説明

オリーブ果実水からのフェノール性化合物の抽出方法ならびにオリーブおよびブドウのポリフェノールを有する濃縮された抽出物の製造方法

本発明は、オリーブ果実水から低分子のフェノール性化合物を抽出する方法に関する。本発明はまた、少なくとも30%のヒドロキシチロソールから構成される、少なくとも40%の乾燥物を含むフェノール性化合物に富んだ組成物にも関する。本発明はまた、乾燥媒体としてブドウポリフェノール抽出物を用い、噴霧によって前記組成物を乾燥する方法、ならびに乾燥後に得られる、オリーブおよびブドウのフェノール性化合物に関する濃縮された粉末にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリーブ廃液から低分子フェノール性化合物を抽出する方法に関する。本発明はまた、少なくとも30%のヒドロキシチロソールから構成される、少なくとも40%の乾燥物を含むフェノール性化合物に富んだ組成物にも関する。本発明はまた、乾燥担体としてブドウポリフェノール抽出物を用い、噴霧によって前記組成物を乾燥する方法にも関し、また乾燥後に得られる、オリーブおよびブドウのフェノール性化合物に関する濃縮された(titrees)粉末にも関する。
【背景技術】
【0002】
オリーブオイルを製造する方法は、丸ごとのオリーブを、きめ細かいペーストまたはパルプが得られるまで、破砕(粉砕)することにある。この工程の間、粉砕されたオリーブ物質は水で絶えず洗浄される。次いで、ペーストは、そこからその液体成分を抽出するために、機械的にプレス(圧縮)される。次いで、得られた液体は、それが構成されている2相、すなわち油相および水相を分離するためにデカントされる。粉砕された物質を洗浄した水および圧縮の最後で回収される水相は、廃液あるいは植物水と呼ばれる。これらの水は、オリーブの約60重量%に相当する。
【0003】
これらの廃液は、抗酸化作用のあるフェノール性化合物に非常に富んでおり、特に望まれる抗酸化作用のあるフェノール性化合物はヒドロキシチロソールであり、それは植物水中に0.1〜2 g/lの含量で存在する。
【0004】
ヒドロキシチロソールは、芳香環の1位にアルコールタイプの側鎖ならびに該環の3および4位に2つのヒドロキシ置換基も有する単純なフェノール性化合物である。この化合物は、有利な抗酸化特性を有することが一般的に知られている化合物である、オルト-ジフェノール類のファミリーに属する。
【0005】
その摂取が、ヒトの健康における地中海ダイエットの有益な効果に寄与するように思われる。ヒドロキシチロソールに関して行われた非常に多くの調査研究が、この化合物の抗酸化剤としての有利性を示している。ヒドロキシチロソールの抗酸化活性は、それに脂肪-物質-保存剤の性質を与え、それは、抗菌性、抗ウイルス性および抗真菌性として知られてもいる。
【0006】
それゆえ、この化合物は、非常に良好な栄養補助食品または食品添加物ならびに酸化ストレスおよび酸化ストレスが引き起こす病状に対して細胞保護を強化するのに有用な活性剤であると考えられる。
【0007】
ヒドロキシチロソールおよびより一般的にはオリーブポリフェノールが示す、特に食品および化粧品産業に対する有利性により、フェノール性化合物に富んだ副産物、例えば廃液(Visioliら, "Waste waters from olive oil production are rich in natural antioxidants" Experientia, 1995; 51: 32-34)を回収することの種々の試みが行われている。
【0008】
したがって、米国特許第6,361,803号は、オリーブから得られる産物、すなわちパルプ、オイルあるいは最終までの種々の段階でのオリーブからの廃液から、抗酸化性組成物を抽出する方法を記載している。出発産物が廃液からなるとき、該方法は、抗酸化性化合物を捕捉する吸着性のポリマー樹脂でそれらを処理し、次いで抗酸化性化合物を回収するために有機極性溶媒で前記樹脂を洗浄することにある。
【0009】
しかしながら、この方法の実施は、オリーブから得られる他の産物に対するよりも廃液に対してあまり適していない。特に、種々の出発原料から得られる抽出物のフェノール性化合物の組成の比較は、廃液から得られる抽出物はフェノール性化合物の低い含量:16.8%を有すること、さらにこの抽出物の抗酸化活性は、得られる全ての抽出物中で最も低いことを示す。
【0010】
欧州特許出願第1 623 960号は、
− 好ましくは中性またはアルカリ性のpHで、植物水をいくつかの膜処理(精密濾過、限外濾過、ナノ濾過および逆浸透圧)を含む物理的分離;
− 最終膜処理後に得られる濃縮物からチロソール、ヒドロキシチロソールおよびその他のフェノール性化合物のクロマトグラフ分離;
− 三酸化メチルレニウム(MTO)および過酸化水素の混合物の存在下、チロソールからヒドロキシチロソールへの触媒変換;
− 抗酸化性フェノール性化合物を含む水相の回収
の工程を含む、オリーブ廃液(植物水)からチロソールおよび/またはヒドロキシチロソールを製造する方法を記載している。
【0011】
しかしながら、この方法は、ヒドロキシチロソールを得るためにチロソールの化学的ヒドロキシル化を実施することの欠点を有する。すなわち、得られるヒドロキシチロソールの続く消費を考慮すると、触媒、特に強い刺激性の三酸化メチルレニウムを除く必要があり、さらに、この方法は、非常に多数の工程を含み、この文献の実施例1は、13以上の膜処理を含む方法を行っている。それゆえ、それは、技術的および人的手段の観点から、実施するには非常に長くて費用がかかり、工業規模に比例させると、経済的とは考えられない。
【0012】
オリーブ廃液を回収する目的でそれらの分別を対象とした、国際出願第2005/123603号に記載されている方法も同じである。この方法は、pHの調整;廃液中に含まれるセルロース、ヘミセルロースおよびペクチンの酵素的加水分解;遠心分離;接線(tangentielle)精密濾過;接線限外濾過;透析濾過(diafiltration);接線ナノ濾過および逆浸透の工程を含む。
【0013】
国際出願第2007/013032号は、特に廃液からヒドロキシチロソールに富んだ濃縮物を得る方法を記載している。この方法は、少なくとも2つの工程:
− 超臨界流体の利用および/またはナノ濾過によってヒドロキシチロソールおよび他の生物活性化合物の抽出;および
− 逆浸透
を組み合わせている。
【0014】
超臨界流体を利用しての抽出は、非常に高い圧力(CO2が超臨界流体として用いられるとき、約74バール)の使用を必要とする、それゆえ、それは実行するには複雑で費用もかかる方法である。さらに、逆浸透は、水の除去による抽出物の濃縮を生じる方法であり、特に逆浸透は、低分子のフェノール性化合物を選択的に高めることはできない。
【0015】
米国特許第6,416,808号は、次の工程:(i) 核を除いたオリーブからの廃液の製造;(ii) 1〜5の間のpHにするために、十分な量の酸、好ましくはクエン酸の添加;(iii) オレウロペインがヒドロキシチロソールに加水分解されるために、酸性化された廃液を少なくとも2か月間インキュベーションすることを含む、オリーブ廃液からヒドロキシチロソールに富んだ組成物を得る方法を記載している。該方法は、有機溶媒を用いるヒドロキシチロソールの抽出、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)あるいは超臨界流体を用いる抽出の工程も含み得る。
【0016】
それはヒドロキシチロソールに富んだ組成物を産生するが、それがHPLCによるかまたは超臨界流動体を用いての採取が行われるとき、工業的規模で用いられるには、この方法は費用がかかり過ぎる。さらに、液液抽出は、得られる抽出物の化粧品業界または食品業界での使用に適合しない毒性の有機溶媒を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、先行技術に記載された方法は、完全な満足を与えるものではなく、単純でかつ工業的実施に適したオリーブ廃液から低分子のフェノール性化合物を抽出するための方法を開発する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本出願人は、オレウロペインおよびベルバスコシドのようなより高分子の化合物から低分子のフェノール性画分を分離するために、植物水中に含まれるフェノール類の分別をもたらす方法を提示することを目的とした。
【0019】
本発明の関連で有利性を提供するため、該方法は、ヒドロキシチロソールおよびチロソールの選択的な豊富化を可能にすることが必要である。このことは、本出願人が、ヒドロキシチロソールおよびチロソールをできるだけ最低に保持すると同時に他のフェノール性化合物、特にポリフェノール性化合物の最大保持をするナノ濾過膜を選択することによって達成されたことである。したがって、選択されたナノ濾過膜の使用は、透過物の乾燥物中のフェノール性化合物含有量を重量で1.5〜3.5倍に、特にナノ濾過処理から生じる透過物の乾燥物中のヒドロキシチロソール含有量を重量で2〜20倍に増加させることを可能にする;それゆえ、透過物は低分子のフェノール性化合物に有意に富んでいる。
【0020】
試料の乾燥物は、試料を乾燥することによって測定され、次いで、乾燥物のパーセントが、試料の乾燥物の重量と試料の全重量との割合によって決定される。
他に特に規定がなければ、以下において、濃度は重量パーセントとして表される。
【0021】
「残留物」の用語は、試料の膜分離処理の間に膜によって保持される試料の画分を意味することが意図される。
「透過物」の用語は、試料の膜分離処理の間に膜を通る試料の画分を意味することが意図される。
「膜分離処理」の用語は、本発明の明細書中で、濾過−精密濾過、限外濾過、ナノ濾過−の方法または逆浸透圧の方法を意味することが意図される。
【0022】
「溶出液」の用語は、担体に吸着された1以上の物質を溶媒で再溶解することによって得られる物を意味することが意図される。それゆえ、溶出液は溶媒および前記物質を含む。
【0023】
「廃液」または「植物水」の用語は、オリーブ油の製造の間に発生する水を意味することが意図される。植物水の乾燥物含有量は変化し、搾油工場で用いられる工程に依存する。表示の目的で、未浄化の粗植物水は3〜15%の間の乾燥物を含むことができる。
【0024】
第一の対象物によれば、本発明は、
(a) オリーブ廃液の浄化工程;
(b) 100〜200 kDaの間のカットオフ閾値を有する管状セラミック膜による、工程(a)で得られた浄化廃液の接線限外濾過の工程および透過物の回収工程;
を含む、オリーブ廃液から低分子のフェノール性化合物を抽出する方法に関し、該方法はまた、
(c) 1〜3 MPaの間の圧力で150〜400 Daの間のカットオフ閾値を有するスパイラル型有機膜により、工程(b)で得られた前記透過物のナノ濾過工程(該膜は、少なくとも50%のポリアミドを含む活性層からなり、前記廃液中に含まれる少なくとも70%、好ましくは70〜90%の間、より優先的には少なくとも80%の乾燥物を含む残留物と最大で25%または最大で20%のヒドロキシチロソールを得ることを可能にするようなものである);
【0025】
(d) ポリマーマトリックスを通すことによる、工程(c)で得られる透過物に含まれるフェノール性化合物の吸着工程、続いて前記マトリックスに吸着されたフェノール性化合物の有機極性溶媒での溶出工程、および溶出液の取得工程
を含むことで特徴付けられる。
【0026】
本発明による方法は、ただ2つの膜処理(限外濾過およびナノ濾過)工程により、低分子のフェノール性化合物の選択的濃縮物をもたらす特徴を有する。この方法は、廃液中のフェノール性化合物を種々の画分に分離することを可能にする独創性も有する。すなわち、公知の方法は、膜処理により廃液中の全てのフェノール性化合物を集める(その結果、フェノール性化合物は残留物中に回収される)のに対して、本発明による方法においては、用いられるナノ濾過膜が、フェノール性化合物の分離を可能にし、その結果、興味のあるフェノール性化合物が透過物中に回収される。
【0027】
本発明による方法で用いられるために、廃液は乾燥物を15%まで含むことができる。廃液中の乾燥物のパーセントは、乾燥物の重量と廃液の全重量との間の割合である。特に、廃液は3〜7%の間の乾燥物含有量を有する。7%より多い乾燥物を含む植物水の使用は、希釈のような前処理を必要とする。
【0028】
「低分子のフェノール性化合物」の表現は、400 Da以下の分子量を有する化合物を意味することが意図される。特に、低分子のフェノール性化合物は、ヒドロキシチロソール、チロソール、ヒドロキシ桂皮酸、例えばフェルラ酸、クマル酸もしくはコーヒー酸、またはそれらのエステル、例えばクロロゲン酸のようなフェノール酸である。
【0029】
浄化は、廃液の濾過、遠心分離またはそのほかのデカントのような固液抽出からなる。
【0030】
「濾過」の用語は、液相および固相を有する混合物の構成成分を、多孔質媒体により分離する方法を意味することが意図される。本発明の方法の実施工程(a)に対して、浄化濾過、すなわち孔径が10〜450μmの間であるような多孔質媒体を用いることが可能である。該濾過は、カートリッジ フィルター、キャンドル フィルター、プレート フィルター、サンド フィルター、プレス フィルター、または真空下のロータリー フィルターを用いて行われ得る。
【0031】
遠心分離は、液体状態の懸濁物中の固体成分を分離するために、遠心力を用いる方法である。この方法は、処理される植物水によって当業者によってその特徴が選択される遠心分離機を用いて実施される。例として、円筒型遠心分離機、同心チャンバー ボウル遠心分離機、プレート遠心分離機または遠心式デカンター型遠心分離機が挙げられる。
【0032】
最後に、デカントは、重力の作用下での、その中の少なくとも一つが液体であるいくつかの不混和相の機械的分離の操作である。したがって、植物水の場合のように、液体状態の懸濁物中の不溶性の固体を分離することが可能である。そのようなデカントを行うことに対して、処理される植物水によってその特徴が当業者により調整されるデカンター(沈降濃縮装置とも呼ばれる)を用いることができる。特に、バッチ デカンターおよび任意に仕切りまたは段を含む連続デカンターが挙げられる。
好ましくは、浄化は、濾過操作を用いて行われる。
【0033】
本発明による方法の工程(b)で行われる接線限外濾過は、分離される構成成分を含む液体を用いて接線方向に押し流される、多孔質膜の分子ふるい分けの性質に基づく液相分離の機械的方法である。本方法に関連して、接線限外濾過は、好ましくは150 kDaのカットオフ閾値を有する管状セラミック膜、例えばTamiおよびExekia社から供給される限外濾過膜を用いて行われる。本方法は、低圧、すなわち0.1 MPa以下で行われる。
【0034】
工程(a)で得られる浄化された廃液が限外濾過膜を通されたあと、2つの画分:溶媒および膜の孔の直径より小さい直径を有する全ての溶解した分子を含む透過物;ならびに最初の液体と比較して、膜の孔の直径より大きな直径を有する分子および化合物に富んだ残留物が得られる。
【0035】
工程(c)は、工程(b)で得られる透過物のナノ濾過処理からなる。ナノ濾過は、その推進力が半透過膜へ圧力を加えることによって行われる分離方法である。それは、標的粒子の大きさおよび操作圧力を規定する、用いられる膜の性質によって特徴付けられる。
【0036】
本発明による方法に関連して、ナノ濾過工程は、150〜400 Da、好ましくは300〜400 Daの間のカットオフ閾値を有するスパイラル型有機膜上で行われ、該膜の活性層は少なくとも50%のポリアミドを含む。これらの条件下、工程(b)から生じる透過物のナノ濾過は、低分子のフェノール性化合物(ヒドロキシチロソール、チロソールおよびフェノール酸類)を含む、工程(c)から生じる第2の透過物を生じる。
【0037】
具体的には、150〜400 Daの間のカットオフ閾値を有し、その活性層が少なくとも50%のポリアミドを含み、以下に記載される特徴を有するスパイラル型有機膜だけが、植物水中のフェノール性化合物の満足のいく画分をもたらすことが、以下の実施例1に示されている。したがって、その使用が、前記廃液に含まれる、少なくとも70%、好ましくは70〜90%の間、より優先的には少なくとも80%の乾燥物を含む残留物と多くても25%、または多くても20%のヒドロキシチロソールを生じる膜が、本発明で役に立つ。例えば、これらの値は、平面的構造の3 Lの表示容積を有する試験的実験室装置において、1.5×10-2 m-2の有用な膜表面積、1〜3 MPaの間の膜透過圧力および1 m・s-1の接線速度を用いる試験に関連して、4%の乾燥物を含む植物水の処理の間に得られる。
【0038】
さらに、本発明の方法で用いることができるナノ濾過膜は、優先的には、少なくとも10 L・h-1・m-2の透過流量密度を有する膜から選択される。
【0039】
本発明で用いることができるナノ濾過膜は、
(i) 膜の機械的強度を与える担体の役割を果たす有機多孔質物質;該多孔質物質は、一般的に、セルロース物質(例えば、酢酸セルロース)、スルホン化された物質、ポリアミドおよびポリイミド物質、単独またはコポリマーもしくはポリマー合金の形態で用いられるアクリル系物質、フッ素化された物質、またはそのほかのポリカーボネートおよびポリプロピレンである;および
(ii) 前記有機多孔質物質を覆う少なくとも50%のポリアミドから構成される活性層;該活性層は、好ましくは少なくとも70%、より優先的には少なくとも90%のポリアミドから構成される
からなる。
【0040】
「活性層」の用語は、ナノ濾過処理が適用される試料と接触するナノ濾過膜の表面を意味することが意図される。ポリアミドに加えて、該活性層は、非限定的に、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリイミド類および/またはポリビニルアルコールから構成され得る。
【0041】
「ポリアミド」の用語は、カルボン酸とアミン官能基との重縮合から生じるポリマーを意味することが意図される。それは、具体的には、脂肪族ポリアミドおよび芳香族ポリアミドの議論がある。
【0042】
ナノ濾過工程の開発は、種々の試験的な装置でのいくつかの試験を必要とした。膜選択の結果が、実施例1に詳述される。
【0043】
この膜選択により、ナノ濾過後に得られる透過物のフェノール性画分は、低分子のフェノール性化合物に著しく富んでいる。表示の目的で、その中で、ヒドロキシチロソールおよびチロソールは、全フェノール性化合物の63〜84%の間に相当する。
【0044】
好ましくは、ナノ濾過工程(c)の実施は、透過流量が10 kg・h-1・m-2 (以下の実施例2参照)以上であるような条件下で行われる。
【0045】
吸着性のポリマーマトリックスを通す工程(d)は、透過物中に存在する非フェノール性化合物、特に無機物、塩および有機酸を除去することを可能にする。全フェノール性化合物は、透過物中の乾燥物の約30%に相当する。樹脂を通した後、それらは、溶出液中の乾燥物の80%以上に相当する。
【0046】
工程(d)で用いられるポリマーマトリックスは、好ましくは、スチレン、アクリルまたはフェノール系の吸着性樹脂であり、好ましくは、それはポリスチレン系吸着性樹脂である。
【0047】
前記マトリックスに吸着されたフェノール性化合物を溶出するのに役に立つ有機極性溶媒または有機極性溶媒の水溶液は、特に食糧部門で許容可能な溶媒である。好ましくは、それらは、C1-C4 アルコールまたはアルコール類の混合物である。優先的には、それらはエタノールである。
【0048】
本発明の好ましい実施態様の変形によれば、本方法は、以下の工程の1以上も含む:
− 工程(a)の前に、4.5以下のpHになるように廃液を酸性化する工程(a0)。
【0049】
廃液の酸性化は、ヒトまたは動物の食物摂取と共存できるあらゆる酸で行うことができる。特に、酸性化は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸または乳酸のようなあらゆる有機酸を用いて行うことができる。有利には、酸性化は、クエン酸を用いて行われる。本発明による方法の工程(a0)を行うために用いられる酸にかかわらず、当業者は、廃液に導入される酸の必要量を、例えば少量の酸を加え、次いでpHを測定することからなる反復方法を用いて調整することができるであろう;
− 真空下での蒸留により、工程(d)で得られる溶出液を濃縮する工程(e)。
本方法の一つの特定の実施態様の変形によれば、それは工程(a0)、(a)、(b)、(c)、(d)および(e)を連続して含む。
【0050】
本方法は、本発明による方法を実施の前に、廃液の保管の点で役に立つ3つの付加工程も含み得る。工程(a)および(b)の間に挿入されるこれら3つの工程は、次の:
(a1) その保管のために酸性化され浄化された植物水の濃縮;
(a2) 濃縮された酸性化植物水の保管;次いで
(a3) 工程(b)を行う前に、濃縮された酸性化植物水を溶媒中で約4%の乾燥物に希釈
である。
【0051】
工程(a1)は、真空濃縮技術を用いて行うことができる。
工程(a2)による保管は、優先的には、6〜15℃の間の温度で行われる。
工程(a3)の溶媒は、好ましくは水である。
【0052】
本発明による方法の実施は、本発明の対象物でもある低分子のフェノール性化合物に富んだ組成物を生じる。この組成物−以後、組成物Aと呼ばれる−は、有利には、少なくとも40%の乾燥物を含み、この乾燥物のパーセントは、組成物Aの乾燥後に得られる乾燥物の重量と組成物Aの全重量との間の割合であり、該乾燥物は、少なくとも80%の全フェノール性化合物から構成される。特に、それは少なくとも30%のヒドロキシチロソールおよび少なくとも10%のチロソールを含む。
【0053】
この方法は、特に、ヒドロキシチロソール、チロソール、およびヒドロキシ桂皮酸、例えば、フェルラ酸、クマル酸もしくはコーヒー酸、またはそれらのエステル、例えばクロロゲン酸のようなその他の低分子のフェノール性化合物のわずかの量をふくむフェノール性化合物の組成物を再生可能に製造することに有利性を有する。このことは、例えば、化粧品および食品産業において、次の使用のための重要な条件である。
【0054】
このようにして得られる組成物Aは、例えばスプレー乾燥によって、有利に乾燥される。好ましくは、ポリサッカライド増量剤、例えばデキストリンまたはガムのような乾燥担体の使用を避けるため、少なくとも60重量%の全ポリフェノール類を含むブドウ抽出物が乾燥担体として用いられる。したがって、本発明は、スプレー乾燥によって組成物Aを乾燥するための担体として、少なくとも60重量%の全ポリフェノールを含むブドウ抽出物の使用にも関する。
【0055】
本発明は、次の工程:
(e1) 組成物Aを少なくとも60%の全ポリフェノール類を含むブドウ抽出物と混合し(該混合物は、前記組成物Aの乾燥物が混合物の全乾燥物の5〜40%の間に相当するように組成物Aの量を含む)、
(e2) 工程(e1)で得られる混合物をスプレー乾燥によって乾燥する
を含む、オリーブおよびブドウのフェノール性およびポリフェノール性化合物に関する濃縮された粉末を製造する方法にも関する。
【0056】
組成物Aとブドウ抽出物との混合物中の乾燥物のパーセントは、該混合物の乾燥後に測定される乾燥物の重量と混合物の全重量との間の割合である。
【0057】
前記ブドウ抽出物は、少なくとも60%の全ポリフェノール類、より優先的には少なくとも90%の全ポリフェノール類を含む。ブドウ抽出物中の全ポリフェノール内容物は、具体的には、Folin-Ciocalteu法 (Folin Singleton VL, Orthofer R, Lamuela-Raventos RM. Analysis of total phenols and other oxidation substrates and antioxidants by means of Folin-Ciocalteu reagent. Meth Enzymol 1999; 299: 152-178)によって測定され得る。
【0058】
ブドウ抽出物は、ブドウ搾りかすピケットまたはブドウの種の水性抽出物を吸着性樹脂、特にスチレン、アクリルまたはフェノール系の樹脂の上を通過させることにより得ることができる。ブドウ搾りかすピケットは、ブドウ搾りかすを水に浸した後に得られる溶液である。ブドウ搾りかすは、ブドウ圧搾工程の最後に回収される固形部分であり、それは、ブドウの皮および種ならびにその茎からなる。
【0059】
この方法の一つの実施態様の変形によれば、これら2つの工程(e1)および(e2)は、本発明による低分子のフェノール性化合物の抽出のための方法の工程(e)に続く。
【0060】
スプレー乾燥による乾燥(または粉末化)は、それを並行して行うことにより水を除去する技法であり、それは、熱い空気の流れの中で液状産物を粉末化することにある。実際的な言い方をするなら、この技法は、塔の中を非常に熱い空気の流れが通過するときに同時に、脱水される液状産物を細かい霧の形態で該塔の上端に吹き込むことにあり、熱の効果で、水が蒸発し、脱水された粉末が塔の底まで落ちる。
【0061】
オリーブおよびブドウのフェノール性およびポリフェノール性化合物に関する濃縮された粉末を製造する前記方法は、少なくとも95%のフェノール性およびポリフェノール性化合物を含む粉末を産生する。
【0062】
本発明は、その中の5〜40%の乾燥物が組成物Aに由来する、少なくとも95%のフェノール性化合物を含む、オリーブおよびブドウのフェノール性およびポリフェノール性化合物に関する濃縮された粉末にも関する。前記乾燥物は、少なくとも30%のヒドロキシチロソールおよび少なくとも10%のチロソールを含む、少なくとも80%の全フェノール性化合物から構成される組成物Aである前記組成物に由来する。
【0063】
実施例5は、本発明による粉末が、非常に良好なフリーラジカル捕捉活性を示すことを表わす。特に、このフリーラジカル捕捉活性は、組成物Aのフリーラジカル捕捉活性と独立して採取されたブドウ抽出物のフリーラジカル捕捉活性の合計より大きく、このことは、本発明の粉末中の組成物Aとブドウ抽出ポリフェノール類との組み合わせの相乗効果を示している。
【0064】
表示の目的で、オリーブおよびブドウの種の抽出物から得られたオリーブおよびブドウのフェノール性およびポリフェノール性化合物に関する濃縮された粉末は、次の含有範囲:
全フェノール性化合物 60〜100%
ポリシアニジン 18〜50%
ヒドロキシチロソール 1.5〜16%
チロソール 0.5〜8%
を有する。
【0065】
ブドウポリフェノール類がブドウの搾りかすに由来するとき、その粉末は、次の含有範囲:
全フェノール性化合物 60〜100%
プロシアニジン 9〜25%
アントシアニン 1.2〜8%
ヒドロキシチロソール 1.5〜16%
チロソール 0.5〜8%
を含む。
この方法によって得られる粉末も、本発明の対象物である。
【0066】
本発明による低分子のフェノール性化合物に富んだ組成物Aおよび粉末は、多くの適用を有する。それらは、皮膚(真皮および表皮)の酸化ストレス予防剤として、フリーラジカル捕捉剤として、老化防止剤としてのそれらの使用のために、化粧品分野、ならびに特に栄養補助食品としての使用またはそのほか保存剤としての使用のために食糧部門で特に際立って興味がある。
【0067】
本発明による低分子のフェノール性化合物に富んだ組成物Aおよび粉末は、皮膚の脱色素および/または美白剤として特に活性である。したがって、それらは皮膚の色素異常および斑点の除去を促進する。
【0068】
本発明は、今、以下の実施例に関して、より詳細に記載される。しかしながら、これらの実施例は、本発明の対象物を説明するだけに与えられ、それらは決して限定を構成しないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0069】
実施例1−ナノ濾過膜の選択
ナノ濾過による低分子のフェノール性化合物の分離を最適化するため、性能(透過流量密度)および残留の観点からいくつかの市販の膜を評価した。
試験は、約1.5×10-2 m2の有用な膜表面積を有する平面的構造の試験的実験室装置(3 lの表示容積)において、30 ± 2℃で行われた。選択された膜透過圧力は1〜3 MPaの間の範囲であり、接線速度は1 m・s-1の辺りである。
【0070】
低分子のフェノール性化合物の分離の実行可能性を評価するため、9つのナノ濾過膜を、前もって選択した(供給業者 Microdyn Nadir、Dow Filmtec、GE Osmonics、東レ、Koch)。これらの膜は、150〜400 Da (製造業者により提示された値)の間のカットオフ閾値を有する。
【0071】
それらは、濃縮しないで、すなわち、1に近い減容係数で、4%の乾燥物を含む標準の植物水で試験された。使用された膜および膜透過圧力により、透過流量密度は、3〜133 kg・h-1・m-2の間で変化する。
得られた結果を次の表Iに示す。
【0072】
【表1】

【0073】
試験された膜は、試験された植物水中の52〜99%の乾燥物および41〜98%の全ポリフェノール類を保持する(Folin-Ciocalteu法, Folin Singleton VL, Orthofer R, Lamuela-Raventos RM. Analysis of total phenols and other oxidation substrates and antioxidants by means of Folin-Ciocalteu reagent. Meth Enzymol 1999; 299: 152-178で測定)。
【0074】
主な低分子のフェノール性化合物のヒドロキシチロソールの残留は低い。試験された膜は、Dow Filmtec NF90およびKoch MPF34の膜を除いて、処理された植物水中に存在する1〜44%の間のヒドロキシチロソールを残留する。
【0075】
膜は先天的に(a priori)よく似ているが、方法の全体的性能レベル(透過流量密度)および分離性能レベル(残留)は、ナノ濾過膜の選択に密接に関連することが観察される。
【0076】
想定される適用の関連において、最も好適な膜は、ヒドロキシチロソールの低い残留、乾燥物および全ポリフェノール類の高い残留、ならびに最終的に高い透過流量密度を同時に得ることを可能にする膜である。試験された膜の中で、活性層がポリアミドで構成される膜のほとんどが、有利な結果を生む。活性層がポリエーテルスルホンからなる膜は、これらの基準を一部分だけ満たす。
【0077】
実施例2−植物水の濃度のナノ濾過工程の効率への影響
植物水の濃度の透過流量密度および残留への影響を評価するため、3.5〜22%の範囲の乾燥物含量を有する植物水が試験された。これらの試験に対して、実施例1で試験された膜の中で、最も高い性能レベルを有する2つの膜:GE Osmonics Desal DLおよびDKが選択される。
【0078】
実施例1と同様に、試験は、約1.5×10-2 m2の有用な膜表面積を有する平面的構造の試験的実験室装置において、30℃で行われた。用いられた膜透過圧力は20バール(2 MPa)〜30バール(3 MPa)の間の範囲であり、接線速度は1 m・s-1の辺りである。
得られた結果を表IIに示す。
【0079】
【表2】

【0080】
両膜に関して、透過流量は、乾燥物含量の増加と共に急激に減少する。例えば、20バールで、乾燥物含量が4から13%になると、透過流量密度は、1/10となる。22%の乾燥物で、透過流量密度は非常に低く、数kg・h-1・m-2の透過流量密度を得るために、圧力は25バール以上を維持しなければならない。
【0081】
これらの結果は、試験された操作条件下で10 kg.h-1.m-2より大きな流量を保証するため、13〜15%の乾燥物を超えることは困難であることを示している。この含量は、3〜4の間の減容係数、すなわち、およそ70%の透過産物収率に相当する。
【0082】
減容係数(VRF)は、初期産物容積と最終残留物容積との間の割合、すなわち、VRF = V0/Vrとして定義され、V0 = Vr+Vpであるので、VRFは、透過産物容積収率X = Vp/V0と直接関連があり、すなわち、パーセントX = 100×(1-1/VRF)である。
【0083】
さらに、残留は、供給材料の植物水中の乾燥物含量によってほとんど影響を受けないことが注目される。植物水の濃度が増加するとき、残留物中の乾燥物および全ポリフェノール類の量は、わずかに減少する。
【0084】
実施例3−準工業規模のナノ濾過試験
実験室試験は、生成物を低分子のフェノール性化合物で豊富にするためのナノ濾過法の技術的実現可能性を評価することを可能にした。それらはまた、該操作を行うために適した市販の膜を選択することを可能にした。工業使用により適した規模での方法を評価するため、2.5 m2の有用な表面積を有するスパイラル型ナノ濾過モジュールを用いて試験を行った。用いられた装置は、80 lの表示容量を有する。選択された膜透過圧力は、2〜3 MPaの間であり、温度は30℃であり、循環フロー速度は1.7×10-4 m3・s-1である。
【0085】
最初の試験は、実施例2に示した同じ膜、すなわち、GE Osmonics Desal DLおよびDK膜で行われる。この試験の間、透過物は、8の減容係数に達するまで連続的に抽出される。
【0086】
性能に関して得られた結果は、試験的実験室で得られた結果と一致し、植物水の乾燥物のパーセントが増加するとき、透過流量密度は減少する。10 kg・h-1・m-2より大きな透過流量密度を得るため、最大減容係数は、4.5〜6の間、すなわち、およそ80%の透過産物収率である。2〜6の間の減容係数に対して、透過物の乾燥物は、全フェノール性化合物で2〜4倍およびヒドロキシチロソールで5〜13倍に富んでいる。
【0087】
同じ2つの2.5 m2のスパイラル型膜モジュールを用い、前記と同様の条件下でさらなる試験を行った。これらの試験は、2つの連続濃縮工程を有する連続操作をシミュレートすることにより、該操作の性能レベルの安定性を確かめることを目的としている。最初の工程は、2の減容係数(すなわち、50%の透過産物収率)に相当し、2番目は、8の減容係数(すなわち、75%の産物収率)に相当する。
【0088】
最初の工程と比較して2番目の工程は、透過流量密度が、約15倍低い。120分の保持期間で確認された流量密度は、両工程の時間を通して安定である。残留に関して、結果は、前に得られたものを裏付ける。それゆえ、本方法の連続的な工業実施は容易に想像され得る。
【0089】
実施例4−本発明による方法の工業規模での実施
方法全体の正当性を立証するため、統合された本発明による方法の全ての工程を用いて、工業的規模で試験を行った。
この試験に対して、クエン酸で4.2に酸性化された新鮮な植物水の19.3 m3が用いられた。
【0090】
これらの植物水は、まず第一に、真空下、ロータリー フィルターによる濾過によって浄化され、次いで、150 kDaのカットオフ閾値を有する37.2 m2の管状セラミック膜を備えた装置での限外濾過を用いて処理される。次いで、得られる透過物(13.9 m3)を、18 m2のGE Osmonics Desal DL スパイラル型有機膜を備えた装置でナノ濾過する。次いで、ナノ濾過透過物(10.6 m3)をRelite SP411(登録商標)吸着性樹脂で処理する。80%エタノールでの溶出および真空下でのアルコール性溶出液の濃縮後、48%の乾燥物を含む低分子のフェノール性化合物に富んだ45.7 kgの組成物が得られる。この組成物は、41.7%のポリフェノール類(A280 nm カテキン当量、すなわち、カテキン当量で表し、J. Zhishen, T. Mengcheng, W. Jianming (1999) according to The determination of flavonoid contents in mulberry and their scavenging effects on superoxide radicals, J Food Chem, Volume 64, pp 555-559に従って280 nmで分光光度計を用いて測定)、17%のヒドロキシチロソールおよび6%のチロソール(高速液体クロマトグラフィー、HPLCで測定)を含む。
【0091】
低分子のフェノール性化合物に富んだ組成物は、最後に、ブドウ抽出物と一緒にスプレー乾燥によって乾燥される。乾燥の前に、前記組成物とブドウ抽出物は、混合物中の乾燥物が、ブドウ乾燥物の80%および前記組成物の乾燥物の20%で構成されるように混合される。得られる最終産物は、固体に固まらない流体粉末である。それはポリフェノール類だけを含む(100%、A280 nm カテキン当量)。それは、17.4%のプロシアニジン、7.6%のヒドロキシチロソール、2.7%のチロソール(HPLC)および3.1%のアントシアン(Riberau-Gayonら, 1975, Sciences et techniques du vin [Wine sciences and techniques], III巻, Dunod, Parisの方法に従って測定)から構成される。
【0092】
ブドウの種のポリフェノール担体を用いる以外は同じ条件下での該組成物の乾燥(同じように、混合物は、混合物中の乾燥物が、ブドウの種の乾燥物の80%および前記組成物の乾燥物の20%で構成されるようにする)は、固体に固まらない流体粉末を生じ、それはポリフェノール類だけで構成される。この第2の粉末は、31.2%のプロシアニジン(バニリン法, Broadhurst R.B., Jones W.T. 1978. Analysis of condensed tannins using acidified vanillin. J. Science Food Agriculture, 29:788-794)、6.9%のヒドロキシチロソールおよび2.5%のチロソール(HPLC)から構成される。
【0093】
実施例5−本発明による組成物および粉末のフリーラジカル捕捉活性の測定
廃液から得られる低分子のフェノール性化合物に富んだ組成物、および乾燥担体としてブドウポリフェノール類と一緒に該組成物を乾燥することによって得られる粉末のフリーラジカル捕捉特性を、ORAC法によって評価した。
【0094】
酸素ラジカル吸収能力に対するORAC法(CAOら, 1993, Free Radical Biol. Med. 14, 303-311; PRIORら, 2003, J. Agric. Food Chem. 51, 3273-3279)は、インビトロでのフリーラジカル捕捉活性を測定するための方法である。該方法の原理は、フリーラジカルに非常に感受性である天然の蛍光分子のフルオレセインの使用に基づく。AAPH (2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩)によって産生される反応媒体中のフリーラジカルが、試験される組成物または粉末中の抗酸化物質と反応する。全てのフリーラジカルが、試験される組成物または粉末中の抗酸化物質と反応するや否や、それらはフルオレセインを破壊し、蛍光が消失する。ORAC値は、時間の関数として蛍光の曲線下の面積を測定することによって決定される。その結果が、トロロックス(ビタミンE類似物)で得られるデータと比較され、それらは、gもしくはkg当たりまたはl当たりのトロロックス当量(TEQ)のマイクロモルで表される。
これらの試験にのっとって測定されたORAC値を表IIIに示す。
【0095】
【表3】

【0096】
廃液からの低分子のフェノール性化合物に富んだ組成物に対して、ORAC値は、6340マイクロモル TEQ/gであり、この抽出物中の乾燥物は48%であることを考えれば、これは、13200マイクロモル TEQ/乾燥物gに相当する。
【0097】
ブドウの種抽出物のORAC値およびブドウ抽出物のORAC値は、それぞれ、19000マイクロモル TEQ/gおよび13100マイクロモル TEQ/gである。
したがって、ブドウの種抽出物の乾燥物80%およびオリーブ抽出物の乾燥物20%を含む粉末に対して、対応する乾燥物のORAC値から計算された17840マイクロモル TEQ/gの理論ORAC値が予測されるであろうが、ORAC値の測定値は19300マイクロモル TEQ/gである。
【0098】
同様に、ブドウ抽出物の乾燥物80%およびオリーブ抽出物の乾燥物20%を含む混合物に対して、13120マイクロモル TEQ/gのORAC値が予測されるであろう、そして測定値は15100マイクロモル TEQ/gである。
【0099】
それゆえ、本発明による粉末で得られるORAC値は、それらの予測値より8〜15%高く、このことは、フリーラジカル捕捉活性に関して、オリーブの低分子のフェノール性化合物とブドウポリフェノール類との組み合わせの相乗効果を示している。
【0100】
実施例6−要求される性質を有しないナノ濾過膜を用いた工業規模における、本発明による方法の実施の比較例
Koch SR3 N2膜を用いての工業規模での本発明による方法の実施の別の試験が行われる。
この試験に対して、28 m3の植物水は、4.2のpHになるようにクエン酸で酸性化される。
次いで、酸性化された植物水は、150 kDaのカットオフ閾値を有する37.2 m2の管状セラミック膜を備えた装置で限外濾過される。
【0101】
得られる透過物(24 m3)は、18 m2のKoch SR3 N2 スパイラル型有機膜を備えた装置でナノ濾過される。ナノ濾過透過物(18 m3)は、Relite SP411吸着性樹脂で処理される。80%エタノールに溶解および真空下でのアルコール溶出液の濃縮後、低分子のフェノール性化合物に富んだ、48.8%の乾燥物を含む41 kgの組成物が得られる。この組成物は、37.6%のポリフェノール類(A280nm カテキン当量)、11%のヒドロキシチロソールおよび4%のチロソール(HPLC)を含む。この組成物において、ヒドロキシチロソール/全フェノール類の比は、たった29.3 g/100 gである。この試験は、実施例1の結果を裏付け、このナノ濾過膜の選択性は、興味あるフェノール性化合物に富んだ組成物を得るには不十分であることを裏付ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) オリーブ廃液の浄化工程;
(b) 100〜200 kDaの間のカットオフ閾値を有する管状セラミック膜による、工程(a)で得られた浄化廃液の接線限外濾過の工程および透過物の回収工程;
を含み、
(c) 1〜3 MPaの間の圧力で150〜400 Daの間のカットオフ閾値を有するスパイラル型有機膜により、工程(b)で得た前記透過物のナノ濾過工程(該膜は、少なくとも50%のポリアミドを含む活性層からなり、前記廃液中に含まれる乾燥物を少なくとも80%含み、かつヒドロキシチロソールを最大で25%含む残留物を得ることを可能にするようなものである);および
(d) ポリマーマトリックスを通すことによる、工程(c)で得られる透過物に含まれるフェノール性化合物の吸着工程、続いて前記マトリックスに吸着されたフェノール性化合物の有機極性溶媒での溶出工程、および溶出液の取得工程
も含むことを特徴とする、オリーブ廃液から低分子のフェノール性化合物を抽出する方法。
【請求項2】
工程(a)の前に、4.3以下のpHになるように廃液を酸性化するさらなる工程(a0)を含むことを特徴する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(d)の後に、工程(d)で得られる溶出液の真空下での蒸留による濃縮工程(e)が続くことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a0)、(a)、(b)、(c)、(d)および(e)を連続して含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)および(b)の間に挿入される、
(a1) その保管のために酸性化され浄化された植物水を濃縮し;
(a2) 濃縮された酸性化植物水を保管し;次いで
(a3) 工程(b)を行う前に、濃縮された酸性化植物水を溶媒中で約4%の乾燥物に希釈する
ことからなる3つの付加工程を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも30%のヒドロキシチロソールおよび少なくとも10%のチロソールを含む全フェノール性化合物の少なくとも80%から構成される乾燥物を少なくとも40%含む低分子のフェノール性化合物に富んだ、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法を用いて得ることができる組成物。
【請求項7】
(e1) 請求項6に記載の組成物または請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法を用いて得られる組成物を少なくとも60%の全ポリフェノール類を含むブドウ抽出物と混合し(該混合物が、前記組成物の乾燥物が混合物の全乾燥物の5〜40%の間に相当するように前記組成物の量を含み)、
(e2) 工程(e1)で得られる混合物をスプレー乾燥によって乾燥する
工程を含む、オリーブおよびブドウのフェノール性およびポリフェノール性化合物に関する濃縮された粉末を製造する方法。
【請求項8】
2つの工程(e1)および(e2)が、請求項3または4に記載の方法の工程(e)に続くことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
その中の5〜40%の乾燥物が、少なくとも30%のヒドロキシチロソールおよび少なくとも10%のチロソールを含む、少なくとも80%の全フェノール性化合物から構成される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法を用いて得られる組成物に由来する、少なくとも95%のフェノール性化合物を含む、オリーブおよびブドウのフェノール性およびポリフェノール性化合物に関する、請求項7または8に記載の方法によって得ることができる濃縮された粉末。
【請求項10】
請求項6に記載のもしくは請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法を用いて得られる組成物の、あるいは請求項9に記載のまたは請求項7もしくは8に記載の方法を用いて得られる粉末の、栄養補助食品としての使用。
【請求項11】
請求項6に記載のもしくは請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法を用いて得られる組成物の、あるいは請求項9に記載のまたは請求項7もしくは8に記載の方法を用いて得られる粉末の、保存剤としての使用。
【請求項12】
請求項6に記載のもしくは請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法を用いて得られる組成物の、あるいは請求項9に記載のまたは請求項7もしくは8に記載の方法を用いて得られる粉末の、フリーラジカル捕捉剤としての使用。
【請求項13】
請求項6に記載のもしくは請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法を用いて得られる組成物の、あるいは請求項9に記載のまたは請求項7もしくは8に記載の方法を用いて得られる粉末の、皮膚の脱色素および/または美白剤としての使用。

【公表番号】特表2012−517824(P2012−517824A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550618(P2011−550618)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000137
【国際公開番号】WO2010/094860
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511201255)サントル ド コオペラシオン エンテルナシオナル アン ルシュルシェ アグロノミク プール ル デヴロップメン(シーアイアールエーディー) (1)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE DE COOPERATION INTERNATIONALE EN RECHERCHE AGRONOMIQUE POUR LE DEVELOPPEMENT (CIRAD)
【住所又は居所原語表記】42, rue Scheffer, F−75016 Paris, FRANCE
【出願人】(511201266)
【氏名又は名称原語表記】GRAP’SUD
【住所又は居所原語表記】F−30360 Cruviers−Lascours, FRANCE
【出願人】(511201277)サントル エンテルナシオナル デチュード スーペリオール アン シアーンス アグロノミク(モンペリエ スープ アグロ) (1)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE INTERNATIONAL D’ETUDES SUPERIEURES EN SCIENCES AGRONOMIQUES (MONTPELLIER SUP AGRO)
【住所又は居所原語表記】2, place Viala, F−34060 Montpellier Cedex 1, FRANCE
【Fターム(参考)】