原子の数を意味し、置換基を数えるものではない。例えば、このような尿素結合、Rオリゴマー−NH−(C=O)−NH−R’薬物は、3原子(−H−(O)−H−)の鎖長を有するものと見なされる。選択された実施形態において、連結はさらなるスペーサー基を含まない。
【0098】
ある例において、スペーサー部分「X」は、エーテル、アミド、ウレタン、アミン、チオエーテル、尿素、または炭素−炭素結合を含む。以下に議論されるもの、および実施例に例証されるものなどの官能基は、典型的には、連結を形成するために使用される。スペーサー部分は、以下にさらに説明されるように、他の原子もまた含む(または他の原子に近接するかまたは他の原子に隣接する)ことはより好ましくないかもしれない。
【0099】
より具体的には、選択された実施形態において、本発明のスペーサー部分Xは以下のいずれかであってもよい:「−」(すなわち、フェノチアジン残基と、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーとの間の、安定なまたは分解可能であり得る共有結合)、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−CH−C(O)O−、−CH−OC(O)−、−C(O)O−CH−、−OC(O)−CH−、C(O)−NH、NH−C(O)−NH、O−C(O)−NH、−C(S)−、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−O−CH−、−CH−O−、−O−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−CH−O−、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−NH−C(O)−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−、−CH−CH−NH−C(O)−CH−、−NH−C(O)−CH−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−CH、−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−CH−、−NH−CH−、−NH−CH−CH−、−CH−NH−CH−、−CH−CH−NH−CH−、−C(O)−CH−、−C(O)−CH−CH−、−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−CH−、二価シクロアルキル基、RがHまたはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、および置換アリールからなる群より選択される有機基である−N(R)−。さらなるスペーサー部分には、アシルアミノ、アシル、アリールオキシ、両端を含む1個から5個の間の炭素原子を含むアルキレン架橋、アルキルアミノ、両端を含む2個〜4個の炭素原子を含むジアルキルアミノ、ピペリジノ、ピロリジノ、N−(低級アルキル)−2−ピペリジル、モルホリノ、1−ピペリジニル、4−(低級アルキル)−1−ピペリジニル、4−(ヒドロキシル−低級アルキル)−1−ピペリジニル、4−(メトキシ−低級アルキル)−1−ピペリジニル、およびグアニジンが含まれる。ある場合において、薬物化合物の一部または官能基は、オリゴマーの結合を容易にするために、完全に修飾または除去されてもよい。ある場合において、Xはアミド、すなわち、−CONR−または−RNCO−ではないことが好ましい。
【0100】
しかし、本発明の目的のために、原子の一群がオリゴマーセグメントに直接的に隣接され、かつその原子の一群がそのオリゴマーのモノマーと同じであって、この群がオリゴマー鎖の単なる伸長を表すときには、その原子の一群は連結であるとは見なされない。
【0101】
オリゴマー(または、フェノチアジン上でオリゴマーを「成長させる」ことが所望されるときには、新生オリゴマー)の末端上の官能基の、フェノチアジン中の対応する官能基との反応によって、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーと小分子との間の連結Xが形成される。例証的な反応は、以下に手短に説明される。例えば、オリゴマー上のアミノ基は、アミド結合を生じるために、小分子上のカルボン酸もしくは活性化カルボン酸誘導体と反応されてもよく、または逆も同様である。あるいは、オリゴマー上のアミンの、薬物上の活性化炭酸塩(例えば、炭酸スクシンイミジルまたは炭酸ベンゾトリアゾリル)との反応、または逆の同様の反応は、カルバメート結合を形成する。オリゴマー上のアミンの、薬物上のイソシアネート(R−N=C=O)との反応、または逆の同様の反応は、尿素結合(R−NH−(C=O)−NH−R’)を形成する。さらに、オリゴマー上のアルコール(アルコキシド)基の、薬物中のハロゲン化アルキルまたはハロゲン化物基との反応、または逆の同様の反応は、エーテル結合を形成する。さらに別のカップリングアプローチにおいて、アルデヒド官能基を有する小分子は、還元的アミノ化によってオリゴマーアミノ基にカップリングされ、オリゴマーと小分子の間の二級アミン結合の形成を生じる。
【0102】
特に好ましい水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーは、アルデヒド官能基を有するオリゴマーである。この点に関して、オリゴマーは、以下の構造:CHO−(CH−CH−O)−(CH−C(O)Hを有し、ここで、(n)は1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10の1つであり、かつ、(p)は1、2、3、4、5、6、および7の1つである。好ましい(n)値には、3、5、および7が含まれ、好ましい(p)値は2、3、および4が含まれる。
【0103】
官能基を有さない、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーの末端は、キャップされ、それを非反応性にしてもよい。オリゴマーが、結合体の形成のために意図される以外の末端においてさらなる官能基を含むとき、その基は、連結「X」の形成の条件下で非反応性であるように選択されるか、またはこれは連結「X」の形成の間に保護されるかのいずれかである。
【0104】
上記に言及したように、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーには、結合体化の前に少なくとも1つの官能基を含む。この官能基は、小分子の中に含まれるか、または小分子に導入される反応基に依存して、小分子への共有結合のための求電子基または求核基を含む。オリゴマーまたは小分子のいずれかに存在してもよい求核基の例には、ヒドロキシル、アミン、ヒドラジン(−NHNH)、ヒドラジド(−C(O)NHNH)、およびチオールが含まれる。好ましい求核基には、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、およびチオール、特に、アミンが含まれる。オリゴマーへの共有結合のための多くの小分子薬物は、遊離のヒドロキシル基、アミノ基、チオ基、アルデヒド基、ケトン基、またはカルボキシル基を有する。
【0105】
オリゴマーまたは小分子のいずれかに存在してもよい求電子官能基の例には、カルボン酸、カルボン酸エステル、特に、イミドエステル、オルトエステル、炭酸塩、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、エポキシ、スルホン酸塩、チオスルホン酸塩、シラン、アルコキシシラン、およびハロシランが含まれる。これらの基のより特定の例には、スクシンイミジルエステルまたは炭酸塩、イミダゾイルエステルまたは炭酸塩、ベンゾトリアゾールエステルまたは炭酸塩、ビニルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルピリジン、ピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、およびトレシレート(2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸塩)が含まれる。
【0106】
これらの基のいくつかの硫黄類似体、例えば、チオン、チオン水和物、チオケタール、2−チアゾリジンチオンなど、ならびに上記の部分のいくつかの水和物または保護誘導体(例えば、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール、チオアセタール)もまた含まれる。
【0107】
カルボン酸の「活性化誘導体」とは、誘導体化されていないカルボン酸よりも一般的にはるかに容易に、求核試薬と容易に反応するカルボン酸誘導体をいう。活性化カルボン酸には、例えば、酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物など)、無水物、炭酸塩、およびエステルが含まれる。このようなエステルには、−(CO)O−N[(CO)−]の一般型のイミドエステル;例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルまたはN−ヒドロキシフタルイミジルエステルが含まれる。イミダゾリルエステルおよびベンゾトリアゾールエステルもまた好ましい。特に好ましいものは、共有に係る米国特許第5,672,662号に記載されているような、活性化プロピオン酸またはブタン酸エステルである。これらには、−(CH2−3C(=O)O−Qの型の基が含まれ、ここで、Qは、好ましくは、N−スクシンイミド、N−スルホスクシンイミド、N−フタルイミド、N−グルタルイミド、N−テトラヒドロフタルイミド、N−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、ベンゾトリアゾール、7−アザベンゾトリアゾール、およびイミダゾールから選択される。
【0108】
他の好ましい求電子基には、炭酸スクシンイミジル、マレイミド、炭酸ベンゾトリアゾール、グリシジルエーテル、炭酸イミダゾリル、p−ニトロフェニルカルボネート、アクリレート、トレシレート、アルデヒド、およびオルトピリジルジスルフィドが含まれる。
【0109】
これらの求電子基は、求核試薬、例えば、ヒドロキシ基、チオ基、またはアミノ基との反応に供され、種々の結合型を生じる。本発明のために好ましいものは、加水分解的に安定である連結の形成に有利な反応である。例えば、オルトエステル、スクシンイミジルエステル、イミダゾリルエステル、およびベンゾトリアゾールエステルを含む、カルボン酸およびその活性化誘導体は、上記の型の求核試薬と反応して、エステル、チオエステル、およびアミドをそれぞれ形成し、それらのアミドは加水分解的に最も安定である。炭酸スクシンイミジル、炭酸イミダゾリル、および炭酸ベンゾトリアゾールを含むカーボネートは、アミノ基と反応して、カルバメートを形成する。イソシアネート(R−N=C=O)は、ヒドロキシル基またはアミノ基と反応し、それぞれ、カルバメート(RNH−C(O)−OR’)結合または尿素(RNH−C(O)−NHR’)結合を形成する。アルデヒド、ケトン、グリオキサール、ジオン、およびそれらの水和物またはアルコール付加物(すなわち、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、およびケタール)は、アミンと好ましく反応され、所望される場合、続いて得られるイミンの還元を行い、アミン連結を提供する(還元的アミノ化)。
【0110】
求電子官能基のいくつかは、チオールなどの求核基を加えることができ、例えば、チオエーテル結合を形成する、求電子性二重結合を含む。これらの基には、マレイミド、ビニルスルホン、ビニルピリジン、アクリレート、メタクリレート、およびアクリルアミドが含まれる。他の基は、求核試薬によって置き換えできる脱離基を含み;これらには、クロロエチルスルホン、ピリジルジスルフィド(これは、切断可能なS−S結合を含む)、ヨードアセトアミド、メシレート、トシレート、チオスルホネート、およびトレシレートが含まれる。エポキシドは、求核試薬による開環によって反応して、例えば、エーテル結合またはアミン結合を形成する。オリゴマーおよび低分子上の上記に記述されたような相補的な反応基を含む反応は、本発明の結合体を調製するために利用される。
【0111】
ある場合において、フェノチアジンは、結合体化のための官能基を有さなくてもよい。この場合において、フェノチアジンが結合体化のために適した官能基を有するように、「もともとの」フェノチアジンを修飾する(または「官能基化する」)ことが可能である。例えば、フェノチアジンがアミド基を有するが、アミン基が所望されているならば、Hofmann転位、Curtius転位(1回アミドはアジドに転換される)またはLossen転位(1回アミドはヒドロキシアミドに転換され、その後トリエン−2−スルホニルクロリド/塩基で処理を行う)によってアミド基をアミン基に修飾することが可能である。
【0112】
カルボキシル基を有する小分子フェノチアジンの結合体を調製することが可能であり、ここで、カルボキシル基を有する小分子フェノチアジンは、アミノ末端オリゴマー性エチレングリコールにカップリングされ、オリゴマーに小分子フェノチアジンを共有結合させるアミド基を有する結合体を提供する。このことは、例えば、無水有機溶媒中で、カップリング剤(ジシクロヘキシルカルボジイミド、すなわち「DCC」)の存在下で、アミノ末端オリゴマー性エチレングリコールと、カルボキシル基を有する小分子フェノチアジンを合わせることによって実施することができる。
【0113】
さらに、ヒドロキシル基を有する小分子フェノチアジンの結合体を調製することが可能であり、ここで、ヒドロキシル基を有する小分子フェノチアジンは、オリゴマー性エチレングリコールハロゲン化物にカップリングされ、エーテル(−O−)結合した小分子結合体を生じる。これは、例えば、ヒドロキシル基を脱プロトン化するために水素化ナトリウムを使用すること、続いて、ハロゲン化物末端を有するオリゴマー性エチレングリコールを用いる反応によって実施できる。
【0114】
さらに、ヒドロキシル基を有する小分子フェノチアジン部分の結合体を調製することが可能であり、ここで、カーボネート[−O−C(O)−O−]連結された小分子結合体を生じるために、ヒドロキシル基を有する小分子フェノチアジン部分は、ハロホルメート基を有するオリゴマー性エチレングリコール[例えば、ハロがクロロ、ブロモ、ヨードである、CH(OCHCHOC(O)−ハロ]にカップリングされる。このことは、例えば、求核性触媒(4−ジメチルアミノピリジンすなわち「DMAP」)の存在下で、フェノチアジン部分およびハロホルメート基を有するオリゴマー性エチレングリコールを合わせ、それによって、対応するカーボネート連結結合体を生じることによって実施できる。
【0115】
別の例において、対応するヒドロキシル基を形成するために最初にケトン基を還元することによって、ケトン基を有する小分子フェノチアジン部分の結合体を調製することが可能である。その後、今やヒドロキシル基を含む小分子フェノチアジンは、本明細書に記載されるようにカップリングできる。
【0116】
さらに別の例において、アミン基を有する小分子フェノチアジンの結合体を調製することが可能である。1つのアプローチにおいて、アミン基を有する小分子フェノチアジンおよびアルデヒドを有するオリゴマーは適切な緩衝液中に溶解され、その後、適切な還元剤(例えば、NaCNBH)が加えられる。還元後、結果は、アミン基含有小分子フェノチアジンおよびアルデヒドを有するオリゴマーのカルボニル炭素の間で形成されたアミン結合である。
【0117】
アミン基を有する小分子フェノチアジン部分の結合体を調製するための別のアプローチにおいて、カップリング試薬(例えば、DCC)の存在下で、カルボン酸を有するオリゴマーおよび小分子フェノチアジンを有するアミン基が合わされる。結果は、アミン基含有小分子フェノチアジンのアミン基と、カルボン酸を有するオリゴマーのカルボニルとの間で形成されるアミド結合である。
【0118】
本明細書に開示される結合体の全範囲が記載されるように挙動すると考えられているが、最適のサイズのオリゴマーは以下のように同定できる。
【0119】
第1に、単分散から得られたオリゴマーまたは二モード水溶性オリゴマーが小分子薬物に結合体化される。好ましくは、薬物は、経口的に生物学的に利用可能であり、そしてそれ自身で、無視できない血液脳関門通過速度を示す。次に、血液脳関門を通過する結合体の能力は適切なモデルを使用して決定され、非修飾である親の薬物のそれと比較される。結果が好ましいものであるならば、言い換えると、例えば、通過の速度が有意に減少されるならば、結合体の生物活性がさらに評価される。好ましくは、本発明に従う化合物は、親の薬物と比較して有意な程度の生物活性、すなわち、親の薬物の生物活性の約30%より多く、またはさらにより好ましくは、親の薬物の生物活性の約50%より多くを維持する。
【0120】
上記の工程は、同じモノマー型であるが、異なる数のサブユニットを有するオリゴマーを使用して1回以上反復され、結果が比較される。
【0121】
血液脳関門を通過する能力が、結合体化されていない小分子薬物に対する比較において減少している各結合体については、次に、その経口生物学的利用能が評価される。これらの結果に基づいて、言い換えれば、小分子中の所定の位置または部位において、所定の小分子に対してサイズを変化させるオリゴマーの結合体の比較に基づいて、生体膜横断の減少と、経口生物学的利用能と、生物活性との間の最適なバランスを有する結合体を提供する際に最も有効であるオリゴマーのサイズを決定することが可能である。小さなサイズのオリゴマーは、このようなスクリーニングを実行可能にし、得られる結合体の特性を有効に仕立てさせる。オリゴマーサイズに小さな増分的変化を行い、実験設計アプローチを利用することによって、生体膜通過速度の減少、経口生物学的利用能、および生物活性の好ましいバランスを有する結合体を有効に同定することができる。ある場合において、本明細書に記載されるようなオリゴマーの結合は、薬物の経口生物学的利用能を実際に増加させるために有効である。
【0122】
例えば、当業者は、日常的な実験を使用して、最初に、異なる重量と官能基を有する一連のオリゴマーを調製すること、次いで、患者に結合体を投与すること、および定期的な血および/または尿のサンプリングを行うことによって、必要なクリアランスプロフィールを得ることによって、生物学的利用能を改善するために最良の分子サイズおよび結合を決定できる。一旦、一連のクリアランスプロフィールが各々の試験した結合体について得られたら、適切な結合体が同定できる。
【0123】
動物モデル(齧歯動物およびイヌ)もまた、経口薬物輸送を研究するために使用できる。加えて、非インビボ方法には、齧歯動物の反転腸切除組織およびCaco−2細胞単層組織培養モデルが含まれる。これらのモデルは、経口薬物の生物学的利用能を予測する際に有用である。
【0124】
フェノチアジンまたはフェノチアジンの結合体および水溶性非ペプチド性ポリマーがフェノチアジン治療剤としての活性を有するか否かを決定するために、このような化合物を試験することが可能である。フェノチアジン化合物は、製薬業界において日常的になり、かつ本明細書に記載されている受容体を発現する種々の細胞系統を使用する、受容体へのインビトロ結合研究を使用して試験されてもよい。
【0125】
本発明は、薬学的賦形剤と組み合わせて、本明細書に提供されるような結合体を含む薬学的調製物もまた含む。一般的には、この結合体自体が固体型(例えば、沈殿物)であり、これは、固体型または液体型のいずれかであり得る、適切な薬学的賦形剤と合わせることができる。
【0126】
例示的な賦形剤には、非限定的に、炭水化物、無機塩、抗微生物剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝剤、酸、塩基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものが含まれる。
【0127】
糖、アルジトールなどの誘導体化糖、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーなどの炭水化物が賦形剤として提示されてもよい。特定の炭水化物賦形剤には、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどのジサッカリド;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどのポリサッカリド;およびマンニトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトールが含まれる。
【0128】
賦形剤には、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、およびこれらの組み合わせなどの無機塩または緩衝剤もまた含まれる。
【0129】
調製物には、微生物の増殖を予防または阻止するための抗微生物剤もまた含まれてもよい。本発明のために適切な抗微生物剤の非限定的な例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルソール、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0130】
抗酸化剤は、調製物中で同様に存在し得る。抗酸化剤は、酸化を妨害するために使用され、それによって、結合体または調製物の他の成分の劣化を妨害する。本発明における使用のための適切な抗酸化剤には、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0131】
界面活性剤が賦形剤として存在してもよい。例示的な界面活性剤には、「Tween 20」および「Tween 80」などのポリソルベート、F68およびF88のプルロニック(この両方ともBASF,Mount Olive,NJから入手可能);ソルビタンエステル;レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸、および脂肪エステルのようなリン脂質などの脂質;コレステロールなどのステロイド;ならびにEDTA、亜鉛、および他のこのような適切なカチオンなどのキレート剤が含まれる。
【0132】
薬学的に受容可能な酸または塩基は、調製物中に賦形剤として存在してもよい。使用できる酸の非限定的な例には、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される酸が含まれる。適切な塩基の例には、非限定的に、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム(potassium fumerate)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される塩基が含まれる。
【0133】
組成物中の結合体の量は多数の要因によって変動するが、組成物が単位用量容器中に保存されるときに、最適に治療有効量である。治療有効量は、どれだけの量が臨床的に所望される評価項目を生じるかを決定するために、増加量の結合体の反復投与によって、実験的に決定できる。
【0134】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性および組成物の特定の必要性に依存して変動する。任意の個々の賦形剤の最適量は、日常的な実験を通して、すなわち、変動量(低い量から高い量までの範囲)の賦形剤を含む組成物を調製すること、安定性および他のパラメーターを試験すること、次いで、最適な性能が顕著な副作用を伴わずに達成される範囲を決定することによって、決定される。
【0135】
しかし、一般的には、賦形剤は、約1重量%〜約99重量%、好ましくは、約5重量%〜98重量%、より好ましくは、約15〜95重量%の賦形剤の量で組成物中に存在し、30重量%未満の濃度が最も好ましい。
【0136】
他の賦形剤を伴うこれらの前述の薬学的賦形剤および薬学的組成物に関する一般的教示は、
「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」,19th ed.,Williams & Williams,(1995),the「Physician’s Desk Reference」,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)、およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0137】
これらの薬学的組成物は、任意の数の型を採ることができ、本発明はこの点に関して限定されない。例示的な調製物は、最も好ましくは、錠剤、カプレット、カプセル、ジェルキャップ、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、エリキシル、シロップ、ロゼンジ、経皮パッチ、スプレー、坐剤、散剤などの経口投与のために適切な型である。
【0138】
経口剤形は、経口的に活性であるこれらの結合体のために好ましく、錠剤、カプレット、カプセル、ジェルキャップ、懸濁液、溶液、エリキシル、およびシロップが含まれ、任意にカプセル化される、複数の顆粒剤、ビーズ、散剤、またはペレットもまた含めることができる。このような剤形は、薬学的製剤の分野における当業者に公知であり、適切なテキストに記載されている従来的な方法を使用して調製される。
【0139】
錠剤およびカプレットは、例えば、標準的な錠剤プロセス手順および装置を使用して製造できる。直接的な圧縮および顆粒化技術は、本明細書に記載される結合体を含む錠剤またはカプレットを調製するときに好ましい。結合体に加えて、錠剤およびカプレットは、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、着色剤、流れ剤などのような不活性な薬学的に受容可能なキャリア材料を一般的に含む。結合剤は、錠剤に粘着性質を付与するために使用され、従って、錠剤がそのままで残っていることを確実にする。適切な結合剤材料には、デンプン(コーンスターチおよびプレゼラチン化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロース、およびラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、ならびに天然および合成のガム、例えば、アカシアアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系ポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含む)、およびVeegumが含まれるがこれらに限定されない。滑沢剤は、錠剤製造を容易にするために使用され、圧力が軽減されるときに、粉末の流れを促進し、そして粒子のキャッピング(すなわち、粒子の破壊)を妨害する。有用な滑沢剤はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸である。崩壊剤は、錠剤の崩壊を容易にするために使用され、一般的には、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ガム、または架橋ポリマーである。充填剤には、当該分野において周知であるように、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および微結晶セルロース、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールなどの可溶性材料が含まれる。安定剤は、当該分野において周知であるように、例として酸化反応を含む、薬物分解反応を阻害または遅延させるために使用される。
【0140】
カプセルもまた好ましい経口剤形であり、この場合においては、結合体含有組成物は、液体もしくはジェル(例えば、ジェルキャップの場合)または固体(顆粒、ビーズ、粉末もしくはペレットを含む)の型でカプセル化できる。適切なカプセルには、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれ、一般的には、ゼラチン、デンプン、またはセルロース系材料から作られる。2ピースハードゼラチンカプセルは、好ましくは、ゼラチンバンドなどでシールされる。
【0141】
実質的に乾燥型(粉末またはケーキの型であり得る凍結乾燥物または沈殿物)の非経口製剤、ならびに、液体でありかつ乾燥型の非経口製剤を再構成する工程を必要とする、注射のために調製される製剤が含まれる。注射前に固体組成物を再構成するための適切な希釈剤の例には、注射用静菌水、5%デキストロース水、リン酸緩衝化生理食塩水、Ringer液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0142】
ある場合において、非経口投与のために意図される組成物は、通常は滅菌されている、非水性溶液、懸濁液、またはエマルジョンの型をとり得る。非水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびコーン油などの植物油、、ゼラチン、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。
【0143】
本明細書に記載される非経口製剤は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントもまた含むことができる。これらの製剤は、滅菌剤の取り込み、細菌保持フィルターを通してのろ過、照射、または熱によって滅菌される。
【0144】
結合体はまた、従来的な経皮パッチまたは他の経皮送達系を使用して、皮膚を通して投与でき、ここで、この結合体は、皮膚に添付される薬物送達デバイスとして働く積層構造中に含まれる。このような構造において、この結合体は、上部裏層の下にある層または「リザーバー」に含まれる。この積層構造は、単一のリザーバーを含むことができ、またはこれは、複数のリザーバーを含むことができる。
【0145】
この結合体は、直腸投与のための坐剤にもまた製剤化できる。坐剤に関しては、この結合体は、坐剤ベース材料(例えば、室温では固体のままであるが、体温では軟化、融解、または溶解する賦形剤)、例えば、ココアバター(coca butter)(カカオ脂)、ポリエチレングリコール、グリセリン化ゼラチン、脂肪酸、およびこれらの組み合わせと混合される。坐剤は、例えば、以下の工程(提示された順序であることは必ずしも必要ではない)を実施することによって調製できる:坐剤ベース材料を融解して融解物を形成させること;結合体を取り込むこと(坐剤ベース材料の融解の前または後のいずれか);融解物を型に注ぐこと;融解物を冷却し(例えば、融解物を含有する型を室温環境に配置すること)、それによって、坐剤を形成すること;および型から坐剤を取り出すことによって調製できる。
【0146】
本発明はまた、この結合体を用いる治療に応答性である状態に苦しんでいる患者に、本明細書に提供されるような結合体を投与するための方法を提供する。この方法は、一般的に、治療有効量の結合体(好ましくは、薬学的調製物の一部として提供される)を経口的に投与することを含む。肺、鼻、口腔、直腸、舌下、経皮、および非経口などの他の投与の様式もまた意図される。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、くも膜下腔内、および筋肉内の注射、ならびに注入注射を含む。
【0147】
非経口投与が利用される場合において、500〜30Kダルトン(例えば、約500、1000、2000、2500、3000、5000、7500、10000、15000、20000、25000、30000、またはそれ以上の分子量を有する)の範囲の分子量を有する、以前に記載されたものよりもいくぶん大きなオリゴマーを利用することが必要とされてもよい。
【0148】
投与の方法は、特定の結合体の投与によって救済または予防できる任意の状態を治療するために使用されてもよい。当業者は、特定の結合体がどの状態を効果的に治療できるかを認識している。投与される実際の用量は、被験体の年齢、体重、および一般的な健康状態、ならびに治療される状態の重篤度、保健医療の専門家の判断、および投与される結合体に依存して変化する。治療有効量は当業者には公知であり、そして/または適切な参考テキストおよび文献に記載されている。一般的には、治療有効量は、約0.001mg〜1000mgの範囲であり、好ましくは0.01mg/日〜750mg/日、より好ましくは0.10mg/日〜500mg/日の用量である。
【0149】
任意の所定の結合体の単位用量(再度、薬学的調製物の一部として好ましく提供される)は、医師の判断、患者の必要性などに依存して、種々の投薬スケジュールで投与できる。特定の投薬スケジュールは当業者には公知であり、または日常的な方法を使用して実験的に決定できる。例示的な投薬スケジュールには、非限定的に、1日に5回、1日に4回、1日に3回、1日2回、1日1回、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に1回、およびこれらの任意の組み合わせの投与が含まれる。一旦、臨床的な評価項目が達成されると、組成物の投薬は停止される。
【0150】
本明細書において参照される、すべての記事、書籍、特許、特許公開、および他の刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書の教示と参照により組み入れられた当該技術の間で不一致がある場合には、本明細書中の教示の意味が優先するべきである。
【実施例】
【0151】
実験
本発明は特定の好ましくかつ具体的な実施形態とともに説明されてきたが、前述の説明なららびに以下に続く実施例は例証することを意図しており、本発明の範囲を限定するものではないことが理解される。本発明の範囲内に含まれる他の態様、利点、および改変は、本発明が属する当該技術の当業者には明白である。
【0152】
添付の実施例において言及されているすべての非PEG化学試薬は、他に示されていない限り、市販されている。PEGマーの調製は、例えば、米国特許出願公開第2005/0136031号に記載されている。
【0153】
H NMR(核磁気共鳴)データは、NMRスペクトル分析測定装置によって生成された。特定の化合物のリスト、ならびに化合物の供給源は以下に提供される。
【0154】
実施例1
小PEGプロメタジン結合体の合成:
スキーム1:mPEG−N−プロメタジン結合体の合成
【0155】
【化11】

プロメタジン、1−クロロエチルクロロホルメート、ジクロロエタン(DCE)、オキシ塩化リン(POCl)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化ナトリウム(NaH)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)はSigma−Aldrich(St Louis、MO)から入手された。mPEG−OMsおよびmPEG−BrはSai Chemicals(India)から入手した。炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、炭酸カリウム(KCO)、塩化ナトリウム(NaCl)、および水酸化ナトリウム(NaOH)はEM Science(Gibbstown,NJ)から入手された。DCMはCaHから蒸留された。
【0156】
プロメタジン・HClの脱塩:Sigma−Aldrich製プロメタジン・HCl(10g、31.2mmol)は、500mLフラスコ中のHO(250mL)に溶解された。NaCO(8.2g、78mmol)を一度に加えられた。この塩は最初に水に溶解され、次いでスターラーバーに付着する濃厚な油状の生成物が出現した。DCM(50mL)を加えてこの生成物を溶解させた。2.5時間後にこの溶液は透明になった。この溶液は、DCM(50mL)を加えることによって希釈され、有機相が分離された。次いで、水相はDCM(50mL×2)で抽出され、合わせた有機相はNaSOで乾燥された。ろ過後、溶液は濃縮され、粘性生成物が得られた。
【0157】
プロメタジン R=0.26(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,10−60% ACN,10分間)8.45分,純度>99%,LC−MS(ESI,MH)285.3,H NMR(500MHz,CDCl)δ1.06(3H,d,J=6.5Hz),2.35(6H,s),3.05−3.12(1H,m),3.69(1H,dd,J=9,13.5Hz),4.07(1H,dd,J=4.0,13.0Hz),6.92−6.95(4H,m),7.15−7.17(4H,m)。
【0158】
脱メチル化:上記で得られたプロメタジン(2.71g、9.51mmol)は250mLフラスコ中のDCE(50mL)に溶解された。1−クロロエチルクロロホルメート(12.4mL、114mmol)は室温でゆっくりと加えられた。この混液はオイルバス中で100℃まで加熱され、反応はこの温度で一晩(16時間)維持された。乾燥N雰囲気下で反応混液が冷却された後、溶媒は真空下でエバポレートされた。残渣は高真空下で3時間乾燥され、その後、これはDCE(25mL)およびエタノール(25mL)中に再溶解された。この混液は83℃に加熱され、この温度で一晩(20時間)還流が継続された。室温まで冷却後、溶媒はエバポレートされ、残渣はDCM(100mL)および飽和NaHCO溶液(250mL)で希釈された。有機相を分離後、水性溶液はDCM(50mL×2)で抽出され、合わせた有機相はNaSOで乾燥された。ろ過および濃縮の後、得られた残渣はBiotage 40Mカラム上にロードされた(16CV中のDCM中1〜6%のMeOH)。純粋な生成物の一部のみがHPLC分画分析に基づいて得られた。この混液は、同じ条件下でBiotage 25Mカラム上で2回目の精製に供された。わずかに黄色がかった生成物(1.39g、54%収率)が混合物(560mg、20%)とともに得られた。
【0159】
N−デメチル−プロメタジン R=0.23(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,30−60% ACN 10分間)3.68分,LC−MS(ESI,MH)271.2。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.16(3H,d,J=6.5Hz),2.38(3H,s),3.05−3.12(1H,m),3.83(1H,dd,J=5.0,13.5Hz),3.91(1H,dd,J=3.0,13.5Hz),6.92−6.96(4H,m),7.15−7.19(4H,m)。
【0160】
mPEG−OMsからのN−PEG化のための一般的手順:上記の二級アミン出発物質(約200mg、1当量)は、12mLマイクロ波反応チューブ中のmPEG−OMs(1.2当量)と合わされた。KCO(1.5当量)および水(1.2mL)が加えられた。チューブがシールされた後、反応は3段階プログラム(65℃、2分間、85℃、2分間、100℃、100分間)を使用して実施された。反応が完了した後、この混液はNaHCO(60mL)で希釈され、DCM(20mL×3)で抽出された。合わせたDCM溶液は、NaSOで乾燥された。ろ過後、この溶液は濃縮され、得られた残渣はBiotage 25M順相カラム(16CV中DCM中1−6% MeOH)上で精製された。生成物の混合物は、より純粋な生成物を回収するために、順相条件下でさらにもう一度精製された。最終画分が合わせられ、Biotage逆相カラム(25M、5CV中20%、続いて20CV中水中20−65% アセトニトリル)上にロードされた。生成物画分が再度合わせられ、溶液が濁ってくるまで、アセトニトリルがエバポレートされた。次いで、水相は少量の固体NaClを各回の抽出に加えながら、DCM(15mL×3)で抽出された。合わせたDCM溶液はNaSOで乾燥され、そしてろ過された。次いで、この溶液は濃縮され、特徴付けの前に24時間にわたって真空下で乾燥された。
【0161】
mPEG−BrからのN−PEG化のための一般的手順:N−PEG化は、95%転換にわたって、上記と同様の手順を使用して、mPEG−Brを使用して設計できる。仕上げおよび精製において違いはなかった。生成物は、出発物質のmPEG−Brからの夾雑物である暗い色を含んでおり、これは、引き続いて、逆相精製の間に除去した。
【0162】
mPEG−N−プロメタジン R=0.33(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,30−60%ACN 10分間)5.43分,純度>99%,LC−MS(ESI,MH)417.3。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.04(3H,d,J=6.5Hz),2.34(3H,s),2.65−2.74(2H,m),3.20−3.24(1H,m),3.38(3H,s),3.51−3.65(10H,m),3.70(1H,dd,J=9.0,13.0Hz),4.03(1H,dd,J=4.5,13.5Hz),6.91−6.94(4H,m),7.14−7.17(4H,m)。
【0163】
mPEG−N−プロメタジン R=0.33(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,30−60%ACN 10分間)5.80分,純度>98%,LC−MS(ESI,MH)461.3。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.04(3H,d,J=6.5Hz),2.34(3H,s),2.65−2.74(2H,m),3.20−3.24(1H,m),3.38(3H,s),3.51−3.65(14H,m),3.70(1H,dd,J=9.0,13.5Hz),4.03(1H,dd,J=4.5,13.0Hz),6.91−6.94(4H,m),7.14−7.17(4H,m)。
【0164】
mPEG−N−プロメタジン R=0.33(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,30−60%ACN 10分間)5.80分,純度>99%,LC−MS(ESI,MH)505.3。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.04(3H,d,J=6.5Hz),2.34(3H,s),2.68−2.70(2H,m),3.21(1H,bs),3.38(3H,s),3.52−3.65(18H,m),3.70(1H,dd,J=9.0,12.5Hz),4.02(1H,dd,J=4.0,13.0Hz),6.91−6.94(4H,m),7.15−7.17(4H,m)。
【0165】
mPEG−N−プロメタジン R=0.33(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,30−60%ACN 10分間)5.43分,純度>99%,LC−MS(ESI,MH)549.3。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.04(3H,d,J=6.5Hz),2.34(3H,s),2.66−2.72(2H,m),3.19−3.23(1H,m),3.38(3H,s),3.51−3.65(22H,m),3.70(1H,dd,J=9.0,13.0Hz),4.02(1H,dd,J=4.0,13.5Hz),6.91−6.94(4H,m),7.14−7.17(4H,m)。
【0166】
mPEG−N−プロメタジン R=0.33(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,30−60%ACN 10分間)5.32分,純度>99%,LC−MS(ESI,MH)593.3。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.04(3H,d,J=6.5Hz),2.34(3H,s),2.64−2.73(2H,m),3.20−3.24(1H,m),3.38(3H,s),3.51−3.66(26H,m),3.70(1H,dd,J=9.0,13.0Hz),4.02(1H,dd,J=4.0,13.5Hz),6.91−6.94(4H,m),7.14−7.17(4H,m)。
【0167】
mPEG−N−プロメタジン R=0.33(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,30−60%ACN 10分間)5.60分,純度>99%,LC−MS(ESI,MH)680.4。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.04(3H,d,J=6.5Hz),2.34(3H,s),2.64−2.73(2H,m),3.20−3.24(1H,m),3.38(3H,s),3.50−3.66(34H,m),3.69(1H,dd,J=9.0,13.5Hz),4.02(1H,dd,J=4.0,13.5Hz),6.91−6.94(4H,m),7.14−7.17(4H,m)。
【0168】
スキーム2:mPEG−O−プロメタジン結合体の合成。
【0169】
【化12】

Vilsmeierホルミル化:窒素気泡を加えながら、脱塩したプロメタジン(1.68g、5.92mmol)は100mLフラスコ中のDMF(1.92mL、24.9mmol)に溶解された。溶液混合物が0℃まで冷却され、その後、POCl(1.41mL、15.4mmol)およびDMF(0.96mL、12.4mmol)の混合物が滴下して加えられた。この反応溶液は90℃まで6時間の間、ゆっくりと加熱され、その後、POCl(1.5mL)およびDMF(0.8mL)のさらなる混合液が加えられた。反応はこの温度に維持され、次の40時間の間、ゆっくりとNでバブリングされた。反応の進行はHPLC(SM<5% UV 254nm、ELS〜100%転換)によってモニターされた。反応は、30gの氷を加えること、および飽和NaHCO(250mL)で希釈することによってクエンチされた。pHが10−12に達するまで、NaOH(1N)が加えられた。次いで、得られた溶液は、DCM(80mL+50mL×2)によって抽出された。合わせた有機相はNaSOで乾燥された。ろ過後、この溶液は濃縮され、DMF残渣溶液はBiotage 40Sカラムにロードされ、そして精製された(16CV中DCM中2−7% MeOH)。生成物画分が合わせられ、濃縮されて、茶色かかった生成物が得られた(1.63g、88%収率)。HPLC分析は、出発物質の夾雑が3%未満であることを示した。
【0170】
(4−アルデヒド(Aldhyde))−プロメタジン R=0.23(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,10−60%ACN 10分間)7.75分,LC−MS(ESI,MH)313.2。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.08(3H,d,J=5.5Hz),2.35(6H,s),3.10(1H,bs),3.76(1H,dd,J=4.0,13.0Hz),4.14(1H,bs),6.96−7.02(3H,m),7.16−7.22(2H,m),7.64−7.69(2H,m),9.82(1H,s)。
【0171】
アルデヒド還元:上記のアルデヒド(1.63g,5.22mmol)をメタノール中(30mL)に溶解した。NaBH(433mg,12mmol)が、室温で少量ずつ加えられた。反応は室温で15分間維持された。メタノール溶媒がエバポレートされ、残渣はNaHCO(100mL)に溶解されて、DCM(60mL×3)で抽出された。有機相が合わせられ、Biotage 40Sカラム(20CV中DCM中2−20% MeOH)にロードされた。2つの生成物ピーク(同じ生成物)が合わせられ、濃縮して無色泡状生成物が得られた(1.27g、77%収率)
(4−メチレンヒドロキシル)−プロメタジン R=0.19(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,10−60%ACN 10分中)6.58+6.75分,LC−MS(ESI,MH)315.3。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.07(3H,d,J=6.5Hz),2.35(6H,s),3.09(1H,bs),3.68(1H,dd,J=4.0,13.5Hz),4.09(1H,dd,J=3.5,13.0Hz),4.59(2H,s),6.90−6.95(3H,m),7.15−7.18(4H,m)。
【0172】
mPEGn−OMsからのO−PEG化のための一般的手順:上記還元生成物(約200mg、1当量)が、100mLフラスコ中のmPEG−OMs(1.2−1.5当量)と合わせられた。この混液がトルエン(30mL)に溶解され、約2mLまで共沸エバポレートされた。DMF(3mL)およびNaH(10当量)が加えられた。この反応混液がオイルバス中で45℃まで温められ、この温度で6時間(または一晩)反応が維持された。オイルバスを取り外した後、この混液は30g氷でクエンチされ、飽和NaHCO(60mL)で希釈され、そしてDCM(20mL×3)で抽出した。合わせたDCM溶液はNaSOで乾燥させた。ろ過後、この溶液は濃縮され、残渣はBiotage 25M順相カラム(16CV中DCM中1−6% MeOH)上で精製された。画分(UV:>98%純粋)が合わせられ、Biotage逆相カラム上にロードされた(25M、5CV中20%、続いて、20CV中水中20−65%アセトニトリル)。生成物画分が合わせられ、溶液が濁ってくるまで、アセトニトリルはエバポレートされた。次いで、少量の固体NaClを各回の抽出に加えながら、水相はDCM(15mL×3)で抽出された。合わせたDCM溶液はNaSOで乾燥され、そしてろ過された。次いで、この溶液は濃縮され、特徴付けの前に24時間にわたって真空下で乾燥された。
【0173】
mPEG−O−プロメタジン R=0.23(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,10−60%ACN 10分間)8.27分,純度>95%,LC−MS(ESI,MH)461.3。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.05(3H,d,J=6.0Hz),2.34(6H,s),3.07(1H,bs),3.38(3H,s),3.54−3.56(2H,m),3.59−3.61(2H,m),3.64−3.70(9H,m),4.06(1H,d,J=12.5Hz),4.52(2H,s),6.87−6.95(3H,m),7.12−7.16(4H,m)。
【0174】
mPEG−O−プロメタジン R=0.23(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,10−60%ACN 10分間)8.31分,純度>97%,LC−MS(ESI,MH)549.3。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.07(3H,d,J=5.5Hz),2.36(6H,s),3.10(1H,bs),3.37(3H,s),3.53−3.55(2H,m),3.59−3.61(2H,m),3.63−3.70(17H,m),4.09(1H,d,J=9.0Hz),4.45(2H,s),6.88−6.95(3H,m),7.13−7.18(4H,m)。
【0175】
mPEG−O−プロメタジン R=0.23(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,10−60%ACN 10分間)8.39分,純度>98%,LC−MS(ESI,MH)637.4。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.06(3H,bs),2.35(6H,s),3.08(1H,bs),3.38(3H,s),3.53−3.56(2H,m),3.59−3.61(2H,m),3.63−3.70(25H,m),4.06(1H,bs),4.45(2H,s),6.88−6.95(3H,m),7.13−7.18(4H,m)。
【0176】
mPEG−O−プロメタジン R=0.23(DCM:MeOH=10:1),RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,10−60%ACN 10分間)8.35分,純度>99%,LC−MS(ESI,MH)725.5。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.05(3H,d,J=3.5Hz),2.34(6H,s),3.07(1H,bs),3.38(3H,s),3.54−3.56(2H,m),3.59−3.61(2H,m),3.63−3.70(33H,m),4.06(1H,dd,J=4,13.0Hz),4.45(2H,s),6.87−6.94(3H,m),7.12−7.18(4H,m)。
【0177】
実施例2
インビトロ受容体結合
ヒスタミン受容体への結合
プロメタジン(親)とN−およびO−PEG誘導体の受容体結合親和性は、組換えヒトH1、H2、H3、またはH4ヒスタミン受容体を発現するCHO細胞から調製された膜中での放射性リガンド結合アッセイを使用して評価される。競合結合実験は、様々な濃度の試験化合物の存在下で、固定濃度の放射性リガンドとともに膜をインキュベートすることによって実施される。使用される放射性リガンドは、各受容体サブタイプに対して特異的であり、アッセイ条件は表2に記載される。インキュベーション後、膜は洗浄され、結合した放射活性が測定される。非特異的結合は、過度のコールドリガンドの存在下で測定され、全体の結合からのこの値の減算は、各試験化合物濃度における特異的結合を生じる。IC50値は、用量−応答曲線の非線形回帰分析から得られ、最高濃度における結合の>50%阻害を示す化合物についてのみ計算される。Kiは、これらのアッセイ条件下で決定される実験的Kd値を使用して、Cheng Prusoff補正を使用して得られる。
【0178】
プロメタジン、mPEG−N−プロメタジン、およびmPEG−O−プロメタジン結合体のヒスタミン受容体への結合親和性は表1に示す。プロメタジンおよびPEG−プロメタジン結合体は、H1受容体への高い結合親和性を示した。PEG結合体は結合親和性の減少を生じ、この効果はPEGサイズ依存性である。
【0179】
H2、H3、およびH4受容体における結合は、試験されたすべての分子について有意に低い。試験された最高の濃度において結合の<50%阻害が得られるので、Ki値はこれらの受容体において計算できなかった。
【0180】
【表1】

【0181】
【表2】

ムスカリン性受容体への結合
プロメタジン(親)およびPEG−プロメタジン結合体の受容体結合親和性は、組換えヒトM1、M2、M3、M4、またはM5ムスカリン性アセチルコリン受容体を発現するCHO細胞から調製された膜中での放射性リガンド結合アッセイを使用して評価される。競合結合実験は、様々な濃度の試験化合物の存在下で、固定濃度の放射性リガンドとともに膜をインキュベートすることによって実施される。0.8nMのH−N−メチルスコポラミンが、すべての受容体サブタイプについての放射性リガンドとして使用される。インキュベーションは、50mM Tris HCl、10mM MgCl、および1mM EDTAを含む緩衝液中で、25℃にて2時間、実行される。インキュベーション後、膜は洗浄され、結合した放射活性が測定される。非特異的結合は、コールドリガンドとしての過度のアトロピンの存在下で測定され、全体の結合からのこの値の減算は、各試験化合物濃度における特異的結合を生じる。IC50値は、用量−応答曲線の非線形回帰分析から得られ、試験された最高濃度における結合の>50%阻害を示す化合物についてのみ計算される。Kiは、これらのアッセイ条件下で実験的に決定されるKd値を使用して、Cheng Prusoff補正を使用して得られる。
【0182】
5種のムスカリン性受容体サブタイプにおけるプロメタジン、mPEG−N−プロメタジン、およびmPEG−O−プロメタジン結合体の結合親和性は表3に示す。プロメタジンは、すべてのムスカリン性受容体サブタイプに対して高い結合親和性を示し、Ki値は〜7−26nMの範囲であり、任意のムスカリン性受容体サブタイプについてほとんど選択性を示さなかった。対照的に、PEG結合体は、すべてのサブタイプにおいて結合親和性の減少を示し、任意の特定の受容体サブタイプにおけるKiは約10−100倍減少した。いくつかの例において、放射性リガンド結合の阻害は、試験された最高濃度において得ることはできず、従って、データは「有意な結合なし(NS)」として示される。これらのデータは、PEG結合体化がムスカリン性アセチルコリン受容体へのプロメタジン結合体の結合親和性を減少することを示唆する。
【0183】
【表3】

実施例3
mPEG−N−プロメタジンのスケールアップ
材料:塩酸プロメタジン、1−クロロエチルクロロホルメートはSigma−Aldrich(StLouis,MO)から購入された。mPEG−BrはIndia Sai CROから受け取られた。炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸カリウム(KCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、および塩酸(HCl)はEM Science(Gibbstown,NJ)から購入された。トルエン、ジクロロエチレン(DCE)、ジクロロメタン(DCM)、および他の有機溶媒はこれらを購入したままの状態で使用された。
プロメタジンの脱塩
反応はNaHCO/DCM中で実行された。この生成物は高真空乾燥で固化した。
【0184】
脱メチル化および生成物の沈殿
脱塩したプロメタジン(13.16g,46.3mmol)は1000mLフラスコに加えられた。トルエン(110mL)およびDCE(100mL)が加えられ、45℃下にしながら共沸的に蒸留され、続いて、さらに15分間の間の高真空下で蒸留された。DCE(100mL)が加えられ、そして均質な溶液が得られた後で、1−クロロエチルクロロホルメート(25g×6、1.06mol)が加えられた。この反応混液は105℃まで加熱され、18時間還流された。反応はおよそ50℃まで冷却され、その温度で、ロータリーエバポレーション、続いて3時間の高真空下で溶媒が除去され、その後、さらなるDCE(100mL)およびエタノール(100mL)が加えられた。この溶液は83℃に維持され、さらに18時間還流された。温度を55℃に維持しながら溶媒が除去され、得られた残渣は0.2N HClに溶解された。水相はエーテル(200mL×5)で洗浄された。DCMで水相を抽出しながら、塩様沈殿が生成された。この沈殿はろ過によって回収され、DCMによって洗浄された。このDCM溶液はエバポレートされ、50℃まで加熱された。沈殿プロセスは反復された。塩様生成物は、NaHCO(3粒のNaOH)で塩基性化され、DCMで抽出された(100mL×3)。合わせたDCMはNaSOで乾燥された。ろ過、エバポレーション、および高真空下での乾燥は、油状生成物(〜10.0グラム、79%収率)を与える。
【0185】
N−デメチル−プロメタジン:RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,30−60%ACN 10分間)4.31分,LC−MS(ESI,MH)271.1。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.14(3H,d,J=6.5Hz),2.37(3H,s),3.03−3.09(1H,m),3.81(1H,dd,J=5.0,13.5Hz),3.88(1H,dd,J=8.0,13.5Hz),6.92−6.96(4H,m),7.15−7.19(4H,m)。
【0186】
N−アルキル化および精製
脱メチル化生成物(2.06g、7.62mmol)は、mPEG−Br(2.53、9.33mmol)と混合された。水(10mL)はKCO(5.37g,38.9mmol)とプレミックスされ、得られた溶液は上記の混合液に加えられた。温度を100℃よりも下にとどめながら、水溶液がオイルバル中で加熱された。反応はこの温度で20時間維持され、HPLC分析は反応が終了したことを示した。生成物の残渣はDCMに溶解され、水相が分離された。DCMは減圧下で除去され、得られた残渣は0.3N HCl(240mL)に溶解され、そしてエーテル(100mL×3)で洗浄された。次いで、水溶液はEtOAcおよびエーテルの混合液で洗浄された(2回)。水相は固体NaOHでpH>10に塩基性化され、DCM(50mL×3)で抽出された。合わせたDCM相はNaHCOの飽和溶液(50mL×5+1粒のNaOH〜100mg、各回)で洗浄された。DCM相は分離され、NaSOで乾燥され、そして溶媒が減圧下で除去された。高真空乾燥後に、>99%純度で、わずかに黄色がかった生成物(2.9g)が得られた。
【0187】
mPEG−N−プロメタジン RP−HPLC(betasil C18,0.5mL/分,30−60%ACN 10分間)6.23分,純度>99%,LC−MS(ESI,MH)461.1。H NMR(500MHz,CDCl)δ1.04(3H,d,J=6.5Hz),2.34(3H,s),2.67−2.71(2H,m),3.20−3.23(1H,m),3.38(3H,s),3.50−3.67(14H,m),3.70(1H,dd,J=9.0,13.5Hz),4.03(1H,dd,J=4.5,13.0Hz),6.91−6.94(4H,m),7.14−7.18(4H,m)。
【0188】
実施例4
mPEG−プロメタジンのスケールアップ合成
材料:塩酸プロメタジン、1−クロロエチルクロロホルメートはSigma−Aldrich(StLouis,MO)から購入された。mPEG−BrはインドのCRO−Sai Advandiumから受け取られた。他の無機塩、塩基、酸、および有機溶媒はこれらを購入したままの状態で使用された。
プロメタジンHClの脱塩
【0189】
【化13】

プロメタジンHCl(20.2723g,63.2mmol)はDCM(250mL)に溶解され、10% NaHCO水溶液で洗浄された(2×150mL)。水溶液はDCM(50mL)で抽出された。合わせた有機溶液はNaSOで乾燥され、乾燥するまで濃縮された。残渣はトルエン(150mL)と混合され、乾燥するまで濃縮され、そして高真空下で乾燥され、18.6892gのプロメタジンを96%収率で与えた。
プロメタジンの脱メチル化
【0190】
【化14】

第1のラン:プロメタジン(10.743g,36.3mmol)は、室温でジクロロエタン(150mL)に溶解され、0℃に冷却された。1−クロロエチルクロロホルメート(100g、ボトルあたり25gの4ボトル、685mmol)をゆっくりと加えた。数分後に反応混液は緑色になり、次いでより黄色になった。この混液は、室温で2時間攪拌され、19時間還流された(オイルバス温度100℃)。HPLC分析は、低い転換およびある程度の副産物を示した。この反応混液は濃縮され、ある程度DCE(〜120mL)を除去した。さらに1−クロロエチルクロロホルメート(25g,171mmol)を加えた。この溶液は、22時間、115℃で攪拌された。HPLC分析は出発物質を含まなかった。この混液は濃縮されて、減圧下ですべての溶媒を除去し、そして高真空下で乾燥された。
【0191】
粗混合物は室温でMeOH(100mL)に溶解され、室温で15分間攪拌され(オープンフラスコ)、次いで、18時間還流され(オイルバス温度:75度)、室温まで冷却された。この混液は濃縮されてすべての溶媒を除去し、残渣はDCM(250mL)中に溶解され、10%NaHCO水溶液(2×100mL)で洗浄され、乾燥するまで濃縮された。残渣は750mLの0.2N HCl溶液中に溶解され、エーテルで洗浄された(3×150mL)。水溶液はDCMで抽出され、この混液はKOH水溶液で塩基性に調整され、TLCによってDCM溶液中に生成物が見られなくなるまで、DCMで再度抽出された(3回)。すべての有機溶液が合わせられ、NaSOで乾燥され、濃縮されて、8.5066gの生成物を油状物として与えた。収率は92%であった。
【0192】
2回目のラン:プロメタジン(7.9456g,26.8mmol)は、1−クロロエチルクロロホルメート(20g,137mmol)と混合された。この混液は120℃(オイル温度)で17.5時間攪拌された。HPLCは反応が完了したことを示した。反応は冷却され、濃縮された。残渣は高真空下で乾燥された。
【0193】
得られた残渣は、MeOH(100mL)に溶解され、2時間還流され、室温まで冷却された。この混液は濃縮されて、すべての溶媒を除去し、固形物を与えた。この固形物は0.2N HCl溶液と混合された。ある程度の固形物は酸性溶液に溶解しなかった。この混液はろ過され、固形物はエーテルで洗浄され、次いで、DCMに溶解された。水溶液はエーテルで洗浄された(2×150mL)。この水溶液はKOH水溶液でpHを10−11に調整され、次いで、DCMで抽出された(4×150mL)。合わせたDCM溶液はNaSOで乾燥され、濃縮されて油状物を生じた。油状生成物は0.2N HCl(500mL)に溶解された。この溶液はエーテルで洗浄され(2×150mL)、そしてKOH水溶液でpHを11.32に調整され、DCMで抽出され(4×150mL)、NaSOで乾燥され、濃縮されて4.9763gの生成物を69%収率で与えた。
【0194】
H−NMR(CDCl,500MHz):7.181−7.138(m,4H,Ar−H),6.951−6.915(m,4H,Ar−H),3.886−3.785(m,2H,CH),3.067−3.028(m,1H,CH),2.358(s,3H,CH),1.127(d,J=6.0Hz,CH)。
【0195】
mPEG−N−プロメタジンの合成
【0196】
【化15】

1回目のラン:ジメチルプロメタジン(1.7301g,6.4mmol)およびmPEG−Br(1.7877g,7.87mmol)は25mLバイアルに配置された。水(10mL)中のKCO(5.47g,39.6mmol)の溶液が加えられた。得られた混液は、室温で68.5時間攪拌された。HPLCは、約30%の出発物質のみが残っていたことを示した。この混液は、マイクロ波条件下で、120℃で50分間加熱された。HLPCは反応が完了したことを示した。反応混液が室温まで冷却されたとき、EtOAc(50mL)が加えられた。この混液は0.2N HCl(100ml)で洗浄された。この水溶液は、HPLCに基づく不純物を含むのみであった;それゆえに、有機EtOAc溶液は0.2N HCl溶液で抽出された(2×150mL)。合わせた抽出水溶液はEtOAc(100mL)で1回洗浄され、KOH水溶液でpHを11.84に調整され、DCMで抽出された(3×60mL)。合わせたDCM溶液はNaSOで乾燥され、そして濃縮されて、2.3094gの生成物を87%収率で与えた。
【0197】
2回目のラン:ジメチルプロメタジン(6.4773g,23.96mmol)およびmPEG−Br(5.983g,16.30mmol)は100mL丸底フラスコ内に配置された。水(35mL)中のKCO(17.34g,125mmol)の溶液が加えられた。得られた混液は110℃(オイル温度)で数時間攪拌された。この混液は100℃で1.5時間攪拌され、その時点でさらにmPEG−Br(0.643g,2.83mmol)が加えられた。この混液は105℃で2.5時間攪拌された。この反応混液は冷却され、EtOAc(150mL)が加えられた。水溶液が分離され、有機溶液が5%NaHCO水溶液で1回洗浄された。EtOAc溶液は0.2N HClで抽出された(3×150mL)。合わせた酸性溶液はEtOAc(2×100mL)で洗浄され、次いで、KOH水溶液でpHを10−11に調整され、DCMで抽出された(4×200mL)。合わせたDCM溶液はNaSOで乾燥され、濃縮されて、油状物として9.2668gの最終産物を93%収率で与えた。
【0198】
H−NMR(CDCl,500MHz):7.170−7.139(m,4H,Ar−H),6.935−6.902(m,4H,Ar−H),4.021(dd,J=4.5および13.5Hz,1H),3.690(dd,J=9.0および13.5Hz,1H),3.648−3.576(m,6H),3.560−3.486(m,4H),3.273(s,3H,CH),3.246−3.181(m,1H),2.732−2.643(m,2H,CH),2.332(s,3H,CH),1.034(d,J=6.5Hz,3H,CH)。LC−MS:417.3(MH)。
【0199】
実施例5
鎮痛剤アッセイ
鎮痛剤アッセイは、所定の化合物が、マウスにおいて内臓の痛みを減少および/または妨害することができるか否かを決定するために使用された。
【0200】
このアッセイはCD−1雄性マウス(群あたり5−8マウス)を利用し、各マウスは、研究の当日におよそ0.015−0.030kgであった。マウスは標準的なプロトコールに従って処理された。
【0201】
マウスは、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーの共有結合を欠いている化合物、水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに共有結合された化合物を含む対応するバージョン、または対照溶液(IV,SC,IP、または経口)の単回の「前処理」用量を、酢酸溶液の投与の30分前に与えられた。動物は、腹部の収縮、胴体のねじれおよび回転、背中の湾曲、ならびに後肢の収縮を含む可能性がある、「苦悶」を誘導する刺激剤(酢酸)のIP注射を与えられた。マウスは0.5%酢酸溶液の単回IP注射(0.1mL/10g体重)を与えられた。注射後、動物はそれらの観察用囲いに戻され、それらの挙動が観察された。注射後0分から20分の間に収縮が計数された。動物は1回使用された。各々の試験された項目は、可能な場合、異なる用量で投薬された。結果は以下の表に示される。
【0202】
【表4】

実施例6
PEG−プロメタジン結合体についての脳:血漿比率
PEG−プロメタジン結合体が血液脳関門(BBB)を通過し、CNSに入る能力は、ラットでの脳および血漿におけるそれらの相対的な濃度の比率を測定することによって決定された。手短に述べると、ラットは、5mg/kgのプロメタジン、PEG−プロメタジン結合体、またはアテノロールを静脈内注射された。注射の1時間後、動物は屠殺され、血漿および脳が回収され、すぐに凍結された。組織および血漿の抽出後、脳および血漿における化合物の濃度が、LC−MS/MSを使用して測定された。脳:血漿比率は、脳(ng/g)および血漿(ng/mL)における測定濃度の比率として計算された。血液脳関門を通過しないアテノロールは、脳組織の血管夾雑の尺度として使用される。
【0203】
以下の表は、PEG−プロメタジン結合体の脳対血漿濃度の比率を示す。プロメタジンの脳:血漿比率は39.93:1であり、血漿画分と比較して、脳におけるプロメタジンのほぼ40倍高い濃度を示す。20−500倍低いPEG−プロメタジン結合体の脳:血漿比率によって証明されるように、PEG結合体化は、CNSへのプロメタジンの侵入を減少させた。
【0204】
【表5】

実施例7
PEG−プロメタジン結合体のインビボ効力
PEG−プロメタジン結合体の抗ヒスタミン性効力は、モルモットにおいてヒスタミンによって誘導される気管支収縮と拮抗するそれらの能力によってインビボで評価された。3−4匹のモルモットの群をウレタンで麻酔させ、スクシニルコリンによって復員させ、そして37℃の体温を維持するように加熱プレート上に配置した。左頸動脈は、血圧(BP)の測定のための圧力変換器に接続されたカテーテル(PE50、内径0.58mm)で挿管されている。カニューレ(20mm長、2mm内径)は気管切開術を通して上部気管に挿入され、定容人工呼吸器に接続されている。10ml/kgの呼吸気量および1分間あたり50回の呼吸頻度が、仰臥位に置かれた動物で使用される。呼吸気流量は、呼吸気流計に接続された流量変換器を使用して測定される。1つは肺内圧力を得るために呼吸気流計と気管を接続する三方活栓を通してであり、もう1つは肺内圧力を得るために胸腔に直接挿入されているカテーテルからである、2つのカテーテルに接続された示差的圧力変換器を使用して、胸腔内圧が測定される。一回換気量(VT)は流れシグナルの積分によって計算される。肺抵抗(R)は、吸気と呼気の間の等積点(50%)で測定される胸腔内圧(ΔP)と流れシグナル(ΔF)から計算され、すなわち、R=ΔP/ΔFである。動的コンプライアンス(Cdyn)は、圧力および容積の変化が流れゼロで測定されるときの、胸腔内圧の単位あたりの肺拡張の量(容積変化)である。手短に述べると、流れゼロの点の間の肺圧差(ΔPTP)で換気体積(VT)を除算すると、Cdyn=VT/ΔPTPを生じる。すべてのシグナルは、データ獲得および分析システム(PO−NE−MAH Inc.,USA)によって獲得される。
【0205】
IVヒスタミンチャレンジ前に、様々な時点で、PEG−プロメタジン結合体は、気管内、皮下、または経口的に投与される。種々のパラメーター(R、Cdyn、BP、HR)が、試験物質およびビヒクルの投与の直前、ならびにリン酸ヒスタミン(10μg/kg、1ml/kg、静脈内)を用いるチャレンジの直前(0分)および0.33分後、0.67分後、1分後、2分後、3分後、4分後、および5分後に記録される。ヒスタミンは、肺コンプライアンスの減少として、および抗ヒスタミン活性を有する分子によって用量依存的に拮抗される肺抵抗性の増加として測定される、モルモットにおける顕著な気管支収縮を生じる。
【0206】
実施例8
プロメタジンおよびPEGプロメタジン結合体についてのpKaおよびLogPの決定
プロメタジンおよびPegプロメタジン結合体についてのpKaおよびLogPを決定するために、Sirius GLpKa機器が使用される。ブランク標準化は、化合物実験を実施するために最初に完了しかつ通過されなくてはならない。ブランク較正のために機器によって使用される溶液には、水、pH溶液、および界面活性剤(TRITON X−100)が含まれる。TRITON X−100はSirusから購入された。TRITON X−100の0.5%溶液が実験において使用された。1L容積測定用フラスコにおいて、5mlのTRITON X−100と体積調整のためのMILLI Q水が加えられる。この機器によって使用される容器は、それらの容積の1/3が各溶液で満たされた。それゆえに、アッセイトレイは、ブランクランのための水、pH溶液、および界面活性剤のための1つの容器を含む。この機器のためのウォーターバスの温度は25℃である。ブランクは、3つの「良好な」実験の平均として計算される。「良好な」は、コンピュータソフトウェアにおいてアッセイ数の次に緑色のチェックマークによって示された。一旦ブランクが首尾よく実行されたら、この機器は実験を行うために準備できた。
【0207】
LogPを計算するために、pKaは最初に決定されなければならない。LogP実験、続いて、結合体のために必要とされるpKaを決定するために、APIは使用される。プロメタジンは最初に容器に秤量された。各サンプルのために秤量される量は、化合物の分子量の10%であった(すなわち、プロメタジンについては2.84g)。同じ手順は、各PEG−プロメタジン結合体n=3−9について続けられた。容器は機器のアッセイトレイ中に配置された。1つの方法が、pKa実行のために設定されなければならない。実験パラメーターはコンピュータプログラムに入力される。これらには、サンプル重量、分子量、アッセイ型(水系pKa)、アッセイの数(3回)、および滴定範囲(一般的に、3.5−12)が含まれた。ランが開始された。各ランについて3回の測定が存在し、これらは、計算ソフトウェアに回収されたデータ点からの最終結果を得るために平均される。すべてのランは、アッセイ数の次の緑色のチェックマークによって「良好」と示された。以下の表に列挙されるように、pKa値は、すべての化合物について得られた。
【0208】
各化合物についてのLogPデータ決定のために、さらなる方法が設定されなければならない。プロメタジンおよびPEG−プロメタジン結合体(n=3−9)は、以前の実験と同じ様式で、すなわち、分子量の10%、容器に秤量された。容器は機器のアッセイトレイ中に配置される。実験パラメーターはコンピュータプログラムに入力される。これらには、サンプル重量、分子量、アッセイ型(分配LogP)、アッセイの数(3回)、および以前の実験からの親の薬物のpKa値が含まれた。ランが開始された。各ランについて3回の測定が存在し、これらは、計算ソフトウェアに回収されたデータ点からの最終結果を得るために平均される。すべてのランは、アッセイ数の次の緑色のチェックマークによって「良好」と示された。以下の表に列挙されるように、LogP値は、すべての化合物について得られた。
【0209】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、以下の構造:
【化16】

を有し、ここで:
、R、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;またはRおよびRは窒素と一緒に複素環を形成し;
nは1以上の整数であり;
Xはスペーサー部分であり;ならびに
POLYは水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーである、
化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、構造:
【化17】

を有し、ここで:
、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;
nは1以上の整数であり;
Xはスペーサー部分であり;ならびに
POLYは水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーである、
化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物であって、構造:
【化18】

を有し、
、R、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;またはRおよびRは窒素と一緒に複素環を形成し;
nは1以上の整数であり;
Xはスペーサー部分であり;ならびに
POLYは水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーである、
化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、フェノチアジン残基が式:
【化19】

を有するフェノチアジンの残基であり、
ここで:
、R、R、およびRは、各々独立して、水素、非置換アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され;またはRおよびRは窒素と一緒に複素環を形成し;ならびに
nは1以上の整数である、
化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、フェノチアジン残基が式:
【化20】

を有するフェノチアジンの残基である、化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物であって、フェノチアジン残基が以下の式:
【化21】

を有するフェノチアジンの残基である、化合物。
【請求項8】
前記フェノチアジン残基がメキタジン、プロメタジン、プロメジン、およびメチル硫酸チアジナミウムからなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーがポリ(アルキレンオキサイド)である、請求項1〜8いずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
前記ポリ(アルキレンオキサイド)がポリ(エチレンオキサイド)である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーが約1〜約30のモノマーから作られる、請求項1〜10いずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
前記水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーが約1〜約10のモノマーから作られる、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記ポリ(アルキレンオキサイド)がアルコキシまたはヒドロキシエンドキャップ部分を含む、請求項9に記載の化合物。
【請求項14】
水溶性であり、非ペプチド性の単一のオリゴマーが前記フェノチアジン残基に結合している、請求項1〜13いずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
水溶性であり、非ペプチド性の1つより多くのオリゴマーが前記フェノチアジン残基に結合している、請求項1〜14いずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
前記フェノチアジン残基が安定な結合を介して共有結合されている、請求項1〜15いずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
前記フェノチアジン残基が分解可能な結合を介して共有結合されている、請求項1〜16いずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
前記結合がエーテル結合である、請求項1〜17いずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記結合がエステル結合である、請求項1〜18いずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
水溶性であり、かつ、非ペプチド性のオリゴマーに対して、安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含む化合物、および任意に、薬学的に許容可能な賦形剤を含む、組成物。
【請求項21】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して、安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合されたフェノチアジン残基を含み、剤形で存在する化合物を含む、組成物。
【請求項22】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーをフェノチアジンに共有結合させることを含む、フェノチアジン結合体を作製する方法。
【請求項23】
水溶性であり、非ペプチド性のオリゴマーに対して、安定なまたは分解可能な結合を介して共有結合したフェノチアジン残基を含む化合物を、治療の必要がある被験体に投与することを含む、治療方法。

【公表番号】特表2012−516347(P2012−516347A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548281(P2011−548281)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022342
【国際公開番号】WO2010/088340
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】