説明

オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法

【課題】高い立体規則性重合能を有し、かつ、高活性なオレフィン重合用固体触媒成分およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】Si−O結合を有するケイ素化合物、式[I]で表されるチタン化合物および溶媒を含有する溶液に、該溶媒1リットルあたりのマグネシウム原子の量が2.5〜90molである量に相当する有機マグネシウム化合物を加える工程を含むオレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法。オレフィン重合用固体触媒成分前駆体と、下式で表されるハロゲン化金属化合物と、内部電子供与体とを接触させる工程からなるオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相重合プロセスやスラリー重合プロセスに好適な、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法、オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン重合用固体触媒の製造方法およびオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合体の製造に際して重合反応槽へのオレフィン重合体等の付着が多いことは、オレフィン重合体の製造工程における操業上の種々の障害を引き起こして操業効率を低下させる原因となるので、該付着はできる限り少ないことが望ましい。故に、オレフィンを重合して得られるオレフィン重合体粉末は、流動性のような粒子性状に優れていることが、操業の安定性や操業の効率の観点から望ましい。
【0003】
特開昭61−218606号公報には、固体触媒成分前駆体に、エステル化合物、エーテル化合物および四塩化チタンを接触させることによって得られる3価のチタン化合物含有固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、重合第三成分の電子供与性化合物とを組合せることによって、重合活性が高く、重合中の立体規則性の低下が非常に少なく、副生する無定形重合体の生成が少ないα−オレフィン重合用触媒が開示されている。
【0004】
特開平10−212312号公報には、ケイ素化合物およびエステル化合物の存在下で、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体触媒成分前駆体を、ハロゲン化化合物、電子供与体、および有機酸ハライドを接触処理することによって得られる3価のチタン化合物含有固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、重合第三成分の電子供与性化合物との組合せによって、重合活性が高く、副生する無定形重合体の生成が極めて少ないα−オレフィン重合用触媒が開示されている。
【0005】
特開平11−322833号公報には、固体触媒成分前駆体と、第14族元素のハロゲン化合物と、電子供与体とを接触させた後に、さらに四塩化チタンを接触させて得られる固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物とを組み合わせることによって、極めて良好な粒子性状を持ち、十分に重合活性が高く、低分子量成分の含有量が少ないオレフィン重合用触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−218606号公報
【特許文献2】特開平10−212312号公報
【特許文献3】特開平11−322833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のオレフィン重合触媒を用いて得られるオレフィン重合体の粒子性状は満足し得るものではない。
かかる現状において、本発明の目的は、粒子性状の一つである流動性に優れたオレフィン重合体を製造し得る、オレフィン重合用固体触媒前駆体の製造方法、オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン重合用固体触媒の製造方法およびオレフィン重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち本発明は、Si−O結合を有するケイ素化合物、下式[I]で表されるチタン化合物および溶媒を含有する溶液に、該溶媒1リットルあたりのマグネシウム原子の量が2.5〜90molである量に相当する有機マグネシウム化合物を加える工程を含むオレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法である。



式中、Rは炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基を表し、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜20のヒドロカルビルオキシ基を表し、Xは互いに同じか異なり、dは1〜20の数を表し、好ましくは1≦d≦5を満たす数である。
【0009】
また、本発明は、上記の製造方法で製造されたオレフィン重合用固体触媒成分前駆体と、下式で表されるハロゲン化金属化合物と、内部電子供与体と、任意に有機酸ハライドとを接触させる工程からなるオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法である。

M(R11m−e

式中、Mは第4族、第13族または第14族元素を表し、R11は炭素原子数2〜18のアルキル基もしくはアルコキシ基、または炭素原子数6〜18のアリール基もしくはアリロキシ基を表し、Xはハロゲン原子表し、mはMの原子価を表し、eは0<e≦mを満足する数を表す。
【0010】
さらに本発明は、上記の製造方法で製造されたオレフィン重合用固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、任意に外部電子供与体とを接触させる工程からなるオレフィン重合用固体触媒の製造方法である。
さらにまた、本発明は、上記の製造方法で製造されたオレフィン重合用固体触媒の存在下にオレフィンを重合させる工程からなるオレフィン重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粒子性状の一つである流動性に優れたオレフィン重合体と、該オレフィン重合体を製造し得る、オレフィン重合用固体触媒前駆体と、オレフィン重合用固体触媒成分と、オレフィン重合用固体触媒とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例において実施した重合体パウダーの流下体積の測定に際して使用したステンレス製ロートおよび支持体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
オレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、Si−O結合を有するケイ素化合物の存在下に、式[I]で表されるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる。このとき任意成分としてエステル化合物を共存させると、得られるオレフィン重合用固体触媒の重合活性を更に向上させ得る場合がある。
【0014】
Si−O結合を有するケイ素化合物として、下式で表わされる化合物を例示することができる。

Si(OR4−a
(RSiO)SiR および
(RSiO)
【0015】
式中、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基であり;R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1〜20の炭化水素基または水素原子であり;aは1〜4の整数であり;bは1〜1000の整数であり;cは2〜1000の整数である。
中でも、好ましくは上記第一の式で表わされるアルコキシシラン、より好ましくは、aが4であるテトラアルコキシシランであり、最も好ましくはテトラエトキシシランである。
【0016】
Si−O結合を有するケイ素化合物として、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、テトライソプロポキシシラン、ジイソプロポキシ−ジイソプロピルシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、ジプロポキシジプロピルシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、ジ−n−ブトキシジ−n−ブチルシラン、ジシクロ−n−ペントキシジエチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、シクロヘキシロキシトリメチルシラン、フェノキシトリメチルシラン、テトラフェノキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、ヘキサメチルジシロヘキサン、ヘキサエチルジシロヘキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、オクタエチルトリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルヒドロポリシロキサン、およびフェニルヒドロポリシロキサンを例示することができる。
【0017】
上式[I]におけるRとして、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、およびドデシル基のようなアルキル基;フェニル基、クレジル基、キシリル基、およびナフチル基のようなアリール基;シクロヘキシル基およびシクロペンチル基のようなシクロアルキル基;アリル基;ならびにベンジル基のようなアラルキル基を例示することができる。
【0018】
は好ましくは、炭素原子数2〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基であり、特に好ましくは炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基である。
上式[I]におけるXのハロゲン原子として、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を例示することができる。特に好ましくは塩素原子である。
上式[I]におけるXの炭素原子数1〜20のヒドロカルビルオキシ基は、好ましくは、炭素原子数2〜18の直鎖状アルコキシ基であり、より好ましくは炭素原子数2〜10の直鎖状アルコキシ基であり、特に好ましくは炭素原子数2〜6の直鎖状アルコキシ基である。
【0019】
上式[I]で表されるチタン化合物として、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、n−ブトキシチタントリクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド、ジ−n−テトライソプロピルポリチタネート(d=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−ブチルポリチタネート(d=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−ヘキシルポリチタネート(d=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−オクチルポリチタネート(d=2〜10の範囲の混合物)、およびテトラアルコキシチタンに少量の水を反応して得られるテトラアルコキシチタンの縮合物、ならびにこれらの2以上の組合せを例示することができる。
【0020】
上式[I]で表されるチタン化合物は好ましくは、dが1、2または4であるチタン化合物であり、より好ましくは、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−n−ブチルチタニウムダイマーまたはテトラ−n−ブチルチタニウムテトラマーである。
【0021】
有機マグネシウム化合物は、マグネシウム原子−炭素原子の結合を有する任意の化合物である。有機マグネシウム化合物として、下式で表わされる化合物を例示することができる:

MgX
10Mg
【0022】
式中、R、RおよびR10は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し;Xはハロゲン原子を表わす。
【0023】
上式におけるR〜R10として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、フェニル基、およびベンジル基のような、炭素原子数1〜20の、アルキル基、アリール基、アラルキル基およびアルケニル基を例示することができる。
【0024】
上式におけるXとして、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を例示することができる。特に好ましくは塩素原子である。
【0025】
上式で表されるグリニャール化合物の例としては、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、n−プロピルマグネシウムクロライド、イソプロピルマグネシウムクロライド、n−ブチルマグネシウムクロライド、イソブチルマグネシウムクロライド、tert−ブチルマグネシウムクロライド、n−ペンチルマグネシウムクロライド、イソアミルマグネシウムクロライド、シクロペンチルマグネシウムクロライド、n−ヘキシルマグネシウムクロライド、シクロヘキシルマグネシウムクロライド、n−オクチルマグネシウムクロライド、2−エチルヘキシルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムクロライド、およびベンジルマグネシウムクロライドである。それらの中で、良好な粒子性状のオレフィン重合用固体触媒を得る観点から、エチルマグネシウムクロライド、n−プロピルマグネシウムクロライド、イソプロピルマグネシウムクロライド、n−ブチルマグネシウムクロライド、およびイソブチルマグネシウムクロライドが好ましく、n−ブチルマグネシウムクロライドが特に好ましい。
これらのグリニャール化合物は、好ましくは、それらのエーテル溶液として用いられる。該エーテルの例としては、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルn−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテルおよびジイソアミルエーテルなどのジアルキルエーテル、ならびにテトラヒドロフランなどの環状エーテルである。それらのうち、ジアルキルエーテルが好ましく、ジ−n−ブチルエーテルまたはジイソブチルエーテルが特に好ましい。
【0026】
上記のエステル化合物として、モノまたは多価のカルボン酸エステルを例示することができ、より具体的には飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、および芳香族カルボン酸エステルを例示することができる。更に具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸−n−ブチル、安息香酸イソブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジ−n−ブチル、コハク酸ジイソブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジイソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジイソブチル、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、およびフタル酸ジフェニルを例示することができる。中でも、好ましくはメタクリル酸エステルおよびマレイン酸エステルのような不飽和脂肪族カルボン酸エステル、または安息香酸エステルおよびフタル酸エステルのような芳香族カルボン酸エステルであり、特に好ましくはフタル酸のジアルキルエステルである。
【0027】
Si−O結合を有するケイ素化合物と、式[I]で表されるチタン化合物と、任意にエステル化合物と、溶媒とを含有する溶液に有機マグネシウム化合物を加えると、有機マグネシウム化合物によるチタン化合物の還元反応が進行するので、該チタン化合物のチタン原子は4価から3価に還元される。本発明においては、実質上全ての4価のチタン原子が3価に還元されるのが好ましい。
【0028】
該溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびデカンのような脂肪族炭化水素化合物;トルエンおよびキシレンのような芳香族炭化水素化合物;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカリンのような脂環式炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチル−n−ブチルエーテル、およびジイソアミルエーテルなどのジアルキルエーテル、およびテトラヒドロフランなどの環状エーテル;ならびに、これらの2種以上の組合せを例示することができる。中でも、好ましくは脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、または、脂環式炭化水素化合物であり、より好ましくは脂肪族炭化水素化合物、または、脂環式炭化水素化合物であり、さらに好ましくは脂肪族炭化水素化合物であり、特に好ましくはヘキサン、または、ヘプタンである。
【0029】
添加される有機マグネシウム化合物の量は、得られるオレフィン重合体粉末粒子の流れ性を良くする観点から、有機マグネシウム化合物に含有されるマグネシウム原子の量が用いられる溶媒1リットルあたり2.5〜90mol、好ましくは3.0〜80mol、より好ましくは3.5〜70mol、さらに好ましくは4.0〜60mol、特に好ましくは4.5〜40molである。
【0030】
上記還元反応の温度は、通常−50〜100℃、好ましくは−30〜70℃、さらに好ましくは−25〜50℃である。反応時間は特に限定されず、通常30分〜6時間程度である。該反応をさらに進めるために、5〜120℃での反応を追加してもよい。
ケイ素化合物の使用量は、使用されるチタン化合物中の総チタン原子1モルあたり、ケイ素原子が通常1〜500モル、好ましくは1〜300モル、特に好ましくは3〜100モルとなる量である。
【0031】
有機マグネシウム化合物の使用量は、使用される有機マグネシウム化合物中の総マグネシウム原子1モルあたり、上記チタン原子と上記ケイ素原子との和が通常0.1〜10モル、好ましくは0.2〜5.0モル、特に好ましくは0.5〜2.0モルとなる量である。
チタン化合物、ケイ素化合物および有機マグネシウム化合物の使用量はまた、得られる固体触媒成分前駆体中のマグネシウム原子の量が、該前駆体中のチタン原子1モルあたり、1〜51モル、好ましくは2〜31モル、特に好ましくは4〜26モルとなるように決定してもよい。
エステル化合物の使用量は、使用されるチタン化合物中の総チタン原子1モルあたり、通常0.05〜100モル、好ましくは0.1〜60モル、特に好ましくは0.2〜30モルである。
【0032】
得られる固体触媒成分前駆体は溶媒で洗浄してもよい。該溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびデカンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサンおよびシクロペンタンなどの脂環式炭化水素;1,2−ジクロロエタンおよびモノクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素である。これらの中で、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素が好ましく、芳香族炭化水素がより好ましく、トルエンまたはキシレンが特に好ましい。
得られたオレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、3価のチタン原子、マグネシウム原子およびヒドロカルビルオキシ基を含有し、一般に非晶性または極めて弱い結晶性を有する。好ましくは非晶性の構造である。
【0033】
本発明におけるオレフィン重合用固体触媒成分を得るために、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体と、ハロゲン化金属化合物と、内部電子供与体と、任意に有機酸ハライドとを接触させる工程は一般に、活性化工程と呼ばれている。
【0034】
ハロゲン化金属化合物を表す上式におけるMの第4族元素として、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムを例示することができ、好ましくはチタンである。Mの第13族元素として、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウムを例示することができ、好ましくはホウ素またはアルミニウムであり、より好ましくはアルミニウムである。Mの第14族元素として、ケイ素、ゲルマニウム、錫および鉛を例示することができ、好ましくはケイ素、ゲルマニウムまたは錫であり、より好ましくはケイ素である。特に好ましいMはチタンまたはケイ素である。
【0035】
上式におけるR11として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、およびドデシル基のような直鎖または分岐状のアルキル基;シクロヘキシル基およびシクロペンチル基のような環状アルキル基;フェニル基、クレジル基、キシリル基、およびナフチル基のようなアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、アミロキシ基、イソアミロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基、デシロキシ基、およびドデシロキシ基のような直鎖または分岐状のアルコキシ基;シクロヘキシロキシ基およびシクロペンチロキシ基のような環状アルコキシ基;ならびにフェノキシ基、キシロキシ基およびナフトキシ基のようなアリロキシ基を例示することができる。R11は好ましくは、炭素原子数2〜18のアルキル基もしくはアルコキシ基、または炭素原子数6〜18のアリール基もしくはアリロキシ基である。
【0036】
上式におけるmはMの原子価であり、例えばMが第4族元素の場合はm=4であり、Mが第13族元素の場合はm=3であり、Mが第14族元素の場合はm=4である。eは0<e≦mを満足する数を表し、例えばMが第4族元素および第14族元素の場合は、eは0<e≦4を満足する数を表し、Mが第13族元素の場合は、eは0<e≦3を満足する数を表す。Mが第4族元素または第14族元素の場合の好ましいeは3または4であり、より好ましくは4である。Mが第13族元素の場合の好ましいeは3である。
上式で表されるハロゲン化金属化合物として、特許文献2に記載のチタン化合物、ならびに特許文献3に記載の第13族元素のクロロ化化合物および第14族元素のクロロ化化合物を例示することができる。
上式で表されるハロゲン化チタン化合物は、好ましくは四塩化チタン、四臭化チタン、および四沃化チタンのようなテトラハロゲン化チタン化合物、またはメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、フェノキシチタントリクロライド、およびエトキシチタントリブロマイドのようなトリハロゲン化アルコキシチタン化合物であり、より好ましくはテトラハロゲン化チタン化合物であり、特に好ましくは四塩化チタンである。
【0037】
上式で表される第13族元素のクロロ化化合物または第14族元素のクロロ化化合物は好ましくは、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、トリクロロアルミニウム、テトラクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシラン、またはパラトリルトリクロロシランであり、より好ましくは第14族元素のクロロ化化合物であり、特に好ましくはテトラクロロシランまたはフェニルトリクロロシランである。
【0038】
ハロゲン化金属化合物の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体1gに対し、通常0.1〜1000mmol、好ましくは0.3〜500mmol、特に好ましくは0.5〜300mmolである。ハロゲン化金属化合物は一度の処理で使用してもかまわないが、任意の複数回数の処理に分けて使用することもできる。
上記の内部電子供与体として、アルコール、フェノール、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、および酸無水物のような含酸素電子供与体;ならびに、アンモニア、アミン、ニトリルおよびイソシアネートのような含窒素電子供与体を例示することができる。中でも、好ましくは有機酸のエステルまたはエ−テルである。有機酸のエステルとして、上述のエステル化合物を例示することができる。エーテルとして特許文献3に記載のエーテル類を例示することができ、好ましくはジアルキルエーテルであり、特に好ましくはジブチルエーテルまたはジイソアミルエーテルである。内部電子供与体は、好ましくは有機酸のエステル、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステル、最も好ましくはフタル酸のジアルキルエステルである。
【0039】
内部電子供与体の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体1gに対し、通常0.1〜1000mmol、好ましくは0.3〜500mmol、特に好ましくは0.5〜300mmolである。内部電子供与体は一度の処理で使用してもかまわないが、任意の複数回数の処理に分けて使用することもできる。
上記の有機酸ハライドとして、モノおよび多価のカルボン酸ハライドを例示することができ、具体例として脂肪族カルボン酸ハライド、脂環式カルボン酸ハライド、および芳香族カルボン酸ハライドを例示することができる。より具体的な例として、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、吉草酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライド、アニス酸クロライド、コハク酸クロライド、マロン酸クロライド、マレイン酸クロライド、イタコン酸クロライド、およびフタル酸クロライドを例示することができる。中でも、塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライドおよびフタル酸クロライドのような芳香族カルボン酸クロライドが好ましく、特にフタル酸クロライドが好ましい。
【0040】
有機酸ハライドの使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体中のチタン原子1mol当たり通常、0.1〜50mol、さらに好ましくは0.3〜20mol、特に好ましくは0.5〜10molである。有機酸ハライドの使用量が50molを超える場合には、得られるオレフィン重合用固体触媒成分粒子の崩壊が起こることがある。
オレフィン重合用固体触媒成分前駆体と、ハロゲン化金属化合物と、内部電子供与体と有機酸ハライドとを接触させる方法は特に限定されない。該方法として、スラリー法や機械的粉砕法(例えばボールミルによる方法)のような公知の方法を例示することができる。機械的粉砕法は、得られる固体触媒成分の微粉含有量やその粒度分布の広がりを抑制するために、好ましくは希釈剤の存在下で行われる。
【0041】
希釈剤として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、およびオクタンのような脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンのような芳香族炭化水素;シクロヘキサンおよびシクロペンタンのような脂環式炭化水素;ならびに1,2−ジクロルエタンおよびモノクロルベンゼンのようなハロゲン化炭化水素を例示することができる。中でも、芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素が特に好ましい。
上記のスラリー法におけるスラリー濃度は、通常0.05〜0.7g固体/ml溶媒、特に好ましくは0.1〜0.5g固体/ml溶媒である。接触の温度は、通常30〜150℃、好ましくは45〜135℃、特に好ましくは60〜120℃である。接触の時間は特に制限されず、通常30分から6時間程度が好適である。
【0042】
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物として、特許文献3に記載された化合物を例示することができる。中でも、好ましくは、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、または、アルキルアルモキサンであり、さらに好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物またはテトラエチルジアルモキサンである。
【0043】
本発明で任意に用いられる外部電子供与体として、特許文献1に記載された化合物を例示することができる。中でも、好ましくは酸素含有化合物または窒素含有化合物である。酸素含有化合物として、アルコキシケイ素、エーテル、エステル、およびケトンを例示することができる。中でも、好ましくはアルコキシケイ素またはエーテルである。
【0044】
該アルコキシケイ素として、下式で表される化合物が好ましい:

12Si(OR134−f

式中、R12は炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはヘテロ原子含有置換基を表し;R13は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し;fは0≦f<4を満たす数を表し;R12およびR13が複数存在する場合、それぞれのR12およびR13は同じか又は異なる。
外部電子供与体としてのエーテルは、より好ましくは環状エーテル化合物である。環状エーテル化合物とは、環構造内に少なくとも一つの−C−O−C−結合を有する複素環式化合物であり、更に好ましくは環構造内に少なくとも一つの−C−O−C−O−C−結合を有する環状エーテル化合物である。
【0045】
外部電子供与体は、特に好ましくは、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、1,3−ジオキソラン、又は1,3−ジオキサンである。
【0046】
オレフィン重合用固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、任意に外部電子供与体とを接触させる方法は、オレフィン重合用固体触媒が生成される限り、特に限定されない。接触は溶媒の存在下または不在下で行われる。これらの接触混合物を重合槽に供給してもよいし、これらを別々に重合槽に供給して重合槽中で接触させてもよいし、任意の二成分の接触混合物と残りの成分とを別々に重合槽に供給してもよい。重合槽へは、窒素およびアルゴンのような不活性ガス中で水分のない状態で供給することが好ましい
【0047】
本発明のオレフィン重合体の製造方法で用いられるオレフィンとして、エチレンおよび炭素原子数3以上のα−オレフィンを例示することができる。α−オレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、および1−デセンのような直鎖状モノオレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、および4−メチル−1−ペンテンのような分岐状モノオレフィン;ビニルシクロヘキサン;ならびに、これらの2種以上の組合せを例示することができる。中でも、好ましくはエチレンもしくはプロピレンの単独重合、または、エチレンもしくはプロピレンを主成分とする複数種のオレフィンの組合せの共重合である。上記の複数種のオレフィンの組合せは、プロピレン以外の2種類またはそれ以上の種類のα−オレフィンの組合せを含んでいてもよく、共役ジエンや非共役ジエンのような多不飽和結合を有する化合物を含んでいてもよい。
【0048】
本発明のオレフィン重合体の製造方法で製造されるオレフィン重合体は、好ましくは、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、1−ペンテン単独重合体、1−ヘキセン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、または、これらを多段重合して得られるブロック共重合体である。
【0049】
本発明にかかる重合触媒を形成させるための方法は、良好な粉体性状を有するオレフィン重合体を製造する観点から、上記の方法より、以下の工程からなる方法の方が好ましい場合がある:
(1)固体触媒成分及び有機アルミニウム化合物の存在下、少量のオレフィン(本来の重合(通常、本重合と言われる)で使用されるオレフィンと同一または異なる)を重合させ(生成されるオレフィン重合体の分子量を調節するために水素のような連鎖移動剤を用いてもよいし、外部電子供与体を用いてもよい)、該オレフィンの重合体で表面が覆われた触媒成分を生成させる工程(該重合は通常、予備重合と言われ、したがって該触媒成分は通常、予備重合触媒成分と言われる);
(2)予備重合触媒成分と、有機アルミニウム化合物および外部電子供与体とを接触させる工程。
【0050】
本発明における「固体触媒成分」という用語は、上記の「固体触媒成分」のみならず、「予備重合触媒成分」や「両者の組合せ」をも意味する。
予備重合は好ましくは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン及びトルエンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合である。
上記工程(1)で用いられる有機アルミニウム化合物の量は、工程(1)で用いられる固体触媒成分中のチタン原子1モル当たり、通常0.5〜700モル、好ましくは0.8〜500モル、特に好ましくは1〜200モルである。
【0051】
予備重合されるオレフィンの量は、工程(1)で用いられる固体触媒成分1g当たり通常0.01〜1000g、好ましくは0.05〜500g、特に好ましくは0.1〜200gである。
上記工程(1)のスラリー重合における固体触媒成分のスラリー濃度は、好ましくは1〜500g−固体触媒成分/リットル−溶媒、特に好ましくは3〜300g−固体触媒成分/リットル−溶媒である。
【0052】
予備重合の温度は、好ましくは−20〜100℃、特に好ましくは0〜80℃である。予備重合における気相部のオレフィンの分圧は、好ましくは0.01〜2MPa、特に好ましくは0.1〜1MPaであるが、予備重合の圧力や温度において液状であるオレフィンについては、この限りではない。予備重合の時間は特に制限されず、好ましくは2分間から15時間である
【0053】
予備重合における、固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及びオレフィンを重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを供給した後、オレフィンを供給する方法;および
(2)固体触媒成分とオレフィンとを供給した後、有機アルミニウム化合物を供給する方法。
予備重合における、オレフィンを重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)重合槽内の圧力を所定の圧力に維持するようにオレフィンを順次供給する方法;および
(2)オレフィンの所定量の全量を一括して供給する方法。
【0054】
予備重合で用いられる外部電子供与体の量は、固体触媒成分中に含まれるチタン原子1モルに対して、通常0.01〜400モル、好ましくは0.02〜200モル、特に好ましくは、0.03〜100モルであり、有機アルミニウム化合物1モルに対して、通常0.003〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、特に好ましくは0.01〜2モルである。
予備重合における、外部電子供与体を重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)外部電子供与体を単独で供給する方法;および
(2)外部電子供与体と有機アルミニウム化合物との接触物を供給する方法。
予備重合については例えば、特許文献2や特許文献3に記載されている。
本重合時の有機アルミニウム化合物の使用量は、固体触媒成分中のチタン原子1molあたり、通常1〜10000mol、特に好ましくは5〜6000molである。
【0055】
本重合時の外部電子供与体の使用量は、固体触媒成分中に含まれるチタン原子1molあたり、通常0.1〜2000mol、好ましくは0.3〜1000mol、特に好ましくは0.5〜800molであり、有機アルミニウム化合物1molあたり、通常0.001〜5mol、好ましくは0.005〜3mol、特に好ましくは0.01〜1molである。
本重合の温度は、通常−30〜300℃、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は特に制限されず、工業的かつ経済的であるという点で、一般に常圧〜10MPa、好ましくは200kPa〜5MPa程度である。重合はバッチ式または連続式であり、重合方法としてプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合法または溶液重合法や、重合温度において液状であるオレフィンを媒体とするバルク重合法や、気相重合法を例示することができる。
【0056】
本重合で得られる重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤(例えば、水素や、ジメチル亜鉛およびジエチル亜鉛のようなアルキル亜鉛)を用いてもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって特に限定をうけるものではない。
【0058】
[実施例1]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の合成
撹拌機を備えた内容積500mlのセパラブルフラスコを窒素で置換した後、ヘキサン溶媒)94ml、テトラブトキシチタン(チタン化合物)8.9ml(25mmol)およびテトラエトキシシラン(ケイ素化合物)88.2ml(395mmol)を投入した。次に、前記攪拌混合物を撹拌して、フラスコ内の温度を10℃に保ちながら、ブチルマグネシウムクロリド(有機マグネシウム化合物)のジブチルエーテル溶液(濃度2.1mol/L)204ml(428mmol)を一定の滴下速度で4時間かけて滴下した。ヘキサン溶媒の量に対する、投入したブチルマグネシウムクロリドに由来するMg量は、4.6mol−Mg/L−溶媒であった。滴下終了後、20℃で1時間撹拌した後、濾過した。その後、得られた固体を、トルエン280mlで3回洗浄した後に、トルエンを160ml加えて、粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分前駆体のトルエンスラリーを得た。スラリー濃度は、0.19g―オレフィン重合用固体触媒前駆体/ml−スラリーであった。
該オレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、Ti:1.68wt%、OEt(エトキシ基):38.1wt%、OBu(ブトキシ基):4.07wt%を含有していた。
【0059】
(2)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mlのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体が7.00gになるように実施例1(1)で得られたスラリーを加え、トルエンを3.1ml、フェニルトリクロロシラン(ハロゲン化金属化合物)5.1ml(32mmol)およびジ(2−エチルヘキシル)フタレート(内部電子供与体)5.4ml(74mmol)を投入し、105℃にて2時間攪拌した。次いで、攪拌混合物を固液分離し、100℃にてトルエン35mlでの洗浄を3回繰り返し、洗浄後の固体にトルエン10mlを投入した。これに四塩化チタン(ハロゲン化金属化合物)3.5ml(32mmol)を投入し、105℃で2時間攪拌した。その後、攪拌混合物を固液分離し、100℃にてトルエン35mlでの洗浄を6回繰り返した後、さらに室温にてヘキサン35mlでの洗浄を2回繰り返し、洗浄後の固体を減圧乾燥して粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分を7.15g得た。該オレフィン重合用固体触媒成分はTi:0.66wt%を含有しており、触媒のメジアン径は39μmであった。
【0060】
(3)エチレン・1−ブテン共重合体の重合
内容積3リットルの撹拌機付きオートクレーブを十分乾燥した後これを真空にし、これに水素0.087MPa、ブタン640gおよび1−ブテン(オレフィン)110gを仕込み、70℃に昇温した。次に、エチレン(オレフィン)を分圧で0.6MPaとなるように加えた。実施例1(2)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分17.6mgと、トリエチルアルミニウム(有機アルミニウム化合物)5.7mmolとをアルゴンにより圧入して重合を開始した。その後エチレンを連続して供給しつつ全圧を一定に保ちながら70℃で3時間重合を行った。
重合反応終了後、未反応モノマーをパージし、粒子性状の良好なエチレン・1−ブテン共重合体142gを得た。
触媒単位量当たりの共重合体の生成量(重合活性)は8050g−共重合体/g−オレフィン重合用固体触媒成分であった。この共重合体について、SCB:11.3、CXS:1.4wt%、BD:0.355g/ml、MFR:0.15、MFRR:29.9であり、共重合体パウダーの流下体積は、392ml/secであった。
結果を表1に示した。
【0061】
上記の固体触媒成分前駆体および固体触媒成分の組成分析についてはそれぞれ次のように実施した。即ち、チタン原子含有量は、固体サンプル約20mgを2規定の希硫酸約30mlで分解、これに過剰となる3重量%過酸化水素水3mlを加え、得られた液状サンプルの410nmの特性吸収を日立製ダブルビーム分光光度計U−2001型を用いて測定し、別途作成しておいた検量線によって求めた。アルコキシ基含有量は、固体サンプル約2gを水100mlで分解後、得られた液状サンプル中のアルコキシ基に対応するアルコール量を、ガスクロマトグラフィー内部標準法を用いて求め、アルコキシ基含有量に換算した。
【0062】
上記の触媒成分前駆体および触媒成分の粒子形状は、Keyence製デジタルマイクロスコープ(VH−6200)、ならびに、SEM(VE−8800)を用いて確認した。
【0063】
上記の触媒成分のメジアン径は、島津製作所製のレーザー回折式粒度分布計(SALD−2100)を用いて、測定した。
【0064】
上記の短鎖分岐数(以下SCBと略す)は、赤外線分光光度計(日本分光社製FT/IR−470PLUS)を用い、エチレンとα−オレフィンの特性吸収より検量線を求め、1000炭素あたりのメチル基の数として計算した。
【0065】
上記の20℃キシレン可溶成分量(以下CXSと略す)は以下のように測定した。1gの共重合体を200mlの沸騰したキシレンに溶解させたのち、50℃まで徐冷し、次いで氷水に浸し撹拌しながら20℃まで冷却し、20℃で3時間放置したのち、析出した共重合体を濾別した。濾液中に残存した共重合体の重量百分率をCXS(単位=重量%。共重合体を100重量%とする)とした。
【0066】
上記の嵩密度(BD)はJIS K 6721(1966)に準拠して測定した。
【0067】
上記の溶融流出速度(以下MFRと略す)と溶融流出速度比(以下MFRRと略す)は、ASTM D1238に準拠して190℃で測定した。MFRRは荷重21.60kgをかけたときの流出量と、2.16kgをかけたときの流出量の比として表され、一般に重合体の分子量分布が広いほどMFRRの値が大きくなることが知られている。
【0068】
上記の重合体パウダーの流下体積は、図1に示すステンレス製ロート(下部の内径が13.5mm)を用い、以下の手順で測定した:
(1)重合体パウダーを、該ロートの上部に注ぎ入れて流下させる;
(2)定常流下のもと、5秒間に流下する重合体パウダーの重量(Wg/5秒)を求める;
(3)W×2を算出して、10秒間に流下する重合体パウダーの重量(2Wg/10秒)とする;
(4)2W(g/10秒)÷重合体パウダーの嵩密度(g/ml)を算出して、10秒あたりの流下体積(ml/10秒)を求める;
(5)それを1秒あたりの流下体積に換算して、その値を重合体パウダーの流下体積(ml/秒)とする。流下体積が大きいほど、重合体パウダーの流動性が優れる。
【0069】
[実施例2]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の合成
ヘキサン94mlを70mlに変更したこと、フラスコ内の温度を10℃から20℃へ変更したこと、トルエン洗浄後に加えるトルエン160mlを150mlに変更したこと以外は実施例1(1)と同様にして、粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分前駆体のトルエンスラリーを得た。スラリー濃度は、0.20g―オレフィン重合用固体触媒前駆体/ml−スラリーであった。
該オレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、Ti:1.83wt%、OEt(エトキシ基):39.8wt%、OBu(ブトキシ基):3.95wt%を含有していた。
(2)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mlのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体が7.00gになるように実施例2(1)で得られたスラリーを加え、トルエンを6.2ml加えた以外は、実施例1(2)と同様に合成を行い、粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分を7.08g得た。該オレフィン重合用固体触媒成分はTi:0.70wt%を含有しており、触媒のメジアン径は33μmであった。
(3)エチレン・1−ブテン共重合体の重合
実施例2(2)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分22.5mgを用いたことを除いて、実施例1(3)と同様に重合を実施し、粒子性状の優れた重合体154gを得た。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は6850g−重合体/g−オレフィン重合用固体触媒成分であった。この重合体について、SCB:17.8、CXS:4.4wt%、BD:0.372g/ml、MFR:0.53、MFRR:24.6であり、重合体パウダーの流下体積は、419ml/secであった。
結果を表1に示した。
【0070】
[実施例3]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の合成
ヘキサン94mlを47mlに変更したこと、フラスコ内の温度を10℃から20℃へ変更したこと、トルエン洗浄後に加えるトルエン160mlを180mlに変更したこと以外は実施例1(1)と同様にして、粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分前駆体のトルエンスラリーを得た。スラリー濃度は、0.15g―オレフィン重合用固体触媒前駆体/ml−スラリーであった。
該オレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、Ti:1.49wt%、OEt(エトキシ基):37.7wt%、OBu(ブトキシ基):3.86wt%を含有していた。
(2)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mlのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体が7.00gになるように実施例3(1)で得られたスラリーを加え、トルエンを6.6ml抜き出した以外は、実施例1(2)と同様に合成を行い、粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分を7.21g得た。該オレフィン重合用固体触媒成分はTi:0.61wt%を含有しており、触媒のメジアン径は38μmであった。
(3)エチレン・1−ブテン共重合体の重合
実施例3(2)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分15.7mgを用いたことを除いて、実施例1(3)と同様に重合を実施し、粒子性状の優れた重合体92gを得た。
触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は5870g−重合体/g−オレフィン重合用固体触媒成分であった。この重合体について、SCB:13.8、CXS:3.6wt%、BD:0.361g/ml、MFR:0.48、MFRR:22.3であり、重合体パウダーの流下体積は、429ml/secであった。
結果を表1に示した。
【0071】
[実施例4]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の合成
ヘキサン94mlを21.4mlに変更したこと、フラスコ内の温度を10℃から20℃へ変更したこと、トルエン洗浄後に加えるトルエン160mlを180mlに変更したこと以外は実施例1(1)と同様にして、粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分前駆体のトルエンスラリーを得た。スラリー濃度は、0.22g―オレフィン重合用固体触媒前駆体/ml−スラリーであった。
該オレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、Ti:1.99wt%、OEt(エトキシ基):38.3wt%、OBu(ブトキシ基):3.57wt%を含有していた。
(2)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mlのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体が7.00gになるように実施例4(1)で得られたスラリーを加え、トルエンを2.2ml加えた以外は、実施例1(2)と同様に合成を行い、粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分を得た。該オレフィン重合用固体触媒成分はTi:0.99wt%を含有しており、触媒のメジアン径は39μmであった。
(3)エチレン・1−ブテン共重合体の重合
実施例4(2)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分11.0mgを用いたことを除いて、実施例1(3)と同様に重合を実施し、粒子性状の優れた重合体79gを得た。
触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は7460g−重合体/g−オレフィン重合用固体触媒成分であった。この重合体について、SCB:13.3、CXS:3.5wt%、BD:0.387g/ml、MFR:0.44、MFRR:23.3であり、重合体パウダーの流下体積は、381ml/secであった。
結果を表1に示した。
【0072】
[実施例5]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の合成
ヘキサン94mlを8.6mlに変更したこと、フラスコ内の温度を10℃から20℃へ変更したこと、トルエン洗浄後に加えるトルエン160mlを180mlに変更したこと以外は実施例1(1)と同様にして、粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分前駆体のトルエンスラリーを得た。スラリー濃度は、0.18g―オレフィン重合用固体触媒前駆体/ml−スラリーであった。
該オレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、Ti:1.59wt%、OEt(エトキシ基):38.6wt%、OBu(ブトキシ基):3.84wt%を含有していた。
(2)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mlのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体が7.00gになるように実施例5(1)で得られたスラリーを加え、トルエンを0.9ml加えた以外は、実施例1(2)と同様に合成を行い、粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分を得た。該オレフィン重合用固体触媒成分はTi:0.67wt%を含有しており、触媒のメジアン径は46μmであった。
(3)エチレン・1−ブテン共重合体の重合
実施例5(2)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分14.0mgを用いたことを除いて、実施例1(3)と同様に重合を実施し、粒子性状の優れた重合体102gを得た。
触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は7290g−重合体/g−オレフィン重合用固体触媒成分であった。この重合体について、SCB:13.3、CXS:3.7wt%、BD:0.346g/ml、MFR:0.39、MFRR:23.4であり、重合体パウダーの流下体積は、348ml/secであった。
結果を表1に示した。
【0073】
[比較例1]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の合成
ヘキサン94mlを188mlへ変更したこと以外は実施例1(1)と同様にして、粒子形状の劣るオレフィン重合用固体触媒成分前駆体のトルエンスラリーを得た。スラリー濃度は、0.21g―オレフィン重合用固体触媒前駆体/ml−スラリーであった。
該オレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、Ti:1.96wt%、OEt(エトキシ基):44.0wt%、OBu(ブトキシ基):4.13wt%を含有していた。
(2)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
実施例1(1)で得られたスラリーを比較例1(1)で得られたスラリーに変更し、トルエン1.6mlを6.6mlに変更したこと以外は実施例1(2)と同様に行い、粒子形状の劣るオレフィン重合用固体触媒成分を7.00g得た。該オレフィン重合用固体触媒成分はTi:0.86wt%を含有していたおり、触媒のメジアン径は50μmであった。
(3)エチレン・1−ブテン共重合体の重合
前記(2)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分16.7mgを用いたことを除いて、実施例1(3)と同様に重合を実施し、重合体148gを得た。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は8850g−重合体/g−オレフィン重合用固体触媒成分であった。この重合体について、SCB:16.1、CXS:4.5wt%、BD:0.321g/ml、MFR:0.27、MFRR:29.9であり、重合体パウダーの流下体積は、321ml/secであった。
結果を表1に示した。
【0074】
[比較例2]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の合成
ヘキサン94mlを4.3mlへ変更したこと、フラスコ内の温度を10℃から20℃へ変更したこと以外は実施例1(1)と同様にして、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体のトルエンスラリーを得た。オレフィン重合用固体触媒成分前駆体は大量の微粒子を有していた。
該オレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、Ti:1.66wt%、OEt(エトキシ基):38.6wt%、OBu(ブトキシ基):3.99wt%を含有していた。
【0075】
[実施例6]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
活性化工程1:
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mlのフラスコを窒素で置換したのち、該フラスコに、オレフィン重合用固体触媒成分前駆体が8.00gになるように実施例2(1)で得られたトルエンスラリーを加え、スラリーの全体積が26.5mlとなるように上澄み液を抜き取った。40℃で四塩化チタン16.0ml(146mmol)、ジブチルエーテル0.8ml(4.7mmol)の混合物を投入し、さらにフタル酸クロライド1.6ml(1.7mmol)とトルエン1.6mlの混合物を5分間で滴下した。滴下終了後、反応混合物を115℃で3時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、115℃でトルエン40mlで3回洗浄を行った。
活性化工程2:
洗浄後、スラリーの体積が26.5mlとなるようにトルエンを加えた。そこへジブチルエーテル0.8ml(4.7mmol)、フタル酸ジイソブチル0.45ml(1.7mmol)と、四塩化チタン6.4ml(58mmol)の混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、105℃でトルエン40mlで2回洗浄を行った。
活性化工程3:
次に、スラリーの体積が26.5mlとなるようにトルエンを加え、105℃とした。
そこへジブチルエーテル0.8ml(4.7mmol)、四塩化チタン6.4ml(58mmol)の混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、105℃でトルエン40mlで2回洗浄を行った。
活性化工程4:
さらに、スラリーの体積が26.5mlとなるようにトルエンを加え、105℃とした。そこへジブチルエーテル0.8ml(4.7mmol)、四塩化チタン6.4ml(58mmol)の混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、105℃でトルエン40mlで3回、室温でヘキサン40mlで3回洗浄を行った。これを減圧乾燥して粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分を7.24g得た。
オレフィン重合用固体触媒成分中には、チタン原子が1.9重量%、フタル酸ジエチル11.4重量%、フタル酸エチル−n−ブチル1.6重量%、フタル酸ジイソブチル3.7重量%が含有されていた。
(2)プロピレン重合体の重合
3リットルの内容積を持つステンレス製オートクレーブを真空とした後、0.033MPaの分圧の水素を加えた。トリエチルアルミニウム(有機アルミニウム化合物)2.6mmol、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(外部電子供与体)0.26mmolおよび実施例6(1)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分6.34mgを仕込み、次いで780gの液化プロピレンを仕込み、オートクレーブの温度を80℃に昇温し、80℃で1時間重合を行い、粒子性状の優れたプロピレン単独重合体パウダー290gを得た。
オレフィン重合用固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(PP/cat)は45700(g/g)であった。CXS=0.54wt%、[η]=2.15(dl/g)、嵩密度は0.468g/mlであり、重合体パウダーの流下体積は、421ml/secであった。
結果を表1に示した。
【0076】
上記の触媒成分中のフタル酸エステル化合物含有量は、固体サンプル約30mgをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解後、溶液中のフタル酸エステル化合物量をガスクロマトグラフィー内部標準法で求めた。
上記の極限粘度(以下[η]と略す)はテトラリン溶媒、135℃で測定した。
【0077】
[実施例7]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
実施例2(1)で得られた前駆体のトルエンスラリーを、実施例3(1)で得られた前駆体のトルエンスラリーに変更したこと以外は実施例6(1)と同様に行い、粒子形状の優れたオレフィン重合用固体触媒成分を7.37g得た。オレフィン重合用固体触媒成分中には、チタン原子が2.0重量%、フタル酸ジエチル9.7重量%、フタル酸エチル−n−ブチル1.2重量%、フタル酸ジイソブチル3.1重量%が含有されていた。
(2)プロピレン重合体の重合
実施例6(1)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分6.34mgを、実施例7(1)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分9.26gに変更したこと以外は実施例6(2)と同様に行い、粒子性状の優れたプロピレン単独重合体パウダー330gを得た。
オレフィン重合用固体触媒成分1gあたりの重合体の収量(PP/cat)は35600(g/g)であった。CXS=0.51wt%、[η]=2.19(dl/g)、嵩密度は0.474g/mlであり、重合体パウダーの流下体積は、420ml/secであった。
結果を表1に示した。
【0078】
[比較例3]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の合成
撹拌機を備えた内容積500mlのセパラブルフラスコを窒素で置換した後、ヘキサン270ml、テトラブトキシチタン8.1ml(23mmol)、および、テトラエトキシシラン79.9ml(357mmol)を投入した。次に、前記攪拌混合物を撹拌して、フラスコ内の温度を20℃に保ちながら、ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液(濃度2.3モル/リットル)166ml(382mmol)を一定の滴下速度で3時間かけて滴下した。ヘキサン溶媒の量に対する、投入したブチルマグネシウムクロリドに由来するMg量は、1.4mol−Mg/L−溶媒であった。滴下終了後、20℃で1時間撹拌した後、濾過した。その後、得られた固体を、トルエン220mlで3回洗浄した後に、トルエンを220ml加えて、粒子形状の劣るオレフィン重合用固体触媒成分前駆体のトルエンスラリーを得た。スラリー濃度は、0.16g―オレフィン重合用固体触媒前駆体/ml−スラリーであった。
該オレフィン重合用固体触媒成分前駆体は、Ti:2.16wt%、OEt(エトキシ基):40.9wt%、OBu(ブトキシ基):4.52wt%を含有していた。
(2)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
実施例2(1)で得られた前駆体のトルエンスラリーを、比較例3(1)で得られた前駆体のトルエンスラリーに変更したこと以外は実施例6(1)と同様に行い、粒子形状の劣るオレフィン重合用固体触媒成分6.83g得た。
オレフィン重合用固体触媒成分中には、チタン原子が2.0重量%、フタル酸ジエチル9.3重量%、フタル酸エチル−n−ブチル1.1重量%、フタル酸ジイソブチル3.2重量%が含有されていた。
(3)プロピレン重合体の重合
実施例6(1)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分6.34mgを、比較例3(2)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分6.34mgに変更したこと以外は、実施例6(2)と同様に行った。
オレフィン重合用固体触媒成分1gあたりのポリプロピレンの収量(PP/cat)は53000(g/g)であった。嵩密度は0.463g/mlであり、重合体パウダーの流下体積は、406ml/secであった。
結果を表1に示した。
【0079】
表1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si−O結合を有するケイ素化合物、下式[I]で表されるチタン化合物および溶媒を含有する溶液に、該溶媒1リットルあたりのマグネシウム原子の量が2.5〜90molである量に相当する有機マグネシウム化合物を加える工程を含むオレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法。


式中、R7は炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基を表し、X1はハロゲン原子または炭素原子数1〜20のヒドロカルビルオキシ基を表し、X1は互いに同じか異なり、dは1〜20の数を表す。
【請求項2】
溶媒が炭化水素溶媒である請求項1に記載のオレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法。
【請求項3】
溶媒が脂肪族炭化水素溶媒である請求項1に記載のオレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造されたオレフィン重合用固体触媒成分前駆体と、下式で表されるハロゲン化金属化合物と、内部電子供与体とを接触させる工程からなるオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。

M(R11e3m-e

式中、Mは第4族、第13族または第14族元素を表し、R11は炭素原子数2〜18のアルキル基もしくはアルコキシ基、または炭素原子数6〜18のアリール基もしくはアリロキシ基を表し、X3はハロゲン原子を表し、mはMの原子価を表し、eは0<e≦mを満足する数を表す。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造されたオレフィン重合用固体触媒成分前駆体と、下式で表されるハロゲン化金属化合物と、内部電子供与体と、有機酸ハライドとを接触させる工程からなるオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。

M(R11e3m-e

式中、Mは第4族、第13族または第14族元素を表し、R11は炭素原子数2〜18のアルキル基もしくはアルコキシ基、または炭素原子数6〜18のアリール基もしくはアリロキシ基を表し、X3はハロゲン原子を表し、mはMの原子価を表し、eは0<e≦mを満足する数を表す。
【請求項6】
請求項4または5に記載の製造方法で製造されたオレフィン重合用固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物とを接触させる工程からなるオレフィン重合用固体触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項4または5に記載の製造方法で製造されたオレフィン重合用固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、外部電子供与体とを接触させる工程からなるオレフィン重合用固体触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の製造方法で製造されたオレフィン重合用固体触媒の存在下にオレフィンを重合させる工程からなるオレフィン重合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−168547(P2010−168547A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277246(P2009−277246)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】