説明

オルガノシルセスキオキサンの製造方法

オルガノシルセスキオキサンを含む組成物の生成方法は、(1)式RSiY(式中、Rは有機基であり、R−Si結合は非加水分解性結合であり、Y基は各々、互いと同一であるか又は異なり、且つ各Si−Y結合が加水分解性であるように化学反応性基から選択されて、Si−OH結合を形成する)を有する第一の加水分解性無機モノマー前駆体の少なくとも50モル%を含む加水分解性無機モノマー前駆体を部分加水分解して無機モノマーを生成し、且つ無機モノマーの部分縮合を可能にして、無機オリゴマーを含む液体組成物を生成する、部分加水分解する工程、(2)無機オリゴマーの完全縮合前に、工程(1)で用いられた水並びに工程(1)における無機モノマーの縮合により遊離された任意の水と組み合わせて、存在する加水分解性無機モノマー前駆体すべての完全加水分解を達成するのに必要とされる化学量論量の水を上回る量の水で液体組成物をクエンチングする工程、及び(3)組成物を乾燥する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノシルセスキオキサンの製造方法、優れた光学的特性を同時に保持しながら、機械的損傷及び化学的損傷に対する耐性を支持体に付与するために支持体上に保護コーティングを提供するための、そしてバルク材料としての、オルガノシルセスキオキサンを含む組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノシルセスキオキサンは、一般式(RSiO1.5(式中、nは4以上の偶数である)を有するケイ素−酸素ベースのフレームワークである。非常に特異的な構造を有するオルガノシルセスキオキサン(例えば式(RSiO1.5を有する化合物は八面体籠構造を有する)は、当該技術分野では、オルガノオリゴシルセキオキサン又は多面体オリゴマーシルセスキルオキサン(又はPOSS(登録商標))と呼ばれる。
【0003】
オルガノシルセスキオキサンは、例えば良好な耐磨耗性を有するコーティングとして、良好な機械的特性を提供する可能性を有し、例えば加水分解安定性又はUV分解に対する安定性により具体化されるような、良好な化学的耐性を有するように処方され得る。これらの及びその他の特性は、ガラスの重量、粉砕傾向又は経費がその使用を禁じる多くの状況において、ガラスの代替品として日常的に用いられる広範な種類の支持体、特にポリマーベースの材料、例えばアクリル系ポリマー及びポリカーボネートのための保護コーティングとしてオルガノシルセスキオキサンを有用にさせる。
【0004】
オルガノシルセスキオキサンの製造及び修飾のための多数の方法が文献に記載されている。その例を以下に挙げる:
(1)部分縮合構造物又は完全縮合構造物の製造、
(2)部分縮合構造物又は完全縮合構造物の官能基化、並びに
(3)2つ以上の有機官能基を含有する構造物の製造。
【0005】
このような方法の例は、Brown et al, J. Am. Chem. Soc. (1965) 87: 4313-4317及びFeher et al, J. Am. Chem. Soc. (1989) 111: 1741-1748に開示されている。概して、これらの方法は、溶媒中の非常に低いモノマー濃度を使用すること、並びにそれに大量の水を添加して、典型的には何ヶ月にも亘って、特異的な且つ規定の籠構造物の非常にゆっくりとした製造を可能にする。その結果、製造される材料は、それらの製造の遅さに関連したかなりの費用のために、例えば保護コーティングの領域において、限定された用途を有する。
【0006】
オルガノシルセスキオキサンの基礎構造中への官能性有機リガンドの組み入れは、多数の経路により達成されている。この意味において、「官能基」という用語は、最終材料に特定の機械的特性及び/又は化学的特性を付与するように作用する有機基を記述するために用いられる。例えば有機リガンドの組み入れは、以下により達成されてきた:
(1)既存の完全縮合構造における官能基の交換、
(2)完全縮合構造中への官能基の切断及び挿入、
(3)部分縮合構造中への官能基の付加、並びに
(4)当該構造の製作中の官能基の組み入れ。
【0007】
これらの方法の例は、米国特許第5047492号及び米国特許第5484867号に記載されている。
【0008】
上記経路の最後の(4)は、めったに実施されないが、しかし存在する場合、それは非官能性有機基を含有するシラン前駆体及び特に重合する能力を有する官能性有機基を含有するシラン前駆体の同時加水分解及び縮合を包含する。しかしながらこれらの官能化オルガノシルセスキオキサンの調製は、依然として遅い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、オルガノシルセスキオキサン及びそれを含む組成物の調製方法であって、従来技術に記載されている非常に長い反応時間に付されず、したがってより高い費用効率に基づいてこれらの材料を産業に利用可能にする方法を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様によれば、オルガノシルセスキオキサンを含む組成物の生成方法は、以下の:
(1)式RSiY(式中、Rは有機基であり、R−Si結合は非加水分解性結合であり、Y基は各々、他のY基の各々と同一であるか又は異なり、且つ各Si−Y結合が加水分解性で、Si−OH結合を形成するような化学反応性基から選択される)を有する第一の加水分解性無機モノマー前駆体の少なくとも50モル%を含む加水分解性無機モノマー前駆体を部分加水分解して無機モノマーを生成し、且つ該無機モノマーの部分縮合を可能にして、無機オリゴマーを含む液体組成物を生成する工程、
(2)前記無機モノマーの完全縮合前に、工程(1)で用いられた水並びに工程(1)における前記無機モノマーの縮合により遊離された任意の水と組み合わせて、存在する前記加水分解性無機モノマー前駆体のすべての完全加水分解を達成するのに必要とされる化学量論量の水を上回る量の水で前記液体組成物をクエンチングする(quenching)工程、及び
(3)前記組成物を乾燥する工程
を包含する。
【0011】
本発明の方法は、広範な種類のオルガノシルセスキオキサンベースの組成物の制御された、迅速な製造を可能にする。該組成物は、1つ又は複数の有機官能基を有し、及び/又は完全又は不完全な縮合構造を有するオルガノシルセスキオキサンを含み得る。さらに組成物は、オルガノシルセスキオキサンのみを含んでいても、そうでなくてもよい。
【0012】
本発明の第二の態様によれば、オルガノシルセスキオキサンを含む組成物は、上記の方法により得られ得る。
【0013】
本発明の他の態様は、種々の支持体への上記の組成物の適用、被覆支持体自体、上記組成物から製造される物品、並びに結合剤としての上記の組成物の使用を包含する。
【0014】
本発明の組成物は、広範な種類の支持体、特にプラスチック支持体に耐磨耗性、加水分解安定性及びUV分解に対する安定性を付与するコーティングを提供し得、且つ組成物中に組み入れられる官能基の性質並びにそれらの調製に利用される条件によって、他の特性を有するように微調整され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
概して、本発明の方法は、2工程加水分解/縮合反応、並びにその結果生じた組成物のその後の乾燥及び必要に応じた硬化を包含する。第一の工程では、その少なくとも50モル%が式RSiYを有する加水分解性無機モノマー前駆体(「第一の」加水分解性モノマー前駆体と呼ばれる)は、部分加水分解され、且ついくつかの縮合(完全縮合でない)を受け、最終オルガノシルセスキオキサン分子のためのビルディングブロックを形成する無機オリゴマーを生成する。
【0016】
当該方法の第二の工程では、無機オリゴマーは、無機オリゴマーの迅速な縮合を引き起こす作用を有する相対的に大量の水の添加、又はそれへの添加により、クエンチングされる。縮合のために与えられる時間及びそのために用いられる条件によって、縮合の程度は、無機オリゴマーが本質的に完全な縮合に至るまで、多少変わり得る。
【0017】
製造された組成物を乾燥中に、そして必要に応じた硬化中に形成される最終構造の明確な性質は、推測の域を出ない事柄であるが、しかし有利な機械的特性及び化学的特性が達成されるならば、重要ではない。
【0018】
本明細書では、「加水分解性無機モノマー前駆体」とは、類似の加水分解又は部分加水分解されたモノマーとの重縮合中に、無機オリゴマーを、且つ最終的には無機網目構造を形成する重合可能無機モノマーに加水分解により活性化される任意の無機分子を意味する。「無機(inorganic)」という用語は、前駆体分子中の無機元素、典型的には酸化物セラミック材料を生じるもの、例えばケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム又はその他の遷移金属の存在を意味するために用いられる。
【0019】
当該方法の第一の工程をさらに詳細に考察すると、第一の加水分解性無機モノマー前駆体RSiYは、種々の材料から選択され得る。しかしながら、R−Si結合は、そうでなければ有機基Rは最終構造から失われ得るので、加水分解性であるべきでない、ということは決定的に重要である。基R自体は化学的に安定であり、特に水又は湿気の存在下で加水分解に対して安定である、というのが好ましい。基Rの好適な例としては、水素、並びに必要に応じて置換された(シクロ)アルキル、アリール、アルケニル、アミド、エポキシ、(メタ)アクリリック((meth)acrylic)、スチレニック(styrenic)、ニトリル、無水物、エステル、ホスフィノ、ハロゲン化物、アミノ、メルカプト及びシアネート基及びそれらの混合が挙げられる。好ましいR基は(シクロ)アルキル、アリール及びアルケニル基から選択され、エポキシ、ビニル、(メタ)アクリリック((meth)acrylic)及びシアネート基から選択される基で必要に応じて置換される。
【0020】
最終組成物が事実上液体であり、コーティング組成物としてのその適用を可能にするように、R基のサイズが選択される、というのがさらに好ましい。
【0021】
第一の加水分解性無機モノマー前駆体中のY基は、互いに同一であるか又は異なり得るが、しかし典型的にはY基は同一物である。Si−Y結合は、容易に加水分解を受けて、シラノール基、即ちSi−OHを形成する高反応性結合である。Y基の適切な例は、アルコキシ基、アセトキシ基、アミン基及びニトレート基並びにハロゲン原子である。一旦形成されると、シラノール基は、以下の反応列に従って別のシラノール基との水遊離反応を介して縮合し得る:
RY3−nSi(OH)+(HO)SiY3−nR →
RY3−n(OH)n−1Si−O−Si(OH)n−13−n
代替的には、以下でさらに詳細に考察されるように、異なる加水分解性無機モノマー前駆体が存在する場合、縮合はへテロ官能的に、例えば以下の2つの反応列で示されるように、進行し得る:
−Si−OH + ClSi− → −Si−O−Si− + HCl
−Si−OH + ROSi− → −Si−O−Si− + ROH
本発明の方法は、式RSiYを有する加水分解性無機モノマー前駆体の単一型の使用を包含し得る。代替的には、異なる加水分解性無機モノマー前駆体、例えば有機基Rの性質及び/又は数、及び/又は加水分解性基Yの性質及び/又は数が異なるものが用いられ得る。
【0022】
例として、異なるR基を有する第一の加水分解性無機モノマー前駆体、例えばRSiY、RSiY等(ここで、R基及びR基は最終生成物において特定の機械的特性及び/又は化学的特性を提供するように選択される)が用いられ得る。この点において、本発明は、2つの異なる型の第一の加水分解性モノマー前駆体の使用に限定されず、2つより多くの異なる型のモノマー前駆体の使用を包含し得るが、但し、最終生成物中への異なるR基の所望レベルの組み入れを達成するために、当該方法全体に亘る適切な制御が維持される。
【0023】
上記のように、且つ異なるR基及び/又はY基を有する第一の加水分解性無機モノマー前駆体の使用の他に、又はそれと代替的に、当該方法は、加水分解性基Yの数が異なる加水分解性無機モノマー前駆体の使用を包含し得る。特に、一般式RSiY4−n(式中、nは0、2又は3であり、Rは、例えば上記のRに関して示された基から選択される有機基であり、R−Si結合は非加水分解性結合であり、且つR基は互いに同一であるか又は異なり、且つY基は各々、他のY基の各々と同一であるか又は異なり、各Si−Y結合が加水分解性でSi−OH基を形成するように、化学反応性基から選択される)を有する加水分解性無機モノマー前駆体、並びにこのようなモノマー前駆体の混合物が、第一の加水分解性モノマー前駆体RSiYの他に用いられ得る。以下において、これらの付加的モノマー前駆体は「第二の加水分解性無機モノマー前駆体」と呼ばれる。
【0024】
例として、4つの加水分解性結合を有する、即ち式SiY(n=0)を有する加水分解性無機モノマー前駆体が、第一の加水分解性無機モノマー前駆体に加えて用いられ得る。
【0025】
さらに、又は代替的には、当該方法は、第一の加水分解性無機モノマー前駆体より少ない加水分解性結合を有する、例えばRSiY(n=2)及びRSiY(n=3)から選択される式を有する加水分解性無機モノマー前駆体、及びそれらの混合物の使用を包含し得る。
【0026】
上記の第二の加水分解性無機モノマー前駆体のいずれかの状況では、基R及び基Yの性質は、第一の有機モノマー前駆体に関して上記されたものと同様である。しかしながら分かり易くするために、第二の加水分解性無機モノマー前駆体中の基R及び/又は基Yは、第一の加水分解性無機モノマー前駆体中の基R及び/又は基Yと同一であるか又は異なり得る。
【0027】
式RSiY又は式RSiYを有する第一の加水分解性無機モノマー前駆物質及び第二の加水分解性無機モノマー前駆物質の好適な例としては、
(i)トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジイソプロポキシシラン、モノメトキシシラン、モノエトキシシラン、モノブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジイソプロピルイソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジブチルジブトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリ−n−プロピル−n−プロポキシシラン、トリブチルブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、及びトリフェニルメトキシシラン等の(アルキル)アルコキシシラン、
(ii)3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルエチルジエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルジメチルイソプロポキシシラン、3−イソシアナートプロピルジエチルエトキシシラン、2−イソシアナートエチルジエチルブトキシシラン、ジ(3−イソシアナートプロピル)ジエトキシシラン、ジ(3−イソシアナートプロピル)メチルエトキシシラン、及びエトキシトリイソシアナートシラン等のイソシアナート基を有する(アルキル)アルコキシシラン、
(iii)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、及び3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有する(アルキル)アルコキシシラン、
(iv)カルボキシメチルトリエトキシシラン及びカルボキシメチルエチルジエトキシシラン等のカルボキシル基を有する(アルキル)アルコキシシラン、
(v)3−(トリエトキシシリル)−2−メトプロピルコハク酸無水物等の酸無水物基を有するアルコキシシラン、
(vi)2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリエトキシシラン等の酸ハロゲン化物基を有するアルコキシシラン、
(vii)N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシラン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有する(アルキル)アルコキシシラン、
(viii)3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のチオール基を有する(アルキル)アルコキシシラン、
(ix)ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルメチルジエトキシラン等のビニル基を有する(アルキル)アルコキシシラン、
(x)3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメチルシラン、及び3−アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリレート基又はメタクリレート基を有する(アルキル)アルコキシシラン、
(xi)トリエトキシフルオロシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモアルキルアルコキシシラン、及び2−クロロエチルメチルジメトキシシラン等のハロゲン原子を有する(アルキル)アルコキシシラン、
(xii)(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン及び1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリエトキシシラン等のハロゲン化アルキル配位子を有する(アルキル)アルコキシシラン、並びに
(xiii)イソプロピルトリイソプロポキシシラン及びトリイソプロピルイソプロポキシシラン等の官能基としてアルコキシ基を用いる(アルキル)アルコキシシラン、
が挙げられる。
【0028】
上記の化合物において、アルキル基はシクロアルキル基、アリール基又はアルケニル基で置換され得、必要に応じて好ましくは(メタ)アクリレート基又はエポキシ基で置換され得る。加水分解安定性が最終生成物において望まれる場合、加水分解性R基を有する加水分解性モノマー前駆体は回避されるべきである。
【0029】
式SiYを有する第二の加水分解性無機モノマー前駆体の適切な例としては、ケイ素テトラ−アルコキシド、例えばテトラメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン及びテトラブトキシシランが挙げられる。
【0030】
当該方法は、さらにまた、或いは代替的には、ケイ素以外の無機原子を含有する、例えば式MY(式中、Mは典型的には金属であり、nは金属の原子価であり、且つY基は各々、互いに同一であるか又は異なり、各M−Y結合がM−OH結合に加水分解可能であるように、化学反応性基から選択される)を有する加水分解性無機モノマー前駆体の使用を包含する。
【0031】
そのような物質の好適な例としては、
i) チタニウムテトラ−n−プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、及びチタニウムテトラブトキシド等のチタニウムテトラアルコキシド、
ii) アルミニウムトリsec−ブトキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド等のアルミニウムテトラアルコキシド、
(iii) ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、及びジルコニウムテトラブトキシド等のジルコニウムテトラアルコキシド、並びに
iv) 銅ジメトキシド、バリウムジエトキシド、ホウ素トリメトキシド、ガリウムトリエトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、鉛テトラブトキシド、タンタルペンタ−n−プロポキシド、及びタングステンヘキサエトキシド等の金属アルコキシド
、が挙げられる。
【0032】
当該方法は、さらにまた、或いは代替的には、一般式(RSi)(式中、x≧1であり、R−Si結合は非加水分解性結合であり、Rは上記されており(R基は各々、他のR基の各々と同一であるか又は異なり得る)、且つYは化学反応性基で、各Si−Y結合はSi−OHに加水分解可能である)の加水分解性無機モノマー前駆体の使用を包含する。基Y(互いに同一であるか又は異なり得る)の適切な例としては、塩素、アセトキシ、アミン、オキシム(即ち、RC=NOSi)及びアルコキシが挙げられる。整数xは、1から大きい数まで、例えば100まで又は100以上へ変化して、多ケイ素ポリマーを生じ得る。
【0033】
存在する加水分解性基の数が異なる加水分解性無機モノマー前駆体の使用を当該方法が包含する場合、コーティング用途にとって最も望ましい特性を得るために、存在する総加水分解性無機モノマー前駆体の少なくとも50モル%、好ましくは60モル%より多く、さらに好ましくは少なくとも70モル%、最も好ましくは少なくとも80モル%又はそれ以上、例えば少なくとも90モル%が第一の加水分解性無機モノマー前駆体であるべきである、ということは重要である。
【0034】
R基(単数又は複数)の親水性/疎水性特質は、水に曝露される場合、最終生成物の挙動を確定する。この挙動は、溶媒の適切な選択により修正され得る。例えば脂肪族炭化水素の水の反発作用への傾向は、非プロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフランと比較して、プロトン性溶媒、例えばアルコールの使用により変えられ得る。
【0035】
当該方法が異なる加水分解性無機モノマー前駆体の使用を包含する場合、そうでなければ均質でないか又は望ましくない最終生成物中のモノマーの、特にそれと結合する有機基の分布を生じる、存在する水分子との競合を回避するため、異なる加水分解性無機モノマー前駆体の加水分解が別個に実施される、というのが好ましい。別個の部分加水分解後、形成される異なる無機オリゴマーは一緒に混合された後、続くクエンチング工程に付される。
【0036】
加水分解性無機モノマー前駆体を加水分解するために、水は、加水分解性無機モノマー前駆体に添加されるか、或いはin situで合成される。典型的には、加水分解は、水、及び必要に応じて有機溶媒との均質混合物の形成により達成される。代替的には、前駆体は、制御的やり方で、結果的に生じる溶液に添加される有機溶媒及び水中に溶解されて、部分加水分解された分子の集塊の非制御発生を回避し得る。適切な有機溶媒としては、例えば100℃より低い沸点を有する低沸点有機液体、例えばアルコールが挙げられる。
【0037】
好ましくは、水及び加水分解性モノマー前駆体の混合物は、混合されて、できるだけ多くの前駆体分子が水に曝露され、それによりできるだけ均質な加水分解及び縮合を達成することを保証する。
【0038】
それほど好ましくはないが、水が反応混合物中でin situに合成される場合、これは、例えば加水分解性無機モノマー前駆体にアルコールを、次に弱酸、例えば酢酸を、これも制御的方法で添加することにより、達成され得る。この場合、上記のように、異なる加水分解性無機モノマー前駆体の別個の部分加水分解が実施され、その後、生成された異なる無機オリゴマーが一緒に混合されるのが好ましい。
【0039】
触媒は、加水分解性無機モノマー前駆体の加水分解を開始するために用いられ得るが、但し、触媒は無機モノマー前駆体と反応せず、或いは加水分解中に生成される化学種の性質に影響を及ぼさない。適切な触媒としては、無機酸、例えば塩酸、硫酸及び硝酸が挙げられる。このためには、少量の酸のみが必要とされる。とはいえ、無機モノマー前駆体の性質によって、加水分解は自発的に進行し得る。
【0040】
加水分解のために用いられる水の量は、一般的に、無機モノマー前駆体分子の各々に存在する加水分解性結合のうちの少なくとも1つを加水分解するのに十分であるべきである。しかしながら好ましくは、水の量、並びに加水分解反応の条件は、当該方法の第二の工程において達成される構造の種類を指図するので、第一の加水分解性無機モノマー前駆体中に存在する加水分解性結合のうちの1つのみ又は多くて2つの加水分解を達成するように選択される。
【0041】
上記のように、当該方法の第一の工程の一部は、無機オリゴマーを生成するために加水分解中に形成されるモノマーの少なくとも部分縮合(完全縮合ではない)を包含する。生じる縮合の程度は、例えばNMRにより決定される。好ましくは縮合の程度は、第一の加水分解性モノマー前駆体から生成されるオリゴマーの大多数は、次式(式中、R基の各々又はいくつかは同一であるか又は異なり得る)のうちの1つを有する:
【0042】
【化1】

【0043】
【化2】

【0044】
さらに好ましくは、オリゴマーの大多数は、式(I)を有し、最も好ましくはオリゴマーのほとんどは(例えば少なくとも80モル%又は少なくとも90モル%でさえもが)式(I)を有する。
【0045】
当該方法の第一の加水分解工程は、継続期間が変わり得る、例えばそれは、最終生成物に必要とされる特性によって、1時間未満又は何日もかかり得る。継続期間が長いほど、その結果生じる無機網目構造の結合性は大きく、したがって分子量は大きくなる、と考えられる。
【0046】
何らかの縮合が起こるのに、又は所望程度の縮合が起こるのに十分な時間が一旦経過すると、混合物は水中でクエンチングされて、存在する化学種を十分に加水分解し、且つ完全な加水分解及びさらなる縮合を容易にする条件を作り出す。作り出される構造の詳細な性質は、用いられる加水分解性無機モノマー前駆体の性質及び濃度、溶媒、初期加水分解条件、並びに共縮合条件(時間、温度、pH)によっている。実際、当該方法の第一の工程の加水分解及び縮合反応は、約数分、典型的には少なくとも10分から24時間以上までの範囲の期間、進行させられ得る。
【0047】
クエンチングは、当該方法の第一の工程で得られる液体組成物に水を添加することにより、或いは好ましくは単一工程で水に液体組成物を添加することにより、達成され得る。当該方法の第一の工程で用いられる任意の水並びにその工程における縮合の結果として遊離される任意の水と組み合わせて、クエンチング工程に用いられる水の容積は、すべての加水分解性無機モノマー前駆体の全体的な(即ち加水分解性結合の全ての)加水分解を達成するために必要とされる水の化学量論量より大きくあるべきである。好ましくは水の量は、この化学量論的量の少なくとも2倍、さらに好ましくは少なくとも5倍である。次にさらなる縮合が、撹拌しながら、最終生成物に必要とされる特性によって、且つこの生成物が部分的にのみ縮合されるべきか又は本質的に完全に縮合されるべきか否かによって、典型的には約数時間から数日までの間、進行させられる。
【0048】
その結果生じる生成物は次に、乾燥される。本明細書では、「乾燥すること」は、例えば高温に、典型的には40℃〜80℃の範囲で加熱することにより、任意の遊離水及び揮発性物質の除去を包含する。
【0049】
乾燥生成物は次に、例えばコーティング組成物として、又はバルク形態で用いる準備ができているか、或いは使用前にさらに改質され得る。例えば生成物は架橋され(又は硬化され)及び/又は改質されて、さらなる有機特性を包含し、それにより最終生成物の特性を改質し得るし、及び/又はそれは脱水されて、使用中のさらなる反応を低減するか又は防止し得る。溶媒は、保存寿命を改良するために組成物に添加され得る。
【0050】
生成物の架橋又は硬化は、従属する有機R基により、及び/又は残存シラノールにより達成されて、種々の三次元構造を形成し得る。
【0051】
有機基の架橋は、慣用的手段のいずれかにより、例えば分子内架橋よりむしろ分子間架橋を促進するために選択される適切な架橋試薬又は加工処理条件、或いはその両方の使用により達成され得る。例えばエポキシ含有R基は、促進剤又は硬化剤として作用する試薬、例えばアミンを用いるか、或いはルイス酸を用いて、架橋されるか又はさらに重合され得る。
【0052】
乾燥生成物は多数の残存シラノールを含有し得ないが、しかしこれらは、それにもかかわらず、硬化中又は硬化後の生成物の挙動に影響を及ぼし得る。これらの残存シラノールのいくつか又は全部の縮合は、生成物の使用中のさらなる縮合が生成物の特性に悪影響を及ぼす場合は、特に望ましい。残存シラノールは、トリエチルアミン又はスズ触媒、例えばスズ(II)エチルヘキサノエートのような適切な縮合触媒の使用により、或いは当該技術分野で既知の適切な反応条件の選択により、自己縮合を受けるようになされ得る。
【0053】
代替的には、残存シラノールの縮合は、さらなるシラノール含有種、又は生成物中にすでに存在する残存シラノールと縮合可能なその他の化学種の添加により達成され得る。適切な材料は、一般式RSiY’4−n(式中、nは0〜3であり、Rは上記のような有機基であり、各R−Si結合は非加水分解性結合であり、且つ各々のR基は他のR基の各々と同一であるか又は異なり、且つY’はシラノール縮合又は他の経路によりシロキサン生成を可能にする化学種であり、Y’基は各々、他のY’基の各々と同一であるか又は異なる)を有するものである。
【0054】
例えば上記の縮合に用いるためのシラノール含有種は、一般式RSiY’4−n(式中、各Si−Y’結合はSi−OHに加水分解可能であり、Y’は、例えば第一の加水分解性無機モノマー前駆体の状況における上記のYに関して示された基から選択される)を有する加水分解性無機モノマー前駆体の加水分解により調製され得る。このような加水分解は、RSi(OH)及びRSi(OH)のような化学種(これらに限定されない)を生じる。
【0055】
典型的には、これらのシラノール含有種は、縮合剤、例えばスズ(II)エチルヘキサノエートの存在下で乾燥生成物に添加されて、縮合を促進する。
【0056】
残存シラノールの縮合を実施するための上記の別の選択肢は、それらのシラノールと縮合可能な、且つ一般式RSiY’4−n(式中、各Si−Y’結合はSi−OHに直接的に又は全く加水分解性でない)を有する他の化学種を添加することである。このような化学種としては、ガラス表面を疎水性にする誘導体化剤として一般に用いられる材料が挙げられ、このような材料の例は当該技術分野で周知である。例えば一般式RSiY’(式中、Rは上記と同様であり、Y’は、例えば塩素である)を有する材料は、この目的に適している。例えばこのような誘導体化剤の特定の一例は、トリメチルクロロシランである。
【0057】
シラノール縮合を実施するためのさらに別の選択肢は、第二の加水分解性無機モノマー前駆体の状況で上記されたような一般式(RSi)を有する材料を使用すること、及び乾燥生成物の添加前にこれを加水分解することである。
【0058】
縮合により残存シラノール含量を低減することの他に、又はその代替物として、これは、少なくとも部分脱水により、好ましくは実質的に完全な脱水により達成され得る。脱水は、当該技術分野で既知の慣用的方法のいずれかにより達成される。例えば乾燥生成物は、任意の適切な溶媒、例えばテトラヒドロフラン(THF)中に溶解され、遊離水がモレキュラーシ―ブにより除去される。代替的には、脱水は、縮合触媒、例えばTHF中に溶解され、モレキュラーシーブ上に載せられるトリエチルアミンの使用によりさらに手助けされ得る。乾燥生成物を脱水する期間後、揮発性溶媒は蒸発されて、完全脱水又は部分脱水した生成物を残す。
【0059】
上記において、残存シラノールのさらなる縮合は乾燥生成物で実施されると記載されているが、生成物を乾燥する前又は乾燥を完了する前に多少の縮合を実施することが望ましいだろう。例えば遊離水を除去するために乾燥後に少なくとも部分的に脱水された生成物における縮合を実施するのが望ましいだろう。
【0060】
さらに脱水は乾燥生成物で実施されると上記したが、少なくとも部分的脱水が当該方法における早期工程で実施され得る。
【0061】
本発明の方法は、広範な種類の生成物構造を生じ得る。最終生成物の「籠」又は「梯子」構造への傾向は、方法パラメーター、例えば形成されるオリゴマーの型及び/又は濃度、用いられる溶媒、混合工程の時間及び温度、クエンチング工程中の濃度、クエンチングが実施される時間及び温度、並びに最終生成物を回収する方法により制御される。
【0062】
生成物の架橋密度が理論的な100%より低い場合、生成物は依然として反応性であると考えられ得るが、これは、材料が用いられるべき用途にしたがって許容可能であり得るし、そうでない場合もある。これが許容可能でない場合、さらなる架橋を達成するための、且つ反応性を低減するための種々の選択肢が上記されている。
【0063】
コーティング用途に関しては、有機(即ちR)基による架橋は、例えば既知の照射(例えばUV)、熱的方法又は化学的方法を用いて、支持体上へのコーティング前に開始され、コーティング前又はコーティング後に完了され得る。架橋がコーティング前に完了される場合、支持体上に組成物をコーティングするために溶媒中に組成物を溶解し、次にコーティングされた組成物を乾燥するために溶媒を蒸発することが望ましい。
【0064】
任意の架橋或いはさらなる縮合の前又は後に、乾燥(当該方法の第三の工程)中に得られる生成物は、有機モノマー又は有機オリゴマー(以下において、概して「重合可能有機種」と呼ばれる)(これは次にさらに重合され得る)又は有機ポリマー、例えばラテックスと混合され得る。
【0065】
重合可能有機種の性質は、最終生成物で必要とされる特性に従って選択される。典型的には、重合可能有機種は、強度、耐磨耗性、及び所望される場合は、透明度を提供するために選択される。さらに、化学的耐性、例えば膨潤又は溶媒との接触時のその他の損傷に対する耐性が必要とされる場合、二次元又は三次元、即ち架橋化ポリマー網目構造を形成し得る重合可能有機種を用いることが望ましい。このような重合可能有機種は、二官能反応性又は三官能反応性を有すると考えられ、この場合、それらは、重合に利用可能な2又はそれより多くの反応性部位を保有する。
【0066】
コーティング用途に関しては、好ましい重合可能有機種は、重合時に、熱硬化性ポリマーを生成するものである。適切な重合可能有機種の例としては、カルボネート、エステル、例えばテレフタレート、エポキシ含有材料、メチル(メタ)アクリレート、ウレタン、並びにその他の二官能性モノマー又は三官能性モノマー、例えばウレタンアクリレート、不飽和脂肪族炭化水素、並びにそれらの混合物が挙げられる。ウレタン前駆体、例えばイソシアネート又はジイソシアネート及びポリオール、並びにウレタンアクリレートが特に好ましい。有機金属モノマーも用いられ得るが、しかしこの場合、それらは加水分解性結合を含有しない。
【0067】
好ましくは、重合可能有機種は、低融点を有する熱可塑性材料又は熱硬化性材料のためのコーティングとして適用可能であるために、適切な開始剤の添加後、相対的に低温で、例えば150℃より低い温度で、或いは照射により、例えばUV光又はIR光を用いて、或いはX線又は電子線による衝撃により、重合する。
【0068】
重合可能有機種の重合は、重合可能有機種の性質により決定される任意の慣用的方式で開始され得る。それは普通は、重合開始剤の使用を包含する。
【0069】
コーティング用途に関しては、実質的有機重合は通常は、支持体上へのコーティング後まで遅延される。したがって熱を用いて有機重合を開始するか又は促進する場合、温度は、コーティングが適用されるべきである支持体に如何なる有害作用も及ぼさないように選択されるべきである。熱可塑性支持体又は熱硬化性支持体の場合、相対的に低い温度、典型的には150℃より低い、さらに典型的には30〜80℃の範囲の温度が用いられるべきである。化学的重合開始剤が用いられる場合、これは、コーティング操作の直前まで、又はおそらくはコーティング操作中の化学的重合開始剤の添加を遅延することを意味する。
【0070】
最終生成物中に組み入れられる有機ポリマーの割合は、最終生成物に必要とされる特性によっている。
【0071】
最終生成物の特性は、当該技術分野で慣用的な添加剤の使用によりさらに調整され得る。
【0072】
コーティング組成物として用いられる場合、組成物は、任意の慣用的手段、例えば浸漬、噴霧、ロールコーティング又はブラッシングにより、支持体に塗布され得る。組成物は、広範な種類の支持体に塗布され得るし、且つ相対的に低い融点、例えば150℃又はそれより低い融点を有する、特に適切なコーティング重合材料である。このような重合材料の例としては、熱可塑性材料及び熱硬化性材料、例えばポリカーボネート、ポリエステル、例えばポリアクリレート及びポリテレフタレート、ポリウレタン及びポリアクリリック類が挙げられる。本発明のコーティングによりこれらの材料に付与される増強された引掻き/磨耗及び化学物質耐性は、目下のそれらよりかなり広範にそれらを利用可能にする。
【0073】
コーティング組成物は、ガラス、金属、例えば軟質金属、例えばアルミニウム、真鍮及び銀、セラミック材料、並びに天然材料、例えば革及び木材、又はこれらの材料のための合成代用品から選択される支持体を被覆するためにも用いられ得る。それはガラス及びガラス代用品のためのコーティングとして特定の用途を見出す。例えばそれは、建造物又は乗物、窓及び風防ガラス、例えば自動車、飛行機及び列車、眼鏡レンズ、カメラレンズ、保護バイザー、光学フィルター及びライトケーシング、例えばヘッドランプ・クラスター、コンパクトディスク、ディスプレイ・スクリーン(例えばパソコン及び携帯電話の)を被覆するために、且つ白色商品、例えば冷蔵庫及び洗濯機を、並びに褐色商品、例えば視聴覚器材を保護するために用いられ得る。
【0074】
本発明の組成物は、種々の支持体上の触媒コーティングとしても用途を見出す。この用途に関しては、その液体性を保持するために、組成物は架橋されるべきでない、というのが好ましい。
【0075】
本発明の組成物は、少なくとも2つの物品を一緒に結合することにも用途を見出す。例えば組成物は、1つ又は各々の物品の表面に適用され、結合されるべき表面は一緒にされ、組成物は硬化されて、しっかりした結合を形成する。
【0076】
本発明の方法は、コーティングとしてよりもバルク材料として用途を見出す材料も製造し得る。この場合、当該材料は、例えば成形により造形されるか、或いはそうでなければ広範な種類の異なる物品に形成され得る。
【0077】
本発明は、以下の実施例によりさらに例証される。
[実施例]
【実施例1】
【0078】
メタクリレートシラン樹脂
111.1gの工業用変性アルコール(IMS)、16.3gの水及び0.16gの37%HClの混合物を十分に撹拌し、次に150.0gの3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートに添加した。この混合物を4時間激しく撹拌し、次に555gの蒸留水中に注ぎ入れた(又はクエンチングした)。クエンチング混合物を少なくとも18時間激しく撹拌した後、大型ポリプロピレン容器中に注ぎ入れ、約6時間約50℃で加熱して、水を除去した。次に残存粘性液体(樹脂)を回収した。
【実施例2】
【0079】
メタクリレートシランコーティング
実施例1で製造された樹脂10.0gを30.0gのIMSで希釈し、0.1gの光開始剤イルガキュア184を添加した。十分に混合後、この溶液をレキサン・ポリカルボネート・プラーク上にフロー被覆した。被覆プラークを、50℃で5分間、空気雰囲気中で乾燥し、次にUV光を用いて硬化した。
【実施例3】
【0080】
メタクリレートシラン及びウレタンアクリレートコーティング
実施例1で製造された樹脂9.0gを27.0gの工業用変性アルコールで希釈し、撹拌して、均質溶液を生じた。この溶液に、1.0gの脂肪族ウレタンアクリレート260GP25を添加し、0.1gの光開始剤イルガキュア184を添加した。均質溶液を達成するために撹拌後、レキサン・ポリカルボネート・プラーク上にフロー被覆することにより、液体を沈着させた。被覆プラークを、50℃で5分間、空気雰囲気中で乾燥し、次にUV光を用いて硬化した。
【実施例4】
【0081】
アクリレートシラン樹脂
117.8gの工業用変性アルコール(IMS)、17.3gの水及び0.17gの37%HClの混合物を十分に撹拌し、次に150.0gの3−トリメトキシシリルプロピルアクリレートに添加した。この混合物を4時間激しく撹拌し、次に570gの蒸留水中に注ぎ入れた(又はクエンチングした)。クエンチング混合物を少なくとも18時間激しく撹拌した後、大型ポリプロピレン容器中に注ぎ入れ、6時間約50℃で加熱して、水を除去した。次に残存粘性液体(樹脂)を回収した。
【実施例5】
【0082】
アクリレートシランコーティング
実施例4で製造された樹脂10.0gを30.0gのIMSで希釈し、フロー剤として0.1gのFC4430(3M Corporation)0.1gの光開始剤イルガキュア184を添加した。十分に混合後、この溶液をレキサン・ポリカルボネート・プラーク上にフロー被覆した。被覆プラークを、50℃で5分間、空気雰囲気中で乾燥し、次にUV光を用いて硬化した。
【実施例6】
【0083】
アクリレートシラン及びウレタンアクリレートコーティング
実施例4で製造された樹脂9.0gを27.0gの工業用変性アルコールで希釈し、撹拌して、均質溶液を生じた。この液体に、1.0gの脂肪族ウレタンアクリレート260GP25を添加し、0.1gの光開始剤イルガキュア184を添加した。均質溶液を達成するために撹拌後、レキサン・ポリカルボネート・プラーク上にフロー被覆することにより、液体を沈着させた。被覆プラークを、50℃で5分間、空気雰囲気中で乾燥し、次にUV光を用いて硬化した。
【実施例7】
【0084】
エポキシシラン樹脂
77.9gの工業用変性アルコール(IMS)、11.4gの蒸留水の混合物を十分に撹拌し、次に100.0gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに添加した。この混合物を4時間激しく撹拌し、次に379gの蒸留水中に注ぎ入れた(又はクエンチングした)。クエンチング混合物を少なくとも18時間激しく撹拌した後、大型ポリプロピレン容器中に注ぎ入れ、約6時間約50℃で加熱して、水を除去した。次に残存粘性液体(樹脂)を回収した。
【実施例8】
【0085】
エポキシシラン及びジアミノオクタンコーティング
実施例7で製造された樹脂5.0gを15.0gのIMSで希釈し、撹拌して、均質液体を生じた。この液体に、1.08gのジアミノオクタンを添加した。混合物を5分間激しく撹拌して、次にレキサン・ポリカルボネート・プラーク上のコーティングとして沈着させた。次に被覆プラークを、130℃で18時間、空気雰囲気中で乾燥し、硬化した。
【実施例9】
【0086】
エポキシシラン及びキシリレンジアミンコーティング
実施例7で製造された樹脂5.0gを15.0gのIMSで希釈し、撹拌して、均質液体を生じた。この液体に、1.02gのキシリレンジアミンを添加した。混合物を5分間激しく撹拌して、次にレキサン・ポリカルボネート・プラーク上のコーティングとして沈着させた。次に被覆プラークを、130℃で18時間、空気雰囲気中で乾燥し、硬化した。
【実施例10】
【0087】
混合エポキシ−フェニルシラン樹脂
構成成分A及び構成成分Bを別々に製造した。
【0088】
構成成分A 7.0gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランをビーカー中に入れ、5.5gのIMS及び0.80gの水のよく混じった混合物をそれに添加した。
【0089】
構成成分B 40.0gのフェニルトリメトキシシランをビーカーに入れて、37.1gのIMS及び5.45gの水のよく混じった混合物をそれに添加した。
【0090】
構成成分A及び構成成分Bを、密閉ビーカー中で約1時間、別々に撹拌し、その後、それらを合わせ、再び密閉ビーカー中で約4時間撹拌した。この混合物を4時間激しく撹拌し、次に192gの蒸留水中に注ぎ入れた(又はクエンチングした)。クエンチング混合物を少なくとも18時間激しく撹拌した後、大型ポリプロピレン容器中に注ぎ入れ、約6時間約50℃で加熱して、水を除去した。次に残存粘性液体(樹脂)を回収した。
【実施例11】
【0091】
混合エポキシ−フェニルシランジアミノオクタンコーティング
実施例10で製造された樹脂5.0gを15.0gのIMSで希釈し、撹拌して、均質液体を生じた。この液体に、0.17gのジアミノオクタンを添加した。混合物を5分間激しく撹拌して、次にレキサン・ポリカルボネート・プラーク上のコーティングとして沈着させた。次に被覆プラークを、130℃で18時間、空気雰囲気中で乾燥し、硬化した。
【実施例12】
【0092】
シクロヘキシルエポキシシラン樹脂
44.9gの工業用変性アルコール(IMS)、6.59gの蒸留水の混合物を十分に撹拌し、次に60.0gの2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに添加した。この混合物を4時間激しく撹拌し、次に223gの蒸留水中に注ぎ入れた(又はクエンチングした)。クエンチング混合物を少なくとも18時間激しく撹拌した後、大型ポリプロピレン容器中に注ぎ入れ、約6時間約50℃で加熱して、水を除去した。次に残存粘性液体(樹脂)を回収した。
【実施例13】
【0093】
シクロヘキシルエポキシシランジアミノオクタンコーティング
実施例12で製造された樹脂5.0gを15.0gのIMSで希釈し、撹拌して、均質液体を生じた。この液体に、0.20gのジアミノオクタンを添加した。混合物を5分間激しく撹拌して、次にレキサン・ポリカルボネート・プラーク上のコーティングとして沈着させた。次に被覆プラークを、130℃で18時間、空気雰囲気中で乾燥し、硬化した。
【実施例14】
【0094】
アミノシラン樹脂
49.9gの工業用変性アルコール(IMS)、7.32gの蒸留水の混合物を十分に撹拌し、次に60.0gの3−アミノプロピルトリメトキシシランに添加した。この混合物を4時間激しく撹拌し、次に234gの蒸留水中に注ぎ入れた(又はクエンチングした)。クエンチング混合物を少なくとも18時間激しく撹拌した後、大型ポリプロピレン容器中に注ぎ入れ、約6時間約50℃で加熱して、水を除去した。次に残存粘性液体(樹脂)を回収した。
【実施例15】
【0095】
混合エポキシ樹脂
構成成分A及び構成成分Bを別々に製造した。
【0096】
構成成分A 40.0gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランをビーカー中に入れ、31.1gのIMS及び4.57gの水のよく混じった混合物をそれに添加した。
【0097】
構成成分B 5.0gのテトラエトキシシランをビーカーに入れて、4.4gのIMS及び0.65gの水のよく混じった混合物をそれに添加した。
【0098】
構成成分A及び構成成分Bを、密閉ビーカー中で約1時間、別々に撹拌し、その後、それらを併合し、再び密閉ビーカー中で約4時間撹拌した。この混合物を4時間激しく撹拌し、次に172gの蒸留水中に注ぎ入れた(又はクエンチングした)。クエンチング混合物を少なくとも18時間激しく撹拌した後、大型ポリプロピレン容器中に注ぎ入れ、約6時間約50℃で加熱して、水を除去した。次に残存粘性液体(樹脂)を回収した。
【実施例16】
【0099】
樹脂の脱水
実施例4で製造された1.5gの樹脂を、0.25gのトリエチルアミン及び4.5gのTHFの混合物中に溶解した。次に溶液を乾燥4A型モレキュラーシーブ上に載せた。24時間後、溶媒を蒸発させて、脱水樹脂を4.5gのIMS中に溶解し、0.1gの光開始剤イルガキュア184を添加した。十分に混合後、次にレキサン・ポリカルボネート・プラーク上にフロー被覆することにより、溶液を沈着させた。被覆プラークを、5分間風乾し、次にUV光を用いて硬化した。
【実施例17】
【0100】
残存シラノールのキャッピング
実施例4で製造された1.5gの樹脂を、0.25gのトリエチルアミン、4.5gのTHF及び0.25gのクロロトリメチルシランの混合物中に溶解した。24時間後、混合物を1μmフィルタで濾過し、固体の塩化物塩を除去した。溶媒を蒸発させて、樹脂を4.5gのIMS中に溶解し、0.1gの光開始剤イルガキュア184を添加した。十分に混合後、次にレキサン・ポリカルボネート・プラーク上にフロー被覆することにより、溶液を沈着させた。被覆プラークを、5分間風乾し、次にUV光を用いて硬化した。
【実施例18】
【0101】
SiY型シランでの残存シラノールのキャッピング
実施例4で製造された1.5gの樹脂を、0.25gのトリエチルアミン、4.5gのTHF及び0.5gのジエトキシジメチルシランの混合物中に溶解した。次に溶液を乾燥4A型モレキュラーシーブ上に載せた。24時間後、溶媒を蒸発させて、樹脂を4.5gのIMS中に溶解し、0.1gの光開始剤イルガキュア184を添加した。十分に混合後、次にレキサン・ポリカルボネート・プラーク上にフロー被覆することにより、溶液を沈着させた。被覆プラークを、5分間風乾し、次にUV光を用いて硬化した。
【実施例19】
【0102】
長鎖シランでの残存シラノールのキャッピング
実施例4で製造された1.5gの樹脂を、0.25gのトリエチルアミン、4.5gのTHF及び2gのヒドロキシ末端化ポリジメチルシロキサン(粘度=90〜150センチストークス)の混合物中に溶解した。次に溶液を乾燥4A型モレキュラーシーブ上に載せた。24時間後、溶媒を蒸発させて、樹脂を4.5gのIMS中に溶解し、0.1gの光開始剤イルガキュア184を添加した。十分に混合後、次にレキサン・ポリカルボネート・プラーク上にフロー被覆することにより、溶液を沈着させた。被覆プラークを、5分間風乾し、次にUV光を用いて硬化した。
【実施例20】
【0103】
ゾル中へのRSiYシランの混入
117.8gの工業用変性アルコール(IMS)、17.3gの水及び0.17gの37%HClの混合物を十分に撹拌し、次に150.0gの3−トリメトキシシリルプロピルアクリレートに添加した。この混合物を240分間撹拌した。58.3gの工業用変性アルコール(IMS)、5.46gの水及び0.1gの37%HClの混合物を別々に十分に撹拌し、次に45.0gのジエトキシジメチルシランに添加し、5分間混合した。次にこの2つのシラン溶液を混合し、2時間一緒に攪拌し、次に570gの蒸留水中に注ぎ入れた(又はクエンチングした)。クエンチング混合物を少なくとも18時間激しく撹拌した後、大型ポリプロピレン容器中に注ぎ入れ、6時間約50℃で加熱して、水を除去した。次に残存粘性液体(樹脂)を回収した。
【実施例21】
【0104】
樹脂の脱水 − 接着剤/封止剤としての使用
実施例4で製造された1.5gの樹脂を、0.25gのトリエチルアミン及び4.5gのTHFの混合物中に溶解した。次に溶液を乾燥4A型モレキュラーシーブ上に載せた。24時間後、溶媒を蒸発させて、脱水樹脂を0.5gのIMS中に溶解し、0.1gの光開始剤イルガキュア184を0.5gのウレタンアクリレート260Gp25と一緒に添加した。十分に混合後、次に溶液をポリエステルシート上に注液した。第二のシートを第一のシートの上に載せて、2つのシートを一緒に圧縮して、約50μmの結合線を生じた。次にサンドイッチ構造をUV光下で5分間硬化すると、樹脂混合物は接着シールを生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノシルセスキオキサンを含む組成物を生成する方法であって、以下の:
(1)式RSiY(式中、Rは有機基であり、R−Si結合は非加水分解性結合であり、Y基は各々、他のY基の各々と同一であるか又は異なり、且つ各Si−Y結合が加水分解性で、Si−OH結合を形成するような化学反応性基から選択される)を有する第一の加水分解性無機モノマー前駆体の少なくとも50モル%を含む加水分解性無機モノマー前駆体を部分加水分解して無機モノマーを生成し、且つ該無機モノマーの部分縮合を可能にして、無機オリゴマーを含む液体組成物を生成する工程、
(2)前記無機モノマーの完全縮合前に、工程(1)で用いられた水並びに工程(1)における前記無機モノマーの縮合により遊離された任意の水と組み合わせて、存在する前記加水分解性無機モノマー前駆体のすべての完全加水分解を達成するのに必要とされる化学量論量の水を上回る量の水で前記液体組成物をクエンチングする(quenching)工程、及び
(3)前記組成物を乾燥する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記加水分解性無機モノマー前駆体が第一の加水分解性無機モノマー前駆体の60モル%より多くを、好ましくは少なくとも70モル%、より好ましくは少なくとも80モル%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の加水分解性無機モノマー前駆体中の前記R基が加水分解に対して安定である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の加水分解性無機モノマー前駆体中の前記R基が水素、並びに(シクロ)アルキル、アリール、アルケニル、アミド、エポキシ、(メタ)アクリリック((meth)acrylic)、スチレニック(styrenic)、ニトリル、無水物、エステル、ホスフィノ、ハロゲン化物、アミノ、メルカプト及びシアネート基、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の加水分解性モノマー前駆体中の前記Y基がアルコキシ、アセトキシ及びニトレート基、並びにハロゲン原子から選択され、好ましくはアルコキシ基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(1)が異なる加水分解性無機モノマー前駆体を部分加水分解を含むとき、該異なる加水分解性無機モノマー前駆体は互いに別々に加水分解され、その後、その結果生じた異なる無機モノマーを部分縮合し、次にその結果生じた前記液体組成物を工程(2)を実施する前に混合する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の加水分解性モノマー前駆体が異なるR基を有する分子を含み、好ましくは工程(1)において、前記異なる第一の加水分解性モノマー前駆体が互いに別々に加水分解されて、部分的に縮合することを可能にし、その結果生じた前記液体組成物が次に一緒に混合された後、工程(2)が実施される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記加水分解性無機モノマー前駆体が式RSiY4−n(式中、nは0、2又は3であり、R−Si結合は各々、非加水分解性結合であり、Rは有機基であり、各R基は他のR基の各々と同一であるか又は異なり、且つY基は各々、他のY基の各々と同一であるか又は異なり、各Si−Y結合がSi−OHに加水分解可能であるように化学反応性基から選択される)を有する第二の加水分解性モノマー前駆体をさらに含み、好ましくは工程(1)において、前記第一の加水分解性モノマー前駆体及び前記第二の加水分解性モノマー前駆体が互いに別々に部分的に加水分解されて、部分的に縮合するのを可能にし、且つその結果生じた液体組成物が次に一緒に結合された後に、工程(2)が実施される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第二の加水分解性無機モノマー前駆体が式SiYを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記加水分解性無機モノマー前駆体が式MY(式中、Mは金属であり、nは金属の原子価であり、且つY基は各々、他のY基の各々と同一であるか又は異なり、各M−Y結合がM−OH結合に加水分解可能であるように化学反応性基から選択される)を有する加水分解性モノマー前駆体をさらに含み、好ましくは工程(1)において、前記異なる加水分解性モノマー前駆体が互いに別々に部分加水分解されて、部分的に縮合するのを可能にし、その結果生じた前記液体組成物が次に一緒に混合された後に工程(2)が実施される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記加水分解性無機モノマー前駆体が式(RSi)(式中、x≧1であり、R−Si結合は各々、非加水分解性結合であり、Rは有機基であって、各R基は他のR基の各々と同一であるか又は異なり、且つY基は各々、他のY基の各々と同一であるか又は異なり、各Si−Y結合がSi−OHに加水分解可能であるように化学反応性基から選択される)を有する加水分解性モノマー前駆体をさらに含み、好ましくは工程(1)において、前記異なる加水分解性モノマー前駆体が互いに別々に部分加水分解されて、部分的に縮合するのを可能にし、その結果生じた前記液体組成物が次に一緒に混合された後に工程(2)が実施される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(1)において、前記第一の加水分解性モノマー前駆体の少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%がSi−Y結合のうちの1つを介して加水分解及び縮合を受けて、式RY−Si−O−SiYRを有する無機オリゴマーを生成する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(1)の加水分解において用いられる水及び工程(1)における縮合により遊離される任意の水の量と組み合わせた、工程(2)において用いられる水の量が、存在する前記加水分解性モノマー前駆体のすべての完全加水分解のために必要とされる水の化学量論的量の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(4)として、工程(3)において得られる組成物を脱水して脱水化組成物を得ることを包含する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物中に存在する残存シラノールにより工程(3)で得られた前記組成物を架橋して架橋化組成物を得ることをさらに包含する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(3)で得られる組成物を有機モノマー又は有機オリゴマーと混合することをさらに包含する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(4)で得られた前記脱水化組成物を有機モノマー又は有機オリゴマーと混合することをさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
得られた前記架橋化組成物を有機モノマー又は有機オリゴマーと混合することをさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記有機モノマー又は前記有機オリゴマーを重合することをさらに包含する、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(3)で得られた前記組成物を液体有機ポリマーと混合することを包含する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程(4)で得られた前記脱水化組成物を液体有機ポリマーと混合することをさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
得られた前記架橋組成物を液体有機ポリマーと混合することをさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記R基により工程(3)で得られた前記組成物を架橋して架橋化組成物を得ることをさらに包含する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記R基により工程(4)で得られた前記組成物を架橋して架橋化組成物を得ることをさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法により得られ得るオルガノシルセスキオキサンを含む組成物。
【請求項26】
支持体上にコーティングを提供する方法であって、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法により得られ得る組成物を該支持体に適用すること、及び該組成物を必要に応じて架橋することを包含する、方法。
【請求項27】
支持体上にコーティングを提供する方法であって、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法により得られ得る組成物を該支持体に適用すること、前記有機モノマー又は前記有機オリゴマーを重合すること、及び前記組成物を必要に応じて架橋することを包含する、支持体上にコーティングを提供する方法。
【請求項28】
前記支持体が熱可塑性高分子支持体、例えばポリカーボネート及びアクリル樹脂から選択される、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記支持体がアルミニウム、真鍮及び銀のような軟質金属を含む金属から選択される、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項30】
請求項25に記載の組成物を造形することを包含する物品を生成する方法。
【請求項31】
少なくとも2つの物品を一緒に結合する方法であって、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法により得ることができるように規定された組成物を1つ又は各々の物品の表面に適用すること、該表面を互いに接触させること、及び次に前記組成物を架橋して結合を形成することを包含する、方法。

【公表番号】特表2009−517493(P2009−517493A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541804(P2008−541804)
【出願日】平成18年10月9日(2006.10.9)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003750
【国際公開番号】WO2007/060387
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(500031504)ザ ウェルディング インスティテュート (6)
【Fターム(参考)】