説明

オレフィン類重合用触媒及びこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法

【課題】高い触媒活性と高い立体規則性の重合体を収率良く得ることができ、かつ水素レスポンスの良好なオレフィン類重合用触媒及びこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与性化合物を含有する固体触媒成分、(B)一般式RAlQ3−pで表される有機アルミニウム化合物、および(C)RHSi(OR(NR3−m−nで表わされるアミノシラン化合物、から形成されるオレフィン類重合用触媒、並びに当該触媒の存在下に行うオレフィン類重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの立体規則性及び収率を高度に維持でき、かつ水素の少量添加で高メルトフローレートのものを得る効果、いわゆる水素レスポンスの良好であるオレフィン類の重合用触媒及びこれを使用するオレフィン類の重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロピレンなどのオレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物およびハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物からなるオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させる方法が数多く提案されている。たとえば、特許文献1(特開昭57−63310号公報)並びに特許文献2(特開昭57−63311公報)においては、マグネシウム化合物、チタン化合物およびSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物との組み合わせからなる触媒を用いて、特に炭素数3以上のオレフィン類を重合させる方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は、高立体規則性重合体を高収率で得るには、必ずしも充分に満足したものではなく、より一層の改善が望まれていた。
【0003】
一方、特許文献3(特開昭63−3010号公報)においては、ジアルコキシマグネシウム、芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族炭化水素化合物およびチタンハロゲン化物を接触して得られた生成物を、粉末状態で加熱処理することにより調製した固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物よりなるプロピレン重合用触媒とプロピレンの重合方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献4(特開平1−315406号公報)においては、ジエトキシマグネシウムとアルキルベンゼンとで形成された懸濁液に、四塩化チタンを接触させ、次いでフタル酸クロライドを加えて反応させることによって固体生成物を得、該固体生成物を更にアルキルベンゼンの存在下で四塩化チタンと接触反応させることによって調製された固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物よりなるプロピレン用触媒および該触媒の存在下でのプロピレンの重合方法が提案されている。
【0005】
上記各従来技術は、その目的が生成重合体中に残留する塩素やチタンなどの触媒残渣を除去する所謂脱灰工程を省略し得る程の高活性を有すると共に、併せて立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の触媒活性の持続性を高めることに注力したものであり、それぞれ成果を上げているが、このような目的の触媒改良も引き続き望まれている。
【0006】
ところで、上記のような触媒を用いて得られるポリマーは、自動車あるいは家電製品などの成型品の他、容器やフィルム等種々の用途に利用されている。これらは、重合により生成したポリマーパウダーを溶融し、各種の成型機により成型されるが、特に射出成型でかつ大型の成型品を製造する際に、溶融ポリマーの流動性(メルトフローレート、MFR)が高いことが要求される。特に自動車材料向けの高機能性ブロック共重合体のコスト低減のために共重合反応器内で、オレフィン系熱可塑性エラストマー(以下、「TPO」という。)生産に必要なだけの共重合体を生産し、製造後に新たに別途合成した共重合体を添加することなく直接重合反応器内でTPOを作り上げる方法、すなわち、当業界で言う「直重」によるリアクターメイドTPOの生産においては、最終製品のメルトフローレートを充分に大きく保ち、射出成型しやすくするため、ホモ重合段階でのメルトフローレートは200以上の値を求められる。そのためポリマーの高い立体規則性を維持しながらメルトフローレートを上げるべく多くの研究がなされている。
【0007】
メルトフローレートは、ポリマーの分子量に大きく依存する。当業界においてはプロピレンの重合に際し、生成ポリマーの分子量調節剤として水素を添加することが一般に行われている。このとき低分子量のポリマー、即ち高メルトフローレートを製造する場合、通常多くの水素を添加する必要があるが、バルク重合装置においてはリアクターの耐圧にその安全性から限界があり、添加し得る水素量に制限がある。また、気相重合の場合、多くの水素を添加するためには重合するモノマーの分圧をさげざるを得ず、結果として生産性が低下することになる。また水素を多量に使用することは製造コストが上昇するという問題も生ずる。この問題を解決するために特許文献5(WO2004−16662号公報)では、Si(OR(NR)で表わされる化合物をオレフィン類の重合の触媒成分として用いることによって高メルトフローレートで、且つ、高い立体規則性のポリマーが製造されることが開示されており、それなりの効果を挙げている。
【0008】
しかしながら、上述したようなの直重によるTPOの製造の問題を根本的に解決するには充分ではなく、さらなる改善が望まれていた。
【特許文献1】特開昭 57−63310号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭 57−63311号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開昭 63−3010号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平 1−315406号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】WO2004−16662号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、ポリマーの立体規則性及び収率を高度に維持でき、かつ水素の少量添加で高メルトフローレートのものを得る効果、いわゆる水素レスポンスの良好なオレフィン類の重合用触媒及びこれを使用するオレフィンの重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる実情において、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記一般式(1)で表されるアミノシラン化合物はオレフィン類重合用触媒としての用途としては、これまで知られていなかったこと、当該アミノシラン化合物を有効成分として含有するオレフィン類重合用触媒が、ポリマーの立体規則性及び収率を高度に維持でき、かつ水素レスポンスが良好であることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(1);
HSi(OR(NR3−m−n (1)
(式中、mは0または1、nは1または2の整数であり、 ただし、1≦m+n≦2であり、Rは炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基およびそれらの誘導体、ビニル基、アリル基、アラルキル基、アルキルシリル基、アミノアルキルシリル基であり、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一または異なってもよく、R は炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、 R、Rは水素原子、炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基およびそれらの誘導体、ビニル基、アリル基、アラルキル基で、同一または異なってもよく、RとRは互いに結合して環状を形成してもよい。)で表されるアミノシラン化合物を有効成分とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与性化合物を含有する固体触媒成分、
(B)下記一般式(2);RAlQ3−p (2)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および(C)下記一般式(1);
HSi(OR(NR3−m−n (1)
(式中、mは0または1、nは1または2の整数であり、 ただし、1≦m+n≦2であり、Rは炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基およびそれらの誘導体、ビニル基、アリル基、アラルキル基、アルキルシリル基、アミノアルキルシリル基であり、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一または異なってもよく、R は炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、 R、Rは水素原子、炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基およびそれらの誘導体、ビニル基、アリル基、アラルキル基で、同一または異なってもよく、RとRは互いに結合して環状を形成してもよい。)で表されるアミノシラン化合物から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明は、前記オレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行なうことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、従来の触媒よりもポリマーの立体規則性及び収率を高度に維持でき、かつ水素の少量添加で高メルトフローレートのものを得る効果(以後単に「水素レスポンス」ということがある)が得られる。従って、重合に際して用いる水素量を削減できることや触媒の活性が高いなどの機能により、汎用ポリオレフィンを低コストで提供し得ると共に、高機能性を有するオレフィン類の重合体の製造において有用性が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、上記一般式(1)で表されるアミノシラン化合物を有効成分とする。すなわち、当該アミノシランは、オレフィン類重合用触媒の構成要素である固体触媒成分の電子供与性化合物(内部ドナー)及びオレフィン類重合用触媒の電子供与性化合物(外部ドナー)として使用することができる。このうち、オレフィン類重合用触媒の電子供与性化合物(外部ドナー)として用いると、本発明の効果が特に顕著に表れる。
【0016】
このアミノシラン化合物はN原子、酸素原子、炭素原子及び水素原子が直接Si原子に結合した化合物であり、このようなアミノシラン化合物としては、(アルキルアミノ)アルキルアルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシアルキルシラン、(アルキルアミノ)ジアルキルアミノアルコキシシラン、(ジアルキルアミノ)アルキルアルコキシシラン、(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキルシラン、(ジアルキルアミノ)ジアルキルアミノアルコキシシラン、ビス(アルキルアミノ)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)(ジアルキルアミノ)アルコキシシランが好ましい。ここで、アルキルアミノ基はNに1つのアルキル基および水素原子が結合した2級アミノ残基であり、ジアルキルアミノ基は3級アミノ残基である。本発明のアミノシラン化合物では、上記一般式(1)において、m+n1の場合、2つの−NR基のうち少なくとも1つはRまたはRの何れか一方が水素原子である2級アミノ残基であることが好ましい。
【0017】
一般式(1)中、ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子などが挙げられる。一般式(1)中、Rは炭素数1〜10の直鎖又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、アルキルアミノシリル基が好ましく、特に炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、アミノアルキルシリル基が好ましい。また、Rは炭素数1〜6の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましい。また、R及びRは炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、アルキルアミノシリル基、シクロアルキル基である。
【0018】
一般式(1)で表されるアミノシラン化合物としては、特に制限されないが、その一例を以下に示す。すなわち、(メチルアミノ)エチルメトキシシラン、(メチルアミノ)プロピルメトキシシラン、(メチルアミノ)iso−プロピルメトキシシラン、(メチルアミノ)iso−ブチルメトキシシラン、(メチルアミノ)sec−ブチルメトキシシラン、(メチルアミノ)t−ブチルメトキシシラン、(メチルアミノ)フェニルメトキシシラン、(メチルアミノ)シクロペンチルメトキシシラン、(メチルアミノ)シクロヘキシルメトキシシラン、
【0019】
(メチルアミノ)エチルエトキシシラン、(メチルアミノ)プロピルエトキシシラン、(メチルアミノ)iso−プロピルエトキシシラン、(メチルアミノ)iso−ブチルエトキシシラン、(メチルアミノ)sec−ブチルエトキシシラン、(メチルアミノ)t−ブチルエトキシシラン、(メチルアミノ)フェニルエトキシシラン、(メチルアミノ)シクロペンチルエトキシシラン、(メチルアミノ)シクロヘキシルエトキシシラン、
【0020】
(エチルアミノ)エチルメトキシシラン、(エチルアミノ)プロピルメトキシシラン、(エチルアミノ)iso−プロピルメトキシシラン、(エチルアミノ)iso−ブチルメトキシシラン、(エチルアミノ)sec−ブチルメトキシシラン、(エチルアミノ)t−ブチルメトキシシラン、(エチルアミノ)フェニルメトキシシラン、(エチルアミノ)シクロペンチルメトキシシラン、(エチルアミノ)シクロヘキシルメトキシシラン、
【0021】
(エチルアミノ)エチルエトキシシラン、(エチルアミノ)プロピルエトキシシラン、(エチルアミノ)iso−プロピルエトキシシラン、(エチルアミノ)iso−ブチルエトキシシラン、(エチルアミノ)sec−ブチルエトキシシラン、(エチルアミノ)t−ブチルエトキシシラン、(エチルアミノ)フェニルエトキシシラン、(エチルアミノ)シクロペンチルエトキシシラン、(エチルアミノ)シクロヘキシルエトキシシラン、
【0022】
(n−プロピルアミノ)エチルメトキシシラン、(n−プロピルアミノ)プロピルメトキシシラン、(n−プロピルアミノ)iso−プロピルメトキシシラン、(n−プロピルアミノ)iso−ブチルメトキシシラン、(n−プロピルアミノ)sec−ブチルメトキシシラン、(n−プロピルアミノ)t−ブチルメトキシシラン、(n−プロピルアミノ)フェニルメトキシシラン、(n−プロピルアミノ)シクロペンチルメトキシシラン、(n−プロピルアミノ)シクロヘキシルメトキシシラン、
【0023】
(n−プロピルアミノ)エチルエトキシシラン、(n−プロピルアミノ)プロピルエトキシシラン、(n−プロピルアミノ)iso−プロピルエトキシシラン、(n−プロピルアミノ)iso−ブチルエトキシシラン、(n−プロピルアミノ)sec−ブチルエトキシシラン、(n−プロピルアミノ)t−ブチルエトキシシラン、(n−プロピルアミノ)フェニルエトキシシラン、(n−プロピルアミノ)シクロペンチルエトキシシラン、(n−プロピルアミノ)シクロヘキシルエトキシシラン、
【0024】
(メチルアミノ)(メトキシメチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−メトキシエチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−エトキシエチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−t−ブトキシエチル)メトキシシラン
(メチルアミノ)(メトキシメチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−メトキシエチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−エトキシエチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−t−ブトキシエチル)エトキシシラン
(エチルアミノ)(メトキシメチル)メトキシシラン、(エチルアミノ)(2−メトキシエチル)メトキシシラン、(エチルアミノ)(2−エトキシエチル)メトキシシラン、(エチルアミノ)(2−t−ブトキシエチル)メトキシシラン
(エチルアミノ)(メトキシメチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−メトキシエチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−エトキシエチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−t−ブトキシエチル)エトキシシラン
(n−プロピルアミノ)(メトキシメチル)メトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−メトキシエチル)メトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−エトキシエチル)メトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−t−ブトキシエチル)メトキシシラン
【0025】
(n−プロピルアミノ)(メトキシメチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−メトキシエチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−エトキシエチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−t−ブトキシエチル)エトキシシラン
【0026】
(メチルアミノ)(2−ジメチルアミノエチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジエチルアミノエチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジn−プロピルアミノエチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジiso−プロピルアミノエチル)メトキシシラン、
【0027】
(メチルアミノ)(2−ジiso−ブチルアミノエチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジsec−ブチルアミノエチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジt−ブチルアミノエチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジシクロペンチルアミノエチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジシクロヘキシルアミノエチル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジフェニルアミノエチル)メトキシシラン、
【0028】
(メチルアミノ)(2−ジメチルアミノエチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジエチルアミノエチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジn−プロピルアミノエチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジiso−プロピルアミノエチル)エトキシシラン、
【0029】
(メチルアミノ)(2−ジiso−ブチルアミノエチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジsec−ブチルアミノエチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジt−ブチルアミノエチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジシクロペンチルアミノエチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジシクロヘキシルアミノエチル)エトキシシラン、(メチルアミノ)(2−ジフェニルアミノエチル)エトキシシラン、
【0030】
(エチルアミノ)(2−ジメチルアミノエチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−ジエチルアミノエチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−ジn−プロピルアミノエチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−ジiso−プロピルアミノエチル)エトキシシラン、
【0031】
(エチルアミノ)(2−ジiso−ブチルアミノエチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−ジsec−ブチルアミノエチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−ジt−ブチルアミノエチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−ジシクロペンチルアミノエチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−ジシクロヘキシルアミノエチル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(2−ジフェニルアミノエチル)エトキシシラン、
【0032】
(n−プロピルアミノ)(2−ジメチルアミノエチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−ジエチルアミノエチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−ジn−プロピルアミノエチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−ジiso−プロピルアミノエチル)エトキシシラン、
【0033】
(n−プロピルアミノ)(2−ジiso−ブチルアミノエチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−ジsec−ブチルアミノエチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−ジt−ブチルアミノエチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−ジシクロペンチルアミノエチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−ジシクロヘキシルアミノエチル)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(2−ジフェニルアミノエチル)エトキシシラン、
【0034】
(メチルアミノ)(トリメチルシリルエチルアミノ)メトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルn−プロピルアミノ)メトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルiso−プロピルアミノ)メトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルiso−ブチルアミノ)メトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルsec−ブチルアミノ)メトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルt−ブチルアミノ)メトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルシクロヘキシルアミノ)メトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルフェニルアミノ)メトキシシラン、
【0035】
(メチルアミノ)(トリメチルシリルエチルアミノ)エトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルn−プロピルアミノ)エトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルiso−プロピルアミノ)エトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルiso−ブチルアミノ)エトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルsec−ブチルアミノ)エトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルt−ブチルアミノ)エトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルシクロヘキシルアミノ)エトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリルフェニルアミノ)エトキシシラン、
【0036】
(エチルアミノ)(トリメチルシリルエチルアミノ)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルn−プロピルアミノ)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルiso−プロピルアミノ)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルiso−ブチルアミノ)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルsec−ブチルアミノ)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルt−ブチルアミノ)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルシクロヘキシルアミノ)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルフェニルアミノ)メトキシシラン、
【0037】
(エチルアミノ)(トリメチルシリルエチルアミノ)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルn−プロピルアミノ)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルiso−プロピルアミノ)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルiso−ブチルアミノ)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルsec−ブチルアミノ)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルt−ブチルアミノ)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルシクロヘキシルアミノ)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルフェニルアミノ)エトキシシラン、
【0038】
(メチルアミノ)(トリメチルシリルアミノ)メトキシシラン、(メチルアミノ)(トリエチルシリルアミノ)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルアミノ)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリエチルシリルアミノ)メトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(トリメチルシリルアミノ)メトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(トリエチルシリルアミノ)メトキシシラン、
【0039】
(メチルアミノ)(トリメチルシリルアミノ)エトキシシラン、(メチルアミノ)(トリエチルシリルアミノ)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリルアミノ)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリエチルシリルアミノ)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(トリメチルシリルアミノ)エトキシシラン、(n−プロピルアミノ)(トリエチルシリルアミノ)エトキシシラン、
【0040】
(トリメチルシリルアミノ)(メチルアミノ)メトキシシラン、(トリメチルシリルアミノ)(エチルアミノ)メトキシシラン、(トリメチルシリルアミノ)(n−プロピルアミノ)メトキシシラン、(トリメチルシリルアミノ)(メチルアミノ)エトキシシラン、(トリメチルシリルアミノ)(エチルアミノ)エトキシシラン、(トリメチルシリルアミノ)(n−プロピルアミノ)エトキシシラン、(トリエチルシリルアミノ)(メチルアミノ)メトキシシラン、(トリエチルシリルアミノ)(エチルアミノ)メトキシシラン、(トリエチルシリルアミノ)(n−プロピルアミノ)メトキシシラン、(トリエチルシリルアミノ)(メチルアミノ)エトキシシラン、(トリエチルシリルアミノ)(エチルアミノ)エトキシシラン、(トリエチルシリルアミノ)(n−プロピルアミノ)エトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリル)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリル)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリル)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリエチルシリル)メトキシシラン、(メチルアミノ)(トリメチルシリル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリル)エトキシシラン、(エチルアミノ)(トリメチルシリル)メトキシシラン、(エチルアミノ)(トリエチルシリル)エトキシシランなどが挙げられる。
【0041】
これらの化合物の合成としては、塩素交換法、有機リチウム化合物を利用する方法、グリニヤー試薬を利用する方法などの公知の合成方法が挙げられる。またはこれら公知の方法を組み合わせる方法によっても合成が可能である。
【0042】
本発明のオレフィン類重合用触媒のうち固体触媒成分(A)(以下、「成分(A)」ということがある。)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を含むが、(a)マグネシウム化合物、(b)4価のチタンハロゲン化合物および(c)電子供与体化合物を接触して得ることができる。マグネシウム化合物(以下単に「成分(a)ということがある」としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物の中、ジハロゲン化マグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムとジアルコキシマグネシウムの混合物、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、特にジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的にはジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。
【0043】
また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲン含有有機金属等の存在下にアルコールと反応させて得たものでもよい。上記のジアルコキシマグネシウムは、単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0044】
更に、好適に用いられるジアルコキシマグネシウムは、顆粒状または粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取り扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する重合体の分離装置におけるフィルターの閉塞等の問題が解決される。
【0045】
上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形断面状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径Lと短軸径Wとの比(L/W)が3以下であり、好ましくは1〜2であり、より好ましくは1〜1.5である。
【0046】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は1〜200μmのものが使用し得る。好ましくは5〜150μmである。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、平均粒径は1〜100μm、好ましくは5〜50μmであり、さらに好ましくは10〜40μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉が少なく、かつ粒度分布の狭いものを使用することが好ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更にその粒度分布をD90/D10(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒度である。)で表わすと3以下であり、好ましくは2以下である。
【0047】
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−4132号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報などに例示されている。
【0048】
本発明における成分(A)の調製に用いられる4価のチタンハロゲン化合物(b)(以下「成分(b)」ということがある。)は、一般式Ti(OR)rX4−r(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、rは0≦r≦4の整数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の1種或いは2種以上である。
【0049】
具体的には、チタンハライドとして四塩化チタン、四臭化チタン、四沃化チタン等の四ハロゲン化チタン、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。これらのうち、四ハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタンである。これらチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0050】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与性化合物(以下、単に「成分(c)」ということがある。)は、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であり、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒト類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合またはSi−N−C結合を含む有機ケイ素化合物などが挙げられる。
【0051】
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミールエーテル、ジフェニールエーテル、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2-イソプロピル−2−イソペンチル−1、3−ジメトキシプロパン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジペンチル、マロン酸ジネオペンチル、イソプロピルブロモマロン酸ジエチル、ブチルブロモマロン酸ジエチル、ジイソブチルブロモマロン酸ジエチル、ジイソプロマロン酸ジエチル、ジブチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジイソペンチルマロン酸ジエチル、イソプロピルブチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジメチル、ビス(3−クロロ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、ビス(3−ブロモ−n−プロピル)マロン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジエステル、フタル酸ジエステル誘導体等のジカルボン酸ジエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸クロライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、オレイン酸アミド、ステリアリン酸アミド等のアミド類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリルニトリル等のニトリル類、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル等のイソシアネート類、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等のSi−O−C結合を含む有機珪素化合物、ビス(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、ビス(シクロアルキルアミノ)ジアルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、ジアルキルアミノトリアルコキシシラン、シクロアルキルアミノトリアルコキシシラン、等のSi−N−C結合を含む有機珪素化合物を挙げることができる。
【0052】
上記の電子供与性化合物のうち、エステル類、とりわけ芳香族ジカルボン酸ジエステルが好ましく用いられ、特にフタル酸ジエステルおよびフタル酸ジエステル誘導体が好適である。これらのフタル酸ジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−イソプロピル, フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチルイソプロピル、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エフタル酸チル(n−ブチル)、フタル酸エチル−イソブチル、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−イソデシル、フタル酸ビス(2、2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(イソヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(ヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(イソヘキシル)、フタル酸イソペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘシル)、フタル酸n−ペンチル(イソノニル)、フタル酸イソペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチル(ウンデシル)、フタル酸イソペンチル(イソヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(イソノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(イソノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(イソノニル)が例示され、これらのフタル酸ジエステルは1種あるいは2種以上が使用される。
【0053】
また、フタル酸ジエステル誘導体としては、上記のフタル酸ジエステルの2つのエステル基が結合するベンゼン環の1または2個の水素原子が、炭素数1〜5のアルキル基、または塩素原子、臭素原子およびフッ素原子などのハロゲン原子に置換されたものが挙げられる。該フタル酸ジエステル誘導体を電子供与性化合物として用いて調製した固体触媒成分により、より一層水素量のメルトフローレートへの大きな効果、即ち水素レスポンスを向上させることができ、重合時に添加する水素が同量あるいは少量でもポリマーのメルトフローレートを向上することができる。具体的には、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4、5、−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジエチル、4−クロロフタル酸ジ−n−ブチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジイソブチル、4−クロロフタル酸ジイソヘキシル、4−クロロフタル酸ジイソオクチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジイソヘキシル、4−ブロモフタル酸ジイソオクチル、4,5−ジクロロフタル酸ジエチル、4,5−ジクロロフタル酸ジ−n−ブチル、4,5−ジクロロフタル酸ジイソヘキシル、4,5−ジクロロフタル酸ジイソオクチル、が挙げられ、このうち、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、および4−ブロモフタル酸ジイソブチルが好ましい。
【0054】
なお、上記のエステル類は、2種以上組み合わせて用いることも好ましく、その際用いるエステルのアルキル基の炭素数合計が他のエステルのそれと比べ、その差が4以上になるように該エステル類を組み合わせることが望ましい。
【0055】
本発明においては、上記(a)、(b)及び(c)を接触させる際、芳香族炭化水素化合物(d)(以下単に「成分(d)」ということがある。)の存在下で接触させること方法が好ましい。この成分(d)としては具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物が好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種以上混合して使用してもよい。
【0056】
本発明の固体触媒成分(A)の調製においては、上記成分の他、更に、ポリシロキサン(以下単に「成分(e)」ということがある。)を使用することが好ましく、ポリシロキサンを用いることにより生成ポリマーの立体規則性あるいは結晶性を向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を低減することが可能となる。ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm/s(2〜10000センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘ちょう状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0057】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルキクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0058】
本発明では上記成分(a)、(b)、及び(c)、また必要に応じて成分(d)または成分(e)を接触させ成分(A)を形成させる。成分(a)として球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな成分(A)を得ることができ、また球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープな成分(A)を得ることができる。
【0059】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下、攪拌機を具備した容器中で、攪拌しながら行われる。接触温度は、各成分の接触時の温度であり、反応させる温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。接触温度は、単に接触させて攪拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は十分に反応が進行せず、結果として調製された固体触媒成分の性能が不十分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0060】
本発明の好ましい成分(A)の調製方法としては、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(b)を接触させた後に成分(c)及び成分(d)を接触させ、反応させることにより成分(A)を調製する方法、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(c)を接触させた後に成分(b)を接触させ、反応させることにより成分(A)を調製する方法、あるいは成分(a)と成分(c)と成分(d)とから懸濁液を形成し、成分(b)と成分(d)とから形成した混合溶液を該懸濁液に接触させ、その後反応させる調製方法を挙げることができる。またこのように調製した成分(A)に再度または複数回、成分(b)、または成分(b)および成分(c)を接触させることによって、最終的な固体触媒成分の性能を向上させることができる。この際、芳香族炭化水素(d)の存在下に行うことが望ましい。
【0061】
本発明における成分(A)の好ましい調製方法としては、成分(a)と成分(c)と沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)とから懸濁液を形成し、成分(b)と成分(d)とから形成した混合溶液を該懸濁液に接触させ、その後反応させることによる調製方法を挙げることができる。
【0062】
本発明における成分(A)の好ましい調製方法としては、以下に示す方法を挙げることができる。上記成分(a)と成分(c)と沸点50〜150℃の芳香族炭素化水素化合物(d)とから懸濁液を形成する。成分(b)及び沸点50〜150℃の芳香族炭素化水素化合物(d)から混合溶液を形成しておき、この混合溶液中に上記懸濁液を添加する。その後、得られた混合溶液を昇温して反応処理(第一次反応処理)する。反応終了後、得られた固体物質を常温で液体の炭化水素化合物で洗浄し、洗浄後の固体物質を固体生成物とする。なお、その後、該洗浄後の固体物質に、更に、新たに成分(b)および沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)を−20〜100℃で接触させ、昇温して、反応処理(第二次反応処理)して、反応終了後、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄する操作を1〜10回繰り返した、成分(A)を得ることもできる。
【0063】
以上を踏まえ、本発明における固体触媒成分(A)の特に好ましい調製方法としては、ジアルコキシマグネシウム(a)を沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)に懸濁させ、次いでこの懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させた後、反応処理を行う。この際、該懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前又は接触した後に、フタル酸ジエステルなどの電子供与性化合物(c)の1種あるいは2種以上を、−20〜130℃で接触させ、必要に応じて成分(e)を接触させて、反応処理を行い、固体生成物(1)を得る。この際、電子供与性化合物の1種あるいは2種以上を接触させる前又は後に、低温で熟成反応を行うことが望ましい。この固体生成物(1)を常温の液体の炭化水素化合物で洗浄(中間洗浄)した後、再度4価チタンハロゲン化合物(b)を、芳香族炭化水素化合物の存在下に、−20〜100℃で接触させ、反応処理を行い、固体生成物(2)を得る。なお必要に応じ、中間洗浄及び反応処理を更に複数回繰り返してもよい。次いで固体生成物(2)をデカンテーションにより常温で液体の炭化水素化合物で洗浄して固体触媒成分(A)を得る。
【0064】
固体触媒成分(A)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には既定できないが、例えばマグネシウム化合物(a)1モルあたり、4価のチタンハロゲン化合物(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、電子供与性化合物(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、芳香族炭化水素化合物(d)が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルであり、ポリシロキサン(e)が0.01〜100g、好ましくは0.05〜80g、より好ましくは1〜50gである。
【0065】
また本発明における固体触媒成分(A)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、電子供与性化合物の含有量は特に既定されないが、好ましくは、チタンが0.5〜8.0重量%、好ましくは1.0〜8.0重量%、より好ましくは2.0〜8.0重量%マグネシウムが10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%、さらに好ましくは15〜25重量%、ハロゲン原子が20〜90重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは45〜75重量%、また電子供与性化合物が合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。
【0066】
本発明のオレフィン重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)(以下単に「成分(B)」ということがある。)としては、上記一般式(2)で表される化合物であれば、特に制限されないが、R3としては、エチル基、イソブチル基が好ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、pは、2又は3が好ましく、3が特に好ましい。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
【0067】
本発明のオレフィン類重合触媒を形成する際に用いられるアミノシラン化合物(C)(以下「成分(C)」ということがある。)としては、上記一般式(1)で表される化合物が用いられる。また、具体的な化合物としては、前記同様のものが挙げられる。
【0068】
本発明のオレフィン類重合用触媒では、上記の成分(A)、(B)および(C)の他に更に触媒性能を高めるために上述したアミノシラン化合物以外の有機ケイ素化合物またはエーテル化合物などの電子供与性化合物(以下単に「成分(D)」ということがある。)を用いることができる。
【0069】
アミノシラン化合物以外の有機ケイ素化合物としては、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチル(メチル)ジメトキシシラン、t−ブチル(エチル)ジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチル(メチル)ジエトキシシラン、シクロペンチル(エチル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(シクロヘキシル)ジメトキシシラン、3−メチルシクロヘキシル(シクロペンチル)ジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシル(シクロペンチル)ジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシル(シクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ジ−t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ジシクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ジシクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ジ−2−メチルシクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(エチル−n−プロピルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(エチルイソプロピルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(エチル−n−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(エチルイソブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(エチル−t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(イソブチル−n−プロピルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(エチルシクロペンチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(エチルシクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、n−プロピル(ジイソプロピルアミノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(ジ−t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(ジ−t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、n−プロピル(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、n−ブチル(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、n−プロピル(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、イソプロピル(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、n−ブチル(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(ジ−t−ブチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(ジシクロペンチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(ジシクロヘキシルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(ジ−2−メチルシクロヘキシルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジエトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジエトキシシラン、ビス(エチル−n−プロピルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(エチルイソプロピルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(エチル−n−ブチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(エチル−イソブチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(エチル−t−ブチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(イソブチル−n−プロピルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(エチルシクロペンチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(エチルシクロヘキシルアミノ)ジエトキシシラン、n−プロピル(ジイソプロピルアミノ)ジエトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリノ)ジエトキシシラン、n−プロピル(パーヒドロイソキノリノ)ジエトキシシラン、イソプロピル(パーヒドロイソキノリノ)ジエトキシシラン、n−ブチル(パーヒドロイソキノリノ)ジエトキシシラン、エチル(パーヒドロキノリノ)ジエトキシシラン、n−プロピル(パーヒドロキノリノ)ジエトキシシラン、イソプロピル(パーヒドロキノリノ)ジエトキシシラン、n−ブチル(パーヒドロキノリノ)ジエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジ−n−プロピルアミノトリメトキシシラン、ジ−n−ブチルアミノトリメトキシシラン、ジ−t−ブチルアミノトリメトキシシラン、ジシクロペンチルアミノトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルアミノトリメトキシシラン、ジ−2−メチルシクロヘキシルアミノトリメトキシシラン、パーヒドロイソキノリノトリメトキシシラン、パーヒドロキノリノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、ジ−n−ブチルアミノトリエトキシシラン、エチル−t−ブチルアミノトリエトキシシラン、エチル−sec−ブチルアミノトリエトキシシラン、ジシクロペンチルアミノトリエトキシシラン、ジシクロヘキシルアミノトリエトキシシラン、ジ−2−メチルシクロヘキシルアミノトリエトキシシラン、パーヒドロイソキノリノトリエトキシシラン、パーヒドロキノリノトリエトキシシラン、ビス(t−ブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(t−ブチルアミノ)ジエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジエトキシシラン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシランが挙げられる。
【0070】
エーテル化合物としては、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミールエーテル、ジフェニールエーテル、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1、3−ジメトキシプロパン等が挙げられる。これらの電子供与性化合物(D)は1種あるいは2種以上組合せて用いられることができる。
【0071】
本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の単独重合、ランダム共重合もしくはブロック共重合を実施する。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレン、1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましいのはプロピレンである。プロピレンの場合、他のオレフィン類との共重合を行うことができる。共重合されるオレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、1−ブテンが好適に用いられる。プロピレンと他のオレフィン類との共重合としては、プロピレンと少量のエチレンをコモノマーとして1段で重合するランダム共重合と、第一段階(第一重合槽)でプロピレンの単独重合を行い、第二段階(第二重合槽)あるいはそれ以上の多段階(多段重合槽)でプロピレンとエチレンの共重合を行う、所謂プロピレン−エチレンブロック共重合が代表的である。このようなランダム共重合やブロック共重合においても、上記の成分(A)、成分(B)および成分(C)からなる本発明の触媒は有効であり、触媒活性、立体規則性及び/または水素レスポンスが良好であるばかりでなく、共重合特性や得られた共重合体の特性も良好である。
【0072】
上記のオレフィン類の単独重合、ランダム共重合もしくはブロック共重合において、本発明の触媒成分である成分(C)の他に上述した成分(D)を混合して用いたり、またブロック共重合の多段重合槽で成分(C)と成分(D)を別々に用いたりすることもできる。
【0073】
また、特にプロピレンの単独重合からブロック共重合に移行する際に、最終製品中のジェル生成を防止するために、アルコール類、酸素ガスあるいはケトンなど既知の電子供与性化合物を重合系に添加することができる。アルコール類の具体例としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、使用量は成分(B)1モルに対し0.01〜10モル好ましくは0.1〜2モルである。
【0074】
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常成分(B)は成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で使用される。成分(C)は成分(B)1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.1〜0.5モルの範囲で用いられる。成分(D)を併用する場合、成分(B)1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられ、また成分(C)1モル当たり、0.001〜10モル、好ましくは0.01〜10モル特に好ましくは0.01〜2モルの範囲で用いられる。
【0075】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで、アミノシラン化合物(C)を接触させるか、予め混合した成分(C)及び成分(D)を接触させるか、あるいは、成分(C)及び成分(D)を任意の順序に接触させて、固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。あるいは重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、一方で成分(A)と、成分(C)、又は成分(C)及び成分(D)とを予め接触させ、接触させた成分(A)と成分(C)または成分(C)及び成分(D)とを重合系内に装入して接触させ触媒を形成することも好ましい態様である。このように予め成分(A)と、成分(B)又は成分(C)及び成分(D)とを接触処理することによって、触媒の水素レスポンスおよび生成ポリマーの結晶性をより向上させることが可能となる。
【0076】
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、また、プロピレン等のオレフィン単量体は、気体および液体のいずれの状態でも重合に用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは6MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれも可能である。更に、重合反応を1段で行っても良いし、2段以上の多段で行ってもよい。
【0077】
更に、本発明において成分(A)、成分(B)及び成分(C)から形成される触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(「本重合」ともいう。)、触媒活性、立体規則性及び生成する粒子性状度等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。具体的には、オレフィン類の存在下に成分(A)、成分(B)及び/又は成分(C)を接触させ、成分(A)1g当たり0.1〜100gのポリオレフィンを予備的に重合させ、更に成分(B)及び/又は成分(C)を接触させ触媒を形成する。また成分(D)を併用する場合、上記予備重合時にオレフィン類の存在下に成分(A)、成分(B)及び成分(D)を接触させ、本重合の際に成分(C)を用いることもできる。
【0078】
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)及び/または成分(D)を接触させ、次いで成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン及び/又は1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。予備重合温度は任意であり、特に制限はないが、好ましくは−10℃〜70℃の範囲、更に好ましくは0℃〜50℃の範囲である。
【0079】
本発明のオレフィン類重合触媒の存在下で、オレフィン類の重合を行った場合、従来の触媒を使用した場合に比べ、高い立体規則性を保持し、しかも水素レスポンスが向上している。また、成分(C)の特定構造に起因して従来の触媒を使用した場合に比べ、触媒活性と立体規則性が向上している。即ち、本発明の触媒をオレフィン類の重合に用いると成分(C)の構造により、高い立体規則性を保持し、しかも水素レスポンスが改善され、また、触媒活性と立体規則性が改善される作用が確認された。
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0081】
参考例1
<アミノシランの化合物の合成>
窒素ガスで充分にパージした三口フラスコに0.1モルのトリクロロシランを含有する70mlのトルエン溶液を注入し、窒素気流下、攪拌下に−10℃に冷却した。上記の冷却液に、0.1モルのt−BtMgClを含有するTHF溶液50mlを、滴下ロートを使用して徐々に滴下した。滴下終了後40℃において2時間反応し、反応を完了した。次いで、窒素気流下に遠心分離法を用いて、固体と溶液を分離した。固体は追加の20mlのトルエンで二回洗浄し、上記溶液に追加した。
【0082】
次に、窒素ガスで充分にパージした三口フラスコに窒素気流下に0.2モルのメルアルコールとN,N−ジメチルアニリン0.2モルを含有する40mlのTHF溶液を注入し、攪拌下に−10℃に冷却した。この冷却溶液に上記反応で得た反応混合物の溶液を、滴下ロートを使用して徐々に滴下した。滴下終了後、50℃で3時間、撹拌下に反応し終了した。生じたアニリンの塩酸塩を遠心分離法で窒素気流下に分離し、反応混合物の溶液を得た。次いで、反応物溶液を減圧蒸留により、溶媒を留去し、主生成物であるt−ブチルジメトキシシランを分離した。
【0083】
窒素ガスで充分にパージした三口フラスコに窒素気流下に0.05モルのメチルアミンを含むTHF溶液50mlを注入し、撹拌下に−10℃に冷却した。この冷却液に等モルのBtMgClを含むTHF溶液50mlを滴下ロートで徐々に滴下した。滴下終了後、昇温して、40℃で2時間反応し、アミンのMg塩スラリー(1)を得た。
【0084】
次いで、上述のようにして得たt−ブチルジメトキシシラン0.05モルを含むトルエン溶液50mlを窒素気流下に撹拌しながら−10℃に冷却した。この冷却液に窒素気流下に、アミンのMg塩スラリー(1)を、滴下ロートを使用して、全量徐々に加えた。徐々に温度を上げて、50℃で3時間反応させた。反応終了後、遠心分離法で固体と溶液を分離し、固体をトルエン20mlで二回洗浄し、洗浄液を上記溶液に加えた。次いで該溶液を減圧蒸留により、溶媒を留去し、主生成物である(メチルアミノ)(t−ブチル)メトキシシランを減圧蒸留により精製した。生成物はC、H、Nの元素分析から同定した。その結果、Cが 48.63%(48.93%)、 Hが 11.53%(11.63%)、 Nが9.39%(9.51%)であった(括弧内の数値は理論量である)。
【0085】
参考例2
<アミノシラン化合物の合成>
1−クロロ−2−メトキシエタンを使用して、定法により、金属マグネシウムと少量のヨウ素を触媒にして、窒素雰囲気下、ジイソプロピルエーテルを溶媒として、グリニヤー試薬合成を実施し、1.0モルの2−メトキシエチルグリニヤー試薬の溶液1lを合成した。
【0086】
窒素ガスで充分にパージした三口フラスコに0.1モルのトリクロロシランを含有する70mlのトルエン溶液を注入し、窒素気流下、攪拌下に−10℃に冷却した。上記の冷却液に、2−メトキシエチルグリニヤー試薬0.1モルの溶液を含有するTHF溶液100mlを滴下ロートを使用して徐々に滴下した。滴下終了後40℃において2時間反応し、反応を完了した。次いで、窒素気流下に遠心分離法を用いて、固体と溶液を分離した。固体は追加の20mlのトルエンで二回洗浄し、上記溶液に追加した。
【0087】
次に、窒素ガスで充分にパージした三口フラスコに窒素気流下に0.2モルのエチルアルコールとN,N−ジメチルアニリン0.2モルを含有する100mlのTHF溶液を注入し、攪拌下に−10℃に冷却した。この冷却溶液に上記反応で得た反応混合物の溶液を、滴下ロートを使用して徐々に滴下した。滴下終了後、50℃で3時間、撹拌下に反応し終了した。生じたN,N−ジメチルアニリンの塩酸塩を遠心分離法で窒素気流下に分離し、反応混合物の溶液を得た。次いで、反応物溶液を減圧蒸留により、溶媒を留去し、主生成物である2−メトキシエチルジエトキシシランを分離した。
【0088】
次いで、実施例1と同様にして、エチルアミンのMg塩スラリー(2)0.05モルを得た。次いで、上述のようにして得た(2−メトキシエチル)ジエトキシシラン0.05モルを含むトルエン溶液50mlを窒素気流下に撹拌しながら−10℃に冷却した。この冷却液に窒素気流下に、アミンのMg塩スラリー(2)を滴下ロートを使用して、全量徐々に加えた。次いで、徐々に温度を上げて、50℃で3時間反応させた。反応終了後、遠心分離法で固体と溶液を分離し、固体をトルエン20mlで二回洗浄し、洗浄液を溶液に加えた。次いで、該溶液を減圧蒸留により、溶媒を留去し、主生成物である(エチルアミノ)(2−メトキシエチル)エトキシシランを精製した。生成物はC、H、Nの元素分析から同定した。その結果、Cが 47.33%(47.42%)、 Hが 10.63%(10.80%)、 Nが7.79%(7.90%)であった(括弧内の数値は理論量である)。
【0089】
参考例3
<アミノシラン化合物の合成>
(2‐クロロエチル)ジt−ブチルアミンを使用して、定法により、金属マグネシウムと少量のヨウ素を触媒にして、窒素雰囲気下で、ジイソプロピルエーテルを溶媒として、グリニヤー試薬合成を実施し、1.0モルのジ−t−ブチルアミノエチルグリニヤー試薬(3)の溶液1lを合成した。
【0090】
窒素ガスで充分にパージした三口フラスコに0.1モルのトリクロロシランを含有する70mlのトルエン溶液を注入し、窒素気流下、攪拌下に−10℃に冷却した。上記の冷却液に、上述のグリニヤー試薬(3)の0.1モルの溶液を含有するTHF溶液100mlを滴下ロートを使用して徐々に滴下した。滴下終了後40℃において2時間反応し、反応を完了した。次いで、窒素気流下に遠心分離法を用いて、固体と溶液を分離した。固体は追加の20mlのトルエンで二回洗浄し、上記溶液に追加した。
【0091】
次に、窒素ガスで充分にパージした三口フラスコに窒素気流下に0.2モルのメチルアルコールとN,N−ジメチルアニリン0.2モルを含有する100mlのTHF溶液を注入し、攪拌下に−10℃に冷却した。この冷却溶液に上記反応で得た反応混合物の溶液を、滴下ロートを使用して徐々に滴下した。滴下終了後、50℃で3時間、撹拌下に反応し終了した。生じたN,N−ジメチルアニリンの塩酸塩を遠心分離法で窒素気流下に分離し、反応混合物の溶液を得た。次いで、該溶液を減圧蒸留により、溶媒を留去し、主生成物である(1−ジt−ブチルアミノエチル)ジメトキシシランを分離した。
【0092】
次に、実施例1と同様にして、メチルアミンのMg塩スラリー(4)0.05モルを得た。上述のようにして得た(1−ジt−ブチルアミノエチル)ジメトキシシラン0.05モルを含むトルエン溶液50mlを窒素気流下に撹拌しながら−10℃に冷却した。この冷却液に窒素気流下に、アミンのMg塩スラリー(4)を、滴下ロートを使用して、全量徐々に加えた。徐々に温度を上げて、50℃で3時間反応させた。反応終了後、遠心分離法で固体と溶液を分離し、固体をトルエン20mlで二回洗浄し、洗浄液を溶液に加えた。次いで、反応物溶液を減圧蒸留により、溶媒を留去し、主生成物である下記構造の(メチルアミノ)1−ジt−ブチルアミノエチルメトキシシランを精製した。生成物はC、H、Nの元素分析から同定した。その結果、Cが 58.330%(58.48%)、 Hが 12.23%(12.27%)、 Nが11.29%(11.37%)であった(括弧内の数値は理論量である)。
【0093】
【化1】

【実施例1】
【0094】
<固体触媒成分の調製>
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム150g及びトルエン750mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに予め装てんされたトルエン450ml及びチタンテトラクロライド300mlの溶液中に添加した。次いで、該懸濁液を5℃で1時間反応させた。その後、フタル酸−n−ブチル22.5mlを添加して、100℃まで昇温した後、攪拌しながら2時間反応処理した。反応終了後、生成物を80℃のトルエン1300mlで4回洗浄し、新たにトルエン1200ml及びチタンテトラクロライド300mlを加えて、攪拌しながら110℃で2時間の反応処理を行った。中間洗浄及び第2処理を、更にもう一度繰り返した。次いで、生成物を40℃のヘプタン1300mlで7回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分を得た。この固体成分中のチタン含有量を測定したところ、3.1重量%であった。
【0095】
<重合用触媒の形成及び重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32mmol、参考例1で得た(メチルアミノ)(t−ブチル)メトキシシランを0.13mmolおよび前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol装入し、重合触媒を形成した。その後、水素ガス4リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行った後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行った。得られた重合体について、触媒活性、かさ比重(BD、g/ml)、ヘプタン不溶部(HI、重量%)、メルトフローレートをASTMに準じてメルトインデックス(MI、g−PP/10分)で示した。またポリマーの分子量分布を測定した。その結果を表1に併載する。
【0096】
固体触媒成分1g当たり、重合時間の1時間当たりの生成重合体量(F)gを示す触媒活性は下式により算出した。
【0097】
触媒活性=生成重合体(F)g/固体触媒成分g/1時間
【0098】
また、この重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間連続抽出した後のn−ヘプタンに不溶解の重合体(G)を乾燥後、重量測定し、重合体中の沸騰ヘプタン不溶解分(HI、重量%))の割合を下式より算出した。
【0099】
HI(重量%)=(G)g/(F)g×100
【0100】
重合体のメルトフローレートをしめすメルトインデックス(MI)の値はASTEM D 1238、JIS K 7210に準じて測定した。
【0101】
重合体の分子量分布は、クロス分別クロマトグラフ(CFC)(三菱化学社製 CFC T−150B)にて以下の条件で測定して求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの比Mw/Mnによって評価した。
溶媒:o-ジクロロベンゼン(ODCB)
温度: 140℃(SEC)
カラム: Shodex GPC UT−806M
サンプル濃度: 4g/liter-ODCB (200mg/50ml-ODCB)
注入量: 0.5ml
流量: 1.0ml/min
測定範囲: 0℃〜140℃
【実施例2】
【0102】
(メチルアミノ)(t−ブチル)メトキシシランの代りに参考例2で得た(エチルアミノ)(2−メトキシエチル)エトキシシランを用いた以外は実施例1と同様に実験を行なった。得られた結果を表1に示した。
【実施例3】
【0103】
(メチルアミノ)t−ブチルメトキシシランの代りに参考例3で得た(メチルアミノ)(1−ジt−ブチルアミノエチル)メトキシシランを用いた以外は実施例1と同様に実験を行なった。得られた結果を表1に示した。
【実施例4】
【0104】
<固体触媒成分の調製>
撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、無水塩化マグネシウム4.76g、デカン25ml及び2−エチルヘキシルアルコール23.4mlを装入し、130℃で2時間反応させ、均一溶液とした。次いで、該均一溶液に無水フタル酸1.11gを添加し、130℃で1時間反応させた。次いで該溶液を、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに装入され、−20℃に保持されたチタンテトラクロライド200ml中へ、1時間かけて全量滴下した。次いで、該混合溶液を4時間かけて110℃まで昇温した後、フタル酸ジイソブチル2.68mlを添加し、2時間反応させた。反応終了後、濾過により液体部分を除去し、残った固体成分を110℃でデカン及びヘキサンで遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、3.1重量%であった。
【0105】
<重合用触媒の形成及び重合>
上記で得られた固体触媒成分を用いた以外は、実施例1と同様に重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表1に示す。
【実施例5】
【0106】
<固体触媒成分の調製>
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量1000mlの丸底フラスコに、グリニャール用削状マグネシウム32gを投入した。次いで、該マグネシウムに、ブチルクロライド120g及びジブチルエーテル500mlの混合液を、50℃で4時間かけて滴下し、その後60℃で1時間反応させた。反応終了後、反応溶液を室温に冷却し、濾過により固形分を除去し、マグネシウム化合物溶液を得た。次いで、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、ヘキサン240ml、テトラブトキシチタン5.4g及びテトラエトキシシラン61.4gを装入し均一溶液としたところへ、該マグネシウム化合物溶液150mlを、5℃で4時間かけて滴下し反応させ、その後室温で1時間撹拌した。次いで、該反応溶液を室温で濾過し、液状部分を除去した後、残った固体分をヘキサン240mlで8回洗浄し、減圧乾燥させて、固体生成物を得た。次いで、該固体生成物8.6gを、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量100mlの丸底フラスコに装入し、更にトルエン48ml及びフタル酸ジイソブチル5.8mlを加え、95℃で1時間反応させた。その後、濾過により液状部分を除去した後、残った固体分をトルエン85mlで8回洗浄した。洗浄終了後、フラスコにトルエン21ml、フタル酸ジイソブチル0.48ml及びチタンテトラクロライド12.8mlを加え、95℃で8時間反応させた。反応終了後、95℃で固液分離し、固形分をトルエン48mlで2回洗浄し、次いで上記フタル酸ジイソブチル及びチタンテトラクロライドの混合物による処理を同一条件で再度行い、ヘキサン48mlで8回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、2.1重量%であった。
【0107】
<重合用触媒の形成及び重合>
上記で得られた固体触媒成分を用いた以外は、実施例1同様に重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表1に示す。
【0108】
比較例1
(メチルアミノ)(t−ブチル)メトキシシランのかわりにシクロヘキシルメチルジメトキシシランを用いて重合触媒の形成及び重合を行った以外は実施例1と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表1に示す。
【0109】
比較例2
(メチルアミノ)(t−ブチル)メトキシシランの代わりにビス(ジエチルアミノ)ジメトキシシランを用いて重合触媒の形成及び重合を行った以外は実施例1と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表1に示す。
【0110】
比較例3
(メチルアミノ)(t−ブチル)メトキシシランの代わりにジイソプロピルアミノトリエトキシシランを用いて重合触媒の形成及び重合を行った以外は実施例1と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表1に示す。
【0111】
比較例4
(メチルアミノ)(t−ブチル)メトキシシランの代わりにトリス(ジメチルアミノ)メトキシシランを用いて重合触媒の形成及び重合を行った以外は実施例1と同様に、固体触媒成分を調製し、重合用触媒の形成及び重合を行った。得られた結果を表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
以上の結果から、重合時にアミノシラン化合物を用いると、高い立体規則性の重合体を収率良く得られ、かつ水素レスポンスが良好であることがわかる。また、アミノシラン化合物によっては得られるポリマーの分子量分布が広くなることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の触媒成分及び重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
HSi(OR(NR3−m−n (1)
(式中、mは0または1、nは1または2の整数であり、 ただし、1≦m+n≦2であり、Rは炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基およびそれらの誘導体、ビニル基、アリル基、アラルキル基、アルキルシリル基、アミノアルキルシリル基であり、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一または異なってもよく、R は炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、 R、Rは水素原子、炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基およびそれらの誘導体、ビニル基、アリル基、アラルキル基で、同一または異なってもよく、RとRは互いに結合して環状を形成してもよい。)で表されるアミノシラン化合物を有効成分とするオレフィン類重合用触媒。
【請求項2】
(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与性化合物を含有する固体触媒成分、
(B)下記一般式(2);
AlQ3−p (2)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および
(C)下記一般式(1);
HSi(OR(NR3−m−n (1)
(式中、mは0または1および2の整数、nは1または2の整数であり、 ただし、1≦m+n≦2であり、Rは炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基およびそれらの誘導体、ビニル基、アリル基、アラルキル基、アルキルシリル基、アミノアルキルシリル基、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一または異なってもよく、R は炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、 R、Rは水素原子、炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基およびそれらの誘導体、ビニル基、アリル基、アラルキル基で、同一または異なってもよく、RとRは互いに結合して環状を形成してもよい。)で表されるアミノシラン化合物
からなるオレフィン類重合用触媒。
【請求項3】
前記固体触媒成分が、マグネシウム化合物(A)、4価のチタンハロゲン化合物(B)および電子供与性化合物(C)を接触させることにより調製されることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒。
【請求項4】
請求項2および3のいずれか1項記載のオレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行なうことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
【請求項5】
前記オレフィン類重合体が、プロピレン重合体であることを特徴とする請求項4記載のオレフィン類重合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−224098(P2007−224098A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44662(P2006−44662)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(300085439)東邦キャタリスト株式会社 (27)
【Fターム(参考)】