説明

オリーブオイル製造に利用するオリーブの処理方法

【課題】収穫から長期間経過後に処理されたオリーブから高品質のオリーブオイルの製造を可能にするために、その中に含まれるオイルの品質を実質的に保持するように収穫したてのオリーブを加工する方法、および長期保存期間後にそれから抽出されるオイルがバージンオリーブオイルに関するIOCの基準を満たすことを特徴とする、オイルの品質を保持して収穫したてに処理されたオリーブを提供する。
【解決手段】この方法は、収穫したてのオリーブを、洗浄液で洗浄するステップと、オリーブを、酵素が不活性化されるのに十分な温度まで加熱するステップと、加熱したオリーブを、0℃ないし−10℃の範囲の温度まで急冷するステップと、所定量のオリーブを、真空包装するステップと、包装したオリーブを、冷蔵温度で保存するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にオリーブオイルの製造に関係し、より具体的にはオリーブの収穫から長期間経過後のオリーブオイルの製造に関係する。
【背景技術】
【0002】
オリーブオイルは、新鮮なオリーブをすりつぶしてペーストにし、ペーストから機械的または化学的な手段でオイルを抽出することによって製造する。オリーブに含まれるオイルの量は特定の品種および熟成の度合いに左右される。典型的には、1Kgのオリーブから約150〜200mlのオイルが得られる。オイルは中果皮細胞に蓄積され、その大部分は液胞に、および程度は少なくなるが細胞質に蓄積される。オリーブをすりつぶしたり、押しつぶして、オリーブの核および果肉を粉砕して、ペーストにする。典型的には、すりつぶした後にペーストをマラキシングする(こねる)と、尖った核の断片に助けられて、中果皮細胞が壊れやすくなるため、液胞に含まれるオイルがにじみ出て、オイルの小滴が合体する結果、固体から液体が分離することになる。オイルおよび植物水の両方を含む液体が、圧力または遠心分離をかけることによってペーストから抽出され、その後、オイルと水とに分離される。特定の方法および設備によって、ペーストを液体と固体とに分離し、液体をオイルと水とに分離するのは、逐次的にまたは同時に行ってもよい。これらの基本工程のさまざまな変形が存在する。例えば、「シノレア」製法として知られる方法は、植物水とオイルとの表面張力の違いに基づいている。この方法によると、列状にした金属ディスクまたは金属板をペーストに入れる。固体相と水相とはそのままで、連続工程で金属ディスクに付着したオイルをスクレーパを使って除去する。
【0003】
オリーブオイルの品質は、抽出方法、オリーブの品種、オリーブの成熟度(熟度)、また、かなりの程度オリーブの収穫からオイルの抽出までの時間の経過に左右される。オリーブオイルは果肉から抽出するため、収穫からオイル抽出までの経過時間が非常に重要である。収穫からオイル抽出までの間、果実の酵素は非常に活発である。収穫直後から果実で始まる酸化および酵素反応は、オイルの品質をしだいに劣化させる。そのため、オリーブオイルは、できるだけ収穫したてのオリーブから、好ましくはほんの24時間以内に抽出する必要がある。待機時間が長くなるほどオイルは酸度が高くなって品質が落ちる。そのため、長期間保存でき、一年中加工処理できる種子またはナッツから抽出するシードオイル(例、ヒマワリ油、ゴマ油、大豆油等)と異なり、オリーブオイル産業は、新鮮なオリーブの入手性に依存する季節産業である。収穫時期は各国で異なり、季節および品種で異なる。一般的に、新鮮なオリーブは北半球と南半球とでは反対の季節中の約4ヶ月間入手できる(北半球では10月から1月、南半球では4月から7月)。オイルの品質に影響する別の重要な要因は、オリーブオイル自体の鮮度、つまり消費するまでの保存期間および保存状態である。オリーブオイルは、たとえ最適な状態で保存したとしても、時間が経つにつれて劣化する。そのため、オリーブオイルは製造時期付近で消費するよう推奨される。
【0004】
オリーブオイルの品質は、さまざまな分析パラメータおよび感覚的(官能)パラメータで特徴付けることができ、もっとも一般的なものはオレイン酸のパーセントで表される遊離脂肪酸(FFA)である。他の特徴には、過酸化物価およびさまざまなプラスおよびマイナスの感覚的属性が含まれる。ほとんどの国は、オイルの品質およびオイルの等級を定義するのに国際オリーブ協会(IOC)の基準を利用する。IOCは、オリーブオイルの品質および純度の基準を策定するための国連の設立許可を有しており、オリーブオイルの等級のための基準ならびにオイルの分析およびテイスティングのためのガイドラインをまとめている。例えば、バージンオリーブオイルの等級に分類できるオリーブオイルは、溶剤の使用または再エステル化などの化学的プロセスを一切含まず、機械的または他の物理的な手段のみを使用してオリーブから得たオイルである。加えて、特定の成分の濃度および感覚的検査に関してIOCが定めた特定の基準を満たさなければならない。バージンオリーブオイルの等級の中で消費に適したオイルは、そのFFAレベル(それぞれ≦0.8%、≦2%、≦3.3)に応じて、エクストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイルおよびオーディナリーバージンオリーブオイルに分類される。
【0005】
オリーブオイルの製造は、地中海沿岸で始まり、紀元前3,000年もの昔から知られている伝統的な産業である。現在では世界の多くの地域でオリーブが収穫され、オリーブオイルは世界中で使用されている。しかし、オリーブオイルの製造と消費とはいまだに地中海沿岸でもっとも多い。オイルはいわゆる「地中海型食事」の基本要素と考えられている。
【0006】
最近では、オリーブオイル市場は劇的に成長してきている。オリーブオイルへの関心の高まりは、その独特な豊かな風味と健康上の利点とに起因し、一般市民の健康食品への意識の高まりおよび一般的なグルメ料理への関心の高まりに呼応する。オリーブオイルの消費に関連する健康上の利点は、HDLレベルを上げながらLDLレベルを抑制することと、冠状動脈性心臓病のリスクを下げることとが含まれる。これらの健康上の利点は、一価不飽和脂肪酸、主にオレイン酸のレベルが高いことと、微小栄養素、特にポリフェノールなどの抗酸化物の含有量が相対的に高いこととに起因する。さまざまな研究からも、血糖値や、潰瘍、胃炎および結腸癌のリスクを下げるなどの消化管に対するオリーブオイルの消費の有益な効果が示唆されている。実際、多くの人がオリーブオイルは他の植物性油より優れていると考えている。しかし、オリーブオイル市場の好況に伴い、オリーブオイルの偽物産業も成長している。オリーブオイルはもっとも混ざり物が混入される農産物の一つである。そのため、消費者は高品質のオリーブオイルとして流通しているオイルが、実際には低価格の品質の低いオイルと混ぜた混ざり物のオイル、またはほぼ全部が低価格の品質の低いオイルからできているという可能性にしだいに気づくようになってきている。
【0007】
健康食品およびその鮮度と真贋性とに対する意識は、自家消費用またはレストラン、惣菜店および専門店などの小規模食品事業所での基本食品(例、パン)の小規模生産という新たなトレンドをもたらしている。こうして鮮度および成分に対する管理が確保される。このトレンドにしたがい、パン焼き器、自家用コーヒー豆焙煎器等など、キッチンカウンターに載せるような大きさにされた小規模の器具が現在人気を得るようになっている。オリーブオイルに関しては、近年オリーブを慎重に選別し、製造を厳密に管理して高品質のオイルの製造を専門にしたオリーブオイル専門店の数が増えてきている。本発明の発明者が設計した少量のオリーブオイルを製造するためのキッチンカウンターに載る家庭用コールドプレス機が下記特許文献1に記述されている。しかし、オリーブオイルは果実から圧搾したてのときにはそのままで消費できるが、収穫からごく短時間以内にオリーブオイルを抽出しなければならないことから、季節外れのときまたはオリーブ生産地から離れた国でオリーブオイルを製造することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/007610号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、本発明の一般的な目的は、一年中および/またはオリーブ生産地から離れた場所でのオイルの抽出に適したオリーブを提供することである。
具体的には、本発明の目的は、化学的な食品保存料を添加することなく、長期保存期間の間、オイルの品質を保持するオリーブを提供することである。
本発明の別の目的は、収穫してから長期間経過後のオリーブから高品質のオイルを抽出できるように、オイルの品質を処理後長期間実質的に保持するために収穫したてのオリーブを処理する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある局面は、処理されたオリーブから高品質のオリーブオイルを、収穫から長期間経過後に製造することを可能とするために、収穫したてのオリーブの中に含まれるオイルの品質を実質的に保持するように当該オリーブを処理する方法である。この方法は、収穫したてのオリーブを、洗浄液で洗浄するステップと、酵素が不活性化されるのに十分な温度まで、オリーブを加熱するステップと、加熱したオリーブを、0℃ないし−10℃の範囲の温度まで急冷するステップと、所定量のオリーブを、真空包装するステップと、包装したオリーブを、冷蔵温度で保存するステップとを含む。この方法の各ステップの特定の条件は、処理するオリーブの品種および成熟度に応じて予め選択される。洗浄液は、水もしくはエタノールまたはその混合液であってもよい。加熱は、オリーブにマイクロ波を照射して、またはオリーブを所定の前記温度の液槽に浸漬して行ってもよい。本発明のいくつかの実施形態によると、包装前に、加工済のオリーブに、塩またはミネラル粉末を添加する。塩またはミネラル粉末は、NaCl、KCl、NaHCO、タルカムパウダーまたは石灰粉末、またはその組み合わせでもよい。
【0011】
本発明の別の局面は、処理されたオリーブから、処理してから長期保存期間後に抽出したオイルが、2%以下の遊離脂肪酸(FFA)レベルを有することで特徴付けられる、オイルの品質が保持されて収穫したてに処理されたオリーブである。本発明のいくつかの実施形態によると、オイルの品質が保持されて収穫したてに処理されたオリーブは、前述した方法から得ることができ、処理されたオリーブから、処理から長期保存期間後に抽出したオイルが、2%以下の遊離脂肪酸(FFA)レベルを有することで特徴付けられる。いくつかの実施形態によると、遊離脂肪酸レベルは0.8%以下であってもよい。長期保存期間は少なくとも1ヶ月である。いくつかの実施形態では、長期の保存期間は、少なくとも3ヶ月または少なくとも6ヶ月であってもよい。好ましくは、少なくとも2ヶ月の保存期間の後で、加工オリーブから抽出したオイルは、加工直後の時点で抽出したオイルの遊離脂肪酸(FFA)レベルを1%より多く超えないFFAレベルを有する。好ましくは、収穫したてのオリーブは、収穫してから24時間以内に加工して真空包装し、使用するまで冷蔵温度で保存する。FFAレベルまたは他のパラメータを測定するための本発明の処理されたオリーブからのオイルの抽出は、アベンコールシステムを使用して行うのが好ましい。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によると、加工オリーブから、長期保存期間後に抽出するオイルはさらに、バージンオリーブオイルの過酸化物価に関する国際オリーブ協会(IOC)の基準を満たす過酸化物価、および/またはバージンオリーブオイルの感覚的特性に関する国際オリーブ協会(IOC)の基準を満たす感覚的特性を有することで特徴付けられる。
【0013】
本発明のさらに別の側面は、本発明の処理されたオリーブを含む真空パッケージであり、任意でNaCl、KCl、NaHCO、タルカムパウダーおよび石灰粉末のうちの一または複数から選択される塩またはミネラル粉末をさらに含む。
本発明は、図面とともに以下の詳細な説明からよりよく理解および認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のある実施形態による収穫したてのオリーブを処理する方法を図示する包括的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は一般的に、季節外れのオリーブオイルの製造および/またはオリーブ生産地から離れた地域でのオリーブオイルの製造を可能にすることを目的とする。本発明によると、適切な条件で保存した場合に、収穫から長期間経過後にオリーブオイル製造の「原料」として使用できるように、収穫したてのオリーブを処理後長期間そのオイルの品質を実質的に保持するために処理する。処理されたオリーブは少なくとも1ヶ月間、および少なくとも10ヶ月まで、またはこれ以上の期間でも保存でき、新鮮なオリーブオイルを一年中製造できる能力を提供する。好ましくは、処理されたオリーブは、小売店および消費者に発送および流通できる0.5kgないし5kgの比較的少量に包装する。好ましくは、処理されたオリーブは新鮮なオリーブの外観およびテクスチャー(組織)を維持している。
【0016】
本発明の保存された処理されたオリーブから抽出されるオイルは、2%以下の遊離脂肪酸(FFA)、およびバージンオリーブオイルの等級に関する国際オリーブ協会(IOC)の基準を満たす感覚的特性を有することで特徴付けられる。この点に関し、本発明において、オイルの抽出とは主に、化学的プロセスを含まない純粋な機械的または他の物理的な抽出方法をいうことを強調しておく。このため、「処理されたオリーブから抽出されるオイル」とは、純粋に機械的または他の物理的な手段によって抽出されるオイルと理解されるべきである。より具体的には、オイルを純粋に機械的な手段によって抽出する場合でも、その組成は特定の方法および特定の条件によって変わることがあるため、評価のための本発明の処理されたオリーブからのオイルの抽出はアベンコールシステムを使用して行うのが好ましい。
【0017】
本発明はさらに、化学的な食品保存料を一切添加せずに、冷蔵温度で、長期保存期間、そのオイルの品質を実質的に保持するように、収穫したてのオリーブを処理する方法を提供する。
本発明の処理プロセスを受けるために選定されるオリーブは収穫したてで、慎重に選別した高品質のオリーブにするべきである。痛んだ、欠陥のあるまたはその他粗悪な品質のオリーブ、ならびに小枝、柄および葉は、処理前に丹念に取り除くべきである。選別されるオリーブは、どの成熟度のものでもよいが、好ましくは2〜6の範囲であり、どのオリーブ品種でもよく、または異なる品種の混合でもよい。本発明のいくつかの実施形態によると、オリーブは有機栽培したオリーブである。
【0018】
図1は、本発明のある実施形態による収穫したてのオリーブを処理するプロセスのフローチャートである。プロセスはバッチ方式で行ってもよく、または任意の程度のオートメーションを利用した連続プロセスでもよい。プロセスの最終産物から高品質のオイルを得るために、処理は収穫から24時間以内に行うのが好ましい。各ステップの正確な条件(例、温度、ステップの継続時間等)は処理するオリーブの特定の品種および成熟度によって異なり、結果を最適にするために各品種/成熟度の組み合わせに応じて予め選択される。
【0019】
図1を参照すると、プロセスの第1ステップ(10)は、オリーブを洗浄して果実の表面に残っている殺虫剤、埃および汚れを取り除くことである。好ましくは、このステップはオリーブを室温の液槽に約0.5ないし10分間浸漬して行う。洗浄液は水もしくはエタノールまたはその混合液でもよい。洗浄ステップでエタノールを使用すると、一般的なクリーニングに加えて滅菌消毒の効果がある。また、乾燥時にオリーブの表面から洗浄液が蒸発しやすい。
【0020】
次のステップ(20)では、酵素反応を停止するように、果実に存在する酵素を不活性化するために、オリーブを約40℃ないし80℃の範囲の所定の温度まで加熱する。ある実施形態によると、ステップ20は、オリーブを、選択した温度の液槽に約2分から10分間浸漬して行う。液体は水もしくはエタノールまたはその混合液でもよい。あるいは、加熱はオリーブをマイクロ波に照射して行う。
【0021】
次のステップ(30)で、加熱したオリーブを0°ないし−10℃の範囲の温度まで急冷して、過熱および生じうる酸化または他の何らかの反応を防止する。ステップ30は、オリーブを氷水に浸漬することにより、冷風機により、または当業界で周知の他の何らかの方法により行ってもよい。
次のステップ(40)で、必要なら、皮に残っている水分を除去するために乾燥空気を吹き付けてオリーブを乾燥させ、続くステップ(60)で所定量のオリーブを、当業界で典型的な標準設備を使用して、空気不透過性の柔軟性フィルムの密封真空パッケージに包装する。包装したオリーブはさらに0℃〜4℃の通常の冷蔵温度で保存する(ステップ70)。処理されたオリーブをパッケージに密封したら、このパッケージは通常の冷蔵設備を使用して、包装エリアから倉庫まで、さらに流通経路を通して最終消費地まで統合的に取り扱える。
【0022】
任意で、オリーブの水分活性を低下することによって、かびの成長を抑制し、果実のテクスチャーを維持するために、包装前に、オリーブにさまざまな塩および/またはミネラル粉末を添加してもよい(ステップ50)。添加した塩およびミネラル粉末はオイル抽出プロセス中のオイルと植物水との相分離も促進する。任意で添加するミネラルは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、微粉タルク(滑石)および石灰粉末から選択する。添加する塩および/またはミネラルの量は、包装したオリーブ1Kgあたり50g以上であることが好ましい。
【0023】
実施例1
2007〜2008年の冬の別々の時期に3回の収穫で採取した新鮮なオリーブを、次のように本発明の第1処理手順(処理手順1)に従い処理した。クリーニングおよび洗浄の後、収穫したてのオリーブを600ワットのマイクロ波に1分間照射し、その後氷水ですぐに冷却した。オリーブを乾燥させて、700gのパッケージに真空包装し(イタリア、Lerica社製のLEVAC C30 M8真空包装機を使用して)、4℃で保存した。処理後1ヶ月、3ヶ月、および5ヶ月の時点で、アベンコール(Abencor)システム(スペイン、バルセロナ、MC2 Ingenieria y Sistemas)を使用して、一または複数のオリーブのパッケージからオイルを抽出した。遊離酸度(FFA)、過酸化物価およびポリフェノール濃度に関して、抽出したオイルの感覚的特性の評価および分析を、IOCガイドラインにしたがって実施した。その結果を表1にまとめている。
【0024】
分析方法:遊離酸度および過酸化物価の判定は、1991年7月11日の委員会規則EEC第2568/91号が推奨する分析方法にしたがい実施した。オレイン酸のパーセンテージで表される遊離酸度は、エタノール−エーテル(1:1)中にオイルを溶かした溶液を、エタノールカリで滴定して判定した。オイル1キログラムあたりの活性酸素のミリ当量(meq/kg)で表される過酸化物価は次のように判定した。オイルとイソオクタン−酢酸3:2との混合液を、ヨウ化カリウム溶液と暗所で反応させた。それから遊離ヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。フェノールの抽出および分析:水−メタノール(60:40v/v)を加えたトリプル抽出によってヘキサン中に溶かしたオイルの溶液からフェノール画分を単離した。フォリン−チオカルト試薬を使って735nmの紫外可視分光光度計(アメリカ、カリフォルニア、Fullerton、Beckman Coulter,Inc)を用いてカテキン当量(ppm)として表されるフェノール総量を判定した。UV 6000LPダイオードアレイ検出器に連結したTSP P4000ポンプからなるHPLCシステムとChromquestソフトウェアとを使って、フェノール化合物を分離した。分離分析はUltrasphere RP−C18、5μmカラム(250×内径4.6mm)(アメリカ、Beckman)で実現した。フェノール化合物は、280nmでモニタリングし、IOCの公式方法(COI/T.20/Doc No.29)にしたがう標準化合物のものと比較したその吸収スペクトルおよび保持時間に基づいて同定した。
表1:3回の収穫から抽出したオイルの評価(処理手順第1番)
【0025】
【表1】

1FFAは遊離オレイン酸の%で表す(オイル100グラムあたりのオレイン酸のグラム数)
2過酸化物価はオイル1Kgあたりの酸素のミリ当量で測定した。
【0026】
この結果から、5ヶ月の保存期間後に抽出したものを含めすべてのサンプルで遊離酸レベルが2%未満のままであることが明らかに実証されている。過酸化物価は、バージンオリーブオイルに関するIOCの基準をゆうに下回っている(オイル1Kgあたりの過酸化酸素≦20ミリ当量)。
実施例2
同じ収穫(Revivim、2008年12月18日)から採取したピクアル(Picual)種のオリーブを、次のように4回の異なる手順で処理した。
【0027】
処理手順第2番:70%EtOHに1分間/氷水で冷却/真空包装/4℃で保存
処理手順第3番:70%EtOHに1分間/氷水で冷却/700グラムのオリーブあたり100グラムのKCl/真空包装/4℃で保存
処理手順第4番:60℃で4分間/氷水で冷却/真空包装/4℃で保存
処理手順第5番:60℃で4分間/氷水で冷却/700グラムのオリーブあたり100グラムのKCl/真空包装/4℃で保存
処理直後(t=0)および2.5ヶ月の保存期間後に処理されたオリーブからオイルを抽出した。オイルの評価および分析を実施例1と同様に行った。その結果を表2にまとめている。
表2:さまざまな手順に従い処理した同じ収穫のオリーブから抽出したオイルの評価
【0028】
【表2】

実施例3
コロネイキ(Koroneiki)種のオリーブについて、実施例2の手順5を繰り返した。処理直後(t=0)および2.5ヵ月の保存期間後に、処理されたオリーブからオイルを抽出した。オイルの評価および分析を実施例1と同様に行った。その結果を表3にまとめている。
表3:処理手順第5番に従い処理したコロネイキ種のオリーブから抽出したオイルの評価
【0029】
【表3】

はっきりわかるように、実施例2および3の両方から抽出したオイルは、エクストラバージンオリーブオイルの遊離酸度および過酸化物価に関するIOCの基準(それぞれ、≦0.8%、オイル1Kgあたりの過酸化酸素≦20ミリ当量)を満たしている。
【0030】
本発明は以上具体的に提示し説明してきたものに限定されないことは当業者には理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理されたオリーブから、高品質のオリーブオイルを、収穫から長期間経過後に製造することを可能にするために、収穫したてのオリーブの中に含まれるオイルの品質を実質的に保持するように当該オリーブを処理する方法であって、
収穫したてのオリーブを、洗浄液で洗浄するステップと、
前記オリーブを、酵素が不活性化されるのに十分な温度まで加熱するステップと、
前記加熱したオリーブを、0℃ないし−10℃の範囲の温度まで急冷するステップと、
所定量のオリーブを、真空包装するステップと、
前記包装したオリーブを、冷蔵温度で保存するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記洗浄液は、水もしくはエタノールまたはその混合液であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱するステップは、40℃ないし80℃の範囲の所定の温度にすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱するステップは、前記オリーブにマイクロ波を照射して行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱するステップは、前記オリーブを所定の前記温度の液槽に浸漬して行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理されたオリーブに、塩またはミネラル粉末を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記塩またはミネラル粉末は、NaCl、KCl、NaHCO、タルカムパウダー、および石灰粉末からなる群から選択されるか、またはその組み合わせであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
当該方法の各ステップの特定の条件を、前記処理されたオリーブの品種および成熟度に応じて予め選択することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
処理されたオリーブから、処理してから少なくとも1ヶ月後までの任意の時に抽出したオイルが、2%以下の遊離脂肪酸(FFA)レベルを有することで特徴付けられる、オイルの品質を保持して収穫したてに処理されたオリーブ。
【請求項10】
前記遊離脂肪酸(FFA)レベルが、0.8%以下であることを特徴とする、請求項9に記載の処理されたオリーブ。
【請求項11】
前記オイルは、バージンオリーブオイルの過酸化物価に関する国際オリーブ協会(IOC)の基準を満たす過酸化物価を有することでさらに特徴付けられる、請求項9に記載の処理されたオリーブ。
【請求項12】
前記オイルは、バージンオリーブオイルの感覚的属性に関する国際オリーブ協会(IOC)の基準を満たす感覚的特性を有することでさらに特徴付けられることを特徴とする、請求項9に記載の加工オリーブ。
【請求項13】
前記オイルは、アベンコールシステムを使用して抽出されたものであることを特徴とする、請求項9に記載の処理されたオリーブ。
【請求項14】
当該処理されたオリーブから、処理してから少なくとも2ヶ月後までの任意の時に抽出した前記オイルが、処理直後の時点で抽出した前記オイルのFFAレベルから1%を超えて逸脱しない遊離脂肪酸(FFA)レベルを有することを特徴とする、請求項9に記載の収穫したての処理されたオリーブ。
【請求項15】
収穫したてのオリーブを、収穫してから24時間以内に処理したものであることを特徴とする、請求項9に記載の処理されたオリーブ。
【請求項16】
処理してから少なくとも3ヶ月後までの任意の時に、アベンコールシステムによって当該処理されたオリーブから抽出した前記オイルが、2%以下の遊離脂肪酸(FFA)レベルを有することで特徴付けられる、請求項9に記載の処理されたオリーブ。
【請求項17】
処理してから少なくとも6ヵ月後までの任意の時に、アベンコールシステムによって当該処理されたオリーブから抽出した前記オイルが、2%以下の遊離脂肪酸(FFA)レベルを有することで特徴付けられる、請求項9に記載の処理されたオリーブ。
【請求項18】
当該オリーブが、真空包装して、使用するまで冷蔵温度で保存したものであることを特徴とする、請求項9に記載の処理されたオリーブ。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれか1項にしたがう処理されたオリーブを収容している真空パッケージ。
【請求項20】
NaCl、KCl、NaHCO、タルカムパウダーおよび石灰粉末からなる群から選択された、またはその組み合わせである塩またはミネラル粉末をさらに含む、請求項19に記載の真空パッケージ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−70689(P2012−70689A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−219032(P2010−219032)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(510259998)オリーブ エックス−テンド リミテッド (1)
【Fターム(参考)】