説明

オレフィンのヒドロホルミル化法

本発明は、少なくとも4個の炭素原子を有するオレフィンのヒドロホルミル化生成物の製法に関し、その際、使用されるオレフィン含有供給中に含まれる高含量の末端位二重結合を有する線状C−オレフィン並びに内部位二重結合を有する線状C−オレフィンをヒドロホルミル化生成物に変える。更に本発明は、このようなヒドロホルミル化法を含む2−プロピルヘプタノールの製法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも4個の炭素原子を有するオレフィンのヒドロホルミル化生成物の製法に関し、その際、使用されるオレフィン供給中に含まれる高含量の末端位二重結合を有する線状C−オレフィン並びに内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを、ヒドロホルミル化生成物に変える。更に本発明は、このようなヒドロホルミル化法を含む2−プロピルヘプタノールの製法に関する。
【0002】
ヒドロホルミル化又はオキソ合成は、重要な大規模工業的方法であり、オレフィン、一酸化炭素及び水素からのアルデヒドの製造に使用される。このアルデヒドは、場合により同じ作業工程で水素で水素添加して相応するオキソ−アルコールにすることができる。反応自体は強力な発熱性であり、通常高めた圧力下及び高めた温度で触媒の存在で行われる。触媒としては、Co−、Rh−、Ir−、Ru−、Pd−又はPt−化合物又は錯体を使用するが、これらは活性−及び/又は選択性に影響を与えるためにN−又はP−配位子で変性されていてよい。2個より多いC原子を有するオレフィンのヒドロホルミル化反応では、二重結合の二つのC原子の各々へのCO付加が可能であるという理由で、異性体のアルデヒドの混合物の生成が起こりうる。更に、少なくとも4個の炭素原子を有するオレフィンを使用する場合には、二重結合の異性体化、即ち内部二重結合の末端位への転位が起こりそして逆もまた起こりうる。
【0003】
α−アルデヒドが工業的にますます重要になってきているので、ヒドロホルミル化法を最適化して、できる限り高い変換率を得、同時に非α−位二重結合を有するオレフィンの生成傾向をできる限り僅かにすることが目的とされている。更に、内部線状オレフィンから出発して良好な収率でα−位及び特にn−位アルデヒドを得る、ヒドロホルミル化法が求められている。その際、使用される触媒は、内部及び末端二重結合異性体の間の平衡の調節並びにできる限り選択的に末端オレフィンのヒドロホルミル化を可能にする必要がある。
【0004】
従って、例えば良好な使用技術的特性を有するエステル可塑剤を製造するために、僅かな程度に枝分かれしている(いわゆる半線状アルコール)、約6〜12個の炭素原子を有する可塑剤アルコール及びその相応する混合物が求められている。これには特に2−プロピルヘプタノール及びこれを含有するアルコール混合物が挙げられる。これを製造するために、例えばブテン又はブテン及びブタンを含有するC−炭化水素混合物にヒドロホルミル化を行い、次いでアルドール縮合を行うことができる。不十分なn−選択性を有するヒドロホルミル化触媒を使用する場合には、ヒドロホルミル化でn−バレルアルデヒドだけでなく、不所望な生成物アルデヒドも生じる恐れがあり、それによって方法全体が経済的に不利になる。
【0005】
ロジウム−低圧−ヒドロホルミル化で、触媒の安定化及び/又は活性化用に燐含有配位子を使用することが公知である。好適な燐含有配位子は、例えばホスフィン、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスファイト、ホスホルアミダイト、ホスホール及びホスファベンゼンである。現在最も普及している配位子は、トリアリールホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン及びスルホン化トリフェニルホスフィンである。それはこれらは反応条件下で十分な活性及び安定性を有するからである。しかしこれらの配位子の欠点は、通常非常に高度に過剰な配位子によってのみ特に線状アルデヒドの十分な収率がもたらされるにすぎず、内部オレフィンは実質的に全く反応しないことである。
【0006】
他方、高められた選択性を有する線状オレフィンの枝なし反応生成物へのヒドロホルミル化を可能にする特定の触媒が報告されている。例えばUS4668651、US4748261、US4769498及びUS4885401から特定のロジウム/ビスホスファイト−触媒が公知であるが、これは種々の線状オレフィン、例えばプロピレン、ブテン及びヘキセンを部分的に良好な選択性で枝なし反応生成物にヒドロホルミル化することができる。そこに記載のロジウム/ビスホスファイト−触媒を用いて部分的には内部位二重結合を有するオレフィンを線状ヒドロホルミル化生成物に変えることもできる。
【0007】
J.Kolena、P.Mora’vek、J.Lederer、DGMK Tagungsbericht(2001)、2001−4(Proceedings of the DGMK Conference"Creating Value from Light Olefins−Production and Conversion"、2001)、119−126には121頁に、前記US特許明細書に記載されているようなロジウム/ビスホスファイト−触媒をUnion Carbide社のいわゆるUNOXOL 10−ProzessでラフィネートIIからの2−プロピルヘプラノールの 製造用に使用したことが記載されている。
【0008】
2−ブテンの使用下における2−プロピルヘプタノールの類似製法が、特許出願WO03/018192に記載されており、そこではキレートホスホルジアミデイトを助触媒として使用する。
【0009】
特別なロジウム/ビスホスファイト−触媒の使用下における前記方法は、確かに内部位二重結合も有するオレフィンの部分的利用の利点を有する。しかし使用されるホスファイト配位子又はその誘導体は、通常のヒドロホルミル化−及び/又は蒸留条件下で種々の分解反応を起こすという欠点を有する。これには例えば加水分解、アルコール分解、エステル交換、アルブソブ転位及びP.W.N.M.van Leeuwen、Appl.Cat.A:General2001、212、61に記載されているような、O/C−及びP/O−結合解裂が該当する。
【0010】
US4426542に記載の方法では、ホルミル化はコバルト触媒の使用下で高圧条件下で行われ、それによって同じく内部位二重結合を有するオレフィンの利用が可能である。しかし得られるホルミル化生成物の達成されるn−含量は比較的低い。更に工程には、高圧で実施される段階が含まれる。高圧法用の投資費用は低圧法に比して著しく高いので、方法は経済的に不利である。
【0011】
安定なロジウム/ホスファン−触媒の使用下における例えばラフィネートIIのようなオレフィン混合物中のオレフィンのできる限り完全な使用を実現するために、WO01/55065A1に記載の方法が開発された。その中にラフィネートIIからのC−アルコール及びC10−アルコールの一体化された製造方法が記載されており、その際、ラフィネートII中に含有されるブテンをヒドロホルミル化工程で十分に使用する。しかし、アルドール縮合及び水素添加を用いるC10−アルコールの製造用にはラフィネートII中のα−オレフィン 1−ブテンしか使用されない。2−ブテンの使用はC−アルコールの不可避なカップリング製造によってのみ行われる。
【0012】
ヒドロホルミル化を1段工程法として行う場合には、使用されたオレフィンの有利には線状ホルミル化生成物への完全又はほぼ完全な変換は、技術的又は工程経済的な理由からしばしば実現することができない。このことは特に、種々の反応性のオレフィン、例えば内部位二重結合を有するオレフィン及び末端位二重結合を有するオレフィンを含有するオレフィン混合物の使用に言える。従って、ヒドロホルミル化を2段以上の反応工程で実施する方法が開発された。その際、反応器は例えば個々の反応器が異なる反応条件下で作動するカスケードの形で存在する。この方法で所定の反応室で同じ容量の単一反応器におけるより高い変換率を達成することができる。従って例えばDE−A−10035120及びDE−A−10035370には、2段工程の反応系におけるオレフィンのヒドロホルミル化法が記載されている。
【0013】
EP−A−0562451及びEP−A−0646563には、ブテン−1及びブテン−2を含有するオレフィン混合物の2段階ヒドロホルミル化、その際得られるアルデヒド混合物のアルドール縮合及び次の水素添加によって異性体のデシルアルコールの混合物を製造する方法が記載されている。EP−A−0562451による方法では、第1工程で主として1−ブテンを90%より大きいn−選択性でバレルアルデヒドに変え、他方未反応オレフィン、特に2−ブテンを第2反応工程でn−及びi−ベレルアルデヒドに変える。第2工程により比較的僅かなn−含量を有するバレルアルデヒドが得られる。従って、n含量は合計して90%より著しく僅かである。更に工程には、高圧で実施される工程が含まれる。高圧法のための投資費用は低圧法より著しく高いので、方法は経済的に不利である。
【0014】
2−ブテンの1−ブテンへの異性体化は平衡反応であることは通常公知である。シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン及び1−ブテンは平衡で相互に存在する。熱動力的データは、D.Stull、"The Chemical Thermodynamics of Organic Compounds"、J.Wiley、New York 1969に記載されている。異性体化及びヒドロホルミル化の有意義な組合せは、内部位二重結合を有するオレフィン並びにこのようなオレフィンを含有するオレフィン混合物用の利用可能性を著しく改良することができるであろう。
【0015】
従って、Bellerその他はChem.Eur.J.5(1999)、1301−1305で、異性体化工程及びヒドロホルミル化工程を並行して実施する方法を記載している。その際、二つの異なる均質な触媒系を反応器中で使用し、その中の一つが異性体化を行い、もう一つがヒドロホルミル化を行う。この方法の欠点は、二つの触媒を費用のかかる方法で相互に調節する必要があることである。
【0016】
従って、異性体化工程及びヒドロホルミル化工程を相互に別々に行う方法の順番に配慮する必要がある。このために確かにオレフィンの二重結合異性体化は自体公知である一方で、ヒドロホルミル化工程との効率的な結合を必要とする方法技術的反応では特別な要求を考慮せねばならない。例えばUS4409418は、Cr及び/又はThを添加されたZr−ホスフェートで内部オレフィンを末端オレフィンに異性体化することができると教示している。
【0017】
EP−A−751106から、C−炭化水素流に選択的水素添加及び分別蒸留を行い、純粋な1−ブテン留分を残留する2−ブテン含有留分から分離後、パラフィンを分子篩を用いて分離し、こうして得たオレフィン含有流に二重結合異性体化を行い、選択的水素添加に戻すことによって、1−ブテンをC−炭化水素流から得ることが公知である。ここで欠点は、異性体化を行った留分を、直接蒸留工程の代わりに、水素添加工程に戻すことである。これによって循環流の容量が膨張し、水素添加が行われる反応容器が水素添加に対して不活性の化合物で満杯となり、この化合物は次の蒸留で初めて除去される。
【0018】
WO02/096843には、1−ブテンを2−ブテンから得る方法が記載されている。その際、主として2−ブテンを含有する炭化水素流に異性体化を行い、その際生成された反応混合物に蒸留を行う。蒸留で1−ブテン−高含有流を2−ブテン−高含有流から分離し、後者を異性体工程に戻す。しかしこの方法は著しい量の1−ブテンを含有する炭化水素用には不経済である。異性体化工程の次に蒸留を行うことから、供給の障害となる揮発性成分(例えばアルキン)が異性体化反応器に達し、そこで触媒を損なうか又は不所望な副産物を生じる恐れがある。
【0019】
従って本発明の根底をなす課題は、末端位及び内部位二重結合を有するオレフィンの混合物、特にラフィネートIIから出発して、少なくとも4個の炭素原子を有するオレフィンをヒドロホルミル化する有効な方法を提供することであったが、この方法は二重結合異性体化を含むものである。本発明による方法は、末端位二重結合を有するオレフィン並びに内部位二重結合を有するオレフィンのできる限り十分な利用を可能にするものでなければならない。更に枝なしヒドロホルミル化生成物のできる限り高い含量をもたらすべきであり、即ち高いn−選択性を有する必要がある。更に本発明による方法は、ヒドロホルミル化生成物をアルドール縮合及び水素添加によって10個以上の炭素原子を有するアルコールの混合物に加工することができねばならない。
【0020】
意外にも、ヒドロホルミル化工程に供給される流れ中の末端位二重結合を有する線状オレフィンの含量を二重結合異性体化を用いて高めることによって、このような方法を効率的に行うことができることを見出したが、その際、二重結合異性体化工程はホルミル化工程の前に接続しても後に接続してもよい。
【0021】
従って、本発明は、少なくとも4個の炭素原子を有するオレフィンのヒドロホルミル化法に関するが、その際、末端位二重結合を有する線状C−オレフィン及び内部位二重結合を有する少なくとも1種の線状C−オレフィンを含有する、オレフィン含有供給を使用し(その際、iは少なくとも4の整数を表す)、オレフィン含有の供給にヒドロホルミル化を行い、その際、ヒドロホルミル化工程に供給される流れ中の末端位二重結合を有する線状C−オレフィンの含量を二重結合異性体化によって高めるが、これはオレフィン含有供給に(I)ヒドロホルミル化前に部分的に先ず二重結合異性体化を行い、その際、二重結合異性体化工程に内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを供給するか;又は(II)先ずヒドロホルミル化を行い、ヒドロホルミル化工程からの排出物から内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有する流れを分離し、分離した流れに少なくとも部分的に二重結合異性体化を行うことによって高め、その際、二重結合異性体化からの排出物又は排出物の一部をヒドロホルミル化工程に供給する流れを調製するために使用する。
【0022】
第一の実施態様は、−末端位二重結合を有する線状C−オレフィン及び内部位二重結合を有する少なくとも1種の線状C−オレフィンを含有する、オレフィン含有供給を調製し(その際、iは少なくとも4の整数を表す);−オレフィン含有の供給に分別を行って、末端位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れ及び内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを得;−内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れに少なくとも部分的に二重結合異性体化を行って、末端位二重結合を有する線状C−オレフィンの含量を高め;−二重結合異性体化からの排出物を少なくとも部分的にヒドロホルミル化に供給する流れの調製用に使用する、少なくとも4個の炭素原子を有するオレフィンのヒドロホルミル化法である。
【0023】
この態様で有利には、二重結合異性体化からの排出物を少なくとも部分的に、オレフィン含有供給の分別で得た末端位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れと一緒にし、一緒にした流れをヒドロホルミル化に供給する。
【0024】
この統合用に別々の流れをヒドロホルミル化工程への入口の前で相互に混合することができる。特別な実施態様では、オレフィン含有供給の分別を蒸留により行い、二重結合異性体化で得られる末端二重結合を有する高含量の線状C−オレフィンを有する排出物を蒸留に戻す。この返還は、有利には最初に使用したオレフィン含有の供給に対して末端二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを既に有する蒸留装置の一部分で行う。
【0025】
第二の実施態様は、−末端位二重結合を有する線状C−オレフィン及び内部位二重結合を有する少なくとも1種の線状C−オレフィンを含有する、オレフィン含有供給を調製し(その際、iは少なくとも4の整数を表す);−オレフィン含有の供給に分別を行うが、その際、ヒドロホルミル化工程からの排出物は内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有し;−ヒドロホルミル化工程からの排出物から内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを富化した流れを分離し;−分離した流れに少なくとも部分的に二重結合異性体化を行って、末端位二重結合を有する線状C−オレフィンの含量を高め;−二重結合異性体化からの排出物を少なくとも部分的にヒドロホルミル化工程に戻す、少なくとも4個の炭素原子を有するオレフィンのヒドロホルミル化法である。
【0026】
本発明による方法は、オレフィン含有供給中に含まれる線状C−オレフィン、特に内部位二重結合を有するようなものの十分な利用を可能にする。オレフィン含有供給に含まれる線状C−オレフィンは、本発明による方法によって高い選択性で線状ヒドロホルミル化生成物に変えられる。これらの利点を得るために、第1実施態様による本発明の方法の本質は、オレフィン含有供給中に含まれる内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを、ヒドロホルミル化工程で反応させる前に、先ず別の二重結合異性体化工程でできる限り十分に反応させて、末端位二重結合を有する線状C−オレフィンにすることである。これらの利点を得るために、第2実施態様による本発明の方法の本質は、ヒドロホルミル化工程からの排出物から内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有する流れを分離することである。分離された、内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有する流れの少なくとも一部に別の二重結合異性体化工程で二重結合異性体化を行って、末端位二重結合を有する線状C−オレフィンの含量を高める。方法(II)でオレフィン含有供給を先ずヒドロホルミル化に供給するので、方法(II)の実施ではヒドロホルミル化工程の条件を通常、存在する内部二重結合を有するC−オレフィンをこのヒドロホルミル化工程で実質的に反応させないように調節する。
【0027】
オレフィン含有供給用に好適なC−オレフィン−装入物は、少なくとも4個、例えば4から12個(i=4、5,6、7、8、9、10、11又は12)の炭素原子及び少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を含有する原則として全ての線状(直鎖)化合物である。用語C−オレフィンはここ及び下記で、炭素原子i個を有するオレフィン化合物を表す。炭素原子4〜12個(i=4−12)、特に有利には4〜8個(i=4−8)及び極めて特に有利には4〜6個(i=4−6)を有する線状オレフィンを含有するC−オレフィン−装入物が有利である。
【0028】
本発明によればオレフィン含有供給は、末端位二重結合を有する線状C−オレフィン(本明細書中でα−オレフィンとも称する)及び内部位二重結合を有する少なくとも1種の相応する線状C−オレフィン、特に線状β−C−オレフィンを含有する。従って一定の値iに関してオレフィン含有供給は、例えば内部位二重結合を有する2又は3種の異なる線状C−オレフィンを含有することができる;i=4の場合には、例えばシス−2−ブテン及びトランス−2−ブテン。末端位二重結合を有する線状C−オレフィンの例は、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン及び1−ドデセンであり、その中1−ブテン、1−ペンテン及び1−ヘキセンが有利である。特に有利には供給は1−ブテンを含有する。内部位二重結合を有する線状C−オレフィンの例は、2−ブテン、2−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、4−ヘプテン、2−オクテン、2−ノネン、2−デセン、2−ウンデセン、2−ドデセン及びその混合物であり、その中2−ブテン、2−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン及びその混合物が有利である。特に有利には供給は2−ブテンを含有する。極めて特に有利には、炭素原子4〜6個を有する少なくとも1種のα−オレフィン、特に1−ブテン、並びに2−ブテン、2−ペンテン、2−ヘキセン及び/又はその混合物、特に2−ブテンを含有するオレフィン混合物及びこのようなオレフィンを含有する炭化水素混合物を使用する。更に、同じ値i、即ち同じ数の炭素原子、例えば4、5,6、7、8、9、10、11又は12を有する主として線状C−オレフィンを含有するオレフィン混合物が、極めて特に有利である。同じ値iを有する線状C−オレフィンの割合は、各々炭化水素混合物又はオレフィン含有供給中に含まれる1個以上エチレン性不飽和の炭化水素の全質量に対して、特に50〜100質量%の範囲、特には55〜99.9質量%の範囲である。正確にi個の炭素原子を有する飽和及びエチレン性不飽和炭化水素の割合が一緒に、各々オレフィン含有供給の全質量に対して少なくとも90質量%、例えば90〜99.99質量%の範囲、特には少なくとも95質量%、例えば95〜99.9質量%の範囲であるようなオレフィン含有供給が、本発明による方法で使用するために特に好適である。
【0029】
本発明による方法で使用されるオレフィン含有供給は、有利には工業的に使用されるオレフィン含有炭化水素混合物である。
【0030】
大規模工業で使用される有利なオレフィン混合物は、石油加工で炭化水素分解から、例えば留分分解、例えば流動接触分解(FCC)、熱分解又は水素化分解及び引き続いて行われる脱水素作用によって得られる。好適な工業的オレフィン混合物は、C−ラフィネートである。C−ラフィネートは、例えばガス油の流動接触分解又は蒸気分解によって又はナフサの蒸気分解によって得られる。C−ラフィネートの組成に応じて、全−C−ラフィネート(粗−C−ラフィネート)、1,3−ブタジエンの分離後に得られるいわゆるラフィネートI並びにイソブテン分離後に得られるラフィネートIIを分ける。その他好適な工業的オレフィン混合物は、ナフサ分解で得られるC−ラフィネートである。オレフィン含有供給として使用するために好適な少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素のオレフィン混合物は、更に大規模工業的に使用される好適なパラフィン混合物の脱水素作用によって得られる。例えばC−オレフィン−混合物を液体ガス(liquified petroleum gas、LPG)及び液化天然ガス(liquified natural gas、LNG)から製造することができる。後者には、LPG留分の他に付加的に多量の高分子炭化水素(軽質ナフサ)が含まれ、従ってC−及びC−オレフィン−混合物の製造用に好適である。少なくとも4個の炭素原子を有するモノオレフィンを含有するオレフィン含有炭化水素混合物のLPG−又はLNG流からの製造は、脱水素化作用の他に通常なお1段以上の後処理工程を含む、通常の当業者に公知の方法により行うことができる。これには例えば前記のオレフィン−装入混合物中に含有される飽和炭化水素の少なくとも部分的な分離が挙げられる。これは例えば新たに、分解及び/又は脱水素化作用によるオレフィン−装入材料の製造用に使用することができる。しかし本発明による方法で使用されるオレフィンは、本発明によるヒドロホルミル化条件下で不活性である飽和炭化水素の含分を含有することもできる。この飽和成分の割合は通常、炭化水素−装入材料中に含有されるオレフィン及び飽和炭化水素の全量に対して、最高60質量%、有利には最高40質量%、特に有利には最高20質量%である。前記C−ラフィネートの典型的な組成は、文献、例えばEP−A−0671419及びSchulz、Homann、"C−Hydrocarbons and Derivatives,Resources,Production,Marketing"、Springer Verlag 1989に記載されている。
【0031】
本発明による方法で使用するために好適なラフィネートIIは、例えば下記の組成:イソブテン0.5〜5質量%、n−ブタン5〜20質量%、トランス−2−ブテン20〜40質量%、シス−2−ブテン10〜20質量%、1−ブテン25〜55質量%、イソブテン0.5〜5質量%並びに痕跡の気体、例えば1,3−ブタジエン、プロペン、プロパン、シクロプロパン、プロパジエン、メチルシクロプロパン、ビニルアセチレン、ペンテン、ペンタン等を、各々使用されるラフィネートIIの全質量に対して各々最高1質量%、例えば0.001〜1質量%の範囲で、有する。ラフィネートII中の前記の痕跡の気体の割合は、通常全質量に対して0.001〜5質量%の範囲である。ここ及び下記でブテンは、他に記載のない限り、イソブテン以外の全てのブテン異性体を含むものである。
【0032】
使用されるオレフィン含有炭化水素混合物から、有利には更に酸素含有化合物、例えばアルコール、アルデヒド、ケトン又はエーテルを十分に除去する。このためにオレフィン含有炭化水素混合物を有利には吸着媒体、例えば分子篩、特に細孔直径>4Å〜5Åを有する分子篩に通す。オレフィン含有炭化水素混合物中の酸素含有、硫黄含有、窒素含有及びハロゲン含有化合物の濃度は、有利には各々全質量に対して1質量ppmより多くなく、特に有利には0.5質量ppmより多くない。
【0033】
数個不飽和の炭化水素化合物、例えばジオレフィン又はアルキンが使用されるオレフィン含有炭化水素混合物中に存在する場合には、これをオレフィン含有供給として装入する前に、全質量に対して有利には10質量ppmより少ない量にまでこれから除去することができる。有利には、例えばEP−81041及びDE−1568542により、選択的水素添加によって除去するが、特に有利には選択的水素添加によって全質量に対して5質量ppmより多くない残含量まで、極めて特に有利には1質量ppmより多くない残含量まで除去する。このような前に接続された水素添加は特に方法工程(II)で有利である。これに対して方法工程(I)の実施では、このような水素添加を二重結合異性体化工程の後及びヒドロホルミル化工程の前に予定するのが有利である。これに関しては、下記の個々の方法工程又は修正方法の詳論で詳説する。
【0034】
本発明によれば二重結合異性体化によって、ヒドロホルミル化工程に供給される流れ中の末端位二重結合を有する線状C−オレフィン含量を、使用されたオレフィン含有供給中のその含量に比して高める。異性体化工程で主として内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを末端位二重結合を有するようなものに変える。このような二重結合異性体化用の基質としては、特にβ−オレフィン、従ってi個の炭素原子から成る線状鎖の2−位及び3−位の間に二重結合を有するようなものが好適である。しかし、このような二重結合異性体化反応は個々の異性体の間の熱動力学的平衡により制限されることに留意すべきである。これは、末端位二重結合を有する各々の線状異性体の所定の温度で達成可能な割合を決める。
【0035】
達成可能な変換率は、例えば2−ブテンから1−ブテンへの異性体化では熱動力学的平衡における1−ブテン−異性体の割合(又は通常n−異性体の割合)によって制限される。二重結合異性体化による2−ブテンの1−ブテンへの反応は、高めた温度により促進される。1−ブテンの達成可能な最高収率(2−ブテン−変換率×選択性)は、一回の反応器通過で熱動力学的平衡の状態によって250℃の温度で約16%、400℃の温度で約23%及び500℃の温度で約30%に制限される。記載の収率は、D.Stull"The Chemical Thermodynamics of Organic Compounds"、J.Wiley、New York、1968に公開されている熱動力学的データに基づく。従って、異性体化工程に供給される流れ中の1−ブテンの含量が、通常100〜700℃の範囲である異性体化反応の温度で1−ブテンの平衡濃度より低い場合に、本発明による方法はC−オレフィン含有供給の装入で経済的に行われる。これを確実にするために、方法工程(I)の実施で通常、6:1〜0.1:1の範囲、有利には3:1〜0.2:1の範囲の2−ブテン対1−ブテンの比を有するC−オレフィン含有供給を装入する。
【0036】
方法工程(I)を取り入れて本発明による方法を実施する場合に、ヒドロホルミル化工程に供給される流れを本発明によれば、オレフィン含有供給の一部に二重結合異性体化を行い、次いで部分的に又は全部ヒドロホルミル化に供給し、一方オレフィン含有供給のその他の部分を部分的に又は全部直接ヒドロホルミル化工程に供給して調製する。方法工程(II)を取り入れて本発明による方法を実施する場合には、ホルミル化工程に供給される流れを本発明によれば、オレフィン含有供給を直接ヒドロホルミル化工程に供給し、更にヒドロホルミル化工程からの排出物の一部を、これに二重結合異性体化を行った後に、ヒドロホルミル化工程に戻して、調製する。
【0037】
次に、方法工程(I)を取り入れた本発明の実施を詳説する。
【0038】
方法工程(I)による修正法で方法を実施するために、オレフィン含有供給にヒドロホルミル化前に部分的に二重結合異性体化を行う。このために、例えば各々オレフィン含有供給の全質量に対して、25〜99質量%の範囲、特に35〜98質量%の範囲、特別には50〜95質量%の範囲の割合を二重結合異性体化用に使用する。方法工程(I)に関して本発明により重要なことは、異性体化工程に内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを供給することである。これにより異性体工程の効率的な実施が可能になる。それは異性体化工程に供給される流れの容量を僅かに保つことができ、この供給される流れが、二重結合異性体化工程で実際に反応させられる化合物を高められた割合で含有するからである。オレフィン含有供給中に含まれるその他の化合物、例えば飽和炭化水素及び末端位二重結合を有する線状C−オレフィンは、異性体化工程にできる限り全く供給しないようにすべきである。従って、オレフィン含有供給を二重結合異性体化工程に供給する前に、これらの化合物を、例えば蒸留により、望ましい限りオレフィン含有供給から分離する。二重結合異性体化工程からの排出物を部分的に又は全部、有利には全部ヒドロホルミル化工程に供給する。オレフィン含有供給の二重結合異性体化工程に供給されなかった部分を、部分的に又は全部、有利には実質的に全部、例えば各々オレフィン含有供給の二重結合異性体化工程に供給されなかった部分の全質量に対して50〜99.9質量%の範囲、有利には70〜99質量%の範囲の割合で、ヒドロホルミル化工程に供給する。
【0039】
オレフィン含有供給中に含まれる末端位二重結合を有する線状C−オレフィンは、直接ヒドロホルミル化工程で使用するために好適である。従って有利にはこれを異性体化工程前に少なくとも部分的に、有利にはできる限り全部、例えば各々オレフィン含有供給中の末端位二重結合を有する線状C−オレフィンの全質量に対して10〜99.9質量%の範囲の割合、有利には25〜99質量%の範囲の割合を、オレフィン含有供給から分離する。従って、容易に制御可能な方法で内部位二重結合を有する線状C−オレフィンをできる限り多い割合、例えばオレフィン含有供給中に含まれる内部位二重結合を有する線状C−オレフィンの50質量%より多い、有利には少なくとも75質量%、特に有利には90質量%の割合を二重結合異性体化工程に供給することができる。異性体化に供給するオレフィン含有供給のこの割合が、内部位二重結合を有する線状C−オレフィンの末端位二重結合を有するものへの達成可能な変換率を決定する。この総変換率は通常、各々オレフィン含有供給中の内部位二重結合を有する線状C−オレフィンの全質量に対して、50〜99.0質量%の範囲、特に60〜99.5質量%の範囲、特別には70〜99質量%の範囲である。
【0040】
更に前記総変換率は、異性体化反応で先ず内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを新たにかつ場合により数回、例えば3、4、5回又はそれ以上の回数異性体化工程に供給することによっても高められる。これは例えば、異性体化工程からの排出物から末端位二重結合を有する線状C−オレフィンを、例えば蒸留により分離し、これをヒドロホルミル化に供給するようにして行うことができる。異性体化工程からの排出物中に含まれる、この分離で残留する、内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを新たに異性体工程に供給する。
【0041】
蒸留工程及び異性体化工程を相互に並行して行う方法実施が特に有利であると実証された。従って有利な態様の一つでは、本発明による方法をオレフィン含有供給に方法工程(I)を行うことによって実施するが、その際、(Ia)オレフィン含有供給を蒸留塔に供給し;(Ib)蒸留塔の下部で内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを取出し、取出した流れを少なくとも部分的に第1反応帯域に供給し、二重結合異性体化触媒の存在で反応させ;(Ic)第1反応帯域からの排出物を工程(Ib)で取出した流れの上で蒸留塔に戻し;(Id)蒸留塔の上部で末端位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを取出し、取出した流れ並びに一酸化炭素及び水素を第2反応帯域に供給し、ヒドロホルミル化触媒の存在で反応させる。
【0042】
オレフィン含有供給を蒸留塔に通常液体又は気体として、有利には液体流として供給する。場合によりオレフィン含有供給を蒸留塔に供給する前に、例えば20〜100℃の範囲の温度に加熱することができる。有利にはオレフィン含有供給を蒸留塔に室温又はそれより僅かに高い、例えば21〜40℃の範囲で供給する。蒸留塔への供給は、有利には蒸留塔の上3分の2以内の所で行う。有利にはオレフィン含有供給を、蒸留塔から内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを工程(Ib)で取出す場所の上で供給する。
【0043】
蒸留塔としては、当業者に公知の全ての蒸留塔を使用することができるが、これは塔の塔頂部及びカン部の他に残りの蒸留塔本体の範囲で供給−及び排出口を有していてよい。例えば鐘泡棚段塔、充填蒸留塔、充填塔又は分離壁塔が好適である。有利には、理論分離段数が30〜80段の範囲、特に有利には40〜75段の範囲の蒸留塔を使用する。還流比は、通常5〜75の範囲、特に10〜50の範囲の値に調節する。蒸留は通常1〜50バールの範囲、特に2〜40バールの範囲、特別には5〜20バールの範囲の圧力で実施する。有利には蒸留塔のカン部で通常40〜180℃の範囲、特に50〜150℃の範囲、特別には60〜120℃の範囲の温度に調節する。
【0044】
末端位二重結合を有する線状オレフィン(α−オレフィン)、例えば1−ブテンが内部位二重結合を有する相応する線状オレフィン、特にβ−オレフィン、例えば2−ブテンに比して、通常沸点が低いという理由から、α−オレフィンは蒸留の経過中に塔上部で富化され、一方β−オレフィンは塔の下部で(その唯一の二重結合が各々のC−オレフィンの炭素鎖の1−及び2−位の間にも2−及び3−位の間にも存在しない、場合により存在する、C−オレフィン異性体と一緒に)富化される。従って工程(Ib)で内部位二重結合を有する線状オレフィン、特にβーオレフィンを富化した流れを、本発明により蒸留塔の下部、有利には蒸留塔の下5分の1及び特に有利には塔カン部又はその上の最高5段までの理論床で取出す。通常取出した流れ中のβ−オレフィン、例えば2−ブテンの含量は、取出した流れ中の末端位及び内部位二重結合を有するC−オレフィン、例えば2−ブテン及び1−ブテンの合計に対して、70〜99.99質量%の範囲、特に85〜99.9質量%の範囲である。こうして取出した流れを全部又は少なくとも部分的に、例えば各々取出した流れの全質量に対して25〜99質量%の範囲、特に50〜95質量%の範囲の割合を第1反応帯域に供給する。
【0045】
第1反応帯域で、供給された流れを公知二重結合異性体化触媒の存在で反応させる。異性体化触媒の選択には特別な制限はなく、ただ内部位二重結合を有する線状オレフィン、例えば2−ブテンの末端位二重結合を有する相応する線状オレフィン、例えば1−ブテンへの異性体化を起こすことができるものでなければならない。このために例えば塩基性触媒又はゼオライトをベースとする触媒を使用するが、同時に異性体化を貴金属含有接触作用の水素添加条件下で行うこともできる。二重結合異性体化触媒として、EP−A718036に記載されているような、特に酸化アルミニウム上のアルカリ土類金属酸化物;US4814542に記載されているような、アルカリ土類金属、硼素族金属、ランタニド又は鉄族の元素の酸化物を添加した、混合酸化アルミニウム/酸化珪素担体;並びにJP51−108691に記載されているような、アルカリ金属で被覆したγ−酸化アルミニウムが有利である。更に、US4289919に記載の酸化アルミニウム上の酸化マグネシウムから成る触媒;EP−A234498に記載されているような、酸化アルミニウム担体上に分散させた酸化マグネシウム、アルカリ金属酸化物及び酸化ジルコニウム;及びUS4229610に記載されているような付加的に酸化ナトリウム及び酸化珪素を含有する酸化アルミニウム触媒が好適である。好適なゼオライトベース触媒はEP−A129899に記載されている(ペンタシル型ゼオライト)。更に、US3475511に記載されているようなアルカリ−又はアルカリ土類金属交換分子篩;US4749819に記載されているようなアルモシリケート;並びにUS4992613に記載されているようなアルカリ−又はアルカリ土類金属形のゼオライト及びUS4499326に記載されているような結晶ボロシリケートが好適である。
【0046】
前記二重結合異性体化触媒は通常、固定床−、流動床−又は移動床で使用する。時間単位当たり触媒上に誘導される流れの量が、触媒1g及び1時間当たり0.1〜40gであるのが有利であると実証された。異性体化反応用に連続的に流過する固体床−反応器系が有利である。好適な反応器は、例えば管形反応器、管束反応器、棚段反応器、渦巻き反応器又は螺旋反応器である。
【0047】
工程(Ib)で蒸留塔から取出される流れは、気体状又は液体状で取出すことができる。取出される流れが液状である場合には、第1反応帯域に供給する前に蒸発させる必要がある。その際、蒸発用に使用される装置には特別な制限はない。通常のタイプの蒸発器、例えば自然循環蒸発器又は強制循環蒸発器が好適である。
【0048】
工程(Ib)による気体状流れが第1反応帯域に達する前に、通常所望の反応温度に加熱する必要がある。加熱用に常用の装置、例えばプレート熱伝導体又は管束熱伝導体を使用することができる。第1反応帯域における反応は吸熱反応である。異性体化は有利には、二重結合の移動は確実にするが、しかしながらこれに対して副反応、例えば分解工程、骨格異性体化、脱水素化及びオリゴマー化は十分に阻止する温度で行う。従って第1反応帯域における温度は通常100〜700℃の範囲、有利には150〜600℃の範囲、特に有利には200〜500℃の範囲である。温度調節は通常の自体公知の方法で行うことができる。更に反応を断熱反応系で行うこともできる。この概念は本発明では工業的意味であり、物理化学的意味ではない。圧力は第1反応帯域に供給される流れが気体状であるように調節する。これは通常1〜40バールの範囲、有利には2〜30バールの範囲、特に有利には3〜20バールの範囲である。
【0049】
反応に使用される異性体化触媒上に次第に触媒の不活性化を引き起こしうる炭素含有化合物が沈積する。この沈積物を焼却することによって触媒の活性を再び高めることができる。その際、焼却工程は別の装置中で行ってもよいが、有利には反応に使用される装置中で行うことができる。特別な態様の一つでは、反応器を二重に備えて、交互に一つの装置を反応に使用し、もう一つの装置中で再生を行うことができるようにする。焼却工程用に触媒に通常不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム及び/又はアルゴンと一定の割合の酸素の混合物、特に窒素/酸素混合物を流す。その際、不活性ガス、特に窒素中の酸素の割合は通常1〜20容量%の範囲である。混合物の酸素含量は、再生工程の間有利に変えることができる。有利には例えば1〜10容量%の範囲の僅かな酸素含量で開始し、次いでこれを高める。それによって発熱性の焼却工程によって生じる熱量を制御することができる。再生は、通常300〜900℃の範囲、有利には350〜800℃の範囲、特に有利には400〜700℃の範囲である高めた温度で行う。
【0050】
二重結合異性体化工程からの排出物は、通常第1反応帯域に供給された流れ中の含量に比して、第1反応帯域に供給される流れ中の内部二重結合を有する同じ線状C−オレフィンの全質量に対して、2〜50質量%、特には5〜30質量%だけ低い含量の内部位二重結合を有する線状C−オレフィン、例えば2−ブテンを含有する。工程(Ic)により二重結合異性体化工程からの排出物を、工程(Ib)で塔から取出した流れの取出し場所の上にある蒸留塔の場所で、蒸留塔に戻す。例えば異性体化から排出した流れを、工程(Ib)で取出した流れの取出し場所の上部で1〜30段の理論分離段で、蒸留塔に戻すことができる。
【0051】
二重結合異性体化工程の排出物の蒸留塔への供給は、気体状又は液体状で行うことができる。第1反応帯域の出口の流れと再供給の高さで蒸留塔内部の温度との温度差が大きい場合には、例えば20℃より大きい場合には、異性体化工程からの排出物を冷却することが有利である。冷却又は凝縮は当業者に公知の常用の装置を使用して行う。
【0052】
蒸留塔の上部で、例えば上5段の理論分離段の範囲で、特には塔の塔頂部で、工程(Id)により末端位二重結合を有する線状C−オレフィン、例えば1−ブテンを富化した流れを取出す。工程(Id)で塔から取出した流れ中の末端位二重結合を有する線状C−オレフィン、例えば1−ブテンの含量は、各々末端位又は内部位二重結合を有するC−オレフィン、例えば1−ブテン及び2−ブテンの全量に対して、通常60〜100質量%の範囲及び特に80〜99.99質量%の範囲である。特に工程(Id)で取出した流れは、60〜99.9質量%の範囲で末端位及び内部位二重結合を有する線状オレフィン、0.01〜5質量%の範囲で数回不飽和の化合物、0.01〜40質量%の範囲でその他の化合物、例えば飽和及び/又は枝分かれ炭化水素、特にi個の炭素原子を有するようなものを含む。i=4の場合には、工程(Id)で取出した流れは、例えば60〜99.9質量%の範囲で1−ブテン及び2−ブテン、0.01〜5質量%の範囲で数回不飽和の化合物、例えばブタジエン及び0.01〜40質量%の範囲でその他の化合物、例えばイソブテン、n−ブテン及びイソブテンを含む。
【0053】
前記した数回不飽和の化合物は、一つには使用されるオレフィン供給に由来し、もう一つには特定の条件下で、特に特定の二重結合異性体化−触媒の選択で、また第1反応帯域における反応で生成される。従って、工程(Id)で蒸留塔から取出した流れを第2反応帯域へ供給する前に、数回不飽和の化合物、例えばブタジエン及びアルキンの含量を減少させるために、選択的水素添加を行うことが有利であると実証された。このような選択的水素添加は、既に前記したようにして例えばEP−81041及びDE−1568542により実施することができる。その他の点ではこの水素添加工程に関して前記したことが相応して当てはまる。
【0054】
高沸点成分、例えばi個の炭素原子を有する飽和炭化水素及びi+1個以上のC−原子を有する炭化水素化合物の富化を蒸留塔及び/又は第1反応帯域で阻止するために、通常蒸留塔のカン部又はその上部5段目の理論分離段の範囲で、有利にはカン部で部分流を搬出し、排出する必要がある。この排出された流れは主として内部位二重結合を有する線状C−オレフィン、末端位二重結合を有する線状C−オレフィン、i、i+1個及び場合によりそれより多い炭素原子を有する飽和炭化水素並びに場合により複数回エチレン性不飽和の化合物、例えばジエン又はアルキンから成る。例えばC−オレフィン含有供給を使用する場合には、この部分流は主として1−ブテン、2−ブテン、n−ブタン及び炭素原子5個以上を有する炭化水素から成る。更に、高沸点成分を減少させるために工程(Ib)で塔から取出した流れを方法から排出することができる。この場合に、線状β−オレフィンを富化した流れを蒸留塔のカン部で取出す。搬出し、排出した部分流中の内部位二重結合を有する線状C−オレフィンの含量は、各々内部位及び末端位二重結合を有する線状C−オレフィン例えば2−ブテン及び1−ブテンの合計に対して、通常80〜99.99質量%の範囲、特に90〜99.9質量%の範囲である。蒸留塔のカン部で高沸点化合物を排出するために別に流れを搬出する場合には、内部位二重結合を有する線状C−オレフィン、例えば2−ブテンのその含量は、工程(Ib)で塔から取出した流れ中の内部位二重結合を有する同じ線状C−オレフィン、例えば2−ブテンの含量に対して10質量%だけ、高くなっている。塔のカン部で取出される流れの量及びその内部位二重結合を有する線状C−オレフィンの含量は、線状β−オレフィンから線状α−オレフィンへの、例えば2−ブテンから1−ブテンへの反応の総変換率により決まり、これは、オレフィン含有供給中の内部位二重結合を有する線状C−オレフィンの全質量に対して、有利には50〜99.9質量%の範囲、特に有利には60〜99.5質量%の範囲、極めて特に有利には70〜99質量%の範囲である。有利には搬出され、排出される流れの割合は、各々工程(Ib)で蒸留塔から取出した流れの全質量に対して、最高5質量%、有利には最高1質量%、特には最高0.1質量%であり、例えば0.001〜5質量%の範囲、特に0.005〜1質量%の範囲である。
【0055】
たった今記載したように、工程(Ib)で取出した流れの一部又は蒸留塔のカン部で別に取出した流れを方法から排出する代わりに、この搬出した部分流を、予定している場合には、前記の選択的水素添加に供給することができる。これは、第1及び第2反応帯域が、触媒を損なう恐れのある成分を十分不含である状態を保ち、他方同時に搬出された流れ中に含有される線状C−オレフィン、特に末端位二重結合を有するようなものを第2反応帯域で使用するために利用可能にすることができるという付加的な利点を有する。特にここに記載した方法で蒸留塔から搬出し、選択的水素に供給した流れが、工程(Ib)で蒸留塔から取出した流れに比して僅かである場合、例えば各々工程(Ib)で蒸留塔から取出した流れの全質量に対して、最高5質量%、特に最高1質量%及び特別には最高0.1質量%の割合となる、例えば0.001〜5質量%の範囲、特に0.05〜1質量%の範囲である場合には、このように行う。
【0056】
特に有利な実施態様の一つでは、工程(Ia)から(Id)までで行われる蒸留及び異性体化を、蒸発及び加熱用の熱流を冷却及び凝縮用の熱流と組み合わせるように設定する。このような熱統合により反応単位用の熱消費を最小化することができる。
【0057】
工程(Id)で蒸留塔から取出した末端位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを第2反応帯域に供給する。更にこの第2反応帯域に一酸化炭素及び水素を供給する。第2反応帯域中で供給された流れをヒドロホルミル化触媒の存在で反応させる。第2反応帯域(ヒドロホルミル化工程)は1段又は多段工程(反応工程)、例えば2段又は3段工程で実施してよく、それに応じて、1個以上の、同一又は異なる反応器を含む。最も簡単な場合には、第2反応帯域又は第2反応帯域の各反応段階が単一の反応器から成る。各個々の段階の反応器並びに異なる段階を形成する反応器は、各々同一又は異なる混合特性を有することができる。反応器は所望により1個以上の部品によって区分けされていてよい。2個以上の反応器が第2反応帯域の反応系の1段階を形成する場合には、これは重なり合って任意に、例えば平行して又は一列で、接続されていてよい。ヒドロホルミル化用に好適な耐圧反応装置は、当業者に公知である。これには気液反応用に常用の反応器、例えば管形反応器、攪拌釜、ガス循環反応器、蒸留塔等が挙げられ、これらは場合により部品によって区分けされていてもよい。
【0058】
一酸化炭素及び水は、通常混合物、いわゆる合成ガスの形で使用する。使用される合成ガスの組成は広い範囲で変えることができる。その際、第2反応帯域の1個又は数個の反応器中又は場合によりで第2反応帯域の一つの反応工程を作る反応器中で、CO対Hの同一又は異なるモル比を使用することができる。一酸化炭素及び水素のモル比は、通常1:1000〜1000:1、有利には1:100〜100:1である。
【0059】
ヒドロホルミル化反応の温度は、通常約20〜200℃、有利には約50〜190℃、特に約60〜180℃の範囲である。第2反応帯域の多段工程の実施では、例えばヒドロホルミル化しにくいオレフィンのできる限り完全な反応を可能にするために、場合により次の反応工程で前の反応工程より高い温度に調節することができる。第2反応帯域又はその反応工程が1個以上の反応器を含む場合には、これらは同じく同一又は異なる温度を有することができる。第2反応帯域中における反応は、有利には約1〜700バールの範囲、特に有利には3〜600バールの範囲、極めて特に有利には5〜50バールの範囲の圧力で行う。反応圧力は第2反応帯域で、使用されるヒドロホルミル化触媒の活性によって変えることができる。従って下記に詳説するヒドロホルミル化触媒は、部分的に特に例えば約1〜100バールの範囲のような低い圧力範囲における反応を可能にする。
【0060】
第2反応帯域の反応器容量及び/又は滞留時間は、ヒドロホルミル化工程に供給される流れの全オレフィン含量に対して通常少なくとも約10質量%の装入されたオレフィンが反応するように選択する。有利には第2反応帯域におけるヒドロホルミル化工程に供給される流れのオレフィン量に対する変換率は、少なくとも25質量%である。
【0061】
第2反応帯域(ヒドロホルミル化工程)用に好適なヒドロホルミル化触媒は、極めて一般的には当業者に公知の常用の遷移金属化合物及び錯体であり、これは共触媒と一緒に使用することも、それなしに使用することもできる。遷移金属は、有利には周期系の第VIII副族の金属、特にCo、Ru、Rh、Pd、Pt、Os又はIr、特にRh、Co、Ir又はRuである。
【0062】
下記で用語"アルキル"には直鎖及び枝分かれアルキル基が含まれる。その際、有利には直鎖又は枝分かれC−C20−アルキル、有利にはC−C12−アルキル−、特に有利にはC−C−アルキル及び極めて特に有利にはC−C−アルキル基である。アルキル基の例は、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、ノニル、デシルである。
【0063】
用語"アルキル"には、基、シクロアルキル、アリール、ヘタアリール、ハロゲン、NE、NE3+、COOH、カルボキシレート、−SOH及びスルホネートから選択した置換基通常1、2、3、4又は5個、有利には1、2又は3個、特に有利には1個を有することができる、置換されたアルキル基も含まれる。
【0064】
本発明で用語"アルキレン"は、炭素原子1〜4個を有する直鎖又は枝分かれアルカンジイル基を表す。
【0065】
本発明で用語"シクロアルキル"には、非置換並びに置換シクロアルキル基、有利にはC−C−シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルが含まれるが、これは置換の場合には、アルキル、アルコキシ及びハロゲンから選択した置換基通常1、2、3、4又は5個、有利には1、2又は3個、特に有利には1個を有することができる。
【0066】
本発明で用語"ヘテロシクロアルキル"には、1又は2個の環炭素原子が酸素、窒素及び硫黄の元素から選択したヘテロ原子により置換されており、場合により置換されていてもよい、通常4〜7個、有利には5又は6個の環原子を有する飽和の脂環式基が含まれるが、その際置換の場合には、この複素環式脂肪族基は、アルキル、アリール、COOR、COO及びNE、有利にはアルキルから選択した置換基1、2又は3個、有利には1又は2個、特に有利には1個を有することができる。このような複素環式脂肪族基の例としては、ピロリジニル、ピペリジニル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、モルホリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、ピペラジニル−、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニルが挙げられる。
【0067】
本発明で用語"アリール"には、非置換並びに置換アリール基が含まれ、有利にはフェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル又はナフサセニル、特に有利にはフェニル又はナフチルを表すが、その際このアリール基は置換の場合には、基アルキル、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、トリフルオロメチル、−SOH、スルホネート、NE、アルキレン−NE、ニトロ、シアノ又はハロゲンから選択した置換基通常1、2、3、4又は5個、有利には1、2又は3個、特に有利には1個を有することができる。
【0068】
本発明で用語"ヘタアリール"には、非置換並びに置換の、複素環式芳香族基、有利には基ピリジル、キノリニル、アクリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル並びに"ピロール基"の下部群が含まれるが、その際この複素環式芳香族基は置換の場合には、基アルキル、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、−SOH、スルホネート、NE、アルキレン−NE、トリフルオロメチル又はハロゲンから選択した置換基通常1、2又は3個を有することができる。
【0069】
本発明で用語"ピロール基"は、一連の非置換並びに置換の、複素環式芳香族基を表すが、これは構造的にピロール基礎骨格から誘導され、ピロール性窒素原子を複素環に含有し、これはその他の原子、例えばプニコゲン原子と共有結合することができる。従って用語"ピロール基"には非置換又は置換基ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、インドリル、プリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル及びカルバゾリルが含まれるが、これは置換の場合には基アルキル、アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシレート、−SOH、スルホネート、NE、アルキレン−NE、トリフルオロメチル又はハロゲンから選択した置換基1、2又は3個、有利には1又は2個、特に有利には1個を有することができる。有利な置換されたインドリル基は3−メチル−インドリル基である。
【0070】
従って本発明で用語"ビスピロール基"には、直接化学結合又はアルキレン−、オキサ−、チオ−、イミノ−、シリル−又はアルキルイミノ基が連結の役をする結合によって結合した2個のピロール基を含有する式
【化1】

の二価の基、例えば、2個の直接結合したピロール基、この場合にはインドリル、を含有するビスピロール基の例として、式
【化2】

のビスインドールジル基又はメチレン基を介して結合した2個のピロール基、この場合にはピロリル、を含有するビスピロール基の例として、式
【化3】

のビスピロールジイルメタン基が含まれる。ピロール基と同じくビスピロール基も非置換であっても、置換されていてもよく、置換の場合にはピロール基1単位当たり通常1、2又は3個、有利には1又は2個、特には1個の、アルキル、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、−SOH、スルホネート、NE、アルキレン−NE、トリフルオロメチル又はハロゲンから選択した置換基を有することができ、その際この可能な置換基の数の記載で、直接化学結合又は前記基により媒介される結合によるピロール基単位の結合は置換とは見なさない。
【0071】
本発明でカルボキシレート及びスルホネートは、有利にはカルボン酸官能基又はスルホン酸官能基の誘導体、特に金属カルボキシレート又は−スルホネート、カルボン酸−又はスルホン酸エステル官能基又はカルボン酸−又はスルホン酸アミド官能基を表す。これには、例えばC−C−アルカノールを有するエステル、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール及びt−ブタノールが挙げられる。更に第一アミド及びそのN−アルキル−及びN,N−ジアルキル誘導体が挙げられる。
【0072】
用語"アルキル"、"シクロアルキル"、"アリール"、"ヘテロシクロアルキル"及び"ヘタリール"に関する前記説明は、用語"アルコキシ"、"シクロアルコキシ"、"アリールオキシ"、 "ヘテロシクロアルコキシ"及び "ヘタリールオキシ"に相応して当てはまる。
【0073】
本発明で用語"アシル"は、炭素原子通常2〜11個、有利には2〜8個を有するアルカノイル−又はアロイル基、例えばアセチル−、プロパノイル−、ブタノイル−、ペンタノイル−、ヘキサノイル−、ヘプタノイル−、2−エチルヘキサノイル−、2−プロピルヘプタノイル−、ベンゾイル−又はナフソイル基を表す。
【0074】
基NE、NE、NE、NE1011、NE1314、NE1617、NE1920、NE2223及びNE2526は、有利にはN,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジプロピルアミノ、N,N−ジイソプロピルアミノ、N,N−ジ−n−ブチルアミノ、N,N−ジ−t−ブチルアミノ、N,N−ジシクロヘキシルアミノ又はN,N−ジフェニルアミノを表す。
【0075】
ハロゲンは、弗素、塩素、臭素及び沃素、有利には弗素、塩素及び臭素を表す。
【0076】
は、陽イオン当量、即ち一価の陽イオン又は多価陽イオンの一つの正電荷に相応する部分を表す。陽イオンMは、負に帯電した置換基、例えばCOO−又はスルホネート基の中和用の反対イオンとして作用するだけであり、原則として任意に選択することができる。従って有利にはアルカリ金属イオン、特にNa、K、Li−イオン又はオニウム−イオン、例えばアンモニウム−、モノ−、ジ−、トリ−、テトラアルキルアンモニウム−、ホスホニウム−、テトラアルキルホスホニウム−又はテトラアリールホスホニウム−イオンを使用する。
【0077】
相応することが陰イオン当量Xにも当てはまり、これは正に帯電した置換基、例えばアンモニウム基の反対イオンとして作用するだけであり、一価の陰イオン及び多価陰イオンの一つの負電荷に相応する部分下から任意に選択することができる。好適な陰イオンは例えばハロゲンイオンX、例えばクロリド及びブロミドである。有利な陰イオンはスルフェート及びスルホネート、例えばSO2−、トシレート、トリフルオロメタンスルホネート及びメチルスルホネートである。
【0078】
xの値は、1〜240の整数、有利には3〜120の整数を表す。
【0079】
縮合した環系は、縮合により結合した(縮合した)芳香族、ヒドロ芳香族及び環式化合物であってよい。縮合した環系は、2個、3個又は3個以上の環から成る。結合種類に応じて縮合された環系で、オルト縮合(即ち各環が各々隣接環と各々一辺又は2個の原子を一緒に有する)とペリ縮合(炭素原子が2より多い環に属す)に分ける。縮合環系でオルト縮合された環系が有利である。
【0080】
有利な錯体化合物は、少なくとも1個の燐原子含有化合物を配位子として含む。燐原子含有化合物は有利には、PF、ホスホール、ホスファベンゼン、単−、二−及び多座ホスフィン−、ホスフィニット−、ホスホニット−、ホスホールアミディット−、ホスフィット配位子及びその混合物である。
【0081】
本発明によりヒドロホルミル化工程用に使用される触媒は、なお少なくとも1個の、有利にはハロゲン、アミン、カルボキシレート、アセチルアセトネート、アリール−又はアルキルスルホネート、ヒドリド、CO、オレフィン、ジエン、シクロオレフィン、ニトリル、N−含有複素環、芳香族物質及びヘテロ芳香族物質、エーテル及びその混合物の中から選択したその他の配位子を有することができる。
【0082】
通常、ヒドロホルミル化条件下で各々使用される触媒又は触媒前駆物質から、一般式H(CO)[式中、Mは第VIII副族の金属を表し、Lは燐含有化合物を表し、q、x、y、zは、金属の価数及び種類並びに配位子Lの結合に左右されて、整数を表す]の触媒が生成される。有利にはz及びqは、相互に無関係に少なくとも1の値、例えば1、2又は3を表す。z及びqの合計は有利には1〜5の値を表す。その際錯体は所望のより付加的になお少なくとも1個の前記したその他の配位子を有することができる。
【0083】
有利な態様により、ヒドロホルミル化触媒は現場でヒドロホルミル化反応に使用される反応器中で製造する。しかし所望によっては本発明による触媒は別個に製造することもでき、常法により単離することができる。本発明による触媒の現場製造用に、例えば少なくとも1個の燐原子含有配位子、第VIII副族の金属の化合物又は錯体、場合により少なくとも1種のその他の付加的な配位子及び場合により活性化剤を不活性溶剤中でヒドロホルミル化条件下で反応させることができる。
【0084】
好適なロジウム化合物又はロジウム錯体は、例えばロジウム(II)−及びロジウム(III)−塩、例えば塩化ロジウム(III)、硝酸ロジウム(III)、硫酸ロジウム(III)、カリウム−ロジウムスルフェート、ロジウム(II)−又はロジウム(III)−カルボキシレート、ロジウム(II)−又はロジウム(III)−アセテート、酸化ロジウム(III)、ロジウム(III)酸の塩、トリスアンモニウムヘキサクロロロデート(III)等である。更にロジウム錯体、例えばロジウムビスカルボニルアセチルアセトネート、アセチルアセトネートビスエチレンロジウム(I)等が好適である。有利にはロジウムビスカルボニルアセチルアセトネート又は酢酸ロジウムを使用する。
【0085】
同じくルテニウム塩又はルテニウム化合物が好適である。好適なルテニウム塩は、例えば塩化ルテニウム(III)、酸化ルテニウム(IV)、酸化ルテニウム(VI)又は酸化ルテニウム(VIII)、ルテニウム酸素酸のアルカリ金属塩、例えばKRuO又はKRuO又は錯化合物、例えばRuHCl(CO)(PPhである。ルテニウムの金属カルボニル、例えばトリスルテニウムドデカカルボニル又はヘキサルテニウムオクタデカカルボニル又は、COが部分的に式PRの配位子により置換されている混合形、例えばRu(CO)(PPhを本発明による方法で使用することもできる。
【0086】
好適なコバルト化合物は、例えば塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、炭酸コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、そのアミン−又は水和物錯体、コバルトカルボキシレート、例えば酢酸コバルト、コバルトエチルヘキサノエート、コバルトナフタノエート並びにコバルト−カプロエート−錯体である。ここでコバルトのカルボニル錯体、例えばジコバルトオクタカルボニル、テトラコバルトドデカカルボニル及びヘキサコバルトヘキサデカルボニルを使用することもできる。
【0087】
コバルト、ロジウム、ルテニウム及びイリジウムの前記及びその他の好適な化合物は原則的に公知であり、文献で十分に記載されているか又は当業者により既に公知の化合物と同様にして製造することができる。
【0088】
好適な活性化剤は例えばブレーステッド酸、ルイス酸、例えばBF、AlCl、ZnCl、SnCl及びルイス塩基である。
【0089】
溶剤としては、有利には各々のオレフィンのヒドロホルミル化で生じるアルデヒド並びにその高沸点二次反応生成物、例えばアルドール縮合の生成物を使用する。同様に好適な溶剤は、前記アルデヒド及びアルデヒドの二次生成物を希釈するためにも、芳香族物質、例えばトルエン及びキシレン、炭化水素又は炭化水素の混合物である。その他の溶剤は脂肪族カルボン酸のアルカノールとのエステル、例えば酢酸エステル又はTexanolTM、エーテル、例えばt−ブチルメチルエーテル及びテトラヒドロフランである。
【0090】
ヒドロホルミル化工程用に好適なヒドロホルミル化触媒は、例えばBellerその他Journal of Molecular Catalysis A、104(1995)17〜85頁に記載されているが、これに関して全範囲本明細書に関連する。
【0091】
第2反応帯域の触媒系は、配位子として少なくとも1種の有機燐(III)化合物を有する元素の周期系の第VIII副族の金属の錯体少なくとも1種を含むのが有利である。
【0092】
一般式PR[式中、R、R及びRは相互に無関係に、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを表すが、その際アルキル基は、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、COOH、カルボキシレート、SOH、スルホネート、NE、NE3+、ハロゲン、ニトロ、アシル又はシアノから選択した置換基1、2、3、4又は5個を有していてよく、ここでE、E及Eは各々、水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールから選択した同一又は異なる基を表し、Xは一価の陰イオン当量を表し、その際シクロアルキル−、ヘテロシクロアルキル−、アリール−及びヘタリール基は、アルキル及び前にアルキル基R、R及びRに関して挙げた置換基から選択した置換基1、2、3、4又は5個を有していてよく、その際、R及びRはそれらが結合している燐原子と一緒になって、場合により付加的に1、2又は3個シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールと縮合している5員から8員の複素環を表し、その際複素環及び、場合により存在する場合には、縮合された基は、相互に無関係にアルキル及び前にアルキル基R、R及びRに関して挙げた置換基から選択した置換基各々1、2、3又は4個を有することができる]の化合物から選択した有機燐(III)化合物が有利である。
【0093】
好適な有機燐(III)化合物は、更に一般式RP−Y−PR[式中、R及びRは、前記したものを表し、Yは二価の架橋性基を表す]のキレート化合物である。その際二つの基R、二つの基R及び二つの基Rは、各々同一又は異なるものを表してよい。
【0094】
架橋性基Yは有利には、下記に記載の式III.aからIII.tまでから選択するが、これに関してここに全て記載する。特に有利な実施態様の一つでは、Yは式III.aの基を表す。もう一つの有利な実施態様では、Yは式
【化4】

[式中、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、ヒドロキシ、チオール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンイミン、アルコキシ、ハロゲン、COOH、カルボキシレート、SOH、スルホネート、NE、アルキレン−NE、トリフルオロメチル、ニトロ、アルコキシカルボニル、アシル又はシアノを表し、E及びEは、水素、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択した各々同一又は異なる基を表し、その際、2個の隣接する基RからRVIは、これらが結合しているベンゼン核の炭素原子と一緒になって1、2又は3個のその他の環と縮合した環系を表してもよく、R及びRは、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを表す]の基を表す。
【0095】
第2反応帯域に使用するために特に有利なヒドロホルミル化触媒は、例えばヒドロホルミル化条件下で現場でロジウム源及びトリアリールホスフィン、例えばトリフェニルホスフィンから製造されるような、燐含有ロジウム触媒である。
【0096】
第2反応帯域の触媒として使用するために、WO00/56451に公開されている少なくとも1種のホスフィンアミジド配位子をベースとする触媒も好適である。更に、Veenその他著Angew.Chem.Int.ed.1999、38、336に記載されている、キサンテン型の主鎖構造を有するキレートジホスフィンをベースとする触媒が好適である。更に、WO01/85661に記載のアダマンタン配位子を有する金属錯体及びWO01/85662に記載の2個の架橋したホスファアダマンチル基又はホスファ−オキサ−アダマンチル基を有するジホスフィン配位子をベースとする金属錯体が好適である。更にDE−A−10023471に記載のヒドロホルミル化触媒が好適である。WO01/58589に記載の燐含有のジアリール縮合されたビシクロ[2.2.n]−基礎体をベースとするヒドロホルミル化触媒が特に好適である。
【0097】
更に、好適な有機燐(III)化合物は特に一般式I
【化5】

[式中、Yは二価の架橋性基を表し、Rα、Rβ、Rγ及びRδは、相互に無関係に、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを表すが、その際アルキル基は、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、ヒドロキシ、チオール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンイミン、COOH、カルボキシレート、SOH、スルホネート、NE1011、NE101112+、ハロゲン、ニトロ、アシル又はシアノから選択した置換基1、2、3、4又は5個を有していてよく、ここでE10、E11及E12は各々、水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールから選択した同一又は異なる基を表し、Xは一価の陰イオン当量を表しかつその際、シクロアルキル−、ヘテロシクロアルキル−、アリール−及びヘタリール基Rα、Rβ、Rγ及びRδは、アルキル及び前にアルキル基Rα、Rβ、Rγ及びRδに関して挙げた置換基から選択した置換基1、2、3、4又は5個を有していてよいか又はRα及びRβ及び/又はRγ及びRδは、燐原子及び存在する場合には、それらが結合している基X、X、X及びXと一緒になって、場合により付加的に1、2又は3個シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールと縮合している5員から8員の複素環を表し、その際、複素環及び、場合により存在する場合には、縮合された基は、相互に無関係に、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、ヒドロキシ、チオール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンイミン、アルコキシ、ハロゲン、COOH、カルボキシレート、SOH、スルホネート、NE1314、NE131415+、ニトロ、アルコキシカルボニル、アシル又はシアノから選択した置換基1、2、3又は4個を有してよく、ここでE13、E14及びE15は、水素、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択した各々同一又は異なる基を表し、Xは一価の陰イオン当量を表し、X、X、X、X、X及びXは、相互に無関係に、O、S、SiRεζ及びNRηから選択し、ここでRε、Rζ及びRηは、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタアリールを表し、d、e、f、g、h及びiは、相互に無関係に、0又は1を表す]のキレート化合物である。
【0098】
式I中の架橋性基Yは、下記の式III.aからIII.bまでの式の基から選択するのが有利であり、これに関しては全範囲本発明に関連する。
【0099】
特に第2反応帯域の触媒として使用される燐キレート化合物は、キレートホスホナイト、キレートホスファイト及びキレートホスホルアミダイトから選択する。
【0100】
更に、WO02/2226に記載の触媒が第2反応帯域の触媒として使用するために好適であるが、これはキサンテン基礎骨格を有するキレートホスホナイト及びキレートホスファイトから選択した配位子少なくとも1個を有する第VIII副族の金属の錯体少なくとも1種を含む。更にWO02/083695に記載の、配位子としてキサンテン−又はトリプチセン型の基礎骨格を有するプニコゲンキレート化合物をベースとするプニコゲンキレート錯体が好適である。更にWO03/018192に記載の、配位子として少なくとも1種のピロール−燐−化合物を有する触媒が好適である。更に、ドイツ特許出願DE10243138.8に記載の触媒が好適である。前記文書の公開は全範囲本発明に関連する。
【0101】
第2反応帯域の触媒系には有利には、配位子として一般式
【化6】

[式中、R、R、R及びRは、相互に無関係に、酸素原子又は場合により置換された窒素原子を介して燐原子と結合しているヘテロ原子含有基を表すか又はRがRと一緒になって及び/又はRがRと一緒になって、酸素及び/又は場合により置換された窒素から選択した2個のヘテロ原子を介して燐原子と結合している二価のヘテロ原子含有基を形成し、a及びbは相互に無関係に0又は1の数を表し、Yは、側面に並ぶ結合間に橋状原子2〜30個を有する二価の架橋性基を表すが、その際、少なくとも2個の橋状原子は脂環式又は芳香族基の一部である]の少なくとも1種の燐キレート化合物を有する元素の周期系の第VIII副族の金属の錯体少なくとも1種が含まれる。
【0102】
式IIの燐キレート化合物の個々の燐原子は、各々2個の共有結合を介して置換基R及びR又はR及びRと結合しており、その際、R、R、R及びRは最初の実施態様では、酸素原子又は場合により置換された窒素原子を介して燐原子と結合している、ヘテロ原子含有基を表し、その際、R及びR又はR及びRは相互に結合していない。従って有利にはR、R、R及びRは、ピロール性窒素原子を介して燐原子Pnと結合したピロール基を表す。その際、概念ピロール基の意味は、前記した定義に相応する。
【0103】
もう一つの実施態様では、RはRと一緒になって及び/又はRはRと一緒になって、酸素及び場合により置換された窒素原子から選択した2個のヘテロ原子を介して燐原子と結合している、二価のヘテロ原子含有基を形成する。従って有利には、置換基Rは置換基Rと一緒になって及び/又は置換基Rは置換基Rと一緒になって、ピロール性窒素原子を介して燐原子と結合したビスピロール基を形成することができる。更に、有利には置換基Rは置換基Rと一緒になって及び/又は置換基Rは置換基Rと一緒になって、2個の酸素原子を介して燐原子と結合した架橋性基を形成することができる。
【0104】
式中、基R、R、R及びRが相互に無関係に式II.aからII.k
【化7】

[式中、AlkはC−C−アルキル基であり、R、R、R及びRは相互に無関係に、水素、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、アシル、ハロゲン、トリフルオロメチル、C−C−アルコキシカルボニル又はカルボキシルを表す]の基から選択される燐キレート化合物が有利である。
【0105】
具体的に説明するために下記に有利なピロール基を記載する:
【化8】

【0106】
式II.f1の3−メチルインドリル基(スカトリル基)が特に有利である。
【0107】
燐原子と結合した1個以上の3−メチルインドリル基を有する配位子をベースとするヒドロホルミル化触媒は、特に高い選択性及びそれによって特に長い触媒持続時間によって優れている。
【0108】
本発明のもう一つの有利な態様では、置換基Rは置換基Rと一緒になって及び/又は置換基Rは置換基Rと一緒になって、ピロール性窒素原子を介して燐原子と結合したピロール基を含有する式
【化9】

[式中、Pyはピロール基であり、Iは化学結合又はO、S、SiRεζ、NRη又は場合により置換されたC−C10−アルキレン、有利にはCRλμを表し、Wはシクロアルキルオキシ又は−アミノ、アリールオキシ又は−アミノ、ヘタリールオキシ又は−アミノを表し、Rε、Rζ、Rη、Rλ及びRμは、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを表し、その際ここで使用した表記は最初に記載したものを表す]の二価の基を形成することができる。
【0109】

【化10】

の有利な二価の基は、例えば
【化11】

である。
【0110】
式中、置換基Rは置換基Rと一緒になって及び/又は置換基Rは置換基Rと一緒になって、式
【化12】

[式中、Iは化学結合又はO、S、SiRεζ、NRη又は場合により置換されたC−C10−アルキレン、有利にはCRλμを表し、ここでRε、Rζ、Rη、Rλ及びRμは、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを表し、R35、R35’、R36、R36’、R37、R37’、R38及びR38’は、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、WCOOR、WCOO、W(SO)R、W(SO、WPO(R)(R)、W(PO2−(M、W1617、W(NE161718、WOR、WSR、(CHRCHO)、(CHNE16、(CHCHNE16、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、アシル又はシアノを表し、ここで、W’は単結合、ヘテロ原子、ヘテロ原子含有基又は橋状原子1〜20個を有する二価の架橋性基を表し、R、E16、E17、E18は、各々水素、アルキル、シクロアルキル又はアリール基から選択した同一又は異なる基を表し、Rは水素、メチル又はエチルを表し、Mは一価の陽イオン当量を表し、Xは一価の陰イオン当量を表し、xは1〜240の整数を表し、その際各々2個の隣接基R35及びR36及び/又はR35’及びR36’は、それらが結合しているピロール環の炭素原子と一緒になって、その他の環1、2又は3個を有する縮合環系を表すことができる]のビスピロール基を形成する燐キレート化合物が有利である。
【0111】
有利にはIは、化学結合又はC−C−アルキレン基、特にメチレン基を表す。
【0112】
具体的に説明するために、下記に有利な"ビスピロリル基"を幾つか記載する:
【化13】

【0113】
更に、式中R及びR及び/又はR及びRは、各々それらが結合しているプニコゲン原子と一緒になって、一般式II.A
【化14】

[式中、k及びlは、相互に無関係に、0又は1を表し、Qは、それが結合している燐原子及び酸素原子と一緒になって、場合により1個、2個又は3個シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及び/又はヘタリールと縮合している5員から8員の複素環を表し、その際、縮合基は、相互に無関係に、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ヘタリール、ヒドロキシ、チオール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンイミン、COOH、カルボキシレート、SOH、スルホネート、NE、アルキレン−NE、ニトロ及びシアノから選択した置換基1、2、3又は4個を有してよく及び/又はQは、アルキル、アルコキシ、場合により置換されたシクロアルキル及び場合により置換されたアリールから選択した1個、2個又は3個の置換基を有してよく及び/又はQは1個、2個又は3個の場合により置換されたヘテロ原子により中断されていてよい]の基を表す、一般式IIの燐キレート化合物が有利である。
【0114】
一般式II.Aの基が酸素原子を介して(a又はb=1)又は共有結合を介して(a又はb=0)基Yと結合しているか否か及びkが0又は1を表すか否かによって、本発明による式IIの燐キレート化合物は少なくとも1個のホスフィン−、ホスフィナイト−、ホスホナイト−及び/又はホスファイト基を有する。式II.Aの基が酸素原子を介して基Yと結合し、k及びlが1を表す(ホスファイト基)のが有利である。
【0115】
基Qは、有利には1個又は2個アリールと縮合しており及び/又はアルキル、場合により置換されたシクロアルキル及び場合により置換されたアリールから選択した置換基を有していてよく及び/又は場合により置換されたヘテロ原子によって中断されていてよいC−C−アルキレン橋を表す。
【0116】
基Qの縮合されたアリーレンは、有利にはベンゼン又はナフタリンである。縮合されたベンゼン環は、有利には置換されていないか又はアルキル、アルコキシ、ハロゲン、SOH、スルホネート、NE、アルキレン−NE、トリフルオロメチル、ニトロ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アシル及びシアノから選択した置換基1、2又は3個、特に1又は2個を有する。縮合されたナフタリンは、有利には置換されていないか又は非縮合環中及び/又は縮合された環中に縮合されたベンゼン環で前記した置換基1、2又は3個、特に1個又は2個を有する。縮合されたアリールの置換基でアルキルは有利にはC−C−アルキル、特にメチル、イソプロピル及びt−ブチルを表す。その際、アルコキシは有利にはC−C−アルコキシ、特にメトキシを表す。アルコキシカルボニルは有利にはC−C−アルコキシカルボニルを表す。その際、ハロゲンは特に弗素及び塩素を表す。
【0117】
基QのC−C−アルキレン橋が、場合により置換されたヘテロ原子1、2又は3個により中断されている場合には、これは有利にはO、S又はNR(式中、Rはアルキル、シクロアルキル又はアリールを表す)から選択される。有利にはC−C−アルキレン橋は場合により置換されたヘテロ原子1個により中断されている。
【0118】
基QのC−C−アルキレン橋が置換されている場合には、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択した置換基1、2又は3個、特に1個を有し、その際アリール置換基はアリールに関して前記した置換基1、2又は3個を有してよい。有利にはアルキレン橋Qは、メチル、エチル、イソプロピル、フェニル、p−(C−C−アルキル)フェニル、有利にはp−メチルフェニル、p−(C−C−アルコキシ)フェニル、有利にはp−メトキシフェニル、p−ハロゲンフェニル、有利にはp−クロロフェニル及びp−トリフルオロメチルフェニルから選択した置換基を有する。
【0119】
有利には基Qは、前記したように縮合されており及び/又は置換されており及び/又は場合により置換されたヘテロ原子により中断されているC−C−アルキレン橋を表す。特に基Qは、1個又は2個ベンゼン及び/又はナフタリンと縮合しているC−C−アルキレン橋を表し、その際フェニル−又はナフチル基は前記した置換基1、2又は3個、特に1又は2個を有してよい。
【0120】
有利には基Q(即ち、R及びR又はR及びRが一緒)は、これが結合している燐原子及び酸素原子と一緒になって、5員から8員の複素環を表すが、その際Q(即ち、R及びR又はR及びRが一緒)は、式II.1からII.5
【化15】

[式中、ZはO、S又はNRを表し、その際Rはアルキル、シクロアルキル又はアリールを表すか又はZは、二重結合及び/又はアルキル−、シクロアルキル−又はアリール置換基から選択した置換基少なくとも1個を有してよい、C−C−アルキレン橋を表し、その際アルキル−、シクロアルキル−又はアリール置換基自体これらの基に関して最初に記載した置換基1、2又は3個を有してよいか又はZは、O、S又はNRにより中断されているC−C−アルキレン橋を表し、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28及びR29は、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲン、SOH、スルホネート、NE1920、アルキレン−NE1920、トリフルオロメチル、ニトロ、アルコキシカルボニル、カルボキシル又はシアノを表し、ここでE19及びE20は、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールを表す]の基から選択される基を表す。
【0121】
有利にはQは、式中R20、R21及びR22が水素を表す式II.1の基を表す。
【0122】
有利にはQは、式II.2a
【化16】

[式中、R20及びR24は、水素、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、SOH、スルホネート、NE10、アルキレン−NE10、有利には水素、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシ、特にメチル、メトキシ、イソプロピル又はt−ブチルを表し、R21及びR23は、水素、C−C−アルキル、有利にはメチル、イソプロピル又はt−ブチル、C−C−アルコキシ、有利にはメトキシ、弗素、塩素又はトリフルオロメチルを表す]の基を表す。R21は、SOH、スルホネート、NE10又はアルキレン−NE10を表してもよい。
【0123】
有利にはQは、式II.3a
【化17】

[式中、R20、R21、R23及びR24は式II.2aで前記したものを表し、Rは、水素、C−C−アルキル、有利にはメチル又はエチル、フェニル、p−(C−C−アルコキシ)フェニル、有利にはp−メトキシフェニル、p−フルオロフェニル、p−クロロフェニル又はp−(トリフルオロメチル)フェニルを表す]の基を表す。
【0124】
有利にはQは、式中、R20からR29が水素を表す式II.4の基を表す。
【0125】
有利にはQは、式中、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R27及びR29が水素を表し、基R26及びR28が、相互に無関係に、アルコキシカルボニル、有利にはメトキシ−、エトキシ−、n−プロピルオキシ−又はイソプロピルオキシカルボニルを表す、式II.4の基を表す。特に基R26及びR28は、燐原子又は存在する場合には(k及び/又は=1)酸素原子に対してオルト位である。
【0126】
有利にはQは、式中、R20からR29が水素を表し、ZがCRn’を表し、その際、R及びRn’は相互に無関係に、水素、C−C−アルキル、有利にはメチル又はエチル、フェニル、p−(C−C−アルコキシ)フェニル、有利にはp−メトキシフェニル、p−フルオロフェニル、p−クロロフェニル又はp−(トリフルオロメチル)フェニルを表す式II.5の基を表す。
【0127】
有利にはQは、式中、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R27及びR29が水素を表し、ZがCRn’を表し、基R26及びR28が、相互に無関係に、アルコキシカルボニル、有利にはメトキシ−、エトキシ−、n−プロピルオキシ−又はイソプロピルオキシカルボニルを表す、式II.5の基を表す。特に基R26及びR28は、燐原子又は酸素原子対してオルト位である。
【0128】
有利な態様によれば、架橋性基Yは式III.aからIII.t
【化18】

【0129】
【化19】

[式中、R、RI’、RII、RII’、RIII、RIII’、RIV、RIV’、R、RVI、RVII、RVIII、RIX、R、RXI及びRXIIは、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、ヒドロキシ、チオール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンイミン、アルコキシ、ハロゲン、SOH、スルホネート、NE2223、アルキレン−NE2223、トリフルオルメチル、ニトロ、アルコキシカルボニル、カルボキシル、アシル又はシアノを表し、ここでE22及びE23は、各々水素、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択した同一又は異なる基を表し、Zは、O、S、NR15又はSiR1516を表し、その際R15及びR16は、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを表すか又はZは、二重結合及び/又はアルキル−、シクロアルキル−、ヘテロシクロアルキル−、アリール−又はヘタリール置換基を有してよいC−C−アルキレン橋を表すか又はZは、O、S、NR15又はSiR1516により中断されたC−C−アルキレン橋を表し、その際式III.aの基中で2個の隣接基RからRVIはそれらが結合しているベンゼン核の炭素原子と一緒になって1、2又は3個のその他の環を有する縮合された環系を表してよく、その際、式III.gからIII.mの基中で、2個のジェミナル基R、RI’;RII、RII’;RIII、RIII’及び/又はRIV、RIV’は、オキソ又はそのケタールを表してもよく、A及びAは、相互に無関係に、O、S、SiR、NR又はCRを表し、その際R、R及びRは、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを表し、R及びRは、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを表すか又は基Rはもう一つの基Rと一緒になって又は基Rはもう一つの基Rと一緒になって、分子内橋状基Dを形成し、Dは一般式
【化20】

の二価の橋状基を表すが、ここで、R、R9’、R10及びR10’は、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ハロゲン、トリフルオロメチル、カルボキシル、カルボキシレート又はシアノを表し、その際R9’はR10’と一緒になって、R9’及びR10’が結合している二つの炭素原子間の二重結合の結合部を表わすこともでき、及び/又はR及びR10はそれらが結合している炭素原子と一緒に、場合により付加的に1個、2個又は3個シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールと縮合している4員から8員の炭素環又は複素環を表すこともでき、その際、複素環及び、存在する場合には、縮合した基は、相互に無関係に、各々アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、COOR、COO、SO、SO、NE2526、アルキレン−NE2526、NE252627+、アルキレン−NE252627+、OR、SR、(CHRCHO)、(CHN(E25))、(CHCHN(E25))、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、アシル及びシアノから選択した置換基1、2、3又は4個を有し、ここでR、E25、E26及びE27は、各々水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールから選択した同一又は異なる基を表し、Rは、水素、メチル又はエチルを表し、Mは陽イオンを表し、Xは陰イオンを表し、yは1〜120の整数を表し、cは0又は1である]の基から選択する。
【0130】
c=0である場合には、基A及びAは単結合によって相互に結合してはいない。
【0131】
有利には橋状基Yは、式III.aの基を表す。基III.a中で、基A及びAは通常相互に無関係に、O、S、SiR、NR又はCRを表すが、その際置換基R、R及びRは、通常相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを有することができ、それに対して基R及びRは、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを表すか又は基Rはもう一つの基Rと一緒に又はRはもう一つの基Rと一緒に、分子内橋状基Dを形成することができる。
【0132】
Dは、有利には、基
【化21】

[式中、R、R9’、R10及びR10’は、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ハロゲン、トリフルオロメチル、カルボキシル、カルボキシレート又はシアノを表すか又は相互に結合してC−C−アルキル基になり、R11、R12、R13及びR14は、相互に無関係に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ハロゲン、トリフルオロメチル、COOH、カルボキシレート、シアノ、アルコキシ、SOH、スルホネート、NE、アルキレン−NE3+、アリール又はニトロを表すことができる]から選択した二価の橋状基である。有利には、基R、R9’、R10及びR10’は、水素、C−C10−アルキル又はカルボキシレートを表し、基R11、R12、R13及びR14は、水素、C−C10−アルキル、ハロゲン、特に弗素、塩素又は臭素、トリフルオロメチル、C−C−アルコキシ、カルボキシレート、スルホネート又はアリールを表す。特に有利には、R、R9’、R10、R10’、R11、R12、R13及びR14は、水素を表す。水性反応媒体中で使用するために、基R11、R12、R13及び/又はR14の1、2又は3個、有利には1又は2個、特に1個がCOO、SO又は(NE−基を表すようなプニコゲンキレート化合物が有利であるが、その際M及びXは前記したものを表す。
【0133】
特に有利な橋状基Dは、エチレン基
【化22】

及び1,2−フェニレン基
【化23】

である。
【0134】
基Rがもう一つの基Rと一緒に又はRがもう一つの基Rと一緒に、分子内橋状基Dを形成する場合(即ち指数cがこの場合に1である)には、必然的に、A並びにAは一緒に架橋性基、有利にはCR−基であり、式III.aの橋状基Yはこの場合に有利にはトリプチセン様又はエタノアントラセン様の炭素骨格を有することになる。
【0135】
式III.aの有利な橋状基Yは、トリプチセン様炭化水素骨格を有するものの他に、指数cが0を表し、基A及びAが基O、S及びCR、特にO、S、メチレン基(R=R=H)、ジメチルメチレン基(R=R=CH)、ジエチレン基(R=R=C)、ジ−n−プロピル−メチレン基(R=R=n−プロピル)又はジ−n−ブチルメチレン基(R=R=n−ブチル)から選択されているようなものである。特に、AがAと異なるような橋状基Yが有利であり、その際Aは有利にはCR−基であり、Aは有利にはO−又はS−基であり、特に有利にはオキサ基Oである。
【0136】
従って特に有利な式III.aの橋状基Yは、トリプチセン様、エタノアントラセン様又はキサンテン様(A:CR、A:O)の骨格から成るようなものである。
【0137】
式III.aの橋状基Y中で、置換基R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは、有利には水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、、アリール及びヘタリールから選択する。第一の有利な実施態様によれば、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは、水素を表す。もう一つの有利な実施態様によれば、R及びRVIは相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す。有利にはR及びRVIは、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びメトキシから選択する。この化合物中で有利にはRII、RIII、RIV及びRは水素を表す。もう一つの有利な実施態様によれば、RII及びRは相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す。有利にはRII及びRは、メチル、エチル、イソプロピル及びt−ブチルから選択する。この化合物中で有利にはR、RIII、RIV及びRVIは水素を表す。
【0138】
式III.aの橋状基Y中で、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIから選択した2個の隣接基が、縮合した、従って隣接した環系を表す場合には、これは有利にはベンゼン−又はナフタリン環である。縮合したベンゼン環は有利には置換されていないか又はアルキル、アルコキシ、ハロゲン、SOH、スルホネート、NE、アルキレン−NE、トリフルオロメチル、ニトロ、COOR、アルコキシカルボニル、アシル及びシアノから選択した置換基1、2又は3個、特に1又は2個を有する。縮合したナフタリン環は有利には置換されていないか又は非縮合環中及び/又は縮合環中に合計1、2又は3個、特に1又は2個の縮合したベンゼン環で前記した置換基を有する。
【0139】
有利にはYは、式中RIV及びRが相互に無関係にC−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す、式III.bの基を表す。有利にはRIV及びRは、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びメトキシから選択する。有利にはこの化合物中でR、RII、RIII、RVI、RVII及びRVIIIは水素を表す。
【0140】
更に有利にはYは、式中R及びRVIIIが相互に無関係にC−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す、式III.bの基を表す。特に有利にはR及びRVIIIは、t−ブチルを表す。特に有利にはこの化合物中でRII、RIII、RIV、R、RVI、RVIIは水素を表す。更に有利にはこの化合物中でRIII及びRVIは、相互に無関係にC−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す。特に有利にはRIII及びRVIは、相互に無関係にメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びメトキシから選択する。
【0141】
更に有利にはYは、式中RII及びRVIIが水素基を表す、式III.bの基を表す。有利にはこの化合物中で、R、RIII、RIV、R、RVI及びRVIIは、相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す。特に有利にはR、RIII、RIV、R、RVI及びRVIIは、相互に無関係に、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びメトキシから選択する。
【0142】
更に有利にはYは、式中ZがC−C−アルキレン基、特にメチレンを表す式III.cの基を表す。有利にはこの化合物中でRIV及びRは、相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す。特に有利にはRVI及びRは、相互に無関係に、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びメトキシから選択する。基R、RII、RIII、RVI、RVII及びRVIIIは、有利には水素を表す。
【0143】
更に有利にはYは、式中Zが少なくとも1個のアルキル−、シクロアルキル−又はアリール基を有するC−C−アルキレン橋を表す式III.cの基を表す。特に有利にはZは、2個のC−C−アルキル基、特に2個のメチル基を有するメチレン橋を表す。有利にはこの化合物中でR及びRVIIIは、相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す。特に有利にはR及びRVIIIは、相互に無関係に、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びメトキシから選択する。
【0144】
更に有利にはYは、R及びRXIIが、相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す式III.dの基を表す。特にR及びRXIIは、相互に無関係に、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、メトキシ及びアルコキシカルボニル、有利にはメトキシカルボニルから選択する。特に有利にはこの化合物中で基RIIからRXIは水素を表す。
【0145】
更に有利にはYは、R及びRXIIが、相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す式III.eの基を表す。特にR及びRXIIは、相互に無関係に、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びメトキシから選択する。特に有利にはこの化合物中で基RII及びRXIは水素を表す。
【0146】
更に有利にはYは、式中Zが少なくとも1個のアルキル−、シクロアルキル−又はアリール置換基を有するC−C−アルキレン基を表す式III.fの基を表す。特に有利にはZは、2個のC−C−アルキル基、特に2個のメチル基を有するメチレン基を表す。特に有利には、この化合物中でR及びRVIIIは、相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す。特にR及びRVIIIは、相互に無関係に、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びメトキシから選択する。基RII、RIII、RIV、R、RVI及びRVIIは、有利には水素を表す。
【0147】
更に有利にはYは、式中R、RI’、RII、RII’ 、RIII及びRIII’が水素を表す式III.gの基を表す。
【0148】
更に有利にはYは、式中RII及びRII’が一緒にオキソ基又はそのケタールを表し、残りの基が水素を表す式III.gの基を表す。
【0149】
更に有利にはYは、式中R、RI’、RII、RII’ 、RIII及びRIII’が水素を表す式III.hの基を表す。
【0150】
更に有利にはYは、式中RII及びRII’が一緒にオキソ基又はそのケタールを表し、残りの基が水素を表す式III.hの基を表す。
【0151】
更に有利にはYは、式中R、RI’、RII、RII’ 、RIII、RIII’、RIV及びRIV’が水素を表す式III.iの基を表す。
【0152】
更に有利にはYは、式中R、RI’、RII、RII’ 、RIII、RIII’、RIV及びRIV’が水素を表す式III.kの基を表す。
【0153】
更に有利にはYは、式中R、RI’、RII、RII’ 、RIII、RIII’、RIV及びRIV’が水素を表す式III.lの基を表す。
【0154】
更に有利にはYは、式中R、RI’、RII、RII’ 、RIII、RIII’、RIV及びRIV’が水素を表す式III.mの基を表す。
【0155】
更に有利にはYは、式中R、RI’、RII、RII’ 、RIII、RIII’、RIV及びRIV’が水素を表す式III.nの基を表す。
【0156】
更に有利にはYは、式中基RからRIVの1個が、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す式III.nの基を表す。その場合に、特に有利には基RからRIVの少なくとも1個がメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル又はメトキシを表す。
【0157】
更に有利にはYは、式中R、RII、RIII及びRIVが水素を表す式III.oの基を表す。
【0158】
更に有利にはYは、式中基R、RII、RIII及びRIVの1個が、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す式III.oの基を表す。その場合に特に有利には基RからRIVの1個がメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル又はメトキシを表す。
【0159】
更に有利にはYは、式中R及びRIVが、相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す式III.pの基を表す。特に有利には基R及びRIVは、相互に無関係に、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル又はメトキシから選択する。特に有利にはこの化合物中で、RII、RIII、RIV及びRは水素を表す。更に有利には化合物III.p中でR、RIII、RIV及びRは、相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す。その場合に特に有利には、R、RIII、RIV及びRは、相互に無関係に、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル又はメトキシから選択する。
【0160】
更に有利にはYは、式中R及びRIVが、相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す式III.qの基を表す。特に有利には基R及びRIVは、相互に無関係に、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル又はメトキシから選択する。特に有利にはこの化合物中で、RII、RIII、RIV及びRは水素を表す。更に有利にはこの化合物中でRIII及びRIVは、相互に無関係に、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシを表す。その場合に特に有利には、RIII及びRIVは、相互に無関係に、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びメトキシから選択する。
【0161】
更に有利にはYは、式中ZがCH、C又はCを表す式III.r、III.s又はIII.tの基を表す。
【0162】
式III.r、III.s及びIII.tの化合物で、同様に架橋した基に対する記載の結合用にエンド−及びエキソ−位が可能である。
【0163】
第2反応帯域からの排出物は、後処理用に、例えばヒドロホルミル化生成物の単離、濃縮及び/又は精製の目的で、1段又は数段の分離操作を行うが、その際、主要量のヒドロホルミル化生成物を含有する少なくとも1つの流れ及び主として未反応オレフィン及び場合により飽和炭化水素から成る流れが得られる。飽和炭化水素は例えば、これを混和物として含有してよい使用されたオレフィン性供給に由来するか又は僅かな程度使用されたオレフィンの水素添加に由来する。使用した排出法及び分離法によって、場合によりその他の流れ、例えば合成ガス含有排ガス、ヒドロホルミル化の高沸点副産物及び/又はヒドロホルミル化触媒を含有する流れが得られ、これは−場合により後処理後に−全部又は部分的に第2反応帯域に戻すか又は方法から排出する。
【0164】
有利には第2反応帯域から液体排出物を取出す(液体排出物法)。この液体排出物は主成分として:(i)第2反応帯域に供給される流れ中に含まれている、線状Ci−オレフィン、特に末端位二重結合を有するものから製造した、ヒドロホルミル化生成物、即ちアルデヒド、(ii)ヒドロホルミル化の高沸点副産物、例えば生成されるアルデヒドのアルドール縮合から生じるようなもの、(iii)均一に溶解したヒドロホルミル化触媒、(iv)未反応オレフィン、(v)低沸点成分、例えばアルカン及び(vi)溶解した合成ガスを含有する。
【0165】
ヒドロホルミル化するために不活性溶剤、例えばトルエン又はキシレンを使用する場合には、これも第2反応帯域からの液体排出物中に含まれる。通常溶剤としては、ヒドロホルミル化(例えばアルドール縮合により)で生成されるヒドロホルミル化生成物より高い沸点を有する副産物を使用する。
【0166】
有利には第2反応帯域からの液体ヒドロホルミル化排出物に後処理するために2段階工程のガス抜きを行う。その際、第1ガス抜き工程には静置−及び/又は放圧工程が該当する。静置帯域として第1ガス抜き工程の最も簡単な態様では、液体ヒドロホルミル化排出物を第2反応帯域から、反応帯域の圧力下にある容器中に移す。その際、第1液相及び第1気相への分離が行われる。できる限り液体含分なしの第1気相を分離するために、伴出液滴を除去するための相応する装置(デミスター)を準備することができる。
【0167】
特に有利には、第2反応帯域からの液体ヒドロホルミル化排出物に後処理するために2段工程の放圧を行う。ヒドロホルミル化は有利には5〜50バールの範囲の圧力で行う。有利には第2反応帯域からの液体ヒドロホルミル化排出物を第1放圧工程で、反応器圧力より0.1〜20バール下の圧力に放圧する。その際、第1液相及び第1気相中への分離が行われる。有利には第1液相は第2放圧工程で第1放圧工程の圧力より低い圧力に放圧する。その際第2液相及び第2気相への分離が行われる。
【0168】
第1放圧工程の部分放圧は、例えば常用の圧分離器で行うことができる。得られる第1気相は主として合成ガス並びに場合により僅かな割合の未反応オレフィン及び/又は低沸点成分(飽和炭化水素)から成る。第1気相は、本発明による方法で又はそれと無関係にその他の方法で更なる利用に供給することができる。従って、例えば通常反応器圧に圧縮後、再び反応器に戻すか又は量に応じて部分的にか又は全部熱利用に供給することができる。
【0169】
第1放圧工程で分離した第1液相を次いで通常液体流として放圧容器から排出し、第2放圧工程で、第1放圧工程の圧力より低い圧力に放圧する。有利には第2放圧工程で0.0〜10バール、有利には0.1〜5バールの範囲の圧力に放圧する。第2放圧工程の圧力は、通常2〜20バール、特に3〜15バールだけ第1放圧工程の圧力より低い。
【0170】
静置−/放圧工程から得た第1液相を第2放圧工程(ガス抜き工程)で第2液相及び第2気相に分離する。第2液相はヒドロホルミル化生成物より高い沸点の副産物、均一に溶解したヒドロホルミル化触媒及び一部のヒドロホルミル化生成物を含有する。第2気相は未反応オレフィン、飽和炭化水素及び同じく一部のヒドロホルミル化生成物を含有する。
【0171】
第2放圧工程は、有利な実施態様では放圧工程(フラッシュ)と熱分離工程の組合せとして実施する。この熱分離工程は、例えば蒸留である。有利には蒸留用に第2液相及び第2気相を第2放圧工程から向流で誘導し、特に緊密に接触させる(ストリッピング)。第2放圧工程及び熱分離工程は、別個の装置中で又は有利には単一の装置、例えばいわゆる"フラッシュ/ストリップ−塔(Flash/Strip−Kolonne)"で行うことができる。
【0172】
別々の熱分離を有する第2放圧工程の態様では、第1放圧工程から排出した第1液相を先ずフラッシュ容器中で放圧することができる。その際生じる第2気相を後接続蒸留塔のカン部又は下部に導く。フラッシュ容器からの(第2)液相をこの蒸留塔に気相の装入の上部で供給する。このためにフラッシュ容器からの(第2)液相をこの蒸留塔に例えば塔頂部又はそのすぐ下で供給することができる。このために第2液相を先ずなお、例えば熱交換体で、加熱することができる。有利には第2液相を、フラッシュ容器の液相の温度(第2放圧工程)より約10〜120℃上の温度に加熱する。塔として、通常の当業者に公知の蒸留塔が好適であるが、これは例えば充填物、パキング又は強力な気体−/液体交換用の内部部品を装備している。
【0173】
"フラッシュ/ストリップ−塔"としての第2放圧工程の態様では、第1放圧工程から排出した第1液相をフラッシュ/ストリップ−塔のカン部の上の範囲及び塔頂の下部で装入し、その際放圧する。その際、第2気相及び第2液相中への分離が行われる。有利には装入は、フラッシュ/ストリップ−塔の下半分以内で、特に下三分の一以内で行う。フラッシュ/ストリップ−塔のカン部で液体流を取出し、塔頂部又はその下部で塔に再び供給する。それで流下する液相を第2気相にストリッピングするために逆に誘導する。このために液相を先ず加熱することができる。有利にはカン部から取出した液相を、カン部の温度より約10〜120℃上の温度に加熱する。使用される塔は上部で、特に上3分の1以内で、有利には強力な気体/液体交換用の内部部品を有する。
【0174】
別々の熱分離を有する第2放圧工程の態様並びにフラッシュ/ストリップ−塔を使用する場合に、溶解したヒドロホルミル化触媒及びヒドロホルミル化生成物より高い沸点のヒドロホルミル化の副産物を含有する第3液相及びヒドロホルミル化生成物、未反応オレフィン及び飽和炭化水素を含有する第3気相が得られる。
【0175】
第3液相は、その富化を阻止するために、場合により高沸点物の分離後に、第1反応帯域に戻すことができる。
【0176】
第2放圧(ストリップ)工程で得られた第3気相に、主としてヒドロホルミル化生成物を含有する留分及び主として未反応オレフィン及び低沸点成分を含有する留分への分別を行う。そのために第3気相に分別凝縮を行う。更に第3気相を完全に凝縮し、次いで熱分離を行うことができる。ヒドロホルミル化生成物は下記のようにして更に利用するために供給する。未反応オレフィン及び低沸点成分を含有する留分を凝縮後に液体流として部分的に第2放圧工程に装入し、部分的に方法から取出すか又は全部取出すことができる。特別な実施態様では、この留分に付加的な後処理を行って、少なくとも一部の含有される不活性成分(飽和炭化水素)を分離する。そのために、留分に例えば新たな分別凝縮又は完全な凝縮、次いで蒸留を行うことができる。
【0177】
要約すれば、工程(Id)からの排出物の後処理は有利には付加的な工程(Ie)で行うが、その際、(Ie1)主成分としてヒドロホルミル化生成物、ヒドロホルミル化生成物より高い沸点の副産物、均一に溶解したヒドロホルミル化触媒、未反応オレフィン、飽和炭化水素及び未反応合成ガスを含有する第2反応帯域からの通常液体の排出物にガス抜きを行うが、その際場合により圧力及び/又は温度は反応帯域に対して下げ、主として未反応合成ガスを含有する第1気相及び主としてヒドロホルミル化生成物、ヒドロホルミル化生成物より高い沸点の副産物、均一に溶解したヒドロホルミル化触媒、未反応オレフィン及び飽和炭化水素を含有する第1液相が得られ、(Ie2)第1気相を材料に供給し、(Ie3)第1液相に放圧を行い、その際、圧力を第1ガス抜きに対して未反応オレフィン、飽和炭化水素及び一部のヒドロホルミル化生成物を含有する第2気相及びヒドロホルミル化生成物より高い沸点の副産物、均一に溶解したヒドロホルミル化触媒及び一部のヒドロホルミル化生成物を含有する第2液相が生じるように十分に下げ、(Ie4)第2気相を塔のカン部又は下部で装入し、第2液相を、場合により加熱後、液体形で気相装入の上部でこの塔に装入し、気相と逆に導き、(Ie5)塔のカン部で主として溶解したヒドロホルミル化触媒及びヒドロホルミル化生成物より高い沸点の副産物を含有する第3液相を取出し、塔の塔頂部でヒドロホルミル化生成物、未反応オレフィン及び飽和炭化水素を含有する第3気相を取出し、(Ie6)第3液相を、場合により一部のヒドロホルミル化生成物より高い沸点の副産物を分離後、第2反応帯域に戻し、(Ie7)第3気相に後処理を行い、主としてヒドロホルミル化生成物を含有する留分及び主として未反応オレフィン及び飽和炭化水素を含有する留分を得る。
【0178】
本発明による方法の工程(I)を含む前記したような有利な実施態様に関する概略図を図1に表す。図の詳細は下記を参照にされたい。
【0179】
次に本発明による方法の方法工程(II)を含む態様を詳説する。
【0180】
方法工程(II)を用いる方法を実施するために、本発明によれば内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを含有する排出物の一部を異性体化工程に供給する前に、先ずオレフィン含有供給にヒドロホルミル化工程を行う。ヒドロホルミル化工程における反応並びに異性体化工程における反応は、方法工程(I)の実施でヒドロホルミル化工程又は異性体化工程に関して前記したような同様の方法で行うことができるので、方法工程(II)を用いる実施詳細は該当場所を参照にすることができる。
【0181】
本発明の種々の実施形態の共通の態様は、出発物質、生成物及び副産物を単一の流れで相互に調節して、一方では反応系における副産物及び/又は未反応出発物質の不要な富化を阻止し、しかしながら他方では方法の経済的な実施が保証されるようにすべきであるという点に存する。従って、有利な実施態様では方法工程(II)を含む本発明による方法を、(IIa)オレフィン含有供給並びに一酸化炭素及び水素を第1反応帯域に供給し、ヒドロホルミル化触媒の存在で反応させ;(IIb)第1反応帯域からの排出物から、内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有する流れを分離し、これを二つの留分に分けるが、その中少なくとも一つは内部位二重結合を有する未反応の線状Ci−オレフィンを含有しており;(IIc)工程(IIb)から得た内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有する留分を第2反応帯域に供給し、二重結合異性体化触媒の存在で反応させ;(IId)第2反応帯域からの排出物を工程(IIa)に戻すことによって行う。
【0182】
本発明の方法工程(II)による工程(IIa)における第1反応帯域(ヒドロホルミル化工程)の構成に関しては、本発明による方法工程(I)による第2反応帯域(ヒドロホルミル化工程)で前記した説明を参照にされたい。特にそこに記載の1段又は多段構成、反応器の種類及び配置、操作パラメータ、例えば温度、圧力、装入量及び滞留時間並びにヒドロホルミル化触媒及び共触媒等は同様に使用することができる。
【0183】
工程(IIb)で内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する流れの工程(IIa)からの排出物からの分離は、方法工程(I)による第2反応帯域(ヒドロホルミル化工程)からの排出物の後処理で前記したようにして行うことができる。特に1段又は数段階のガス抜き又は放圧並びに異なる物質流への分別のそこに記載の方法は同様に行うことができる。その際、相応して通常第1反応帯域からの排出物から未反応合成ガスを、例えばガス抜き工程により分離し、ヒドロホルミル化触媒を例えばフラッシュ/ストリップ−塔により分離し並びにCi+1ヒドロホルミル化生成物を例えば分別凝縮又は完全な凝縮及び後続の蒸留により分離するというようにして行う。このようにして工程(IIb)で分離される、内部位二重結合を有する未反応の線状Ci−オレフィンを含有する流れが得られ、これは他方では同じく工程(IIb)で、二つの留分に分別する。
【0184】
有利な実施態様では、相応して工程(IIb)で内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する流れを工程(IIa)からの排出物から分離するが、これは(IIb1)主成分としてヒドロホルミル化生成物、ヒドロホルミル化生成物より高い沸点の副産物、均一に溶解したヒドロホルミル化触媒、未反応オレフィン、飽和炭化水素及び未反応合成ガスを含有する第1反応帯域からの通常液体の排出物にガス抜きを行うが、その際場合により圧力及び/又は温度は反応帯域に対して下げ、その際、主として未反応合成ガスを含有する第1気相及び主としてヒドロホルミル化生成物、ヒドロホルミル化生成物より高い沸点の副産物、均一に溶解したヒドロホルミル化触媒、未反応オレフィン及び飽和炭化水素を含有する第1液相が得られ、(IIb2)第1気相を材料に供給し、(IIb3)第1液相に放圧を行い、その際、圧力を第1ガス抜きに対して未反応オレフィン、飽和炭化水素及び一部のヒドロホルミル化生成物を含有する第2気相及びヒドロホルミル化生成物より高い沸点の副産物、均一に溶解したヒドロホルミル化触媒及び一部のヒドロホルミル化生成物を含有する第2液相が生じるように十分に下げ、(IIb4)第2気相を塔のカン部又は下部で装入し、第2液相を、場合により加熱後、液体形で気相装入の上部でこの塔に装入し、気相と逆に導き、(IIb5)塔のカン部で主として溶解したヒドロホルミル化触媒及びヒドロホルミル化生成物より高い沸点のヒドロホルミル化の副産物を含有する第3液相を取出し、塔の塔頂部でヒドロホルミル化生成物、未反応オレフィン及び飽和炭化水素を含有する第3気相を取出し、(IIb6)第3液相を、場合により一部のヒドロホルミル化生成物より高い沸点の副産物を分離後、第1反応帯域に戻し、(IIb7)第3気相に後処理を行い、主としてヒドロホルミル化生成物を含有する生成物相及び内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する流れ(これは更に主として、末端位二重結合を有する未反応線状C−オレフィン及び飽和炭化水素を含有する)を得ることによって行う。
【0185】
工程(IIb)で行う工程(IIa)からの排出物の後処理で生じる、内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する流れは、主として未反応オレフィン及び飽和炭化水素を含有する。この流れを分離工程に導き、二つの留分に分別するが、その中少なくとも一つの留分は内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する。
【0186】
実施態様の一つでは、二つの留分に分別するための分離工程が、二つの得られる留分の組成が同じであるように、簡単な分流器として構成されていてもよい。その場合には、本発明により工程(IIb)で得られる二つの留分の一つを工程(IIc)に供給する。工程(IIc)に供給しなかった、もう一つの留分を方法から出し、例えば熱利用に供給することができる。通常排出する留分の量は、工程(IIb)で分離された内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する流れの全質量に対して、1〜75質量%の範囲、有利には2〜50質量%の範囲、特に有利には5〜25質量%の範囲である。
【0187】
従って、特に有利な実施態様の一つには、付加的に下記の工程(II8a)が含まれるが、その際、(IIb8a)更に主として末端位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィン及び飽和炭化水素を含有する、内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有する流れを分離工程によって同じ組成の二つの留分に分けるが、この中一つは方法から出し、もう一つは工程(IIc)に供給する。
【0188】
もう一つの実施態様では、二つの留分に分別するための分離工程が、内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有する流れを、オレフィン富化留分及びオレフィン削減留分に分離するように、構成されていてよい。こうして得た留分から、オレフィン削減留分を方法から出し、例えば熱利用に供給することができる。もう一つの、オレフィンを富化した留分は工程(IIc)に供給する。分離工程に供給される流れのオレフィン富化留分及びオレフィン削減留分へのこのような分離は、分離工程に供給された流れに分離工程で抽出蒸留、膜分離法、選択吸着による分離又はこれらの手段の少なくとも二つの組合せを行うことによって、実施することができる。
【0189】
工程(IIb)で内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する流れの、オレフィン富化留分及びオレフィン削減留分への前記分別は、特別な実施態様では抽出蒸留により行うことができる。このような抽出蒸留は当業者に公知である。通常抽出蒸留は、極性溶剤、特に有機極性溶剤又はこのような極性有機溶剤から成る水との混合物中で行われる。好適な極性溶剤は、例えば有機溶剤、モノメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン並びにこれらの1種以上の水との混合物である。特定の場合には、使用される溶剤が比較的高い沸点を有する場合には、抽出蒸留の経過中に高められた温度により、例えば少なくとも130℃、少なくとも140℃又は少なくとも150℃の温度で、例えばN−メチルピロリドンの場合に、抽出される成分の分解が起こる恐れがあるので、溶剤の沸点を下げるために、有機溶剤に水を添加するのが有利である。更に水の添加は抽出蒸留で幾つかの場合に選択性の改善をもたらすことができる。N−メチルピロリドン/水−混合物の他に、有利にはその他の抽出剤を使用することができる。例えばCN1280976には、ブタン/ブテン−混合物を分別するために、その他の低沸点溶剤と組み合わせてジメチルホルムアミドを使用することが記載されている。前記溶剤又は溶剤混合物に、エチレン性不飽和化合物、例えばオレフィン、例えばブテンは、通常飽和炭化水素、例えばブタンより著しく良好に溶解する。従って、工程(IIb)から分離し、更に主として末端位二重結合を有する線状C−オレフィン並びに飽和炭化水素を含有する、内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを含有する流れから、選択的にオレフィンを十分に洗い流すことができる。例えばブタン/ブテン−混合物から選択的にブテンを徹底的に洗い流すことができる。
【0190】
有利には、第1塔(洗浄器)で選択的にオレフィン、例えばブテンを洗い流すことによって、抽出蒸留を行う。飽和炭化水素、例えばブテンはその際塔の塔頂部を介して抽出する。オレフィンを負荷した溶剤流を次いで第2塔(ストリッパー)でガス抜きすることができる。ストリッパーの塔頂部でブテン留分を取出す。例えばブタン/ブテン−混合物の分別用のこのような方法は、例えばUS5242550及びUS5288370に記載されている。
【0191】
工程(IIb)の内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する流れの、オレフィン富化留分及びオレフィン削減留分への前記分別は、もう一つの特別な実施態様では膜分離法により行うことができる。オレフィンを飽和炭化水素(パラフィン)から分離する膜を使用するこのような膜分離法は、当業者に公知である。このような膜は、オレフィン/パラフィン−混合物を、膜を透過する、即ち膜を通過するオレフィン富化留分及び膜を透過することができないオレフィン分削減留分に分離する。前者の膜を透過する留分は透過液と称し、後者の膜に残留する留分は保留物と称する。種々の膜を使用することができる。
【0192】
これには例えば、いわゆる"促進輸送"膜が挙げられるが、その選択性は好適な、膜中に組込まれた金属イオン、例えばAg又はCuによるオレフィンの選択的n−錯体化によって生じる。その際、濃度勾配により膜を通ってオレフィンの拡散が起こり(例えばChem.Ing.Tech.2001、73、297参照)、その際オレフィンは、前記金属イオンが膜内部で自由に可動性である限り、Π錯体結合形で又は前記金属イオンが膜内で自由に可動性でない場合には一つの金属イオンから隣接金属イオンへの"ホッピング(hopping)"−機構で可動することができる。前記金属イオンは、例えばAg負荷Nafion(R)膜では、例えばポリマーと結合した陰イオン中心と反対イオンとして存在してもよいし(例えばスルホネート−又はカルボキシレート基)又は好適な溶剤、例えば水に溶解させた塩の陽イオンとして存在してもよい(例えばニトレート)。後者の場合には前記塩溶液は、好適な、有利には親水性膜の孔中及び/又は2枚の膜(又は膜系)の間の中間室に存在するが、その中、前記溶液と反対の側に保留物が存在し、もう一つで透過液が存在する。後者の方法では有利に溶液の連続的又は間欠的な交換が行われる。
【0193】
もう一つの種類の好適な膜は、分離がミクロ孔中のオレフィンの有利な吸着及び表面拡散に基づくようなものである。この膜は、有機又は有利には無機材料から成っていてよい。特に好適な材料は、例えばポリマー材料、例えばポリプロピレン又はポリイミドの熱処理によって製造することができるミクロ孔性炭素及びミクロ孔を有するセラミック材料、例えばゼオライトである。
【0194】
もう一つの好適な種類の膜は、1種以上の極性ポリマーから成るようなものであり、その際、分離は分離されるオレフィン及びパラフィンが、ポリマー中の溶解性及び/又は拡散係数の相違を有することによって行われる。好適なポリマーは、例えばポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリジアルキルシロキサン並びにその混合物、コポリマー又はブロック−コポリマーである。ポリマー鎖のイオン性又は共有結合の架橋が行われたポリマーが有利であると実証された。
【0195】
膜は、本来分離を生じる分離層が1種以上のメソ−及び/又はマクロ孔性担体上に塗布されている、一体不整又はコンポジット膜として設計されていてよい。前記分離層は通常0.01〜100μm及び有利には0.1〜20μmの厚さを有する。単数又は複数のメソ−及び/マクロ孔性担体は、1種以上の有機、特にポリマーの材料、例えば炭素、及び/又は無機材料、特にセラミック又は金属から成る。
【0196】
膜は例えば平面−、クッション−、毛細管、単カナル管−又は多カナル管部材の形で使用することができ、これは当業者に自体その他の膜分離法、例えば限外濾過又は逆浸透からも公知である(例えば、R.Rautenbach、Membranverfahren、Grundlagen der Modul−und Anlagenauslegung、Springer−Verlag、1997参照)。管形状を有する膜部材では分離層は有利には管の内側又は外側に存在する。
【0197】
膜は通常、ポリマー、金属又はセラミック材料から成る1個以上のケーシングに囲まれており、その際ケーシングと膜の間の結合は密閉性ポリマー(例えばエラストマー)又は無機材料によって形成されている。
【0198】
膜分離法は、1個以上の膜装置中で行うことができる。多数の膜装置の場合には、供給された流れを個々の膜装置に前後して及び/又は平行して流過させる。前記膜分離法を実施するために必要な圧力の形成は、例えば気体状で供給された流れを当業者に自体公知の圧縮機を用いて圧縮することによってか又は液体で供給された流れを当業者に公知のポンプを用いて搬送することによって行うことができる。有利には供給される流れを1〜200バールの範囲、特に有利には2〜50バールの範囲及び極めて特に有利には4〜35バールの範囲の圧力に調節する。有利な透過液圧は0.01〜100バールの範囲、特に有利には0.1〜50バールの範囲、極めて特に有利には1〜20バールの範囲であり、その際、透過液圧は供給される流れの圧力より常に低くなければならない。所望の温度の調節は、当業に公知の装置を用いて使用される膜装置への供給前に行うことができ、その際、温度を調節する装置を出て膜装置に入る流れは液体、気体又は二相の気体/液体であってよい。膜装置中に入る流れが液体である場合には、いわゆる浸透気化法の特例が挙げられる。有利には膜分離法用に温度を−50〜200℃の範囲、特に有利には0〜120℃の範囲、極めて特に有利には20〜80℃の範囲に調節する。
【0199】
膜分離法は第一に一段工程で行うことができ、即ち膜装置からの透過液又は供給される流れが前後して及び/又は並行して流過する多数の膜装置から一緒にした透過液が更に処理なしにオレフィン、例えばブテンを富化した留分を形成し、透過しなかった含分(保留物)が更に処理なしにオレフィン削減留分を形成する。後者は主として飽和炭化水素から成る。その際、透過液及び保留物はその成分に関して交換してもよいことは当業者にとって自明である。膜分離法は更に2段階以上の工程で行うこともでき、その際各々、先行工程からの透過液を各々次の工程用の供給として使用し、この(次の)工程からの保留物を最初に記載した(先行する)工程中への供給と混合する。このような装置は自体公知であり、例えばSep.Sci.Technol.1996、31、729に記載されている。
【0200】
オレフィンのパラフィンからの分離は、なおもう一つの特別な実施態様では、例えばEldridge、Ind.Eng.Chem.Res.1993、32、2208に記載されているように、Π錯体形成性金属イオン、例えばAg、Cuを含有する溶液中でのオレフィンの選択的吸収、次いでオレフィンの放出によって行うことができる。
【0201】
内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する流れの前記分別では、有利にはオレフィン富化留分及びオレフィン削減留分が生じる。後者は主として飽和炭化水素から成る。例えばこのようにしてブタン/ブテン−混合物を主として2−ブテンから成る留分と主としてn−ブタン及びイソブタンから成る留分に分けることができる。
【0202】
例えばもう一つの特に有利な実施態様には付加的に下記の工程(IIb8b)が含まれるが、その際、(IIb8)更に主として末端位二重結合を有する未反応線状C−オレフィン及び飽和炭化水素を含有する、内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する流れを、この流れに抽出蒸留、膜分離法、選択吸収による分離又はこれらの少なくとも二つの手段から成る組合せを行うことによって、オレフィン富化留分及びオレフィン削減留分に分け、この中、オレフィン富化留分を工程(IIc)に供給する。
【0203】
付加的な工程(IIb8b)は有利には前記工程(IIb8b)の代わりに実施する。しかし、工程(IIb8b)から取出した、工程(iic)に供給すべきである留分を工程(IIc)に供給する前に工程(IIb8b)により分離を行うことができること当業者にとって自明である。工程(IIc)に供給されなかった留分は方法から出され、例えば熱利用に供給される。工程(IIc)に供給されるオレフィン富化留分は通常、オレフィン富化留分の全質量に対して、少なくとも25質量%、特に少なくとも50質量%、特別には少なくとも70質量%の含量の内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを有する。その他の点で、これは主として僅かな割合の、例えば各々オレフィン富化留分の全質量に対して、0.1〜25質量%の範囲及び特に0.2〜15質量%の範囲の飽和炭化水素及び/又は末端位二重結合を有する線状C−オレフィンから成る。その他の成分、例えば数回不飽和の化合物、例えばブタジエン及びアルキンが場合により、各々オレフィン富化留分の全質量に対して合計で最高5質量%まで、特に最高1質量%まで含有されていてよい。
【0204】
工程(IIb)から得られ、工程(IIc)に供給される、内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する留分は、前記実施態様により、オレフィン富化(特に工程(IIb1)から(IIb7)及び工程(IIb8b)による)されているか又は工程(IIb)で分離された内部位二重結合を有する未反応線状C−オレフィンを含有する流れの含量に相応する(特に工程(IIb1)から(IIb7)及び工程(II8a)による)含量のオレフィンを有する。工程(IIc)に供給される留分は、本発明により第2反応帯域(二重結合異性体化)に供給される。第2反応帯域で供給された留分を二重結合異性体化触媒の存在で反応させる。本発明の方法工程(II)による工程(IIc)における第2反応帯域(二重結合異性体化工程)の構成は、本発明の方法工程(I)による第1反応帯域(二重結合異性体化工程)に関する前記説明を参照にされたい。特にそこに記載の反応器種類及び反応器系、操作パラメータ、例えば温度、圧力、装入量及び滞留時間並びに異性体化触媒等は同様に使用することができる。
【0205】
第2反応帯域からの排出物を工程(IId)により工程(IIa)に戻す。このために有利には、第2反応帯域からの排出物に、工程(IIa)で使用する前に、複数回不飽和の化合物の含量を減らすために、前記したように選択的水素添加を行うことができる。オレフィン含有供給を工程(IIa)に供給する前に又は第1反応帯域に装入する前に、このような選択的水素添加を行う場合にも、第2反応帯域からの排出物を選択的水素添加するために供給前に有利にはオレフィン含有供給と一緒にすることができる。
【0206】
本発明による方法の前記実施態様(方法工程(I)及び(II))によって、主としてヒドロホルミル化生成物を含有する流れが得られる。ヒドロホルミル化生成物には特に、Ci+1−ヒドロホルミル化生成物、即ち有利にはi+1個の炭素原子を有する線状アルデヒドが含まれる。このヒドロホルミル化生成物を更に後処理又は加工に供給することができる。特に得られた生成物流を直ちに更なる反応に、例えばプロピルヘプタノールの製造用に、使用することができる。これは所望により当業者に常用で公知方法により、例えば蒸留によって、更に後処理を行い、次いで更に加工することができる。
【0207】
本発明のもう一つの目的は2−プロピルヘプタノールの製法であり、その際(i)ブテン又はブテンを含有するC−炭化水素混合物に前記した方法によりヒドロホルミル化を行い、その際、n−バレルアルデヒドを含有するヒドロホルミル化生成物が得られ;(ii)場合によりヒドロホルミル化生成物に分別を行いn−バレルアルデヒド富化留分を得て;(iii)工程(i)で得たヒドロホルミル化生成物又は工程(ii)で得たn−バレルアルデヒド富化留分にアルドール縮合を行い;(iv)アルドール縮合の生成物に水素を用いて触媒作用により水素添加してアルコールにし;(v)場合により水素添加生成物に分別を行い、2−プロピルヘプタノール富化留分が得られる。
【0208】
次に工程(i)から(v)を詳説する。
(i)ヒドロホルミル化
ヒドロホルミル化用の使用材料として、特に1−ブテンと2−ブテンの混合物及び1−ブテン及び/又は2−ブテンを含有する工業的に得られるC−炭化水素流が好適である。有利には前記C−ラフィネートが好適であり、これは全範囲本発明に関連する。
【0209】
有利には工程(i)でヒドロホルミル化触媒として、ロジウム/トリフェニルホスフィン触媒又は一般式IIの少なくとも1個の配位子を有する第VIII副族の金属の錯体少なくとも1個を有するヒドロホルミル化触媒を使用する。好適で有利な式IIの配位子に関しては前記記載が関連する。
【0210】
工程(i)でヒドロホルミル化するために好適で有利なヒドロホルミル化触媒、活性化剤、溶剤、反応条件及び反応器に関しては、ヒドロホルミル化の前記一般的実施に全範囲関連する。
(ii)分別
好適な修正方法により工程(i)で得られた生成物富化流れに更に分別を行い、n−バレルアルデヒド富化留分を製出する。ヒドロホルミル化生成物のn−バレルアルデヒド富化留分及びn−バレルアルデヒド削減留分への分別は、常用の当業者に公知方法により行う。有利には公知分離装置、例えば蒸留塔、例えば所望により鐘泡、有孔プレート、有孔底、弁等を装備していてよいプレート塔、蒸発器、例えば薄層蒸発器、流下液膜式蒸発器、Wischblatt蒸発器等を使用して行う。
(iii)アルドール縮合
−アルデヒド2分子を縮合して、α,β−不飽和C10−アルデヒドにすることができる。アルドール縮合は、自体公知の方法で、例えば水性塩基、例えば水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液の作用によって行う。代わりに、不均質塩基性触媒、例えば酸化マグネシウム及び/又は酸化アルミニウムを使用することもできる(例えばEP−A792862参照)。その際、n−バレルアルデヒド2分子の縮合で2−プロピル−2−ヘプタのールが生成する。工程(i)又は工程(ii)で分別後に得られるヒドロホルミル化生成物がなおその他のC−アルデヒド、例えば2−メチルブタノール及び場合により2,2−ジメチルプロパナール又は3−メチルブタナール又は痕跡のその他のアルデヒドを有する限り、これらは同じくアルドール縮合で反応し、その際可能な全てのアルデヒド組合せの縮合生成物、例えば2−プロピル−4−メチル−2−ヘキセナールが生じる。例えば30質量%までのこれら縮合生成物の割合は、可塑剤アルコールとして好適な2−プロピルヘプタノール含有C10−アルコール混合物への有利な更なる加工を妨げない。
(iv)水素添加
アルドール縮合の生成物を水素を用いて触媒作用により水素添加してC10−アルコール、例えば特に2−プロピルヘプタノールにすることができる。
【0211】
10−アルデヒドのC10−アルコールへの水素添加用に、原則として大抵は高めた温度におけるヒドロホルミル化の触媒も好適であるが:しかし通常、別個の水素添加工程で使用される選択的な水素添加触媒の方が有利である。好適な水素添加触媒は、通常、遷移金属、例えばCr、Mo、W、Fe、Rh、Co、Ni、Pd、Pt、Ru等又はその混合物であり、これらは活性及び選択性を高めるために担体、例えば活性炭、酸化アルミニウム、シリカゲル等の上に塗布することができる。触媒活性を高めるために、Fe、Co及び有利にはNiを、ラネー触媒の形でも、非常に大きな表面積を有する海綿状金属として使用することもできる。C10−アルデヒドの水素添加は、触媒の活性度に応じて、有利には高めた温度及び高めた圧力で行う。有利には水素添加温度は約80〜250℃であり、有利には圧力は約50〜350バールである。
【0212】
粗水素添加生成物を、通常の方法により、例えば蒸留によって後処理してC10−アルコールにすることができる。
(v)分別
所望により水素添加生成物に更に分別を行い、2−プロピルヘプタノール富化留分及び2−プロピルヘプタノール削減留分を製出することができる。この分別は、常用の当業者に公知の方法により、例えば蒸留により行うことができる。得られる2−プロピルヘプタノールは、常用の当業者に公知の方法により更に加工して可塑剤にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】図1は、方法工程(I)を用いる本発明による方法の有利な実施態様の略図を表す。
【図2】図2は、方法工程(II)を用いる本発明による方法の有利な実施態様の略図を表す。
【図3】図3は、方法工程(I)を用いる本発明による方法の実施態様の略図を表す。
【0214】
図の詳細な説明
図1は、方法工程(I)を用いる本発明による方法の有利な実施態様の略図を表す。オレフィン含有供給1を蒸留塔2に供給する。蒸留塔2の下部で内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れ3を取出し、第1反応帯域4(二重結合異性体化)に供給する。第1反応帯域4中で流れ3を二重結合異性体化触媒の存在で反応させるが、その際内部位二重結合を有する線状C−オレフィンの少なくとも一部を末端位二重結合を有する線状C−オレフィンへ変える。第1反応帯域4からの排出物5を、蒸留塔2の流れ3の取出し場所より上にある場所で蒸留塔2へ戻す。蒸留塔2のカン部で内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れ7を取出し、これを方法から出す。蒸留塔2の上部で、末端位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れ6を取出し、これを選択的水素添加工程8に供給する。水素添加工程8で流れ6に含まれる複数個不飽和の化合物を選択的に水素添加して1個エチレン性不飽和のオレフィンにする。水素添加工程8からの排出物9を一酸化炭素及び水(これは両方とも流れ10を介して装入する)並びに回収されたヒドロホルミル化触媒を含有する分離工程17からの排出物12と一緒に、第2反応帯域11(ヒドロホルミル化)に供給する。第2反応帯域11で一緒にした流れ9、10及び12をヒドロホルミル化触媒の存在で反応させる。第2反応帯域11からのヒドロホルミル化生成物を含有する排出物13を分離工程14でガス抜きする。分離工程14からの排ガスを流れ15として排出する。分離工程14からのガス抜きした排出物16を、主としてC−炭化水素から成る分離工程19からの流れ23と一緒に分離工程17に供給する。分離工程17でヒドロホルミル化触媒の回収を行う。こうして回収したヒドロホルミル化触媒を流れ12を介して第2反応帯域11に戻す。分離工程17からの排出物18は、主としてC−炭化水素、Ci+1−ヒドロホルミル化生成物及び場合により比較的高い沸点を有する化合物を含有する。排出物18を分離工程19に供給し、そこでCi+1−ヒドロホルミル化生成物及び場合により比較的高い沸点の化合物を分離し、流れ20として排出する。C−炭化水素を流れ21として分離工程19から排出し、部分的に流れ22を介して排出し、部分的に流れ23を介して分離工程17に戻す。
【0215】
図2は、方法工程(II)を用いる本発明による方法の有利な実施態様の略図を表す。オレフィン含有供給2を一酸化炭素及び水(これは両方とも流れ3を介して装入する)並びに回収されたヒドロホルミル化触媒を含有する分離工程5からの排出物6と一緒に、第1反応帯域1(ヒドロホルミル化工程)に供給する。更に第1反応帯域1に、末端位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した第2反応帯域14(二重結合異性体化)からの排出物15を供給する。第1反応帯域1で流れ2、3、6及び15をヒドロホルミル化触媒の存在で反応させる。第1反応帯域からの排出物4は、主としてCi+1−ヒドロホルミル化生成物、場合によりヒドロホルミル化生成物より高い沸点を有する化合物、均一に溶解したヒドロホルミル化触媒、未反応C−オレフィン、飽和C−炭化水素及び未反応合成ガスを含有する。排出物4を分離工程5に供給し、その際、有利には先ず排出物4中に含有される合成ガスを分離するためにガス抜き工程を準備する(ここには記載してない)。分離工程5でヒドロホルミル化触媒の回収を、有利には例えばフラッシュ/ストリップ−塔を用いて行う。こうして回収したヒドロホルミル化触媒を流れ6を介して第1反応帯域1に戻し、その際、場合により付加的に流れ6からの副産物の部分的分離を準備することもできる(ここには記載してない)。分離工程5からの排出物7は、主としてCi+1−ヒドロホルミル化生成物、飽和C−炭化水素、未反応のC−オレフィン、及び場合によりヒドロホルミル化生成物より高い沸点の化合物を含有する。排出物7を分離工程8に供給し、そこでCi+1−ヒドロホルミル化生成物及び場合により比較的高い沸点の化合物を分離し、流れ9として排出する。主として未反応オレフィン及び飽和炭化水素から成る分離工程8からの排出物10を分離工程11に供給し、そこで流れ10を二つの留分12及び13に分別する。ここで分離工程11は、留分12及び13の組成は同じであり、ただ供給される流れ10の一部を流れ12として方法から排出するように、簡単な分流器として設計されていてよい。その代わりに分離工程11を、供給される流れ10が、第2反応帯域14(二重結合異性体化)に供給されるオレフィン富化留分13及び排出されるオレフィン削減留分12に分別されるように設計されていてもよい。供給された流れ10のオレフィン富化留分13及びオレフィン削減留分12へのこのような分別は、流れ10に分離工程11で抽出蒸留、膜分離法、選択的吸収による分離又は少なくとも二つのこれら手段の組合せを行うことによって、実施することができる。分離工程11から取出した留分13を第2反応帯域14に供給する。第2反応帯域14中で留分13を二重結合異性体化触媒の存在で反応させる。末端位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化された第2反応帯域14からの排出物15を第1反応帯域1に戻す。
【0216】
図3は、方法工程(I)を用いる本発明による方法の実施態様の略図を表すが、これは実施例1で詳説する。従って図3に記載の詳細は、例1を参照にされたい。
【0217】
次に本発明を実施例につき詳説するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0218】
実施例
他に記載のない限り、%は質量%(質量%)である。
【0219】
例1:方法工程(I)を用いる実施
方法実施に関しては図3に関連する。ソフトウェアCHEMASIM(http://chemasim.itt.uni−stuttgart.de参照)を用いてシュミレーションし、その際下記の想定を使用した:−ヒドロホルミル化の速度常数:kHF=4.1h−1、−水素添加の速度常数:kHF=0.23h−1、 平衡反応−2−ブテン<=>1−ブテンは平衡変換率に関して記載した。
【0220】
記載の個々の物質流の量は、下記第1表に表す。
【0221】
ラフィネート−II−流(1−ブテン41.5%;2−ブテン41.5%;更にイソブテン、イソブタン及びn−ブタンを含有)14t/hを蒸留塔Aに供給する。蒸留塔Aの排出部で流れ2(1−ブテン4%;2−ブテン60%を含有する)を取出し、反応器Bに供給する。反応器Bで250℃の温度で二重結合異性体化触媒の存在で1−ブテン及び2−ブテン間の平衡を生じさせる。反応器Bからの排出物3(1−ブテン10%を含有する)を流れ3の取出し部の上で蒸留塔A中へ戻す。蒸留塔Aの塔頂部で流れ4(1−ブテン78%及び2−ブテン4%を含有する;2−ブテンの変換率、使用したラフィネート−II−流に対して、90%)を取出す。蒸留塔Aのカン部で流れ5(7kg/h)を取出し、これを流れ4と一緒に合わせて流れ6にする。
【0222】
流れ6を水素添加工程Cに供給する。水素添加工程Cで流れ6中に含有される1−ブテンの5%を2−ブテンに異性体化する。
【0223】
水素添加工程Cからの排出物7(1−ブテン73%を含有する)を合成ガス流8並びに分離工程Gからの触媒還流17と一緒に第1ヒドロホルミル化反応器D(容量V=140m)に供給する。第1ヒドロホルミル化反応器Dからの排出物9(部分的に液体9a、部分的に気体9b)を付加的な合成ガス10と一緒に第2ヒドロホルミル化反応器Eに導く。反応器Eは内部で3段カスケード(V=3×各々20m)になっている。
【0224】
第2ヒドロホルミル化反応器Eからの排出物11(部分的に液体11a、部分的に気体11b)を圧分離機Fで分別する。圧分離機Fからの排ガス流12を、排ガス流12中に含有されるC−炭化水素を凝縮するために、冷却器に供給する。その際、残留する排ガス流13を燃焼に供給する。凝縮した流れ14を圧分離機Fに戻す。
【0225】
圧分離機Fからのガス抜きした排出物15をフラッシャー/ストリッパーGの下部に導く。十分なストリッピング作用を達成するために、排出物15に、フラッシャー/ストリッパーGに供給する前に、炭化水素回収工程Hから生じたものであり、温度90℃に加熱した流れ20を介して、C−炭化水素8t/hを添加する。フラッシャー/ストリッパーGのストリッパー部で、C−炭化水素及びC−ヒドロホルミル化生成物を触媒含有たまり液から分離する。フラッシャー/ストリッパーGのカン部で取出した流れ12を第1ヒドロホルミル化反応器Dに戻す。
【0226】
−炭化水素及びC−ヒドロホルミル化生成物を含有する排出物16を炭化水素回収工程Hに供給し、そこで排出物16を蒸留により分別する。蒸留塔Hのカン部でC−ヒドロホルミル化生成物を取出し、流れ18(15t/h)として排出する。蒸留塔Hの塔頂部で生じるC−炭化水素の一部を流れ19(4t/h)として排出する。蒸留塔Hの塔頂部で生じるC−炭化水素の残りの部分を90℃に加熱し、流れ20(8t/h)を介して、流れ15と一緒に、フラッシャー/ストリッパーGに戻す。
【0227】
【表1】

【0228】
【表2】

【0229】
例2:方法工程(II)を用いる実施
ナフサ−クラッカーからの粗−C−流を全部選択的水素添加工程に供給し、そこで複数個不飽和の化合物、例えば1,3−ブタジエン、アルキン及びアレンをアルケンに水素添加する。引き続き水素添加工程からの排出物からその中に含有されるイソブテンを徹底的に分離する。
【0230】
こうして得たラフィネート流を二重結合異性体化工程から得た流れEと一緒にし、流れAにする。流れAをヒドロホルミル化工程でRh/トリフェニルホスファン触媒の存在で合成ガスと反応させる。その際、ヒドロホルミル化工程で90%の1−ブテンが反応する。各々3.3%の反応した1−ブテンを2−ブテンに異性体化するか又はブタンに水素添加する。ヒドロホルミル化工程からの排出物からC−アルデヒド165000t/aを分離し、これを流れBを介して排出する。
【0231】
−アルデヒドの分離後に残留するC−流れCから16.5%を方法から排出する。流れCの排出されなかった分を二重結合異性体化工程に供給する。二重結合異性体化は温度350℃で酸化カリウム/酸化アルミニウム−接触で行う。二重結合異性体化工程からの排出物を流れEを介して、これをラフィネート流と一緒にして流れAにして、ヒドロホルミル化工程に戻す。
【0232】
下記第2表に個々に記載の物質流を年間トン[t/a]で表す。
【0233】
第2表
【表3】

【符号の説明】
【0234】
図1: 1 オレフィン供給、 2 蒸留塔、 3 内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れ、 4 第1反応帯域、 5 排出物、 6 末端位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れ、 7 内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れ、 8 水素添加工程、 9 水素添加工程からの排出物、 10 流れ、 11 第2反応帯域、 12 排出物、 13 排出物、 14 分離工程、 15 流れ、 16 ガス抜きした排出物、 17 分離工程、 18 排出物、 19 分離工程、 20 流れ、 21 流れ、 22 流れ、 23 流れ
図2: 1 第1反応帯域、 2 オレフィン含有供給、 3 流れ、 4 排出物、 5 分離工程、 6 流れ、 7 排出物、 8 分離工程、 9 流れ、 10 排出物、 11 分離工程、 12 オレフィン削減留分、 13 オレフィン富化留分、 14 第2反応帯域、 15 排出物
図3: A 蒸留塔、 B 反応器、 C 水素添加工程、 D 第1ヒドロホルミル化反応器、 E 第2ヒドロホルミル化反応器、 F 圧分離機、 G フラッシャー/ストリッパー、 H 炭化水素回収工程、 1,2 流れ、 3 流れ排出物、 4 流れ、 5 流れ、 6 流れ、 7 排出物、 8 合成ガス流れ、 9 排出物、 10 合成ガス、 11 排出物、 12 排ガス流、 13 排ガス流、 14 流れ、 15 排ガス流、 16 排出物、 17 触媒還流、 18 流れ、 19 流れ、 20 流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4個の炭素原子を有するオレフィンのヒドロホルミル化法において、末端位二重結合を有する線状C−オレフィン及び内部位二重結合を有する少なくとも1種の線状C−オレフィンを含有する(その際、iは少なくとも4の整数を表す)オレフィン含有供給を使用し、オレフィン含有の供給にヒドロホルミル化を行うが、その際、オレフィン含有供給に(I)ヒドロホルミル化前に部分的に先ず二重結合異性体化を行い、その際、二重結合異性体化工程に内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを供給するか;又は(II)先ずヒドロホルミル化を行い、ヒドロホルミル化工程からの排出物から内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有する流れを分離し、分離した流れに少なくとも部分的に二重結合異性体化を行うことによって;ヒドロホルミル化工程に供給される流れ中の末端位二重結合を有する線状C−オレフィンの含量を二重結合異性体化によって高めかつその際、二重結合異性体化からの排出物又は排出物の一部をヒドロホルミル化工程に供給する流れを調製するために使用する、オレフィンのヒドロホルミル化法。
【請求項2】
1−ブテン及び2−ブテンを含有するオレフィン含有供給を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オレフィン供給がラフィネートIIである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
オレフィン含有供給に方法工程(I)を行うが、その際、(Ia)オレフィン含有供給を蒸留塔に供給し;(Ib)蒸留塔の下部で内部位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを取出し、取出した流れを少なくとも部分的に第1反応帯域に供給し、二重結合異性体化触媒の存在で反応させ;(Ic)第1反応帯域からの排出物を工程(Ib)で取出した流れの上で蒸留塔に戻し;(Id)蒸留塔の上部で末端位二重結合を有する線状C−オレフィンを富化した流れを取出し、取出した流れ並びに一酸化炭素及び水素を第2反応帯域に供給し、ヒドロホルミル化触媒の存在で反応させる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(Id)で取出した流れを第2反応帯域へ供給する前に選択的水素添加を行って複数個不飽和の化合物の含量を減らし、選択的水素添加からの排出物を第2反応帯域に供給する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(Ib)で取出した流れの一部又は蒸留塔のカン部で別々に取出した流れを選択的水素添加に供給する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(Ib)で取出した流れの一部又は蒸留塔のカン部で別々に取出した流れを方法から排出する、請求項4又は5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
二重結合異性体化によって末端位二重結合を有する線状C−オレフィンに変える内部位二重結合を有する線状C−オレフィンの全変換率が、オレフィン含有供給中の内部位二重結合を有する線状C−オレフィンの全質量に対して、50〜99.9質量%の範囲である、請求項4から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
オレフィン含有供給に方法工程(II)を行うが、その際、(IIa)オレフィン供給並びに一酸化炭素及び水素を第1反応帯域に供給し、ヒドロホルミル化触媒の存在で反応させ;(IIb)第1反応帯域からの排出物から、内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有する流れを分離し、これを二つの留分に分別するが、その中少なくとも一つは内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有しており;(IIc)工程(IIb)から得た内部位二重結合を有する未反応の線状C−オレフィンを含有する留分を第2反応帯域に供給し、二重結合異性体化触媒の存在で反応させ;(IId)第2反応帯域からの排出物を工程(IIa)に戻す、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
オレフィン含有供給及び/又は第2反応帯域からの排出物を工程(IIa)で使用する前に選択的水素添加を行って複数個不飽和の化合物の含量を減らす、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(IIb)で得られた、工程(IIc)に供給しない留分を方法から排出する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
排出される留分の量が、方法(IIb)で分離された流れの全質量に対して、1〜75質量%の範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(IIb)で分離された流れが、主として未反応オレフィン及び飽和炭化水素から成り、これをオレフィン富化留分及びオレフィン削減留分に分け、この中オレフィン富化留分を工程(IIc)に供給する、請求項9から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
主として未反応オレフィン及び飽和炭化水素から成る流れをオレフィン富化留分及びオレフィン削減留分に分別するために、抽出蒸留、膜分離法、選択的吸収による分離又はこれら手段の少なくとも2種の組合せを行う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(IIc)に供給するオレフィンを富化した留分が、オレフィンを富化した留分の全質量に対して、少なくとも25質量%の内部位二重結合を有する線状Ci−オレフィンの含量を有する、請求項13又は14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程(Id)又は(IIa)で使用されるヒドロホルミル化触媒が、配位子として少なくとも1種の有機燐(III)−化合物を有する元素の周期律の第VIII副族の金属の錯体少なくとも1種を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
有機燐(III)−化合物が、一般式PR[式中、R、R及びRは、相互に無関係に、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールを表すが、その際、アルキル基は、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘタリールオキシ、COOH、カルボキシレート、SOH、スルホネート、NE、NE3+、ハロゲン、ニトロ、アシル又はシアノから選択した置換基1、2、3、4又は5個を有することができ、ここでE、E及Eは各々、水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールから選択した同一又は異なる基を表し、Xは一価の陰イオン当量を表し、その際、シクロアルキル−、ヘテロシクロアルキル−、アリール−及びヘタリール基は、アルキル及び前にアルキル基R、R及びRに関して挙げた置換基から選択した置換基1、2、3、4又は5個を有していてよく、その際、R及びRはそれらが結合している燐原子と一緒になって、場合により付加的に1、2又は3個シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールと縮合している5員から8員の複素環を表すことができ、その際、複素環及び場合により存在する場合には縮合された基は、相互に無関係に、アルキル及び前にアルキル基R、R及びRに関して挙げた置換基から選択した置換基各々1、2、3又は4個を有することができる]の化合物から選択したものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ヒドロホルミル化触媒が、配位子としてトリフェニルホスフィンを含むロジウム錯体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
有機燐(III)−化合物が、式RP−Y−PR[式中、R及びRは請求項17に記載したものを表し、Yは2価の架橋性基を表す]のキレート化合物から選択されたものである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
(i)1−ブテン及び2−ブテンから成る混合物又は1−ブテン及び2−ブテンを含有するC−炭化水素混合物に、請求項1から19までのいずれか1項で定義したように、ヒドロホルミル化を行って、n−バレルアルデヒドを含有するヒドロホルミル化生成物にし;(ii)場合によりヒドロホルミル化生成物に分別を行いn−バレルアルデヒド富化留分を得て;(iii)工程(i)で得たヒドロホルミル化生成物又は工程(ii)で得たn−バレルアルデヒド富化留分にアルドール縮合を行い;(iv)アルドール縮合の生成物に水素を用いて触媒作用により水素添加してアルコールにし;(v)場合により水素添加生成物に分別を行い、2−プロピルヘプタノール富化留分を得る、2−プロピルヘプタノールの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−511015(P2010−511015A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538717(P2009−538717)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063010
【国際公開番号】WO2008/065171
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】