オーガ併用鋼矢板圧入工法
【課題】硬質地盤であっても、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板をスムーズに圧入するためのオーガ併用鋼矢板圧入工法を提供することを目的とする。
【解決手段】圧入する鋼矢板15の開放側の継手部15cと、その近傍の地盤を、オーガケーシング11を備えたオーガによって、既設の鋼矢板18と噛合する継手部15bと、その近傍の掘削済みの地盤と一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、継手部15bを既設の鋼矢板18と噛合させて圧入する鋼矢板15とオーガケーシング11を一体として、前記継手部15bと、その近傍の掘削済みの地盤及び先行掘削した圧入する鋼矢板の開放側の継手部15cと、その近傍の地盤と連続するようにオーガによって掘削することにより、鋼矢板15の圧入される地盤の全域を掘削して、鋼矢板15を圧入し、以後順次この作業を繰り返す。
【解決手段】圧入する鋼矢板15の開放側の継手部15cと、その近傍の地盤を、オーガケーシング11を備えたオーガによって、既設の鋼矢板18と噛合する継手部15bと、その近傍の掘削済みの地盤と一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、継手部15bを既設の鋼矢板18と噛合させて圧入する鋼矢板15とオーガケーシング11を一体として、前記継手部15bと、その近傍の掘削済みの地盤及び先行掘削した圧入する鋼矢板の開放側の継手部15cと、その近傍の地盤と連続するようにオーガによって掘削することにより、鋼矢板15の圧入される地盤の全域を掘削して、鋼矢板15を圧入し、以後順次この作業を繰り返す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーガによる掘削を併用して鋼矢板の圧入される地盤の全域を掘削することにより、硬質地盤であっても、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板をスムーズに圧入するためのオーガ併用鋼矢板圧入工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種土木基礎工事における鋼矢板の圧入・引抜工事においては、振動、騒音の発生が少ない静荷重型杭圧入引抜機が採用されている。
【0003】
この静荷重型杭圧入引抜機は、既設の鋼矢板上に定置された台座の下方に複数の反力掴み装置(クランプ)を設けて、この反力掴み装置により既設杭をクランプすることによって反力を得て、杭掴み装置によりチャックした鋼矢板を地盤に圧入している。そのため、硬質地盤等において、杭掴み装置による圧入力が、既設杭から得られる反力を上回ったときには、鋼矢板を圧入できない場合がある。このような場合、鋼矢板の圧入と同時にオーガによる圧入地盤の掘削を併用することによって鋼矢板の圧入を可能としている。
【0004】
オーガによる掘削を併用する杭圧入引抜作業として、特許文献1によれば、鋼矢板の圧入部周辺を掘削することで、土圧の軽減を図る手段が示されている。また、特許文献2によれば、圧入すべき鋼矢板の中心に対してケーシング付きオーガの中心を鋼矢板の圧入施工の進行方向に沿って、先に圧入された鋼矢板の反対方向へずらし、オーガの径をオーガケーシングの径より大きく拡径可能なものとする手段が示されている。更に、特許文献3によれば、鋼矢板の位置決め精度を確保するためのオーガ装置用ガイド部材を使用して、ケーシング付きオーガで圧入する地盤を先行して掘削する手段が示されている。
【特許文献1】特公昭63−30451
【特許文献2】特開2002−167758
【特許文献3】特開2002−129558
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にかかる杭圧入引抜機は、図12に示すように、既設杭31の継手部31aに、凹部にオーガーケーシング33を抱持した鋼矢板32の一方の継手部32aを噛合させた状態で、杭圧入引抜機による圧入とオーガケーシングに挿通したオーガ(図示略)による掘削を同時に行う。そのため、オーガによる最大掘削範囲径34は、圧入する鋼矢板32の継手部32aと噛合する既設杭31の継手部31aと干渉することがない範囲に限られてしまうため、図12の鋼矢板32にハッチングを施した範囲の地盤が未掘削となり、鋼矢板32の圧入される地盤の全域をオーガによって掘削することができず、硬質地盤において、圧入施工ができないことがある。
【0006】
特許文献2にかかる杭圧入引抜機も、図13に示すように、既設杭31の継手部31aに、凹部にオーガーケーシング36を抱持した鋼矢板35の一方の継手部35aを噛合させた状態で、杭圧入引抜機による圧入とオーガケーシングに挿通したオーガ(図示略)による掘削を同時に行う。特許文献2によれば、圧入する鋼矢板35の中心とオーガケーシング36を進行方向の前後にずらすことにより、特許文献1に示す手段に比べて、オーガの掘削範囲を拡大することができる。
【0007】
しかしながら、オーガによる最大掘削範囲径37は、圧入する鋼矢板35の継手部35aと噛合する既設杭31の継手部31aと干渉することがない範囲に限られてしまうことには変わりないため、図13の鋼矢板35にハッチングを施した範囲の地盤が未掘削となり、鋼矢板35の圧入される地盤の全域をオーガによって掘削することができず、硬質地盤において、圧入施工ができないことがある。そのため、オーガケーシング36を鋼矢板35の圧入施工の進行方向に沿って、既設杭31の反対方向へずらして掘削するという煩瑣な作業が必要となり、作業効率が悪い。
【0008】
特許文献3によれば、先行して掘削する範囲と既設の鋼矢板の掘削範囲とが干渉するため、先行掘削時のオーガの掘削位置精度を保つために、オーガ装置用ガイド部材が必要となり、その脱着操作のための時間を要し、煩瑣な作業となって作業効率が悪い。
【0009】
更に、いずれの手段においても鋼矢板の有効幅の寸法により、オーガの掘削直径を決定するため、広幅鋼矢板やハット形鋼矢板のように有効幅寸法が大きくなれば、それに伴ってオーガの掘削直径を拡大する必要があるため、オーガ掘削トルクの増大による装置の大型化や、作業能率の低下、或いは地盤を必要以上に掘削することにより、環境負荷が大きくなる等の問題があった。
【0010】
そこで本発明はこのような従来の鋼矢板の圧入工法が有している課題を解決するため、オーガによる掘削を併用して鋼矢板の圧入される地盤の全域を掘削することにより、硬質地盤であっても、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板をスムーズに圧入することのできるオーガ併用鋼矢板圧入工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を達成するために、オーガによる掘削を併用する鋼矢板圧入工法において、圧入する鋼矢板の両端部と、その近傍の地盤を、オーガケーシングを備えたオーガによって相互に一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、圧入する鋼矢板とオーガケーシングを一体として、前記先行掘削した地盤と連続するように掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤をオーガによって掘削して、鋼矢板を圧入するオーガ併用鋼矢板圧入工法を提供する。また、鋼矢板の圧入とオーガによる掘削を同時に行うことにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域をオーガによって掘削する。
【0012】
また、オーガによる掘削を併用して、継手部を相互に噛合させて順次圧入する鋼矢板圧入工法において、圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤を、オーガケーシングを備えたオーガによって、既設の鋼矢板と噛合する継手部と、その近傍の掘削済みの地盤と一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、継手部を既設の鋼矢板と噛合させて圧入する鋼矢板とオーガケーシングを一体として、前記継手部と、その近傍の掘削済みの地盤及び先行掘削した圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤と連続するようにオーガによって掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域を掘削して、鋼矢板を圧入し、以後順次この作業を繰り返すオーガ併用鋼矢板圧入工法を提供する。
【0013】
そして、鋼矢板を圧入をしつつ行うオーガによる掘削を、オーガケーシングの径より、拡径可能な径大のオーガを使用して行い、オーガの中心位置を、鋼矢板の幅方向に直交する方向の中心線上に配置して掘削する。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるオーガ併用鋼矢板圧入工法によれば、圧入する鋼矢板の両端部と、その近傍の地盤の先行掘削と、鋼矢板を圧入しつつ先行掘削した地盤と連続するように地盤掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域をオーガによって掘削することができる。また、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板を連続して圧入する際にも、既設の鋼矢板との継手部と、その近傍の地盤は、既設の鋼矢板の圧入時にオーガによって先行掘削しているため、圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤の先行掘削と、鋼矢板の圧入時の掘削によって、圧入する鋼矢板の地盤の全域をオーガによって掘削することができる。そのため、硬質地盤であっても、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板をスムーズに圧入することができる。
【0015】
また、鋼矢板を圧入をしつつ行うオーガによる掘削を、オーガケーシングの径より、拡径可能な径大のオーガを使用して行うため、先行掘削時のオーガとの寸法の違いによる取り替え作業等を必要としない。そのため、オーガの中心位置を、鋼矢板の幅方向に直交する方向の中心線上に配置して掘削することができ、オーガの位置を変更する等の煩瑣な操作が必要ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面に基づいて本発明にかかるオーガ併用鋼矢板圧入工法の最良の実施形態を説明する。図1は本発明で使用する杭圧入引抜機の作業状態を説明するための側面図である。図において、1は公知の静荷重型の杭圧入引抜機であって、2は台座、3は台座2の下部に配設されて既設の鋼矢板18をクランプする反力掴み装置である。Fは杭圧入引抜機本体の進行方向を示す。台座2には杭圧入引抜機1の進行方向Fに沿って、圧入する鋼矢板15の幅寸法以上の距離を摺動自在にスライドベース4が配備されている。このスライドベース4上には支持アーム5が縦軸を中心として回動自在に軸支され、この支持アーム5の前部に設けた軸受部6を中心として回動可能なガイドフレーム7が立設されている。このガイドフレーム7は、一端が支持アーム5に軸支された傾動シリンダ(図示略)の伸縮によって軸受部6を中心として傾動可能となっている。
【0017】
ガイドフレーム7には昇降体8が昇降自在に装着されている。該昇降体8の両側には左右一対の杭圧入引抜シリンダ9が取り付けられていて、この杭圧入引抜シリンダ9の一端が前記軸受部6に軸支されており、昇降体8を上下駆動するように構成されている。10は杭掴み装置であり、この杭掴み装置10は昇降体8の下方にあって該昇降体8に対して旋回自在に配備されている。
【0018】
11は中空のオーガケーシングであり、該オーガケーシング11の相対向する外周部に、所定の厚みを保持して径方向に伸びるとともに上下方向に延長する長大な固定板11a,11aが固着されている。オーガケーシング11の上端部にはオーガ掘削機12(アースオーガ)が装着されるとともに、オーガ掘削機12に連結されたスクリューロッド13が挿通されている。14はスクリューロッド13の先端部に挿通されて、脱着自在に装着されるオーガ(オーガヘッド)であって、スクリューロッド13の先端部に穿設されたジョイント用ピン孔にジョイントピンで連結される。スクリューロッド13の上昇及び下降手段はオーガ掘削機12に内蔵されているシリンダーの上下動若しくはオーガケーシング11を掴んだ杭圧入引抜機1の昇降体8の上下動で行う。17は、オーガ掘削機12を簡略して図示した駆動用の油圧ホースであり、16は油圧ホース17を繰り出し・巻き取るための油圧ホース巻取装置である。
【0019】
15は地盤内に圧入されるU形の鋼矢板であり、この鋼矢板15の凹型に形成された中央部15aがオーガケーシング11の外周部に近接配置され、鋼矢板15の両端部に位置する継手部15b,15cがオーガケーシング11の固定板11a,11aの側に配置されている。この圧入される鋼矢板15の継手部15b,15cと、オーガケーシング11の固定板11a,11aが一体として昇降体8の内方に挿通されて、杭掴み装置10によってチャックされて、強固に支持固定されている。
【0020】
かかる構成によれば、圧入される鋼矢板15を地盤に圧入する際の基本操作として、先ず反力掴み装置3に内蔵されたクランプシリンダを用いて既設杭18をクランプしてから杭掴み装置10により鋼矢板15とオーガケーシング11を強固にチャックすることでオーガ掘削時の回転反力を得ることができる。そしてオーガ掘削機12を起動するとともに杭圧入引抜シリンダ9を駆動して、オーガ14による掘削と杭圧入引抜シリンダ9の併用により新たな鋼矢板15の地盤への圧入を行う。
【0021】
この新たな鋼矢板15を充分な支持力が得られるまで圧入した後、杭掴み装置10を自走可能位置まで上昇させて、再び杭掴み装置10で鋼矢板15を掴んだ後、既設杭18をクランプしている反力掴み装置3に内蔵したクランプシリンダを開放し、杭圧入引抜シリンダ9により杭圧入引抜機1を上昇させる。そして、スライドベース4に摺動自在に配備されている台座2を進行方向Fに沿って、圧入する鋼矢板15の幅寸法分だけスライドさせる。その後、反力掴み装置3をそれぞれ1本分前進した既設杭18にセットできる位置に合わせた後、杭圧入引抜機1を降下させ反力掴み装置3のクランプシリンダを用いて既設の鋼矢板18をクランプして、杭圧入引抜シリンダ9により鋼矢板15を計画高さまで圧入する。次に前記と同様の操作を繰り返して継続的に杭圧入作業を実施する。これらの杭圧入動作及び既設杭18上を自走しての連続圧入動作は公知の静荷重型の杭圧入引抜機と同様である。
【0022】
この杭圧入引抜機1を使用した本発明に係るオーガ併用鋼矢板圧入工法の実施形態を説明する。図2〜図4は最初の1本又は独立した杭となる鋼矢板15の圧入工法を示す平面図である。鋼矢板15として、断面形状がU形で、かつ、両側の継手が対称断面であり、隣接する鋼矢板の打設向きが反対方向となるU形鋼矢板を使用した。先ず、圧入する鋼矢板15の両端部に位置する継手部15b,15cの内、杭圧入引抜機1に近い方の継手部15bの地盤と、その近傍の地盤をオーガ14にて先行掘削Aとして掘削する。このとき、鋼矢板15は杭掴み装置10に装備されておらず、オーガケーシング11のみ装備されている。なお、先行掘削Aを行うときは、杭圧入引抜機1は公知の反力架台又は圧入済みの既設杭を反力掴み装置3にてクランプして作業を行う。
【0023】
次に、杭圧入引抜機1のスライトベース4を鋼矢板15の継手ピッチPだけ前進させ、先行掘削Aから一定の間隔Dを空けて、鋼矢板15の他方の継手部15cの地盤と、その近傍の地盤をオーガ14にて先行掘削Bとして掘削する。間隔Dを空けることにより、先行掘削Bは、先行掘削Aの影響を受けることなく、正確な位置と高い精度で掘削することができる。この先行掘削Bも先行掘削Aと同様に杭掴み装置10に鋼矢板15を装備することなく、オーガケーシング11のみを挿通して掘削する。この先行掘削AとBの間隔Dは特に限定はなく、圧入する鋼矢板15の継手部15b,15cの地盤と、その近傍の地盤を掘削して、一定の間隔が空いておればよい。また、先行掘削Aと先行掘削Bの掘削の順序を逆としてもよい。
【0024】
図5は先行掘削A,Bを掘削する際の杭掴み装置10の平面図であり、円筒状に形成された杭掴み装置10に穿設された挿通孔10aにオーガケーシング11が挿通され、スクリューロッド13の先端に装着されたオーガ14の掘削刃14aを拡径させて、オーガケーシング11より径大の先行掘削A,Bを掘削している。
【0025】
次に、図3に示すように、圧入する鋼矢板15の凹型に形成された中央部15aにオーガケーシング11の外周部を抱き合わせて、杭掴み装置10に挿通して、杭圧入引抜シリンダ9による圧入をしつつ、オーガ14による掘削を同時に行う。このとき、先行掘削AとBによって掘削した地盤が連続するように掘削することにより、鋼矢板15の圧入される地盤の全域をオーガ14によって連結掘削Cとして掘削する。
【0026】
図6は連結掘削Cを掘削する際の杭掴み装置10の平面図であり、鋼矢板15の凹型に形成された中央部15aにオーガケーシング11の外周部を抱き合わせ、鋼矢板15とオーガケーシング11とを一体として円筒状に形成された杭掴み装置10に穿設された挿通孔10a内に挿通し、スクリューロッド13の先端に装着されたオーガ14の掘削刃14aを拡径させて、オーガケーシング11より径大の連結掘削Cを掘削している。この連結掘削Cにより、図3に示すように鋼矢板15の圧入される地盤の全域がオーガ14によって掘削されることとなる。
【0027】
オーガ14による掘削を同時に行いながら、鋼矢板15を圧入した後に、図4に示すように掘削刃14aを縮径させて、掘削刃14aが圧入済みの鋼矢板15に接触することがないようにして、オーガケーシング11及びオーガ14を地上に引き上げて、圧入作業が完了する。
【0028】
次に、隣接する鋼矢板15の継手部15bと15cを相互に噛合させて順次圧入する場合を図7〜図10に基づいて説明する。前記した1本の鋼矢板15の圧入工法と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。図7において、18は圧入済みの既設杭であり、15はこれから圧入する鋼矢板である。既設杭18の開放側の継手部18cの地盤と、その近傍の地盤は、既設杭18を圧入する際に先行掘削Bとして掘削済みである。この既設杭18の先行掘削Bは圧入する鋼矢板15の先行掘削Aとなる。そこで、既設杭18の圧入が完了し、オーガケーシング11及びオーガ14を地上に引き上げた後、スライドベース4を鋼矢板15の継手ピッチPだけ前進させて、先行掘削A(既設杭18の先行掘削B)から一定の間隔Dを空けて、鋼矢板15の他方の継手部15cの地盤と、その近傍の地盤をオーガ14にて先行掘削Bとして掘削する。この先行掘削Bは前記した最初の鋼矢板15を圧入する場合の先行掘削Bと同様である。
【0029】
次に、図8に示すように、圧入する鋼矢板15の凹型に形成された中央部15aにオーガケーシング11の外周部を抱き合わせて、杭掴み装置10に挿通し、鋼矢板15の継手部15bを既設杭18の開放側の継手部18cに噛合させて、杭圧入引抜シリンダ9による圧入をしつつ、オーガ14による掘削を同時に行う。このとき、先行掘削AとBによって掘削した地盤が連続するように鋼矢板15の圧入される地盤の全域をオーガ14によって連結掘削Cとして掘削する。この連結掘削Cも鋼矢板15の継手部15bが既設杭の開放側の継手部18cに噛合して圧入されること以外は、最初の鋼矢板15を圧入する場合の連結掘削Cと同様である。以後順次この作業を繰り返すことにより、鋼矢板を相互に噛合わせて連続して圧入する。
【0030】
図9に示すように、連結掘削Cを掘削する場合には、圧入する鋼矢板15の幅方向Wに直交する方向の中心線Y上にオーガケーシング11の中心S(オーガ14の中心)を位置させている。即ち、オーガケーシング11の中心Sと鋼矢板15の幅方向Wの中心Xとが直線状に位置するように配置する。これにより、鋼矢板15の圧入施工の進行方向に沿って掘削作業時にオーガケーシングの位置を既設杭18の反対方向へずらしたりするという煩瑣な作業が不要となり、そのための装置を必要とせず、オーガケーシング11の位置を常に適正な位置に保って圧入作業を行うことができる。
【0031】
図10は、断面形状がハット(帽子)形で、かつ、両側の継手が非対称断面であり、隣接する鋼矢板の打設向きが同一方向となるハット形鋼矢板を相互に継手部で噛合させて連続して圧入する場合の実施形態を示している。図において、19はハット形鋼矢板の既設杭、20は圧入するハット形鋼矢板を示している。ハット形鋼矢板20の圧入に際しても、前記した鋼矢板15の1本の圧入及び連続した圧入と同様であり、一定の間隔を空けて掘削した先行掘削Aと先行掘削Bとの間を連結掘削Cで連結することにより、圧入するハット形鋼矢板20の地盤の全域を、少ない面積で掘削することができる。
【0032】
ハット形鋼矢板の場合、幅方向Wの寸法が大きいため、図11に示すように、一度の掘削Eであっても、既設杭19と圧入するハット形鋼矢板20の掘削した範囲を合わせることにより、ハット形鋼矢板20の地盤の全域を掘削すること自体は可能である。しかしながら、そのためには掘削Eに示すように掘削径を大きくして広い面積を掘削することが必要であり、掘削抵抗が大きくなって、地盤によっては掘削ができなかったり、オーガ掘削機12として高い能力のものを使用する必要が生じる。これに対して、本発明によれば、圧入するハット形鋼矢板20の地盤の全域を、少ない面積で、掘削抵抗が少なく掘削することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明にかかるオーガ併用鋼矢板圧入工法によれば、圧入する鋼矢板の両端部と、その近傍の地盤の先行掘削と、鋼矢板を圧入しつつ先行掘削した地盤と連続するように掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域を治具を必要とすることなくオーガによって掘削することができる。また、相互に一定の間隔を空けた2つの先行掘削と、2つの先行掘削の間を連結する連結掘削によって掘削するため、より小さい径のオーガによって、圧入する鋼矢板の地盤の全域を掘削することができる。そのため、必要以上に地盤を緩めることもない。更に、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板を連続して圧入する際にも、既設の鋼矢板との継手部と、その近傍の地盤は、既設の鋼矢板の圧入時にオーガによって先行掘削しているため、圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤の先行掘削と、鋼矢板の圧入時の掘削により、圧入する鋼矢板の地盤の全域をオーガによって掘削することができる。そのため、硬質地盤であっても、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板をスムーズに圧入することができる。
【0034】
また、鋼矢板を圧入をしつつ行うオーガによる掘削を、オーガケーシングの径より、拡径可能な径大のオーガを使用して行うため、先行掘削時のオーガとの寸法の違いによる取り替え作業等を必要としない。そのため、オーガの中心位置を、鋼矢板の幅方向に直交する方向の中心線上に配置して掘削することができ、オーガの位置を変更する等の煩瑣な操作が必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明で使用する杭圧入引抜機の作業状態を説明するための側面図。
【図2】本発明の圧入工法の説明図。
【図3】本発明の圧入工法の説明図。
【図4】本発明の圧入工法の説明図。
【図5】本発明の圧入工法の説明図。
【図6】本発明の圧入工法の説明図。
【図7】本発明の圧入工法の説明図。
【図8】本発明の圧入工法の説明図。
【図9】本発明の圧入工法の説明図。
【図10】本発明の圧入工法の説明図。
【図11】従来の圧入工法の説明図。
【図12】従来の圧入工法の説明図。
【図13】従来の圧入工法の説明図。
【符号の説明】
【0036】
A,B…先行掘削
C…連結掘削
11…オーガケーシング
12…オーガ掘削機
13…スクリューロッド
14…オーガ
15…鋼矢板
18,19…既設杭
20…ハット形鋼矢板
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーガによる掘削を併用して鋼矢板の圧入される地盤の全域を掘削することにより、硬質地盤であっても、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板をスムーズに圧入するためのオーガ併用鋼矢板圧入工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種土木基礎工事における鋼矢板の圧入・引抜工事においては、振動、騒音の発生が少ない静荷重型杭圧入引抜機が採用されている。
【0003】
この静荷重型杭圧入引抜機は、既設の鋼矢板上に定置された台座の下方に複数の反力掴み装置(クランプ)を設けて、この反力掴み装置により既設杭をクランプすることによって反力を得て、杭掴み装置によりチャックした鋼矢板を地盤に圧入している。そのため、硬質地盤等において、杭掴み装置による圧入力が、既設杭から得られる反力を上回ったときには、鋼矢板を圧入できない場合がある。このような場合、鋼矢板の圧入と同時にオーガによる圧入地盤の掘削を併用することによって鋼矢板の圧入を可能としている。
【0004】
オーガによる掘削を併用する杭圧入引抜作業として、特許文献1によれば、鋼矢板の圧入部周辺を掘削することで、土圧の軽減を図る手段が示されている。また、特許文献2によれば、圧入すべき鋼矢板の中心に対してケーシング付きオーガの中心を鋼矢板の圧入施工の進行方向に沿って、先に圧入された鋼矢板の反対方向へずらし、オーガの径をオーガケーシングの径より大きく拡径可能なものとする手段が示されている。更に、特許文献3によれば、鋼矢板の位置決め精度を確保するためのオーガ装置用ガイド部材を使用して、ケーシング付きオーガで圧入する地盤を先行して掘削する手段が示されている。
【特許文献1】特公昭63−30451
【特許文献2】特開2002−167758
【特許文献3】特開2002−129558
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にかかる杭圧入引抜機は、図12に示すように、既設杭31の継手部31aに、凹部にオーガーケーシング33を抱持した鋼矢板32の一方の継手部32aを噛合させた状態で、杭圧入引抜機による圧入とオーガケーシングに挿通したオーガ(図示略)による掘削を同時に行う。そのため、オーガによる最大掘削範囲径34は、圧入する鋼矢板32の継手部32aと噛合する既設杭31の継手部31aと干渉することがない範囲に限られてしまうため、図12の鋼矢板32にハッチングを施した範囲の地盤が未掘削となり、鋼矢板32の圧入される地盤の全域をオーガによって掘削することができず、硬質地盤において、圧入施工ができないことがある。
【0006】
特許文献2にかかる杭圧入引抜機も、図13に示すように、既設杭31の継手部31aに、凹部にオーガーケーシング36を抱持した鋼矢板35の一方の継手部35aを噛合させた状態で、杭圧入引抜機による圧入とオーガケーシングに挿通したオーガ(図示略)による掘削を同時に行う。特許文献2によれば、圧入する鋼矢板35の中心とオーガケーシング36を進行方向の前後にずらすことにより、特許文献1に示す手段に比べて、オーガの掘削範囲を拡大することができる。
【0007】
しかしながら、オーガによる最大掘削範囲径37は、圧入する鋼矢板35の継手部35aと噛合する既設杭31の継手部31aと干渉することがない範囲に限られてしまうことには変わりないため、図13の鋼矢板35にハッチングを施した範囲の地盤が未掘削となり、鋼矢板35の圧入される地盤の全域をオーガによって掘削することができず、硬質地盤において、圧入施工ができないことがある。そのため、オーガケーシング36を鋼矢板35の圧入施工の進行方向に沿って、既設杭31の反対方向へずらして掘削するという煩瑣な作業が必要となり、作業効率が悪い。
【0008】
特許文献3によれば、先行して掘削する範囲と既設の鋼矢板の掘削範囲とが干渉するため、先行掘削時のオーガの掘削位置精度を保つために、オーガ装置用ガイド部材が必要となり、その脱着操作のための時間を要し、煩瑣な作業となって作業効率が悪い。
【0009】
更に、いずれの手段においても鋼矢板の有効幅の寸法により、オーガの掘削直径を決定するため、広幅鋼矢板やハット形鋼矢板のように有効幅寸法が大きくなれば、それに伴ってオーガの掘削直径を拡大する必要があるため、オーガ掘削トルクの増大による装置の大型化や、作業能率の低下、或いは地盤を必要以上に掘削することにより、環境負荷が大きくなる等の問題があった。
【0010】
そこで本発明はこのような従来の鋼矢板の圧入工法が有している課題を解決するため、オーガによる掘削を併用して鋼矢板の圧入される地盤の全域を掘削することにより、硬質地盤であっても、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板をスムーズに圧入することのできるオーガ併用鋼矢板圧入工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を達成するために、オーガによる掘削を併用する鋼矢板圧入工法において、圧入する鋼矢板の両端部と、その近傍の地盤を、オーガケーシングを備えたオーガによって相互に一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、圧入する鋼矢板とオーガケーシングを一体として、前記先行掘削した地盤と連続するように掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤をオーガによって掘削して、鋼矢板を圧入するオーガ併用鋼矢板圧入工法を提供する。また、鋼矢板の圧入とオーガによる掘削を同時に行うことにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域をオーガによって掘削する。
【0012】
また、オーガによる掘削を併用して、継手部を相互に噛合させて順次圧入する鋼矢板圧入工法において、圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤を、オーガケーシングを備えたオーガによって、既設の鋼矢板と噛合する継手部と、その近傍の掘削済みの地盤と一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、継手部を既設の鋼矢板と噛合させて圧入する鋼矢板とオーガケーシングを一体として、前記継手部と、その近傍の掘削済みの地盤及び先行掘削した圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤と連続するようにオーガによって掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域を掘削して、鋼矢板を圧入し、以後順次この作業を繰り返すオーガ併用鋼矢板圧入工法を提供する。
【0013】
そして、鋼矢板を圧入をしつつ行うオーガによる掘削を、オーガケーシングの径より、拡径可能な径大のオーガを使用して行い、オーガの中心位置を、鋼矢板の幅方向に直交する方向の中心線上に配置して掘削する。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるオーガ併用鋼矢板圧入工法によれば、圧入する鋼矢板の両端部と、その近傍の地盤の先行掘削と、鋼矢板を圧入しつつ先行掘削した地盤と連続するように地盤掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域をオーガによって掘削することができる。また、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板を連続して圧入する際にも、既設の鋼矢板との継手部と、その近傍の地盤は、既設の鋼矢板の圧入時にオーガによって先行掘削しているため、圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤の先行掘削と、鋼矢板の圧入時の掘削によって、圧入する鋼矢板の地盤の全域をオーガによって掘削することができる。そのため、硬質地盤であっても、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板をスムーズに圧入することができる。
【0015】
また、鋼矢板を圧入をしつつ行うオーガによる掘削を、オーガケーシングの径より、拡径可能な径大のオーガを使用して行うため、先行掘削時のオーガとの寸法の違いによる取り替え作業等を必要としない。そのため、オーガの中心位置を、鋼矢板の幅方向に直交する方向の中心線上に配置して掘削することができ、オーガの位置を変更する等の煩瑣な操作が必要ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面に基づいて本発明にかかるオーガ併用鋼矢板圧入工法の最良の実施形態を説明する。図1は本発明で使用する杭圧入引抜機の作業状態を説明するための側面図である。図において、1は公知の静荷重型の杭圧入引抜機であって、2は台座、3は台座2の下部に配設されて既設の鋼矢板18をクランプする反力掴み装置である。Fは杭圧入引抜機本体の進行方向を示す。台座2には杭圧入引抜機1の進行方向Fに沿って、圧入する鋼矢板15の幅寸法以上の距離を摺動自在にスライドベース4が配備されている。このスライドベース4上には支持アーム5が縦軸を中心として回動自在に軸支され、この支持アーム5の前部に設けた軸受部6を中心として回動可能なガイドフレーム7が立設されている。このガイドフレーム7は、一端が支持アーム5に軸支された傾動シリンダ(図示略)の伸縮によって軸受部6を中心として傾動可能となっている。
【0017】
ガイドフレーム7には昇降体8が昇降自在に装着されている。該昇降体8の両側には左右一対の杭圧入引抜シリンダ9が取り付けられていて、この杭圧入引抜シリンダ9の一端が前記軸受部6に軸支されており、昇降体8を上下駆動するように構成されている。10は杭掴み装置であり、この杭掴み装置10は昇降体8の下方にあって該昇降体8に対して旋回自在に配備されている。
【0018】
11は中空のオーガケーシングであり、該オーガケーシング11の相対向する外周部に、所定の厚みを保持して径方向に伸びるとともに上下方向に延長する長大な固定板11a,11aが固着されている。オーガケーシング11の上端部にはオーガ掘削機12(アースオーガ)が装着されるとともに、オーガ掘削機12に連結されたスクリューロッド13が挿通されている。14はスクリューロッド13の先端部に挿通されて、脱着自在に装着されるオーガ(オーガヘッド)であって、スクリューロッド13の先端部に穿設されたジョイント用ピン孔にジョイントピンで連結される。スクリューロッド13の上昇及び下降手段はオーガ掘削機12に内蔵されているシリンダーの上下動若しくはオーガケーシング11を掴んだ杭圧入引抜機1の昇降体8の上下動で行う。17は、オーガ掘削機12を簡略して図示した駆動用の油圧ホースであり、16は油圧ホース17を繰り出し・巻き取るための油圧ホース巻取装置である。
【0019】
15は地盤内に圧入されるU形の鋼矢板であり、この鋼矢板15の凹型に形成された中央部15aがオーガケーシング11の外周部に近接配置され、鋼矢板15の両端部に位置する継手部15b,15cがオーガケーシング11の固定板11a,11aの側に配置されている。この圧入される鋼矢板15の継手部15b,15cと、オーガケーシング11の固定板11a,11aが一体として昇降体8の内方に挿通されて、杭掴み装置10によってチャックされて、強固に支持固定されている。
【0020】
かかる構成によれば、圧入される鋼矢板15を地盤に圧入する際の基本操作として、先ず反力掴み装置3に内蔵されたクランプシリンダを用いて既設杭18をクランプしてから杭掴み装置10により鋼矢板15とオーガケーシング11を強固にチャックすることでオーガ掘削時の回転反力を得ることができる。そしてオーガ掘削機12を起動するとともに杭圧入引抜シリンダ9を駆動して、オーガ14による掘削と杭圧入引抜シリンダ9の併用により新たな鋼矢板15の地盤への圧入を行う。
【0021】
この新たな鋼矢板15を充分な支持力が得られるまで圧入した後、杭掴み装置10を自走可能位置まで上昇させて、再び杭掴み装置10で鋼矢板15を掴んだ後、既設杭18をクランプしている反力掴み装置3に内蔵したクランプシリンダを開放し、杭圧入引抜シリンダ9により杭圧入引抜機1を上昇させる。そして、スライドベース4に摺動自在に配備されている台座2を進行方向Fに沿って、圧入する鋼矢板15の幅寸法分だけスライドさせる。その後、反力掴み装置3をそれぞれ1本分前進した既設杭18にセットできる位置に合わせた後、杭圧入引抜機1を降下させ反力掴み装置3のクランプシリンダを用いて既設の鋼矢板18をクランプして、杭圧入引抜シリンダ9により鋼矢板15を計画高さまで圧入する。次に前記と同様の操作を繰り返して継続的に杭圧入作業を実施する。これらの杭圧入動作及び既設杭18上を自走しての連続圧入動作は公知の静荷重型の杭圧入引抜機と同様である。
【0022】
この杭圧入引抜機1を使用した本発明に係るオーガ併用鋼矢板圧入工法の実施形態を説明する。図2〜図4は最初の1本又は独立した杭となる鋼矢板15の圧入工法を示す平面図である。鋼矢板15として、断面形状がU形で、かつ、両側の継手が対称断面であり、隣接する鋼矢板の打設向きが反対方向となるU形鋼矢板を使用した。先ず、圧入する鋼矢板15の両端部に位置する継手部15b,15cの内、杭圧入引抜機1に近い方の継手部15bの地盤と、その近傍の地盤をオーガ14にて先行掘削Aとして掘削する。このとき、鋼矢板15は杭掴み装置10に装備されておらず、オーガケーシング11のみ装備されている。なお、先行掘削Aを行うときは、杭圧入引抜機1は公知の反力架台又は圧入済みの既設杭を反力掴み装置3にてクランプして作業を行う。
【0023】
次に、杭圧入引抜機1のスライトベース4を鋼矢板15の継手ピッチPだけ前進させ、先行掘削Aから一定の間隔Dを空けて、鋼矢板15の他方の継手部15cの地盤と、その近傍の地盤をオーガ14にて先行掘削Bとして掘削する。間隔Dを空けることにより、先行掘削Bは、先行掘削Aの影響を受けることなく、正確な位置と高い精度で掘削することができる。この先行掘削Bも先行掘削Aと同様に杭掴み装置10に鋼矢板15を装備することなく、オーガケーシング11のみを挿通して掘削する。この先行掘削AとBの間隔Dは特に限定はなく、圧入する鋼矢板15の継手部15b,15cの地盤と、その近傍の地盤を掘削して、一定の間隔が空いておればよい。また、先行掘削Aと先行掘削Bの掘削の順序を逆としてもよい。
【0024】
図5は先行掘削A,Bを掘削する際の杭掴み装置10の平面図であり、円筒状に形成された杭掴み装置10に穿設された挿通孔10aにオーガケーシング11が挿通され、スクリューロッド13の先端に装着されたオーガ14の掘削刃14aを拡径させて、オーガケーシング11より径大の先行掘削A,Bを掘削している。
【0025】
次に、図3に示すように、圧入する鋼矢板15の凹型に形成された中央部15aにオーガケーシング11の外周部を抱き合わせて、杭掴み装置10に挿通して、杭圧入引抜シリンダ9による圧入をしつつ、オーガ14による掘削を同時に行う。このとき、先行掘削AとBによって掘削した地盤が連続するように掘削することにより、鋼矢板15の圧入される地盤の全域をオーガ14によって連結掘削Cとして掘削する。
【0026】
図6は連結掘削Cを掘削する際の杭掴み装置10の平面図であり、鋼矢板15の凹型に形成された中央部15aにオーガケーシング11の外周部を抱き合わせ、鋼矢板15とオーガケーシング11とを一体として円筒状に形成された杭掴み装置10に穿設された挿通孔10a内に挿通し、スクリューロッド13の先端に装着されたオーガ14の掘削刃14aを拡径させて、オーガケーシング11より径大の連結掘削Cを掘削している。この連結掘削Cにより、図3に示すように鋼矢板15の圧入される地盤の全域がオーガ14によって掘削されることとなる。
【0027】
オーガ14による掘削を同時に行いながら、鋼矢板15を圧入した後に、図4に示すように掘削刃14aを縮径させて、掘削刃14aが圧入済みの鋼矢板15に接触することがないようにして、オーガケーシング11及びオーガ14を地上に引き上げて、圧入作業が完了する。
【0028】
次に、隣接する鋼矢板15の継手部15bと15cを相互に噛合させて順次圧入する場合を図7〜図10に基づいて説明する。前記した1本の鋼矢板15の圧入工法と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。図7において、18は圧入済みの既設杭であり、15はこれから圧入する鋼矢板である。既設杭18の開放側の継手部18cの地盤と、その近傍の地盤は、既設杭18を圧入する際に先行掘削Bとして掘削済みである。この既設杭18の先行掘削Bは圧入する鋼矢板15の先行掘削Aとなる。そこで、既設杭18の圧入が完了し、オーガケーシング11及びオーガ14を地上に引き上げた後、スライドベース4を鋼矢板15の継手ピッチPだけ前進させて、先行掘削A(既設杭18の先行掘削B)から一定の間隔Dを空けて、鋼矢板15の他方の継手部15cの地盤と、その近傍の地盤をオーガ14にて先行掘削Bとして掘削する。この先行掘削Bは前記した最初の鋼矢板15を圧入する場合の先行掘削Bと同様である。
【0029】
次に、図8に示すように、圧入する鋼矢板15の凹型に形成された中央部15aにオーガケーシング11の外周部を抱き合わせて、杭掴み装置10に挿通し、鋼矢板15の継手部15bを既設杭18の開放側の継手部18cに噛合させて、杭圧入引抜シリンダ9による圧入をしつつ、オーガ14による掘削を同時に行う。このとき、先行掘削AとBによって掘削した地盤が連続するように鋼矢板15の圧入される地盤の全域をオーガ14によって連結掘削Cとして掘削する。この連結掘削Cも鋼矢板15の継手部15bが既設杭の開放側の継手部18cに噛合して圧入されること以外は、最初の鋼矢板15を圧入する場合の連結掘削Cと同様である。以後順次この作業を繰り返すことにより、鋼矢板を相互に噛合わせて連続して圧入する。
【0030】
図9に示すように、連結掘削Cを掘削する場合には、圧入する鋼矢板15の幅方向Wに直交する方向の中心線Y上にオーガケーシング11の中心S(オーガ14の中心)を位置させている。即ち、オーガケーシング11の中心Sと鋼矢板15の幅方向Wの中心Xとが直線状に位置するように配置する。これにより、鋼矢板15の圧入施工の進行方向に沿って掘削作業時にオーガケーシングの位置を既設杭18の反対方向へずらしたりするという煩瑣な作業が不要となり、そのための装置を必要とせず、オーガケーシング11の位置を常に適正な位置に保って圧入作業を行うことができる。
【0031】
図10は、断面形状がハット(帽子)形で、かつ、両側の継手が非対称断面であり、隣接する鋼矢板の打設向きが同一方向となるハット形鋼矢板を相互に継手部で噛合させて連続して圧入する場合の実施形態を示している。図において、19はハット形鋼矢板の既設杭、20は圧入するハット形鋼矢板を示している。ハット形鋼矢板20の圧入に際しても、前記した鋼矢板15の1本の圧入及び連続した圧入と同様であり、一定の間隔を空けて掘削した先行掘削Aと先行掘削Bとの間を連結掘削Cで連結することにより、圧入するハット形鋼矢板20の地盤の全域を、少ない面積で掘削することができる。
【0032】
ハット形鋼矢板の場合、幅方向Wの寸法が大きいため、図11に示すように、一度の掘削Eであっても、既設杭19と圧入するハット形鋼矢板20の掘削した範囲を合わせることにより、ハット形鋼矢板20の地盤の全域を掘削すること自体は可能である。しかしながら、そのためには掘削Eに示すように掘削径を大きくして広い面積を掘削することが必要であり、掘削抵抗が大きくなって、地盤によっては掘削ができなかったり、オーガ掘削機12として高い能力のものを使用する必要が生じる。これに対して、本発明によれば、圧入するハット形鋼矢板20の地盤の全域を、少ない面積で、掘削抵抗が少なく掘削することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明にかかるオーガ併用鋼矢板圧入工法によれば、圧入する鋼矢板の両端部と、その近傍の地盤の先行掘削と、鋼矢板を圧入しつつ先行掘削した地盤と連続するように掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域を治具を必要とすることなくオーガによって掘削することができる。また、相互に一定の間隔を空けた2つの先行掘削と、2つの先行掘削の間を連結する連結掘削によって掘削するため、より小さい径のオーガによって、圧入する鋼矢板の地盤の全域を掘削することができる。そのため、必要以上に地盤を緩めることもない。更に、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板を連続して圧入する際にも、既設の鋼矢板との継手部と、その近傍の地盤は、既設の鋼矢板の圧入時にオーガによって先行掘削しているため、圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤の先行掘削と、鋼矢板の圧入時の掘削により、圧入する鋼矢板の地盤の全域をオーガによって掘削することができる。そのため、硬質地盤であっても、静荷重型杭圧入引抜機を使用して、鋼矢板をスムーズに圧入することができる。
【0034】
また、鋼矢板を圧入をしつつ行うオーガによる掘削を、オーガケーシングの径より、拡径可能な径大のオーガを使用して行うため、先行掘削時のオーガとの寸法の違いによる取り替え作業等を必要としない。そのため、オーガの中心位置を、鋼矢板の幅方向に直交する方向の中心線上に配置して掘削することができ、オーガの位置を変更する等の煩瑣な操作が必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明で使用する杭圧入引抜機の作業状態を説明するための側面図。
【図2】本発明の圧入工法の説明図。
【図3】本発明の圧入工法の説明図。
【図4】本発明の圧入工法の説明図。
【図5】本発明の圧入工法の説明図。
【図6】本発明の圧入工法の説明図。
【図7】本発明の圧入工法の説明図。
【図8】本発明の圧入工法の説明図。
【図9】本発明の圧入工法の説明図。
【図10】本発明の圧入工法の説明図。
【図11】従来の圧入工法の説明図。
【図12】従来の圧入工法の説明図。
【図13】従来の圧入工法の説明図。
【符号の説明】
【0036】
A,B…先行掘削
C…連結掘削
11…オーガケーシング
12…オーガ掘削機
13…スクリューロッド
14…オーガ
15…鋼矢板
18,19…既設杭
20…ハット形鋼矢板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーガによる掘削を併用する鋼矢板圧入工法において、
圧入する鋼矢板の両端部と、その近傍の地盤を、オーガケーシングを備えたオーガによって相互に一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、圧入する鋼矢板とオーガケーシングを一体として、前記先行掘削した地盤と連続するように掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤をオーガによって掘削して鋼矢板を圧入することを特徴とするオーガ併用鋼矢板圧入工法。
【請求項2】
オーガによる掘削を併用する鋼矢板圧入工法において、
圧入する鋼矢板の両端部と、その近傍の地盤を、オーガケーシングを備えたオーガによって相互に一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、圧入する鋼矢板とオーガケーシングを一体として、鋼矢板の圧入とオーガによる掘削を同時に行うことにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域をオーガによって掘削することを特徴とするオーガ併用鋼矢板圧入工法。
【請求項3】
オーガによる掘削を併用して、継手部を相互に噛合させて順次圧入する鋼矢板圧入工法において、
圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤を、オーガケーシングを備えたオーガによって、既設の鋼矢板と噛合する継手部と、その近傍の掘削済みの地盤と一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、継手部を既設の鋼矢板と噛合させて圧入する鋼矢板とオーガケーシングを一体として、前記継手部と、その近傍の掘削済みの地盤及び先行掘削した圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤と連続するようにオーガによって掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域を掘削して、鋼矢板を圧入し、以後順次この作業を繰り返すことを特徴とするオーガ併用鋼矢板圧入工法。
【請求項4】
鋼矢板を圧入をしつつ行うオーガによる掘削を、オーガケーシングの径より、拡径可能な径大のオーガを使用して行う請求項1,2又は3記載のオーガ併用鋼矢板圧入工法。
【請求項5】
鋼矢板を圧入をしつつ行うオーガによる掘削を、オーガケーシングの径より、拡径可能な径大のオーガを使用して行うとともに、オーガの中心位置を、鋼矢板の幅方向に直交する方向の中心線上に配置して掘削する請求項1,2又は3記載のオーガ併用鋼矢板圧入工法。
【請求項1】
オーガによる掘削を併用する鋼矢板圧入工法において、
圧入する鋼矢板の両端部と、その近傍の地盤を、オーガケーシングを備えたオーガによって相互に一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、圧入する鋼矢板とオーガケーシングを一体として、前記先行掘削した地盤と連続するように掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤をオーガによって掘削して鋼矢板を圧入することを特徴とするオーガ併用鋼矢板圧入工法。
【請求項2】
オーガによる掘削を併用する鋼矢板圧入工法において、
圧入する鋼矢板の両端部と、その近傍の地盤を、オーガケーシングを備えたオーガによって相互に一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、圧入する鋼矢板とオーガケーシングを一体として、鋼矢板の圧入とオーガによる掘削を同時に行うことにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域をオーガによって掘削することを特徴とするオーガ併用鋼矢板圧入工法。
【請求項3】
オーガによる掘削を併用して、継手部を相互に噛合させて順次圧入する鋼矢板圧入工法において、
圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤を、オーガケーシングを備えたオーガによって、既設の鋼矢板と噛合する継手部と、その近傍の掘削済みの地盤と一定の間隔を空けて先行掘削し、その後、継手部を既設の鋼矢板と噛合させて圧入する鋼矢板とオーガケーシングを一体として、前記継手部と、その近傍の掘削済みの地盤及び先行掘削した圧入する鋼矢板の開放側の継手部と、その近傍の地盤と連続するようにオーガによって掘削することにより、鋼矢板の圧入される地盤の全域を掘削して、鋼矢板を圧入し、以後順次この作業を繰り返すことを特徴とするオーガ併用鋼矢板圧入工法。
【請求項4】
鋼矢板を圧入をしつつ行うオーガによる掘削を、オーガケーシングの径より、拡径可能な径大のオーガを使用して行う請求項1,2又は3記載のオーガ併用鋼矢板圧入工法。
【請求項5】
鋼矢板を圧入をしつつ行うオーガによる掘削を、オーガケーシングの径より、拡径可能な径大のオーガを使用して行うとともに、オーガの中心位置を、鋼矢板の幅方向に直交する方向の中心線上に配置して掘削する請求項1,2又は3記載のオーガ併用鋼矢板圧入工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−196128(P2008−196128A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29593(P2007−29593)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(505131407)株式会社コーワン (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(505131407)株式会社コーワン (6)
【Fターム(参考)】
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