説明

オートテンショナ

【課題】ベルト駆動機構のベルトの張力を自動的に適度に保つオートテンショナにおいて、オートテンショナの外部から水、油又は異物等が摩擦板まで到達することを防止して、摩擦板からの異音の発生を防止すると共に、摩擦板の寿命を向上させる。
【解決手段】軸部1aを有する固定部材1と、軸部1a上に回動可能に外嵌合され、ベルトTが走行可能に掛け渡されるプーリ2bを有する回動部材2と、回動部材2を抜け止めするフロントプレート13と、回動部材2とフロントプレート13とによって挟持されるスラストワッシャ14と、を備え、このフロントプレート13は、その外周形状がスラストワッシャ14の外周形状よりも大きく、軸部1aの軸心方向視でスラストワッシャ14を覆って取り付けられており、フロントプレート13と回動部材2との間であってスラストワッシャ14の外周縁部よりも外側位置に、ラビリンスLが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートテンショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にオートテンショナは、温度変化等の環境の変化やベルト等の経年変化によるベルト張力の変化を吸収してベルト張力を適度に維持すると共に、ベルトに作用する振動や衝撃を減衰するものであり、その一例として、特許文献1に開示されたオートテンショナがある。
【0003】
特許文献1に開示されたオートテンショナは、ベルトが掛け渡されるベルト押圧部を有する回動部材のボス部が、固定部材の軸部に樹脂製のインサートベアリングを介して回動可能に外嵌合されている。この固定部材の軸部の前端には、回動部材を抜け止めするための平板状の押さえ板が取り付けられている。この押さえ板と回動部材のボス部の前端面との間には摩擦板が配設されている。また、回動部材は、ばねによって固定部材に対して回動付勢されている。それと共に、このばねはその伸縮復元力によって上記摩擦板をボス部と押さえ板とに圧接させている。そうして、このオートテンショナは、これらばねの捻りトルクと摩擦板の摩擦抵抗等によって、ベルト張力を適度に維持すると共に、ベルトに作用する振動や衝撃を減衰させている。
【特許文献1】特開2000−179634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたオートテンショナは、ベルト張力を適度に維持すると共に、ベルトに作用する振動や衝撃を減衰させるために、押さえ板と摩擦板、及び摩擦板とボス部前端面とは、圧接されている。しかし、押さえ板とボス部前端面との間であって摩擦板と接する以外の部分では、部材同士の摩耗を避けるため、隙間が設けられている。
【0005】
上記オートテンショナは、エンジン部品として使用される場合には、雨水等が押さえ板周辺に付着する可能性があり、その場合には、上記隙間を通じて、外部から水、油又は異物等が摩擦板と押さえ板との間、及び摩擦板とボス部との間に侵入する虞がある。その結果、固定部材と回動部材との間に配設されている摩擦板やインサートベアリング等の樹脂摺動材からの異音の発生及び摩擦板等の早期摩耗という問題が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オートテンショナの回動部材と押さえ板との間から水、油又は異物等が内部に侵入することを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、軸部を有する固定部材と、上記軸部上にその先端側から回動可能に外嵌合されるボス部と、該ボス部と一体的に回動すると共に、ベルトが走行可能に掛け渡されるベルト押圧部と、を有する回動部材と、上記回動部材を上記固定部材に対して上記軸部回りの一定方向に回動付勢するばねと、上記軸部の先端側から軸心方向端面に回動不能に取り付けられ、上記回動部材を抜け止めする押さえ板と、上記回動部材と押さえ板とによって挟持され、上記回動部材に対して回動抵抗を付与する摩擦板と、を備えるオートテンショナが対象である。
【0008】
そして、上記押さえ板と上記回動部材との間であって上記摩擦板の外周縁部よりも外側位置に、ラビリンスが形成されているものとする。
【0009】
上記の構成の場合、オートテンショナのベルト押圧部に当接するベルトには、ばねの捻りトルクによる張力が付与される。そして、オートテンショナの回動部材は、上記ベルトの張力が一定に維持されるように回動する。
【0010】
詳しくは、ベルトの張力が減少した場合には、ばねの捻りトルクによって回動部材及びベルト押圧部がベルトの張力を増加させる方向へ傾動して、ベルトの張力が一定になるように調整する。一方、ベルトの張力が増加した場合には、ばねの捻りトルクに抗して回動部材及びベルト押圧部がベルトの張力を減少させる方向へ傾動して、ベルトの張力が一定になるように調整する。さらに、ベルトに振動や衝撃が加わった場合には、回動部材のボス部にその振動や衝撃が伝わることになるが、このボス部は上記摩擦板によって回動抵抗が付与されているため、この振動や衝撃が吸収及び減衰される。こうして、上記ベルトの張力は一定に維持されると共に、ベルトに作用する振動や衝撃は吸収及び減衰される。
【0011】
このとき、上記押さえ板は摩擦板を覆うように取り付けられると共に、該押さえ板と回動部材との間にはラビリンスが形成されているため、外部から水、油又は異物等が押さえ板とボス部との間の隙間に侵入し、摩擦板まで到達することを防止することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記ラビリンスは、上記回動部材の上記押さえ板に対向する面から該押さえ板側に突出して、上記摩擦板を囲む環状壁と、上記押さえ板の上記回動部材に対向する面から該回動部材側に突出して、上記環状壁を囲む環状の突出片と、によって構成されているものとする。
【0013】
上記の構成の場合、上記ラビリンスは、押さえ板及び回動部材にそれぞれ設けられた突出片及び環状壁によって構成されるため、押さえ板を伝わる水等は突出片によって、回動部材を伝わる水等は環状壁によって、それぞれ堰き止められる。
【0014】
また、上記押さえ板に設けられた突出壁は、上記環状壁を囲むように環状壁の外側に形成されていると共に、該押さえ板は上記軸部の先端側から回動部材と対向して取り付けられているため、環状壁が突出片よりも外側に形成される構成と比較して、軸部の先端側から飛散してくる水等の侵入ををより確実に防止することができる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、上記環状壁と突出片とは、上記軸部の軸心に対する垂直方向視で、重なっているものとする。
【0016】
上記の構成の場合、上記押さえ板と回動部材との間へ軸部の軸心に対して垂直方向に侵入してくる水等が、上記環状壁及び突出片によってより確実に堰き止められる。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、上記押さえ板における上記環状壁と対向する部分には、該環状壁と反対方向に凹陥する環状の凹陥部が設けられているものとする。
【0018】
上記の構成の場合、上記押さえ板には凹陥部が形成されているため、上記環状壁は該凹陥部の凹陥に合わせて可及的に突出させることができる。その結果、凹陥部を設けない構成と比較して、環状壁の突出高さを高くすることができる。つまり、上記回動部材の軸心方向端面と押さえ板との間の隙間がより大きく曲折するため、水等の侵入をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記押さえ板と回動部材との間にラビリンスを設けることによって、該押さえ板と回動部材との間から水等が侵入することを防止することができる。その結果、上記押さえ板と回動部材とによって挟持された摩擦板や、さらにはオートテンショナ内部まで水等が到達することを防止し、摩擦板やオートテンショナの内部の部材からの異音の発生を防止することができると共に、摩擦板等の寿命を向上させることができる。そのため、例えばエンジンルーム内等、水等が付着する虞がある環境下での使用に適している。
【0020】
第2の発明によれば、上記押さえ板に突出片を、回動部材に環状壁を、それぞれ形成してラビリンスを構成することによって、押さえ板及び回動部材をそれぞれ伝わる水等を確実に堰き止めることができる。それと共に、押さえ板に形成された突出片が回動部材の環状壁よりも外側に形成されているため、上記軸部の先端側から飛散してくる水等の侵入が効果的に防止される。その結果、より確実に、摩擦板等からの異音の発生を防止することができると共に、摩擦板等の寿命を向上させることができる。
【0021】
第3の発明によれば、上記軸部の軸心に対する垂直方向視で、環状壁と突出片とが重なっているため、軸心に対する垂直方向から侵入してくる水等をより確実に堰き止めることができる。その結果、より確実に、摩擦板等からの異音の発生を防止することができると共に、摩擦板等の寿命を向上させることができる。
【0022】
第4の発明によれば、上記凹陥部を形成することにより、環状壁の突出高さを可及的に高くすることができ、上記回動部材の軸心方向端面と押さえ板との隙間をより大きく曲折させ、水等の侵入をより確実に防止することができる。その結果、より確実に、摩擦板等からの異音の発生を防止することができると共に、摩擦板等の寿命を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1、2は本発明の実施形態に係るオートテンショナAを示しており、このオートテンショナAは、自動車エンジンに取り付けられて、例えばエンジンの出力軸により1本のベルトTを介して複数のエンジン補機を駆動するサーペンタイン駆動装置に用いられる。
【0025】
上記オートテンショナAは、基本構成として、軸部1aを有していて自動車エンジンに固定される固定部材1と、この固定部材1の軸部1a上にその先端側(図1の上端側)から回動可能に外嵌合されるボス部2aを有すると共に、ベルトT(図2参照)が走行可能に掛け渡されるベルト押圧部としてのプーリ2bを有していて、ボス部2aにおいて固定部材1に回動軸心P回りに回動可能に支持されている回動部材2と、この回動部材2を回動軸心P回りの捻りトルクによりベルト押圧方向(図2の時計回り方向)に回動付勢する捻りコイルばね4と、を備えている。
【0026】
具体的には、上記固定部材1は、アルミニウム合金等の金属からなっていて、上記軸部1aと、この軸部1aの外側に位置する外筒体1bと、これら軸部1a及び外筒体1bを基端側で連結する底部1cとを有する。軸部1aは、底部1cの中央から回動軸心Pに沿って図1の上側(以下、単に上側という)に向かって延びて設けられ、その中心にはボルト孔7が軸部1aを軸方向に貫通して設けられている。さらに、その外周面は該軸部1aの先端に向かって漸次小径となるテーパ状に形成されていて、その先端部は、後述するフロントプレート13を取り付けるため一段と小径となっている。底部1cの外周には、固定部材1をエンジンに固定するための取付片6、6(図2参照)が半径方向外方に突出するように設けられている。
【0027】
また、固定部材1の軸部1aには、合成樹脂製のインサートベアリング9が外嵌合されている。このインサートベアリング9は、上下両端が開口された略円筒状をなしており、その内外周面は、共に上端側が小径となるテーパ形状をしている。さらに、インサートベアリング9の内周面には、周方向の一部に軸方向に延びるキー部(図示省略)が形成されており、このキー部は、上記固定部材1の軸部1aの外周面において軸方向に形成されたキー溝(図示省略)に係入している。こうして、インサートベアリング9は固定部材1に対して回動不能に固定されている。
【0028】
上記回動部材2は、アルミニウム合金等からなっていて、ボス部2aと、このボス部2aの外側に位置する外筒体2cと、ボス部2a及び外筒体2cとを連結する底部2dと、この底部2dから半径方向外方に延びるアーム部2e(図2参照)と、このアーム部2eの先端下側に設けられたプーリ2bとを有する。ボス部2aは、回動軸心Pに沿って図1の下側に(以下、単に下側という)に延びて形成され、上記インサートベアリング9を介して固定部材1の軸部1a上に回動可能に外嵌合されている。上記外筒体2cは、ボス部2aと同心状に下側に向かって延び、その開口端は上記固定部材1の外筒体1bの開口端と所定間隔を有して対向している。上記プーリ2bは、上記アーム部2eの先端に設けられたボールベアリング(図示省略)を介して該アーム部2eに対して回動可能に設けられていて、その外周にはベルトTが掛け渡されている。
【0029】
この回動部材2は、その軸心方向の上側端面2fにおいて、摩擦板としてのスラストワッシャ14を介して押さえ板としてのフロントプレート13によって固定部材1の軸部1aに取り付けられている。
【0030】
上記スラストワッシャ14は、図3に示すように、円環状のワッシャ本体14aと、該ワッシャ本体14aの外周部から半径方向に突出する突出部14b、14b、…からなる。このスラストワッシャ14は、樹脂製であって、例えばポリエーテルエーテルケント(PEEK)などのポリアミド樹脂、クラッチフェーシング材、ブレーキライニング材又はブレーキパッド材などで形成されている。
【0031】
上記フロントプレート13は、上記スラストワッシャ14の外周径よりも大きな外周径を有する円盤形状をしており、固定部材1の軸部1aの先端にかしめ等によって取り付けられている。このとき、回動軸心P方向に上側から見て、スラストワッシャ14はフロントプレート13に完全に覆われている。
【0032】
また、回動部材2のボス部2aには、該ボス部2aに対して摺動可能にスプリングサポート3が外嵌合されている。このスプリングサポート3は、上下両端が開口された円筒状をなしていて、ボス部2aとの間に所定のクリアランスを有して配置されている。また、スプリングサポート3は、その下側開口縁に外向きフランジ状の鍔部3aを有しており、スプリングサポート3は、この鍔部3aにおいて固定部材1の底部1cに回動不能に固定されている。
【0033】
上記捻りコイルばね4は、上記固定部材1の外筒体1b及び回動部材2の外筒体2cの内側であって、回動部材2のボス部2a及びスプリングサポート3に外嵌合されて配設されている。この捻りコイルばね4は、右巻とされていて、軸方向に圧縮された状態で固定部材1の底部1cと回動部材2の底部2dとの間に配設されている。この捻りコイルばね4の伸縮復元力によって上記スラストワッシャ14がフロントプレート13に押しつけられるようになっている。さらに、捻りコイルばね4は、コイル径が小さくされた状態で、その上端部の回動側タング4aが回動部材2に係止される一方、その下端部の固定側タング4bが固定部材1に係止されている。そうして、コイル径が大きくなる方向の捻りトルクにより回動部材2をベルト押圧方向に回動付勢している。また、この捻りトルクの固定側タング4bを支点とする反力によって、スプリングサポート3の周方向の一部が半径方向内方に押圧されて回動部材2のボス部2aに押しつけられており、このことでボス部2aも半径方向内方に押圧されてインサートベアリング9に押しつけられている。
【0034】
上記回動部材2とフロントプレート13との間には、ラビリンスLが形成されている。
【0035】
具体的には、上記フロントプレート13と対向する回動部材2の上側端面2fには、フロントプレート13側に立設する環状壁2gが回動軸心Pを中心に形成されている。この環状壁2gは、上記スラストワッシャ14の外周径よりも大きく、該スラストワッシャ14を囲むように形成されている。一方、フロントプレート13は、該環状壁2gと対向する位置において、環状壁2gの開口端と接触しないように軸方向上側に凹陥する凹陥部13aを有しており、この凹陥部13aの外周縁部には回動部材2側に突出する環状の突出片13bが形成されている。この突出片13bは、環状壁2gの外周径よりも大きく、該環状壁2gを囲むように形成されており、その突出端は、回動部材2と所定のクリアランスを有して、非接触となっている。これら環状壁2gと突出片13bは、回動軸心Pに対して垂直方向(図1の水平方向)から見て、それぞれの端部が重なっている。これら環状壁2gと突出片13bがラビリンスLを構成している。尚、上記上側端面2fにおいて、スラストワッシャ14の外周側且つ環状壁2gの内周側位置には、スラストワッシャ14が回動部材2に合わせて回動することを防止するための回り止め部2hが形成されている。この回り止め部2hは、回動軸心Pを中心として環状に突出していて、その周方向位置において上記スラストワッシャ14の突出部14b、14b、…が位置する部分は、該突出部14b、14b、…が係合するように切り欠かれている。
【0036】
次に、上記の構成のオートテンショナAの作動について説明する。
【0037】
オートテンショナAは上述の通り、固定部材1が取付片6、6を介してエンジンに固定されると共に、回動部材2のプーリ2bにはベルトTが掛け渡されている(図2の二点鎖線)。この回動部材2は、上記捻りコイルばね4の捻りトルクによって固定部材1に対してベルト押圧方向に回動付勢されているため、ベルトTには一定の張力が付与されている。
【0038】
そして、ベルトTの張力が減少した場合には、捻りコイルばね4の捻りトルクによって回動部材2及びプーリ2bがベルトTの張力を増加させる方向へ傾動して、ベルトTの張力が一定になるように調整する。一方、ベルトTの張力が増加した場合には、捻りコイルばね4の捻りトルクに抗して回動部材2及びプーリ2bがベルトTの張力を減少させる方向へ傾動して、ベルトTの張力が一定になるように調整する。
【0039】
また、ベルトTに振動や衝撃が加わった場合には、回動部材2のボス部2aにその振動や衝撃が伝わることになるが、このボス部2aは捻りコイルばね4の伸縮復元力によってスラストワッシャ14に圧接されているため、その回動抵抗によって振動や衝撃が吸収及び減衰される。さらに、回動部材2のボス部2aは、上記スプリングサポート3及びインサートベアリング9にそれぞれ圧接しており、両者との摺動によっても回動抵抗が生じる。この回動抵抗によっても上記ベルトTに加わる振動や衝撃が吸収及び減衰される。
【0040】
こうして、温度変化等の環境の変化やベルト等の経年変化によって、ベルトTの張力が変化しようとしてもベルトTの張力は一定に維持されると共に、ベルトTに振動や衝撃が作用しても吸収及び減衰させることができる。
【0041】
上記回動部材2の上側端面2fとフロントプレート13との間にはラビリンスLが形成されている。このため、回動部材2とフロントプレート13との間に泥水やダスト等の異物が入り込み、スラストワッシャ14の摺動面に侵入することを防止することができる。具体的には、上記回動部材2の上側端面2fを伝わる水等は環状壁2gによって、フロントプレート13を伝わる水等は突出片13bによって、それぞれ堰き止められる。ここで、フロントプレート13に凹陥部13aを形成することによって、環状壁2gの突出高さを可及的に高くすることができ、その結果、上側端面2fとフロントプレート13との間の隙間がより大きく曲折し、水等の侵入をより確実に防止することができる。また、これら環状壁2g及び突出片13bは、回動軸心Pに対して垂直方向(図1の水平方向)から見て、それぞれの端部が重なっているため、軸心に対する垂直方向から侵入してくる水等をより確実に堰き止めることができる。さらに、フロントプレート13に形成された突出片13bが回動部材2の環状壁2gよりも外側に形成されているため、固定部材1の軸部1aの先端側(図1の上側)から飛散してくる水等の侵入し難い構造となっている。
【0042】
したがって、上記オートテンショナAにおいては、回動部材2の上側端面2fとフロントプレート13との間にラビリンスLを設けることによって、その隙間からオートテンショナAの内部に水等が侵入することを防止することができる。その結果、スラストワッシャ14の摺動面や、さらにはインサートベアリング9の摺動面に水等の異物が侵入して異音を発生することを防止することができると共に、スラストワッシャ14及びインサートベアリング9の寿命を向上させることができる。
【0043】
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0044】
上記実施形態では、環状壁2gと突出片13bとからなるラビリンスLを採用しているが、ラビリンス構造はこれに限られない。例えば、水平な上側端面2fに対して環状の溝を形成したフロントプレート13や、上側端面2fに形成した溝に対して該溝に入り込む突出部が形成されたフロントプレート13等であってもよい。すなわち、上側端面2fとフロントプレート13との間の隙間を一定間隔を有する水平な平面同士で形成する構造ではなく、回動部材2の上側端面2fとフロントプレート13との間に曲折した通路を形成する構成であれば採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態に係るオートテンショナの固定部材の軸心を中心とした断面図である。
【図2】オートテンショナを示す平面図である。
【図3】スラストワッシャを示す平面図である。
【符号の説明】
【0046】
A オートテンショナ
T ベルト
L ラビリンス
1 固定部材
1a 軸部
2 回動部材
2a ボス部
2b プーリ(ベルト押圧部)
2g 環状壁
4 捻りコイルばね(ばね)
13 フロントプレート(押さえ板)
13a 凹陥部
13b 突出片
14 スラストワッシャ(摩擦板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を有する固定部材と、
上記軸部上にその先端側から回動可能に外嵌合されるボス部と、該ボス部と一体的に回動すると共に、ベルトが走行可能に掛け渡されるベルト押圧部と、を有する回動部材と、
上記回動部材を上記固定部材に対して上記軸部回りの一定方向に回動付勢するばねと、
上記軸部の先端側から軸心方向端面に回動不能に取り付けられ、上記回動部材を抜け止めする押さえ板と、
上記回動部材と押さえ板とによって挟持され、上記回動部材に対して回動抵抗を付与する摩擦板と、を備え、
上記押さえ板と上記回動部材との間であって上記摩擦板の外周縁部よりも外側位置に、ラビリンスが形成されていることを特徴とするオートテンショナ。
【請求項2】
請求項1に記載したオートテンショナにおいて、
上記ラビリンスは、
上記回動部材の上記押さえ板に対向する面から該押さえ板側に突出して、上記摩擦板を囲む環状壁と、
上記押さえ板の上記回動部材に対向する面から該回動部材側に突出して、上記環状壁を囲む環状の突出片と、によって構成されていることを特徴とするオートテンショナ。
【請求項3】
請求項2に記載したオートテンショナにおいて、
上記環状壁と突出片とは、上記軸部の軸心に対する垂直方向視で、重なっていることを特徴とするオートテンショナ。
【請求項4】
請求項3に記載したオートテンショナにおいて、
上記押さえ板における上記環状壁と対向する部分には、該環状壁と反対方向に凹陥する環状の凹陥部が設けられていることを特徴とするオートテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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