説明

オレフィンの重合のための触媒成分

以下の製造工程、(a)式 Mg(OR)(OR) の化合物であるマグネシウムアルコラートを四塩化チタンと反応させること、ここでR とR は同じものであるかまたは異なっていて、これらはそれぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、この反応は50〜100℃の温度において炭化水素中で行われる、(b)(a)において得られた反応混合物を110℃〜200℃の温度において3〜25時間の範囲の時間にわたって熱処理に供すること、(c)(b)において得られた固体を炭化水素を用いて単離させ、そして洗浄すること、を含む方法による生成物を含む固体触媒成分であって、このとき前記固体触媒成分は2.5よりも大きなCl/Tiモル比を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンの重合のための触媒成分に関し、特に、エチレンおよびオレフィンCH=CHRとのその混合物(ここで、Rは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基である)であって、Ti、Mg、ハロゲンを含む固体触媒成分を含んでいて、特定のモル比を有し、そして特定の調製方法によって得られるものに関する。
【0002】
さらに、本発明は、高い溶融流量比(FRR21.6/5)の値によって特徴づけられるエチレンのホモポリマーおよびコポリマーを調製するための方法に関するものであり、ここで前記の値とは、21.6Kgの荷重で測定されるメルトインデックスと5Kgの荷重で測定されるメルトインデックスとの間の比率であって、ISO1133に従って190℃において測定される値を指す。前記の比率FRR21.6/5 は、一般に、分子量分布の幅についての一つの指標であると考えられる。
【背景技術】
【0003】
MWD(分子量分布)は、溶融物の流動学的挙動ひいてはその加工性と、最終的な機械的性質の両者に影響するという点で、エチレンポリマー(コポリマー)についての特に重要な特性である。狭いMWDによって溶融破壊と大きな収縮または狂いが生じるような条件においては、広いMWDを有するポリオレフィン、特に比較的高い平均分子量を伴うポリオレフィンは、高速度の押出し加工や吹込み成形において好まれる。
【0004】
広い分子量分布を有するエチレンポリマーを生成することのできる触媒系は、米国特許4,447,587号に記載されている。その触媒は、比較的低い温度においてマグネシウムアルコラートを四塩化チタンと反応させ、そして、それによって得られた反応混合物を、アルキルクロリド(塩化アルキル)を分離させるために、かなり高い温度において長時間の熱処理に供することによって得られる。
【0005】
典型的には、マグネシウムアルコラートを50〜100℃の範囲の温度においてモル量が過剰なTiClと反応させ、次いで、110℃〜200℃の範囲の温度において10〜100時間の範囲とされる時間(具体的には実施例において、少なくとも45時間とする)にわたって実施される熱処理に供され、それに伴って、さらなるアルキルクロリドが分離されなくなるまでアルキルクロリドが放出される。ろ過して洗浄した後、得られた固体は、Cl/Ti原子比が3未満で、最も典型的には2.6〜2.8の範囲である組成を示す。
【0006】
好ましい実施態様において、追加のアルミニウムトリアルキル化合物(トリイソブチルアルミニウムまたはトリイソフェニルアルミニウム)を用いて行われる懸濁液中でのエチレンの重合(共重合)の前に、触媒成分はトリイソブチルアルミニウム(TIBA)で前もって活性処理される。そのようにして得られる触媒は広い分子量分布を提供することができるが、しかし重合の活性度は十分ではない。
【0007】
重合の活性度は、すべての重合プロセスにおいて非常に重要な要素である。所定の触媒系について、それは、温度、圧力および分子量調節剤の濃度のような重合条件に依存するかもしれない。しかしながら、重合条件がいったん決められたならば、活性度は厳密に触媒系に依存し、そして活性度が十分でないときは、反応器に供給される触媒の量を増大させるか、あるいはその滞留時間を長くしなければならない。いずれにしても、供給される触媒の増加は製造されるポリマーの単位当りのコストの増大を招き、一方、滞留時間の増大はプラントの生産性の低下を招くので、上記の解決策は経済的な見地からプラントの操作可能性を不利な立場におくことが明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許4,447,587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この重要性の点から見て、触媒の活性度を増大させる必要性が常に感じられる。チーグラー・ナッタ触媒は一般に、アルミニウムアルキル化合物を、ハロゲン化マグネシウムと少なくともTi-ハロゲン結合を有するチタン化合物とを含む固体触媒成分と反応させることによって得られる。触媒成分は活性度とポリマーの特性の両者を担っているので、工業的な製造のために触媒系がいったん選択されたならば、それは、新たな触媒系がポリマーの特性を基本的に変更せずに維持する場合にのみ、もっと高い活性度を有する別のものに変更される。この理由により、特定の性質を有するポリマーを製造する能力を変更することなく、特定の触媒系の触媒活性度を修正する必要性が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、米国特許4,447,587号に記載された配合を修正することによって、異なる組成を有し、そしてずっと高い活性度を示す新たな触媒成分を製造できることが見いだされた。
【0011】
従って、本発明の目的は、以下の製造工程、(a)式 Mg(OR)(OR) の化合物であるマグネシウムアルコラートを四塩化チタンと反応させること、ここでR とR は同じものであるかまたは異なっていて、これらはそれぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、この反応は50〜100℃の温度において炭化水素中で行われる、(b)(a)において得られた反応混合物を110℃〜200℃の温度において3〜25時間の範囲の時間にわたって熱処理に供すること、(c)(b)において得られた固体を炭化水素を用いて単離させ、そして洗浄すること、を含む方法による生成物を含む固体触媒成分を提供することであり、このとき前記固体触媒成分は2.5よりも大きなCl/Tiモル比を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
触媒成分(A)の調製において、R とR は好ましくは2〜10個の炭素原子を有するアルキル基または -(CH)OR の基であり、ここでR はC〜C-アルキル基であり、そしてnは2〜6の整数である。好ましくは、RとR はC〜C-アルキル基である。このようなマグネシウムアルコキシドの例としては次のものがある:マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジ-i-プロポキシド、マグネシウムジ-n-プロポキシド、マグネシウムジ-n-ブトキシド、マグネシウムメトキシドエトキシド、マグネシウムエトキシドn-プロポキシド、マグネシウムジ(2-メチル-1-ペントキシド)、マグネシウムジ(2-メチル-1-ヘキソキシド)、マグネシウムジ(2-メチル-1-ヘプトキシド)、マグネシウムジ(2-エチル-1-ペントキシド)、マグネシウムジ(2-エチル-1-ヘキソキシド)、マグネシウムジ(2-エチル-1-ヘプトキシド)、マグネシウムジ(2-プロピル-1-ヘプトキシド)、マグネシウムジ(2-メトキシ-1-エトキシド)、マグネシウムジ(3-メトキシ-1-プロポキシド)、マグネシウムジ(4-メトキシ-1-ブトキシド)、マグネシウムジ(6-メトキシ-1-ヘキソキシド)、マグネシウムジ(2-エトキシ-1-エトキシド)、マグネシウムジ(3-エトキシ-1-プロポキシド)、マグネシウムジ(4-エトキシ-1-ブトキシド)、マグネシウムジ(6-エトキシ-1-ヘキソキシド)、マグネシウムジペントキシド、マグネシウムジヘキソキシド。マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジ-n-プロポキシドおよびマグネシウムジ-イソブトキシドのような単純なマグネシウムアルコキシドを用いるのが好ましい。マグネシウムジエトキシドは特に好ましい。
【0013】
マグネシウムアルコキシドは炭化水素の媒体中の懸濁液として、あるいはゲル分散液として用いることができる。ゲル分散液としてのマグネシウムアルコキシドの使用は、好ましい態様である。一般に、市販のマグネシウムアルコキシド、特にMg(OC) は、200〜1200μmの範囲、好ましくは約500〜700μmの範囲の平均粒径を有する。触媒の調製において最適な結果を得るために、その粒子の大きさをかなり小さくするのが好ましい。そのようにするために、マグネシウムアルコラートは不活性な飽和炭化水素の中に懸濁され、それによって炭化水素の懸濁液が形成される。この懸濁液は、不活性雰囲気(ArまたはN)の下で作動する高速分散機(例えば、Ultra-TurraxまたはDispax、IKA-Maschinenbau Janke & Kunkel GmbH)を用いて高い剪断応力条件を受けることができる。好ましくは、剪断応力は、ゲル状の分散液が得られるまで適用される。この分散液は、懸濁液よりも実質的に粘性が高く、またゲル状である、という点で標準的な懸濁液とは異なる。懸濁したマグネシウムアルコラートと比較して、分散したマグネシウムアルコラートのゲルは、ずっと緩慢に沈殿し、その程度はかなり小さい。
【0014】
すでに説明したように、第一の工程において、マグネシウムアルコキシドは不活性媒体中でTiClとの反応を受ける。
マグネシウムアルコキシドのTiCl との反応は、1よりも大きいTi/Mgのモル比において、そして好ましくは1.5〜4の範囲、より好ましくは1.75〜2.75の範囲のモル比において、50〜100℃の温度、好ましくは60〜90℃の温度において行われる。第一段階における反応時間は0.5〜8時間、好ましくは2〜6時間である。
【0015】
上述した反応のための不活性な懸濁液媒体として用いられる炭化水素としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタンのような脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素があり、また、ベンゼンやキシレンのような芳香族炭化水素も含まれる。酸素、硫黄化合物および水分が注意深く除去されたペトロリウムスピリットや水素化ディーゼル油の留分を用いることもできる。
【0016】
引き続く工程(b)において、このようにして得られた、マグネシウムアルコラートと遷移金属化合物との間の反応の生成物を含む反応混合物は、アルキルクロリド(塩化アルキル)の分離工程が完了する前に、80℃〜160℃の範囲の温度、好ましくは100℃〜140℃の温度において、3〜25時間の範囲の時間、好ましくは5〜15時間にわたって熱処理に供される。この調製工程の最後において、触媒成分(A)の粒子の大きさは、好ましくは5〜30μmの範囲であり、より好ましくは7〜15μmの範囲である。
【0017】
工程(b)が完了した後、上澄みの母液が10ミリモル/l未満のCl濃度とTi濃度を有するまで、60〜80℃の範囲の温度における炭化水素による洗浄を行うことができる。すでに説明したように、洗浄工程(c)の最後に得られる固体は少なくとも2.5のCl/Tiモル比、好ましくは少なくとも3の、そしてより好ましくは3〜5の範囲のCl/Tiモル比を有する。得られる固体は次の典型的な組成を有する: Mg:Ti:Cl=1:(0.8〜1.5):(3.2〜4.2)。
【0018】
特定の場合において、さらなる工程(d)を実施するのが有用であることが証明されたが、この工程(d)とは、得られた固体をアルミニウムアルキルハリド化合物(ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物)と接触させ、それによって、Cl/Tiモル比を工程(d)の前の固体のモル比に対して増大させた最終の固体触媒成分を得るものである。
【0019】
アルキルアルミニウムクロリドは、好ましくは、式 RAlClのジアルキルアルミニウムモノクロリドまたは式 RAlCl のアルキルアルミニウムセスキクロリド(ここでR は、1〜16個の炭素原子を有する、同じかまたは異なるアルキル基とすることができる)から選択される。例として次のものが挙げられる:(C)AlCl、(イソブチル)AlClおよび (C)AlCl(エチルアルミニウムセスキクロリド)(この後者のものが好ましい)。反応は、攪拌される容器の中で、0℃〜150℃の温度、好ましくは30℃〜100℃において、0.5〜5時間の範囲の時間にわたって行うことができる。
【0020】
アルミニウムアルキルクロリド化合物は、Al/Tiモル比(これは、前の工程によって得られる固体触媒成分のTi含有量について計算される)が0.05〜1、好ましくは0.1〜0.5であるような量で用いられる。
【0021】
すでに説明したように、この後者の反応によって、Cl/Tiモル比が増大して、このモル比が一般に少なくとも3の、最も好ましくは3.5よりも大きい最終の固体触媒成分が生成する。
【0022】
この後者の工程(d)の効果により、ある程度のチタン原子が、Ti+4の酸化状態からTi+III の酸化状態へ減少するかもしれない。
このようにして得られる触媒成分は、エチレンの重合において有機アルミニウム化合物(B)とともに用いられる。
【0023】
有機アルミニウム化合物(B)は、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物から選択されるのが好ましい。また、アルキルアルミニウムハリド、そして特に、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、ジイソブチルアルミニウムクロリド、Al-セスキクロリドおよびジメチルアルミニウムクロリド(DMAC)のようなアルキルアルミニウムクロリドを前記のトリアルミニウムアルキルと混合して用いてもよい。TEALおよびTIBAの使用が好ましい。
【0024】
また、前もって活性処理した触媒系をアルファオレフィン、好ましくは線状C2-C10-1-アルケン、そして特にエチレンまたはプロピレンを用いて最初に所期重合させ、次いで、得られた所期重合した触媒固体を本重合において用いるのも好ましい。所期重合において用いられる触媒固体と、その上に重合するモノマーとの質量比は、通常、1:0.1から1:20までの範囲である。
【0025】
本発明の触媒系は、液相重合のプロセスに特に適している。実際には、30μm未満というような小さな平均の粒子サイズ、好ましくは7〜15μmの範囲の粒子サイズが、不活性媒体中でのスラリー重合に特に適しているが、これは、攪拌槽型反応器またはループ型反応器の中で連続的に行うことができる。好ましい態様において、エチレンの重合プロセスは、2以上のカスケード式ループ型反応器または攪拌槽型反応器の中で行われ、それぞれの反応器において様々な分子量および/または様々な組成を有するポリマーが生成し、それによって、全体として広い分布の分子量および/またはモノマーの組成を示す。すでに説明したように、本発明の触媒は、米国特許4,447,587号に開示されている触媒よりも高い収率で、広い分子量分布を有するエチレンのポリマーを製造することができ、そして吹込み成形の適用分野において用いるのに適している。
【0026】
上述したエチレンのホモポリマーおよびコポリマーに加えて、本発明の触媒は、3〜12個の炭素原子を有する1以上のアルファオレフィンとのエチレンのコポリマーであって、エチレンから誘導される構成単位のモル含有量が80%よりも多いコポリマーと、エチレンとプロピレンの弾性コポリマーと、少ない割合のジエンを含むエチレンとプロピレンの弾性ターポリマーであって、エチレンから誘導される構成単位の重量での含有量が約30〜70%である弾性ターポリマーからなる極低密度および超低密度のポリエチレン(0.920g/cmよりも小さく、0.880g/cmまでの密度を有するVLDPEおよびULDPE)を調製するのにも適している。
【0027】
以下の実施例は、非限定的なやり方で本発明をさらに説明するために提供される。
【実施例】
【0028】
実施例において記述されて報告される触媒の元素組成についての結果は、下記の分析方法によって得られた:
Ti:過酸化物の錯体を用いる測光法による、
Mg、Cl:慣用の方法による滴定による、
MFR5/190 :ISO1133に従う質量流量(メルトインデックス)、呼称荷重5Kgおよび試験温度=190℃、
FRR21.6/5 :流量比;MFR21.6/190とMFR5/190 の比率、
かさ密度:DIN ENISO 60に従う、
50(平均粒径):DIN 53477およびDIN 66144に従う、
/M(多分散度):モル質量分布の幅の尺度(M=重量平均、M=数平均)、DIN55672に従ってGPC法によって測定される。測定は、溶媒としてトリクロロベンゼンを用いて135℃において行われた。
【0029】
実施例1(本発明に従う)
a)触媒成分Aの調製:
140〜170℃の沸点範囲を有する25dmのディーゼル油(水素化石油留分)の中の4.0kg(=35モル)の市販のMg(OC2H5)の懸濁液が、高速分散機(Krupp Supraton(登録商標)タイプS200)において、60℃において16時間にわたって処理され、それによりゲル状の分散液が形成された。このMg(OC2H5) の分散液は、羽根車式攪拌機とそらせ板を備えていて、すでに19dmのディーゼル油を入れている130dm の反応器に移された。5dm のディーゼル油ですすぎ洗いした後、ディーゼル油で10dmに希釈された7.6dm(=70モル)のTiCl が、70℃において6時間にわたって80rpmの攪拌速度で添加された。その後、この混合物はT=120℃において5時間にわたって加熱された。次いで、140〜170℃の沸点範囲を有する50dmのディーゼル油(水素化石油留分)が添加され、そして混合物はT=65℃まで冷却された。固体が沈殿した後、残りの容積が50dmになるまで上澄みの液相(母液)がデカントされた。その後、50dmの新しいディーゼル油(140〜170℃の沸点範囲を有する水素化石油留分)が導入された。20分の攪拌時間と約90分の沈降期間の後、残りの容積が50dmになるまで上澄み液が再びデカントされた。この洗浄手順は、母液のチタン濃度が10ミリモル/dm 未満になるまで繰り返された。
【0030】
次いで、懸濁液は室温まで冷却された。チタンの含有量は0.25g触媒/ミリモルTiであり、そして固体(触媒成分A)のモル比は次の通りであった:
Mg:Ti:Cl≒1:0.84:3.18。
【0031】
b)懸濁液中でのエチレンの重合
重合の実験が、200dm の反応器において回分式に行われた。この反応器は、羽根車式攪拌機とそらせ板を備えていた。反応器中の温度が測定され、そして自動的に一定に保たれた。重合の温度は85±1℃であった。
【0032】
重合の反応は以下のようにして行われた。
100dm のディーゼル油(140〜170℃の沸点範囲を有する水素化石油留分)が、N2(窒素)でガスシールされた反応器中に置かれ、そして85℃まで加熱された。不活性ガス(N2)のブランケット(覆い)の下で、ディーゼル油で200cmまで希釈された100ミリモルのトリエチルアルミニウムが助触媒として添加され(=触媒成分B)、そしてその後、a)において説明したように調製された触媒成分Aが、ディーゼル油で希釈された懸濁液として、8.0ミリモルのチタン(=2.0g触媒)に相当する量で反応器内に導入された。従って、アルミニウム/チタンのモル比は12.5:1であった。
【0033】
反応器はH(水素)で8バールまで何回か加圧され、そして反応器から窒素を完全に除去するために再び減圧された(この手順は反応器のガス空間におけるH濃度を測定することによって監視され、その濃度は最終的に95容積%を示した)。エチレンの入口を開けることによって重合が開始された。重合の時間の全体にわたってエチレンが8.0kg/hの量で導入され、それとともに反応器内の圧力はゆっくり上昇された。反応器のガス空間における水素の濃度が断続的に測定され、そして適当な量の水素を導入することによって容積比率は一定に保たれた(Hの容積%は約55)。
【0034】
225分後に重合は停止された(全部で30kgのエチレンガスが供給された)。触媒の生産性を定量化するために、比利用度(specific mileage)が次のようにして決定される:
比利用度=kg(ポリエチレン)/(g(触媒)・バール(エチレン)・重合時間(hr))。
重合の結果は表1に示される。
【0035】
実施例2(本発明に従う)
実施例1で説明したのと同じやり方で実施例2が行われたが、ただし、混合物は120℃において7.5時間にわたって加熱された。
【0036】
チタンの含有量は0.22g触媒/ミリモルTiであり、そして固体(触媒成分A)のモル比は次の通りであった:
Mg:Ti:Cl≒1:1.06:3.36。
【0037】
実施例1で説明したようにして重合が行われたが、ただし、助触媒として50ミリモルのトリエチルアルミニウム(触媒成分B)が反応器内に導入され、そしてその後、実施例2において説明したように調製された触媒成分Aが、3ミリモルのチタン(=0.66g触媒)に相当する量で、ディーゼル油で希釈された懸濁液として、反応器内に導入された。従って、アルミニウム/チタンのモル比は16.7:1であった。重合の結果は表1に示される。
【0038】
実施例3(本発明に従う)
実施例2で説明した触媒成分Aが、アルミニウム-セスキクロリド(EASC)を用いて前もって活性処理された。Al/Tiモル比は0.25:1であった。反応は85℃において2時間にわたって行われた。
【0039】
チタンの含有量は0.27g触媒/ミリモルTiであり、そして固体(触媒成分A)のモル比は次の通りであった:
Mg:Ti:Cl≒1:1.01:3.96。
【0040】
実施例1で説明したようにして重合が行われたが、ただし、助触媒として56ミリモルのトリエチルアルミニウム(触媒成分B)が反応器内に導入され、そしてその後、実施例3において説明したように調製された触媒成分Aが、4.5ミリモルのチタン(1.2g触媒)に相当する量で、ディーゼル油で希釈された懸濁液として、反応器内に導入された。従って、アルミニウム/チタンのモル比は12.5:1であった。重合の結果は表1に示される。
【0041】
実施例4(本発明に従う)
前もって活性処理した、実施例3で説明した触媒成分Aが、エチレンを用いて所期重合された。攪拌すると同時に、反応器は2バールの水素で3回フラッシ(flush)され、次いで、3バールの水素で加圧された。その後、65℃において、エチレンは0.5〜1.0kg/hのペースで計量された。3時間後に所期重合は停止され、そして懸濁液は冷却された。固体が沈殿した後、残りの容積が50dmになるまで上澄みの液相(母液)がデカントされた。その後、50dmの新しいディーゼル油(140〜170℃の沸点範囲を有する水素化石油留分)が導入された。20分の攪拌時間と約90分の沈降期間の後、残りの容積が50dmになるまで上澄み液が再びデカントされた。この洗浄手順は、母液の塩素濃度が10ミリモル/dm 未満になるまで繰り返された。チタンの含有量は0.38g触媒/ミリモルTiであった。
【0042】
実施例1で説明したようにして重合が行われたが、ただし、助触媒として50ミリモルのトリエチルアルミニウム(触媒成分B)が反応器内に導入され、そしてその後、実施例4において説明したように調製された触媒成分Aが、4.7ミリモルのチタン(=1.8g触媒)に相当する量で、ディーゼル油で希釈された懸濁液として、反応器内に導入された。従って、アルミニウム/チタンのモル比は10.6:1であった。重合の結果は表1に示される。
【0043】
実施例5(本発明に従う)
実施例1で説明したのと同じやり方で実施例5が行われたが、ただし、混合物は120℃において10時間にわたって加熱された。
【0044】
チタンの含有量は0.20g触媒/ミリモルTiであり、そして固体(触媒成分A)のモル比は次の通りであった:
Mg:Ti:Cl≒1:1.22:3.93。
【0045】
実施例1で説明したようにして重合が行われたが、ただし、助触媒として125ミリモルのトリエチルアルミニウム(触媒成分B)が反応器内に導入され、そしてその後、実施例5において説明したように調製された触媒成分Aが、10.0ミリモルのチタン(2.0g触媒)に相当する量で、ディーゼル油で希釈された懸濁液として、反応器内に導入された。従って、アルミニウム/チタンのモル比は12.5:1であった。重合の結果は表1に示される。
【0046】
実施例6(本発明に従う)
実施例1で説明したのと同じやり方で実施例6が行われたが、ただし、混合物は120℃において12時間にわたって加熱された。チタンの含有量は0.22g触媒/ミリモルTiであり、そして固体(触媒成分A)のモル比は次の通りであった:
Mg:Ti:Cl≒1:1.34:3.81。
【0047】
実施例1で説明したようにして重合が行われたが、ただし、助触媒として187ミリモルのトリエチルアルミニウム(触媒成分B)が反応器内に導入され、そしてその後、実施例6において説明したように調製された触媒成分Aが、15ミリモルのチタン(3.3g触媒)に相当する量で、ディーゼル油で希釈された懸濁液として、反応器内に導入された。従って、アルミニウム/チタンのモル比は12.5:1であった。
【0048】
実施例7(本発明に従う)
実施例6で説明した触媒成分Aが、アルミニウム-セスキクロリド(EASC)を用いて前もって活性処理された。Al/Tiモル比は0.25:1であった。反応は85℃において2時間にわたって行われた。
【0049】
チタンの含有量は0.22g触媒/ミリモルTiであり、そして固体(触媒成分A)のモル比は次の通りであった:
Mg:Ti:Cl≒1:1.40:4.38。
【0050】
実施例1で説明したようにして重合が行われたが、ただし、助触媒として125ミリモルのトリエチルアルミニウム(=触媒成分B)が反応器内に導入され、そしてその後、実施例7において説明したように調製された、前もって活性処理された触媒成分Aが、10ミリモルのチタン(2.2g触媒)に相当する量で、ディーゼル油で希釈された懸濁液として、反応器内に導入された。従って、アルミニウム/チタンのモル比は12.5:1であった。重合の結果は表1に示される。
【0051】
実施例8(本発明に従う)
実施例1で説明したのと同じやり方で実施例8が行われたが、ただし、混合物は120℃において25時間にわたって加熱された。
【0052】
チタンの含有量は0.19g触媒/ミリモルTiであり、そして固体(触媒成分A)のモル比は次の通りであった:
Mg:Ti:Cl≒1:1.19:3.27。
【0053】
実施例1で説明したようにして重合が行われたが、ただし、助触媒として187ミリモルのトリエチルアルミニウム(=触媒成分B)が反応器内に導入され、そしてその後、実施例2において説明したように調製された触媒成分Aが、15ミリモルのチタン(2.9g触媒)に相当する量で、ディーゼル油で希釈された懸濁液として、反応器内に導入された。従って、アルミニウム/チタンのモル比は12.5:1であった。
【0054】
比較例1
実施例1で説明したのと同じやり方で比較例1が行われたが、ただし、4.5kg(=39.4モル)のMg(OC) および11dm(98.4モル)のTiCl が用いられ、また、混合物は120℃において1時間だけ加熱された。
【0055】
チタンの含有量は1.05g触媒/ミリモルTiであり、そして固体(触媒成分A)のモル比は次の通りであった:
Mg:Ti:Cl≒1:0.16:2.34。
【0056】
実施例1で説明したようにして重合が行われたが、ただし、助触媒として50ミリモルのトリエチルアルミニウム(=触媒成分B)が反応器内に導入され、そしてその後、比較例1において説明したように調製された触媒成分Aが、3ミリモルのチタン(=3.15g触媒)に相当する量で、ディーゼル油で希釈された懸濁液として、反応器内に導入された。従って、アルミニウム/チタンのモル比は16.7:1であった。重合の結果は表1に示される。
【0057】
比較例2
実施例1で説明したのと同じやり方で比較例2が行われたが、ただし、混合物は120℃において50時間にわたって加熱された。チタンの含有量は0.17g触媒/ミリモルTiであり、そして固体(触媒成分A)のモル比は次の通りであった:
Mg:Ti:Cl≒1:1.44:3.49。
【0058】
実施例1で説明したようにして重合が行われたが、ただし、助触媒として187ミリモルのトリエチルアルミニウム(触媒成分B)が反応器内に導入され、そしてその後、比較例2において説明したように調製された触媒成分Aが、15ミリモルのチタン(2.6g触媒)に相当する量で、ディーゼル油で希釈された懸濁液として、反応器内に導入された。従って、アルミニウム/チタンのモル比は12.5:1であった。重合の結果は表1に示される。
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体触媒成分であり、当該固体触媒成分は以下の製造工程、(a)式 Mg(OR)(OR) の化合物であるマグネシウムアルコラートを四塩化チタンと反応させること、ここでR とR は同じものであるかまたは異なっていて、これらはそれぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、この反応は50〜100℃の温度において炭化水素中で行われる、(b)(a)において得られた反応混合物を110℃〜200℃の温度において3〜25時間の範囲の時間にわたって熱処理に供すること、(c)(b)において得られた固体を炭化水素を用いて単離させ、そして洗浄すること、を含む方法による生成物を含む固体触媒成分であって、このとき前記固体触媒成分は2.5よりも大きなCl/Tiモル比を有する、前記固体触媒成分。
【請求項2】
マグネシウムアルコラートはマグネシウムジエトキシドであり、そしてマグネシウムアルコラートは炭化水素の媒体中のゲル分散液として用いられる、請求項1に記載の固体触媒成分。
【請求項3】
マグネシウムアルコラートのTiCl との反応は、1.5〜4の範囲のTi/Mgのモル比において、60〜90℃の温度において、そして2〜6時間にわたって行われる、請求項1に記載の固体触媒成分。
【請求項4】
Ti/Mgは1.75〜2.75の範囲である、請求項3に記載の固体触媒成分。
【請求項5】
工程(b)における熱処理は、100℃〜140℃の範囲の温度において、5〜15時間の範囲の時間にわたって行われる、請求項1に記載の固体触媒成分。
【請求項6】
Cl/Tiモル比は少なくとも3である、請求項1に記載の固体触媒成分。
【請求項7】
工程(c)の後に得られる固体は次の組成: Mg:Ti:Cl=1:0.8〜1.5:3.2〜4.2 を有することによって特徴づけられる、請求項1に記載の固体触媒成分。
【請求項8】
固体触媒成分を、工程(d)において、式 RAlClのジアルキルアルミニウムモノクロリドまたは式 RAlCl のアルキルアルミニウムセスキクロリド(ここでR は、1〜16個の炭素原子を有する、同じかまたは異なるアルキル基とすることができる)から選択されるアルミニウムアルキルハリド化合物とさらに接触させる、請求項1に記載の固体触媒成分。
【請求項9】
アルミニウムアルキルクロリド化合物は、Al/Tiモル比(これは、前の工程によって得られる固体触媒成分のTi含有量について計算される)が0.05〜1であるような量で用いられる、請求項8に記載の固体触媒成分。
【請求項10】
工程(d)の後に、最終の固体触媒成分は、工程(d)の前の固体のCl/Tiモル比に対して増大したCl/Tiモル比を有する、請求項8に記載の固体触媒成分。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の固体触媒成分(成分A)と、トリアルキルアルミニウム化合物から選択される有機アルミニウム化合物(B)との間の反応の生成物を含む、エチレンの重合のための触媒系。
【請求項12】
請求項11に記載の触媒系が存在する中で行なわれる、懸濁液中でのエチレンの重合のための方法。

【公表番号】特表2013−501114(P2013−501114A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523308(P2012−523308)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061210
【国際公開番号】WO2011/015552
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】