説明

オーディオ信号処理装置およびオーディオ信号処理方法

【課題】 処理後のオーディオ信号の音質を向上すること。
【解決手段】 無音出力符号化情報入替部10は、一つの系列を成す複数の音声符号化情報のうち第1の音声符号化情報を他の音声符号化情報に入れ替える。また、レベル判定部5は、複数の音声符号化情報のうちレベルが所定値以下の音声符号化情報を検出する。また、無音出力符号化情報入替部10は、第1の音声符号化情報を除く複数の音声符号化情報のうち、検出された音声符号化情報を、所定パターンの符号化情報と置き換える。フェードアウト処理部は、所定パターンの符号化情報が他の音声符号化情報の直後に位置する場合、所定パターンの符号化情報にフェードアウト処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号処理装置およびオーディオ信号処理方法に関し、特に、オーディオファイル(例えば、音声・音楽ファイル)の編集を行うオーディオ信号処理装置およびオーディオ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディジタル携帯電話システムにおいては、音声通信機能の他に、オーディオファイルを再生する機能を利用できるようになっている。また、これに伴って、オーディオファイルを編集する機能についての検討がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
オーディオファイルを編集するためのオーディオ信号処理方法の一つに、アフレコ(アフターレコーディング)と呼ばれるものがある。アフレコには、既に録音済みのオーディオファイルに対して、ファイルを全体的にまたは部分的に録音し直す、もしくは、既に録音済みの他のオーディオファイルと合成して記録する、などの機能を総称したものである。
【0004】
また、あるオーディオファイル内の符号化情報を他の符号化情報に入れ替えることによってアフレコが実施される場合がある。
【特許文献1】特開2001−176215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のオーディオ信号処理方法においては、符号化情報の入れ替えによってアフレコを実施した場合、入れ替え後のオーディオファイルにおいて符号化情報の不連続性が生じることがある。符号化情報の不連続性が生じると、復号された音声または音楽において異音が発生する。よって、処理後のオーディオ信号の音質が劣化するという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、処理後のオーディオ信号の音質を向上することができるオーディオ信号処理装置およびオーディオ信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のオーディオ信号処理装置は、一つの系列を成す複数の音声符号化情報のうち第1の音声符号化情報を他の音声符号化情報に入れ替える入れ替え手段と、前記複数の音声符号化情報のうちレベルが所定値以下の音声符号化情報を検出する検出手段と、前記第1の音声符号化情報を除く前記複数の音声符号化情報のうち、検出された音声符号化情報を、所定パターンの符号化情報と置き換える置き換え手段と、前記所定パターンの符号化情報が前記他の音声符号化情報の直後に位置する場合、前記所定パターンの符号化情報にフェードアウト処理を施すフェードアウト処理手段と、を有する構成を採る。
【0008】
この構成によれば、アフレコにおいて入れ替えられた音声符号化情報の直後に位置し且つ実質的に無音の音声符号化情報と置き換えられた所定パターンの符号化情報に対してフェードアウト処理を施すため、入れ替えられた音声符号化情報とその直後に位置する実質的に無音の音声符号化情報との間に不連続性が発生することを防止することができ、復号された音声または音楽において異音の発生を低減することができ、よって、処理後のオーディオ信号の音質を向上することができる。
【0009】
本発明のオーディオ信号処理装置は、上記構成において、前記置き換え手段は、復号することによって無音情報が得られる符号化情報であって、前記無音情報と可逆である符号化情報との置き換えを行う構成を採る。
【0010】
この構成によれば、復号することによって得られる無音情報と可逆である符号化情報との置き換えを行うため、再度アフレコを実施する場合にも、前回アフレコを実施したときと同様の処理を実施することができる。
【0011】
本発明の移動局装置は、上記のオーディオ信号処理装置を有する構成を採る。
【0012】
この構成によれば、上記と同様の作用効果を、移動局装置において実現することができる。
【0013】
本発明のオーディオ信号処理方法は、一つの系列を成す複数の音声符号化情報のうち第1の音声符号化情報を他の音声符号化情報に入れ替える入れ替えステップと、前記複数の音声符号化情報のうちレベルが所定値以下の音声符号化情報を検出する検出ステップと、前記第1の音声符号化情報を除く前記複数の音声符号化情報のうち、検出した音声符号化情報を、所定パターンの符号化情報と置き換える置き換えステップと、前記所定パターンの符号化情報が前記他の音声符号化情報の直後に位置する場合、前記所定パターンの符号化情報にフェードアウト処理を施すフェードアウト処理ステップと、を有するようにした。
【0014】
この方法によれば、アフレコにおいて入れ替えられた音声符号化情報の直後に位置し且つ実質的に無音の音声符号化情報と置き換えられた所定パターンの符号化情報に対してフェードアウト処理を施すため、入れ替えられた音声符号化情報とその直後に位置する実質的に無音の音声符号化情報との間に不連続性が発生することを防止することができ、復号された音声または音楽において異音の発生を低減することができ、よって、処理後のオーディオ信号の音質を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、処理後のオーディオ信号の音質を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係るオーディオ信号処理装置を備えた移動局装置の構成を示すブロック図である。移動局装置は、アンテナ1と、RF復調部2と、音声・音楽復号化部3と、D/A変換部4と、レベル判定部5と、再生部6と、入力部7と、A/D変換部8と、音声・音楽符号化部9と、無音出力符号化情報入替部10と、ファイル生成部11と、ファイル記憶部12と、を備えている。
【0018】
音声・音楽ファイル信号は、アンテナ1によって受信されRF復調部2へ出力される。RF復調部2は、アンテナ1から出力されたRF信号から音声・音楽符号化情報を復調する。RF復調部2によって復調された音声・音楽符号化情報は、音声・音楽復号化部3と無音出力符号化情報入替部10へ出力される。
【0019】
音声・音楽復号化部3は、RF復調部2から出力された音声・音楽符号化情報を復号する。また、ファイル記憶部12からアフレコ実施後音声・音楽符号化情報が入力された場合は、アフレコ実施後音声・音楽符号化情報を復号する。音声・音楽復号化部3によって復号された音声・音楽ディジタル情報は、D/A変換部4へ出力される。
【0020】
D/A変換部4は、音声・音楽復号化部3によって復号された音声・音楽ディジタル情報を音声・音楽アナログ情報へ変換する。D/A変換部4によって変換された音声・音楽アナログ情報は、再生部6へ出力される。再生部6は、D/A変換部4によって変換された音声・音楽アナログ情報を音波として再生する。また、音声・音楽復号化部3によって復号された音声・音楽ディジタル情報は、レベル判定部5へも出力される。
【0021】
レベル判定部5は、音声・音楽復号化部3によって復号された音声・音楽ディジタル情報から、あるフレーム区間毎のレベル判定を行う。換言すれば、レベルが所定値以下の符号化情報を検出する。レベル判定部5によって判定されたレベル情報は、無音出力符号化情報入替部10へ出力される。
【0022】
アフレコ用音声・音楽信号つまり音声・音楽ファイル信号の一部と入れ替える信号は、入力部7から入力されA/D変換部8へ出力される。A/D変換部8は、入力部7によって入力されたアフレコ用音声・音楽信号をアフレコ用音声・音楽ディジタル情報へ変換する。A/D変換部8によって変換されたアフレコ用音声・音楽ディジタル情報は、音声・音楽符号化部9へ出力される。音声・音楽符号化部9は、A/D変換部8によって変換されたアフレコ用音声・音楽ディジタル情報をアフレコ用音声・音楽符号化情報へ符号化する。音声・音楽符号化部9によって符号化されたアフレコ用音声・音楽符号化情報は、無音出力符号化情報入替部10へ出力される。
【0023】
無音出力符号化情報入替部10は、音声・音楽符号化部9によって符号化されたアフレコ用音声・音楽符号化情報と、RF復調部2によって復調された音声・音楽符号化情報と、レベル判定部5によって判定されたレベル情報を使用して、後述する符号化情報入替処理を行う。
【0024】
無音出力符号化情報入替部10にて、アフレコ用音声・音楽符号化情報、無音出力符号化情報が入れ替えられた音声・音楽符号化情報から成るアフレコ実施後音声・音楽符号化情報は、ファイル生成部11へ出力される。ファイル生成部11は、無音出力符号化情報入替部10から入力されたアフレコ実施後音声・音楽符号化情報を、RF復調部2によって復調された音声・音楽符号化情報と同様のファイル形式に変換して出力する。ファイル記憶部12は、ファイル生成部11から入力されたアフレコ実施後音声・音楽符号化情報をファイル形式で記憶する。記憶されたアフレコ実施後音声・音楽符号化情報は、必要に応じて音声・音楽復号化部3に出力される。
【0025】
次いで、上記構成を有する移動局装置内の符号化情報入替処理について図2を用いて説明する。
【0026】
(a)は、レベル判定部5によって判定されたレベル情報の例である。フレーム単位でのレベル判定結果を示している。(b)は、レベル判定部5にてレベル判定を実施した、音声・音楽の符号化情報である。(c)は、アフレコ用音声・音楽の符号化情報である。(d)は、(b)に示す符号化情報を復号した音声・音楽波形である。(e)は、(c)に示す符号化情報を復号した音声・音楽波形である。(f)は、アフレコ実施後の音声・音楽符号化情報である。(g)は、(f)に示す符号化情報を復号した音声・音楽波形である。
【0027】
無音出力符号化情報入替部10では、音声・音楽符号化情報とアフレコ用音声・音楽符号化情報の入れ替えを行う。(c)に示すように、フレーム0にのみアフレコ用音声・音楽符号化情報が存在するため、フレーム0のみ符号化情報の入れ替えを行う。
【0028】
また、レベル判定部5にて判定されたレベル情報から、レベルがある閾値以下のフレームにおいては、無音出力符号化情報で置き換える。レベルがある閾値以下のフレームは、無音に近いフレームであり、実質的に無音であると判断されるフレームである。(a)に示されているとおり、フレーム1、フレーム2およびフレーム4の各レベルが閾値以下のため、無音出力符号化情報で置き換える。(f)は、無音出力符号化情報で置き換えたアフレコ実施後の音声・音楽符号化情報である。(g)は、(f)に示す符号化情報を復号した音声・音楽波形である。
【0029】
無音出力符号化情報は、音声・音楽復号化部3にて無音が復号される固定パターンの符号化情報である。前フレームが無音出力符号化情報でない場合には、(g)に示すように、前フレームの音声・音楽ディジタル情報と不連続にならないように、図示されないフェードアウト処理部にて、無音出力符号化情報に対して、フェードアウト処理が行われる。前フレームが無音出力符号化情報である場合には、無音ディジタル情報を出力する。この無音ディジタル情報も特定の固定パターンであり、音声・音楽符号化部9にて、無音出力符号化情報に符号化される。つまり、無音出力符号化情報と、それを復号した無音ディジタル情報は可逆である。そのため、再度アフレコを実施した際にも、最初のアフレコ実施時と同様の処理を実施することができる。
【0030】
このように、本実施の形態によれば、アフレコにおいて入れ替えられた音声符号化情報の直後に位置し且つ実質的に無音の音声符号化情報と置き換えられた所定パターンの符号化情報に対してフェードアウト処理を施すため、入れ替えられた音声符号化情報とその直後に位置する実質的に無音の音声符号化情報との間に不連続性が発生することを防止することができ、復号された音声または音楽において異音の発生を低減することができ、よって、処理後のオーディオ信号の音質を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のオーディオ信号処理装置およびオーディオ信号処理方法は、処理後のオーディオ信号の音質を向上する効果を有し、オーディオファイルの編集を行うのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態に係る移動局装置の構成を示すブロック図
【図2】本実施の形態の移動局装置における符号化情報入替処理を説明するための図
【符号の説明】
【0033】
1 アンテナ
2 RF復調部
3 音声・音楽復号化部
4 D/A変換部
5 レベル判定部
6 再生部
7 入力部
8 A/D変換部
9 音声・音楽符号化部
10 無音出力符号化情報入替部
11 ファイル生成部
12 ファイル記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの系列を成す複数の音声符号化情報のうち第1の音声符号化情報を他の音声符号化情報に入れ替える入れ替え手段と、
前記複数の音声符号化情報のうちレベルが所定値以下の音声符号化情報を検出する検出手段と、
前記第1の音声符号化情報を除く前記複数の音声符号化情報のうち、検出された音声符号化情報を、所定パターンの符号化情報と置き換える置き換え手段と、
前記所定パターンの符号化情報が前記他の音声符号化情報の直後に位置する場合、前記所定パターンの符号化情報にフェードアウト処理を施すフェードアウト処理手段と、
を有することを特徴とするオーディオ信号処理装置。
【請求項2】
前記置き換え手段は、
復号することによって無音情報が得られる符号化情報であって、前記無音情報と可逆である符号化情報との置き換えを行う、
ことを特徴とする請求項1記載のオーディオ信号処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のオーディオ信号処理装置を有することを特徴とする移動局装置。
【請求項4】
一つの系列を成す複数の音声符号化情報のうち第1の音声符号化情報を他の音声符号化情報に入れ替える入れ替えステップと、
前記複数の音声符号化情報のうちレベルが所定値以下の音声符号化情報を検出する検出ステップと、
前記第1の音声符号化情報を除く前記複数の音声符号化情報のうち、検出した音声符号化情報を、所定パターンの符号化情報と置き換える置き換えステップと、
前記所定パターンの符号化情報が前記他の音声符号化情報の直後に位置する場合、前記所定パターンの符号化情報にフェードアウト処理を施すフェードアウト処理ステップと、
を有することを特徴とするオーディオ信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−107544(P2006−107544A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288388(P2004−288388)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】