説明

オルガノシランの連続的製造

【課題】不変の転化率を可能とする改善された連続的なシランの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の対象は、一般式(I)R65CH−R4CH−SiR123のシランの連続的な製造にあたり、一般式(II)HSiR123のシランと、一般式(III)R65CH=CHR4のアルケン[上記式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、Rは、明細書中の意味を有する]とを、少なくとも1種の均一系の貴金属触媒の存在下で反応させる連続的な製造方法において、該反応を、反応蒸留塔中で実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応蒸留塔中でオルガノシランを連続的に製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
官能化されたオルガノシラン、特にハロゲン置換されたオルガノシランは、経済的に高い重要性がある。それというのも、該オルガノシランは、多くの重要な製品、例えばシリコーン、定着剤、疎水化剤及び建造物保護剤の製造のための出発生成物として用いられるからである。
【0003】
有機ケイ素化合物の製造は、例えばいわゆるヒドロシリル化反応によって行われる。その際、Si−H官能は、触媒の作用下に、例えばアルケンに付加される。その際に、均一系ヒドロシリル化と不均一系ヒドロシリル化とで区別される。均一系ヒドロシリル化の場合には、可溶性触媒が使用され、不均一系ヒドロシリル化に際しては、例えば元素の白金又は担体に結合された触媒が使用される。重要な問題は、副生成物の形成であり、該副生成物は、例えばハロゲンシランとアルケンをもたらすため、生成物の収率がより低くなる原因となる。
【0004】
特許出願EP0823434号A1は、副生成物の形成を抑えることが望ましい、3−ハロゲン−プロピル−オルガノシランの製造のための連続的な方法を記載している。該方法は、反応を出発材料の部分転化で行うことによって達成される。その際に、副生成物であるプロペンの分離はその反応器中で同時に行われるか又は少なくとも1つの分離工程を後接続して行われる。前記方法の欠点は、未反応の出発材料の返送と結びつく該方法のより高い費用である。
【0005】
特許出願DE3404703号A1は、より高い選択性を有する特殊な白金含有の不均一系触媒を用いて、同時にプロペンを分離しつつ3−クロロプロピルトリクロロシランを製造するための方法を記載している。前記方法の欠点は、該不均一系触媒の製造に非常に費用がかかり、そのため高価なことである。
【0006】
特許出願DE10053037号C1及びDE10232663号C1は、助触媒としてジエンを有する特殊なイリジウム触媒に基づく方法を記載している。ここでは、より低い触媒活性のため、相応して高い貴金属濃度が必要となることが欠点である。
【0007】
特許出願DE10153795号A1は、反応蒸留塔中で不均一系の白金触媒を使用した方法を記載している。触媒活性が弱まった場合のより低い転化率といった不均一系触媒における公知の問題が欠点である。更に、活性が低すぎると触媒の交換が必要であり、それはプラントの停止と生産中止に結びつく。
【特許文献1】EP0823434号A1
【特許文献2】DE3404703号A1
【特許文献3】DE10053037号C1
【特許文献4】DE10232663号C1
【特許文献5】DE10153795号A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の課題は、不変の転化率を可能とする改善された連続的な方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の対象は、一般式(I)
65CH−R4CH−SiR123 (I)
のシランの連続的な製造にあたり、一般式(II)
HSiR123 (II)
のシランと、一般式(III)
65CH=CHR4 (III)
のアルケン[上記式中、
1、R2、R3は、一価の、Si−C結合された、非置換もしくはハロゲン置換されたC1〜C18−炭化水素基、塩素基又はC1〜C18−アルコキシ基を意味し、
4、R5、R6は、水素原子、一価の、非置換又はF、Cl、OR、NR2、CNもしくはNCOで置換されたC1〜C18−炭化水素基、塩素基、フッ素基又はC1〜C18−アルコキシ基を意味し、その際、R4、R5、R6のそれぞれ2個の基は、これらが結合されている炭素原子と一緒になって、環式基を形成してよく、
Rは、水素原子、一価のC1〜C18−炭化水素基を意味する]とを、少なくとも1種の均一系の貴金属触媒の存在下で反応させる連続的な製造方法において、該反応を、反応蒸留塔中で実施することを特徴とする方法である。
【0010】
前記の連続的な方法は、一般式(I)のシランを高い収率と傑出した純度で提供する。
【0011】
例えばReactive Distillation,Status and Future Directions,Kai Sundmacher and Achim Kienle,Wiley−VHC,2002,ISBN 3527305793(第187頁),7.5章に記載されるような従来技術と比較して、本発明による方法は、不均一系触媒では触媒滞留時間と圧力降下と良好な蒸気−液体定数とに対する矛盾した要求をみたすことが殆ど不可能であるが、それに対して実質的な利点を示す。本発明による方法では、均一系触媒を使用することによって、触媒の量も添加位置もいずれも変更することができる。それにより該方法は、実質的により簡単に調節かつ制御ができ、そして実質的に実施がより安全である。更に収率は、実質的に、一般式(III)のアルケン返送することによって高めることができる。
【0012】
該方法の実施のための技術的実施形態としては、連続的な反応操作のためのあらゆる慣用の蒸留塔が適している。
【0013】
1〜C18−炭化水素基であるR1、R2、R3は、有利にはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を意味する。有利には、R1、R2、R3は、多くとも10個の、特に多くとも6個の炭素原子を有する。有利には、R1、R2、R3は、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C6−アルキル基又はC1〜C6−アルコキシ基である。好ましいハロゲン置換基は、フッ素及び塩素である。特に、R1、R2、R3としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素基、フェニル基及びビニル基が好ましい。
【0014】
4、R5、R6は、水素原子、一価の、非置換又はF、Cl、OR、NR2、CNもしくはNCOで置換されたC1〜C18−炭化水素基、塩素基、フッ素基又はC1〜C18−アルコキシ基を意味し、その際、R4、R5、R6のそれぞれ2個の基は、これらが結合される炭素原子と一緒になって、環式基を形成してよい。有利には、R5、R6は、多くとも10個の、特に多くとも6個の炭素原子を有する。有利には、R5、R6は、多くとも10個の、特に多くとも6個の炭素原子を有する。有利には、R5、R6は、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C6−アルキル基又はC1〜C6−アルコキシ基である。特に、R5、R6としては、水素基、メチル基、エチル基、クロロメチル基、塩素基及びフェニル基が好ましい。
【0015】
有利には、炭化水素基R4は、多くとも6個の、特に多くとも2個の炭素原子を有する。特に、R4としては、水素基、メチル基、エチル基が好ましい。
【0016】
有利には、炭化水素基Rは、多くとも6個の、特に多くとも2個の炭素原子を有する。
【0017】
一般式(III)のアルケンとしては、有利には塩化アリルが使用される。
【0018】
一般式(III)のアルケンは、シラン成分(II)に対して過剰にも過少にも使用することができる。有利には、アルケン(III)とシラン(II)とのモル比は、0.1〜20である。特に、0.8〜1.5が好ましい。
【0019】
本発明による方法では、均一系触媒として、従来にもSiに結合した水素の脂肪族不飽和化合物への付加のために使用されていたあらゆる触媒を使用することができる。係る触媒のための例は、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及びパラジウムを含む貴金属の群の化合物又は錯体、例えば白金ハロゲン化物、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコレート錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、白金−ケトン錯体、例えばH2PtCl6・6H2Oとシクロヘキサノンとの反応生成物、白金−ビニルシロキサン錯体、特に白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体であって検出可能な無機的に結合されたハロゲンを有するもの又は有さないもの、ビス(γ−ピコリン)白金二塩化物、トリメチレンジピリジン白金二塩化物、ジシクロペンタジエン白金二塩化物、ジメチルスルホキシドエチレン白金(II)二塩化物並びに四塩化白金とオレフィン及び第一級アミンもしくは第二級アミン又は第一級アミン及び第二級アミンとの反応生成物、例えば1−オクテン中に溶解された四塩化白金とs−ブチルアミンとからの反応生成物である。本発明による方法の更に好ましい一実施態様において、イリジウムとシクロオクタジエンとの錯体、例えばμ−ジクロロ−ビス(シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)が使用される。
【0020】
有利には、該触媒は、白金及びイリジウム、特に有利には白金の化合物又は錯体、有利には白金塩化物及び白金錯体、特に白金−オレフィン錯体、特に有利には白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。
【0021】
更なる一実施態様においては、助触媒が該反応を促進しうる。
【0022】
本発明による方法では、触媒は、元素の貴金属として計算されて、かつ材料中に存在する成分(II)と(III)との全質量に対して、1〜1000質量ppmの量で使用される。有利には、2〜150質量ppm、特に有利には5〜50質量ppmが使用される。
【0023】
本発明による方法では、活性触媒の量は、新たな触媒の連続的な添加と同時に、消費された触媒の排出とによって所望の水準に保持される。従って、該反応における活性損失とともに、触媒交換のためのプラント停止が回避される。
【0024】
本発明による方法の決定的な利点は、反応蒸留塔への触媒の連続的な配量である。本発明による方法では、触媒添加の追加の制御量によって反応操作と作業操作に対して拡大された影響を有する。触媒の種類、位置、そして量によって、該方法は、より良く制御可能となる。このことは、例えばより良好な塔の分離作用、ホットスポット(二次反応、熱的触媒分解)の回避をもたらし、種々異なる装填量の触媒活性の変動が避けられ、触媒添加を遮断することによって迅速な反応の停止が可能である(緊急停止)。更に、本発明による方法は、反応蒸留の簡素化された操業を可能にする。それというのも触媒添加は、必要な塔プロフィールに達した後に初めて行われるからである。また生成物交換も塔中で簡素化される。それというのも触媒交換のためにプラントのすすぎで十分であり、従って解体は必要がないからである。
【0025】
該方法は、非プロトン性溶剤の存在又は不在において実施することができる。非プロトン性溶剤を使用する場合に、0.1MPaにおいて120℃までの沸点もしくは沸騰範囲を有する溶剤又は溶剤混合物が好ましい。係る溶剤のための例は、エーテル、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル;塩素化炭化水素、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン;炭化水素、例えばペンタン、n−ヘキサン、ヘキサン異性体混合物、ヘプタン、オクタン、ベンジン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン;ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK);エステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸プロピル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル;二硫化炭素及びニトロベンゼン又は前記溶剤の混合物である。
【0026】
非プロトン性溶剤としては、該方法において一般式(I)の目的生成物を使用してもよい。この変法が好ましい。
【0027】
有利には、貴金属触媒を溶剤中に、特に有利にはイオン性液体中に溶解させる。これにより、触媒の添加が部分的に又はそれどころか完全に供給流中で可能となる。イオン性液体を使用する場合に、特に好ましい溶剤は、一般式(IV)のイオン性液体である。
【0028】
本発明による方法の好ましい一実施態様においては、イオン性液体としては、一般式(IV)
[A]+[Y]- (IV)
[式中、
[Y]-は、[テトラキス−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)−フェニル)ボレート]([BARF])、テトラフルオロボレート([BF4-)、ヘキサフルオロホスフェート([PF6-)、トリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート([P(C2533-)、ヘキサフルオロアンチモネート([SbF6-)、ヘキサフルオロアルセネート([AsF6-)、フルオロスルホネート([R′−COO]-、[R′−SO3-、[R′−O−SO3-、[R′2−PO4-又は[(R′−SO22N]-、その際、R′は、直鎖状もしくは分枝鎖状の、1〜12個の炭素原子を有する脂肪族もしくは脂環式のアルキル基、C5〜C18−アリール基又はC5〜C18−アリール−C1〜C6−アルキル基であり、それらの水素原子は完全にもしくは部分的にフッ素原子によって置換されていてよい)を含む群から選択されるアニオンであり、かつ
[A]+は、一般式(V)
[NR78910+ (V)
のアンモニウムカチオン、一般式(VI)
[PR78910+ (VI)
のホスホニウムカチオン、一般式(VII)
【化1】

のイミダゾリウムカチオン、一般式(VIII)
【化2】

のピリジニウムカチオン、一般式(IX)
【化3】

のピラゾリウムカチオン、一般式(X)
【化4】

のトリアゾリウムカチオン、一般式(XI)
【化5】

のピコリニウムカチオン及び一般式(XII)
【化6】

のピロリジニウムカチオンを含む群から選択されるカチオンであり、その際、基R7〜R12は、それぞれ互いに無関係に、1〜20個の炭素原子を有する有機基を意味する]のイオン性液体が使用される。
【0029】
基R7〜R12は、有利には脂肪族基、脂環式基、芳香族基、芳香脂肪族基又はオリゴエーテル基である。
【0030】
脂肪族基は、その際、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基であり、その際、該鎖中にヘテロ原子、例えば酸素原子、窒素原子又は硫黄原子が含まれていてよい。
【0031】
基R7〜R12は、飽和であってよく、又は1もしくは複数の二重結合又は三重結合を有してよく、該結合は鎖中に共有的に又は孤立的に存在してよい。
【0032】
脂肪族基のための例は、1〜14個の炭素原子を有する炭化水素基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル又はn−デシルである。
【0033】
脂環式基のための例は、3〜20個の炭素原子を有する環式の炭化水素基であり、その際、該基は、例えば酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のような環ヘテロ原子を有してよい。脂環式基は、更に、飽和であってよく、又は1もしくは複数の二重結合又は三重結合を有してよく、該結合は共有的に又は孤立的に環中に存在してよい。飽和の脂環式基、特に飽和の脂肪族炭化水素基であって5〜8個の環炭素原子を有する、有利には5〜6個の環炭素原子を有する基が好ましい。
【0034】
芳香族基、炭素環式の芳香族基又は複素環式の芳香族基は、6〜22個の炭素原子を有してよい。好適な芳香族基のための例は、フェニル、ナフチル又はアントラシルである。
【0035】
オリゴエーテル基は、一般式(XIII)
−[(CH2x−O]y−R′′′ (XIII)
[式中、
x及びyは、互いに無関係に、1〜250の数であり、かつ
R′′′は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基又は芳香脂肪族基である]の基である。
【0036】
反応蒸留塔における本発明による方法を、図1による図面に表す。
【0037】
その際、図1からの数字は、以下の意味を有する:
1 反応蒸留塔、 2 分離帯域、 3 反応帯域、 4 分離帯域、 5 蒸気、 6 生成物、 7 触媒分離の変法、 8 触媒分離の変法、 9 アルケン返送、 10 冷却水、 11 低沸点物、 12 触媒溶液、 13 式(III)によるアルケン、 14 式(II)によるシラン、 15 触媒後処理
【0038】
出発材料として、式(III)によるアルケン13と式(II)によるシラン14とを使用する。反応蒸留の操業のために、第一段階においてアルケン13と生成物6を装入し、そして完全な還流により、かつ缶出液の抜き取りを行わずに塔プロフィールを編成する。第二段階において、触媒溶液12とアルケン13とシラン14の計量供給を行った。次いで、シラン量14をゆっくりと増加させる。目的生成物6と副生成物が生成し、それらは共通して高沸点物として塔底から抜き取られる。その際、プロセス制御は、例えば触媒活性が低すぎる場合には、触媒溶液12の計量供給を増加させることによって行われる。障害時には、触媒配量を直ちに停止させることができ、従って反応の中断も可能である。過剰のアルケン13によって、目的生成物に対する選択性の向上がもたらされた。触媒の分離のために、2つの変法が存在する。変法7の場合に、その分離は、例えばイオン性液体が使用される場合に触媒溶液が第二の相を形成するときに、塔底で直接的に行われる。変法8の場合に、その分離は、後接続された装置中で、例えば薄膜蒸発器又は相分離器中で行われる。分離された触媒溶液を、触媒活性が十分な場合に再び反応塔中に供給するか、又は別の後処理15に供給することができる。触媒の再使用は、本発明による方法の更なる利点である。
【0039】
特に好ましい方法では、貴金属触媒又はその溶液は、反応蒸留塔に後接続された装置中で又は該塔中で、例えば相分離器を介して、シラン混合物から分離され、かつ反応蒸留塔中に返送されるか、あるいは再度の後処理のために及び新たな触媒の製造のために分離される。
【0040】
有利には、該方法は、0〜200℃の反応温度で、特に有利には20〜120℃で実施される。反応圧力は、有利には0.5〜150バール、特に有利には1〜20バールである。
【実施例】
【0041】
以下で、略語は以下の意味を有する:
AC 塩化アリル、 BTA ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、 GF12 (3−クロロプロピル)メチルジクロロシラン、 GF15 (3−クロロプロピル)トリクロロシラン、 HM メチルジクロロシラン、 KAT−LSG 触媒溶液、 M1 メチルトリクロロシラン、 Pro プロピルトリクロロシラン、 ProMe プロピルメチルジクロロシラン、 EMIM 1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、 Sitri トリクロロシラン、 Temp 温度、 Tetra テトラクロロシラン
【0042】
実施例1
図1は、第1表からの塔プロフィールに相応して稼働される反応蒸留のスキームを示している。その際、触媒溶液12として、1−ドデセン中のPtCl4(Pt含有率0.1質量%)を使用した。塔中のPt濃度は、5質量ppmであった。出発材料として、トリクロロシラン14及び塩化アリル13を使用した。反応蒸留の操業のために、第一段階において塩化アリル13と(3−クロロプロピル)トリクロロシランを装入し、そして完全な還流により、かつ缶出液の抜き取りを行わずに塔プロフィールを編成した。第二段階において、触媒溶液12と塩化アリル13とトリクロロシラン14の計量供給を行った。次いで、トリクロロシラン量14をゆっくりと増加させた。目的生成物6である(3−クロロプロピル)トリクロロシランと副生成物であるプロピルトリクロロシラン及びテトラクロロシランが生成し、それらは一緒に高沸点物として段14の塔底から抜き取られた。その際、プロセス制御は、例えば触媒活性が低すぎる場合には、触媒溶液12の更なる計量供給によって行った。障害時には、触媒配量を直ちに停止させることができ、従って反応の中断も可能である。過剰の塩化アリル13によって、目的生成物6である(3−クロロプロピル)トリクロロシランに対する選択性の向上がもたらされた。触媒分離は、変法8によって行った。触媒返送を行わずに、触媒を後処理15に供給した。
【0043】
実施例2
実施は、実施例1と同様に行う。相違点は、イオン性液体[1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム][ビストリフルオロメタンスルホニルイミド]中にPt触媒を固定化することにある。
【0044】
触媒溶液としてのイオン性液体中に、全フィードに対して500質量ppmのPtをPtCl4として溶解させた。その際、イオン性液体は、その塔底において又は後接続された装置において第二の液相を形成する。それにより、触媒を反応蒸留中に返送することが可能であり、このことは本方法の実質的な利点である。図1は、前記の反応蒸留のスキームを示しており、その際、触媒返送は、変法7を介しても変法8を介しても効果的であった。
【0045】
実施例3
図1は、第2表からの塔プロフィールに相応して稼働される反応蒸留のスキームを示している。その際、触媒溶液12として、クロロベンゼン中の[(COD)IrCl]2の溶液(Ir濃度1.1質量%)を使用した。塔中のIr濃度は、50質量ppmのIrであった。出発材料14及び13として、メチルジクロロシラン及び塩化アリルを使用した。反応蒸留の操業のために、第一段階において塩化アリルと(3−クロロプロピル)メチルジクロロシランを装入し、そして完全な還流により、かつ缶出液の抜き取りを行わずに塔プロフィールを編成した。第二段階において、触媒溶液12と塩化アリル13とメチルジクロロシラン14の計量供給を行った。次いで、メチルジクロロシラン量14をゆっくりと増加させた。目的生成物6である(3−クロロプロピル)メチルジクロロシランと副生成物であるプロピルメチルジクロロシラン及びメチルトリクロロシランが生成し、それらは一緒に高沸点物として段14の塔底から抜き取られた。その際、プロセス制御は、例えば触媒活性が低すぎる場合には、触媒溶液12の更なる計量供給によって行った。障害時には、触媒配量を直ちに停止させることができ、従って反応の中断も可能である。過剰の塩化アリル13によって、目的生成物6である(3−クロロプロピル)メチルジクロロシランに対する選択性の向上がもたらされた。触媒分離は、変法8により引き続き後処理15によって行った。触媒返送は実施しなかった。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、反応蒸留塔における本発明による方法を示している
【符号の説明】
【0049】
1 反応蒸留塔、 2 分離帯域、 3 反応帯域、 4 分離帯域、 5 蒸気、 6 生成物、 7 触媒分離の変法、 8 触媒分離の変法、 9 アルケン返送、 10 冷却水、 11 低沸点物、 12 触媒溶液、 13 式(III)によるアルケン、 14 式(II)によるシラン、 15 触媒後処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
65CH−R4CH−SiR123 (I)
のシランの連続的な製造にあたり、一般式(II)
HSiR123 (II)
のシランと、一般式(III)
65CH=CHR4 (III)
のアルケン[上記式中、
1、R2、R3は、一価の、Si−C結合された、非置換もしくはハロゲン置換されたC1〜C18−炭化水素基、塩素基又はC1〜C18−アルコキシ基を意味し、
4、R5、R6は、水素原子、一価の、非置換又はF、Cl、OR、NR2、CNもしくはNCOで置換されたC1〜C18−炭化水素基、塩素基、フッ素基又はC1〜C18−アルコキシ基を意味し、その際、R4、R5、R6のそれぞれ2個の基は、これらが結合されている炭素原子と一緒になって、環式基を形成してよく、
Rは、水素原子、一価のC1〜C18−炭化水素基を意味する]とを、少なくとも1種の均一系の貴金属触媒の存在下で反応させる連続的な製造方法において、該反応を、反応蒸留塔中で、かつ均一系の貴金属触媒の連続的な配量をしつつ実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載のシランの製造方法において、貴金属触媒を反応蒸留塔に返送することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のシランの製造方法において、貴金属触媒がイオン性液体中に溶解されて存在することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法において、貴金属触媒が白金及びイリジウムを含む群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法において、一般式(III)のアルケンとして塩化アリルを使用することを特徴とする方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−50356(P2008−50356A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214860(P2007−214860)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】