説明

オレフィン化合物の製造方法

【課題】幾何異性体や位置異性体等の異性体の生成が少ないオレフィン化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】無機塩基の存在下、パラジウム触媒と式(1)


(式中、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基等を表す。ただし、RとRがともに水素原子であることはない。Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。)で示されるα,β−不飽和アルデヒド化合物とを接触させる式(2)


(式中、R、RおよびRはそれぞれ上記と同一の意味を表す。)で示されるオレフィン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素−炭素二重結合は、各種化学品の基本骨格として重要であり、該骨格を有するオレフィン化合物は、医農薬およびその中間体として、多く使用されている。例えば、2,2−ジメチル−3−[(1Z)−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸エステルは、ピレスロイド系家庭用防疫薬、殺虫剤の合成中間体として、重要な化合物である。
【0003】
オレフィン化合物の製造方法として、パラジウム触媒とα,β−不飽和アルデヒド化合物とを接触させる脱カルボニル化反応が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、かかる方法では、目的のオレフィン化合物以外に、その幾何異性体や位置異性体等の異性体が多く副生する点において、特に医農薬やその中間体のように厳密な不純物管理が求められる化合物の製造方法としては満足できるものではなかった。
【0004】
【非特許文献1】J.Org.Chem.,27,2687(1962)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況のもと、本発明者は、パラジウム触媒とα,β−不飽和アルデヒド化合物とを接触させる脱カルボニル化反応について鋭意検討したところ、該反応を無機塩基の存在下に実施することにより、得られるオレフィン化合物の幾何異性体や位置異性体等の異性体の生成を抑制することができ、その結果、医農薬やその中間体として満足できる品質のオレフィン化合物が得られることを見いだし、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、無機塩基の存在下、パラジウム触媒と式(1)

(式中、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。ただし、RとRがともに水素原子であることはない。Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。また、RとRまたはRとRが結合し、その結合炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
で示されるα,β−不飽和アルデヒド化合物とを接触させる式(2)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示されるオレフィン化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比較的不純物の少ないオレフィン化合物を製造することができるため、工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、無機塩基の存在下、パラジウム触媒と上記式(1)で示されるα,β−不飽和アルデヒド化合物(以下、不飽和アルデヒド(1)と略記する。)とを接触させ、上記式(2)で示されるオレフィン化合物(以下、オレフィン(2)と略記する。)を与える脱カルボニル化反応である。
【0010】
式(1)において、式中、R、RおよびRで示されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基上に置換していてもよい基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、フリル基、オキサゾリル基、4−フルオロフェニル基、2−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル基等の置換されていてもよい炭素数4〜12のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜3のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等の炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。かかる基で置換されたアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシメチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−エトキシカルボニルプロピル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、1−メチル−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)エチル基、フルオロベンジル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシベンジル基、3−フルオロ−2−フルフリル基、3−メトキシ−2−フルフリル基等が挙げられる。
【0011】
シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。これらのシクロアルキル基上に置換していてもよい基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、フリル基、オキサゾリル基、4−フルオロフェニル基、2−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基等の置換されていてもよい炭素数4〜12のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜3のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等の炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。かかる基で置換されたシクロアルキル基の具体例としては、3−メトキシカルボニル−2,2−ジメチルシクロプロピル基、メンチル基、4−フェニルシクロヘキシル基、3,7−ジメチル−2,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−1H−インデン−4−イル基等が挙げられる。
【0012】
アルケニル基としては、例えばエテニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチル−3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、4−メチル−4−ペンテニル基、1−ヘキセン−4−イル基等の直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。これらのアルケニル基上に置換していてもよい基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、フリル基、オキサゾリル基、4−フルオロフェニル基、2−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基等の置換されていてもよい炭素数4〜12のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜3のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等の炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。かかる基で置換されたアルケニル基の具体例としては、3−フルオロ−2−プロペニル基、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル基、4−メトキシ−2−ブテニル基、4−フェノキシ−2−ブテニル基、4−ベンジルオキシ−2−ブテニル基、3−フェニル−2−プロペニル基等が挙げられる。
【0013】
アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、フリル基、オキサゾリル基等の炭素数4〜12のヘテロおよび非へテロ芳香族基が挙げられる。これらのアリール基上に置換していてもよい基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜3のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等の炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。かかる基で置換されたアリール基の具体例としては、4−フルオロフェニル基、2−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル基、3−フルオロ−2−フリル基、3―メトキシ−2−フリル基等が挙げられる。
【0014】
とRが結合し、その結合炭素原子とともに形成していてもよい環としては、例えばシクロペンチリデン環、シクロヘキシリデン環、2,2−ジメチルシクロヘキシリデン環、3−イソプロペニルシクロヘキシリデン環等のシクロアルキリデン環が挙げられる。
【0015】
とRが結合し、その結合炭素原子とともに形成していてもよい環としては、例えばシクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、3,3−ジメチルシクロヘキセン環、4−イソプロペニルシクロヘキセン環、3,5−メチレン−4,4−ジメチルシクロヘキセン環等のシクロアルケン環、6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]−2−ヘプテン環等のビシクロアルケン環が挙げられる。
【0016】
他の製造方法では選択的に得ることが困難なZ体のオレフィン(2)が得られる点において、Rが水素原子である不飽和アルデヒド(1)を用いることが好ましい。
【0017】
かかる不飽和アルデヒド(1)としては、例えば2,6,6−トリメチルシクロヘキセン−1−カルバルデヒド、(2E)−2−エチル−2−ヘキセナール、(2E)−2−イソプロピル−5−メチル−2−ヘキセナール、1−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]−2−ヘプテン−2−カルバルデヒド、(2E)−2,4−ジエチルヘプタ−2,6−ジエナール、4−イソプロペニル−1−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、(2E)−3−(3,7−ジメチル−2,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−1H−インデン−4−イル)−2−メチル−2−プロペナール、(2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペナール、(2E)−2−ヘキシル−3−フェニル−2−プロペナール、(2E)−2−フェニル−2−ブテナール、(2E)−4−メチル−2−フェニル−2−ペンテナール、(2E)−3−(2−フリル)−2−メチル−2−プロペナール、(2E)−2−メチル−3−(2−メチル−1,3−オキサゾール−4−イル)−2−プロペナール、(2E)−5−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2,4−ジメチル−2−ペンテナール等が挙げられる。不飽和アルデヒド(1)は、市販のものを使用することもできるし、例えば、アルドール反応(例えば、特開2005−306859号公報参照。)等の公知の方法を用いて製造したものを使用することもできる。不飽和アルデヒド(1)は、予め、カルボラフィン、シリカゲル、アルミナ等の吸着剤で処理したり、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段により処理したりした後に使用することもできる。
【0018】
パラジウム触媒としては、例えば、金属パラジウム;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)等の0価のパラジウム錯体;ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、パラジウム(II)アセチルアセトナート等の2価のパラジウム錯体;酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)等の2価のパラジウム塩;パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカアルミナ、パラジウム/シリカ、パラジウム/アルミナ、酢酸パラジウム(II)/シリカ等の0価または2価の固体担持パラジウム;等が例示される。好ましくは、固体担持パラジウムが用いられる。より好ましくは0価の固体担持パラジウムであり、さらに好ましくはパラジウム/カーボンである。固体担持パラジウム中のパラジウム含量は、特に限定されない。かかるパラジウム触媒は、通常、市販のものを使用できる。
【0019】
不飽和アルデヒド(1)1モルに対して、0.0001モル以上のパラジウム原子が含まれる量のパラジウム触媒を用いれば本発明の目的は達成でき、その上限は特にないが、あまり多いと経済的に不利になるため、通常、0.1モルを越えない程度の量を用いる。好ましくは0.002〜0.05モルの範囲である。
【0020】
無機塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;等が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属水酸化物であり、より好ましくはアルカリ金属炭酸塩である。無機塩基は、固体として用いてもよいし、水溶液として用いてもよい。
【0021】
無機塩基の使用量は、パラジウム触媒に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜3モルの範囲である。
【0022】
パラジウム触媒と不飽和アルデヒド(1)とを、溶媒を用いることなく接触させてもよいが、通常、脱カルボニル化反応に不活性な溶媒の存在下で接触させる。かかる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、シメン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ヘキサデカン等の飽和脂肪族炭化水素溶媒;ヘキセン、ヘプテン、オクテン、デセン、ヘキサデセン、シクロヘキセン、シクロドデセン等の不飽和脂肪族炭化水素溶媒;酢酸エチル、オクタン酸エチル等のエステル溶媒;ジクロロエタン、四塩化炭素、塩化オクチル等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジヘキシルエーテル等のエーテル溶媒;メチルイソブチルケトン、5−ノナノン等のケトン溶媒;等が例示される。これら溶媒は、単独で用いてもよいし、二種以上を同時に用いてもよい。その使用量は特に限定されないが、不飽和アルデヒド(1)に対して、通常0.5〜100重量倍、好ましくは1〜10重量倍の範囲である。
【0023】
パラジウム触媒と不飽和アルデヒド(1)とを接触させる温度は、通常70〜250℃、好ましくは100〜180℃の範囲である。
【0024】
パラジウム触媒と不飽和アルデヒド(1)とを接触させる圧力は、通常、常圧であるが、用いる溶媒の沸点以上の温度で接触させる場合には、加圧してもよい。
【0025】
パラジウム触媒と不飽和アルデヒド(1)とを接触させる時間は、上記温度によって異なるが、通常3〜50時間程度の範囲である。脱カルボニル反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の通常の分析手段あるいは発生する一酸化炭素量の測定により確認することができる。
【0026】
また、パラジウム触媒と不飽和アルデヒド(1)とをポリエーテル化合物の存在下で接触させれば、得られるオレフィン(2)の幾何異性体や位置異性体等の異性体の生成を、より効果的に抑制できる場合もある。ポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール化合物;ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテル化合物;15−クラウン−5、18−クラウン−6等のクラウンエーテル化合物;等が挙げられる。なかでもポリアルキレングリコール化合物が好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましく、平均分子量200〜2000のポリエチレングリコールがさらに好ましい。かかるポリエーテル化合物は、通常、市販のものを用いることができる。ポリエーテル化合物の使用量は、無機塩基に対して、通常0.1〜10重量倍の範囲である。
【0027】
パラジウム触媒、不飽和アルデヒド(1)および無機塩基の混合順序は、特に限定されず、通常、それらと、必要により溶媒とを任意の順序で混合し、所定の温度に調整すればよい。パラジウム触媒として含水物を用いたり、無機塩基として水溶液を用いたりする等、系中に水分を含む場合は、パラジウム触媒や無機塩基に含まれる水分を除去した後に、不飽和アルデヒド(1)を接触させることが望ましい。上記水分の除去操作は、通常、パラジウム触媒や無機塩基を加熱することにより行うが、水と共沸する溶媒を用いて加熱して共沸脱水することが好ましい。
【0028】
反応終了後、濾過処理や蒸留処理等の通常の分離手段により、式(2)で示されるオレフィン化合物(以下、オレフィン(2)と略記する。)を単離することができる。得られたオレフィン(2)は、精留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段により、さらに精製してもよい。
【0029】
かくして得られるオレフィン(2)としては、例えば1,3,3−トリメチルシクロヘキセン、(3Z)−3−ヘプテン、(3Z)−2,6−ジメチル−3−ヘプテン、シクロヘキセン、6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]−2−ヘプテン、(5Z)−4−エチルオクタ−1,5−ジエン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、3,7−ジメチル−4−[(1Z)−1−プロペニル]−2,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−1H−インデン、(1Z)−1−プロペニルベンゼン、(1Z)−1−オクテニルベンゼン、[(1Z)−4−メチル−1−ペンテニル]ベンゼン、2−[(1Z)−1−プロペニル]フラン、2−メチル−4−[(1Z)−1−プロペニル]−1,3−オキサゾール、5−[(3Z)−2−メチル−3−ペンテニル]−1,3−ベンゾジオキソール等が挙げられる。
【0030】
次に、本発明の適用例として、式(1)におけるRまたはRが、下記式

(式中、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表し、・は二重結合との結合部位を表す。)
で示される基である場合について説明する。
【0031】
で示される置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基および置換されていてもよいアリール基としては、式(1)におけるR、RおよびRとして上述したものと同様の置換基が挙げられる。
【0032】
かかる式(1)で示されるで示されるα,β−不飽和アルデヒド化合物(以下、不飽和アルデヒド(1’)と略記する。)としては、例えば、2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸エチル、2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸n−プロピル、2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−1−ヘキセニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−1,3−ヘキサジエニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−2−フェニルエテニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−3−フェニル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、および、上記各化合物における(1E)が(1Z)である化合物等が挙げられる。
【0033】
不飽和アルデヒド(1’)の製造法は特に限定されず、上述したアルドール反応以外に、例えば、二酸化セレンを用いて菊酸エステルを酸化する方法(例えば、J.Chem.Soc.(C),1076(1970)参照。)等の公知の方法を用いて製造することができる。
【0034】
得られる式(2)で示されるオレフィン化合物(以下、オレフィン(2’)と略記する。)としては、例えば、2,2−ジメチル−3−[(1Z)−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、2,2−ジメチル−3−[(1Z)−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸エチル、2,2−ジメチル−3−[(1Z)−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸n−プロピル、2,2−ジメチル−3−[(1Z)−1−ヘキセニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、2,2−ジメチル−3−[(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、2,2−ジメチル−3−[(1Z)−1,3−ヘキサジエニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、2,2−ジメチル−3−[(1Z)−2−フェニルエテニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、2,2−ジメチル−3−[(1Z)−3−フェニル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチル、および、上記各化合物における(1E)が(1Z)である化合物等が挙げられる。
【0035】
かかるオレフィン(2’)は、ピレスロイド系家庭用防疫薬、殺虫剤の合成中間体として有用な化合物である(例えば、特開2002−167355号公報参照。)。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。なお、分析はガスクロマトグラフィーを用いて行い、各純度およびZ/E比は面積百分率法により、各含量は内部標準法により、それぞれもとめた。
【0037】
また、以下の実施例において、トランス体とは、シクロプロパン環平面に対して、1位のメトキシカルボニル基と3位の置換基とが、反対側にあるものを意味し、シス体とは、シクロプロパン環平面に対して、1位のメトキシカルボニル基と3位の置換基とが、同一側にあるものを意味する。
【0038】
実施例1

5重量%パラジウム/カーボン(55重量%含水品)1.82g、炭酸カリウム0.077g、ポリエチレングリコール(平均分子量600)0.173g、混合キシレン(エチルベンゼン60重量%含有)9.6gおよび水5.4gを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへトランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの混合キシレン(エチルベンゼン60重量%含有)溶液(含量:50.3重量%)29.9gを加え、150℃まで昇温し、同温度で25時間加熱還流した。冷却後、パラジウム/カーボンを濾過により除去し、更に濾過残渣を混合キシレン(エチルベンゼン60重量%含有)で洗浄することにより、トランス−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチルを含む溶液57.0gを得た。
含量:20.8重量%、収率:92%、転化率:96%
二重結合のZ/E:99/1
トランス−2,2−ジメチル−3−(2−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチルの収率: 0.48%
【0039】
実施例2
5重量%パラジウム/カーボン(50重量%含水品)1.65g、炭酸カリウム0.052g、混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)15.8gを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへトランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)溶液(含量:52.5重量%)28.9gを加え、150℃まで昇温し、同温度で43時間加熱還流した。冷却後、パラジウム/カーボンを濾過により除去し、更に濾過残渣を混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)で洗浄することにより、トランス−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチルを含む溶液77.8gを得た。
含量:15.6重量%、収率:94%、転化率:96%
二重結合のZ/E:99/1
トランス−2,2−ジメチル−3−(2−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチルの収率: 0.58%
【0040】
実施例3
5重量%パラジウム/カーボン(50重量%含水品)1.65g、水酸化カリウム0.057g、ポリエチレングリコール(平均分子量600)0.162g、混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)15.9gを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへトランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)溶液(含量:51.0重量%)29.4gを加え、150℃まで昇温し、同温度で33時間加熱還流した。冷却後、パラジウム/カーボンを濾過により除去し、更に濾過残渣を混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)で洗浄することにより、トランス−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチルを含む溶液75.3gを得た。
含量:16.6重量%、収率:97%、転化率:98%
二重結合のZ/E:99/1
トランス−2,2−ジメチル−3−(2−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチルの収率: 0.47%
【0041】
実施例4
5重量%パラジウム/カーボン(50重量%含水品)1.65g、炭酸カリウム0.084g、ポリエチレングリコール(平均分子量4000)0.270g、混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)42.4gを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへトランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)溶液(含量:86.2重量%)26.7gを加え、150℃まで昇温し、同温度で42時間加熱還流した。冷却後、パラジウム/カーボンを濾過により除去し、更に濾過残渣を混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)で洗浄することにより、トランス−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチルを含む溶液84.2gを得た。
含量:21.9重量%、収率:94%、転化率:95%
二重結合のZ/E:98/2
トランス−2,2−ジメチル−3−(2−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチルの収率: 0.70%
【0042】
比較例1
5重量%パラジウム/カーボン(50重量%含水品)2.40gと混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)36.2gとを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへトランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)溶液(含量:85.7重量%)26.8gと混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)6.2gを加え、150℃まで昇温し同温度で14時間加熱還流した。冷却後、パラジウム/カーボンを濾過により除去し、更に濾過残渣を混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)で洗浄することにより、トランス−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチルを含む溶液88.5gを得た。
含量:21.5重量%、収率:96%、転化率:98%
二重結合のZ/E:97/3
トランス−2,2−ジメチル−3−(2−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチルの収率: 2.0%
【0043】
参考例1

トランス−2,2−ジメチル−3−ホルミル−シクロプロパンカルボン酸メチル10.4g(含量:98.7重量%)にトルエン11g、ピロリジン0.71gと酢酸0.62gを加えた後、3−フェニルプロパナール11.2gとトルエン21gとの混合溶液を内温55℃で6時間かけて滴下した。同温度で1時間保温後、生成した水を分液除去し、有機層を水10gで2回洗浄、分液し、次いで10重量%炭酸ナトリウム水溶液10gで1回洗浄、分液した後、得られた有機層を減圧下で濃縮処理することにより、油状物21.4gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=10/2)により精製し、濃縮処理することにより、トランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−3−フェニル−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルを含む油状物11.2gを得た。濃縮処理は、いずれも安定剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール約5mgを添加して実施した。
トランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−3−フェニル−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの純度:97.3%、収率:61%
【0044】
実施例5

5重量%パラジウム/カーボン(50重量%含水品)0.78g、炭酸カリウム0.028g、ポリエチレングリコール(平均分子量600)0.077gおよび混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)9.2gを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへ、参考例1で得たトランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−3−フェニル−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチル5.02g(純度:97.3%)を加え、150℃まで昇温し、同温度で17時間加熱還流した。パラジウム/カーボンを濾過により除去し、濾液を減圧濃縮することにより、油状物4.65gを得た。トランス−2,2−ジメチル−3−[(1Z)−3−フェニル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルとトランス−2,2−ジメチル−3−[(2E)−3−フェニル−2−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの比率は97.9/2.1であった。更にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=100/3)により精製し、トランス−2,2−ジメチル−3−[(1Z)−3−フェニル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルを含む油状物3.74gを得た。
トランス−2,2−ジメチル−3−[(1Z)−3−フェニル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの純度:94.5%、収率:81%
トランス−2,2−ジメチル−3−[(2E)−3−フェニル−2−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの収率:1.7%
【0045】
比較例2
5重量%パラジウム/カーボン(50重量%含水品)0.82gと混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)11gとを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへ、参考例1で得たトランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−3−フェニル−2−ホルミル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチル5.01g(純度:97.3%)を加え、150℃まで昇温し、同温度で7時間加熱還流した。パラジウム/カーボンを濾過により除去し、濾液を減圧濃縮することにより、油状物4.69gを得た。トランス−2,2−ジメチル−3−[(1Z)−3−フェニル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルとトランス−2,2−ジメチル−3−[(2E)−3−フェニル−2−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの比率は83.1/16.9であった。更にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=100/3)により精製し、トランス−2,2−ジメチル−3−[(1Z)−3−フェニル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルを含む油状物3.63gを得た。
トランス−2,2−ジメチル−3−[(1Z)−3−フェニル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの純度:78.2%、収率:65%
トランス−2,2−ジメチル−3−[(2E)−3−フェニル−2−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの収率:14%
【0046】
参考例2

トランス−2,2−ジメチル−3−ホルミル−シクロプロパンカルボン酸メチル10.3g(含量:98.7重量%)にトルエン11g、ピロリジン0.76gと酢酸0.69gを加えた後、50重量%フェニルアセトアルデヒドのフタル酸ジエチル溶液19.9gとトルエン20gとの混合溶液を内温55℃で6時間かけて滴下した。同温度で1時間保温後、生成した水を分液除去し、有機層を水10gで2回洗浄、分液し、次いで10重量%炭酸ナトリウム水溶液10gで1回洗浄、分液した後、得られた有機層を減圧下で濃縮処理することにより、油状物29.2gを得た。シリカゲルカラム(ヘキサン/ジエチルエーテル=10/1)により精製し、濃縮処理することにより、トランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−2−フェニルエテニル]シクロプロパンカルボン酸メチルを含む油状物17.6gを得た。濃縮処理は、いずれも安定剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール約5mgを添加して実施した。
トランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−2−フェニルエテニル]シクロプロパンカルボン酸メチルの純度:94.8%、収率:99%
【0047】
実施例6

5重量%パラジウム/カーボン(50重量%含水品)0.88g、炭酸カリウム0.021g、水4.8gおよび混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)11gを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへ、参考例2で得たトランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−2−フェニルエテニル]シクロプロパンカルボン酸メチル5.13g(純度:94.8%)を加え、150℃まで昇温し、同温度で4時間加熱還流した。パラジウム/カーボンを濾過により除去し、濾液を減圧濃縮することにより、油状物4.68gを得た。トランス−2,2−ジメチル−3−(2−フェニルエテニル)シクロプロパンカルボン酸メチルのZ/E比は94/6であった。更にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=40/1)により精製し、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−フェニルエテニル)シクロプロパンカルボン酸メチルを含む油状物3.75gを得た。
トランス−2,2−ジメチル−3−(2−フェニルエテニル)シクロプロパンカルボン酸メチルの純度:98.6%、収率:85%
二重結合のZ/E比:94/6
【0048】
比較例3
5重量%パラジウム/カーボン(50重量%含水品)0.91gと混合キシレン(エチルベンゼン7重量%含有)11gとを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへ、参考例2で得たトランス−2,2−ジメチル−3−[(1E)−2−ホルミル−2−フェニルエテニル]シクロプロパンカルボン酸メチル4.93g(純度:94.8%)を加え、150℃まで昇温し、同温度で3.5時間加熱還流した。パラジウム/カーボンを濾過により除去し、濾液を減圧濃縮することにより、油状物4.43gを得た。トランス−2,2−ジメチル−3−(2−フェニルエテニル)シクロプロパンカルボン酸メチルのZ/E比は81/19であった。更にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=40/1)により精製し、トランス−2,2−ジメチル−3−(2−フェニルエテニル)シクロプロパンカルボン酸メチルを含む油状物3.57gを得た。
トランス−2,2−ジメチル−3−(2−フェニルエテニル)シクロプロパンカルボン酸メチルの純度:98.4%、収率:84%
二重結合のZ/E比:81/19
【0049】
実施例7

5重量%パラジウム/カーボン(54重量%含水品)0.93g、炭酸カリウム0.038g、水2.8gおよび混合キシレン(エチルベンゼン62重量%含有)7gを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへ、(2E)−5−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2,4―ジメチル−2−ペンテナール4.80g(純度:96.8%)と、混合キシレン(エチルベンゼン62重量%含有)7gを加え、146℃まで昇温し、同温度で17時間加熱還流した。パラジウム/カーボンを濾過により除去し、濾液を減圧濃縮することにより、油状物4.03gを得た。5−[(3Z)−2−メチル−3−ペンテニル]−1,3−ベンゾジオキソールの純度は82.7%であった。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=40/1)により精製し、5−[(3Z)−2−メチル−3−ペンテニル]−1,3−ベンゾジオキソールを含む油状物3.45gを得た。
5−[(3Z)−2−メチル−3−ペンテニル]−1,3−ベンゾジオキソールの純度は86.9%、収率は73%であった。
【0050】
比較例4
重量%パラジウム/カーボン(54重量%含水品)0.93g、2.8gおよび混合キシレン(エチルベンゼン62重量%含有)7gを混合し、140℃に昇温し、共沸脱水により水分を除去した。そこへ、(2E)−5−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2,4―ジメチル−2−ペンテナール4.80g(純度:96.8%)と、混合キシレン(エチルベンゼン62重量%含有)7gを加え、146℃まで昇温し、同温度で10時間加熱還流した。パラジウム/カーボンを濾過により除去し、濾液を減圧濃縮することにより、油状物3.85gを得た。5−[(3Z)−2−メチル−3−ペンテニル]−1,3−ベンゾジオキソールの純度は62.3%であった。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=40/1)により精製し、5−[(3Z)−2−メチル−3−ペンテニル]−1,3−ベンゾジオキソールを含む油状物3.47gを得た。
5−[(3Z)−2−メチル−3−ペンテニル]−1,3−ベンゾジオキソールの純度は64.2%、収率は55%であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の反応によれば、比較的不純物の少ないオレフィン化合物を製造することができるため、医農薬およびその合成中間体(例えば、2,2−ジメチル−3−[(1Z)−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸エステル等)の製造方法として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機塩基の存在下、パラジウム触媒と式(1)

(式中、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。ただし、RとRがともに水素原子であることはない。Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。また、RとRまたはRとRが結合し、その結合炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
で示されるα,β−不飽和アルデヒド化合物とを接触させる式(2)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示されるオレフィン化合物の製造方法。
【請求項2】
無機塩基が、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属水酸化物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
パラジウム触媒が、固体担持パラジウムである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
固体担持パラジウムが、パラジウム/カーボンである請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
式(1)におけるRが、水素原子である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
式(1)におけるRまたはRが、下記式

(式中、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表し、・は二重結合との結合部位を表す。)
で示される基である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
無機塩基およびポリエーテル化合物の存在下に、パラジウム触媒と式(1)で示されるα,β−不飽和アルデヒド化合物とを接触させる請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−186502(P2007−186502A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335473(P2006−335473)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】