説明

オレフィン重合体の製造方法

【課題】二酸化炭素を不純物として含むオレフィンを重合原料として用いても、所定の重合活性を維持し得るオレフィン重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記重合触媒成分(a)および(d)を用いてオレフィンを重合するオレフィン重合体の製造方法。
(a)遷移金属化合物
(d)一般式iBut3uAlで表される有機アルミニウム化合物(式中、tおよびuは、1≦t≦3およびt+u=3を充足する整数を表す。iBuはイソブチル基、R3は炭素原子数4〜12の炭化水素基(ただし、イソブチル基を除く。)を表す。)を、50〜150℃の温度で、1分間〜20時間熱処理してなる有機アルミニウム化合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汎用樹脂として各種用途に使用されているポリオレフィン系樹脂(ポリエチレンやポリプロピレンなど)は、遷移金属化合物等を用いた重合触媒によってオレフィンを重合することにより得られる。工業原料に用いるオレフィンは、ナフサ、重油、天然ガス等を用いて、例えば熱分解することにより製造されているが、該オレフィンには二酸化炭素が不純物として含まれ、該オレフィンを従前の重合反応に供した場合、この二酸化炭素が重合触媒の失活を惹起し、重合活性の低下・変動をもたらす等の問題があった。このような問題に対して、例えば、重合原料として用いているオレフィンから、二酸化炭素を分留除去や吸着分離することなどにより除去することが提案されている(例えば、特許文献1参照。
)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−36448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような方法により、二酸化炭素を工業的規模で除去することは、コスト面、設備面において充分満足のいくものではなかった。
かかる状況のもと、本発明を解決しようとする課題は、上記のような二酸化炭素を不純物として含むオレフィンを重合原料として用いても、所定の重合活性を維持し得るオレフィン重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一は、下記重合触媒成分(a)、(b)および(c)を用いてオレフィンを重合するオレフィン重合体の製造方法にかかるものである。
(a)遷移金属化合物
(b)一般式iBur1sAlで表される有機アルミニウム化合物(式中、rおよびsは、1≦r≦3およびr+s=3を充足する整数を表す。iBuはイソブチル基、R1は炭素原子数4〜12の炭化水素基(ただし、イソブチル基を除く。)を表し、R1が複数存在する場合は、複数あるR1は互いに同じであっても異なっていてもよい。)
(c)下記成分(c1)および(c2)から選ばれる少なくとも1種の有機アルミニウム化合物
(c1)一般式R23Alで表される有機アルミニウム化合物(式中、R2は炭素原子数1〜3の炭化水素基を表し、複数あるR2は夫々互いに同じであっても異なっていてもよい。)
(c2)一般式R3mAlHnで表される有機アルミニウム化合物(式中、mおよびnは、m+n=3を充足する1または2の整数である。R3は炭素原子数1〜12の炭化水素基を表し、R3が複数存在する場合は、複数あるR3は夫々互いに同じであっても異なっていてもよい。)
【0006】
本発明の第二は、下記重合触媒成分(a)および(d)を用いてオレフィンを重合するオレフィン重合体の製造方法にかかるものである。
(a)遷移金属化合物
(d)一般式iBut3uAlで表される有機アルミニウム化合物(式中、tおよびuは、1≦t≦3およびt+u=3を充足する整数を表す。iBuはイソブチル基、R3は炭素原子数4〜12の炭化水素基(ただし、イソブチル基を除く。)を表す。)を、50〜150℃の温度で、1分間〜20時間熱処理してなる有機アルミニウム化合物
【発明の効果】
【0007】
本発明により、重合原料のオレフィンに微量の二酸化炭素が含まれていても、所定の重合活性が得られるオレフィン重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
重合触媒成分(a)は遷移金属化合物であり、該遷移金属化合物に含有される遷移金属としては、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄などがあげられる。
【0009】
遷移金属化合物としては、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物が好ましく、例えば下記一般式[1]で表される遷移金属化合物があげられる。
xM [1]
(式中、Mは遷移金属化合物を表す。xは遷移金属Mの原子価を満足する数を表す。Lは遷移金属に配位する配位子であり、Lのうち少なくとも一つはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子である。)
【0010】
一般式[1]の遷移金属化合物Mとしては、元素の周期律表(IUPAC1989年)第3〜6族の原子が好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウムがより好ましい。
【0011】
Lのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、(置換)シクロペンタジエニル基、(置換)インデニル基、(置換)フルオレニル基などであり、具体的には、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチル−メチルシクロペンタジエニル基、メチル−イソプロピルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、2−メチルインデニル基、3−メチルインデニル基、4−メチルインデニル基、5−メチルインデニル基、6−メチルインデニル基、7−メチルインデニル基、2−tert−ブチルインデニル基、3−tert−ブチルインデニル基、4−tert−ブチルインデニル基、5−tert−ブチルインデニル基、6−tert−ブチルインデニル基、7−tert−ブチルインデニル基、2,3−ジメチルインデニル基、4,7−ジメチルインデニル基、2,4,7−トリメチルインデニル基、2−メチル−4−イソプロピルインデニル基、4,5−ベンズインデニル基、2−メチル−4,5−ベンズインデニル基、4−フェニルインデニル基、2−メチル−5−フェニルインデニル基、2−メチル−4−フェニルインデニル基、2−メチル−4−ナフチルインデニル基、フルオレニル基、2,7−ジメチルフルオレニル基、2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル基、およびこれらの置換体等があげられる。また、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子が複数ある場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0012】
Lのうち、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン原子、炭化水素基(但し、ここではシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を含まない。)があげられる。
【0013】
ヘテロ原子を含有する基におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子等が挙げられ、かかる基の例としてはアルコキシ基;アリールオキシ基;チオアルコキシ基;チオアリールオキシ基;アルキルアミノ基;アリールアミノ基;アルキルホスフィノ基;アリールホスフィノ基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子から選ばれる少なくとも一つの原子を環内に有する芳香族もしくは脂肪族複素環基などがあげられる。ハロゲン原子の具体例としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。また、炭化水素基としてはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等があげられる。
【0014】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子が複数ある場合は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子同士は、直接連結されていてもよく、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する残基を介して連結されていてもよい。また、ヘテロ原子を含有する基からなる配位子がある場合は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子とヘテロ原子を含有する基からなる配位子とが、直接連結されていてもよく、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する残基を介して連結されていてもよい。かかる残基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、ジフェニルメチレン基などの置換アルキレン基;シリレン基;ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、テトラメチルジシリレン基、ジメトキシシリレン基などの置換シリレン基;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子などのヘテロ原子などが挙げられ、特に好ましくはメチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、ジフェニルメチレン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基またはジメトキシシリレン基などがあげられる。
【0015】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニ
ウムジクロライド、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド等があげられる。また、ジクロライドをジメトキシドやジフェノキシドといった基に置き換えた化合物も例示することができ、これらは1種以上用いられる。特に好ましくは、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジフェノキシドである。
【0016】
重合触媒成分(b)は、一般式iBur1sAlで表される有機アルミニウム化合物(式中、rおよびsは、1≦r≦3およびr+s=3を充足する整数を表す。iBuはイソブチル基、R1は炭素原子数4〜12の炭化水素基(ただし、イソブチル基を除く。)を表し、R1が複数存在する場合は、複数あるR1は互いに同じであっても異なっていてもよい。)である。
【0017】
1の炭素原子数4〜12の炭化水素基としては、ノルマルブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等があげられる。重合触媒成分(b)の有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、ジイソブチルオクチルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、イソブチルジオクチルアルミニウム等があげられ、これらは1種以上用いられる。これらのうち、好ましくはトリイソブチルアルミニウムである。
【0018】
重合触媒成分(c)は、下記成分(c1)および(c2)から選ばれる少なくとも1種の有機アルミニウム化合物である。
(c1)一般式R23Alで表される有機アルミニウム化合物(式中、R2は炭素原子数1〜3の炭化水素基を表し、複数あるR2は夫々互いに同じであっても異なっていてもよい。)。
(c2)一般式R3mAlHnで表される有機アルミニウム化合物(式中、mおよびnは、m+n=3を充足する1または2の整数である。R3は炭素原子数1〜12の炭化水素基を表し、R3が複数存在する場合は、複数あるR3は夫々互いに同じであっても異なっていてもよい。)。
【0019】
2の炭素原子数1〜3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基があげられる。重合触媒成分(c1)の有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、ジエチルメチルアルミニウム、メチルジノルマルプロピルアルミニウム等があげられ、これらは1種以上用いられる。これらのうち、好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムであり、より好ましくは、トリエチルアルミニウムである。
【0020】
3の炭素原子数1〜12の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等があげられる。重合触媒成分(c2)の有機アルミニウム化合物として、具体的には、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジノルマルプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド、ジノルマルブチルアルミニウムハイドライド、ノルマルブチルアルミニウムジハイドライド、ジイソヘキシルアルミニウムハイドライド、ジノルマルヘキシルアルミニウムハイドライド、ジオクチルアルミニウムハイドライド、ジデシルアルミニウムハイドライド等があげられ、これらは1種以上用いられる。これらのうち、好ましくは、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドである。
【0021】
重合触媒成分(d)は、一般式iBut3uAlで表される有機アルミニウム化合物(式中、tおよびuは、1≦t≦3およびt+u=3を充足する整数を表す。iBuはイソブチル基、R3は炭素原子数4〜12の炭化水素基(ただし、イソブチル基を除く。)を表す。)を、50〜150℃の温度で、1分間〜20時間熱処理してなる有機アルミニウム化合物である。
【0022】
3の炭素原子数4〜12の炭化水素基としては、ノルマルブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等があげられる。一般式iBut3uAlで表される有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、ジイソブチルオクチルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、イソブチルジオクチルアルミニウム等があげられ、これらは1種以上用いられる。これらのうち、好ましくはトリイソブチルアルミニウムである。
【0023】
一般式iBut3uAlで表される有機アルミニウム化合物を熱処理する条件としては、熱処理温度が50〜150℃であり、熱処理時間は1分間〜20時間である。熱処理温度としては、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、熱処理時間としては、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上がさらに好ましい。
【0024】
熱処理方法としては、不活性ガス雰囲気下で有機アルミニウム化合物を加熱する方法であればよく、例えば、窒素などの不活性ガスで置換された温度調整機能付き容器に、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒で希釈した有機アルミニウム化合物溶液を入れ、所定の時間の間、所定の温度となるように温調する方法などをあげることができる。
【0025】
本発明の第一発明では、重合触媒成分として、重合触媒成分(a)と重合触媒成分(b)と重合触媒成分(c)とを用いる。重合触媒成分(b)と重合触媒成分(c)との使用割合としては、重合触媒成分(b)と重合触媒成分(c)とのモル比(アルミニウム原子のモル比として)は、通常1/99〜49/51であり、好ましくは2/98〜30/70であり、より好ましくは3/97〜20/80であり、更に好ましくは5/95〜15/85である。また、重合触媒成分(a)の使用量としては、重合触媒成分(b)と重合触媒成分(c)との合計のアルミニウム原子のモル量と、重合触媒成分(a)中の遷移金属原子のモル量との比が、通常1/1〜20000/1であり、好ましくは5/1〜10000/1であり、より好ましくは10/1〜7000/1であり、更に好ましくは20/1〜4000/1である。また、重合触媒成分(c)の使用量は、二酸化炭素1モル当たり、アルミニウム原子の量として、通常0.5モル以上であり、好ましくは0.7モル以上であり、より好ましくは0.9モル以上である。なお、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲において、助触媒成分として、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物、重合触媒成分(b)および(c)以外の有機アルミニウム化合物などを用いてもよい。
【0026】
重合触媒成分(a)、重合触媒成分(b)および重合触媒成分(c)は、1つ以上の成分を、必要に応じて助触媒成分と共に粒子状担体に担持させて用いてもよい。該粒子状担体としては、多孔性の物質が好ましく、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の無機酸化物;スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ラポナイト、サポナイト等の粘土や粘土鉱物;ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの有機ポリマーなどがあげられる。
【0027】
重合触媒成分(a)と重合触媒成分(b)と重合触媒成分(c)と必要に応じて用いられる助触媒成分の重合反応装置中への投入方法としては、各重合触媒成分を重合反応装置中に別々に投入してもよく、それらの内の任意の2つの以上の成分を予め接触させてから重合反応装置中に投入してもよい。好ましい方法としては、オレフィンと重合触媒成分(b)と重合触媒成分(c)とを接触処理させた後、得られた接触処理物に重合触媒成分(a)を接触処理する方法であり、[1]重合触媒成分(b)と重合触媒成分(c)とを予め混合し、該混合してなるものをオレフィンに接触させるように投入する方法(例えば、オレフィンを充填した反応容器内に重合触媒成分(b)と重合触媒成分(c)との混合物を投入する方法、オレフィンの供給ラインに重合触媒成分(b)と重合触媒成分(c)との混合物を投入する方法など。)、[2]重合触媒成分(c)をオレフィンに接触させた後、重合触媒成分(b)をオレフィンに接触させるように投入する方法(例えば、オレフィンを充填した反応容器内に重合触媒成分(c)を投入し、次いで、重合触媒成分(b)を投入する方法、オレフィンの供給ラインに重合触媒成分(c)を投入し、反応容器内に重合触媒成分(b)を投入する方法など。)があげられる。
【0028】
本発明の第二発明では、重合触媒成分として、重合触媒成分(a)と重合触媒成分(d)とを用いる。重合触媒成分(a)の使用量としては、重合触媒成分(d)のアルミニウム原子のモル量と、重合触媒成分(a)中の遷移金属原子のモル量との比が、通常1/1〜20000/1であり、好ましくは5/1〜10000/1であり、より好ましくは10/1〜7000/1であり、更に好ましくは20/1〜4000/1である。なお、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲において、助触媒成分として、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物、重合触媒成分(d)以外の有機アルミニウム化合物などを用いてもよい。また、重合触媒成分(d)の使用量は、二酸化炭素1モル当たり、アルミニウム原子の量として、通常2モル以上であり、好ましくは4モル以上であり、より好ましくは8モル以上である。
【0029】
重合触媒成分(a)および重合触媒成分(d)は、1つの成分を、必要に応じて助触媒成分と共に粒子状担体に担持させて用いてもよい。該粒子状担体としては、多孔性の物質が好ましく、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の無機酸化物;スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ラポナイト、サポナイト等の粘土や粘土鉱物;ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの有機ポリマーなどがあげられる。
【0030】
重合触媒成分(a)と重合触媒成分(d)と必要に応じて用いられる助触媒成分の重合反応装置中への投入方法としては、各重合触媒成分を重合反応装置中に別々に投入してもよく、それらの内の任意の2つの以上の成分を予め接触させてから重合反応装置中に投入してもよい。好ましい方法としては、オレフィンと重合触媒成分(d)とを接触処理させた後、得られた接触処理物に重合触媒成分(a)を接触処理する方法である。
【0031】
本発明は、二酸化炭素の存在下でのオレフィンの重合に好適に用いられ、この場合、二酸化炭素の存在量は、0.01モルppm以上であり、好ましくは0.1モルppm以上であり、より好ましくは0.3モルppm以上であり、更に好ましくは0.5モルppm以上であり、特に好ましくは1モルppm以上である。また、該存在量は、通常、100モルppm以下であり、好ましくは50モルppm以下であり、より好ましくは20モルppm以下であり、更に好ましくは10モルppm以下である。なお、該二酸化炭素の存在量は、重合反応系中の全オレフィンのモル量を基準(1000000モルppm)とした値である。
【0032】
本発明で使用されるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキンサン、ノルボルネン等の環状オレフィン;スチレン等のアルケニル芳香族炭化水素;1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン等のジオレフィンなどがあげられる。本発明は、特に、オレフィンとして少なくともエチレンを用いる重合に好適に用いられ、オレフィンとしてエチレンを主成分として用いる重合により好適に用いられる。
【0033】
重合方法としては、溶液重合法、高圧イオン重合法、バルク重合法、スラリー重合法、気相重合法等があげられる。これらの中では、ポリオレフィンの粒子の形成を伴う重合法である、バルク重合法、スラリー重合法、気相重合法が好ましく、気相重合法がより好ましい。これらの重合形式としてはバッチ式、連続式いずれでもよい。
【0034】
重合温度は通常20℃〜250℃であり、重合圧力は通常0.5〜200MPaである。重合時間は一般的に、目的とするオレフィン重合体の種類、反応装置により適宜決定されるが、1分間〜20時間の範囲をとることができる。また、オレフィン重合体の分子量を調節するために、水素等の連鎖移動剤を添加してもよい。更には、窒素やペンタンなどの重合に不活性な成分を添加してもよい。
【0035】
本発明で製造されるオレフィン重合体としては、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/1−ヘキセン共重合体、エチレン/1−ブテン/1−ヘキセン共重合体、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/1−ブテン共重合体、プロピレン/エチレン/1−ブテン共重合体があげられる。本発明は、エチレンに基づく構成単位を有する重合体の製造に好適であり、該重合体のエチレンに基づく構成単位の含有量は、50重量%以上(該重合体の全重量を100重量%とする。)であることが好ましい。
【0036】
本発明の製造方法では、重合原料のオレフィンに微量の二酸化炭素が含まれていても、所定の重合活性が得られ、経済性に優れる。また、本発明の製造方法は、重合活性に優れる。
【0037】
本発明で製造されるオレフィン重合体は、公知の成形方法、例えば、インフレーションフィルム成形加工法やTダイフィルム成形加工法などの押出成形法、射出成形法、圧縮成形法などにより、各種成形体(フィルム、シート、ボトル、トレー等)に成形され、食品包装などの種々の用途に用いられる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
【0039】
実施例1
[助触媒成分の調整(1)]
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、トルエン24kgおよび窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.8kgを入れて、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン 0.91kgとトルエン 1.43kgの混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら33分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、95℃で3時間攪拌した。その後、得られた固体生成物をトルエン 21kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエンを 6.9kg加え、一晩静置した。
【0040】
[助触媒成分の調整(2)]
上記で得られたスラリーに、50wt%のジエチル亜鉛のヘキサン溶液 2.05kgとヘキサン 1.3kgを投入し、攪拌した。その後、5℃に冷却した後、ペンタフルオロフェノール 0.77kgとトルエン 1.17kgの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら61分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、40℃で1時間攪拌した。その後、H2O 0.11kgを反応器の温度を5℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、5℃で1.5時間、55℃で2時間攪拌した。その後、室温にて50wt%のジエチル亜鉛のヘキサン溶液 1.4kgとヘキサン 0.8kgを投入した。
5℃に冷却した後、3,4,5−トリフルオロフェノール 0.42kgとトルエン 0.77kgの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら60分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、40℃で1時間攪拌した。その後、H2O 0.077kgを反応器の温度を5℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、5℃で1.5時間、40℃で2時間、更に、80℃で2時間攪拌した。攪拌を停止し、残量16Lまで上澄み液を抜き出し、抜き出し後、トルエン 11.6kgを投入し、攪拌した。95℃に昇温し、4時間攪拌した。スラリーから固体生成物を濾別し、得られた固体生成物をトルエン 20.8kgで4回、ヘキサン 24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することで助触媒成分(以下、助触媒担体(A)と称する。)を得た。
【0041】
[オレフィンの重合]
内容積5リットルの撹拌機付きオートクレーブ内を減圧乾燥し、アルゴンで置換した。
該オートクレーブ内を真空にし、水素をその分圧が0.03MPaになるように加え、次に、常温常圧の二酸化炭素ガスを4.8ml加えた。さらに、1−ヘキセンを200mlとブタンを1066g加え、70℃まで昇温した。昇温後、エチレンをその分圧が1.6MPaになるように0.19kg加え系内を安定させた。このときの系内の二酸化炭素濃度は、全オレフィン量を基準として26モルppm(計算値)である。オートクレーブ内に、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(トリイソブチルアルミニウム濃度:1mmol/ml)1.8mlとトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(トリエチルアルミニウム濃度:1mmol/ml)0.2mlとを予め混合した溶液を投入した。次に、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドのトルエン溶液(ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド濃度:2μmol/ml)0.5mlとトリエチルアミンのトルエン溶液(トリエチルアミン濃度:0.1mmol/ml)1mlとを続けて投入し、さらに続いて上記で得られた助触媒担体(A)7mgを投入して重合を開始した。全圧を一定に保つようにエチレンと水素との混合ガス(水素濃度0.58mol%)をフィードしながら70℃で、90分間重合を行い、オートクレーブ内にアルコールを投入して重合を停止した。重合の結果、粒子性状の良好なエチレン/1−ヘキセン共重合体117gが得られた。遷移金属であるジルコニウム1mol当りの重合活性は、117000kg/molであった。
【0042】
実施例2
二酸化炭素ガスの添加量を2.6mlとし、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液の混合量を1.9mlとし、トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液の混合量を0.1mlに変更した以外は、実施例1と同様に重合を実施した。その結果、遷移金属であるジルコニウム1mol当りの重合活性が98500kg/molでエチレン/1−ヘキセン共重合体が得られた。このときの系内の二酸化炭素濃度は、全オレフィン量を基準として14モルppm(計算値)である。
【0043】
実施例3
トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液とトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液とを予め混合した溶液を投入する代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液、トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液の順番で、オートクレーブ内に別々に投入した以外は、実施例2と同様に重合を実施した。その結果、遷移金属であるジルコニウム1mol当りの重合活性が85400kg/molでエチレン/1−ヘキセン共重合体が得られた。
【0044】
実施例4
トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液とトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液とを予め混合した溶液の代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(トリイソブチルアルミニウム濃度:1mmol/ml)1.9mlとジイソブチルアルミニウムヒドリドのヘプタン溶液(ジイソブチルアルミニウムヒドリド濃度:1mmol/ml)0.1mlとを予め混合した溶液を投入した以外は、実施例2と同様に重合を実施した。
その結果、遷移金属であるジルコニウム1mol当りの重合活性が126000kg/molでエチレン/1−ヘキセン共重合体が得られた。
【0045】
実施例5
トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液とトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液とを予め混合した溶液の代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(トリイソブチルアルミニウム濃度:1mmol/ml)を80℃で1時間加熱処理したものを2ml投入した以外は、実施例2と同様に重合を実施した。その結果、遷移金属であるジルコニウム1mol当りの重合活性が116700kg/molでエチレン/1−ヘキセン共重合体が得られた。
【0046】
比較例1
トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液とトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液とを予め混合した溶液の代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(トリイソブチルアルミニウム濃度:1mmol/ml)を2ml投入した以外は、実施例1と同様に重合を実施した。その結果、遷移金属であるジルコニウム1mol当りの重合活性が48300kg/molでエチレン/1−ヘキセン共重合体が得られた。
【0047】
比較例2
トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液とトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液とを予め混合した溶液の代わりに、ジイソブチルアルミニウムヒドリドのヘプタン溶液(ジイソブチルアルミニウムヒドリド濃度:1mmol/ml)を2ml投入した以外は、実施例1と同様に重合を実施した。その結果、遷移金属であるジルコニウム1mol当りの重合活性が29500kg/molでエチレン/1−ヘキセン共重合体が得られた。
【0048】
実施例6
二酸化炭素を添加しなかった以外は、実施例2と同様に重合を実施した。その結果、遷移金属であるジルコニウム1mol当りの重合活性が101200kg/molでエチレン/1−ヘキセン共重合体が得られた。
【0049】
実施例7
二酸化炭素を添加しなかった以外は、実施例5と同様に重合を実施した。その結果、遷移金属であるジルコニウム1mol当りの重合活性が122100kg/molでエチレン/1−ヘキセン共重合体が得られた。
【0050】
参考例1
二酸化炭素を添加しなかった以外は、比較例1と同様に重合を実施した。その結果、遷移金属であるジルコニウム1mol当りの重合活性が152600kg/molでエチレン/1−ヘキセン共重合体が得られた。
【0051】
【表1】

TIBA :トリイソブチルアルミニウム
H-TIBA :トリイソブチルアルミニウムの熱処理物
TEA :トリエチルアルミニウム
DIBAH :ジイソブチルアルミニウムヒドリド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記重合触媒成分(a)および(d)を用いてオレフィンを重合するオレフィン重合体の製造方法。
(a)遷移金属化合物
(d)一般式iBut3uAlで表される有機アルミニウム化合物(式中、tおよびuは、1≦t≦3およびt+u=3を充足する整数を表す。iBuはイソブチル基、R3は炭素原子数4〜12の炭化水素基(ただし、イソブチル基を除く。)を表す。)を、50〜150℃の温度で、1分間〜20時間熱処理してなる有機アルミニウム化合物
【請求項2】
一般式iBut3uAlで表される有機アルミニウム化合物が、トリイソブチルアルミニウムである請求項1に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
重合触媒成分(a)が、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物である請求項1または2に記載のオレフィン重合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−116573(P2010−116573A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45020(P2010−45020)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【分割の表示】特願2005−50669(P2005−50669)の分割
【原出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】